(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146407
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ガス排出用構造体及び蓄電ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 50/35 20210101AFI20241004BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M50/35 101
H01M50/342 101
H01M50/35 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059273
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119552
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 公秀
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】國枝 雅文
【テーマコード(参考)】
5H012
【Fターム(参考)】
5H012BB02
5H012BB08
5H012CC08
(57)【要約】
【課題】連通部材の軸方向へ伸長により、連通部材と蓄電素子との密着性を高め、ガス排出弁からのガスが経路外へ漏れるのを抑制する。
【解決手段】ガス排出用構造体100は、複数の蓄電素子11の各々のガス排出弁11fからのガスを外部に排出するための排出管110と、ガス排出弁11fから排出管110までのガスの排出経路101を連通させる複数の連通部材120と、を備える。連通部材120は、蓄電素子11のガス排出弁11fが形成される面と接触可能な蓄電素子側の端部124と、排出管110の開口部112aが形成される面と接触可能な排出管側の端部125と、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125との間を外側に膨出するように湾曲又は屈曲して繋ぐ少なくとも1つの外側膨出部126と、を有して環状に形成される。
【選択図】
図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれガス排出弁を有する複数の蓄電素子が、前記ガス排出弁をそれぞれ同一方向に向く姿勢で積層された蓄電装置に設けられ、前記蓄電素子から発生するガスを排出するために用いられるガス排出用構造体であって、
前記複数の蓄電素子の各々の前記ガス排出弁と対応する複数の開口部を有し、前記ガス排出弁からのガスを外部に排出するための排出管と、
前記排出管の前記複数の開口部をそれぞれ囲うように前記排出管の前記複数の開口部が形成される面に配置され、前記ガス排出弁から前記排出管までの前記ガスの排出経路を連通させる複数の連通部材と、を備え、
前記連通部材は、前記蓄電素子の前記ガス排出弁が形成される面と接触可能な蓄電素子側の端部と、前記排出管の前記開口部が形成される面と接触可能な排出管側の端部と、前記蓄電素子側の端部と前記排出管側の端部との間を外側に膨出するように湾曲又は屈曲して繋ぐ少なくとも1つの外側膨出部と、を有して環状に形成される、
ガス排出用構造体。
【請求項2】
前記連通部材は、前記蓄電素子側の端部と前記排出管側の端部とからそれぞれ外側に膨出するように湾曲又は屈曲する2つの外側膨出部と、前記2つの外側膨出部同士の間で内側に膨出するように湾曲又は屈曲する内側膨出部と、を有して環状に形成される、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項3】
前記連通部材は、一体の弾性部材により構成される、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項4】
前記連通部材の断面形状が、前記蓄電素子側の端部から前記排出管側の端部まで略S字形状を有する、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項5】
前記連通部材の断面形状が、前記蓄電素子側の端部から前記排出管側の端部まで略C字形状を有する、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項6】
前記連通部材の断面形状が、前記蓄電素子側の端部から前記排出管側の端部まで略U字形状を有する、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項7】
前記排出管の開口部が形成される面には、前記連通部材の前記排出管側の端部に形成された湾曲部に沿った湾曲面が形成される、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項8】
前記蓄電素子側の端部は、前記連通部材の軸方向に平行に形成される端部内壁面を有する、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項9】
前記複数の連通部材は、連結部を介してそれぞれ一体に連結されている、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項10】
前記連結部は、前記連通部材の軸方向において、前記外側膨出部の最外周面と前記排出管側の端部との間、且つ、前記外側膨出部の最外周面及び前記排出管側の端部から離れた位置で、前記外側膨出部に接続される、
請求項9に記載のガス排出用構造体。
【請求項11】
ガス排出弁をそれぞれ有し、前記各ガス排出弁が同一方向に向く姿勢で積層してなる前記複数の蓄電素子を有する蓄電装置と、
前記複数の連通部材が前記ガス排出弁を囲うように前記複数の蓄電素子上にそれぞれ配置され、前記蓄電素子から発生するガスを排出するために用いられる、請求項1から10のいずれか1項に記載のガス排出用構造体と、を備える蓄電ユニット。
【請求項12】
前記複数の連通部材は、前記蓄電素子のガス排出弁が形成される面と前記排出管の開口部が形成される面との間に弾性変形した状態で配置されている、
請求項11に記載の蓄電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス排出用構造体及び蓄電ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス排出弁を安全弁として設けた複数の蓄電素子を、所定の方向に配列して形成した蓄電装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この蓄電装置には、各蓄電素子のガス排出弁から放出されるガスの排出流路を形成する排気部材が取り付けられている。排気部材には、ガス排出弁から排出されたガスを排気部材内に導入するための開口部が形成され、排気部材の流路の先端部から、ガス排出弁からのガス、及びガスと共に放出される電解液等が排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-277735号公報
【特許文献2】特許第6017539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気部材の開口部は、対向して配置される各蓄電素子に延びる連通部材を介して、各蓄電素子と接続されている。ガス排出弁から排出された高圧のガスは、連通部材を通過して排気部材に導入される。この高圧のガスは、連通部材の変位、位置ずれなどを含む不具合を生じさせる可能性があり、そのような不具合の発生は、ガスの漏洩を誘発するおそれがある。
【0005】
本発明は、ガスの排出に伴う連通部材の不具合の発生を抑制し、密封されたガスの排出経路を確保し得るガス排出用構造体及び蓄電ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、
それぞれガス排出弁を有する複数の蓄電素子が、前記ガス排出弁をそれぞれ同一方向に向く姿勢で積層された蓄電装置に設けられ、前記蓄電素子から発生するガスを排出するために用いられるガス排出用構造体であって、
前記複数の蓄電素子の各々の前記ガス排出弁と対応する複数の開口部を有し、前記ガス排出弁からのガスを外部に排出するための排出管と、
前記排出管の前記複数の開口部をそれぞれ囲うように前記排出管の前記複数の開口部が形成される面に配置され、前記ガス排出弁から前記排出管までの前記ガスの排出経路を連通させる複数の連通部材と、を備え、
前記連通部材は、前記蓄電素子の前記ガス排出弁が形成される面と接触可能な蓄電素子側の端部と、前記排出管の前記開口部が形成される面と接触可能な排出管側の端部と、前記蓄電素子側の端部と前記排出管側の端部との間を外側に膨出するように湾曲又は屈曲して繋ぐ少なくとも1つの外側膨出部と、を有して環状に形成される、
ガス排出用構造体。
【0007】
上記(1)の態様によれば、ガス排出弁からのガス発生時に、連通部材の軸方向へ伸長する力が生じ、蓄電素子側の端部と排出管側の端部との接触圧が増加する。これにより、連通部材の排出管と蓄電素子との密着性が高まり、ガス排出弁からのガスが経路外へ漏れるのを抑制できる。
【0008】
(2)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記連通部材は、前記蓄電素子側の端部と前記排出管側の端部とからそれぞれ外側に膨出するように湾曲又は屈曲する2つの外側膨出部と、前記2つの外側膨出部同士の間で内側に膨出するように湾曲又は屈曲する内側膨出部と、を有して環状に形成される、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0009】
上記(2)の態様によれば、ガス排出弁からのガス発生時に、連通部材の軸方向へ伸長する力が生じ、蓄電素子側の端部と排出管側の端部とは、それぞれの接触圧が増加する。これにより、連通部材と排出管及び蓄電素子との密着性が高まり、ガス排出弁からのガスが排出経路外へ漏れるのを抑制できる。
【0010】
(3)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記連通部材は、一体の弾性部材により構成される、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0011】
上記(3)の態様によれば、連通部材が一体の弾性部材により構成されるため、連通部材が変形することにより、蓄電素子及びガス排出用構造体の製造時に発生する寸法公差を吸収できる。
【0012】
(4)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記連通部材の断面形状が、前記蓄電素子側の端部から前記排出管側の端部まで略S字形状を有する、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0013】
上記(4)の態様によれば、連通部材に何らかの応力、特に連通部材の軸方向に圧縮する応力が発生しても、略S字形状の断面によって、連通部材が傾くように変形することを抑制し、ガス排出用構造体の不具合の発生を抑制できる。
また、上記態様によれば、連通部材が傾くことを抑制するため、ガス排出弁からのガス発生時に、ガス漏れをより確実に防止できる。
【0014】
(5)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記連通部材の断面形状が、前記蓄電素子側の端部から前記排出管側の端部まで略C字形状を有する、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0015】
上記(5)の態様によれば、連通部材に何らかの応力、特に連通部材の軸方向に圧縮する応力が発生しても、略C字形状の断面によって、連通部材が傾くように変形することを抑制し、ガス排出用構造体の不具合の発生を抑制できる。
また、上記態様によれば、連通部材が傾くことを抑制するため、ガス排出弁からのガス発生時に、ガス漏れをより確実に防止できる。
【0016】
(6)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記連通部材の断面形状が、前記蓄電素子側の端部から前記排出管側の端部まで略U字形状を有する、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0017】
上記(6)の態様によれば、連通部材に何らかの応力、特に連通部材の軸方向に圧縮する応力が発生しても、略U字形状の断面によって、連通部材が傾くように変形することを抑制し、ガス排出用構造体の不具合の発生を抑制できる。
また、上記態様によれば、連通部材が傾くことを抑制するため、ガス排出弁からのガス発生時に、ガス漏れをより確実に防止できる。
【0018】
(7)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記排出管の開口部が形成される面には、前記連通部材の前記排出管側の端部に形成された湾曲部に沿った湾曲面が形成される、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0019】
上記(7)の態様によれば、ガス排出弁からのガス発生時に、排出管側の端部が排出管の開口部が形成される面に向けて変形した際に、排出管側の端部に形成された湾曲部と湾曲面との接触面積を拡大できる。
【0020】
(8)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記蓄電素子側の端部は、前記連通部材の軸方向に平行に形成される端部内壁面を有する、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0021】
上記(8)の態様によれば、ガス排出弁からのガス発生時に、ガスの整流効果が得られるとともに、外側膨出部の内部に形成される環状凹部内に熱風や高温の粒子が入り込むことが抑制され、連通部材の劣化を抑制できる。
【0022】
(9)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記複数の連通部材は、連結部を介してそれぞれ一体に連結されている、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0023】
上記(9)の態様によれば、複数の連通部材が一体に連結されているため、連通部材の組み付け作業が簡単になり、複数の蓄電素子上に連通部材を作業性よく配置できる。
【0024】
(10)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記連結部は、前記連通部材の軸方向において、前記外側膨出部の最外周面と前記排出管側の端部との間、且つ、前記外側膨出部の最外周面及び前記排出管側の端部から離れた位置で、前記外側膨出部に接続される、(9)に記載のガス排出用構造体である。
【0025】
上記(10)の態様によれば、ガス排出弁からのガス発生時に、排出管側の端部が変形して、排出管の開口部が形成される面と十分に接触でき、連通部材と排出管との密着性をより高めることができる。
【0026】
(11)本発明の一態様に係る蓄電ユニットは、
ガス排出弁をそれぞれ有し、前記各ガス排出弁が同一方向に向く姿勢で積層してなる前記複数の蓄電素子を有する蓄電装置と、
前記複数の連通部材が前記ガス排出弁を囲うように前記複数の蓄電素子上にそれぞれ配置され、前記蓄電素子から発生するガスを排出するために用いられる、(1)から(10)のいずれかに記載のガス排出用構造体と、を備える蓄電ユニットである。
【0027】
上記(11)の態様によれば、各々の連通部材が変形することにより、蓄電素子及びガス排出用構造体の製造時に発生する寸法公差を吸収することができ、ガス排出用構造体の蓄電素子に対する配置を安定的に維持できる。
また、ガス排出弁からのガス発生時に、先端部寄りの湾曲部が、蓄電素子のガス排出弁が形成される面、又は排出管の開口部が形成される面と接触する部位となり、連通部材と蓄電素子との密着性をより高めることができ、ガス排出弁からのガスが経路外へ漏れるのをより確実に防止できる。
【0028】
(12)本発明の一態様に係る蓄電ユニットは、前記複数の連通部材は、前記蓄電素子のガス排出弁が形成される面と前記排出管の開口部が形成される面との間に弾性変形した状態で配置されている、(11)に記載の蓄電ユニットである。
【0029】
上記(12)の態様によれば、連通部材が弾性変形した場合でも、蓄電素子側の端部および排出管側の端部の少なくともいずれかが、前記蓄電素子のガス排出弁が形成される面、又は前記排出管の開口部が形成される面と接触させることができ、連通部材と蓄電素子との密着性を高めることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、連通部材の軸方向へ伸長により、連通部材と蓄電素子との密着性を高めることができ、ガス排出弁からのガスが経路外へ漏れるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る蓄電ユニットの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、蓄電ユニットを分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿った部分の一部の断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係るガス排出用構造体における連通部材の斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、実施の形態1に係るガス排出用構造体における連通部材の断面図であって、ガスの圧力が連通部材に及んでいない初期状態における連通部材を示す断面図である。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aの状態において、ガスの圧力が連通部材に及ぶことにより、連通部材が変位した状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、ガスが連通部材を通過する状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係るガス排出用構造体における連通部材の斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、実施の形態2に係るガス排出用構造体における連通部材の断面図であって、ガスの圧力が連通部材に及んでいない初期状態における連通部材を示す断面図である。
【
図8B】
図8Bは、
図8Aの状態において、ガスの圧力が連通部材に及ぶことにより、連通部材が変位した状態を示す断面図である。
【
図9A】
図9Aは、実施の形態3に係るガス排出用構造体における連通部材の斜視図である。
【
図9B】
図9Bは、実施の形態3に係るガス排出用構造体における連通部材の断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態4に係るガス排出用構造体における連通部材の断面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態5に係るガス排出用構造体における連通部材の断面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態6に係るガス排出用構造体における連通部材の斜視図である。
【
図13】
図13は、実施の形態7に係るガス排出用構造体における連通部材の斜視図である。
【
図14A】
図14Aは、実施の形態7に係るガス排出用構造体における連通部材の断面図であって、ガス排出用構造体の蓄電装置への固定前の状態における断面図である。
【
図14B】
図14Bは、ガス排出用構造体の蓄電装置への固定後の状態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係るガス排出用構造体及び蓄電ユニットについて説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0033】
図1は、実施の形態1に係る蓄電ユニット1の外観を示す斜視図である。以下の説明及び図面において、蓄電ユニット1が備える複数の蓄電素子11の並び方向を長手方向、Y軸方向と定義し、鉛直方向である蓄電ユニット1の高さ方向をZ軸方向と定義する。また、Z軸方向及びY軸方向に直交する方向を幅方向、X軸方向と定義する。
【0034】
また、以下の説明において、例えば、Z軸プラス方向とは、上向きの方向であり、Z軸マイナス方向とは、Z軸プラス方向と反対の下向きの方向である。X軸方向及びY軸方向についても同様に、軸に沿った一方の向きをプラス方向、他方の向きをマイナス方向と定義する。また、平行及び直交等の、相対的な方向又は姿勢を示す表現は、厳密には、その方向又は姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0035】
(実施の形態1)
本実施の形態におけるガス排出用構造体(ガス排気部材)100及びこのガス排出用構造体100を用いた蓄電ユニット1の構成について説明する。
【0036】
蓄電ユニット1は、外部から供給された電気を充電し、また外部へ電気を放電できる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。例えば、蓄電ユニット1は、電力貯蔵用途又は電源用途等に使用される。具体的には、蓄電ユニット1は、例えば、家庭用又は産業用の蓄電設備等に使用される定置用のバッテリー等として使用される。また、蓄電ユニット1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、又は電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用又はエンジン始動用等のバッテリー等として使用できる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。
【0037】
図2は、実施の形態1に係る蓄電ユニット1を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
図1及び
図2に示すように、蓄電ユニット1は、蓄電装置10と、ガス排出用構造体100と、を備える。蓄電装置10は、扁平な略直方体形状を有する複数の電池モジュール(組電池)を、Y軸方向に沿って配列させた長尺状の形状を有する。具体的には、蓄電装置10は、Y軸方向に並べられて一体にされた複数の蓄電素子11と、複数の蓄電素子11を収容する外装体18とを含む。また、蓄電装置10は、図示しないケーブル、検出線等の電線、バスバー等を含んでもよい。また、蓄電装置10は、複数の蓄電素子11を拘束する拘束部材(エンドプレート19等)を更に有していてもよい。
【0038】
ここで、上記した蓄電素子11のZX平面に平行な面を「長側面」、YZ平面に平行な面を「短側面」と呼ぶ。つまり、蓄電装置10は、複数の蓄電素子11の長側面同士が対向するように配列され、各短側面が同じ向きに配置されている。
【0039】
蓄電素子11は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。なお、蓄電素子11は、二次電池には限定されず、一次電池又はキャパシタでもよい。蓄電素子11は、扁平な直方体状の形状を有する金属製の容器11aを備える。容器11aには、電極端子である正極端子11b及び負極端子11cが、それぞれ周囲と絶縁された状態で同じ面内に配置される。ここで、正極端子11b及び負極端子11cが配置される面を電極面11dという。正極端子11bと負極端子11cとは、電極面11dの一方の端部と他方の端部に離れて配置される。電極面11dの正極端子11b及び負極端子11cの間には、容器11a内の圧力上昇時にガスを排出して圧力を開放する安全弁としてのガス排出弁11fが設けられる。ガス排出弁11fは、容器11a内の規定圧以上の圧力上昇時に、容器11a内のガスを排出して圧力を開放することによって、蓄電装置10の安全性を保っている。
【0040】
また、複数の蓄電素子11は、それぞれのガス排出弁11fが同一の方向(
図1のZ軸プラス方向)を向く姿勢で配列されている。また、複数の蓄電素子11は、長側面を
図1のY方向に積層して、配列されている。容器11aの電極面11dには、電解液を注液するための注液部等が設けられていてもよい。また、容器11aの内部には、蓄電要素又は発電要素である電極体と、正極集電体及び負極集電体を含む集電体等が配置され、電解液(非水電解質)等が封入されている。蓄電素子11の内部構造については公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。蓄電素子11の構成は上記例に限らず、他の形態でもよい。
【0041】
正極端子11b及び負極端子11cは、容器11aの電極面11dから外側(
図1のZ軸プラス方向)に向けて突出して配置される。そして、各蓄電素子11は、適宜なバスバー(不図示)等を介して電気的にそれぞれ接続されており、バスバーは不図示のケーブルに接続される。これにより、蓄電装置10が、外部から供給される電気を充電し、また、充電した電気を外部へ放電できる。
【0042】
外装体18は、蓄電装置10を収容する矩形の箱状の筐体(モジュールケース)である。つまり、外装体18は、蓄電装置10の外側を覆って設けられ、蓄電装置10を含む各部を所定の位置で固定することで収容物を衝撃等から保護する。外装体18は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板等の金属製の部材により形成されるが、特にその材料は限定されない。
【0043】
ガス排出用構造体100は、排出管110と、複数の連通部材120とを有し、各蓄電素子11のガス排出弁11fから発生するガスを外部に排出するために使用される。複数の連通部材120は、排出管110と蓄電装置10との間に挟持される。
【0044】
図3は、
図1のIII-III線に沿った部分の一部の断面図である。
図1および
図2に示すように、ガス排出用構造体100および排出管110の形状は、蓄電素子11の並び方向(Y軸方向)に連続して延びる長尺状である。
図3に示すように、排出管110は、幅方向(X軸方向)の端部に形成された一対の鍔部115と、一対の鍔部115同士の間に設けられた突出部116とを有する。また排出管110は、連通部材120に対向する側に、排出管110の底部の大部分を形成する底板112を有する。つまり、排出管110は、突出部116と底板112で囲まれる内部空間を排出経路101とした有底の筒状体111で構成される。
【0045】
鍔部115は、幅方向(X軸方向)の端部に形成された一対の端部側壁114から、筒状体111の幅方向(X軸方向)中央に向けて延びて形成される。突出部116は、一対の鍔部115の筒状体111の幅方向中央側の端部から、蓄電装置10が位置する側の反対方向(Z軸プラス方向)に向けて突出して形成される。この筒状体111は、インサート成形品で構成され、本体部インサート132と、本体部インサート132を覆う外層樹脂131とを有する。
【0046】
突出部116は、幅方向(X軸方向)の幅を突出先端側ほど狭くするように傾斜している。これにより、突出部116は、底板112から離れるにつれて先細りするテーパー形状となる。突出部116と底板112とに囲まれた排出経路101は、断面形状が台形であり、十分な排気容量が確保される。
【0047】
上記した筒状体111は、例えば、樹脂を射出する金型にあらかじめ本体部インサート132をセットしておき、樹脂を金型に射出して外層樹脂131を形成することにより製造できる。ただし、排出管110の製造方法は、上記方法には限定されない。
【0048】
底板112は、連通部材120を介して蓄電装置10に対向して設けられ、複数のガス排出弁11fに対応した複数の開口部112aが形成されている。底板112と蓄電装置10との間に介装される連通部材120には、開口部112aに対応して貫通路120aが設けられている。貫通路120aは、排出経路101の一部を形成する。底板112は、例えば樹脂により形成されるが、その材料は特に限定されない。
【0049】
筒状体111の突出部116の内部空間は、底板112の開口部112a及び連通部材120の貫通路120aに連通されて、ガス排出弁11fから排出されるガスを外部に排出する排出経路101を画定する。これにより、蓄電素子11からガス排出弁11fを介して排出されたガスは、連通部材120の貫通路120a、底板112の開口部112aを通して排出経路101に進入する。さらに排出経路101に進入したガスは、排出経路101の一端に設けられた排出パイプに向けて流れ、排出パイプを介して外部の接続管等の外部排出経路に排出される。
【0050】
外層樹脂131は、筒状体111の底部の一部と、底部から突出した突出部116の外側面と内側面に形成されている。外層樹脂131は、蓄電素子11から排出される高温のガスの排出経路101の表面を形成する。そのため、外層樹脂131は耐熱性の高い樹脂から形成される。
【0051】
外層樹脂131は、例えば耐熱性の高い樹脂材料であるポリフェニレンスルファイド(PPS)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)で形成してもよい。本体部インサート132は、例えば金属製であり、突出部116の芯体を構成する。本体部インサート132は、排出管110に必要な剛性が付与されるとともに、その長手方向(Y軸方向)の両端部には、外装体18と接続する固定部132bが設けられている。
【0052】
上記した外層樹脂131は、本体部インサート132の外側面及び内側面を覆っているが、内側面には設けずに本体部インサート132の内側面を露出させた構成にしてもよい。
【0053】
図3に示すように、鍔部115と突出部116とは、蓄電素子11の並び方向(Y軸方向)に沿って連続した表面を有して形成されている。また、鍔部115と突出部116は、X軸方向に沿って階段形状を有するが、鍔部115と突出部116との間には隙間がなく、それぞれが連続した表面で繋がっている。
【0054】
図1及び
図2に示すように、外装体18は、長手方向(Y軸方向)の両端部にエンドプレート19を備える。エンドプレート19は外装体18の剛性を高めるとともに、ガス排出用構造体100との連結に用いられる。
【0055】
ガス排出用構造体100は、蓄電装置10に対向して配置され、蓄電装置10に対して締結具を用いて固定される。具体的には、排出管110の長手方向(Y方向)の両端部から本体部インサート132の固定部132bが突出し、複数の連通部材120を挟んだ状態で、固定部132bがビス13aを用いて外装体18に固定される。
【0056】
また、排出管110の長手方向の中央部に、ビス孔を有するタブ117を設け、蓄電素子11の並び方向(Y軸方向)の中間位置に、ビス固定孔を有する補強板14を配置してもよい。この構成によれば、ビス13bを用いてタブ117を補強板14に固定でき、排出管110に生じる撓みを軽減できる。よって、排出管110と蓄電素子11との間に設けられる連通部材120がより均等に圧縮されて、密封性が向上する。
【0057】
図4は、実施の形態1に係るガス排出用構造体100における連通部材120の斜視図である。複数の連通部材120は、底板112の複数の開口部112a(
図3)をそれぞれ囲うように、底板112の複数の開口部112aが形成される面に配置される。これにより、連通部材120は、ガス排出弁11fから排出管110までのガスの排出経路を連通させる。連通部材120は、例えば樹脂、ゴムなどの様な弾性変形可能な材料により構成されるが、その材料は特に限定されない。
【0058】
本実施形態の連通部材120は、Z軸方向から見た平面視において(XY平面上において)、二つの直線部121と二つの曲線部122が連結されて形成される環状閉曲線に沿った形状、より具体的にはオーバル形状を呈する。連通部材120は、Z軸方向に対称形状である。環状閉曲線の内側中央には、上述した貫通路120aが、連通部材120の軸方向、即ち、ガスの流れ方向であって、Z軸方向に延びるように形成されている。連通部材120は、排出管110の底板112における複数の開口部112aをそれぞれ囲うように配置され、且つ、蓄電素子11のガス排出弁11fをそれぞれ囲うように配置されている。これにより、貫通路120aは、ガス排出弁11fと開口部112aとを気密に連通する。
【0059】
また、連通部材120は、
図3に示すように、直線部121及び曲線部122に沿った全周に渡って、軸方向(Z軸方向)に沿った断面、すなわちXZ平面及びYZ平面を含むZ軸方向に延びる面に沿った断面において、略U字形状を有しており、この略U字形状の内部において画定された環状凹部123を有している。
【0060】
図5Aは、実施の形態1に係るガス排出用構造体100における連通部材120の断面図であって、ガスの圧力が連通部材120に及んでいない初期状態における連通部材120を示す断面図である。
図5Bは、
図5Aの状態において、ガスの圧力が連通部材120に及ぶことにより、連通部材120が変位した状態を示す断面図である。
【0061】
特に本実施形態において、連通部材120は、連通部材120の軸方向に沿った断面、すなわちXZ平面及びYZ平面に平行な断面において、略U字形状を有している。この略U字形状に沿うように、連通部材120は、蓄電素子側の端部124と、排出管側の端部125と、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125とを繋ぐ外側膨出部126とを有している。
【0062】
蓄電素子側の端部124は、蓄電素子11のガス排出弁11fが形成される面(対向面Fdでもよい)と接触可能であり、排出管側の端部125は、排出管110の開口部112aが形成される面(対向面Fuでもよい)と接触可能である。そして、外側膨出部126は、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125との間を外側、すなわちX軸方向及びY軸方向において、貫通路120aの外側に膨出するように湾曲又は屈曲して繋ぐ。
【0063】
図5Bは、
図5Aの状態において、矢印で示すように、ガスの圧力が連通部材120に及ぶとともに、連通部材120が変形した状態を示している。連通部材120は、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125との間を外側に膨出するように湾曲又は屈曲して繋ぐ外側膨出部126を有して環状に形成されている。このため、ガス排出弁11fからのガス発生時に、連通部材120の軸方向へ伸長する力が生じ、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125とは、それぞれの接触圧が増加する。これにより、連通部材120と、排出管110及び蓄電素子11との密着性が高まり、ガス排出弁11fからのガスが排出経路外へ漏れるのを抑制できる。
【0064】
このような密着性の向上は、ガス排出弁11fからのガス排出時のガス圧力、すなわち連通部材120の内圧(貫通路120aまたは排出経路101の圧力)と連通部材120の外圧の圧力差によりもたらされるものである。連通部材120は、外側膨出部126の存在により、それ単独で上述した効果を奏することができる。
【0065】
また、連通部材120は、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125との少なくとも一方が、蓄電素子11のガス排出弁11fが形成される面、又は排出管110の開口部112aが形成される面と面接触可能な平坦面127を有する(
図4参照)。これにより、連通部材120の蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125の少なくとも一方が、平坦面127により、蓄電素子11又は排出管110と面接触を確保するため、連通部材120と蓄電素子11又は排出管110側との少なくとも一方の密着性を向上でき、ガス排出弁11fからのガスが排出経路外へ漏れ出すことをより確実に防止できる。
【0066】
特に、本実施形態の連通部材120は、直線部121及び曲線部122に沿った全周に渡って、軸方向(Z軸方向)に沿った断面、すなわちXZ平面及びYZ平面を含むZ軸方向に延びる面に沿った断面において、略U字形状を有している。連通部材120の断面形状が、蓄電素子側の端部124から排出管側の端部125まで略U字形状を有するということもできる。よって、連通部材120に何らかの応力、特に連通部材120の軸方向に圧縮する応力が発生しても、略U字形状の断面によって、連通部材120が傾くように変形することを抑制し、ガス排出用構造体100の不具合の発生を抑制できる。また、連通部材120が傾くことを抑制するため、ガス排出弁11fからのガス発生時に、ガス漏れをより確実に防止できる。
【0067】
蓄電ユニット1は、ガス排出弁11fをそれぞれ有し、各ガス排出弁11fが同一方向に向く姿勢で積層してなる複数の蓄電素子11を有する蓄電装置10と、複数の連通部材120がガス排出弁11fを囲うように複数の蓄電素子11上にそれぞれ配置され、蓄電素子11から発生するガスを排出するために用いられる、上述したガス排出用構造体100と、を備える。
【0068】
これにより、各々の連通部材120が変形することにより、蓄電素子11及びガス排出用構造体100の製造時に発生する寸法公差を吸収することができ、ガス排出用構造体100の蓄電素子11に対する配置を安定的に維持できる。
【0069】
また、ガス排出弁1fからのガス発生時に、先端部寄りの第1の湾曲部129が、蓄電素子11のガス排出弁11fが形成される面、又は排出管110の開口部112aが形成される面と接触する部位となり、連通部材120と蓄電素子11との密着性をより高めることができ、ガス排出弁11fからのガスが経路外へ漏れるのをより確実に防止できる。
【0070】
なお、複数の連通部材120は、蓄電素子11のガス排出弁11fが形成される面と排出管110の開口部112aが形成される面との間に弾性変形した状態で配置されている。連通部材120が弾性変形した場合でも、蓄電素子側の端部124および排出管側の端部125の少なくともいずれかが、蓄電素子11のガス排出弁11fが形成される面、又は排出管110の開口部112aが形成される面と接触させることができ、連通部材120と蓄電素子11との密着性を高めることができる。また、蓄電素子11及びガス排出用構造体100の製造時に発生する寸法公差を吸収することもできる。
【0071】
図6は、ガスが連通部材120を通過する状態を示す断面図である。少なくとも連通部材120の蓄電素子側の端部124は、連通部材120の軸方向に平行に形成される端部内壁面124aを有する。
【0072】
端部内壁面124aは、連通部材120の軸方向に平行に延びており、且つ所定の厚みTを有している。このため、ガス排出弁11fから排出されたガスは、端部内壁面124aの整流効果により、矢印で示すように直進する傾向を示し、多量のガスが環状凹部123内に入り込むことが抑制されるとともに、連通部材120の本体がガスの高温の熱、ガス中の粒子等にさらされることが抑制され、長期間にわたって気密を維持できる。
【0073】
すなわち、ガス排出弁11fからのガス発生時に、端部内壁面124aによってガスの整流効果が得られるとともに、外側膨出部126の内部に形成される環状凹部123内に熱風、高温の粒子等が入り込むことが抑制され、連通部材120の劣化を抑制できる。
【0074】
また、上述した平坦面127は、X軸方向又はY軸方向に幅Wを有しており、蓄電素子11のガス排出弁11fが形成される面及び排出管110の開口部112aが形成される面に対して面接触をしているので、仮に端部内壁面124aが熱、高温の粒子等により劣化したとしても、全体的に気密を維持できる。
【0075】
なお、端部内壁面124aの厚みTは、例えば、連通部材120の軸方向高さの1/10以上、1/3以下にしてもよい。また、平坦面127の幅Wは、例えば、貫通路120aの相当円直径の1/40以上、1/10以下にしてもよい。
【0076】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係るガス排出用構造体100における連通部材120の斜視図である。複数の連通部材120は、実施の形態1と同様に、底板112の複数の開口部112a(
図3)をそれぞれ囲うように、底板112の複数の開口部112aが形成される面に配置され、二つの直線部121と二つの曲線部122が連結されて形成される環状閉曲線に沿った形状、より具体的にはオーバル形状を呈する。
【0077】
図8Aは、実施の形態2に係るガス排出用構造体100における連通部材120の断面図であって、ガスの圧力が連通部材120に及んでいない初期状態における連通部材120を示す断面図である。
図8Bは、
図8Aの状態において、ガスの圧力が連通部材120に及ぶことにより、連通部材120が変位した状態を示す断面図である。
【0078】
特に本実施形態において、連通部材120は、連通部材120の軸方向に沿った断面、すなわちXZ平面及びYZ平面に平行な断面において、略C字形状を有している。この略C字形状に沿うように、連通部材120は、蓄電素子側の端部124と、排出管側の端部125と、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125とを繋ぐ外側膨出部126とを有している。
【0079】
蓄電素子側の端部124は、蓄電素子11のガス排出弁11fが形成される面(対向面Fdでもよい)と接触可能であり、排出管側の端部125は、排出管110の開口部112aが形成される面(対向面Fuでもよい)と接触可能である。そして、外側膨出部126は、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125との間を外側、すなわちX軸方向及びY軸方向において、貫通路120aの外側に膨出するように湾曲又は屈曲して繋ぐ。
【0080】
更に連通部材120の形状について詳しく述べる。連通部材120の軸方向に沿った断面、すなわちXZ平面及びYZ平面に平行な断面において、略C字形状を有している。連通部材120は、連通部材120の排出経路101(貫通路120a)に沿った軸方向(Z軸方向)に関して、蓄電素子11に最も近い先端領域128と、排出管110に最も近い先端領域128とを有する。さらに連通部材120は、少なくとも一方の先端領域128から蓄電素子側の端部124または排出管側の端部125端部に向けて、軸方向に関しいずれかの先端領域128から遠ざかる方向に湾曲して反り返る第1の湾曲部(湾曲部)129を有する。特に本実施形態の連通部材120は、蓄電素子11に最も近い先端領域128Aと、排出管110に最も近い先端領域128Bの双方に、蓄電素子11に最も近い先端領域128Aおよび排出管110に最も近い先端領域128Bから蓄電素子側の端部124および排出管側の端部125端部に向けて、軸方向に関し先端領域128A、128Bから遠ざかる方向に湾曲して反り返る第1の湾曲部129A、129Bを有する。
【0081】
また、連通部材120は、直線部121及び曲線部122(
図4)に沿った全周に渡って、軸方向(Z軸方向)に沿った断面、すなわちXZ平面及びYZ平面を含むZ軸方向に延びる面に沿った断面において、略C字形状を有している。連通部材120の断面形状が、蓄電素子側の端部124から排出管側の端部125まで略C字形状を有するということもできる。
【0082】
なお、蓄電素子側の端部124は、第1の湾曲部129Aと先端領域128Aの少なくとも一部を含んでおり、排出管側の端部125は、第1の湾曲部129Bと先端領域128Bの少なくとも一部を含んでいるということができる。
【0083】
図8Bは、
図8Aの状態において、矢印で示すように、ガスの圧力が連通部材120に及ぶとともに、連通部材120が変形した状態を示している。連通部材120は、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125との間を外側に膨出するように湾曲又は屈曲して繋ぐ外側膨出部126を有して環状に形成されている。このため、ガス排出弁11fからのガス発生時に、連通部材120の軸方向へ伸長する力が生じ、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125とは、それぞれの接触圧が増加する。これにより、連通部材120と、排出管110及び蓄電素子11との密着性が高まり、ガス排出弁11fからのガスが排出経路外へ漏れるのを抑制できる。
【0084】
このような密着性の向上は、ガス排出弁11fからのガス排出時のガス圧力、すなわち連通部材120の内圧(貫通路120aまたは排出経路101の圧力)と連通部材120の外圧の圧力差によりもたらされるものである。連通部材120は、外側膨出部126の存在により、それ単独で上述した効果を奏することができる。
【0085】
更に本実施形態において、連通部材120は、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125との間を外側に膨出するように湾曲又は屈曲して繋ぐ外側膨出部126を有して環状に形成されている。上述したように、ガス排出用構造体100の蓄電装置10への取り付け時に、連通部材120は軸方向に押さえ付けられ、圧縮される。連通部材120は弾性変形可能な材料により構成されており、この圧縮により、ガスの圧力とは関係なく、連通部材120は、軸方向に伸長する力を備えているということができる。このような力は、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125による接触圧をさらに増加させることができる。
【0086】
(実施の形態3)
図9Aは、実施の形態3に係るガス排出用構造体100における連通部材120の斜視図であり、
図9Bは、同実施の形態における連通部材120の断面図である。
図9Aの斜視図は、X軸方向における所定の位置において、連通部材120をY軸に沿って切断した状態を示している。
【0087】
本実施形態において、連通部材120は、蓄電素子側の端部124と、排出管側の端部125と、2つの外側膨出部126A、126Bと、内側膨出部1201と、を有して環状に形成されている。
【0088】
蓄電素子側の端部124は、蓄電素子11のガス排出弁11fが形成される面(対向面Fdでもよい)と接触可能であり、排出管側の端部125は、排出管110の開口部112aが形成される面(対向面Fuでもよい)と接触可能である。そして、2つの外側膨出部126A、126Bは、蓄電素子側の端部124と排出管側の端部125とからそれぞれ外側、すなわちX軸方向及びY軸方向において、貫通路120aの外側に膨出するように湾曲又は屈曲する。
【0089】
さらに内側膨出部1201は、2つの外側膨出部126A、126B同士の間で内側、すなわちX軸方向及びY軸方向において、貫通路120aの方に膨出するように湾曲又は屈曲し、2つの外側膨出部126A、126Bを繋ぐ。
【0090】
これによれば、蓄電素子11のガス排出弁が11f形成される面と排出管110の開口部112aが形成される面との間の距離Dが大きい場合でも、ガス排出弁11fからのガス発生時に、連通部材120の軸方向へ伸長する力が生じる。この軸方向の変位により、連通部材120と、蓄電素子側の端部124及び排出管側の端部125との接触圧が増加する。よって、連通部材120と、蓄電素子側の端部124及び排出管側の端部125との密着性が高まり、ガス排出弁11fからのガスが排出経路外へ漏れるのを抑制できる。
【0091】
(実施の形態4)
図10は、実施の形態4に係るガス排出用構造体100における連通部材120の断面図であって、ガスの圧力が連通部材120に及んでいない初期状態における連通部材120を示す断面図である。
【0092】
図10に示す通り、本実施形態の連通部材120は、連通部材120の軸方向に関して、蓄電素子11に最も近い先端領域128および排出管110に最も近い先端領域128の少なくとも一方から、蓄電素子側の端部124または排出管側の端部125に向けて、軸方向(Z軸方向)に関し先端領域128から遠ざかる方向に湾曲して反り返る第1の湾曲部129を有する。本実施形態の連通部材120は、蓄電素子11に最も近い先端領域128Aと、排出管110に最も近い先端領域128Bの双方において、先端領域128A、128Bから蓄電素子側の端部124および排出管側の端部125に向けて、軸方向(Z軸方向)に関し先端領域128A、128Bから遠ざかる方向に湾曲して反り返る第1の湾曲部129A、129Bを有する。
【0093】
また、連通部材120は、直線部121及び曲線部122(
図4)に沿った全周に渡って、軸方向(Z軸方向)に沿った断面、すなわちXZ平面及びYZ平面を含むZ軸方向に延びる面に沿った断面において、略S字形状を有している。連通部材120の断面形状が、蓄電素子側の端部124から排出管側の端部125まで略S字形状を有するということもできる。
【0094】
なお、本実施形態の連通部材120も、実施の形態1と同様に、蓄電素子側の端部124と、排出管側の端部125と、端部124と排出管側の端部125とを繋ぐ外側膨出部126とを有する。さらに連通部材120は、実施の形態3と同様に内側膨出部1201を有する。内側膨出部1201は、外側膨出部126と蓄電素子側の端部124とを繋ぐ。蓄電素子側の端部124は、第1の湾曲部129Aと先端領域128Aの少なくとも一部を含んでおり、排出管側の端部125は、第1の湾曲部129Bと先端領域128Bの少なくとも一部を含んでいるということができる。
【0095】
図10の状態において、ガスの圧力が連通部材120に及ぶと、
図8Bで説明した要領で、連通部材120が矢印で示すように変位する。すなわち、ガス圧により、連通部材120は、連通部材120自身の外側方向に移動し(矢印P1)、さらに、第1の湾曲部129Bが、排出管110の開口部112aが形成される面(対向面Fuでもよい)と接触する(矢印P2)。
【0096】
すなわち、ガス排出弁11fからのガス発生時に、排出管110に最も近い先端領域128Bの第1の湾曲部129Bが、排出管の開口部112aが形成される面と面接触する部位となり、連通部材120と排出管との密着性をより高めることができる。
【0097】
特に、本実施形態の連通部材120の断面形状は、蓄電素子側の端部124から排出管側の端部125まで略S字形状を有する。よって、連通部材120に何らかの応力、特に連通部材120の軸方向に圧縮する応力が発生しても、略S字形状の断面によって、連通部材120が傾くように変形することを抑制し、ガス排出用構造体100の不具合の発生を抑制できる。また、連通部材120が傾くことを抑制するため、ガス排出弁11fからのガス発生時に、ガス漏れをより確実に防止できる。
【0098】
(実施の形態5)
図11は、実施の形態5に係るガス排出用構造体100における連通部材120の断面図である。本実施形態において、連通部材120の排出管側の端部125は湾曲するように形成されており、排出管110の開口部112aが形成される面(対向面Fuでもよい)には、連通部材120の排出管側の端部125に沿った湾曲面F1が形成されている。
【0099】
これにより、ガス排出弁11fからのガス発生時に、排出管側の端部125が排出管110の開口部112aが形成される面に向けてさらに移動し、排出管側の端部125が湾曲面F1に押し当てられた際、互いの接触面積を大きくできて、連通部材120と排出管110との密着性を高めることができる。また、連通部材120の外側に向かう変位を抑制できる。なお、このような湾曲面F1は、例えば、厚みの大きい底板112(
図3)を加工することにより形成できる。
【0100】
(実施の形態6)
図12は、実施の形態6に係るガス排出用構造体100における連通部材120の斜視図である。本実施形態においては、複数の連通部材120が、シート状の連結部150を介してそれぞれ一体に連結されている。特に連結部150は、複数の連通部材120の排出管側の端部125を連結する。なお、本斜視図は、X軸方向における所定の位置において、三つの連通部材120をY軸に沿って切断した状態を示している。連結部150による連通部材120の連結数は任意である。
【0101】
これによれば、複数の連通部材120が一体に連結されているため、連通部材120の組み付け作業が簡単になり、複数の蓄電素子11上に連通部材120配置する作業性を向上できる。なお、連結部150は、底板112の底面に貼り付けてもよいし、底板112を省略した排出管110の底部に直接貼り付けてもよい。
【0102】
(実施の形態7)
図13は、実施の形態7に係るガス排出用構造体100における連通部材120の斜視図である。本実施形態においても、実施の形態6と同様に、複数の連通部材120が、シート状の連結部150を介してそれぞれ一体に連結されている。実施の形態11とは異なり、連結部150は、連通部材120の軸方向において、外側膨出部126の最外周面126aと排出管側の端部125との間、且つ、外側膨出部126の最外周面126a及び排出管側の端部125から離れた位置で、外側膨出部126に接続される。
【0103】
これによれば、ガス排出弁11fからのガス発生時に、排出管側の端部125が変形して、排出管110の開口部112aが形成される面と十分に接触でき、連通部材120と排出管110との密着性をより高めることができる。
【0104】
図14Aは、実施の形態7に係るガス排出用構造体100における連通部材の断面図であって、ガス排出用構造体100の蓄電装置10への固定前の状態における断面図である。一方、
図14Bは、ガス排出用構造体100の蓄電装置10への固定後の状態における断面図である。
【0105】
上述したように、ガス排出用構造体100は、蓄電装置10に対して、ビス13a、13bなどの締結具を用いて固定される。締結具の締結に伴い、連通部材120は軸方向(Z軸方向)に圧縮される。また、蓄電素子11のガス排出弁が11f形成される面と排出管110の開口部112aが形成される面との間の距離が、距離D1から距離D2へと減少する(D1>D2)。
【0106】
本実施形態においては、連結部150が、外側膨出部126の最外周面126a及び排出管側の端部125から離れた位置で、外側膨出部126に接続されている。よって、排出管側の端部125が、連結部150よりも排出管110の開口部112aが形成される面に近い位置にある。これにより、連通部材120が軸方向に圧縮された際、連結部150から軸方向外側に突出した部位が変形することで、連通部材120と排出管110との間の密着性が高められ、且つ、蓄電素子11との間の密着性をより高めることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 蓄電ユニット
10 蓄電装置
11 蓄電素子
11a 容器
11b 正極端子
11c 負極端子
11d 電極面
11e 蓋板
11f ガス排出弁
13a,13b ビス
14 補強板
18 外装体
19 エンドプレート
100 ガス排出用構造体
101 排出経路
110 排出管
111 筒状体
112 底板
112a 開口部
114 端部側壁
115 鍔部
116 突出部
117 タブ
120 連通部材
120a 貫通路
121 直線部
122 曲線部
123 環状凹部
124 蓄電素子側の端部
124a 端部内壁面
125 排出管側の端部
126 外側膨出部
126a 最外周面
127 平坦面
128 先端領域
129 第1の湾曲部(湾曲部)
131 外層樹脂
132 本体部インサート
132b 固定部
150 連結部
1201 内側膨出部
1210 第2の湾曲部(湾曲部)
Fu,Fd 対向面
F1 湾曲面
G 隙間