(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146408
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ガス排出用構造体及び蓄電ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 50/35 20210101AFI20241004BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20241004BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20241004BHJP
H01M 50/209 20210101ALN20241004BHJP
【FI】
H01M50/35 101
H01M50/35 201
H01M50/342 101
H01M50/204 101
H01M50/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059274
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119552
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 公秀
(72)【発明者】
【氏名】國枝 雅文
(72)【発明者】
【氏名】向山 健司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 黎奈
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅也
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H012BB02
5H012BB08
5H012CC08
5H040AA03
5H040AT02
5H040AY08
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】蓄電ユニットにおいて、各部材に発生する寸法公差の影響を抑制し、密封されたガスの排出経路を確保する。
【解決手段】蓄電素子11から発生するガスを排出するために用いられるガス排出用構造体100は、排出管110と、連通部120とを有する。連通部120は、排出管110の開口部112aに接続され、開口部112aから各蓄電素子11のガス排出弁11f側に向けて延在する第一連通部材121と、第一連通部材121と同軸で且つ径方向に重なり合う重なり部125を有して配置された第二連通部材122と、第一連通部材121と第二連通部材122との間の径方向隙間を封止する変形可能な密封部材123と、を備える。第二連通部材122の一端部は、蓄電装置10に接して配置され、第二連通部材122の他端部122bは、密封部材123が摺動して第一連通部材121に対して軸方向への相対移動が可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれガス排出弁を有する複数の蓄電素子が、前記ガス排出弁をそれぞれ同一方向に向く姿勢で積層された蓄電装置に設けられ、前記蓄電素子から発生するガスを排出するために用いられるガス排出用構造体であって、
前記複数の蓄電素子の各々の前記ガス排出弁と対応する複数の開口部を有し、前記ガス排出弁からのガスを外部に排出するための排出管と、
前記排出管の前記複数の開口部をそれぞれ囲って設けられ、前記ガス排出弁から前記排出管までの前記ガスの排出経路を連通させて形成する複数の連通部と、
を具備し、
前記連通部は、
前記排出管の前記開口部に接続され、前記開口部から前記各蓄電素子のガス排出弁側に向けて延在する管状の第一連通部材と、
前記第一連通部材と同軸で且つ径方向に重なり合う重なり部を有して配置された管状の第二連通部材と、
前記重なり部に配置され、前記ガスの排出経路と繋がる前記第一連通部材と前記第二連通部材との間の径方向隙間を封止する変形可能な密封部材と、
を備え、
前記第二連通部材の一端部は、前記蓄電装置に接して配置され、前記第二連通部材の他端部は、前記密封部材が摺動して前記第一連通部材に対して軸方向への相対移動が可能である、
ガス排出用構造体。
【請求項2】
前記密封部材は、前記摺動により弾性変形する弾性体である、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項3】
前記第一連通部材は、弾性材料を含んで構成される、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項4】
前記排出管と前記第一連通部材とは一体成型されている、請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項5】
前記第一連通部材及び前記第二連通部材の少なくともいずれか一方は、いずれか他方と対向する周面に前記密封部材を収容する環状溝を備える、請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項6】
前記第一連通部材は、前記第二連通部材の径方向外側に配置され、
前記環状溝は、前記第二連通部材の外周面に形成されている、請求項5に記載のガス排出用構造体。
【請求項7】
前記第二連通部材は、前記第一連通部材の径方向外側に配置され、
前記環状溝は、前記第一連通部材の外周面に形成されている、請求項5に記載のガス排出用構造体。
【請求項8】
前記密封部材は、前記環状溝に収容され、且つ前記環状溝が形成された前記第一連通部材及び前記第二連通部材のいずれか一方の周面から径方向に突出するとともに、前記第一連通部材及び前記第二連通部材のいずれか他方の周面に当接する、
請求項5に記載のガス排出用構造体。
【請求項9】
前記第二連通部材の蓄電素子側の端部は、径方向内向きに突出する内向き突出部を有する、
請求項1に記載のガス排出用構造体。
【請求項10】
それぞれガス排出弁を有し、前記各ガス排出弁が同一方向に向く姿勢で積層された複数の前記蓄電素子を有する蓄電装置と、
請求項1から9のいずれか1項に記載のガス排出用構造体と、
を備える蓄電ユニット。
【請求項11】
前記第二連通部材は、前記蓄電素子に前記密封部材を介して押し付けられて接している、
請求項10に記載の蓄電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス排出用構造体及び蓄電ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス排出弁を安全弁として設けた複数の蓄電素子を、所定の方向に配列して形成した蓄電装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この蓄電装置には、各蓄電素子のガス排出弁から放出されるガスの排出流路を形成する排気部材が取り付けられている。排気部材には、ガス排出弁から排出されたガスを排気部材内に導入するための開口部が形成され、排気部材の流路の先端部から、ガス排出弁からのガス、及びガスと共に放出される電解液等が排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-277735号公報
【特許文献2】特許第6017539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス排出弁から排出されたガスが漏洩するのを防ぐため、排気部材を各蓄電素子に正確に取り付け、可能な限り隙間の発生を抑制する必要がある。しかしながら、各蓄電素子の間には、製造時に発生する寸法公差が不可避的に生ずるため、排気部材との距離が相対的に異なることとなる。よって、排気部材を各蓄電素子に取り付けても、蓄電素子毎に排気部材との接触の程度が異なり、全ての蓄電素子との間でガスの漏洩を十分に防止し得る状態を達成することは容易ではない。
【0005】
また、排気部材は、開口部から各蓄電素子に延びる複数の連通部を介して各蓄電素子と接続される。複数の連通部の間にも、製造時に発生する寸法公差が不可避的に生ずるため、上述した問題が生じ得る。
【0006】
このように、蓄電素子、連通部などの各部材に発生する寸法公差は、円滑なガスの排気を達成するためにできるだけその影響を取り除くことが望ましい。
【0007】
本発明は、各部材に発生する寸法公差の影響を抑制し、密封されたガスの排出経路を確保し得るガス排出用構造体及び蓄電ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、
それぞれガス排出弁を有する複数の蓄電素子が、前記ガス排出弁をそれぞれ同一方向に向く姿勢で積層された蓄電装置に設けられ、前記蓄電素子から発生するガスを排出するために用いられるガス排出用構造体であって、
前記複数の蓄電素子の各々の前記ガス排出弁と対応する複数の開口部を有し、前記ガス排出弁からのガスを外部に排出するための排出管と、
前記排出管の前記複数の開口部をそれぞれ囲って設けられ、前記ガス排出弁から前記排出管までの前記ガスの排出経路を連通させて形成する複数の連通部と、
を具備し、
前記連通部は、
前記排出管の前記開口部に接続され、前記開口部から前記各蓄電素子のガス排出弁側に向けて延在する管状の第一連通部材と、
前記第一連通部材と同軸で且つ径方向に重なり合う重なり部を有して配置された管状の第二連通部材と、
前記重なり部に配置され、前記ガスの排出経路と繋がる前記第一連通部材と前記第二連通部材との間の径方向隙間を封止する変形可能な密封部材と、
を備え、
前記第二連通部材の一端部は、前記蓄電装置に接して配置され、前記第二連通部材の他端部は、前記密封部材が摺動して前記第一連通部材に対して軸方向への相対移動が可能である、
ガス排出用構造体である。
【0009】
上記(1)の態様によれば、密封部材が摺動することによって第一連通部材と第二連通部材とが相対移動可能な状態で、第二連通部材が蓄電装置に接することにより、第一連通部材と第二連通部材に形成される密封されたガスの排出経路を確保しつつ、蓄電素子及びガス排出用構造体の製造時に発生する寸法公差を吸収できる。
【0010】
(2)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記密封部材は、前記摺動により弾性変形する弾性体である、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0011】
上記(2)の態様によれば、密封部材が弾性体により構成されるため、第一連通部材と第二連通部材との相対移動を、密封部材の弾性変形により密封性を維持しつつ行える。
【0012】
(3)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記第一連通部材は、弾性材料を含んで構成される、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0013】
上記(3)の態様によれば、第一連通部材が弾性材料を含んで構成されるため、振動などの外力によって第一連通部材に軸方向移動が生じ、蓄電素子との接触(衝突)が繰り返されても、第一連通部材の弾性材料が弾性変形して、蓄電素子への衝突力が軽減される。これにより、蓄電素子の不具合の発生を抑制できる。
【0014】
(4)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記排出管と前記第一連通部材とは一体成型されている、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0015】
上記(4)の態様によれば、排出管と第一連通部材が一体成型されているため、排出管と第一連通部材との接続部からガスが漏れるのを抑制できる。
【0016】
(5)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記第一連通部材及び前記第二連通部材の少なくともいずれか一方は、いずれか他方と対向する周面に前記密封部材を収容する環状溝を備える、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0017】
上記(5)の態様によれば、第一連通部材と第二連通部材のいずれか一方に密封部材を収容する環状溝が形成されているため、第一連通部材と第二連通部材とが相対移動しても、密封部材の位置ずれが抑制され、密封性を安定して維持できる。
【0018】
(6)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記第一連通部材は、前記第二連通部材の径方向外側に配置され、前記環状溝は、前記第二連通部材の外周面に形成されている、(5)に記載のガス排出用構造体である。
【0019】
上記(6)の態様によれば、環状溝を第二連通部材の外周面に配置するため、環状溝の加工が容易となる。
【0020】
(7)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記第二連通部材は、前記第一連通部材の径方向外側に配置され、前記環状溝は、前記第一連通部材の外周面に形成されている、(5)に記載のガス排出用構造体である。
【0021】
上記(7)の態様によれば、環状溝を第一連通部材の外周面に配置するため、環状溝の加工が容易となる。
【0022】
(8)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記密封部材は、前記環状溝に収容され、且つ前記環状溝が形成された前記第一連通部材及び前記第二連通部材のいずれか一方の周面から径方向に突出するとともに、前記第一連通部材及び前記第二連通部材のいずれか他方の周面に当接する、(5)に記載のガス排出用構造体である。
【0023】
上記(8)の態様によれば、密封部材が環状溝から径方向に突出して配置されるため、第一連通部材と第二連通部材との間の径方向隙間の密封性を高め、この径方向隙間からのガス漏れを抑制できる。
【0024】
(9)本発明の一態様に係るガス排出用構造体は、前記第二連通部材の蓄電素子側の一端部は、径方向内向きに突出する内向き突出部を有する、(1)に記載のガス排出用構造体である。
【0025】
上記(9)の態様によれば、内向き突出部により蓄電素子との接触面積を増加できるため、第二連通部材と蓄電素子との密着性を高められ、ガス排出弁からのガスが排出経路外へ漏れることを抑制できる。
【0026】
(10)本発明の一態様に係る蓄電ユニットは、
それぞれガス排出弁を有し、前記各ガス排出弁が同一方向に向く姿勢で積層された複数の前記蓄電素子を有する蓄電装置と、
請求項1から9のいずれか1項に記載のガス排出用構造体と、
を備える蓄電ユニットである。
【0027】
上記(10)の態様によれば、第一連通部材と第二連通部材とが相対的移動することにより、第一連通部材と第二連通部材に形成される密封されたガスの排出経路を確保しつつ、蓄電素子及びガス排出用部材の製造時に発生する寸法公差を吸収できる。
【0028】
(11)本発明の一態様に係る蓄電ユニットは、前記第二連通部材は、前記蓄電素子に前記密封部材を介して押し付けられて接している、(10)に記載の蓄電ユニットである。
【0029】
上記(11)の態様によれば、第二連通部材が蓄電素子に押付けられて接しているため、第二連通部材と蓄電素子との密着性が高められ、ガス排出弁からのガスが排出経路外へ漏れることを抑制できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、蓄電ユニットにおいて、各部材に発生する寸法公差の影響を抑制し、密封されたガスの排出経路を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る蓄電ユニットの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、蓄電ユニットを分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係るガス排出用構造体の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のIV-IV線に沿った部分の一部の断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係る蓄電ユニットにおいて、
図1のIV-IV線に沿った部分に相当する部分の一部の断面図である。
【
図7】
図7は、変形例1に係る連通部の断面図である。
【
図8】
図8は、変形例2に係る連通部の断面図である。
【
図9】
図9は、変形例3に係る連通部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係るガス排出用構造体及び蓄電ユニットについて説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0033】
図1は、実施の形態1に係る蓄電ユニット1の外観を示す斜視図である。以下の説明及び図面において、蓄電ユニット1が備える複数の蓄電素子11の並び方向を長手方向、Y軸方向と定義し、鉛直方向である蓄電ユニット1の高さ方向をZ軸方向と定義する。また、Z軸方向及びY軸方向に直交する方向を幅方向、X軸方向と定義する。
【0034】
また、以下の説明において、例えば、Z軸プラス方向とは、上向きの方向であり、Z軸マイナス方向とは、Z軸プラス方向と反対の下向きの方向である。X軸方向及びY軸方向についても同様に、軸に沿った一方の向きをプラス方向、他方の向きをマイナス方向と定義する。また、平行及び直交等の、相対的な方向又は姿勢を示す表現は、厳密には、その方向又は姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0035】
(実施の形態1)
本実施の形態におけるガス排出用構造体(ガス排気部材)100及びこのガス排出用構造体100を用いた蓄電ユニット1の構成について説明する。
【0036】
蓄電ユニット1は、外部から供給された電気を充電し、また外部へ電気を放電できる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。例えば、蓄電ユニット1は、電力貯蔵用途又は電源用途等に使用される。具体的には、蓄電ユニット1は、例えば、家庭用又は産業用の蓄電設備等に使用される定置用のバッテリ等として使用される。また、蓄電ユニット1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、又は電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用又はエンジン始動用等のバッテリ等として使用できる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。
【0037】
図2は、実施の形態1に係る蓄電ユニット1を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
図1及び
図2に示すように、蓄電ユニット1は、蓄電装置10と、ガス排出用構造体100と、を備える。蓄電装置10は、扁平な略直方体形状を有する複数の電池モジュール(組電池)を、Y軸方向に沿って配列させた長尺状の形状を有する。具体的には、蓄電装置10は、Y軸方向に並べられて一体にされた複数の蓄電素子11と、複数の蓄電素子11を収容する外装体18とを含む。また、蓄電装置10は、図示しないケーブル、検出線等の電線、バスバー等を含んでもよい。また、蓄電装置10は、複数の蓄電素子11を拘束する拘束部材(エンドプレート19等)を更に有していてもよい。
【0038】
ここで、上記した蓄電素子11のZX平面に平行な面を「長側面」、YZ平面に平行な面を「短側面」と呼ぶ。つまり、蓄電装置10は、複数の蓄電素子11の長側面同士が対向するように配列され、各短側面が同じ向きに配置されている。
【0039】
蓄電素子11は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。なお、蓄電素子11は、二次電池には限定されず、一次電池やキャパシタであってもよい。蓄電素子11は、扁平な直方体状の形状を有する金属製の容器11aを備える。容器11aには、電極端子である正極端子11b及び負極端子11cが、それぞれ周囲と絶縁された状態で同じ面内に配置される。ここで、正極端子11b及び負極端子11cが配置される面を電極面11dという。正極端子11bと負極端子11cとは、電極面11dの一方の端部と他方の端部に離れて配置される。電極面11dの正極端子11b及び負極端子11cの間には、容器11a内の圧力上昇時にガスを排出して圧力を開放するガス排出弁11fが設けられる。ガス排出弁11fは、容器11a内の規定圧以上の圧力上昇時に、容器11a内のガスを排出して圧力を開放することによって、蓄電装置10の安全性を保っている。
【0040】
また、複数の蓄電素子11は、それぞれのガス排出弁11fが同一の方向(
図1のZ軸プラス方向)を向く姿勢で配列されている。また、複数の蓄電素子11は、長側面を
図1のY方向に積層して、配列されている。容器11aの電極面11dには、電解液を注液するための注液部等が設けられていてもよい。また、容器11aの内部には、蓄電要素又は発電要素である電極体と、正極集電体及び負極集電体を含む集電体等が配置され、電解液(非水電解質)等が封入されている。蓄電素子11の内部構造については公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。蓄電素子11の構成は上記例に限らず、他の形態であってもよい。
【0041】
正極端子11b及び負極端子11cは、容器11aの電極面11dから外側(
図1のZ軸プラス方向)に向けて突出して配置される。そして、各蓄電素子11は、適宜なバスバー(不図示)等を介して電気的にそれぞれ接続されており、バスバーは不図示のケーブルに接続される。これにより、蓄電装置10が、外部から供給される電気を充電し、また、充電した電気を外部へ放電できる。
【0042】
外装体18は、蓄電装置10を収容する矩形の箱状の筐体(モジュールケース)である。つまり、外装体18は、蓄電装置10の外側を覆って設けられ、蓄電装置10を含む各部を所定の位置で固定することで収容物を衝撃等から保護する。外装体18は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板等の金属製の部材により形成されるが、特にその材料は限定されない。
【0043】
ガス排出用構造体100は、排出管110と複数の連通部120とを有し、各蓄電素子11のガス排出弁11fから発生するガスを外部に排出するために使用される。複数の連通部120は、排出管110と蓄電装置10との間に挟持される。本実施形態においては、複数の連通部120は、シート状の連結部140を介してそれぞれ一体に連結されている。
【0044】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、ガス排出用構造体100は、蓄電装置10に対向して配置され、蓄電装置10に対して締結具を用いて固定される。具体的には、ガス排出用構造体100の排出管110の長手方向(Y方向)の両端部が、連結部140及び複数の連通部120を挟んだ状態で、ビス13aを用いて外装体18に固定される。また、ガス排出用構造体100の長手方向の中央部が、蓄電素子11の並びの中央位置に介装された補強板14に固定されてもよい。
【0045】
図3は、実施の形態1に係るガス排出用構造体100の斜視図である。
図4は、
図1のIV-IV線に沿った部分の一部の断面図である。なお、
図4において、各部材のY軸方向及びZ軸方向の寸法は、
図1~
図3に比べて正確ではない。例えば、蓄電素子11間には、隣接する蓄電素子11同士の短絡を防止するセパレータ15が描かれているが、セパレータ15のY軸方向の厚みは誇張されている。
【0046】
図3に示すように、ガス排出用構造体100及び排出管110の形状は、蓄電素子11の並び方向(Y軸方向)に連続して延びる長尺状である。
図3及び
図4に示すように、排出管110は、有底の筒状体111を有する。筒状体111は、蓄電装置10に対向する側に底部112を有している。筒状体111は、インサート成形品で構成され、
図4に示すように、本体部インサート132と、本体部インサート132を覆う外層樹脂131とを有する。
【0047】
また、筒状体111は、一対の鍔部115と突出部116とを有する。鍔部115は、幅方向(X軸方向)の端部に形成された一対の側壁114から、筒状体111の幅方向(X軸方向)中央に向けて延びて形成される。
【0048】
突出部116は、一対の鍔部115の筒状体111の幅方向中央側の端部から、蓄電装置10が位置する側の反対方向(Z軸プラス方向)に向けて突出して形成される。突出部116は、幅方向(X軸方向)の幅を突出先端側ほど狭くするように傾斜している。これにより、突出部116は、底部112の底面113から離れるにつれて先細りするテーパー形状となる。突出部116と底部112とに囲まれた排出経路101は、断面形状が台形であり、十分な排気容量が確保される。
【0049】
上記した筒状体111は、例えば、樹脂を射出する金型にあらかじめ本体部インサート132をセットしておき、樹脂を金型に射出して外層樹脂131を形成することにより製造できる。ただし、排出管110の製造方法は、上記方法には限定されない。
【0050】
また、底部112は、連通部120を介して蓄電装置10に対向して設けられ、複数のガス排出弁11fに対応した複数の開口部112aが形成されている。底部112と蓄電装置10との間に介装される連通部120には、開口部112aに対応して貫通路120aが設けられている。貫通路120aは、排出経路101の一部を形成する。
【0051】
筒状体111の突出部116の内部空間は、底部112の開口部112a及び連通部120の貫通路120aに連通されて、ガス排出弁11fから排出されるガスを外部に排出する排出経路101を画定する。これにより、蓄電素子11からガス排出弁11fを介して排出されたガスは、連通部120の貫通路120a、底部112の開口部112aを通して排出経路101に進入する。さらに排出経路101に進入したガスは、
図3に示す排出経路101の一端に設けられた排出パイプ150に向けて流れ、排出パイプ150を介して外部の接続管等の外部排出経路に排出される。
【0052】
外層樹脂131は、筒状体111の底部112と、底部112から突出した突出部116の外側面と内側面に形成されている。底部112及び突出部116の内側面に形成される外層樹脂131は、蓄電素子11から排出される高温のガスの排出経路101の表面を形成する。そのため、外層樹脂131は耐熱性の高い樹脂から形成される。
【0053】
外層樹脂131は、例えば耐熱性の高い樹脂材料であるポリフェニレンスルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)で形成してもよい。本体部インサート132は例えば金属製であり、突出部116の芯体を構成する。本体部インサート132は、排出管110に必要な剛性が付与されるとともに、その長手方向(Y軸方向)の両端部には、外装体18と接続する固定部132bが設けられている。
【0054】
なお、上記した外層樹脂131は、本体部インサート132の外側面及び内側面を覆っているが、内側面には設けずに本体部インサート132の内側面を露出させた構成にしてもよい。
【0055】
図3に示すように、鍔部115と突出部116とは、蓄電素子11の並び方向(Y軸方向)に沿って連続した表面を有して形成されている。また、鍔部115と突出部116は、X軸方向に沿って階段形状を有するが、鍔部115と突出部116との間には隙間がなく、連続した表面で繋がっている。
【0056】
図1及び
図2に示すように、外装体18は、長手方向(Y軸方向)の両端部にエンドプレート19を備える。エンドプレート19は外装体18の剛性を高めるとともに、ガス排出用構造体100との連結に用いられる。
【0057】
ガス排出用構造体100に含まれる本体部インサート132は、
図4に示す長尺状本体132aと、固定部132bとを有する。長尺状本体132aは、本体部インサート132の主要部分を構成する。固定部132bは、ガス排出用構造体100をエンドプレート19に固定するための平板状の部分である。固定部132bは、外層樹脂131から露出されている。上記した固定部132bは、長尺状本体132aの一端側とその反対の他端側とに設けられる。
【0058】
また、
図2及び
図3に示すように、排出管110の長手方向の中央部に、ビス孔を有するタブ117を設け、蓄電素子11の並び方向(Y軸方向)の中間位置に、ビス固定孔を有する補強板14を配置してもよい。この構成によれば、ビス13bを用いてタブ117を補強板14に固定でき、排出管110に生じる撓みを軽減できる。よって、排出管110と蓄電素子11との間に設けられる連通部120がより均等に圧縮されて、密封性が向上する。
【0059】
上述したように、排出管110は、複数の蓄電素子11の各々のガス排出弁11fと対応する複数の開口部112aを有し、ガス排出弁11fから排出されて連通部120を通過したガスを外部に排出する。連通部120は、
図4に示すように、排出管110の底部112と複数の蓄電素子11との間に設けられる。連通部120は、蓄電素子11のガス排出弁11f及び排出管110の開口部112aの双方に連通する貫通路120aを有する。連通部120は、排出管110と蓄電装置10(蓄電素子11)との間でガスの排出経路を確保する部材である。具体的に複数の連通部120は、排出管110の複数の開口部112aをそれぞれ囲って設けられ、ガス排出弁11fから排出管110までのガスの排出経路を連通させて形成する。
【0060】
なお、上述したように本実施形態においては、複数の連通部120は、シート状の連結部140を介してそれぞれ一体に連結されている。連結部140は排出管110に対し、接着部141を介して接着されている。これにより、複数の連通部120が一体に連結されているため、連通部120の組み付け作業が簡単になり、複数の蓄電素子11上に連通部120を作業性よく配置できる。ただし、連結部140は必須ではなく、各連通部120が適切に蓄電素子11と排出管110との間に配置されていればよい。
【0061】
連通部120は、第一連通部材121と、第二連通部材122と、密封部材123と、を備えている。第一連通部材121は、排出管110の開口部112aに接続され、開口部112aから各蓄電素子11のガス排出弁11f側に向けて延在する管状の部材である。具体的に、第一連通部材121は、排出管110の側の端部に、径方向外側に突出する鍔部121aを有する。一方、連結部140には鍔部121aに対応する位置に段差140aが形成されており、鍔部121aと段差140aが係合している。第二連通部材122は、第一連通部材121と同軸で且つ径方向に重なり合う重なり部125を有して配置された管状部材である。密封部材123は、重なり部125に配置され、ガスの排出経路101と繋がる第一連通部材121と第二連通部材122との間の径方向隙間を封止する変形可能な部材である。
【0062】
そして、第二連通部材122の一端部122aは、蓄電素子11に接して配置され、第二連通部材122の他端部122bは、密封部材123が摺動して第一連通部材121に対して軸方向、すなわちZ軸方向への相対移動が可能である。
【0063】
一般的に、各蓄電素子11の間には製造時に発生する寸法公差が不可避的に生ずる。本例では、
図4に示すように、隣接した蓄電素子11の間に、製造時に発生する寸法公差D、本例では第一連通部材121と第二連通部材122の軸方向(Z軸方向、高さ方向)の寸法公差が生じてしまっている(寸法公差Dは誇張して描かれている)。このような場合、各蓄電素子11と排出管110との距離が相対的に異なることとなるため、たとえガス排出用構造体100を各蓄電素子11に取り付けても、蓄電素子11毎にガス排出用構造体100との接触の程度が異なることとなり、全ての蓄電素子11との間でガスの漏洩を十分に防止し得る状態を達成することは容易ではない。
【0064】
しかしながら、本実施形態によれば、密封部材123が摺動することによって第一連通部材121と第二連通部材122とが相対移動可能な状態で、第二連通部材122が蓄電素子11に接する。これにより、第一連通部材121と第二連通部材122に形成される密封されたガスの排出経路101を確保しつつ、蓄電素子11の製造時に発生する寸法公差Dを吸収できる。
【0065】
本例では、蓄電素子11の製造時に発生する寸法公差について説明した。しかしながら、このような寸法公差は、複数の連通部120各々の間にも生じ得る。本実施形態においては、密封部材123が摺動することによって、連通部120各々の間に生ずる製造公差をも吸収できる。
【0066】
密封部材123は、摺動により弾性変形する弾性体により構成することが好ましい。密封部材123が弾性体により構成されると、第一連通部材121と第二連通部材122との相対移動を、密封部材123の弾性変形により密封性を維持しつつ行うことができる。
【0067】
また、第一連通部材121は、弾性材料を含んで構成されることが好ましい。第一連通部材121が弾性材料を含んで構成されると、振動などの外力によって第一連通部材121に軸方向(Z軸方向)移動が生じ、蓄電素子11との接触(衝突)が繰り返されても、第一連通部材121の弾性材料が弾性変形して、蓄電素子11への衝突力が軽減される。これにより、蓄電素子11の不具合の発生を抑制できる。
【0068】
なお、密封部材123は、第一連通部材121の弾性材料よりもヤング率が大きい弾性体により構成されることが好ましい。これによると、第一連通部材121が蓄電素子11側に移動して蓄電素子11に衝突した際に、密封部材123よりも第一連通部材121が変形しやすいため第一連通部材121によって衝撃が吸収される。これにより、蓄電素子11及び第二連通部材122に繋がるガス排出用構造体100に不具合が発生することを抑制できる。
【0069】
さらに本実施形態においては、第一連通部材121及び第二連通部材122の少なくともいずれか一方は、いずれか他方と対向する周面に密封部材123を収容する環状溝126を備えている。第一連通部材121と第二連通部材122のいずれか一方に密封部材123を収容する環状溝126を形成することにより、第一連通部材121と第二連通部材122とが相対移動しても、密封部材123の位置ずれが抑制され、密封性を安定して維持できる。
図4においては、第二連通部材122に環状溝126が形成されている。
【0070】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係る蓄電ユニット1において、
図1のIV-IV線に沿った部分に相当する部分の一部の断面図である。本実施形態においては、排出管110と第一連通部材121とが一体成型されている。連結部140は設けられていない。これによれば、排出管110と第一連通部材121が一体成型されているため、排出管110と第一連通部材121との接続部からガスが漏れるのを抑制できる。
【0071】
図6は、
図4及び
図5のB領域における連通部120の断面図である。第二連通部材122は、第一連通部材121の径方向外側に配置され、環状溝126は、第二連通部材122の内周面に形成されている。
【0072】
密封部材123は環状溝126に収容され、且つ環状溝126が形成された第一連通部材121及び第二連通部材122のいずれか一方(本例では第二連通部材122)の周面から径方向(Y軸方向)に突出するとともに、第一連通部材121及び第二連通部材122のいずれか他方(本例では第一連通部材121)の周面に当接する。密封部材123が環状溝126から径方向に突出して配置されるため、第一連通部材121と第二連通部材122との間の径方向隙間の密封性を高め、この径方向隙間からのガス漏れを抑制できる。
【0073】
(連通部の変形例)
図7は、変形例1に係る連通部120の断面図である。本変形例では、第一連通部材121が、第二連通部材122の径方向外側に配置され、環状溝126は、第二連通部材122の外周面に形成されている。環状溝126を第二連通部材122の外周面に配置するため、環状溝126の加工が容易となる。
【0074】
図8は、変形例2に係る連通部120の断面図である。本変形例では、第一連通部材121が、第二連通部材122の径方向外側に配置され、環状溝126は、第一連通部材121の内周面に形成されている。
【0075】
図9は、変形例3に係る連通部120の断面図である。本変形例では、第二連通部材122が、第一連通部材121の径方向外側に配置され、環状溝126は、第一連通部材121の外周面に形成されている。環状溝126を第一連通部材121の外周面に配置するため、環状溝126の加工が容易となる。
【0076】
また、第二連通部材122の蓄電素子11側の一端部122aは、径方向内向きに突出する内向き突出部122cを有している。内向き突出部122cにより蓄電素子11との接触面積を増加できるため、第二連通部材122と蓄電素子11との密着性を高められ、ガス排出弁11fからのガスが排出経路外へ漏れることを抑制できる。なお、このような内向き突出部122cの存在に伴う密着性の向上は、ガス排出弁11fからのガス排出時のガス圧力、すなわち、連通部120の内圧(貫通路120aまたは排出経路101の圧力)と連通部120の外圧の圧力差によりもたらされるものである。
【0077】
上述したように、蓄電ユニット1は、それぞれガス排出弁11fを有し、各ガス排出弁11fが同一方向に向く姿勢で積層された複数の蓄電素子11を有する蓄電装置10と、ガス排出用構造体100と、を備える。これにより、第一連通部材121と第二連通部材122とが相対的移動することにより、第一連通部材121と第二連通部材122に形成される密封されたガスの排出経路101を確保しつつ、蓄電素子11及びガス排出用構造体100の製造時に発生する寸法公差を吸収できる。
【0078】
また、蓄電ユニット1において、第二連通部材122は、蓄電素子11に密封部材123を介して押し付けられて接している。第二連通部材122が蓄電素子11に押付けられて接しているため、第二連通部材122と蓄電素子11との密着性が高められ、ガス排出弁11fからのガスが排出経路外へ漏れることを抑制できる。
【符号の説明】
【0079】
1 蓄電ユニット
10 蓄電装置
11 蓄電素子
11a 容器
11b 正極端子
11c 負極端子
11d 電極面
11f ガス排出弁
13a,13b ビス
14 補強板
15 セパレータ
18 外装体
19 エンドプレート
100 ガス排出用構造体
101 排出経路
110 排出管
111 筒状体
112 底部
112a 開口部
113 底面
114 側壁
115 鍔部
116 突出部
117 タブ
120 連通部
120a 貫通路
121 第一連通部材
122 第二連通部材
122a 一端部
122b 他端部
122c 内向き突出部
123 密封部材
125 重なり部
126 環状溝
131 外層樹脂
132 本体部インサート
132a 長尺状本体
132b 固定部
140 連結部
150 排出パイプ