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特開2024-146411活性炭の酸化剤分解性能評価方法、活性炭の酸化剤分解性能評価装置、造水方法及び造水装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146411
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】活性炭の酸化剤分解性能評価方法、活性炭の酸化剤分解性能評価装置、造水方法及び造水装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20230101AFI20241004BHJP
【FI】
C02F1/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059278
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】野宮 高由
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小林 琢也
【テーマコード(参考)】
4D624
【Fターム(参考)】
4D624AA01
4D624AB11
4D624BA02
4D624CA01
4D624DA03
4D624DA04
4D624DA05
4D624DB03
4D624DB23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】活性炭の酸化剤分解性能を評価して余命を推定し、適時に活性炭を交換する造水方法及び装置を提供する。
【解決手段】活性炭が最密充填されたシャローベッド試験カラム12と、被処理水をシャローベッド試験カラムに供給する供給ラインL1と、それに設けられている流量計13と、被処理水中酸化剤濃度を測定する第1酸化剤濃度測定装置14と、シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度を測定する第2酸化剤濃度測定装置15と、第1、第2酸化剤濃度測定装置からの測定結果に基づいて、活性炭の反応速度定数と分解された酸化剤の物質量との相関関係を導出し、当該相関関係に基づいて処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、許容濃度となるまでにかかる時間を算出して活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する演算装置16と、を具備する活性炭の酸化剤分解性能評価装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤を含む被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法において、
活性炭をシャローベッド試験カラムに充填して、被処理水を通水して、当該活性炭による酸化剤の分解反応の加速試験を行い、シャローベッド試験カラムからの流出水中の酸化剤濃度を経時的に測定し、測定した酸化剤濃度の経時的変化に基づいて当該活性炭の反応速度定数及び当該活性炭が分解した酸化剤の物質量を求めて、当該活性炭の反応速度定数と当該活性炭が分解する酸化剤の物質量との相関関係を導出し、
当該相関関係に基づいて、活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、
許容濃度となるまでにかかる時間を算出して、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する
ことを特徴とする活性炭の酸化剤分解性能を評価する方法。
【請求項2】
前記加速試験は、活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラムに、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定することを含み、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を下記式1に従って算出し、
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を下記式2に従って算出し、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を下記式3に従って算出し、
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を下記式4に従って算出する
ことを特徴とする請求項1の活性炭の酸化剤分解性能評価方法。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【請求項3】
被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法において用いる活性炭の酸化剤分解性能評価装置であって、
活性炭が最密充填されているシャローベッド試験カラムと、
当該シャローベッド試験カラムに被処理水を供給する供給ラインと、
当該供給ラインに設けられている流量計と、
当該供給ラインに設けられている第1酸化剤濃度測定装置と、
当該シャローベッド試験カラムからの流出水中酸化剤濃度を測定する第2酸化剤濃度測定装置と、
当該第1酸化剤濃度測定装置及び当該第2酸化剤濃度測定装置からの測定値に基づいて活性炭の反応速度定数と活性炭により分解された酸化剤の物質量との相関関係を導出し、当該相関関係に基づいて活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、許容濃度となるまでにかかる時間を算出して活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する演算装置と、
を具備し、
当該シャローベッド試験カラムに、酸化剤水溶液を通水して、当該活性炭による酸化剤の分解反応の加速試験を行なうことを特徴とする活性炭の酸化剤分解性能評価装置。
【請求項4】
前記演算装置は、
活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラムに、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定して得た結果に基づき、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を下記式1に従って算出し、
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を下記式2に従って算出し、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を下記式3に従って算出し、
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を下記式4に従って算出する
ることを特徴とする請求項3の活性炭の酸化剤分解性能評価装置。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【請求項5】
被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法において用いる活性炭の酸化剤分解性能評価装置であって、
被処理水を貯留する貯留槽と、
活性炭を最密充填したシャローベッド試験カラムと、
当該貯留槽からの被処理水を当該シャローベッド試験カラムに供給する供給ラインと、
当該供給ラインに設けられている流量計と、
当該供給ラインに設けられている第1酸化剤濃度測定装置と、
当該シャローベッド試験カラムからの流出水を当該貯留槽に循環させる循環ラインと、
当該循環ラインに設けられているシャローベッド試験カラムからの流出水中の酸化剤濃度を測定する第2酸化剤濃度測定装置と、
当該第2酸化剤濃度測定装置からの測定値に基づいて活性炭の反応速度定数と活性炭により分解された酸化剤の物質量との相関関係を導出し、当該相関関係に基づいて活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、許容濃度となるまでにかかる時間を算出して活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する演算装置と、
を具備し、
当該シャローベッド試験カラムに、酸化剤水溶液を通水して、当該活性炭による酸化剤の分解反応の加速試験を行なうことを特徴とする活性炭の酸化剤分解性能評価装置。
【請求項6】
前記演算装置は、
活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラムに、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定して得た結果に基づき、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を下記式1に従って算出し、
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を下記式2に従って算出し、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を下記式3に従って算出し、
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を下記式4に従って算出する
ることを特徴とする請求項5の活性炭の酸化剤分解性能評価装置。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【請求項7】
酸化剤を含む被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水装置であって、
被処理水の流入部と処理水の流出部とを有し、活性炭が最密充填されている活性炭塔と、
当該活性炭塔の流入部に被処理水を流通させる供給ラインと、
当該活性炭塔の流出部からの処理水を流通させる流出ラインと、
当該供給ラインに設けられていて、当該活性炭塔の流入部に流入する被処理水の流量を測定する第1流量計と、
当該供給ラインに接続されていて、当該活性炭塔に充填されている活性炭の酸化剤分解性能を評価する活性炭の酸化剤分解性能評価装置と、を具備し、
当該活性炭の酸化剤分解性能評価装置は、
活性炭を最密充填するシャローベッド試験カラムと、
当該供給ラインに接続されていて、当該シャローベッド試験カラムに被処理水を流通させる試験用被処理水供給ラインと、
当該シャローベッド試験カラムからの流出水を流通させる試験用処理水流出ラインと、
当該試験用被処理水供給ラインに設けられていて、当該シャローベッド試験カラムに流入する被処理水の流量を測定する第2流量計と、
当該試験用被処理水供給ラインに設けられていて、当該シャローベッド試験カラムに流入する被処理水の流量を制御する流量制御手段と、
当該試験用被処理水流入ラインに設けられていて、当該シャローベッド試験カラムに流入する被処理水の酸化剤濃度を測定する第1酸化剤濃度測定装置と、
当該試験用処理水流出ラインに設けられていて、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度を測定する第2酸化剤濃度測定装置と、
当該第1流量計及び当該第2流量計からの測定結果に基づいて、当該第2流量計の流量が当該第1流量計の流量と等しくなるように当該流量制御手段を制御する流量調整部と、
当該第2流量計、当該第1酸化剤濃度測定装置、及び当該第2酸化剤濃度測定装置からの測定結果に基づいて活性炭の反応速度定数と活性炭により分解された酸化剤の物質量との相関関係を導出し、当該相関関係に基づいて活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、許容濃度となるまでにかかる時間を算出して活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する演算手段を含む活性炭性能予測部と、
を備えることを特徴とする、造水装置。
【請求項8】
前記演算装置は、
活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラムに、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定して得た結果に基づき、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を下記式1に従って算出し、
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を下記式2に従って算出し、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を下記式3に従って算出し、
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を下記式4に従って算出する
ることを特徴とする請求項7の造水装置。
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【請求項9】
酸化剤を含む被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法であって、
請求項1又は2に記載の活性炭の酸化剤分解性能評価方法を行って、活性炭塔に充填されている活性炭の余命を予測し、適時に活性炭を交換することを含むことを特徴とする造水方法。
【請求項10】
酸化剤を含む被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法であって、
当該活性炭塔から採取した活性炭をシャローベッド試験カラムに充填して、請求項1又は2に記載の活性炭の酸化剤分解性能評価方法を行って、活性炭塔に充填されている活性炭の余命を予測し、適時に活性炭を交換することを含むことを特徴とする造水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭の酸化剤分解性評価方法及び装置、並びに造水方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、井戸水等の原水を浄化処理し、飲料水として提供する造水技術が実用化されている。たとえば、アンモニアを含む原水に次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を注入して、アンモニアの分解、無機物の酸化、除菌等を施した後、砂ろ過処理を行い、次いで、砂ろ過水を活性炭に通水して処理水中の脱塩素処理を行う手法が広く用いられている。活性炭は分解性能が劣化すると十分な脱塩素処理が行えないため、定期的に活性炭を交換することが必要である。活性炭の交換時期が不適切であると、まだ使用可能な活性炭を廃棄処分することになり不経済であるばかりでなく、環境的な観点からも好ましくない。
【0003】
特開平9-141248号公報(特許文献1)には、水に互いに異なる処理を施す複数の処理槽として、活性炭により水中の不純物を除去する活性炭フィルタを備え、上記交換時期検出手段が、上記活性炭フィルタを通過した水の総量が所定値に達したとき、上記活性炭フィルタ交換時期を検出する水処理装置が開示されている。しかし、流量センサ、濁度計、電気抵抗検出器などを用いて交換時期を検出するため、装置構造が複雑であり、コストアップの要因となるなどの問題がある。
【0004】
特開2000-70925号公報(特許文献2)には、活性炭を有するろ過材を備えた浄水カートリッジの下流側に、ろ過した浄水を加熱する加熱器を配設すると共に、該加熱器の近傍に浄水を加熱することによって発生した臭気を検出するガスセンサを配設して、そのガスセンサの検出値に基づいて浄水カートリッジの寿命時期を判断することができる浄水器が開示されている。しかし、加熱器、ガスセンサなどを用いて浄水カートリッジの交換時期を検出するため、装置構造が複雑であり、温度やガスの取り扱いが面倒であるなどの問題がある。
【0005】
特開2005-279528号公報(特許文献3)には、給水ラインに活性炭濾過装置が接続され、その下流側の給水ラインに水質改質用の濾過膜部が接続されて、該濾過膜部の給水ラインに接続された流量センサからの流量検知に基づき、積算通水量を求めると共に、該積算通水量と、予め設定した所定処理水量と、を比較して、あるいは、残留塩素濃度計による濃度と通水量とに基づいて、除去残留塩素濃度を求め、積算した通水量と所定の処理水量を比較することにより、制御部によって、活性炭濾過装置の活性炭交換時期になったか否かを判断する水質改質システムが開示されている。しかし、流量検知による積算通水量、残留塩素濃度計による濃度と通水量とから求めた除去残留塩素濃度などを指標として制御を行うため、制御が複雑であり、効率的ではなく、交換時期の精度にも問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-141248号公報
【特許文献2】特開2000-70925号公報
【特許文献3】特開2005-279528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、造水装置又は造水方法における従来の活性炭の交換時期評価における問題点を解消し、複雑な装置構造を要さずに比較的簡単に、取り扱いが容易な、活性炭の劣化による交換時期を定量的指標に基づいて予測する活性炭の酸化剤分解性能評価方法及び装置並びに活性炭塔で使用中の活性炭の余命を予測する方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、活性炭の余命を予測し、適切な時期に活性炭を交換することにより、活性炭の無駄を廃することができる造水方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、シャローベッド加速試験で活性炭の反応速度定数の経時劣化と、そのときの分解された酸化剤物質量との関係を求めることにより、活性炭の余命を簡易に予測できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明によれば、酸化剤を含む被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法において、
活性炭をシャローベッド試験カラムに充填して、被処理水を通水して、当該活性炭による酸化剤の分解反応の加速試験を行い、シャローベッド試験カラムからの流出水中の酸化剤濃度を経時的に測定し、測定した酸化剤濃度の経時的変化に基づいて当該活性炭の反応速度定数及び当該活性炭が分解した酸化剤の物質量を求めて、当該活性炭の反応速度定数と当該活性炭が分解する酸化剤の物質量との相関関係を導出し、
当該相関関係に基づいて、活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、
許容濃度となるまでにかかる時間を算出して、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する
ことを特徴とする活性炭の酸化剤分解性能評価方法が提供される。
【0011】
より具体的には、前記加速試験は、活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラムに、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定することを含み、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を下記式1に従って算出し、
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を下記式2に従って算出し、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を下記式3に従って算出し、
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を下記式4に従って算出する。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0012】
また、本発明によれば、被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法において用いる活性炭の酸化剤分解性能評価装置であって、
活性炭が最密充填されているシャローベッド試験カラムと、
当該シャローベッド試験カラムに被処理水を供給する供給ラインと、
当該供給ラインに設けられている流量計と、
当該供給ラインに設けられている第1酸化剤濃度測定装置と、
当該シャローベッド試験カラムからの流出水中酸化剤濃度を測定する第2酸化剤濃度測定装置と、
当該第1酸化剤濃度測定装置及び当該第2酸化剤濃度測定装置からの測定値に基づいて活性炭の反応速度定数と活性炭により分解された酸化剤の物質量との相関関係を導出し、当該相関関係に基づいて活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、許容濃度となるまでにかかる時間を算出して活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する演算装置と、
を具備し、
当該シャローベッド試験カラムに、酸化剤水溶液を通水して、当該活性炭による酸化剤の分解反応の加速試験を行なうことを特徴とする活性炭の酸化剤分解性能評価装置が提供される。
【0013】
より具体的には、前記演算装置は、
活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラムに、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定して得た結果に基づき、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を下記式1に従って算出し、
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を下記式2に従って算出し、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を下記式3に従って算出し、
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を下記式4に従って算出する。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0014】
また、本発明によれば、被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法において用いる活性炭の酸化剤分解性能評価装置であって、
被処理水を貯留する貯留槽と、
活性炭を最密充填したシャローベッド試験カラムと、
当該貯留槽からの被処理水を当該シャローベッド試験カラムに供給する供給ラインと、
当該供給ラインに設けられている流量計と、
当該供給ラインに設けられている第1酸化剤濃度測定装置と、
当該シャローベッド試験カラムからの流出水を当該貯留槽に循環させる循環ラインと、
当該循環ラインに設けられているシャローベッド試験カラムからの流出水中の酸化剤濃度を測定する第2酸化剤濃度測定装置と、
当該第2酸化剤濃度測定装置からの測定値に基づいて活性炭の反応速度定数と活性炭により分解された酸化剤の物質量との相関関係を導出し、当該相関関係に基づいて活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、許容濃度となるまでにかかる時間を算出して活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する演算装置と、
を具備し、
当該シャローベッド試験カラムに、酸化剤水溶液を通水して、当該活性炭による酸化剤の分解反応の加速試験を行なうことを特徴とする活性炭の酸化剤分解性能評価装置が提供される。
【0015】
より具体的には、前記演算装置は、
活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラムに、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定して得た結果に基づき、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を下記式1に従って算出し、
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を下記式2に従って算出し、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を下記式3に従って算出し、
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を下記式4に従って算出する。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【0016】
さらに、本発明によれば、酸化剤を含む被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水装置であって、
被処理水の流入部と処理水の流出部とを有し、活性炭が最密充填されている活性炭塔と、
当該活性炭塔の流入部に被処理水を流通させる供給ラインと、
当該活性炭塔の流出部からの処理水を流通させる流出ラインと、
当該供給ラインに設けられていて、当該活性炭塔の流入部に流入する被処理水の流量を測定する第1流量計と、
当該供給ラインに接続されていて、当該活性炭塔に充填されている活性炭の酸化剤分解性能を評価する活性炭の酸化剤分解性能評価装置と、を具備し、
当該活性炭の酸化剤分解性能評価装置は、
活性炭を最密充填するシャローベッド試験カラムと、
当該供給ラインに接続されていて、当該シャローベッド試験カラムに被処理水を流通させる試験用被処理水供給ラインと、
当該シャローベッド試験カラムからの流出水を流通させる試験用処理水流出ラインと、
当該試験用被処理水供給ラインに設けられていて、当該シャローベッド試験カラムに流入する被処理水の流量を測定する第2流量計と、
当該試験用被処理水供給ラインに設けられていて、当該シャローベッド試験カラムに流入する被処理水の流量を制御する流量制御手段と、
当該試験用被処理水流入ラインに設けられていて、当該シャローベッド試験カラムに流入する被処理水の酸化剤濃度を測定する第1酸化剤濃度測定装置と、
当該試験用処理水流出ラインに設けられていて、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度を測定する第2酸化剤濃度測定装置と、
当該第1流量計及び当該第2流量計からの測定結果に基づいて、当該第2流量計の流量が当該第1流量計の流量と等しくなるように当該流量制御手段を制御する流量調整部と、
当該第2流量計、当該第1酸化剤濃度測定装置、及び当該第2酸化剤濃度測定装置からの測定結果に基づいて活性炭の反応速度定数と活性炭により分解された酸化剤の物質量との相関関係を導出し、当該相関関係に基づいて活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、許容濃度となるまでにかかる時間を算出して活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する演算手段を含む活性炭性能予測部と、
を備えることを特徴とする造水装置が提供される。
【0017】
より具体的には、前記演算装置は、
活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラムに、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定して得た結果に基づき、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を下記式1に従って算出し、
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を下記式2に従って算出し、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を下記式3に従って算出し、
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を下記式4に従って算出する。
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【0018】
また、本発明によれば、酸化剤を含む被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法であって、
上記活性炭の酸化剤分解性能評価方法を行って、活性炭塔に充填されている活性炭の余命を予測し、適時に活性炭を交換することを含むことを特徴とする造水方法が提供される。
【0019】
さらに、本発明によれば、酸化剤を含む被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法であって、
当該活性炭塔から採取した活性炭をシャローベッド試験カラムに充填して、上記活性炭の酸化剤分解性能評価方法を行って、活性炭塔に充填されている活性炭の余命を予測し、適時に活性炭を交換することを含むことを特徴とする造水方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の活性炭の酸化剤分解性能評価方法及び装置によれば、複雑な装置構成を必要とせず、比較的簡単な方法で、活性炭の交換時期の予測が可能となる。
【0021】
さらに、本発明の造水方法及び装置によれば、複雑な装置構成を必要とせず、比較的簡単な方法で、活性炭の交換時期の予測が可能で、適切な時期に活性炭を交換することができ、活性炭の無駄を廃して、効率よく造水することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の活性炭の酸化剤分解性能評価装置の概要を示す概略説明図。
図2】シャローベッド試験カラムを用いる活性炭の酸化剤分解性能評価方法のフローチャート(その1)。
図3】シャローベッド試験カラムを用いる活性炭の酸化剤分解性能評価方法のフローチャート(その2)。
図4】本発明の活性炭の酸化剤分解性能評価装置の別の態様を示す概略説明図。
図5】本発明の造水装置の概要を示す概略説明図。
図6】実施例1の使用済み活性炭の試験結果を示すグラフ。
図7】実施例1の未使用の活性炭の試験結果を示すグラフ。
図8】実施例2の活性炭1mあたりの分解された酸化剤の積算物質量M(mol/m)と反応速度定数K(1/s)の関係を示すグラフ。
【発明の実施形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0024】
造水方法における被処理水は、井戸水などに塩素系消毒剤などの酸化剤を添加したものであり、活性炭に通水することにより活性炭と酸化剤とを反応させて除去する。活性炭処理後の処理水中残留塩素濃度には許容濃度があり、活性炭の劣化が進むと十分な脱塩素処理を行うことができず、残留塩素濃度が許容濃度を超えることがある。
【0025】
本発明の活性炭の酸化剤分解性能を評価する方法は、被処理水を活性炭塔に通水して処理水を得る造水方法において用いられ、
活性炭をシャローベッド試験カラムに充填して、被処理水を通水して、当該活性炭による酸化剤の分解反応の加速試験を行い、シャローベッド試験カラムからの流出水中の酸化剤濃度を経時的に測定し、測定した酸化剤濃度の経時的変化に基づいて当該活性炭の反応速度定数及び当該活性炭が分解した酸化剤の物質量を求めて、当該活性炭の反応速度定数と当該活性炭が分解する酸化剤の物質量との相関関係を導出し、
当該相関関係に基づいて、活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、
許容濃度となるまでにかかる時間を算出して、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測することを特徴とする。
【0026】
前記加速試験は、活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラムに、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定することを含み、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を下記式1に従って算出し、
【数17】
【0027】
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を下記式2に従って算出し、
【数18】
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を下記式3に従って算出し、
【数19】
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を下記式4に従って算出する
【数20】
ことを特徴とする。
【0028】
[活性炭の酸化剤分解性能評価]
図1を参照しながら、活性炭の酸化剤分解性能評価装置を説明する。
活性炭の酸化剤分解性能評価装置10は、活性炭が最密充填されているシャローベッド試験カラム12と、被処理水をシャローベッド試験カラム12に供給する供給ラインL1と、供給ラインL1に設けられている流量計13と、被処理水中酸化剤濃度を測定する第1酸化剤濃度測定装置14と、シャローベッド試験カラム12からの流出水の酸化剤濃度を測定する第2酸化剤濃度測定装置15と、第1酸化剤濃度測定装置14及び第2酸化剤濃度測定装置15からの測定結果に基づいて、活性炭の反応速度定数と活性炭により分解された酸化剤の物質量との相関関係を導出し、当該相関関係に基づいて活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、許容濃度となるまでにかかる時間を算出して活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する演算装置16と、を具備することを特徴とする。
【0029】
図1において、シャローベッド試験カラム12に供給する被処理水は、原水槽11から供給するように記載されているが、実際の造水装置においては、活性炭塔に供給する被処理水と同じ被処理水源から供給することができる。
【0030】
演算装置16は、活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラム12に、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、シャローベッド試験カラム12からの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定して得た結果に基づき、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を上記式1に従って算出し、
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を上記式2に従って算出し、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を上記式3に従って算出し、
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を上記式4に従って算出する。
【0031】
図2を参照しながら、活性炭の酸化剤分解性能評価方法を説明する。
【0032】
[ステップ1]
図2にS1で示すように、シャローベッド試験カラム12には、酸化剤分解性能を評価する対象である活性炭(以後「評価対象活性炭」という。)を最密充填する。シャローベッド試験カラム12内に最密充填する活性炭層の高さL(m)は、活性炭塔内の評価対象活性炭の高さをn段に分割した高さとする。すなわち、活性炭塔内の活性炭層の高さはnL(m)となる。ここで、シャローベッド試験カラム12内の評価対象活性炭の層高L(m)は十分に低くすることが必要であり、たとえば0.05m以下、好ましくは0.03m以下、より好ましくは0.02m以下とする。
【0033】
[ステップ2]
図2にS2で示すように、活性炭塔の断面積(m)と活性炭塔への通水流量Q(m/s)から線速度v(m/s)を算出する。
【0034】
[ステップ3]
図2にS3で示すように、シャローベッド試験カラム12に、濃度C0(mg/L)の酸化剤を含む被処理水を線速度v(m/s)で通水して、活性炭と酸化剤を接触させる。酸化剤を活性炭に接触させると、酸化還元反応により酸化剤が還元される。酸化剤は、活性炭と一次反応を行う物質であれば特に制限はない。たとえば、次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸、過酸化水素などを好ましく挙げることができる。
【0035】
[ステップ4]
図2にS4で示すように、シャローベッド試験カラム12からの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を測定する。
【0036】
[ステップ5]
図2にS5で示すように、活性炭と酸化剤との反応速度定数K(1/s)を算出する。
【0037】
シャローベッド試験カラム12へ流入した被処理水の酸化剤濃度C0(mg/L)と、シャローベッド試験カラム12からの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)とから、評価対象活性炭による酸化剤の分解反応の分解率Dは、C1/C0と表すことができる。
【0038】
酸化剤と活性炭との接触時間tは、活性炭高さL(m)を線速度v(m/s)で除したt=L(m)/v(m/s)であるから、酸化剤と活性炭との接触時間tにおける酸化剤の濃度C(mg/L)は、下記の一次反応の反応速度式で表すことができる。
【0039】
【数21】
【0040】
したがって、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)は下記式1のように表すことができる。
【0041】
【数22】
【0042】
[ステップ6]
図2にS6で示すように、シャローベッド試験で求めた反応速度定数を用いて、実機活性炭塔における出口水濃度Cn(mg/L)を算出する。
【0043】
評価対象活性炭を最密充填した実機活性炭塔の高さは、高さL(m)のシャローベッドをn段重ねたnL(m)と考えることができる。シャローベッド1段目の流出水は、シャローベッド2段目の流入水であり、シャローベッドn段目の流入水は、シャローベッド(n-1)段目の流出水であるから、シャローベッド2段目の酸化剤濃度C及びシャローベッドn段目の酸化剤濃度Cnはそれぞれ下記式のように表すことができる。
【0044】
【数23】
【0045】
したがって、シャローベッドn段の高さである実機活性炭塔の流出水の酸化剤濃度Cnは下記の反応速度式で表すことができる。
【0046】
【数24】
【0047】
このように、酸化剤の初期濃度C0(mg/L)と、実機活性炭塔に充填されている活性炭層の高さnL(m)と、酸化剤を実機活性炭塔に流通させる線速度v(m/s)と、活性炭の酸化剤分解の反応速度定数K(1/s)がわかれば、実機活性炭塔からの処理水の濃度を測定せずに、処理水濃度Cn(mg/L)を推定することができる。
【0048】
[ステップ7]
図2にS7で示すように、実機活性炭塔の活性炭層の高さnLにおける処理水の酸化剤濃度Cnと処理水の酸化剤濃度の基準値を比較する。活性炭塔からの処理水中酸化剤の残留濃度には許容濃度があり、この許容濃度を基準値とする。基準値を達成できなくなった場合に活性炭を交換する。たとえば、活性炭塔の処理水をRO膜装置に導入する場合、残留塩素濃度は0.05mg/L未満とすることが求められるから、上記の計算により処理水濃度Cn(mg/L)が0.05mg/L以上となったときが活性炭の交換時期となる。
【0049】
[ステップ8]
図2にS8-1で示すように、活性炭塔の処理水の酸化剤濃度Cnが基準値以下の場合には活性炭を継続して使用することができる。図2にS8-2で示すように、活性炭塔の流出水の酸化剤濃度Cnが基準値を超える場合には活性炭を交換する。
【0050】
次に、上述の原理を利用して、図3を参照しながら、評価対象活性炭の余命を予測する方法を説明する。図3に示すフローチャートは、図2のS5以後のステップを示す。
【0051】
[ステップ5-1]
活性炭による酸化剤の分解反応が進むと、活性炭の活性は劣化して、酸化剤分解の反応速度定数は小さくなる。活性炭の劣化による反応速度定数の変遷を求め、単位体積あたりの活性炭が分解した酸化剤物質量M(mol/m)と反応速度定数K(1/s)との関係式を作成する(S5-1)。具体的には、稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数とするシャローベッド加速試験を繰り返して、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求める。
【0052】
図1に示す活性炭の酸化剤分解性能評価装置においても活性炭の反応速度定数の変遷を求めることができるが、十分に高い酸化剤の初期濃度C0を用いて、シャローベッド試験を繰り返す加速試験により、活性炭の反応速度定数の変遷をより短時間で求めることができる。図4に、シャローベッド加速試験を行う活性炭の酸化剤分解性能評価装置(酸化剤分解性能評価加速試験装置)の概要を示す。酸化剤分解性能評価加速試験装置20は、濃度C0(mg/L)の酸化剤を含む被処理水を貯留する貯留槽21と、高さL(m)となるように活性炭を最密充填したシャローベッド試験カラム22と、貯留槽21からシャローベッド試験カラム22に被処理水を供給する供給ラインL21と、シャローベッド試験カラム22に流入する被処理水の酸化剤濃度を測定する第1酸化剤濃度測定装置23と、シャローベッド試験カラム22からの流出水中の酸化剤濃度を測定する第2酸化剤濃度測定装置24と、シャローベッド試験カラム22から貯留槽21に処理水を循環させる循環ラインL22と、を備える。供給ラインL21はシャローベッド試験カラム22の底部に接続され、循環ラインL22はシャローベッド試験カラム22の頂部に接続され、被処理水はシャローベッド試験カラム22内を上向流で流通する。
【0053】
貯留槽21に、被処理水を貯留する。ここでは、水道水より十分に高濃度の酸化剤水溶液、たとえば残留塩素濃度が60mg/Lとなる次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調整して貯留する。シャローベッド試験カラム22内には所定高さ、たとえば20mmとなるように活性炭を最密充填する。貯留槽21から供給ラインL21を介してシャローベッド試験カラム22に、所定の線速度、たとえば30m/hで被処理水を供給し、シャローベッド試験カラム22から循環ラインL22を介して貯留槽21に循環させる。
【0054】
シャローベッド試験カラム22の出口にて流出水の酸化剤濃度を経時的に測定し、酸化剤濃度が検出下限未満となるまで循環を継続する。貯留槽11の水量と循環開始時の酸化剤濃度からシャローベッド試験カラム12内の活性炭と反応した酸化剤の総量M(mol/m)を算出する。酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤である場合には、流出水中酸化剤濃度は残留塩素濃度として測定することができる。
【0055】
加速試験開始時の貯留槽21における被処理水の酸化剤濃度C0(たとえば60mg/L)と、シャローベッド試験カラム22からの流出水中の酸化剤濃度の経時測定結果に基づいて、式1により各測定時の反応速度定数K(1/s)を算出する。
【0056】
【数25】
【0057】
各測定時の酸化剤の総量M(mol/m)と反応速度定数K(1/s)とを一対の変数としてプロットし、関係式を作成する。
【0058】
[ステップ5-2]
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を下記式2に従って算出する(S5-2)。
【0059】
【数26】
【0060】
[ステップ5-3]
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kminを下記式3に従って算出する(S5-3)。活性炭は、酸化剤と接触することで表面が酸化分解されることなどにより、酸化剤を分解できる量が低下し、処理水中の酸化剤濃度が増え、反応速度定数が徐々に低下するため、処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kminが存在する。
【0061】
活性炭塔に濃度C0の次亜塩素酸ナトリウムを含む酸化剤水溶液が流入する場合、活性炭塔内で次亜塩素酸ナトリウムに由来する残留塩素は還元分解されて濃度が低下する。反応速度定数が高く、活性炭の充填高さが十分高い場合は、活性炭塔内で次亜塩素酸ナトリウムはすべて分解されて、処理水の残留塩素濃度は0となる。
【0062】
一方、活性炭は残留塩素と反応することで徐々に次亜塩素酸ナトリウムの分解能力が低下し、反応速度定数が低下する。このため、活性炭塔内で残留塩素濃度が0となる位置は、反応初期よりも徐々に流入側から遠ざかり、反応速度定数の低下が進むと、ついには活性炭塔の流出点でも残留塩素が検出されることになる。ここで、活性炭塔の流出点で残留塩素が0になる状態を仮定すると、活性炭塔に流入する酸化剤濃度C0と活性炭塔内の活性炭層の高さnLが決まっていれば、処理水の残留塩素濃度が許容濃度Cpを満たす最低限の反応速度定数Kminは式3を用いて算出することができる。
【0063】
【数27】
【0064】
[ステップ5-4]
反応速度定数K(1/s)と活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Mとの関係に基づいて、反応速度定数Kminに対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求める(S5-4)。
【0065】
ステップ5-1で求めた反応速度定数K(1/s)と活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Mとの関係に基づき、反応速度定数がKminに低下するまでに反応した酸化物の物質量の総量Mmaxを判断できる。
【0066】
[ステップ5-5]
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間(活性炭の余命)B(h)を下記式4に従って算出する(S5-5)。
【0067】
ステップ5-4で求めた反応速度定数がKminに低下するまでに反応した酸化物の物質量の総量Mmaxと、ステップ5-2で求めた劣化状況を評価したい時点での単位体積当たりの活性炭が分解した酸化物の物質量Maとの差が、劣化状況を評価したい時点での活性炭が反応速度定数Kminに低下するまでに分解可能な酸化物の物質量となるから、活性炭の余命Bは式4で表すことができる。
【0068】
【数28】
【0069】
また、本発明によれば、上記の活性炭の酸化剤分解性能評価方法を利用する造水装置及び方法も提供される。図5を参照しながら、本発明の造水装置を説明する。
【0070】
本発明の造水装置は、
被処理水の流入部31と処理水の流出部32とを有する活性炭塔30と、
活性炭塔の流入部31に被処理水を流通させる供給ラインL31と、
活性炭塔の流出部32からの処理水を流通させる流出ラインL32と、
供給ラインL31に設けられていて、活性炭塔の流入部31に流入する被処理水の流量を測定する第1流量計F1と、
供給ラインL31に接続されていて、活性炭塔30に充填されている活性炭の酸化剤分解性能を評価する活性炭の酸化剤分解性能評価装置40と、を具備する。
【0071】
活性炭の酸化剤分解性能評価装置40は、
活性炭を最密充填するシャローベッド試験カラム41と、
供給ラインL31に接続されていて、シャローベッド試験カラム41に被処理水を流通させる試験用被処理水供給ラインL41と、
シャローベッド試験カラム41からの流出水を流通させる試験用処理水流出ラインL42と、
試験用被処理水供給ラインL41に設けられていて、シャローベッド試験カラム41に流入する被処理水の流量を測定する第2流量計F2と、
試験用被処理水供給ラインL41に設けられていて、シャローベッド試験カラム41に流入する被処理水の流量を制御する流量制御手段42と、
試験用被処理水流入ラインL41に設けられていて、シャローベッド試験カラム41に流入する被処理水の酸化剤濃度を測定する第1酸化剤濃度測定装置43と、
試験用処理水流出ラインL42に設けられていて、シャローベッド試験カラム41からの流出水の酸化剤濃度を測定する第2酸化剤濃度測定装置44と、
第1流量計F1及び第2流量計F2からの測定結果に基づいて、第2流量計F2の流量が第1流量計F1の流量と等しくなるように流量制御手段42を制御する流量調整部45と、
第2流量計F2、第1酸化剤濃度測定装置43、及び第2酸化剤濃度測定装置44からの測定結果に基づいて活性炭の反応速度定数と活性炭により分解された酸化剤の物質量との相関関係を導出し、相関関係に基づいて活性炭塔からの処理水中の酸化剤濃度が許容濃度となるときの反応速度定数及び酸化剤の物質量を算出し、許容濃度となるまでにかかる時間を算出して活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の余命を予測する演算手段を含む活性炭性能予測部46と、
を備えることを特徴とする。
【0072】
図5において、流量調整手段42は流量調整弁であり、第1流量計F1及び第2流量計F2からの測定値に基づいて、流量を調整する演算装置及び制御装置を含む流量調整部45によって調整される。
【0073】
活性炭性能予測部46の演算装置は、
活性炭を高さL(m)となるように最密充填したシャローベッド試験カラムに、初期酸化剤濃度C0(mg/L)の被処理水を、活性炭塔への被処理水の線速度v(m/s)で通水して、当該シャローベッド試験カラムからの流出水の酸化剤濃度C1(mg/L)を経時的に測定して得た結果に基づき、
初期酸化剤濃度C0と流出水の酸化剤濃度C1とから求めた活性炭による酸化剤の分解率D=C1/C0を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数K(1/s)を上記式1に従って算出し、
稼働時間Ha(h)における反応速度定数Ka(1/s)と物質量Ma(mol/m)とを1組の変数として、反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係を求め、
活性炭塔の稼働時間Ha(h)、活性炭塔への通水流量Q(m/s)、活性炭塔に充填されている評価対象活性炭の体積V(m)、酸化剤の物質量A(g/mol)から、稼働時間Ha(h)における評価対象活性炭1mあたりの分解された酸化剤の物質量Ma(mol/m)を上記式2に従って算出し、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるときの反応速度定数Kmin(1/s)を上式3に従って算出し、
反応速度定数K(1/s)と物質量M(mol/m)との関係に基づいて、反応速度定数Kmin(1/s)に対応する酸化剤の物質量Mmax(mol/m)を求め、
活性炭塔からの処理水の酸化剤濃度が許容濃度Cp(mg/L)となるまでの時間B(h)を上記式4に従って算出する。
【0074】
図5において、活性炭の酸化剤分解性能評価装置40からの試験用処理水流出ラインL42は、活性炭塔30からの流出ラインL32と合流して、RO膜装置50に接続されている。
【0075】
本発明の造水方法は、本発明の活性炭の酸化剤分解性能評価方法を行って、活性炭塔に充填されている活性炭の余命を予測し、適時に活性炭を交換することを含むことを特徴とする。
【0076】
また、本発明の造水方法は、活性炭塔から採取した活性炭をシャローベッド試験カラムに充填して、本発明の活性炭の酸化剤分解性能評価方法を行って、活性炭塔に充填されている活性炭の余命を予測し、適時に活性炭を交換することを含むことを特徴とする。
【実施例0077】
[実施例1]
図1に示すシャローベッド試験装置(シャローベッド試験カラムとして内径16mm(0.016m)のガラス製カラムを用いた)に、活性炭(バダイヤLG-10SC)を高さ2cm(0.02m)になるように均一に詰め込み、線速度23.5m/hで酸化剤濃度C0の被処理水を通水し、処理水中酸化剤濃度C1を測定した。活性炭層の高さを4cm(0.04m)及び6cm(0.06m)として、同様に処理して処理水中酸化剤濃度C及びCをそれぞれ測定した。被処理水として、1.0mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(初期残留塩素濃度C0=0.1mg/L)を用いた。活性炭として、1年間継続使用した活性炭(評価対象活性炭)と、未使用の活性炭とをそれぞれ用いて、実測値と計算値とを比較した。
【0078】
活性炭層の高さL=2cmのときの反応速度定数Kを式1により求め、反応速度定数Kを用いて下記式より活性炭層の高さを2L=4cm(0.04m)及び3L=6cm(0.06m)としたときの処理水中酸化剤濃度C及びCをそれぞれ算出した。
【0079】
【数29】
【0080】
【数30】
【0081】
【数31】
【0082】
結果を表1に、使用済み活性炭の結果を図6に、未使用の活性炭の結果を図7に、それぞれ示す。いずれの活性炭も残留塩素濃度の計算値と実測値とが近似しており、本方法によって任意の高さの活性炭による処理水中の酸化剤濃度を高い精度で予測できることが確認できた。
【0083】
【表1】
【0084】
[実施例2]
図4に示す活性炭の酸化剤分解性能評価加速試験装置を用いて、活性炭による酸化剤の分解反応の反応速度定数の低下量を求めた。
【0085】
試験カラム(管径4cm)に、未使用の粒状活性炭(水ing株式会社製)を高さ4cm(0.04m)となるように最密充填した。原水槽に残留塩素濃度で60mg/Lとなるように調整した次亜塩素酸ナトリウム水溶液2Lを供給し、原水槽から次亜塩素酸ナトリウム水溶液を試験カラムに通水し、試験カラムからの流出水を再び原水槽に戻す循環態様で、原水槽の残留塩素濃度が0mg/Lになるまで通水させた。
【0086】
次いで、試験カラムから活性炭を取り出して、図1に示すシャローベッド試験カラムに高さ2cm(0.02m)となるように最密充填し、濃度0.1mg/L(C0)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を線速度23.5m/sで通水し、シャローベッド試験カラムからの流出水中の次亜塩素酸ナトリウム濃度(C1)(mg/L)を測定し、反応速度定数K(1/s)を算出した。
【0087】
その後、活性炭を再び試験カラム内に戻し、原水槽内の液体を残留塩素濃度60mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液2Lに入れ替えて実験を繰り返し、活性炭と反応した次亜塩素酸ナトリウム量の総和を求め、活性炭1mあたりの分解された酸化剤物質量M(mol/m)と反応速度定数K(1/s)の関係を取得した。結果を図8に示す。
【0088】
酸化剤物質量Mが300mol/m程度までは反応速度定数が約0.4s-1から約0.2s-1まで急激に減少するが、300mol/m以上では反応速度定数の減少は緩やかになり、約5000~6000mol/m程度で反応速度定数が約0.05s-1まで減少することがわかる。
【0089】
図8に基づき、使用中の活性炭の反応速度定数K又は酸化剤物質量Mの一方がわかれば、対応する酸化剤物質量又は使用中の活性炭の反応速度定数並びに活性炭の余命を推定することができる。図8の反応速度定数Kと酸化剤物質量Mとの関係式を求めることにより、さらに精度よく活性炭の余命を推定することができる。
【0090】
図8の反応速度定数Kと酸化剤物質量Mとの関係式は下記で表すことができる。
【0091】
【数32】
【0092】
[実施例3]
図8を用いて、下記2種類の使用中活性炭の交換時期を予測する。
<活性炭A>A工場で1年間継続使用中
<活性炭B>B工場で2年間継続使用中
活性炭A及びBはともにバダイヤLG-10SCである。
【0093】
A工場及びB工場ともに、活性炭塔の稼働条件は、下記のとおりである。
活性炭層高さnL:1.1m
管径:2.1m
原水の残留塩素濃度:1mg/L
流量Q:80m/h
線速度v:80/(1.15×1.15×π×3600)=0.00642(m/s)
処理水の許容最大残留塩素濃度Cp:1.0×10-4mg/L
【0094】
図4に示す活性炭の酸化剤分解性能評価加速試験装置のシャローベッド試験カラム22に活性炭A又はBを高さ2cm(0.02m)となるように最密充填して、濃度1mg/L(C0)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を線速度0.00642m/sで通水し、シャローベッド試験カラムからの流出水中の次亜塩素酸ナトリウム濃度(C1)(mg/L)を測定し、反応速度定数K(1/s)を算出した。活性炭Aの反応速度定数は0.11s-1、活性炭Bの反応速度定数は0.09s-1であった。
【0095】
処理水の残留塩素濃度が1.0×10-4mg/Lとなる反応速度定数Kminを式3に従って算出すると、0.054であった。
【0096】
【数33】
【0097】
図8において、反応速度定数Kminが0.054のとき、酸化剤物質量Mmaxは約5000(mol/m)である。
【0098】
活性炭Aの反応速度定数は0.11s-1であるから、図8において酸化剤物質量MAは約1000~約2300(mol/m)である。式4を用いて活性炭Aの余命を求めると、約2497.5~約3700時間後が活性炭の交換時期となる。
【0099】
活性炭Bの反応速度定数は0.09s-1であるから、図8において酸化剤物質量MBは約2000~約3500(mol/m)である。式4を用いて活性炭Bの余命を求めると約1387.5~約2775時間後に活性炭の交換時期が到来することになる。
【0100】
より精度よく活性炭の余命を求めるため、図8の反応速度定数Kと酸化剤の積算物質量Mとの関係式から、反応速度定数Kminに対応する酸化剤の積算物質量Mmax並びに活性炭A及び活性炭Bの酸化剤の積算物質量M及びMを算出する。
【0101】
図8の反応速度定数Kと酸化剤の積算物質量Mとの関係式
M=-0.059ln(K)+0.5563
Mmax=5000(mol/m
=2000(mol/m
=2750(mol/m
【0102】
活性炭A及びBそれぞれの交換時期に達するまでに吸着可能な酸化剤の物質量を下記式に従って算出する。
活性炭A:Mmax-M=5000-2000=3000(mol/m
活性炭B:Mmax-M=5000-2750=2250(mol/m
【0103】
活性炭A及びBそれぞれの余命B及びBを下記式に従って算出する。
=[74(g/mol)×(Mmax-M)]/[80(m3/h)×1(mg/L)]=2775(h)
=[74(g/mol)×(Mmax-M)]/[80(m3/h)×1(mg/L)]=2081.25(h)
【0104】
以上から、活性炭Aは約2770時間後、活性炭Bは約2080時間後に交換時期が到来すると予測できる。
【0105】
[符号の説明]
10:活性炭の酸化剤分解性能評価装置
11:原水槽
12:シャローベッド試験カラム
13:流量計
14:第1酸化剤濃度測定装置
15:第2酸化剤濃度測定装置
16:演算装置
L1:供給ライン
20:活性炭の酸化剤分解性能評価加速試験装置
21:貯留槽
22:シャローベッド試験カラム
23:第1酸化剤濃度測定装置
24:第2酸化剤濃度測定装置
26:演算装置
L21:供給ライン
L22:循環ライン
30:活性炭塔
L31:供給ライン
L32:流出ライン
40:活性炭の酸化剤分解性能評価装置
41:シャローベッド試験カラム
42:流量制御手段
43:第1酸化剤濃度測定装置
44:第2酸化剤濃度測定装置
45:流量調整部
46:活性炭性能予測部
F1:第1流量計
F2:第2流量計
L41:試験用被処理水供給ライン
L42:試験用処理水流出ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8