(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146425
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/02 20060101AFI20241004BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60K1/02
B60L9/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059312
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 峻一
(72)【発明者】
【氏名】常 建卓
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA11
3D235BB17
3D235CC12
3D235CC13
3D235DD13
3D235DD19
3D235FF32
3D235GB03
3D235HH52
5H125AA20
5H125AB01
5H125AC12
5H125FF01
5H125FF03
(57)【要約】
【課題】作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置において、薄型で厚み方向に直交する第1方向長さが大きいインバータを持つ構成で、インバータケースと車両側の他の部品との干渉を防止する。
【解決手段】作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置は、左右の車輪が互いに独立して異なる電気モータの一対で駆動される作業車両に用いられる。入力軸と歯車機構と車軸とを収容する車軸ケースは、前後方向両側の入力軸側部分と車軸側部分とを有する。モータケースの一方側は、入力軸側部分に固定される。モータケースの他端側の端面または外周面には、インバータケースが固定される。インバータケースは最大厚みが第1方向の最大長さより小さい扁平形状であり、モータケースから離れる第1方向である長手方向の一方側に延伸させるとともに末端部分は、車軸側部分に面する空間であって車軸突出側とは反対側の空間に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車輪が互いに独立して異なる電気モータの一対で駆動される作業車両に用いられ、前記電気モータの動力が入力軸及び歯車機構を介して車軸に伝達される電気モータ付き車軸駆動装置であって、
前記入力軸と前記歯車機構と前記車軸とは、車軸ケースに収容され、
前記車軸ケースは、前後方向一方側の入力軸側部分と前後方向他方側の車軸側部分とを有し、
前記電気モータが収容されたモータケースの一方側は、前記入力軸側部分に固定され、
前記モータケースの他端側の端面または外周面には、内部に、前記電気モータに電力供給するインバータが配置されるインバータケースが固定され、
前記インバータケースは最大厚みが厚み方向に直交する第1方向の最大長さより小さい扁平形状であり、前記モータケースから離れる前記第1方向である長手方向の一方側に延伸させるとともに末端部分は、前記車軸側部分に面する空間であって車軸突出側とは反対側の空間に配置される、
作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置。
【請求項2】
前記電気モータを軸方向に見た場合に、前記インバータケースの長手方向一方側部分は、前記モータケースの外周面から径方向外側に突出しており、前記車軸ケースに近づく方向に厚みが大きくなっている、
請求項1に記載の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置。
【請求項3】
前記インバータケースの長手方向他方側が、前記モータケースの外周面の上方位置に固定される装着部分を有し、
前記インバータケースは、長手方向一方側の前記末端部分が前記装着部分より下側になるように上下方向に対し傾斜している、
請求項1に記載の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に用いられる電気モータ付き車軸駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、芝刈装置を備える芝刈り車両等の作業車両において、車輪を電気モータで駆動し走行可能とすることが知られている。特許文献1には、左右車輪を互いに独立して駆動可能とし、左車輪を左電気モータで駆動し、右車輪を右電気モータで駆動する芝刈り車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように2つの電気モータで左右車輪を駆動する車両では、車輪を装着可能な車軸にモータの動力を伝達する電気モータ付き車軸駆動装置が用いられる。この車軸駆動装置では、モータの動力が入力される入力軸と、歯車機構及び車軸とが車軸ケースに収容され、モータが収容されたモータケースを車軸ケースに固定することが考えられる。
【0005】
また、バッテリから供給される直流電流を複数相の交流電流に変換して電気モータに電力供給するためのインバータを、モータケースに固定することが考えられる。このとき、インバータは、厚み方向に直交する所定の第1方向長さを大きくすることにより、回路基板の面積を大きくし、それにより厚み方向に並んだ回路基板の枚数を少なくし、インバータ及びインバータを収容するインバータケースの厚みを小さくすることが考えられる。しかしながら、この場合には、インバータは薄型であるが、厚み方向に直交する第1方向長さが大きくなる。これにより、インバータケースの第1方向端部と、車両側の搭載スペースに存在する他の部品とが干渉しやすくなる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置において、回路基板の面積を大きくできる、薄型で厚み方向に直交する第1方向長さが大きいインバータを持つ構成で、インバータケースと、車両側の、電気モータ付き車軸駆動装置を搭載するスペースに存在する他の車両構成部品との干渉を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置は、左右の車輪が互いに独立して異なる電気モータの一対で駆動される作業車両に用いられ、前記電気モータの動力が入力軸及び歯車機構を介して車軸に伝達される電気モータ付き車軸駆動装置であって、前記入力軸と前記歯車機構と前記車軸とは、車軸ケースに収容され、前記車軸ケースは、前後方向一方側の入力軸側部分と前後方向他方側の車軸側部分とを有し、前記電気モータが収容されたモータケースの一方側は、前記入力軸側部分に固定され、前記モータケースの他端側の端面または外周面には、内部に、前記電気モータに電力供給するインバータが配置されるインバータケースが固定され、前記インバータケースは最大厚みが厚み方向に直交する第1方向の最大長さより小さい扁平形状であり、前記モータケースから離れる前記第1方向である長手方向の一方側に延伸させるとともに末端部分は、前記車軸側部分に面する空間であって車軸突出側とは反対側の空間に配置される、作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置によれば、インバータケースをモータケースから離れる第1方向である長手方向一方側に延伸させたことにより、回路基板の面積を大きくできる、薄型で厚み方向に直交する第1方向長さが大きいインバータを持つ構成において、インバータケースと、車両側の他の部品との干渉を防止できる。
【0009】
上記の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置において、前記電気モータを軸方向に見た場合に、前記インバータケースの長手方向一方側部分は、前記モータケースの外周面から径方向外側に突出しており、前記車軸ケースに近づく方向に厚みが大きくなっている構成としてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、モータケースの端面にインバータケースを固定する構造で、インバータケースと他の部品との干渉をより有効に防止でき、かつ、回路基板を2段構成にするなどして、インバータケースのうち、モータケースに固定される部分の厚みを小さくできる。これにより、左右両側の車輪を駆動する左右2つの作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置が搭載された車両を全体として見た場合に、左右の車輪の接地面の中心間距離であるトレッドを可及的に狭くできる。
【0011】
上記の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置において、前記インバータケースの長手方向他方側が、前記モータケースの外周面の上方位置に固定される装着部分を有し、前記インバータケースは、長手方向一方側の前記末端部分が前記装着部分より下側になるように上下方向に対し傾斜している構成としてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、モータケースの外周面にインバータケースを固定する構造で、インバータケースと他の部品との干渉をより有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る実施形態の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を搭載する車両の一部を断面にして示す側面図である。
【
図2】
図1の車両の後部において、一部を省略して示す平面図である。
【
図3】
図1に示す作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を取り出して示す斜視図である。
【
図4】
図3の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の動力伝達のための構成を示す概略図である。
【
図5】
図3の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の平面図である。
【
図6】
図3の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の車両内側に対応する方向から見た側面図である。
【
図7】
図3の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の後面図である。
【
図8】
図3からモータインバータ装置を取り出して、一部を断面にして示す平面図である。
【
図9】本発明に係る実施形態の別例の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を搭載する車両の一部を断面にして示す側面図である。
【
図10】
図9の車両の後部において、一部を省略して示す平面図である。
【
図11】
図9に示す作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を取り出して示す斜視図である。
【
図12】
図11の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の平面図である。
【
図13】
図11の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の車両内側に対応する方向から見た一部を断面にして示す側面図である。
【
図14】
図11の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の後面図である。
【
図15】
図11からモータインバータ装置を取り出して、一部を断面にして示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下では、作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置が、作業車両であり芝刈り車両に搭載される場合を説明するが作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置が搭載される車両は、これに限定せず、除雪作業、掘削作業、土木作業、農作業のいずれか1つ以上の作業を行う作業機を有する他の作業車両、または荷台を有し、不整地を走行するオフロード型多用途車両(Utility Vehicle)、あるいはバギーと呼ばれるAll Terrain Vehicle(ATV)や、レクリエーショナルビークル(Recreational Vehicle(RV))や、レクリエーショナルオフハイウェイビークル(Recreational Off-highway Vehicle(ROV))としてもよい。また、以下では、車両が2つの後輪を2つのモータで駆動する場合を説明するが、車両は2つの前輪を2つのモータで駆動する構成としてもよい。以下ではすべての図面において同様の要素には同一の符号を付して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1から
図8は、第1の実施形態を示している。以下で説明する図面では、車両について前側をFrで示し、左側をLhで示し、上側をUpで示している。
【0016】
まず、本実施形態の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置40,41を搭載する一例としての芝刈り車両10の全体構成を説明し、その後、芝刈り車両10に搭載した電気モータ付き車軸駆動装置40,41を詳しく説明する。
図1は、電気モータ付き車軸駆動装置40,41を搭載する芝刈り車両10の一部を断面にして示す側面図である。
図2は、芝刈り車両10の後部において、一部を省略して示す平面図である。
【0017】
エンジン非搭載型の乗用型の芝刈り車両10は、車体を構成するメインフレーム16と、左右2つの前輪であるキャスタ輪18と、左右2つの後輪である車輪22,24と、作業機である芝刈装置25と、右側の操作レバー36及び左側の操作レバー(図示せず)と、バッテリを含む電源ユニット38とを備える。
図1では右側の車輪24及び右側のキャスタ輪の図示を省略している。
【0018】
メインフレーム16は、前後方向中間部の上側に運転席17が固定される。左右のキャスタ輪18は、メインフレーム16の前側に支持される。各キャスタ輪18は、上下方向の軸を中心とする360度以上の自由操向を可能とする。左右の車輪22,24は、メインフレーム16の後側に支持される。左右の車輪22,24は、主駆動輪であり、後述する左右一対の走行用の電気モータ70により、互いに独立して駆動される。
【0019】
キャスタ輪18は、2つ以外、例えば、1つのみを芝刈り車両10に設けることもでき、3つ以上の複数個を設けることもできる。キャスタ輪と駆動輪とは、本例の構成と前後で逆にしてもよい。
【0020】
芝刈装置(Mower)25は、メインフレーム16の前後方向中間部で下側に支持されている。芝刈装置25は、モアデッキ26と、モアデッキ26の内側にそれぞれ鉛直方向の軸を中心として回転可能な芝刈り用回転工具である3つ等の複数の芝刈りブレード27とを含む。芝刈りブレード27が回転されることで芝等を破断して刈り取り可能とする。各芝刈りブレード27は、モア用の電気モータ28により駆動される。
【0021】
芝刈りブレード27の回転により芝の刈り取りが可能であり、刈り取られた芝は、モアデッキ26の内側から車両の幅方向片側に排出される。
【0022】
芝刈装置25は、芝刈り用回転工具として、地表に平行に回転軸を有するシリンダに例えばらせん状の刃を配置し、芝等を挟み取って刈り取る機能を有し、モア用の電気モータにより駆動される芝刈りリールを備える構成としてもよい。
【0023】
左右2つの操作レバー36は、運転席17の左右両側において、左右方向に向いた水平軸を中心に前後方向の揺動可能に設けられる。各操作レバー36の下側部分が、直立した中立状態であれば走行用の電気モータ70は回転停止し、揺動するように操作されることにより、揺動方向と揺動量に応じて、左右の対応する側の走行用の電気モータ70を回転させることが指示される。これにより、芝刈り車両10は、左右の車輪22,24が互いに独立して異なる電気モータ70の一対で駆動される。
【0024】
操作レバー36の前後方向の揺動位置が、レバーセンサ(図示せず)で検出される。レバーセンサの検出信号は、走行用の電気モータ70の回転指示を表す信号として、車両に搭載された制御装置100に入力され、制御装置100が電気モータ70をその指示に応じた回転方向に回転させる。各電気モータ70の動力は、後述の車軸駆動装置40,41の歯車機構等を介して左右の車輪22,24に伝達される。これにより、操作レバー36の操作に応じて、前側または後側に車両が走行し、左右の操作レバー36で操作量を変えることで、左右の車輪22,24に回転速度差が生じて車両が旋回する。さらに、2つの操作レバー36の一方の操作レバーを前側に、他方の操作レバーを後側にそれぞれ倒すことで、左右の車輪22,24が逆方向に回転し、旋回半径が小さくなることにより車両が急旋回する。
【0025】
さらに、芝刈り車両10には、メインフレーム16において、運転席に乗車した運転者の足下付近である前側部分の上側に、運転者が足で踏み込み操作可能なブレーキペダル(図示せず)が支持される。さらに、芝刈り車両10には、運転席の近くに、運転者が手で操作可能な駐車ブレーキスイッチ(図示せず)が設けられる。ブレーキペダルが操作された場合には、後述の左右車輪用の第1ブレーキ装置が作動し、左右の車輪が制動、または回転停止が維持される。駐車ブレーキ装置が操作された場合には、後述の左右車輪用の第2ブレーキ装置が作動し、左右の車輪が制動、または回転停止が維持される。
【0026】
以上が芝刈り車両10の全体構成であり、次にこの芝刈り車両10に搭載され用いられる左右の電気モータ付き車軸駆動装置40、41を説明する。左の車輪22に左の電気モータ付き車軸駆動装置40が接続され、右の車輪24に右の電気モータ付き車軸駆動装置41が接続される。右の電気モータ付き車軸駆動装置41の構造は、左の電気モータ付き車軸駆動装置40の構造と、車両幅方向中央に関し対称である以外、同様である。このため、以下では、左の電気モータ付き車軸駆動装置40を中心に説明する。
【0027】
図3は、左の電気モータ付き車軸駆動装置40を取り出して示す斜視図である。電気モータ付き車軸駆動装置40は、車軸ケース42と、モータインバータ装置60とを含む。モータインバータ装置60は、モータケース61と、インバータケース80と、モータケース61に収容された走行用の電気モータ70と、インバータケース80に収容されたインバータ90とを有する。車軸ケース42と、モータケース61と、インバータケース80とは、一体に組み合わされて固定される。
【0028】
図4は、電気モータ付き車軸駆動装置40の動力伝達のための構成を示す概略図である。車軸ケース42は、内側に入力軸110と、車軸120と、歯車機構130とが収容される。車軸ケース42には、入力軸110と、車軸120とが回転可能に支持される。入力軸110は、電気モータ70のモータ軸72に連結され、モータ軸72と同期して回転する。歯車機構130は、入力軸110及び車軸120間で動力を伝達する機構であり、かつ入力軸110から車軸120に動力を減速して伝達する。これにより、電気モータ70の動力が入力軸110及び歯車機構130を介して車軸120に伝達される。入力軸110と車軸120とは平行に配置される。
【0029】
図5は、電気モータ付き車軸駆動装置40の平面図である。
図6は、車軸駆動装置40の車両内側に対応する方向から見た側面図である。
図7は、車軸駆動装置40の後面図である。
図8は、
図3からモータインバータ装置60を取り出して、一部を断面にして示す平面図である。
【0030】
車軸ケース42は、例えば軸方向一方側である車幅方向内側(
図5の紙面右側)を形成する第1ケース44と、軸方向他方側である車幅方向外側(
図5の紙面左側)を形成する第2ケース48及び第3ケース50とが複数のボルト58で結合されることにより一体化される。ここで車軸駆動装置40の軸方向とは、入力軸110及び車軸120に平行な方向であり、車幅方向と一致する。
【0031】
第1ケース44は、車幅方向内側において前側部分である後述の入力軸側部分45に、モータ軸72(
図4)を挿入するための内側開口を有すると共に、車幅方向外側で前方側から後方側にかけて外側開口を有するギヤケースである。第2ケース48は、車幅方向内側が開口し、車幅方向外側面の後方箇所から軸方向に筒部49が延出される。車軸120は、この筒部49を貫通する。第1ケース44と第2ケース48とが車幅方向端部の外周縁部を突き合わせるように結合される。また、第2ケース48の車幅方向外側において、前側部分には開口が設けられると共に、その開口を塞ぐように、開口の周縁部に第3ケース50が固定される。これにより、第1ケース44の外側開口が第2ケース48及び第3ケース50で塞がれ、内部にギヤ室が形成される。歯車機構130(
図4)はギヤ室に収容される。
【0032】
一方、第1ケース44の内側開口の周囲の端面には、モータケース61の端面が重ねられた状態で、第1ケースとモータケース61とが複数のボルト59で結合される。これにより、モータケース61の一方側端である車幅方向外側端は、車軸ケース42の入力軸側部分45に固定される。このため、第1ケース44の内側開口が、モータケース61で塞がれる。
【0033】
図4に示すように、モータ軸72と入力軸110とは、連結部材74を介在させた状態で互いに中心軸が一致する同軸に配置される。連結部材74は、内周に雌スプラインを有する筒部75を含む。筒部75の一端部の外周面上には、直径方向に全周にわたって突出する単板状の第1ブレーキロータ76が一体に設けられる。入力軸110及びモータ軸72の両方には外周面に雌スプラインと嵌合する雄スプラインが形成される。筒部75の雌スプラインの軸方向の両側のそれぞれには、入力軸110及びモータ軸72の雄スプラインが相対回転を阻止するように嵌合する。これにより、入力軸110及びモータ軸72に対する第1ブレーキロータ76の相対回転が阻止される。
【0034】
第1ブレーキロータ76は、機械式ブレーキである走行制動用第1ブレーキ装置を構成する。第1ブレーキロータ76の軸方向両側面には、図示しないブレーキシューとブレーキパッドとが対向する。運転席17に乗車した運転者が、ブレーキペダルを操作すると、左右の車輪用の第1ブレーキ装置の両方で、第1ブレーキロータ76の両側には、ブレーキシューとブレーキパッドとから第1ブレーキロータ76を挟むように押圧力が加わる。このため、第1ブレーキロータ76と、入力軸110から動力が伝達される車輪22,24に至る伝動系が制動、または回転停止が維持される。このとき、運転者のブレーキペダルの踏み力の変化によって車速を調整することができる。芝刈り車両10において、運転者がブレーキペダルを操作した場合に、電気モータ70を発電機として作動させることにより回生制動力を発生させ、その回生制動力と第1ブレーキ装置の制動力との両方で車両を制動することもできる。
【0035】
一方、入力軸110のモータ軸72とは反対側の外端部は、第2ブレーキロータ140が固定される。第2ブレーキロータ140は、電磁ブレーキである駐車用第2ブレーキ装置を構成する。第2ブレーキロータ140の軸方向両側面には、図示しないブレーキパッドが対向する。運転席17に乗車した運転者が、駐車ブレーキスイッチをオン操作すると、左右の車輪用の第2ブレーキ装置の両方で、第2ブレーキロータ140の両側には、ブレーキパッドから第2ブレーキロータ140を挟むように押圧力が加わる。
【0036】
例えば、一方のブレーキパッドの外側面には電磁ソレノイドが対向配置される。電磁ソレノイドは、駐車ブレーキスイッチが非操作の場合に電力が供給され、一方のブレーキパッドを第2ブレーキロータから離すように電磁力で吸引する。これにより、第2ブレーキロータが制動されない。一方、電磁ソレノイドは、駐車ブレーキスイッチがオン操作された場合に電力供給が遮断され、一方のブレーキパッドを吸引しない。このとき、一方のブレーキパッドは、その外側面に配置された第1バネのバネ力により第2ブレーキロータ側に押される。また、他方のブレーキパッドの外側面には押圧部材が対向配置される。押圧部材は、その外側に設けられたバネにより、第2ブレーキロータ側に押圧される。これにより、駐車ブレーキスイッチのオン操作により一方のブレーキパッドが電磁ソレノイドに吸引されない状態で、第2ブレーキロータは、両側からブレーキパッドが押し付けられることにより制動または回転停止を維持する。このため、入力軸110から動力が伝達される車輪22,24に至る伝動系も制動または回転停止を維持する。本例の車両では、走行制動用の第1ブレーキ装置及び駐車用の第2ブレーキ装置の両方を備えているが、そのいずれか一方は車両の仕様に応じて除去することもできる。第1ブレーキ装置はその操作系を2系統に構成することにより走行制動用と駐車用の両方の機能を持たせることもできる。
【0037】
歯車機構130は、入力軸110に設けられた第1はすば歯車111と、入力軸110及び車軸120の間に配置され、外周面に第2はすば歯車113が係止された中間歯車軸112と、車軸120に固定された出力歯車114とを含む。中間歯車軸112は、車軸ケース42に支持される。
【0038】
中間歯車軸112には、外周面に平歯車形の中間歯車部112bを有する外軸112aが相対回転可能に支持されている。中間歯車部112bの一方側である右側の歯部には、出力歯車114が噛み合う。中間歯車部112bの他方側である左側の歯部には、第2はすば歯車113の内周面に形成された内歯113aが噛合されて、互いに相対回転不能に係合している。
【0039】
第2はすば歯車113は、第1はすば歯車111に噛み合うことにより、はすば歯車機構を形成する。出力歯車114の歯数は中間歯車部112bの歯数より多く、第2はすば歯車113の歯数は第1はすば歯車111の歯数より多い。これにより、入力軸110の回転は、歯車機構130で2段に減速されて車軸120に伝達される。車軸120の車幅方向外端部には、ハブ121を介して車輪22が固定される。
【0040】
上記の車軸ケース42は、前後方向一方側である前側の入力軸側部分45と、前後方向他方側である後側の車軸側部分46とを有する。
【0041】
次に、電気モータ70が収容されたモータケース61と、インバータ90が収容されたインバータケース80との配置構成を説明する。上記のように、モータケース61の一方側端である車幅方向外側端は、車軸ケース42の入力軸側部分45に固定される。モータケース61は、電気モータ70が収容される筒状の本体部62と、本体部62の他端である車幅方向内側端の外周面に設けられた円環状のフランジ63(
図6、
図8)とを含む。フランジ63の内側には円形の開口64(
図6、
図8)が形成される。フランジ63の周方向複数位置にはネジ孔65が形成される。そして、インバータケース80の車幅方向外端部を貫通した複数のボルト66が、モータケース61のネジ孔65に結合されることにより、モータケース61の他端側である車幅方向内端側の端面に、インバータケース80が固定される。
【0042】
電気モータ70は、例えば永久磁石式の3相モータである。
図8に示すように、電気モータ70は、モータ軸72の外周面に固定されたモータロータ73と、モータロータ73の外周面に対向するステータコア131と、ステータコア131に巻回して配置された3相のステータコイル132とを有する。モータロータ73は、例えばロータコアの周方向複数位置に配置された永久磁石を有する。ステータコア131は、モータケース61の内側に固定される。モータ軸72は、モータケース61の内側に回転可能に配置される。ステータコイル132に電源ユニット38のバッテリから後述のインバータ90を介して、3相の交流電流に変換された電力が供給されることにより、ステータコア131に発生した回転磁界と、モータロータ73が生成する磁界との相互作用によりモータ軸72が回転する。
【0043】
インバータケース80の内部には、バッテリから供給される直流電流を3相の交流電流に変換して電気モータ70に電力供給するインバータ90が配置される。インバータ90は、第1回路基板91と、第1回路基板91より面積が小さい第2回路基板92とを含む。
図8では、各回路基板91,92の詳細構造の図示を省略している。第1回路基板91と、第2回路基板92とは互いに配線の一部が接続される。これにより、インバータ90は、例えば、電気的に直列接続した2つのスイッチング素子をそれぞれ有する3つのアームを含むインバータ回路と、インバータ回路を制御するインバータ制御装置とを有する。
図3~
図8では、左の車輪22を駆動する左車輪用の電気モータ70を収容したモータケース61と、この電気モータ70を駆動する左車輪用のインバータ90を収容したインバータケース80とを示している。一方、
図2に示すように、右の車輪24の側には、右の車輪24を駆動する右車輪用の電気モータ70を収容したモータケース61と、この電気モータ70を駆動する右車輪用のインバータ90を収容したインバータケース80とが設けられる。
【0044】
各インバータ90の作動は、制御装置100により制御される。制御装置100は、メインフレーム16の上側で運転席17の下側に配置される。制御装置100とインバータ90とは信号ケーブル93により接続される。制御装置100は、信号ケーブル93を介して、インバータ90のスイッチング素子のスイッチングを制御する。インバータ90には、電源ユニット38のバッテリから電力ケーブル94を介して直流電流が供給される。制御装置100が、インバータ制御装置100を介してインバータ90のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、インバータ90が直流電流を3相の交流電流に変換して電気モータ70に電力供給することが可能となる。これにより、左車輪用の電気モータ70は、左車輪用のインバータ90を介して制御装置100により制御される。右車輪用の電気モータ70は、右車輪用のインバータ90を介して制御装置100により制御される。このため、左右の電気モータ70は、制御装置100により、回転方向及び回転数について、独立して制御される。したがって、左右の電気モータ70は、回転方向及び回転数について、左右の車輪22,24を独立して駆動する。
【0045】
インバータケース80は、最大厚みT(
図5)が、厚み方向に直交する第1方向(
図6の矢印A1方向)の最大長さL1(
図6)より小さい扁平形状である。インバータケース80は、厚み方向に直交し、かつ互いに直交する第1方向及び第2方向(
図6の矢印A2方向)のそれぞれの最大長さL1,L2が、最大厚みTより大きい。また、インバータケース80において、第1方向の最大長さL1は第2方向の最大長さL2より大きい。このため、インバータケース80は、厚み方向に直交する第1方向に長い扁平形状を有する。
【0046】
インバータケース80は、車幅方向内端部に設けられた第1板部81と、第1板部81の外周縁から車幅方向外側に伸びる周壁部82と、周壁部82の車幅方向外端の開口を塞ぐ第2板部83とを有し、
図5に示すように平面視が略L字形状の略箱形状である。
図6に示すように、第1板部81は、車幅方向内側から見た状態で、長方形の第1方向である長手方向一方側端(
図6の紙面の右端)の2つの角部が断面円弧形の曲線部で面取りされた外形を有する。
図8に示すように、インバータケース80は、例えば、モータケース61と反対側の第1ケース87と、モータケース61側の第2ケース88とがボルト67によりネジ結合されることにより構成される。第1ケース87と第2ケース88とは内部で相互連通しており、第1ケース87に配置された第1回路基板91と、第2ケース88に配置された第2回路基板92とを相互接続する配線が行き交うようになっている。
図3、
図5~
図7では、ボルト67の図示を省略する。
【0047】
インバータケース80の第2板部83の外面には、モータケース61を固定するためのボルト66を貫通する複数の軸孔が形成される。第2板部83の外面において、複数の軸孔を通る仮想円の内側には筒部84が突出する。筒部84の内側には、モータ軸72の一端部を回転可能に支持する軸受89が固定される。
【0048】
インバータケース80は、モータケース61から離れる第1方向である長手方向一方側に延伸しており、その末端部分は、車軸ケース42の後側である車軸側部分46に面する空間であって、車軸120突出側とは反対側の空間S(
図3)に配置される。本例では、インバータケース80の第1方向は車両前後方向に沿い、第2方向は上下方向に沿っている。
【0049】
これにより、本例の構成によれば、インバータケース80をモータケース61から離れる長手方向一方側に延伸させたことにより、インバータ回路の回路基板の面積を大きくできる、薄型で厚み方向に直交する第1方向長さが大きいインバータ90を持つ構成において、インバータケース80と、車両側の他の部品との干渉を防止できる。ここで、干渉する「他の部品」とは、例えば、車両側の搭載スペースに搭載された状態の電気モータ付き車軸駆動装置において、互いに向かい合うインバータケース80もあり得る。
【0050】
さらに、
図6に示すように、電気モータ70を軸方向に見た場合に、インバータケース80の長手方向一方側部分は、モータケース61(
図5)の外周面から径方向外側に突出している。さらに、インバータケース80の長手方向一方側部分は、車軸ケース42に近づく方向に、インバータケース80の長手方向他方側部分より厚みが大きくなっている。これにより、インバータケース80の全体の厚みが過度に大きくなることを防止できるので、モータケース61の端面にインバータケース80を固定する構造で、インバータケース80と他の部品との干渉をより有効に防止できる。
【0051】
また、
図8に示すように、インバータ90の回路基板をインバータケース80の長手方向一方側部分の内側で第1回路基板91と第2回路基板92との2段構成にするなどして、インバータケース80のうち、モータケース61に固定される部分の厚みを小さくできる。これにより、左右両側の車輪22,24を駆動する左右2つの車軸駆動装置40、41が搭載された車両10を全体として見た場合に、左右の車輪22,24の接地面の中心間距離であるトレッドを可及的に狭くできる。
【0052】
図7、
図8に示すように、モータケース61の車軸ケース42に対する複数の取付ボス61bには、ボルト59が挿通支持されている。車軸ケース42には、モータケース61に対する取付開口の周縁部において、前記ボルト59に対応する位置にネジ孔(図示せず)が形成される。
【0053】
図8に示すように、モータケース61の内側空間において、インバータケース80側の端部には、4つの円環板状の導電部材であるバスバーを含むバスバーユニット95が配置される。バスバーユニット95では、U、V、W相の3相のバスバー96u、96v、96wと、中性点バスバー97とが、軸方向に並ぶように略同軸上に配置される。3相のバスバー96u、96v、96wは、電気モータ70のU,V、W相の3相のステータコイル132のそれぞれに接続される。中性点バスバー37は、3相のバスバー96u、96v、96wと電気的に接続される。4つのバスバー96u、96v、96w、97は、絶縁樹脂等の絶縁部材を介して互いに離れて配置されユニット化される。
【0054】
図6、
図8に示すように、3相のバスバー96u、96v、96wのそれぞれにおいて、周方向の互いに異なる位置からは、モータ軸72と平行な車幅方向に沿ってインバータ90側に突出するリード板98が形成される。各リード板98は、インバータケース80の第2板部83とインバータ90の第1回路基板91とを貫通し、第1回路基板91のインバータ90固定側とは反対側の広い空間において、第1回路基板91に設けられて各相に対応する各接続端子99に接続される。
【0055】
インバータケース80の長手方向一方側端の端面には、第1コネクタ101と第2コネクタ102とが外側に突出するように取り付けられる。第1コネクタ101には、電源ユニット38に接続された電力ケーブル94が接続される。これにより、インバータ90は、第1コネクタ101を介して電源ユニット38から電力が供給される。第2コネクタ102は、制御装置100に接続された信号ケーブル93が接続される。これにより、インバータ90は、第2コネクタ102を介して制御装置100との間で信号を送受信可能である。
図1に示すように、車両を車幅方向に見た場合に、車両の運転席17より後側には電源ユニット38が配置される。車両前後方向について、電源ユニット38と制御装置100との間には、インバータケース80が配置される。
【0056】
本例では、インバータケース80は、各コネクタ101,102が後側に向く状態で車両前後方向に延びている。これにより、車両の運転席17より後側に搭載した電源ユニット38とインバータ90とを接続する電力ケーブル94が過度に長くなることを防止できる。また、インバータケース80が車両に支持された状態で、インバータケース80の長い方向である第1方向が車両前後方向に沿っているので、上下両端の最大高さである第2方向最大長さを小さくできる。これにより、インバータケース80と、車両側の他の部品との干渉をより有効に防止できる。
【0057】
なお、実施形態の別例として、各電気モータ付き車軸駆動装置40,41の前後方向の向きを、
図3とは逆にしてもよい。具体的には、
図3では、車軸120に対し前側に電気モータ70が配置されているが、車軸120に対し後側に電気モータ70が配置されてもよい。この場合には、車軸ケース42の入力軸側部分45は後側部分となり、車軸側部分46は前側部分となる。また、モータケース61に固定されるインバータケース80の向きも、
図3の場合と前後方向で逆になり、インバータケース80のモータケース61から離れる長手方向の一方側の末端部分は、前側の車軸側部分に面する空間であって車軸突出側とは反対側の空間に配置される。この場合には、インバータケース80に設けられた第1コネクタ101及び第2コネクタ102が車両前側に向く。これにより、インバータ90と電源ユニット38とを接続する電力ケーブルは長くなるが、インバータ90と制御装置100とを接続する信号ケーブルを短くできる。
【0058】
(第2の実施形態)
図9から
図15は、実施形態の別例である第2の実施形態を示している。
図9は、第2の実施形態の電気モータ付き車軸駆動装置40aを搭載する芝刈り車両10aの一部を断面にして示す側面図である。
図10は、
図9の車両の後部において、一部を省略して示す平面図である。
図11は、
図9の電気モータ付き車軸駆動装置40aを取り出して示す斜視図である。
図12は、車軸駆動装置40aの平面図である。
図13は、電気モータ付き車軸駆動装置40aの車両内側に対応する方向から見た一部を断面にして示す側面図である。
図14は、電気モータ付き車軸駆動装置40aの後面図である。
図15は、
図11からモータインバータ装置60aを取り出して、一部を断面にして示す平面図である。
【0059】
本例の構成では、
図1~
図8の構成と異なり、電気モータ付き車軸駆動装置40aは、車軸ケース42と、モータインバータ装置60aとを含む。モータインバータ装置60aは、モータケース61aと、インバータケース80aと、モータケース61aに収容された走行用の電気モータ70と、インバータケース80aに収容されたインバータ90とを有する。
【0060】
本例の場合には、モータケース61aの本体部62の他端側の端面には、インバータケースは固定されていない。その代わりに本体部62の車幅方向内端面には、モータカバー68がボルトにより結合されることにより、本体部62の他端側開口が塞がれている。さらに、モータケース61aの外周面には、インバータケース80aが固定される。
【0061】
具体的には、本体部62及びモータカバー68の外周面で、後側上部に向いた外壁面にはインバータ固定部69(
図13)が設けられる。
図13に示すように、インバータ固定部69は、インバータケース80aの底面の長手方向他方側に設けられた後述の装着部分81bを突き当て可能である。例えば、インバータ固定部69は、モータケース61の外周面の後側上部に向いた部分から径方向外側に突出したブロック状の突部の先端面に設けられた平坦面により構成される。平坦面は、突部の突出方向に対し直交する。
【0062】
インバータケース80aは、最大厚みTa(
図13)が、厚み方向に直交する第1方向(
図13の矢印A3方向)の最大長さL3(
図13)より小さい扁平形状である。インバータケース80aは、厚み方向に直交し、かつ互いに直交する第1方向及び第2方向(
図14の矢印A4方向)のそれぞれの最大長さL3,L4が、最大厚みTaより大きい。また、インバータケース80aにおいて、第1方向の最大長さL3は第2方向の最大長さL4より大きい。このため、インバータケース80aは、厚み方向に直交する第1方向に長い扁平形状を有する。
【0063】
インバータケース80aは、底部に設けられた第1板部81a(
図13)と、第1板部81aの外周縁から車幅方向外側に伸びる周壁部82aと、周壁部82aの上端の開口を塞ぐ第2板部83aとを有し、
図13に示すように平面視が略L字形状の略箱形状である。例えば、インバータケース80aは、長尺で厚みが小さい直方体状である第1部分85の片側上部に、第1部分85の長手方向長さより短い長さの直方体状である第2部分86が連結された形状を有する。第1部分85の内側に第1回路基板91が収容され、第2部分86の内側に第2回路基板92が収容される。例えば、第2部分86の四隅を貫通したボルトが、第1部分85の片側部分に形成されたネジ孔に結合されることにより、第2部分86が第1部分85に固定される。第1部分85の底部の長手方向他方側端部の平坦面により、インバータ固定部69に突き当て可能な装着部分81bが形成される。
【0064】
インバータケース80aは、複数のボルトによりモータケース61aの上部の後側部分に固定される。このとき、インバータケース80aの第2部分と第1部分とを結合するのに用いたボルトの一部を用いて、インバータケース80aがモータケース61aにネジ結合で固定されてもよい。
【0065】
図13、
図15に示すように、モータケース61aの内側空間において、モータカバー68側の端部に設けられたバスバーユニット95を構成する3相のバスバー96u、96v、96wの周方向に異なる位置には、U,V,W相に対応する3つのリード板98aの一端が接続される。各リード板98aは、モータケース61aの径方向外側に導出される。各リード板98aの導出された他端部は、各リード板98aの中間部を屈曲させた状態で、モータカバー68の周方向一部に設けられたインバータ固定部69内の径方向通路を介して、インバータケース80aの第1部分85内に導かれる。この状態で、各リード板98aの他端部は、第1部分85内の第1回路基板91に設けられた対応する相の接続端子99(
図15)に接続される。
【0066】
本例の場合も、
図1~
図8の構成と同様に、インバータケース80aをモータケース61aから離れる長手方向一方側に延伸させるとともに末端部分は、車軸ケース42の車軸側部分46に面する空間であって車軸突出側とは反対側の空間に配置される。そして、本例の構成では、インバータケース80aの底面の長手方向他方側が、モータケース61aの外周面の上方位置に固定される装着部分81bを有する。このとき、モータケース61aにおけるインバータケース80aのインバータ固定部69は、外周面の上方後側に向いた部分となる。さらに、インバータケース80aは、長手方向一方側の末端部分が上記の装着部分81bより下側になるように、上下方向に対し傾斜している。これにより、インバータケース80aは、モータケース61から離れる後側に向かって下方に傾斜している。このため、インバータケース80aの長手方向に延びる部分が大きくなるのにもかかわらず、インバータケース80aを車幅方向に見て車軸ケース42の外周縁より外側にはみ出す量を小さくできる。
【0067】
したがって、モータケース61aの外周面にインバータケース80aを固定する構造で、インバータケース80aと他の部品との干渉をより有効に防止できる。
【0068】
また、インバータケース80aの長手方向一方側端の端面からは第1コネクタ101が突出し、インバータケース80aの長手方向他方側端の端面からは第2コネクタ102が突出する。インバータ90は、第1コネクタ101と、第1コネクタ101に接続された電力ケーブル94aとを介して、電源ユニット38から電力が供給される。一方、インバータ90は、第2コネクタ102と、第2コネクタ102に接続された信号ケーブル93aとを介して、制御装置100との間で信号を送受信可能である。
【0069】
本例では、電気モータ付き車軸駆動装置40a、41aが車両に搭載された状態で、インバータケース80aの前後方向両側の端面には、第1コネクタ101及び第2コネクタ102が異なる向きで(反対方向に)突出するように取り付けられる。これにより、車両の運転席17より後側に搭載した電源ユニット38とインバータ90とを接続する電力ケーブル94aが過度に長くなることを防止できる。また、車両の運転席17の下側に搭載した制御装置100とインバータ90とを接続する信号ケーブル93aが過度に長くなることを防止できる。
【0070】
上記では、左車輪用の電気モータ付き車軸駆動装置40aを説明したが、右車輪用の電気モータ付き車軸駆動装置41aの構造は、左車輪用の電気モータ付き車軸駆動装置40aの構造と、車両幅方向中央に関し対称である以外、同様である。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図8の構成と同様である。
【0071】
なお、実施形態の別例として、各電気モータ付き車軸駆動装置40a、41aの前後方向の向きを、
図11とは逆にしてもよい。具体的には、
図11では、車軸120に対し前側に電気モータ70が配置されているが、車軸120に対し後側に電気モータ70が配置されてもよい。この場合には、車軸ケース42の入力軸側部分45は後側部分となり、車軸側部分46は前側部分となる。また、モータケース61aに固定されるインバータケース80aは、
図11の場合と前後方向で逆になる。また、モータケース61aにおけるインバータケース80aの固定部は、上方前側に向いた部分となり、インバータケース80aは、モータケース61aから離れる前側に向かって下方に傾斜する。
【符号の説明】
【0072】
10,10a 芝刈り車両、16 メインフレーム、17 運転席、18 キャスタ輪、22,24 車輪、25 芝刈装置、26 モアデッキ、27 芝刈りブレード、28 電気モータ、30 軸部材、36 操作レバー、38 電源ユニット、40,41,40a、41a 電気モータ付き車軸駆動装置、42 車軸ケース、44 第1ケース、45 入力軸側部分、46 車軸側部分、48 第2ケース、50 第3ケース、58,59 ボルト、60,60a モータインバータ装置、61,61a モータケース、61b 取付ボス、62 本体部、63 フランジ、64 開口、65 ネジ孔、66、67 ボルト、68 モータカバー、69 インバータ固定部、70 電気モータ、72 モータ軸、73 モータロータ、74 連結部材、75 筒部、76 第1ブレーキロータ、80,80a インバータケース、81,81a 第1板部、81b 装着部分、82,82a 周壁部、83,83a 第3板部、84 筒部、85 第1部分、86 第2部分、87 第1ケース、88 第2ケース、89 軸受、90 インバータ、91 第1回路基板、92 第2回路基板、93,93a 信号ケーブル、94,94a 電力ケーブル、95 バスバーユニット、96u、96v、96w バスバー、97 中性点バスバー、98、98a リード板、99 接続端子、100 制御装置、101 第1端子、102 第2端子、110 入力軸、111 第1はすば歯車、112 中間歯車軸、112a 外軸、112b 中間歯車部、113 第2はすば歯車、113a 内歯、114 出力歯車、120 車軸、121 ハブ、130 歯車機構、131 ステータコア、132 ステータコイル、140 第2ブレーキロータ。