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特開2024-146426二酸化炭素分離膜及び二酸化炭素分離膜モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146426
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離膜及び二酸化炭素分離膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/82 20060101AFI20241004BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20241004BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20241004BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20241004BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20241004BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20241004BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B01D71/82
B01D53/22
B01D69/00
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/06
B01D71/70 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059313
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】竹田 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】満保 章泰
(72)【発明者】
【氏名】安井 知己
(72)【発明者】
【氏名】谷 賢輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悠里
(72)【発明者】
【氏名】西山 真哉
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA61
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA21
4D006MA31
4D006MC01
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC04
4D006MC05
4D006MC07X
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC24
4D006MC28
4D006MC29
4D006MC37X
4D006MC38X
4D006MC39
4D006MC46
4D006MC47
4D006MC48
4D006MC49
4D006MC53
4D006MC54
4D006MC55
4D006MC58
4D006MC62
4D006MC65
4D006MC72X
4D006NA03
4D006NA46
4D006NA64
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB19
4D006PB64
4D006PB66
(57)【要約】
【課題】簡便な手順で形成でき、十分な二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度を有する二酸化炭素分離膜及び二酸化炭素分離膜モジュールを提供する。
【解決手段】第一層と、多孔性の第二層と、上記第一層と上記第二層との間に配置され、シリコーン樹脂を含む中間層とを備えた二酸化炭素分離膜であり、上記第一層が、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、アニオン及び有機カチオンからなる常温溶融塩(B)とを含む層であり、上記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、N,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミドであり、上記常温溶融塩(B)の重量が、上記共重合体(A)及び上記常温溶融塩(B)の合計重量に対して、95重量%以下である二酸化炭素分離膜。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一層と、
多孔性の第二層と、
前記第一層と前記第二層との間に配置され、
シリコーン樹脂を含む中間層とを備えた二酸化炭素分離膜であり、
前記第一層が、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、
アニオン及び有機カチオンからなる常温溶融塩(B)とを含む層であり、
前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、N,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミドであり、
前記常温溶融塩(B)の重量が、前記共重合体(A)及び前記常温溶融塩(B)の合計重量に対して、95重量%以下である二酸化炭素分離膜。
【請求項2】
前記有機カチオンが下記一般式(1)で表されるカチオンである請求項1に記載の二酸化炭素分離膜。
[一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基を表す。]
【化1】
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)が、グリシジル(メタ)アクリレートであり、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)が、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドである請求項1に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)及び前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)の合計重量を基準とした前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)の重合割合が5~30重量%である請求項1に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項5】
前記常温溶融塩(B)の重量が、前記共重合体(A)及び前記常温溶融塩(B)の合計重量に対して、80重量%以上95重量%以下である請求項1に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項6】
前記第一層の厚さが20μm以下である、請求項1に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離膜を有する二酸化炭素分離膜モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離膜及び二酸化炭素分離膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に伴う気候変動が問題となっている。
地球温暖化に最も大きな影響を及ぼす温室効果ガスは二酸化炭素であると言われており、二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離、回収する技術について研究が盛んに行われている。
【0003】
二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離、回収する技術として、運転コストを抑えながら酸性ガスを効率的に分離することができる膜分離法が開発されている。膜分離法に用いられる分離膜としては、分離機能を有する層と多孔性の層とで形成された複合膜が挙げられる。この複合膜の分離機能層の膜厚を小さくすれば、酸性ガスの透過速度は向上する。分離機能層の膜厚をより小さくするために、特許文献1のように分離機能層と多孔性支持体との間に中間層が配置されることもあるものの、分離機能を低下させずに透過速度をさらに向上させることが求められている。
【0004】
また、分離機能を有する層に用いられる材料として二酸化炭素吸収量に優れることからイオン液体(常温溶融塩ともいう)が注目を集めている。
【0005】
例えば、特許文献2では、イオン液体とポリビニルアルコールとを含むゲル形成性組成物を、加熱乾燥することで得られる気体分離ゲル膜が提案されている。簡便な操作で混合物からゲル膜が得られるものの、ゲル形成性組成物中のイオン液体の濃度が高い場合に、形成されるゲル膜からイオン液体が漏洩する問題があった。
【0006】
特許文献3では、異なる反応性官能基を有する2種のポリマーを含むゲル形成性組成物から製造されたハイドロゲルを乾燥脱水して得られる脱水物を、イオン液体に浸漬することで得られるゲル状薄膜が提案されている。ゲル形成性組成物中において2種のポリマーが反応し、形成される網目構造により、ゲル状薄膜からイオン液体が漏洩しないものの、ゲル形成性組成物中において2種のポリマーが徐々に反応するため、ゲル形成性組成物の製造プロセスが煩雑で制御が難しい。またハイドロゲルを乾燥脱水して脱水物を形成させる工程や脱水物をイオン液体に浸漬する工程があり、イオン液体ゲルを得ることが容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-160159号公報
【特許文献2】特許5877961号公報
【特許文献3】特開2013-60504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、簡便な手順で形成でき、十分な二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度を有する二酸化炭素分離膜及び二酸化炭素分離膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、第一層と、多孔性の第二層と、上記第一層と上記第二層との間に配置され、シリコーン樹脂を含む中間層とを備えた二酸化炭素分離膜であり、上記第一層が、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、アニオン及び有機カチオンからなる常温溶融塩(B)とを含む層であり、上記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、N,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミドであり、上記常温溶融塩(B)の重量が、上記共重合体(A)及び上記常温溶融塩(B)の合計重量に対して、95重量%以下である二酸化炭素分離膜である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な手順で形成でき、十分な二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度を有する二酸化炭素分離膜及び二酸化炭素分離膜モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
[二酸化炭素分離膜]
本発明の二酸化炭素分離膜は、第一層と、多孔性の第二層と、上記第一層と上記第二層との間に配置され、シリコーン樹脂を含む中間層とを備えた二酸化炭素分離膜である。以下、各層について詳細に説明する。
【0013】
[第一層]
第一層は、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、アニオン及び有機カチオンからなる常温溶融塩(B)とを含む層であり、上記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、N,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミドであり、上記常温溶融塩(B)の重量が、上記共重合体(A)及び上記常温溶融塩(B)の合計重量に対して、95重量%以下である。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルを意味し、(メタ)アクリルアミドとは、メタクリルアミド又はアクリルアミドを意味する。
【0014】
<(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)>
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)は、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル系モノマーである。グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、1分子内に1つ以上のアクリロイル基と1つ以上のグリシジル基とを有する化合物であればよく、アクリロイル基とグリシジル基とを1つずつ有する化合物であってもよいし、2つ以上のアクリロイル基と2つ以上のグリシジル基とを有する化合物であってもよい。例えば、2つのアクリロイル基を有するジアクリレートや、2つのエポキシ基を有するジグリシジルエーテルであってもよく、特に限定されるものではない。
【0015】
グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)としては、グリシジル(メタ)アクリレート{化学式量:128(142)}、グリシジルオキシアルキル(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:172(186)}、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:186(200)}、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:186(200)}、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:200(214)}、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:200(214)}、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:214(228)}、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:228(242)}、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:214(228)}、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:278(292)}等]、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:354(398)}、下記の一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、及び下記の一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー等が挙げられる。なお、化合物名に続けて、アクリレートの化学式量と、メタアクリレートの化学式量とを続けて記載し、このうちのメタアクリレートの化学式量は括弧内に記載した。
【0016】
CH=CR-C(O)O-(RO)n-X (2)
【0017】
一般式(2)において、RはH又はCHであり、RとしてはHが好ましい。
【0018】
はグリシジル基を示す。
【0019】
はCHCH又はCHCH(CH)であり、nは2以上の整数であり、1分子中に2つ以上あるRは全て同じであっても、異なっていても良い。Rが全てCHCHである場合、nの上限は8であり、Rが全てCHCH(CH)である場合、nの上限は6である。1分子中に2個以上含まれるRとしてCHCHとCHCH(CH)とを含む場合、nの上限は1分子中にRがCHCH(CH)であるROが6つ及び7つある場合を除き、8である。
nとしては2又は3が好ましい。
【0020】
としてCHCHとCHCH(CH)とを含む場合、ROで表されるエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の結合の態様に制限はなく、規則性をもって結合(ブロック結合、又は交互結合等)していてもランダムに結合していても良い。
としてCHCHとCHCH(CH)とを含む場合、結合の態様としてはランダムに結合していることが好ましい。
【0021】
としてCHCHとCHCH(CH)とを含む場合、CHCHとCHCH(CH)の数は、それぞれ1又は2が好ましい。
【0022】
としてはCHCHが好ましい。
【0023】
一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、グリシジルエーテルジエチレングリコール(メタ)アクリレート{化学式量:216、(230)}、グリシジルエーテルトリエチレングリコール(メタ)アクリレート{化学式量:260、(274)}、グリシジルエーテルジプロピレングリコール(メタ)アクリレート{化学式量:244、(258)}、及びグリシジルエーテルトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート{化学式量:302、(316)}等が挙げられる。なお、化合物名に続けて、アクリレートの化学式量と、メタアクリレートの化学式量とを続けて記載し、このうちのメタアクリレートの化学式量は括弧内に記載した。
【0024】
グリシジルエーテルジエチレングリコール(メタ)アクリレートは、一般式(2)における、RがH又はCH、RがCHCH、nが2、Xがグリシジル基である化学式で表される。グリシジルエーテルトリエチレングリコール(メタ)アクリレートは、一般式(2)における、RがH又はCH、RがCHCH、nが3、Xがグリシジル基である化学式で表される。グリシジルエーテルジプロピレングリコール(メタ)アクリレートは、一般式(2)における、RがH又はCH、RがCHCH(CH)、nが2、Xがグリシジル基である化学式で表される。グリシジルエーテルトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートは、一般式(2)における、RがH又はCH、RがCHCH(CH)、nが3、Xがグリシジル基である化学式で表される。
【0025】
CH=CR-C(O)O-(RO)p-[RO]q-X (3)
【0026】
一般式(3)において、RはH又はCHであり、RとしてはHが好ましい。
【0027】
はグリシジル基を示す。
【0028】
はCHCHである。pは1以上3以下の整数である。
pとしては1又は2が好ましい。
【0029】
はCHCHCHCHである。qは1以上3以下の整数である。
qとしては1又は2が好ましい。
【0030】
一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、グリシジルエーテルブチレングリコールエチレングリコールエーテル(メタ)アクリレート{化学式量:244、(258)}、グリシジルエーテルジブチレングリコールエチレングリコールエーテル(メタ)アクリレート{化学式量:316、(330)}、及びグリシジルエーテルブチレングリコールジエチレングリコールエーテル(メタ)アクリレート{化学式量:288、(302)}等が挙げられる。なお、化合物名に続けて、アクリレートの化学式量と、メタアクリレートの化学式量とを続けて記載し、このうちのメタアクリレートの化学式量は括弧内に記載した。
【0031】
グリシジルエーテルブチレングリコールエチレングリコールエーテル(メタ)アクリレートは、一般式(3)における、pが1、qが1、Xがグリシジル基である化学式で表される。グリシジルエーテルジブチレングリコールエチレングリコールエーテル(メタ)アクリレートは、一般式(3)における、pが1、qが2、Xがグリシジル基である化学式で表される。グリシジルエーテルブチレングリコールジエチレングリコールエーテル(メタ)アクリレートは一般式(3)における、pが2、qが1、Xがグリシジル基である化学式で表される。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)の化学式量は二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、128~500が好ましく、128~400が更に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)の化学式量は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)の化学式から算出することができる。
【0033】
なかでも、二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、{化学式量:128(142)}、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:172(186)}、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:186(200)}、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:186(200)}、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:200(214)}、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:200(214)}、及び、一般式(2)で表される化合物が好ましく、グリシジル(メタ)アクリレート{化学式量:128(142)}が更に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)としては、1種類を単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0034】
<(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)>
(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、化学式量が500以下である。
【0035】
(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)としては、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、及びN,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれる。
【0036】
N-置換(メタ)アクリルアミドとしては、次の一般式(4)で示すことができる化合物等が挙げられる。
【0037】
CH=CR-C(O)-NH(R) (4)
【0038】
一般式(4)中、RはH又はCH、Rは炭素数が1~28のアルキル基又は炭素数が6~28のアリール基を示す。
【0039】
で表される炭素数が1~28のアルキル基としては、メチル基、エチル基、炭素数が3~28の直鎖アルキル基、及び炭素数が3~28の分岐アルキル基等があげられ、直鎖アルキル基としてプロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基等があげられ、分岐アルキル基としてはイソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、及び2,2-ジメチルプロピル基等があげられる。二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基、及び炭素数が3~6の分岐アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、及びイソプロピル基が更に好ましい。
【0040】
で表される炭素数が6~28のアリール基としては、フェニル基、置換フェニル基(1つのフェニル基を有する炭化水素基)、2つ以上のフェニル基を有する炭化水素基(フェニル基及び置換フェニル基を除く)、及び縮合多環芳香族炭化水素基が挙げられ、置換フェニル基としては、メチルフェニル基、及びジメチルフェニル基等が挙げられ、2つ以上のフェニル基を有する炭化水素基としては、ビフェニル基、及びトリフェニルメチル基が挙げられ、縮合多環芳香族炭化水素基としては、ナフチル基、及びフェナントレン基が挙げられる。二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、フェニル基、及び炭素数が6~12の置換フェニル基が好ましく、フェニル基、及びメチルフェニル基が更に好ましい。
【0041】
一般式(4)で示すことができる化合物としては、N-メチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:85、(99)}、N-エチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:99、(113)}、及びN-イソプロピル(メタ)アクリルアミド{化学式量:113、(127)}等があげられる。なお、化合物名に続けて、アクリレートの化学式量と、メタアクリレートの化学式量とを続けて記載し、このうちのメタアクリレートの化学式量は括弧内に記載した。
【0042】
N,N-二置換(メタ)アクリルアミドとしては、次の式(5)で示すことができる化合物等が挙げられる。
【0043】
CH=CR10-C(O)-NR11(R12) (5)
【0044】
一般式(5)中、R10はH又はCH、R11及びR12はそれぞれ炭素数が1~27のアルキル基又は炭素数が6~27のアリール基であり、R11の炭素数とR12の炭素数との合計は2~28個である。
【0045】
11及びR12で表される炭素数が1~27のアルキル基としては、それぞれ、メチル基、エチル基、炭素数が3~27の直鎖アルキル基、及び炭素数が3~27の分岐アルキル基等があげられ、直鎖アルキル基としてプロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基等があげられ、分岐アルキル基としてはイソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、及び2,2-ジメチルプロピル基等があげられる。二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、R11及びR12はそれぞれ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基、及び炭素数が3~6の分岐アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、及びイソプロピル基が更に好ましい。
【0046】
11及びR12で表される炭素数が6~27のアリール基としては、フェニル基、置換フェニル基(1つのフェニル基を有する炭化水素基)、2つ以上のフェニル基を有する炭化水素基(フェニル基及び置換フェニル基を除く)、及び縮合多環芳香族炭化水素基が挙げられ、置換フェニル基としては、メチルフェニル基、及びジメチルフェニル基等が挙げられ2つ以上のフェニル基を有する炭化水素基としては、ビフェニル基、及びトリフェニルメチル基が挙げられ、縮合多環芳香族炭化水素基としては、ナフチル基、及びフェナントレン基が挙げられる。中でも二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、フェニル基、及び炭素数が6~12の置換フェニル基等が好ましく、フェニル基、及びメチルフェニル基等が更に好ましい。
【0047】
一般式(5)で表されるN,N-二置換(メタ)アクリルアミドとしては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:99、(113)}、及びN,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:127、(141)}等があげられる。なお、化合物名に続けて、アクリレートの化学式量と、メタアクリレートの化学式量とを続けて記載し、このうちのメタアクリレートの化学式量は括弧内に記載した。
【0048】
(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)の化学式量は二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、71~500が好ましく、71~400が更に好ましい。
【0049】
二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)としては、(メタ)アクリルアミド{化学式量:71、(85)}、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド{化学式量:113、(127)}、及びN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:99、(113)}が好ましく、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:99、(113)}であることが更に好ましい。
(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)としては、1種類を単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0050】
<共重合体(A)>
共重合体(A)は、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を必須構成単量体とする。また、共重合体(A)を構成する単量体の結合の順番に制限はなく、ブロック重合体でもよく、ランダム重合体でもよい。
【0051】
共重合体(A)は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)と少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を単量体として用いていればよく、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)及び(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、それぞれ2種以上を用いてもよい。
【0052】
共重合体(A)は、単量体として他のモノマー(a3)を含んでいてもいい。他のモノマー(a3)として好ましいものとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0053】
本発明の共重合体(A)において、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)及び(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)の合計重量を基準とした(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)の重合割合は、二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、好ましくは5~30重量%であり、更に好ましくは15~20重量%である。
【0054】
共重合体(A)が、単量体として他のモノマー(a3)を含む場合、他のモノマー(a3)の重量割合は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)、(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)及び他のモノマー(a3)の合計重量を基準として0.1~10重量%が好ましい。
【0055】
共重合体(A)としては、ポリ(N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ(N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ((メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ(N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド-co-4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル)、ポリ(N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド-co-4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル)、及びポリ((メタ)アクリルアミド-co-4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル)等が挙げられ、ゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から、好ましくは、ポリ(N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ(N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、及びポリ((メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、より好ましくは、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)である。
【0056】
共重合体(A)において、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)が、グリシジル(メタ)アクリレートであり、(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)が、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドであることが好ましい。共重合体(A)は、構成単量体として、グリシジル(メタ)アクリレート及びN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドのみを含む共重合体であってもよい。
【0057】
共重合体(A)がポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)である場合、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)であるグリシジルメタクリレートの重量割合は、N,N-ジメチルアクリルアミドとグリシジルメタクリレートとの合計重量に基づいて、5~30重量%であることが好ましい。
【0058】
本発明の共重合体(A)の重量平均分子量は、二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、好ましくは50,000~5,000,000であり、更に好ましくは100,000~2,000,000である。共重合体(A)の重量平均分子量は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、実施例においてもGPCにより下記測定条件でMwを求めた。
【0059】
<共重合体(A)重量平均分子量(Mw)の測定条件>
装置:「HLC-8320」[東ソー(株)製]
カラム:「TSK GEL α-M」[東ソー(株)製]
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別したもの)
溶液注入量:100μl
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0060】
共重合体(A)は、公知の方法により製造することができ、なかでも溶液重合法が好ましい。
【0061】
溶液重合法としては、例えば酢酸エチル等の溶剤中に単量体組成物((メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)及び(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)並びに必要により用いる他のモノマー(a3)を含む単量体組成物)と重合開始剤[アゾビスイソブチロニトリル、及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]とを滴下して重合する方法が挙げられる。重合温度は、グリシジル基保護の観点から、好ましくは60~230℃、さらに好ましくは70~180℃である。
【0062】
<常温溶融塩(B)>
本発明のゲル形成性組成物は、常温溶融塩(B)を含む。
常温溶融塩(B)は、アニオン及び有機カチオンからなる。
【0063】
有機カチオンは、下記一般式(1)で表されるカチオンであることが好ましい。
【0064】
【化1】
【0065】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0066】
及びRで表される炭素数1~6のアルキル基としては、炭素数1~6の直鎖アルキル基、及び炭素数3~6の分岐アルキル基等があげられ、直鎖アルキル基としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基等があげられ、分岐アルキル基としてはイソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、及び2,2-ジメチルプロピル基等が挙げられる。中でもメチル基、エチル基、及び炭素数が3~4の分岐アルキル基が二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から好ましく、メチル基、エチル基が更に好ましい。
【0067】
上記カチオンとしては、1,3-ジメチル-イミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチル-イミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、及び、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
なかでも、二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、好ましくは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-イミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチル-イミダゾリウムカチオン及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンであり、更に好ましくは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンである。
【0068】
アニオンは、有機カチオンと組み合わせて常温溶融塩を形成するものであれば特に制限はない。
【0069】
アニオンとしては、PF 、BF 、BF(CF、F、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、NO 、(NC)、(FSO、(CFSO、(CFCFSO、(CFSO、CHCOO、CHCHCOO、(CHCCOO、(CHO)CHCOO、CFCOO、CFCFCFCOO、CFSO 、CF(CFSO 、AsF 、及びSbF 等が挙げられる。
【0070】
アニオンは二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、好ましくはBF 、(NC)、(FSO、(CFSO、(CFCFSO、(CFSO、CHCOO、CHCHCOO、(CHCCOO、及び(CHO)CHCOOであり、更に好ましくは、BF [テトラフルオロボレート]、(FSO[ビス(フルオロスルホニル)イミド]、(NC)[ジシアナミド]及びCHCHCOO[プロピオネート]である。
【0071】
常温溶融塩(B)としては、二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオネートが好ましい。
本発明の酸性ガス吸収用組成物は、2種以上の常温溶融塩(B)を含んでも良い。
【0072】
常温溶融塩(B)は、公知の方法により製造することができ、例えば、ハロゲン化アルキル法、炭酸ジアルキル法、直接アルキル化法等により製造することができる。
【0073】
<その他の成分(C)>
第一層は、共重合体(A)及び常温溶融塩(B)以外の成分(以下、その他の成分(C))を含んでも良い。その他の成分(C)とは例えば、架橋剤、増粘剤、架橋反応触媒、溶媒及びその他の添加剤が挙げられる。なお、ここでいう架橋剤とは2つ以上のグリシジル基と反応する多官能化合物である。
【0074】
架橋剤としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、及びドデカン二酸等が挙げられる。架橋剤として好ましくは、二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミンであり、好ましくは、ペンタエチレンヘキサミンである。
【0075】
増粘剤としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びキサンタンガム等が挙げられる。
【0076】
架橋反応触媒としては、サリチル酸、グリコール酸、及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等が挙げられる。
【0077】
溶媒としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及び1-ブタノール等が挙げられる。溶媒として好ましくは、ゲル形成性組成物の溶媒への溶解性の観点から、酢酸エチル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、及び1-ブタノールであり、好ましくは、酢酸エチル、2-プロパノール、及びメタノールである。
【0078】
その他の添加剤としては、濡れ剤等が挙げられる。濡れ剤としては、KP-112(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0079】
第一層において、常温溶融塩(B)の重量は、共重合体(A)及び常温溶融塩(B)の合計重量に対して95重量%以下である。常温溶融塩(B)の重量は、共重合体(A)及び常温溶融塩(B)の合計重量に対して、80重量%以上95重量%以下であることが好ましい。
【0080】
第一層において、共重合体(A)の重量は、共重合体(A)及び常温溶融塩(B)の合計重量に対して5重量%以上である。共重合体(A)の重量は、共重合体(A)及び常温溶融塩(B)の合計重量に対して、5重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
【0081】
第一層の膜厚は、特に限定されないが、二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度の観点から、20μm以下であることが好ましい。
【0082】
[第二層]
第二層は多孔性の薄膜であり、中間層を介して第一層を支持する。第二層としては、例えば、限外ろ過膜;不織布;多孔質ポリテトラフルオロエチレン;芳香族ポリアミド繊維;多孔質金属;焼結金属;多孔質セラミック;多孔質ポリエステル;多孔質ナイロン;活性化炭素繊維;ラテックス;シリコーン;シリコーンゴム;透過性(多孔質)ポリマー;連続気泡又は独立気泡を有する金属発泡体;連続気泡又は独立気泡を有するポリマー発泡体;シリカ;多孔質ガラス;メッシュスクリーンなどが挙げられる。第二層は、これらのうちの2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0083】
透過性(多孔質)ポリマーは、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド及びポリフェニレンオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む透過性(多孔質)ポリマーであって良い。
【0084】
第二層の膜厚は、特に限定されず、例えば10μm以上であり、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは50μm以上である。第二層の厚さは、例えば300μm以下であり、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは150μm以下である。
【0085】
第二層の孔の大きさは、0.001~1.0μmが好ましく、0.01~0.4μmであることがより好ましい。孔の大きさが0.001μmより小さいと気体の透過性を阻害し、孔の大きさが1.0μmより大きいと中間層が第二層の孔に浸透する可能性がある。
【0086】
[中間層]
中間層は、シリコーン樹脂を含む。シリコーン樹脂としては、例えばシリコーンゴム、シリコーン粘着剤及びポリトリメチルシリルプロピン(PTMSP)等が挙げられる。本明細書において、ポリトリメチルシリルプロピン(PTMSP)等のシリコン含有ポリアセチレンもシリコーン樹脂に含まれる。
【0087】
中間層の膜厚は、特に限定されず、例えば50μm未満であり、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。中間層の厚さは、例えば0.5μm以上であり、1μm以上であってもよい。
【0088】
[二酸化炭素分離膜の製造方法]
二酸化炭素分離膜の製造方法の例を以下に記載する。二酸化炭素分離膜の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではなく、上述した二酸化炭素分離膜が得られれば、どのような製造方法でもよい。
まず、シリコーン樹脂(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製YSR3022)の6wt%デカン溶液を多孔性支持体の上に塗布した。多孔性支持体は、本発明の二酸化炭素分離膜の第二層となる。多孔性支持体としては、限外ろ過膜(日東電工株式会社製のNTU-3175M)を用いた。デカン溶液の塗布は、ロールコータ―を用いて、乾燥後の中間層の膜厚が所望の値となるように厚みを調節して塗工した。次に、得られた塗布膜を130℃で5分乾燥させた。これにより、中間層と第二層からなる積層体を得た。次に、第一層の材料を含む塗布液を調製した。中間層と第二層とからなる膜の上に塗布液を塗布し、塗布膜を得た。塗布液の塗布方法は、特に限定されず、例えばスピンコート法を利用できる。スピンコーターの回転数、塗布液における第一層の材料の濃度などを調節することによって、塗布膜から形成される第一層の厚さを調節することができる。次に、塗布膜を乾燥し、第一層を形成した。塗布膜の乾燥は、例えば、加熱条件下で行うことができる。塗布膜の加熱温度は、例えば50℃以上である。塗布膜の加熱時間は、例えば120分以上であり、300分以上であってもよい。
【0089】
[二酸化炭素の透過速度]
本発明の二酸化炭素分離膜は、効率的にガスを分離することができるため二酸化炭素の透過速度を容易に高くすることができる。
二酸化炭素の透過速度Qは、例えば50GPU以上であり、好ましくは80GPU以上である。ただし、GPUは、10-6・cm(STP)/(sec・cm・cmHg)を意味する。cm(STP)は、1気圧、0℃での二酸化炭素の体積を意味する。二酸化炭素の透過速度Qは次の方法で算出される。
【0090】
まず、分離膜の一方の面(例えば分離膜の第一層側の主面)に隣接する空間に、二酸化炭素及び水素からなる混合気体を供給する。これにより、分離膜の他方の面(例えば分離膜の第二層の主面)に隣接する空間において、分離膜を透過した透過流体が得られる。透過流体の重量、並びに、透過流体における二酸化炭素の体積比率及び水素の体積比率を測定する。測定結果から実施例に記載の数式(1)を用いて、透過速度Qを算出できる。上記の操作において、混合気体における二酸化炭素の濃度は、標準状態(0℃、1atm)で50vol%である。分離膜の一方の面に隣接する空間に供給される混合気体は、温度が30℃であり、圧力が0.1MPaである。
【0091】
[二酸化炭素分離膜モジュール]
本発明の二酸化炭素分離膜モジュールは、本発明の二酸化炭素分離膜を有する。二酸化炭素分離膜モジュールの形状は特に限定されないが、平膜状の分離膜を渦巻き状に巻き付けて構成されるスパイラル型をしていてもよい。
【0092】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0093】
本開示(1)は、第一層と、多孔性の第二層と、前記第一層と前記第二層との間に配置され、シリコーン樹脂を含む中間層とを備えた二酸化炭素分離膜であり、前記第一層が、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、アニオン及び有機カチオンからなる常温溶融塩(B)とを含む層であり、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、N,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミドであり、前記常温溶融塩(B)の重量が、前記共重合体(A)及び前記常温溶融塩(B)の合計重量に対して、95重量%以下である二酸化炭素分離膜である。
【0094】
本開示(2)は、前記有機カチオンが下記一般式(1)で表されるカチオンである本開示(1)に記載の二酸化炭素分離膜である。
[一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基を表す。]
【化2】
【0095】
本開示(3)は、前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)が、グリシジル(メタ)アクリレートであり、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)が、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドである本開示(1)又は(2)に記載の二酸化炭素分離膜である。
【0096】
本開示(4)は、前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)及び前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)の合計重量を基準とした前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)の重合割合が5~30重量%である本開示(1)~(3)のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離膜である。
【0097】
本開示(5)は、前記常温溶融塩(B)の重量が、前記共重合体(A)及び前記常温溶融塩(B)の合計重量に対して、80重量%以上95重量%以下である本開示(1)~(4)のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離膜である。
【0098】
本開示(6)は、前記第一層の厚さが20μm以下である、本開示(1)~(5)のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離膜である。
【0099】
本開示(7)は、本開示(1)~(6)のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離膜を有する二酸化炭素分離膜モジュールである。
【実施例0100】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。以下の記載において、特記しない場合、「部」は重量部を意味する。
【0101】
<製造例1 共重合体(A-1)の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入口を備えた反応容器に、酢酸エチル140部を仕込み、撹拌下、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、加熱還流した。次に、N,N-ジメチルアクリルアミド89.3部、グリシジルメタクリレート15.7部、酢酸エチル112部、及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1部を混合したものを、3時間かけて滴下して重合を行った。さらに加熱還流したまま2時間反応を継続した。さらに、減圧下、脱溶剤を行い、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)(重量平均分子量:約100万)が得られた。
【0102】
<製造例2 共重合体(A-2)の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入口を備えた反応容器に、酢酸エチル140部を仕込み、撹拌下、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、加熱還流した。次に、N,N-ジメチルアクリルアミド84部、グリシジルメタクリレート21部、酢酸エチル112部、及び2,2’アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1部を混合したものを、3時間かけて滴下して重合を行った。さらに加熱還流したまま2時間反応を継続した。さらに、減圧下、脱溶剤を行い、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)(重量平均分子量:約100万)が得られた。
【0103】
<製造例3 常温溶融塩(B-2)の製造>
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を取り付けた反応フラスコに、グリオキザール(40%水溶液)18重量部及びホルマリン(37%水溶液)10重量部の混合物を仕込み、撹拌しながら均一溶液にし、窒素ガスを僅かに流しながら40℃に昇温した。その後反応温度を35~45℃に保ちながら滴下ロートからエチルアミン(70%水溶液)64重量部とアンモニア(28%水溶液)61重量部の混合液を滴下した。
次に、エチルアミンとアンモニアの混合液を滴下し始めてから35分後に、別の滴下ロートからグリオキザール(40%水溶液)127重量部とホルマリン(37%水溶液)71重量部の混合液を4時間かけて滴下した。エチルアミンとアンモニアの混合液は4時間35分かけて滴下し、エチルアミンとアンモニアの混合液の滴下終了と同時にグリオキザールとホルマリンの混合液の滴下を終了させるように滴下開始時間をずらした。滴下が終了したのち、40℃でさらに1時間反応させた。次に、温度を80℃に保ち、常圧から徐々に減圧度5.3kPaまで減圧し脱水を行い、粗1-エチルイミダゾールを得た。続いて、温度100℃、減圧度0.7kPaの条件で単蒸留により精製し、1-エチルイミダゾールを得た。
次に、還流コンデンサ付きステンレス製オートクレーブに、得られた1-エチルイミダゾール96重量部、炭酸ジメチル135重量部、及びメタノール192重量部を仕込み均一に溶解させた。次いで、150℃まで昇温した。圧力約0.8MPaで70時間反応を行い、反応物を得た。反応物のH-NMR分析を行ったところ1-エチル-3-メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩が生成していることが分かった。
得られた反応物423重量部(塩純分44重量%)をフラスコに取り、撹拌下にプロピオン酸74重量部を室温下約30分かけて徐々に滴下した。滴下に伴い、炭酸ガスの泡が発生した。滴下終了後、泡の発生がおさまった後、反応液をロータリーエバポレーターに移し、溶媒を全量留去した。フラスコ内に無色透明の液体184重量部を得た。
この液体をH-NMR分析した結果、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオネートであった。
【0104】
<実施例1>
シリコーン樹脂(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製YSR3022)の6wt%デカン溶液を多孔性支持体の上に塗布した。多孔性支持体は、二酸化炭素分離膜の第二層となる。多孔性支持体としては、限外ろ過膜(日東電工株式会社製NTU-3175M)を用いた。デカン溶液の塗布は、ロールコータ―を用いて、乾燥後の中間層の膜厚が0.6μmとなるように厚みを調節して塗工した。次に、得られた塗布膜を130℃で5分乾燥させた。これにより、中間層と第二層からなる積層体を得た。次に、表1に記載した第一層の材料を含む塗布液を調製した。中間層と第二層からなる積層体の上に塗布液を塗布し、スピンコート法により溶液を塗布した。スピンコーターの回転数は1000rpmとした。次に、第一層の材料を塗布した膜を60℃で300分間乾燥することで、第一層の材料を硬化させることによって第一層を形成し、二酸化炭素分離膜を得た。実施例1では、第一層の硬化後の膜厚が1.7μmの二酸化炭素分離膜が得られた。
【0105】
<実施例2>
実施例1における第一層の塗工条件(スピンコーターの回転数)を500rpmに変更することを除いて、実施例1と同じ方法で分離膜を得た。実施例2では、第一層の硬化後の膜厚が1.9μmの二酸化炭素分離膜が得られた
【0106】
<実施例3>
実施例1における第一層の塗工条件(スピンコーターの回転数)を200rpmに変更することを除いて、実施例1と同じ方法で分離膜を得た。実施例3では、第一層の硬化後の膜厚が3.4μmの二酸化炭素分離膜が得られた。
【0107】
<実施例4>
実施例1における第一層の硬化条件を80℃で60分乾燥した後150℃で60分乾燥に変更することを除いて、実施例1と同じ方法で分離膜を得た。実施例4では、第一層の硬化後の膜厚が1.3μmの二酸化炭素分離膜が得られた。
【0108】
<実施例5>
実施例1における第一層の溶媒を表1に記載の量のメタノールと酢酸エチルに変更することを除いて、実施例1と同じ方法で分離膜を得た。実施例5では、第一層の硬化後の膜厚が2.1μmの二酸化炭素分離膜が得られた。
【0109】
<実施例6>
シリコーン樹脂(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製YSR3022)の6wt%デカン溶液を多孔性支持体の上に塗布した。多孔性支持体は、二酸化炭素分離膜の第二層となる。多孔性支持体としては、限外ろ過膜(日東電工株式会社製NTU-3175M)を用いた。デカン溶液の塗布は、ロールコータ―を用いて、乾燥後の中間層の膜厚が2.0μmとなるように厚みを調節して塗工した。次に、得られた塗布膜を130℃で5分乾燥させた。これにより、中間層と第二層からなる積層体を得た。次に、表1に記載した第一層の材料を含む塗布液を調製した。中間層と第二層からなる積層体の上に塗布液を塗布し、スピンコート法により溶液を塗布した。スピンコーターの回転数は1000rpmとした。次に、第一層の材料を塗布した膜を80℃で60分間乾燥した後150℃で60分間乾燥することで、第一層の材料を硬化させることによって第一層を形成し、二酸化炭素分離膜を得た。実施例6では、第一層の硬化後の膜厚が2.0μmの二酸化炭素分離膜が得られた。
【0110】
<実施例7>
実施例6における第一層の材料を表1に記載のものに変更することを除いて、実施例6と同じ方法で分離膜を得た。実施例7では、第一層の硬化後の膜厚が1.9μmの二酸化炭素分離膜が得られた。
【0111】
<実施例8>
実施例6における第一層の材料を表1に記載のものに変更することを除いて、実施例6と同じ方法で分離膜を得た。実施例8では、第一層の硬化後の膜厚が1.2μmの二酸化炭素分離膜が得られた。
【0112】
<実施例9>
実施例6における第一層の材料を表1に記載のものに変更すること、第一層の塗工条件(スピンコーターの回転数)を500rpmに変更することを除いて、実施例6と同じ方法で分離膜を得た。実施例9では、第一層の硬化後の膜厚が1.8μmの二酸化炭素分離膜が得られた。
【0113】
<実施例10>
実施例1における第一層の材料を表1に記載のものに変更することを除いて、実施例1と同じ方法で分離膜を得た。実施例10では、第一層の硬化後の膜厚が0.4μmの二酸化炭素分離膜が得られた。
【0114】
<比較例1>
表1に記載の第一層の材料を含む塗布液を調製した。次に、限外ろ過膜(日東電工株式会社製NTU-3175M)の上に塗布液を塗布し、スピンコート法により溶液を塗布した。スピンコーターの回転数は1000rpmとした。次に、60℃で300分間膜を乾燥し、第一層を形成した。第一層の硬化後の膜厚は15μmであった。比較例1の分離膜は中間層を含まない。
【0115】
<比較例2>
表1に記載の第一層の材料を含む塗布液を調製した。次に、シリコーンゴムで作製した枠を離型処理をしたPETフィルム(パナック株式会社製SG2)上に置き、内部に溶液を流し込んだ。60℃で300分間乾燥し、第一層のみからなるシートを作製した。第一層の硬化後の膜厚は210μmとなるようにした。
【0116】
<比較例3>
第一層の硬化後の膜厚を302μmに変更することを除いて、比較例2と同じ方法で、第一層のみからなるシートを作製した。
【0117】
<比較例4>
第一層の硬化後の膜厚を318μmに変更することを除いて、比較例2と同じ方法で、第一層のみからなるシートを作製した。
【0118】
[測定・評価]
実施例1~10及び比較例1~4について、それぞれ初期分離性能(透過速度、透過係数、ガス選択比)を評価し、表1に記載した。透過係数及び選択比は次の様に算出される。
【0119】
<ガス透過試験>
まず、分離膜を金属セル中にセットし、リークが発生しないようにOリングでシールした。次に、分離膜の一方の主面に混合気体が接触するように、金属セル内に混合気体を注入した。混合気体は、実質的に二酸化炭素及び水素のみからなる混合気体を用いた。混合気体における二酸化炭素の濃度は、標準状態で50vol%であった。金属セル内に注入された混合気体は、温度が30℃であり、圧力が0.1MPaであった。次に、分離膜の他方の主面に隣接する金属セル内の空間を真空ポンプで減圧した。このとき、この空間は、空間内の圧力が測定環境における大気圧に対して0.1MPa小さくなるように減圧した。これにより、分離膜の他方の主面から透過流体が得られた。得られた透過流体の組成、透過流体の重量などに基づいて、透過係数及び分離係数を算出した。
【0120】
<透過速度及び透過係数>
ガスクロマトグラフィーで求めた透過側流通ガス中のガス濃度からガスの透過量Nを計算して、下記数式(1)及び数式(2)よりCOの透過速度QCO2及びHの透過速度QH2を計算した。
【数1】
【数2】
ここで、NCO2及びNH2はCO及びHの透過量(単位:cm(STP))、Pは供給ガスの全圧(単位:cmHg)、Pは透過ガスの全圧(単位:cmHg)、Aは膜面積(cm)、XCO2及びXH2はそれぞれ供給ガス中のCO及びHのモル分率を表す。
実施例1~10における、第一層のCOの透過係数PCO2(単位:Barrer)及び第一層のHの透過係数PH2(単位:Barrer)は下記数式(3)及び数式(4)より算出した。ただし、Barrerは1×10-10cm(STP)・cm/(s・cm・cmHg)を意味する。
【数3】
【数4】
ここで、QCO2,2、H2,2は第二層と中間層のみからなる膜のCO及びHの透過速度、δは第一層の厚み(単位:μm)を示す。QCO2,2、H2,2を測定する際に用いる第二層と中間層のみからなる膜において、第二層及び中間層は、各実施例の第二層及び中間層と同じである。
比較例1~4における、第一層のCOの透過係数PCO2(単位:Barrer)及び第一層のHの透過係数PH2(単位:Barrer)は下記数式(5)及び数式(6)より算出した。なお、比較例1は、第二層を含むが、第二層の透過速度は極めて高く、上記数式(3)及び数式(4)におけるQCO2,2及びQH2,2の値が極めて高くなる。そのため、1/QCO2,2の値、及び1/QH2,2の値がそれぞれ無視できるほど低くなるので、下記数式(5)及び数式(6)によりPCO2及びPH2を算出することができる。
【数5】
【数6】
【0121】
<ガス選択比>
分離係数αは下記数式(7)により算出した。
【数7】
ここで、YCO2及びYH2はそれぞれ透過ガス中のCO及びHのモル分率を表す。
【0122】
【表1】
【0123】
製造例1、2及び3以外に、表1に記載した実施例及び比較例で用いた化学品について次に示す。
<常温溶融塩(B)>
・常温溶融塩(B―1):1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド(BASF社製)
<架橋剤>
ペンタエチレンヘキサミン(東京化成工業(株)製)
<溶媒>
酢酸エチル(東京化成工業(株)製)
メタノール(東京化成工業(株)製)
2-プロパノール(東京化成工業(株)製)
<濡れ剤>
KP-112(信越化学工業(株)製)
【0124】
表1に示した通り、実施例に係る分離膜は、比較例と比較して、二酸化炭素のガス選択比が大きく、かつ二酸化炭素の透過速度が大きいため、効率的に多くの二酸化炭素を分離していた。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、十分な二酸化炭素分離機能と二酸化炭素の透過速度を有する二酸化炭素分離膜及び二酸化炭素分離膜モジュールを簡便な手順で得ることができる。
そのため、本発明の二酸化炭素分離膜及び二酸化炭素分離膜モジュールを化学工場や製鉄所等の排気ガス中に含まれる二酸化炭素等の酸性ガスの分離、脱二酸化炭素によるエネルギー資源(天然ガス、バイオガス、合成ガス)の製造、自動車等の分散型排出源における脱二酸化炭素等に利用することができるが、これら例示された分野に限定されない。