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特開2024-146427作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146427
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20241004BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60K1/00
B60L9/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059316
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常 建卓
(72)【発明者】
【氏名】岡本 峻一
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA11
3D235BB17
3D235CC12
3D235CC13
3D235DD13
3D235DD19
3D235FF32
3D235GB03
3D235HH52
5H125AA20
5H125AB01
5H125AC12
5H125FF01
5H125FF03
(57)【要約】
【課題】作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置において、インバータの回路基板の必要な面積を確保しながら、車両に設置されたインバータケースの厚み方向における他の部品との干渉を防止する。
【解決手段】作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置41は、左右の車輪が共通の電気モータで駆動される作業車両に用いられる。入力軸と歯車機構と第1車軸及び第2車軸とを収容する車軸ケース42は、入力軸側部分45を有する。モータケース61の一方側は、入力軸側部分45に固定される。モータケース61の他端側の端面または外周面には、インバータケース80が固定される。インバータケース80は最大厚みが第1方向の最大長さより小さい扁平形状であり、モータケース61から離れる第1方向である長手方向の一方側に延伸させるとともに末端部分は、モータケース61の外周面から径方向外側に突出している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車輪が共通の電気モータで駆動される作業車両に用いられ、前記電気モータの動力が入力軸及び歯車機構を介して、左右に分かれた第1車軸及び第2車軸のそれぞれに伝達される電気モータ付き車軸駆動装置であって、
前記入力軸と前記歯車機構と前記第1車軸及び前記第2車軸とは、車軸ケースに収容され、
前記車軸ケースは、入力軸側部分と車軸側部分とを有し、
前記電気モータが収容されたモータケースの一方側は、前記入力軸側部分に固定され、
前記モータケースの他端側の端面または外周面には、内部に、前記電気モータに電力供給するインバータが配置されるインバータケースが固定され、
前記インバータケースは最大厚みが厚み方向に直交する第1方向の最大長さより小さい扁平形状であり、前記モータケースから離れる前記第1方向である長手方向一方側に延伸するとともに末端部分は、前記モータケースの外周面から径方向外側に突出している、
作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置。
【請求項2】
前記モータケースは、外側面に第1所定円の円周上の複数位置に形成された複数のネジ孔を有し、
前記インバータケースは、前記第1所定円と同じ大きさの第2所定円の円周上の複数位置に形成された複数のネジ挿通孔を有し、
前記インバータケースは、前記モータケースに対し前記複数のネジ挿通孔及び前記複数のネジ孔を用いたネジ結合によって固定され、
前記モータケースに対し前記インバータケースが、複数の取付姿勢の間で変更して取り付け可能に構成される、
請求項1に記載の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置。
【請求項3】
前記複数のネジ孔は、前記モータケースの外側面において、前記第1所定円の円周上の等間隔複数位置に形成され、
前記複数のネジ挿通孔は、前記インバータケースにおいて、前記第2所定円の円周上の等間隔複数位置に形成される、
請求項2に記載の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置。
【請求項4】
前記モータケースに対し前記インバータケースが、90度向きが異なる複数の前記取付姿勢の間で変更して取り付け可能に構成される、
請求項3に記載の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に用いられる電気モータ付き車軸駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、芝刈装置を備える芝刈り車両等の作業車両において、車輪を電気モータで駆動し走行可能とすることが知られている。特許文献1には、1つの電気モータで左右車輪を駆動する作業車両としての芝刈り車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-154375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構成のように、1つの電気モータで左右車輪を駆動する車両では、左右の車輪に固定可能な左右の車軸に電気モータの動力を伝達する電気モータ付き車軸駆動装置が用いられる。この車軸駆動装置では、電気モータの動力が入力される入力軸と、歯車機構及び車軸とが車軸ケースに収容され、電気モータが収容されたモータケースを車軸ケースに固定することが考えられる。
【0005】
また、バッテリから供給される直流電流を複数相の交流電流に変換して電気モータに電力供給するためのインバータを内側に配置するインバータケースを、モータケースに固定することが考えられる。このとき、インバータの厚みが大きいと、インバータケースと、車両側の、電気モータ付き車軸駆動装置を搭載するスペースにおいてインバータケースの厚み方向の片側に存在する他の車両構成部品とが干渉する可能性があり車両におけるこの搭載スペースを広く確保しなければならない。一方、インバータケースの厚みを単に小さくすると、インバータの回路基板の必要な面積を確保できない可能性がある。このため、インバータの回路基板の必要な面積を確保しながら、インバータケースの厚みが車両に設置された他の部品に対して干渉しないようにすることが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置において、インバータの回路基板の必要な面積を確保しながら、車両側の車軸駆動装置搭載スペースをできるだけ小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置は、左右の車輪が共通の電気モータで駆動される作業車両に用いられ、前記電気モータの動力が入力軸及び歯車機構を介して、左右に分かれた第1車軸及び第2車軸のそれぞれに伝達される電気モータ付き車軸駆動装置であって、前記入力軸と前記歯車機構と前記第1車軸及び前記第2車軸とは、車軸ケースに収容され、前記車軸ケースは、入力軸側部分と車軸側部分とを有し、前記電気モータが収容されたモータケースの一方側は、前記入力軸側部分に固定され、前記モータケースの他端側の端面または外周面には、内部に、前記電気モータに電力供給するインバータが配置されるインバータケースが固定され、前記インバータケースは最大厚みが厚み方向に直交する第1方向の最大長さより小さい扁平形状であり、前記モータケースから離れる前記第1方向である長手方向一方側に延伸するとともに末端部分は、前記モータケースの外周面から径方向外側に突出している、作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置によれば、インバータケースが、モータケースから離れる長手方向一方側に延伸するとともに末端部分が、モータケースの外周面から径方向外側に突出している。これにより、回路基板の必要な面積を維持しながらインバータを薄型にできる。このため、インバータの回路基板の必要な面積を確保しながら、車両に車軸駆動装置を搭載する際にインバータケースの厚み方向における車両側の他の部品との干渉を防止できる。
【0009】
上記の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置において、前記モータケースは、外側面に第1所定円の円周上の複数位置に形成された複数のネジ孔を有し、前記インバータケースは、前記第1所定円と同じ大きさの第2所定円の円周上の複数位置に形成された複数のネジ挿通孔を有し、前記インバータケースは、前記モータケースに対し前記複数のネジ挿通孔及び前記複数のネジ孔を用いたネジ結合によって固定され、前記モータケースに対し前記インバータケースが、複数の取付姿勢の間で変更して取り付け可能に構成される構成としてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、車両における車軸駆動装置が搭載されるスペースにおける他の部品の配置状況等に応じて、干渉しない位置へインバータの向きを適切な向きに変更しやすい。
【0011】
上記の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置において、前記複数のネジ孔は、前記モータケースの外側面において、前記第1所定円の円周上の等間隔複数位置に形成され、前記複数のネジ挿通孔は、前記インバータケースにおいて、前記第2所定円の円周上の等間隔複数位置に形成される構成としてもよい。
【0012】
上記の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置において、前記モータケースに対し前記インバータケースが、90度向きが異なる複数の取付姿勢の間で変更して取り付け可能に構成される構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施形態の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を搭載する車両の一部を断面にして示す側面図である。
図2図1から作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を取り出して示す斜視図である。
図3図2の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の平面図である。
図4図2の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の横断面図である。
図5図2の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の後面図である。
図6図3から取り出したモータインバータ装置におけるA-A断面相当図である。
図7図3からモータインバータ装置を取り出して、矢印B方向から見た図であって、一部を断面にして示す図である。
図8図3から取り出した電気モータの平面図である。
図9図3から取り出したモータインバータ装置の平面図である。
図10】実施形態の別例の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を搭載する車両の一部を断面にして示す側面図である。
図11図10から取り出したモータインバータ装置の平面図である。
図12】実施形態の別例の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を搭載する車両の一部を断面にして示す側面図である。
図13図12から作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を取り出して示す斜視図である。
図14図13の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の平面図である。
図15図13の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置の後面図である。
図16図13から取り出したモータインバータ装置において、一部を断面にして矢印C方向に見た図である。
図17図13のD矢視図である。
図18】実施形態の別例の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を搭載する車両の一部を断面にして示す側面図である。
図19図18のE部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下では、作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置が、作業車両であり芝刈り車両に搭載される場合を説明するが作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置が搭載される車両は、これに限定せず、除雪作業、掘削作業、土木作業、農作業のいずれか1つ以上の作業を行う作業機を有する他の作業車両、または荷台を有し、不整地を走行するオフロード型多用途車両(Utility Vehicle)、あるいはバギーと呼ばれるAll Terrain Vehicle(ATV)や、レクリエーショナルビークル(Recreational Vehicle(RV))や、レクリエーショナルオフハイウェイビークル(Recreational Off-highway Vehicle(ROV))としてもよい。また、以下では、車両が2つの後輪を共通の電気モータで駆動する場合を説明するが、車両は2つの前輪を共通の電気モータで駆動する構成としてもよい。以下ではすべての図面において同様の要素には同一の符号を付して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1から図9は、第1の実施形態を示している。以下で説明する図面では、車両について前側をFrで示し、左側をLhで示し、上側をUpで示している。
【0016】
まず、本実施形態の作業車両用電気モータ付き車軸駆動装置を搭載する一例としての芝刈り車両10の全体構成を説明し、その後、芝刈り車両10に搭載した電気モータ付き車軸駆動装置40を詳しく説明する。図1は、電気モータ付き車軸駆動装置41を搭載する芝刈り車両10の一部を断面にして示す側面図である。
【0017】
エンジン非搭載型の乗用型の芝刈り車両10は、車体を構成するメインフレーム16と、メインフレーム16の後側に支持された2つの主駆動輪である左車輪12及び右車輪13と、前側に支持された2つの従動輪である左車輪14及び右車輪15とを備える。後側の2つの車輪12、13には、1つの電気モータ70を含む車軸駆動装置41が接続される。後述のように、車軸駆動装置41は、車軸ケース42に固定されたモータケース61内に収容された電気モータ70と、モータケース61に固定されたインバータケース80に収容されたインバータ90と、電気モータ70の動力を左右の車輪12、13に伝達する歯車機構77(図4)とを含む。後述の図4に示すように、歯車機構77は、減速歯車機構78と差動歯車機構118とを含み、差動歯車機構118の左右方向両側に第1車軸18または第2車軸19を介して左右の車輪12,13が接続される。
【0018】
メインフレーム16において、前後方向の中間部の上側には運転席17が配置され、運転席17の前側には、旋回指示部であるステアリングホイール20と、アクセルペダル(図示せず)とが配置される。ステアリングホイール20の操作によって、車両10の前側の操舵機構(図示せず)を介して前側の左右の車輪14,15が操舵される。操舵機構には、アッカーマン方式等の従来から既知の構造が用いられる。また、メインフレーム16の前後方向の後下部には、車軸駆動装置41を構成する後述する車軸ケース42の左右方向両端部に形成した取付ボス部がネジ止めされ懸架される。
【0019】
アクセルペダルは、電気モータ70の加速を指示する加速指示部に相当する。アクセルペダルは左右方向の軸を中心として揺動可能に、メインフレーム16に支持される。運転者がアクセルペダルの前側端部を踏むことで電気モータ70が前進方向に加速する。運転者がアクセルペダルの後側端部を踏むことで電気モータ70が後進方向に加速する。アクセルペダルの揺動位置はペダルセンサにより検出され、その検出信号が制御装置100に送信される。制御装置100は、ペダルセンサの検出信号に応じて、電気モータ70の回転速度を制御する。
【0020】
さらに、車両10は、作業機である芝刈装置(Mower)25と、バッテリを含む電源ユニット38とを備える。芝刈装置25は、メインフレーム16の前後方向中間部の下側に支持される。芝刈装置25は、モアデッキ26と、モアデッキ26の内側にそれぞれ鉛直方向の軸を中心として回転可能な芝刈り用回転工具である3つの芝刈りブレード27とを含む。芝刈りブレード27が回転されることで芝等を破断して刈り取り可能とする。各芝刈りブレード27は、モア用の電気モータ(図示せず)により駆動される。
【0021】
芝刈りブレード27の回転により芝の刈り取りが可能であり、刈り取られた芝は、モアデッキ26の内側からダクト(図示せず)を介して、車両の幅方向片側に排出される。刈り取られた芝が、車両10の後端に装備した集草容器(図示せず)に排出される構成としてもよい。
【0022】
芝刈装置は、芝刈り用回転工具として、地表に平行に回転軸を有するシリンダに例えばらせん状の刃を配置し、芝等を挟み取って刈り取る機能を有し、モア用の電気モータにより駆動される芝刈りリールを備える構成としてもよい。
【0023】
電源ユニット38は、メインフレーム16の上側で運転席17の前側において、ボンネット126により覆われた状態で固定されている。ステアリングホイール20は、ステアリング軸21の上端に固定される。ステアリング軸21は、ボンネット126の上側で斜め後側に向いた部分に固定されたステアリングコラム22に回転可能に支持される。
【0024】
さらに、芝刈り車両10には、メインフレーム16において、運転席17に乗車した運転者の足下付近である前側部分の上側に、運転者が足で踏み込み操作可能なブレーキペダル(図示せず)が支持される。さらに、芝刈り車両10には、運転席17の近くに、運転者が手で操作可能な駐車ブレーキスイッチ(図示せず)が設けられる。ブレーキペダルが操作された場合には、後述の第1ブレーキ装置79(図4)が作動し、左右の車輪12,13が制動、または回転停止が維持される。駐車ブレーキ装置が操作された場合には、後述の第2ブレーキ装置141が作動し、左右の車輪12,13が制動、または回転停止が維持される。
【0025】
以上が芝刈り車両10の全体構成であり、次にこの芝刈り車両10に搭載される電気モータ付き車軸駆動装置41を説明する。図2は、図1から電気モータ付き車軸駆動装置41を取り出して示す斜視図である。図3は、電気モータ付き車軸駆動装置41の平面図である。図4は、車軸駆動装置41の横断面図である。図5は、電気モータ付き車軸駆動装置41の後面図である。
【0026】
電気モータ付き車軸駆動装置41は、車軸ケース42と、車軸ケース42に固定されたモータインバータ装置60を構成するモータケース61とを含んで構成される。車軸ケース42は、内側に入力軸110及び歯車機構130と、左右の車軸である第1車軸18及び第2車軸19の一部とが収容される。モータインバータ装置60は、モータケース61と、モータケース61に収容された走行用の電気モータ70と、モータケース61に固定されたインバータケース80と、インバータケース80に収容されたインバータ90とを含んでいる。車軸ケース42と、モータケース61と、インバータケース80とは、一体に組み合わされて固定される。
【0027】
第2車軸19は、第1車軸18より長く、第1車軸18及び第2車軸19間の中央に関して、左右方向について第2車軸19と同じ側にモータケース61が配置される。これにより、電気モータ付き車軸駆動装置41の重心を車両10の左右方向中央に近づけることができる。
【0028】
図4に示すように、車軸ケース42には、入力軸110、歯車機構77、及び第1車軸18及び第2車軸19の一部が収容される。歯車機構77は、減速歯車機構78及び差動歯車機構118を有する。減速歯車機構78は、入力軸110及び差動歯車機構118の外周側に設けられたリングギヤ119間で動力を伝達する歯車機構であり、かつ入力軸110からリングギヤ119に動力を減速して伝達する。差動歯車機構118は、リングギヤ119に伝達された動力を、第1車軸18及び第2車軸19に差動的に伝達する。
【0029】
一方、入力軸110は、電気モータ70のモータ軸72と同一軸線上に配置され、モータ軸72に対し相対回転不能である、すなわちモータ軸72と一体的に回転するように連結される。
【0030】
車軸ケース42は、第1・第2車軸18・19と、減速歯車機構78と、差動歯車機構118とを収容するものであって、第1車軸18を収容する第1車軸ケース43と、第2車軸19を収容する第2車軸ケース48と、中間ケース49とが、車軸18・19に対して直角な接合面を介して複数のボルトによって分離自在に結合されることにより一体化される。第1車軸18及び第2車軸19は、左右に分かれて、それぞれ左右方向に延びている。第1車軸18及び第2車軸19の内端部は、中間ケース49内に位置し、差動歯車機構118を形成するリングギヤ119の内側に回転可能に嵌合されリングギヤ119を支持している。
【0031】
第1車軸ケース43は、複数のケース要素がボルトでネジ結合されることにより構成されてもよいが本実施例においては、第1車軸ケース43は、左側面の後方箇所から軸方向に筒部53が先細り状に一体的に延出される。第1車軸18は、この筒部53を貫通し、筒部53の内外端側に軸受を介して回転可能に支持される。筒部53の外側の前後方向両側には、軸長方向に沿う2つの補強リブ54,55を一体的に備える。
【0032】
第1車軸ケース43の左側において、前側部分には開口が設けられると共に、その開口を塞ぐように、開口の周縁部に円環状のホルダ51が固定される。また、ホルダ51の左側の端部には、段付きの有底筒状のブレーキカバー52が固定される。
【0033】
第1車軸ケース43の内側にはギヤ室が形成される。歯車機構77は、ギヤ室に収容される。ホルダ51及びブレーキカバー52で囲まれた部分には、入力軸110の左端部に固定された第2ブレーキロータ140が収容される。
【0034】
一方、中間ケース49の前側で右側の取付開口49aの周囲の端面には、モータケース61の端面が重ねられた状態で複数のボルト58で分離自在に結合される。これにより、モータケース61の一方側端である左側端は、車軸ケース42の入力軸側部分45に固定される。このため、中間ケース49の前側の取付開口49aに、モータケース61が装着されて封止される。
【0035】
さらに、中間ケース49の後側で右端の取付開口49bの内側には、第2車軸ケース48の先細り状の筒部142の左端部に設けられた小径筒部48aが嵌合されると共に、中間ケース49の右側面で取付開口49bの周縁部には、第2車軸ケース48の端面が突き当てられる。この状態で、中間ケース49と第2車軸ケース48とが、複数のボルト59(図3図5)で結合される。このため、中間ケース49の後側の取付開口49bに、第2車軸ケース48の筒部142が、分離自在に装着される。
【0036】
筒部142は、その外側の前後方向両側に形成され、軸長方向に沿う補強リブ143,144を含んでいる。第2車軸ケース48の筒部142の内外端側には軸受を介して、第2車軸19回転可能に支持される。
【0037】
モータ軸72と入力軸110とは、連結部材74を介在させた状態で互いに中心軸が一致する同軸に配置される。連結部材74は、内周に雌スプラインを有する連結筒部を含む。連結筒部の一端部の外周面上には、直径方向に全周にわたって突出する単板状の第1ブレーキロータ76が一体に設けられる。入力軸110及びモータ軸72の両方には外周面に雌スプラインと嵌合する雄スプラインが形成される。連結筒部の雌スプラインの軸方向の両側のそれぞれには、入力軸110及びモータ軸72の雄スプラインが相対回転を阻止するように嵌合する。これにより、入力軸110及びモータ軸72に対する第1ブレーキロータ76の相対回転が阻止される。
【0038】
第1ブレーキロータ76は、機械式ブレーキである走行制動用第1ブレーキ装置79を構成する。第1ブレーキロータ76の軸方向両側面には、ブレーキシューとブレーキパッドとが対向する。ブレーキシューは、中間ケース49の内面に保持される。一方、ブレーキパッドは、車軸ケース42の内面に固定されたブレーキホルダ75の内面に、第1ブレーキロータ76の軸方向への移動可能に保持される。運転席17に乗車した運転者が、ブレーキペダルを操作すると、第1ブレーキ装置79において、通例の如くカム軸が回転し、カム軸のカム面がブレーキシューを第1ブレーキロータ76に向かって押し付ける。これにより、第1ブレーキロータ76の両側には、ブレーキシューとブレーキパッドとから第1ブレーキロータ76を挟むように押圧力が加わる。このため、第1ブレーキロータ76と、入力軸110から動力が伝達される車輪12,13に至る伝動系が制動、または回転停止が維持される。このとき、運転者のブレーキペダルの踏み力の変化によって車速を調整することができる。芝刈り車両10において、運転者がブレーキペダルを操作した場合に、電気モータ70を発電機として作動させることにより回生制動力を発生させ、その回生制動力と第1ブレーキ装置79の制動力との両方で車両を制動することもできる。
【0039】
また、図3に示すように、車軸ケース42の上面において、ギヤ室の上方に位置する部分には、エアブリーザ装置155が設けられる。エアブリーザ装置155は、ギヤ室と通じる上下方向の貫通孔に取り付けられる。エアブリーザ装置155は、水等の液体や塵等が上側から侵入することを防止すると共に、ギヤ室の潤滑油が膨張する際にギヤ室内部の空気を車軸ケース42の外部に吸排可能とするために設けられる。ギヤ室の内圧が上昇すると、エアブリーザ装置155を通じて車軸ケース42の外側に空気が排出されることで内圧の過度な上昇を防止できる。
【0040】
一方、入力軸110のモータ軸72とは反対側の外端部は第1車軸ケース43の左端の前側開口を通じて車軸ケース外に延伸し、第2ブレーキロータ140が固定される。第2ブレーキロータ140は、電磁ブレーキである駐車用第2ブレーキ装置141を構成する。第2ブレーキロータ140の軸方向両側面にはブレーキパッドが対向する。運転席17に乗車した運転者が、駐車ブレーキスイッチをオン操作すると、第2ブレーキロータ140の両側には、ブレーキパッドから第2ブレーキロータ140を挟むように押圧力が加わる。
【0041】
具体的には、一方のブレーキパッドの外側面にはホルダ51に保持された電磁ソレノイド147が対向配置される。電磁ソレノイド147は、駐車ブレーキスイッチが非操作の場合に電力が供給され、一方のブレーキパッドを第2ブレーキロータ140から離すように電磁力で吸引する。これにより、第2ブレーキロータ140が制動されない。一方、電磁ソレノイド147は、駐車ブレーキスイッチがオン操作された場合に電力供給が遮断され、一方のブレーキパッドを吸引しない。このとき、一方のブレーキパッドは、その外側面に配置された第1バネのバネ力により第2ブレーキロータ140側に押される。また、他方のブレーキパッドの外側面には、ブレーキカバー52に支持された押圧部材が対向配置される。押圧部材は、その外側に設けられたバネにより、第2ブレーキロータ140側に押圧される。これにより、駐車ブレーキスイッチのオン操作により一方のブレーキパッドが電磁ソレノイド147に吸引されない状態で、第2ブレーキロータ140は、両側からブレーキパッドが押し付けられることにより制動または回転停止を維持する。このため、入力軸110から動力が伝達される車輪12,13に至る伝動系も制動または回転停止を維持する。本例の車両では、走行制動用の第1ブレーキ装置79及び駐車用の第2ブレーキ装置141の両方を備えているが、そのいずれか一方は車両の仕様に応じて除去することもできる。第1ブレーキ装置79はその操作系を2系統に構成することにより走行制動用と駐車用の両方の機能を持たせることもできる。また、各車軸18,19の車幅方向外端部には、ハブ(図示せず)を介して車輪12,13が固定される。
【0042】
上記の車軸ケース42は、前後方向一方側である前側の入力軸側部分45と、前後方向他方側である後側の車軸側部分46とを有する。
【0043】
次に、電気モータ70が収容されたモータケース61と、インバータ90が収容されたインバータケース80との配置構成を説明する。図6は、図3から取り出したモータインバータ装置60におけるA-A断面相当図である。図7は、図3からモータインバータ装置60を取り出して、矢印B方向から見た図であって、一部を断面にして示す図である。図8は、図3から取り出したモータケース61の平面図である。図9は、図3から取り出したモータインバータ装置60の平面図である。
【0044】
上記のように、モータケース61の一方側端である左側端は、車軸ケース42の入力軸側部分45に固定される。モータケース61は、電気モータ70が収容される有底筒状の本体部62と、本体部62の他端である右側端開口を塞ぐように本体部62にボルトにより結合されたモータカバー63とを含む。
【0045】
さらに、モータケース61の外周面には、インバータケース80が固定される。具体的には、本体部62の外周面で、上端外壁面にはインバータ固定部69(図6図7)が設けられる。インバータ固定部69は、インバータケース80の底面の長手方向他方側に設けられた後述の装着部分81を突き当て可能である。例えば、インバータ固定部69は、モータケース61の外周面の上端から径方向外側(上側)に突出したブロック状の突部の先端面に設けられた平坦面により構成される。平坦面は、突部の突出方向に対し直交し、水平方向に沿っている。
【0046】
電気モータ70は、例えば永久磁石式の3相モータである。図6に示すように、電気モータ70は、モータ軸72の外周面に固定されたモータロータ73と、モータロータ73の外周面に対向するステータコア131と、ステータコア131に巻回して配置された3相のステータコイル132とを有する。モータロータ73は、例えばロータコアの周方向複数位置に配置された永久磁石を有する。ステータコア131は、モータケース61の内側に固定される。モータ軸72は、モータケース61の内側に回転可能に配置される。ステータコイル132に電源ユニット38のバッテリから後述のインバータ90を介して、3相の交流電流に変換された電力が供給されることにより、ステータコア131に発生した回転磁界と、モータロータ73が生成する磁界との相互作用によりモータ軸72が回転する。
【0047】
インバータケース80の内部には、バッテリから供給される直流電流を3相の交流電流に変換して電気モータ70に電力供給するインバータ90が配置される。図6図7に示すように、インバータ90は、第1回路基板91と、第1回路基板91より上側に配置され、第1回路基板91より面積が小さい第2回路基板92とを含む。図7では、各回路基板91,92の詳細構造の図示を省略している。第1回路基板91と、第2回路基板92とは互いに配線の一部が接続される。これにより、インバータ90は、例えば、電気的に直列接続した2つのスイッチング素子をそれぞれ有する3つのアームを含むインバータ回路と、インバータ回路を制御するインバータ制御装置とを有する。
【0048】
インバータ90の作動は、制御装置100により制御される。制御装置100は、運転席17の前側で、ボンネット126の内側に配置される。制御装置100とインバータ90とは信号ケーブル93により接続される。制御装置100は、信号ケーブル93を介して、インバータ90のスイッチング素子のスイッチングを制御する。インバータ90には、電源ユニット38のバッテリから電力ケーブル94を介して直流電流が供給される。制御装置100が、インバータ制御装置100を介してインバータ90のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、インバータ90が直流電流を3相の交流電流に変換して電気モータ70に電力供給することが可能となる。これにより、電気モータ70は、インバータ90を介して制御装置100により制御される。
【0049】
インバータケース80は、最大厚みT1(図7)が、厚み方向に直交する第1方向(図7の矢印A1方向である前後方向)の最大長さL1(図6)より小さい扁平形状である。インバータケース80は、厚み方向に直交し、かつ互いに直交する第1方向及び第2方向(図6の矢印A2方向である左右方向)のそれぞれの最大長さL1,L2が、最大厚みT1より大きい。また、インバータケース80において、第1方向の最大長さL1は第2方向の最大長さL2より大きい。このため、インバータケース80は、厚み方向に直交する第1方向に長い扁平形状を有する。
【0050】
インバータケース80は、下端部に設けられた第1板部82と、第1板部82の外周縁から車幅方向外側に伸びる周壁部83と、周壁部83の上端の開口を塞ぐ段差付きの第2板部84とを有し、図7に示すように側面視が略L字形状の略箱形状である。具体的には、インバータケース80は、下側の直方体状の箱部である第1部分85aの第1方向A1に沿った長手方向一方側に、上側の直方体状の箱部である第2部分85bが積層して結合されることにより構成される。第1部分85a内には第1回路基板91が配置され、第2部分85b内には第2回路基板92が配置される。図9に示すように、インバータケース80は、例えば、モータケース61側端の第1板部82と、モータケース61とは反対側端の第2板部84との長手方向他方側部分を貫通したボルト66により、モータケース61にネジ結合されることにより構成される。第1部分85aと第2部分85bは内部で相互連通しており第1回路基板91と第2回路基板92とを相互接続する配線が行き交うようになっている。
【0051】
電気モータ70にインバータ90を装着するにあたって、具体的には、インバータケース80の第1部分85aのうち、第2部分85bと厚み方向に重ならず外部に露出した部分を厚み方向に見た矩形の4隅には、インバータケース80を厚み方向に貫通する4つのボルト挿通孔86が形成される。各ボルト挿通孔86は、断面円形であり、モータケース61にインバータケース80を固定するためのボルト66が挿通される。各ボルト挿通孔86は、後述するモータケース61側のネジ孔88の位置に合致する。
【0052】
インバータケース80は、モータケース61から離れる第1方向である長手方向一方側である後側に延伸しており、その末端部分150は、モータケース61を軸方向から見た場合にモータケース61の外周面から径方向外側に突出している。本例では、インバータケース80の第1方向は車両前後方向に沿い、第2方向は左右方向に沿っている。また、インバータケース80の末端部分150は、モータケース61より後側に配置される。これにより、図3のように車軸駆動装置41を上側から見た状態で、インバータケース80の厚みが最大となる部分が、車軸ケース42の第2車軸ケース48の上側に重なるように配置される。
【0053】
図8に示すように、モータケース61におけるインバータ固定部69の外表面には、モータ軸72の軸長方向略中間点Pを中心として一点鎖線で示す第1所定円87上の複数位置である4つの位置に形成された複数のネジ孔88を有する。具体的には、4つのネジ孔88は、前側と後側とに2つずつ分かれて、それぞれは前記中心点Pを通る前後方向鉛直面を境にして対称位置に、かつ、前記中心点Pを通る左右方向鉛直面を境にして対称位置に、分かれて形成される。左側の2つのネジ孔88と右側の2つのネジ孔88とは、それぞれ左右方向の同じ位置に形成される。各ネジ孔88の大きさは同じである。
【0054】
図9に示すように、インバータケース80の4つのボルト挿通孔86は、第1所定円87と同じ大きさの第2所定円89の円周上の複数位置である4つの位置に形成される。4つのボルト挿通孔86のうち、前側の2つのボルト挿通孔86は、モータケース61の前側の2つのネジ孔88(図8)と整合する。4つのボルト挿通孔86のうち、後側の2つのボルト挿通孔86は、モータケース61の後側の2つのネジ孔88と整合する。各ボルト挿通孔86の大きさは同じである。インバータケース80は、インバータケース80の外側からモータケース61に向かって4つのボルト挿通孔86を貫通する4つのボルト66が4つのネジ孔88にネジ結合されることによりモータケース61に固定される。図9では、ボルト66の頭部を円形で簡略化して示している。
【0055】
本例の構成によれば、インバータケース80が、モータケース61から離れる長手方向一方側に延伸するとともに末端部分150が、モータケース61の外周面から径方向外側に突出している。このため、インバータ回路の回路基板91,92の必要な面積を確保しながら、インバータケース80を薄型にできるので、車両に設置されたインバータケース80の厚み方向における車両側の他の部品との干渉を防止できる。さらに、インバータケース80の末端部分150は、モータケース61より後側に配置されるので、インバータケース80が、車軸ケース42の前後方向の両端位置より前後方向の前側または後側にはみ出すことを防止または抑制できる。これにより、車軸駆動装置41の前後方向長さの増大を抑制できる。
【0056】
さらに、本例では、後述する図11に示すように、モータケース61に対するインバータケース80の前後方向の向きを、図9の場合と逆にしてモータケース61にインバータケース80をネジ結合で固定することが可能となっている。これにより、モータケース61に対しインバータケース80が、2つの取付姿勢の間で変更して取り付け可能に構成される。これにより、車両における車軸駆動装置41が搭載されるスペースにおける他の部品の配置状況等に応じて、インバータケース80の向きを適切な向きに変更しやすい。
【0057】
図6図7に示すように、モータケース61の内側空間において、モータカバー63側の端部には4つの円環板状の導電部材であるバスバーを含むバスバーユニット95が設けられる。バスバーユニット95では、U、V、W相の3相のバスバー96u、96v、96wと、中性点バスバー97とが、軸方向に並ぶように略同軸上に配置される。3相のバスバー96u、96v、96wは、電気モータ70のU,V、W相の3相のステータコイル132のそれぞれに接続される。中性点バスバー37は、3相のバスバー96u、96v、96wと電気的に接続される。4つのバスバー96u、96v、96w、97は、絶縁樹脂等の絶縁部材を介して互いに離れて配置されユニット化される。
【0058】
バスバーユニット95を構成する3相のバスバー96u、96v、96wのそれぞれにおいて周方向の互いに異なる位置には、U,V,W相の3つのリード板98の一端が接続される。各リード板98は、モータケース61の径方向外側に導出される。各リード板98の他端部は、各リード板98の中間部を屈曲させた状態で、インバータ固定部69内の径方向通路を介して、インバータケース80の第1部分85a内に導かれる。この状態で、各リード板98aの他端部は、第1部分85a内の第1回路基板91に設けられて各相に対応する各接続端子99(図6図7)に接続される。
【0059】
インバータケース80の第1板部82の底面には、バスバーに接続されたリード板98を、インバータケース80の内側で接続端子99に接続可能とするために、3つの接続端子99の下端と上下方向に重なる部分を含んで上下方向に貫通する開口151(図7図9)が形成される。
【0060】
図6図9に示すように、接続端子99は、第1回路基板91の下面において右側端部に、前後方向に3相分が並んで下側に突出するように設けられる。一方、接続端子99は、第1回路基板91の下面において左側端部にも、前後方向に3相分が並んで下側に突出するように設けられる。この左側端部の接続端子99は、後述の図11に示すように、モータケース61に対しインバータケース80の前後方向の向きを逆にして取り付ける場合に、バスバーユニット95に接続された3相のリード板98の他端部と一致するように設けられ、各相のリード板98の他端部にそれぞれ接続される。このとき、インバータケース80の第1板部82の底面には、右側端部の接続端子のための開口151と同様に、左側端部の接続端子99の下端と上下方向に重なる部分を内側に含んで上下方向に貫通する開口152(図11)が形成されてもよい。
【0061】
インバータケース80の第2部分85bの長手方向一方側端の端面には第1コネクタ101が外側に突出するように取り付けられ、インバータケース80の第2部分85bの長手方向他方側端の端面には第2コネクタ102が外側に突出するように取り付けられる。インバータ90は、第1コネクタ101と、第1コネクタ101に接続された電力ケーブル94とを介して、電源ユニット38から電力が供給される。一方、インバータ90は、第2コネクタ102と、第2コネクタ102に接続された信号ケーブル93とを介して、制御装置100との間で信号を送受信可能である。
【0062】
本例では、インバータケース80が車両に支持された状態で、インバータケース80の長い方向である第1方向が車両前後方向に沿っているので、上下両端の最大高さを小さくできる。これにより、インバータケース80と、車両側の搭載スペースに存在する他の部品との干渉をより有効に防止できる。
【0063】
上記では、インバータケース80が、インバータケース80の4つのボルト挿通孔86に挿通された4つのボルト66が、モータケース61の4つのネジ孔88にネジ結合されることによりモータケース61に固定される場合を説明した。一方、この構成に限定せず、ボルト挿通孔86が第1所定円に位置し、ネジ孔88が第2所定円に位置すれば、ボルト挿通孔86、ネジ孔88及びボルト66の数は、任意の複数とすることができる。
【0064】
(第2の実施形態)
図10図11は、実施形態の別例である第2の実施形態を示している。図10は、第2の実施形態の車軸駆動装置を搭載する芝刈り車両10aの一部を断面にして示す側面図である。図11は、図10から取り出したモータインバータ装置60aの平面図である。図10では、芝刈装置の図示を省略している。
【0065】
図10図11に示すように、別例のモータインバータ装置60aでは、モータケース61に対するインバータケース80の前後方向の向きが、図1図9の場合と逆になるように、モータケース61にインバータケース80が固定される。本例では、図1図9の構成と同様に、モータケース61は、外側面に第1所定円87(図8参照)の円周上の4つの位置に形成されたネジ孔88(図8参照)を有し、インバータケース80は、第1所定円87と同じ大きさの第2所定円89の円周上の4つの位置に形成されたボルト挿通孔86を有する。
【0066】
また、4つのネジ孔88は、インバータ固定部69(図8参照)の外側面において、前側と後側とに2つずつ分かれて、それぞれで前後方向の同じ位置に、左右方向両側に分かれて形成される。左側の2つのネジ孔88と右側の2つのネジ孔88とは、それぞれ左右方向の同じ位置に形成される。
【0067】
一方、本例の車軸駆動装置41aでは、インバータケース80が、モータケース61から離れる長手方向一方側である前側に延伸するとともに、末端部分150が、モータケース61より前側に配置される。このとき、図1図9の構成に対し、インバータケース80の外形の基本形状を変更することなく、インバータケース80の前後方向の向きを入れ替えて、モータケース61にインバータケース80を固定することができる。
【0068】
また、U,V,W相の3つのリード板98の他端部は、モータケース61の径方向外側に導出され、インバータ固定部69(図7参照)内の径方向通路を介して、インバータケース80の第1部分85a内に導かれる。この状態で、各リード板98の他端側部分は、インバータケース80の第1板部82(図7参照)に設けた開口152を通って第1部分85a内に導かれる。各リード板98の他端部は、第1回路基板91(図7参照)に設けられた対応する相の接続端子99(図11)に接続される。
【0069】
このとき、各リード板98の他端側部分が通るインバータケース80の開口は、インバータケース80の第1板部82に1つのみ、または左右両側に1つずつ形成されてもよい。また、接続端子99は3相分の1組のみ、または左右両側に1組ずつ設けられてもよい。
【0070】
本例では、図1図9の構成と異なり、インバータケース80の末端部分150は、モータケース61より前側に配置されるので、図1図9の構成より車軸駆動装置41aの前後方向長さが大きくなる可能性はある。一方、第1コネクタ101及び第2コネクタ102の位置を前側に配置しやすくなるので、各コネクタ101,102から、前側の電源ユニット38または制御装置100までの前後方向長さを短くできる可能性がある。これにより、第1コネクタ101と電源ユニット38とを接続する電力ケーブル94、及び、第2コネクタ102と制御装置100とを接続する信号ケーブル93の長さをそれぞれ短くしやすくなる。本例の構成において、その他の構成及び作用は、図1図9の構成と同様である。
【0071】
(第3の実施形態)
図12図17は、実施形態の別例である第3の実施形態を示している。図12は、第3の実施形態の車軸駆動装置41bを搭載する車両の一部を断面にして示す側面図である。図13は、図12から車軸駆動装置41bを取り出して示す斜視図である。図14は、車軸駆動装置41bの平面図である。図15は、車軸駆動装置41bの後面図である。図16は、図13から取り出したモータインバータ装置60bにおいて、一部を断面にして矢印C方向に見た図である。図17は、図13のD矢視図である。
【0072】
本例の車軸駆動装置41bでは、モータケース61aの外周面にインバータケース80(図2参照)は固定されていない。また、モータケース61aの筒状の本体部62aにモータカバーは固定されていない。その代わりに本体部62aの他端側である右側の端面には、インバータケース80aが固定される。
【0073】
インバータケース80aは、最大厚みT2(図16)が、厚み方向に直交する第1方向(図17の矢印A3方向である上下方向)の最大長さL3(図17)より小さい扁平形状である。インバータケース80aは、厚み方向に直交し、かつ互いに直交する第1方向及び第2方向(図17の矢印A4方向である左右方向)のそれぞれの最大長さL3,L4が、最大厚みT2より大きい。インバータケース80aにおいて、第1方向の最大長さL3は第2方向の最大長さL4より大きい。このため、インバータケース80aは、厚み方向に直交する第1方向に長い扁平形状を有する。
【0074】
インバータケース80aは、右端部に設けられた第1板部82aと、第1板部82aの外周縁から車幅方向外側に伸びる周壁部83aと、周壁部83aの左端部の開口を塞ぐ第2板部84aとを有し、図15に示すように側面視が略L字形状の略箱形状である。図17に示すように、第1板部82aは、右側から見た状態で、長方形の第1方向である長手方向一方側端である下端が、モータケース61aの断面形状に合わせて断面円弧形とされた外形を有する。図16に示すように、インバータケース80aは、例えば、左右方向に分かれた2つのケース要素がボルトによりネジ結合されることにより構成される。
ボルト挿通孔86ボルト挿通孔86
【0075】
さらに、インバータケース80aの第2板部84aのボルト挿通孔86の内側には筒部153が突出する。筒部153の内側には、モータ軸72の一端部を回転可能に支持する軸受154が固定される。
【0076】
インバータケース80aは、モータケース61aから離れる第1方向である長手方向一方側に延伸しており、その末端部分150aは、電気モータ70を軸方向に見た場合にモータケース61aの外周面から径方向外側に突出している。このため、インバータ回路の回路基板の必要な面積を確保しながら、インバータケース80aを薄型にできるので、車両に設置されたインバータケース80aの厚み方向における他の部品との干渉を防止できる。さらに、インバータケース80aの末端部分150aは、モータケース61aより上側に配置される。
【0077】
さらに、インバータケース80aの長手方向一方側部分は、車軸ケース42に近づく方向に、インバータケース80aの長手方向他方側部分より厚みが大きくなっている。これにより、インバータケース80aの全体の厚みが過度に大きくなることを防止できるので、モータケース61aの端面にインバータケース80aを固定する構造で、インバータケース80aと他の部品との干渉をより有効に防止できる。
【0078】
また、図16に示すように、インバータ90の回路基板をインバータケース80aの長手方向一方側部分の内側で第1回路基板91と第2回路基板92との2段構成にするなどして、インバータケース80aのうち、モータケース61aに固定される部分の厚みを小さくできると共に、末端部分150aが車軸ケース42側に突出している。これにより、モータケース61aに対しインバータケース80aの外側面が軸方向に大きく突出することを防止でき、車軸駆動装置41bの軸方向長さが大きくなることを抑制できる。
【0079】
図14図16に示すように、モータケース61aの、中間ケース49に対する取付ボス61bにはボルト58が挿通支持されている。取付ボス61bおよびボルト58は図17に示すようにモータ軸72を中心に90度づつ等間隔に配置されている。中間ケース49には、モータケース61aに対する取付開口49a(図4参照)の周縁部において、前記ボルト58に対応する位置にネジ孔(図示せず)が形成される。
この構成により本例では、後述する図18図19に示すように、車軸ケース42に対してインバータケース80aの末端部分150aが、モータ軸72を中心として90度向きが異なる複数の取付姿勢の間で選択的に変更して取り付け可能となる。
【0080】
図16に示すように、モータケース61aの内側空間において、インバータケース80a側の端部には、4つの円板状の導電部材であるバスバーを含むバスバーユニット95aが配置される。バスバーユニット95aの3相のバスバー96u、96v、96wのそれぞれにおいて、周方向の互いに異なる位置には、モータ軸72と平行な車幅方向に沿ってインバータ90側に突出するリード板98aの一端が接続される。各リード板98aは、インバータケース80aの第2板部84aを貫通し、インバータ90の第1回路基板91の電気モータ70側に突出する対応する相の接続端子99に接続される。
【0081】
インバータケース80aの末端部分150aの上端面には第1コネクタ101と第2コネクタ102とが外側に突出するように取り付けられる。第1コネクタ101には、電源ユニット38に接続された電力ケーブル94が接続される。第2コネクタ102は、制御装置100に接続された信号ケーブル93が接続される。
【0082】
本例では、インバータケース80aは、各コネクタ101,102が上側に向く状態で上下方向に延びている。これにより、車軸駆動装置41bと地面との間の必要な上下方向の隙間を確保しやすくなる。
【0083】
上記では、インバータケース80aが、インバータケース80aの4つのボルト挿通孔86aと、4つのボルト67と、モータケース61aの4つのネジ孔65とを用いたネジ結合によって固定される場合を説明した。一方、これに限定せず、ボルト挿通孔等のネジ挿通孔が第1所定円に位置し、ネジ孔が第2所定円に位置すれば、ネジ挿通孔、ネジ孔、及びボルトの数は、任意の複数とすることができる。本例の構成において、その他の構成及び作用は、図1図9の構成と同様である。
【0084】
(第4の実施形態)
図18図19は、実施形態の別例である第3の実施形態を示している。図18は、実施形態の別例の車軸駆動装置41cを搭載する芝刈り車両10cの一部を断面にして示す側面図である。図19は、図18のE部拡大図である。
【0085】
本例の構成では、モータケース61aに対しインバータケース80aが、インバータケース80aの向きが図12図17の構成とは90度異なる向きとなるように固定されている。具体的には、インバータケース80aは、モータケース61aに対し、モータケース61aに固定された部分から前側に延びて固定される。これにより、インバータケース80aの厚みが大きくなった末端部分150aが、モータケース61aより前側に配置される。
【0086】
本例では、図12図17の構成と同様に、中間ケース49は、右側端面に、第1所定円156の円周上の等間隔4つの位置に形成されたネジ孔を有し、モータケース61aは、第1所定円156と同じ大きさの第2所定円157の円周上の等間隔4つの位置に形成されたボルト挿通孔を有する。これにより、図12図17の構成に対し、インバータケース80aの外形の基本形状を変更することなく、インバータケース80aの向きを90度変更してモータケース61aを車軸ケース42に固定することができる。
【0087】
なお、第1の実施形態または第2の実施形態において、モータケース61の第1所定円の円周上の等間隔複数位置にネジ孔を形成すると共に、インバータケース80の第2所定円の円周上の等間隔複数位置にボルト挿通孔を形成し、インバータケース80を前後方向とは異なる向き、例えば90度異なる向きに変更可能となるように、モータケース61にインバータケース80をネジ結合する構成とすることもできる。
【0088】
そのように構成する場合、電気モータとインバータとは次のように電気的に接続する必要がある。即ち、前述の図16を参照して、バスバーユニット95aの3相のバスバー96u、96v、96wのそれぞれにおいて、周方向の互いに異なる位置には、モータ軸72と平行な車幅方向に沿ってインバータ90側に突出するリード板98aの一端が接続される。各リード板98aは、インバータケース80aの第2板部84aを貫通し、インバータ90の第1回路基板91の電気モータ側に突出する対応する相の接続端子に接続される。このとき、各リード板98aの他端側部分は、インバータケース80aの第2板部84aに形成された開口を通って接続端子に接続される。本例では、この開口が、図16の場合とインバータケース80aの向きが90度異なることに伴って、図16の場合と異なる位置に形成されてもよい。一方、インバータケース80aの向きを90度変更可能とするように、モータケース61a側から導出された各リード板98aが通るインバータケース80aの開口と、リード板98aの他端部が接続される接続端子99とが、インバータケース80aの向きの変更の前後のそれぞれに対応して、1つずつまたは3相分の1組ずつ設けられてもよい。本例の構成において、その他の構成及び作用は、図12図17の構成と同様である。
【符号の説明】
【0089】
10,10a,10b,10c 芝刈り車両、12,14 左車輪、13,15 右車輪、16 メインフレーム、17 運転席、18 第1車軸、19 第2車軸、20 ステアリングホイール、21 ステアリング軸、22 ステアリングコラム、25 芝刈装置、26 モアデッキ、27 芝刈りブレード、28 電気モータ、30 軸部材、36 操作レバー、38 電源ユニット、41,41a,41b,41c 電気モータ付き車軸駆動装置、42 車軸ケース、43 第1車軸ケース、45 入力軸側部分、46 車軸側部分、48 第2車軸ケース、49 中間ケース、51 ホルダ、52 ブレーキカバー、53 筒部、54,55 補強リブ、58,59 ボルト、60,60a,60b,60c モータインバータ装置、61,61a モータケース、61b 取付ボス、62,62a 本体部、63 モータカバー、64 突部、65 ネジ孔、66、67 ボルト、68 モータカバー、69 インバータ固定部、70 電気モータ、72 モータ軸、73 モータロータ、74 連結部材、75 ブレーキホルダ、76 第1ブレーキロータ、77 歯車機構、78 減速歯車機構、79 第1ブレーキ装置、80,80a インバータケース、81 装着部分、82,82a 第1板部、83,83a 周壁部、84,84a 第2板部、85a 第1部分、85b 第2部分、86、86a ボルト挿通孔、87 第1所定円、88 ネジ孔、89 第2所定円、90 インバータ、91 第1回路基板、92 第2回路基板、93 信号ケーブル、94 電力ケーブル、95,95a バスバーユニット、96u、96v、96w バスバー、97 中性点バスバー、98,98a リード板、99 接続端子、100 制御装置、101 第1コネクタ、102 第2コネクタ、118 差動歯車機構、119 リングギヤ、121 ハブ、126 ボンネット、130 歯車機構、131 ステータコア、132 ステータコイル、140 第2ブレーキロータ、141 第2ブレーキ装置、142 筒部、143,144 補強リブ、147 電磁ソレノイド、150,150a 末端部分、151,152 開口、153 筒部、154 軸受、155 エアブリーザ装置、156 第1所定円、157 第2所定円。
図1
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