(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146432
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】セラミック電子部品、およびセラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 201M
H01G4/30 201N
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059323
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】滝田 優治
(72)【発明者】
【氏名】小和瀬 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山根 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】菅原 祐
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH09
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC40
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG60
5E082GG10
5E082GG28
5E082PP03
(57)【要約】
【課題】 電気特性を確保しつつ外観の色味を調整することができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 複数の誘電体層と複数の内部電極層とが積層された積層部分を含む積層チップを備え、前記複数の内部電極層は、前記積層チップの対向する2端面に交互に引き出され、前記積層チップは、サイドマージンおよびカバー層を備え、前記サイドマージンおよび前記カバー層は、前記容量部に近い側よりも外側表面に近い側において、Si,Mn,Cu,Fe,V,Ni,B,Mg,Ho,Dy,Er,Tm,Yb,Gd,Li,Co,Sm,およびYの少なくとも1種以上の副成分の濃度が高い高濃度部を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と複数の内部電極層とが積層された積層部分を含む積層チップを備え、
前記複数の内部電極層は、前記積層チップの対向する2端面に交互に引き出され、
前記積層チップは、前記複数の内部電極層が互いに対向する第1方向と、前記2端面が互いに対向する第2方向と、に直交する第3方向において、前記複数の誘電体層と前記複数の内部電極層とが対向する領域である容量部の外側にサイドマージンを備え、
前記積層チップは、前記容量部の前記第1方向の上面および下面にセラミックを主成分とするカバー層を備え、
前記サイドマージンおよび前記カバー層は、前記容量部に近い側よりも外側表面に近い側において、Si,Mn,Cu,Fe,V,Ni,B,Mg,Ho,Dy,Er,Tm,Yb,Gd,Li,Co,Sm,およびYの少なくとも1種以上の副成分の濃度が高い高濃度部を備える、セラミック電子部品。
【請求項2】
前記高濃度部は、前記副成分の濃度の変曲点から前記外側表面までの領域であり、
前記変曲点は、前記容量部から前記外側表面へのEPMAラインスペクトルを取得した際に、強度を、強度/最大強度×100とすることで規格化した規格化強度(D(%))、前記容量部から前記外側表面までの距離をd(μm)とした場合に、dD/dd≧35を満たす点である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記変曲点は、前記サイドマージンおよび前記カバー層のうち薄い方の厚さに対して前記外側表面から5.2%から76%の範囲に存在する、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記高濃度部における前記副成分の濃度は、2.5at%以上9.0at%以下である、請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記サイドマージンおよび前記カバー層において、前記高濃度部よりも内側の領域の前記副成分の濃度は、2.0at%以上6.0at%以下である、請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記高濃度部において、前記副成分は、単体、酸化物の結晶、またはガラスの形態で存在する、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記サイドマージンの前記高濃度部の厚さに対する前記カバー層の前記高濃度部の厚さの比は、0.75以上1.26以下である、請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
複数の誘電体層と複数の内部電極層とが積層された積層部分を含む積層チップを備え、
前記複数の内部電極層は、前記積層チップの対向する2端面に交互に引き出され、
前記積層チップは、前記複数の内部電極層が互いに対向する第1方向と、前記2端面が互いに対向する第2方向と、に直交する第3方向において、前記複数の誘電体層と前記複数の内部電極層とが対向する領域である容量部の外側にサイドマージンを備え、
前記積層チップは、前記容量部の前記第1方向の上面および下面にセラミックを主成分とするカバー層を備え、
前記サイドマージンおよび前記カバー層は、前記容量部に近い側よりも外側表面に近い側において、Si,Mn,Cu,Fe,V,Ni,B,Mg,Ho,Dy,Er,Tm,Yb,Gd,Li,Co,Sm,およびYの少なくとも1種以上の副成分の濃度が高い高濃度部を備え、
前記高濃度部は、前記サイドマージンおよび前記カバー層のうち薄い方の厚さに対して前記外側表面から5.2%から76%の範囲である、セラミック電子部品。
【請求項9】
誘電体グリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターンの周囲に、誘電体パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターンおよび前記誘電体パターンが形成された前記誘電体グリーンシートを第1方向に積層し、第2方向に交互に前記内部電極パターンの端部がずれるようにして積層体を得る工程と、
前記積層体に対して、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の両端に、Si,Mn,Cu,Fe,V,Ni,B,Mg,Ho,Dy,Er,Tm,Yb,Gd,Li,Co,Sm,およびYの少なくとも1種以上の副成分を含浸させるか付着させる工程と、
前記積層体を焼成する工程と、を含むセラミック電子部品の製造方法。
【請求項10】
誘電体グリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターンが形成された前記誘電体グリーンシートを第1方向に積層し、第2方向に交互に前記内部電極パターンの端部がずれるようにして積層体を得る工程と、
前記積層体に対して、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の両端にセラミック粉末を含むサイドマージンシートを形成する工程と、
前記サイドマージンシートの表面に、Si,Mn,Cu,Fe,V,Ni,B,Mg,Ho,Dy,Er,Tm,Yb,Gd,Li,Co,Sm,およびYの少なくとも1種以上の副成分を含浸させるか付着させる工程と、
前記積層体を焼成する工程と、を含むセラミック電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記積層体を焼成する際の昇温速度を、1000℃/h以上にする、請求項9または請求項10に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品、およびセラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を代表とする高周波通信用システムにおいて、更なる機能性付与のために信頼性の高い積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品は、粉末材料を焼成することで製造することができる。この際、誘電体の組成によって焼結状態が大きく異なってくるため、サイドおよびカバー部で色味の差異が生じる。このとき、外観検査によって、不良と判定される場合がある。そのため、色味を調整するためにシリカなどの副成分を添加することが考えられる。しかしながら、副成分が容量部まで拡散すると、静電容量などの電気特性に悪影響を与える。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、電気特性を確保しつつ外観の色味を調整することができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセラミック電子部品は、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが積層された積層部分を含む積層チップを備え、前記複数の内部電極層は、前記積層チップの対向する2端面に交互に引き出され、前記積層チップは、前記複数の内部電極層が互いに対向する第1方向と、前記2端面が互いに対向する第2方向と、に直交する第3方向において、前記複数の誘電体層と前記複数の内部電極層とが対向する領域である容量部の外側にサイドマージンを備え、前記積層チップは、前記容量部の前記第1方向の上面および下面にセラミックを主成分とするカバー層を備え、前記サイドマージンおよび前記カバー層は、前記容量部に近い側よりも外側表面に近い側において、Si,Mn,Cu,Fe,V,Ni,B,Mg,Ho,Dy,Er,Tm,Yb,Gd,Li,Co,Sm,およびYの少なくとも1種以上の副成分の濃度が高い高濃度部を備える、セラミック電子部品。
【0007】
上記セラミック電子部品において、前記高濃度部は、前記副成分の濃度の変曲点から前記外側表面までの領域であり、前記変曲点は、前記容量部から前記外側表面へのEPMAラインスペクトルを取得した際に、強度を、強度/最大強度×100とすることで規格化した規格化強度(D(%))、前記容量部から前記外側表面までの距離をd(μm)とした場合に、dD/dd≧35を満たす点であってもよい。
【0008】
上記セラミック電子部品において、前記変曲点は、前記サイドマージンおよび前記カバー層のうち薄い方の厚さに対して前記外側表面から5.2%から76%の範囲に存在してもよい。
【0009】
上記セラミック電子部品において、前記高濃度部における前記副成分の濃度は、2.5at%以上9.0at%以下であってもよい。
【0010】
上記セラミック電子部品の前記サイドマージンおよび前記カバー層において、前記高濃度部よりも内側の領域の前記副成分の濃度は、2.0at%以上6.0at%以下であってもよい。
【0011】
上記セラミック電子部品の前記高濃度部において、前記副成分は、単体、酸化物の結晶、またはガラスの形態で存在してもよい。
【0012】
上記セラミック電子部品において、前記サイドマージンの前記高濃度部の厚さに対する前記カバー層の前記高濃度部の厚さの比は、0.75以上1.26以下であってもよい。
【0013】
本発明に係る他のセラミック電子部品は、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが積層された積層部分を含む積層チップを備え、前記複数の内部電極層は、前記積層チップの対向する2端面に交互に引き出され、前記積層チップは、前記複数の内部電極層が互いに対向する第1方向と、前記2端面が互いに対向する第2方向と、に直交する第3方向において、前記複数の誘電体層と前記複数の内部電極層とが対向する領域である容量部の外側にサイドマージンを備え、前記積層チップは、前記容量部の前記第1方向の上面および下面にセラミックを主成分とするカバー層を備え、前記サイドマージンおよび前記カバー層は、前記容量部に近い側よりも外側表面に近い側において、Si,Mn,Cu,Fe,V,Ni,B,Mg,Ho,Dy,Er,Tm,Yb,Gd,Li,Co,Sm,およびYの少なくとも1種以上の副成分の濃度が高い高濃度部を備え、前記高濃度部は、前記サイドマージンおよび前記カバー層のうち薄い方の厚さに対して前記外側表面から5.2%から76%の範囲である。
【0014】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、誘電体グリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、前記内部電極パターンの周囲に、誘電体パターンを形成する工程と、前記内部電極パターンおよび前記誘電体パターンが形成された前記誘電体グリーンシートを第1方向に積層し、第2方向に交互に前記内部電極パターンの端部がずれるようにして積層体を得る工程と、前記積層体に対して、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の両端に、Si,Mn,Cu,Fe,V,Ni,B,Mg,Ho,Dy,Er,Tm,Yb,Gd,Li,Co,Sm,およびYの少なくとも1種以上の副成分を含浸させるか付着させる工程と、前記積層体を焼成する工程と、を含む。
【0015】
本発明に係るセラミック電子部品の他の製造方法は、誘電体グリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、前記内部電極パターンが形成された前記誘電体グリーンシートを第1方向に積層し、第2方向に交互に前記内部電極パターンの端部がずれるようにして積層体を得る工程と、前記積層体に対して、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の両端にセラミック粉末を含むサイドマージンシートを形成する工程と、前記サイドマージンシートの表面に、Si,Mn,Cu,Fe,V,Ni,B,Mg,Ho,Dy,Er,Tm,Yb,Gd,Li,Co,Sm,およびYの少なくとも1種以上の副成分を含浸させるか付着させる工程と、前記積層体を焼成する工程と、を含む。
【0016】
上記セラミック電子部品の製造方法において、前記積層体を焼成する際の昇温速度を、1000℃/h以上にしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気特性を確保しつつ外観の色味を調整することができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図6】EPMAライン分析について説明するための図である。
【
図7】平滑化前のグラフおよび平滑化後のグラフを例示する図である。
【
図9】dD/dd=35の点と、変曲点とを例示する図である。
【
図10】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【
図11】(a)および(b)は内部電極形成工程を例示する図である。
【
図13】サイドマージン部を後付けする場合を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0020】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図1~
図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0021】
なお、
図1~
図3において、Z軸方向(第1方向)は、積層方向であり、各内部電極層12が対向する方向である。X軸方向(第2方向)は、積層チップ10の長さ方向であって、積層チップ10の2端面が対向する方向であり、外部電極20aと外部電極20bとが対向する方向である。Y軸方向(第3方向)は、内部電極層12の幅方向であり、積層チップ10の4側面のうち2端面以外の2側面が対向する方向である。X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とは、互いに直交している。
【0022】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に引き出されている。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層において、積層方向の両方の最外層には内部電極層12が配置され、当該最外層の内部電極層12は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13は、誘電体層11と組成が同じであっても、異なっていても構わない。
【0023】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0024】
内部電極層12は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)等の卑金属やこれらの合金を主成分とする。内部電極層12の主成分として、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。内部電極層12は、共材などのセラミック粒子を含んでいてもよい。Z軸方向における内部電極層12の1層あたりの平均厚さは、例えば、0.5μm以下であり、0.4μm以下であることが好ましい。内部電極層12の1層あたりの平均厚さは、積層セラミックコンデンサ100の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、異なる10層の内部電極層12についてそれぞれ10点ずつ厚さを測定し、全測定点の平均値を導出することによって測定することができる。
【0025】
誘電体層11は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、チタン酸バリウム(BaTiO3),ジルコン酸カルシウム(CaZrO3),チタン酸カルシウム(CaTiO3),チタン酸ストロンチウム(SrTiO3),チタン酸マグネシウム(MgTiO3),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3は、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。例えば、誘電体層11において、主成分セラミックは、90at%以上含まれている。Z軸方向における誘電体層11の1層あたりの平均厚さは、例えば、1.0μm以下であり、0.8μm以下であることが好ましい。Z軸方向における内部電極層12の1層あたりの平均厚さは、積層セラミックコンデンサ100の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、異なる10層の誘電体層11についてそれぞれ10点ずつ厚さを測定し、全測定点の平均値を導出することによって測定することができる。
【0026】
誘電体層11には、添加物が添加されていてもよい。誘電体層11への添加物として、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0027】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該電気容量を生じる領域を、容量部14と称する。すなわち、容量部14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層12同士が対向する領域である。
【0028】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、電気容量を生じない領域である。
【0029】
図3で例示するように、積層チップ10において、サイドマージン16は、誘電体層11および内部電極層12の2側面側の端部(Y軸方向の端部)を覆うように設けられた領域である。すなわち、サイドマージン16は、Y軸方向において、容量部14の外側に設けられた領域である。サイドマージン16も、電気容量を生じない領域である。
【0030】
図4は、外部電極20a付近の拡大断面図である。
図4では、ハッチを省略している。
図4で例示するように、外部電極20aの外表面に、外部電極20aを下地層として、めっき層22が設けられていてもよい。外部電極20aは、Cuを主成分とする。外部電極20aは、ガラス成分を含んでいてもよい。めっき層22は、Cu、Ni、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、Snなどの金属またはこれらの2以上の合金を主成分とする。めっき層22は、単一金属成分のめっき層でもよく、互いに異なる金属成分の複数のめっき層でもよい。例えば、めっき層22は、外部電極20a側から順に、第1めっき層23、第2めっき層24および第3めっき層25が形成された構造を有する。第1めっき層23は、例えば、Cuめっき層である。第2めっき層24は、例えば、Niめっき層である。第3めっき層25は、例えば、Snめっき層である。なお、
図4では、外部電極20aについて例示しているが、外部電極20bの外表面にも同様に、めっき層22が設けられていてもよい。
【0031】
積層セラミックコンデンサは、誘電体層用の粉末材料、内部電極層用の粉末材料などを同時に焼成することで、製造することができる。例えば、内部電極層の途切れを抑制するために、1000℃/h以上の速い昇温速度にて焼成することがある。この際、誘電体の組成によって焼結状態が大きく異なってくるため、カバー層とサイドマージンとで、色味の差異が生じる。色味の差異が生じた積層セラミックコンデンサに対して外観検査を行うと、不良と判定される場合がある。そのため、サイドマージンの色味を調整するために、あらかじめシリカなどの副成分を多量に添加し色味を調整することが考えられる。しかしながら、この場合、焼成過程にて、添加した副成分が容量部まで拡散してしまい、静電容量などの電気特性に悪影響を与える。
【0032】
これに対して、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、電気特性を確保しつつ外観の色味を調整することができる構成を有している。以下、詳細について説明する。
【0033】
本実施形態においては、サイドマージン16およびカバー層13は、色味を調整するための副成分(以下、色味調整成分)を含んでいる。色味調整成分として、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、ホルミウム(Ho)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ガドリニウム(Gd)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、サマリウム(Sm)、およびイットリウム(Y)の少なくとも1種以上の元素を用いることができる。サイドマージン16およびカバー層13が色味調整成分を含むことで、サイドマージン16およびカバー層13の外側表面の色味を調整することができる。例えば、添加剤の固溶状態が変化し、白っぽくなる。それにより、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100を外観検査する場合に、合格しやすくなる。
【0034】
サイドマージン16およびカバー層13において、色味調整成分は、元素単体の形態で存在していてもよく、酸化物の形態で存在していてもよい。例えば、色味調整成分は、酸化物の結晶の形態で存在していてもよく、ガラスの形態で存在していてもよい。
【0035】
図5で例示するように、サイドマージン16およびカバー層13は、容量部14に近い側よりも外側表面に近い側において、色味調整成分の濃度が高い高濃度部30を備える。それにより、サイドマージン16およびカバー層13の外側表面の色味を調整することができる。一方、サイドマージン16およびカバー層13において、容量部14側の色味調整成分の濃度が低いため、容量部14に対する色味調整成分の拡散が抑制される。それにより、積層セラミックコンデンサ100の電気特性低下を抑制することができる。なお、高濃度部30よりも容量部14側に領域を低濃度部40と称する。
図5では、ハッチングを省略してある。
【0036】
以上のことから、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、電気特性を確保しつつ外観の色味を調整することができる。
【0037】
例えば、色味調整分の濃度についてサイドマージン16およびカバー層13の厚さ方向にEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)ラインスペクトルを取得した場合に、色味調整成分の濃度変化に変曲点が現れる。色味濃度調整成分の濃度変化に変曲点が現れているか否かは、以下の手順で確認することができる。なお、サイドマージン16の厚さ方向とはY軸方向のことであり、カバー層13の厚さ方向とはZ軸方向のことである。
【0038】
まず、
図6で例示するように、サイドマージン16およびカバー層13の厚さ方向に、所定のサンプリング周期でEPMAライン分析を行う。
図6の各丸印はサンプリング点を示している。
図6の例では、一例としてサンプリング間隔は0.25μmとなっている。次に、各サンプリング点について、前後0.5μmの範囲での平均強度値を算出する。この算出された平均強度値を、各サンプリング点における強度値とする。このように移動平均を算出して平滑化することによって、ノイズの影響を抑制して強度変化を測定することができる。
【0039】
図7は、平滑化前のグラフと、平滑化後のグラフとが併記されている。なお、
図7の横軸は、距離d(μm)を表している。
図7の横軸の「0」は、一例として、サイドマージン16と容量部14との境界を示している。
図7において、横軸の右側ほどサイドマージン16の厚さ方向に進み、サイドマージン16の外側表面に至ることになる。
図7のグラフのように、サイドマージン16において、容量部14側よりも外側表面の方が色味調整成分の濃度が高くなっている。
【0040】
次に、測定された強度変化のグラフを規格化する。各サンプリング点で測定された強度を、強度/最大強度×100とすることで、規格化強度(D(%))を得ることができる。これにより、各サンプリング点で測定された強度を、強度/最大強度×100とすることで、規格化強度(D(%))を得ることができる。この規格化によって、濃度値の絶対値にバラツキが生じても、変曲点を確認することができるようになる。
図8は、規格化濃度を例示する図である。
【0041】
次に、規格化強度D(%)のグラフを距離d(μm)で微分し、dD/ddを算出する。このdD/ddが35になるところを変曲点と定義する。
図9に、dD/dd=35の点と、変曲点とを例示する。本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100では、カバー層13およびサイドマージン16において、色味調整成分の濃度変化に上記の変曲点が現れる。これによって、サイドマージン16およびカバー層13において、容量部14に近い領域では色味調整成分の濃度が低く抑えられており、外側表面に近い高濃度部30では色味調整成分の濃度が局所的に高くなっていることが確認される。なお、色味調整成分が2種以上添加される場合には、色味調整成分の濃度とは、どれか1つに着目した場合の濃度のことである。
【0042】
例えば、サイドマージン16およびカバー層13の厚さ方向において、上記変曲点から外側表面までの領域を、高濃度部30と定義することができる。
【0043】
上記変曲点がサイドマージン16およびカバー層13の外側表面に近いと、色味調整成分の量が少なくなり、サイドマージン16およびカバー層13の色味を十分に調整できないおそれがある。そこで、上記変曲点は、外側表面から離れていることが好ましい。本実施形態においては、サイドマージン16およびカバー層13の厚さ方向において、上記変曲点は、外側表面から、サイドマージン16およびカバー層13のうち薄い方の厚さに対して5.2%以上離れていることが好ましく、18%以上離れていることがより好ましく、30%以上離れていることがさらに好ましい。
【0044】
一方、上記変曲点が容量部14に近いと、色味調整成分が容量部14に拡散するおそれがある。そこで、上記変曲点は、容量部14から離れていることが好ましい。本実施形態においては、サイドマージン16およびカバー層13の厚さ方向において、上記変曲点は、外側表面から、サイドマージン16およびカバー層13のうち薄い方の厚さに対して76%以下離れて位置していることが好ましく、67%以下離れて位置していることがより好ましく、61%以下離れて位置していることがさらに好ましい。
【0045】
高濃度部30における色味調整成分の濃度が低いと、サイドマージン16およびカバー層13の色味を十分に調整できないおそれがある。そこで、高濃度部30における色味調整成分の濃度に下限を設けることが好ましい。本実施形態においては、高濃度部30における色味調整成分の濃度は、2.5at%以上であることが好ましく、2.75at%以上であることがより好ましく、3.0at%以上であることがさらに好ましい。なお、ここでの色味調整成分の濃度とは、サイドマージン16およびカバー層13に含まれるペロブスカイト構造を有する主成分セラミックのBサイト(例えばTi)を100at%とした場合の濃度のことである。高濃度部30における色味調整成分の濃度は、例えば、LA-ICP-MSによって測定することができる。
【0046】
一方、高濃度部30における色味調整成分の濃度が高いと、複数の積層チップを焼成する際に、積層チップ同士がくっつくネッキングが発生するおそれがある。そこで、高濃度部30における色味調整成分の濃度に上限を設けることが好ましい。本実施形態においては、高濃度部30における色味調整成分の濃度は、9.0at%以下であることが好ましく、8.5at%以下であることがより好ましく、8.0at%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
低濃度部40における色味調整成分の濃度が高いと、色味調整成分が容量部14に拡散するおそれがある。そこで、低濃度部40における色味調整成分の濃度に上限を設けることが好ましい。本実施形態においては、低濃度部40における色味調整成分の濃度は、6.0at%以下であることが好ましく、5.5at%以下であることがより好ましく、5.0at%以下であることがさらに好ましい。
【0048】
一方、低濃度部40における色味調整成分の濃度が低いと、容量部14に存在するSiがカバー層13およびサイドマージン16に拡散し、特性に変化を及ぼすおそれがある。そこで、低濃度部40における色味調整成分の濃度に下限を設けることが好ましい。本実施形態においては、低濃度部40における色味調整成分の濃度は、2.0at%以上であることが好ましく、2.25at%以上であることがより好ましく、2.5at%以上であることがさらに好ましい。
【0049】
サイドマージン16における高濃度部30およびカバー層13における高濃度部30の厚みの差が大きいと、色味の差異が大きくなるおそれがある。そこで、サイドマージン16における高濃度部30およびカバー層13における高濃度部30の厚みの差は小さいことが好ましい。本実施形態においては、サイドマージン16における高濃度部30の厚みに対するカバー層13における高濃度部30の厚みの比は、0.75以上1.26以下であることが好ましい。
【0050】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図10は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0051】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABO3の粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、チタン酸バリウムは、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このチタン酸バリウムは、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。
【0052】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、ジルコニウム、ハフニウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、バナジウム、クロム、希土類元素(イットリウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよびイッテルビウム)の酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0053】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。
【0054】
(塗工工程)
次に、得られた原料粉末に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に誘電体グリーンシート51を塗工して乾燥させる。基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。塗工工程を例示する図は省略した。
【0055】
(内部電極形成工程)
次に、
図11(a)で例示するように、誘電体グリーンシート51の表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、内部電極層用の内部電極パターン52を配置する。金属導電ペーストには、ニッケルに加えて共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
【0056】
次に、原料粉末作製工程で得られた誘電体パターン材料に、エチルセルロース系等のバインダと、ターピネオール系等の有機溶剤とを加え、ロールミルにて混練して逆パターン層用の誘電体パターンペーストを得る。
図11(a)で例示するように、誘電体グリーンシート51上において、内部電極パターン52が印刷されていない周辺領域に誘電体パターンペーストを印刷することで誘電体パターン53を配置し、内部電極パターン52との段差を埋める。内部電極パターン52および誘電体パターン53が印刷された誘電体グリーンシート51を積層単位と称する。
【0057】
その後、
図11(b)で例示するように、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、積層単位を積層していく。例えば、内部電極パターン52の積層数を100~500層とする。
【0058】
(圧着工程)
図12で例示するように、積層単位が積層された積層体の上下にカバーシート54を所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着する。カバーシート54も、セラミック粉末を含むグリーンシートである。
【0059】
(チップ化工程)
得られたセラミック積層体を所定のサイズにカットすることで、チップ化する。
【0060】
サイドマージン部は、上記積層部分の側面に貼り付けまたは塗布してもよい。具体的には、
図13で例示するように、セラミックグリーンシート51と、当該セラミックグリーンシート51と同じ幅の内部電極パターン52とを交互に積層することで、積層部分を得る。次に、積層部分の側面に、誘電体パターンペーストで形成したシートをサイドマージン部55として貼り付けてもよい。
【0061】
(添加工程)
次に、チップ化されたセラミック積層体に対してバレル研磨で面取りを行い、空気雰囲気あるいは窒素雰囲気で、脱バインダ処理を行う。その後、ディッピングによって、セラミック積層体の表面部分に、色味調整剤を添加する。例えば、色味調整剤としてシリカを用いる場合には、コロイダルシリカを含浸させる。このディッピング工程によって、サイドマージン16およびカバー層13に対応する領域の表面に色味調整剤の前駆体を含浸させることができる。色味調整剤の前駆体の含浸量は、ディッピング時間によって調整することができる。なお、当該含浸量は、溶媒粘度、撹拌時間、溶液温度などを変更することでも調整することができる。
【0062】
なお、ディッピング以外の手法で色味調整剤を添加してもよい。例えば、化学気相法(CVD)などでチップ表面に色味調整剤を付着させ、焼成過程の高温域にて浸透させてもよい。
【0063】
(焼成工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N2雰囲気で脱バインダ処理した後に外部電極20a,20bとなる金属ペーストをディップ法で塗布し、酸素分圧が10-12MPa~10-9MPa、1160℃~1280℃(例えば、1180℃以上、1230℃以下)の還元雰囲気で、5分~10時間の焼成を行なう。焼成温度までの昇温速度は、例えば、1000℃/h以上とする。
【0064】
(再酸化処理工程)
還元雰囲気で焼成された誘電体層11の部分的に還元された主相であるチタン酸バリウムに酸素を戻すために、内部電極層12を酸化させない程度に、約1000℃でN2と水蒸気の混合ガス中、もしくは500℃~700℃の大気中での熱処理が行われることがある。この工程は、再酸化処理工程とよばれる。
【0065】
(めっき処理工程)
その後、外部電極20a,20b上に、めっき処理により、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行う。以上の工程により、積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0066】
本実施形態に係る製造方法によれば、サイドマージン16およびカバー層13の外側表面に対応する領域に、色味調整成分を含浸させるか付着させてから焼成することにより、サイドマージン16およびカバー層13において、外側表面に色味調整成分の濃度が高い領域を形成し、容量部14に近い側には色味調整成分の濃度が低い領域を形成することができる。例えば、上述した高濃度部30および低濃度部40を形成することができる。
【0067】
なお、上記各実施形態においては、積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の積層セラミック電子部品を用いてもよい。
【実施例0068】
以下、上記実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0069】
(実施例1)
誘電体グリーンシートに、Niの内部電極パターンを印刷した。内部電極パターンの周りには、誘電体パターンを印刷した。複数の積層単位を、内部電極パターンが交互にX軸方向にずれるようにして積層し、圧着し、カットしてセラミック積層体を得た。
【0070】
作製したセラミック積層体に対してバレルで面取りを行い、脱バインダ処理を行った。実施例1では、色味調整成分としてSiを用いた。ディッピングによるチップ内へのコロイダルシリカの含浸により、チップマージン部にシリカ前駆体を含浸させた。シリカ前駆体の含浸量は、ディッピング時間によって調整した。実施例1では、ディッピング時間を5秒とした。Si成分の含浸深さは、1μmであった。ディッピングの後に、余計な有機溶媒を脱離させるために、窒素雰囲気中200℃で熱処理を実施した。Si成分を添加したセラミック積層体をN2-H2-wet雰囲気下にて高速焼成(昇温速度:1000℃/h)し、外部電極を焼付け、メッキをすることで積層セラミックコンデンサを作製した。
【0071】
焼成後において、カバー層の厚さは17μmであった。サイドマージンの厚さは、13μmであった。サイドマージンおよびカバー層に対してEPMAライン分析を行い、色味調整成分の濃度を測定し、変曲点を検出し、変曲点から外側表面までの領域を高濃度部と定義した。カバー層における高濃度部の範囲は、外側表面から1.1μmであった。これは、カバー層の厚みの6.5%に相当する。サイドマージンにおける高濃度部の範囲は、外側表面から1.0μmであった。これは、サイドマージンの厚みの8.5%に相当する。カバー層における高濃度部の厚さ/サイドマージンにおける高濃度部の厚さの比率は、1.10であった。
【0072】
(実施例2)
実施例2では、ディッピング時間を5秒とした。Si成分の含浸深さは、1μmであった。焼成後において、カバー層の厚さは21μmであった。サイドマージンの厚さは、17μmであった。カバー層における高濃度部の範囲は、外側表面から1.2μmであった。これは、カバー層の厚みの5.2%に相当する。サイドマージンにおける高濃度部の範囲は、外側表面から1.0μmであった。これは、サイドマージンの厚みの6.5%に相当する。カバー層における高濃度部の厚さ/サイドマージンにおける高濃度部の厚さの比率は、1.20であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0073】
(実施例3)
実施例3では、ディッピング時間を60秒とした。Si成分の含浸深さは、9μmであった。焼成後において、カバー層の厚さは17μmであった。サイドマージンの厚さは、13μmであった。カバー層における高濃度部の範囲は、外側表面から9.1μmであった。これは、カバー層の厚みの49%に相当する。サイドマージンにおける高濃度部の範囲は、外側表面から7.5μmであった。これは、サイドマージンの厚みの65%に相当する。カバー層における高濃度部の厚さ/サイドマージンにおける高濃度部の厚さの比率は、1.21であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0074】
(実施例4)
実施例4では、ディッピング時間を60秒とした。Si成分の含浸深さは、9μmであった。焼成後において、カバー層の厚さは21μmであった。サイドマージンの厚さは、17μmであった。カバー層における高濃度部の範囲は、外側表面から9.1μmであった。これは、カバー層の厚みの40%に相当する。サイドマージンにおける高濃度部の範囲は、外側表面から7.2μmであった。これは、サイドマージンの厚みの49%に相当する。カバー層における高濃度部の厚さ/サイドマージンにおける高濃度部の厚さの比率は、1.26であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0075】
(実施例5)
実施例5では、ディッピング時間を120秒とした。Si成分の含浸深さは、12μmであった。焼成後において、カバー層の厚さは21μmであった。サイドマージンの厚さは、17μmであった。カバー層における高濃度部の範囲は、外側表面から13.0μmであった。これは、カバー層の厚みの62%に相当する。サイドマージンにおける高濃度部の範囲は、外側表面から12.0μmであった。これは、サイドマージンの厚みの76%に相当する。カバー層における高濃度部の厚さ/サイドマージンにおける高濃度部の厚さの比率は、1.08であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0076】
(実施例6)
実施例6では、Siの代わりにBを色味調整成分として用い、ディッピングを用いずに、CVDによってチップマージン部の表面に付着させた。焼成後において、カバー層の厚さは17μmであった。サイドマージンの厚さは、13μmであった。カバー層における高濃度部の範囲は、外側表面から5.0μmであった。これは、カバー層の厚みの30%に相当する。サイドマージンにおける高濃度部の範囲は、外側表面から4.0μmであった。これは、サイドマージンの厚みの38%に相当する。カバー層における高濃度部の厚さ/サイドマージンにおける高濃度部の厚さの比率は、1.25であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0077】
(実施例7)
実施例7では、Siの代わりにAlを色味調整成分として用い、ディッピングを用いずに、CVDによってチップマージン部の表面に付着させた。焼成後において、カバー層の厚さは17μmであった。サイドマージンの厚さは、13μmであった。カバー層における高濃度部の範囲は、外側表面から7.0μmであった。これは、カバー層の厚みの41%に相当する。サイドマージンにおける高濃度部の範囲は、外側表面から6.0μmであった。これは、サイドマージンの厚みの54%に相当する。カバー層における高濃度部の厚さ/サイドマージンにおける高濃度部の厚さの比率は、1.17であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0078】
(実施例8)
実施例8では、Siの代わりにGeを色味調整成分として用い、ディッピングを用いずに、CVDによってチップマージン部の表面に付着させた。焼成後において、カバー層の厚さは17μmであった。サイドマージンの厚さは、13μmであった。カバー層における高濃度部の範囲は、外側表面から3.0μmであった。これは、カバー層の厚みの18%に相当する。サイドマージンにおける高濃度部の範囲は、外側表面から4.0μmであった。これは、サイドマージンの厚みの23%に相当する。カバー層における高濃度部の厚さ/サイドマージンにおける高濃度部の厚さの比率は、0.75であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0079】
(比較例1)
比較例1では、サイドマージンおよびカバー層に色見調整成分を添加しなかった。焼成後において、カバー層の厚さは17μmであった。サイドマージンの厚さは、13μmであった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0080】
(比較例2)
比較例2では、ディッピング時間を600秒とした。Si成分の含浸深さは、17μmよりも深かった。焼成後において、カバー層の厚さは17μmであった。サイドマージンの厚さは、13μmであった。カバー層における高濃度部の範囲は、外側表面から17μmよりも広かった。これは、カバー層の厚みの100%を超える。サイドマージンにおける高濃度部の範囲は、外側表面から13μmよりも広かった。これは、サイドマージンの厚みの100%を超える。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0081】
(比較例3)
比較例3では、ディッピング時間を300秒とした。Si成分の含浸深さは、15μmであった。焼成後において、カバー層の厚さは17μmであった。サイドマージンの厚さは、13μmであった。カバー層における高濃度部の範囲は、外側表面から16μmであった。これは、カバー層の厚みの100%を超える。サイドマージンにおける高濃度部の範囲は、外側表面から13μmであった。これは、サイドマージンの厚みの100%を超える。カバー層における高濃度部の厚さ/サイドマージンにおける高濃度部の厚さの比率は、1.07であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0082】
実施例1~8および比較例1~3の各条件を表1に示す。
【表1】
【0083】
(外観不良検査)
実施例1~8および比較例1~3のそれぞれについて、各100個のサンプルに対して外観不良検査を行った。外観不良検査では、グレースケールなどで、数値化された色味が一定の規格の範囲外に存在しているサンプルについて不良と判定した。不良と判定されたサンプル数比率を不良判定率と定義した。不良判定率が5%未満であれば、外観不良判定率を良好「〇」と判定した。不良判定率が5%以上10%未満であれば、外観不良判定率をやや良好「△」と判定した。不良判定率が10%以上であれば、外観不良判定率を不良「×」と判定した。結果を表2に示す。
【0084】
比較例1では外観不良検査が不良「×」と判定された。これは、サイドマージンおよびカバー層に色味調整成分を添加しなかったからであると考えられる。これに対して、実施例1~8のいずれにおいても外観不良検査は良好「〇」と判定された。これは、サイドマージンおよびカバー層に色味調整成分としてSiを添加したからであると考えられる。
【0085】
(容量変化率)
実施例1~8および比較例1~3のそれぞれについて、静電容量を調べた。実施例〇〇の静電容量に対して静電容量の低下率が5%以上であれば、容量変化率を不良「×」と判定し、静電容量の低下率が3%以上5%未満であれば、容量変化率をやや良好「△」と判定し、静電容量の低下率が3%未満であれば、容量変化率を良好「〇」と判定した。結果を表2に示す。
【0086】
比較例2,3では、容量変化率が不良「×」と判定された。これは、色味調整成分の高濃度部がサイドマージンおよびカバー層の全体にわたって形成されたために容量部に色味調整成分が拡散したからであると考えられる。これに対して、実施例1~8では、容量変化率がやや良好「△」または良好「〇」と判定された。これは、色味調整成分の高濃度部がサイドマージンおよびカバー層の一部に形成され、容量部側の色味調整成分の濃度が低く、色味調整成分の拡散が抑制されたからであると考えられる。
【0087】
なお、容量変化率の結果が実施例5よりも実施例1~4,6~8の方が良好になったのは、サイドマージンおよびカバー層のうち薄い方の厚さに対して外側表面から67%以下の範囲に、色味調整成分の濃度に変曲点が存在したからであると考えられる。
【表2】
【0088】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。