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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146433
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】固体電解質シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20241004BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241004BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20241004BHJP
【FI】
H01B13/00 Z
H01M10/0562
H01M10/0585
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059327
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 誠一
(72)【発明者】
【氏名】福島 岳大
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ04
(57)【要約】
【課題】不織布等の三次元構造体のしわや、それに沿った気泡を抑制するとともに、三次元構造体の破断を抑制する固体電解質シートの製造方法を提供する。
【解決手段】固体電解質が充填された固体電解質シートの製造方法は、基材上に、固体電解質を含む第1スラリーを塗工し第1未硬化物を形成する第1工程と、基材上の第1未硬化物を乾燥させて、第1固体電解質層を形成する第2工程と、第1固体電解質層の上面に第2スラリーを塗工し第2未硬化物を形成する第3工程と、第2未硬化物に対して、シート状の三次元構造体を侵入させる第4工程と、三次元構造体の内部に侵入した第2未硬化物および三次元構造体の上にある第2未硬化物を乾燥させて、三次元構造体の内部および三次元構造体の上に第2固体電解質層を形成し三次元構造体の内部に第2固体電解質層が充填された固体電解質シートを得る第5工程と、を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質が充填された固体電解質シートの製造方法であって、
基材上に、固体電解質を含む第1スラリーを塗工し、前記第1スラリーからなる第1未硬化物を形成する第1工程と、
前記基材上の前記第1未硬化物を乾燥させて、第1固体電解質層を形成する第2工程と、
前記第1固体電解質層の上面に、第2スラリーを塗工し、前記第2スラリーからなる第2未硬化物を形成する第3工程と、
前記第2未硬化物に対して、シート状の三次元構造体を侵入させる第4工程と、
前記三次元構造体の内部に侵入した前記第2未硬化物、および前記三次元構造体の上にある前記第2未硬化物を乾燥させて、前記三次元構造体の内部、および前記三次元構造体の上に第2固体電解質層を形成し、前記三次元構造体の内部に前記第2固体電解質層が充填された固体電解質シートを得る第5工程と、
を有する、固体電解質シートの製造方法。
【請求項2】
前記第4工程において、前記第2未硬化物に対して、前記三次元構造体を前記第1固体電解質層の表面まで侵入させる、請求項1に記載の固体電解質シートの製造方法。
【請求項3】
前記三次元構造体は、不織布である、請求項1に記載の固体電解質シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電池は、正極層と、固体電解質層と、負極層とが積層された積層体から構成される。固体電解質層としては、例えば、固体電解質が充填された固体電解質シートが用いられる。固体電解質シートは、厚み方向の中央に配置され、内部に固体電解質が充填された、不織布等のシート状の三次元構造体と、前記三次元構造体の表面および裏面をそれぞれ覆うように形成された固体電解質層とを備える。
【0003】
従来、固体電解質を含むスラリーに、上記三次元構造体を浸漬して、上記三次元構造体の内部に前記スラリーを充填した後、前記スラリーを乾燥させて固体電解質シートを形成していた。しかしながら、この方法では、固体電解質シートの量産性や、その製造における安全性に劣るという課題があった。固体電解質シートの量産性や、その製造における安全性を確保するためには、上記三次元構造体に上記スラリーを塗工する方法により、上記スラリーに上記三次元構造体を浸漬する方法によって得られたものと同等の品質を有する固体電解質シートを得る必要がある。
【0004】
上記三次元構造体に上記スラリーを塗工する方法において、上記スラリーを二回塗工することにより、上記三次元構造体を断面方向中央に配置可能であり、上記スラリーに上記三次元構造体を浸漬する方法によって得られたものと同等の品質を有する固体電解質シートを得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-151241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術は、不織布等の三次元構造体のしわや、それに沿った気泡が発生したり、三次元構造体がダイコーターに引っ掛かることにより破断が発生したりすることがあり、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、不織布等の三次元構造体のしわや、それに沿った気泡を抑制するとともに、三次元構造体の破断を抑制する固体電解質シートの製造方法を提供する。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]固体電解質が充填された固体電解質シートの製造方法であって、
基材上に、固体電解質を含む第1スラリーを塗工し、前記第1スラリーからなる第1未硬化物を形成する第1工程と、
前記基材上の前記第1未硬化物を乾燥させて、第1固体電解質層を形成する第2工程と、
前記第1固体電解質層の上面に、第2スラリーを塗工し、前記第2スラリーからなる第2未硬化物を形成する第3工程と、
前記第2未硬化物に対して、シート状の三次元構造体を侵入させる第4工程と、
前記三次元構造体の内部に侵入した前記第2未硬化物、および前記三次元構造体の上にある前記第2未硬化物を乾燥させて、前記三次元構造体の内部、および前記三次元構造体の上に第2固体電解質層を形成し、前記三次元構造体の内部に前記第2固体電解質層が充填された固体電解質シートを得る第5工程と、
を有する、固体電解質シートの製造方法。
【0009】
本発明の固体電解質シートの製造方法は、固体電解質を含む第2スラリーの第2未硬化物に対して、シート状の三次元構造体を侵入させ、前記三次元構造体の内部に侵入した前記第2未硬化物、および前記三次元構造体の上にある前記第2未硬化物を乾燥させて、前記三次元構造体の内部、および前記三次元構造体の上に第2固体電解質層を形成し、前記三次元構造体の内部に前記第2固体電解質層が充填された固体電解質シートを得るため、三次元構造体のしわや、それに沿った気泡を抑制するとともに、三次元構造体の破断を抑制することができる。
【0010】
[2]前記第4工程において、前記第2未硬化物に対して、前記三次元構造体を前記第1固体電解質層の表面まで侵入させる、[1]に記載の固体電解質シートの製造方法。
【0011】
本発明の固体電解質シートの製造方法は、前記第4工程において、前記第2未硬化物に対して、前記三次元構造体を前記第1固体電解質層の表面まで侵入させるため、三次元構造体の位置決めをすることができる。
【0012】
[3]前記三次元構造体は、不織布である、[1]に記載の固体電解質シートの製造方法。
【0013】
本発明の固体電解質シートの製造方法は、三次元構造体として不織布を用いた場合であっても、不織布のしわや、それに沿った気泡を抑制するとともに、不織布の破断を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、不織布等の三次元構造体のしわや、それに沿った気泡を抑制するとともに、三次元構造体の破断を抑制する固体電解質シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る固体電解質シートの製造方法を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る固体電解質シートの製造方法を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る固体電解質シートの製造方法を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る固体電解質シートの製造方法を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る固体電解質シートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
[固体電解質シートの製造方法]
図1図4は、本発明の実施形態に係る固体電解質シートの製造方法を示す断面模式図である。
本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法は、固体電解質が充填された固体電解質シートの製造方法であって、基材上に、固体電解質を含む第1スラリーを塗工し、前記第1スラリーからなる第1未硬化物を形成する第1工程と、前記基材上の前記第1の未硬化物を乾燥させて、第1固体電解質層を形成する第2工程と、前記第1固体電解質層の上面に、第2スラリーを塗工し、前記第2スラリーからなる第2未硬化物を形成する第3工程と、前記第2未硬化物に対して、シート状の三次元構造体を前記第1固体電解質層の表面まで侵入させる第4工程と、前記三次元構造体の内部に侵入した前記第2未硬化物、および前記三次元構造体の上にある前記第2未硬化物を乾燥させて、前記三次元構造体の内部、および前記三次元構造体の上に第2固体電解質層を形成し、前記三次元構造体の内部に前記第2固体電解質層が充填された固体電解質シートを得る第5工程と、を有する。
【0018】
本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法は、上記第1工程から第5工程に至る工程を備えることで、固体電解質のスラリーを三次元構造体に含浸させてなる固体電解質を充填するシート材を製造する。
【0019】
「第1工程」
第1工程は、基材1上に、固体電解質を含む第1スラリー2を塗工し、前記第1スラリー2からなる第1未硬化物3を形成する工程である(図1参照)。第1未硬化物3は、固体電解質を含む第1スラリー2から構成され、乾燥すると第1固体電解質層4となる、いわゆる固体電解質層の前駆体である。本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法においては、剥離可能な基材1上に固体電解質を含む第1スラリー2を塗工する。固体電解質を含む第1スラリー2の塗工方法としては、公知の方法を採用することができる。前記第1スラリー2の塗工方法としては、例えば、ブレードコーティング法、吹き付け法、スパッタリング法等が挙げられる。固体電解質を含む第1スラリーの塗工厚は、プレス後の固体電解質シートの厚みの2.0倍~4.5倍であることが好ましい。
【0020】
本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法に用いられる基材1としては、第1固体電解質層4に対して良好な剥離性能を有する基材であることが好ましい。また、第1固体電解質層4に対して良好な剥離性能を有する基材1は、第2工程および第5工程で行われる固体電解質を含む第1スラリー2の乾燥工程において、熱による変形や破損を起こさない程度の耐熱性を有する基材であることが好ましい。
【0021】
固体電解質を含む第1スラリー2は、特に限定されるものではなく、正極と負極との間でリチウムイオン伝導が可能な固体電解質を少なくとも含むスラリーであればよい。例えば、そのような固体電解質としては、酸化物系電解質や硫化物系電解質が挙げられる。また、必要に応じて、固体電解質を含む第1スラリー2は、バインダー等のその他の成分を含んでいてもよい。なお、固体電解質を含む第1スラリー2が、さらに、電極活物質を含む場合においては、電極層の製造方法に適用することができる。
【0022】
固体電解質を含む第1スラリー2は、リチウム元素を含むことが好ましい。固体電解質がリチウム元素を含むことにより、リチウムイオン伝導性を高めることができる。
【0023】
具体的には、固体電解質は、少なくとも硫化リチウムを含み、第2の成分として、硫化ケイ素、硫化リンおよび硫化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含む物質であることが好ましく、特に、LiS-Pが好ましい。このような硫化物系の固体電解質は、リチウムイオン伝導性が他の無機化合物より高いことが知られており、LiS-Pの他に、SiS、GeS、B等の硫化物を含んでいてもよい。また、固体電解質には、適宜、LiPOやハロゲン、ハロゲン化合物等が添加されていてもよい。
【0024】
固体電解質としては、無機化合物からなるリチウムイオン伝導体を無機固体電解質として含有するものであってもよい。リチウムイオン伝導体としては、例えば、LiN、LISICON、LIPON(Li3+yPO4- )、Thio-LISICON(Li3.25Ge0.250.75)、LiO-Al-TiO-P(LATP)が挙げられる。
【0025】
固体電解質は、非晶質、ガラス状、結晶(結晶化ガラス)等のいずれの構造であってもよい。固体電解質がLiS-Pからなる硫化物系固体電解質である場合には、非晶質体のリチウムイオン伝導度は、10-4Scm-1である。一方、結晶質体のリチウムイオン伝導度は、10-3Scm-1である。
【0026】
本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法に用いられる固体電解質は、リンおよび硫黄の少なくとも一方を含むことが好ましい。固体電解質がさらに、リンおよび硫黄の少なくとも一方を含むことにより、得られる固体電解質シートのイオン伝導度を向上させることができる。
【0027】
「第2工程」
第2工程は、基材1上に塗工した固体電解質を含む第1スラリー2からなる第1未硬化物3を、乾燥装置を用いて乾燥させることで、第1固体電解質層4を形成する工程である(図1参照)。
【0028】
基材1上に塗工した固体電解質を含む第1スラリー2からなる第1未硬化物3を乾燥させることで、第1固体電解質層4を形成する方法としては、薄膜状に塗工した固体電解質を含むスラリーの形状が加温時に崩れない乾燥方法であればよく、公知の方法を採用することができる。例えば、ホットプレート上に基材1および基材1上に塗工した固体電解質を含む第1スラリー2(第1未硬化物3)を載置した状態で加温して固体電解質を含む第1スラリー2(第1未硬化物3)を乾燥する方法や、ホットプレートに代えて電気炉その他公知の乾燥装置を用いる方法などが挙げられる。
【0029】
「第3工程」
第3工程は、第2工程で形成した第1固体電解質層4の上面に、第2スラリー5を塗工し、前記第2スラリー5からなる第2未硬化物6を形成する工程である(図2参照)。第2未硬化物6は、固体電解質を含む第2スラリー5から構成され、乾燥すると第2固体電解質層となる、いわゆる固体電解質層の前駆体である。本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法においては、第1固体電解質層4の上面に固体電解質を含む第2スラリー5を塗工する。固体電解質を含む第2スラリー5の塗工方法としては、第1工程と同様の方法を用いることができる。固体電解質を含むスラリーの塗工厚は、プレス後の固体電解質シートの厚みの2.0倍~4.5倍であることが好ましい。第2スラリー5としては、上記第1スラリー2と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。第2スラリー5が、上記第1スラリー2と異なる場合、例えば、後述する三次元構造体7内に浸入しやすいものが用いられる。
【0030】
「第4工程」
第4工程は、第2工程で形成した第2未硬化物6に対して、シート状の三次元構造体7を侵入させる工程である(図3参照)。三次元構造体7を第2未硬化物6に侵入させる方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、三次元構造体7を第2未硬化物6の上面に載置して、自重により三次元構造体7が第2未硬化物6に侵入する方法が挙げられる。もしくは、搬送ロールに、図3に示す基材1、第1固体電解質層4および第2未硬化物6からなる積層体と、三次元構造体7とを当接することにより、積極的に三次元構造体7を第2未硬化物6に侵入させる方法が挙げられる。第4工程では、シート状の三次元構造体7を第1固体電解質層4の表面まで侵入させることが好ましい。これにより、三次元構造体7の位置決めをすることができる。
【0031】
本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法において用いられる三次元構造体7は、メッシュ、織布、不織布、エンボス体、パンチング体、エキスパンド、発泡体などが例示され、不織布であることが好ましい。三次元構造体7が不織布であれば、本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法において、三次元構造体7に固体電解質スラリーを急速に含浸できるので、含浸に係る製造コストを低減しやすくなる。
【0032】
三次元構造体7の材料は、特に限定されるものではなく、自立性を有する固体電解質シートを構成できるシート材であればよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アラミド、アルミナ(Al)、ガラス、金属等が挙げられる。このとき、三次元構造体7の材料にポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アラミド、アルミナ、ガラス等の非導電材料を用いた場合においては、固体電解質シートの製造方法に適用することができる。また、三次元構造体7の材料に金属材料等の導電材料を用いた場合においては、電極層の製造方法に適用することができる。
【0033】
三次元構造体7の空隙率は、60%~95%であることが好ましい。三次元構造体7の空隙率は、70%~90%であることがより好ましく、80%~90%であることがさらに好ましい。
【0034】
三次元構造体7の厚みは、5μm~30μmであることが好ましい。三次元構造体7の厚みは、5μm~20μmであることがより好ましく、10μm~20μmであることがさらに好ましい。三次元構造体7の厚みが5μm未満の場合には、電池を形成した際に電極間の短絡を生じるおそれがあり、一方、三次元構造体7の厚み30μmを超える場合には、三次元構造体7への固体電解質スラリーの塗工が困難になるため、エネルギー密度の高い固体電解質シートの実現が困難となる。
【0035】
[第5工程]
第5工程は、三次元構造体7の内部に侵入した第2未硬化物6、および三次元構造体7の上にある第2未硬化物6を乾燥させて、三次元構造体7の内部、および三次元構造体7の上に第2固体電解質層8を形成する工程である。この工程により、三次元構造体7の内部に第2固体電解質層8が充填されるとともに、第1固体電解質層4と第2固体電解質層8が一体化した固体電解質シート10を得る工程である(図4参照)。
【0036】
三次元構造体7の内部に侵入した第2未硬化物6、および三次元構造体7の上にある第2未硬化物6を乾燥させることで、第2固体電解質層8を形成する方法としては、第2工程と同様に、薄膜状に塗工した固体電解質を含むスラリーの形状が加温時に崩れない乾燥方法であればよく、公知の方法を採用することができる。
【0037】
また、第5工程で乾燥させた後、得られる固体電解質シートについて、剥離可能な基材は、電池用部材として固体電池の製造に用いるまでの間、剥離してもしなくてもよい。また、固体電解質シートをプレスした後、正極層、固体電解質シート、負極層の順に積層し加圧することにより固体電池を製造することができる。正極層、固体電解質シート、負極層の順に積層しプレスすることによっても、固体電池を製造することができる。
【0038】
本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法によれば、第1未硬化物3の厚みと第2未硬化物6の厚みを調整することにより、固体電解質シート10の厚み方向において、三次元構造体7を任意の位置に配置することができる。
【0039】
なお、本発明の固体電解質シートの製造方法においては、上述の固体電解質シートの製造方法に適用できるほか、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更、または削除することにより、電極層などの固体電解質を含むシート材料の製造方法にも適用することができる。
【0040】
[固体電解質シート]
本発明の実施形態に係る固体電解質シートは、内部に固体電解質が充填されたシート状の三次元構造体と、三次元構造体の表面および裏面をそれぞれ覆うように形成された固体電解質層と、を備える。より詳しくは、本実施形態に係る固体電解質シートは、上述の本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法により製造される固体電解質シートである。固体電解質層および三次元構造体については、上述の固体電解質シートの製造方法で使用できる電極材料を好ましく用いることができる。
【0041】
図5は、本実施形態に係る固体電解質シートを示す断面図である。
図5に示すように、本実施形態に係る固体電解質シート100は、例えば、厚み方向の略中央に配置され、内部に固体電解質が充填されたシート状の三次元構造体110と、三次元構造体110の表面および裏面をそれぞれ覆うように形成された固体電解質層120と、を備える。そのため、固体電解質シート100を固体電池に適用した場合、正極から負極へ移動するリチウムイオンが、厚み方向の略中央において三次元構造体110に沿って移動できるため、その移動が大きく阻害されることがなく、移動速度も大きく低下することがない。その結果、従来と比べて電極へのリチウムイオンの挿入脱離がスムーズに行われる結果、電池の出力性能が向上する。
【0042】
従って、本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法および固体電解質シートによれば、固体電解質層から電極へのスムーズなリチウムイオンの挿入脱離が行われることで電池出力性能を向上できるとともに、固体電解質層と電極層の間の結着性を向上することで固体電解質層と電極層間の界面剥離や短絡を抑制できる。
【0043】
本実施形態の固体電解質シートは、プレスすることで固体電解質層として固体電池に適用することができる。
【0044】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 基材
2 第1スラリー
3 第1未硬化物
4 第1固体電解質層
5 第2スラリー
6 第2未硬化物
7 三次元構造体
8 第2固体電解質層
10 固体電解質シート
図1
図2
図3
図4
図5