(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146435
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】駐車支援システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B60W30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059331
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石川 康太
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241BB21
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC11
3D241CC17
3D241DA13Z
3D241DA23Z
3D241DA39Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC33Z
3D241DC35Z
(57)【要約】
【課題】車両が発進する前の地面の傾斜方向に拘わらず、発進前には確実に車両を停止させると共に、円滑に車両を発進させて、車両を移動させるための車両制御を行うことができる駐車支援システムを実現する。
【解決手段】駐車支援システムの車両制御部は、車両が停止した状態である第1状態ST1を維持するように、車輪に制動力を作用させる第1制御と、第1制御を実行中に、進行方向に向かって地面が上り傾斜であると傾斜検出部が検出した場合に、車両が停止した状態を維持する制動力を車輪に作用させつつ車輪に作用する駆動力を第1状態よりも上昇させる第2制御とを実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に作用する駆動力と制動力とを制御して、前記車輪を備えた車両を移動させるための車両制御を行う車両制御部を備えた駐車支援システムであって、
前記車輪が接している地面の傾斜方向を検出する傾斜検出部をさらに備え、
前記車両制御部は、
前記車両が停止した状態である第1状態を維持するように、前記車輪に制動力を作用させる第1制御と、
前記第1制御を実行中に、進行方向に向かって前記地面が上り傾斜であると前記傾斜検出部が検出した場合に、前記車両が停止した状態を維持する制動力を前記車輪に作用させつつ前記車輪に作用する駆動力を前記第1状態よりも上昇させる第2制御と、を実行する、駐車支援システム。
【請求項2】
前記車両制御部は、前記第2制御において、前記車輪に作用する制動力を次第に低下させると共に、前記車輪に作用する駆動力を次第に上昇させる、請求項1に記載の駐車支援システム。
【請求項3】
前記車輪の操舵角を検出する操舵角検出部をさらに備え、
前記車両制御部は、前記第1状態で操舵が行われたことを前記操舵角検出部が検出した場合には、前記第2制御において、前記車輪に作用する制動力を低下させる速度を、前記操舵が行われていない場合よりも低くする、請求項2に記載の駐車支援システム。
【請求項4】
前記傾斜検出部は、前記地面の傾斜方向に加えて傾斜の程度を検出し、
前記車両制御部は、
前記車両の移動中に、目標位置と前記車両の現在位置とに基づいて前記車両の目標速度を演算する位置フィードバック処理と、前記目標速度と前記車両の実際の速度との差に基づいて前記車両の目標加速度を演算する速度フィードバック処理と、前記目標加速度と前記車両の実際の加速度との差に基づいて前記車両の動力を演算する加速度フィードバック処理と、を実行すると共に、
前記傾斜検出部が検出した前記地面の傾斜の程度に応じて前記動力を補正する補正処理を実行する、請求項1から3の何れか一項に記載の駐車支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を駐車スペースへ移動させるための車両制御を行う駐車支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特表2020-514174号公報には、車輪に作用する駆動力及び制動力を制御して車両を駐車スペースへ移動させるための車両制御を行う駐車支援システムが開示されている。駐車支援システムは、複数の動作ステートを有している。1つの動作ステートは、実質的に駐車支援システムが動作していない動作ステートであり、当該動作ステートでは、車輪の駆動、制動及ぶ操舵の基本的な車両操作を運転者が担っている。以下の複数の動作ステートでは、駐車支援システムが動作する。1つの動作ステート(第1の動作ステート)では、駐車支援システムによる自動運転に先立って、車両が確実に停止状態に維持されるように制御される。また、別の動作ステート(第2の動作ステート)では、停止状態に維持されている車両に対して加速を許可して車両を発進させる。また、別の動作ステート(第3の動作ステート)では、発進後の車両に対して、駐車目標位置まで車両を走行させるための車両制御(駆動、操舵)が行われる。また、当該第3の動作ステートに続く別の動作ステート(第4の動作ステート)では、車両を駐車目標位置に停止させるための車両制御(制動)が行われて車両を駐車目標位置に停車させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、駐車支援システムは、第1の動作ステートから第4の動作ステートを順次実行することにより、円滑に駐車目標位置まで車両を誘導することができる。ここで、第1動作ステートでは車両が停止していて速度変化が無く、第3動作ステートではほぼ定速で走行するために車両の走行速度の変化が少ない。このため、第1動作ステート及び第3動作ステートでは速度変化に伴う振動などを車両の乗員に感じさせることは比較的少ない。一方、第2動作ステートでは発進時に、第4動作ステートでは停止時に、比較的大きな速度変化を生じるため、乗員に振動などを感じさせる可能性が第1動作ステート及び3動作ステートに比べて高くなる。特に第2動作ステートでは、地面の状態、例えば傾斜方向が車両の挙動に影響を与えるおそれがある。上記の文献に開示された駐車支援システムでは、地面の状態等については考慮されてはおらず、より円滑な駐車支援を行う上で改善の余地がある。
【0005】
上記背景に鑑みて、車両が発進する前の地面の傾斜方向に拘わらず、発進前には確実に車両を停止させると共に、円滑に車両を発進させて、車両を移動させるための車両制御を行うことができる駐車支援システムの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた駐車支援システムは、車輪に作用する駆動力と制動力とを制御して、前記車輪を備えた車両を移動させるための車両制御を行う車両制御部を備えた駐車支援システムであって、前記車輪が接している地面の傾斜方向を検出する傾斜検出部をさらに備え、前記車両制御部は、前記車両が停止した状態である第1状態を維持するように、前記車輪に制動力を作用させる第1制御と、前記第1制御を実行中に、進行方向に向かって前記地面が上り傾斜であると前記傾斜検出部が検出した場合に、前記車両が停止した状態を維持する制動力を前記車輪に作用させつつ前記車輪に作用する駆動力を前記第1状態よりも上昇させる第2制御と、を実行する。
【0007】
本構成によれば、車両制御部は、進行方向に向かって上り傾斜の地面に車両が位置していても、第1制御によって適切に車両を停止させることができる。また、車両制御部は、当該上り傾斜の地面に停止した車両を発進させる場合であっても当該進行方向とは反対方向に車両が移動することを回避しつつ、車両を発進させる際における制動力及び駆動力の変化に伴う加速度の変化を小さく抑えることができる。従って、駐車支援システムは、車両に円滑な発進動作を行わせることができ、乗員が感じる振動等を小さく抑制することができる。即ち、本構成によれば、車両が発進する前の地面の傾斜方向に拘わらず、発進前には確実に車両を停止させると共に、円滑に車両を発進させて、車両を移動させるための車両制御を行うことができる駐車支援システムを実現することができる。
【0008】
駐車支援システムのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】駐車支援システムを含む車両のシステム構成の一例を示す模式的ブロック図
【
図4】車両制御部による車両制御の模式的制御ブロック図
【
図5】フィードバック制御の一例を示すブロック線図
【
図7】強停止ステートから駆動ステートにおける制動力及び駆動力の変化の一例を模式的に示すタイムチャート
【
図8】駆動ステートにおける車両の速度変化の一例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、駐車支援システムの実施形態を図面も参照して説明する。
図1及び
図2の説明図は、それぞれ車両50を駐車させる際の駐車支援の一形態を例示している。また、
図3のブロック図は、駐車支援システム100を含む車両50のシステム構成の一例を模式的に示している。本実施形態の駐車支援システム100は、車輪Wに作用する駆動力と制動力とを制御すると共に操舵角を制御して、車両50を駐車スペースEに対して移動させるための車両制御を行う。尚、「駐車スペースEに対して移動させる」とは、「駐車スペースEへの入庫」並びに「駐車スペースEからの出庫」の双方を含む。本実施形態では、駐車支援システム100は、自動運転により車両50を駐車スペースEへ移動させて当該駐車スペースEに駐車させる「入庫」を例示して説明する。尚、駐車支援システム100による案内に基づいて操舵は運転者が手動で行い、駆動、制動のみが自動運転で行われる形態、即ち半自動運転であってもよい。「出庫」についても同様に、自動運転による形態、半自動運転による形態の何れであってもよい。
【0011】
駐車支援システム100は、
図3に示すように、ECU(electronic control unit)1を中核として他のシステムや各種のセンサとの協働により実現される。ECU1は、車両制御を行う車両制御部に相当する。ECU1は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、DSP(digital signal processor)などのプロセッサ1P、プログラムやパラメータなどのソフトウェアが記憶されたプログラムメモリ1M、その他の各種電子部品を備えて構成される。プロセッサ1Pは、ECU1の中核となるハードウェアであり、プロセッサ1Pを中核とする各種のハードウェアと、プログラムメモリ1Mに記憶されたプログラムなどのソフトウェアとの協働により、車両制御部が実現される。そして、ECU1を中核として、駆動システム20、ブレーキシステム30、ステアリングシステム40などの他のシステム、及び、符号「51」から「58」で示す各種センサや周辺デバイスと、ECU1との協働により、駐車支援システム100が実現される。下記において、駐車支援システム100を構成する種々の機能部について説明するが、それぞれの機能部は、複数のハードウェアにより実現される、或いは、少なくとも1つのハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現される場合があり、必ずしも独立した部品として構成される必要はない。
【0012】
図1及び
図2に示すように、駐車支援システム100は、駐車スペースEに設定した駐車目標位置Ptと車両50の現在位置Prとに基づいて、車両50を駐車目標位置Ptまで移動させて停止させる。駐車目標位置Pt及び現在位置Prは、駐車支援システム100が駐車支援(車両制御)を行う際の座標系(駐車支援座標系)における座標に対応している。尚、駐車支援座標系は、全地球を対象とした絶対座標(ワールド座標系)であってもよいし、車両50又は駐車スペースEの周辺の領域や、駐車スペースEを含む駐車場の全体や、当該駐車場を含む領域などを対象としたローカル座標系であってもよい。
【0013】
図1及び
図2に示す符号「Q」は、車両50の位置を特定する際の車両50における基準点を示している。また、現在位置Prは、駐車支援座標系において基準点Qが位置する座標に相当する。駐車目標位置Ptは、車両50が駐車スペースEに適切に位置している際に車両50の基準点Qが位置する座標を示している。駐車支援システム100は、現在位置Prと、駐車目標位置Ptとに基づいて、現在位置Prから駐車目標位置Ptまで車両50が移動する際の基準点Qの移動軌跡を演算し、これを移動経路Kとする。駐車支援システム100は、現在位置Prから移動経路Kに沿って基準点Qが移動するように車両制御を行う。駐車支援システム100は、基準点Qが駐車目標位置Ptに到達すると、つまり現在位置Prと駐車目標位置Ptとが一致すると、車両50が駐車スペースE内に適切に位置することになるので車両50を停止させる。
【0014】
尚、駐車目標位置Ptは、駐車支援の「目標位置」である。「入庫」の場合、駐車支援システム100は、駐車スペースE内に設定した「目標位置」と車両50の現在位置Prとに基づいて、車両50を当該「目標位置」(駐車目標位置Pt)まで移動させる。図示及び詳細な説明は省略するが、「出庫」の場合には、駐車支援システム100は、駐車スペースE外に設定した「目標位置」と車両50の現在位置Prとに基づいて、車両50を当該「目標位置」まで移動させる。以下、本明細書では、「駐車目標位置Pt」を駐車支援の「目標位置」とした「入庫」の形態を例として駐車支援システム100の好適な実施例を説明する。しかし、当業者であれば、「出庫」の場合も同様であることが容易に理解できる。
【0015】
ECU1は、駐車目標位置Ptで車両50を停止させるため、駐車目標位置Ptまでの移動経路Kの内、駐車目標位置Ptを含む第1範囲H1において車両50の速度をゼロまで次第に減速させる。
図1及び
図2に示すように、移動経路Kの内、第1位置P1から駐車目標位置Ptまでの範囲が第1範囲H1である。尚、本実施形態では、ECU1は、移動経路Kにおいて第1範囲H1よりも駐車目標位置Ptから遠い側の第2範囲H2においても、車両50の速度を減速させる。
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、移動経路Kの内、第2位置P2から第1位置P1までの範囲が第2範囲H2である。本実施形態では、移動経路Kにおいて第1範囲H1と第2範囲H2とが連続している。従って、第1範囲H1における走行開始時の車両50の速度と、第2範囲H2における走行終了時の速度とが同じである。
【0016】
図1は、いわゆる車庫入れ駐車を例示している。例えば、運転者は、駐車スペースEを通り過ぎ、駐車スペースEとは逆方向に舵を切って車両50を少し旋回させた状態で車両50を停止させる。この位置は、駐車スペースEに向かって車両50が後退を開始する後退開始位置ということができる。尚、駐車目標位置Ptへの移動の際に必要な操舵量は大きくなるが、このように舵を切ることなく、
図2と同様に、直進した状態で車両50を停車させてもよい。また、停止位置から駐車目標位置Ptへの移動を開始する前に、ステアリングシステム40との協働によって、いわゆる据え切りによって操舵輪の向きを変更しておいてもよい。
【0017】
図2は、いわゆる縦列駐車を例示している。この場合も、例えば、運転者は、駐車スペースEを通り過ぎて車両50を停止させる。
図2では、舵を切らない状態で車両50を停車させる形態を例示しているが、
図1と同様に駐車スペースEとは逆方向に舵を切った状態で車両50を停止させてもよい。
【0018】
尚、運転者が車両50を前進させる場合、進行方向や停止位置(後退開始位置)について駐車支援システム100が案内すると好適である。例えば、車室内のディスプレイへの表示や音声案内によって、運転者を案内し、運転者が何れも不図示のアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール等を操作して、後退開始位置まで車両50を移動させると好適である。1つの形態として、車両50が後退開始位置に到達すると、駐車支援システム100は自動操舵を含む自動運転が可能であることを運転者に報知する。運転者が、例えば車室内のディスプレイのタッチパネル等に設けられた開始ボタンに触れることで車両制御の開始を指示すると、操舵を含む車両50の運転操作が駐車支援システム100に委ねられ、駐車支援システム100は、自動運転によって車両50を駐車目標位置Ptまで移動させる。
【0019】
ここでは、後退開始位置まで、運転者が車両50を前進させる形態を例示したが、車両50が後退開始位置に達するよりも前、即ち、車両50が後退開始位置に向かって前進しているとき以前から駐車支援システム100が車両制御(駐車支援)を実行して、車両50を自動運転によって走行させることを妨げるものではない。
【0020】
本実施形態の対象となる車両制御は、後退開始位置から駐車目標位置Ptまでの車両50を移動させる制御である。従って、運転支援システムは、車輪Wに作用する駆動力と制動力とを制御して、好ましくはさらに操舵角も制御して、駐車スペースEに設定した駐車目標位置Ptと車両50の現在位置Prとに基づいて、車両50を駐車目標位置Ptまで移動させて停止させる。後退開始位置は、車両50の現在位置Prの初期値ということができる。上述したように、車両制御は、駆動、制動、操舵の全てを自動的に行う形態に限らず、駆動、制動のみを自動運転で行い、操舵は運転者が手動で実施する半自動運転であってもよい。
【0021】
また、ここでは、後退によって車両50を駐車スペースEに移動させる形態を例示しているが、前進によって車両50を駐車スペースEに移動させる形態を妨げるものではない。従って、本実施形態の対象となる車両制御は、駐車目標位置Ptまで車両50を停止させることなく自動運転により車両制御を実行するに際して、駐車スペースEへの移動を開始する前に車両50が一時的に停止した位置から、駐車目標位置Ptまで車両50を移動させる制御に相当する。そして、この車両50が一時的に停止した位置が、車両50の現在位置Prの初期値ということができる。
【0022】
図3の模式的なブロック図に示すように、車両50は、駐車支援システム100の中核となるECU1の他、駆動システム20、ブレーキシステム30、ステアリングシステム40を備えている。駆動システム20は、車輪Wを駆動する駆動装置25を制御するシステムである。駆動装置25には、例えば何れも不図示の内燃機関、回転電機、ギヤ機構、回転部材間での動力伝達を断接する係合装置等を含む。ブレーキシステム30は、車輪Wに制動力を発生させるシステムである。ステアリングシステム40は、車輪Wの内の操舵輪を動かして車両50の進行方向を変化させるシステムである。
【0023】
車両50は、アクセルセンサ51、シフトポジションセンサ52、ブレーキセンサ53、速度センサ54、加速度センサ55、舵角センサ56、ソナー57、カメラ58等の各種センサ及び周辺機器も備えている。アクセルセンサ51は、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するセンサである。シフトポジションセンサ52は、不図示のシフトレバーにより指示された変速段(後退やパーキング等も含む)など、駆動装置25の動作モードを指示する指示入力を検出するセンサである。ブレーキセンサ53は、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出するセンサである。速度センサ54は、車両50の走行速度、即ち車輪Wの回転速度を検出するセンサである。加速度センサ55は、車両50の加速度を検出するセンサであり、本実施形態の加速度センサ55は例えば車両50が位置する地面の傾斜角度や傾斜方向も検出することが可能である。舵角センサ56は、運転者によるステアリングホイールの操作量を検出するセンサであり、好ましくは操作量を車両50の舵角として検出する。ソナー57は、車両50の複数箇所に設置され、車両50の周辺に存在する障害物の存否を検出する。好適には、ソナー57はアクティブソナーである。また、ソナー57に限らず、障害物センサとしてレーザーレーダー等を備えていてもよい。カメラ58は、車両50の複数箇所に設置され、車両50の周辺画像を取得する。
図3には不図示であるが、周辺画像に基づいて、車両50の周辺の障害物の存否を画像認識したり、駐車スペースEを区分する区画線等を画像認識して、他の車両が停車しておらず、車両50を駐車することが可能な駐車スペースEを特定したりする画像処理システムも車両50に備えられていると好適である。
【0024】
上述したECU1(駐車支援システム100)、駆動システム20、ブレーキシステム30、ステアリングシステム40を含めて、符号「51」から「58」で示すセンサ及び周辺機器は、例えばCAN(controller area network)などの車内ネットワーク90を介して相互に通信可能に接続されている。例えば、駆動システム20は、車内ネットワーク90を介して、アクセルセンサ51、シフトポジションセンサ52、ブレーキセンサ53、速度センサ54、加速度センサ55、舵角センサ56等と協働して駆動装置25を制御する。ブレーキシステム30は、車内ネットワーク90を介して、ブレーキセンサ53と協働してブレーキ機構35を制御する。ステアリングシステム40は、舵角センサ56と協働してステアリングホイールや操舵輪などを含むステアリング機構45を制御する。本実施形態では、ブレーキ機構35、ステアリング機構45がアクチュエータによって駆動されており、車内ネットワーク90を介したいわゆるバイワイヤー(by wire)により構成されている。
【0025】
また、駆動システム20、ブレーキシステム30、ステアリングシステム40は、ソナー57やカメラ58(画像処理システム)と協働することもできる。また、ECU1は、駆動システム20、ブレーキシステム30、ステアリングシステム40、画像処理システム、及び、符号「51」から「58」で示すセンサ及び周辺機器と協働する。駐車支援システム100の中核であるECU1が、これらのシステム、センサ、及び周辺機器と協働する場合、協働するシステム、センサ、及び周辺機器も駐車支援システム100に含まれる。
【0026】
また、車両50の位置情報(現在位置Pr)は、不図示のGPS(global positioning system)や、画像処理システムによる画像認識による駐車スペースEと車両50との間の相対位置の特定や、駐車場内の不図示の送信機と車両50に搭載された不図示の受信機との間の通信等によって特定される。当然ながら、これらの複数を組み合わせて車両50の位置情報が特定されてもよい。また、駐車スペースEにおける駐車目標位置Ptの座標等は、車両50に搭載された不図示のデータベース(記憶媒体)に地図情報として記憶されていると好適である。尚、地図情報は固定的に車両50のデータベースに記憶されていてもよいし、駐車支援を受ける際に通信等によってダウンロードされるものであってもよい。
【0027】
図4に示すように、駐車支援システム100は、フィードバックコントローラとして、位置フィードバックコントローラ11(位置FB)と、速度フィードバックコントローラ12(速度FB)と、加速度フィードバックコントローラ13(加速度FB)とを備えている。位置フィードバックコントローラ11は、駐車目標位置Ptと車両50の現在位置Prとに基づいて、例えば移動経路Kを通って現在位置Prから駐車目標位置Ptへ至る移動距離に応じた目標速度Vtを演算する。速度フィードバックコントローラ12は、目標速度Vtと実速度Vrとに基づいて、目標速度Vtで移動するための目標加速度Atを演算する。加速度フィードバックコントローラ13は、目標加速度Atと実加速度Arとに基づいて、目標加速度Atで車両50を加速又は減速するための動力Fを演算する。動力Fは、車輪Wに作用する駆動力及び制動力である。概ね、車両50を加速させる場合、動力Fは駆動力であり、車両50を減速させる場合、動力Fは制動力である。
【0028】
尚、駆動力は、主に駆動システム20を介して駆動装置25により実現され、制動力は、主にブレーキシステム30を介してブレーキ機構35により実現される。例えば、駆動力は、駆動装置25に含まれる内燃機関、回転電機、或いは内燃機関及び回転電機を複合したハイブリッド駆動装置から出力される。ブレーキ機構35には、車輪Wに設けられたホイールブレーキを含み、制動力は、当該ホイールブレーキの他、駆動装置25の駆動伝達系に設けられたブレーキ、回転電機の負トルク、内燃機関のエンジンブレーキによっても実現される。
【0029】
図4に示すように、本実施形態では、駐車支援システム100は、さらに補正フィードフォワードコントローラ14(補正FF)も備えているが、これについては後述する。
【0030】
図5は、フィードバックコントローラのブロック線図を示している。本実施形態では、位置フィードバックコントローラ11と、速度フィードバックコントローラ12と、加速度フィードバックコントローラ13の何れもが、比例積分制御を実行するPI制御器として構成されている。
図5に示すように、フィードバックコントローラは、比例ゲイン15(Kp)と、積分制御器16(1/s)と、積分ゲイン17(Ki)とを備えている。勿論、これらのコントローラの内の1つ以上が、比例積分微分制御を実行するPID制御器により、構成されていてもよい。
【0031】
図5のブロック線図に示すように、位置フィードバックコントローラ11は、駐車目標位置Ptと現在位置Prとの差に対して比例制御及び積分制御を実行して、目標速度Vtを演算する。速度フィードバックコントローラ12は、目標速度Vtと実速度Vrとの差に対して比例制御及び積分制御を実行して、目標加速度Atを演算する。加速度フィードバックコントローラ13は、目標加速度Atと実加速度Arとの差に対して比例制御及び積分制御を実行して、動力Fを演算する。詳細は後述するが、
図4に示すように、動力Fは、補正フィードフォワードコントローラ14による「補正動力Fc」によって補正されてから出力される場合がある。
図5に示す「F0」は、そのように補正される場合の「補正前動力」を示している。
【0032】
車輪Wに作用する駆動力及び制動力を制御して車両50を移動させるための車両制御を行う駐車支援システム100の中核となるECU1は、
図6の状態遷移図に示すように、複数の動作ステートを有している。1つの動作ステートは、実質的に駐車支援システム100が動作していない動作ステートである(通常制御NC(通常制御ステート))。この動作ステートでは、車輪Wの駆動、制動及ぶ操舵を指示するための基本的な車両操作を運転者が担っている。
【0033】
以下の複数の動作ステートでは、駐車支援システム100が動作する(駐車制御PC(駐車制御ステート))。駐車制御PCにおける1つの動作ステートでは、駐車支援システム100による自動運転に先立って、車両50が確実に停止状態に維持されるように制御される(強停止ステートST1(第1ステート))。別の動作ステートでは、車両50の停止状態を解除して車両50を発進させる準備を行う(発進準備ステートST2(第2ステート))。また、別の動作ステートでは、車両50を発進させて、駐車目標位置Ptまで車両50を走行させるための車両制御(駆動、操舵)が行われる(駆動ステートST3(第3ステート))。そして、駆動ステートST3においては、車両50が駐車目標位置Ptに近づくと、車両50を駐車目標位置Ptに停止させるための車両制御(減速)が行われて車両50を駐車目標位置Ptに停車させる。
【0034】
尚、強停止ステートST1及び駆動ステートST3では、共に車輪Wに制動力を作用させて車両50を停止させる。強停止ステートST1において車輪Wに継続的に作用させている制動力は、駆動ステートST3において減速を経て車両50を停止させたときの制動力よりも大きい。また、駆動ステートST3では、減速を経て車両50を停止させた後も制動力を大きくしていき、確実に車両50を停止させることができる制動力を車輪Wに作用させると好適である。強停止ステートST1における制動力は、この時の制動力(最終制動力)よりも大きい値であってもよい。しかし、後述するように、車両50が駐車目標位置Ptに達して停止した後には、動作ステートは駆動ステートST3から強停止ステートST1に移行する。従って、駆動ステートST3における最終制動力が強停止ステートST1における制動力と同じであると、ECU1は、駆動ステートST3から強停止ステートST1への移行を円滑に行うことができる。
【0035】
強停止ステートST1では車両50が停止しているため速度変化が無く、駆動ステートST3ではほぼ定速で走行すると共に緩やかに減速して停止するために車両50の走行速度の単位時間当たりの変化が少ない。このため、強停止ステートST1及び駆動ステートST3では速度変化に伴う振動などを車両50の乗員に感じさせることは比較的少ない。一方、発進準備ステートST2では発進時に比較的大きな速度変化を生じ易いため、強停止ステートST1及び駆動ステートST3に比べて、乗員に振動などを感じさせ易くなる。特に発進準備ステートST2では、地面の状態、例えば傾斜方向が車両50の挙動に影響を与えるおそれがある。本実施形態の駐車支援システム100は、車両50が発進する前の地面の傾斜方向に拘わらず、発進前には確実に車両50を停止させると共に、円滑に車両50を発進させて、車両50を移動させるための車両制御を行うことができるように構成されている。
【0036】
本実施形態の駐車支援システム100は、車輪Wが接している地面の傾斜方向を検出する傾斜検出部を備えている。傾斜検出部は、例えば加速度センサ55に作用する重力の方向を検出することによって、加速度センサ55を用いて構成することができる。また、傾斜検出部は、速度センサ54及び加速度センサ55を用いて構成され、車両50の速度と加速度とに基づく演算によって傾斜方向を演算する形態であってもよい。また、不図示の傾斜センサが別途備えられていてもよい。また、傾斜検出部は、地面の傾斜方向に加えて傾斜の程度(例えば勾配、傾斜角度θ)を検出すると好適である。
【0037】
ECU1は、車両50が停止した状態である第1状態(強停止ステートST1)を維持するように、車輪Wに制動力を作用させる第1制御を実行する(
図7、時刻t1以前)。また、ECU1は、車両50の移動を指示されると、強停止ステートST1から発進準備ステートST2に遷移する。次にECU1は、車両50が移動を開始する進行方向に向かって地面が上り傾斜であると傾斜検出部が検出した場合に、車両50が停止した状態を維持する制動力を車輪Wに作用させつつ車輪Wに作用する駆動力を第1状態よりも上昇させる第2制御とを実行する。例えば、駐車スペースEの外側の後退開始位置から駐車スペースEに向けて上り傾斜となっている場合に第2制御が実行される。尚、自動運転又は半自動運転により出庫を行う際に、駐車スペースEから出庫方向に向けて上り傾斜となっている場合にも、上述の第1制御及び第2制御を適用することができる。第2制御は、時刻t1以降の発進準備ステートST2において実行される。
【0038】
ECU1は、強停止ステートST1を維持するように車輪Wに制動力を作用させる第1制御を、ブレーキシステム30及びブレーキ機構35との協働により実現する。当然ながら、強停止ステートST1では、駆動装置25が駆動力を出力しないことが好ましいため、ECU1が、駆動システム20及び駆動装置25とも協働することを妨げるものではない。発進準備ステートST2における制御である第2制御は、制動力及び駆動力の双方が制御対象となるため、ECU1は、駆動システム20、駆動装置25、ブレーキシステム30及びブレーキ機構35との協働によって第2制御を実現する。
【0039】
これにより、ECU1は、進行方向に向かって上り傾斜の地面に車両50が位置していても、適切に車両50を停止させることができる。また、ECU1は、進行方向に向かって上り傾斜の地面に停止した車両50を発進させる場合であっても、進行方向とは逆方向に車両50が移動することを回避することができる。
【0040】
例えば、
図7に示すように、ECU1は、時刻t1以降に実行される第2制御において、第1状態(強停止ステートST1)よりも、車輪Wに作用する制動力を次第に低下させると共に、車輪Wに作用する駆動力を次第に上昇させる。そして、発進前の所定のタイミング(時刻t2)で発進準備ステートST2から駆動ステートST3に遷移し,時刻t3に車両50を発進させる。これにより、上り傾斜の地面に停車している車両50が発進する場合に、車両50が進行方向とは反対方向に移動することを確実に回避しつつ、進行方向に向けて車両50を円滑に発進させることができる。
【0041】
ここで、発進準備ステートST2における駆動力と制動力について説明する。車両50が傾斜面に位置している場合、当該車両50は傾斜を下る方向に力を受けている。車両50が位置する地面が、車両50の進行方向に向かって上り傾斜となっている場合、車両50は進行方向とは逆方向に力を受けている。従って、ECU1は、この力を打ち消すように車輪Wに駆動力を付与する。例えば、制動力をゼロにしても車両50にずり下がり(傾斜を下る方向への移動)が起きないような駆動力を閾値(駆動力閾値)として、その閾値に到達するまでECU1は車両50に駆動力を付与する。当然ながら、この閾値は定数に限らず、予め規定されたマージンを含む許容範囲を有して設定されていると好適である。一方、制動力に関しては、駆動力がクリープ力のみであったとしてもずり下がりや前進が起きないような制動力を閾値(制動力閾値)とする。駆動力と同様に、この閾値も定数に限らず、予め規定されたマージンを含む許容範囲を有して設定されていると好適である。
【0042】
上述したように、発進準備ステートST2では、車輪Wに作用する制動力が次第に低下する。制動力が小さくなり続け、制動力が制動力閾値よりも小さくなるタイミングで発進準備ステートST2から駆動ステートST3に遷移する。尚、駆動力閾値が大きい場合(例えば、水平面に対する傾斜面の角度(傾斜角度θ)が大きい場合)には、制動力閾値への到達よりも駆動力閾値への到達が遅くなることがある。その場合には、駆動力閾値を超えて駆動力が大きくなるタイミングで発進準備ステートST2から駆動ステートST3に遷移する。
【0043】
ECU1は、さらに舵角センサ56や、ステアリングシステム40、ステアリング機構45とも協働することができる。少なくとも舵角センサ56は、駐車支援システム100において、車輪Wの操舵角を検出する操舵角検出部として機能する。或いは、舵角センサ56、ステアリングシステム40、ステアリング機構45が総合的に操舵角検出部として機能すると考えることもできる。ECU1は、第1状態(強停止ステートST1)で操舵が行われたことを操舵角検出部が検出した場合、第2制御において、車輪Wに作用する制動力を低下させる速度を、操舵が行われていない場合よりも低くすると好適である。尚、この操舵は、駐車支援システム100による自動操舵でもよいし、運転者による操舵であってもよい。
【0044】
車両50が停止している第1状態(強停止ステートST1)で行われる操舵はいわゆる据え切りであり、第1状態(強停止ステートST1)で操舵が行われた場合には、車両50の駆動伝達系に捩り応力が作用している。制動力によって解放を妨げられる捩り応力が制動力の低下に伴って急速に解放されると、乗員が感知できるような振動が生じる場合がある。捩り応力が作用していない場合に比べて制動力が作用している場合に制動力をゆっくりと低下させることによって捩り応力が一気に解放されることを抑制することができる。即ち、そのような捩り応力が作用している場合であっても、当該捩じり応力を低減してから車両50を発進させることができる。従って、当該捩じり応力に起因して車両50に生じる振動等を小さく抑えることができ、車両50を円滑に発進させることができる。
【0045】
図8に示すように、駆動ステートST3において、車両50が移動経路Kに沿って進行し、第2位置P2に達すると、ECU1は車両50の速度V(目標速度Vt,実速度Vr)を一定の減速度(負の加速度)で低下させ始める(時刻t4)。車両50が移動経路Kに沿ってさらに進行し、時刻t5において第1位置P1に達すると、ECU1は、駐車目標位置Ptまでの残距離に応じて小さくなる減速度で車両50の速度Vを低下させる。時刻t6において、車両50が駐車目標位置Ptに達すると共に、車両50の速度Vがゼロまで低下すると、ECU1は車両50を停止させる。車両50が停止すると、ECU1は、駐車支援システム100の動作ステートを駆動ステートST3から強停止ステートST1に移行させる。
【0046】
尚、上記においては、地面が上り傾斜である場合に発進準備ステートST2において第2制御が実行される形態について説明した。地面が平地或いは下り傾斜の場合には、発進準備ステートST2において、制動力を減少させつつ、車輪Wに作用する駆動力を第1状態よりも上昇させることができる。特に、地面が平地の場合には、制動力をゼロにしても車輪Wと地面との静摩擦により、車両50は動きにくいため、制動力をゼロまで減少させた後に、駆動力を上昇させてもよい。地面が下り傾斜の場合には、制動力を減少させることで、駆動力を上昇させなくても車両50を発進させることができる。しかし、駆動力によらずに車両50が移動することは制御性の観点からは好ましくない場合もある。従って、地面が下り傾斜の場合も、制動力を減少させつつ、車輪Wに作用する駆動力を第1状態よりも上昇させると好適である。
【0047】
当然ながら、上り傾斜と同様に、地面が平地及び下り傾斜の場合にも、車両50が停止した状態を維持する制動力を車輪Wに作用させつつ、車輪Wに作用する駆動力を第1状態よりも上昇させてもよい。特に下り傾斜の場合には、制動力が弱くなることで進行方向へ必要以上に進むことを抑制することができる。
【0048】
ところで、上述したように、車両50は、車両50の複数箇所に設置され、車両50の周辺に存在する障害物の存否を検出するソナー57を備えている。これらのソナー57は、駐車支援システム100において、車両50と接触する可能性がある障害物を検出する障害物検出部として機能することができる。また、レーザーレーダー等を備えている場合には、当該レーザーレーダーも障害物検出部として機能することができる。また、上述したように、車両50の複数箇所に設置され、車両50の周辺画像を取得するカメラ58により撮影された撮影画像に基づいて車両50の周辺の障害物の存否を画像認識する画像処理システムも車両50に備えられている場合がある。そのような画像処理システムも駐車支援システム100と協働することができ、この場合、画像処理システムは、駐車支援システム100における障害物検出部として機能することができる。
【0049】
このように、駐車支援システム100は、車両50と接触する可能性がある障害物を検出する障害物検出部をさらに備えることができる。そして、ECU1は、車両50の移動中(この場合は駐車スペースEへの移動中)に、障害物検出部が障害物を検出した場合には、車両50が障害物に接触することなく停止するように、車両50を停止させて、強停止ステートST1に移行させると好適である。例えば、駆動ステートST3において障害物が検出された場合、ECU1は、駐車目標位置Ptに代えて障害物に接触せずに車両50が停止できる位置を停止目標位置(目標位置)に設定し、障害物に接触することなく車両50を停止させて、強停止ステートST1に移行させることができる。ECU1は、その後も駐車支援(自動運転又は半自動運転)を継続する場合には、再度、発進準備ステートST2を経て駆動ステートST3に遷移させる。尚、「入庫」の場合に限らず、「出庫」の場合も同様であることは言うまでもない。
【0050】
一方、障害物が車両50に近い位置で検出された場合には、停止目標位置で車両50を停止できないことがある。このような場合は、ECU1は、駆動ステートST3において、いわゆる急制動によって車両50を減速及び停止させて、強停止ステートST1に移行させてもよい。同様に、発進準備ステートST2において障害物が検出された場合にも、ECU1は、制動力を再び上昇させた後、強停止ステートST1に移行させることができる。ECU1は、その後も駐車支援を継続する場合には、再度、発進準備ステートST2を経て駆動ステートST3に遷移させる。「入庫」の場合に限らず、「出庫」の場合も同様である。
【0051】
このような場合には、ECU1は、さらに駐車支援システム100が動作する駐車制御PCの動作ステートから、駐車支援システム100が実質的に動作しない通常制御NCの動作ステートに移行させると好適である。また、運転者が自発的にブレーキを操作して車両50を停止させた場合も同様に、ECU1は、駐車制御PCにおけるそれぞれの動作ステートから強停止ステートST1へ動作ステートを移行させると好適である。
【0052】
上述したように、ECU1は、車両50の移動中に、目標位置(例えば駐車目標位置Pt)と車両50の現在位置Prとに基づいて車両50の目標速度Vtを演算する位置フィードバック処理と、目標速度Vtと車両50の実際の速度である実速度Vrとの差に基づいて車両50の目標加速度Atを演算する速度フィードバック処理と、目標加速度Atと車両50の実際の加速度である実加速度Arとの差に基づいて車両50の動力Fを演算する加速度フィードバック処理とを実行する。位置フィードバック処理は位置フィードバックコントローラ11により、速度フィードバック処理は速度フィードバックコントローラ12により、加速度フィードバック処理は加速度フィードバックコントローラ13により実行される。
【0053】
加速度フィードバック処理において演算される動力Fは、車輪Wに作用する駆動力及び制動力である。概ね、車両50を加速させる場合、動力Fは駆動力であり、車両50を減速させる場合、動力Fは制動力である。上述したように、駆動力は主に駆動装置25により実現され、制動力は主にブレーキ機構35により実現される。従って、加速度フィードバックコントローラ13により演算される動力Fは、車輪Wに作用する駆動力及び制動力の目標値である目標動力ということができる。
【0054】
ECU1は、車両50の移動中に、位置フィードバック処理と、速度フィードバック処理と、加速度フィードバック処理とを実行すると共に、傾斜検出部が検出した地面の傾斜の程度に応じて動力Fを補正する補正処理を実行する。地面の傾斜の程度とは、例えば地面の傾斜角度θ(勾配)である。そして、この補正処理は、
図4に示すように、補正フィードフォワードコントローラ14により実行される処理であり、例えば地面の傾斜角度θに基づくフィードフォワード制御である。補正フィードフォワードコントローラ14は、補正動力Fcを演算する。
【0055】
このような補正フィードフォワードコントローラ14を備える場合、加速度フィードバックコントローラ13が演算する動力Fは、動力Fの補正前動力F0ということができる(
図4、
図5参照)。そして、この補正前動力F0と補正動力Fcとを合算することによって、動力Fが演算される。例えば、車両50が進行方向に向かって上り勾配の地面に位置しており、強停止ステートST1において制動力を実現させる動力Fを演算する場合には、車両50が進行方向と逆方向に移動しないように、より大きな制動力を実現できるように動力Fが補正される。
【0056】
また、例えば、発進準備ステートST2や駆動ステートST3の場合には、上り勾配を上るための駆動力を実現できるように動力Fが補正される。また、車両50を減速させる場合には、勾配を上ることで車両50が減速し易いため、減速度が大きくなりすぎないように、駆動力の減少幅を抑制する方向に動力Fが補正される。車両50を停止させる場合には、停止時には進行方向とは逆方向へ移動することを防止するため、制動力が強くなる方向に、動力Fが補正される。
【0057】
車両制御部としてのEUC1は、位置フィードバック処理と、速度フィードバック処理と、加速度フィードバック処理とを実行することにより、車輪Wに作用する駆動力及び制動力である動力Fを適切に演算することができる。さらに、ECU1は、地面の傾斜の程度に応じて動力Fを補正する補正処理を実行する。即ち、駐車支援システム100は、フィードバック制御に加えていわゆるフィードフォワード制御も行い、車輪Wに作用する駆動力及び制動力である動力Fを地面の傾斜も考慮して適切に制御し、車両50を誘導して駐車目標位置Ptに停止させることができる。
【0058】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0059】
(1)上記においては、ECU1が地面の傾斜の程度に応じて動力Fを補正する補正処理を実行する補正フィードフォワードコントローラ14を備える形態を例示した。しかし、ECU1はそのようなフィードフォワード制御を実行しなくてもよく、補正フィードフォワードコントローラ14を備えていなくてもよい。
【0060】
(2)上記においては、第1状態(強停止ステートST1)で操舵が行われか否かに応じて、第2制御において車輪Wに作用する制動力を低下させる速度を異ならせる形態を例示した。しかし、ECU1は、第2制御において操舵を考慮することなく、制動力を低下させてもよい。
【0061】
(3)上記においては、ECU1が第2制御において、車輪Wに作用する制動力を次第に低下させると共に、車輪Wに作用する駆動力を次第に上昇させて車両50を発進させる形態を例示した。しかし、この形態に限定されることなく、例えば、ECU1は、第2制御において、車輪Wに作用する駆動力を予め規定された値まで上昇させ、その後、車輪Wに作用する制動力を次第に低下させて車両50を発進させてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1:ECU(車両制御部)、50:車両、54:速度センサ(傾斜検出部)、55:加速度センサ(傾斜検出部)、56:舵角センサ(操舵角検出部)、100:駐車支援システム、At:目標加速度、F:動力、Pr:現在位置、Pt:駐車目標位置(目標位置)、V:速度、Vr:実速度、Vt:目標速度、W:車輪、θ:傾斜角度