(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146437
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 69/00 20060101AFI20241004BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A01D69/00 301
A01D69/00 302
A01B69/00 301
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059333
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松澤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲之
(72)【発明者】
【氏名】平賀 亮太
(72)【発明者】
【氏名】坪田 健一
【テーマコード(参考)】
2B043
2B076
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA05
2B043BB14
2B043DC01
2B043EA40
2B043EB18
2B043EC02
2B043EC12
2B043EC18
2B043ED03
2B043ED14
2B043EE01
2B043EE05
2B043EE06
2B076AA03
2B076EA04
2B076EC23
2B076ED22
2B076ED25
2B076ED27
2B076ED30
(57)【要約】
【課題】
実際の穀粒の回収容器を識別し、実際の設置位置に合わせて穀粒排出の自動走行及び自動排出を行うことができるコンバインを提供する。
【解決手段】
走行装置3で走行する機体に刈取装置15を設け、刈取装置3で刈り取った穀稈から穀粒を分離する選別装置4を機体左右一側に設け、選別装置4で分離した穀粒を機外に排出する排出装置8を設けたコンバインにおいて、排出装置8の排出先端部80に撮影装置82を設け、撮影装置82が撮影した俯瞰画像データを処理する制御装置200を設け、制御装置200は、俯瞰画像内に穀粒の回収容器201と認識し得る対象が写り込んでいると、排出時に機体が停止して留まる位置を排出可能領域EAとして画像内に表示する構成とする。
【選択図】
図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(3)で走行する機体に刈取装置(15)を設け、該刈取装置(3)で刈り取った穀稈から穀粒を分離する選別装置(4)を機体左右一側に設け、該選別装置(4)で分離した穀粒を機外に排出する排出装置(8)を設けたコンバインにおいて、
該排出装置(8)の排出先端部(80)に撮影装置(82)を設け、該撮影装置(82)が撮影した俯瞰画像データを処理する制御装置(200)を設け、
該制御装置(200)は、俯瞰画像内に穀粒の回収容器(201)と認識し得る対象が写り込んでいると、排出時に機体が停止して留まる位置を排出可能領域(EA)として画像内に表示する構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記排出可能領域(EA)の外形線は、機体の前後及び左右の実寸法を元に、前記制御装置(200)により一定割合の縮小補正をかけたものを表示することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記排出先端部(80)には、撮影装置(82)の映像内に映る回収容器(201)までの距離を測定する測距装置(203)を設け、
前記制御装置(200)は、該測距装置(203)の測定により得られた距離と、取得されている前記排出可能領域(EA)に基づき移動経路を算出し、該排出可能領域(EA)と重複する位置まで自動的に走行することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記制御装置(200)は、前記排出可能領域(EA)に到達すると排出装置(8)を回動させ、回収容器(201)の上方で排出クラッチを接続して穀粒の排出を行う構成とし、
該排出クラッチが入になってから前記排出装置(8)の伸縮操作が行われたときは、排出クラッチの入切を手動操作できる構成としたことを特徴とする請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記制御装置(200)は、排出クラッチを接続してから所定時間が経過するごとに前記排出装置(8)を時計回り方向または反時計回り方向に交互に回動させる構成としたことを特徴とする請求項4に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記排出装置(8)は上下回動可能に構成し、該排出装置(8)の上下回動角度を検出する角度センサ(87)を設け、
前記撮影装置(82)と測距装置(203)は、摺動アクチュエータ(85)により前後方向に摺動すると共に、傾動アクチュエータ(86)により上下回動する可動装置(84)に装着し、
前記制御装置(200)は、前記角度センサ(87)の角度の変化に連動して前記摺動アクチュエータ(85)及び傾動アクチュエータ(86)を作動させ、可動装置(84)の摺動及び回動により前記撮影装置(82)と測距装置(203)の姿勢を変化させる構成としたことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒の自動排出機構を備えるコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動力を発生させるエンジンと、前後進及び出力を増減させる無段変速装置と、穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取った穀稈を搬送して穀粒を脱穀する脱穀装置と、脱穀された穀粒を一時貯留するグレンタンクと、グレンタンクから穀粒を機外に排出する排出オーガを備えるコンバインがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グレンタンクの容量一杯、あるいは満杯近くなると、刈取作業を中断し、圃場外に待機する運搬車に排出オーガから排出可能な位置まで、あるいは移動可能な運搬車と合流する待機位置にコンバインが移動する必要がある。
【0005】
運搬車の待機位置を事前に設定しておき、指定した地点にコンバインを移動させて穀粒の排出作業をさせるとは可能であるが、座標の数値入力やマップ画面のタッチでは本来想定した位置とはズレた位置が選択されるおそれがある。
【0006】
また、設定した位置が、交通量や道路の形状等により、回収容器やトラックの設置に適さない位置で、設定後に回収容器やトラックの位置を変更していると、コンバインの移動先が穀粒の排出作業を行えない位置となる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、実際の穀粒の回収容器を識別し、実際の設置位置に合わせて穀粒排出の自動走行及び自動排出を行うことができるコンバインを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、走行装置(3)で走行する機体に刈取装置(15)を設け、該刈取装置(3)で刈り取った穀稈から穀粒を分離する選別装置(4)を機体左右一側に設け、該選別装置(4)で分離した穀粒を機外に排出する排出装置(8)を設けたコンバインにおいて、該排出装置(8)の排出先端部(80)に撮影装置(82)を設け、該撮影装置(82)が撮影した俯瞰画像データを処理する制御装置(200)を設け、該制御装置(200)は、俯瞰画像内に穀粒の回収容器(201)と認識し得る対象が写り込んでいると、排出時に機体が停止して留まる位置を排出可能領域(EA)として画像内に表示する構成としたことを特徴とするコンバインである。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記排出可能領域(EA)の外形線は、機体の前後及び左右の実寸法を元に、前記制御装置(200)により一定割合の縮小補正をかけたものを表示することを特徴とする請求項1に記載のコンバインである。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記排出先端部(80)には、撮影装置(82)の映像内に映る回収容器(201)までの距離を測定する測距装置(203)を設け、前記制御装置(200)は、該測距装置(203)の測定により得られた距離と、取得されている前記排出可能領域(EA)に基づき移動経路を算出し、該排出可能領域(EA)と重複する位置まで自動的に走行することを特徴とする請求項1に記載のコンバインである。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記制御装置(200)は、前記排出可能領域(EA)に到達すると排出装置(8)を回動させ、回収容器(201)の上方で排出クラッチを接続して穀粒の排出を行う構成とし、該排出クラッチが入になってから前記排出装置(8)の伸縮操作が行われたときは、排出クラッチの入切を手動操作できる構成としたことを特徴とする請求項3に記載のコンバインである。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記制御装置(200)は、排出クラッチを接続してから所定時間が経過するごとに前記排出装置(8)を時計回り方向または反時計回り方向に交互に回動させる構成としたことを特徴とする請求項4に記載のコンバインである。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記排出装置(8)は上下回動可能に構成し、該排出装置(8)の上下回動角度を検出する角度センサ(87)を設け、前記撮影装置(82)と測距装置(203)は、摺動アクチュエータ(85)により前後方向に摺動すると共に、傾動アクチュエータ(86)により上下回動する可動装置(84)に装着し、前記制御装置(200)は、前記角度センサ(87)の角度の変化に連動して前記摺動アクチュエータ(85)及び傾動アクチュエータ(86)を作動させ、可動装置(84)の摺動及び回動により前記撮影装置(82)と測距装置(203)の姿勢を変化させる構成としたことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、画像内の回収容器(201)に排出可能領域(EA)の仮想線を表示することにより、排出装置(8)のによる排出作業時に機体を移動させるべき位置がわかるので、操作の簡略化が図られると共に、排出位置が回収容器(201)からズレることが防止され、収穫量の減少が抑えられる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、排出可能領域(EA)を、実際よりも一定割合縮小して表示することにより、回収容器(201)を設置した圃場端に近付く際、道路の端部や畦際の縁石などから離れた位置で停止できるので、車体が接触で傷付くことを防止できる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、排出可能領域(EA)が取得され、且つ測距装置(203)により回収容器(201)までの距離が算出できる場合は自動走行が実行されることにより、作業者の操作工数が減少し、労力の軽減が図られる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加えて、自動走行及び自動排出作業の条件が整っても、排出装置(8)の伸縮操作が行われると排出クラッチの手動での入切が可能になるので、自動排出により移動した排出装置(8)の位置が実際には不適切であるときに排出作業を中断できるので、回収容器(201)の外に穀粒が零れ落ちることを防止できると共に、零れ落ちて穀粒が回収できず、収穫量が減少することを防止できる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加えて、自動排出中の排出装置(8)が所定間隔毎に回動することにより、回収容器(201)内に穀粒が偏って積み上がることを防止でき、回収容器(201)から穀粒が溢れ出したり、積み上がった穀粒が崩れて舞い上がり、回収容器(201)外に穀粒が出ていくことを防止できる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項1から5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、排出装置(8)の上下回動に連動して撮影装置(82)とい測距装置(203)を備える可動装置(84)の回動角度と前後摺動位置が変動することにより、排出装置(8)の角度によって撮影対象が明瞭に捕捉できなくなることを防止でき、自動走行及び自動排出を作動させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図14】(a)搬送チェーンの巻回域に送油ノズルを設けた要部側面図 (b)搬送チェーンのコマの要部背面図
【
図16】電動式の昇降ステップと、昇降操作機構を示す側面図
【
図18】電動式の昇降ステップの操作具を示す拡大図
【
図19】左右サイドカメラとリアカメラを備えるコンバインの平面図
【
図20】左右サイドカメラとリアカメラの撮影範囲を示す模式図
【
図21】排出オーガの回転域を示す大仮想円と小仮想円を示す模式図
【
図22】CPUによる制御を行う部品を示すブロック図
【
図23】(a)ヘッドカメラ及び測距センサを覆うカメラカバーを閉じた状態を示す要部正面図 (b)ヘッドカメラ及び測距センサを覆うカメラカバーを開いた状態を示す要部正面図
【
図24】(a)ヘッドカメラの撮影で回収容器を認識させる作業を示す模式図 (b)排出可能領域を画像に表示し、測距センサで回収容器までの移動距離を算出する作業を示す模式図 (c)排出可能領域への自動走行を開始し、到達後に自動排出作業を行う作業を示す模式図
【
図25】(a)排出オーガを下方回動させた状態のヘッドカメラ及び測距センサの姿勢を示す要部側面図 (b)排出オーガを上方回動させた状態のヘッドカメラ及び測距センサの姿勢を示す要部側面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態である作業車両の一例であるコンバイン1について添付図面を参照して説明する。なお、理解を容易にするために、操縦者から見て、前方を前側、後方を後側、右手側を右側、左手側を左側として便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0022】
<コンバインの全体構成>
図1~
図3に示すように、コンバイン1は、車台2の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3を張設した走行装置4を配設すると共に、該車台2上の左右に、フィードチェン5に挟持して搬送供給される穀稈を脱穀選別処理する脱穀装置6と、その穀粒を一時貯留する貯留装置としてのグレンタンク7と、このグレンタンク7に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ8を載置配設し、この脱穀装置6の後端部に排藁処理装置9を装架する。排穀オーガ8は、穀粒の排出時にオーガ昇降シリンダを作動して起伏する。
【0023】
脱穀装置6の前方に、前端側から未刈穀稈を分草する分草体11と、分草した穀稈を引き起こす引起部12と、引き起こした穀稈を刈り取る刈刃部13と、刈り取った穀稈を掻き込むと共に搬送途中において扱深さを調節して前記フィードチェン5へ引き継ぎを行う供給調節搬送部等を有する刈取装置15を、刈取昇降シリンダにより土壌面に対して昇降自在なるよう車台2の前端部へ懸架配設して構成する。
【0024】
前記刈取装置15の後側上部にコンバイン1の操作制御を行う操作装置と、操縦者が座る操作席21を設け、この操作席21の下方側にエンジン22を搭載し、後方側に前記グレンタンク7を配置すると共に、該操作装置と操作席21を覆うキャビン23を設け、これら走行装置4,脱穀装置6,刈取装置15,操作装置,エンジン22,キャビン23等をコンバインの車台2に装着する。
【0025】
なお、刈取装置15から脱穀装置6には、圃場から刈り取られた穀稈が複数箇所で搬送チェーン90により挟持されて搬送されるが、これら搬送チェーン90は定期的な潤滑油の注油が行われないと、搬送駆動による熱などで焼き付きが生じて動作が悪くなり、搬送制度が低下する問題がある。
【0026】
この問題を解消すべく、
図14(a)に示すとおり、搬送チェーン90の巻回域内で、且つ非搬送作用側に、搬送チェーン90との接触時にボールが回転して潤滑油を注油する、注油ノズル91を設けている。しかしながら、
図14(b)に示すとおり、注油ノズル91が接触するのは、搬送チェーン90を構成するチェーンローラ92の外周部であり、本来重点的に供給が必要な一対のチェーンプレート93,93に設けられる、チェーンローラ92のピン部92a付近には潤滑油が届きにくい問題がある。
【0027】
この問題を解消すべく、注油ノズル91から放出される潤滑油を貯留し、搬送チェーン90に接触する際、微細な末端部分がチェーンローラ92のピン部92aに接触して潤滑油を供給する、給油繊維体94を、搬送チェーン90の巻回域内で、且つ非搬送作用側に配置する。
【0028】
なお、給油繊維体94は、潤滑油を多く含有できる、合成繊維を綿状にしたナノファイバーを用いて構成することが望ましい。
【0029】
なお、使用期間が長くなると吸着している潤滑油も劣化するので、給油繊維体94は専用のホルダ95に挟み込む等して着脱可能とし、交換が簡単に行えるものとするとよい。
【0030】
また、キャビン23内に設けたモニタ35には、満杯センサがグレンタンク7内に穀粒が満杯になったことを検出するとグレンタンク満杯の警報や燃料切れセンサが燃料タンク内の燃料が残り少なくなったことを検出すると燃料切れの警報や制御装置からの各種支持事項等が表示される。
【0031】
操作装置は、操作席21に着座した操縦者による前後操作により前後進及び停止の切換えと主変速切換えを行う変速アクチュエータを作動させる主変速レバーと、左右側への傾倒操作により左右走行クローラ3,3の左右サイドクラッチ及び左右サイドブレーキを操作する左右走行アクチュエータを作動させて直進時の左右操向及び各種旋回モードによる旋回を行わせ、前後方向の操作で刈取昇降シリンダを作動させて刈取装置15を昇降させる操向レバーと、刈脱クラッチアクチュエータを作動させて刈取装置15と脱穀装置6の駆動を入り切りする刈脱レバーと、排穀オーガ8先端部の排出口8aの位置をオーガ昇降シリンダの作動にて上下方向に移動し、左右旋回用アクチュエータの作動にて左右方向に移動させるオーガ操作レバーと、排穀オーガ8の駆動を入り切りするオーガ駆動電磁クラッチを作動させてグレンタンク7内の穀粒を排出口8aから機外に排出させるオーガ駆動切換えレバー等の各種操作具を備える。
【0032】
図2や
図15に示すとおり、前記刈取装置15は、左右方向を長手方向とする鋸刃状の刈刃部13を、伝動機構(図示省略)または刈取刃モータ157によって左右方向に往復移動する摺動ロッド151に装着し、刈刃部13の左右往復摺動により穀稈の生え際側を切断する構成である。
【0033】
この刈刃部13は、非作業時に硬い地面に接触し続けていると、刈取装置15の荷重により刃先が屈曲し、切断力が低下し得る。これを防止すべく、圃場への移動時や倉庫への格納時には、刈刃部13の前方及び上下をほぼ完全に覆う刈取刃カバー152を装着し、地面には多少変形しても問題の無いこの刈取カバー152を接触させておく。なお、刈取部カバー152の接地部分は、円弧状または円筒状の部材を設けておき、荷重を分散させて変形しにくく、且つ接地状態を保ちやすいものとするとよい。
【0034】
刈刃部13は刈取刃カバー152により厳重に保護されているが、摺動ロッド151については、機体側部に金属板が設けられているだけであり、こちらは縁石等に接触して金属板が変形すると、この金属板が接触して結局破損してしまうことがあった。
【0035】
摺動ロッド151の破損を防止すべく、刈取装置15の左右両端の下部に設ける刈取ガードパイプ153に、刈取カバー152の左右両外側や摺動ロッド
151よりも機体外側で機体後側に向かって飛び出す、延長ガードパイプ154を差し込んで設ける。
【0036】
この延長ガードパイプ154と刈取ガードパイプ153の取付部分には、機体上側に突出する連結ステー153a、154aを各々設け、各々の上方突出部には、ボルト等の固定部材155…を双方に貫通させてナット等を締め込むことにより、強固に連結される構成とする。
【0037】
さらに、延長ガードパイプ154の基部と端部の間には、該延長ガードパイプ154よりも機体外側で且つ機体上側に向かって突出するサブガードパイプ156を溶接して設ける。
【0038】
これにより、刈取装置15が障害物に接触しても、まずサブガードパイプ156に接触し、サブガードパイプ156が凹んだり屈曲したりするものの、延長ガードパイプ154への接触が防止され、さらには摺動ロッド151の破損が防止され、刈取装置15の刈刃部13への駆動が伝動されなくなり、刈れるはずの穀稈が圃場に残されることが防止される。
【0039】
また、双方の連結ステー153a,154a同士を合わせて固定部材155で連結したことにより、障害物との接触で側方から押される力がかかる際、延長ガードパイプ154が回転して刈取ガードパイプ153から外れてしまうことを防止できる。
【0040】
これにより、障害物が摺動ロッド151に接触しにくくなるので、摺動ロッド151の故障により作業が中断されることがなく、作業能率が向上する。
【0041】
また、外れた延長ガードパイプ154を走行クローラ3で踏むこといので、走行クローラ3が破損、あるいは脱落することが防止される。
【0042】
なお、延長ガードパイプ154側の連結ステー154aは、固定部材155が通過可能な穴を円弧状に拡げたものとし、延長ガードパイプ154を回転させることで、サブガードパイプ156の機体外側への突出量、及び外側端部の上下高さを変更可能な構成としてもよい。
【0043】
<キャビン23>
図1~
図3に示すように、キャビン23は、車台2に基部が固定されたキャビンフレーム24の上部にキャビンルーフ25を設けて箱状に構成し、右側面に右ガラス窓26aを設けた前側が開閉するドア26、左側面に左ガラス窓27,前側面にフロントガラス窓28及び後側面にリヤガラス窓29を装備する。
【0044】
図4~
図7に示すように、キャビン23内の上部左側の前後中央位置にエアコンユニット30を設け、該エアコンユニット30の後方に位置情報取得装置としてのGNSSユニット31及びペットボトル30a,30bや缶ボトル等を保冷及び保温する保存庫としての温冷庫32を設けている。
【0045】
GNSSユニット31は、エアコンユニット30の左右幅内に配置され、温冷庫32は左側部がエアコンユニット30の右側部とオーバーラップする位置に配置されている。
【0046】
また、GNSSユニット31を温冷庫32の前後幅内に配置することにより、キャビン23後方に突出することなく配置できる。
【0047】
従って、キャビン23内の上部左側空間にエアコンユニット30、GNSSユニット31及び温冷庫32をコンパクトに配置することができる。
【0048】
また、エアコンユニット30後方のデッドスペースを活用してGNSSユニット31及び温冷庫32を配置し、エアコンユニット30と温冷庫32を左右方向で重なる位置に配置したので、キャビン23内の空間を有効活用することができ、キャビン23内の居住空間に大きく張り出すことやキャビン23外に張り出すことが防止できる。
【0049】
また、GNSSユニット31をキャビン23内に設けることにより、外観が良くなる。
【0050】
GNSSユニット31の下面は、温冷庫32の下面よりも高い位置になるように構成され、後方視界を良くしている。
【0051】
GNSSユニット31は、操作席21左端よりも左側方にはみ出して配置しており、室内空間を広く確保している。
【0052】
エアコンユニット30の右側面前側からキャビン23内上部を前方に向けてフロントダクト33Fを延設してエアコンユニット30の前方で左側に張り出すように湾曲(迂回)させた後に、キャビン23内前部を左側から右側に向けて延設し、更に、キャビン23内右側を後方に向けて操作席21右側に至るまで延設している。
【0053】
そして、フロントダクト33Fには、キャビン23内前部に左右前エア吹き出し口34a,34bを設け、更に、キャビン23内右部に側部エア吹き出し口としての前後右エア吹き出し口34c,34dを設けている。
【0054】
なお、キャビン23内前部に設けた左右前エア吹き出し口34a,34bは、下方に向けて空調エアを噴出する構成としており、フロントガラス窓28の曇り防止機能(デフロスター)を兼用させている。
【0055】
そして、フロントダクト33F前左部を湾曲(迂回)させてキャビン23の室内空間を広くした部位には、モニタ35を配置している。
【0056】
モニタ35は、内装パネル36の室内側面に食い込むような状態で取り付けられ、あたかも内装パネル36に埋め込まれたように一体感があって外観が良い。
【0057】
また、モニタ35は、内装パネル36の下面よりも上方に配置し、光の映り込みを防止し、前部左右中央位置に設けたバックミラー(バックモニタでも良い)37の左側にあり、操作席21に着座した操縦者が見やすい。
【0058】
また、エアコンユニット30の右側面後側からキャビン23内上部を二股状に前方及び後方に向けてリヤダクト33Rを延設して、前方に向けて延設したリヤダクト33Rが操作席21左側に至った部位に側部エア吹き出し口としての左前エア吹き出し口34eを設け、後方に向けて延設した端部を温冷庫32内の上部に開口して、温冷庫32内に空調エアを噴出すると共に、その開閉ドア32aに後エア吹き出し口としての左後エア吹き出し口34fを設けて操作席21後側に空調エアを吹き出して操縦者の背中側を空調できるようにしている。
【0059】
そして、エアコンユニット30の右側面前側に接続されているフロントダクト33F基部のフロント吸入口33Faは、エアコンユニット30の右側面後側に接続されているリヤダクト33R基部のリヤ吸入口33Raよりも広くなっている。
【0060】
従って、フロントダクト33Fは、4つの左右前エア吹き出し口34a,34b及び前後右エア吹き出し口34c,34dが設けられたキャビン23内を左部から前部を経由して右部に至る長いダクトであるが、エアコンユニット30から広いフロント吸入口33Faにて十分な空調エアの風量を確保できて、良好な空調が行なえる。
【0061】
また、リヤダクト33Rは、エアコンユニット30の近くにある左前エア吹き出し口34e及び温冷庫32を経由した左後エア吹き出し口34fから空調エアを噴出する比較的に短い経路なので、エアコンユニット30から狭いリヤ吸入口33Raを介してでも十分な空調効果が得られる。
【0062】
また、エアコンユニット30からリヤダクト33Rにて温冷庫32に空調エアを送風し、温冷庫32内に新鮮な空調エアを噴出した後に左後エア吹き出し口34fから噴き出す経路としたので、常に新鮮な空調エアにて温冷庫32内を冷やしたり温めたりすることができる。
【0063】
また、エアコンユニット30からリヤダクト33Rにて温冷庫32内の上方位置に空調エアを噴出させて下方の左後エア吹き出し口34fからキャビン23内に噴き出す経路としたので、温冷庫32の冷却効率や加熱効率が良い。
【0064】
また、温冷庫32の開閉ドア32aに左後エア吹き出し口34fを設けたので、吹き出し口のスペースを別に設けることなく配置できて簡潔で安価な構成となる。
【0065】
なお、フロントダクト33Fとリヤダクト33Rは、合成樹脂で一体形成してあり、フロントとリヤに分けたダクトであるが一体形成することにより部品点数を増加することなく製造コストの削減が行なえる。
【0066】
温冷庫32の下面は、エアコンユニット30の下面よりも上方に配置され、キャビン23内の空間を広く確保できる。
【0067】
温冷庫32は、キャビン23内左後上部に配置されており、操作席21に着座した操縦者の前方視界を妨げない。
【0068】
温冷庫32は、操作席21よりも後方に配置されている。従って、温冷庫32内のペットボトル30a,30b等が落下しても操作席21に着座している操縦者に当たらない。
【0069】
温冷庫32は、その前面と操作席21の背凭れが一致する付近に配置されている。従って、温冷庫32が操縦席である操作席21から遠く離れていないので使いやすい。
【0070】
温冷庫32の開閉ドア32aは、下端部に前後方向の枢支軸を設けて上部が手前下方に向けて開く構成としており、内部に入れているペットボトル30a,30b等が開閉ドア32aを開けても転げ出ない。なお、開閉ドア32a上部には、外から操作できるフック32bが設けられており、閉じた状態を保持する。
【0071】
温冷庫32の下側にエアコンユニット30のホース30c類を配策し、温冷庫32下側のスペースを有効活用している。
【0072】
左ガラス窓27の後方に配設した左後方ガラス窓27aは、温冷庫32下面位置まで設けてあり、左後方視界を良くしている。
【0073】
図8に示すように、温冷庫32は、500mlのペットボトル30aなら横にして2本収容でき、350mlのペットボトル30bなら縦にして3本収容できる。
【0074】
図9に示すように、温冷庫32は、500mlのペットボトル30aを横にして収納した際に転がるのを防止する凹部32cを内部底面に設けている。
【0075】
温冷庫32の上面とキャビンルーフ25の間には、空間25aが設けられており、キャビンルーフ25の温度が直接温冷庫32に伝熱しないように構成されている。
【0076】
また、
図10に示すように、モニタ35は、その取付け部35aの基部が内装パネル36下面に設けたモニタ取付用ホール35bに取付けられ、外観が奇麗である。
【0077】
温冷庫32は、その底面部が内装パネル36下面に設けた保冷庫取付ホール32dに取付けられ、外観が奇麗である。
【0078】
なお、上記実施形態では保存庫として温冷庫32の例を示したが、エアコンユニット30からの冷風にて機能する保冷庫としても良く、また、エアコンユニット30からの温風にて機能する保温庫としても良い。
【0079】
以上要するに、キャビン23上部にエアコンユニット30、フロントダクト33F、リヤダクト33R及び複数のエア吹き出し口34a,34b,34c,34d,34e,34fを設けたので、キャビン23内の居住空間を広く確保できる。
【0080】
また、送風距離が長いフロントダクト33Fのフロント吸入口33Faを送風距離の短いリヤダクト33Rのリヤ吸入口33Raよりも広くすることにより、エアコンユニット30からキャビン23内周囲の複数のエア吹き出し口34a,34b,34c,34d,34e,34fに均等に空調エアを送ることができ、キャビン23内の温度をできるだけ均一に変化させることができ、作業しやすい環境を実現できる。
【0081】
また、リヤダクト33Rにてペットボトル30a,30bや缶ボトル等を保冷または保温する温冷庫32に空調エアを案内し、温冷庫32に後エア吹き出し口34fを設けたので、空調エアの案内経路を活用して温冷庫32を配置ができキャビン23内の居住空間を広く確保できる。
【0082】
また、温冷庫32がキャビン23の後部側に配置され、その底部がエアコンユニット30の底部よりも上方に位置するので、キャビン23内の居住空間を広く確保できる。
【0083】
また、開閉ドア32aに後エア吹き出し口34fを設けたので、空調装置をさらに省スペース化することができる。
【0084】
また、温冷庫32の開閉ドア32aが下部に設けた枢支軸にて上側が手前下方に向けて開く構成とし、温冷庫32及び後エア吹き出し口34fが操作席21よりも後側に位置するので、操作席21の後方に空調エアを送ることができ、キャビン23の快適性が向上し、開閉ドア32aが意図せず開いて内部のペットボトル30a,30b等が落下しても、操作席21に着座した操縦者に当たり難い配置で、安全性が確保される。
【0085】
また、キャビン23の上部空間を活かしてエアコンユニット30、リヤダクト33R、温冷庫32及び位置情報取得装置31をコンパクトに配置することできてキャビン23内の居住空間を広く確保できる。
【0086】
また、フロントダクト33Fを湾曲させてキャビン23の室内空間を広くした部位にモニタ35を配置したので、キャビン23の居住空間を広く確保できると共に、視認しやすい箇所にモニタ35を配置することができて能率の良い作業が可能になる。
【0087】
また、フロントガラス窓28上部に位置する前エア吹き出し口34a,34bがフロントガラス窓28下方に向けて空調エアを吹き出すので、フロントガラス窓28の曇り防止機能(デフロスター)を兼用させて視認性の低下を防止できる。
【0088】
図11~
図13に示すように、フロントガラス窓28外面上部には、ワイパー40が装備されている。
【0089】
キャビンルーフ25は、キャビン23前部のフロントガラス窓28よりも前方に突出している。
【0090】
ワイパー40は、キャビンルーフ25の前部突出部に固定されたオフセットプレート39に基部が回動自在に支持された一般的な構成で、非作動時にはキャビンルーフ25の前部突出部下面内に水平な姿勢で停止して収納される。
【0091】
従って、キャビンルーフ25の前部突出部下面内にワイパー40が非作動時に収納されるので、前方視認性の向上が図れる。
【0092】
キャビンルーフ25前端部内方には、ワイパー40を駆動するワイパーモータ41が設けられており、ワイパーモータ41の駆動軸41aがオフセットプレート39を貫通して設けられ、ワイパー40の回動リンク機構を作動させてワイパー40が水平な非作動位置と下方垂直方向に向く位置に往復回動してフロントガラス窓28外面に付着した水滴や汚れ等を拭き落とす。
【0093】
オフセットプレート39の左右中央部には、ウォッシャーノズル42が設けられており、操作装置の操作にてウォッシャーポンプが作動してフロントガラス窓28外面に洗浄水を噴射する。
【0094】
上記のキャビン23は、構造上上下方向に長く、また視認性を確保すべく高所に配置されるものであるので、乗り降り用のステップの上下長さを長く確保する必要がある。したがって、乗り降り時の移動に余分な時間と労力を費やす必要があると共に、高所で足を踏み外すとその分怪我等のリスクが増すという問題がある。
【0095】
この問題に対応すべく、
図16から
図18に示すとおり、キャビン23のドア26の下部に、上下位置を変更自在な乗降ステップ161を備える、ステップ昇降機構160を設ける。なお、ステップ昇降機構160は、ドア26の下方で機体内側に凹む凹部内にはめ込むように配置し、乗降ステップ161の機体外側部を凹部162から5~10cmほどはみ出させる配置構成とすると、作業者が足をかけやすく、且つこの乗降ステップ161の奥の方につま先側を臨ませることで、乗降中の作業者が乗降ステップ161を踏み外して落下しにくい構成とすることができる。
【0096】
前記ステップ昇降機構160は、
図17に示すとおり、機体外側に開口部を形成した、上下方向に長い直方体である昇降ケース162内に、一側端部に乗降ステップ161を装着した昇降ワイヤ163を巻回させる滑車プーリ164と、該滑車プーリ164よりも機体下方で昇降ワイヤ163を巻き取る、もしくは回し出すウィンチ165を設けると共に、該ウィンチ165を正転または逆転方向に回転させる昇降モータ166を設けて構成する。
【0097】
なお、乗降ステップ161の上下位置にかかわらず、作業者が足を乗せて荷重をかけても、乗降ステップ161が回動したり、荷重により下方に移動したりすることを防止すべく、ウィンチ165による昇降ワイヤ163の巻き取り量にかかわらず、昇降ワイヤ163は常に張り状態を保つ構成とする。
【0098】
また、
図16及び
図18に示すとおり、キャビン23を構成するキャビンルーフ25には、乗降補助グリップ167をキャビン23の底部に向かって垂らして配置する。この乗降補助グリップ167は、キャビンルーフ25に設ける巻き取りリール(図示省略)に接続された補助ベルト168より上下高さを変更可能としており、乗降補助グリップ167には、作業者が押した状態を継続すると補助ベルト168が引き出し可能となる伸長スイッチ169aと、押すと巻き取りリールが作動して補助ベルト168を巻き取り、乗降補助グリップ167がキャビンルーフ25に接近する収縮スイッチ169bを設けるものとする。
【0099】
なお、昇降モータ166の正逆転スイッチは、伸長スイッチ169aと収縮スイッチ169bとすると、乗降ステップ161と乗降補助グリップ167の昇降位置をある程度合わせることができ、安定した姿勢でキャビン23を乗り降りでき、安全性が向上する。
【0100】
キャビン23から作業者が降りるときは、ドア26を開け、キャビンルーフ25近くに位置する乗降補助グリップ167を手に取り、乗降ステップ161に足を乗せてから、伸長スイッチ169aを押し続ける。これにより、補助ベルト168が引き出されて乗降補助グリップ167が下降すると共に、昇降モータ166がウィンチ165を回して昇降ワイヤ163を回し出すので、昇降ステップ161もほぼ同量下方に移動し、地面との距離が縮まり、安全に降車することが可能となる。
【0101】
一方、キャビン23に作業者が乗るときは、キャビン23内に垂れ下がっている乗降補助グリップ167を手に取り、下降している乗降ステップ161に足を乗せてから、収縮スイッチ169bを押し続ける。これにより、補助ベルト168が引き込まれて乗降補助グリップ167が上昇すると共に、昇降モータ166がウィンチ165を回して昇降ワイヤ163を巻き取るので、昇降ステップ161もほぼ同量上方に移動するので、作業者はキャビン23の床面と高低差が小さくなった状態でキャビン23に乗り込め、これにより安全に登場することが可能となる。
【0102】
上記のコンバインでは、操縦者はキャビン23に搭乗して操縦を行うことが一般的であるが、キャビン23は強度確保や部材の取付の都合上、ピラー等の構造体が視界の妨げとなり、視認性を低下させる問題がある。特に、作業者の左手側は、脱穀装置6や刈取装置15に覆われていることにより、地面や穀稈を見ることができず、穀稈の刈り残しが生じたり、機体を壁面に接触させて破損させたりする問題がある。
【0103】
また、キャビン23から機体後方を見ようとしても、キャビン23の構成部品だけでなく、脱穀装置6、グレンタンク7、及び排出オーガ8が視界を妨げるので、後進時に停止位置を誤り壁面にぶつかり機体が破損することや、排藁が設定どおり排出されているかを確認できない問題がある。
【0104】
さらに、キャビン23の右側についても、操縦者の搭乗部は機体上方寄りに設けられている上、付近に壁等があるときには、ドア26の開閉可能な範囲が限られてしまい、下方の状態がよくわからないまま降り、泥に足を取られて滑りそうになったり、足元が汚れてしまったりする問題がある。
【0105】
これらの問題を解決すべく、
図19に示すとおり、キャビン23を設ける側とは反対側に、操縦者が機体左側の後方を確認するサイドミラー51を装着する、棒材を曲げ加工して構成し、機体左右一側、即ち脱穀装置6の外側端部に向かって突出するミラーステー50を回転可能に設け、該ミラーステー50のうち、該サイドミラー51の取付部よりも基部寄りの位置、より具体的に言えばサイドミラー51の取付部を形成すべく上方に向かわせる屈曲部付近に、下方の広域を撮影範囲に収められる左サイドカメラ52を配置する。
【0106】
なお、ミラーステー50は、機体内側方向(平面視で半時計回り方向)に回動させるとサイドミラー51及び左サイドカメラ52を含めて脱穀装置6の上方に収まり、機体左右の外側または機体後側に突出しない位置に収まる構成とし、非作業時の接触によるミラーステー50、サイドミラー51及び左サイドカメラ52の破損を防止する。
【0107】
一方、ミラーステー50を機体外側方向(平面視で時計回り方向)に回転させると左サイドカメラ52が脱穀装置6の外側端部よりも外側に張り出し、且つ圃場面から上方に離間した位置に配置されるので、キャビン23に搭乗する作業者が見辛い場所を左サイドカメラ52で撮影し、刈取状況や圃場の荒れ具合を正確に確認することができる。これにより、刈り残しの発生を防止できると共に、先の作業位置の状況を把握して作業を行うことができ、作業能率の低下が図られる。
【0108】
上記の左サイドカメラ52は、機体左側の外側を写す際は必要な領域を明確に写すことができるが、収納する際に脱穀装置6の上方に位置させた際には、映像を映す必要性は低くなる。したがって、ミラーステー50にポテンショメータ等の動作を検出可能な張出センサ53を設け、張出センサ53の検出により左サイドカメラ52が機体外側にあると判断したときは、左サイドカメラ52を起動する、あるいは左サイドカメラ52が撮影した映像をキャビン23内のモニタ35、あるいは別途通信可能に設定したタブレット等の端末に送信し、表示する構成とすると、確認の必要があるときのみ映像をモニタ35や端末に表示することができる。
【0109】
言い換えれば、張出センサ53の検出により左サイドカメラ52が脱穀装置6の上方に位置していると判断されたときは、左サイドカメラ52の撮影を停止させる(スタンバイモード)か、あるいはモニタ35や端末への映像データの送信を停止する構成となる。
【0110】
これにより、不要な時は左サイドカメラ52が撮影を行わないので、使用による劣化を抑えられると共に、不要なデータ通信を行わないので、通信コストや電力消費の低減が図られる。
【0111】
次に、
図19で示すとおり、排藁処理装置9の後部に位置するドロッパカバー9aの上部に、平面視でH型のブロックステーを各々回動可能に連結して構成するリアミラーステー54の基部を設け、リアミラーステー54の端部にリアカメラ55を設ける。そして、リアミラーステー54にも張出センサ53を設け、リアカメラ55が機体後方に突出して機体後部の圃場面を写す状態であるか、ドロッパカバー9aの上方にリアミラーステー54が折りたたまれた状態かを判断させる。
【0112】
リアカメラ55が機体後方に突出していると判断したときは、撮影した映像をキャビン23内のモニタ35、あるいは別途通信可能に設定したタブレット等の端末に送信し、表示する構成とする。
【0113】
これにより、作業者はキャビン23に搭乗したまま機体後方の状況を視認できるので、排藁の散布が設定どおりであるか、穀稈の刈り残しや刈り株の高さはどの程度かを認識しながら作業を行える。
【0114】
また、後進する際に後方の状況がしっかりと確認できるので、畦や壁に機体をぶつけて損傷させることを防止できる。
【0115】
逆に、ドロッパカバー9aの上方にリアミラーステー54が折りたたまれた状態であるときは、リアカメラ55の撮影を停止させる(スタンバイモード)か、あるいはモニタ35や端末への映像データの送信を停止する構成となる。
【0116】
これにより、不要な時はリアカメラ55が撮影を行わないので、使用による劣化を抑えられると共に、不要なデータ通信を行わないので、通信コストや電力消費の低減が図られる。
【0117】
また、
図19に示すとおり、キャビン23の機体右側端部の上方に、右サイドカメラ56を、撮影位置と非撮影位置に切替可能に配置してもよい。
【0118】
上記の右サイドカメラ56は、キャビン23の右側の下方を撮影することにより、作業者が乗り降りする位置、及びその周辺の状況をモニタ35等に表示させることができるので、乗り降り位置に動作の妨げとなるものがあるか無いかを確認でき、作業の安全性が確保される。
【0119】
また、撮影の必要が無いときには、右サイドカメラ56のカメラアーム56aを回動させてキャビン23の上方に収納できるので、キャビン23よりも外部に突出した右サイドカメラ56が壁等の障害物に接触して破損することが防止される。
【0120】
このとき、カメラアーム56aにも張出センサ53を設け、使用状態か収納状態かを判断可能とすると、他のカメラ同様の効果を得ることができる。
【0121】
上記の左サイドカメラ52、リアカメラ55、及び右サイドカメラ56を全て設けた際、各カメラの撮影範囲は
図20のとおり、刈取始端部よりも後方を俯瞰で写すものとする。これにより、機体の操縦者が目視しやすい、刈取を行う正面以外の情報を広範囲に亘って得られるので、死角に潜む障害物と接触しにくくなると共に、周辺の穀稈の植生状態を見た上で能率的な刈取経路の構築が可能となる。
【0122】
上記のコンバインの機体周辺を俯瞰視するカメラは、使用時は勿論、収納時でも機体最上部寄りに配置される、排出オーガ8の先端付近にも装着すると、排出オーガ8を停止させているときには、他のカメラで撮影しにくい位置の映像情報を取得できる。
【0123】
しかしながら、撮影位置の切替や、穀稈の排出作業時に排出オーガ8をスイング回動させている間は、カメラが撮影する位置は逐次変化し、情報を得難く、しかも作業者に疲労感や乗物酔いを誘発させかねない映像が取得されることになる。
【0124】
これを防止すべく、排出オーガ8をスイング回動し始めたことを検知する回動センサ57を設け、該回動センサ57が回動を検知すると、モニタ35に表示させる映像を、左サイドカメラ52、リアカメラ55、及び右サイドカメラ56のいずれかが撮影したものに切り替える。または、排出オーガ8の回動中には特段モニタ35を見ないものとして、モニタ35に撮影された映像を映さないようにしてもよい。
【0125】
コンバインの収穫作業として望ましい例としては、圃場の傍の道路に位置することの多い穀粒の回収容器201の位置や状態を排出開始前に把握すべく、回動センサ57が排出オーガ8の回動を検出すると、右サイドカメラ56が作動し、映像がモニタ35に表示される構成が考えられる。
【0126】
これにより、作業者は排出オーガ8を穀粒の回収容器201の上方で回動停止させやすくなるので、排出の位置合わせに要する時間の短縮が図られる。また、穀粒の落下位置が回収容器201からズレにくく、穀粒が回収容器201外に排出されることが防止される。
【0127】
あるいは、
図21に示すとおりモニタ35には左サイドカメラ52、リアカメラ55、及び右サイドカメラ56が撮影する画像を組み合わせた俯瞰画像BVを表示し、その画像上に排出オーガ8の回動支点から先端部までの長さをから算出した、仮想の回動円Sを表示するものとしてもよい。この時の回動円Sは排出オーガ8の実際の回動範囲ではなく、排出オーガ8の回動支点から先端部までの長さを半径とする正円とし、演算を単純化すると制御系への負荷を軽減できる。
【0128】
作業者は、上記の回動円Sを見ながら、排出オーガ8を回動させると接触し得る障害物の有無を判断すると共に、回動円Sが回収容器201に重なるように機体を移動、あるいは排出オーガ8の回動位置や伸縮量の調整を行うことで、機体を破損させることなく穀粒を能率的に回収容器201に回収させることができる。
【0129】
上記のとおり、排出オーガ8は構造上伸縮が可能であるので、回動円Sは、最長状態を示す大仮想円S1と、最短状態を示す小仮想円S2の両方をモニタ35に表示されている俯瞰画像BVに重ねて表示してもよい。
【0130】
これにより、排出オーガ8の伸長量を決めてから旋回させる状況でも、周囲の様子を排出オーガ8の設定長さに合わせて判断しやすくなり、作業能率が向上する。
【0131】
図1から
図3に示すとおり、排出オーガ8は、基部側の搬送筒8bと摺動して長さを変更する摺動筒8cの双方の内部に搬送螺旋が設けられ、この搬送螺旋の搬送終端部、即ち排出オーガ8の先端部には、穀粒を落下させる排出ヘッド80を、正面視において左右方向に回転可能に設けている。この排出ヘッド80は、左右方向に所定量回転させることで穀粒の排出位置を調整し、回収容器201の内部に均等に穀粒を投入することで、穀粒が容器外に零れ落ちることを防止している。
【0132】
排出ヘッド80の排出部8aの外周は、塩化ビニル等の透明な合成樹脂の板体を曲げて矩形状とした穀粒ガイド81を備え、排出される穀粒は穀粒ガイド81の内面に接触して下方に落下するか、あるいは搬送螺旋の搬送終端部からそのまま下方に落下する。
【0133】
一方、排出ヘッド80の外周部、特に機体前側部分は穀粒の排出に関連しないと共に、排出オーガ8を最大限伸長させた際に機体から離間した位置を撮影することに適している。
【0134】
従って、排出ヘッド80の前端部には、前方及びその周辺を撮影範囲とする、ヘッドカメラ82を設け、少なくとも穀粒の排出作業が行われる際には撮影状態を保つ構成とする。こちらは、排出オーガ8の伸長操作を行った際に作動するものとするとよい。
【0135】
なお、排出ヘッド80の外周に配置するものであっても、ヘッドカメラ82は穀粒の排出時に排出口8a周辺にまき散らされる細かい粉粒や、圃場から立ち上る土煙等により、レンズが汚れて撮影精度が低下するおそれがある。
【0136】
従って、
図23で示すとおり、ヘッドカメラ82はカバーモータ84により開閉可能なカメラカバー83で覆い、排出オーガ8の伸縮動作時のみカメラカバー83を開き、穀粒の排出が始まるときや、排出オーガ8を刈取収穫作業時の収納位置に移動させると、カメラカバー83が閉じられる構成とするとよい。
【0137】
但し、上記以外で作業者が何らかの用途でヘッドカメラ82を用いて撮影を行いたい状況が有り得ると想定し、カメラカバー83の開閉を操作するカバースイッチを設けてもよい。
【0138】
また、ヘッドカメラ82を保護するには、カメラカバー83の開閉機構にコストがかかり過ぎると共に、電装系の故障時に交換が必要な部品が多くなる問題がある。したがって、ヘッドカメラ82の外周を細かい網目の防護ネットで覆い、ある程度の大きさの土砂等の夾雑物がヘッドカメラ82への隙間を通ってレンズ等を汚すことを防止できる。
【0139】
ヘッドカメラ82が斜め上から俯瞰して撮影する映像は、画像ファイルまたは動画ファイル化して解析ソフトウェアをインストールしたCPU200に送信し、まず撮像範囲内に穀粒の回収容器201や、この回収容器201を積載したトラック202が写っているかどうかを判断する。CPU200には、事前に回収容器201やトラック202を識別させるための画像や動画データを記録させておき、なるべく誤認識を発生させない構成としている。
【0140】
また、排出作業を行うコンバイン側は、排出オーガ8の向いている方向と磁北、または仮想地図の仮の北方向を比較して方位を仮定すると共に、ヘッドカメラ82の配置位置を中心として、排出時に自機が停止して留まる位置を排出可能領域EAとして記録させる。なお、排出可能領域EAの外形線は、機体の実際の前後及び左右幅よりも5~10%ほど小さく算出すると、畦際に近付け過ぎて衝突することを防止できる。
【0141】
次に、
図24(a)~(c)に示すとおり、ヘッドカメラ82が撮影した画像内に回収容器201やトラック202が検出されたときは、レーザー等を用いた測距センサ203をヘッドカメラ82が向いている方向と同じ方向に向け、距離の算出が可能であればモニタ35などにその数値を表示させる。距離が測定できないときは、その旨をモニタ35に表示させ、測距対象をより正確に撮影し得る位置まで機体を手作業で移動させる。
【0142】
なお、機体を回収容器201やトラック202が撮影画像内に収まる位置に移動させても距離が測定できないときは、測距センサ203が故障しているか、あるいは霧や周囲の光源が原因で測定できない状況にあるとして、測定不能をモニタ35などに表示させる。このとき、穀粒の排出位置への移動は、作業者が行う。
【0143】
次に、接触までの距離が、排出可能領域EAと重複しているときは、回収容器201の上方で且つ中央位置に向けて排出オーガ8を旋回、または伸縮させる。
【0144】
上記のように、コンバイン1が穀粒の排出動作を行うべく移動しても排出可能領域EAから逸脱しないときは、コンバイン1はCPU200のアプリケーションから生成された進路に基づき自動移動すると共に、排出オーガ8を回動させて、回収容器201の中央位置の上方に臨ませる。
【0145】
これにより、コンバイン1を畦際に接触させることなく、排出オーガ8から回収容器201に穀粒を収容することができ、穀粒が回収容器201から零れ落ちて回収できなくなり、収獲量が減少することが防止される。
【0146】
また、条件が整ったときは自動で排出可能領域EAにコンバイン1が向かうことにより、作業者の労力が大きく軽減される。
【0147】
なお、自動移動中及び自動穀粒排出動作中は、排出オーガ8への伝動を入切させる排出クラッチの動作を受け付けないものとする。これにより、自動排出が可能であるにもかかわらず、作業者が誤って排出クラッチを切操作してしまうと、コンバイン1はただ排出作業位置に移動するだけとなり、作業の自動化が図れず省力化に繋がらなくなる問題がある。
【0148】
しかしながら、何らかの制御エラーにより、自動移動後に排出位置まで回動させたはずの排出オーガ8の排出ヘッド80の位置が、回収容器201の中央部付近でなく端部近くに位置することや、あるいは回収容器201外に位置するということも考え得る。このとき、排出クラッチの操作が行えなければ、穀粒が回収容器201の外に排出されてしまい、回収作業に余分な時間と労力を費やす必要が生じると共に、回収できない穀粒があると、収穫量が減少する問題が発生する。
【0149】
したがって、自動排出作業に移行しているとき、作業者が排出オーガ8の伸長または収縮操作を行うと、排出クラッチの操作を受け付ける制御構成としておく。これにより、排出オーガ8の排出位置がズレているときには排出クラッチを切って穀粒の排出を停止させ、排出オーガ8を適切な排出位置に移動させてから排出クラッチを入に切り替えることができるので、穀粒の回収が容易になり、作業能率の低下が防止される。
【0150】
なお、自動排出が行われている間、排出オーガ8は所定時間毎に右(時計回り)方向と左(反時計回り)方向に回転方向の切り替えを行い、回収容器201の一点に穀粒が積み上げられ、穀粒の山が自重で崩壊して吹き上がり、回収容器201の外に飛び出すことや、偏って積み上がった回収容器201の一部の縁部から穀粒が外部に落下することを防止できる。
【0151】
なお、回収容器201が大容量のものであるとき、排出オーガ8の左右回動範囲が回収容器201の中央部付近に偏ることがある。したがって、コンバイン1の左右の走行クローラ3,3のうち、一方を正転、他方を逆転方向に回転させて信地旋回を行い、機体の回動によって回収容器201内に満遍なく穀粒を投入する作業を行ってもよい。
【0152】
さらに、自動排出作業中は、所定時間毎に走行クローラ3,3の回転方向を自動的に入れ替える制御を行うと、より偏りのない穀粒の投入が可能になる。
【0153】
但し、このとき排出可能領域EAの範囲外にコンバイン1が出うる場合は、信地旋回の切替タイミングを早めるものとし、作業の中断は起こり得ないものとするとよい。
【0154】
なお、ヘッドカメラ82や測距センサ203は、排出オーガ8の先端部側を最大限上方回動させても問題なく撮像できるものを用い、なるべく広域が視野に入るよう角度を調節して装着するものとする。
【0155】
但し、排出オーガ8の位置や圃場の環境、穀稈の植生状況等によってヘッドカメラ82や測距センサ203の適切な配置は異なってくるので、排出オーガ8の基部側からワイヤやロッド(図示省略)で姿勢を調節可能に構成する、あるいは、キャビン23内に設けるスイッチやダイヤル(図示省略)により、調節アクチュエータを作動させて姿勢を調節可能に構成してもよい。
【0156】
コストがかかる分、作業条件に合わせてヘッドカメラ82や測距センサ203の有効範囲を適切なものとできるので、映像を利用した制御の精度が向上する。
【0157】
あるいは、
図25(a)(b)で示すとおり、ヘッドモータ82と測距センサ203を正逆転可能なスライドモータ85により前後移動するスライドレール84に装着し、スライドレール84の移動により撮影範囲を変更可能とする。また、スライドレール84は前後に回動可能に配置し、正逆転可能なチルトモータ86でヘッドモータ82と測距センサ203の前後傾斜角度を変更可能に構成する。
【0158】
そして、スライドモータ85及びチルトモータの正転または逆転は、排出オーガ8の上下回動角度を検出するオーガポテンショメータ87に合わせて動作する構成とする。
【0159】
これにより、排出オーガ8の上方回動量を増やすほど、スライドモータ84はスライドレール85を機体前側に移動させ、チルトモータ86はスライドレール85を下方傾斜姿勢にする。排出オーガ8の下方回動量を増やしたときは、真逆の挙動をするものとする。
【0160】
これにより、ヘッドモータ82と測距センサ203は撮影対象を捉え続けることができるので、可能なときには穀粒排出位置への自動移動、及び自動排出を用いて省力化を図ることができる。
【0161】
なお、オーガポテンショメータ87の検出角度が変動している間にスライドモータ84やチルトモータ86がリアルタイムで動作すると、ヘッドモータ82と測距センサ203の検出内容がかえって不安定なものとなり、実際には距離の測定が可能な状況で「測定不能」と判定してしまうおそれがある。
【0162】
したがって、オーガポテンショメータ87の検出角度が変化し、変化が停止してから一定時間が経過するまではスライドモータ84やチルトモータ86への信号の発信は行わないものとし、排出オーガ8の姿勢変更が行われてから撮影や測距を行うものとすることが望ましい。
【0163】
また、排出オーガ8の姿勢変更が終わり、ヘッドモータ82と測距センサ203による撮影が始まったとき、コンバイン1が走行を始めてしまうと、安定した撮影や測距が行えなくなる。したがって、排出オーガ8の姿勢変更後にスライドモータ84とチルトモータ86が作動してから停止したときは、排出オーガ8の回動操作や、コンバイン1の前後進操作を所定時間(例:5~10秒程度)規制する構成とすることが望ましい。
【0164】
あるいは、前後進操作自体は受け付けるものの、所定時間(例:5~10秒程度)は前後進の変速アクチュエータの出力上限を設定し、変速レバーの操作位置にかかわらず微速でのみ前後進可能とすることも考えられる。なお、所定時間経過後に変速レバーの操作位置に対応する出力まで一気に開放するとその場から急発進して作業者を振り回しかねないので、変速レバーの操作位置を上限として、所定時間(例:3~5秒)毎に出力を漸次増加させる制御構成とする。
【0165】
なお、回収容器201の接地位置や圃場の条件によっては、排出位置への自動走行や自動排出を用いるより、作業者の操作の方が高精度に作業を行い得ることがある。このとき、ヘッドモータ82と測距センサ203の撮影及び測距データを取得しており、条件を満たすと、排出場所への自動移動、及び自動排出が開始され、機体が作業者が意図しない挙動を取り始める可能性がある。
【0166】
したがって、手動操作時にはヘッドモータ82と測距センサ203を停止させることが望ましいが、ヘッドカメラ82の映像は作業者が回収容器201付近の状態を把握すべく活用する可能性があるので、停止は望ましくない。
【0167】
このため、CPU200内の解析ソフトウェア等を停止させ、ヘッドモータ82や測距センサ203は使用可能な状態とする、自動排出入切スイッチ204を設けるとよい。
【0168】
これにより、作業者の操作と自動制御が干渉し合わないので、安定した移動や穀粒の排出が行え、収穫量の減少が防止される。
【0169】
なお、自動排出入切スイッチ204をオフにし忘れ、自動制御が作動してしまったときは、排出オーガ8の伸縮操作、または回動操作を作業者が行うことにより、自動制御が中断される制御構成とする。
【0170】
前記測距センサ203は、超音波等の反響で距離を算出するものであり、排出ヘッド80の前端部という、穀粒排出時の排出ヘッド80から回収容器201の現在の底部までの高さの判断に用いることが可能なものである。
【0171】
したがって、自動、手動にかかわらず、排出オーガ8が下方回動される際には測距センサ203が測距を行い、排出オーガ8の排出ヘッド80から回収容器201の現在の底部、即ち収容された穀粒の表面までの距離を算出する。この距離が所定値以内、あるいは所定値+数十センチとなったところで排出オーガ8の下方回動を、停止までに慣性で移動する距離を加味したタイミングで停止させる。
【0172】
これにより、排出ヘッド80が回収容器201の内部に入り込んだ状態で穀粒が排出されるので、穀粒が外部に零れることを防止できる。
【0173】
また、実際の停止位置よりもやや上方で排出オーガ8の下方回動の停止指示を出すことにより、急激なブレーキングで排出オーガ8が撓って穀粒が飛び散ることが防止されると共に、排出オーガ8の耐久性が低下することを防止できる。なお、排出オーガ8の下降停止は、オーガポテンショメータ87の検出値で決めるとよい。
【0174】
なお、自動下降中は手動による排出オーガ8の上下及び左右回動は一切受け付けないものとし、作業者の操作により排出高さや排出位置がかえって乱れ、穀粒が回収容器201外へ落下することが防止される。
【符号の説明】
【0175】
3 走行クローラ(走行装置)
4 脱穀装置(選別装置)
8 排出オーガ(排出装置)
15 刈取装置
80 排出ヘッド(排出先端部)
82 ヘッドカメラ(撮影装置)
85 スライドモータ(摺動アクチュエータ)
86 チルトモータ(傾動アクチュエータ)
87 オーガポテンショメータ(角度センサ)
200 CPU(制御装置)
201 回収容器
203 測距センサ(測距装置)
EA 排出可能領域