(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146445
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール、及び、太陽電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/042 20140101AFI20241004BHJP
H01L 31/05 20140101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L31/04 500
H01L31/04 570
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059345
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】前田 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】岡山 祐太
(72)【発明者】
【氏名】棚村 浩匡
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251BA11
5F251EA17
5F251EA19
5F251JA04
(57)【要約】
【課題】太陽電池モジュールの製造時に、内部に組み込まれた配線がずれる可能性を減少させた太陽電池モジュール、及び、太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】電流を取り出すためのセル配線と、モジュール外部に電流を取り出すために、セル配線の一部が集約されるように接続する出力配線と、を有し、セル配線は、1封止層に接するように配置され、出力配線は、第1封止層に接しないように配置され、かつ、前第1封止層とは厚み方向で異なる位置にある第2封止層に、セル配線とは厚み方向の反対側で接するように配置され、第1封止材及び第2封止材は、複数の太陽電池セルをモジュール内に固定するための加熱が行われた際に流動する性質を有し、セル配線と出力配線とは接続配線を介して接続されており、接続配線は、第2封止層の少なくとも一部を厚み方向で貫通するように配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルが組み合わされて構成された太陽電池モジュールであって、
前記複数の太陽電池セルから発生した電流を取り出すためのセル配線と、
前記太陽電池モジュール外部に電流を取り出すために、前記セル配線の一部が集約されるように接続する出力配線と、を有し、
前記セル配線は、第1封止材から構成される第1封止層に接するように配置され、
前記出力配線は、前記第1封止層に接しないように配置され、かつ、前記第1封止材とは別の第2封止材から構成されていて、前記第1封止層とは厚み方向で異なる位置にある第2封止層に、前記セル配線とは厚み方向の反対側で接するように配置され、
前記第1封止材及び前記第2封止材は、前記複数の太陽電池セルを前記太陽電池モジュール内に固定するための加熱が行われた際に流動する性質を有し、
前記セル配線と前記出力配線とは接続配線を介して接続されており、
前記接続配線は、前記第2封止層の少なくとも一部を厚み方向で貫通するように配置される、太陽電池モジュール。
【請求項2】
厚み方向で受光面側から裏面側に向かって、前記セル配線、前記接続配線、前記出力配線の順で、それぞれ段差を有するように重ねられている、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記複数の太陽電池セルが少なくとも直列接続されて組み合わされたセル集合体を有し、
2個の前記セル集合体が前記厚み方向に直交する平面方向に並ぶように配置されており、
前記2個のセル集合体において隣接した関係にある辺に各々沿って、前記セル配線のうちで一つの極性を有する中央側セル配線が2本配置されており、
2本の前記中央側セル配線に対し、受光面に対して正対視した場合で挟まれるように前記出力配線が配置されており、
2本の前記中央側セル配線と前記出力配線とが同電位に設定されている、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
2本の前記中央側セル配線と前記出力配線の各々が、受光面に対して正対視した場合で平行に延びるように配置されている、請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記セル配線は、前記中央側セル配線と反対の極性である回り込みセル配線を有し、
前記回り込みセル配線は、前記セル集合体において他のセル集合体とは反対側に位置する辺に沿う部分から、前記辺に連続した側辺に沿う部分を経て、前記2個のセル集合体の間まで連続している、請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
一方の前記セル集合体に、複数の前記太陽電池セルが組み合わされているものの発電に寄与しないダミーセル部が設けられる場合、
他方の前記セル集合体の、一方の前記セル集合体とは回転対称となる位置にもダミーセル部が配置される、請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
複数の太陽電池セルが組み合わされて構成された太陽電池モジュールを製造するための製造方法であって、
前記複数の太陽電池セルから発生した電流を取り出すためのセル配線と、前記太陽電池モジュール外部に電流を取り出すために、前記セル配線の一部が集約されるように接続する出力配線と、を用意し、
前記複数の太陽電池セル及び接続状態とされた前記セル配線の受光面側に、シート状の第1封止材を配置し、
前記複数の太陽電池セルと接続状態とされた前記出力配線との間に、前記第1封止材とは別であるシート状の第2封止材を配置すると共に、前記セル配線と前記出力配線とを接続する接続配線を、前記第2封止材に対して厚み方向で貫通するように配置し、
前記第1封止材及び前記第2封止材を加熱により流動するまで軟化させることで、前記複数の太陽電池セルの受光面側に第1封止層を形成するとともに裏面側に第2封止層を形成する、太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の太陽電池セルが組み合わされて構成された太陽電池モジュール、及び、太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の太陽電池セルを一列に並べて電気的に接続したストリングを備えた太陽電池モジュールが提案されている(特許文献1)。
図4に示すように、太陽電池モジュール901は、第1保護部材920、第2保護部材930、第1封止材940、第2封止材950、第3保護部材960及び中間膜970を備える。また、太陽電池モジュール901は、複数のストリングSの間を電気的に接続する接続部材912と、複数の太陽電池セル910から電力を出力するために外部に延出する出力配線913と、を備える。
【0003】
この太陽電池モジュール901では、ストリングSの受光面側(
図4における上側)に第1保護部材920が配置され、ストリングSと第1保護部材920との間に第1封止材940が充填されている。また、ストリングSの裏面側(
図4における下側)に第2保護部材930が配置され、ストリングSと第2保護部材930との間に第2封止材950が充填されている。さらに、第3保護部材960は、第1保護部材920の表面側に中間膜970を介して積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の太陽電池モジュール1では、ストリングS間を接続する接続部材912と出力配線913が封止材940,950により形成される同一層にある。このため、太陽電池モジュール1の製造に当たり加熱された封止材940,950の流動の影響を受けて、接続部材912と出力配線913との相互関係が変わるように位置ずれする可能性があった。この位置ずれにより、設計通りの位置に配線ができなかったり、接続不良の原因になったりすることがある。
【0006】
本発明は、太陽電池モジュールの製造時に、モジュール製造中のセル封止工程において、内部に組み込まれた配線がずれてしまう可能性を減少させた太陽電池モジュール、及び、太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の太陽電池モジュールは、
複数の太陽電池セルが組み合わされて構成された太陽電池モジュールであって、
前記複数の太陽電池セルから発生した電流を取り出すためのセル配線と、
前記太陽電池モジュール外部に電流を取り出すために、前記セル配線の一部が集約されるように接続する出力配線と、を有し、
前記セル配線は、第1封止材から構成される第1封止層に接するように配置され、
前記出力配線は、前記第1封止層に接しないように配置され、かつ、前記第1封止材とは別の第2封止材から構成されていて、前記第1封止層とは厚み方向で異なる位置にある第2封止層に、前記セル配線とは厚み方向の反対側で接するように配置され、
前記第1封止材及び前記第2封止材は、前記複数の太陽電池セルを前記太陽電池モジュール内に固定するための加熱が行われた際に流動する性質を有し、
前記セル配線と前記出力配線とは接続配線を介して接続されており、
前記接続配線は、前記第2封止層の少なくとも一部を厚み方向で貫通するように配置される。
【0008】
かかる構成によれば、複数の太陽電池セルをモジュール内に固定するための加熱が行われた際に各封止材が流動しても、出力配線については第1封止材の流動の影響を受けないようにできる。また、出力配線は第2封止材に対し、セル配線とは厚み方向の反対側で接するように配置されているから、セル配線と出力配線とが第2封止材で隔てられたように配置されることになる。この位置関係により、セル配線及び出力配線に対する第2封止材の流動の影響を軽減できる。このように、各配線が受ける各封止材の流動の影響を軽減できるため、太陽電池モジュール内に組み込まれた各配線がずれてしまう可能性を減少させられる。
【0009】
前記太陽電池モジュールでは、
厚み方向で受光面側から裏面側に向かって、前記セル配線、前記接続配線、前記出力配線の順で、それぞれ段差を有するように重ねられていてもよい。
【0010】
かかる構成によれば、各配線が重ねられるような配置により、セル配線、出力配線間に接続配線を介在させやすく、接続不良が生じにくい。
【0011】
前記太陽電池モジュールは、
前記複数の太陽電池セルが少なくとも直列接続されて組み合わされたセル集合体を有し、
2個の前記セル集合体が前記厚み方向に直交する平面方向に並ぶように配置されており、
前記2個のセル集合体において隣接した関係にある辺に各々沿って、前記セル配線のうちで一つの極性を有する中央側セル配線が2本配置されており、
2本の前記中央側セル配線に対し、受光面に対して正対視した場合で挟まれるように前記出力配線が配置されており、
2本の前記中央側セル配線と前記出力配線とが同電位に設定されていてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、中央側セル配線と出力配線とが同電位なので、各配線間に絶縁手段を介在させる必要がなく、太陽電池モジュールの構成を簡単にできる。
【0013】
前記太陽電池モジュールでは、
2本の前記中央側セル配線と前記出力配線の各々が、受光面に対して正対視した場合で平行に延びるように配置されていてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、中央側セル配線と出力配線とは厚み方向で別の位置にあるため、各配線の平行の間隔を縮め、2個のセル集合体の間隔を詰めることができるので、その分、太陽電池モジュールを小型化できる。
【0015】
前記太陽電池モジュールでは、
前記セル配線は、前記中央側セル配線と反対の極性である回り込みセル配線を有し、
前記回り込みセル配線は、前記セル集合体において他のセル集合体とは反対側に位置する辺に沿う部分から、前記辺に連続した側辺に沿う部分を経て、前記2個のセル集合体の間まで連続していてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、回り込みセル配線がセル集合体を横切ることがないので、太陽電池モジュールに回り込みセル配線の取り出し加工を行う際のダメージを与えにくい。
【0017】
前記太陽電池モジュールでは、
一方の前記セル集合体に、複数の前記太陽電池セルが組み合わされているものの発電に寄与しないダミーセル部が設けられる場合、
他方の前記セル集合体の、一方の前記セル集合体とは回転対称となる位置にもダミーセル部が配置されてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、太陽電池モジュールの外形寸法が納入先に指定されている等の理由でダミーセル部を設ける必要がある場合、平面方向で並ぶ2個のセル集合体において回転対称となる各位置にダミーセル部を設けることで、各セル集合体で電流を取り出す配線を回転対称形状、すなわち同一形状とできる。また、太陽電池モジュール全体の美観を整えることができる。
【0019】
本発明の太陽電池モジュール製造方法では、
複数の太陽電池セルが組み合わされて構成された太陽電池モジュールを製造するための製造方法であって、
前記複数の太陽電池セルから発生した電流を取り出すためのセル配線と、前記太陽電池モジュール外部に電流を取り出すために、前記セル配線の一部が集約されるように接続する出力配線と、を用意し、
前記複数の太陽電池セル及び接続状態とされた前記セル配線の受光面側に、シート状の第1封止材を配置し、
前記複数の太陽電池セルと接続状態とされた前記出力配線との間に、前記第1封止材とは別であるシート状の第2封止材を配置すると共に、前記セル配線と前記出力配線とを接続する接続配線を、前記第2封止材に対して厚み方向で貫通するように配置し、
前記第1封止材及び前記第2封止材を加熱により流動するまで軟化させることで、前記複数の太陽電池セルの受光面側に第1封止層を形成するとともに裏面側に第2封止層を形成する。
【発明の効果】
【0020】
以上より、本発明によれば、太陽電池モジュールの製造時に、モジュール製造中のセル封止工程において、内部に組み込まれた配線がずれてしまう可能性を減少させた太陽電池モジュール、及び、太陽電池モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、従来の太陽電池モジュールの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の太陽電池モジュールについて、
図1~
図3を参照しつつ説明する。太陽電池モジュール1は、
図1に示すように、複数の太陽電池セル20が組み合わされて構成された太陽電池モジュールである。本実施形態では、太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池セル20で構成されたセル集合体2を有する。また、太陽電池モジュール1は、
図2に示すように、複数の太陽電池セル20から発生した電流を取り出すためのセル配線3と、太陽電池モジュール1の外部に電流を取り出すために、セル配線3の一部が集約されるように接続する出力配線4と、を有する。太陽電池モジュール1は、板状であり、例えば、受光面側を上方(例えば太陽側)に向けた状態で、民家等の建物の屋根に設置される。
【0023】
この太陽電池モジュール1は、後述するように、
図3に示すように各層を積層した後、熱処理を行うことで得られる。太陽電池モジュール1は、第1封止材5から構成される第1封止層と、第1封止材5とは別の第2封止材6から構成される第2封止層と、を有する。また、太陽電池モジュール1は、セル配線3と出力配線4とを接続する接続配線7を有する。太陽電池モジュール1は、第1封止材5及び第2封止材6とは別の第3封止材8から構成される第3封止層を有する。さらに、太陽電池モジュール1は、遮蔽層9、第1保護層10、第2保護層11、及び、第4封止材12から構成される第4封止層を有する。遮蔽層9は太陽電池モジュール1の配線を受光面側から見えにくくする為の層であり、なくても構わない。この場合、遮蔽層9及び、第3封止材8をなくしても構わない。
【0024】
第1封止材5及び第2封止材6は、シート状であって、複数の太陽電池セル20を太陽電池モジュール1内に固定するための加熱が行われた際に流動する性質を有する。本実施形態では、第3封止材8も、シート状であって、複数の太陽電池セル20を太陽電池モジュール1内に固定するための加熱が行われた際に流動する性質を有する。第4封止材12も、シート状である。
【0025】
セル集合体2は、複数の太陽電池セル20が少なくとも直列接続されて組み合わされた集合体である(
図1参照)。また、セル集合体2は、少なくとも1個配置されており、本実施形態では、2個配置されている。具体的に、セル集合体2が厚み方向に直交する平面方向(
図1では上下方向)に並ぶように配置されている。なお、太陽電池モジュール1には、セル集合体2が、1個または3個以上の複数個配置されていてもよい。セル集合体2は、例えば、4つの辺で囲まれた矩形状である。
【0026】
各セル集合体2では、複数(例えば、35個)の太陽電池セル20が直列接続されて構成された太陽電池ストリングSが、複数(例えば、6個)並列接続されて組み合わされている。本実施形態では、各セル集合体2に、並列接続されていない太陽電池ストリングSが少なくとも1個ずつ(例えば2個)設けられている。各セル集合体2において、互いに並列接続された太陽電池ストリングSが配置された領域が、発電に寄与する発電エリアA1,A2である。また、並列接続された以内太陽電池ストリングSが配置された領域が、発電に寄与しないダミーセル部D1,D2である。なお、各セル集合体2に含まれる太陽電池セル20のサイズ、数、接続方法、配置等は同じである。
【0027】
太陽電池セル20は、受光により発電する細長形状(具体的には、長方形の板状)の発電セルである。本実施形態では、複数の太陽電池セル20がシングリング接続により一体化されることで太陽電池ストリングSが形成されている。シングリング接続とは、細長形状の太陽電池セル20を、屋根板を葺くようにして、各太陽電池セル20における長辺が重なるように順次配置していくことによる直列接続である。太陽電池セル20には、極性の異なる電極パターンが形成されている。
【0028】
セル配線3は、各太陽電池ストリングSに接続されることにより、各太陽電池セル20から発生した電流を取り出す配線である。セル配線3は、扁平な形状である。本実施形態では、2個のセル集合体21、22において隣接した関係にある辺210、220に各々沿って、セル配線3のうちで一つの極性を有する中央側セル配線30,31が2本配置されている。また、セル配線3は、第1封止層に接するように配置されている(
図3参照)。具体的に、セル配線3は、第1封止層に受光面側で接している。
【0029】
出力配線4は、2本のセル配線3に対して部分的に接続される配線である。具体的に、出力配線4は、一方のセル配線3(本実施形態では、中央側セル配線30)の一部及び他方のセル配線3(本実施形態では、中央側セル配線31)の一部の両方に接続されることにより、これらのセル配線30、31の電流を集約して取り出す配線である。出力配線4は、扁平な形状である。なお、出力配線4は、セル配線30、31に対して接続配線7を介して接続されている。
【0030】
また、出力配線4は、第1封止層に接しないように配置されている。さらに、出力配線4は、第1封止層とは厚み方向で異なる位置(例えば、裏面側)にある第2封止層に、セル配線3とは厚み方向の反対側(例えば、裏面側)で接するように配置されている。なお、厚み方向とは、太陽電池モジュール1の厚み方向である。
【0031】
接続配線7は、両端部70、71がセル配線3(本実施形態では、中央側セル配線30,31)に接続され、中間部72が出力配線4に接続されることで、セル配線3と出力配線4とを接続する1本の配線である。接続配線7は、扁平な形状である。本実施形態では、接続配線7の両端部70、71がセル配線3の受光面側に接続され、接続配線7の中間部72が出力配線4の受光面側に接続されている。なお、接続配線7の両端部70、71は、セル配線3の裏面側に接続されてもよい。
【0032】
また、接続配線7は、第2封止層の少なくとも一部を厚み方向で貫通するように配置される。本実施形態では、接続配線7の中間部72を除く部位が、第2封止層を厚み方向で貫通している。また、製造途中のシート状体では、接続配線7はシート状の第2封止材6を完全に貫通しているが、熱による軟化後は、流動した第2封止材6が中間部72の周囲に回り込むことになる。この状態においても、接続配線7のうち第2封止材6を貫通していた部分は、第2封止層の形成後も貫通した状態を取る。
【0033】
この太陽電池モジュール1では、出力配線4が第1封止層に接しないように配置されているため、複数の太陽電池セル20を太陽電池モジュール1内に固定するための加熱が行われた際に、第1封止材5が流動しても、出力配線4については第1封止材5の流動の影響を受けないようにできる。また、出力配線4は第2封止材6に対し、セル配線3とは厚み方向の反対側で接するように配置されているから、セル配線3と出力配線4が第2封止材6で隔てられたように配置されることになる。この位置関係により、セル配線3及び出力配線4に対する第2封止材6の流動の影響を軽減できる。このように、セル配線3及び出力配線4が受ける各封止材5、6の流動の影響を軽減できるため、太陽電池モジュール1内に組み込まれたセル配線3及び出力配線4がずれてしまう可能性を減少させられる。また、出力配線4と配線3を接続する配線は、それぞれをひっかけるような形状で接合させる構造となっている為、温度変化等により接続配線7が引っ張られる方向に力がかかった場合であっても、接合部が外れにくい利点を有する。
【0034】
遮蔽層9は、例えば、太陽電池セル20に接続されたセル配線3を隠して、太陽電池モジュール1の外観を整えるために設けられている。この遮蔽層9は、例えば、各セル集合体2をそれぞれ囲む枠状に形成されている。また、遮蔽層9は、入射光を遮蔽または入射光のうちある程度の光を透過する(減光する)層である。本実施形態の太陽電池モジュール1では、遮蔽層9は、黒色の塗膜やフィルム等であるが、他の色の塗膜やフィルム等であってもよい。具体的に、遮蔽層9は、黒色のポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムである。
【0035】
第1保護層10は、第1封止層及び第3封止層を介して、太陽電池セル20の受光面を覆うことにより、太陽電池セル20を保護する。第2保護層11は、第2封止層及び第4封止層12を介して、太陽電池セル20の裏面を覆うことにより、太陽電池セル20を保護する。
【0036】
第1保護層10及び第2保護層11は、例えば、ガラス板である。なお、第1保護層10は、透明樹脂製の板であってもよい。また、第2保護層11は、透明樹脂製のシートや不透明な樹脂製のシートであってもよい。
【0037】
各封止層は、太陽電池セル20を封止して保護する。第1封止材5、第2封止材6、第3封止材8としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又は、シリコーン樹脂等の透光性を有する熱可塑性樹脂製のシートが用いられる。各封止材5、6、8は、同じ材質で形成されているが、異なる材質で形成されてもよい。第4封止材12は、アイオノマー製のシートであり、例えば、黒色のアイオノマー製のシートである。
【0038】
第1封止層は、第1封止材5が加熱の際に流動する性質を有するため、流動したその一部が太陽電池モジュール1内に存在する空間を埋め、太陽電池セル20に受光面側で密着し、セル配線3に受光面側で密着する。また、第2封止層は、第2封止材6が加熱の際に流動する性質を有するため、太陽電池セル20に裏面側で密着し、出力配線4に受光面側で密着する。これにより、第1封止層及び第2封止層は、太陽電池セル20の受光面及び裏面に加えて、端面(外周)も覆う。具体的に、第1封止層及び第2封止層は、太陽電池セル20の受光面、裏面、及び、端面を連続して覆うことにより、太陽電池セル20を水から保護できる。第3封止層は、第3封止材8が加熱の際に流動する性質を有するため、遮蔽層9に受光面側で密着し、セル配線3に受光面側で密着する。
【0039】
また、この太陽電池モジュール1では、厚み方向で受光面側から裏面側に向かって、セル配線3、接続配線7、出力配線4の順で、それぞれ段差を有するように重ねられている。このように、セル配線3、接続配線7、出力配線4が順に重ねられるような配置により、セル配線3、出力配線4間に接続配線7を介在させやすく、接続不良が生じにくい。
【0040】
図1に示すように、中央側セル配線30、31は、セル集合体21,22の間隔に配置されている。また、
図2に示すように、2本の中央側セル配線30,31に対し、受光面に対して正対視した場合で挟まれるように出力配線4が配置されている。さらに、2本の中央側セル配線30,31と出力配線4とが同電位に設定されている。この構成では、2本の中央側セル配線30,31と出力配線4とが同電位なので、各配線間(中央側セル配線30と出力配線4間、及び、中央側セル配線31と出力配線4間)に絶縁手段を介在させる必要がなく、太陽電池モジュール1の構成を簡単にできる。
【0041】
本実施形態では、2本の中央側セル配線30,31と出力配線4の各々が、受光面に対して正対視した場合で平行に延びるように配置されている。これらの配線30、31、4は、例えば、太陽電池セル20の長手方向に沿って直線状に延びている。この構成では、中央側セル配線30,31と出力配線4は厚み方向で別の位置にある、本実施形態では、中央側セル配線30,31は、出力配線4よりも受光面側に配置されている。そのため、中央側セル配線30,31の平行の間隔(本実施形態では、太陽電池ストリングSの接続方向におけるの中央側セル配線30,31の間隔)を、例えば、
図3で示したものよりさらに縮め、中央側セル配線30,31と出力配線4とを厚み方向で一部が重なるようにすることで、2個のセル集合体2の間隔を詰めることができるので、その分、太陽電池モジュール1を小型化できる。
【0042】
セル配線3は、中央側セル配線30,31と反対の極性である回り込みセル配線32、33を有する(
図1参照)。回り込みセル配線32、33は、セル集合体21,22の外側から回り込み、セル集合体21、22の間隔まで延びている。本実施形態では、回り込みセル配線32、33が2本配置されている。
【0043】
回り込みセル配線32は、セル集合体21において他のセル集合体22とは反対側に位置する辺211に沿う第1部分321から、この辺211に連続した側辺212に沿う第2部分322を経て、2個のセル集合体21、22の間の第3部分323まで連続している。また、回り込みセル配線33は、セル集合体22において他のセル集合体21とは反対側に位置する辺221に沿う第1部分331から、この辺221に連続した側辺222に沿う第2部分332を経て、2個のセル集合体21、22の間の第3部分333まで連続している。回り込みセル配線32、33がセル集合体2を横切ることがないので、太陽電池モジュール1に配線取り出し加工として、第2保護層11(ガラス板の場合)に穴開け加工を行う際にダメージを与えにくい。
【0044】
本実施形態では、回り込みセル配線32,33のうち、セル集合体21,22の間の第3部分323、333は、2本の中央側セル配線30,31の間に配置されている。回り込みセル配線32,33の第3部分323、333は、出力配線4と略一直線上に配置されている。さらに、また、回り込みセル配線32,33の第3部分323、333、2本の中央側セル配線30,31、及び、出力配線4の各々が、受光面に対して正対視した場合で平行に延びるように配置されている。
【0045】
また、本実施形態では、一方のセル集合体21に、複数の太陽電池セル20が組み合わされているものの発電に寄与しないダミーセル部D1が設けられる。この場合、他方のセル集合体22の、一方のセル集合体21とは回転対称となる位置にもダミーセル部D2が配置される。具体的に、ダミーセル部D1は、一方のセル集合体21の太陽電池ストリングSの並び方向の一方側の端部(
図1における左端部)に配置されている。また、ダミーセル部D2は、他方のセル集合体22の太陽電池ストリングSの並び方向の他方側の端部(
図1における右端部)右端部に配置されている。太陽電池モジュール1の外形寸法が納入先に指定されている等の理由でダミーセル部を設ける必要がある場合、平面方向で並ぶ2個のセル集合体21,22において回転対称となる各位置にダミーセル部D1,D2を設けることで、各セル集合体21,22で電流を取り出すセル配線3を回転対称形状、すなわち同一形状とできる。また、太陽電池モジュール全体の美観を整えることができる。さらに、セル配線3を上下に引き回すことにより、太陽電池モジュール1においてダミーセル部D1,D2が左右点対称の配置となり、セル配線3が交差する箇所が出てこないシンプルな構造とすることができる。
【0046】
本実施形態では、太陽電池モジュール1に発電エリアA1,A2からの電流をそれぞれ取り出すための端子ボックスB1,B2が設けられている。なお、端子ボックスB1,B2内には、太陽電池セル20に影がかかった場合に逆バイアス電圧がこのセルに印加されることによる発熱を防ぐために設けられた図示しないバイパスダイオードが配置されている。
【0047】
以下、この太陽電池モジュール1を製造するための製造方法について、
図3を用いて説明する。まず、複数の太陽電池セル20から発生した電流を取り出すためのセル配線3と、太陽電池モジュール1の外部に電流を取り出すために、セル配線3の一部が集約されるように接続する出力配線4と、を用意する。また、複数の太陽電池セル20及び接続状態とされたセル配線3の受光面側に、シート状の第1封止材5を配置する。さらに、複数の太陽電池セル20と接続状態とされた出力配線4との間に、第1封止材5とは別であるシート状の第2封止材6を配置すると共に、セル配線3と出力配線4とを接続する接続配線7を、第2封止材6に対して厚み方向で貫通するように配置する。本実施形態では、複数の太陽電池セル20を少なくとも直列接続されて組み合わされたセル集合体2を用いる。
【0048】
本実施形態では、第1封止材5の受光面側に、第1封止材5及び第2封止材6とは別であるシート状の第3封止材8を配置する。このとき、第1封止材5の受光面側と第3封止材8との間に、遮蔽層9を配置してもよい。さらに、第1封止材5の受光面側(具体的には、第3封止材8を介した第1封止材5の受光面側)に第1保護層10を配置する。また、第3封止材8及び出力配線4の裏面側に、第2保護層11や第4封止材12を配置する。この状態で、加熱と共に加圧を行うことで、太陽電池モジュール1を成形する。この具体的な手法は、公知の手法を採用できる。
【0049】
さらに、第1封止材5及び第2封止材6を加熱により流動するまで軟化させることで、複数の太陽電池セル20の受光面側に第1封止層を形成するとともに裏面側に第2封止層を形成する。本実施形態では、この加熱の際に、第3封止材8を流動するまで軟化させることで、太陽電池セル20の受光面側に第1封止層とともに第3封止層を形成する。
【0050】
なお、本発明の太陽電池モジュールは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0051】
上記実施形態のセル集合体2では、複数の太陽電池セル20が直列接続及び並列接続されて組み合わされていたが、少なくとも直列接続されていればよい。例えば、セル集合体2が、複数の太陽電池セルが直列接続された1個の太陽電池ストリングSのみで構成されていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、中央側セル配線30,31に対し、受光面に対して正対視した場合で挟まれるように出力配線4が配置されている構成において、2本の中央側セル配線30,31と出力配線4とが同電位に設定されていたが、複数の太陽電池セル20の配置の仕方によっては、異なる電位に設定されていてもよい。この構成では、各配線間(中央側セル配線30と出力配線4間、及び、中央側セル配線31と出力配線4間)に絶縁手段(絶縁シート等)を介在させることが考えられる。
【0053】
上記実施形態では、接続配線7は、1本で中央側セル配線30,31と出力配線4とを接続する構成であったが、2本設けられてもよい。例えば、2本の接続配線7のうち、一方の接続配線7が中央側セル配線30と出力配線4とを接続し、他方の接続配線7が中央側セル配線31と出力配線4とを接続してもよい。
【0054】
上記実施形態の太陽電池モジュール1は、例えば、主面(受光面)側を上方に向けた状態で設置されていたが、例えば、民家の外壁等の垂直面またはそれに近い面(例えば、垂直面に対して15°以内で傾斜した面)に対して取り付けられてもよい。
【0055】
上記実施形態の太陽電池ストリングSでは、太陽電池セル20が、短冊状とされており、複数の太陽電池セル20がシングリング接続により直列接続されていたが、複数の太陽電池セル20はシングリング接続されておらず、配線材によって直列接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…太陽電池モジュール、2…セル集合体、3…セル配線、4…出力配線、5…第1封止材、6…第2封止材、7…接続配線、8…第3封止材、9…遮蔽層、10…第1保護層、11…第2保護層、12…第4封止材、20…太陽電池セル、21、22…セル集合体、30、31…中央側セル配線、32、33…回り込みセル配線、70、71…端部、72…中間部、210、211、212、220、221、222…辺、321、331…第1部分、322、332…第2部分、333、323…第3部分、901…太陽電池モジュール、910…太陽電池セル、912…接続部材、913…出力配線、920…第1保護部材、930…第2保護部材、940…第1封止材、950…第2封止材、960…第3保護部材、970…中間膜、A1、A2…発電エリア、B1、B2…端子ボックス、D1、D2…ダミーセル部、S…太陽電池ストリング