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特開2024-146448積層セラミック電子部品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146448
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 201N
H01G4/30 311Z
H01G4/30 512
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059348
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼井 拓夢
(72)【発明者】
【氏名】楠本 昌司
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AD02
5E001AD03
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AH02
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC31
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG52
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】衝撃に対する信頼性が高い積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】積層セラミック電子部品は、第1方向に向いた端面と、端面と連接し前記第1方向に延びる複数の周面と、第1方向に沿って延びる凹部を有し複数の周面の間を接続する稜部と、を含む保護部、保護部の内方に配置された機能部を有するセラミック素体、及び、外部電極を備える。機能部は、第1方向と直交する第2方向に積層された複数の内部電極を有する。保護部は、機能部に対し第2方向に積層されたカバー部と、機能部を第1方向と第2方向とに直交する第3方向から覆うサイドマージン部とを含む。稜部は凹部を隔てて、カバー部側に設けられた第1稜線部と、サイドマージン部側に設けられた第2稜線部とを含む。第2方向と前記第3方向とを含む断面において、第1稜線部の曲率半径R1は、第2稜線部の曲率半径R2よりも大きい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に向いた端面と、前記端面と連接し前記第1方向に延びる複数の周面と、前記第1方向に沿って延びる凹部を有し前記複数の周面の間を接続する稜部と、を含む保護部と、前記保護部の内方に配置された機能部と、を有するセラミック素体と、
前記端面を覆う下地膜と、前記下地膜上に形成されたメッキ膜と、を有する外部電極と、
を具備し、
前記機能部は、前記第1方向と直交する第2方向に積層された複数の内部電極を有し、
前記保護部は、前記機能部に対し前記第2方向に沿って積層されたカバー部と、前記機能部を前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向から覆うサイドマージン部と、を含み、
前記稜部は前記凹部を隔てて、前記カバー部側に設けられた第1稜線部と、前記サイドマージン部側に設けられた第2稜線部と、を含み、
前記第2方向と前記第3方向とを含む断面において、前記第1稜線部の曲率半径R1は、前記第2稜線部の曲率半径R2よりも大きい、
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記積層セラミック電子部品の前記第2方向の寸法は、前記積層セラミック電子部品の前記第3方向の寸法よりも大きい、
積層セラミック電子部品。
【請求項3】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1稜線部の曲率半径R1は、15μm以上25μm以下である、
積層セラミック電子部品。
【請求項4】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第2稜線部の曲率半径R2は、0μm以上20μm以下である、
積層セラミック電子部品。
【請求項5】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記下地膜は、
前記端面上に形成された第1被覆部と、前記複数の周面上にそれぞれ形成された複数の第2被覆部と、前記凹部上に形成され前記複数の第2被覆部の少なくとも一つと離間する第3被覆部と、を含み、
前記メッキ膜は、前記第1被覆部、前記複数の第2被覆部及び前記第3被覆部を連続的に覆う
積層セラミック電子部品。
【請求項6】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記機能部は、前記第1方向と直交する第2方向に積層された複数の内部電極を有し、
前記複数の内部電極は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向の端部の位置が前記第3方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている
積層セラミック電子部品。
【請求項7】
第1方向に向いた端面を有し、前記第1方向と直交する第2方向に複数の内部電極が積層され、かつ前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に向いた側面から前記複数の内部電極が露出する機能部を備え、当該機能部に対し前記第2方向に沿ってカバー部が積層されたセラミック積層チップを作製し、
前記端面と連接し前記第1方向に延びる周面と前記側面とを接続する第1稜線部を形成し、
前記側面上に積層され、前記第1方向に沿って延び、凹部を隔てて前記第1稜線部と平行に設けられた第2稜線部を備えたサイドマージン部を形成してセラミック素体を作製し、
前記セラミック積層チップと、前記サイドマージン部と、を焼成し、
前記端面を覆う下地膜と、前記下地膜上に形成されたメッキ膜と、を有する外部電極を形成し、
前記第1稜線部を形成する工程は、前記第2方向と前記第3方向とを含む断面において、前記第1稜線部の曲率半径R1が、前記第2稜線部の曲率半径R2よりも大きくする面取り加工を含む、
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記外部電極を形成する工程では、前記セラミック素体が有する前記端面上に形成された第1被覆部と、前記端面と連接し前記第1方向に延びる複数の周面上にそれぞれ形成された複数の第2被覆部と、前記凹部上に形成され前記複数の第2被覆部の少なくとも一つと縁部において離間する第3被覆部と、を含む導電性の下地膜を形成し、
前記第1被覆部、前記複数の第2被覆部及び前記第3被覆部を連続的に覆うメッキ膜を形成する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記サイドマージン部を形成する工程では、前記側面上に積層された第1サイドマージン部と、前記第1サイドマージン部上に積層され前記第1サイドマージン部よりも熱収縮率の大きい第2サイドマージン部と、を形成する、
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1サイドマージン部は、前記側面上に第1セラミックシートを貼り付けることで形成され、
前記第2サイドマージン部は、前記第1セラミックシート上に前記第1セラミックシートよりも熱収縮率の大きい第2セラミックシートを貼り付けることで形成される
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品は、機能部と、この機能部の側面に設けられた保護部を備えることがある。機能部は、複数の誘電体層と複数の内部電極とが交互に積層されて形成され、複数の内部電極は、機能部の側面から露出している。機能部の側面に設けられた保護部は、サイド部やサイドマージン部と称され、側面から露出した内部電極を覆っている。従来、機能部の側面に設けられたサイド部を備え、内部電極の末端を連結する仮想線とサイド部のなす角度が90°以下とする構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、このような構成によって、信頼性に優れた積層セラミック電子部品を提供することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-191159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成におけるサイド部は、内部電極の積層方向の端縁に向かうに従って薄くなる。このため、外部からの衝撃に対するサイド部の衝撃緩和効果が低下することが考えられる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、衝撃に対する信頼性が高い積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、積層セラミック電子部品は、第1方向に向いた端面と、前記端面と連接し前記第1方向に延びる複数の周面と、前記第1方向に沿って延びる凹部を有し前記複数の周面の間を接続する稜部と、を含む保護部と、前記保護部の内方に配置された機能部と、を有するセラミック素体と、前記端面を覆う下地膜と、前記下地膜上に形成されたメッキ膜と、を有する外部電極と、を具備し、前記機能部は、前記第1方向と直交する第2方向に積層された複数の内部電極を有し、前記保護部は、前記機能部に対し前記第2方向に沿って積層されたカバー部と、前記機能部を前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向から覆うサイドマージン部と、を含み、前記稜部は前記凹部を隔てて、前記カバー部側に設けられた第1稜線部と、前記サイドマージン部側に設けられた第2稜線部と、を含み、前記第2方向と前記第3方向とを含む断面において、前記第1稜線部の曲率半径R1は、前記第2稜線部の曲率半径R2よりも大きい。
【0007】
上記構成の積層セラミック電子部品において、前記積層セラミック電子部品の前記第2方向の寸法は、前記積層セラミック電子部品の前記第3方向の寸法よりも大きい態様とすることができる。
【0008】
また、上記構成の積層セラミック電子部品において、前記第1稜線部の曲率半径R1は、15μm以上25μm以下である態様とすることができる。
【0009】
さらに、上記構成の積層セラミック電子部品において、前記第2稜線部の曲率半径R2は、0μm以上20μm以下である態様とすることができる。
【0010】
上記構成の積層セラミック電子部品において、前記下地膜は、前記端面上に形成された第1被覆部と、前記複数の周面上にそれぞれ形成された複数の第2被覆部と、前記凹部上に形成され前記複数の第2被覆部の少なくとも一つと離間する第3被覆部と、を含み、前記メッキ膜は、前記第1被覆部、前記複数の第2被覆部及び前記第3被覆部を連続的に覆う態様とすることができる。
【0011】
また、上記構成の積層セラミック電子部品において、前記機能部は、前記第1方向と直交する第2方向に積層された複数の内部電極を有し、前記複数の内部電極は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向の端部の位置が前記第3方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている態様とすることができる。
【0012】
また、上記目的を達成するため、積層セラミック電子部品の製造方法は、第1方向に向いた端面を有し、前記第1方向と直交する第2方向に複数の内部電極が積層され、かつ前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に向いた側面から前記複数の内部電極が露出する機能部を備え、当該機能部に対し前記第2方向に沿ってカバー部が積層されたセラミック積層チップを作製し、前記端面と連接し前記第1方向に延びる周面と前記側面とを接続する第1稜線部を形成し、前記側面上に積層され、前記第1方向に沿って延び、凹部を隔てて前記第1稜線部と平行に設けられた第2稜線部を備えたサイドマージン部を形成してセラミック素体を作製し、前記セラミック積層チップと、前記サイドマージン部と、を焼成し、前記端面を覆う下地膜と、前記下地膜上に形成されたメッキ膜と、を有する外部電極を形成し、前記第1稜線部を形成する工程は、前記第2方向と前記第3方向とを含む断面において、前記第1稜線部の曲率半径R1が、前記第2稜線部の曲率半径R2よりも大きくする面取り加工を含む。
【0013】
上記構成の積層セラミック電子部品の製造方法において、前記外部電極を形成する工程では、前記セラミック素体が有する前記端面上に形成された第1被覆部と、前記端面と連接し前記第1方向に延びる複数の周面上にそれぞれ形成された複数の第2被覆部と、前記凹部上に形成され前記複数の第2被覆部の少なくとも一つと縁部において離間する第3被覆部と、を含む導電性の下地膜を形成し、前記第1被覆部、前記複数の第2被覆部及び前記第3被覆部を連続的に覆うメッキ膜を形成する態様とすることができる。
【0014】
また、上記構成の積層セラミック電子部品の製造方法において、前記サイドマージン部を形成する工程では、前記側面上に積層された第1サイドマージン部と、前記第1サイドマージン部上に積層され前記第1サイドマージン部よりも熱収縮率の大きい第2サイドマージン部と、を形成する態様とすることができる。
【0015】
さらに、上記構成の積層セラミック電子部品の製造方法において、前記第1サイドマージン部は、前記側面上に第1セラミックシートを貼り付けることで形成され、前記第2サイドマージン部は、前記第1セラミックシート上に前記第1セラミックシートよりも熱収縮率の大きい第2セラミックシートを貼り付けることで形成される態様とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、衝撃に対する信頼性が高い積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2】上記積層セラミックコンデンサのA-A´線に沿った断面図である。
図3】上記積層セラミックコンデンサのB-B´線に沿った断面図である。
図4】上記積層セラミックコンデンサのC-C´線に沿った断面図である。
図5図4の拡大断面図である。
図6】(A)は実施形態の積層セラミックコンデンサにおける第1稜線部の曲率半径と第2稜線部の曲率半径を測定する位置を示す説明図である。(B)は第1稜線部の曲率半径と第2稜線部の曲率半径の測定方法を説明する図である。(C)は第1稜線部の曲率半径と第2稜線部の曲率半径の他の測定方法を説明する図である。
図7】(A)は実施形態の積層セラミックコンデンサにおける第1稜線部と第2稜線部とを示す一部拡大断面図である。(B)は比較例の積層セラミックコンデンサにおける第1稜線部と第2稜線部とを示す一部拡大断面図である。
図8】(A)は実施形態の積層セラミックコンデンサにおいて第1稜線部と第2稜線部とを結ぶ接線がセラミック素体の主面からY軸方向に沿って延びる線分と成す角度θ1と、積層セラミックコンデンサの設置面から第2稜線部までの高さt1を示す図である。(B)は比較例の積層セラミックコンデンサにおいて第1稜線部と第2稜線部とを結ぶ接線がセラミック素体の主面からY軸方向に沿って延びる線分と成す角度θ2と、積層セラミックコンデンサの設置面から第2稜線部までの高さt2を示す図である。
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図10】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図11】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図12】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図13】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す模式的な断面図である。
図14】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す模式的な断面図である。
図15】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す模式的な断面図である。
図16】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図17】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図18】実施例と比較例の衝撃付加テストにおけるクラック発生率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。X軸方向は第1方向、Y軸方向は第3方向、Z軸方向は第2方向に相当する。
【0019】
[積層セラミックコンデンサ10の全体構成]
図1~4は、本発明の第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A´線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B´線に沿った断面図である。図4は、積層セラミックコンデンサ10の図1のC-C´線に沿った断面図である。
【0020】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、2つの外部電極14a,14bを備える。2つの外部電極14a,14bは、それぞれセラミック素体11の表面に形成されている。
【0021】
セラミック素体11は、容量形成部16と、保護部17と、を有する。保護部17は、セラミック素体11の周縁部を構成し、X軸方向を向いた2つの端面11aと、Y軸方向を向いた2つの側面11bと、Z軸方向を向いた2つの主面11cと、主面11cと側面11bとの間を接続する稜部11eと、を有する。側面11bと主面11cとは、本実施形態における複数の周面を構成する。端面11a,側面11b及び主面11cは、例えば、略平坦な面で構成されているが、丸みを帯びていても良い。
【0022】
保護部17は、詳細には、容量形成部16のZ軸方向外側に位置するカバー部18と、容量形成部16のY軸方向外側に位置するサイドマージン部19と、容量形成部16のX軸方向外側に位置するエンドマージン部20と、を有する。
【0023】
容量形成部16は、保護部17の内方に配置され、本実施形態における機能部を構成する。容量形成部16は、複数の第1内部電極12と、複数の第2内部電極13と、がセラミック層15(図2参照)を介してZ軸方向に積層されている。内部電極12,13は、いずれもX-Y平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に配置されている。
【0024】
内部電極12,13はそれぞれ、電気の良導体により形成され、積層セラミックコンデンサ10の内部電極として機能する。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金が用いられる。
【0025】
図2に示すように、第1内部電極12は、例えばセラミック素体11の端面11aの一方に引き出され、一方の外部電極14aに接続されている。第2内部電極13は、端面11aの他方に引き出され、他方の外部電極14bに接続されている。
【0026】
セラミック層15は、誘電体セラミックスによって形成されている。積層セラミックコンデンサ10では、内部電極12,13間の各セラミック層15の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0027】
また、上記誘電体セラミックスは、チタン酸バリウム系以外にも、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系、チタン酸カルシウム(CaTiO3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO)系、酸化チタン(TiO)系などであってもよい。
【0028】
保護部17も、誘電体セラミックスによって形成されている。保護部17を形成する材料は、絶縁性セラミックスであればよいが、セラミック層15と同様の組成系の材料を用いることにより、製造効率が向上するとともに、セラミック素体11における内部応力が抑制される。
【0029】
外部電極14a,14bは、それぞれ端面11aを覆うように形成された下地膜21と、下地膜21上に形成されたメッキ膜22と、を有する。下地膜21は、例えば導電性ペーストを焼成した焼き付け膜や、スパッタ膜等で構成される。メッキ膜22は、電解メッキにより形成される膜である。外部電極14a,14bの各膜は、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金で形成される。
【0030】
外部電極14a,14bの下地膜21は、端面11a上に形成された端面被覆部25と、主面11c上に形成された主面被覆部26cと、側面11b上に形成された側面被覆部26bと、後述する凹部23上に形成された凹部被覆部27と、を有する。本実施形態において、端面被覆部25は第1被覆部、主面被覆部26c及び側面被覆部26bは複数の第2被覆部、凹部被覆部27は第3被覆部をそれぞれ構成する。
【0031】
本実施形態では、下地膜21の側面被覆部26b及び主面被覆部26cが稜部11eにおいて凹部被覆部27とそれぞれ離間しており、かつ、この途切れた部分もメッキ膜22に覆われていることを特徴とする。以下、稜部11e付近の構成について詳細に説明する。
【0032】
[積層セラミックコンデンサ10の詳細な構成]
図5は、図4の拡大図であり、稜部11eとその周囲の構成を示す図である。図5では1つの稜部11eとその周囲の構成を示しているが、他の稜部11eとその周囲の構成についても同様である。
【0033】
稜部11eは、X軸方向に沿って延びる凹部23を有する。凹部23の外縁には、カバー部18側に設けられ、主面11cとの境界部を構成し、外方に凸な第1稜線部24aが形成されている。また、凹部23の外縁には、サイドマージン部19側に設けられ、側面11bとの境界部を構成し、外方に凸な第2稜線部24bが形成されている。第1稜線部24aと第2稜線部24bとは、凹部23を隔てて設けられ、いずれもX軸方向に沿って延びている。
【0034】
凹部23は、Z軸方向に切断した断面、具体的にZ軸方向とY軸方向とを含む断面において、第1稜線部24aと第2稜線部24b間を接続する直線Leを引いた場合、その直線Leからセラミック素体11の内方に陥凹する部分である。凹部23内には、直線Leから突出しないような小さな段差や凹凸が形成されていてもよい。
【0035】
第1稜線部24aは、Z軸方向とY軸方向とを含む断面において曲率半径R1を有する円弧状部分を有している。また、第2稜線部24bは、Z軸方向とY軸方向とを含む断面において曲率半径R2を有する円弧状部分を有している。第1稜線部24aの曲率半径R1は、第2稜線部24bの曲率半径R2よりも大きい。
【0036】
第1稜線部24aの曲率半径R1は、15μm以上25μm以下の範囲で適宜設定することができる。また、第2稜線部24bの曲率半径R2は、0μm以上20μm以下の範囲で適宜設定することができる。双方の範囲は重複する範囲を含んでいるが、第1稜線部24aの曲率半径R1は、第2稜線部24bの曲率半径R2よりも大きいとの条件が優先して適用され、双方の値は、この条件を充足する範囲内で設定される。なお、第2稜線部24bの曲率半径R2が0μmとは、Z軸方向とY軸方向とを含む断面において第2稜線部24bが直角であることを意味する。
【0037】
ここで、図6(A)及び図6(B)を参照して、曲率半径R1及び曲率半径R2の測定位置及び測定方法について説明する。図6(A)を参照すると、一方の外部電極14aのX軸に沿う方向の長さがL[14a]に設定されている。本実施形態において曲率半径R1及び曲率半径R2の測定位置は、外部電極14aの端面からL[14a]/2の位置とした。そのため、まず、外部電極14aの端面からL[14a]/2の位置まで積層セラミックコンデンサ10を研磨して断面を露出させる。そして、光学顕微鏡を用い、露出させた断面を撮影する。
【0038】
そして、撮影した写真に表れた第1稜線部24aや第2稜線部24bに対し、例えば、図6(B)で模式的に示すように、仮想円Vcを用いて曲率半径R1及び曲率半径R2を測定することができる(第1の方法)。曲率半径R1と曲率半径R2は、同様の要領で測定することができる。ここでは、第1稜線部24aの曲率半径R1の測定について説明する。まず、写真に表れた第1稜線部24aの輪郭上に第1点P1、第2点P2及び第3点P3の3点を設定する。第1点P1は、以下の要領で設定する。主面11cに沿ってY軸方向に延びる仮想線L1を設定する。第1点P1は、この仮想線L1が第1稜線部24aから離れる位置に設定する。第2点P2は、第1稜線部24aの第1点P1とは反対側の端部に設定する。第3点P3は、第1稜線部24aの頂点に設定する。第1稜線部24aの頂点(第3点P3)は、以下の要領で特定する。第2点P2を通過し、Z方向に延びる仮想線L2を設定する。仮想線L1と仮想線L2とは直交する。仮想線L1と仮想線L2との交点を通過し、仮想線L1からの角度がθ=45°となる仮想線L3を設定する。仮想線L3と第1稜線部24aの輪郭との交点が第1稜線部24aの頂点であると特定し、この点に、第3点P3を設定する。
【0039】
そして、第1点P1~第3点P3との一致度が所定値以上となる仮想円Vcを設定し、その仮想円Vcの有する半径を曲率半径R1とする。第2稜線部24bの曲率半径R2についても同様の要領で測定することができる。この場合、仮想線L1は、第1稜線部24a側からY軸方向に延び、第2仮想線L2は側面11bに沿ってZ軸方向に延びるように設定される。
【0040】
曲率半径R1及び曲率半径R2は、他の方法によって測定することもできる。例えば、図6(C)に示すように、種々の半径Rnの仮想円Vcを第1稜線部24aの輪郭や第2稜線部24bの輪郭と重ねる。そして、第1稜線部24aや第2稜線部24bの輪郭と、仮想円Vcとの一致度が所定値以上となった場合、その仮想円Vcの有する半径を曲率半径R1及び曲率半径R2としてもよい(第2の方法)。
【0041】
曲率半径R1及び曲率半径R2は、上述の第1の方法または第2の方法のいずれかの方法で測定することができる。本実施形態は、第1の方法で測定された曲率半径R1及び曲率半径R2が上述の関係を満たしている場合と、第2の方法で測定された曲率半径R1及び曲率半径R2が上述の関係を満たしている場合の双方が含まれる。つまり、第1の方法で測定された曲率半径R1及び曲率半径R2が上述の関係を満たしているが、第2の方法で測定された曲率半径R1及び曲率半径R2が上述の関係を満たしてない場合であっても、本実施形態に含まれる。これとは逆に、第1の方法で測定された曲率半径R1及び曲率半径R2が上述の関係を満たしてないが、第2の方法で測定された曲率半径R1及び曲率半径R2が上述の関係を満たしている場合も、本実施形態に含まれる。もちろん、第1の方法で測定された曲率半径R1及び曲率半径R2が上述の関係を満たし、第2の方法で測定された曲率半径R1及び曲率半径R2が上述の関係を満たしている場合は、本実施形態に含まれる。
【0042】
なお、測定位置は一例であり、X軸方向に沿った他の位置を測定位置としてもよいし、複数の位置を測定位置としてもよい。複数個所の測定を行った場合は、その平均値を採用してもよい。
【0043】
上述のように、主面11c上には下地膜21の主面被覆部26cが形成され、側面11b上には下地膜21の側面被覆部26bが形成される。凹部23上には、下地膜21の凹部被覆部27が形成される。凹部被覆部27は、稜部11eにおいて、主面被覆部26c及び側面被覆部26bの少なくとも一方と離間している。本実施形態では、凹部被覆部27は、主面被覆部26c及び側面被覆部26bの双方と離間している。
【0044】
メッキ膜22は、本実施形態において、複数の層構造を有する。メッキ膜22は、下地膜21上に形成された中間膜28と、中間膜28上に形成された表層膜29と、を有する。中間膜28及び表層膜29は、下地膜21の端面被覆部25、主面被覆部26c、側面被覆部26b及び凹部被覆部27の全体を連続的に覆っている。中間膜28と表層膜29を構成する金属材料は同一でもよいし異なっていてもよい。当該金属材料は、例えば、銅、ニッケル、錫又はこれらの合金から選択されてもよい。
【0045】
下地膜21が相互に離間する主面被覆部26c、側面被覆部26b及び凹部被覆部27を有することで、温度変化によって生じるセラミック素体11のクラック等の欠陥を防止することができる。
【0046】
下地膜21を構成する電極材料と、セラミック素体11を構成するセラミック材料とは、線膨張係数が異なる。これにより、下地膜21の焼き付け後や実装後の発熱後の冷却時に、下地膜21がセラミック素体11よりも大きく収縮し、下地膜21に引張応力が生じる。一方で、セラミック素体11には、当該引張応力に起因した圧縮応力が生じる。
【0047】
下地膜21の主面被覆部26cには、例えばY軸方向内方に向かう引張応力が生じる。下地膜21の側面被覆部26bには、例えばZ軸方向内方に向かう引張応力が生じる。これにより、稜部11e付近の下地膜21には、異なる方向に向かう引張応力が生じることとなる。
【0048】
本実施形態では、主面被覆部26cと側面被覆部26bとが離間している。これにより、上記引張応力が生じた場合にも、下地膜21に応力が蓄積されることがない。したがって、セラミック素体11に大きな圧縮応力が生じてセラミック素体11にクラック等の欠陥が生じることを防止できる。
【0049】
さらに、本実施形態では、凹部23上に凹部被覆部27が形成される。凹部被覆部27により、下地膜21の電極材料が凹部23内に留まり、下地膜21間の離間幅を最小限に抑えることができる。
【0050】
本実施形態では、凹部23内に留まった電極材料により凹部被覆部27が形成される。これにより、下地膜21における主面被覆部26c又は側面被覆部26bと凹部被覆部27との離間幅を規制し、メッキ膜22が下地膜21全体を連続的に被覆することができる。これにより、外部電極14a,14bとセラミック素体11との間の隙間の発生を防止し、絶縁不良を防止することができる。したがって、積層セラミックコンデンサ10の信頼性を高めることができる。
【0051】
ここで、第1稜線部24aの曲率半径R1が、第2稜線部24bの曲率半径R2よりも大きく設定されたことの効果について、比較例と対比しつつ、説明する。図7(A)は、一つの第1稜線部24a及び一つの第2稜線部24bの周囲を示す一部拡大断面図であり、図8(A)は、実施形態の積層セラミックコンデンサ10の断面図である。図7(B)は、一つの第1稜線部224a及び一つの第2稜線部224bの周囲を示す一部拡大断面図であり、図8(B)は比較例の積層セラミックコンデンサ50の断面図である。
【0052】
比較例の積層セラミックコンデンサ50は、実施形態の積層セラミックコンデンサ10と同様に、稜部51eを備える。また、積層セラミックコンデンサ50は、容量形成部56の周囲にカバー部58とサイドマージン部59を備える。稜部51eは、X軸方向に沿って延びる凹部53を有する。凹部53の外縁には、カバー部58側に設けられ、主面51cとの境界部を構成し、外方に凸な第1稜線部224aが形成されている。また、凹部53の外縁には、サイドマージン部59側に設けられ、側面51bとの境界部を構成し、外方に凸な第2稜線部224bが形成されている。第1稜線部224aと第2稜線部224bとは、凹部53を隔てて設けられ、いずれもX軸方向に沿って延びている。
【0053】
第1稜線部224aは、Z軸方向とY軸方向とを含む断面において円弧状部分を有している。また、第2稜線部24bは、Z軸方向とY軸方向とを含む断面において円弧状部分を有している。ここで、第1稜線部24aの曲率半径と、第2稜線部24bの曲率半径は概ね同一である。この点が実施形態の積層セラミックコンデンサ10と異なっている。
【0054】
図7(A)を参照すると、実施形態の積層セラミックコンデンサ10の稜部11eに衝撃力が加わったときの力の伝播の様子が模式的に描かれている。第1稜線部24aの曲率半径R1と第2稜線部24bの曲率半径R2が異なっている。このため、第1稜線部24aと第2稜線部24bとでは、衝撃力の入力方向が異なる。このため、セラミック素体11の内部に伝播される衝撃力がセラミック素体11内で相殺されることが期待される。この結果、容量形成部16に向かう衝撃力が緩和される。
【0055】
一方、図7(B)を参照すると、比較例の積層セラミックコンデンサ50の稜部51eに衝撃力が加わったときの力の伝播の様子が模式的に描かれている。第1稜線部224aの曲率半径と第2稜線部224bの曲率半径Rは概ね同一である。このため、第1稜線部224aと第2稜線部224bとで、衝撃力の入力方向が概ね一致する。このため、実施形態の積層セラミックコンデンサ10のように、セラミック素体51の内部に伝搬される衝撃力がセラミック素体51内で相殺される効果は低いと考えられる。
【0056】
図8(A)を参照すると、第1稜線部24aと第2稜線部24bとを結ぶ接線がセラミック素体11の主面11cからY軸方向に沿って延びる線分と成す角度θ1が示されている。また、積層セラミックコンデンサ10の設置面となる主面11cから第2稜線部24bまでの高さt1が示されている。図8(B)を参照すると、比較例について、第1稜線部224aと第2稜線部224bとを結ぶ接線がセラミック素体51の主面51cからY軸方向に沿って延びる線分と成す角度θ2が示されている。また、積層セラミックコンデンサ50の設置面となる主面41cから第2稜線部224bまでの高さt2が示されている。
【0057】
角度θ1は角度θ2よりも小さく、高さt1は高さt2よりも低い。このため、実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、比較例の積層セラミックコンデンサ50と比べて実装時に倒れにくい。
【0058】
なお、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10では、第1稜線部24aの曲率半径R1が第2稜線部24bの曲率半径Rよりも大きい。仮に、第2稜線部24bの曲率半径R2を第1稜線部24aの曲率半径R1よりも大きくすると、サイドマージン部19においてその厚さが薄くなる領域が拡大する。これは、曲率半径が大きくなると、面取りされる領域が広くなり、描かれる円弧がセラミック素体11の内方に近づくためである。本実施形態ではこれを回避するため、曲率半径R1を曲率半径R2よりも大きくしている。
【0059】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図9は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図10~17は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を模式的に示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図9に沿って、図10~17を適宜参照しながら説明する。
【0060】
(ステップS01:セラミック積層チップCの作製)
ステップS01では、容量形成部16形成用のセラミックシート101及びセラミックシート102と、カバー部18形成用のセラミックシート103と、を積層し、切断することで、未焼成のセラミック積層チップ(積層チップ)Cを作製する。
【0061】
図10に示すセラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスからなるセラミック材料と、有機バインダと、その他の添加剤と、を含む未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。セラミックシート101には、第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成される。セラミックシート102には、第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成される。セラミックシート103には、内部電極が形成されていない。
【0062】
各内部電極112,113は、X軸方向に平行な切断線Lxを横切り、かつY軸方向に平行な切断線Lyに沿って延びる複数の帯状の電極パターンを有する。これらの内部電極112,113は、印刷法等により、導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することで形成される。
【0063】
セラミックシート101,102は、図10に示すように、Z軸方向に交互に積層される。セラミックシート101,102の積層体は、容量形成部16及びエンドマージン部20に対応する。セラミックシート103は、セラミックシート101,102の積層体のZ軸方向上下面に積層される。セラミックシート103の積層体は、カバー部18に対応する。なお、セラミックシート101,102,103の積層枚数等は、適宜調整可能である。
【0064】
続いて、セラミックシート101,102,103の積層体をZ軸方向から圧着し、切断線Lx,Lyに沿って切断する。これにより、図9に示す積層チップCが作製される。
【0065】
積層チップCは、未焼成の内部電極112,113が形成された未焼成の容量形成部116と、未焼成のカバー部118と、未焼成のエンドマージン部120と、を有する。積層チップCには、切断線Lxに対応する切断面である側面Cbと、切断線Lyに対応する切断面である端面Caと、が形成される。側面Cbからは、未焼成の内部電極112,113の端部が露出している。
【0066】
(ステップS02:第1稜線部124a形成)
ステップS02では、積層チップCの側面Cbと主面Ccとを接続する辺部分に第1稜線部124aを形成する。第1稜線部124aは、焼成後の第1稜線部24aに対応する部分であり、焼成後に第1稜線部24aの曲率半径R1となるように円弧形状に加工される。本実施形態では、ノズル40を用いたブラスト加工によって面取り加工を行い、第1稜線部124aを形成する。なお、所望の円弧形状を備えた第1稜線部24aを実現することができるものであれば、従来公知の他の工法を採用してもよい。
【0067】
(ステップS03:サイドマージン部119形成)
ステップS03では、積層チップCの側面Cbにサイドマージン部119を形成する。以下、形成方法の一例を示す。
【0068】
まず、図13に示すように、平板状の弾性部材Eの上にセラミックシートの積層体である積層シートSを配置し、テープTで一方の側面Cbを保持した積層チップCの他方の側面Cbを積層シートSに対向させる。
【0069】
積層シートSは、本実施形態において、サイドマージン形成用の第1セラミックシート104、第2セラミックシート105及び第3セラミックシート106の積層構造を有する。各セラミックシート104,105,106は、セラミックシート101,102,103と同様に、セラミック材料と、有機バインダと、その他の添加剤と、を含む。
【0070】
第2セラミックシート105は、第1セラミックシート104よりも大きな熱収縮率を有する。さらに、第3セラミックシート106は、第2セラミックシート105よりも大きな熱収縮率を有する。熱収縮率は、有機バインダや添加剤の量を調整することにより調整することができる。
【0071】
次に、図14に示すように、積層チップCの側面Cbで積層シートSを打ち抜くことで、側面Cbに積層シートSを貼り付ける。具体的には、積層チップCを積層シートSに対してY軸方向に向かって強く押圧する。これにより、積層チップCが、積層シートSとともに弾性部材Eに局所的に深く沈み込む。このとき、側面Cbの外縁に沿って積層シートSにせん断力が作用し、このせん断力が積層シートSのせん断強さ以上になると、積層シートSが打ち抜かれる。
【0072】
そして、図15に示すように、積層チップCとともに沈み込んだ積層シートSの一部が切り離される。これにより、側面Cb上に積層された第1サイドマージン部119aと、第1サイドマージン部119a上に積層された第2サイドマージン部119bと、が形成される。さらに、本実施形態では、第2サイドマージン部119b上に積層された第3サイドマージン部119cが形成される。これにより、積層チップCの側面Cbに、第1サイドマージン部119a、第2サイドマージン部119b及び第3サイドマージン部119cを含む未焼成のサイドマージン部119が形成される。
【0073】
そして、他方の側面Cbについても、同様にサイドマージン部119が形成される。これにより、図16に示す未焼成のセラミック素体111が作製される。この段階では、主面111c及び側面111bの間の稜部111eに、凹部23は形成されていない。
【0074】
(ステップS04:焼成)
ステップS04では、ステップS03で得られたセラミック素体111を焼成することにより、図17及び図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。ステップS04における焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0075】
焼成により、各サイドマージン部119a,119b,119cがそれぞれ異なる割合で熱収縮する。具体的に、第2サイドマージン部119bは、第1サイドマージン部119aよりも大きな収縮量で収縮する。第3サイドマージン部119cは、第2サイドマージン部119bよりも大きな収縮量で収縮する。
【0076】
その結果、図17に示すように、セラミック素体11の稜部11eには、緩やかな段差又は傾斜が形成される。各サイドマージン部119a,119b,119cの外縁は、この順にZ軸方向内方へ収縮し、凹部23を形成する。第3サイドマージン部119cの外縁は、第2稜線部24bを形成する。
【0077】
第3サイドマージン部119cの熱収縮率を設定することで、焼成後に形成される第2稜線部24bの曲率半径R2が所望の値となるように調節ことができる。また、所望の曲率半径R2を実現するために、焼成後の第2稜線部24bに対して面取り加工を実施してもよい。面取り加工は、ブラスト工法や従来公知の工法を採用することができる。第2稜線部24bに対する加工を施すときに、その影響が第1稜線部24aに及ぶことがある。このため、ステップS02における第1稜線部24aに対する面取り加工では、第2稜線部24bに対する加工の影響を考慮した加工を行うことができる。また、第2稜線部24bに対する面取り加工は焼成前に実施してもよい。
【0078】
なお、図17では、サイドマージン部19における各サイドマージン部119a,119b,119cに対応する領域を一点鎖線で示しているが、焼成後は境界がほぼ視認できなくなる。
【0079】
(ステップS05:下地膜形成)
ステップS05では、端面11a上に形成された端面被覆部26aと、側面11b上に形成された側面被覆部26bと、主面11c上に形成された主面被覆部26cと、凹部23上に形成され側面被覆部26b及び主面被覆部26cとそれぞれ離間する凹部被覆部27と、を含む導電性の下地膜21を形成する。
【0080】
具体的に、まず、端面11aに未焼成の電極材料を塗布するとともに、端面11aに連接する側面11b、主面11c及び稜部11eの一部にも未焼成の電極材料を塗布する。塗布方法は、例えばディップ法である。ディップ法では、セラミック素体11の端面11a側を、導電性ペースト等の電極材料を含むディップ槽に浸漬させる。これにより、端面11aとほぼ同時に、側面11b、主面11c及び凹部23にも、未焼成の電極材料を塗布できる。
【0081】
未焼成の電極材料は、焼き付け後の凹部被覆部27と、側面被覆部26b及び主面被覆部26cと、が相互に離間するように、薄く塗布される。但し、塗布した時点ではこれらが離間していなくてもよい。電極材料の塗布厚みは、浸漬時間や引き上げ速度、電極材料の粘度等により調整可能である。
【0082】
なお、下地膜の形成方法はディップ法に限定されず、例えば印刷法やスパッタ法等、あるいはこれらを組み合わせた方法でもよい。
【0083】
続いて、未焼成の電極材料を焼き付ける。焼き付けは、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。焼き付け時には、各面に形成された電極材料が熱により収縮する。電極材料の収縮率は、セラミック素体11の収縮率よりも大きい。このため、各面に塗布された電極材料が、稜部11eから離間する方向に向かって引張応力を生じる。これにより、凹部被覆部27と、側面被覆部26b及び主面被覆部26cと、が相互に離間して形成される。
【0084】
(ステップS06:メッキ膜形成)
ステップS06では、端面被覆部26a、側面被覆部26b、主面被覆部26c及び凹部被覆部27を連続的に覆うメッキ膜22を形成する。具体的に、下地膜21が形成された積層セラミックコンデンサ10を、中間膜28及び表層膜29のそれぞれに対応するメッキ液に浸漬させて電解メッキを行う。これにより、中間膜28及び表層膜29の複数層を有するメッキ膜22が形成される。
【0085】
以上により、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10が製造される。本実施形態では、積層チップCにサイドマージン部119が後付けされることにより、内部電極112,113の端部の位置がY軸方向に0.5μmの範囲内で相互に揃っている。これにより、セラミック素体11内において容量形成部16の占める体積の割合を高め、積層セラミックコンデンサ10のサイズを大きくすることなく大容量化を図ることができる。
【0086】
[他の実施形態]
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0087】
各サイドマージン部19を形成するセラミックシートの枚数は3枚に限定されない。例えば、サイドマージン部19を形成するセラミックシートを2枚以上4枚以下とすることで、所望の形状の凹部23を形成できるとともに、貼り付け後のサイドマージン部19の剥がれ等の不具合を防止できる。
【0088】
例えば、以上の実施形態では異なるセラミックシートが積層された積層シートSを貼り付けることで未焼成のサイドマージン部119を形成すると説明したが、複数のセラミックシートを一枚ずつ貼り付けても良い。
【0089】
また、セラミックシートを貼り付ける方法もシートの打ち抜きに限定されず、所定のサイズに予め切断したセラミックシートを側面Cbに貼り付けてもよい。
【0090】
あるいは、サイドマージン部19は、熱収縮率の異なるセラミック材料を、積層チップCの側面Cbに層状に塗布することで形成されてもよい。これによっても、熱収縮率の異なる複数のサイドマージン部の積層構造を形成することができる。
【0091】
また、カバー部18を熱収縮率の異なる複数のセラミックシートで形成することで、凹部を形成することもできる。この場合は、内部電極の周囲にサイドマージン部分が形成された複数のセラミックシートを積層し、そのZ軸方向上下に熱収縮率が徐々に大きくなるような複数のセラミックシートを積層する。これにより、カバー部形成用のセラミックシートの外縁部に凹部を含む稜部が形成される。
【0092】
さらに、セラミック材料の熱収縮によって凹部を形成する方法に限定されず、直方体形状に形成されたセラミック素体の稜部を研削することによって凹部を形成してもよい。
【0093】
また、積層セラミックコンデンサは、Z軸方向に沿う方向の寸法がY軸方に沿う方向の寸法よりも大きい、いわゆる高背型とすることができる。
【実施例0094】
つぎに、実施例に対する衝撃付加試験の結果について、比較例と共に説明する。実施例は、実施形態の積層セラミックコンデンサ10に対応し、以下に示す寸法とされたものである。比較例は、図7(B)や図8(B)のような積層セラミックコンデンサ50を以下に示す寸法としたものである。
【0095】
以下に、衝撃付加試験の条件を示す。
設備(試験装置):
IMY株式会社製 i220
試験方法:
指定のプラスチックケースに試験対象品(積層セラミックコンデンサ)を入れて振動させる。
試験対象品寸法:
0603(長さ×幅×高さ=0.6mm×0.3mm×0.3mm)
試験対象数:
7,000個(0603形状想定)
振動周波数:
10Hz
サイクル数:
600回
評価方法:
実体顕微鏡にて目視評価(n=100個)
【0096】
試験結果を図18に示す。実施例におけるクラック発生率は概ね3%程度であった。これに対し、比較例におけるクラック発生率は概ね15%程度であった。このように、実施例は、比較例に対比して衝撃に対する信頼性が高い。
【0097】
試験に供された各試験対象品は、振動することで衝撃が付加される。比較例では、第1稜線部124aと第2稜線部124bから入力される衝撃力の方向が概ね一致する。このため、衝撃力は分散せずに、容量形成部56が存在する方向に伝搬され易いと考えられる(図8(B)参照)。この結果、クラック発生率も高いと考えられる。一方、実施例では、第1稜線部24aと第2稜線部24bから入力される衝撃力の方向が異なっている。このため、衝撃力が相殺され、容量形成部16が存在する方向に伝播される衝撃力が緩和されると考えられる(図8(A)参照)。この結果、クラック発生率が低いと考えられる。
【0098】
このように、実施例は、比較例に対比して衝撃に対する信頼性が高いことが確認された。
【0099】
上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10について説明したが、本発明はセラミック層と内部電極とが積層された積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0100】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
11a…端面
11b…側面
11c…主面
11e…稜部
12,13…内部電極
14a,14b…外部電極
21…下地膜
22…メッキ膜
23…凹部
24a…第1稜線部
24b…第2稜線部
25…第1被覆部(端面被覆部)
26b,26c…第2被覆部(側面被覆部、主面被覆部)
27…第3被覆部(凹部被覆部)
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