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特開2024-146462自閉スペクトラム症判定プログラム、自閉スペクトラム症判定方法、自閉スペクトラム症判定装置、および、機械学習方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146462
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】自閉スペクトラム症判定プログラム、自閉スペクトラム症判定方法、自閉スペクトラム症判定装置、および、機械学習方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20241004BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241004BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20241004BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20241004BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B5/11 230
A61B5/11
A61B5/00 101R
G06T7/20 300Z
G06T7/00 350B
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059368
(22)【出願日】2023-03-31
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】510136312
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立成育医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】立花 良之
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
5L096
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB02
4C038VB03
4C038VB04
4C038VC05
4C117XA01
4C117XB01
4C117XB12
4C117XD04
4C117XD06
4C117XD11
4C117XE28
4C117XE42
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA06
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA32
5L096FA33
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA30
5L096HA02
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】自閉スペクトラム症についての判定を行なう新たな技術を提供する。
【解決手段】自閉スペクトラム症判定プログラムは、1以上のコンピュータに、被疑患者と対応者とのふるまいの時系列データに基づいて、被疑患者のふるまいから対応者のふるまいへの移動エントロピーを算出する算出処理(S4)と、学習モデルに、第1移動エントロピーを入力して、被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行う判定処理(S5)と、を実行させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のコンピュータに、
被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理と、
少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルに、前記算出処理において算出した前記第1移動エントロピーを入力して、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行う判定処理と、
を実行させる、自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項2】
前記算出処理において、前記第1時系列データおよび第2時系列データに基づいて、前記対応者のふるまいから前記被疑患者のふるまいへの第2移動エントロピーをさらに算出し、
前記判定処理において、前記学習モデルに前記第2移動エントロピーをさらに入力する、請求項1に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項3】
前記第1時系列データおよび前記第2時系列データはそれぞれ、複数種類のふるまいの時系列データを含み、前記算出処理では、前記複数種類のふるまいの時系列データにそれぞれ対応する複数種類の前記第1移動エントロピーを算出し、前記判定処理では、前記学習モデルに、前記複数種類の前記第1移動エントロピーをそれぞれ入力する、請求項1に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項4】
前記第1時系列データおよび前記第2時系列データはそれぞれ、複数種類のふるまいの時系列データを含み、前記算出処理では、前記複数種類のふるまいの時系列データにそれぞれ対応する複数種類の前記第1移動エントロピーおよび前記第2移動エントロピーを算出し、前記判定処理では、前記学習モデルに、前記複数種類の前記第1移動エントロピーおよび前記第2移動エントロピーをそれぞれ入力する、請求項2に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項5】
前記複数種類のふるまいの時系列データには、視線の動きの時系列データが含まれる、請求項3または4に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項6】
前記複数種類のふるまいの時系列データには、利き腕の動きの時系列データが含まれる、請求項3または4に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項7】
前記複数種類のふるまいの時系列データには、眼輪筋の動きの時系列データが含まれる、請求項3または4に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項8】
前記複数種類のふるまいの時系列データには、発した声の声量の時系列データが含まれる、請求項3または4に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項9】
前記複数種類のふるまいの時系列データには、額の加速度の時系列データが含まれる、請求項3または4に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項10】
前記1以上のコンピュータに、
前記被疑患者に対して予め実施された自閉スペクトラム症に関する検査の評価値を取得する取得処理をさらに実行させ、
前記判定処理において、前記学習モデルに前記評価値をさらに入力する、請求項1に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項11】
前記判定処理では、自閉スペクトラム症について、前記被疑患者が臨床域、又は、正常域であるかを判定する、請求項1に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項12】
前記1以上のコンピュータに、
前記判定処理において得られた判定結果を出力する出力処理をさらに実行させる、請求項1に記載の自閉スペクトラム症判定プログラム。
【請求項13】
1以上のコンピュータが、
被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理と、
少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルに、前記算出処理において算出した前記第1移動エントロピーを入力して、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行う判定処理と、
を実行する、自閉スペクトラム症判定方法。
【請求項14】
被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理部と、
少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルに、前記算出処理部が算出した前記第1移動エントロピーを入力して、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行う判定処理部と、を備える、自閉スペクトラム症判定装置。
【請求項15】
前記被疑患者と前記対応者とがコミュニケーションしている様子を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した動画データに基づいて、前記第1時系列データおよび前記第2時系列データを生成する生成処理部と、をさらに備える、請求項14に記載の自閉スペクトラム症判定装置。
【請求項16】
1以上のコンピュータが、
被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データ、ならびに、前記被疑患者に対して予め実施された自閉スペクトラム症についての診断結果を取得する取得処理と、
前記第1時系列データおよび前記第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理と、
前記算出処理において算出した前記第1移動エントロピー、および、前記取得処理において取得した前記診断結果を含む教師データを用いた機械学習により、少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルを生成する学習処理と、
を実行する、機械学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自閉スペクトラム症判定プログラム、自閉スペクトラム症判定方法、自閉スペクトラム症判定装置、および、機械学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発達障害の一つに、自閉スペクトラム症がある。自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的コミュニケーションの欠如や、同じ動きを繰り返す反復的な行動様式などが特徴的な症状である。自閉スペクトラム症の症状は、人とのコミュニケーションの場で現れることが多いため、自閉スペクトラム症を有する疑いのある被疑患者(例えば、子ども)と、対応者(例えば、親や医師など)とのコミュニケーションをしている様子から、診断が行われている。
【0003】
特許文献1では、自閉症スペクトラム障害や自閉症スペクトラム傾向を特徴付けるコミュニケーション能力を客観的に評価する評価システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-192704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自閉スペクトラム症は患者によって多様な特性を有することが知られている。そのため、特許文献1に記載の評価システムだけでは、多様な自閉スペクトラム症を正確に判定することは難しい。ゆえに、特許文献1とは異なる手法により自閉スペクトラム症についての判定を行なう新たな技術を提供することは有用である。
【0006】
本発明の一態様は、自閉スペクトラム症についての判定を行なう新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、1以上のコンピュータに、被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理と、少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルに、前記算出処理において算出した前記第1移動エントロピーを入力して、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行う判定処理と、を実行させる。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る自閉スペクトラム症判定方法は、1以上のコンピュータが、1以上のコンピュータが、被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理と、少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルに、前記算出処理において算出した前記第1移動エントロピーを入力して、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行う判定処理と、を実行する。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る自閉スペクトラム症判定装置は、被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理部と、少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルに、前記算出処理部が算出した前記第1移動エントロピーを入力して、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行う判定処理部と、を備える。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る機械学習方法は、1以上のコンピュータが、1以上のコンピュータが、被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データ、ならびに、前記被疑患者に対して予め実施された自閉スペクトラム症についての診断結果を取得する取得処理と、前記第1時系列データおよび前記第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理と、前記算出処理において算出した前記第1移動エントロピー、および、前記取得処理において取得した前記診断結果を含む教師データを用いた機械学習により、少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルを生成する学習処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、自閉スペクトラム症についての判定を行なう新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る自閉スペクトラム症判定装置の概略構成の一例を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態1における情報処理装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態1における自閉スペクトラム症についての判定の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態1における制御部の概略構成の一例を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態1における患者DBに記憶されているデータの一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態1における動画DBに記憶されているデータの一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態1における時系列DBに記憶されているデータの一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態1における時系列DBに記憶されているデータの一例を示す図である。
図9】本発明の実施形態1における移動エントロピーDBに記憶されているデータの一例を示す図である。
図10】本発明の実施形態1における判定結果DBに記憶されているデータの一例を示す図である。
図11】本発明の実施形態1における学習モデルの一例を示す概念図である。
図12】本発明の実施形態1における出力画面の一例を示す図である。
図13】本発明の実施形態1における機械学習方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態(実施形態1)について、詳細に説明する。図1は、実施形態1に係る自閉スペクトラム症判定装置100の概略構成の一例を示す模式図である。自閉スペクトラム症判定装置100は、情報処理装置(コンピュータ)1および撮影部2を備えている。
【0014】
情報処理装置1は、例えば、PC(Personal Computer)、ノートパソコン、タブレットコンピュータ等の1以上のコンピュータによって構成することができる。撮影部2は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等の1以上のカメラによって構成することができる。撮影部2は、録画機能を有するカムコーダであってもよい。
【0015】
一態様において、自閉スペクトラム症判定装置100は、以下のように動作する。まず、撮影部2が、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)の疑いのある被疑患者3(例えば、子ども)と対応者4(例えば、保護者)とがコミュニケーションしている様子を撮影することにより動画データを生成する。なお、動画データには、音声データが含まれていてもよい。
【0016】
なお、被疑患者3は子どもに限らず成人でもよい。また、被疑患者3は、既に自閉スペクトラム症である診断された患者であってもよい。また、対応者4は被疑患者の保護者に限らず医療従事者や心理カウンセラー等でもよい。また、コミュニケーションは、バーバル(言語)コミュニケーション、ノンバーバル(非言語)コミュニケーション、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0017】
撮影部2が撮影した動画データは、情報処理装置1に入力される。撮影部2から情報処理装置1への動画データの入力はリアルタイムで行なわれてもよいし、撮影が完了した後にまとめて入力されてもよい。撮影部において、動画データをメモリカード等の記録媒体に保存し、撮影完了後にメモリカード等に保存した動画データを、情報処理装置1へ転送してもよい。
【0018】
情報処理装置1は、入力された動画データに基づいて、被疑患者3の自閉スペクトラム症についての判定を行う。情報処理装置1による判定は、例えば、自閉スペクトラム症について、被疑患者3が臨床域、又は、正常域であるかを判定するものであってもよい。
【0019】
(情報処理装置)
図2は、実施形態1における情報処理装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。情報処理装置1は制御部11、主記憶部12、補助記憶部13、表示パネル15、操作部16、映像通信部17、通信部18及び読み取り部19を備えている。これらの各部はバスBにより接続されている。
【0020】
制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の1以上の演算処理装置(プロセッサ)を有する。制御部11は、補助記憶部13に記憶された制御プログラム1P(自閉スペクトラム症判定プログラム)を読み出して実行することにより、情報処理装置1に係る種々の情報処理、制御処理等を行い、後述する取得処理部111、生成処理部112、算出処理部113、判定処理部114、出力処理部115および学習処理部116等の機能部を実現する。
【0021】
主記憶部12は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等のメモリである。主記憶部12は主として制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。例えば、制御部11が、補助記憶部13から読み出された制御プログラム1Pは、主記憶部12に展開されてもよい。
【0022】
補助記憶部13は、例えば、ハードディスク又はSSD(Solid State Drive)等であり、制御部11が処理を実行するために必要な制御プログラム1Pや各種DB(Database)を記憶する。補助記憶部13は、患者DB131、動画DB132、時系列DB133、移動エントロピーDB134及び判定結果DB135を記憶する。また、補助記憶部13は学習モデル14を記憶する。補助記憶部13の一部または全部は、情報処理装置1と別体で構成してもよく、例えば、外部接続された外部記憶装置であってもよいし、ネットワークを介して接続されたデータベースサーバやクラウドストレージであってもよい。
【0023】
表示パネル15は、液晶パネル又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成することができる。操作部16は、例えば、表示パネル15に組み込まれたタッチパネルで構成することができ、ユーザが表示パネル15上で行う所定の操作を行うことができる。また、操作部16は、表示パネル15に表示したソフトウェアキ-ボード上の操作を行うことができる。なお、操作部16は、ハードウェアキーボード、マウスなどでもよい。
【0024】
一態様において、映像通信部17は、例えば、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)規格等のインタフェースを介して、撮影部2と通信を行い、撮影部2が撮影した動画データを取り込む。また他の態様において、映像通信部17は、USB(Universal Serial Bus)規格等のインタフェースを介して、撮影部2と通信を行い、撮影部2の記憶媒体が記憶している撮影済みの動画データを読み込んでもよい。
【0025】
通信部18はネットワークを介して、他のコンピュータと通信を行う。また、制御部11が通信部18を用い、ネットワーク等を介して他のコンピュータから制御プログラム1Pをダウンロードし、補助記憶部13に記憶してもよい。
【0026】
読み取り部19はCD(Compact Disc)-ROM及びDVD(Digital Versatile Disc)-ROMを含む可搬型記憶媒体1aを読み取る。制御部11が読み取り部19を介して、制御プログラム1Pを可搬型記憶媒体1aより読み取り、補助記憶部13に記憶してもよい。また、半導体メモリ1bから、制御部11が制御プログラム1Pを読み込んでもよい。
【0027】
(自閉スペクトラム症判定方法の流れ)
図3は、実施形態1における自閉スペクトラム症判定方法の流れの一例を示すフローチャートである。本実施形態において、自閉スペクトラム症判定方法は、制御部11によって実行される。図4は、実施形態1における制御部11の概略構成の一例を示すブロック図である。制御部11は、取得処理部111、生成処理部112、算出処理部113、判定処理部114、出力処理部115および学習処理部116を備えている。
【0028】
(取得処理)
ステップS1(取得処理)において、取得処理部111は、操作部16または読み取り部19を介して、被疑患者3に関する被疑患者情報を取得する。被疑患者情報には、例えば、被疑患者3の患者ID、氏名、生年月日及び性別が含まれていてもよい。また、被疑患者情報には、被疑患者3の利き腕を示す情報が含まれていてもよい。
【0029】
また、一態様において、被疑患者情報には、被疑患者3に対して予め実施された自閉スペクトラム症に関する検査の評価値が含まれていてもよい。自閉スペクトラム症に関する検査としては、例えば、ADOS-2(Autism Diagnostic Observation Schedule Second Edition:自閉症診断観察尺度第2版)検査、ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised:自閉症診断面接尺度改訂版)検査、CARS2(Childhood Autism Rating Scale-Second Edition:小児自閉症評価尺度第2版)検査などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
取得処理部111は、取得した被疑患者情報を患者DB131に記憶させてもよい。図5は、患者DB131に記憶されているデータの一例を示す図である。患者DB131は被疑患者情報を記憶する。患者DB131は、例えば、患者ID列、氏名列、生年月日列及び性別列を含んでもよい。
【0031】
患者ID列は被疑患者3を一意に特定可能な患者IDを記憶する。氏名列は被疑患者3の氏名を記憶する。生年月日列は被疑患者3の生年月日を記憶する。性別列は被疑患者3の性別を記憶する。その他、患者DB131は、利き腕列、および、評価値列をさらに含んでいてもよい。利き腕列は被疑患者3の利き腕を記憶する。評価値列は被疑患者3に対して予め実施された自閉スペクトラム症に関する検査の評価値を記憶する。
【0032】
なお、情報処理装置1が、被疑患者情報を、HIS(Hospital Information Systems:病院情報システム)などから取得可能な場合、ステップS1および患者DB131は省略してもよい。
【0033】
ステップS2(取得処理)において、取得処理部111は、映像通信部17を介して、被疑患者3と対応者4とがコミュニケーションしているときの様子を撮影部2が撮影した動画データを取得する。また、取得処理部111は、操作部16または読み取り部19を介して、撮影部2が撮影した対象に関する付帯情報を取得してもよい。付帯情報としては、撮影日、患者ID、対応者に関する情報等が挙げられる。
【0034】
取得処理部111は、取得した動画データおよび付帯情報を動画DB132に記憶させてもよい。図6は、動画DB132に記憶されているデータの一例を示す図である。動画DB132は、撮影部2が撮影した動画データを記憶する。動画DB132は、動画ID列、撮影日列、患者ID列、対応者列及びファイル名列を含んでもよい。動画ID列は動画データを一意に特定可能な動画IDを記憶する。撮影日列は動画データの撮影日を記憶する。患者ID列は撮影対象となった被疑患者3の患者IDを記憶する。
【0035】
対応者列は被疑患者3とコミュニケーションしていた対応者4を記憶する。対応者列は、対応者4の属性(例えば、保護者(母親、父親)、医師など)を記憶してもよいし、対応者4の性別、氏名、IDなどを記憶してもよい。また、対応者列は、対応者4の利き腕を示す情報を含んでいてもよい。
【0036】
ファイル名列は動画データの実体である動画ファイルの名称を記憶する。なお、動画ファイルは情報処理装置1と異なるファイルサーバやデータベースサーバに記憶してもよい。また、PACS(Picture Archiving and Communication Systems:画像保存通信システム)に保存してもよい。この場合、動画ファイルを必要に応じて、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)形式に変換してもよい。
【0037】
(生成処理)
ステップS3(生成処理)において、生成処理部112は、撮影部2が撮影した動画データに基づいて、被疑患者3と対応者4とがコミュニケーションしているときの、被疑患者3のふるまいの時系列データ(第1時系列データ)および対応者4のふるまいの時系列データ(第2時系列データ)を生成する。本明細書において、「ふるまい」とは、人の行動や動作の仕方を意図しており、例えば、身体(の一部分)の動きや、表情の変化、視線の動き、発声などを含む。
【0038】
被疑患者3および対応者4のふるまいの時系列データとしては、これらに限定するものではないが、例えば、視線の動き、頭部の動き、肩の動き、肘の動き、手首の動き、表情の変化などの時系列データが挙げられる。視線の動きや、頭部の動きなどについては、横の動き、および、縦の動きをそれぞれ含んでいてもよい。また、表情の変化としては、例えば、眉の内側を上げる、眉の外側を上げる、眉を上げる、上瞼を上げる、頬を持ち上げる、瞼を緊張させる等の観点の変化が挙げられる。データの値としては、例えば、最大値、最小値、平均値、標準偏差、中央値等を含んでもよい。
【0039】
一態様において、生成処理部112は、動画データに写っている複数人の関節、目、耳、鼻の位置を推定可能な、OpenPoseなどの姿勢推定アプリケーションを用いて時系列データを生成してもよい。生成処理部112は、姿勢推定アプリケーションを用いて、動画データから、被疑患者3および対応者4の右目、左目、右耳、左耳、鼻、首、右肩、右肘、右手首、左肩、左肘、左手首及び臀部の位置を推定し、それぞれの位置の変化から上述した動きの大きさを求めることによって、時系列データを生成してもよい。
【0040】
また、一態様において、生成処理部112は、動画データに写っている複数人の顔画像から視線や表情を検出する、OpenFaceなどの顔検出アプリケーションを用いて、被疑患者3および対応者4の視線の動きや表情の変化を推定することによって、時系列データを生成してもよい。なお、表情の変化としては、例えば、眉の内側を上げる(AU1)、眉の外側を上げる(AU2)、眉を上げる(AU4)、上瞼を上げる(AU5)、頬を持ち上げる(AU6)、瞼を緊張させる(AU7)等の観点があり、値としては、例えば、もっと強く検出された場合は5、検出されなかった場合は0となる0から5までの値であってもよい。
【0041】
また、一態様において、生成処理部112は、被疑患者3および対応者4のふるまいの時系列データとして、視線の動き、利き腕の動き、額の加速度、眼輪筋の動き、および、発した声量の時系列データのうちの1以上を生成してもよい。
【0042】
一態様において、生成処理部112は、利き腕の動きの大きさを、被疑患者情報および付帯情報に含まれる被疑患者3および対応者4の利き腕を示す情報、および、姿勢推定アプリケーションによって推定した肩、肘、手首の動きから求めてもよい。また、一態様において、生成処理部112は、額の加速度を、姿勢推定アプリケーションによって推定した鼻の動きから推定してもよい。また、一態様において、生成処理部112は、眼輪筋の動きを、例えば顔検出アプリケーション(OpenFace)を用いて推定したAU5(上瞼を上げる)、AU7(瞼を緊張させる)、AU41(瞼を力なく下げる)、AU42(薄目)、AU43(瞼を閉じる)、AU44(細め)、AU45(まばたく)、AU46(ウインクする)等の値から検出してもよい。
【0043】
なお、一態様において、生成処理部112が生成する第1時系列データおよび第2時系列データは、それぞれ1種類のふるまいの時系列データを含んでいてもよいが、複数種類のふるまいの時系列データを含んでいてもよい。複数種類のふるまいの時系列データを用いることにより、より精度の高い判定を行うことができる。
【0044】
生成処理部112は、生成した第1時系列データおよび第2時系列データを時系列DB133に記憶してもよい。図7および図8は時系列DB133に記憶されているデータの例をそれぞれ示す図である。時系列DB133は、被疑患者3のふるまいの時系列データ(第1時系列データ)と、対応者4のふるまいの時系列データ(第2時系列データ)とを記憶する。図7および図8に示す例において、列は、被疑患者3または対応者4のいずれか、および、ふるまいの種類に対応し、行は、時系列上の位置(タイムコード)に対応する。
【0045】
図7に示す例では、対応者(保護者)列と被疑患者(子ども)列とは、それぞれ視線列、頭部列、肩列、肘列、手首列、表情列を含む。視線列、頭部列はそれぞれ横の動きの最大値、縦の動きの最大値等を含む。動きの値としては、最大値以外に、最小値、平均値、標準偏差、中央値等を含んでもよい。肩列、肘列、手首列についても、動き関する値(最大値、最小値、平均値、標準偏差、中央値)を記憶する。表情列は上述した表情の変化に関する各観点に付いての値(最大値、最小値、平均値、標準偏差、中央値)を記憶する。
【0046】
図8に示す例では、対応者列と被疑患者列とは、それぞれ視線列、利き腕列、額列、声量列、および、眼輪筋列を含む。視線列は視線の動き、利き腕列は利き腕の動き、額列は額の加速度、眼輪筋列は眼輪筋の動き、声量列は発した声量を記憶する。
【0047】
以下では、図8に示すように、生成処理部112が、視線の動き、利き腕の動き、額の加速度、眼輪筋の動き、発した声量の第1時系列データおよび第2時系列データを生成した場合の例について説明する。
【0048】
(算出処理)
ステップS4(算出処理)において、算出処理部113は、被疑患者3と対応者4とがコミュニケーションしているときの、被疑患者3のふるまいの第1時系列データおよび対応者4のふるまいの第2時系列データに基づいて、被疑患者3のふるまいから対応者4のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する。
【0049】
また、一態様において、算出処理部113は、第1時系列データおよび第2時系列データに基づいて、対応者4のふるまいから被疑患者3のふるまいへの第2移動エントロピーをさらに算出してもよい。
【0050】
算出処理部113は、第1移動エントロピーおよび第2移動エントロピーを、例えば、pythonのライブラリとして提供されているフリー又はパブリックドメインのプログラム等を利用して算出可能である。
【0051】
ここで、本実施形態において、移動エントロピーを用いることについて説明する。移動エントロピーは、二つの時系列データ間の因果性(一方の時系列データから他方の時系列データへの因果的な影響)を情報理論的に定量化した値である。時系列Yから時系列Xへの情報流を示す移動エントロピー(Transfer Entropy(Y→X)、TY→X)は、以下の式(1)によって定義される。
【0052】
【数1】
【0053】
式(1)を説明する。まず、時系列X(t)について、現在時刻tから時刻kまで遡った計測値の組X (k)は式(2)のように表せる。
【0054】
【数2】
【0055】
次の時刻t+1の計測値X(t+1)=Xt+1が、過去の履歴に依存するのであれば、Xt+1が得られる確率は、式(3)のように条件付き確率で表せる。
【0056】
【数3】
【0057】
これに対して、時系列Y(t)の時刻lまで遡った計測値の組Y (l)を考慮した条件付き確率は、式(4)に示すとおりである。
【0058】
【数4】
【0059】
そして、Xt+1がYから何ら影響がなく、X自身の過去の計測値のみで決定されるのであれば、これらの確率は等しく、式(5)が成り立つ。
【0060】
【数5】
【0061】
YとXとに因果関係があると、過去に計測されたYの値にも依存してXt+1が決まることになるので、式(5)は成り立たない。以上のことから、これらの確率分布の情報量の差は、上述の式(1)で表され、移動エントロピーの定義となる。なお、本実施の形態において、時系列データX(t)は被疑患者3に関する時系列の計測値であり、時系列データY(t)は対応者4に関する時系列の計測値である。移動エントロピーを算出することにより、時系列データXから時系列データYへ、または、時系列データYから時系列データXへの情報の移動を独立して計測することができ、2つの情報源がどの程度カップリングするかを診断することが出来る。
【0062】
自閉スペクトラム症の中核症状として、コミュニケーション障害の症状がある。コミュニケーションは情報のやり取りであり、一方から他方への働きかけと、後者から前者への応答とには因果関係がある。両者のコミュニケーションにおけるふるまいの時系列データの因果関係をみることにより、コミュニケーションを定量化することが可能となる。すなわち、コミュニケーションにおけるふるまいの時系列データの因果関係を、移動エントロピーで表現することにより、定量化することができ、対応者と被疑患者との間のコミュニケーション障害を分析することができる。
【0063】
また、一態様において、ステップS3において、生成処理部112が複数種類のふるまいの時系列データを含む第1時系列データを生成する場合、算出処理部113は、複数種類のふるまいの時系列データにそれぞれ対応する複数種類の第1移動エントロピーを算出してよい。すなわち、算出処理部113は、複数種類のふるまいについて、ふるまいの種類ごとに、被疑患者3のふるまいから対応者4のふるまいへの移動エントロピーを算出してよい。
【0064】
また、ステップS3において、生成処理部112が複数種類のふるまいの時系列データを含む第2時系列データをさらに生成する場合、算出処理部113は、複数種類のふるまいの時系列データにそれぞれ対応する複数種類の第2移動エントロピーをさらに算出してよい。すなわち、算出処理部113は、複数種類のふるまいについて、ふるまいの種類ごとに、対応者4のふるまいからの被疑患者3ふるまいへの移動エントロピーを算出してよい。
【0065】
算出処理部113は、算出した移動エントロピーを、移動エントロピーDB134に記憶してもよい。図9は、移動エントロピーDB134に記憶されているデータの一例を示す図である。移動エントロピーDB134は、被疑患者→対応者列及び対応者→被疑患者列を含む。被疑患者→対応者列は移動エントロピー(被疑患者→対応者)を記憶する。対応者→被疑患者列は移動エントロピー(対応者→被疑患者)を記憶する。
【0066】
被疑患者→対応者列は、第1時系列データに含まれる各種類のふるまいに対応する列を含んでいる。また、対応者→被疑患者列は、第2時系列データに含まれる各種類のふるまいに対応する列を含んでいる。例えば、図9に示す例では、図8に示す第1時系列データに対応する、視線の動きの移動エントロピー(視線移動エントロピー)、利き腕の動きの移動エントロピー(利き腕移動エントロピー)、額の加速度の移動エントロピー(額の動き移動エントロピー)、眼輪筋の動きの移動エントロピー(眼輪筋の動き移動エントロピー)、声量の移動エントロピー(声量移動エントロピー)の各列が、被疑患者→対応者列および対応者→被疑患者列のそれぞれに含まれている。
【0067】
(判定処理)
ステップS5(判定処理)において、判定処理部114は、少なくとも第1移動エントロピーを入力として、被疑患者3の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデル14に、ステップ4において算出した第1移動エントロピーを入力して、被疑患者3の自閉スペクトラム症についての判定を行う。
【0068】
例えば、判定処理部114は、被疑患者情報から取得した被疑患者3の属性(例えば、年歳、性別)、付帯情報から取得した対応者の属性(例えば、被疑患者との関係、性別)、および、第1移動エントロピーを含む入力データを作成し、学習モデル14に入力することにより、判定を行う。学習モデル14は、被疑患者3の属性、対応者の属性、および、第1移動エントロピーを含む入力データを入力として、被疑患者3が臨床域、又は、正常域であるかを判定する。
【0069】
なお、判定処理部114は、ステップ4において算出した第1移動エントロピーが、複数種類の第1移動エントロピーを含む場合、学習モデル14に、複数種類の第1移動エントロピーをそれぞれ入力してよい。これにより、複数種類のふるまいの移動エントロピーを用いて判定を行なうことができ、より精度の高い判定を行うことができる。
【0070】
また、判定および学習に用いる入力データは、少なくとも第1移動エントロピーを含んでいればよいが、その他のデータも含んでいてもよい。例えば、上述したように、入力データは、被疑患者3の属性や対応者の属性などを含んでいてもよい。
【0071】
また、一態様において、入力データは、第2移動エントロピーを含んでいてもよい。すなわち、判定処理部114は、学習モデル14に第2移動エントロピーをさらに入力してもよい。このとき、判定処理部114は、ステップ4において算出した第2移動エントロピーが、複数種類の第2移動エントロピーを含む場合、学習モデル14に、複数種類の第2移動エントロピーをそれぞれ入力してよい。
【0072】
入力データに、第1移動エントロピーだけでなく第2移動エントロピーも含めることにより、被疑患者3と対応者4との双方向のコミュニケーションのバランスなども含めて分析することができ、より適切な判定を行なうことができる。
【0073】
また、一態様において、入力データは、被疑患者3に対して予め実施された自閉スペクトラム症に関する検査の評価値を含んでいてもよい。すなわち、判定処理部114は、学習モデル14に、当該評価値をさらに入力してもよい。当該評価値は、例えば、被疑患者情報から取得してもよい。これにより、より適切な判定を行なうことができる。
【0074】
自閉スペクトラム症に関する検査としては、上述したように、ADOS-2検査、ADI-R検査、CARS2検査などが挙げられる。例えば、ADOS-2検査では、行動観察の結果から、言語と意思伝達、相互的対人関係、遊び/想像力、常同行動と限定的興味、他の異常行動の5領域ごとに評価値が得られる。判定処理部114は、これらの評価値の少なくとも一部を、学習モデル14に入力してもよい。
【0075】
学習モデル14は、上述したような入力データを入力として、被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルを用いることができる。
【0076】
また、判定処理部114は、被疑患者3の自閉スペクトラム症についての判定として、自閉スペクトラム症について、被疑患者3が臨床域、又は、正常域であるかを判定してもよい。この場合、学習モデル14としては、上述した入力データを入力として、自閉スペクトラム症について、被疑患者が臨床域、又は、正常域であるかを判定を行なうように機械学習された学習モデルを用いることができる。但し、被疑患者3の自閉スペクトラム症についての判定としては、他の基準に基づいた判定を行なってもよい。
【0077】
図10は、学習モデル14の一例を示す図である。図10に示す例では、学習モデル14には、種々の入力データを入力として、自閉スペクトラム症について、被疑患者が臨床域であることを示す値(例えば「1」)、又は、正常域であることを示す値(例えば「0」)を出力する。また、学習モデル14は、判定結果の尤度または信頼度を併せて出力してもよい。
【0078】
学習モデル14は、例えばLightGBM(Light Gradient Boosting Machine)である。LightGBMは決定木アルゴリズムに基づいた勾配ブースティング(Gradient Boosting)の機械学習フレームワークである。LightGBMには分類モデル、回帰モデルが実装されているが、学習モデル14としては、例えば、LightGBMの分類モデルを用いることができる。また、学習モデル14として、LightGBMではなく、サポートベクトルマシン、ロジスティック回帰モデル、XGBoost(eXtreme Gradient Boosting / 勾配ブースティング回帰木)等を用いてもよい。また、一態様において、学習モデル14として、ニューラルネットワークを用いてもよく、ニューラルネットワークとして深層ニューラルネットワークを用いてもよく、深層ニューラルネットワークとしてTransformerを用いてもよい。
【0079】
学習モデル14は、自閉スペクトラム症についての過去の診断例を含む教師データにより、機械学習された学習モデルである。学習モデル14の評価としては、感度(真陽性率)、特異度(真陰性率)、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、偽陽性率、偽陰性率等の考え方を用いることができる。感度(真陽性率)は、臨床域と判定すべき入力データに対して、学習モデル14が正常域と判定したデータの割合である。特異度(真陰性率)は、正常域と判定すべき入力データに対して、学習モデル14が正常域と判定したデータの割合である。陽性的中率(PPV)は臨床域と判定すべき入力データに対して、学習モデル14が臨床域と判定したデータの割合である。陰性的中率(NPV)は正常域と判定すべき入力データに対して、学習モデル14が正常域と判定したデータの割合である。偽陽性率は正常域と判定すべき入力データに対して、学習モデル14が臨床域と判定したデータの割合である。偽陰性率は臨床域と判定すべき入力データに対して、学習モデル14が正常域と判定したデータの割合である。感度(真陽性率)、特異度(真陰性率)、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)は高いほど望ましく、偽陽性率、偽陰性率等は低いほど望ましい。
【0080】
学習モデル14の評価として、F値(F-measure、F-score)/F1スコア(F1-score)、重み付きF値(Weighted F-measure)/Fβスコア(Fβ-score)、LogLoss(Binary Logarithmic Loss)、AUC(Area Under the ROC Curve)、PR-AUC(Area Under the Precision-Recall Curve、AUC-PR)/AP(Average Precision)等を用いてもよい。
【0081】
判定処理部114は、判定結果を判定結果DB135に記憶してもよい。図11は判定結果DBに記憶されているデータの一例を示す図である。判定結果DB135は学習モデル14への入力データおよび学習モデル14の判定結果を記憶する。判定結果DB135は患者ID列、動画ID列、撮影日列、判定列、尤度列、被疑患者→対応者列及び対応者→被疑患者列を含む。患者ID列は判定対象となった被疑患者の患者IDを記憶する。動画ID列は判定に使用した動画の動画IDを記憶する。撮影日列は動画が撮影された日を記憶する。判定列は判定結果を記憶する。例えば、「1」は臨床域と判定したことを示す。「0」は正常域と判定したことを示す。尤度列は判定結果の尤度を記憶する。尤度は判定結果を取り得る確率であり、判定結果の信頼度と言い換えてもよい。被疑患者→対応者列は判定に使用された移動エントロピー(被疑患者→対応者)を記憶する。対応者→被疑患者列は判定に使用された移動エントロピー(対応者→被疑患者)を記憶する。被疑患者→対応者列及び対応者→被疑患者列はそれぞれ視線列、利き腕列、額列、声量列、及び眼輪筋列を含む。視線列は学習モデル14に入力した視線の動きについての移動エントロピーを記憶する。利き腕列は学習モデル14に入力した利き腕の動きについての移動エントロピーを記憶する。額列は学習モデル14に入力した額の加速度についての移動エントロピーを記憶する。声量列は学習モデル14に入力した声量についての移動エントロピーを記憶する。眼輪筋列は学習モデル14に入力した眼輪筋の動きについての移動エントロピーを記憶する。
【0082】
(出力処理)
ステップS6(出力処理)において、出力処理部115は、ステップ5において得られた判定結果を出力する。一態様において、出力処理部115は、学習モデル14より出力された判定結果を示す結果画面を表示パネル15へ出力する。
【0083】
図12は結果画面の一例を示す図である。結果画面d01は、患者属性d011、撮影日d012、判定結果d013、及び動画表示域d014を含む。患者属性d011は患者ID、氏名、性別、生年月日、年齢の表示である。制御部11は患者DB131から患者属性を取得し、表示する。撮影日d012は動画を撮影した日付表示である。制御部11は動画DB132から撮影日を取得し、表示する。判定結果d013は学習モデル14による判定結果の表示である。制御部11は判定結果DB135から判定結果を取得し、表示する。判定結果には尤度を含めてもよい。尤度も判定結果DB135から取得可能である。動画表示域d014は撮影した動画を視聴するためのサブウィンドウである。結果画面d01に表示される判定結果等は疾患情報の一例である。
【0084】
以上のように、自閉スペクトラム症判定装置100によって自閉スペクトラム症判定方法が実施される。
【0085】
(機械学習方法)
続いて、本実施形態において用いる学習モデル14を生成するための機械学習方法の一例について説明する。図13は機械学習方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【0086】
ステップS11(取得処理)において、ステップS1と同様に、情報処理装置1の取得処理部111が、被疑患者情報を取得する。但し、被疑患者3は、予め実施された自閉スペクトラム症についての診断結果が得られている被疑患者3とし、取得処理部111は、当該診断結果を含む被疑患者情報を取得する。
【0087】
ステップS12(取得処理)において、ステップS2と同様に、取得処理部111は被疑患者3と対応者4とがコミュニケーションしているときの様子を撮影部2が撮影した動画データを取得する。取得処理部111はさらに付帯情報を取得してもよい。
【0088】
ステップS13(生成処理)において、ステップS3と同様に、生成処理部112は、撮影部2が撮影した動画データに基づいて、被疑患者3と対応者4とがコミュニケーションしているときの、被疑患者3のふるまいの時系列データ(第1時系列データ)および対応者4のふるまいの時系列データ(第2時系列データ)を生成する。
【0089】
ステップS14(算出処理)において、ステップS4と同様に、算出処理部113は、被疑患者3と対応者4とがコミュニケーションしているときの、被疑患者3のふるまいの第1時系列データおよび対応者4のふるまいの第2時系列データに基づいて、被疑患者3のふるまいから対応者4のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する。また、算出処理部113は、対応者4のふるまいから被疑患者3のふるまいへの第2移動エントロピーをさらに算出してもよい。
【0090】
ステップS15(学習処理)において、学習処理部116は、ステップS14において算出した第1移動エントロピー、および、ステップS11において取得した診断結果を含む教師データを用いた機械学習により、少なくとも第1移動エントロピーを入力として、被疑患者3の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデル14を生成する。
【0091】
ステップS11において取得した診断結果は、教師データにおける正解ラベルとなる。一態様において、診断結果は、被疑患者3が臨床域、又は、正常域であるかを示すものであってもよい。
【0092】
また、教師データは、被疑患者情報から取得した被疑患者3の属性(例えば、年歳、性別)、付帯情報から取得した対応者の属性(例えば、被疑患者との関係、性別)をさらに含んでいてもよい。
【0093】
また、一態様において、教師データは、第2移動エントロピーをさらに含んでいてもよい。また、一態様において、教師データに含まれる第1移動エントロピーおよび第2移動エントロピーは、複数種類のふるまいの時系列データを含んでよく、例えば、視線の動き、利き腕の動き、額の加速度、眼輪筋の動き、および、発した声量の時系列データのうちの1以上の時系列データを含んでいてよい。
【0094】
また、一態様において、教師データは、被疑患者3に対して予め実施された自閉スペクトラム症に関する検査の評価値をさらに含んでいてもよい。
【0095】
学習処理部116は、生成された学習モデル14を補助記憶部13に記憶する。
【0096】
なお、上述した機械学習方法は、情報処理装置1とは別のコンピュータにおいて実施してもよい。その場合、別のコンピュータにおいて生成した学習モデル14を情報処理装置1に提供すればよい。
【0097】
(本実施形態の効果)
本実施形態においては、次のような効果を奏する。移動エントロピーを用いることにより、自閉スペクトラム症患者の対人コミュニケーション能力を定量化することが可能である。定量化した対人コミュニケーション能力を入力データとする学習モデル14により、被疑患者が自閉スペクトラム症である可能性があるか否かを判定し、その判定結果を踏まえて、医師が診断を下すことが可能となる。それにより、診断の客観性を高めることが可能となる。また、自閉スペクトラム症の診断にあまり習熟していない医師でも、客観性及び信頼性の高い診断が可能となる。
【0098】
このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「すべての人に健康と福祉を」等の達成にも貢献するものである。
【0099】
(変形例)
自閉スペクトラム症判定装置100は、撮影部2を備えない構成であってもよい。この場合、情報処理装置1(コンピュータ)は、被疑患者3と対応者4とがコミュニケーションしている様子を撮影した動画データが入力可能に構成されていればよく、情報処理装置1が自閉スペクトラム症判定装置100として機能する。
【0100】
また、情報処理装置1は、1以上のコンピュータによって構成されるクラウドシステムによって実現してもよい。すなわち、1以上のコンピュータが、上述した取得処理、生成処理、算出処理、評価処理、出力処理、学習処理などを実行する構成であってもよい。
【0101】
〔ソフトウェアによる実現例〕
自閉スペクトラム症判定装置100または情報処理装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部11に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0102】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0103】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0104】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0105】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0106】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、
1以上のコンピュータに、
被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理と、
少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルに、前記算出処理において算出した前記第1移動エントロピーを入力して、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行う判定処理と、
を実行させる。
【0107】
本発明の態様2に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様1において、
前記算出処理において、前記第1時系列データおよび第2時系列データに基づいて、前記対応者のふるまいから前記被疑患者のふるまいへの第2移動エントロピーをさらに算出し、
前記判定処理において、前記学習モデルに前記第2移動エントロピーをさらに入力する。
【0108】
本発明の態様3に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様1において、
前記第1時系列データおよび前記第2時系列データはそれぞれ、複数種類のふるまいの時系列データを含み、前記算出処理では、前記複数種類のふるまいの時系列データにそれぞれ対応する複数種類の前記第1移動エントロピーを算出し、前記判定処理では、前記学習モデルに、前記複数種類の前記第1移動エントロピーをそれぞれ入力する。
【0109】
本発明の態様4に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様2において、
前記第1時系列データおよび前記第2時系列データはそれぞれ、複数種類のふるまいの時系列データを含み、前記算出処理では、前記複数種類のふるまいの時系列データにそれぞれ対応する複数種類の前記第1移動エントロピーおよび前記第2移動エントロピーを算出し、前記判定処理では、前記学習モデルに、前記複数種類の前記第1移動エントロピーおよび前記第2移動エントロピーをそれぞれ入力する。
【0110】
本発明の態様5に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様3または4において、
前記複数種類のふるまいの時系列データには、視線の動きの時系列データが含まれる。
【0111】
本発明の態様6に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様3または4において、
前記複数種類のふるまいの時系列データには、利き腕の動きの時系列データが含まれる。
【0112】
本発明の態様7に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様3または4において、
前記複数種類のふるまいの時系列データには、眼輪筋の動きの時系列データが含まれる。
【0113】
本発明の態様8に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様3または4において、
前記複数種類のふるまいの時系列データには、発した声の声量の時系列データが含まれる。
【0114】
本発明の態様9に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様3または4において、
前記複数種類のふるまいの時系列データには、額の加速度の時系列データが含まれる。
【0115】
本発明の態様10に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様1~9において、
前記1以上のコンピュータに、
前記被疑患者に対して予め実施された自閉スペクトラム症に関する検査の評価値を取得する取得処理をさらに実行させ、
前記判定処理において、前記学習モデルに前記評価値をさらに入力する。
【0116】
本発明の態様11に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様1~10において、
前記判定処理では、自閉スペクトラム症について、前記被疑患者が臨床域、又は、正常域であるかを判定する。
【0117】
本発明の態様12に係る自閉スペクトラム症判定プログラムは、前記態様1~11において、
前記1以上のコンピュータに、
前記判定処理において得られた判定結果を出力する出力処理をさらに実行させる。
【0118】
本発明の態様13に係る自閉スペクトラム症判定方法は、
1以上のコンピュータが、
被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理と、
少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルに、前記算出処理において算出した前記第1移動エントロピーを入力して、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行う判定処理と、
を実行する。
【0119】
本発明の態様14に係る自閉スペクトラム症判定装置は、
被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理部と、
少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルに、前記算出処理部が算出した前記第1移動エントロピーを入力して、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行う判定処理部と、を備える。
【0120】
本発明の態様15に係る自閉スペクトラム症判定方法は、前記態様14において、
前記被疑患者と前記対応者とがコミュニケーションしている様子を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した動画データに基づいて、前記第1時系列データおよび前記第2時系列データを生成する生成処理部と、をさらに備える。
【0121】
本発明の態様16に係る機械学習方法は、
1以上のコンピュータが、
被疑患者と対応者とがコミュニケーションしているときの、前記被疑患者のふるまいの第1時系列データおよび前記対応者のふるまいの第2時系列データ、ならびに、前記被疑患者に対して予め実施された自閉スペクトラム症についての診断結果を取得する取得処理と、
前記第1時系列データおよび前記第2時系列データに基づいて、前記被疑患者のふるまいから前記対応者のふるまいへの第1移動エントロピーを算出する算出処理と、
前記算出処理において算出した前記第1移動エントロピー、および、前記取得処理において取得した前記診断結果を含む教師データを用いた機械学習により、少なくとも前記第1移動エントロピーを入力として、前記被疑患者の自閉スペクトラム症についての判定を行なうように機械学習された学習モデルを生成する学習処理と、
を実行する。
【0122】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、自閉スペクトラム症の診断を支援するために利用することができる。
【符号の説明】
【0124】
100 :自閉スペクトラム症判定装置
1 :情報処理装置(コンピュータ)
11 :制御部(プロセッサ)
111 :取得処理部
112 :生成処理部
113 :算出処理部
114 :判定処理部
115 :出力処理部
116 :学習処理部
12 :主記憶部(メモリ)
13 :補助記憶部
131 :患者DB
132 :動画DB
133 :時系列DB
134 :移動エントロピーDB
135 :判定結果DB
14 :学習モデル
15 :表示パネル
16 :操作部
17 :映像通信部
18 :通信部
19 :読み取り部
1P :制御プログラム(自閉スペクトラム症判定プログラム)
1a :可搬型記憶媒体
1b :半導体メモリ
2 :撮像部
B :バス
図1
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