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特開2024-146463積層セラミック電子部品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146463
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 201N
H01G4/30 311Z
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059369
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋一
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC35
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】内部電極間に配置された誘電体層を形成する粒子の粒界の数にかかわらず内部電極間の絶縁性を確保することを目的とする。
【解決手段】積層セラミック電子部品は、誘電体層と内部電極とが第1軸方向に沿って交互に積層され、前記第1軸方向に沿って相対する一対の主面と、前記第1軸方向と直交する第2軸方向において相対する一対の側面と、前記第1軸方向と前記第2軸方向とに直交する第3軸方向において相対する一対の端面とを有するセラミック素体と、前記セラミック素体の前記第3軸方向の端部に設けられ、前記セラミック素体の前記第3軸方向の異なる端面に引き出された前記内部電極と導通するように設けられた外部電極と、を備え、前記誘電体層を形成する粒子は、粒界内に前記誘電体層の主成分と異なる希土類元素および/または遷移金属元素を含む偏析部を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と内部電極とが第1軸方向に沿って交互に積層され、前記第1軸方向に沿って相対する一対の主面と、前記第1軸方向と直交する第2軸方向において相対する一対の側面と、前記第1軸方向と前記第2軸方向とに直交する第3軸方向において相対する一対の端面とを有するセラミック素体と、
前記セラミック素体の前記第3軸方向の端部に設けられ、前記セラミック素体の前記第3軸方向の異なる端面に引き出された前記内部電極と導通するように設けられた外部電極と、を備え、
前記誘電体層を形成する粒子は、粒界内に前記誘電体層の主成分と異なる希土類元素および/または遷移金属元素を含む偏析部を備えた、
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記偏析部は、希土類元素、第1遷移金属元素または第2遷移金属元素から選定された少なくとも1種類以上の元素を含む、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記セラミック素体は前記誘電体層と前記内部電極とが交互に積層されたセラミック積層チップと当該セラミック積層チップを前記第2軸方向から覆うサイドマージン部とを含み、
前記偏析部は、前記誘電体層において前記サイドマージン部と隣接する領域内に位置している前記粒子内に形成された、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記偏析部は、前記セラミック素体の前記第2軸方向の中心点を含む領域内に位置している前記粒子内に形成された、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記誘電体層を形成する粒子の粒径は、中央値で0.2μm以上0.8μm以下である、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記誘電体層と前記サイドマージン部は、Ti元素とSi元素を含み、前記サイドマージン部における前記Ti元素と前記Si元素との比率は、前記誘電体層における前記Ti元素と前記Si元素との比率よりも高い、
請求項3に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記誘電体層と前記サイドマージン部は、前記Ti元素と前記Si元素を含み、前記サイドマージン部における前記Ti元素と前記Si元素との比率は、前記誘電体層における前記Ti元素と前記Si元素との比率に対して2倍以上である、
請求項6に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層と前記サイドマージン部は、前記Ti元素と前記Si元素を含み、前記サイドマージン部における前記Ti元素と前記Si元素との比率は、前記誘電体層における前記Ti元素と前記Si元素との比率に対して4倍以上である、
請求項6に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記サイドマージン部は、Si元素を含み、前記サイドマージン部における前記Si元素の量は、1at%以上である、
請求項3に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層の前記第1軸方向に沿う厚さは、0.3μm以上0.7μm以下である、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記偏析部は、前記誘電体層の断面における一つの粒子内において、当該粒子の粒径の50%以上の長さを有している、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
Si元素を含む誘電体層と内部電極とが第1軸方向に沿って交互に積層され、前記第1軸方向に直交する第2軸方向に向いた側面から前記内部電極が露出する容量形成部を備えた未焼成のセラミック積層チップを作製する工程と、
前記セラミック積層チップの前記側面に前記誘電体層よりもSi元素の含有量が多いサイドマージン部を形成して未焼成のセラミック素体を作製する工程と、
前記セラミック素体を焼成する工程と、
焼成された前記セラミック素体に外部電極を形成する工程と、
を含む積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記誘電体層と前記サイドマージン部は、Ti元素とSi元素を含み、前記サイドマージン部における前記Ti元素と前記Si元素との比率は、前記誘電体層における前記Ti元素と前記Si元素との比率よりも高い、
請求項12に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、内部電極と誘電体層とが交互に積層された容量形成部を有するとともに、この容量形成部の側面にサイドマージン部が形成された積層セラミック電子部品が知られている。積層セラミック電子部品は、内部電極間の絶縁性が確保されていなければならず、内部電極間の短絡の発生を抑制するための提案がされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-143392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内部電極間の絶縁性は、誘電体層を形成している粒子の粒界によって担保されていると考えられる。積層セラミック電子部品は、多積層化が進んでいる。多積層化に伴い内部電極間の誘電体層の厚さが薄くなる。そして、これに伴って誘電体層を形成する粒子の数も減り、内部電極間に存在する粒界の数も減少する。このため、誘電体層の厚さを薄くすると絶縁性の確保が難しくなる。特許文献1の提案は、このような問題に対応するものとはなっておらず、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、内部電極間に配置された誘電体層を形成する粒子の粒界の数にかかわらず内部電極間の絶縁性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、積層セラミック電子部品は、誘電体層と内部電極とが第1軸方向に沿って交互に積層され、前記第1軸方向に沿って相対する一対の主面と、前記第1軸方向と直交する第2軸方向において相対する一対の側面と、前記第1軸方向と前記第2軸方向とに直交する第3軸方向において相対する一対の端面とを有するセラミック素体と、前記セラミック素体の前記第3軸方向の端部に設けられ、前記セラミック素体の前記第3軸方向の異なる端面に引き出された前記内部電極と導通するように設けられた外部電極と、を備え、前記誘電体層を形成する粒子は、粒界内に前記誘電体層の主成分と異なる希土類元素および/または遷移金属元素を含む偏析部を備える態様とすることができる。
【0007】
上記構成の積層セラミック電子部品において、前記偏析部は、希土類元素、第1遷移金属元素または第2遷移金属元素から選定された少なくとも1種類以上の元素を含む態様とすることができる。
【0008】
また、上記構成の積層セラミック電子部品において、前記セラミック素体は前記誘電体層と前記内部電極とが交互に積層されたセラミック積層チップと当該セラミック積層チップを前記第2軸方向から覆うサイドマージン部とを含み、前記偏析部は、前記誘電体層において前記サイドマージン部と隣接する領域内に位置している前記粒子内に形成された態様とすることができる。
【0009】
前記偏析部は、前記セラミック素体の前記第2軸方向の中心点を含む領域内に位置している前記粒子内に形成された態様とすることができる。
【0010】
上記構成の積層セラミック電子部品において、前記誘電体層を形成する粒子の粒径は、中央値で0.2μm以上0.8μm以下である態様とすることができる。
【0011】
また、上記構成の積層セラミック電子部品において、前記誘電体層と前記サイドマージン部は、Ti元素とSi元素を含み、前記サイドマージン部における前記Ti元素と前記Si元素との比率は、前記誘電体層における前記Ti元素と前記Si元素との比率よりも高い態様とすることができる。
【0012】
さらに、上記構成の積層セラミック電子部品において、前記誘電体層と前記サイドマージン部は、前記Ti元素と前記Si元素を含み、前記サイドマージン部における前記Ti元素と前記Si元素との比率は、前記誘電体層における前記Ti元素と前記Si元素との比率に対して2倍以上である態様とすることができる。
【0013】
また、上記構成の積層セラミック電子部品において、前記誘電体層と前記サイドマージン部は、前記Ti元素と前記Si元素を含み、前記サイドマージン部における前記Ti元素と前記Si元素との比率は、前記誘電体層における前記Ti元素と前記Si元素との比率に対して4倍以上である態様とすることができる。
【0014】
上記構成の積層セラミック電子部品において、前記サイドマージン部は、Si元素を含み、前記サイドマージン部における前記Si元素の量は、1at%以上である態様とすることができる。
【0015】
また、上記構成の積層セラミック電子部品において、前記誘電体層の前記第1軸方向に沿う厚さは、0.3μm以上0.7μm以下である態様とすることができる。
【0016】
上記構成の積層セラミック電子部品において、前記偏析部は、前記誘電体層の断面における一つの粒子内において、当該粒子の粒径の50%以上の長さを有している態様とすることができる。
【0017】
上記目的を達成するため、積層セラミック電子部品の製造方法は、Si元素を含む誘電体層と内部電極とが第1軸方向に沿って交互に積層され、前記第1軸方向に直交する第2軸方向に向いた側面から前記内部電極が露出する容量形成部を備えた未焼成のセラミック積層チップを作製する工程と、前記セラミック積層チップの前記側面に前記誘電体層よりもSi元素の含有量が多いサイドマージン部を形成して未焼成のセラミック素体を作製する工程と、前記セラミック素体を焼成する工程と、焼成された前記セラミック素体に外部電極を形成する工程と、を含む態様とすることができる。
【0018】
上記構成の積層セラミック電子部品の製造方法において、前記誘電体層と前記サイドマージン部は、Ti元素とSi元素を含み、前記サイドマージン部における前記Ti元素と前記Si元素との比率は、前記誘電体層における前記Ti元素と前記Si元素との比率よりも高い態様とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内部電極間に配置された誘電体層を形成する粒子の粒界の数にかかわらず内部電極間の絶縁性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2図2図1における積層セラミックコンデンサのA-A´線に沿った断面図である。
図3図3図1における積層セラミックコンデンサのB-B´線に沿った断面図である。
図4図4は実施形態の積層セラミックコンデンサの一部拡大断面図である。
図5図5(A)は誘電体層を形成する粒子の様子を模式的に示す図である。図5(B)は実施形態の積層セラミックコンデンサにおける誘電体層の様子を線図で表した図である。
図6図6は誘電体層を形成する一つの粒子の様子を模式的に示す図である。
図7図7は実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は実施形態の積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図9図9は実施形態の積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図10図10は実施形態の積層セラミックコンデンサの製造過程を示す模式的な断面図である。
図11図11は実施形態の積層セラミックコンデンサの製造過程を示す模式的な断面図である。
図12図12は実施形態の積層セラミックコンデンサの製造過程を示す模式的な断面図である。
図13図13は実施形態の積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。X軸方向は第3軸方向、Y軸方向は第2軸方向、Z軸方向は第1軸方向に相当する。
【0022】
[積層セラミックコンデンサ10の全体構成]
図1~4は、本発明の第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A´線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B´線に沿った断面図である。図4は、積層セラミックコンデンサ10の一部拡大断面図である。
【0023】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、2つの外部電極14a,14bと、を備える。2つの外部電極14a,14bは、それぞれセラミック素体11の表面に形成されている。
【0024】
セラミック素体11は、容量形成部16と、保護部17と、を有する。保護部17は、セラミック素体11の周縁部を構成し、X軸方向を向いた2つの端面11aと、Y軸方向を向いた2つの側面11bと、Z軸方向を向いた2つの主面11cと、を有する。側面11bと主面11cとは、複数の周面を構成する。端面11a,側面11b及び主面11cは、例えば、略平坦な面で構成されているが、丸みを帯びていても良い。
【0025】
保護部17は、詳細には、容量形成部16のZ軸方向外側に位置するカバー部18と、容量形成部16のY軸方向外側に位置するサイドマージン部19と、容量形成部16のX軸方向外側に位置するエンドマージン部20と、を有する。
【0026】
容量形成部16は、保護部17の内方に配置され、機能部を構成する。容量形成部16は、複数の第1内部電極12と、複数の第2内部電極13と、が誘電体層15(図2参照)を介してZ軸方向に積層されている。内部電極12,13は、いずれもX-Y平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に配置されている。誘電体層15の構成については、後に詳細に説明する。
【0027】
内部電極12,13はそれぞれ、電気の良導体により形成され、積層セラミックコンデンサ10の内部電極として機能する。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金が用いられる。
【0028】
図2に示すように、第1内部電極12は、例えばセラミック素体11の一方の端面11aに引き出され、一方の外部電極14aに接続されている。第2内部電極13は、他方の端面11aに引き出され、他方の外部電極14bに接続されている。
【0029】
誘電体層15は、誘電体セラミックスによって形成されている。積層セラミックコンデンサ10では、内部電極12,13間の各誘電体層15の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0030】
また、上記誘電体セラミックスは、チタン酸バリウム系以外にも、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系、チタン酸カルシウム(CaTiO)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO)系、酸化チタン(TiO)系などであってもよい。ここで列挙された誘電体セラミックスは、誘電体層15の主成分となる。
【0031】
誘電体層15は、上記の主成分に加えて、Si(ケイ素、シリコン)元素を含む。また、誘電体層15は、上記の主成分に加えて、希土類元素、第1遷移金属元素または第2遷移金属元素から選定された少なくとも1種類以上の元素を含む。希土類元素の中から選定する場合は、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロビウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)の中から選定される。ここでは、列挙することを割愛するが、第1遷移金属元素または第2遷移金属元素の中から選定してもよい。
【0032】
保護部17も、誘電体セラミックスによって形成されている。保護部17のうち、カバー部18及びエンドマージン部20は、内部応力の抑制等の観点から、誘電体層15と主成分が同じ組成であることが好ましい。また、製造効率が向上する。カバー部18及びエンドマージン部20は、希土類元素、第1遷移金属元素および第2遷移金属元素を含んでいなくてもよい。
【0033】
保護部17のうち、サイドマージン部19は、誘電体層15と主成分が同じであるとともに、Si元素を含んでいる。ただし、Si元素の量は、誘電体層15におけるSi元素の量よりも多い。Si元素の量の比較は、一例として、以下の要領で行う。ここでは、保護層17を形成するペロブスカイト構造の材料のBサイト元素がTi元素である場合について説明する。Bサイト元素が他の元素である材料を用いた場合であっても同様の要領でSi元素の量を比較することができる。誘電体層15におけるTi元素とSi元素との比率Ra[15]を算出する。同様に、サイドマージン部19におけるTi元素とSi元素との比率Ra[19]を算出する。そして、比率Ra[15]と比率Ra[19]を比較する。本実施形態では、比率Ra[19]が比率Ra[15]よりも大きくなるように、誘電体層15のSi元素の量とサイドマージン部19のSi元素の量を決定する。比率Ra[19]を比率Ra[15]よりも大きくすることで、積層セラミックコンデンサ10の製造工程において、誘電体層15を形成する粒子151(図5(A)~図6参照)が成長する。この結果、成長した粒子151内に希土類元素、第1遷移金属元素および第2遷移金属元素が濃縮して形成された偏析部153が形成される。偏析部153については、後に詳細に説明する。
【0034】
外部電極14a,14bは、それぞれ端面11aを覆うように形成された下地膜21と、下地膜21上に形成されたメッキ膜22と、を有する。下地膜21は、例えば導電性ペーストを焼成した焼き付け膜や、スパッタ膜等で構成される。メッキ膜22は、電解メッキにより形成される膜である。外部電極14a,14bの各膜は、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金で形成される。
【0035】
[誘電体層15の詳細な構成]
図4は積層セラミックコンデンサ10の一部拡大断面図である。図5(A)は誘電体層15を形成する粒子の様子を模式的に示す図である。図5(B)は積層セラミックコンデンサにおける誘電体層の様子を線図で表した図である。図6は誘電体層を形成する一つの粒子の様子を模式的に示す図である。図5(A)では、内部電極12と内部電極13と、これらの間に形成された一層分の誘電体層15を模式的に示している。
【0036】
図4に示す誘電体層15の一層分の厚さt[15]は、0.3μm以上0.7μm以下の範囲で設定することができる。厚さt[15]をこのような範囲に設定することで、積層セラミックコンデンサ10の多積層化を図ることができる。誘電体層15を形成する粒子151の粒径は、中央値で0.2μm以上0.8μm以下の範囲で設定することができる。粒子151の粒径をこのような範囲に設定することで、誘電体層15の一層分の厚さt[15]を薄くすることができる。
【0037】
図5(A)および図5(B)を参照すると、誘電体層15を形成する粒子151は、粒界152を備えている。粒子151は、チタン酸バリウムの粒子である。粒界152は、図5(A)において実線で描かれており、図5(B)において破線で描かれている。粒界152は、隣接する粒子151間で共有されている。一つ一つの粒子151内には、図5(A)および図5(B)において点線で描かれた偏析部153が形成されている。なお、粒径の値と厚さt[15]の値とが近いほど、内部電極12,13間に存在している粒界152の数が少なくなる。
【0038】
偏析部153は、誘電体層15の成分として添加された希土類元素、第1遷移金属元素または第2遷移金属元素が一つの粒内で偏析した部分であると考えられる。偏析部153は、例えば、TEM-EDS(Transmission electron microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用い、測定対象とする元素をマッピングすることで観察することができる。例えば、添加された遷移金属元素がMnである場合に、Mn元素のマッピングを行うことで偏析部153を可視化することができる。図6を参照して、偏析部153における対象元素の濃度は、粒子151内の領域151a、151b及び151cのように、偏析部153以外の部分における対象元素の濃度よりも高い。偏析部153は、絶縁性を発揮することができる。このため、誘電体層15の厚さt[15]が薄く、内部電極12,13間に存在している粒界152の数が少ない場合であっても内部電極12,13間の絶縁性を確保することができる。
【0039】
ここで、偏析部153の位置は、例えば、上記のTEM-EDSを用いた分析において、偏析部153の周囲とのシグナル値(出力値)の比較によって特定することができる。偏析部153の周囲とは、例えば、粒子151内の領域151a、151b及び151cなどである。シグナル値は、誘電体層15の成分として添加された希土類元素、第1遷移金属元素または第2遷移金属元素の濃度に応じて変化する。シグナル値が周囲と比較して高い箇所をプロットするとことで偏析部153の位置を特定することができる。偏析部153を特定するための、偏析部153とその周囲とのシグナル値の差分は、シグナル値検出におけるノイズ等の影響を考慮して適宜設定することができる。例えば、偏析部153におけるシグナル値が、周囲のシグナル値と比較して10倍以上である位置を偏析部153とすることができる。なお、10倍以上のシグナル値とするのは、一例であり、他の倍数としてもよい。
【0040】
偏析部153は、図4に示すサイドマージン部19と隣接する領域Ar2内に位置している粒子151内に形成されている。また、偏析部153は、セラミック素体11のY軸方向の中心線Cnを含む領域Ar3(図3参照)に位置している粒子151内にも形成されている。中心線Cnは、セラミック素体11のY軸方向の中心点を含んでいる。一方、図4に示す領域Ar1、つまり、サイドマージン部19に含まれる領域に位置している粒子内には、偏析部153は形成されていない。
【0041】
なお、偏析部153は、誘電体層15の断面において、点在してもよい。この場合でも、偏析部153は、絶縁性を発揮することができるためである。図5(A)や図5(B)は誘電体層15の断面の様子を示している。このため、図5(A)や図5(B)に示されている偏析部153は、紙面手前側や奥側、つまり、X軸方向に連続した壁構造を形成していると考えられる。偏析部153は、誘電体層15の断面における一つの粒子151内において、この粒子151の粒径の50%以上の長さを有している態様とすることができる。また、偏析部153は、その一端が粒界152に接し、他端が粒界152の他の箇所に接した状態とすることができる。このような形態とすることで、恰もY軸方向に連続した壁構造を形成する態様となり、絶縁性が向上する。なお、断面に表れる偏析部153は、直線状だけでなく、屈曲していたり、蛇行していたりしてもよい。
【0042】
ここで、偏析部153が形成される条件について考察する。まず、サイドマージン部19におけるSi元素の量をセラミック素体11よりも多くする場合について考察する。この場合、サイドマージン部19と隣接する領域、つまり、図4で示す領域Ar2に、サイドマージン部19側からSi元素を主成分とする液相が移動する。Si元素が多くなると、希土類元素等の添加元素がBTを主成分とする粒子151において体積拡散しにくくなり、均質に固溶しなくなる。この状態でアニーリングを行い、粒径を大きくすると偏析部153が形成される。
【0043】
つぎに、サイドマージン部19におけるSiの量をセラミック素体11よりも少なくする場合について考察する。この場合、サイドマージン部19と隣接する領域、つまり、図4で示す領域Ar2から、サイドマージン部19に、Si元素を主成分とする液相が移動する。Si元素が少ないと、希土類元素等の添加元素がBTを主成分とする粒子151において体積拡散しやすくなり、均質に固溶する。この状態でアニーリングをすると、粒径は大きくなるが、偏析部153は形成されない。
【0044】
このような条件について、表1を参照して詳細に説明する。
【0045】
【表1】
【0046】
表1を参照すると、サイドマージン部19におけるSi元素の量と誘電体層15におけるSi元素の量との比率が示されている。この比率は、上述した比率Ra[15]と比率Ra[19]を比較した値であるので、以下、比率Ra[15]/比率Ra[19]と表記する。なお、この表1を作成するにあたり、誘電体層15におけるSi量は、1at%で一定とした。
【0047】
表1の条件1における比率Ra[15]/比率Ra[19]は、0.8である。条件1では、偏析部153は形成されなかった。なお、条件1において領域Ar2における粒径の中央値は340nmであった。
【0048】
表1の条件2における比率Ra[15]/比率Ra[19]は、1.0である。条件2では、偏析部153は形成されなかった。なお、条件2において領域Ar2における粒径の中央値は360nmであった。
【0049】
このように、比率Ra[15]/比率Ra[19]が1以下である場合は、偏析部153は形成されなかった。
【0050】
表1の条件3における比率Ra[15]/比率Ra[19]は、1.5である。条件3では、偏析部153が形成された。なお、条件3において領域Ar2における粒径の中央値は340nmであった。
【0051】
表1の条件4における比率Ra[15]/比率Ra[19]は、2である。条件4では、偏析部153が形成された。なお、条件4において領域Ar2における粒径の中央値は350nmであった。
【0052】
表1の条件5における比率Ra[15]/比率Ra[19]は、3である。条件5では、偏析部153が形成された。なお、条件5において領域Ar2における粒径の中央値は350nmであった。
【0053】
表1の条件6における比率Ra[15]/比率Ra[19]は、4である。条件6では、偏析部153が形成された。なお、条件4において領域Ar2における粒径の中央値は340nmであった。
【0054】
表1の条件7における比率Ra[15]/比率Ra[19]は、5である。条件7では、偏析部153が形成された。なお、条件4において領域Ar2における粒径の中央値は360nmであった。
【0055】
このように、比率Ra[15]/比率Ra[19]が1よりも大きい場合に、偏析部153が形成された。表1によれば、偏析部153を形成するためには、比率Ra[15]/比率Ra[19]は2以上であることが望ましく、さらに、4以上であることが望ましい。
【0056】
上述のように、表1を作成するにあたり、誘電体層15におけるSi量は、1at%で一定としている。このため、条件1において、サイドマージン部19におけるSi元素の量は0.8at%である。同様に、条件2において、サイドマージン部19におけるSi元素の量は1at%である。条件3において、サイドマージン部19におけるSi元素の量は1.5at%である。条件4において、サイドマージン部19におけるSi元素の量は2at%である。条件5において、サイドマージン部19におけるSi元素の量は3at%である。条件6において、サイドマージン部19におけるSi元素の量は4at%である。条件7において、サイドマージン部19におけるSi元素の量は5at%である。
【0057】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図7は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図8~13は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を模式的に示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図9に沿って、図8~13を適宜参照しながら説明する。
【0058】
(ステップS01:セラミック積層チップCの作製)
ステップS01では、容量形成部16形成用のセラミックシート101及びセラミックシート102と、カバー部18形成用のセラミックシート103と、を積層し、切断することで、未焼成のセラミック積層チップ(積層チップ)Cを作製する。
【0059】
図8に示すセラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスからなるセラミック材料と、有機バインダと、その他の添加剤と、を含む未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。セラミックシート101には、第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成される。セラミックシート102には、第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成される。セラミックシート103には、内部電極が形成されていない。また、容量形成部16用のセラミックシート101及びセラミックシート102には、所望の希土類元素、第1遷移金属元素および第2遷移金属元素が添加されている。また、セラミックシート101及びセラミックシート102には、適量のSi元素を添加しておく。
【0060】
各内部電極112,113は、X軸方向に平行な切断線Lxを横切り、かつY軸方向に平行な切断線Lyに沿って延びる複数の帯状の電極パターンを有する。これらの内部電極112,113は、印刷法等により、導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することで形成される。
【0061】
セラミックシート101,102は、図8に示すように、Z軸方向に交互に積層される。セラミックシート101,102の積層体は、容量形成部16及びエンドマージン部20に対応する。セラミックシート103は、セラミックシート101,102の積層体のZ軸方向上下面に積層される。セラミックシート103の積層体は、カバー部18に対応する。なお、セラミックシート101,102,103の積層枚数等は、適宜調整可能である。
【0062】
続いて、セラミックシート101,102,103の積層体をZ軸方向から圧着し、切断線Lx,Lyに沿って切断する。これにより、図9に示す積層チップCが作製される。
【0063】
積層チップCは、未焼成の内部電極112,113が形成された未焼成の容量形成部116と、未焼成のカバー部118と、未焼成のエンドマージン部120と、を有する。積層チップCには、切断線Lxに対応する切断面である側面Cbと、切断線Lyに対応する切断面である端面Caと、が形成される。側面Cbからは、未焼成の内部電極112,113の端部が露出している。
【0064】
(ステップS02:サイドマージン部119形成)
ステップS02では、積層チップCの側面Cbにサイドマージン部119を形成する。以下、形成方法の一例を示す。
【0065】
まず、サイドマージン部119用のセラミックシート104を準備する。セラミックシート104は、誘電体セラミックスからなるセラミック材料と、有機バインダと、その他の添加剤と、を含む未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。セラミックシート104には、セラミックシート101及びセラミックシート102に添加されたSi元素の量よりも多い量のSi元素を添加しておく。Si元素の添加量は、表1に示した条件を参考に、焼成後に粒子151内に偏析部153が形成される量とされる。
【0066】
セラミックシート104によってサイドマージン部119を形成するために、まず、図10に示すように、平板状の弾性部材Eの上にセラミックシート104を配置する。そして、テープTで一方の側面Cbを保持した積層チップCの他方の側面Cbをセラミックシート104に対向させる。
【0067】
次に、図11に示すように、積層チップCの側面Cbでセラミックシート104を打ち抜くことで、側面Cbにセラミックシート104を貼り付ける。具体的には、積層チップCをセラミックシート104に対してY軸方向に向かって強く押圧する。これにより、積層チップCが、セラミックシート104とともに弾性部材Eに局所的に深く沈み込む。このとき、側面Cbの外縁に沿ってセラミックシート104にせん断力が作用し、このせん断力がセラミックシート104のせん断強さ以上になると、セラミックシート104が打ち抜かれる。
【0068】
そして、図12に示すように、積層チップCとともに沈み込んだセラミックシート104の一部が切り離される。これにより、側面Cb上にサイドマージン部119が形成される。
【0069】
そして、他方の側面Cbについても、同様にサイドマージン部119が形成される。これにより、図13に示す未焼成のセラミック素体111が作製される。
【0070】
(ステップS03:焼成)
ステップS03では、ステップS02で得られたセラミック素体111を焼成することにより、図1に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。ステップS03における焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。また、焼成後の粒子151(図5(A)等参照)が所望の粒径となるように、複数回の焼成工程を実施するようにしてもよい。この場合、各回の焼成温度を調整することで、粒径を調整することができる。
【0071】
サイドマージン部119内のSi元素を主成分とする液相は、セラミック素体11の内方、つまり、セラミックシート101,102が積層された領域に向かって移動できる。液相がセラミックシート101,102の積層領域に向かって移動すると、セラミックシート101,102に添加された希土類元素等は粒子151内において体積拡散し難くなり、均質に固溶し難くなる。このような状態でアニーリング、つまり、焼成を実施すると、粒子151は成長する。その際、添加物質が体積拡散し易い状態であると、添加された希土類元素等は粒界152まで拡散し、粒界152の一部を形成すると考えられる。これに対し、本実施形態では、希土類元素等の添加物は、体積拡散し難くなり、均質に固溶し難くなっている。このため、希土類元素等の添加物は、粒子151内で濃縮された状態で取り残され、偏析部153を形成する。
【0072】
(ステップS04:下地膜形成)
ステップS04では、図2図3に示す端面11a、側面11b及び主面11c上に導電性の下地膜21を形成する。
【0073】
下地膜21は、未焼成の電極材料を端面11a、側面11b及び主面11cに塗布する。塗布方法は、例えばディップ法であるが、従来公知の他の方法、印刷法やスパッタ法等、あるいはこれらを組み合わせた方法でもよい。続いて、未焼成の電極材料を焼き付ける。焼き付けは、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる
【0074】
(ステップS05:メッキ膜形成)
ステップS05では、下地膜21が形成された積層セラミックコンデンサ10を、メッキ膜22を形成するメッキ液に浸漬させて電解メッキを行う。これにより、メッキ膜22が形成される。
【0075】
以上により、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10が製造される。
【0076】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【実施例0077】
つぎに、実施例に対するHALT試験(高加速寿命試験)の結果ついて、比較例と共に説明する。実施例は、実施形態の積層セラミックコンデンサ10に対応し、以下に示す寸法とされたものである。実施例は粒内の偏析部153を有する。一方、比較例は粒内の偏析部153を有していない。実施例は、誘電体層15の厚さt[15]と誘電体層15を形成する粒子151の粒径の組み合わせによって実施例1から実施例9を準備した。比較例についても、誘電体層の厚さと誘電体層を形成する粒子の粒径の組み合わせによって比較例1から比較例12を準備した。粒径は、SEM(Scanning Electron Microscope/走査電子顕微鏡)による断面撮影画像から各粒子における最も長い対角距離を測定し、この測定値の中央値とした。
【0078】
以下に、衝撃付加試験の条件を示す。
試験条件:
炉内温度125℃、通電電圧8Vとする。
寿命判定:
電流値が閾値を超えるまでの時間(分:中央値)を寿命とする。
試験対象品寸法:
0603(長さ×幅×高さ=0.6mm×0.3mm×0.3mm)
試験対象数:
実施例1から9、比較例1から12、各20個とする。
【0079】
(実施例1)
実施例1における誘電体層の厚さは0.3μm、粒径は0.32μmである。HALTの結果は、312分であった。
(実施例2)
実施例2における誘電体層の厚さは0.3μm、粒径は0.24μmである。HALTの結果は、380分であった。
(比較例1)
比較例1における誘電体層の厚さは0.3μm、粒径は0.33μmである。HALTの結果は、87分であった。
(比較例2)
比較例2における誘電体層の厚さは0.3μm、粒径は0.22μmである。HALTの結果は、148分であった。
(比較例3)
比較例3における誘電体層の厚さは0.3μm、粒径は0.16μmである。HALTの結果は、280分であった。
【0080】
(実施例3)
実施例3における誘電体層の厚さは0.5μm、粒径は0.48μmである。HALTの結果は、484分であった。
(実施例4)
実施例4における誘電体層の厚さは0.5μm、粒径は0.36μmである。HALTの結果は、512分であった。
(実施例5)
実施例5における誘電体層の厚さは0.5μm、粒径は0.25μmである。HALTの結果は、550分であった。
(比較例4)
比較例4における誘電体層の厚さは0.5μm、粒径は0.48μmである。HALTの結果は、22分であった。
(比較例5)
比較例5における誘電体層の厚さは0.5μm、粒径は0.36μmである。HALTの結果は、47分であった。
(比較例6)
比較例6における誘電体層の厚さは0.5μm、粒径は0.25μmである。HALTの結果は、139分であった。
(比較例7)
比較例7における誘電体層の厚さは0.5μm、粒径は0.14μmである。HALTの結果は、231分であった。
【0081】
(実施例6)
実施例6における誘電体層の厚さは0.7μm、粒径は0.64μmである。HALTの結果は、723分であった。
(実施例7)
実施例7における誘電体層の厚さは0.7μm、粒径は0.43μmである。HALTの結果は、781分であった。
(実施例8)
実施例8における誘電体層の厚さは0.7μm、粒径は0.33μmである。HALTの結果は、823分であった。
(実施例9)
実施例9における誘電体層の厚さは0.7μm、粒径は0.23μmである。HALTの結果は、845分であった。
(比較例8)
比較例8における誘電体層の厚さは0.7μm、粒径は0.66μmである。HALTの結果は、12分であった。
(比較例9)
比較例9における誘電体層の厚さは0.7μm、粒径は0.43μmである。HALTの結果は、27分であった。
(比較例10)
比較例10における誘電体層の厚さは0.7μm、粒径は0.35μmである。HALTの結果は、86分であった。
(比較例11)
比較例11における誘電体層の厚さは0.7μm、粒径は0.23μmである。HALTの結果は、187分であった。
(比較例12)
比較例12における誘電体層の厚さは0.7μm、粒径は0.16μmである。HALTの結果は、467分であった。
【0082】
実施例と比較例のいずれの場合にも、粒径が大きいほど寿命が短く、粒径が小さいほど寿命が長くなる傾向にあることがわかる。これは、粒径が小さいほど粒界の数が多くなることから、絶縁性が担保し易いためであると考えられる。しかしながら、粒径の大きさの違いに起因する寿命の差は、比較例の方が大きく、実施例の方が小さい。これは、各実施例では、粒子151内に偏析部153が形成されており、この偏析部153が絶縁性を高めているためであると考えられる。
【0083】
このため、実施例では、誘電体層の厚さと粒径とが概ね一致するような場合であっても、良好な寿命特性を得ることができている。誘電体層15の厚さt[15]が薄くなり、誘電体層15の厚さ方向の粒子の数が少ない場合であっても偏析部153を備えることで、良好な絶縁性、ひいては寿命特性を得ることができる。
【0084】
【表2】
【0085】
上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10について説明したが、本発明は誘電体層と内部電極とが積層された積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0086】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
11a…端面
11b…側面
11c…主面
12,13…内部電極
14a,14b…外部電極
21…下地膜
22…メッキ膜
151…粒子
152…粒界
153…偏析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13