(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146464
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】発泡体および積層体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241004BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20241004BHJP
A43B 13/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
C08L23/08
A43B13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059373
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 達弥
(72)【発明者】
【氏名】土屋 聖人
(72)【発明者】
【氏名】野田 公憲
【テーマコード(参考)】
4F050
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F050BA02
4F050HA63
4F050HA67
4F050HA73
4F074AA17A
4F074AA26A
4F074AB01
4F074AB03
4F074AB05
4F074BA32
4F074BA86
4F074BB02
4F074BB28
4F074BC12
4F074CA29
4F074CC06X
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA09
4F074DA23
4F074DA24
4F074DA36
4F074DA45
4F074DA54
4J002BB05W
4J002BB06X
4J002EK006
4J002EK026
4J002FD146
4J002FD320
4J002GL00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、アゾジカルボンアミド(ADCA)をはじめとする化学発泡剤に由来する臭気や変色の抑制と、優れた発泡体性能とを両立することのできる発泡体を提供することを目的とする。
【解決手段】エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含み、化学発光法により測定した残留窒素量が200ppm以下である発泡体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含み、
化学発光法により測定した残留窒素量が200ppm以下である
発泡体。
【請求項2】
エチレン・極性モノマー共重合体(B)を含む請求項1に記載の発泡体。
【請求項3】
架橋剤(C)を含む請求項1に記載の発泡体。
【請求項4】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が下記要件(A-a)及び(A-b)を満たす請求項1に記載の発泡体;
(A-a)密度が0.850~0.910g/cm3の範囲にある;
(A-b)ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が、0.01~200g/10分の範囲にある。
【請求項5】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が下記要件(A-c)及び(A-d)を満たす請求項1に記載の発泡体;
(A-c)1H-NMRにより求められる炭素数1000個あたりのビニル基含有量が0.025~0.3個の範囲にある;
(A-d)MFR10/MFR2.16が7~20の範囲にある(ただし、MFR10は、ASTM D1238の方法により190℃、10kg荷重で測定したメルトフローレートであり、MFR2.16は、ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートである)。
【請求項6】
請求項1に記載の発泡体からなる層と、
ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群より選ばれる少なくとも1種の素材からなる層と
を有する積層体。
【請求項7】
請求項1に記載の発泡体または請求項6に記載の積層体を含む履物。
【請求項8】
請求項1に記載の発泡体または請求項6に記載の積層体を含む履物用部品。
【請求項9】
前記履物用部品が、ミッドソール、インナーソールまたはソールである請求項8に記載の履物用部品。
【請求項10】
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を物理的に発泡させる工程を含む発泡体の製造方法。
【請求項11】
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、架橋剤(C)とを含む組成物を物理的に発泡させる工程を含む発泡体の製造方法。
【請求項12】
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を超臨界流体に含浸させる工程を含む発泡体の製造方法。
【請求項13】
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、架橋剤(C)とを含む組成物を超臨界流体に含浸させる工程を含む発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体および積層体、より詳しくは、エチレン・α-オレフィン共重合体を含む発泡体および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
低比重すなわち軽量かつ柔軟で、機械強度の高い架橋発泡体は、建築内外装材、内装材やドアグラスラン等の自動車部品、包装材料、日用品等に従来から広く用いられている。軽量化のために樹脂を発泡させただけの発泡体は、機械強度が低いため、さらに樹脂の架橋反応により発泡体内の分子鎖を結合させることにより、機械強度の低下を抑制することは公知技術である。
【0003】
また、履物あるいは履物用部品、たとえばスポーツシューズ等の靴底(主にミッドソール)にも、樹脂の架橋発泡体が使用されている。履物あるいは履物用部品には、軽量で、長期間の使用による変形を抑え、過酷な使用条件に耐え得る機械強度および反発弾性を有する条件が要求されるためである。
【0004】
靴底用に、エチレン・酢酸ビニル共重合体の架橋発泡体が従来から使用されていることは広く知られているが、このエチレン・酢酸ビニル共重合体組成物を用いて成形される架橋発泡体は、比重が高く、かつ圧縮永久歪みが大きいため、たとえば靴底に用いた場合、重く、かつ長期の使用により靴底が圧縮され反発弾性等の機械強度が失われていくという問題がある。
【0005】
一方、エチレン・α-オレフィン共重合体を用いた架橋発泡体は、機械的強度が高く、軽量でかつ柔軟であることから、建築用外装材、内装材、ドアグラスランなどの自動車部品、包装材料、日用品などに用いられるほか、履物あるいは履物用部品、たとえばスポーツシューズ等の靴底(主にミッドソール)にも使用が試みられている。これに関連して、特許文献1および2には、エチレン・α-オレフィン共重合体を用いた架橋発泡体、エチレン・酢酸ビニル共重合体とエチレン・α-オレフィン共重合体との混合物を用いた架橋発泡体に係る発明がそれぞれ記載されているが、これらの発明では、低比重性、圧縮永久歪み性が改良されるものの、充分な性能が得られていない。
【0006】
低比重で圧縮永久歪みが小さい発泡体を得るための試みは種々なされてきている。例えば、特許文献4には、履き物及び履物用部品に用いうる発泡体として、エチレン・α-オレフィン共重合体と少量のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とアゾジカルボンアミド(ADCA)と架橋剤とを含む組成物を架橋発泡させてなる発泡体が開示されている。ここで、特許文献4には、この発泡体が、低比重でありながら、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含まない組成物から得られる発泡体と比べて圧縮永久歪みが小さいことも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平9-501447号公報
【特許文献2】特開平11-206406号公報
【特許文献3】特開平11-5818号公報
【特許文献4】国際公開第2007/132731号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エチレン・α-オレフィン共重合体の発泡体は、エチレン・α-オレフィン共重合体をガスによって膨張させることによって製造される。ここで、エチレン・α-オレフィン共重合体を膨張させる代表的な方法として、物理発泡及び化学発泡が挙げられる。
【0009】
物理発泡は、高圧下でエチレン・α-オレフィン共重合体などのプラスチックにガス又は超臨界流体を溶解させ、その後圧力低下または加熱によって当該ガス等の溶解度を低下させることによって気泡を生成させることによって、当該プラスチックの発泡を行う方法である。ここで、物理発泡に用いられる前記ガス又は超臨界流体は、物理発泡剤と呼ばれている。エチレン・α-オレフィン共重合体などのプラスチックを物理発泡させる場合、発泡が十分多く行われるよう、従来、物理発泡剤として、フロンや炭化水素等プラスチックに対する溶解性の高い物質の液化ガスが用いられている。しかし、フロンや炭化水素には、オゾン層破壊、地球温暖化、可燃性などの問題があり、二酸化炭素や窒素などより安全な物質への代替が検討されている。ただ、二酸化炭素や窒素は、通常の気体状態では、フロンや炭化水素と比べてプラスチックに対する溶解性が低い傾向にある。
【0010】
一方、化学発泡は、エチレン・α-オレフィン共重合体などのプラスチックに、化学反応によってガスを発生させる化学物質を配合し、当該化学物質の化学反応により発生するガスによって気泡を生成させることによって、当該プラスチックの発泡を行う方法である。ここで、化学発泡に用いられる前記化学物質は、化学発泡剤と呼ばれている。このような化学発泡剤として、アゾジカルボンアミド(ADCA)などの有機系化学発泡剤、および、重曹などの無機系化学発泡剤が挙げられる。
【0011】
ここで従来は、エチレン・α-オレフィン共重合体の発泡体を製造するにあたり、汎用の成形機を用いて容易に発泡体を製造することができ、且つ、熱分解時に発生するガスの量が多いことから、アゾジカルボンアミド(ADCA)などの有機系化学発泡剤が広く用いられている。ただ、アゾジカルボンアミド(ADCA)などの有機系化学発泡剤を用いて発泡体を製造する場合、得られる発泡体において、当該有機系化学発泡剤に由来する臭気や変色などの問題が生じることがある。そのような発泡体を履物および履物用部品に用いる場合、臭気や変色などの問題は可能な限り低減させることが求められる。
【0012】
そこで、本発明は、アゾジカルボンアミド(ADCA)をはじめとする化学発泡剤に由来する臭気や変色の抑制と、優れた発泡体性能とを両立することのできる発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、エチレン・α-オレフィン共重合体の発泡体において、ある特定の成分の含有量を一定以下にすることにより上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、以下の[1]~[13]に関する。
[1]
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A) を含み、
化学発光法により測定した残留窒素量が200ppm以下 である
発泡体。
【0015】
[2]
エチレン・極性モノマー共重合体(B) を含む[1]に記載の発泡体。
[3]
架橋剤(C) を含む[1]または[2]に記載の発泡体。
【0016】
[4]
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が下記要件(A-a)及び(A-b)を満たす[1]~[3]のいずれかに記載の発泡体;
(A-a)密度が0.850~0.910g/cm3の範囲にある;
(A-b)ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が、0.01~200g/10分の範囲にある。
【0017】
[5]
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が下記要件(A-c)及び(A-d)を満たす[1]~[4]のいずれかに記載の発泡体;
(A-c)1H-NMRにより求められる炭素数1000個あたりのビニル基含有量が0.025~0.3個の範囲にある;
(A-d)MFR10/MFR2.16が7~20の範囲にある(ただし、MFR10は、ASTM D1238の方法により190℃、10kg荷重で測定したメルトフローレートであり、MFR2.16は、ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートである)。
【0018】
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の発泡体からなる層と、
ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群より選ばれる少なくとも1種の素材からなる層と
を有する積層体。
【0019】
[7]
[1]~[5]のいずれかに記載の発泡体または[6]に記載の積層体を含む履物。
[8]
[1]~[5]のいずれかに記載の発泡体または[6]に記載の積層体を含む履物用部品。
【0020】
[9]
前記履物用部品が、ミッドソール、インナーソールまたはソールである[8]に記載の履物用部品。
【0021】
[10]
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を物理的に発泡させる工程を含む発泡体の製造方法。
【0022】
[11]
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、架橋剤(C)とを含む組成物を物理的に発泡させる工程を含む発泡体の製造方法。
【0023】
[12]
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を超臨界流体に含浸させる工程を含む発泡体の製造方法。
【0024】
[13]
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、架橋剤(C)とを含む組成物を超臨界流体に含浸させる工程を含む発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、臭気や変色の抑制と、優れた発泡体性能とを両立することのできる発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について具体的に説明する。
ここで、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、例えば「M~N」(MおよびNは、M<Nを満たす数値とする。)と表記した場合、特に断りがなければ「M以上、N以下」を意味する。
【0027】
また、本明細書において、ある重合体を構成するオレフィンをMとしたときに、「Mから導かれる構成単位」なる表現が用いられることがあるが、これは「Mに対応する構成単位」、すなわち、Mの二重結合を構成するπ結合が開くことにより形成される、一対の結合手を有する構成単位をいう。例えば、「エチレンから導かれる構成単位」とは、-CH2-CH2-で表される構成単位を意味し、「α-オレフィンから導かれる構成単位」とは、具体的には、-CH2-CRR’- (RおよびR’はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基)で表される構成単位を意味する。
【0028】
[発泡体]
本発明の発泡体は、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含み、化学発光法により測定した残留窒素量が200ppm以下である。
【0029】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(A)>
本発明の発泡体を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなる共重合体である。すなわち、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンから導かれる構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位とからなる共重合体である。エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィンは、例えば、化石燃料由来のモノマーもしくはバイオマス由来のモノマーであってもよく、これらのモノマーを1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0030】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成するα-オレフィンは、炭素数3~20のα-オレフィンであり、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。これらのうちでも、炭素数3~10のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましい。これらのα-オレフィンは、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0031】
また、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンから導かれる構成単位を通常75~95モル%、好ましくは80~95モル%の量で含有しており、炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位を5~25モル%、好ましくは5~20モル%の量で含有していることが望ましい。ここでエチレンとα-オレフィンの合計量は100モル%である。
【0032】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、下記要件(A-a)及び(A-b)を満たすことが好ましい。
【0033】
(A-a)密度が0.850~0.910g/cm3の範囲にある。
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、密度が通常0.850g/cm3以上、好ましくは0.855g/cm3以上、より好ましくは0.857g/cm3以上、さらに好ましくは0.858g/cm3以上であり、通常0.910g/cm3以下、好ましくは0.909g/cm3以下、より好ましくは0.908g/cm3以下、さらに好ましくは0.907g/cm3以下である。なお、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の密度は、ASTM D1505により23℃で測定した値である。密度がこのような範囲を満たす場合には、得られる発泡体が、柔軟性と強度のバランスや、剛性と耐衝撃強度のバランスに優れるため好ましい。
【0034】
(A-b)ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が、0.01~200g/10分の範囲にある。
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、MFR2.16(ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート)が、0.01~200g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0035】
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)においては、好ましくはこの範囲内において、用途に応じたMFRを適宜選択することができる。本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)のMFR2.16は、特に限定されるものではないが、通常0.01g/10分以上、好ましくは0.08g/10分以上、より好ましくは0.05g/10分以上、さらに好ましくは0.1g/10分以上、特に好ましくは0.2g/10分、通常200g/10分以下、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは40g/10分以下、さらに好ましくは25g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の分子量が大きいほどMFR2.16は小さくなる傾向にある。
【0036】
MFR2.16が上記上限値以下であることは、得られる成形体の強度が向上する点で好ましく、MFR2.16が上記下限値以上であることは、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の溶融成形時の流動性が向上する点で好ましい。
【0037】
上記要件(A-a)及び(A-b)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、熱可塑性エラストマーの形態を有していてもよく、あるいは、熱可塑性樹脂の形態を有していてもよい。
【0038】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、上記要件(A-a)及び(A-b)に加えて、好ましくは、下記要件(A-c)と下記要件(A-d)とのうちのいずれか一方を、さらに好ましくは、下記要件(A-c)と下記要件(A-d)との両方を、さらに満たすことが好ましい。
【0039】
(A-c)1H-NMRにより求められる炭素数1000個あたりのビニル基含有量が0.025~0.3個の範囲にある。
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の炭素数1000個あたりのビニル基含量の下限値は、通常0.025個、好ましくは0.026個、より好ましくは0.027個、さらに好ましくは0.028個、特に好ましくは0.03個である。また、本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の炭素数1000個あたりのビニル基含量の上限値は通常0.3個であり、好ましくは0.2個、より好ましくは0.15個、さらに好ましくは0.1個、特に好ましくは0.09個である。ビニル基含量が上記範囲にあることは、得られる成形体の機械的強度が向上する点で好ましい。
【0040】
なお、ビニル基含有量の具体的な測定方法は、後述する実施例中、「二重結合量」の項で詳述する。
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)中において、ビニル基は通常共重合体の末端部に存在する。本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、炭素数1000個あたりのビニル基の含有量が上記の範囲であり、架橋性を有する。ビニル基の含有量が上記範囲にあると、得られる成形体の機械的強度が優れるため好ましい。ビニル基の含有量が、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の炭素数1000個あたり0.3個以下では、加熱成形時の架橋や重合体主鎖の切断が少なくなり、成形加工性に優れる。ビニル基の含有量が、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の炭素数1000個あたり0.025個以上では、架橋がしやすくなり、成形体や架橋発泡体の圧縮永久歪み(CS)や機械的強度に優れる。
【0041】
(A-d)MFR10/MFR2.16が7~20の範囲にある。
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、MFR10/MFR2.16が、好ましくは7~20、より好ましくは7.2~15、さらにより好ましくは7.5~12の範囲にある。ここでMFR10は、ASTM D1238の方法により190℃、10kg荷重で測定したメルトフローレート(g/10分)であり、MFR2.16は、ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(g/10分)である。
【0042】
MFR10/MFR2.16は共重合体の長鎖分岐の程度の指標の一つになると考えられている値であり、MFR10/MFR2.16値が上記の範囲では、長鎖分岐を有することが特定される。MFR10/MFR2.16値が小さいと、長鎖分岐が少ないことが表される。MFR10/MFR2.16値が7以上である場合には、これを多く含む組成物から架橋発泡体を製造する場合に、得られる架橋発泡体の形状の精度が高くなり、架橋発泡体の寸法安定性に優れる。またエチレン系共重合体のMFR10/MFR2.16値が20以下である場合、強度などの物性に優れる。
【0043】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)のMFR10/MFR2.16値が上記下限値未満では、例えば、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を、発泡剤や架橋剤等の成分とともに組成物として、射出成形および発泡を行って発泡体を製造する場合に、得られる発泡体の形状の精度が低いものとなり、発泡体の寸法にばらつきが出る場合がある。またエチレン・α-オレフィン共重合体(A)のMFR10/MFR2.16値が上記上限値を超えて大きすぎる場合には、寸法のばらつきの程度は若干改善されるものの、得られる発泡成形体の強度などの物性が低下する場合があるため好ましくない傾向がある。
【0044】
本発明では、発泡体を構成する重合体成分として上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を用いることにより、重合体成分として上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の代わりにエチレン・酢酸ビニル共重合体を採用したときと比べて、圧縮永久歪みが小さい発泡体が得られやすい傾向がある。そして、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の中では、上記要件(A-a)及び(A-b)のみを満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)よりも、上記要件(A-a)~(A-d)の要件を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の方が、圧縮永久歪みがより小さい発泡体を与えやすい傾向がある。
【0045】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体は、上記要件(A-a)および(A-b)等に加えて、さらに、下記要件(A-e)及び/または(A-f)も満たすことが好ましい。
(A-e)Mw/Mn
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から求められる重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比として算出される分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.5~3.5、より好ましくは1.5~3.0である。Mw/Mnは、オレフィン重合用触媒の項で記したとおりに重合用触媒を適切に選択することで上記範囲内にすることができる。また、上記範囲内にあることは、溶融成形性および得られる成形体の強度が向上する点で好ましい。
【0046】
(A-f)融点(Tm)
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、特に限定されるものではないが、DSCの吸熱曲線から求められる融点(Tm)が、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは55℃以上であり、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。エチレン系共重合体(A)の融点が上記範囲であると、反発弾性と熱収縮率のバランスの点で好ましい。
【0047】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法>
上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法は、特に限定されないものの、例えば、オレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンの少なくとも一種とを共重合させることにより好適に製造することができる。
【0048】
・オレフィン重合用触媒
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、上述した特性を有するものであり、その製造方法は何ら限定されるものではないが、たとえば、下記触媒成分〔A〕および〔B〕からなるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンからなる群より選ばれる1種以上とを共重合することにより製造することができる。
【0049】
〔A〕下記一般式[I]で表される架橋型メタロセン化合物。
【0050】
【0051】
(式[I]中、Mは遷移金属を表し、pは遷移金属の原子価を表し、例えば4であり、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれは水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、例えば、塩素原子であり、R1およびR2は同一でも異なっていてもよいMに配位したπ電子共役配位子を表し、QはR1とR2とを架橋する2価の基を表す。)
〔B〕(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b-2)前記架橋型メタロセン化合物〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物、および
(b-3)有機アルミニウム化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物。
【0052】
共重合は、たとえば、このようなオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンおよびα-オレフィンからなる群より選ばれる1種以上のモノマーを0~200℃の温度で溶媒の共存下で溶液重合することによって行うことができる。
【0053】
しかしながら本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、上述した特性を満たす限り上記製造方法には何ら限定されるものではなく、たとえば、共重合において上記式[I]で表される構造とは異なる構造のメタロセン化合物を使用しても良いし、前記触媒成分〔B〕以外の助触媒を使用してもよいし、公知の二種類以上のエチレン系共重合体を用いて、反応器ブレンドや物理ブレンド等の手法によって調製してもよい。
【0054】
以下、触媒成分〔A〕および〔B〕を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンからなる群より選ばれる1種以上とを共重合する、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を製造する上述の方法についてさらに説明する。
【0055】
触媒成分〔A〕
触媒成分〔A〕は、上記式[I]で表される架橋型メタロセン化合物である。上記式[I]中、Mで表される遷移金属としては、たとえば、Zr、Ti、Hf、V、Nb、TaおよびCrが挙げられ、好ましい遷移金属はZr、TiまたはHfであり、さらに好ましい遷移金属はZrまたはHfである。
【0056】
一般式[I]中、R1およびR2で表されるπ電子共役配位子としては、η-シクロペンタジエニル構造、η-ベンゼン構造、η-シクロヘプタトリエニル構造、およびη-シクロオクタテトラエン構造を有する配位子が挙げられ、特に好ましい配位子はη-シクロペンタジエニル構造を有する配位子である。η-シクロペンタジエニル構造を有する配位子として、たとえば、シクロペンタジエニル基、インデニル基、水素化インデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシなどの炭化水素基、トリアルキルシリル基などの炭化水素基含有シリル基、鎖状または環状アルキレン基などでさらに置換されていてもよい。R1で表されるπ電子共役配位子と、R2で表されるπ電子共役配位子とは、同じであっても互いに異なっていてもよい。本発明の好適且つ例示な態様の1つにおいて、R1で表されるπ電子共役配位子と、R2で表されるπ電子共役配位子とは、互いに異なっており、例えば、R1で表されるπ電子共役配位子がシクロペンタジエニル基で、R2で表されるπ電子共役配位子がオクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基であってもよい。
【0057】
なお、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基は1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-(5a,5b,11a,12,12a-η5)-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンゾ[b,H]フルオレニル基を表す。
【0058】
一般式[I]中、Qで表されるR1とR2とを架橋する基は、2価の基であれば特に限定されないが、たとえば、直鎖または分枝鎖アルキレン基、非置換または置換シクロアルキレン基、アルキリデン基、非置換または置換シクロアルキリデン基、非置換または置換フェニレン基、シリレン基、ジアルキル置換シリレン基、ゲルミル基、ジアルキル置換ゲルミル基などが挙げられる。本発明の好適且つ例示な態様の1つにおいて、Qで表されるR1とR2とを架橋する基は、ジ(p-トリル)メチレン基である。
【0059】
触媒成分〔A〕としては、後述する実施例で用いるメタロセン錯体を具体的に例示することができるが、これらの化合物に何ら限定されるものではない。
このような触媒成分〔A〕は、触媒成分〔B〕とともにオレフィン重合用触媒として用いるのが好ましい。
【0060】
触媒成分〔B〕
触媒成分〔A〕を、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を製造するためのオレフィン重合触媒の成分として用いる場合、オレフィン重合触媒は、(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b-2)触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物、および(b-3)有機アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から構成される触媒成分〔B〕を含むことが好ましい。ここで、触媒成分〔B〕は、重合活性と生成オレフィン重合体の性状の視点から、次の[c1]~[c4]のいずれかの態様で好ましく用いられる。
【0061】
[c1] (b-1)有機アルミニウムオキシ化合物のみ、
[c2] (b-1)有機アルミニウムオキシ化合物と(b-3)有機アルミニウム化合物、
[c3] (b-2)触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物と(b-3)有機アルミニウム化合物、
[c4] (b-1)有機アルミニウムオキシ化合物と(b-2) 触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物。
【0062】
ただし、触媒成分〔A〕として、一般式[I]においてQがシリレン基である架橋型メタロセン化合物を用いる場合は、〔B〕成分としては、(b-2)触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物が使用されることはなく、上記の好ましい〔B〕成分; [c1]~[c4]においても、[c1]と[c2]のみが採用される。
【0063】
以下、触媒成分〔B〕を構成しうる各成分について具体的に説明する。
(b-1) 有機アルミニウムオキシ化合物
有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用できる。具体的には、下記一般式[II]および/または一般式[III]で表される化合物が挙げられる。
【0064】
【0065】
(式[II]または[III]中、Rは炭素数1~10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。)で代表される化合物を挙げることができ、特にRがメチル基であるメチルアルミノキサンでnが3以上、好ましくは10以上のものが利用される。(一般式[II]または[III]においてRがメチル基である有機アルミニウムオキシ化合物を、以下「メチルアルミノキサン」と呼ぶ場合がある。)
また、有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)としては、飽和炭化水素に溶解するメチルアルミノキサン類縁体を用いることも好ましく、たとえば下記一般式[IV]のような修飾メチルアルミノキサンを例示できる。
【0066】
【0067】
(式[IV]中、Rは炭素数2~20の炭化水素基、m、nは2以上の整数を示す。)
前記一般式[IV]で表わされる修飾メチルアルミノキサンは、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製され(例えば、US4960878やUS5041584等に製造法が開示)、東ソー・ファインケム社等メーカーからトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製された、Rがイソブチル基であるものがMMAO、TMAOといった商品名で商業生産されている(例えば、「東ソー研究・技術報告」第47巻55(2003)参照)。
【0068】
さらに有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)としては、特開平2-78687号公報に例示されているベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物を用いてもよく、下記一般式[V]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を用いてもよい。
【0069】
【0070】
(式[V]中、Rcは炭素数が1~10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数が1~10の炭化水素基を示す。)
なお、上述した(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物中には若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
【0071】
(b-2)触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物
上記触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物(b-2)(以下、「イオン性化合物(b-2)」と略称する場合がある。)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、イオン性化合物(b-2)としては、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0072】
本発明において、好ましく採用されるイオン性化合物(b-2)は、下記一般式[VI]で表される化合物である。
【0073】
【0074】
式[VI]中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。Rf~Riは、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基である。
【0075】
前記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
【0076】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N, N-ジメチルアニリニウムカチオン、N, N-ジエチルアニリニウムカチオン、N, N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN, N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0077】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0078】
上記のうち、Re+としては、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N, N-ジメチルアニリニウムカチオン、N, N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0079】
カルベニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、具体的には、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。
【0080】
アンモニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩などを挙げることができる。
【0081】
トリアルキル置換アンモニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0082】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0083】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
【0084】
その他のイオン性化合物(b-2)としては、本出願人によって開示(特開2004-51676号公報)されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
上記のイオン性化合物(b-2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いることもできる。
【0085】
(b-3) 有機アルミニウム化合物
有機アルミニウム化合物(b-3)としては、例えば下記一般式[VII]で表される有機アルミニウム化合物、下記一般式[VIII]で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物などを挙げることができる。
【0086】
Ra
mAl(ORb)nHpXq … [VII]
(式[VII]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
上記一般式[VII]で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリt-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
一般式(i-C4H9)xAly(C5H10)z (式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)などで表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
一般式Ra
2.5Al(ORb)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0087】
M2AlRa
4 … [VIII]
(式[VIII]中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。このような化合物としては、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4 などを例示することができる。
【0088】
また、上記一般式[VII]で表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2などを挙げることができる。
【0089】
(b-3)有機アルミニウム化合物としては、入手容易性の点から、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましく用いられる。
・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、上述のオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンの少なくとも1種とを共重合させることにより好適に製造することができる。共重合は、たとえば、溶媒の共存下で溶液重合することによって行うことができる。ここで重合温度は、特に限定されるものではないが、たとえば80℃以上、好ましくは90℃以上とすることができる。このような温度で共重合反応を行うと、得られるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)のMFR10/MFR2.16を大きくすることができ、またビニル基含有量を多いものとすることができるため好ましい。
【0090】
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、例えば触媒成分〔A〕および触媒成分〔B〕を任意の順序で重合器に添加する方法を例示することができる。
上記方法においては、各触媒成分の2つ以上が予め接触されていてもよい。
【0091】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの少なくとも1種との共重合を行い、本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を製造する場合、触媒成分〔A〕は、反応容積1リットル当り、通常10-9~10-1モル、好ましくは10-8~10-2モルになるような量で用いられる。
【0092】
成分(b-1)は、成分(b-1)と、成分〔A〕中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(b-1)/(M)]が通常1~10000、好ましくは10~5000となるような量で用いられる。成分(b-2)は、成分〔A〕中の全遷移金属(M)とのモル比[(b-2)/(M)]が、通常0.5~50、好ましくは1~20となるような量で用いられる。成分(b-3)は、重合容積1リットル当り、通常0~5ミリモル、好ましくは約0~2ミリモルとなるような量で用いられる。
【0093】
ここで、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとの仕込みモル比は、目的とするエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の特性に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、通常、エチレン:α-オレフィン=10:90~99.9:0.1、好ましくはエチレン:α-オレフィン=30:70~99.9:0.1、さらに好ましくはエチレン:α-オレフィン=50:50~95.0:5.0である。
【0094】
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、直鎖状または分岐状のα-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどを挙げることができる。これらのα-オレフィンの中では、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが特に好ましく用いられる。本発明では、これらのうち炭素数3~10のα-オレフィンがより好ましく用いられる。
【0095】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造に好ましく採用される「溶液重合」とは、共重合反応に不活性な炭化水素溶媒中にポリマーが溶解した状態で重合を行う方法の総称である。本発明に関わる溶液重合における重合温度は、通常0~200℃程度の範囲とすることができるが、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上とすることが望ましい。
【0096】
本発明に関わる溶液重合においては、重合温度が0℃に満たない場合、その重合活性は極端に低下するので生産性の点で実用的でなく、さらにエチレン・α-オレフィン共重合体(A)のビニル基含量が低下する場合がある。また、0℃以上の重合温度領域では温度が高くなるに従い、重合時の溶液粘度が低下し、重合熱の除熱も容易となり、さらに、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)のビニル基含量が増加する。しかしながら、重合温度が200℃を超えると、重合活性が極端に低下する場合もある。本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、比較的高いMFR10/MFR2.16値を有し、ビニル基含量が比較的多いものであることから80℃以上、好ましくは90℃以上の比較的高温で共重合を行うことが好ましい。
【0097】
重合圧力は、通常常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~8MPaゲージ圧の条件下であり、共重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。反応時間(共重合反応が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なり適宜選択することができるが、通常1分間~3時間、好ましくは10分間~2.5時間である。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する触媒成分〔B〕の量により調節することもできる。重合系に水素を添加する場合、その量は生成するエチレン系共重合体1kgあたり0.001~5,000NL程度が適当である。また、得られるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)のビニル基量は、重合温度を高くすること、水素添加量を極力少なくすることで増加させることができる。また、得られるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)のMFR10/MFR2.16は、大きいほど長鎖分機構造を多く含有することを表す指標となるが、後述の実施例のような配位重合の場合、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)中の長鎖分岐構造は、β-水素脱離反応により生成した末端ビニル基を有する分子鎖(マクロモノマー)が、再挿入することにより生成すると考えられている。このため、溶液中のマクロモノマー濃度とエチレン濃度との比([マクロモノマー]/[エチレン])を増減させることで、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)のMFR10/MFR2.16の値を制御することができる。一般的に[マクロモノマー]/[エチレン]が高いとエチレン系重合体中の長鎖分岐量は増加し、[マクロモノマー]/[エチレン]が低いとエチレン系重合体中の長鎖分岐量は低下する。溶液中の[マクロモノマー]/[エチレン]を増減させる手法には具体的には以下の[1]~[4]のような方法が挙げられる。
【0098】
[1] 重合温度
重合温度が高いほどβ-水素脱離反応は起こり易くなる。そのため、重合温度を高くすれば、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
【0099】
[2] ポリマー濃度
溶液中のポリマー濃度を高くすれば、相対的にマクロモノマー濃度も高くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
【0100】
[3] エチレン転化率
エチレン転化率を高くすれば、溶液中のエチレン濃度が低くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
【0101】
[4] 溶媒種
重合溶媒を低沸点の溶媒にすると、溶液中のエチレン濃度が低くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
【0102】
他にも、β-水素脱離反応を制御する以外にAlへの連鎖移動反応等を制御することによって[マクロモノマー]/[エチレン])を増減させ、エチレン系重合体中の長鎖分岐量を変化させることもできる。
【0103】
溶液重合において用いられる溶媒は通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50℃~200℃の飽和炭化水素である。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられる。なおベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も本発明の高温溶液重合に関わる「不活性炭化水素溶媒」の範疇に入り、その使用を制限するものではない。前記したように、本発明に係る高温溶液重合においては、従来繁用されてきた芳香族炭化水素溶解タイプの有機アルミニウムオキシ化合物のみならず、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解するMMAOのような修飾メチルアルミノキサンを使用できる。この結果、溶液重合用の溶媒として脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素を採用すれば、重合系内や生成するエチレン系重合体中に芳香族炭化水素が混入する可能性をほぼ完全に排除することが可能となった。すなわち、本発明に関わる高温溶液重合方法は、環境負荷を軽減化でき人体健康への影響を最小化できるという特徴も有するのである。
【0104】
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン・α-オレフィン共重合体(A)および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施されるのが好ましい。
【0105】
<エチレン・極性モノマー共重合体(B)>
本発明の発泡体は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に加えて、エチレン・極性モノマー共重合体(B)を含んでいてもよい。この場合、本発明の発泡体は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、エチレン・極性モノマー共重合体(B)とを含む組成物から形成されることになる。
【0106】
エチレン・極性モノマー共重合体(B)の極性モノマーとしては、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、そのアミド、ビニルエステル、一酸化炭素などを例示することができる。より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属の塩やマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などの一種または二種以上などを例示することができる。
【0107】
エチレン・極性モノマー共重合体(B)として、より具体的には、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部または全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸n-ブチル共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸n-ブチル・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル・不飽和カルボン酸共重合体およびそのカルボキシル基の一部または全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体のようなエチレン・ビニルエステル共重合体などを代表例として例示することができる。
【0108】
これらの中では特に、エチレンと、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステルおよび酢酸ビニルからなる群より選ばれる極性モノマーとの共重合体が好ましく、特にエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアイオノマーやエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体またはそのアイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体が最も好ましい。
【0109】
エチレン・極性モノマー共重合体(B)を構成するモノマーであるエチレンおよび極性モノマーは、例えば、化石燃料由来のモノマーもしくはバイオマス由来のモノマーであってもよく、これらのモノマーを1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0110】
このようなエチレン・極性モノマー共重合体(B)としては、極性モノマーの種類によっても異なるが、極性モノマー含量が通常1~50質量%、とくに5~45質量%ものが好ましい。このようなエチレン・極性モノマー共重合体としてはまた、成形加工性、機械的強度などを考慮すると、MFR2.16が0.05~500g/10分、とくに0.1~100g/10分のものを使用するのが好ましい。エチレンと、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、ビニルエステルなどとの共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。またエチレンと不飽和カルボン酸の金属塩の共重合体(アイオノマー)は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体と相当する金属化合物を反応させることによって得ることができる。
【0111】
本発明において、エチレン・極性モノマー共重合体(B)がエチレン・酢酸ビニル共重合体の場合、エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は、通常10~30質量%、好ましくは15~30質量%、さらに好ましくは15~25質量%である。また、このエチレン・酢酸ビニル共重合体は、MFR2.16が好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは5g/10分以下である。
【0112】
本発明の発泡体において、エチレン・極性モノマー共重合体(B)は任意成分であるが、本発明の発泡体がエチレン・極性モノマー共重合体(B)を含む場合には、当該発泡体を積層体としたときに、得られた発泡体層がポリウレタン、ゴム、皮革等からなる他の層と接着性に優れる傾向にある。したがって、本発明の発泡体は、積層体を構成する層としても好ましく用いうる。
【0113】
本発明の発泡体が、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)とエチレン・極性モノマー共重合体(B)とを含む組成物から形成される場合、この組成物が、上述したエチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、エチレン・極性モノマー共重合体(B)とを、(A)が100~20質量部、(B)が0~80質量部の割合で含み、(A)が100質量部、(B)が0質量部であることが好ましい態様の1つである。また(B)を含む場合には好ましくは(A)が99~20質量部、(B)が1~80質量部の割合で含む(ここで(A)と(B)との合計を100質量部とする)。すなわちエチレン・α-オレフィン共重合体(A)とエチレン・極性モノマー共重合体(B)とを含む組成物においては、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)とエチレン・極性モノマー共重合体(B)の質量比((A)/(B))が、100/0~20/80であり、100/0であることが好ましい態様の1つである。(B)を含む場合には好ましくは99/1~20/80、より好ましくは80/20~40/60の範囲であるのが望ましい。
【0114】
<その他の重合体成分>
本発明の発泡体が、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)とエチレン・極性モノマー共重合体(B)とを含む組成物から形成される場合、この組成物は、必要に応じてエチレン・α-オレフィン共重合体(A)にもエチレン・極性モノマー共重合体(B)にも該当しないその他の重合体成分(以下、「その他の重合体成分」)を含有してもよい。その他の重合体成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体などが挙げられる。本発明に係る組成物が、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)およびエチレン・極性モノマー共重合体(B)以外の重合体成分を含有する場合、その含有量は、(A)と(B)との合計100質量部に対して、通常30質量部以下、好ましくは1~20質量部程度であるのが望ましい。
【0115】
なお、本明細書において、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、オプショナルの上記エチレン・極性モノマー共重合体(B)と、オプショナルの上記その他の重合体成分とを総称して、「重合体成分」と呼ぶ場合がある。
【0116】
<架橋剤(C)>
本発明の発泡体は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)などの重合体成分のみからなるものであってもよい。しかし、本発明の発泡体は、典型的な態様において、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)などの重合体成分と、架橋剤(C)を含む組成物から形成されている。
【0117】
架橋剤(C)としては、架橋剤として作用するラジカル発生剤を特に制限なく用いることができる。
本発明の架橋体の形成に用いる重合体が架橋剤(C)を含有する場合、その含有量は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、オプショナルの上記エチレン・極性モノマー共重合体(B)と、オプショナルの上記その他の重合体成分との合計100質量部(すなわち全重合体成分100質量部)に対して、通常0.1~1.5質量部、好ましくは0.2~1.0質量部、さらに好ましくは0.2~0.7質量部の範囲であることが望ましい。架橋剤(C)をこのような量で含有する組成物を用いると、適度な架橋構造を有する発泡体を製造することができる。
【0118】
架橋剤(C)としては、有機過酸化物が好ましく用いられ、具体的には、
ジクミルペルオキシド(DCP)、
ジ-t-ブチルペルオキシド、
2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、
2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、
1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、
1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、
ベンゾイルペルオキシド、
p-クロロベンゾイルペルオキシド、
2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、
t-ブチルペルオキシベンゾエート、
t-ブチルペルベンゾエート、
t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、
ジアセチルペルオキシド、
ラウロイルペルオキシド、
t-ブチルクミルペルオキシドなどの有機ペルオキシドが挙げられる。これらの中で、ジクミルペルオキシド(DCP)が好ましい。
【0119】
本発明に係る組成物が、架橋剤(C)を含む場合には、架橋剤(C)とともに必要に応じて架橋助剤を含有することも好ましい。架橋助剤としては、例えば、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤;あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が挙げられる。
【0120】
また、架橋助剤としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー:ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーなどが挙げられる。中でも、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0121】
本発明に係る組成物においては、このような架橋助剤は、架橋助剤と架橋剤(C)との質量比[架橋助剤/架橋剤(C)]が1/30~5/1、好ましくは1/20~3/1、さらに好ましくは1/15~2/1になる量、特に好ましくは1/10~1/1になる量で用いられることが望ましい。
【0122】
<物理発泡剤(D)>
本発明の発泡体は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)などの重合体成分のみからなるものであってもよい。ここで、本発明の発泡体は、通常、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)などの重合体成分を発泡させることによって得られるところ、この発泡は、多くの場合発泡剤を用いて行われる。したがって、本発明で発泡体を与える上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)などの重合体成分は、多くの場合、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)などの重合体成分と、発泡剤とを含む組成物の形で用いられる。この組成物は、上記架橋剤(C)をさらに含んでいてもよく、あるいは、上記架橋剤(C)に加えて上記架橋助剤をさらに含んでいてもよい。
【0123】
本発明においては、前記発泡剤として、物理発泡剤(D)を用いることができる。物理発泡剤(D)は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)などの重合体成分への溶解性が温度及び/または圧力によって変わることを利用して当該重合体成分に気泡を発生させる物質であり、発泡時に化学反応を必ずしも伴わない。
【0124】
前記物理発泡剤(D)としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の各種脂肪族炭化水素類;ジクロロエタン、ジクロロメタン、四塩化炭素等の各種塩化炭化水素類;フロン等の各種フッ化塩化炭化水素類などの有機系物理発泡剤、さらに、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水などの無機系物理発泡剤等が挙げられる。これらの中で、蒸気にする必要が無く、安価で、環境汚染、発火の可能性が極めて少ない二酸化炭素、窒素、アルゴンが優れており、その中でも、二酸化炭素が特に優れている。
【0125】
前記物理発泡剤(D)は、多くの場合、気体の形で用いることができる。ただ、前記物理発泡剤(D)は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)などの重合体成分への溶解性を十分高くするために超臨界流体の形で用いてもよい。二酸化炭素は、臨界圧力が7.38MPa、臨界温度が31.1℃であり、超臨界流体とすることが比較的容易である。
【0126】
本発明では発泡剤として物理発泡剤(D)が用いられるので、得られる発泡体において発泡剤の分解残さがない。このため、組成物の架橋発泡時における金型汚れを防止することができる。しかも、物理発泡剤は、粉状ではないので、混練性に優れている。また、この物理発泡剤を用いると、得られる発泡体の異臭(例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)分解時に生成するアンモニア臭など)を防止することができる。
【0127】
物理発泡剤(D)の貯蔵方法としては、小規模な生産であれば、二酸化炭素、窒素などをボンベに入った状態で使用し、射出成形機および押出成形機等に減圧弁を通して供給することができるし、またポンプ等により昇圧し、射出成形機および押出成形機等に供給する場合もある。
【0128】
また、大規模に発泡製品を製造する設備であれば、液化二酸化炭素、液化窒素などの貯蔵タンクを設置し、熱交換機を通し、気化し、配管により、減圧弁により射出成形機および押出成形機等に供給する。
【0129】
また、物理発泡剤(D)として液状の物理発泡剤を用いる場合、貯蔵圧力としては、0.13~100MPaの範囲が好ましい。
また、物理発泡剤(D)を用いる場合、物理発泡剤(D)の添加量は、所望の発泡倍率に応じて、適宜決定されるが、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、オプショナルの上記エチレン・極性モノマー共重合体(B)と、オプショナルの上記その他の重合体成分との合計100質量部に対して、通常0.1~15質量部、好ましくは0.5~10質量部である。
【0130】
一方、上記物理発泡剤(D)に関連して、従来技術においては、プラスチックの発泡体を製造する際に、発泡剤として化学発泡剤(D’)が多用されている。この化学発泡剤(D’)は、熱分解その他の化学反応によってガスを発生させる化学物質である。化学発泡剤(D’)としては、具体的には、
アゾジカルボンアミド(ADCA)、
1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、
ジメチル-2,2'-アゾビスブチレート、
ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、
2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、
1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、
2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチル-プロピオンアミジン]等のアゾ化合物;
N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;
4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、
ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;
p-トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物;
トリヒドラジノトリアジンなどの有機系熱分解型発泡剤、さらには、
炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の重炭酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩;
亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、
水素化合物などの無機系熱分解型発泡剤が挙げられる。これらのうち、熱分解時に発生するガスの量が多い等の理由から、アゾジカルボンアミド(ADCA)が多用される傾向にある。
【0131】
また、発泡剤として化学発泡剤(D’)が用いられる場合、化学発泡剤(D’)とともに発泡助剤が併用されることもある。発泡助剤は、化学発泡剤(D’)の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用をする。このような発泡助剤としては、酸化亜鉛(ZnO)、ステアリン酸亜鉛、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸等の有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0132】
しかし、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)等を用いて発泡体を製造する場合、得られる発泡体において、ADCA分解時に生成するアンモニア臭など発泡剤に由来する臭気(異臭)が生じることがあり、そのような臭気(異臭)の存在は、発泡体を履物および履物用部品に用いる上で好ましくない。また、発泡剤としてADCA等を用いる場合、得られる発泡体において変色などの問題が生じることもあり、そのような変色は審美性等の観点から好ましくない。したがって、本発明では、化学発泡剤(D’)は通常使用しない。
【0133】
<その他の成分>
本発明の発泡体は、必要に応じて、上述した各成分以外の成分を任意成分として含有してもよく、たとえば、フィラー、耐熱安定剤、耐候安定剤、難燃剤、塩酸吸収剤、顔料などの各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、一般的なオレフィン系樹脂に添加し得る添加剤として公知のものが挙げられる。これらは本発明の目的を損なわない範囲で本発明の発泡体に含まれていても良い。
【0134】
[発泡体の製造方法]
本発明の発泡体は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を、例えば前述したような任意成分である上記エチレン・極性モノマー共重合体(B)、上記その他の重合体成分、上記架橋剤(C)、上記架橋助剤、上記物理発泡剤(D)、および上記その他の成分とともに用いて(以下、オレフィン系重合体とこれらの任意成分とを総称して、「エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む成分」ということがある)、例えば以下のような方法で製造することができるが、これら製法などに限定されるものではない。
【0135】
本発明で用いられる上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物は、未架橋かつ未発泡状態である。工程(S1)では、未架橋かつ未発泡状態の上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物を用いて成形を行う。
【0136】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)等の形態
この上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物は、そのままの状態であってもよく、溶融状態であってもよく、あるいは、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物を一旦溶融可塑化し、その後冷却固化してなるペレットまたはシートの形態であってもよい。
【0137】
「エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む成分」のペレットは、たとえば上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、並びに、必要に応じて上記エチレン・極性モノマー共重合体(B)、上記その他の重合体成分、上記架橋剤(C)、上記架橋助剤、および、上記物理発泡剤(D)を上述した割合によりヘンシェルミキサ-等で混合し、バンバリ-ミキサー、ロール(2本ロールミル、3本ロールミル等のロールミル)、押出機等の混練機で上記架橋剤(C)が分解しない温度にて溶融可塑化し、均一に混合分散させて造粒機により調製することができる。なお架橋発泡の方法としては後述するように例えば、熱処理による架橋と、電離性放射線架橋とが挙げられる。熱処理による架橋の場合には、この組成物中に、上記架橋剤(C)および上記架橋助剤を含有することが好ましい。また、電離性放射線による架橋の場合には、架橋助剤を配合する場合がある。
【0138】
また上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)などとともに、必要に応じて、上記その他の成分を、本発明の目的を損なわない範囲で用いても良い。
また、「エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む成分」のシートは、たとえば上記のようにして得られたペレットを押出機あるいはカレンダー成形機を用いて調製することができる。あるいは、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物を、ロールミルなどの混練機で上記架橋剤(C)が分解しない温度にて混練し、シート状に成形することにより得ることもできる。ここで、前記混練を、ロールミルを用いて行う場合、混練後の上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物は、シート状とすることができる。また、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む諸成分をブラベンダーなどで混練した後、カレンダーロールでシート状に成形する方法、プレス成形機でシート化する方法、または押出機を用いて混練した後Tダイまたは環状ダイを通してシート化する方法などによっても、上記「エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む成分」のシートを得ることができる。
【0139】
これらの方法により、未架橋かつ未発泡状態の発泡性シートを調製することができる。
<発泡体の調製>
本発明の発泡体は、その製造方法については特に制限はないが、たとえば以下のような方法により調製することができる。
【0140】
本発明の発泡体は、例えば、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)あるいは上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物を物理的に発泡させる工程を含む製造方法によって得ることができる。ここで、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物には、多くの場合、上記架橋剤(C)が含まれている。前記物理的に発泡させる工程は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)あるいは上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物を、まず加圧下で気体状態の物理発泡剤中に含浸させ、その後加圧を解く工程として行っても良い。また、前記物理的に発泡させる工程は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)あるいは上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物を超臨界流体中に含浸させる工程として行っても良い。
【0141】
前記製造方法は、通常、
上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)あるいは上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物を成形する工程(S1)、
前記成形によって得られる前駆成形体を架橋させる工程(S2)、ならびに、
前記架橋によって得られる架橋体を物理的に発泡させる工程(S3)
を含む。
【0142】
ここで、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物には、多くの場合、上記架橋剤(C)が含まれている。前記工程(S2)は、前記工程(S1)の後に行われても良く、あるいは、前記工程(S1)と同時に行われても良い。
【0143】
ここで、前記工程(S1)において、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)あるいは上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物は、適当な成形方法を用いて成形され、前駆成形体とする。ここで用いられる上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)あるいは上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物は、一旦上述したペレットまたはシートの形態としたものであってもよい。
【0144】
たとえば、前駆成形体としてシート状の成形体を得る場合、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含むシートをカレンダー成形機、プレス成形機、Tダイ押出機を用いて得ることができる。好ましくは前記エチレン系重合体組成物のシートを、カレンダー成形機、プレス成形機、Tダイ押出機を用いて得ることができる。このシート成形時においては、上記架橋剤(C)の分解温度未満の温度でシート成形することが好ましく、具体的には、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む成分の溶融状態での温度が例えば100~130℃となる条件に設定してシート成形することが好ましい。
【0145】
また、前駆成形体は、射出成形などほかの成形方法によって得てもよい。前駆成形体は、例えば、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)あるいは上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物を、上記架橋剤(C)の分解温度未満の温度金型内に射出することによって得てもよい。
【0146】
前記工程(S2)では、前記前駆成形体の架橋が行われ、対応する架橋体に導かれる。この架橋は、通常、上記架橋剤(C)の存在下で、上記架橋剤(C)の分解温度以上の温度、例えば、(130~200℃)で行われる。ここで、上記シート成形を、プレス成形機を用いて行う場合、プレス成形機での上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む成分の加熱を上記架橋剤(C)の分解温度以上の温度で行うことにより、工程(S1)と工程(S2)とを一工程で行うことができる。
【0147】
前記工程(S3)では、工程(S2)で得られる架橋体を、物理発泡剤を用いて物理的に発泡させる。これにより、架橋体は、発泡体に導かれる。ここで用いられる物理発泡剤として、上記物理発泡剤(D)を用いることができる。
【0148】
工程(S3)は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)あるいは上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物を、まず加圧下で気体状態の物理発泡剤中に含浸させ、その後加圧を解く工程として行っても良く、あるいは、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)または上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物を超臨界流体中に含浸させる工程として行っても良い。
【0149】
物理的に発泡させる温度及び圧力などの条件は、本発明の目的が達成できる限り特に限定はなく、得ようとする発泡体が有すべき特性や用途によって適宜設定できる。ここで、工程(S3)が超臨界流体中で行われる場合、上記物理発泡剤(D)の臨界温度以上の温度かつ上記物理発泡剤(D)の臨界圧力以上の圧力下で行われる。
【0150】
例えば、上記物理発泡剤(D)として二酸化炭素を用いる場合、工程(S3)を行う温度は、例えば40~200℃とすることができ、圧力は、例えば2~50MPaとすることができる。ここで、二酸化炭素は、臨界圧力が7.38MPa、臨界温度が31.1℃であり、超臨界流体とすることが比較的容易である。したがって、二酸化炭素を超臨界流体として用いる場合、工程(S3)を行う温度は、例えば40~200℃とすることができ、圧力は、例えば7.4~50MPaとすることができる。
【0151】
工程(S3)は、オートクレーブなど、耐圧耐熱性のある反応装置内で行うことができる。
発泡体の製品形状としては、たとえばシート状、厚物ボード状、ネット状、型物などが挙げられる。
【0152】
上記のようにして得られた発泡体は、一次発泡体としてそのまま使用してもよく、あるいは、当該発泡体について、圧縮成形により所定の形状の付与を行うことにより二次発泡体を製造することができる。このときの圧縮成形条件の一例をあげると、金型温度が130~200℃、型締め圧力が30~300kgf/cm2、圧縮時間が5~60分、圧縮比が1.1~3.0の範囲である。
【0153】
上記のような製造法のうちでも、前記オレフィン系重合体を含む成分(好ましくはエチレン系重合体組成物)を熱処理して発泡体を得ることが好ましい。
また、本発明の別の発泡体である前記エチレン系重合体組成物を発泡させて得られる発泡体は比重が0.03~0.30であることが好ましい。この別の態様の発泡体も後述する積層体、履物または履物用部品に好ましく用いられる。
【0154】
[積層体]
本発明の積層体は、上記した、本発明の発泡体からなる層と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群からなる群より選ばれる少なくとも一種の素材からなる層とを有する積層体である。
【0155】
上記のポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革は、特に制限はなく、従来公知のポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革、人工皮革を用いることができる。このような積層体は、特に履物ないし履物用部品の用途に好適である。
【0156】
[履物および履物用部品]
本発明の履物および履物用部品は、いずれも、上記した、本発明の発泡体または積層体を用いてなる。すなわち、本発明の履物および履物用部品は、いずれも、上記した、本発明の発泡体または積層体を含むともいえる。履物用部品としては、たとえば靴底、靴のミッドソール、インナーソール、ソール、サンダルなどが挙げられる。
【0157】
本発明の履物または履物用部品は、本発明の発泡体または積層体を用いているため、軽量で、長期間の使用による変形を抑えることができる。
【実施例0158】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例に記載された各種物性の測定方法は以下のとおりである。
【0159】
[共重合体の物性評価]
1-ブテン含有量
エチレン・1-ブテン共重合体の1-ブテン含有量は、以下の条件で13C-NMR測定を行い、得られたスペクトルの解析により算出した。
【0160】
装置:ブルカー・バイオスピン社製、AVANCE III cryo-500型核磁気共鳴装置
測定核:13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°(5.00μ秒)
ポイント数:64k
測定範囲:250ppm(-55~195ppm)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:128回
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1[v/v])
試料濃度:ca.60mg/0.6mL
測定温度:120℃
ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)
ケミカルシフト基準:δδシグナル(29.73ppm)
【0161】
二重結合量
二重結合量の定量は、エチレン・α-オレフィン共重合体の1H-NMR測定(日本電子(株)製、「ECX400P型核磁気共鳴装置」)により行った。ここで、二重結合に由来するシグナルとして、ビニル型二重結合、ビニリデン型二重結合、2置換オレフィン型二重結合および3置換オレフィン型二重結合が観測される。各シグナルの積分強度から二重結合量を定量した。なお、エチレン・α-オレフィン共重合体の主鎖メチレンシグナルをケミカルシフト基準(1.2ppm)とした。
【0162】
【0163】
各式中、*は水素原子以外の原子との結合手を示す。
各水素原子a~eのピークは、下記付近に観測される。
・水素原子aのピーク:4.60ppm
・水素原子bのピーク:4.85ppm
・水素原子cのピーク:5.10ppm
・水素原子dのピーク:5.25ppm
・水素原子eのピーク:5.70ppm
【0164】
二重結合量の定量式は、以下のとおりである。
・ビニル型二重結合量={(シグナルbの積分強度)+(シグナルeの積分強度)}/ 3
・ビニリデン型二重結合量=(シグナルaの積分強度)/2
・2置換オレフィン型二重結合量=(シグナルdの積分強度)/2
・3置換オレフィン型二重結合量=(シグナルcの積分強度)
これらの結果から、炭素数1000個(1000C)あたりのビニル基含有量(ビニル型二重結合量)を求めた。
【0165】
密度d
密度d(kg/m3)は、ASTM D1505に従い、23℃にて求めた。
【0166】
MFR
MFR(メルトフローレート、g/10分)は、ASTM D1238に従い、190℃にて求めた。2.16kg荷重での測定値をMFR2.16、10kg荷重での測定値をMFR10とした。
【0167】
分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、オルトジクロロベンゼン溶媒、140℃にて求めた。Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAllianceGPC-2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6-HTを2本、およびTSKgel GNH6-HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を用いて、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mlとし、試料注入量は500μlとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000、およびMw>4×106については東ソー社製を用いて、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0168】
融点(Tm)
示差走査熱量計〔SII社 DSC220〕を用いて、約5.0mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/minで30℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、融解ピークが現れる温度を融点(Tm)として求めた。
【0169】
[架橋発泡体の物性評価]
比重
比重は、JIS K7222に従って測定した。サンプルは、発泡体が立方体であれば最大面積の平面の四辺からそれぞれ20mm以上内部、また該平行平面の表面からスキンを残した状態でサンプリングした。例えばミッドソールの場合、端部からそれぞれ20mm以上内部、略平行平面の両表面からスキンを残した状態でサンプルを調製した。
【0170】
測定は発泡体の5部位の平均とする。また発泡体の品質の均一性の尺度である、5部位の比重の測定値の最大値と最小値との差が0.08以下であることが好ましく、0.06以下であることがさらに好ましい。前記範囲が0.08を超えると、成型体品質(硬度、機械物性、圧縮永久歪みなど)が一定でない事を意味する。
【0171】
アスカーC硬度
アスカーC硬度は、JIS K7312-1996付属書2記載の「スプリング硬さ試験タイプC試験方法」に従って、23℃環境下にて測定を行った。
【0172】
反発弾性
反発弾性は、JIS K6255に準じて測定を行った。サンプルは上記(2)圧縮永久歪み(CS)に使用するサンプルと同じ方法で調製したサンプルを準備し、23℃雰囲気下にて測定を行った。
【0173】
層間引き裂き強度
層間引き裂き強度は、試験温度23℃環境下、試験機はインテスコー205Xを用いて測定を行った。短冊状に幅25mm、厚さ15mmに調製したサンプルをチャック間30mmにセットし、試験速度50mm/minで厚み方向に剥離した。層間引裂き強度S(N/mm)は次式にて計算した。
S=S0/S1
S0:引裂き応力(N)
S1:サンプル幅(mm)
【0174】
圧縮永久歪み(CS)
圧縮永久歪み(CS)は、JIS K6262に準じて測定を行った。サンプルは、発泡体をφ30mm、厚み15mm以上の円柱形に切り出し、円柱の2つの平行平面のそれぞれについて、該平行平面の表面から抜き出し、片方にスキンを残した状態で厚み10mmとしたものを用いた。
【0175】
なお、サンプル採取対象となる発泡体が、種々の形状の立体である場合でも、φ30mm、厚み15mm以上の円柱形に切り出し、円柱の2つの平行平面のそれぞれについて、該平行平面の表面から抜き出し、片方にスキンを残した状態で厚みを10mmとすることでサンプルとした。
【0176】
発泡体から円柱形への切り出し、および平行平面の表面からの発泡体の切り取りは円柱抜きダンベル型を使用することができる。このサンプルを、50%圧縮、50℃環境にて6時間静置し、圧縮から解放して30分後に測定した。圧縮永久歪み(CS)(%)は、以下の式により算出した。
【0177】
CS=(t0-t1)/(t0-t2)×100
t0:サンプル原厚(mm)
t1:サンプルを圧縮装置から取り出し30分後の厚み(mm)
t2:スペーサー厚み(mm)
【0178】
残留窒素
残留窒素量は、微量全窒素分析装置(三菱化学アナリテック社製 TN-2100H)を用い、化学発光法にて定量した。サンプルは、5mgの発泡体を固体のまま使用し、化学発光法による定量は、サンプルの熱分解によって発生するNOをオゾンと反応させたときの化学発光強度に基づいて行った。
【0179】
ここで、化学発光が認められなかったか、あるいは、認められたとしても化学発光強度が微量全窒素分析装置による検出限界より弱い場合には、「ND」(検出せず)と評価した。
【0180】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(A)]
<エチレン・1-ブテン共重合体(A-1)>
エチレン・1-ブテン共重合体(A-1)として、エチレン・1-ブテン共重合体(密度0.885g/cm3、MFR(190℃、2.16kg)1.2g/10min、融点66℃、商品名:タフマーDF810(三井化学社製))を用いた。
【0181】
<エチレン・1-ブテン共重合体(A-2)の製造>
攪拌羽根を備えた内容積100Lのステンレス製重合器(攪拌回転数=250rpm)を用いて、重合温度130℃、重合圧力2.5MPaGで、連続的にエチレンと1-ブテンとの共重合を行った。重合器側部より毎時、脱水精製したヘキサンを39L、エチレンを9.0kg、1-ブテンを8.3kgの速度で、また、水素を13NL、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.02mmol、メチルアルミノキサンをアルミニウム換算で10.0mmol、トリイソブチルアルミニウムを4mmolの速度で連続的に供給し、共重合反応を行った。生成したエチレン・1-ブテン共重合体のヘキサン溶液を、重合器側壁部に設けられた排出口を介して、重合器内溶液量30Lを維持するように液面制御弁の開度を調節しながら連続的に排出した。得られたエチレン・1-ブテン共重合体のヘキサン溶液を加熱器に導いて180℃に昇温し、触媒失活剤として、毎時、メタノールを80mLで添加し重合を停止させ、減圧した脱揮工程に連続的に移送して乾燥することにより、エチレン・1-ブテン共重合体(A-2)を得た。
【0182】
得られたエチレン・1-ブテン共重合体(A-2)は、1-ブテン含有量が11.2モル%、炭素数1000個あたりのビニル基含有量が0.060個、MFR2.16が0.5g/10分、MFR10が4.2/10分、MFR10/MFR2.16が8.4、密度dが0.885g/cm3、Mw/Mnが2.0、融点が66℃、収量が毎時17.2kgであった。
【0183】
[物理発泡体の製造方法]
[実施例1]
エチレン・1-ブテン共重合体(A-1)100重量部、タルク0.5重量部、ジクミルペルオキシド(DCP)0.5質量部からなる混合物を、ロール(Daejung社製2本ロールミル)により、ロール表面温度100℃で3分間混練した後、シート状に成形した。
【0184】
得られたシートはプレス金型に充填し、150kg/cm2、170℃、10分の条件で、加圧、加熱し、架橋体を得た。このプレス金型は、シートのプレス成形時に厚み5mm、縦50mm、横50mmとなるサイズの空洞を有しており、得られた架橋体のサイズも厚み5mm、縦50mm、横50mmであった。
【0185】
得られた架橋体をオートクレーブ(PARTICLE foamtec製、内容積40L)に投入し、次いで当該オートクレーブ内部を二酸化炭素で加圧し、温度110℃、圧力55bar(約5.5MPa)の条件下で架橋体を二酸化炭素に1時間含浸した。その後オートクレーブ内の圧力を50bar/分(約5.0MPa/分)の速度で圧力6bar(約0.6MPa)に戻す(この過程で、二酸化炭素はオートクレーブの外部に排出される)操作を実行し、1時間静置して架橋体を発泡させることによって発泡体シートを得た。
【0186】
シートの成形に用いた混合物中の各成分の配合、シートの成形の際に用いた成形条件、および、得られた発泡体シートの物性(発泡体性能)についての結果を、表1に示す。
【0187】
[実施例2~4および比較例1]
実施例2~4および比較例1は、シートの成形に用いた混合物中の各成分の配合を下記表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0188】
ここで、下記表1において「EVA(VA=28%)」とあるのは、エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量28質量%)[商品名エバフレックスEV270]を指しており、エチレン・極性モノマー共重合体(B)に該当する。
【0189】
また、実施例3で用いられた「TAC 50」は、Rhenogran(登録商標)TAC-50:50重量%のトリアリルシアヌレートと50重量%のエチレン-プロピレン-ジエンエラストマー組成物を指す。
結果を表1に示す。
【0190】
【0191】
[化学発泡体の製造方法]
[比較例2]
比較例2として、下記に、化学発泡剤(アゾジカルボンアミド(ADCA))を用いて得られる発泡体についての比較例を示す。
【0192】
エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量25質量%)[商品名エバフレックスEV360](以下、「EVA(VA=25%)」)50質量部、共重合体(A-1)50重量部、酸化チタン(TiO2)3.0重量部、酸化亜鉛(ZnO)3.0質量部、ステアリン酸1.0重量部、ジクミルペルオキシド(DCP)0.7質量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)0.1重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA)2.7質量部からなる混合物を、ロールにより、ロール表面温度120℃で10分間混練した後、シート状に成形した。
【0193】
得られたシートは、プレス金型に充填し、150kg/cm2、170℃、15分の条件で、加圧、加熱し、架橋発泡体を得た。このプレス金型のサイズは、厚み10mm、縦151.5mm、横76.5mmであった。
【0194】
シートの成形に用いた混合物中の各成分の配合、および、得られた発泡体シートの物性(発泡体性能)についての結果を、表2に示す。
【0195】