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特開2024-146468強誘電性液晶組成物および液晶表示素子
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  • 特開-強誘電性液晶組成物および液晶表示素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146468
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】強誘電性液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/34 20060101AFI20241004BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20241004BHJP
   G02F 1/141 20060101ALI20241004BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09K19/34
G02F1/13 500
G02F1/141
G02F1/1337
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059382
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 智宏
【テーマコード(参考)】
2H088
2H290
4H027
【Fターム(参考)】
2H088FA20
2H088GA04
2H088JA17
2H088MA18
2H290AA63
2H290BF62
2H290BF65
4H027BD24
4H027BE02
4H027CG05
4H027DL05
(57)【要約】
【課題】配向不良の発生を抑制することが可能な強誘電性液晶組成物および液晶表示素子を提供する。
【解決手段】70℃でのPs値を25℃でのPs値で割った値の百分率(%)であるPs変化率が90%以上である、強誘電性液晶組成物である。また、その強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
70℃でのPs値を25℃でのPs値で割った値の百分率(%)であるPs変化率が90%以上である、ことを特徴とする強誘電性液晶組成物。
【請求項2】
前記強誘電性液晶組成物に含まれる複数の液晶コンポーネント材料のPs値のプラス成分総和が、Ps値のマイナス成分総和よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項3】
液晶コンポーネント材料として、以下の一般式(化1)で表される化合物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【化1】
【請求項4】
液晶コンポーネント材料として、以下の一般式(化2)で表される化合物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【化2】
【請求項5】
液晶コンポーネント材料として、以下の一般式(化3)で表される化合物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【化3】
【請求項6】
液晶コンポーネント材料として、以下の一般式(化4)で表される化合物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【化4】
【請求項7】
液晶コンポーネント材料として、以下の一般式(化5)で表される化合物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【化5】
【請求項8】
液晶コンポーネント材料として、以下の一般式(化6)で表される化合物を含まない、ことを特徴とする請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【化6】
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一つに記載の強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電性液晶組成物および液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置に用いられる液晶表示素子は、薄型で低消費電力である特徴を生かし、幅広い分野において使用されている。また近年は、応答時間が早い等の特徴を有する強誘電性液晶(以下、FLCと略す)を用いた液晶表示装置が製品化されている。
【0003】
図1は、液晶表示素子の(a)上面図、(b)A-A断面図である。図1に示すように、液晶表示素子1は、第一基板2と、第二基板3と、スペーサー4と、シール材5と、FLC6と、画素電極7と、配向膜8と、対向電極9と、配向膜10と、注入口11と、注入口11を塞ぐ封口材(不図示)と、を備えている。
【0004】
一対の基板2、3間の隙間に充填されたFLC6の液晶分子は、所定の配向処理が施されることで規則正しく配列した状態、即ち配向した状態となっており、液晶層中心で「くの字」に屈曲したシェブロン構造と呼ばれる層構造を形成し、液晶層全体としてスメクティックC相(SmC相)を呈している。
【0005】
FLC6を隙間へ注入する際、FLC6は、液晶分子が配列の規則性を失う等方相(Iso相)となる温度にまで加熱され、その後、隙間に注入されたFLC6は、温度が低下するに連れて等方相(Iso相)からネマチック相(N相)、スメクティックA相(SmA相)を経て目的となるスメクティックC相(SmC相)へと順次相転移する。
【0006】
FLC6は、応答性は速いが、ネマチック液晶に比べて液晶分子の配向秩序性が高いために分子配向の規則性が乱れると元の状態に戻りにくい、すなわち配向不良が発生し易いという課題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-138463号公報
【特許文献2】特開2013-241536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、シール材を介して互いに貼り合わされた一対の基板間に充填された強誘電性液晶を、スメクティックA相乃至等方相に相転移する温度に一定時間保持し、当該温度に一定時間保持する間、強誘電性液晶に交番電界を印加し、交番電界を印加した状態で、強誘電性液晶を徐々に冷却し、強誘電性液晶の温度を常温まで低下させた後に、交番電界の印加を解除する強誘電性液晶の配向処理方法の方法が記載されている。
【0009】
この配向処理方法では、交番電圧を印加した状態で温度を常温まで徐々に低下させ、液晶粘度が高く、液晶分子が動き難い温度環境になった状態で交番電界の印加を解除することで、交番電界を解除する際の電気的な衝撃による新たなジグザグ欠陥の発生が抑制される。
【0010】
しかしながら、引用文献1に記載された方法は、配向欠陥が生じた液晶表示素子の再配向処理としては非常に効果があるが、強誘電性液晶組成物そのものの配向不良の発生を抑制するものではない。
【0011】
また、特許文献2には、強誘電性液晶組成物にフェニルピリミジン化合物を含有させることでチルト角を大きくし、透過率を向上させることが記載されているが、配向不良が改善されることに関しては言及されていない。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、配向不良の発生を抑制することが可能な強誘電性液晶組成物および液晶表示素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
70℃でのPs値を25℃でのPs値で割った値の百分率(%)であるPs変化率が90%以上である、強誘電性液晶組成物である。また、その強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強誘電性液晶における配向不良の発生を抑制することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】液晶表示素子の(a)上面図、(b)A-A断面図。
図2】液晶表示素子に配向欠陥が発生した状態を模式的に示す上面図。
図3】強誘電性液晶組成物のPs変化率を示す図。
図4】Ps変化率とBW発生率との関係を示す図。
図5】Ps変化率の重回帰分析結果を示す(a)全体図、(b)(a)の一部拡大図。
図6】BW発生率の重回帰分析結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例における強誘電性液晶組成物および液晶表示素子について説明する。
【0017】
図2は、液晶表示素子に配向欠陥が発生した状態を模式的に示す上面図である。図2に示すように、液晶表示素子1’には、FLC6の配向欠陥(配向不良)として、注入口10から有効画素領域12に向かって成長する配向欠陥12a(「ジグザグ欠陥」と呼ばれることがある)や、注入口11とは反対側に位置するシール材5の角部から有効画素領域13に向かって成長する配向欠陥12b(「ボートウェイク欠陥」と呼ばれることがある)が発生することがある。このような配向欠陥は、周囲の温度の変化やFLC6に印加される電圧の変化などにより、強誘電性液晶素子1の動作中に一時的又は恒久的に発生することがある。なお、このような配向欠陥は、必ずしも図2に示した位置に発生するわけではなく、その他の位置に発生することもある。このような配向欠陥が大きく成長し、有効画素領域13や見切り画素領域14に侵入すると、画像品質が低下するという問題が生じる。ゆえに、このような配向欠陥が発生し難いFLC6の組成物が望まれている。
【0018】
本発明の実施例における強誘電性液晶組成物は、液晶コンポーネント材料として、下記一般式(化1)で表される化合物A、下記一般式(化2)で表される化合物B、下記一般式(化3)で表される化合物C、下記一般式(化4)で表される化合物D、下記一般式(化5)で表される化合物Eのうち少なくともいずれかの1つの化合物を含有すると共に、下記一般式(化6)で表される化合物を含有しないことを特徴とする。なお、液晶コンポーネント材料には、ピリミジン化合物が含まれることが好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
上記化合物(化1)は、(2S)-2-Butoxypropanoicacid,(1S)-1-methyl-2-[[2-(4'-pentyl[1,1'-biphenyl]-4-yl)-5-pyrimidinyl]oxy]ethylesterで構成される。以下、上記化合物(化1)を、説明の便宜上、コンポーネント材料1936と称する場合がある。
【0021】
【化2】
【0022】
上記化合物(化2)は、2,3-Difluoro-4''-heptyl-4-pentyl-1,1':4',1''-terphenylで構成される。以下、上記化合物(化2)を、説明の便宜上、コンポーネント材料1674と称する場合がある。
【0023】
【化3】
【0024】
上記化合物(化3)は、2-[3-Fluoro-4-(octyloxy)phenyl]-5-octylpyridineで構成される。以下、上記化合物(化3)を、説明の便宜上、コンポーネント材料1938と称する場合がある。
【0025】
【化4】
【0026】
上記化合物(化4)は、Synthetic approach for 4-hexylphenyl-4’-octylphenylthiadiazoleで構成される。以下、上記化合物(化4)を、説明の便宜上、コンポーネント材料2889と称する場合がある。
【0027】
【化5】
【0028】
上記化合物(化5)は、2-octyl-5-[4-(octyloxy)phenyl]-1,3,4-thiadiazoleで構成される。以下、上記化合物(化5)を、説明の便宜上、コンポーネント材料2919と称する場合がある。
【0029】
【化6】
【0030】
上記化合物(化6)は、2-(4-((2R,3R)-2,3-difluorooctyloxy)-2,3-difluorophenyl)-5-nonylpyrimidineで構成される。以下、上記化合物(化6)を、説明の便宜上、コンポーネント材料2667と称する場合がある。
【0031】
図3は、強誘電性液晶組成物のPs変化率を示す図である。図4は、Ps変化率とBW発生率との関係を示す図である。図5は、Ps変化率の重回帰分析結果を示す(a)全体図、(b)(a)の一部拡大図である。図6は、BW発生率の重回帰分析結果を示す図である。なお、Psは、強誘電性液晶の自発分極を意味し、BWは、ボートウェイク配向不良を意味する。また、Ps変化率は、70℃でのPs値を25℃でのPs値で割った値の百分率(%)である。また、図3において、「MX」と表記されたものは、複数の液晶コンポーネント材料が混合されて作られた1つの強誘電性液晶組成物を意味する。図3図6に基づけば、以下のことが言える。
【0032】
Ps変化率が90%以上である場合には、Ps変化率が90%未満である場合よりも、BW発生率が低下する傾向がある。よって、Ps変化率が90%以上である場合には、BWの発生を抑制することができる。
【0033】
強誘電性液晶組成物に含まれる複数の液晶コンポーネント材料のPs値のプラス成分総和が、Ps値のマイナス成分総和よりも大きい場合には、BWの発生率が低下する。
【0034】
コンポーネント材料1936、1674、1938、2889、2919(化1)~(化5)のうち少なくとも1つが強誘電性液晶組成物に含まれている場合には、BWの発生率が低下する。また、コンポーネント材料2667(化6)が強誘電性液晶組成物に含まれていない場合には、BWの発生率が低下する。言い換えると、コンポーネント材料2667(化6)が強誘電性液晶組成物に含まれている場合には、BWの発生率が上昇する。
【0035】
1 液晶表示素子
1’ 液晶表示素子
2 第一基板
3 第二基板
4 スペーサー
5 シール材
6 強誘電性液晶(FLC)
7 画素電極
8 配向膜
9 対向電極
10 配向膜
11 注入口
12a 配向欠陥(ジグザグ欠陥)
12b 配向欠陥(ボートウェイク欠陥)
13 有効画素領域
14 見切り画素領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6