(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146471
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F21S 43/14 20180101AFI20241004BHJP
B62J 6/022 20200101ALI20241004BHJP
F21S 41/147 20180101ALI20241004BHJP
F21S 41/36 20180101ALI20241004BHJP
F21S 43/31 20180101ALI20241004BHJP
B60Q 1/26 20060101ALI20241004BHJP
F21W 107/17 20180101ALN20241004BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241004BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20241004BHJP
【FI】
F21S43/14
B62J6/022
F21S41/147
F21S41/36
F21S43/31
B60Q1/26 A
F21W107:17
F21Y115:10 300
F21Y115:10 500
F21W103:00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059385
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】土屋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】木村 友祐
(72)【発明者】
【氏名】塚越 統哉
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA24
3K339BA05
3K339BA22
3K339CA11
3K339DA01
3K339GB01
3K339JA02
3K339JA04
3K339KA11
(57)【要約】
【課題】車外の他者が車両を認知し易くすること。
【解決手段】 灯火器(41)を有する車両において、前記灯火器(41)は、所定の第1位置で、当該車両のヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第1の光(LA)と、第1位置よりも当該車両と車両前後方向又は車幅方向に近い第2位置で、前記ヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第2の光(LB)と、を照射し、前記第1位置における前記第1の光(LA)の輝度、及び、所定照度以上の断面積の少なくともいずれかは、前記第2位置における前記第2の光(LB)の輝度、及び、所定照度以上の断面積の少なくともいずれかと異なる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯火器(41)を有する車両において、
前記灯火器(41)は、所定の第1位置で、当該車両のヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第1の光(LA)と、前記第1位置よりも当該車両と車両前後方向又は車幅方向に近い第2位置で、前記ヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第2の光(LB)と、を照射し、
前記第1位置における前記第1の光(LA)の輝度、及び、所定照度以上の断面積の少なくともいずれかは、前記第2位置における前記第2の光(LB)の輝度、及び、所定照度以上の断面積の少なくともいずれかと異なる、
車両。
【請求項2】
前記第1位置における前記第1の光(LA)の輝度は、前記第2位置における前記第2の光(LB)の輝度よりも小さい、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1位置における前記第1の光(LA)の輝度は、前記第2位置における前記第2の光(LB)の輝度よりも大きい、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記第1位置における前記第1の光(LA)の前記断面積は、前記第2位置における前記第2の光(LB)の前記断面積よりも小さい、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
前記第1位置における前記第1の光(LA)の前記断面積は、前記第2位置における前記第2の光(LB)の前記断面積よりも大きい、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ヘッドライトユニット内に、ヘッドライトの照明領域以外の領域を照明する補助ランプを備えたものがある。例えば、特許文献1に記載の車両では、大偏角ランプ、中偏角ランプ、大拡散ランプをこの順序で車両の中央側から外側に配列し、大拡散ランプを、自車の近傍領域の側前方から側方、さらに側後方の領域を照明する構成にすることによって、運転者が、自車近傍に存在する歩行者や自転車等を確認し易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成は、運転者が歩行者や自転車等を確認することを主目的としており、他車両の運転者や歩行者が車両に気づきやすくすることを主目的としたものではない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車外の他者が車両を認知しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
灯火器を有する車両において、前記灯火器は、所定の第1位置で、当該車両のヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第1の光と、前記第1位置よりも当該車両と車両前後方向又は車幅方向に近い第2位置で、前記ヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第2の光と、を照射し、前記第1位置における前記第1の光の輝度、及び、所定照度以上の断面積の少なくともいずれかは、前記第2位置における前記第2の光の輝度、及び、所定照度以上の断面積の少なくともいずれかと異なる、車両を提供する。
【発明の効果】
【0006】
車外の他者が車両を認知しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図2】ライトユニットから前面カバーを取り外した状態を前方から示す図である。
【
図5】複数の車両が走行する走行状況を上方から示す図である。
【
図8】走行中の鞍乗り型車両の前方左右に歩行者が存在した状況を示す図である。
【
図9】第1及び第2の光の輝度及び断面積の仕様の一例を示す図である。
【
図10】四輪車両から照射される第1及び第2の光LA,LBを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダ部24とを備える。シリンダ部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
鞍乗り型車両10は、車体を覆う車体カバー30を備える。車体カバー30は、車体前部を前方及び左右側方から覆うフロントカバー31と、フロントフレーム19を上方から覆うインナーカバー32とを備える。フロントカバー31は、後方に行くほど車幅方向及び上下方向に拡がるカバー形状であって、車幅中心を基準にして左右対称形状に形成されている。フロントカバー31にはライトユニット41が取り付けられる。
【0016】
ライトユニット41は、鞍乗り型車両10の灯火器の一部を構成するユニットであり、ヘッドライトユニットとも称される。ライトユニット41は、前面を覆う前面カバー42を有する。前面カバー42の前面は、フロントカバー31の前面に連続する形状に形成され、つまり、車幅中心から左右及び上下に離れるほど後方になる傾斜形状に形成されている。前面カバー42はアウターレンズを含んでいる。なお、ライトユニット41は、鞍乗り型車両10の車両前後中心よりも前方に位置し、より具体的には、操舵用のハンドルバー21a及び車体フレーム11よりも前方に位置している。
【0017】
図2は、ライトユニット41から前面カバー42を取り外した状態を前方から示す図である。
図2中の符号LCは車幅中心を示している。
図2に示すように、ライトユニット41は、車幅中心LCを基準にして左右外側に延在するハウジング43(筐体とも言う)を有する。このハウジング43は、左右一対の第1ロービーム照射部51と、各第1ロービーム照射部51の車幅外側に配置される左右一対の第2ロービーム照射部52と、左右一対の光照射部53とを備えている。また、ハウジング43は、左右一対の第1ロービーム照射部51の間に、不図示のハイビーム照射部を備えている。
図2中の一点鎖線で囲む範囲は、各ロービーム照射部51,52が光を放つ範囲を模式的に示したものである。光を放つとは、光が鞍乗り型車両10である自車両から出ることを意味する。
【0018】
ハウジング43及び各照射部51~53を含むライトユニット41は、車幅中心LCを基準にして左右対称である。各ロービーム照射部51,52,及び光照射部53を構成する部品は、ハウジング43に収容されている。
【0019】
左右一対の第1ロービーム照射部51は、左右に間隔を空けて設けられる。各第1ロービーム照射部51は、第1ロービーム用光源51aと、第1ロービーム用光源51aからの光をロービームとなるように反射する第1ロービーム用リフレクタ51bとを備える。第1ロービーム用光源51aは、LED等の公知の光源であり、可視光を照射する。第1ロービーム用リフレクタ51bは、第1ロービーム用光源51aからの光を車両前方に向けて拡散反射する反射鏡に形成される。
【0020】
図3は、ハウジング43の左側面図であり、
図4は、ハウジング43の斜視図である。
図3に示すように、左右一対の第2ロービーム照射部52は、左右一対の第1ロービーム照射部51の左右外側かつ後方寄りに設けられる。各第2ロービーム照射部52は、
図2に示すように、第2ロービーム用光源52aと、第2ロービーム用光源52aからの光をロービームとなるように反射する第2ロービーム用リフレクタ52bとを備える。第2ロービーム用光源52aは、LED等の公知の光源であり、可視光を照射する。第2ロービーム用リフレクタ52bは、第2ロービーム用光源52aからの光を車両前方に向けて拡散反射する反射鏡に形成される。
これらロービーム照射部51,52によって、ロービーム(いわゆるすれ違い用前照灯)に要求される前方照明が実現される。
【0021】
ハウジング43は、各リフレクタ51b,52bの上方にて各リフレクタ52a,52bよりも前方に延出する天井部43T(
図3,
図4参照)を一体に有している。天井部43Tは、第1ロービーム用リフレクタ51bに向けて開口する第1ロービーム用開口部51c(
図4参照)と、第2ロービーム用リフレクタ52bに向けて開口する第2ロービーム用開口部52c(
図4参照)とを有している。
【0022】
図2に示すように、第1ロービーム用光源51aは、第1ロービーム用開口部51cの上方(第1ロービーム用開口部51cに対して第1ロービーム用リフレクタ51bの反対側に相当)に位置する。第1ロービーム用光源51aからの光のうち第1ロービーム用開口部51cを通過した光が第1ロービーム用リフレクタ51bによって反射される。
第2ロービーム用光源52aは、第2ロービーム用開口部52cの上方(第2ロービーム用開口部52cに対して第2ロービーム用リフレクタ52bの反対側に相当)に位置する。第2ロービーム用光源52aからの光のうち第2ロービーム用開口部52cを通過した光が第2ロービーム用リフレクタ52bによって反射される。ロービーム用開口部51c及び第2ロービーム用開口部52cによって、各リフレクタ51b,52bへ入射する光が調整される。
【0023】
第1ロービーム用リフレクタ51bと第2ロービーム用リフレクタ52bの間には、仕切り壁43Wが設けられ、この仕切り壁43Wによって第1ロービーム照射部51と第2ロービーム照射部52とが仕切られる。この仕切り壁43Wによって、第1ロービーム用光源51aからの光が第2ロービーム用リフレクタ52bに入射することを規制すると共に、第2ロービーム用光源52aからの光が第1ロービーム用リフレクタ51bに入射することを規制する。
【0024】
左右一対の光照射部53は、車外の他者からの鞍乗り型車両10の視認性を向上させるための光LA,LBを照射する部分である。これら光LA,LBには、平行光や準平行光といった発散角が小さい光が採用されることによって、一般的に拡散光であるロービームやハイビームのヘッドライト光よりも、鞍乗り型車両10から離間した所定位置で高い輝度が得られる光である。これにより、ヘッドライト光に対する光LA,LBの識別性を確保できる。そのため、光LA,LBが照射される方向に位置する他者が、光LA,LBを認知しやすくなり、車外の他者に対し、鞍乗り型車両10の存在に対する気付きを与えることができる。
ここで、所定位置は、光LA,LBが照射される方向の位置であり、ヘッドライト光よりも遠い位置や、ヘッドライト光の照射範囲から離れた位置と言うこともできる。所定位置は、鞍乗り型車両10を基準にして、後述する他車両111の位置P1,P2(
図6,
図7)を含んでいる。光LA,LBは、所定の光と言うこともでき、以下、光LA,LBを特に区別して表記する場合、第1の光LA、第2の光LBとそれぞれ表記する。
【0025】
図2及び
図3に示すように、左右の光照射部53は、左右一対の第1ロービーム照射部51の左右内側外側かつ前方に設けられる。各光照射部53は、第1光源53aと、第1光源53aからの光を第1の光LAとなるように反射する第1リフレクタ53bと、第1光源53aからの光を第2の光LBとなるように反射する第2リフレクタ53cとを備える。第1光源53aは、LED等の公知の光源であり、可視光を照射する。
第1光源53aは、各ロービーム照射部51,52が有する複数の光源51a,52aよりも車幅方向内側に位置すると共に、これら光源51a,52aよりも前方かつ下方に位置する光源である。これら光源51a,52a,53aは、ハンドルバー21a及び車体フレーム11よりも前方に位置する。
これら光源51a,52a,53aは、点光源に限定されず、複数の発光素子を密集配置して面状光を放射する面状光源でもよい。面状光源は、例えば、COB(Chips on Board)型やSMD(Surface Mount Device)型のLEDである。
【0026】
第1リフレクタ53b及び第2リフレクタ53cは、各ロービーム照射部51,52が有する光源51a,52a及び他のリフレクタ51b,52bよりも前方かつ下方に位置し、ハウジング43に支持されるため、ロービーム用光源51a及びハイビーム用光源52aからなる左右のヘッドライト用光源よりも前方且つ左右のヘッドライト用光源の間に配置される。
図2に示すように、ハウジング43の天井部43Tは、第1光源53aの下方、かつ、第1リフレクタ53b及び第2リフレクタ53cよりも上方に、上下方向に開口する第1開口部53dを有する。
図3に示すように、第1開口部53dは、第1リフレクタ53b及び第2リフレクタ53cを含む光照射部53よりも後方に位置する。
第1光源53aからの光のうち、第1開口部53dを通過した光が第1リフレクタ53b及び第2リフレクタ53cによって反射される。
【0027】
第1リフレクタ53bは、第1光源53aからの光を、予め定めた方向に照射する反射鏡に形成される。この方向は、車外からの鞍乗り型車両10の視認性を向上させるのに好適な方向に設定される。
また、第1リフレクタ53bを、第1光源53aに近づけたり、第1光源53aから離したりすることによって、第1の光LAの照射角度範囲を変更可能である。照射角度範囲や輝度を変更することによって、第1の光LAの所定以上の明るさを有する断面積を変更することも可能である。
【0028】
例えば、第1の光LAを短時間だけ他者に知覚させたい場合や遠方の他者に第1の光LAを知覚させることを重視する場合、照射角度範囲を狭めるように第1リフレクタ53bの位置等を設定することが好ましい。また、比較的広い範囲に位置する他者や近くの他者に光LAを知覚させることを重視する場合、照射角度範囲を拡げるように第1リフレクタ53bの位置等を設定することが好ましい。また、第1リフレクタ53bの形状変更により、照射角度範囲を変更してもよい。
【0029】
また、第1リフレクタ53bによって、第1の光LAを平行光にする場合、第1リフレクタ53bとして、例えば、第1光源53aの位置を焦点とする回転放物面のうち、所定幅の光LAを所望の方向に照射可能な領域を反射面に形成した反射鏡を採用すればよい。
また、第1の光LAを準平行光にする場合、例えば、第1リフレクタ53bの反射面を、回転放物面を近似する反射面にすればよい。準平行光は、平行光に近い状態の発散光である。準平行光は、発散角が小さいので、平行光と同様に、比較的遠方の距離まで一定以上の明るさの光を照射することができる。
【0030】
第2リフレクタ53cは、第1光源53aからの光を、予め定めた方向に照射する反射鏡に形成される。この方向は、鞍乗り型車両10の視認性を向上させる他者(照射対象者)に向く方向に設定される。
第1リフレクタ53bの場合と同様に、第2リフレクタ53cの位置調整や形状変更によって、第2の光LBの照射角度範囲を変更したり、第2の光LBの断面積(所定以上の明るさ(例えば他者が認知可能な照度又は輝度)を有する断面積に相当)を増減したり、第2の光LBを平行光及び準平行光等にしたりすることが可能である。
【0031】
また、
図2では、光LA,LB用の第1光源53aが一つの場合を例示するが、光LA,LBのそれぞれに光源を設けるようにしてもよい。光LA,LBのそれぞれに光源を設けた場合、光LA,LBの輝度や照度を容易に変更可能である。
【0032】
<光LA,LBについて>
光LA,LBについて説明する。
上述したように、光LA,LBは、各光LA,LBが照射される方向において、拡散光であるヘッドライト光よりも高い輝度が得られる光である。
光LA,LBについて、走行状況と関連づけて説明する。
図5は、複数の車両が走行する走行状況を上方から示す図である。
図5には、二つの道路が交差する交差点(十字路とも言う)100を周囲と共に示しており、他の車両111(以下、「他車両111」と表記する)が走行する車線101Aを含む道路を「第1道路101」と表記し、第1道路101に交差する道路を「第2道路102」と表記する。
【0033】
本実施形態の鞍乗り型車両10として、交差点100に位置する自動二輪車からなる車両10A、10Bを例示する。車両10Aは、第2道路102に位置し、第1道路101の車線101A(他車両111が走行する車線)に左折しようとする車両である。車両10Bは、他車両111が走行する車線101Aの反対車線(対向道路とも言う)101Bに位置し、交差点100でUターン、又は、第2道路102に右折しようとする車両である。
図5中の符号105は、車両10Aが停止する停止線である。
【0034】
図6は、車両10Aを他車両111と共に上方から示す図である。
図6に示すように、車両10Aは、車両前側側方に相当する角度θ1、及び角度θ2のそれぞれの方向に光LA,LBを照射する。
角度θ1は、他車両111が車線101A上の位置P1のときに、他車両111の運転者に向けて第1の光LAを照射する方向であり、
図6には車両10Aを基準にして車両前側側方になる場合を例示している。角度θ2は、他車両111が車線101A上の位置P2のときに、他車両111の運転者に向けて第2の光LBを照射する方向であり、
図6には車両10Aを基準にして車両前側側方になる場合を例示している。他車両111は、車両10Aの左折後に、車両10Aの後続車になり得る車両である。
図6に示すように、位置P2は、位置P1よりも車両10Aと車幅方向に近い位置に相当している。
【0035】
位置P1,P2は、シミュレーションや実験に基づき他車両111が車両10Aとの接触を避けるのに好適な位置に設定される。例えば、位置P1,P2は、他車両111が車両10Aに接触せずに回避可能な位置、又は、停車可能な位置に設定される。また、位置P1は、位置P2に到達するよりも前の他車両111の位置である。位置P1を、車両10Aからの離間距離d1と定義し、位置P2を、車両10Aからの離間距離d2と定義すると、離間距離d1>離間距離d2である。
【0036】
車両10Aが角度θ1,θ2のそれぞれの方向に光LA,LBを照射することによって、第1の光LAが位置P1に向けて照射され、第2の光LBが位置P2に向けて照射される。これにより、後続車になり得る他車両111の運転者に向けて光LA,LBを照射でき、他車両111の運転者に対し、車両10Aの存在に対する気付きを与えることができる。
また、光LA,LBは、操舵用のハンドルバー21a(
図1参照)よりも前方から放たれるので、ハンドルバー21aの後方に位置する乗員、つまり、車両10Aの乗員によって、光LA,LBが遮られることがない。
【0037】
しかも、
図6の例では、異なる位置P1,P2で他車両111の運転者に光LA,LBを知覚させることができるので、光LA,LBを、時間間隔を空けて他車両111の運転者に認識させることができる。これにより、光LA,LBによって、他車両111の運転者に点滅のような光を知覚させることができ、他車両111の運転者が車両10Aを認知しやすくなる。
本構成では、
図3に示すように、光LA,LBを照射する光照射部53が車両10Aの車両前寄りの位置に設けられている。車両10Aは走行車両であるので、通常、走行先である前方に障害物は無いものの、
図6に例示するように、車両10A側方に障害物200が存在する場合がある。
図6中の障害物200は、車両10Aの右隣に位置する他の鞍乗り型車両の場合を想定しているが、障害物200は、車両に限定されず、車両10Aの左隣に位置する塀や植物等の場合もあり、道路や周囲環境によっては車両10Aの右隣に障害物が存在する場合もある。
【0038】
本構成では、光LA,LBが車両10Aの車両前寄りの位置から放たれるので、光LA,LBが車両10Aの車両後寄りの位置から放たれる場合と比べて、車両10Aの左右に障害物200が存在しても、
図6に例示するように、車両10A側方の障害物200に遮られず、光LA,LBを照射しやすい。仮に、障害物200が光LAを遮る位置に存在した場合でも、光LAよりも前方に光LBが照射されるので、障害物200に遮られず、光LBを照射しやすくなる。また、光LA,LBが車両10Aの車両後寄りの位置から放たれる場合と比べて、他車両111により近い位置から光LA,LBを放つことが可能である。
つまり、車両10Aからなる自車両の位置と自車両側方に存在する障害物200との位置関係上、光LA,LBが障害物200に遮られにくい。これにより、障害物200が存在しても、光LA,LBによって、他車両111の運転者に対し、車両10Aの存在に対する気付きを与えやすくなる。
【0039】
図7には、車両10Bを他車両111と共に上方から示す図である。
図7に示すように、車両10Bは、車両前側側方に相当する角度θ3、及び角度θ4のそれぞれの方向に光LA,LBを照射する。
角度θ3は、他車両111が車線101A上の位置P1のときに、他車両111の運転者に向けて第1の光LAを照射する方向である。また、角度θ4は、他車両111が車線101A上の位置P2のときに、他車両111の運転者に向けて第2の光LBを照射する方向である。他車両111は、車両10Bの対向車である。
図7に示すように、位置P2は、位置P1よりも車両10Aと車両前後方向に近い位置に相当している。
【0040】
位置P1,P2は、シミュレーションや実験に基づき他車両111が車両10Bとの接触を避けるのに好適な位置に設定される。例えば、位置P1,P2は、他車両111が車両10Bに接触せずに回避可能な位置、又は、停車可能な位置に設定される。
図6の場合と同様に、位置P1は、位置P2に到達するよりも前の他車両111の位置である。位置P1を、車両10Bからの離間距離d1と定義し、位置P2を、車両10Bからの離間距離d2と定義すると、離間距離d1>離間距離d2である。
【0041】
したがって、車両10Bが角度θ3,θ4のそれぞれの方向に光LA,LBを照射することによって、第1の光LAが位置P1に向けて照射され、第2の光LBが位置P2に向けて照射される。これにより、対向車である他車両111の運転者に向けて光LA,LBを照射でき、他車両111の運転者に対し、車両10Aの存在に対する気付きを与えることができる。
また、光LA,LBは、操舵用のハンドルバー21a(
図1参照)よりも前方から放たれるので、ハンドルバー21aの後方に位置する乗員、つまり、車両10Bの乗員によって、光LA,LBが遮られることがない。
【0042】
しかも、
図7の例では、異なる位置P1,P2で他車両111の運転者に光LA,LBを知覚させることができるので、光LA,LBを、時間間隔を空けて他車両111の運転者に認識させることができる。これにより、光LA,LBによって、他車両111の運転者に点滅のような光を知覚させることができ、他車両111の運転者に対し、車両10Aの存在に対する気付きをより与えることができる。
さらに、本構成では、
図3に示したように、光LA,LBを照射する光照射部53が車両10Bの車両前寄りの位置に設けられるので、
図7に示すように、車両10Bの側方に、光を遮る障害物201(例えば塀や植物)が存在しても、障害物201に遮られず、光LA,LBを照射しやすくなり、かつ、他車両111により近い位置から光LA,LBを放つことができる。つまり、車両10Bからなる自車両の位置と自車両側方に存在する障害物201との位置関係上、光LA,LBが障害物201に遮られにくい。これにより、光LA,LBによって、他車両111の運転者に対し、車両10Bの存在に対する気付きを与えやすくなる。
【0043】
なお、
図6及び
図7に示すように、第1の光LAは、相対的に離れた他車両111の運転者に届く光であり、第2の光LBは、相対的に近い他車両111の運転者に届く光であるため、第1の光LAを「車両遠方に届く光」、第2の光LBを「車両近辺に届く光」と表記することができる。また、第2の光LBは、第1の光LAよりも車両10A,10Bの車幅中心寄りに届く光でもある。
【0044】
図8は、走行中の鞍乗り型車両10の前方左右に歩行者M1が存在した状況を示す図である。歩行者M1は、鞍乗り型車両10が走行する道路107を向いている場合を想定している。
図8に示すように、光照射部53は、車両前側側方に向けて光LA,LBを照射するので、車両1の前方左右に存在する歩行者M1に対し、鞍乗り型車両10の存在に対する気付きをより与えることができる。したがって、他車両111の乗員だけでなく、鞍乗り型車両10周囲の歩行者M1も鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。
【0045】
図8には、人(歩行者M1)の中心視野MCと周辺視野MSを模式的に示している。中心視野MCは、眼球を動かさずに見ることのできる範囲であり、周辺視野MSは、中心視野MCの外側の視野範囲である。人の視覚特性として、中心視野MCは、周囲の物体の形をはっきり判別できる一方、その物体の動きに対する反応が相対的に遅れる傾向があることが知られている。また、周辺視野MSは、周囲の物体の形をはっきり判別できない一方、その物体の動きに対する反応が相対的に早い傾向があることが知られている。
本構成では、
図8に示すような鞍乗り型車両10及び歩行者M1の位置関係の場合、鞍乗り型車両10は、歩行者M1の周辺視野MSに向けて光LA,LBを照射することが可能である。これによって、歩行者M1が鞍乗り型車両10をより認知しやすくなる、といった効果を期待することができる。
【0046】
ところで、本構成では、各光LA,LBの輝度α、及び、所定照度以上の断面積βが次のように設定される。輝度αは、
図6及び
図7に示す位置P1,P2に存在する他者が知覚可能な輝度の範囲で設定される。また、所定照度以上の断面積βは、位置P1,P2に存在する他者が知覚可能な照度の断面積と言うこともでき、上記他者が知覚可能な範囲で設定される。
【0047】
<光LA,LBの輝度α及び断面積βについて>
図9は、光LA,LBの輝度α及び断面積βの仕様の一例を示す図である。
図9に示す仕様1~9は、輝度αの大小、及び、断面積βの大小の少なくともいずれかを規定するものである。鞍乗り型車両10は、いずれかの仕様となるように光LA,LBの輝度α及び断面積βが設定される。
但し、
図9に示す第1の光LAの輝度α及び断面積βは、位置P1の輝度及び断面積を示しており、つまり、第1の光LAが照射される位置P1の他者に対する輝度及び断面積を示している。また、
図9に示す第2の光LBの輝度α及び断面積βは、位置P2の輝度及び断面積を示しており、つまり、第2の光LAが照射される位置P2の他者に対する輝度及び断面積を示している。
【0048】
図9において、輝度αが大とは、所定輝度を超えることを示し、輝度αが小とは、所定輝度を下回ることを示している。また、断面積βが大とは、所定照度以上の断面積が所定面積を超えることを示し、断面積βが小とは所定照度以上の断面積が所定面積を下回ることを示している。
ここで、所定輝度は、輝度の大小の判定基準値であり、車外の他者が認知可能な輝度αとなる条件を満たす範囲で、適宜な値に設定される。また、所定照度は、車外の他者が認知可能な照度となる条件を満たす範囲で、適宜な値に設定される。また、所定面積は、断面積βの大小の判定基準値であり、車外の他者が認知可能な面積となる条件を満たす範囲で適宜な値に設定される。
【0049】
一般的に、輝度は、ある方向から見た単位面積当たりの明るさを示しており、光LA,LBの輝度は、各光LA,LBの出射方向から光LA,LBを見た単位面積当たりの明るさを示している。また、一般的に、照度は、照射面の単位面積当たりの明るさを示しており、光LA,LBの照度は、予め想定した車外の他者の目を照射する単位面積当たりの明るさを示している。
図9には、更に、仕様毎の光LA,LBの照射状態を模式的に示している。
図9に示す照射状態では、輝度αが大の光を実線で示し、輝度αが小の光を破線で示している。また、断面積βが大の光を太線で示し、断面積βが小の光を細線で示している。
【0050】
図9に示す仕様1では、第1の光LAの輝度αが大、かつ断面積βが小であり、第2の光LBの輝度αが小、かつ断面積βが小である。仕様1の場合、第1の光LAによって、遠方である位置P1の他者に十分な光刺激を付与できる。また、第1の光LAによる光刺激の後、位置P1から、相対的に近方である位置P2に移動した他者が第2の光LBを中心視野MC等で捉える際にグレア(まぶしさ、光刺激に相当)を抑えることができる。これにより、位置P2の他者に対するグレアを抑えながら、第1及び第2の光LA,LBによる鞍乗り型車両10の被認知性を向上できる。
【0051】
仕様2では、第1の光LAの輝度αが小であり、第2の光LBの輝度αが大である。なお、光LA,LBの断面積βは限定されず、適宜な値に設定される。仕様2の場合、第1の光LAによって、位置P1を含む第1の光LAの照射範囲に位置する他者は遠方ほど中心視野MCに近い位置で光を知覚できると共に、夜間等の周囲が暗い環境で光の変化量(コントラスト差)を十分に確保できる。コントラスト差が確保されるので、光刺激を抑えつつ位置P1の他者が光LAに気付きやすくなる。また、第2の光LBによって、位置P2の他者に十分な光刺激を付与できる。そのため、位置P1から位置P2に移動した他者に対し、コントラスト差が確保された第1の光LAの知覚後でも、十分な光刺激を付与でき、位置P2の他者が光LBに気づきやすくなる。これにより、第1及び第2の光LA,LBによる鞍乗り型車両10の被認知性を向上できる。
【0052】
仕様3では、第1の光LAの輝度αが大であり、第2の光LBの輝度αが小である。なお、光LA,LBの断面積βは限定されず、適宜な値に設定される。仕様3の場合、第1の光LAによって遠方である位置P1の他者に十分な光刺激を付与できる。そのため、早い段階で他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。また、第2の光LBによる位置P2の他者に対するグレアを抑えることができる。これにより、グレアを抑えながら、第1及び第2の光LA,LBによる鞍乗り型車両10の被認知性を向上できる。
【0053】
仕様4では、第1の光LAの断面積βが大であり、第2の光LBの断面積βが小である。なお、光LA,LBの輝度αは限定されず、適宜な値に設定される。仕様4の場合、第1の光LAによって、位置P1及びその周囲を含む広範囲の位置で他者に光を知覚させることができる。そのため、他者が位置P1に至るタイミングよりも早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。また、第2の光LBによって、位置P2の他者に短時間の光を知覚させることができるため、位置P2の他者に十分な光刺激を付与でき、他者がより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。したがって、車外の他者が、遠方の位置では早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなり、鞍乗り型車両10に近い位置ではより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1から位置P2に移動した他者に、長時間の光と短時間の光とを知覚させることができるため、これによっても車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。これにより、第1及び第2の光LA,LBによる鞍乗り型車両10の被認知性を向上できる。
【0054】
仕様5では、第1の光LAの断面積βが小であり、第2の光LBの断面積βが大である。なお、光LA,LBの輝度αは限定されず、適宜な値に設定される。仕様5の場合、第1の光LAによって、位置P1の他者に短時間の光を知覚させることができる。そのため、他者に十分な光刺激を付与でき、遠方の位置で他者がより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1をより遠方の位置にする場合でも他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。また、第2の光LBによって、位置P2及びその周囲を含む広範囲の位置で他者に光を知覚させることができるため、他者が、位置P2に至るタイミングよりも早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。したがって、車外の他者が、遠方の位置でより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなり、かつ、鞍乗り型車両10に近い位置では早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1から位置P2に移動した他者に、短時間の光と長時間の光とを知覚させることができるため、これによっても車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。これにより、第1及び第2の光LA,LBによる鞍乗り型車両10の被認知性を向上できる。
【0055】
仕様6では、第1の光LAの輝度αが大、かつ断面積βが大であり、第2の光LBの輝度αが小、かつ断面積βが小である。仕様6は、仕様3,4の組み合わせに相当する。そのため、仕様6では、第1の光LAによって、位置P1及びその周囲を含む広範囲の位置で他者に十分な光刺激を付与できる。これにより、他者が位置P1に至るタイミングよりも早いタイミングで、より確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。また、第2の光LBによる位置P2の他者に対するグレアを抑えつつ、第2の光LBによって、位置P2の他者に十分な光刺激を与えやすくなり、他者がより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1から位置P2に移動した他者に、長時間の光と短時間の光とを知覚させることができるため、これによっても車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。これにより、第1及び第2の光LA,LBによる鞍乗り型車両10の被認知性を向上できる。
【0056】
仕様7では、第1の光LAの輝度αが大、かつ断面積βが小であり、第2の光LBの輝度αが小、かつ断面積βが大である。仕様7は、仕様3,5の組み合わせに相当する。そのため、仕様6では、第1の光LAによって、位置P1の他者に十分な光刺激を付与でき、かつ、短時間の光を知覚させることができる。これにより、遠方の位置で他者がより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1をより遠方の位置にする場合でも他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。また、位置P2及びその周囲を含む広範囲の位置で第2の光LBによるグレアを抑えつつ、第2の光LBによって、位置P2及びその周囲を含む広範囲の位置で他者に光を知覚させることができる。そのため、グレアを抑えつつ、他者が位置P2に至るタイミングよりも早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。したがって、車外の他者が、遠方の位置でより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなり、かつ、鞍乗り型車両10に近い位置では早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1から位置P2に移動した他者に、短時間の光と長時間の光とを知覚させることができるため、これによっても車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。これにより、第1及び第2の光LA,LBによる鞍乗り型車両10の被認知性を向上できる。
【0057】
仕様8では、第1の光LAの輝度αが小、かつ断面積βが大であり、第2の光LBの輝度αが大、かつ断面積βが小である。仕様8は、仕様2,4の組み合わせに相当する。そのため、仕様8では、第1の光LAによって、位置P1を含む第1の光LAの照射範囲に位置する他者は遠方ほど中心視野MCに近い位置で光を知覚できると共に、位置P1及びその周囲を含む広範囲の位置で他者に光を知覚させることができる。そのため、光刺激を抑えつつ、光の変化量(コントラスト差)を十分に確保した光によって、他者が位置P1に至るタイミングよりも早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。また、第2の光LBによって、コントラスト差が確保された第1の光LAの知覚後でも位置P2の他者に十分な光刺激を付与でき、かつ、短時間の光を知覚させることができるため、他者がより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。したがって、車外の他者が、遠方の位置では光刺激を抑えつつ早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなり、鞍乗り型車両10に近い位置ではより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1から位置P2に移動した他者に、長時間の光と短時間の光とを知覚させることができるため、これによっても車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。これにより、第1及び第2の光LA,LBによる鞍乗り型車両10の被認知性を向上できる。
【0058】
仕様9では、第1の光LAの輝度αが小、かつ断面積βが小であり、第2の光LBの輝度αが大、かつ断面積βが大である。仕様9は、仕様2,5の組み合わせに相当する。そのため、仕様9では、第1の光LAによって、位置P1を含む第1の光LAの照射範囲に位置する他者は遠方ほど中心視野MCに近い位置で光を知覚できると共に、位置P1の他者に短時間の光を知覚させることができるため、光の変化量(コントラスト差)を十分に確保した短時間の光によって他者に十分な光刺激を付与でき、遠方の位置で他者がより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1をより遠方の位置にする場合でも他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。また、第2の光LBによって、コントラスト差が確保された第1の光LAの知覚後でも、位置P2及びその周囲を含む広範囲の位置で他者に十分な光刺激を付与できるため、他者が、位置P2に至るタイミングよりも早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。したがって、車外の他者が、遠方の位置でより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなり、かつ、鞍乗り型車両10に近い位置では早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1から位置P2に移動した他者に、短時間の光と長時間の光とを知覚させることができるため、これによっても車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。これにより、第1及び第2の光LA,LBによる鞍乗り型車両10の被認知性を向上できる。
【0059】
以上説明したように、灯火器を構成するライトユニット41は、位置P1で、鞍乗り型車両10である自車両のヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第1の光LAと、位置P2で、自車両のヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第2の光LBと、を照射する。
ここで、位置P1は、本発明の「所定の第1位置」に相当する。位置P2は、位置P1よりも自車両と車両前後方向又は車幅方向に近い第2位置に相当する(
図6,
図7参照)。
そして、位置P1における第1の光LAの輝度α、及び断面積βの少なくともいずれかは、位置P2における第2の光LBの輝度α、及び断面積βの少なくともいずれかと異なる。
位置P1で、鞍乗り型車両10である自車両のヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第1の光LAと、位置P2で、自車両のヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第2の光LBと、を照射するので、位置P1,P2に存在する他者が、光LA,LBを知覚しやすくなる。しかも、位置P1における第1の光LAの輝度α、及び断面積βの少なくともいずれかは、位置P2における第2の光LBの輝度α、及び断面積βの少なくともいずれかと異なるので、位置P1から位置P2に移動した他者に、光LA,LBによって輝度αが異なる二種類の光、及び/又は、長時間の光と短時間の光とを知覚させることができ、他者が光により気づきやすくなる。これにより、第1及び第2の光LA,LBによって、車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。
【0060】
また、仕様2,8及び9に記載のように、第1位置である位置P1における第1の光LAの輝度αは、第2位置である位置P2における第2の光LBの輝度αよりも小さいので、第1の光LAによって、位置P1を含む第1の光LAの照射範囲に位置する他者は遠方ほど中心視野MCに近い位置で光を知覚でき、光の変化量からなるコントラスト差を確保しやすくなる。また、第2の光LBによって、位置P2の他者に十分な光刺激を付与できる。そのため、位置P1から位置P2に移動した他者に対し、コントラスト差が確保された第1の光LAの知覚後でも、十分な光刺激を付与でき、位置P2の他者が光LBに気づきやすくなる。これにより、車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。
【0061】
また、仕様1,3,6及び7に記載のように、第1位置である位置P1における第1の光LAの輝度αは、第2位置である位置P2における第2の光LBの輝度αよりも大きいので、第1の光LAによって、位置P1の他者に十分な光刺激を付与でき、早い段階で他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。また、位置P2の他者に対するグレアを抑えることができる。これにより、他者に対するグレアを抑えながら、第1及び第2の光LA,LBによって、車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。
【0062】
また、仕様5,7及び9に記載のように、第1位置である位置P1における第1の光LAの断面積βは、第2位置である位置P2における第2の光LBの断面積βよりも小さいので、第1の光LAによって、位置P1の他者に短時間の光を知覚させることができるため、他者に十分な光刺激を付与でき、遠方の位置で他者がより確実に車両を認知しやすくなる。さらに、位置P1をより遠方の位置にする場合でも他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。また、第2の光LBによって、位置P2及びその周囲を含む広範囲の位置で他者に光を知覚させることができるため、他者が、位置P2に至るタイミングよりも早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。したがって、車外の他者が、遠方の位置でより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなり、かつ、鞍乗り型車両10に近い位置では早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1から位置P2に移動した他者に、短時間の光と長時間の光とを知覚させることができるため、これによっても車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。
【0063】
また、仕様4,6及び8に記載のように、第1位置である位置P1における第1の光LAの断面積βは、第2位置である位置P2における第2の光LBの断面積βよりも大きいので、第1の光LAによって、位置P1及びその周囲を含む広範囲の位置で他者に光を知覚させることができるため、他者が、位置P1に至るタイミングよりも早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。また、第2の光LBによって、位置P2の他者に短時間の光を知覚させることができるため、他者に十分な光刺激を付与でき、他者がより確実に車両を認知しやすくなる。したがって、車外の他者が、遠方の位置では早いタイミングで鞍乗り型車両10を認知しやすくなり、鞍乗り型車両10に近い位置ではより確実に鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。さらに、位置P1から位置P2に移動した他者に、長時間の光と短時間の光とを知覚させることができるため、これによっても車外の他者が鞍乗り型車両10を認知しやすくなる。
【0064】
上述の実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、本発明は、
図1に示すような自動二輪車に限定されず、三輪タイプや四輪タイプを含む様々な鞍乗り型車両に適用してもよいし、四輪車両等の任意の車両に適用してもよい。
図10は、四輪車両10Cから照射される第1及び第2の光LA,LBを模式的に示す図である。
図10に示すように、四輪車両10Cの前部には、左右に間隔を空けて一対のライトユニット41が取り付けられ、各ライトユニット41から第1及び第2の光LA,LBが照射される。これにより、他車両の運転者や歩行者等からの四輪車両10Cの被視認性を向上できる。
【0065】
また、光LA,LBの方向は、車両前側側方に限定されず、他車両の乗員や歩行者が車両10を認知するのに好適な方向であればよい。また、光LA,LBの数を増減してもよい。
【0066】
なお、本説明では、光LA,LBの出射側の明るさを「輝度α」と表記し、光LA,LBが照射された照射面の明るさを「照度」と表記したが、出射側の明るさを示す指標を、「輝度α」に代えて、単位時間当たりの光の量である「光束」や、ある方向への光の強さを示す「光度」と置き換えてもよい。
【0067】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0068】
(構成1)灯火器を有する車両において、前記灯火器は、所定の第1位置で、当該車両のヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第1の光と、前記第1位置よりも当該車両と車両前後方向又は車幅方向に近い第2位置で、前記ヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第2の光と、を照射し、前記第1位置における前記第1の光の輝度、及び、所定照度以上の断面積の少なくともいずれかは、前記第2位置における前記第2の光の輝度、及び、所定照度以上の断面積の少なくともいずれかと異なる、車両。
第1位置で、車両である自車両のヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第1の光と、第2位置で、自車両のヘッドライト光よりも高い輝度が得られる第2の光と、を照射するので、第1位置及び第2位置に存在する他者が、光を知覚しやすくなる。しかも、第1位置における第1の光の輝度、及び、所定照度以上の断面積の少なくともいずれかは、第2位置における第2の光の輝度、及び、所定照度以上の断面積の少なくともいずれかと異なるので、第1位置から第2位置に移動した他者に、各光によって輝度が異なる二種類の光、及び/又は、長時間の光と短時間の光とを知覚させることができ、他者が光により気づきやすくなる。これにより、第1及び第2の光によって、車外の他者が車両を認知しやすくなる。
【0069】
(構成2)前記第1位置における前記第1の光の輝度は、前記第2位置における前記第2の光の輝度よりも小さい、構成1に記載の車両。
この構成によれば、第1の光によって、第1位置を含む第1の光の照射範囲に位置する他者は遠方ほど中心視野に近い位置で光を知覚できると共に、光の変化量からなるコントラスト差を確保しやすくなる。また、第2の光によって、第2位置の他者に十分な光刺激を付与できる。そのため、第1位置から第2位置に移動した他者に対し、コントラスト差が確保された第1の光の知覚後でも、十分な光刺激を付与でき、第2位置の他者が光に気づきやすくなる。これにより、車外の他者が車両を認知しやすくなる。
【0070】
(構成3)前記第1位置における前記第1の光の輝度は、前記第2位置における前記第2の光の輝度よりも大きい、構成1に記載の車両。
この構成によれば、第1の光によって、第1位置の他者に十分な光刺激を付与でき、早い段階で他者が車両を認知しやすくなる。また、第2位置の他者に対するグレアを抑えることができる。これにより、他者に対するグレアを抑えながら、車外の他者が車両を認知しやすくなる。
【0071】
(構成4)前記第1位置における前記第1の光の前記断面積は、前記第2位置における前記第2の光の前記断面積よりも小さい、構成1から3のいずれか一項に記載の車両。
この構成によれば、第1の光によって、第1位置の他者に短時間の光を知覚させることができるため、他者に十分な光刺激を付与でき、遠方の位置で他者がより確実に車両を認知しやすくなる。さらに、第1位置をより遠方の位置にする場合でも他者が車両を認知しやすくなる。また、第2の光によって、第2位置及びその周囲を含む広範囲の位置で他者に光を知覚させることができるため、他者が、第2位置に至るタイミングよりも早いタイミングで車両を認知しやすくなる。したがって、車外の他者が、遠方の位置でより確実に車両を認知しやすくなり、かつ、車両に近い位置では早いタイミングで車両を認知しやすくなる。さらに、第1位置から第2位置に移動した他者に、短時間の光と長時間の光とを知覚させることができるため、これによっても車外の他者が車両を認知しやすくなる。
【0072】
(構成5)前記第1位置における前記第1の光の前記断面積は、前記第2位置における前記第2の光の前記断面積よりも大きい、構成1から3のいずれか一項に記載の車両。
この構成によれば、第1の光によって、第1位置及びその周囲を含む広範囲の位置で他者に光を知覚させることができるため、他者が、第1位置に至るタイミングよりも早いタイミングで車両を認知しやすくなる。また、第2の光によって、第2位置の他者に短時間の光を知覚させることができるため、他者に十分な光刺激を付与でき、他者がより確実に車両を認知しやすくなる。したがって、車外の他者が、遠方の位置では早いタイミングで車両を認知しやすくなり、車両に近い位置ではより確実に車両を認知しやすくなる。さらに、第1位置から第2位置に移動した他者に、長時間の光と短時間の光とを知覚させることができるため、これによっても車外の他者が車両を認知しやすくなる。
【符号の説明】
【0073】
10 鞍乗り型車両(車両)
10A,10B 車両
10C 四輪車両(車両)
11 車体フレーム
21 ハンドル
21a ハンドルバー
41 ライトユニット(灯火器)
51 ロービーム照射部
51a ロービーム用光源(ヘッドライト用光源)
52 第2ロービーム照射部
52a 第2ロービーム用光源(ヘッドライト用光源)
53 光照射部
53a 第1光源
53b 第1リフレクタ
53c 第2リフレクタ
111 他車両
200,201 障害物
LA 光(第1の光)
LB 光(第2の光)
LC 車幅中心
P1 位置(第1位置)
P2 位置(第2位置)