(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146496
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】光学素子、レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 1/14 20150101AFI20241004BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20241004BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20241004BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B3/00 Z
G02B1/11
G02B7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059440
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】杉本 建
(72)【発明者】
【氏名】加本 貴則
(72)【発明者】
【氏名】西川 昌之
(72)【発明者】
【氏名】中川 小百合
(72)【発明者】
【氏名】ダマスコ・ティ ジェニファー トレス
(72)【発明者】
【氏名】山本 明典
(72)【発明者】
【氏名】川上 政孝
【テーマコード(参考)】
2H044
2K009
【Fターム(参考)】
2H044AA10
2K009AA02
2K009AA15
2K009BB11
(57)【要約】
【課題】光学素子において、耐久性が向上するとともに光学特性の低下を抑制する。
【解決手段】
光学素子10は、光軸Lxを有する。光学素子10は、プラスチックレンズ11と、ハードコート層12と、反射防止膜13とを備える。ハードコート層12は、プラスチックレンズ11と反射防止膜13との間に位置する。反射防止膜13は、プラスチックレンズ11の少なくとも一方の面側に配置される。ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1は、2μm以上20μm以下である。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を有する光学素子であって、
プラスチックレンズと、
前記プラスチックレンズの少なくとも一方の面側に配置された反射防止膜と、
前記プラスチックレンズと前記反射防止膜との間に位置するハードコート層と
を備え、
前記ハードコート層の前記光軸における厚さは、2μm以上20μm以下である、光学素子。
【請求項2】
前記ハードコート層の最小厚さは、2μm以上であり
前記ハードコート層の最大厚さは、20μm以下である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記ハードコート層の弾性率は、5GPa以上12GPa以下である、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記プラスチックレンズの熱膨張係数は、60ppm/K以上150ppm/K以下である、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項5】
前記反射防止膜の熱膨張係数は、1ppm/K以上10ppm/K以下である、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項6】
前記プラスチックレンズの熱膨張係数は、60ppm/K以上100ppm/K以下であり、
前記反射防止膜の熱膨張係数は、5ppm/K以上10ppm/K以下である、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項7】
前記ハードコート層の前記光軸における厚さと外縁の厚さとの差は、15μm以下である、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項8】
複数のレンズと、
前記複数のレンズを収容する収容部材と
を備える、レンズユニットであって、
前記複数のレンズは、前記収容部材の開口から順番に配置され、
前記複数のレンズのうち前記収容部材の開口側に位置する最外レンズは、請求項1または2に記載の光学素子である、レンズユニット。
【請求項9】
前記最外レンズの外縁を遮光する遮光部材をさらに備える、請求項8に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記遮光部材は、前記収容部材と単一の部材である、請求項9に記載のレンズユニット。
【請求項11】
請求項8に記載のレンズユニットと、
撮像素子と
を備える、カメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、レンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光を透過するプラスチックレンズ基材を保護するために、プラスチックレンズ基材よりも硬いハードコート層でプラスチックレンズ基材を被覆するとともに、ハードコート層の表面に光の反射を防止する反射防止層を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、プラスチックレンズ基材を被覆するハードコート層の上に反射防止層を備えたプラスチックレンズを眼鏡レンズとして用いることが記載されている。特許文献1のプラスチックレンズでは、反射防止層が、二酸化珪素(SiO2)からなる低屈折率膜と、四窒化三珪素(Si3N4)からなる高屈折率膜とが交互に積層された多層膜であり、反射防止層の低屈折率膜および高屈折率膜を特定の膜厚に設定することにより、プラスチックレンズの耐久品質を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のプラスチックレンズでも、周囲環境に起因して反射防止層が剥離したりハードコート層が損傷したりして、光学素子の耐久性が低下するおそれがある。一方で、プラスチックレンズにおいて、ハードコート層が厚くなると、耐久性の低下は抑制できるが、光学的な歪みが生じて光学特性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐久性が向上するとともに光学特性の低下を抑制可能な光学素子、レンズユニットおよびカメラモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な光学素子は、光軸を有する光学素子であって、プラスチックレンズと、前記プラスチックレンズの少なくとも一方の面側に配置された反射防止膜と、前記プラスチックレンズと前記反射防止膜との間に位置するハードコート層とを備える。前記ハードコート層の前記光軸における厚さは、2μm以上20μm以下である。
【0008】
本発明の例示的なレンズユニットは、複数のレンズと、前記複数のレンズを収容する収容部材とを備える。前記複数のレンズは、前記収容部材の開口から順番に配置され、前記複数のレンズのうち前記収容部材の開口側に位置する最外レンズは、上記に記載の光学素子である。
【0009】
本発明の例示的なカメラモジュールは、上記に記載のレンズユニットと、撮像素子とを備える。
【発明の効果】
【0010】
例示的な本発明は、耐久性が向上するとともに光学特性の低下を抑制可能な光学素子、レンズユニットおよびカメラモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、本実施形態に係る光学素子の一例の模式図である。
【
図2A】
図2Aは、本実施形態に係るカメラモジュールの模式図である。
【
図3A】
図3Aは、本実施形態に係るカメラモジュールの模式図である。
【
図4A】
図4Aは、本実施形態に係るカメラモジュールの分解図である。
【
図4B】
図4Bは、本実施形態に係るカメラモジュールの作製過程の模式図である。
【
図4C】
図4Cは、本実施形態に係るカメラモジュールを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照しながら本発明の実施形態の光学素子、レンズユニットおよびカメラモジュールを説明する。なお、図中、同一または相当部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。図中の寸法、形状および構成要素間の大小関係は、実際の寸法、形状および構成要素間の大小関係とは必ずしも同一ではない。特に、図中の反射防止膜、ハードコート層およびプラスチックレンズの厚さは、実際の反射防止膜、ハードコート層およびプラスチックレンズの厚さと大きく異なることがある。なお、本明細書において、光学素子の各部位の「厚さ」は、光学素子の光軸方向に平行な長さを示す。
【0013】
以下、
図1Aおよび
図1Bを参照して、本実施形態に係る光学素子10を説明する。
図1Aは、本実施形態に係る光学素子10の模式図である。
図1Bは、
図1Aの一部拡大図である。
【0014】
図1Aおよび
図1Bに示すように、光学素子10は、曲面形状を有する。典型的には、光学素子10は、球面形状を有する。光学素子10は、中心軸を中心とした球面形状を有する。
【0015】
光学素子10は、光軸Lxを有する。光軸Lxは、光学素子10の曲面形状の中心を通過する。光学素子10は、光軸Lxを中心とした対称構造を有する。典型的には、光学素子10は、光軸Lxを中心とした回転対称構造を有する。光学素子10には、光軸Lxに沿った方向から光が入射する。
【0016】
光学素子10は、プラスチックレンズ11と、ハードコート層12と、反射防止膜13とを備える。プラスチックレンズ11、ハードコート層12および反射防止膜13は、この順番に積層される。典型的には、プラスチックレンズ11、ハードコート層12および反射防止膜13は、この順番に密着して配置される。
【0017】
[プラスチックレンズ11]
プラスチックレンズ11は、光を透過する。例えば、プラスチックレンズ11は、透明である。また、プラスチックレンズ11は、半透明であってもよく、透光性を有してもよい。
【0018】
典型的には、プラスチックレンズ11は、樹脂製である。プラスチックレンズ11は、単一部材から構成されてもよい。例えば、プラスチックレンズ11は、環構造として環状イミド構造を有する樹脂を含む。このような樹脂の一例として、旭化成株式会社製のAZP、株式会社日本触媒製のRM-104、RM-250、RM-100-Zなどが挙げられる。
【0019】
プラスチックレンズ11は、曲面形状を有する。典型的には、プラスチックレンズ11は、球面形状を有する。なお、プラスチックレンズ11の少なくとも一方の面は、凸面または凹面であってもよい。プラスチックレンズ11が凸面、または凹面を有する場合、プラスチックレンズ11は、レンズ(具体的には、例えば、両凸レンズ、平凸レンズ、凸メニスカスレンズおよび凹メニスカスレンズ)として機能する。
【0020】
プラスチックレンズ11は、凸面を有してもよい。例えば、プラスチックレンズ11の曲率半径は、9mm以上16mm以下である。
【0021】
プラスチックレンズ11の熱膨張係数は、60ppm/K以上150ppm/K以下であることが好ましい。これにより、プラスチックレンズ11と反射防止膜13との間の熱応力の影響を抑制できる。
【0022】
[ハードコート層12]
ハードコート層12は、プラスチックレンズ11を被覆する。例えば、ハードコート層12は、プラスチックレンズ11の光軸Lxの延びる方向において物体側に位置する一方側の面を被覆する。ハードコート層12は、プラスチックレンズ11よりも高い硬度を有する。ハードコート層12は、プラスチックレンズ11に耐擦傷性を付与するとともに、プラスチックレンズ11と反射防止膜13との密着性を向上させる。
【0023】
ハードコート層12は、光を透過する。例えば、ハードコート層12は、透明である。また、ハードコート層12は、半透明であってもよく、透光性を有してもよい。
【0024】
ハードコート層12は、ベース層を有してもよい。典型的には、ベース層は、有機材料層または有機ケイ素化合物層を含む。また、ハードコート層12において、ベース層には、金属酸化物微粒子が分散されてもよい。
【0025】
ハードコート層12の弾性率は、5GPa以上12GPa以下であることが好ましい。ハードコート層12の弾性率が5GPa以上であることにより、プラスチックレンズ11が損傷することを抑制できる。また、ハードコート層12の弾性率が12GPa以下であることにより、温度変化に起因してハードコート層12にクラックが発生することを抑制できる。
【0026】
典型的には、ハードコート層12は、プラスチックレンズ11の表面に付着した成分液を乾燥させた後、紫外線等の電磁波または電子ビームで成分液の膜を硬化させることによって形成できる。なお、成分液を乾燥させる際に、成分液を加熱してもよい。
【0027】
一例では、ハードコート層12は、スピンコート法によって形成してもよい。この場合、所定の回転速度で回転するプラスチックレンズ11上に、ハードコート層12の成分液を吐出し、ハードコート層12の成分液に対して、紫外線等の電磁波または電子ビームで成分液を硬化させて形成する。
【0028】
あるいは、ハードコート層12は、ディッピング法によって形成してもよい。この場合、プラスチックレンズ11をハードコート層12の成分液に浸漬させた後、所定の回転速度で回転するプラスチックレンズ11上のハードコート層12の成分液に対して、紫外線等の電磁波または電子ビームで成分液を硬化させて形成する。
【0029】
なお、プラスチックレンズ11を回転させながらプラスチックレンズ11の表面にハードコート層12を形成する場合、ハードコート層12の厚さは、光軸Lxからの距離に応じて異なる。典型的には、ハードコート層12の厚さは、光軸Lxからの距離が大きくなるにつれて小さくなる。
【0030】
[反射防止膜13]
反射防止膜13は、ハードコート層12を被覆する。例えば、反射防止膜13は、ハードコート層12の空気側を被覆する。反射防止膜13は、反射防止膜13に入射する光が反射することを抑制する。反射防止膜13により、プラスチックレンズ11に入射する方向に進行する光の少なくとも一部がプラスチックレンズ11の表面側で反射することが抑制される。例えば、反射防止膜13により、プラスチックレンズ11に入射する方向に進行する可視光がプラスチックレンズ11の表面側で反射することが抑制される。
【0031】
反射防止膜13は、光を透過する。例えば、反射防止膜13は、透明である。また、反射防止膜13は、半透明であってもよく、透光性を有してもよい。
【0032】
反射防止膜13の厚さは、100nm以上1000nm以下である。反射防止膜13の厚さは、200nm以上900nm以下であってもよく、300nm以上800nm以下であってもよい。
【0033】
反射防止膜13の熱膨張係数は、1ppm/K以上10ppm/K以下であることが好ましい。これにより、プラスチックレンズ11と反射防止膜13との間の熱応力の影響を抑制できる。
【0034】
反射防止膜13は、積膜構造を有してもよい。例えば、反射防止膜13において、組成の異なる層が積層される。
【0035】
例えば、反射防止膜13は、無機酸化物からなる。反射防止膜13において、無機酸化物として、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、チタン酸ランタン、酸化タンタル、酸化ニオブ等の金属酸化物等が挙げられる。例えば、反射防止膜13において、複数種類の金属酸化物の層が積層される。
【0036】
例えば、反射防止膜13は、高屈折率膜と、低屈折率膜とを有する。反射防止膜13は、高屈折率膜と低屈折率膜とが交互に重なるように構成される。
【0037】
高屈折率膜の屈折率は、低屈折率膜の屈折率よりも高い。典型的には、可視域において、高屈折率膜の屈折率は、低屈折率膜の屈折率よりも高い。
【0038】
高屈折率膜は、四窒化三珪素(Si3N4)を含む。低屈折率膜は、二酸化珪素(SiO2)を含む。このように、高屈折率膜が四窒化三珪素(Si3N4)を含み、低屈折率膜が二酸化珪素(SiO2)を含むことにより、耐熱衝撃性を向上できる。
【0039】
例えば、高屈折率膜は、1.9以上である。一例では、高屈折率膜は、1.9以上2.3以下である。
【0040】
例えば、低屈折率膜の屈折率は、1.5以上1.8以下である。一例では、低屈折率膜の屈折率は、1.6以上1.75以下である。
【0041】
高屈折率膜および低屈折率膜の厚さは、5nm以上200nm以下である。これにより、高屈折率膜および低屈折率膜を均一に形成できるとともに、反射防止膜13において複数の高屈折率膜および低屈折率膜を配置できる。高屈折率膜および低屈折率膜の厚さは、10nm以上180nm以下であってもよく、20nm以上170nm以下であってもよい。
【0042】
反射防止膜13は、可視域の光を透過する一方で、紫外域の光を反射することが好ましい。反射防止膜13において、可視光波長の平均反射率は、紫外線波長の平均反射率よりも低いことが好ましい。
【0043】
なお、プラスチックレンズ11と反射防止膜13との間の熱応力の影響をさらに抑制する観点から、プラスチックレンズ11の熱膨張係数と反射防止膜13の熱膨張係数との差は比較的小さいことが好ましい。例えば、プラスチックレンズ11の熱膨張係数が60ppm/K以上100ppm/K以下であり、反射防止膜13の熱膨張係数が5ppm/K以上10ppm/K以下であることが好ましい。
【0044】
図1Bに示すように、プラスチックレンズ11は、曲面形状を有する。ここでは、プラスチックレンズ11の一方側の面は曲面であり、他方側の面は平面である。プラスチックレンズ11の厚さは、光軸Lxからの距離に応じて異なる。
【0045】
ハードコート層12の厚さは、光軸Lxからの距離に応じて異なる。典型的には、ハードコート層12の厚さは、中心となる光軸Lxにおいて最も大きい。また、典型的には、ハードコート層12の厚さは、外縁において最も小さい。
【0046】
典型的には、ハードコート層12の外縁の厚さLx2は、ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1よりも小さい。ただし、ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1とハードコート層12の外縁の厚さLx1との差は、比較的小さいことが好ましい。例えば、ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1とハードコート層12の外縁の厚さLx2との差は、15μm以下であることが好ましく、6μm以下であることが好ましい。
【0047】
ハードコート層の光軸Lxにおける厚さが小さいと、光学素子を屋外環境下に曝し、ハードコート層と反射防止膜との界面の密着性が低下した場合、反射防止膜がハードコート層から剥離したりハードコート層が損傷して光学素子の耐久性が低下することがある。
【0048】
一方で、ハードコート層の光軸Lxにおける厚さが大きいと、光学素子において光学的な歪みが生じ、光学素子の光学特性が低下することがある。また、ハードコート層の光軸Lxにおける厚さがさらに大きくなると、ハードコート層の膜状態が不均一となり、ハードコート層にクラックが発生することがある。
【0049】
本実施形態の光学素子10において、ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1が2μm以上であることにより、光学素子10を屋外環境下に曝しても、高光量の光が透過する光軸Lxにおいて反射防止膜13がハードコート層12から剥離したりハードコート層12が損傷して光学素子10の耐久性が低下することを抑制できる。また、本実施形態の光学素子10において、ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1が20μm以下であることにより、高光量の光が透過する光軸Lxにおいて光学素子10の光学特性が低下することを抑制できる。
【0050】
本実施形態の光学素子10は、ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1は、2μm以上20μm以下である。ハードコート層12おいて光軸Lxにおける厚さLx1が2μm以上であることにより、光学素子10の高光量の光が透過する光軸Lxにおいて、光学素子10に光が照射されてもハードコート層12から反射防止膜13が剥離することを抑制できる。また、ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さが20μm以下であることにより、光学的な歪みの発生を抑制できるとともに、ハードコート層12にクラックが発生することを抑制できる。
【0051】
なお、ハードコート層12の最小厚さは、2μm以上であることが好ましい。これにより、光学素子10全体の耐久性が低下することを抑制できる。
【0052】
また、ハードコート層12の最大厚さは、20μm以下であることが好ましい。これにより、光学素子10全体の光学特性が低下することを抑制できる。
【0053】
本実施形態の光学素子10は、光学的な歪みが比較的少なく、比較的高い耐久性を示す。このため、光学素子10は、監視カメラまたは車載カメラに好適に用いられる。監視カメラまたは車載カメラが屋外環境下で長時間にわたって用いられる場合でも、光学素子10を継続して使用できる。
【0054】
本実施形態において、光学素子10は、光軸Lxを有する。光学素子10は、プラスチックレンズ11と、ハードコート層12と、反射防止膜13とを備える。ハードコート層12は、プラスチックレンズ11と反射防止膜13との間に位置する。反射防止膜13は、プラスチックレンズ11の少なくとも一方の面側に配置される。ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1は、2μm以上20μm以下である。
【0055】
ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1が2μm以上であることにより、光学素子10の光軸Lxにおいて、光学素子10に紫外線が照射されてもハードコート層12から反射防止膜13が剥離することを抑制できる。また、ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1が20μm以下であることにより、光学的な歪みの発生を抑制できるとともに、ハードコート層12にクラックが発生することを抑制できる。
【0056】
一般に、光学素子を屋外環境下において紫外線が照射されると、ハードコート層の表面において劣化が起こりハードコート層と反射防止膜との界面の密着性が低下することがある。これに対して、ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1が2μm以上であることにより、光学素子10に光が照射されてもハードコート層12から反射防止膜13の剥離およびハードコート層12の損失を抑制できる。これにより、耐候性が優れ、かつ、光学特性の低下が抑制された光学素子10を提供できる。
【0057】
ハードコート層12の最小厚さは、2μm以上であり、ハードコート層12の最大厚さは、20μm以下である。ハードコート層12の最小厚さが2μm以上であることにより、光学素子10に光が照射されても反射防止膜13が剥離することを抑制できる。また、ハードコート層12の最大厚さが20μm以下であることにより、光学的な歪みの発生を抑制できるとともに、ハードコート層12にクラックが発生することを抑制できる。
【0058】
ハードコート層12の弾性率は、5GPa以上12GPa以下である。ハードコート層12の弾性率が5GPa以上であることにより、プラスチックレンズ11が傷つくことを抑制できる。また、ハードコート層12の弾性率が12GPa以下であることにより、熱応力に起因してハードコート層12にクラックが発生することを抑制できる。
【0059】
プラスチックレンズ11の熱膨張係数は、60ppm/K以上150ppm/K以下である。プラスチックレンズ11の熱膨張係数が60ppm/K以上150ppm/Kであることにより、プラスチックレンズ11と反射防止膜13との間の熱応力の影響を低減できる。
【0060】
反射防止膜13の熱膨張係数は、1ppm/K以上10ppm/K以下である。反射防止膜13の熱膨張係数が1ppm/K以上10ppm/K以下であることにより、プラスチックレンズ11と反射防止膜13との間の熱応力の影響を低減できる。
【0061】
プラスチックレンズ11の熱膨張係数は、60ppm/K以上100ppm/K以下であり、反射防止膜13の熱膨張係数は、5ppm/K以上10ppm/K以下である。プラスチックレンズ11の熱膨張係数は、60ppm/K以上100ppm/K以下であり、反射防止膜13の熱膨張係数が5ppm/K以上10ppm/K以下であることにより、プラスチックレンズ11と反射防止膜13との間の熱応力の影響をさらに低減できる。
【0062】
ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1と外縁の厚さLx2との差は、15μm以下である。ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1と外縁の厚さLx2との差が15μm以下であることにより、プラスチックレンズ11の表面にハードコート層12の成分液を所定の速度で回転させながら比較的薄いハードコート層12を好適に形成できる。
【0063】
なお、
図1Aおよび
図1Bに示した光学素子10では、プラスチックレンズ11の一方の面側に、ハードコート層12および反射防止膜13が配置されたが、本実施形態はこれに限定されない。プラスチックレンズ11の両面側に、ハードコート層12および反射防止膜13が配置されてもよい。
【0064】
次に、
図1A、
図1B、
図2Aおよび
図2Bを参照して本実施形態に係るカメラモジュール200を説明する。
図2Aは、本実施形態に係るカメラモジュール200の一例を示す模式図であり、
図2Bは、
図2Aの一部拡大部である。カメラモジュール200は、周囲を撮像する。
【0065】
図2Aに示すように、カメラモジュール200は、レンズユニット100と、撮像素子210とを備える。撮像素子210は、レンズユニット100を透過する光を受光して周囲を撮像する。
【0066】
レンズユニット100は、複数のレンズ110を備える。複数のレンズ110のうちの少なくとも1つのレンズは、光学素子10である。
【0067】
複数のレンズ110は、第1レンズ110a、第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eを含む。第1レンズ110a、第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eは、物体側から像側に向かって順に配置されている。
【0068】
例えば、第1レンズ110aは、上述した光学素子10である。すなわち、第1レンズ110aは、上述したプラスチックレンズ11と、ハードコート層12と、反射防止膜13とを備える。
【0069】
レンズユニット100は、収容部材120と、固定部材122と、フィルタ130と、封止部材140とをさらに備える。収容部材120は、筒状である。典型的には、収容部材120は、円筒状である。なお、収容部材120の内周面には凹凸が設けられてもよい。
【0070】
収容部材120は、複数のレンズ110およびフィルタ130を収容する。収容部材120は、光を透過しない部材から形成される。例えば、収容部材120は、可視光および紫外線を透過しない部材から形成される。
【0071】
固定部材122は、複数のレンズ110のうちの少なくとも1つのレンズを収容部材120に固定する。固定部材122は、光軸Lxに対して直交する方向に収容部材120を貫通して少なくとも1つのレンズを収容部材120に固定する。
【0072】
第1レンズ110a、第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eは、収容部材120に設置される。第1レンズ110a、第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eの少なくとも1つのレンズの少なくとも一部が収容部材120から露出して配置されてもよい。例えば、第1レンズ110aは、少なくとも一部が収容部材120から露出して配置され、他の第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eは、収容部材120内に配置される。
【0073】
ここでは、第1レンズ110aの直径は、第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eのそれぞれの直径よりも大きい。また、第5レンズ110eの直径は、第2レンズ110b、第3レンズ110cおよび第4レンズ110dのそれぞれの直径よりも大きい。
【0074】
固定部材122は、第1レンズ110aを収容部材120に固定する。固定部材122は、第1レンズ110aのコバ面を押圧して第1レンズ110aを収容部材120に固定する。
【0075】
フィルタ130は、円盤状である。フィルタ130は、入射する光を選択的に透過する。例えば、フィルタ130は、入射する光のうちの特定の波長の光を選択的に透過する。ここでは、フィルタ130は、収容部材120に配置される。例えば、
図2Aに示すように、撮像素子210は、レンズユニット100の外に配置される。
【0076】
フィルタ130は、第5レンズ110eに対して像側に配置される。フィルタ130により、撮像素子210に到達する光の波長を選択できる。撮像素子210は、照射された光を電気信号に変換する光電変換素子である。撮像素子210は、例えばCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサである。ただし、撮像素子210は、これらに限定されるものではない。撮像素子210は、複数のレンズ110によって結像された被写体の像を撮像する。なお、撮像素子210は、フィルタ130(レンズユニット100)に対して像側に配置されてもよい。
【0077】
第1レンズ110aは、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズである。本実施形態において、第1レンズ110aの凸面からなる物体側の面は球面であり、凹面からなる像側の面は非球面である。
【0078】
第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eは、樹脂(プラスチックレンズ)であってもよく、ガラスであってもよい。
【0079】
第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eは、両凸レンズ、平凸レンズ、凸メニスカスレンズおよび凹メニスカスレンズのいずれであってもよい。
【0080】
上述したように、レンズユニット100が複数のレンズ110を備え、複数のレンズ110の少なくとも1つのレンズが光学素子10であることにより、レンズユニット100内のレンズ110の劣化を抑制できる。
【0081】
また、上述したプラスチックレンズ11、ハードコート層12および反射防止膜13を備える第1レンズ110aが収容部材120から露出して配置され、残りのレンズ(第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110e)が収容部材120内に配置されることにより、耐久性の高い第1レンズ110a以外のレンズの劣化を抑制できる。
【0082】
封止部材140は、第1レンズ110aと収容部材120との間で変形して第1レンズ110aと収容部材120との間を封止する。例えば、封止部材140は、環状の弾性体である。一例では、封止部材140は、Oリングである。
【0083】
レンズユニット100は、車の周囲を撮影するための車載レンズに好適に用いられる。例えば、レンズユニット100は、車の後方または側方を撮影するための車載レンズに用いられる。
【0084】
レンズユニット100が封止部材140を備えるため、外部からレンズユニット100に水がかかっても、レンズユニット100の内部(すなわち、収容部材120の内部)に水が浸入することを抑制できる。
【0085】
第1レンズ110aが、上述したプラスチックレンズ11と、ハードコート層12と、反射防止膜13とを備えることにより、収容部材120内に入射する紫外線を好適に抑制できる。このため、収容部材120内のレンズの劣化を抑制できる。
【0086】
例えば、第1レンズ110aの直径Ldは、1mm以上100mm以下であり、2mm以上50mm以下であってもよい。一例では、第1レンズ110aの直径Ldは、13.70mm以上13.75mm以下である。
【0087】
本実施形態によれば、レンズユニット100は、複数のレンズ110と、複数のレンズ110を収容する収容部材120とを備える。複数のレンズ110は、収容部材120の開口から順番に配置される。複数のレンズ110のうち収容部材120の開口側に位置する最外レンズは、上記の光学素子10である。これにより、レンズユニット100の耐候性を向上できる。
【0088】
カメラモジュール200は、上記に記載のレンズユニット100と、撮像素子210とを備える。これにより、カメラモジュール200の耐候性を向上できる。
【0089】
次に、
図1~
図3Bを参照して本実施形態に係るカメラモジュール200を説明する。
図3Aは、本実施形態に係るカメラモジュール200の一例を示す模式図であり、
図3Bは、
図3Aの一部拡大部である。
図3Aおよび
図3Bのカメラモジュール200は、固定部材122に代えて遮光部材150をさらに備える点を除いて
図2Aおよび
図2Bを参照して上述したカメラモジュール200と同様の構成を有しており、冗長を避ける目的で重複する説明を省略する。
【0090】
図3Aに示すように、カメラモジュール200は、レンズユニット100と、撮像素子210とを備える。レンズユニット100は、複数のレンズ110を備える。複数のレンズ110のうちの少なくとも1つのレンズは、光学素子10である。
【0091】
複数のレンズ110は、第1レンズ110a、第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eを含む。第1レンズ110a、第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eは、物体側から像側に向かって順に配置されている。
【0092】
例えば、第1レンズ110aは、上述した光学素子10である。すなわち、第1レンズ110aは、上述したプラスチックレンズ11と、ハードコート層12と、反射防止膜13とを備える。
【0093】
レンズユニット100は、収容部材120と、フィルタ130と、封止部材140と、遮光部材150とをさらに備える。収容部材120は、筒状である。典型的には、収容部材120は、円筒状である。なお、収容部材120の内周面には凹凸が設けられてもよい。
【0094】
収容部材120は、複数のレンズ110およびフィルタ130を収容する。収容部材120は、光を透過しない部材から形成される。収容部材120は、可視光および紫外線を透過しない部材から形成される。
【0095】
遮光部材150は、第1レンズ110aを遮光する。遮光部材150は、第1レンズ110aの周縁を遮光する。遮光部材150は、収容部材120に対して光軸Lxに対して直交する方向に延びる。遮光部材150は、第1レンズ110aの周縁に沿って延びる。遮光部材150は、第1レンズ110aが収容部材120から脱離することを抑制する。遮光部材150は、収容部材120と単一の部材であってもよい。
【0096】
遮光部材150は、第1レンズ110aの直径に対して0.5%以上10%以下の長さの周縁を覆う。このため、第1レンズ110aの有効径Edは、第1レンズ110aの直径Ldよりも小さい。
【0097】
例えば、第1レンズ110aの直径Ldは、1mm以上100mm以下であり、2mm以上50mm以下であってもよい。光軸Lxに対して直交する方向に沿った遮光部材150の長さSdは、0.005mm以上10mm以下であり、0.01mm以上5mm以下であってもよい。
【0098】
例えば、第1レンズ110aの直径Ldは、13.70mm以上13.75mm以下である。一例では、遮光部材150は、第1レンズ110aの外縁から0.1mm以上1.0mm以下の長さにわたって第1レンズ110aの周縁を覆う。このため、光軸Lxに対して直交する方向に沿った遮光部材150の長さSdは、0.1mm以上1.0mm以下である。したがって、第1レンズ110aの有効径Edは、11.70mm以上13.55mm以下である。
【0099】
本実施形態では、レンズユニット100が、遮光部材150を備えるため、第1レンズ110aが収容部材120から脱離することを抑制できる。
【0100】
次に、
図1~
図4Cを参照して本実施形態に係るカメラモジュール200を説明する。
図4Aは、本実施形態に係るカメラモジュール200の分解図である。
図4Bは、本実施形態に係るカメラモジュール200の作製過程の模式図である。
図4Cは、本実施形態に係るカメラモジュール200を示す模式図である。
【0101】
図4Aに示すように、収容部材120は、複数のレンズ110を収容可能である。複数のレンズ110のうちの少なくとも1つのレンズは、光学素子10である。
【0102】
収容部材120は、筒形状である。典型的には、収容部材120は、円筒形状である。
【0103】
複数のレンズ110は、第1レンズ110a、第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eを含む。収容部材120は、第1レンズ110a、第2レンズ110b、第3レンズ110c、第4レンズ110dおよび第5レンズ110eをそれぞれ収容可能な収容部を有する。
【0104】
なお、ここでは、収容部材120の一方側の外縁には突起部150aが設けられる。典型的には、突起部150aは、収容部材120と同じ材料から形成される。突起部150aは、収容部材120と単一の部材である。突起部150aは、光軸Lxと平行に収容部材120から延びる。
【0105】
図4Bに示すように、収容部材120に、複数のレンズ110、フィルタ130および封止部材140が収容される。ここでは、第1レンズ110a、第2レンズ110b、第3レンズ110cおよび封止部材140は、収容部材120に対して一方側から他方側に挿入される。第4レンズ110d、第5レンズ110eおよびフィルタ130は、収容部材120に対して他方側から一方側に挿入される。フィルタ130は、複数のレンズ110と撮像素子210との間に位置する。
【0106】
図4Cに示すように、収容部材120に対して突起部150aを光軸Lxに対して直交する方向に折り曲げることにより、遮光部材150を形成する。突起部150aが、加熱された状態で押圧されることにより、光軸Lxに対して直交する方向に収容部材120に対して折れ曲がる。遮光部材150は、最外レンズである第1レンズ110aを遮光する。遮光部材150は、レンズユニット100に入射する光が第1レンズ110aの外縁に入射することを抑制する。また、遮光部材150は、第1レンズ110aが収容部材120から脱離することを抑制する。
【0107】
本実施形態によれば、レンズユニット100は、複数のレンズ110、収容部材120、フィルタ130および封止部材140に加えて、最外レンズの外縁を遮光する遮光部材150をさらに備える。これにより、最外レンズにおいてハードコート層12の外縁の厚さが薄くても、遮光部材150が遮光することにより、反射防止膜13とハードコート層12との界面の密着性の低下を抑制できるとともに、ハードコート層12の劣化を抑制できる。
【0108】
遮光部材150は、収容部材120と単一の部材である。これにより、ハードコート層12の外縁を遮光する遮光部材150のために部品点数が増加することを抑制できる。
【実施例0109】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
【0110】
[実施例1]
まず、実施例1の光学素子10を作製した。
【0111】
株式会社日本触媒製のRM-104を材料とするプラスチックレンズ11を用意した。プラスチックレンズ11は、物体側に凸面を向けたメニスカスレンズであり、プラスチックレンズ11のレンズ外径は約14mmであった。
【0112】
プラスチックレンズ11の表面にハードコート層12を被覆した。ハードコート層12は、ウレタン等からなる光硬化性樹脂材料であった。ハードコート層12は、スピンコート法によってプラスチックレンズ11にハードコート層12の成分液を塗布した後、成分液の膜を加熱して乾燥させ、その後、紫外線等の電磁波または電子ビームで膜を硬化させて形成した。
【0113】
ハードコート層12の表面に反射防止膜13を被覆した。反射防止膜13は、Si3N4からなる高屈折率膜と、SiO2からなる低屈折率膜とをスパッタリング法で交互に形成した。以上のようにして実施例1の光学素子10を作製した。
【0114】
実施例1の光学素子10においてハードコート層12の厚さを測定した。ハードコート層12の光軸Lxにおける厚さLx1は5.4μmであったのに対して、ハードコート層12の外縁の厚さLx2は2.1μmであった。
【0115】
次に、実施例1の光学素子10に対して、以下の条件で光学特性試験および耐候性試験を行った。
【0116】
[光学特性試験]
実施例1の光学素子10に蛍光性光源から蛍光を照射して光学的な歪みを目視で検査した。
【0117】
[耐候性試験]
高促進耐候性試験機7.5kWスーパーキセノンウェザーメーターを用いて耐候性試験を行った。耐候性試験では、放射照度180W/m2で、照射+降雨18分間の後に、照射のみ102分間行うことを1サイクルとし、500サイクル繰り返した。耐候性試験中および耐候性試験後に、反射防止膜13が剥離していないか、および、ハードコート層12に損傷がないかチェックした。
【0118】
表1に、実施例1の光学素子10におけるハードコート層12の光軸における厚さ、ハードコート層12の外縁の厚さ、光学素子10の光学特性試験および耐候性試験の結果を示す。本明細書において、蛍光性光源下での目視検査において、光学的な歪みがないものを「〇」、光学的な歪みがあるのを「×」と示す。また、本明細書において、耐候性試験後に、目視検査において反射防止膜の剥離およびハードコート層の損傷がないものを「〇」、反射防止膜の剥離およびハードコート層の損傷のいずれかがあるものを「×」で示す。
【0119】
【0120】
表1に示すように、実施例1の光学素子10では、光学素子10を透過する光に歪みが生じなかった。また、実施例1の光学素子10において、耐候性試験の後でも、反射防止膜13の剥離およびハードコート層12の損傷を確認できなかった。
【0121】
実施例1の光学素子10と同様に、実施例2~3の光学素子10を作製し、実施例2~3の光学素子10についても実施例1の光学素子10と同様に光学特性試験および耐候性試験を行った。また、比較例1~3の光学素子を作製し、比較例1~3の光学素子についても実施例1の光学素子10と同様に光学特性試験および耐候性試験を行った。表1に、実施例1~3および比較例1~3の光学素子におけるハードコート層の光軸における厚さ、ハードコート層の外縁の厚さ、光学特性試験および耐候性試験の結果を示す。
【0122】
実施例2の光学素子10では、ハードコート層12の光軸における厚さおよび外縁の厚さはそれぞれ8.6μm、2.7μmであり、光学素子10を透過する光に歪みが生じなかった。また、耐候性試験の後でも、反射防止膜13の剥離およびハードコート層12の損傷を確認できなかった。
【0123】
実施例3の光学素子10では、ハードコート層12の光軸における厚さおよび外縁の厚さはそれぞれ15.8μm、5.2μmであり、光学素子10を透過する光に歪みが生じなかった。また、耐候性試験の後でも、反射防止膜13の剥離およびハードコート層12の損傷を確認できなかった。
【0124】
比較例1の光学素子では、ハードコート層の光軸における厚さおよび外縁の厚さはそれぞれ1.4μm、0.3μmであり、比較例1の光学素子を透過する光に歪みが生じなかった。一方で、耐候性試験の後、反射防止膜の剥離およびハードコート層の損傷のいずれかが生じた。
【0125】
比較例2の光学素子では、ハードコート層の光軸における厚さおよび外縁の厚さはそれぞれ23.5μm、8.3μmであり、比較例2の光学素子を透過する光に歪みが生じた。一方で、耐候性試験の後でも、反射防止膜の剥離およびハードコート層の損傷を確認できなかった。
【0126】
比較例3の光学素子では、ハードコート層の光軸における厚さおよび外縁の厚さはそれぞれ33.9μm、10.2μmであり、比較例3の光学素子を透過する光に歪みが生じた。さらに、耐候性試験の後、反射防止膜の剥離およびハードコート層の損傷のいずれかが生じた。
【0127】
実施例1~3の光学素子10では、光学的な歪みはなく、反射防止膜13の剥離およびハードコート層12の損傷は生じなかった。一方で、比較例1の光学素子では、光学的な歪みはなかったが、反射防止膜の剥離およびハードコート層の損傷のいずれかが生じた。比較例2の光学素子では、反射防止膜の剥離およびハードコート層の損傷は生じなかったが、光学的な歪みが生じた。比較例3の光学素子では、光学的な歪みが生じるとともに、反射防止膜の剥離およびハードコート層の損傷のいずれかが生じた。
【0128】
なお、本技術は、以下のような構成を取り得る。
(1)光軸を有する光学素子であって、
プラスチックレンズと、
前記プラスチックレンズの少なくとも一方の面側に配置された反射防止膜と、
前記プラスチックレンズと前記反射防止膜との間に位置するハードコート層と
を備え、
前記ハードコート層の前記光軸における厚さは、2μm以上20μm以下である、光学素子。
【0129】
(2)前記ハードコート層の最小厚さは、2μm以上であり
前記ハードコート層の最大厚さは、20μm以下である、(1)に記載の光学素子。
【0130】
(3)前記ハードコート層の弾性率は、5GPa以上12GPa以下である、(1)または(2)に記載の光学素子。
【0131】
(4)前記プラスチックレンズの熱膨張係数は、60ppm/K以上150ppm/K以下である、(1)から(3)のいずれかに記載の光学素子。
【0132】
(5)前記反射防止膜の熱膨張係数は、1ppm/K以上10ppm/K以下である、(1)から(4)のいずれかに記載の光学素子。
【0133】
(6)前記プラスチックレンズの熱膨張係数は、60ppm/K以上100ppm/K以下であり、
前記反射防止膜の熱膨張係数は、5ppm/K以上10ppm/K以下である、(1)から(5)のいずれかに記載の光学素子。
【0134】
(7)前記ハードコート層の前記光軸における厚さと外縁の厚さとの差は、15μm以下である、(1)から(6)のいずれかに記載の光学素子。
【0135】
(8)複数のレンズと、
前記複数のレンズを収容する収容部材と
を備える、レンズユニットであって、
前記複数のレンズは、前記収容部材の開口から順番に配置され、
前記複数のレンズのうち前記収容部材の開口側に位置する最外レンズは、(1)から(7)のいずれかに記載の光学素子である、レンズユニット。
【0136】
(9)前記最外レンズの外縁を遮光する遮光部材をさらに備える、(8)に記載のレンズユニット。
【0137】
(10)前記遮光部材は、前記収容部材と単一の部材である、(9)に記載のレンズユニット。
【0138】
(11)(8)から(10)のいずれかに記載のレンズユニットと、
撮像素子と
を備える、カメラモジュール。