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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146509
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241004BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059459
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(72)【発明者】
【氏名】木暮 菜々美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 正猛
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA04
4J040DF001
4J040DF041
4J040DF051
4J040EC002
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】本発明は、防汚層を最表面に有するフィルムの表面保護フィルムであって、十分な密着性を有し、剥離時の防汚層表面への汚染を防止した表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】基材層及び粘着剤層を有し、前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤層であり、前記粘着剤層の表面自由エネルギーの双極子成分が、1.0mJ/m以下であり、JIS Z 0237に準拠して測定したポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(日東電工株式会社製、NITOFLON(登録商標)No9230S)の背面への粘着力が、0.05N/25mmより大きく1.00N/25mm以下の範囲である表面保護フィルムとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚層を最表面に有するフィルムの表面保護フィルムにおいて、前記表面保護フィルムが、基材層及び粘着剤層を有し、前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤層であり、前記粘着剤層の表面自由エネルギーの双極子成分が、1.0mJ/m以下であり、JIS Z 0237に準拠して測定しポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(日東電工株式会社製、NITOFLON(登録商標)No9230S)の背面への粘着力が、0.05N/25mmより大きく1.00N/25mm以下の範囲である表面保護フィルム。
【請求項2】
JIS Z 0237に準拠して測定したポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(日東電工株式会社製、NITOFLON(登録商標)No9230S)の背面への粘着力が、0.10~0.50N/25mmの範囲である請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記防汚層が、フッ素系樹脂を含む層である請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有化合物等で形成された防汚層を最表面に有するフィルム用の表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置の最表面に配置される反射防止フィルム、タッチパネルの位置検出用フィルム、窓ガラスやショーウィンドウに貼り合わせられるウインドウフィルム等は、外部から接触可能な状態で使用されるため、指紋、手垢、埃等による汚染の影響を受けやすい。そのため、外部環境からの汚染防止や、付着した汚染物質の除去を容易とする目的で、防汚層が設けられている。
【0003】
これらの光学フィルムは、加工や輸送等の使用前の状態での傷付きや汚染等を防止するために表面保護フィルムが仮着される。表面保護フィルムは、フィルム基材の主面に粘着剤層を備え、この粘着剤層を介して、保護対象の表面に貼り合わせられる。表面保護フィルムは工程材であるため、低粘着性で被着体から容易に剥離可能であり、被着体への糊残りが生じないことが求められる。
【0004】
防汚層は、水分や油分を撥きやすいため、防汚層の表面に表面保護フィルムを貼り合わせると、防汚層と粘着剤層との密着性が低く、輸送や加工等の光学フィルムの使用前の状態において、光学フィルムの表面から表面保護フィルムが剥離したり、貼り合わせ界面に気泡が混入したりする等の不具合が生じやすい。一方、表面保護フィルムの密着性を高めるために、粘着剤層の接着力を高めると、光学フィルムから表面保護フィルムを剥離した際に、防汚層の表面への糊残り等に起因する汚染が生じやすく、剥離時の作業性が悪く、光学フィルムへのダメージも与えやすい。
【0005】
十分な密着性を有し、防汚層表面への汚染を防止した表面保護フィルムとして、第一フィルム基材の第一主面上に最表面層として防汚層が設けられた光学フィルムと、前記光学フィルムの前記防汚層に仮着された表面保護フィルムとを含み、前記表面保護フィルムは第二フィルム基材上に粘着剤層を備え、前記粘着剤層の厚みが16~50μmであり、前記防汚層の水接触角が100~130°であり、前記防汚層と前記粘着剤層とが接しており、前記光学フィルムの前記防汚層と、前記表面保護フィルムの前記粘着剤層との接着力が、0.01N/50mm以上、0.07N/50mm未満であり、前記粘着剤層の表面硬度が50~200kPaである、保護フィルム付き光学フィルムの表面保護フィルムが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
具体的には、2-エチルヘキシルアクリレート、及びヒドロキシエチルアクリレートからなるアクリル系共重合体溶液に、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物の75%酢酸エチル溶液(東ソー製「コロネートL」)を添加したアクリル系粘着剤溶液A、架橋剤をヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー製「コロネートHX」)に変更したこと以外は、粘着剤組成物Aの調製と同様に調製したアクリル系粘着剤溶液B、及び2-エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、及びアクリル酸からなるアクリル系共重合体溶液に、4官能エポキシ系化合物(三菱ガス化学製「テトラッドC」)を添加したアクリル系粘着剤溶液Cから得られる粘着剤層が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-052221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、最近は前記防汚層の性能が向上しており、従来のアクリル系粘着剤層では粘着力が不足することがあった。粘着力を上げるために、粘着付与剤を添加することも考えられるが、表面保護フィルムのヘイズ値が上昇したり、着色したりするという問題があった。また、シリコーン樹脂を主成分とした粘着剤層であれば、フッ素含有化合物で構成される防汚層に対して、一定の粘着力を有するが、アクリル系粘着剤に比して非常に高価であり、特に工程フィルムとして用いられる表面保護フィルムに使用するのは、現実的ではない。
【0009】
本発明は、防汚層を最表面に有するフィルムの表面保護フィルムであって、十分な密着性を有し、剥離時の防汚層表面への汚染を防止した表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、表面保護フィルムの粘着層の表面自由エネルギーの双極子成分、及びポリテトラフルオロエチレンからなるテープ背面に対する粘着力が一定の範囲である粘着層を用いることで、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、防汚層を最表面に有するフィルムの表面保護フィルムにおいて、前記表面保護フィルムが、基材層及び粘着剤層を有し、前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤層であり、前記粘着剤層の表面自由エネルギーの双極子成分が、1.0mJ/m以下であり、JIS Z 0237に準拠して測定しポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(日東電工株式会社製、NITOFLON(登録商標)No9230S)の背面への粘着力が、0.05N/25mmより大きく1.00N/25mm以下の範囲である表面保護フィルムに関する。
JIS Z 0237に準拠して測定したポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(日東電工株式会社製、NITOFLON(登録商標)No9230S)の背面への粘着力が、0.10~0.50N/25mmの範囲であるのが好ましい。
前記防汚層が、フッ素系樹脂を含む層であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
前記表面保護フィルムを用いれば、前記フッ素系防汚剤を含むような前記防汚層を有するフィルムの表面に、十分に密着し、剥離時に防汚層表面への汚染を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の表面保護フィルムは、防汚層を最表面に有するフィルムの表面保護フィルムであり、基材層及び粘着剤層を有し、前記粘着剤層の表面自由エネルギーの双極子成分が、1.0mJ/m以下であり、JIS Z 0237に準拠して測定しポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(日東電工株式会社製、NITOFLON(登録商標)No9230S)の背面への粘着力が、0.05N/25mmより大きく1.00N/25mm以下の範囲である表面保護フィルムである。
【0014】
前記防汚層は、防汚機能を有する層であり、前記防汚機能には、前記フィルムの使用時のフィルム露出面に対する指紋、手垢、埃等の外部環境からの汚染物質の付着の抑制機能(汚染物質付着防止性)、又は付着した汚染物質を除去しやすくする機能(汚染物質除去性)等が含まれる。前記汚染物質付着防止性及び汚染物質除去性を高めるために、防汚層の水接触角は90°以上が好ましく、102°以上がより好ましく、105°以上がさらに好ましい。水接触角が大きいほど撥水性が高く、前記汚染物質付着防止性及び汚染物質除去性が向上する傾向がある。
【0015】
前記防汚層は、フッ素系樹脂を含む層であるのが好ましい。フッ素系樹脂として、具体的には、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレンエーテル基を含む樹脂、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレンエーテル基が、ジメチルシリコーン等の有機シロキサン基を結合したもの等が挙げられる。より、具体的には、フッ素化アクリレート、部分フッ素化樹脂、フッ素化共重合体が挙げられる。フッ素化アクリレートとしては、特に限定するものではないが、パーフルオロアルキル基含有メタアクリレートの(単独)重合体、あるいはパーフルオロアルキル基含有メタアクリレートと、アルキルメタアクリレート、塩化ビニル、スチレン、N-メチロールメタアクリルアミド、アミニミド基含有単量体及びアジリジニルメタアクリレートに挙げられる1種以上との共重合体等が挙げられる。部分フッ素化樹脂としては、ポリクロロトリフルオロエチレン(三フッ化)、ポリフッ化ビニリデン(二フッ化)、ポリフッ化ビニルなどが挙げられる。フッ素化共重合体としては、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオルアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。
【0016】
また、前記フッ素系樹脂として、パーフルオロポリエーテル骨格を含有するフッ素系ポリマーが挙げられる。パーフルオロポリエーテル骨格は、ポリマーの主鎖又は側鎖に設けることができるが、防汚性を高める観点から、剛直に並列可能な主鎖構造に設けるのが好ましい。パーフルオロポリエーテルの構造単位としては、炭素数1~4の分枝を有していてもよいパーフルオロアルキレンオキシドが好ましく、具体的には、パーフルオロメチレンオキシド、(-CFO-)、パーフルオロエチレンオキシド(-CFCFO-)、パーフルオロプロピレンオキシド(-CFCFCFO-)、パーフルオロイソプロピレンオキシド(-CF(CF)CFO-)等が挙げられる。
前記フッ素系樹脂は、1種単独で、2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
前記防汚層を最表面に有するフィルムとは、具体的には、液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示装置最表面に配置される反射防止フィルム、タッチパネルの位置検出用フィルム、窓ガラスやショーウィンドウに貼り合わせられるウインドウフィルムが挙げられる。
前記フィルムの構成は、最表面に防汚層を有するものであれば、前記フィルムの機能に応じて適宜設定することができる。前記フィルムが、前記反射防止フィルムであれば、具体的に、基材層上に、ハードコート層、プライマー層、反射防止層、防汚層の順に設けた反射防止フィルム等が挙げられる。
【0018】
前記表面保護フィルムは、基材層と粘着剤層を有する。前記表面保護フィルムは、前記フィルムの表面を保護する工程フィルムとして好適に用いられることから、前記フィルムの使用時には剥離除去される。そのため、前記表面保護フィルムの基材層は、表面を保護するための機械強度を有していれば、その材料や厚みは特に限定されない。
【0019】
基材層を構成する樹脂材料として、可視光透過率が80%以上、好ましくは85%以上の樹脂材料が好ましく、さらに透明性、機械強度、および熱安定性に樹脂材料が好ましい。樹脂材料の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で、2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤から構成されている。
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル重合体を含む粘着剤であり、主モノマーに対してコモノマーを添加して凝集力を調整したり、官能基含有モノマーを添加して架橋点を設けて粘着剤の硬さを調整し目的の粘着力を発現させたりすることができる。アクリル系粘着剤に用いられる主モノマーとしては、特に限定されないが、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の各種(メタ)アクリル酸アルキル等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。コモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレンが挙げられる。官能基含有モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0021】
また、前記アクリル系粘着剤として、炭素数2以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマーの重合体である(メタ)アクリル樹脂、エチレン性不飽和結合を有する化合物、重合開始剤、及び架橋剤を含む組成物が挙げられる。前記(メタ)アクリル樹脂が、水酸基を有するモノマー、又はカルボキシ基を有するモノマーの少なくとも一方を含むモノマー混合物の共重合体であるのが好ましい。前記エチレン性不飽和結合を有する化合物が、分子内にエチレン性不飽和結合を4個以上有している化合物であるのが好ましい。
【0022】
前記水酸基を有するモノマーとして、具体的に、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
また、前記カルボキシ基を有するモノマーとして、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
また、前記(メタ)アクリル樹脂の前記原料モノマーにおけるモノマー成分は、任意成分として、前記以外の他のモノマーを含んでいても良いし、含んでいなくても良い。前記他のモノマーとして、具体的には、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の炭素数が2より大きいアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルや(メタ)アクリル酸イソボルニル等の非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル等の芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマーなどが挙げられる。
【0025】
エチレン性不飽和結合を有する化合物として、具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合を分子内に2個有する化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合を分子内に3個有する化合物;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合を分子内に4個有する化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合を分子内に5個以上有する化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
架橋剤として、具体的には、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、メラミン架橋剤、アジリジン架橋剤、金属架橋剤等が挙げられる。中でも、基材への密着性の観点から、イソシアネート架橋剤又はエポキシ架橋剤が好ましく、さらにエポキシ架橋剤が好ましい。
【0027】
前記イソシアネート架橋剤として、具体的には、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。また、これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
前記エポキシ架橋剤として、具体的には、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、および1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0029】
前記粘着剤層の表面自由エネルギーの双極子成分は、前記防汚層との密着性を高めるため、1.0mJ/m以下である。前記双極子成分の下限値は、特に限定されないが、0.1mJ/m以上が、好ましい。
【0030】
なお、上記表面自由エネルギーの分散項成分γ及び極性項成分である双極子成分γは、Kaelble-Uyの理論式を用いて算出される。Kaelble-Uyの理論式は、下記式(1)で示されるように、トータル表面自由エネルギーγが、分散項成分γと双極子成分γとの和になるとの仮定に基づく理論式である。
【0031】
【数1】
【0032】
また、Kaelble-Uyの理論式では、液体の表面自由エネルギーをγ(mJ/m)とし、固体の表面自由エネルギーをγ(mJ/m)とし、接触角をθ(°)とすると、下記式(2)が成立する。
【0033】
【数2】
【0034】
したがって、液体の表面自由エネルギーγが既知である液体を2種類用いて、前記粘着剤層表面に対するそれぞれの接触角θを測定し、γ 及びγ の連立方程式を解くことにより、上記樹脂膜の表面自由エネルギーの分散項成分γ及び双極子成分γを求めることができる。
【0035】
なお、本明細書においては、上記表面自由エネルギーγが既知である2種類の上記液体として、純水及びジヨードメタンが用いられている。
【0036】
上記接触角θは、接触角計(例えば、協和界面科学社製「DMo-701」)を用いて、以下のようにして測定される。
【0037】
上記粘着剤層の表面に、純水又はジヨードメタンを1μL滴下する。滴下してから30秒後の純水と、前記粘着剤層表面とのなす角度を、純水に対する接触角θとする。また、同様に、滴下してから30秒後のジヨードメタンと、前記粘着剤層とのなす角度を、ジヨードメタンに対する接触角θとする。
【0038】
前記粘着剤層のJIS Z 0237に準拠して測定したポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(日東電工株式会社製、NITOFLON(登録商標)No9230S)の背面への粘着力が、0.05N/25mmより大きく1.00N/25mmの範囲以下であり、好ましくは、0.10~0.50N/25mmの範囲である。
【0039】
前記粘着力が、0.05N/25mm以下の場合には、使用中にはがれやめくれを起こし、1.00N/25mmを超える場合には、剥離時に前記フィルムの変形や、破損等が起こる。
【0040】
前記粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、5~20μmの範囲が好ましく、7~18μmの範囲がより好ましく、9~15μmの範囲がさらに好ましい。
【0041】
前記表面保護フィルムの製造方法は、特に限定されない。具体的には、粘着剤層を作製するための押出成形機に粘着剤層を構成する成分(以下、「粘着剤層成分」ともいう)を供給し、基材層を作製するための押出成形機に基材層を構成する成分(以下、「基材層成分」ともいう)を供給し、2台の押出機から各々の材料を一つのダイスから共押出しする二層共押出法により一体に成形する方法、公知のインフレーション法、Tダイ法、カレンダ法などにより予め成形した基材層をコロナ処理などの表面処理した後に前記粘着剤層成分を含む組成物を塗布・乾燥する方法や、剥離シートに前記粘着剤層成分を含む組成物を塗布・乾燥した後に予め成形された基材層と圧着する方法、又は予め成形された基材層に、粘着層を溶融押出しラミネートする方法等が挙げられる。
【0042】
本発明の表面保護フィルムの膜厚は、特に制限されないが、20~220μmの範囲が好ましく、30~150μmの範囲がより好ましく、40~100μmの範囲がさらに好ましい。
【0043】
前記表面保護フィルムは、粘着剤層が設けられた面とは反対側の面に離型層を備えていてもよい。前記離型層としては、離型性を有する材料であればよく、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、離型性を向上させるために、前記粘着剤層に剥離助剤を添加してもよい。剥離助剤としては、例えば、シリコーン系剥離助剤、パラフィン系剥離助剤、ポリエチレンワックス、アクリル系重合体等が挙げられる。
【実施例0044】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定
されるものではない。
【0045】
<実施例1~2、比較例1~5)
市販のアクリル系粘着剤A~F、市販のシリコーン系粘着剤G、硬化剤(実施例1及び2:エポキシ系硬化剤、比較例1~4:イソシアネート系硬化剤、実施例5:付加反応系硬化剤)を表1に示す割合で混合して粘着剤層用組成物を調整した。表1に示す厚さの基材層用PETフィルムに乾燥後の粘着層厚さが表1に示す厚さとなるように前記粘着剤層用組成物を塗布し、エアバスを用いて60℃で3分間乾燥させることにより、各表面保護フィルムを得た。得られた表面保護フィルムについて、以下のように評価した。その結果を、表1に示す。
【0046】
<粘着剤層の表面自由エネルギー解析>
前述したように、Kaelble-Uy理論に基づいて粘着剤層の表面自由エネルギーの分散成分と双極子成分を算出した。
【0047】
<表面保護フィルムの粘着力>
JIS Z 0237に準拠して測定した。前記表面保護フィルム1を幅25mm×長さ200mmになるように短冊状に裁断し、2kgローラーを用いて、アクリル板(幅60mm×長さ200mm)、及びポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(日東電工株式会社製、NITOFLON(登録商標)No9230S)の背面に貼合し、23℃で一昼夜静置した後、引張試験機を用いて引張速度300m/分及び剥離角度180度にて剥離試験を行った。
【0048】
【表1】
【0049】
比較例1、3、及び4は、粘着剤層の表面自由エネルギーの双極子成分が1.0mJ/mよりも大きいため、ポリテトラフルオロエチレンからなるテープの背面に対する密着性が低下する結果となった。比較例2に示すように、粘着層の表面自由エネルギーが双極子成分が1.0mJ/m以下であっても、対テープに対する粘着力が十分でないものは、本発明の表面保護フィルムとしては適切ではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の表面保護フィルムは、種々の電子機器、光学機器の防汚層の表面保護のための工程フィルムとして使用できるため、種々の電子機器、光学機器の製造に有用である。