IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 未来工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図1
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図2
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図3
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図4
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図5
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図6
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図7
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図8
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図9
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図10
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図11
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図12
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図13
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図14
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図15
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図16
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図17
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図18
  • 特開-固定具及び固定具の設置方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146522
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】固定具及び固定具の設置方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 47/00 20060101AFI20241004BHJP
   F16B 9/02 20060101ALI20241004BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F16B47/00 V
F16B9/02 C
A47B97/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059485
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 建世
(72)【発明者】
【氏名】安田 真之
(72)【発明者】
【氏名】堀 信夫
【テーマコード(参考)】
3J023
3J038
【Fターム(参考)】
3J023AA01
3J023BA01
3J023CA02
3J023DA06
3J023EA01
3J023FA01
3J023GA03
3J038DA01
(57)【要約】
【課題】対面する被貼着面の間に固定具を容易に設置できる固定具及び固定具の設置方法を提供すること。
【解決手段】固定具10は、第1固定体11Aの第2貼着面13bが、当該第2貼着面13bの対面する第1被貼着面91aに接触することを抑制する雄ねじ部22を備えている。雄ねじ部22は、第1被貼着面91aに当接する第1端部22aを備える。固定具10は、第1端部22aを第1固定体11Aの第2貼着面13bよりも前方に配置可能であるとともに、2つの固定体11を離間方向へ相対移動させることにより、第1固定体11Aの第2貼着面13bは、第1端部22aよりも前方へ相対移動可能である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面する被貼着面の間に配置されるとともに前記被貼着面の各々に貼着される貼着面を備える固定具であって、
前記貼着面を備えた固定体を2つ備えるとともに、前記2つの固定体は、それぞれの前記貼着面を反対側に向けた状態で、当該2つの固定体の接離方向へ相対移動可能に連結され、かつ前記2つの固定体の離間方向への相対移動に伴ってそれぞれの前記貼着面を離間方向へ相対移動可能であり、
前記固定具は、前記2つの固定体のうちの一方の固定体の前記貼着面が、当該貼着面の対面する前記被貼着面に接触することを抑制する接触抑制部を備えており、
前記接触抑制部は、前記対面する被貼着面に当接する当接部を備え、
前記固定具は、前記当接部を前記一方の前記固定体の前記貼着面よりも前方に配置可能であるとともに、
前記2つの固定体を離間方向へ相対移動させることにより、前記一方の前記固定体の前記貼着面は、前記当接部よりも前方へ相対移動可能であることを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記接触抑制部は、前記2つの固定体の前記離間方向への相対移動に連動して前記一方の前記固定体の前進方向と反対方向へ相対移動する請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
対面する被貼着面の間に配置されるとともに前記被貼着面の各々に貼着される貼着面を備える固定具であって、
前記貼着面を備えた固定体を2つ備えるとともに、
当該2つの固定体は、それぞれの前記貼着面を反対側に向けた状態で、一方の固定体に設けられた雌ねじ部と他方の固定体に設けられた雄ねじ部とからなる螺合機構によって接離方向へ相対移動可能に連結されており、
前記2つの固定体を離間方向へ相対移動させることで各貼着面を対面する前記被貼着面に押し付けることができ、
前記固定具は、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との螺回動によって、前記雄ねじ部の先端を前記一方の固定体の前記貼着面を越えた突出位置、又は前記一方の固定体の前記貼着面よりも下がった位置に配置可能であり、
前記雄ねじ部の先端は、前記一方の固定体の前記貼着面が、当該貼着面の対面する前記被貼着面に接触することを抑制する接触抑制部である固定具。
【請求項4】
前記一方の固定体の前記貼着面は環状であり、前記突出位置では、前記雄ねじ部は前記貼着面の中央部に形成された孔から突出している請求項3に記載の固定具。
【請求項5】
前記2つの固定体のうちのいずれか一方の固定体の前記貼着面は、当該貼着面の貼着力を減少させる揮発性の剥離剤によって覆われている請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の固定具。
【請求項6】
前記接触抑制部は、前記当接部を前記一方の前記固定体の前記貼着面のみから前方へ突出可能である請求項1又は請求項2に記載の固定具。
【請求項7】
前記2つの固定体は、雄ねじ部と雌ねじ部の螺合機構を備えた連結部により連結され、前記接触抑制部は、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との螺回動により挟持可能である請求項1又は請求項2に記載の固定具。
【請求項8】
対面する被貼着面の間に配置されるとともに前記被貼着面の各々に貼着される貼着面を備える固定具を、前記対面する被貼着面の間に配置するとともに、前記対面する被貼着面のそれぞれに前記貼着面を貼着する固定具の設置方法であって、
前記固定具は請求項1又は請求項2に記載の固定具であり、
前記当接部を、前記対面する被貼着面のうちの一方の前記被貼着面に摺接させながら前記固定具を当該固定具の設置位置に移動し、
当該設置位置で前記2つの固定体を離間方向へ相対移動させて、前記一方の前記固定体の前記貼着面を、前記当接部よりも前方へ相対移動可させ、前記2つの固定体の前記貼着面を前記対面する被貼着面のそれぞれに貼着することを特徴とする固定具の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対面する被貼着面の間に配置されて、被貼着面のそれぞれに貼着される固定具及び固定具の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、床面と固定対象物の下面との間に配置されて、床面と固定対象物の下面のそれぞれに貼着される粘着固定具が開示されている。特許文献1に開示された粘着固定具は、固定対象物の下面と床面のそれぞれに対し粘着マットによって貼着される。粘着固定具は、2つの固定部と、各固定部から突出するボルト状部材と、2つのボルト状部材が螺合される連結部材と、を有する。粘着マットは、厚さ方向の両面に粘着面を有する板状である。
【0003】
粘着固定具は、連結部材を操作することで、2つの固定部の距離を調節できる。各固定部には粘着マットが貼着されているため、連結部材を操作することで2つの粘着マットの距離を調節できる。これにより、床面と固定対象物の下面との間の高さに合わせて各粘着マットを各面に貼着できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-194384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の粘着固定具において、床面と、固定対象物の下面との間に粘着固定具を挿入した後、その粘着固定具を設置位置に向けて移動する際、粘着マットが、固定具の設置位置と異なる位置で貼着しないように気を付けなければならない。このため、特許文献1に開示の粘着固定具は、床面と、固定対象物の下面との間に固定具を挿入した後は、慎重な作業が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[態様1]対面する被貼着面の間に配置されるとともに前記被貼着面の各々に貼着される貼着面を備える固定具であって、前記貼着面を備えた固定体を2つ備えるとともに、前記2つの固定体は、それぞれの前記貼着面を反対側に向けた状態で、当該2つの固定体の接離方向へ相対移動可能に連結され、かつ前記2つの固定体の離間方向への相対移動に伴ってそれぞれの前記貼着面を離間方向へ相対移動可能であり、前記固定具は、前記2つの固定体のうちの一方の固定体の前記貼着面が、当該貼着面の対面する前記被貼着面に接触することを抑制する接触抑制部を備えており、前記接触抑制部は、前記対面する被貼着面に当接する当接部を備え、前記固定具は、前記当接部を前記一方の前記固定体の前記貼着面よりも前方に配置可能であるとともに、前記2つの固定体を離間方向へ相対移動させることにより、前記一方の前記固定体の前記貼着面は、前記当接部よりも前方へ相対移動可能であることを特徴とする固定具。
【0007】
[態様2]前記接触抑制部は、前記2つの固定体の前記離間方向への相対移動に連動して前記一方の前記固定体の前進方向と反対方向へ相対移動する[態様1]に記載の固定具。
【0008】
[態様3]対面する被貼着面の間に配置されるとともに前記被貼着面の各々に貼着される貼着面を備える固定具であって、前記貼着面を備えた固定体を2つ備えるとともに、当該2つの固定体は、それぞれの前記貼着面を反対側に向けた状態で、一方の固定体に設けられた雌ねじ部と他方の固定体に設けられた雄ねじ部とからなる螺合機構によって前記接離方向へ相対移動可能に連結されており、前記2つの固定体を前記離間方向へ相対移動させることで各貼着面を対面する前記被貼着面に押し付けることができ、前記固定具は、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との螺回動によって、前記雄ねじ部の先端を前記一方の固定体の前記貼着面を越えた突出位置、又は前記一方の固定体の前記貼着面よりも下がった位置に配置可能であり、前記雄ねじ部の先端は、前記一方の固定体の前記貼着面が、当該貼着面の対面する前記被貼着面に接触することを抑制する接触抑制部である固定具。
【0009】
[態様4]前記一方の固定体の前記貼着面は環状であり、前記突出位置では、前記雄ねじ部は前記貼着面の中央部に形成された孔から突出している[態様3]に記載の固定具。
[態様5]前記2つの固定体のうちのいずれか一方の固定体の前記貼着面は、当該貼着面の貼着力を減少させる揮発性の剥離剤によって覆われている[態様1]~[態様4]のうちいずれか一つに記載の固定具。
【0010】
[態様6]前記接触抑制部は、前記当接部を前記一方の前記固定体の前記貼着面のみから前方へ突出可能である[態様1]~[態様5]のうちいずれか一つに記載の固定具。
[態様7]前記2つの固定体は、雄ねじ部と雌ねじ部の螺合機構を備えた連結部により連結され、前記接触抑制部は、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との螺回動により挟持可能である[態様1]又は[態様2]に記載の固定具。
【0011】
[態様8]対面する被貼着面の間に配置されるとともに前記被貼着面の各々に貼着される貼着面を備える固定具を、前記対面する被貼着面の間に配置するとともに、前記対面する被貼着面のそれぞれに前記貼着面を貼着する固定具の設置方法であって、前記固定具は[態様1]又は[態様2]に記載の固定具であり、前記当接部を、前記対面する被貼着面のうちの一方の前記被貼着面に摺接させながら前記固定具を当該固定具の設置位置に移動し、当該設置位置で前記2つの固定体を離間方向へ相対移動させて、前記一方の前記固定体の前記貼着面を、前記当接部よりも前方へ相対移動可させ、前記2つの固定体の前記貼着面を前記対面する被貼着面のそれぞれに貼着することを特徴とする固定具の設置方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、対面する被貼着面の間に固定具を容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、機器群を固定具で固定した状態を示す斜視図である。
図2図2は、固定具を示す分解斜視図である。
図3図3は、固定具を示す斜視図である。
図4図4は、固定具を示す側面図である。
図5図5は、固定具を雄ねじ部の第1端部から示す斜視図である。
図6図6は、第1被貼着面と第2被貼着面の間に固定具を配置した図である。
図7図7は、雄ねじ部の第1端部を第1被貼着面に当接させた図である。
図8図8は、第2固定体を第2被貼着面に貼着し、第1固定体を前進させた状態の図である。
図9図9は、第1固定体を第1被貼着面に貼着した状態の図である。
図10図10は、第2の実施形態の固定具を示す分解斜視図である。
図11図11は、第2の実施形態の固定具を示す斜視図である。
図12図12は、第2の実施形態の固定具を示す断面図である。
図13図13は、当接部を下面に当接させた図である。
図14図14は、第2貼着面を床面に貼着した状態の図である。
図15図15は、第1固定体を下面に接近させた状態の図である。
図16図16は、第1固定体を下面に貼着した状態の図である。
図17図17は、別例の固定具を示す斜視図である。
図18図18は、別例の固定具の使用状態を示す図である。
図19図19は、その他の別例の固定具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、固定具及び固定具の設置方法を具体化した第1の実施形態を図1図9にしたがって説明する。
【0015】
<固定具の設置位置>
図1に示すように、床面Fには7つの機器90が設置されている。7つの機器90は、上下に4つの機器90を積んだ第1機器群91と、上下に3つの機器90を積んだ第2機器群92とで構成されている。第1機器群91と第2機器群92は、互いに対向しつつ隙間100を空けて離れるように床面Fに並べて設置されている。第1機器群91において、第2機器群92への対面を第1被貼着面91aとする。第2機器群92において、第1機器群91への対面を第2被貼着面92aとする。第2被貼着面92aの全面は、第1被貼着面91aに対面している。第1被貼着面91a及び第2被貼着面92aは、固定具10の貼着される面である。第1被貼着面91aと第2被貼着面92aは、距離Kだけ離れている。第1機器群91の最下の機器90、及び第2機器群92の最下の機器90の各々は、第2固定部材94によって床面Fに固定されている。第1機器群91と第2機器群92とは、固定具10によって相互に固定されている。第1機器群91及び第2機器群92の傾倒は、固定具10によって抑制されている。なお、第1機器群91と第2機器群92の対面している面とは異なる面には、上下に隣り合う機器90同士が、上下方向へ離間しないように第1固定部材93が設けられている。
【0016】
<固定具>
図2図3、及び図4に示すように、固定具10は、2つの固定体11と、2つの固定体11を相対移動可能に連結する螺合機構Rと、を備える。
【0017】
<固定体>
2つの固定体11の各々は円板状である。2つの固定体11は、共通の構成を備えるため、共通の構成においては、片方の固定体11だけ説明する。また、2つの固定体11において、共通の構成については、同じ部材番号を付す。
【0018】
固定体11は、円板状のマット貼着部12と、円板状の粘着マット13と、を備える。マット貼着部12は、金属板製である。マット貼着部12の中央部には、貫通孔14が形成されている。マット貼着部12は、板厚方向に互いに反対面となるマット貼着面12aと、マット非貼着面12bとを備える。マット貼着面12aには、粘着マット13が貼着されている。
【0019】
粘着マット13は、粘着性を備えるゲル状の超軟質ウレタンにより形成されているとともに、板厚方向に圧縮変形可能である。
図4及び図5に示すように、粘着マット13は環状である。粘着マット13の中央部には、円形状の孔131が形成されている。孔131は、粘着マット13を板厚方向に貫通する。孔131の直径は、貫通孔14の孔径より大きい。また、粘着マット13の外径は、マット貼着部12の外径より小さい。粘着マット13の外周面は、マット貼着部12の外周縁よりも中央部寄りに位置している。このため、マット貼着部12の外周部は、粘着マット13の外周面よりも外方へ延出している。
【0020】
粘着マット13は、板厚方向に互いに反対面となる第1貼着面13aと、第2貼着面13bとを備える。粘着マット13の第1貼着面13aは、マット貼着部12のマット貼着面12aに貼着されている。一方の固定体11における粘着マット13の第2貼着面13bは、第1機器群91の第1被貼着面91aに貼着されるとともに、他方の固定体11における粘着マット13の第2貼着面13bは、第2機器群92の第2被貼着面92aに貼着される。なお、各固定体11のマット貼着部12は、後述する2つの固定体11の接離方向に直交する方向に沿って第2貼着面13b、ひいては粘着マット13の外周面よりも外方へ延出されている。
【0021】
粘着マット13は、当該粘着マット13の孔131が貫通孔14を囲むとともに、孔131の中心と貫通孔14の中心とが一致するようにマット貼着部12に貼着されている。孔131は、貫通孔14と同心円状に配置されている。粘着マット13の内周面13cは、貫通孔14の周縁から離れて貫通孔14を囲んでいる。固定体11には、移動空間Sが画定されている。移動空間Sは、マット貼着面12aにおける貫通孔14の周囲の部分と、粘着マット13の内周面13cとで画定されている。移動空間Sは、後に説明する。
【0022】
2つの固定体11のうち、第1被貼着面91aに貼着される一方の固定体11を第1固定体11Aとするとともに、第2被貼着面92aに貼着される他方の固定体11を第2固定体11Bとする。また、第1固定体11Aの粘着マット13を第1粘着マット13Aとするとともに、第2固定体11Bの粘着マット13を第2粘着マット13Bとする。
【0023】
図7に示すように、第1粘着マット13Aの第2貼着面13bは、固定具10の設置直前に剥離剤19によって覆われてもよい。剥離剤19は、第1粘着マット13Aの第2貼着面13bの全面を覆っているが、第2貼着面13bの一部だけを覆っていてもよい。剥離剤19は、揮発性を有する。剥離剤19は、本実施形態ではエタノール又は水である。なお、揮発性を有し、かつ、揮発が完了するまでは貼着力を減少させるものであれば、剥離剤19は、粘着マット13の材質に応じて適宜変更すればよい。剥離剤19は、第1固定体11Aの第2貼着面13bへの塗布によって第2貼着面13bを覆う。剥離剤19は、第2貼着面13bへの塗布直後は、第2貼着面13bの貼着力を減少させる。一方、剥離剤19は、第2貼着面13bへの塗布時点から経過した時間が長くなるほど揮発が進むため、剥離剤19による貼着力の減少機能が低下する。その結果として、剥離剤19は、第2貼着面13bへの塗布時点から経過した時間が長くなるほど、第2貼着面13bの貼着力を復帰させる。そして、剥離剤19の揮発が完了すると、第2貼着面13bの貼着力は、剥離剤19の塗布前に復帰する。
【0024】
<螺合機構>
図2図3及び図4に示すように、螺合機構Rは、雌ねじ部21と、雄ねじ部22と、を備える。雌ねじ部21は六角ナットによって形成されている。雌ねじ部21は、第1固定体11Aのマット非貼着面12bに溶接によって固定されている。そして、雌ねじ部21は、マット貼着部12の貫通孔14を囲むように第1固定体11Aに一体化されている。雄ねじ部22の両端部のうちの第1端部22a側は、雌ねじ部21に螺合されている。雄ねじ部22は、雌ねじ部21に対し、螺進又は螺退可能である。
【0025】
雄ねじ部22の両端部のうちの第2端部22bは、第2固定体11Bの貫通孔14に一部を挿通させた状態でマット貼着部12に溶接されている。これにより、雄ねじ部22は、第2固定体11Bに一体化されている。雌ねじ部21及び雄ねじ部22は、粘着マット13よりも小径である。上記したように、各固定体11のマット貼着部12は、2つの固定体11の接離方向に直交する方向に沿って粘着マット13の外周面よりも外方へ延出されている。このため、粘着マット13よりも小径の雌ねじ部21及び雄ねじ部22に対しても、マット貼着部12は径方向外側に延出している。
【0026】
第1固定体11Aに一体の雌ねじ部21と、雄ねじ部22に一体の第2固定体11Bとは、雌ねじ部21と雄ねじ部22との螺合によって一体に連結されている。この雌ねじ部21と雄ねじ部22の連結によって、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを備える固定具10が形成されている。
【0027】
<固定具の詳細>
図3図5に示すように、固定具10において、第1固定体11Aのマット非貼着面12bと、第2固定体11Bのマット非貼着面12bとは対面している。固定具10において、第1固定体11Aと第2固定体11Bとは、それぞれの第2貼着面13bを反対側に向けた状態で、雄ねじ部22と雌ねじ部21とからなる螺合機構Rによって連結されている。第1固定体11Aの第2貼着面13bは固定具10の一端面であるとともに、第2固定体11Bの第2貼着面13bは固定具10の他端面である。
【0028】
雌ねじ部21に対する雄ねじ部22の螺進により、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを接近方向へ相対移動させることができる。第1固定体11Aと第2固定体11Bとを接近方向へ相対移動させることにより、2つの第2貼着面13bは、相対的に接近移動するとともに、2つのマット非貼着面12bは、相対的に接近移動する。
【0029】
また、雌ねじ部21に対する雄ねじ部22の螺退により、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを離間方向へ相対移動させることができる。第1固定体11Aと第2固定体11Bとを離間方向へ相対移動させることにより、2つの第2貼着面13bは、離間方向へ相対移動するとともに、2つのマット非貼着面12bは、相対的に離間移動する。第1固定体11Aと第2固定体11Bが離間方向へ相対移動する場合において、第1固定体11A及び第2固定体11Bが移動する方向を前進方向とする。第1固定体11Aと第2固定体11Bが接近方向へ相対移動する場合において、第1固定体11A及び第2固定体11Bが移動する方向は、前進方向と反対方向であるため、後退方向である。そして、第1固定体11Aと第2固定体11Bは、接離方向の移動に伴って雄ねじ部22を軸に回動するとともに、各粘着マット13も固定体11に付随して回動する。
【0030】
上記のように、第1固定体11Aと第2固定体11Bは、それぞれの第2貼着面13bを反対側に向けた状態で、当該2つの固定体11の接離方向へ相対移動可能に連結されている。より詳細には、第1固定体11Aと第2固定体11Bは、それぞれの第2貼着面13bを反対側に向けた状態で、第1固定体11Aに設けられた雌ねじ部21と、第2固定体11Bに設けられた雄ねじ部22とからなる螺合機構Rにより、2つの固定体11の接離方向へ相対移動可能に連結されている。
【0031】
固定具10において、雄ねじ部22の第1端部22aが、雌ねじ部21内に位置した状態から雄ねじ部22を雌ねじ部21に螺進させる。つまり、雌ねじ部21に対する雄ねじ部22の螺進により、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを接近方向へ相対移動させる。雄ねじ部22の螺進に伴い、雄ねじ部22の第1端部22aは、雌ねじ部21から第1固定体11Aの貫通孔14に入り込む。さらに、螺進が進むと、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1粘着マット13Aの孔131に入り込む。つまり、雄ねじ部22の第1端部22aは、移動空間Sに入り込む。さらに、螺進が進むと、雄ねじ部22の第1端部22aは、移動空間Sを通過して、第1固定体11Aの第2貼着面13bから徐々に突出していく。
【0032】
図4に示すように、雌ねじ部21に第2固定体11Bのマット非貼着面12bが接触すると、それ以上の螺進が不可能になる。このとき、2つのマット非貼着面12b間の距離は最短となるとともに、2つの第2貼着面13b間の距離は最短となる。雌ねじ部21に第2固定体11Bのマット非貼着面12bが接触した位置を、固定具10の初期位置とする。固定具10の初期位置では、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1固定体11Aの第2貼着面13bから、第1固定体11Aの前進方向へ突出している。したがって、固定具10において、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1固定体11Aの第2貼着面13bを超えた突出位置、つまり第2貼着面13bよりも前方に配置可能である。
【0033】
固定具10の初期位置では、2つのマット非貼着面12b間の第1距離L1は最短となる。固定具10の初期位置において、2つの固定体11の接離方向に沿った、第1端部22aから第2固定体11Bの第2貼着面13bまでの距離を第2距離L2とする。この第2距離L2は、第1被貼着面91aと第2被貼着面92aの間の距離Kより短い。したがって、初期位置の固定具10は、第1被貼着面91aと第2被貼着面92aの間に挿入可能である。
【0034】
初期位置の固定具10において、雄ねじ部22を雌ねじ部21に螺退させる。つまり、雌ねじ部21に対する雄ねじ部22の螺退により、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを離間方向へ相対移動させる。すると、第1固定体11Aの第2貼着面13bは、雄ねじ部22の第1端部22aよりも前方へ相対移動する。その結果、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1粘着マット13Aの孔131に入り込んでいく。したがって、雄ねじ部22は、2つの固定体11の離間方向への相対移動に連動して、後退方向へ移動する。
【0035】
また、初期位置の固定具10では、第1粘着マット13Aの孔131には、雄ねじ部22が貫通している。そして、初期位置からの2つの固定体11の離間方向への相対移動に伴って、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1粘着マット13Aの孔131に入り込んでいく。したがって、固定具10において、第1固定体11Aは、2つの固定体11の離間方向への相対移動に伴って、第1固定体11Aの前進方向と反対方向へ相対移動した第1端部22aが入り込む移動空間Sを画定する。よって、第1固定体11Aは、移動空間Sを画定可能である。また、雄ねじ部22の第1端部22aは、移動空間Sに入り込むことで、第1固定体11Aの第2貼着面13bよりも後方へ移動する。さらに、螺退が進むと、雄ねじ部22の第1端部22aは、貫通孔14を通過して雌ねじ部21に入り込む。
【0036】
<固定具の設置方法>
次に、第1機器群91の第1被貼着面91aと、第2機器群92の第2被貼着面92aに固定具10を貼着して、固定具10を設置する方法を説明する。
【0037】
先ず、作業者は、図4に示すように、固定具10を初期位置にする。固定具10の初期位置では、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1固定体11Aの第2貼着面13bから突出している。次に、作業者は、第1固定体11Aの第2貼着面13bの全面に剥離剤19を塗布して、当該第2貼着面13bの全面を剥離剤19によって覆う。剥離剤19の塗布は、固定具10を初期位置にする前でもよい。
【0038】
次に、図6に示すように、作業者は、初期位置の固定具10を第1機器群91の第1被貼着面91aと、第2機器群92の第2被貼着面92aとの間に配置する。このとき、図7に示すように、第1固定体11Aの第2貼着面13bを、第1被貼着面91aに対面させるとともに、第2固定体11Bの第2貼着面13bを、第2被貼着面92aに対面させる。
【0039】
次に、作業者は、第1固定体11Aの第2貼着面13bから突出した雄ねじ部22の第1端部22aを第1被貼着面91aに当接させる。雄ねじ部22の第1端部22aは、第1固定体11Aの第2貼着面13bから突出しているため、第1固定体11Aの第2貼着面13bは、第1被貼着面91aから離間する。その結果、雄ねじ部22の第1端部22aによって、第1固定体11Aの第2貼着面13bが第1被貼着面91aに接触することが抑制される。
【0040】
したがって、雄ねじ部22は、固定具10における接触抑制部であるとともに、雄ねじ部22の第1端部22aは当接部である。雄ねじ部22の第1端部22aが第1被貼着面91aに接触したとき、当該第1端部22aが変形すると、第1固定体11Aの第2貼着面13bが第1被貼着面91aに接触してしまう。このため、第1端部22aを含む雄ねじ部22は、固定具10の押し付けによって変形しない剛性を要する。本実施形態では、接触抑制部は、ボルト状の雄ねじ部22であるため、所用の剛性を有している。
【0041】
そして、作業者は、雄ねじ部22の第1端部22aを第1被貼着面91aに摺接させながら固定具10を、当該固定具10の設置位置へ移動させる。
また、固定具10を移動させる際、雄ねじ部22の第1端部22aが第1被貼着面91aに当接していても、その移動途中に固定具10が傾いて、第1固定体11Aの第2貼着面13bが第1被貼着面91aに接触してしまう場合がある。この場合、第1固定体11Aの第2貼着面13bを覆う剥離剤19は、第1被貼着面91aへの第2貼着面13bの貼着を抑制する。
【0042】
設置位置に固定具10が配置された状態において、作業者は、第2固定体11Bの第2貼着面13bを第2被貼着面92aに押し付ける。すると、第2固定体11Bの第2貼着面13bは、第2被貼着面92aに貼着される。
【0043】
第2固定体11Bの第2貼着面13bが第2被貼着面92aに貼着された状態において、作業者は、雄ねじ部22に対し雌ねじ部21を相対的に螺退させる。このとき、第2固定体11Bが第2被貼着面92aに貼着されているため、第2固定体11Bと共回りすることなく、第1固定体11Aのみを螺回動操作できる。これにより、第1固定体11Aと第2固定体11Bとが離間方向へ相対移動する。すると、第1固定体11Aは、第1被貼着面91aに接近していく。このとき、第1固定体11Aは前進するのに対し、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1固定体11Aの第2貼着面13bに対し後退するように移動空間Sに入り込んでいく。そして、雄ねじ部22の第1端部22aは、移動空間Sに入り込むことで、第1固定体11Aの第2貼着面13bよりも後方へ移動する。その結果、図8に示すように、雄ねじ部22の第1端部22aが第2貼着面13bから突出した状態が解除される。
【0044】
その後、第1固定体11Aの回転が進むと、第1固定体11Aの第2貼着面13bが第1被貼着面91aに到達する。さらに作業者が第1固定体11Aを回転させると、第1固定体11Aの剥離剤19が第1被貼着面91aに押し付けられる。つまり、2つの固定体11を離間方向へ相対移動させて、雄ねじ部22の第1端部22aの突出していた第1固定体11Aの第2貼着面13bを、剥離剤19を介して当該第2貼着面13bの対面する第1被貼着面91aに押し付ける。
【0045】
第1固定体11Aの第2貼着面13bが第1被貼着面91aに押し付けられた後も、剥離剤19が揮発していく。この剥離剤19の揮発に伴って、第1固定体11Aの第2貼着面13bの貼着力が徐々に復帰していく。その結果、第1固定体11Aの第2貼着面13bは、第1被貼着面91aに徐々に貼着されていく。そして、剥離剤19の揮発が完了すると、第1固定体11Aの第2貼着面13bは第1被貼着面91aに貼着される。
【0046】
その結果、図9に示すように、固定具10は、第1被貼着面91a及び第2被貼着面92aに貼着されるとともに、固定具10によって第1機器群91と第2機器群92とが相互に固定される。
【0047】
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)固定具10において、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1固定体11Aの第2貼着面13bよりも前方に配置可能である。この雄ねじ部22の第1端部22aを第1機器群91の第1被貼着面91aに当接させることにより、第1被貼着面91aから第1固定体11Aの第2貼着面13bを離間させることができる。これにより、第1被貼着面91aと第2被貼着面92aの間で固定具10を設置位置に向けて移動させる途中に、固定具10の設置位置以外の位置で第1固定体11Aの第2貼着面13bが第1被貼着面91aに貼着してしまうことを抑制できる。よって、第1被貼着面91aと第2被貼着面92aとの間に固定具10を挿入して設置する際、慎重な作業を必要とせずに固定具10を設置できる。
【0048】
(1-2)2つの固定体11を離間方向へ相対移動させることで、第1固定体11Aの第2貼着面13bは、雄ねじ部22の第1端部22aよりも前方へ相対移動可能である。つまり、雄ねじ部22の第1端部22aは、2つの固定体11を離間方向へ相対移動させることで第1固定体11Aの第2貼着面13bよりも後方に配置される。したがって、各第2貼着面13bを各被貼着面91a,92aに貼着するための操作によって、雄ねじ部22の第1端部22aを第2貼着面13bから突出しないようにできる。
【0049】
(1-3)2つの固定体11を接近方向へ相対移動させることで、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1固定体11Aの第2貼着面13bから突出する。つまり、固定具10を設置するために、固定具10を初期位置又はそれに近い位置にすると、雄ねじ部22の第1端部22aを第1固定体11Aの第2貼着面13bから突出させることができる。
【0050】
よって、固定具10の設置の準備をするために初期位置にするのと同時に、雄ねじ部22の第1端部22aを第1固定体11Aの第2貼着面13bから突出させることができる。このため、固定具10の設置のために、固定具10の操作とは別に、雄ねじ部22の第1端部22aを第2貼着面13bから突出させる操作が不要である。この点は、第1機器群91と第2機器群92との間の隙間100が狭いような設置場所での作業に非常に有効である。
【0051】
(1-4)第1固定体11Aと第2固定体11Bを最接近させた固定具10の初期位置では、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1固定体11Aの第2貼着面13bから突出している。このため、第1被貼着面91aと第2被貼着面92aの間に固定具10を挿入しやすい固定具10の初期位置において、雄ねじ部22の第1端部22aを第1固定体11Aの第2貼着面13bから突出させることができる。
【0052】
(1-5)第1固定体11Aと第2固定体11Bを離間方向へ相対移動させると、第2貼着面13bから突出した第1端部22aは、第1粘着マット13Aの内側にある移動空間Sに入り込んでいく。この移動空間Sへの第1端部22aの入り込みによって、第1端部22aを第2貼着面13bより後退させることができる。そして、移動空間Sは、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを離間方向へ相対移動させることによって第1粘着マット13Aの孔131を利用して形成される。したがって、2つの固定体11の相対移動によって形成された移動空間Sを有効に利用できる。
【0053】
(1-6)第1固定体11Aと第2固定体11Bとは、雌ねじ部21と雄ねじ部22とからなる螺合機構Rによって連結されている。そして、雌ねじ部21と雄ねじ部22の螺回動により、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを接離方向へ相対移動させることができる。各第2貼着面13bが各被貼着面91a,92aに接触した後は、第1固定体11Aと第2固定体11Bとの離間方向への相対移動により、各第2貼着面13bを各被貼着面91a,92aに押し付けることができる。このため、固定具10によって第1機器群91と第2機器群92を相互に強固に固定できる。
【0054】
(1-7)第1固定体11Aと第2固定体11Bとは、雌ねじ部21と雄ねじ部22とからなる螺合機構Rによって連結されている。このため、雌ねじ部21に対する雄ねじ部22の螺進量及び螺退量を調節することにより、第1固定体11Aの第2貼着面13bからの第1端部22aの突出量を調節できる。よって、第1被貼着面91aと第2被貼着面92aとの間の隙間100に合わせて、第1端部22aの突出量を調節できるため、第1被貼着面91aと第2被貼着面92aとの間に固定具10を挿入しやすい。
【0055】
(1-8)雌ねじ部21と雄ねじ部22は、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを連結する部品であると同時に、第1固定体11Aの第2貼着面13bに対し第1端部22aを出没させる部品である。例えば、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを連結するための部品を、第1端部22aを第2貼着面13bに対し出没させるための部品と別に設ける場合と比べると、部品点数を少なくして固定具10の製造コストを抑制できる。
【0056】
(1-9)第1粘着マット13Aの中央部には孔131が形成されている。そして、雄ねじ部22は、第1粘着マット13Aの孔131から出没する。よって、雄ねじ部22の第1端部22aは、第1固定体11Aの中央部から出没する。例えば、雄ねじ部22の第1端部22aが、第2貼着面13bの中央以外の部分から出没する場合と比べると、第1被貼着面91aへの第2貼着面13bの貼着抑制をバランス良く行うことができる。
【0057】
(1-10)第1固定体11Aの第2貼着面13bを覆う剥離剤19によって、固定具10の移動途中で第1固定体11Aの第2貼着面13bが第1被貼着面91aに貼着することを抑制できる。また、剥離剤19は、時間の経過とともに第2貼着面13bから揮発する。そして、第1固定体11Aの第2貼着面13bを第1被貼着面91aに接触させた状態を維持しておくことで、剥離剤19の揮発が完了して第2貼着面13bの貼着力が復帰する。これにより、第1固定体11Aの第2貼着面13bを第1被貼着面91aに貼着できる。したがって、剥離剤19によって、第1固定体11Aの第2貼着面13bが、固定具10の移動の妨げになることを抑制しつつ、設置位置への移動後は、第1固定体11Aの第2貼着面13bを第1被貼着面91aに貼着できる。
【0058】
(1-11)雄ねじ部22の第1端部22aは、第1固定体11Aの第2貼着面13bのみから突出可能である。つまり、第2固定体11Bの第2貼着面13bからは、当接部は突出しない。このため、第2固定体11Bにおいては、その第2貼着面13bから当接部を後退させる作業をすることなく、第2貼着面13bを第2被貼着面92aに貼着できる。よって、第2固定体11Bの第2貼着面13bを第2被貼着面92aに貼着して固定具10を安定した状態にした後に、雄ねじ部22の第1端部22aを第2貼着面13bから下がった位置に後退させることができる。このため、雄ねじ部22の第1端部22aを、第1固定体11Aの第2貼着面13bから後退させる作業が行いやすい。
【0059】
(1-12)第1端部22aの突出している第2貼着面13bは、剥離剤19で覆われている。このため、第1端部22aにより、第1被貼着面91aに対する第2貼着面13bの接触が抑制されていても、固定具10の移動途中で固定具10が傾いて、第2貼着面13bが第1被貼着面91aに接触してしまうことがある。このような場合でも、剥離剤19によって、第2貼着面13bが第1被貼着面91aに貼着することを抑制できる。その結果、固定具10が傾いても第1固定体11Aの第2貼着面13bが第1被貼着面91aに貼着しないように、雄ねじ部22を第2貼着面13bから過剰に突出させる必要がなくなる。その結果、初期位置での固定具10の第2距離L2が長くなることを抑制できるため、固定具10を狭い隙間100に配置できる。
【0060】
(1-13)第2固定体11Bの第2貼着面13bを第2被貼着面92aに貼着した後、第1固定体11Aは、雄ねじ部22に対する雌ねじ部21の螺退によって第1被貼着面91aに接近していく。そして、第1固定体11Aの第2貼着面13bが第1被貼着面91aに接触した後も、第1固定体11Aは回転する。このとき、揮発する前の剥離剤19によって、第1被貼着面91aに対する滑りが発生する。このため、第1固定体11Aの回転が許容されるため、第1固定体11Aの第2貼着面13bを第1被貼着面91aに押し付けながらの回転が可能になる。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、固定具及び固定具の設置方法を具体化した第2の実施形態を図10図16にしたがって説明する。
【0062】
図16に示すように、固定具30は、床面Fと、床面Fに設置された機器95の下面95aとを相互に固定する。床面F及び下面95aは、固定具30の貼着される被貼着面である。
【0063】
<固定具>
第2の実施形態の固定具30は、2つの固定体31と、2つの固定体31を相対移動可能に連結する連結部39と、接触抑制部50と、を備える。
【0064】
<固定体>
図10図11、及び図12に示すように、2つの固定体31の各々は、円板状である。2つの固定体31は、共通の構成を備えるため、共通の構成においては、片方の固定体31だけ説明する。また、2つの固定体31において、共通の構成については、同じ部材番号を付す。
【0065】
固定体31は、円板状のマット貼着部32と、円板状の粘着マット33と、を備える。マット貼着部32は、金属板製である。マット貼着部32の中央部には、貫通孔34が形成されている。マット貼着部32は、板厚方向に互いに反対面となるマット貼着面32aと、マット非貼着面32bとを備える。マット貼着面32aには、粘着マット33が貼着されている。
【0066】
粘着マット33は、第1の実施形態に記載の粘着マット13と同じ材質である。粘着マット33は環状である。粘着マット33の中央部には、円形状の孔331が形成されている。孔331は、粘着マット33を板厚方向に貫通する。孔331の直径は、貫通孔34の孔径より大きい。
【0067】
粘着マット33は、板厚方向に互いに反対面となる第1貼着面33aと、第2貼着面33bとを備える。粘着マット33の第1貼着面33aは、マット貼着部32のマット貼着面32aに貼着されている。一方の固定体31の粘着マット33の第2貼着面33bは、機器95の下面95aに貼着されるとともに、他方の固定体31における粘着マット33の第2貼着面33bは、床面Fに貼着される。
【0068】
粘着マット33は、当該粘着マット33の孔331が貫通孔34を囲むとともに、孔331の中心と貫通孔34の中心とが一致するようにマット貼着部32に貼着されている。孔331は、貫通孔34と同心円である。粘着マット33の内周面33cは、貫通孔34の周縁から離れて貫通孔34を囲んでいる。
【0069】
2つの固定体31のうち、機器95の下面95aに貼着される一方の固定体31を第1固定体31Aとするとともに、床面Fに貼着される他方の固定体31を第2固定体31Bとする。
【0070】
貫通孔34には、ボルト状部材35が挿通されている。ボルト状部材35は、角柱状の頭部35aと、頭部35aから突出する雄ねじ部35bと、を有する。雄ねじ部35bは、貫通孔34に挿通されている。雄ねじ部35bには、固定ナット36が螺合されている。ボルト状部材35は、固定ナット36によってマット貼着部32に締結されている。したがって、各固定体31は、雄ねじ部35bを一体に備えている。
【0071】
以下、第1固定体31Aに固定されたボルト状部材35を第1ボルト状部材35Aとするとともに、第2固定体31Bに固定されたボルト状部材35を第2ボルト状部材35Bとする。また、第1ボルト状部材35Aの雄ねじ部35bに螺合された固定ナット36を第1固定ナット36Aとするとともに、第2ボルト状部材35Bの雄ねじ部35bに螺合された固定ナット36を第2固定ナット36Bとする。
【0072】
<連結部>
連結部39は、第1ボルト状部材35Aの雄ねじ部35bと、第2ボルト状部材35Bの雄ねじ部35bと、雌ねじ部40と、を備える螺合機構Rである。雌ねじ部40は、長ナットである。雌ねじ部40は、一対の雄ねじ部35bの先端面を向い合せた状態で、2つの固定体31を連結している。2つの雄ねじ部35bは互いに逆ねじの関係にある。雌ねじ部40の軸線方向の第1端側には、第1ボルト状部材35Aの雄ねじ部35bが螺合されるとともに、雌ねじ部40の軸線方向の第2端側には、第2ボルト状部材35Bの雄ねじ部35bが螺合されている。2つの固定体31は、雌ねじ部40への各雄ねじ部35bの螺合によって一体に連結されている。この雌ねじ部40と雄ねじ部35bとの螺合によって、第1固定体31Aと第2固定体31Bとを備える固定具30が形成されている。
【0073】
<接触抑制部>
接触抑制部50は、平板状の本体部51と、本体部51から平板状に突出した3つの腕部52と、各腕部52から突出した当接部53と、本体部51に一体の螺着部54と、を備える。
【0074】
3つの腕部52は、本体部51の中央部から放射状に延出している。3つの腕部52は、本体部51の周方向へ等間隔おきに並べて配置されている。腕部52の基端側を本体部51の中央部側とすると、腕部52の基端から先端までの長さは、3つの腕部52で同じである。当接部53は、各腕部52の先端に設けられている。3つの当接部53の各々は、本体部51の板厚方向の一方面側から突出している。当接部53の基端側を腕部52側とすると、当接部53の基端から先端までの長さは、3つの当接部53で同じである。当接部53の長さは、マット貼着部32の板厚と、粘着マット33の板厚と、固定ナット36の板厚の合算値よりも大きい。本体部51の板厚方向の一方面側から接触抑制部50を見ると、3つの当接部53の各々は、円弧状に湾曲している。本体部51の板厚方向の一方面側から接触抑制部50を見ると、3つの当接部53は、1つの仮想円に沿って延びている。3つの当接部53の先端面は、平坦面である。
【0075】
螺着部54は、本体部51の板厚方向の他方面における中央部に設けられている。接触抑制部50の螺着部54は、第1ボルト状部材35Aの雄ねじ部35bに螺合されている。この螺着により、接触抑制部50は、第1固定体31Aに一体化されている。接触抑制部50の螺着部54は、第1固定ナット36Aと雌ねじ部40との間に位置している。
【0076】
接触抑制部50において、マット貼着部32のマット非貼着面32bは、本体部51の板厚方向の一方面に対面している。図13に示すように、本体部51の板厚方向の一方面を第1固定ナット36Aに接触させると、当接部53の先端面は、第1固定体31Aの第2貼着面33bから突出する。
【0077】
<固定具の詳細>
固定具30において、第1固定体31Aにおけるマット非貼着面32bと、第2固定体31Bにおけるマット非貼着面32bとは対面している。固定具30において、第1固定体31Aと第2固定体31Bとは、それぞれの第2貼着面33bを反対側に向けた状態で連結部39によって連結されている。したがって、第1粘着マット33Aの第2貼着面33bは、固定具30の一端面であるとともに、第2粘着マット33Bの第2貼着面33bは、固定具30の他端面である。
【0078】
雌ねじ部40に対する各雄ねじ部35bの螺進により、第1固定体31Aと第2固定体31Bとを接近方向へ相対移動させることができる。第1固定体31Aと第2固定体31Bとの接近方向への相対移動により、2つの第2貼着面33bは、接近方向へ相対移動するとともに、2つのマット非貼着面32bは、相対的に接近移動する。また、雌ねじ部40に対する各雄ねじ部35bの螺退により、第1固定体31Aと第2固定体31Bとを離間方向へ相対移動させることができる。第1固定体31Aと第2固定体31Bの離間方向への相対移動により、2つの第2貼着面33bは、離間方向へ相対移動するとともに、2つのマット非貼着面32bは、相対的に離間移動する。
【0079】
第1固定体31Aと第2固定体31Bが離間方向へ相対移動する場合において、第1固定体31A及び第2固定体31Bが移動する方向は前進方向である。第1固定体31Aと第2固定体31Bが接近方向へ相対移動する場合において、第1固定体31A及び第2固定体31Bが移動する方向は、前進方向と反対方向であるため、後退方向である。
【0080】
上記のように、第1固定体31Aと第2固定体31Bは、それぞれの第2貼着面33bを反対側に向けた状態で、当該2つの固定体31の接離方向へ相対移動可能に連結されている。より詳細には、第1固定体31Aと第2固定体31Bとは、それぞれの第2貼着面33bを反対側に向けた状態で、一対の雄ねじ部35bと、雌ねじ部40と、からなる螺合機構Rにより、2つの固定体31の接離方向へ相対移動可能に連結されている。
【0081】
固定具30において、雌ねじ部40に対する各雄ねじ部35bの螺進により、第1固定体31Aと第2固定体31Bとを接近方向へ相対移動させる。そして、第1固定ナット36Aと本体部51とを接触させるとともに、螺着部54と雌ねじ部40とを接触させると、接触抑制部50が雌ねじ部40と第1固定ナット36Aとの間に挟持される。つまり、螺合機構Rを構成する雄ねじ部35bと雌ねじ部40との螺回動によって接触抑制部50が挟持される。この挟持により、接触抑制部50の移動が規制される。
【0082】
接触抑制部50が雌ねじ部40と第1固定ナット36Aとの間に挟持されると、当接部53の先端面は、第1固定体31Aの第2貼着面33bから最も突出している。したがって、固定具30において、当接部53の先端面は、第1固定体31Aの第2貼着面33bを超えた突出位置に配置可能である。つまり、固定具30において、当接部53の先端面は、第1固定体31Aの第2貼着面33bよりも前方に配置可能である。
【0083】
図11に示すように、3つの当接部53は、第1粘着マット33Aの外周側に配置されている。3つの当接部53は、第1粘着マット33Aの周方向へ等間隔おきに配置されている。
【0084】
図13に示すように、固定具30において、雌ねじ部40の一端に螺着部54が接触し、かつ本体部51に第1固定ナット36Aが接触するとともに、雌ねじ部40の他端に第2固定ナット36Bが接触すると、それ以上の螺進が不可能になる。このとき、2つのマット非貼着面32b間の距離は最短となるとともに、2つの第2貼着面33b間の距離は最短となる。この位置を、固定具30の初期位置とする。固定具30の初期位置では、接触抑制部50の当接部53は、第1固定体31Aの第2貼着面33bから最も突出している。
【0085】
初期位置の固定具30において、各雄ねじ部35bを雌ねじ部40から螺退させる。つまり、雌ねじ部40に対する雄ねじ部35bの螺退により、第1固定体31Aと第2固定体31Bとを離間方向へ相対移動させる。そして、第1固定体31Aの雄ねじ部35bに対し、螺着部54を相対的に螺退させることにより、接触抑制部50を第1固定体31Aから相対的に離間移動させることができる。
【0086】
<固定具の設置方法>
次に、固定具30の設置方法を説明する。なお、固定具30は、床面Fと、機器95の下面95aの間に設置される。
【0087】
先ず、図13に示すように、作業者は、固定具30を初期位置にする。固定具30の初期位置では、当接部53は、第1固定体31Aの第2貼着面33bから突出している。次に、作業者は、第1固定体31Aの第2貼着面33bの全面に剥離剤19を塗布して、当該第2貼着面33bの全面を剥離剤19によって覆う。剥離剤19の塗布は、固定具30を初期位置にする前でもよい。
【0088】
次に、作業者は、初期位置の固定具30を床面Fと、機器95の下面95aとの間に配置する。このとき、第1固定体31Aの第2貼着面33bを、機器95の下面95aに対面させるとともに、第2固定体31Bの第2貼着面33bを、床面Fに対面させる。
【0089】
次に、作業者は、第1固定体31Aの第2貼着面13bから突出した当接部53の先端面を機器95の下面95aに当接させる。当接部53は、第1固定体31Aの第2貼着面33bから突出しているため、第1固定体31Aの第2貼着面33bは、下面95aから離間する。その結果、接触抑制部50の当接部53によって、第1固定体31Aの第2貼着面33bが下面95aに接触することが抑制される。このとき、3つの当接部53は、第1粘着マット33Aの外周側にて等間隔おきに配置されている。したがって、3つの当接部53によって、第1固定体31Aは、機器95の下面95aに対してバランス良く当接する。そして、作業者は、当接部53を下面95aに摺接させながら固定具30を、当該固定具30の設置位置へ移動させる。このとき、機器95の下面95aに当接部53を摺接させているため、当接部53の反対側となる第2固定体31Bの第2貼着面33bを床面Fから最大限離間させることができる。このため、機器95の下面95aに当接部53を摺接させている際、第2固定体31Bの第2貼着面33bが床面Fに貼着することを抑制できる。
【0090】
図14に示すように、設置位置において、作業者は、第2固定体31Bの第2貼着面33bを床面Fに押し付ける。すると、第2固定体31Bの第2貼着面33bは第2被貼着面92aに貼着される。これにより、固定具30の移動は、第2貼着面33bによる貼着によって抑制される。
【0091】
次に、作業者は、第1固定体31Aが回転しないように第1固定体31Aを手で支えながら雌ねじ部40を回転させる。このとき、第2固定体31Bは、床面Fに貼着されているため、雌ねじ部40の回転に対し、第2固定体31Bの雄ねじ部35bが、相対的に雌ねじ部40から螺退する、
また、図15に示すように、第1固定体31Aの雄ねじ部35bが相対的に雌ねじ部40から螺退する。これにより、第1固定体31Aと第2固定体31Bとが離間方向へ相対移動するとともに、第1固定体31Aは機器95に接近していく。すると、第1固定体31Aの第1固定ナット36Aは、雌ねじ部40の一端から離間していく。
【0092】
また、第1固定体31Aの雄ねじ部35bに螺着された接触抑制部50も、第1固定体31Aと同時に機器95に向けて移動する。すると、螺着部54は、雌ねじ部40の一端から離れていく。このため、螺着部54と雌ねじ部40の一端とが離間する。
【0093】
そして、当接部53が機器95の下面95aに接触する前、又は当接部53が機器95の下面95aに当接した後、作業者は、接触抑制部50を回転させて、螺着部54を雌ねじ部40に向けて螺進させる。接触抑制部50は、雌ねじ部40に向けて第1固定体31Aの雄ねじ部35bを螺進していく。すると、当接部53は、第1固定体31Aの第2貼着面33bよりも後方へ移動する。その結果、当接部53が第1固定体31Aの第2貼着面13bから突出した状態が解除されるとともに、当接部53は、機器95の下面95aから離間する。また、このとき、2つの固定体31の離間移動により形成された移動可能領域へと接触抑制部50を移動させることで、当接部53を第1固定体31Aの第2貼着面33bよりも後方へ移動可能になる。
【0094】
その後、作業者は、第1固定体31Aが回転しないように第1固定体31Aを手で支えながら雌ねじ部40をさらに回転させる。つまり、雌ねじ部40に対し、第1固定体31Aの雄ねじ部35bを相対的に螺退させると、第1固定体31Aと第2固定体31Bとが離間方向へ相対移動するとともに、第1固定体31Aは機器95の下面95aに接近していく。
【0095】
その後、第1固定体31Aの回転が進むと、図16に示すように、第1固定体31Aの第2貼着面33bが機器95の下面95aに到達する。さらに作業者が第1固定体31Aを回転させると、剥離剤19により貼着力が減少された第1固定体31Aの第2貼着面33bが、機器95の下面95aに摺接しながら移動していく。その後、第1固定体31Aの第2貼着面33bが下面95aに押し付けられるとともに、第2固定体31Bの第2貼着面33bが床面Fに押し付けられる。つまり、2つの固定体31を離間方向へ相対移動させ、第1固定体31Aの第2貼着面33bを、当該第2貼着面33bの対面する下面95aに押し付ける。同時に、第2固定体31Bの第2貼着面33bが床面Fに押し付けられる。機器95の下面95a及び床面Fへの押し付けにより、その押し付け位置が維持された状態で、剥離剤19が時間の経過とともに揮発していく。この剥離剤19の揮発に伴って、第1固定体31Aの第2貼着面33bの貼着力が徐々に復帰していく。その結果、第1固定体31Aの第2貼着面33bは、下面95aに徐々に貼着されていく。
【0096】
その結果、固定具30は、下面95a及び床面Fに貼着されるとともに、固定具30によって機器90が床面Fに固定される。
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0097】
(2-1)接触抑制部50は、螺着部54によって第1固定体31Aの雄ねじ部35bに螺着されている。また、接触抑制部50の螺着部54は、第1固定体31Aの雄ねじ部35bに螺合された第1固定ナット36Aと、同じく第1固定体31Aの雄ねじ部35bに螺着された雌ねじ部40に挟まれている。そして、螺着部54は、第1固定ナット36Aと雌ねじ部40とに挟持される。この挟持によって接触抑制部50は位置決めされるため、当接部53が、第1固定体31Aの第2貼着面33bから突出した状態を維持できる。つまり、第1固定体31Aと第2固定体31Bとを接離方向へ相対移動させる螺合機構Rを利用して、第1固定体31Aの第2貼着面33bから当接部53が突出した状態を維持できる。したがって、固定具30は、第1固定体31Aの第2貼着面33bから当接部53が突出した状態を維持するための機構を別途必要としない。
【0098】
(2-2)第1固定体31Aの雄ねじ部35bと、第2固定体31Bの雄ねじ部35bは、逆ねじの関係にある。そして、雌ねじ部40の回転によって、第1固定体31A及び第2固定体31Bを離間方向へ相対移動させることができる。このため、固定具30の操作によって、第1粘着マット33Aを機器95の下面95aに押し付けつつ、第2粘着マット33Bを床面Fに押し付けることができる。よって、固定具30による機器95の固定作業が容易になる。
【0099】
(2-3)接触抑制部50は、3つの当接部53を備えるとともに、3つの当接部53は、第1粘着マット33Aの周囲に等間隔おきに配置されている。このため、機器95の下面95aに対し、当接部53をバランスよく当接させることができる。したがって、下面95aに対する第2貼着面33bの接触抑制は、当接部53によって好適に実施できる。
【0100】
(2-4)接触抑制部50は、3つの当接部53を備えるとともに、3つの当接部53は、本体部51の周方向に離間して配置されている。このため、当接部53を機器95の下面95aに当接させたとき、隣り合う当接部53同士の間から第1固定体31Aを視認できる。したがって、作業者は、当接部53を機器95の下面95aから離間させる作業や第1固定体31Aを機器95に向けて移動させる作業を視認しながら行うことができる。
【0101】
(2-5)接触抑制部50の螺着部54は、第1固定体31Aの雄ねじ部35bに螺着されている。このため、雌ねじ部40の回転によって第1固定体31Aを移動させると同時に接触抑制部50を移動させることができる。したがって、第2粘着マット33Bを床面Fに貼着した後の作業において、当接部53を第1粘着マット33Aの第2貼着面33bから突出させた状態を維持したまま、第1固定体31A及び接触抑制部50を機器95に向けて移動させることができる。
【0102】
(2-6)当接部53の突出している第2貼着面33bは、剥離剤19で覆われている。このため、当接部53により、下面95aに対する第2貼着面33bの接触が抑制されていても、固定具30の移動途中で固定具30が傾いて、第2貼着面33bが下面95aに接触してしまうことがある。このような場合でも、剥離剤19によって、第2貼着面33bが下面95aに貼着することを抑制できる。その結果、固定具30が傾いても第1固定体31Aの第2貼着面33bが下面95aに貼着しないように、当接部53を第2貼着面33bから過剰に突出させる必要がなくなる。その結果、初期位置での固定具30が大型化することを抑制できる。
【0103】
(2-7)第1固定体31Aの第2貼着面33bが下面95aに接触した後も、第1固定体31Aは回転する。このとき、揮発する前の剥離剤19によって、下面95aに対する滑りが発生する。このため、第1固定体31Aの回転が許容されるため、第1固定体31Aの第2貼着面33bを下面95aに押し付けながらの回転が可能になる。
【0104】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図17及び図18に示すように、固定具30は、2枚の接触抑制部50を備えていてもよい。2枚の接触抑制部50のうちの一方である第1接触抑制部50Aは、第1固定ナット36Aと雌ねじ部40の一端との間に配置される。2枚の接触抑制部50のうちの他方である第2接触抑制部50Bは、第2固定ナット36Bと雌ねじ部40の他端との間で、第2固定ナット36Bに配置される。
【0105】
第1接触抑制部50A及び第2接触抑制部50Bの各々は、本体部51に切り欠き51aが形成されているとともに、螺着部54は割愛されている。第1接触抑制部50Aの切り欠き51aには、第1固定体31Aの雄ねじ部35bが挿入されている。そして、第1接触抑制部50Aの本体部51は、第1固定ナット36Aと雌ねじ部40の一端とで挟持可能である。雌ねじ部40を回転させて、第1固定ナット36Aと雌ねじ部40とを離間させた後、第1接触抑制部50Aを雄ねじ部35bの径方向へ移動させると、切り欠き51aによって第1接触抑制部50Aを雄ねじ部35bから取り外すことができる。
【0106】
第2接触抑制部50Bの切り欠き51aには、第2固定体31Bの雄ねじ部35bが挿入されている。第2接触抑制部50Bは、第2固定ナット36Bと雌ねじ部40の他端とで挟持可能である。雌ねじ部40を回転させて、第2固定ナット36Bと雌ねじ部40とを離間させた後、第2接触抑制部50Bを雄ねじ部35bの径方向へ移動させると、切り欠き51aによって第2接触抑制部50Bを雄ねじ部35bから取り外すことができる。
【0107】
図17及び図18に示す固定具30の設置時、第1接触抑制部50Aの当接部53が、第1固定体31Aの第2貼着面33bより突出するようにする。また、第2接触抑制部50Bの当接部53が、第2固定体31Bの第2貼着面33bより突出するようにする。このようにすることで、固定具30を移動させるとき、第1粘着マット33Aの第2貼着面33bが床面Fに貼着することを抑制しつつ、第2粘着マット33Bの第2貼着面33bが機器95の下面95aに貼着することを抑制できる。
【0108】
図19に示すように、第1の実施形態の固定具10は、第2固定体11Bのマット貼着部12におけるマット非貼着面12bにも雌ねじ部21が設けられていてもよい。この場合、雄ねじ部22は、マット貼着部12に溶接されていない。また、雄ねじ部22は、第1固定体11Aの雌ねじ部21及び第2固定体11Bの雌ねじ部21のそれぞれに螺着されている。
【0109】
このように構成した場合、作業者は、第1固定体11A又は第2固定体11Bを回転させることにより、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを離間方向へ相対移動させることができる。また、雄ねじ部22の第1端部22aを、第1固定体11Aの第2貼着面13bから突出した当接部とすることができるとともに、雄ねじ部22の第2端部22bを、第2固定体11Bの第2貼着面13bから突出した当接部とすることができる。つまり、雄ねじ部22は、両端部に当接部を備える接触抑制部となる。
【0110】
そして、第1端部22aを第1被貼着面91aに摺接させたり、第2端部22bを第2被貼着面92aに摺接させたりしながら固定具10を設置位置に移動させることができる。また、固定具10を設置位置に移動させた後は、各固定体11をそれぞれ離間方向へ相対移動させて、第1端部22a及び第2端部22bよりも前方に各第2貼着面13bを位置させることができる。なお、図19に示す固定具10において、両方の固定体11の第2貼着面13bの各々に剥離剤19を塗布してもよい。
【0111】
○第1の実施形態の固定具10において、固定具10の設置時、雄ねじ部22の第1端部22aを第1被貼着面91aに当接させたまま固定具10を移動させなくてもよい。第1被貼着面91aから固定具10を離間させた状態で固定具10を移動させる途中、固定具10が第1被貼着面91aに接近しすぎた場合に、雄ねじ部22の第1端部22aが第1被貼着面91aに当接して、第1被貼着面91aに対する第2貼着面13bの接触が抑制されればよい。
【0112】
○第2の実施形態の固定具30において、固定具30の設置時、当接部53を機器95の下面95aに当接させたまま固定具30を移動させなくてもよい。機器95の下面95aから固定具30を離間させた状態で固定具30を移動させる途中、固定具30が下面95aに接近しすぎた場合に、当接部53が下面95aに当接して、下面95aに対する第2貼着面33bの接触が抑制されればよい。
【0113】
○第2の実施形態の固定具30において、第1固定ナット36Aと雌ねじ部40とで接触抑制部50を挟持することで、接触抑制部50の当接部53が第2貼着面33bの前方に位置した状態を維持できるため、螺着部54はなくてもよい。
【0114】
○第2の実施形態において、接触抑制部50の本体部51を、粘着マット33の外周面より外方へ延出する円板状とするとともに、当接部53を、本体部51の外周縁から突出する円筒状としてもよい。又は、接触抑制部50の腕部52を2本として当接部53を2つとしてもよいし、腕部52を4本以上として当接部53を4つとしてもよい。
【0115】
○各実施形態において、粘着マットへの剥離剤19の塗布は行わなくてもよい。例えば、第2の実施形態では、接触抑制部50における3つの当接部53が、粘着マット33の周囲にバランスよく当接している。このため、当接部53により、第2貼着面33bは、機器95の下面95aに接触することが抑制される。その結果として、剥離剤19を第2貼着面33bに塗布しなくてもよい。
【0116】
また、この場合、空回り機構を固定具30に設けて、当該空回り機構により、各固定体31が回動しても各粘着マット33は回動することなく接離方向に相対移動可能としてもよい。このように構成することで、第2貼着面33bを下面95aに押し付けることができる。
【0117】
○各実施形態において、両方の粘着マット13,33への剥離剤19の塗布を行ってもよい。このように構成した場合、各粘着マット13,33の第2貼着面13b,33bを摺接させながらの回動が可能になる。
【0118】
○第1の実施形態では、各固定体11の回動に伴って各粘着マット13が回動したが、例えば、空回り機構を固定具10に設けて、当該空回り機構により、各固定体11が回動しても各粘着マット13は回動することなく接離方向に相対移動可能としてもよい。
【0119】
○第1の実施形態において、粘着マット13は、マット貼着部12の周方向へ複数に分割されていてもよい。第2の実施形態において、粘着マット33は、マット貼着部32の周方向へ複数に分割されていてもよい。
【0120】
○各実施形態において、各被貼着面に対する貼着面の押し付けの維持は、剥離剤19がある程度揮発し、手を離しても貼着状態を維持できるまで、作業者が手で行ってもよい。
【符号の説明】
【0121】
10,30…固定具、11,31…固定体、13a,33a…第1貼着面、13b,33b…第2貼着面、19…剥離剤、22…接触抑制部としての雄ねじ部、22a…当接部としての第1端部、50…接触抑制部、53…当接部、91a…第1被貼着面、92a…第2被貼着面、95a…被貼着面としての下面、131,331…孔、F…被貼着面としての床面、R…螺合機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19