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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146523
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】固定具の設置方法
(51)【国際特許分類】
   A47B 97/00 20060101AFI20241004BHJP
   F16B 47/00 20060101ALI20241004BHJP
   F16B 9/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A47B97/00 E
F16B47/00 V
F16B9/02 C
A47B97/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059486
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 建世
(72)【発明者】
【氏名】安田 真之
(72)【発明者】
【氏名】堀 信夫
【テーマコード(参考)】
3J023
3J038
【Fターム(参考)】
3J023AA01
3J023BA01
3J023BB01
3J023CA02
3J023DA06
3J023EA01
3J023FA01
3J023GA03
3J038DA01
(57)【要約】
【課題】固定具を容易に設置できる固定具の設置方法を提供すること。
【解決手段】固定具10の設置方法では、第1貼着面13Aの床面Fへの接触と、第2貼着面13Bの下面90aへの接触とを行い、剥離剤付き貼着面の剥離剤19の揮発が完了し、かつ剥離剤付き貼着面の貼着力が回復して、剥離剤19の塗布されていた第1貼着面13Aが床面Fに貼着されるとともに第2貼着面13Bが下面90aに貼着されるまで、その接触を維持する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼着面に貼着される貼着面を備える固定具の設置方法であって、
前記貼着面を備える固定体を備え、
前記貼着面に、当該貼着面の貼着力を減少させる揮発性の剥離剤を塗布して剥離剤付き貼着面とし、
前記剥離剤付き貼着面に塗布した前記剥離剤の揮発が完了する前に、前記被貼着面の貼着位置に前記貼着面が位置するように前記固定体を配置することを特徴とする固定具の設置方法。
【請求項2】
前記剥離剤付き貼着面に塗布した前記剥離剤の揮発が完了し、かつ前記貼着面の前記貼着力が回復して当該貼着面が前記被貼着面に貼着されるまで、前記被貼着面に向けて前記貼着面を押し付ける請求項1に記載の固定具の設置方法。
【請求項3】
第1被貼着面に貼着される第1貼着面と、前記第1被貼着面と異なる第2被貼着面に貼着される第2貼着面を備える固定具の設置方法であって、
前記第1貼着面及び前記第2貼着面の少なくとも一方に、貼着面の貼着力を減少させる揮発性の剥離剤を塗布して剥離剤付き貼着面とし、
前記剥離剤付き貼着面に塗布した前記剥離剤の揮発が完了する前に、前記第1貼着面の前記第1被貼着面への接触と、前記第2貼着面の前記第2被貼着面への接触とを行い、
前記剥離剤付き貼着面の前記剥離剤の揮発が完了し、かつ前記剥離剤付き貼着面の貼着力が回復して、前記剥離剤の塗布されていた貼着面が対面する被貼着面に貼着されるまで、前記第1被貼着面に対する前記第1貼着面の接触、及び前記第2被貼着面に対する前記第2貼着面の接触を維持することを特徴とする固定具の設置方法。
【請求項4】
前記第1貼着面を備える第1固定体と、前記第2貼着面を備える第2固定体と、を備え、
前記第1固定体と前記第2固定体は、前記第1貼着面と前記第2貼着面の相対位置を変更可能に相対移動可能に連結されており、
前記第1被貼着面への前記第1貼着面の貼着位置に前記第1固定体を配置した後に、前記第2貼着面が前記第2被貼着面に接近するように、前記第1固定体に対して前記第2固定体を相対移動させた後、
前記第2貼着面を前記第2被貼着面に接触させる請求項3に記載の固定具の設置方法。
【請求項5】
前記第2貼着面のみを、前記剥離剤付き貼着面とし、
前記剥離剤付き貼着面の前記剥離剤の揮発が完了する前に、
前記第1固定体と前記第2固定体とを離間方向へ相対移動させて、前記第1貼着面の前記第1被貼着面への貼着と、前記第2貼着面の前記第2被貼着面への接触とを行う請求項4に記載の固定具の設置方法。
【請求項6】
対面する第1被貼着面と第2被貼着面の間に配置されるとともに、前記第1被貼着面に貼着される第1貼着面を備える第1固定体と、前記第2被貼着面に貼着される第2貼着面を備える第2固定体と、を備える固定具を、前記第1被貼着面と前記第2被貼着面の間に配置し、前記第1被貼着面に前記第1貼着面を貼着するとともに前記第2被貼着面に前記第2貼着面を貼着する固定具の設置方法であって、
前記第1固定体と前記第2固定体とは、前記第1貼着面と前記第2貼着面とを反対側に向けた状態で、雌ねじ部と雄ねじ部とからなる螺合機構により接離方向へ相対移動可能に連結されており、
前記第1固定体及び前記第2固定体のうちの少なくとも1つの固定体の貼着面に当該貼着面の貼着力を減少させる揮発性の剥離剤を塗布して剥離剤付き貼着面とし、
前記螺合機構の動作に伴って前記雄ねじ部を回動軸として貼着面を回動させながら前記剥離剤付き貼着面を対面する被貼着面に接近するように移動可能であり、
前記剥離剤付き貼着面の前記剥離剤の揮発が完了する前に、当該剥離剤付き貼着面を備える固定体の前記剥離剤付き貼着面を対面する被貼着面に接触させ、
前記剥離剤付き貼着面の前記剥離剤の揮発が完了し、かつ前記剥離剤付き貼着面の貼着力が回復して、前記剥離剤の塗布されていた貼着面が被貼着面に貼着されるまで、被貼着面への接触を維持することを特徴とする固定具の設置方法。
【請求項7】
前記第1固定体と前記第2固定体とは、前記第1貼着面と前記第2貼着面が離間するように相対移動可能に連結されており、
前記第1被貼着面に対する前記第1貼着面の押し付けと、前記第2被貼着面に対する前記第2貼着面の押し付けとを行うために前記第1固定体と前記第2固定体とを離間方向へ相対移動させる請求項4~請求項6のうちいずれか一項に記載の固定具の設置方法。
【請求項8】
前記剥離剤付き貼着面とされた貼着面を、当該貼着面が貼着される前記被貼着面に接触させた状態で固定具を移動させて当該貼着面の貼着位置に移動させる請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の固定具の設置方法。
【請求項9】
前記固定体を棒状の遠隔操作体で、前記被貼着面の貼着位置まで送り込む請求項1又は請求項2に記載の固定具の設置方法。
【請求項10】
前記第1貼着面を備える第1固定体と、前記第2貼着面を備える第2固定体と、を備え、
前記第2貼着面のみを、前記剥離剤付き貼着面とし、
前記剥離剤付き貼着面の前記剥離剤の揮発が完了する前に、
前記第2被貼着面への前記第2貼着面の貼着位置に前記第2固定体を配置し、当該第2貼着面を前記第2被貼着面に接触させ、
前記第2固定体が備えるガイド部により、当該第2固定体に対し接離する方向へ案内された前記第1固定体を、前記第1被貼着面への前記第1貼着面の貼着位置に移動させて前記第1貼着面を前記第1被貼着面に貼着した後、前記第1固定体と前記第2固定体とを連結する請求項3に記載の固定具の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、床面と固定対象物の下面との間に配置されて、床面と固定対象物の下面のそれぞれに貼着される粘着固定具が開示されている。特許文献1に開示された粘着固定具は、固定対象物の下面と床面のそれぞれに対し粘着マットによって貼着される。粘着固定具は、2つの固定部と、各固定部から突出するボルト状部材と、2つのボルト状部材が螺合される連結部材と、を有する。粘着マットは、厚さ方向の両面に粘着面を有する板状である。
【0003】
粘着固定具は、連結部材を操作することで、2つの固定部の距離を調節できる。各固定部には粘着マットが貼着されているため、連結部材を操作することで2つの粘着マットの距離を調節できる。これにより、床面と固定対象物の下面との間の高さが異なっていても、両粘着マットの距離を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-194384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の粘着固定具において、床面と、固定対象物の下面との間に粘着固定具を挿入して設置する際、粘着マットが、固定具の設置位置と異なる位置で貼着しないように気を付けながら粘着固定具を設置位置まで移動させる必要がある。また、粘着マットが、設置位置と異なる位置で貼着してしまった場合は、粘着固定具の位置を容易に変更することができない。このため、特許文献1に開示の粘着固定具は、床面と、固定対象物の下面との間に固定具を挿入して設置する際、慎重な作業が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための固定具の設置方法は、被貼着面に貼着される貼着面を備える固定具の被貼着面に貼着される貼着面を備える固定具の設置方法であって、前記貼着面を備える固定体を備え、前記貼着面に、当該貼着面の貼着力を減少させる揮発性の剥離剤を塗布して剥離剤付き貼着面とし、前記剥離剤付き貼着面に塗布した前記剥離剤の揮発が完了する前に、前記被貼着面の貼着位置に前記貼着面が位置するように前記固定体を配置することを要旨とする。
【0007】
固定具の設置方法について、前記剥離剤付き貼着面に塗布した前記剥離剤の揮発が完了し、かつ前記貼着面の前記貼着力が回復して当該貼着面が前記被貼着面に貼着されるまで、前記被貼着面に向けて前記貼着面を押し付けてもよい。
【0008】
上記問題点を解決するための固定具の設置方法は、第1被貼着面に貼着される第1貼着面と、前記第1被貼着面と異なる第2被貼着面に貼着される第2貼着面を備える固定具の設置方法であって、前記第1貼着面及び前記第2貼着面の少なくとも一方に、貼着面の貼着力を減少させる揮発性の剥離剤を塗布して剥離剤付き貼着面とし、前記剥離剤付き貼着面に塗布した前記剥離剤の揮発が完了する前に、前記第1貼着面の前記第1被貼着面への接触と、前記第2貼着面の前記第2被貼着面への接触とを行い、前記剥離剤付き貼着面の前記剥離剤の揮発が完了し、かつ前記剥離剤付き貼着面の貼着力が回復して、前記剥離剤の塗布されていた貼着面が対面する被貼着面に貼着されるまで、前記第1被貼着面に対する前記第1貼着面の接触、及び前記第2被貼着面に対する前記第2貼着面の接触を維持することを要旨とする。
【0009】
固定具の設置方法について、前記第1貼着面を備える第1固定体と、前記第2貼着面を備える第2固定体と、を備え、前記第1固定体と前記第2固定体は、前記第1貼着面と前記第2貼着面の相対位置を変更可能に相対移動可能に連結されており、前記第1被貼着面への前記第1貼着面の貼着位置に前記第1固定体を配置した後に、前記第2貼着面が前記第2被貼着面に接近するように、前記第1固定体に対して前記第2固定体を相対移動させた後、前記第2貼着面を前記第2被貼着面に接触させてもよい。
【0010】
固定具の設置方法について、前記第2貼着面のみを、前記剥離剤付き貼着面とし、前記剥離剤付き貼着面の前記剥離剤の揮発が完了する前に、前記第1固定体と前記第2固定体とを離間方向へ相対移動させて、前記第1貼着面の前記第1被貼着面への貼着と、前記第2貼着面の前記第2被貼着面への接触とを行ってもよい。
【0011】
上記問題点を解決するための固定具の設置方法は、対面する第1被貼着面と第2被貼着面の間に配置されるとともに、前記第1被貼着面に貼着される第1貼着面を備える第1固定体と、前記第2被貼着面に貼着される第2貼着面を備える第2固定体と、を備える固定具を、前記第1被貼着面と前記第2被貼着面の間に配置し、前記第1被貼着面に前記第1貼着面を貼着するとともに前記第2被貼着面に前記第2貼着面を貼着する固定具の設置方法であって、前記第1固定体と前記第2固定体とは、前記第1貼着面と前記第2貼着面とを反対側に向けた状態で、雌ねじ部と雄ねじ部とからなる螺合機構により接離方向へ相対移動可能に連結されており、前記第1固定体及び前記第2固定体のうちの少なくとも1つの固定体の貼着面に当該貼着面の貼着力を減少させる揮発性の剥離剤を塗布して剥離剤付き貼着面とし、前記螺合機構の動作に伴って前記雄ねじ部を回動軸として貼着面を回動させながら前記剥離剤付き貼着面を対面する被貼着面に接近するように移動可能であり、前記剥離剤付き貼着面の前記剥離剤の揮発が完了する前に、当該剥離剤付き貼着面を備える固定体の前記剥離剤付き貼着面を対面する被貼着面に接触させ、前記剥離剤付き貼着面の前記剥離剤の揮発が完了し、かつ前記剥離剤付き貼着面の貼着力が回復して、前記剥離剤の塗布されていた貼着面が被貼着面に貼着されるまで、被貼着面への接触を維持することを要旨とする。
【0012】
固定具の設置方法について、前記第1固定体と前記第2固定体とは、前記第1貼着面と前記第2貼着面が離間するように相対移動可能に連結されており、前記第1被貼着面に対する前記第1貼着面の押し付けと、前記第2被貼着面に対する前記第2貼着面の押し付けとを行うために前記第1固定体と前記第2固定体とを離間方向へ相対移動させてもよい。
【0013】
固定具の設置方法について、前記剥離剤付き貼着面とされた貼着面を、当該貼着面が貼着される前記被貼着面に接触させた状態で固定具を移動させて当該貼着面の貼着位置に移動させてもよい。
【0014】
固定具の設置方法について、前記固定体を棒状の遠隔操作体で、前記被貼着面の貼着位置まで送り込んでもよい。
固定具の設置方法について、前記第1貼着面を備える第1固定体と、前記第2貼着面を備える第2固定体と、を備え、前記第2貼着面のみを、前記剥離剤付き貼着面とし、前記剥離剤付き貼着面の前記剥離剤の揮発が完了する前に、前記第2被貼着面への前記第2貼着面の貼着位置に前記第2固定体を配置し、当該第2貼着面を前記第2被貼着面に接触させ、前記第2固定体が備えるガイド部により、当該第2固定体に対し接離する方向へ案内された前記第1固定体を、前記第1被貼着面への前記第1貼着面の貼着位置に移動させて前記第1貼着面を前記第1被貼着面に貼着した後、前記第1固定体と前記第2固定体とを連結してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、固定具を容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1の実施形態の固定具を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態の固定具を示す断面図である。
図3図3は、第1の実施形態の固定具を示す斜視図である。
図4図4は、第2固定体の第2貼着面を下面に沿わせた状態の図である。
図5図5は、第2固定体の第1貼着面を床面に沿わせた状態の図である。
図6図6は、第1固定体と第2固定体を離間方向へ相対移動させた図である。
図7図7は、固定具を設置した状態を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態の固定具を示す斜視図である。
図9図9は、固定具の位置を調整した状態の図である。
図10図10は、第3の実施形態の固定具を示す図である。
図11図11は、固定具を示す分解斜視図である。
図12図12は、第4の実施形態の固定具を示す斜視図である。
図13図13は、固定具の設置方法を示す斜視図である。
図14図14は、第5の実施形態の固定具を示す斜視図である。
図15図15は、第5の実施形態の固定具を示す図である。
図16図16は、第5の実施形態の固定具を示す斜視図である。
図17図17は、マイナスドライバに固定具を仮保持した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、固定具の設置方法を具体化した第1の実施形態を図1図7にしたがって説明する。
【0018】
図1に示すように、固定具10は、固定対象物90を床面Fに固定する。固定対象物90としては、印刷装置、複合機、家具、テレビ等が挙げられる。
固定具10は、固定対象物90の下面90aと、床面Fとに貼着されることで、固定対象物90を床面Fに固定する。床面Fは、固定具10が貼着される第1被貼着面である。固定対象物90の下面90aは、固定具10が貼着される第2被貼着面である。
【0019】
<固定具>
固定具10は、2つの固定体11と、2つの固定体11を相対移動可能に連結する連結部27と、を備える。
【0020】
<固定体>
図1図2、及び図3に示すように、2つの固定体11の各々は、円板状である。2つの固定体11は、共通の構成を備えるため、共通の構成においては、片方の固定体11だけ説明する。また、2つの固定体11において、共通の構成については、同じ部材番号を付す。
【0021】
固定体11は、円板状のマット貼着部12と、円板状の粘着マット13と、を備える。マット貼着部12は、金属板製である。マット貼着部12の中央部には、貫通孔14が形成されている。マット貼着部12は、板厚方向に互いに反対面となるマット貼着面12aと、マット非貼着面12bとを備える。マット貼着面12aには、粘着マット13が貼着されている。
【0022】
粘着マット13は、粘着性を備えるゲル状の超軟質ウレタンにより形成されているとともに、板厚方向に圧縮変形可能である。粘着マット13は環状である。粘着マット13の中央部には、円形状の孔131が形成されている。孔131は、粘着マット13を板厚方向に貫通する。孔131の直径は、貫通孔14の孔径より大きい。
【0023】
粘着マット13は、板厚方向に互いに反対面となる第1面13aと、第2面13bとを備える。粘着マット13の第1面13aは、マット貼着部12のマット貼着面12aに貼着されている。一方の固定体11の粘着マット13の第2面13bは、固定対象物90の下面90aに貼着されるとともに、他方の固定体11における粘着マット13の第2面13bは、床面Fに貼着される。
【0024】
粘着マット13は、当該粘着マット13の孔131が貫通孔14を囲むとともに、孔131の中心と貫通孔14の中心とが一致するようにマット貼着部12に貼着されている。孔131は、貫通孔14と同心円である。粘着マット13の内周面13cは、貫通孔14の周縁から離れて貫通孔14を囲んでいる。
【0025】
2つの固定体11のうち、床面Fに貼着される一方の固定体11を第1固定体11Aとするとともに、固定対象物90の下面90aに貼着される他方の固定体11を第2固定体11Bとする。第1固定体11Aの粘着マット13における第2面13bは、第1貼着面13Aである。第2固定体11Bの粘着マット13における第2面13bは、第2貼着面13Bである。したがって、固定具10は、第1貼着面13Aを備える第1固定体11Aと、第2貼着面13Bを備える第2固定体11Bと、を備える。
【0026】
貫通孔14には、ボルト状部材15が挿通されている。ボルト状部材15は、角柱状の頭部15aと、頭部15aから突出する雄ねじ部15bと、を有する。雄ねじ部15bは、貫通孔14に挿通されている。雄ねじ部15bには、固定ナット16が螺合されている。ボルト状部材15は、固定ナット16によってマット貼着部12に締結されている。したがって、各固定体11は、雄ねじ部15bを一体に備えている。
【0027】
以下、第1固定体11Aに固定されたボルト状部材15を第1ボルト状部材15Aとするとともに、第2固定体11Bに固定されたボルト状部材15を第2ボルト状部材15Bとする。また、第1ボルト状部材15Aの雄ねじ部15bに螺合された固定ナット16を第1固定ナット16Aとするとともに、第2ボルト状部材15Bの雄ねじ部15bに螺合された固定ナット16を第2固定ナット16Bとする。
【0028】
<連結部>
連結部27は、第1ボルト状部材15Aの雄ねじ部15bと、第2ボルト状部材15Bの雄ねじ部15bと、雌ねじ部20と、を備える螺合機構Rである。雌ねじ部20は、長ナットである。雌ねじ部20は、一対の雄ねじ部15bの先端面を向い合せた状態で、2つの雄ねじ部15bを連結している。2つの雄ねじ部15bは互いに逆ねじの関係にある。雌ねじ部20の軸線方向の第1端側には、第1ボルト状部材15Aの雄ねじ部15bが螺合されるとともに、雌ねじ部20の軸線方向の第2端側には、第2ボルト状部材15Bの雄ねじ部15bが螺合されている。2つの固定体11は、雌ねじ部20への各雄ねじ部15bの螺合によって一体に連結されている。この雌ねじ部20と雄ねじ部15bとからなる螺合機構Rによって、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを備える固定具10が形成されている。
【0029】
後述するが、第1固定体11Aの第1貼着面13A及び第2固定体11Bの第2貼着面13Bの各々には、剥離剤19が塗布される。したがって、第1固定体11Aの第1貼着面13A及び第2固定体11Bの第2貼着面13Bの各々は、剥離剤19の塗布されることで剥離剤付き貼着面となる。
【0030】
剥離剤19は、第1貼着面13Aの全面、及び第2貼着面13Bの全面に塗布されているが一部に塗布されていてもよい。剥離剤19は、揮発性を有する。剥離剤19は、本実施形態ではエタノール又は水である。なお、剥離剤19は、揮発性を有し、かつ、揮発が完了するまでは貼着力を減少させるものであれば、粘着マット13の材質に応じて適宜変更すればよい。剥離剤19は、第1貼着面13A及び第2貼着面13Bの各々への塗布直後は、第1貼着面13A及び第2貼着面13B各々の貼着力を減少させる。一方、剥離剤19は、第1貼着面13A及び第2貼着面13B各々への塗布時点から経過した時間が長くなるほど揮発が進むため、剥離剤19による貼着力の減少機能が低下する。その結果として、剥離剤19は、第1貼着面13A及び第2貼着面13Bの各々への塗布時点から経過した時間が長くなるほど、第1貼着面13A及び第2貼着面13Bの各々の貼着力を回復させる。そして、剥離剤19の揮発が完了すると、第1貼着面13A及び第2貼着面13Bの各々から剥離剤19が存在しなくなるとともに、貼着力が、剥離剤19の塗布前に回復する。
【0031】
<固定具の詳細>
固定具10において、第1固定体11Aにおけるマット非貼着面12bと、第2固定体11Bにおけるマット非貼着面12bとは対向している。固定具10において、第1固定体11Aの第1貼着面13Aと、第2固定体11Bの第2貼着面13Bとは反対側を向いている。第1貼着面13Aは、固定具10の一端面であるとともに、第2貼着面13Bは、固定具10の他端面である。
【0032】
雌ねじ部20に対する各雄ねじ部15bの螺進により、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを接近方向へ相対移動させることができる。第1固定体11Aと第2固定体11Bとの接近方向への相対移動により、第1貼着面13Aと第2貼着面13Bは、接近方向へ相対移動する。また、雌ねじ部20に対する各雄ねじ部15bの螺退により、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを離間方向へ相対移動させることができる。第1固定体11Aと第2固定体11Bの離間方向への相対移動により、第1貼着面13Aと第2貼着面13Bは、離間方向へ相対移動する。
【0033】
第1固定体11Aと第2固定体11Bが離間方向へ相対移動する場合において、第1固定体11A及び第2固定体11Bが移動する方向を前進方向とする。第1固定体11Aと第2固定体11Bが接近方向へ相対移動する場合において、第1固定体11A及び第2固定体11Bが移動する方向は、前進方向と反対方向である。
【0034】
上記のように、第1固定体11Aと第2固定体11Bは、第1貼着面13Aと第2貼着面13Bを反対側に向けた状態で、当該2つの固定体11の接離方向へ相対移動可能に螺合機構Rによって連結されている。また、第1固定体11Aと第2固定体11Bは、離間方向への相対移動に伴ってそれぞれの貼着面13A,13Bを離間方向へ相対移動可能である。
【0035】
<固定具の設置方法>
次に、固定対象物90の下面90aと、床面Fとに固定具10を貼着して、固定具10を設置する方法を説明する。
【0036】
先ず、作業者は、雌ねじ部20に向けて第1固定体11A及び第2固定体11Bの各々を螺進させることにより、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを最も接近させる。
次に、作業者は、第1固定体11Aの第1貼着面13Aの全面、及び第2固定体11Bの第2貼着面13Bの全面に剥離剤19を塗布する。これにより、第1貼着面13A及び第2貼着面13Bの各々は、剥離剤付き貼着面となる。次に、作業者は、固定具10を固定対象物90の下面90aと床面Fとの間に挿入する。このとき、第1固定体11Aの第1貼着面13Aは、床面Fに対面するとともに、第2固定体11Bの第2貼着面13Bは、下面90aに対面する。
【0037】
次に、図4に示すように、作業者は、固定具10を、当該固定具10の設置位置へ移動させる。このとき、作業者は、剥離剤付き貼着面とされた第2貼着面13Bを、当該第2貼着面13Bが貼着される下面90aに接触させた状態で固定具10を移動させる。このとき、剥離剤19によって、第2貼着面13Bが下面90aに貼着することが抑制される。又は、図5に示すように、剥離剤付き貼着面とされた第1貼着面13Aを、当該第1貼着面13Aが貼着される床面Fに接触させた状態で固定具10を移動させてもよい。このとき、剥離剤19によって、第1貼着面13Aが床面Fに貼着することが抑制される。このため、作業者は、固定具10の貼着位置に向けて固定具10をスムーズに移動させることができる。
【0038】
作業者によって固定具10の設置位置まで固定具10が移動されると、作業者は、剥離剤19が揮発する前に、第1固定体11Aの第1貼着面13Aを床面Fに配置して仮置きする。仮置きする前、作業者は、固定具10が所望する位置に配置されるように床面F上で固定具10を移動させる。
【0039】
次に、作業者は、第1固定体11A及び第2固定体11Bが回転しないように、第2固定体11Bを手で支えながら雌ねじ部20を回転させる。
図6に示すように、雌ねじ部20の回転に対し、第1固定体11Aの雄ねじ部15bが、相対的に雌ねじ部20から螺退する。これにより、第1固定体11Aと第2固定体11Bとが離間方向へ相対移動するとともに、第2固定体11Bは固定対象物90に接近していく。
【0040】
続けて、作業者は、第1固定体11Aが回転しないように、第1固定体11Aを手で支えながら雌ねじ部20を回転する。すると、第2固定体11Bは、雌ねじ部20と一体に回転する。つまり、第2固定体11Bは、螺合機構Rの動作に伴って第2ボルト状部材15Bの雄ねじ部15bを回動軸として、第2貼着面13Bを回動させながら下面90aに接近するように移動可能である。これにより、第1固定体11Aと第2固定体11Bとが離間方向へ相対移動するとともに、第2固定体11Bは固定対象物90に接近していく。したがって、床面Fへの第1貼着面13Aの貼着位置に第1固定体11Aを配置した後に、第2貼着面13Bが下面90aに接近するように、第1固定体11Aに対して第2固定体11Bを相対移動させる。すると、図7に示すように、第2貼着面13Bは下面90aに接触する。
【0041】
その結果として、第1固定体11Aの第1貼着面13Aが床面Fに接触するとともに、第2固定体11Bの第2貼着面13Bが固定対象物90の下面90aに接触する。したがって、剥離剤付き貼着面、つまり第1貼着面13A及び第2貼着面13Bに塗布した剥離剤19の揮発が完了する前に、作業者は、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを離間方向へ相対移動させて、第1貼着面13Aの床面Fへの接触と、第2貼着面13Bの下面90aへの接触とを行う。
【0042】
その後、作業者は、雌ねじ部20をさらに回転させる。すると、第2固定体11Bは、固定対象物90に向かってさらに移動する。その結果、第1固定体11Aと第2固定体11Bとが、さらに離間方向へ相対移動するため、第1貼着面13Aは床面Fに押し付けられるとともに、第2貼着面13Bは下面90aに押し付けられる。したがって、作業者は、床面Fに対する第1貼着面13Aの押し付けと、下面90aに対する第2貼着面13Bの押し付けとを行うために、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを離間方向へ相対移動させる。これらにより、剥離剤19の揮発が完了する前に、床面Fに対する第1貼着面13Aの貼着位置であり、かつ下面90aに対する第2貼着面13Bの貼着位置が位置するように、固定具10が配置される。
【0043】
そして、螺合機構Rによって第1固定体11Aと第2固定体11Bとを接離方向に突っ張らせることにより、固定具10そのものの設置によって、床面Fに第1貼着面13Aを押し付けつつ、下面90aに第2貼着面13Bを押し付けた、固定具10の配置状態が維持される。固定具10の配置状態の維持は、剥離剤19の揮発が完了し、かつ第1貼着面13A及び第2貼着面13Bの各々の貼着力が回復して、第1貼着面13Aが床面Fに貼着されるとともに第2貼着面13Bが下面90aに貼着されるまで行われる。また、固定具10の配置状態の維持は、床面Fに対する第1固定体11Aの接触、ひいては押し付け、及び下面90aに対する第2固定体11Bの接触、ひいては押し付けを維持することで行われる。
【0044】
そして、剥離剤19の揮発が完了すると、第1固定体11Aの第1貼着面13Aは床面Fに貼着されるとともに、第2固定体11Bの第2貼着面13Bは下面90aに貼着される。その結果、固定対象物90は、固定具10によって床面Fに固定される。
【0045】
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)固定具10の設置の際、第1貼着面13A及び第2貼着面13Bの各々に剥離剤19を塗布する。そして、剥離剤19の揮発が完了する前に、第1貼着面13A及び第2貼着面13Bが所望する貼着位置に位置するように固定具10を配置する。固定具10を移動させる途中、剥離剤19が揮発する前は、第1貼着面13Aや第2貼着面13Bが床面Fや下面90aに貼着してしまうことを抑制できる。よって、固定対象物90の下面90aと床面Fとの間に固定具10を挿入して設置する際、慎重な作業を必要とせずに固定具10を設置できる。
【0046】
(1-2)固定具10の設置方法によれば、剥離剤19の揮発が完了する前は、第1貼着面13Aは床面Fに貼着しない。このため、第1固定体11Aを床面Fに仮置きできる。これにより、作業者は、床面Fにおける固定具10の位置を所望する位置に容易に配置できる。
【0047】
(1-3)第1固定体11Aを床面Fに仮置きした後、作業者は、第1固定体11Aと第2固定体11Bとを離間方向へ相対移動させる。これにより、固定具10は、床面Fと固定対象物90の下面90aとの間で突っ張らせることができる。すると、第1貼着面13Aは床面Fに押し付けられるとともに、第2貼着面13Bは下面90aに押し付けられる。この押し付けは、剥離剤19が揮発して、各貼着面13A,13Bの貼着力が回復するまで行う。これにより、第1貼着面13Aを床面Fに好適に貼着できるとともに、第2貼着面13Bを下面90aに好適に貼着できる。
【0048】
(1-4)固定具10は、螺合機構Rによって第1固定体11Aと第2固定体11Bとを離間方向へ相対移動させることができる。そして、第1固定体11Aと第2固定体11Bは、螺合機構Rにより機械的に離間方向へ突っ張らせることができる。これにより、第1固定体11Aの第1貼着面13Aを床面Fに強く押し付けつつ、第2固定体11Bの第2貼着面13Bを固定対象物90の下面90aに強く押し付けることができるとともに、その押し付けた状態を維持できる。
【0049】
(1-5)剥離剤19は、揮発が完了するまでは、第1貼着面13A及び第2貼着面13B各々の貼着力を減少させる。そして、固定具10の設置時は、剥離剤19の塗布された第1固定体11Aを床面Fに沿わせながら固定具10を移動できる。このため、固定具10を移動させる際、固定具10を倒して移動する等の作業が不要になるため、固定具10の設置作業が容易となる。
【0050】
(1-6)第2固定体11Bの第2貼着面13Bを下面90aに接触させた後、当該第2固定体11Bは、雌ねじ部20に対する雄ねじ部15bの螺退によって下面90aに接近していく。そして、第2固定体11Bの第2貼着面13Bが下面90aに接触した後も、第2固定体11Bは回転する。このとき、揮発する前の剥離剤19によって、下面90aに対する滑りが発生する。このため、第2固定体11Bの回転が許容されるため、第2固定体11Bの第2貼着面13Bを下面90aに押し付けながらの回転が可能になる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、固定具の設置方法を具体化した第2の実施形態を図8図9にしたがって説明する。
【0052】
<固定具の詳細>
図8及び図9に示すように、固定具30は、支持脚101を備える固定対象物100を床面Fに固定するために、床面Fに固定される。支持脚101は、床面Fに載置される脚部103と、当該脚部103から上方へ延出する軸部102と、を有する。脚部103は二股状に分岐している。軸部102は、脚部103から上方に突出する棒状である。
【0053】
固定具30は、固定体31と、紐状支持部材34と、を備える。固定体31は、四角板状の固定体本体32と、粘着マット33と、を備える。固定体本体32は、樹脂製又は金属製の平板状である。固定体本体32は、板厚方向の一面にマット貼着面32aを備える。マット貼着面32aは、四角形状である。
【0054】
粘着マット33は四角シート状である。粘着マット33は、板厚方向に互いに反対面となる第1面33aと、第2面33bとを備える。粘着マット33の第1面33aは、固定体本体32のマット貼着面32aに貼着されている。固定具10を床面Fに設置する際、第2面33bは、床面Fに貼着される。したがって、第2面33bは固定具30の貼着面30aであるとともに、床面Fは、被貼着面である。
【0055】
紐状支持部材34は、固定体本体32に無端状に装着されている。固定具30は、紐状支持部材34によって固定対象物100が固定体11から離間しないように支持する。紐状支持部材34は可撓性を有する。紐状支持部材34は、連続繊維の一種であるアラミド繊維を束ねて形成された紐である。なお、紐状支持部材34の材質は適宜変更可能である。
【0056】
<固定具の設置方法>
固定具30の設置の際、作業者は、粘着マット33の第2面33bに剥離剤19を塗布して剥離剤付き貼着面とする。次に、作業者は、固定具30を支持脚101の近傍に配置する。続けて、作業者は、紐状支持部材34を支持脚101の軸部102に巻き掛けつつ、紐状支持部材34を固定体31に組み付ける。図示しないが、紐状支持部材34は、固定体31に対して抜け止めされた状態で組付けられる。
【0057】
作業者は、粘着マット33の第2面33bに塗布した剥離剤19の揮発が完了する前に、固定体31を移動させて、床面Fにおける固定具30の貼着位置に貼着面30aが位置するように固定具30を配置する。固定具30の貼着位置は、紐状支持部材34を突っ張った状態にできる位置や、固定具30を目立たせない位置等である。その後、作業者によって固定体31が所望する位置に配置されると、作業者は、図示しない重しを固定体本体32に載せて固定体31を床面Fに向けて押し付けることにより、床面Fに向けて貼着面30aを押し付ける。
【0058】
剥離剤19の揮発が完了し、かつ貼着面30aの貼着力が回復して、当該貼着面30aが床面Fに貼着されるまで、床面Fに向けて貼着面30aを押し付けた状態が維持される。その後、剥離剤19の揮発が完了し、かつ貼着面30aの貼着力が回復すると、固定具30は、床面Fに固定される。
【0059】
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)、(1-2)及び(1-5)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(2-1)固定具30は、1つの貼着面30aを備えるが、このような固定具30であっても、固定具30を移動させる途中、剥離剤19が揮発する前は、貼着面30aが床面Fに貼着してしまうことを抑制できる。よって、床面Fに固定具30を設置する際、慎重な作業を必要とせずに固定具30を設置できる。
【0060】
(第3の実施形態)
次に、固定具の設置方法を具体化した第3の実施形態を図10図11にしたがって説明する。
【0061】
<固定具の詳細>
図10及び図11に示す固定具110は、第1の実施形態と同様に2つの固定体11と螺合機構Rとを備える。固定具110は、固定体11のうちの一方が、さらに、第1固定体111と第2固定体112とを備える。
【0062】
第1固定体111は、平板状の基部121と、基部121から延出する支持部122と、を備える。基部121は、上面にマット貼着面121aを備える。マット貼着面121aには、粘着マット13が貼着されている。支持部122は、粘着マット13を挟んで対向するように基部121に設けられている。第1固定体111は、上面に粘着マット13からなる第1貼着面111aを備える。第1貼着面111aは、固定対象物90の下面90aに貼着される。したがって、下面90aは、第1貼着面111aの貼着される第1被貼着面である。
【0063】
支持部122は、基部121の下方に延設し、かつ基部121に対向するようにL状に形成されている。基部121と支持部122との間に、第2固定体112を挿入可能になっている。
【0064】
第2固定体112は、一対の挿入板部123と、一対の挿入板部123から立設した立設板部124と、を備える。一対の挿入板部123の各々は、一対の支持部122に挿入可能である。立設板部124は、一対の挿入板部123を連結するとともに、一対の挿入板部123に対し直交する。立設板部124の板厚方向の両面のうち、挿入板部123の突出する側の面にマット貼着面124aを備える。このマット貼着面124aには、粘着マット13が貼着されている。粘着マット13の両面のうち、挿入板部123の突出する側の面は、第2貼着面112aである。第2貼着面112aは、固定対象物90の側面90bに貼着される。側面90bは、固定対象物90における下面90aに直交する面である。また、側面90bは、第2貼着面112aの貼着される第2被貼着面である。
【0065】
支持部122に対して挿入板部123を挿入することにより、各挿入板部123は、支持部122に下方から支持されるとともに、第1固定体111と第2固定体112が組付けられる。また、支持部122に対して挿入板部123を挿脱することにより、第2固定体112は、第1貼着面111aに沿う一方向へ第1固定体111に対し相対移動する。したがって、第1固定体111と第2固定体112とは、第1貼着面111aと第2貼着面112aとの相対位置を変更可能に相対移動可能に連結されている。
【0066】
固定具110において、第1固定体111の第1貼着面111aと、第2固定体112の第2貼着面112aは直交する。上記固定具110は、第1貼着面111aを備える第1固定体111と、第2貼着面112aを備える第2固定体112と、を備える。
【0067】
<固定具の設置方法>
固定具110において、作業者は、第1貼着面111a及び第2貼着面112aの両方に剥離剤19を塗布して剥離剤付き貼着面とする。次に、作業者は、剥離剤19の揮発が完了する前に、第1貼着面111a及び第2貼着面112aを貼着位置に配置する。例えば、第1貼着面111aを下面90aに接触させるとともに、第2貼着面112aを側面90bに接触させる。そして、側面90bからの第1貼着面111aまでの距離を調整する。この調整は、第1固定体111及び第2固定体112を接離方向へ相対移動させて行う。また、側面90bに直交する別の側面から第1貼着面111aまでの距離を調整する。この調整は、固定具10全体を移動させて行う。このような固定具110の位置調整の際、剥離剤19によって、第1貼着面111aが下面90aに貼着したり、第2貼着面112aが側面90bに貼着したりすることが抑制される。
【0068】
そして、作業者は、螺合機構Rを操作して、床面Fと下面90aとの間で固定具10を突っ張らせて、第1固定体111の第1貼着面111aを下面90aに接触した状態を維持する。また、支持部122と挿入板部123を締結する図示しないビスなどの相対移動防止手段を用いて、第1固定体111と第2固定体112の相対移動を規制することで、第2固定体112の第2貼着面112aを側面90bに接触した状態を維持する。
【0069】
つまり、剥離剤付き貼着面の剥離剤19の揮発が完了する前に、第1貼着面111aの下面90aへの接触と、第2貼着面112aの側面90bへの接触とを行う。作業者は、剥離剤付き貼着面の剥離剤19の揮発が完了し、かつ剥離剤付き貼着面の貼着力が回復して、剥離剤19の塗布されていた貼着面が被貼着面に貼着されるまで、下面90aに対する第1貼着面111aの接触、及び側面90bに対する第2貼着面112aの接触を維持する。
【0070】
従って、第3の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)、(1-2)(1-5)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(3-1)固定具110において、第1固定体111と第2固定体112は、第1貼着面111aに沿う方向へ相対移動可能である。このような固定具110であっても、固定具110の位置調整の際、剥離剤19によって、第1貼着面111aが下面90aに貼着したり、第2貼着面112aが側面90bに貼着したりすることが抑制される。
【0071】
(第4の実施形態)
次に、固定具の設置方法を具体化した第4の実施形態を図12図13にしたがって説明する。
【0072】
<固定具の詳細>
固定具50は、床面Fに設置体60を固定する。床面Fは、固定具50の貼着される被貼着面である。設置体60は、支持脚61を備える。支持脚61は、床面Fに載置される図示しない台座から上方へ延出する。
【0073】
図12及び図13に示すように、固定具50は、2つの固定体51を備える。
2つの固定体51の各々は、四角板状の固定板部52と、粘着マット53と、四角板状の立設部54と、ガイド部56と、溝形成部57A,57Bと、を備えている。固定板部52は、金属板製である。固定板部52は、板厚方向の一面にマット貼着面52aを備える。マット貼着面52aには、粘着マット53が貼着されている。粘着マット53は、第1の実施形態に記載の粘着マット13と同じ材質である。粘着マット53において、固定板部52のマット貼着面52aへの貼着面と反対面は、床面Fへの貼着面53aである。
【0074】
立設部54は、固定板部52から上方に向けて斜めに延出する。一対のガイド部56は、立設部54から水平に延出する。一対のガイド部56の間には、設置体60の支持脚61が挿入可能である。溝形成部57A,57Bは、一対のガイド部56の各々から下方へ延出する。
【0075】
2つの固定体51のうちの一方を第1固定体51Aとするとともに、第1固定体51Aの粘着マット53における貼着面53aを第1貼着面53Aとする。また、2つの固定体51のうちの他方を第2固定体51Bとするとともに、第2固定体51Bの粘着マット53における貼着面53aを第2貼着面53Bとする。第1固定体51Aが備える溝形成部を第1溝形成部57Aとするとともに、第2固定体51Bが備える溝形成部を第2溝形成部57Bとする。
【0076】
第1固定体51Aと第2固定体51Bとは、2つの第1溝形成部57Aの内面に各第2溝形成部57Bの外面が当接するようにすることで一体に組付けられている。第1固定体51Aと第2固定体51Bとは、上下方向へ相対移動可能に組み付けられる。
【0077】
<固定具の設置方法>
固定具50において、作業者は、第1固定体51Aと第2固定体51Bを分離する。作業者は、第2固定体51Bの第2貼着面53Bのみに剥離剤19を塗布して剥離剤付き貼着面とする。次に、作業者は、剥離剤19の揮発が完了する前に、第2固定体51Bを、当該第2固定体51Bの貼着位置に向けて移動させる。そして、第2固定体51Bを床面Fに仮置きして、床面Fに接触させる。その後、作業者は、床面Fでの第2固定体51Bの位置を調整する。そして、作業者は、第2固定体51Bを所望する貼着位置に配置する。このとき、支持脚61を一対のガイド部56の間に挿入する。なお、床面Fにおける第2固定体51Bの所望する貼着位置は、第2被貼着面となる。
【0078】
次に、作業者は、第2固定体51Bが動かないように床面Fに押さえ付けながら、第1固定体51Aを支持脚61に当接させつつ、第2固定体51Bの上方から降下させる。このとき、第1固定体51Aの第1溝形成部57Aを、第2固定体51Bの第2溝形成部57Bの外面に沿わせながら降下させて、第1固定体51Aと第2固定体51Bの相対位置を定める。その後、作業者は、第2固定体51Bの第2溝形成部57Bにより案内された第1固定体51Aを、当該第1固定体51Aの第1貼着面53Aの貼着位置に移動させる。なお、床面Fにおいて、第1固定体51Aの貼着位置は、第1被貼着面となる。そして、作業者は、第1固定体51Aの第1貼着面53Aを床面Fに貼着する。
【0079】
その後、作業者は、第1固定体51Aを床面Fに貼着しつつ、第1固定体51Aと第2固定体51Bとを組付け、第2固定体51Bを床面Fに押し付けた状態を維持する。そして、第2貼着面53Bにおける剥離剤19の揮発が完了すると、第2固定体51Bの第2貼着面53Bは床面Fに貼着される。これにより、固定具50が床面Fに貼着される。また、第1固定体51Aと第2固定体51Bによって設置体60の支持脚61が挟持される。その結果、固定具50によって設置体60が床面Fに設置される。
【0080】
従って、第4の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(4-1)固定具50は、第1固定体51Aと第2固定体51Bとに分離される。そして、第2固定体51Bにおいては、第2貼着面53Bに塗布した剥離剤19の揮発の完了する前は、第2固定体51Bを仮置きしつつ、その第2固定体51Bの貼着位置を調整できる。このため、固定具50を所望する位置に貼着できる。
【0081】
(4-2)第2固定体51Bを床面Fに仮置きした状態において、剥離剤19の揮発が完了する前に、第2固定体51Bが、第1固定体51Aを配置位置に案内させることができる。これにより、第1固定体51Aと第2固定体51Bとの組付け前に、第2固定体51Bの位置調整が必要となった場合でも、第2固定体51Bの位置調整をすることができる。したがって、固定具50をより好適な位置に設置できる。
【0082】
なお、作業者は、貼着した第1固定体51Aのガイド部56で第2固定体51Bを床面Fへ押し付けて床面Fへの第2貼着面53Bへの接触を維持し、剥離剤19の揮発が完了した後に、第1固定体51Aと第2固定体51Bとを組付けてもよい。この場合、第2固定体51Bは、床面Fに貼着されているため、第1固定体51Aを第2固定体51Bに向けて移動させるとき、第2固定体51Bが移動しないため、その移動作業が行い易い。
【0083】
(第5の実施形態)
次に、固定具の設置方法を具体化した第5の実施形態を図14図17にしたがって説明する。
【0084】
<固定具の詳細>
図14図17に示すように、固定具70は、2つの固定体71と、2つの固定体71を相対移動可能に連結する螺合機構Rと、を備える。固定具70は、図示しない床面に固定された2つの機器80の間の隙間800に配置されるとともに、各機器80の側面に貼着される。そして、固定具70は、2つの機器80を相互に固定する。2つの機器80の各々は、互いに対面する側面を備える。対面する側面のうちの一方は、固定具70の貼着される第1被貼着面81であるとともに、他方は、固定具70の貼着される第2被貼着面82である。
【0085】
2つの固定体71の各々は円板状である。2つの固定体71は、共通の構成を備えるため、共通の構成においては、片方の固定体71だけ説明する。また、2つの固定体71において、共通の構成については、同じ部材番号を付す。
【0086】
固定体71は、円板状のマット貼着部72と、円板状の粘着マット73と、を備える。マット貼着部72は、金属板製である。マット貼着部72の中央部には、貫通孔721が形成されている。マット貼着部72は、板厚方向に互いに反対面となるマット貼着面72aと、マット非貼着面72bとを備える。マット貼着面72aには、粘着マット73が貼着されている。粘着マット73は、第1の実施形態の粘着マット13と同じものが使用される。
【0087】
粘着マット73の中央部には、円形状の孔731が形成されている。粘着マット73の外径は、マット貼着部72の外径より小さい。粘着マット73の外周面は、マット貼着部72の外周縁よりも中央部寄りに位置している。このため、マット貼着部72の外周部は、粘着マット73の外周面よりも外方へ延出している。
【0088】
粘着マット73は、板厚方向に互いに反対面となる第1面73aと、第2面73bとを備える。粘着マット73の第1面73aは、マット貼着部72のマット貼着面72aに貼着されている。一方の固定体71における粘着マット73の第2面73bは、第1被貼着面81に貼着される第1貼着面71aであるとともに、他方の固定体71における粘着マット73の第2面73bは、第2被貼着面82に貼着される第2貼着面71bである。
【0089】
2つの固定体71のうち、第1被貼着面81に貼着される一方の固定体71を第1固定体71Aとするとともに、第2被貼着面82に貼着される他方の固定体71を第2固定体71Bとする。また、第1固定体71Aの粘着マット73を第1粘着マット73Aとするとともに、第2固定体71Bの粘着マット73を第2粘着マット73Bとする。
【0090】
螺合機構Rは、雌ねじ部74と、雄ねじ部75と、を備える。雌ねじ部74は六角ナットによって形成されている。雌ねじ部74は、第2固定体71Bのマット非貼着面72bに溶接によって固定されている。そして、雌ねじ部74は、マット貼着部72の貫通孔721を囲むように第2固定体71Bに一体化されている。雄ねじ部75は、雌ねじ部74に螺合されている。雄ねじ部75は雌ねじ部74に対し、螺進又は螺退可能である。
【0091】
雄ねじ部75の両端部のうちの第1端部75aは、第1固定体71Aの貫通孔721に一部を挿通させた状態でマット貼着部72に溶接されている。これにより、雄ねじ部75は、第1固定体71Aに一体化されている。
【0092】
第2固定体71Bに一体の雌ねじ部74と、雄ねじ部75に一体の第1固定体71Aとは、雌ねじ部74と雄ねじ部75との螺合によって一体に連結されている。この雌ねじ部74と雄ねじ部75の連結によって、第1固定体71Aと第2固定体71Bとを備える固定具70が形成されている。
【0093】
固定具70において、第1固定体71Aのマット非貼着面72bと、第2固定体71Bのマット非貼着面72bとは対面している。固定具70において、第1固定体71Aと第2固定体71Bとは、それぞれの第2面73bを反対側に向けた状態で、雌ねじ部74と雄ねじ部75とからなる螺合機構Rによって連結されている。
【0094】
雌ねじ部74に対する雄ねじ部75の螺進により、第1固定体71Aと第2固定体71Bとを接近方向へ相対移動させることができる。第1固定体71Aと第2固定体71Bとを接近方向へ相対移動させることにより、第1貼着面71aと第2貼着面71bは、相対的に接近移動するとともに、2つのマット非貼着面72bは、相対的に接近移動する。また、雌ねじ部74に対する雄ねじ部75の螺退により、第1固定体71Aと第2固定体71Bとを離間方向へ相対移動させることができるとともに、2つのマット非貼着面72bは、相対的に離間移動する。第1固定体71Aと第2固定体71Bとを離間方向へ相対移動させることにより、第1貼着面71aと第2貼着面71bは、離間方向へ相対移動する。
【0095】
第1固定体71Aと第2固定体71Bは接離方向への相対移動に伴って、雄ねじ部75を軸に回動するとともに、各粘着マット73も各固定体71に付随して回動する。
図15に示すように、雌ねじ部74に第1固定体71Aのマット非貼着面72bが接触すると、それ以上の螺進が不可能になる。このとき、2つのマット非貼着面72b間の距離は最短となるとともに、第1貼着面71aと第2貼着面71bとの間の距離は最短となる。雌ねじ部74に第1固定体71Aのマット非貼着面72bが接触した位置を、固定具70の初期位置とする。
【0096】
固定具70の初期位置では、2つのマット非貼着面72b間の第1距離L1は最短となる。第1距離L1は、2つの固定体71の接離方向への雌ねじ部74の寸法である。第1距離L1、つまり雌ねじ部74の寸法は、マイナスドライバ77の先端部77bにおける幅より僅かに小さい。
【0097】
図17に示すように、2つの固定体71は、マイナスドライバ77の先端部77bを幅方向の両側から挟み込むことができる。具体的には、固定具70は、第1固定体71Aのマット非貼着面72bと、第2固定体71Bのマット非貼着面72bとによって、マイナスドライバ77の先端部77bを幅方向の両側から挟み込むことができる。2つの固定体71によって先端部77bを挟み込んだ位置を固定具70の挟持位置とする。固定具70の挟持位置は、2つの固定体71を初期位置よりも僅かに離間させた位置である。そして、固定具70が挟持位置に位置すると、2つのマット貼着部72によって先端部77bが挟持される。これにより、マイナスドライバ77の先端側には、固定具70が仮保持される。
【0098】
<固定具の設置方法>
次に、第1被貼着面81と第2被貼着面82に固定具70を貼着して、固定具70を設置する方法を説明する。
【0099】
先ず、作業者は、雌ねじ部74に対して雄ねじ部75を螺退させて、第1固定体71Aと第2固定体71Bとを離間方向へ相対移動させる。これにより、対面するマット非貼着面72b間の距離が第1距離L1より大きくなる。つまり、マット非貼着面72b間の距離は、固定具70の挟持位置よりも大きくなる。
【0100】
次に、作業者は、マイナスドライバ77の先端部77bの幅方向を、2つの固定体71の接離方向に一致させる。作業者は、雌ねじ部74に対して雄ねじ部75を螺進させて、第1固定体71Aと第2固定体71Bとを接近方向へ相対移動させる。すると、図17に示すように、第1固定体71Aのマット貼着部72と、第2固定体71Bのマット貼着部72との間に先端部77bが挟持されるとともに、マイナスドライバ77の先端側に固定具70が仮保持される。
【0101】
次に、作業者は、第2固定体71Bの第2貼着面71bの全面に剥離剤19を塗布して、第2貼着面71bの全面を剥離剤19によって覆う。これにより、第2固定体71Bの第2貼着面71bは、剥離剤付き貼着面となる。上記のように、作業者は、対面する第1被貼着面81及び第2被貼着面82の間に差し入れて固定具70を送り込む前に、第2貼着面71bに剥離剤19を塗布する。この剥離剤19の塗布は、固定具70をマイナスドライバ77に仮保持する前でもよい。
【0102】
次に、作業者は、マイナスドライバ77を操作して、マイナスドライバ77の先端側を第1被貼着面81と第2被貼着面82との間に差し入れる。このとき、マイナスドライバ77の延在部77aは、第1被貼着面81と第2被貼着面82との間の隙間800への差し入れ方向に延びる棒状となる。このため、マイナスドライバ77に載置された雌ねじ部74の側面は、2つの固定体71の接離方向に沿って平面状に幅を持って延びるとともに、差し入れ方向にも幅を持って延びる平面状である。また、第1固定体71Aの第1貼着面71aは、第1被貼着面81に対面するとともに、第2固定体71Bの第2貼着面71bは、第2被貼着面82に対面する。
【0103】
そして、作業者は、対面する第1被貼着面81と第2被貼着面82との間に固定具70を差し入れた後、マイナスドライバ77を操作して固定具70を設置位置に向けて送り込む。したがって、マイナスドライバ77は、固定具70が仮保持される棒状の遠隔操作体である。固定具70を移動させる際、第2貼着面71bが第2被貼着面82に接触してしまう場合がある。この場合、剥離剤19は、第2貼着面71bの第2被貼着面82への貼着を抑制する。
【0104】
設置位置に固定具70が配置された状態において、マイナスドライバ77を操作して、第1固定体71Aの第1貼着面71aを第1被貼着面81に押し付ける。次に、作業者は、固定具70を操作して、第1固定体71Aと第2固定体71Bを離間方向へ相対移動させる。
【0105】
すると、第1貼着面71aは第1被貼着面81に押し付けられるとともに、第2貼着面71bは第2被貼着面82に押し付けられる。このように、作業者は、第2貼着面71bにおける剥離剤19の揮発が完了する前に、第1固定体71Aと第2固定体71Bとを離間方向へ相対移動させて、第1貼着面71aの第1被貼着面81への貼着と、第2貼着面71bの第2被貼着面82への接触とを行う。また、言い換えると、作業者は、第1被貼着面81に対する第1貼着面71aの押し付けと、第2被貼着面82に対する第2貼着面71bの押し付けとを行うために、第1固定体71Aと第2固定体71Bとを離間方向へ相対移動させる。
【0106】
作業者は、このような固定具70の配置状態を維持する。固定具70の配置状態の維持は、剥離剤19の揮発が完了し、かつ第2貼着面71bの貼着力が回復して、第2貼着面71bが第2被貼着面82に貼着されるまで行われる。
【0107】
そして、剥離剤19の揮発が完了すると、第1固定体71Aの第1貼着面71aは第1被貼着面81に貼着されるとともに、第2固定体71Bの第2貼着面71bは第2被貼着面82に貼着される。その結果、2つの機器80は、固定具70によって相互に固定される。
【0108】
従って、第5の実施形態によれば、第1の実施形態の(1-1)~(1-5)と同様の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(5-1)固定具70は、挟持位置においてマイナスドライバ77の先端部77bを挟持する。この挟持によって、固定具70は、マイナスドライバ77の先端部77bに仮保持される。そして、固定具70を仮保持したマイナスドライバ77を操作することで、狭くて手が入らない隙間800であっても、マイナスドライバ77を利用して固定具70を隙間800に送り込むことができる。これにより、狭い隙間800の奥にある設置位置にまで固定具70を配置できる。
【0109】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○第2の実施形態の固定具30は、固定対象物100として、例えばソファの脚部の下面に設置されてもよい。この場合、固定具30は、ソファの脚部の下面に固定されるとともに、床面Fに対して粘着マット33によって貼着される。そして、固定具30の貼着面30aに剥離剤19が塗布される。この場合、作業者によって固定体31が所望する位置に配置されると、ソファそのものの重みによって粘着マット33の貼着面30aは、床面Fに向けて押し付けられる。このようにして、粘着マット33を床面Fに押し付けてもよい。
【0110】
この場合、ソファの全ての脚部に固定具30を貼着した後、剥離剤19の揮発が完了する前に、ソファを所望する位置に配置する。また、このような使用の場合、固定具30の紐状支持部材34は省略できる。
【0111】
○第5の実施形態において、固定具70が仮保持される棒状の遠隔操作体は、六角レンチであってもよい。六角レンチは、雌ねじ部74の側面に係合可能な六角レンチである。また、遠隔操作体は、プラスドライバであってもよい。
【0112】
○第1の実施形態において、第1貼着面13A及び第2貼着面13Bのいずれか一方のみに剥離剤19を塗布してもよい。この場合、剥離剤19の塗布していない貼着面を被貼着面に先に貼着することで、固定具10の離間操作の際などに、先に貼着した固定体11を手で支持する必要がなくなる。
【0113】
○第3の実施形態において、第1貼着面111a及び第2貼着面112aのいずれか一方のみに剥離剤19を貼着してもよい。この場合、塗布していない貼着面を被貼着面に先に貼着することで、固定具110の離間操作の際などに、先に貼着した第1固定体111又は第2固定体112を手で支持する必要がなくなる。
【0114】
○第4の実施形態において、第1貼着面53Aにも剥離剤19を塗布して剥離剤付き貼着面としてもよいし、第1貼着面53Aのみに剥離剤19を塗布して剥離剤付き貼着面としてもよい。この場合、第1固定体51Aを床面Fに沿わせながら第2固定体51Bと組付けることができる。
【0115】
○第5の実施形態において、第1貼着面71aにも剥離剤19を塗布して剥離剤付き貼着面としてもよいし、第1貼着面71aのみに剥離剤19を塗布して剥離剤付き貼着面としてもよい。
【0116】
○第5の実施形態において、マイナスドライバ77などの工具を用いずに、固定具70を手で貼着位置に配置してもよい。
○第1の実施形態において、固定具10の設置時、雌ねじ部20を回転させずに、第1固定体11A及び第2固定体11Bを個別に前進させてもよい。このようにした場合、第1固定体11Aの第1貼着面13Aが床面Fに接触した後も、第1固定体11Aは回転する。このとき、揮発する前の剥離剤19によって、床面Fに対する滑りが発生する。このため、第1固定体11Aの回転が許容されるため、第1固定体11Aの第1貼着面13Aを床面Fに押し付けながらの回転が可能になる。
【0117】
また、第2固定体11Bの第2貼着面13Bが下面90aに接触した後も、第2固定体11Bは回転する。このとき、揮発する前の剥離剤19によって、下面90aに対する滑りが発生する。このため、第2固定体11Bの回転が許容されるため、第2固定体11Bの第2貼着面13Bを下面90aに押し付けながらの回転が可能になる。
【0118】
○第5の実施形態では、各固定体71の回動に伴って各粘着マット73が回動したが、例えば、空回り機構を固定具70に設けて、当該空回り機構により、各固定体71が回動しても各粘着マット73は回動することなく接離方向に相対移動可能としてもよい。
【0119】
○第1の実施形態、第2の実施形態、及び第4の実施形態において、粘着マット13,33,53に剥離剤19を塗布して剥離剤付き貼着面としたが、床面Fにおける固定具10,30,50の貼着位置周辺や貼着位置までの移動経路に剥離剤19を塗布してもよい。この場合、剥離剤19は、被貼着面に塗布してもよいし、貼着面及び被貼着面の両方に塗布してもよい。
【0120】
第5の実施形態において、粘着マット73に剥離剤19を塗布して剥離剤付き貼着面としたが、第1被貼着面81及び第2被貼着面82における固定具70の貼着位置周辺や貼着位置までの移動経路に剥離剤19を塗布してもよい。この場合、剥離剤19は、被貼着面に塗布してもよいし、貼着面及び被貼着面の両方に塗布してもよい。
【0121】
○各実施形態において、各被貼着面に対する貼着面の押し付けの維持は、剥離剤19がある程度揮発し、手を離しても貼着状態を維持できるまで、作業者が手で行ってもよい。
【符号の説明】
【0122】
F…被貼着面又は第1被貼着面である床面、R…螺合機構、10、30,50,70,110…固定具、11A,51A,71A,111…第1固定体、11B,51B,71B,112…第2固定体、13A,53A,71a,111a…第1貼着面、13B,53B,71b,112a…第2貼着面、15b…雄ねじ部、19…剥離剤、20…雌ねじ部、30a…貼着面、74…雌ねじ部、75…雄ねじ部、77…遠隔操作体としてのマイナスドライバ、81…第1被貼着面、82…第2被貼着面、90a…第1被貼着面又は第2被貼着面である下面、90b…第2被貼着面である側面。
図1
図2
図3
図4
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図10
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