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特開2024-146530熱伝導性樹脂組成物、電子機器装置及び半導体装置
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  • 特開-熱伝導性樹脂組成物、電子機器装置及び半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146530
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】熱伝導性樹脂組成物、電子機器装置及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241004BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241004BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20241004BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20241004BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08K5/00
C09K5/14 101E
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059496
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加須榮 旭
【テーマコード(参考)】
4J002
5F136
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002BC031
4J002CC031
4J002CD001
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD141
4J002CH071
4J002CM041
4J002DA017
4J002DA027
4J002DA077
4J002DA097
4J002DE077
4J002DE147
4J002DF017
4J002DJ007
4J002DK007
4J002EN136
4J002ET006
4J002EU116
4J002EV296
4J002EW176
4J002FA057
4J002FD017
4J002FD026
4J002FD206
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002GQ05
5F136BC07
5F136FA52
5F136FA61
(57)【要約】
【課題】熱伝導性の高い熱伝導性材料を作製でき、かつ良好な流動性が得られる熱伝導性樹脂組成物並びにその熱伝導性樹脂組成物から作製される電子機器装置及び半導体装置を提供する。
【解決手段】熱伝導性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、イオン液体(B)と、熱伝導性フィラー(C)と、を含有する。イオン液体(B)の割合は、熱伝導性樹脂組成物全体のうち熱伝導性フィラー(C)を除く固形分に対して、30質量%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂(A)と、イオン液体(B)と、熱伝導性フィラー(C)と、を含有する熱伝導性樹脂組成物であり、
前記イオン液体(B)の割合は、前記熱伝導性樹脂組成物全体のうち前記熱伝導性フィラー(C)を除く固形分に対して、30質量%以上である、
熱伝導性樹脂組成物。
【請求項2】
前記イオン液体(B)の割合は、前記熱伝導性樹脂組成物全体のうち前記熱伝導性フィラー(C)を除く固形分に対して、60質量%以下である、
請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項3】
前記イオン液体(B)の融点は、150℃以下である、
請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項4】
前記イオン液体(B)が含むアニオンは、フッ素原子を有するアニオン、スルホニル基を有するアニオン、カルボニル基を有するアニオン及びシアノ基を有するアニオンよりなる群から選択される1種以上を含む、
請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項5】
前記アニオンは、ジシアナミドアニオンを含む、
請求項4に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱伝導性フィラー(C)の熱伝導率は、25℃で15W/m・K以上である、
請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱伝導性フィラー(C)は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、無水炭酸マグネシウム、アルミニウム、銀、銅、グラファイト、カーボンナノチューブ及びグラフェンよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、
請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱伝導性フィラー(C)の質量割合は、前記熱伝導性樹脂組成物全体に対して、50質量%以上である、
請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項9】
電子部品と、前記電子部品を覆う外殻部材と、前記電子部品と前記外殻部材との間に介在する熱伝導層とを備え、
前記熱伝導層が、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱伝導性樹脂組成物の硬化物を含む、
電子機器装置。
【請求項10】
半導体素子と、前記半導体素子を覆うリッドと、前記半導体素子と前記リッドとの間に介在する熱伝導層とを備え、
前記熱伝導層が、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱伝導性樹脂組成物の硬化物を含む、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱伝導性樹脂組成物、電子機器装置及び半導体装置に関し、より詳しくは、電子機器装置等での放熱用途に有用な熱伝導性材料を作製することができる熱伝導性樹脂組成物、その熱伝導性樹脂組成物を用いて作製される電子機器装置及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、α-アルミナを含む第一のフィラーと、窒化物フィラーを含む第二のフィラーと、分子内にメソゲン基を有する熱硬化性樹脂と、を含む樹脂組成物が開示されている。この特許文献1に記載の樹脂組成物は、高い熱伝導性を得るためにフィラーを高充填する必要があるため流動性に欠けるものであった。
【0003】
特許文献2には、アニオン重合性化合物、アニオン重合性硬化剤、及び、イオン性液体を含有する熱硬化性樹脂組成物が記載されている。この特許文献2に記載の樹脂組成物は、優れた低温速硬化性と接着信頼性とを得るためにイオン性液体を用いているが、熱伝導性向上の課題は示されておらずイオン性液体の含有量が比較的少量である。
【0004】
特許文献3には、エポキシ樹脂、硬化剤、カーボンナノチューブ、イオン液体を含有する導電性樹脂組成物が記載されている。この特許文献3に記載の導電性樹脂組成物は、カーボンナノチューブの凝集防止及び分散性改善を目的としてイオン液体を使用しているが、熱伝導性向上の課題は示されておらずイオン性液体の含有量もカーボンナノチューブを含めた導電性樹脂組成物の全体に対して0.1~30質量%に留まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6102744号
【特許文献2】特開2019-14781号公報
【特許文献3】特開2014-114420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の課題は、熱伝導性の高い熱伝導性材料を作製でき、かつ良好な流動性が得られる熱伝導性樹脂組成物、その熱伝導性樹脂組成物を用いて作製される電子機器装置及び半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る熱伝導性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、イオン液体(B)と、熱伝導性フィラー(C)と、を含有する熱伝導性樹脂組成物である。前記イオン液体(B)の割合は、前記熱伝導性樹脂組成物全体のうち前記熱伝導性フィラー(C)を除く固形分に対して、30質量%以上である。
【0008】
本開示の一態様に係る電子機器装置は、電子部品と、前記電子部品を覆う外殻部材と、前記電子部品と前記外殻部材との間に介在する熱伝導層とを備える。前記熱伝導層が、前記の熱伝導性樹脂組成物の硬化物を含む。
【0009】
本開示の一態様に係る半導体装置は、半導体素子と、前記半導体素子を覆うリッドと、前記半導体素子と前記リッドとの間に介在する熱伝導層とを備える。前記熱伝導層が、前記の熱伝導性樹脂組成物の硬化物を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、熱伝導性の高い熱伝導性材料を作製でき、かつ良好な流動性が得られる熱伝導性樹脂組成物、その熱伝導性樹脂組成物から作製される電子機器装置及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る電子機器装置を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)概要
本開示の熱伝導性樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)を完成するに至った経緯について説明する。
【0013】
トランジスタ、コンピュータのCPU(中央演算処理装置)等の電子・電気部品と放熱器(ヒートシンク)との間に熱伝導性材料(Thermal Interface Material:TIM)を配置することで、電子・電気部品から発生する熱を放熱器に伝導させることが行われている。また、電子・電気部品の高集積化などに伴い、電子・電気部品からの発熱量は益々増大する傾向にあり、このため、各電子・電気部品が発する熱を熱伝導性材料で効率良く伝導させることが求められている。
【0014】
樹脂組成物に剛直な熱硬化性樹脂を含ませることやフィラーを多く含ませることにより、熱伝導性材料の熱伝導性を高めることができる手法が知られているが、発明者の調査によると、上記の手法を樹脂組成物に適用した場合、その粘度が高まる傾向があるため、樹脂組成物に関し、好適な流動性の確保が難しいことがある。近年の半導体装置では高集積化などに伴って配線の緻密化・微細化が進み、チップ等の電子部品とその他の部品等との間隔も狭小化しており、電子部品の発熱を効率よく外部に放熱するために熱伝導性材料が半導体装置内の間隙を隙間なく充填していることが望まれる。そのような場合、熱伝導性樹脂組成物には狭小な間隙への充填性を高める観点から、好適な流動性を有するようなペースト状であることが求められる。
【0015】
そこで、発明者は、熱伝導性の高い熱伝導性材料を作製でき、かつ好適な流動性を有する熱伝導性樹脂組成物を得ることができるよう、鋭意研究を行った結果、本開示に至った。
【0016】
(2)実施形態
実施形態について説明する。なお、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。また、下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下において参照する図は、いずれも模式的な図であり、図中の構成要素の寸法比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0017】
まず、組成物(X)の概要について、説明する。上記の通り、組成物(X)は、熱硬化性樹脂(A)と、イオン液体(B)と、熱伝導性フィラー(C)とを含有する。そのイオン液体(B)の割合は、組成物(X)全体のうち熱伝導性フィラー(C)を除く固形分に対して、30質量%以上である。これにより、熱伝導性の高い熱伝導性材料を作製でき、かつ好適な流動性を有する組成物(X)が得られる。
【0018】
これについて詳しく説明すると、組成物(X)が熱伝導性フィラー(C)を含有し、しかもイオン液体(B)を比較的多く含有しているため、組成物(X)から作製される熱伝導性材料の熱伝導性が高められうる。言い換えれば、組成物(X)に含有されるフィラーの割合を増やすことなく、その組成物(X)から作製された熱伝導性材料の熱伝導性を高めることができる。なお、イオン液体(B)を含有することにより、組成物(X)から作製される熱伝導性材料の熱伝導性が高められうる理由は、正確には明らかにはされていないが、以下のような理由によると考えられる。
【0019】
イオン液体(B)は、アニオンと、カチオンとからなる塩であり、高い導電性を有しうる。一般的に、イオン液体(B)に関し、導電性が増加すると、熱伝導性が増加する傾向がある。つまり、組成物(X)は、高い導電性を有するイオン液体(B)を含有することにより、組成物(X)の熱伝導性が高められうる。これに伴い、組成物(X)から作製された熱伝導性材料の熱伝導性も高められうる。
【0020】
また、イオン液体(B)は、室温を含む幅広い温度領域において液体状態を維持しうる。このため、組成物(X)の粘度が低められうる。また、組成物(X)の粘度が低められているため、組成物(X)の塗布性と、成形性とが高められうる。
【0021】
なお、本開示において、熱伝導性フィラー(C)を除く固形分とは、熱伝導性フィラー(C)及び揮発する成分を除く成分のことを意味する。また、「組成物(X)の塗布性」とは、組成物(X)をディスペンス装置等の塗布装置から吐出し、組成物(X)を任意の場所に塗布することのされやすさを意味し、「組成物(X)の成形性」とは、その組成物(X)の硬化物に発生するボイドの多寡を意味する。
【0022】
上記の通り、組成物(X)は、熱伝導性材料を作製するために用いられうる。その熱伝導性材料は、例えば、電子機器装置1が備える電子部品3と、その電子部品3を覆う外殻部材4との間に介在するようにして使用される(図1参照)。そして、この熱伝導性材料を介して、電子機器装置1の内部で発生した熱を電子機器装置1の外部へ円滑に移動させることができる。なお、組成物(X)の用途は、電子機器装置1に設置されることのみに限定されない。組成物(X)は、種々の用途に適用されうる。
【0023】
(2.1)成分
組成物(X)の成分について説明する。
【0024】
(熱硬化性樹脂)
組成物(X)は、上記の通り、成分として、熱硬化性樹脂(A)を含有する。このため、組成物(X)が加熱された場合、組成物(X)は硬化しうる。
【0025】
熱硬化性樹脂(A)の分子形態は、その硬化反応性が損なわれなければ特に制限はなく、例えば、モノマー、オリゴマー及びプレポリマー等が好ましい形態として挙げられる。特に、熱硬化性樹脂(A)が、モノマー及びオリゴマーのうち少なくとも一方を含有する場合、組成物(X)の粘度は低められうる。
【0026】
熱硬化性樹脂(A)は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレン系樹脂、ビスマレイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル及びベンゾオキサジン樹脂等よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらの中で、熱硬化性樹脂(A)は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂は、例えばグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂及びオレフィン酸化型(脂環式)エポキシ樹脂等よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む。より具体的には、エポキシ樹脂は、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のアルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;ビスフェノールA型ブロム含有エポキシ樹脂等のブロム含有エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタンやイソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;並びにフタル酸やダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂等よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む。
【0028】
なお、熱硬化性樹脂(A)は、1種類の成分のみを含有していてもよく、2種類以上の成分を含有していてもよい。
【0029】
(イオン液体)
組成物(X)は、上記の通り、成分としてイオン液体(B)を含有する。これにより、組成物(X)から作製された熱伝導性材料の熱伝導性が高められ、かつ組成物(X)の粘度が低められうる。
【0030】
上記の通り、イオン液体(B)は、カチオンと、アニオンとを含む塩である。
【0031】
イオン液体(B)が含むカチオンは、例えば、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、及びホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオン;ピロリジニウムカチオン等の環状脂肪族カチオン;並びにイミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオン等の芳香族カチオン等よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0032】
イミダゾリウムカチオンは、例えば、1-メチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へプチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ノニル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ウンデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-トリデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ペンタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘプタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、及び1-ノナデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらのイミダゾリウムカチオンの中で、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンが特に好ましく用いられる。
【0033】
アンモニウムカチオンは、例えば、トリブチル(メチル)アンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン及びメチルトリオクチルアンモニウムカチオン等よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらのアンモニウムカチオンの中で、トリブチル(メチル)アンモニウムカチオンが特に好ましく用いられる。
【0034】
イオン液体(B)が含むアニオンは、例えば、Cl、Br、I等の単原子アニオン;BF 、PF 等のフッ素原子を有する無機アニオン;NO 、NO 等のフッ素原子を有さない無機アニオン;CFSO 、(CFSO、(CFSO、(CSO等のフッ素原子を有する有機アニオン;(CHCHO)PO、(CN)、CHCOO等のフッ素原子を有さない有機アニオン等よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0035】
また、イオン液体(B)が含むアニオンは、フッ素原子を有するアニオン、スルホニル基を有するアニオン、カルボニル基を有するアニオン及びシアノ基を有するアニオンよりなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。これを具体的に言い換えれば、イオン液体(B)が含むアニオンは、F、BF 、PF 、CFSO 、(CFSO、(CFSO、(CSO、(CN)、CHCOO等よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。この場合、組成物(X)から作製される熱伝導性材料の熱伝導性がより高められうる。
【0036】
更に、イオン液体(B)が含むアニオンは、ジシアナミドイオン((CN))を含むことが特に好ましい。この場合、組成物(X)から作製される熱伝導性材料の熱伝導性がより高められながら、かつ組成物(X)の粘度が低められうる。
【0037】
上記の通り、イオン液体(B)は、室温を含む幅広い温度領域において液体状態を維持しうる。イオン液体(B)の融点は、例えば、150℃以下である。この場合、組成物(X)の粘度が好適に低められうる。
【0038】
上記の通り、イオン液体(B)の割合は、組成物(X)全体のうち熱伝導性フィラー(C)を除く固形分に対して、30質量%以上である。この場合、組成物(X)から作製される熱伝導性材料の熱伝導性が高められうる。イオン液体(B)の割合は、組成物(X)全体のうち熱伝導性フィラー(C)を除く固形分に対して、35質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることが更に好ましい。また、イオン液体(B)の割合は、組成物(X)全体のうち熱伝導性フィラー(C)を除く固形分に対して、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。この場合、組成物(X)から作製される熱伝導性材料の熱伝導性を高めつつ、組成物(X)の硬化性も確保されうる。
【0039】
(熱伝導性フィラー)
組成物(X)は、上記の通り、成分として、熱伝導性フィラー(C)を含有する。
【0040】
熱伝導性フィラー(C)の熱伝導率は、25℃で15W/m・K以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)から、より熱伝導性の高い熱伝導性材料が作製されうる。熱伝導性フィラー(C)の熱伝導率は、25℃で20W/m・K以上であることがより好ましく、25℃で30W/m・K以上であることが更に好ましい。また、熱伝導性フィラー(C)の熱伝導率の上限値は特に限定されず、組成物(X)の他の特性に不都合な影響が無いものであれば熱伝導率が非常に高いものであっても構わない。
【0041】
熱伝導性フィラー(C)は、例えば、銀、アルミニウム及び銅等の金属;酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化マグネシウム等の金属酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素及び窒化ホウ素等の窒化物;炭化ケイ素等の炭化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;炭酸マグネシウム及び無水炭酸マグネシウム等の炭酸塩;並びにグラファイト、カーボンナノチューブ及びグラフェン等の炭素系充填材等よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む。
【0042】
また、熱伝導性フィラー(C)の体積割合は、組成物(X)全体に対して、30体積%以上90体積%以下であることが好ましい。熱伝導性フィラー(C)の体積割合が、30体積%以上である場合、組成物(X)の硬化物の熱伝導性が特に高められうる。熱伝導性フィラー(C)の体積割合は、組成物(X)全体に対して、40体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることが更に好ましい。また、熱伝導性フィラー(C)の体積割合が、組成物(X)全体に対して、90体積%以下である場合、組成物(X)の流動性を確保される好適な粘度となりうる。これにより、組成物(X)の塗布性が確保されうる。熱伝導性フィラー(C)の体積割合は、組成物(X)全体に対して、85体積%以下であることがより好ましい。
【0043】
(硬化剤)
組成物(X)は、成分として、硬化剤を含有してもよい。この場合、組成物(X)の硬化性が高まりうる。
【0044】
硬化剤は、例えば、フェノール化合物を含有する。硬化剤がフェノール化合物を含有し、かつ熱硬化性樹脂(A)がエポキシ樹脂を含有する場合、フェノール化合物と、エポキシ樹脂との反応性が特に良好であるため、組成物(X)の硬化性が特に高められうる。
【0045】
フェノール化合物は、例えば、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー及びプレポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0046】
フェノール化合物は、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;フェニレン骨格、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂;フェニレン骨格、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;トリフェノールメタン型樹脂等の多官能型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型樹脂;並びにトリアジン変性ノボラック樹脂等よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む。
【0047】
なお、硬化剤は、熱硬化性樹脂(A)と熱硬化反応をするものであれば、フェノール化合物に限られない。つまり、硬化剤は、適宜の硬化剤を使用することができ、具体的には、フェノール化合物、酸無水物、及びアミン化合物等よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含むことができる。
【0048】
組成物(X)がエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂に対する硬化剤の当量比は、エポキシ樹脂と、硬化剤との反応性を考慮して適宜設定しうる。具体的には、エポキシ樹脂に対する硬化剤の当量比は、0.6以上1.5以下であることが好ましく、0.9以上1.2以下であればより好ましい。
【0049】
なお、硬化剤は、1種類の化合物のみを使用してもよく、2種類以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
(分散剤)
組成物(X)は、成分として、分散剤を含有していてもよい。分散剤は、市販品を用いることができる。市販品の具体例としては、例えば、BYK-W996(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等の高分子湿潤分散剤が挙げられる。なお、分散剤は、1種の分散剤が単独で用いられてもよく、2種以上の分散剤が併用されてもよい。
【0051】
(硬化促進剤)
組成物(X)は、成分として、硬化促進剤を含有していてもよい。この場合、組成物(X)の硬化性がより高められうる。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール等のアミン化合物が挙げられる。なお、硬化促進剤は、1種の硬化促進剤が単独で用いられてもよく、2種以上の硬化促進剤が併用されてもよい。
【0052】
(添加剤)
組成物(X)は、本開示の効果を損なわない範囲内であれば、上記の、熱硬化性樹脂(A)、イオン液体(B)、熱伝導性フィラー(C)、硬化剤、分散剤及び硬化促進剤以外の添加剤を含有していてもよい。添加剤は、例えば、カップリング剤、顔料、難燃剤、着色剤及び接着促進剤等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有してもよい。
【0053】
(2.2)物性
(粘度)
上記の通り、組成物(X)は、その粘度が低められている。組成物(X)の25℃における粘度は、例えば3000Pa・s以下である。この場合、組成物(X)の塗布性が高まりうる。組成物(X)の25℃における粘度が3000Pa・s以下であることが好ましく、2000Pa・s以下であることがより好ましい。また、組成物(X)の25℃における粘度は、30Pa・s以上であることが好ましく、50Pa・s以上であることがより好ましい。なお、組成物(X)の粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製、型番:RC-215)を使用し、測定条件を、温度を25℃、回転数を0.3rpm、測定時間200秒間とすることで測定することができる。
【0054】
(熱抵抗)
上記の通り、組成物(X)の硬化物は、高い熱伝導性を有しうる。
【0055】
例えば、組成物(X)の硬化物の熱伝導性は、熱抵抗値を指標として評価することができる。例えば、組成物(X)の硬化物の厚みが100μmであるときの厚み方向の熱抵抗は、1.0K/W以下であることが好ましく、0.7K/W以下であることがより好ましい。この場合、この組成物(X)の硬化物を含む熱伝導性材料は優れた熱伝導性を発現でき、熱を効率良く伝達しうる。
【0056】
更に、組成物(X)の硬化物の厚みが300μmであるときの厚み方向の熱抵抗は、1.5K/W以下であることが好ましい。この場合、この組成物(X)の硬化物を含む熱伝導性材料は優れた熱伝導性を発現でき、熱を効率良く伝達しうる。組成物(X)の硬化物の厚みが300μmであるときのプレス圧の方向の熱抵抗は、1.1K/W以下であることがより好ましい。
【0057】
そして、組成物(X)の硬化物の厚みが500μmであるときの厚み方向の熱抵抗は、2.0K/W以下であることが好ましい。この場合、この組成物(X)の硬化物を含む熱伝導性材料は優れた熱伝導性を発現でき、熱を効率良く伝達しうる。組成物(X)の硬化物の厚みが500μmであるときのプレス圧の方向の熱抵抗は、1.5K/W以下であることがより好ましい。
【0058】
なお、熱抵抗の測定方法に関しては、「実施例」にて説明する。
【0059】
(2.3)応用例
(熱伝導性材料)
本実施形態に係る組成物(X)から、半導体チップ等の電子部品3のような発熱体と、ヒートシンク7のような放熱体との間に介在させて使用することができる熱伝導性材料を作製することができる。つまり、本実施形態に係る熱伝導性材料を適用することにより、例えば、熱伝導層5を、電子機器装置1が備える電子部品3と、外殻部材4との間に介在させることができる(図1参照)。更に、本実施形態に係る熱伝導性材料は、電子機器装置1の中でも特に、半導体装置に好適に適用され、熱伝導層5を半導体装置が備える半導体素子と、リッドとの間に熱伝導層5を介在させることができる。
【0060】
本実施形態では、熱伝導性材料は、例えば、組成物(X)を、その組成に応じた条件で加熱することにより硬化させて作製することができる。つまり、組成物(X)の硬化物を含む熱伝導性材料が得られうる。
【0061】
また、組成物(X)から熱伝導性材料を作製する場合、熱伝導性材料を配置したい箇所に、組成物(X)を充填し、続いて、その充填した組成物(X)をその組成に応じた条件で加熱することにより硬化させて、熱伝導性材料が作製されてもよい。更に、組成物(X)をプレス成形、押出し成形、カレンダー成形等の適宜の方法で膜状に成形する、若しくはディスペンサーで膜状に成形し、続いて、膜状の組成物(X)をその組成に応じた条件で加熱することで硬化させることで、膜状の熱伝導性材料が作製されてもよい。なお、組成物(X)から熱伝導性材料を作製する方法は、上記の方法のみに限定されない。つまり、熱伝導性材料の用途に合わせて種々の作製方法を採用することができる。
【0062】
(電子機器装置)
上記の通り、組成物(X)から作製された熱伝導性材料は、図1に示すような電子機器装置1から発生する熱を、電子機器装置1の外部へ伝達するための熱伝導層5を作製するために使用される。具体的には、電子機器装置1は、電子部品3と、その電子部品3を覆う外殻部材4と、電子部品3と外殻部材4との間に介在している熱伝導層5とを備えている。この熱伝導層5は、組成物(X)から作製された熱伝導性材料から作製されている、つまり、組成物(X)の硬化物を含む。そのため、その熱伝導層5は、熱伝導性が特に高められており、電子機器装置1から生じる熱を、その熱伝導層5を通じて、外殻部材4に円滑に伝達することができる。これにより、電子機器装置1の内部に熱が滞留することを抑制することができる。
【0063】
また、上記の通り、組成物(X)から作製された熱伝導性材料は、電子機器装置1の中でも、特に半導体装置に好適に使用される。具体的には、電子機器装置1である半導体装置は、電子部品3である半導体素子と、その半導体素子を覆う外殻部材4であるリッドと、その半導体素子とリッドとの間に介在する熱伝導層5を備える。なお、この熱伝導層5は、組成物(X)から作製された熱伝導性材料からなり、組成物(X)の硬化物を含む。
【0064】
電子機器装置1の構成について説明する。
【0065】
電子機器装置1は、基板2と、電子部品3と、電子部品3を覆う外殻部材4と、電子部品3と外殻部材4との間に介在する組成物(X)の硬化物を含む熱伝導層5とを備える。
【0066】
基板2は、例えばマザー基板、パッケージ基板、又はインターポーザー基板等が挙げられる。基板2の材質は、例えばガラスエポキシ製、ポリイミド製、ポリエステル製、又はセラミック製等が挙げられる。
【0067】
電子部品3は、例えばトランジスタ及びダイオード等の能動素子;抵抗器、キャパシタ、インダクタ、リアクトル、メモリスタ及び変圧器等の受動素子;CPU、MPU、ドライバIC並びにメモリ等よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。また、電子部品3は、半導体素子であってもよく、半導体素子は、例えば、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ及びモジュール等よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。更に、複数の電子部品3が、基板2に搭載されていてもよい。この場合、電子部品3の厚みが互いに異なっていてもよい。
【0068】
上記の通り、外殻部材4は、電子部品3を覆うように基板2に搭載されている。外殻部材4は、例えば、リッド等の電子機器装置1の筐体であり、熱伝熱性の高い部材である。電子機器装置1は、ヒートスプレッダと、ヒートシンク7とを備えていてもよく、本実施形態では、このヒートスプレッダ及びヒートシンク7は、電子機器装置1が備える外殻部材4に配置されていることが好ましいが、特に限定されない。例えば、ヒートスプレッダ及びヒートシンク7は、基板2の外殻部材4が搭載されている側と反対側の面に配置されてもよい。この場合、基板2と、ヒートシンク7との間に、ヒートスプレッダが介在しうる。更に、ヒートスプレッダとヒートシンク7との間には熱伝導層8が介在していてもよく、この熱伝導層8は、組成物(X)から作製される熱伝導性材料であってもよい。
【0069】
電子機器装置1が備える熱伝導層5は、例えば、次のような方法で作製される。まず、電子部品3と、その外側に位置する外殻部材4との間の間隙に組成物(X)を充填し、加熱することによって硬化させる。このような方法で、電子部品3と、その外側に位置する外殻部材4との間の隙間に、組成物(X)の硬化物を含む熱伝導層5が作製されうる。なお、本実施形態では、組成物(X)は、常温、具体的には25℃でペースト状であることが好ましく、この場合、組成物(X)をディスペンサー装置で容易に塗布することができる。これにより、電子部品3と、その外側に位置する外殻部材4との間の間隙に組成物(X)を容易に充填することができる。
【0070】
また、組成物(X)を膜状に成形し、続いて、膜状の組成物(X)をその組成に応じた条件で加熱することで硬化させることで、膜状の熱伝導性材料が得られるが、その膜状の熱伝導性材料を電子部品3と、外殻部材4との間に介在させることによって、熱伝導層5が作製されてもよい。
【0071】
(3)まとめ
上記の実施形態から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0072】
本開示の第一の態様に係る熱伝導性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、イオン液体(B)と、熱伝導性フィラー(C)と、を含有する熱伝導性樹脂組成物である。イオン液体(B)の割合は、熱伝導性樹脂組成物全体のうち熱伝導性フィラー(C)を除く固形分に対して、30質量%以上である。
【0073】
第一の態様によれば、熱伝導性の高い熱伝導性材料を作製でき、かつ良好な流動性が得られる熱伝導性樹脂組成物を提供することができる。
【0074】
本開示の第二の態様に係る熱伝導性樹脂組成物は、第一の態様において、イオン液体(B)の割合は、熱伝導性樹脂組成物全体のうち熱伝導性フィラー(C)を除く固形分に対して、60質量%以下である。
【0075】
第二の態様によれば、熱伝導性樹脂組成物から作製される熱伝導性材料の熱伝導性が高まりやすい傾向がある。
【0076】
本開示の第三の態様に係る熱伝導性樹脂組成物は、第一又は第二の態様において、イオン液体(B)の融点は、150℃以下である。
【0077】
第三の態様によれば、熱伝導性樹脂組成物の粘度がより低められうる。
【0078】
本開示の第四の態様に係る熱伝導性樹脂組成物は、第一から第三のいずれか一の態様において、イオン液体(B)が含むアニオンは、フッ素原子を有するアニオン、スルホニル基を有するアニオン、カルボニル基を有するアニオン及びシアノ基を有するアニオンよりなる群から選択される1種以上を含む。
【0079】
第四の態様によれば、熱伝導性樹脂組成物から作製される熱伝導性材料の熱伝導性がより高められうる。
【0080】
本開示の第五の態様に係る熱伝導性樹脂組成物は、第四の態様において、アニオンは、ジシアナミドアニオンを含む。
【0081】
第五の態様によれば、熱伝導性樹脂組成物から作製される熱伝導性材料の熱伝導性がより高められながら、かつ熱伝導性樹脂組成物の粘度が低められうる。
【0082】
本開示の第六の態様に係る熱伝導性樹脂組成物は、第一から第五のいずれか一の態様において、熱伝導性フィラー(C)の熱伝導率は、25℃で15W/m・K以上である。
【0083】
第六の態様によれば、熱伝導性樹脂組成物から、より熱伝導性の高い熱伝導性材料が作製されうる。
【0084】
本開示の第七の態様に係る熱伝導性樹脂組成物は、第一から第六のいずれか一の態様において、熱伝導性フィラー(C)は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、無水炭酸マグネシウム、アルミニウム、銀、銅、グラファイト、カーボンナノチューブ及びグラフェンよりなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0085】
第七の態様によれば、熱伝導性樹脂組成物から熱伝導性のより高い熱伝導性材料を作製でき、かつその熱伝導性樹脂組成物の流動性と成形性との両方がより高められうる。
【0086】
本開示の第八の態様に係る熱伝導性樹脂組成物は、第一から第七のいずれか一の態様において、熱伝導性フィラー(C)の質量割合は、熱伝導性樹脂組成物全体に対して、50質量%以上である。
【0087】
第八の態様によれば、熱伝導性樹脂組成物から作製される熱伝導性材料の熱伝導性が高まりうる。
【0088】
本開示の第九の態様に係る電子機器装置(1)は、電子部品(3)と、電子部品(3)を覆う外殻部材(4)と、電子部品(3)と外殻部材(4)との間に介在する熱伝導層(5)とを備える。熱伝導層(5)が、第一から第八のいずれか一の態様の熱伝導性樹脂組成物の硬化物を含む。
【0089】
第九の態様によれば、熱伝導性樹脂組成物の硬化物が熱伝導性材料として機能し、電子機器装置(1)において電子部品(3)で発生する熱を外部に好適に伝達する放熱性能を向上しうる。
【0090】
本開示の第十の態様の半導体装置は、半導体素子と、半導体素子を覆うリッドと、半導体素子とリッドとの間に介在する熱伝導層とを備える。熱伝導層が、第一から第八のいずれか一の態様の熱伝導性樹脂組成物の硬化物を含む。
【0091】
第十の態様によれば、熱伝導性樹脂組成物の硬化物が熱伝導性材料として機能し、半導体素子の発熱をリッドに好適に伝熱されるため、放熱性能を向上した半導体装置が得られうる。
【実施例0092】
以下、本実施形態のより具体的な実施例について説明する。なお、本実施形態は下記の実施例のみには制限されない。
【0093】
1.熱伝導性樹脂組成物の作製方法
実施例1~8及び比較例1~5の熱伝導性樹脂組成物を作製する方法について説明する。
【0094】
[成分]
実施例1~8及び比較例1~5の熱伝導性樹脂組成物を作製するために用いた成分について、以下に示した。また、表1~表2に示す割合で、各成分を混合することで熱伝導性樹脂組成物を得た。熱硬化性樹脂、イオン液体、硬化剤、分散剤、硬化促進剤は質量部で示し、熱伝導性フィラーは体積%及び質量部で示した。
【0095】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、製品名エピクロン830S、粘度3,000~4,500mPa・s(25℃))。
【0096】
(イオン液体)
イオン液体1:トリブチル(メチル)アンモニウムジシアナミド(東京化成工業株式会社製、融点12℃)。
【0097】
イオン液体2:1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業株式会社製、融点-15℃)。
【0098】
(熱伝導性フィラー)
熱伝導性フィラー1:窒化アルミニウム(株式会社燃焼合成製、製品名AN-HF30LGL-HTZ、平均粒径30μm、熱伝導率170W/m・K)。
【0099】
熱伝導性フィラー2:窒化アルミニウム(株式会社燃焼合成製、製品名AN-HF05LGL-HTZ、平均粒径5μm、熱伝導率170W/m・K)。
【0100】
熱伝導性フィラー3:アルミナ(住友化学株式会社製、製品名AA-04、平均粒径0.45μm、熱伝導率35W/m・K)。
【0101】
(硬化剤)
硬化剤:フェノール硬化剤(フェノールノボラック樹脂)(明和化成株式会社製、製品名MEH-8000H)。
【0102】
(分散剤)
分散剤1:湿潤分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、製品名BYK-W996)。
【0103】
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成株式会社製、製品名キュアゾール 2E4MZ、化合物名2-エチル-4-メチルイミダゾール)。
【0104】
2.評価
「1.樹脂組成物の作製方法」に記載した方法に従って、作製した各実施例及び比較例の樹脂組成物を、次の各試験により評価した。
【0105】
(1)粘度
組成物の粘度を、測定装置として東機産業株式会社製のE型粘度計(型番RC-215)を用い、測定温度25℃、回転数0.3rpm、測定時間200秒の条件で測定した。
【0106】
(2)熱抵抗
熱伝導性樹脂組成物を、加熱温度120℃、プレス圧1MPaの条件で30分間熱プレスすることで、厚み100μm、300μm、500μmのシート状のサンプルを作製した。このサンプルを二つの銅製のプレートで挟み、このプレートでサンプルをプレス圧1MPaの条件で直圧プレスした。この状態で、室温下における、プレス圧の方向(サンプルの厚み方向)のサンプルの熱抵抗を、メンターグラフィック社製のDynTIM Testerを用いて測定した。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【符号の説明】
【0109】
1 電子機器装置
3 電子部品
4 外殻部材
5 熱伝導層
図1