(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146534
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】回路遮断器及び分電盤
(51)【国際特許分類】
H01H 83/02 20060101AFI20241004BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01H83/02 D
H02B1/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059501
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 邦浩
(72)【発明者】
【氏名】今野 敬士
【テーマコード(参考)】
5G030
5G211
【Fターム(参考)】
5G030CA00
5G030FC03
5G030XX15
5G030YY04
5G030YY13
5G211AA11
5G211AA12
5G211BB03
5G211BB04
5G211DD01
5G211DD04
5G211DD06
5G211DD39
5G211EE04
(57)【要約】
【課題】耐圧試験において、回路基板上の回路に高電圧が印加されにくい回路遮断器を提供する。
【解決手段】回路遮断器A1は、回路基板(第1回路基板71、第2回路基板72)と、中間端子36と、複数の接続端子(第1接続端子31B、第2接続端子32B、及び第3接続端子33B)と、を備える。中間端子36は、回路基板(第1回路基板71、第2回路基板72)上の回路と電気的に接続される。接続端子(第1接続端子31B)は、外部電源に電気的に接続される。中間端子36は、接触部361を有する。接触部361は、接続端子(第1接続端子31B)と接触する状態と、接続端子(第1接続端子31B)との間で絶縁部材Mを挟持する状態と、の間で移動可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板上の回路と電気的に接続される中間端子と、
外部電源に電気的に接続される複数の接続端子と、
を備え、
前記中間端子は、接触部を有し、
前記接触部は、前記接続端子と接触する状態と、前記接続端子との間で絶縁部材を挟持する状態と、の間で移動可能である、
回路遮断器。
【請求項2】
前記外部電源は、単相3線式であり、
前記複数の接続端子のうちの一つが、中性線に電気的に接続される、
請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記中間端子と前記接続端子とを収容する器体をさらに備え、
前記接続端子は、プラグイン端子であり、
前記器体は、前記接続端子に前記外部電源を電気的に接続するための接続口を有し、
前記接触部は、前記絶縁部材を前記接続口から取外し可能な状態で、前記接続端子との間で絶縁部材を挟持可能である、
請求項2に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記中間端子は、前記接触部を有する板バネ状の第1片と、前記器体と接触する第2片と、を備える、
請求項3に記載の回路遮断器。
【請求項5】
前記器体は、前記第1片と接触するリブを有する、
請求項4に記載の回路遮断器。
【請求項6】
前記リブは、前記第1片と接触する当接部を有し、
前記当接部は、凸曲面を有する、
請求項5に記載の回路遮断器。
【請求項7】
主開閉器と、
複数の分岐開閉器と、
前記主開閉器及び前記複数の分岐開閉器を収容するキャビネットと、
を備え、
前記主開閉器及び前記複数の分岐開閉器の少なくとも1つが、請求項1-6のいずれかの回路遮断器である、
分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路遮断器及び分電盤に関し、より詳細には、回路基板を備えた回路遮断器、及び当該回路遮断器を内部機器とする分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特許文献1記載の漏電ブレーカ(回路遮断器)を例示する。特許文献1記載の漏電ブレーカ(以下、従来例という。)は、回路基板を有する漏電検出部をケースに収容している。漏電検出部の回路基板に零相変流器(ZCT)が取り付けられている。回路基板は、長手方向の端部を、ケースの内壁に設けられた溝に嵌めるようにしてケースに支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来例の製造段階において、動作の異常の有無を調べる試験として、一次側異極端子間に高電圧を印加する耐圧試験がある。この場合、N相と活線相の間の一次側異極端子間の耐圧試験を行うと、回路基板上の回路に高電圧が印加されるために、不具合が生じる場合があった。
【0005】
本開示の目的は、耐圧試験において、回路基板上の回路に高電圧が印加されにくい回路遮断器及び分電盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る回路遮断器は、回路基板と、前記回路基板上の回路と電気的に接続される中間端子と、外部電源に電気的に接続される接続端子と、を備える。前記中間端子は、接触部を有する。前記接触部は、前記接続端子と接触する状態と、前記接続端子との間で絶縁部材を挟持する状態と、の間で移動可能である。
【0007】
本開示の一態様に係る分電盤は、主開閉器と、複数の分岐開閉器と、前記主開閉器及び前記複数の分岐開閉器を収容するキャビネットと、を備える。前記主開閉器及び前記複数の分岐開閉器の少なくとも1つが、前記回路遮断器である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の回路遮断器及び分電盤は、耐圧試験において、回路基板上の回路に高電圧が印加されにくい、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る回路遮断器の斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の回路遮断器の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の回路遮断器における異常検出装置の回路ブロック図である。
【
図4】
図4は、同上の回路遮断器の中間端子の斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の回路遮断器の一部の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、同上の回路遮断器の一部の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、同上の回路遮断器の一部の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、同上の回路遮断器の一部の斜視図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係る分電盤の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る回路遮断器及び分電盤について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
(1)概要
本開示の実施形態に係る回路遮断器A1は、回路基板(第1回路基板71、第2回路基板72)と、中間端子36と、複数の接続端子(第1接続端子31B、第2接続端子32B、及び第3接続端子33B)と、を備える(
図5参照)。中間端子36は、回路基板71、72上の回路と電気的に接続される。複数の接続端子は、外部電源に電気的に接続される。中間端子36は、接触部361を有する。接触部361は、複数の接続端子のうちの一つの接続端子(第1接続端子31B)と接触する状態と、前記接続端子(第1接続端子31B)との間で絶縁部材Mを挟持する状態と、の間で移動可能である(
図6、
図7参照)。
【0012】
本実施形態では、製造時において、接触部361と第1接続端子31Bとの間に絶縁部材Mを挟持した状態で、耐電圧試験が行われる。従って、耐電圧試験時には、接触部361と第1接続端子31Bとが離れており、中間端子36と第1接続端子31Bとは、電気的に絶縁された状態である。そして、この状態で第1接続端子31Bに高電圧を印加して耐電圧試験を行うと、回路基板には高電圧が印加されず、回路基板71、72上の回路に高電圧による破損等の不具合が生じにくくなる。
【0013】
また本実施形態では、耐電圧試験後に、絶縁部材Mが取り外される。従って、実際に回路遮断器A1が使用されるときには、接触部361と第1接続端子31Bとが接触しており、中間端子36と第1接続端子31Bとは、電気的に接続された状態である。この状態では、回路基板71、72上の回路の電源は、回路遮断器A1の一次側の電路(外部電源に接続される第1接続端子31B及び中間端子36)から得ることができる。従って、ハンドルOFFやトリップ状態であっても、回路基板71、72の回路に電力を供給することができる。なお、単相3線式電路で使用される回路遮断器A1では、回路基板71,72の電源は、200Vから得るよりは降圧が容易に行えるため、N相と活線相(L1もしくはL2)との間から得ることが多い。
【0014】
また、本開示の実施形態に係る分電盤B1は、
図9に示すように、主開閉器B10と、複数の分岐開閉器B11と、主開閉器B10及び複数の分岐開閉器B11を収容するキャビネットB12と、を備える。主開閉器B10及び複数の分岐開閉器B11の少なくとも1つが、本実施形態に係る回路遮断器A1である。
【0015】
本実施形態に係る分電盤B1は、例えば、交流50Hz又は60Hzの単相3線式100/200Vの電路において、主に住宅などの引込口装置として用いられる住宅用分電盤(住宅盤と略される場合がある。)である。ただし、本開示の分電盤は、住宅用分電盤に限定されない。
【0016】
キャビネットB12は、電気絶縁性を有する合成樹脂材料によって四角形の箱状に形成される。キャビネットB12は、例えば、住宅内の壁に設置される。キャビネットB12内の横方向の一端部(左端部)に主開閉器B10が収容されている。また、キャビネットB12内において、主開閉器B10の隣(右隣)に、複数の分岐開閉器B11が上下2段に分かれて収容されている。主開閉器B10と複数の分岐開閉器B11は、複数の母線を介して電気的に接続されている。複数の母線は、帯板状の導体(導電バーと呼ばれる場合がある。)で構成されている。複数の母線は、単相3線式電路の2つの電圧側線に対応する2つの母線(電圧側線の導電バー)と、単相3線式電路の1つの中性線に対応する1つの母線(中性線の導電バー)と、を含んでいる。複数の分岐開閉器B11のうち、母線から100Vの分岐回路を分岐する分岐開閉器B11は、1つの電圧側線の導電バーと中性線の導電バーに電気的に接続される。また、複数の分岐開閉器B11のうち、母線から200Vの分岐回路を分岐する分岐開閉器B11は、2つの電圧側線の導電バーに電気的に接続される。
【0017】
(2)詳細
以下、
図1-
図8を参照して、実施形態に係る回路遮断器A1を詳細に説明する。
【0018】
本実施形態に係る回路遮断器A1(以下、回路遮断器A1と略す。)は、器体1、接点部2、第1端子部3A、第2端子部3B、開閉機構4、第1引外し装置5、第2引外し装置6、異常検出装置7、及び支持部材8、を備えている(
図1-
図7参照)。なお、以下の説明においては、
図1において矢印で示す上下、前後、及び左右の各方向を、回路遮断器A1の上下、前後、及び左右の各方向と定義する。ただし、回路遮断器A1の上下、前後、及び左右の各方向は、説明のために便宜上定義した方向であって、実際に回路遮断器A1が使用されるときの方向を限定する趣旨ではない。
【0019】
(2-1)器体
器体1は、全体として、上下方向の高さ寸法及び左右方向の幅寸法に比べて、前後方向の厚み寸法が十分に小さい箱状に形成されている。器体1は、器体1の後半部分を構成する合成樹脂製のボディ10と、器体1の前半部分を構成する合成樹脂製のカバー11と、を有している(
図1及び
図2参照)。つまり、ボディ10とカバー11が前後方向に結合されることで器体1が形成されている。
【0020】
器体1内の左端部に第1端子部3Aが収容される。また、器体1内の右端部に第2端子部3Bが収容される。そして、器体1内において、第1端子部3Aが収容された左端部と、第2端子部3Bが収容された右端部の間に、接点部2、開閉機構4、第1引外し装置5、第2引外し装置6、異常検出装置7、及び支持部材8が収容される(
図2参照)。
【0021】
器体1の左側面の上部は、第1端子部3Aの一部を露出させるために開放されている(
図2参照)。また、器体1の右端部には、器体1の右側面、前面、及び後面に開放された3つの接続口12A、12B、12Cが設けられている(
図1参照)。これら3つの接続口12A、12B、12Cは、器体1の右端部において、上下方向に沿って等間隔に並んでいる。
【0022】
また、器体1の上側面における左右方向のほぼ中央に、長方形状の窓13が開口している(
図2参照)。この窓13の内側に、後述する開閉機構4のハンドル40が、器体1に対して回転可能に配置されている。
【0023】
さらに、器体1の上側面における窓13の右隣の場所に、円形の第1穴14Aと長方形の第2穴14Bが前後方向に並ぶように設けられている(
図2参照)。なお、これら2つの穴(第1穴14A、第2穴14B)は、いずれも器体1の上側面を貫通して器体1の内部と通じている。
【0024】
(2-2)接点部
接点部2は、2組の主接点及び2つの可動接触子22A、22Bを有している。一方の組の主接点は、固定接点と可動接点を有し(図示省略)、他方の組の主接点は、固定接点20Bと可動接点21Bを有している(
図2参照)。一方の可動接点は、一方の可動接触子の先端に固定され、他方の可動接点21Bは、他方の可動接触子22Bの先端に固定されている。
【0025】
(2-3)第1端子部
第1端子部3Aは、仕切部材30A、第1端子板、第2端子板32A、2つの錠ばね、2つの解除レバー34A、を有している。
【0026】
仕切部材30Aは、電気絶縁性を有する合成樹脂材料で形成され、器体1内の左端部に収容されている。器体1内の左端部は、仕切部材30Aによって、前方の収容空間と後方の収容空間に仕切られている。
【0027】
第1端子板は、後方の収容空間に収容される。第1端子板の端部に固定接点が設けられている。第2端子板32Aは、前方の収容空間に収容される。第2端子板32Aの端部に固定接点20Bが設けられている。ただし、第2端子板32Aの端部は、前方の収容空間の外に配置されている。
【0028】
第1端子板は、1つの錠ばね及び1つの解除レバー34Aとともにねじなし端子を構成している。同様に、第2端子板32Aは、もう1つの錠ばね及びもう1つの解除レバー34Aとともにねじなし端子を構成している。
【0029】
第1端子部3Aの2つのねじなし端子はそれぞれ、仕切部材30Aに設けられた2つの挿入穴300Aに挿入される導体と電気的かつ機械的に接続され、かつ、それぞれの解除レバー34Aが操作された状態で導体との電気的かつ機械的な接続が解除可能である。
【0030】
(2-4)第2端子部
第2端子部3Bは、第1接続端子31B、第2接続端子32B、及び第3接続端子33Bを有している(
図1及び
図2参照)。第1接続端子31B、第2接続端子32B、及び第3接続端子33Bは、いずれも刃受けばねで形成されている。刃受けばねは、金属製の帯状の板材が曲げ加工されることによって、ギリシャ文字の「Ω(オメガ)」に似た形状に形成されている。第1接続端子31B、第2接続端子32B、及び第3接続端子33Bは、プラグイン端子である。
【0031】
器体1は、第1接続端子31B、第2接続端子32B、及び第3接続端子33Bに外部電源を電気的に接続するための接続口12A、12B、12Cを有する。
【0032】
第1接続端子31Bは、器体1内の右端の上部に収容される。第1接続端子31Bは、器体1の最上段の接続口12Aに差し込まれる導体(分電盤B1の中性極(中性線)の導電バー)と電気的に接続される。第2接続端子32Bは、器体1内の右端の略中央部に収容される。第2接続端子32Bは、器体1の中段の接続口12Bに差し込まれる導体(分電盤B1のもう1つの電圧極の導電バー)と電気的に接続される。第3接続端子33Bは、器体1内の右端の下部に収容される。第3接続端子33Bは、器体1の最下段の接続口12Cに差し込まれる導体(分電盤B1の1つの電圧極の導電バー)と電気的に接続される。
【0033】
(2-5)開閉機構
開閉機構4は、可動接触子22A、22Bを駆動することによって、2つの主接点を開閉するように構成される。開閉機構4は、ハンドル40、クロスバー41、レバー42、リンク43、引外し板44、連動板45、及び複数のばねなどを有している(
図2参照)。
【0034】
(2-6)第1引外し装置
第1引外し装置5は、2つの主接点に流れる負荷電流を各別に監視し、いずれかの主接点に過負荷電流が所定時間以上流れたときに開閉機構4を釈放して、2つの主接点を自動開路させるように構成されている。第1引外し装置5は、バイメタル50Bと、導電板51Bと、調整板52Bと、調整ねじと、1つの隔壁部材54と、を有している(
図2参照)。
【0035】
(2-7)第2引外し装置
第2引外し装置6は、一方の主接点(固定接点20B、可動接点21B)に短絡電流が流れたとき、及び異常検出装置7によって制御されたときに開閉機構4を釈放して2つの主接点を自動開路させるように構成されている(
図2参照)。
【0036】
(2-8)異常検出装置
図3に異常検出装置7の回路構成を示す。異常検出装置7は、電源ブロック7Aと制御ブロック7Bと、を有している。
【0037】
電源ブロック7Aは、電源回路711とヒューズ712を有している。電源回路711は、2つの主接点を介して、外部電源である電力系統AC1から供給される100V又は200Vの交流電圧を、数十Vの交流電圧に降圧するように構成される。電源回路711は、中間端子36が接続される第1接続端子31Bと、一番下の第3接続端子33Bとを介して、外部電源から交流電圧が供給される。絶縁部材Mによって中間端子36と第1接続端子31Bが電気的に絶縁されていれば、第1接続端子31Bと第3接続端子33Bの間に耐圧試験用の高電圧が印加されても、異常検出装置7の第1回路基板71及び第2回路基板72に高電圧が印加されない。ヒューズ712は、電源回路711に流れる電流の大きさが一定時間を超えて上限値を上回ったときに溶断して電源回路711を保護する。なお、上記外部電源は、単相3線式であり、複数の接続端子(第1接続端子31B、第2接続端子32B、及び第3接続端子33B)のうちの一つである第1接続端子31Bが、外部電源の中性線に電気的に接続される。
【0038】
制御ブロック7Bは、処理回路721と、交直変換回路722と、スイッチング素子723と、2つのLED(第1LED724、第2LED725)と、操作入力受付部726と、を有している。
【0039】
交直変換回路722は、電源回路711から出力される数十Vの交流電圧を数Vの直流電圧に変換するように構成される。交直変換回路722から出力される直流電圧は、制御電圧Vccとして処理回路721に給電される。
【0040】
処理回路721は、マイクロコントローラを主構成要素とする。処理回路721は、主接点に流れる交流電流の高周波成分を検出する。処理回路721は、検出した高周波成分が、シリーズアーク放電の発生時の特徴を有するか否か、及びパラレルアーク放電の発生時の特徴を有するか否かを判定する。処理回路721は、検出した高周波成分がシリーズアーク放電の発生時の特徴又はパラレルアーク放電の発生時の特徴を有していると判定することによって、第1端子部3Aに電気的に接続されている配線(分岐配線)のアーク故障を検出する。ただし、処理回路721がアーク故障を検出する検出方法は、上述した検出方法に限定されず、例えば、主接点に流れる電流値をしきい値と比較することでアーク放電の発生の有無を判定してアーク故障を検出するような検出方法でも構わない。
【0041】
スイッチング素子723は、例えば、サイリスタのような半導体スイッチング素子が好ましい。スイッチング素子723は、処理回路721によってオン・オフされる。スイッチング素子723は、第2引外し装置6のコイル63と電気的に直列接続される。スイッチング素子723がオンされたときにコイル63に励磁電流が流れて第2引外し装置6が引外し動作を行い、スイッチング素子723がオフされているときはコイル63に励磁電流が流れずに第2引外し装置6が引外し動作を行わない。つまり、処理回路721は、スイッチング素子723をオン・オフすることによって、第2引外し装置6の引外し動作を制御することができる。
【0042】
2つのLEDは、緑色のLEDである第1LED724と、赤色のLEDである第2LED725である。これら2つのLEDは、いずれも処理回路721によって駆動される。第1LED724は、処理回路721がアーク故障などの異常を検出していないときに駆動されて緑色光を放射する。一方、第2LED725は、処理回路721がアーク故障などの異常を検出したときに駆動されて赤色光を放射する。つまり、異常検出装置7は、第1LED724から緑色光を放射することで異常が生じていないことを報知し、第2LED725から赤色光を放射することで異常が生じていることを報知することができる。
【0043】
操作入力受付部726は、後述する操作入力を受け付けたときに処理回路721に受付信号を出力する。処理回路721は、受付信号が入力されると、アーク故障などの異常を検出したときと同様に、スイッチング素子723をオンして第2引外し装置6に引外し動作を行わせるとともに、第2LED725を駆動して赤色光を放射させる。つまり、処理回路721は、操作入力受付部726が操作入力を受け付けた場合、異常検出時の動作試験を行うように構成されている。
【0044】
異常検出装置7は、第1回路基板71、第2回路基板72、操作部材73、導光部材75を有している。
【0045】
第1回路基板71は、おおよそ長方形の平板状に形成され、実装面(右側の表面)に電源ブロック7Aの電源回路711及びヒューズ712が実装されている。第2回路基板72は、おおよそ長方形の平板状に形成されている。第2回路基板72は、実装面(左側の表面7210)に第1LED724と第2LED725が前後方向に並ぶように実装されている。
【0046】
操作部材73は、全体として円柱状に形成されている。操作部材73の下端は二股に形成されている。操作部材73は、器体1に設けられた第1穴14Aに挿通され、下端部分に設けられた段部を器体1内の第1穴14Aの周縁に引掛けることにより、上下方向に移動可能に器体1に取り付けられる。
【0047】
導光部材75は、アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂などの透光性を有する合成樹脂で形成されている。導光部材75は、第1導光部751と、第2導光部752と、位置決め部753と、を有している。
【0048】
第2導光部752は、角柱状に形成されている。第1導光部751は、第2導光部752の長手方向の一端(下端)から斜め下向きに傾斜している。第1導光部751の先端面(下端面)7510は、半円筒面状に形成されており、第1LED724及び第2LED725から放射される光の入射面となる。位置決め部753は、角柱状に形成され、第2導光部752の前端の右側面から突出している(
図2参照)。
【0049】
第1LED724及び第2LED725から放射される光は、入射面から第1導光部751に入射した後、第1導光部751から第2導光部752に導光され、第2導光部752の先端面(上端面)より導光部材75の外に出射される。第2導光部752の先端面は、第1導光部751から第2導光部752に導光された光が出射する表示面7520として形成されている。
【0050】
支持部材8は、異常検出装置7の2つの回路基板(第1回路基板71及び第2回路基板72)を支持する。第1回路基板71と第2回路基板72とは、左右方向で対向して配置されている。また支持部材8は、導光部材75を支持している。
【0051】
導光部材75は、ボディ10に固定されている。ボディ10は、上方に突出する固定部101を有しており、固定部101には上下方向で貫通する貫通孔102が形成されている。貫通孔102の上端は、第2穴14Bとして固定部101の上面に開口している。貫通孔102の下端は、ボディ10の内部に開口している。導光部材75は、第2導光部752の上部が、貫通孔102に挿入されている。導光部材75の表示面7520は、第2穴14Bから器体1の外部に露出している。また貫通孔102の右側面には、凹部103が形成されており、この凹部103に導光部材75の位置決め部753が挿入されている。これにより、導光部材75は上下方向で位置決めされている。また、導光部材75は、先端面(入射面)7510が、第1LED724及び第2LED725と左右方向で対向した状態で配置される。
【0052】
(2-9)中間端子
本実施形態の回路遮断器A1は、中間端子36を備えている。中間端子36は、第2端子部3Bに設けられている(
図2参照)。中間端子36は、第1接続端子31Bの下方に配置されている。中間端子36は、第2接続端子32Bの上方に配置されている。中間端子36は、第1接続端子31Bと第2接続端子32Bとの間に配置されている。
【0053】
中間端子36は、金属製の帯状の板材が曲げ加工されることによって形成される。中間端子36は、第1片37と、第2片38と、連結片39と、を備える(
図4参照)。連結片39は、第1片37と、第2片38と、連結している。
【0054】
第1片37は、板バネ状に形成されている。すなわち、第1片37は、板バネのような弾性を有する板材で形成されている。第1片37は、連結片39の上端から左方向に突出して形成されている。中間端子36は、接触部361を有しており、接触部361は第1片37に形成されている。
【0055】
第2片38は、平板状に形成されている。第2片38は、連結片39の下端から左方向に突出して形成されている。すなわち、第1片37と第2片38とは、連結片39から見て同方向に突出している。第2片38は、上面に溶接部381を有している。溶接部381は、リード線382の一端を第2片38の上面に電気的及び機械的に接続している。中間端子36は、リード線382の他端が回路基板(第1回路基板71又は第2回路基板72)の回路と電気的に接続されている。
【0056】
中間端子36は、器体1に収容されている。器体1のボディ10には、第2接続端子32Bの上方に台座部110が形成されており、台座部110の上面に中間端子36の第2片38が載置されることで、中間端子36が配置されている。また中間端子36は、第1片37の上面が第1接続端子31Bの下面と対向するように配置される。
【0057】
器体1は、第1片37と接触するリブ111を有する。リブ111はボディ10に形成され、台座部110に配置された中間端子36の第1片37と第2片38との間に位置している。リブ111は、第1片37と接触する当接部112を有している。当接部112は、第1片37の下面と接触する部分であり、これにより、第1片37をリブ111で支持することができる。当接部112は、凸曲面を有していることが好ましく、これにより、第1片37に応力集中が生じにくくなる。凸曲面は、例えば、リブ111の角部分をR加工して形成することができる。
【0058】
第1片37の接触部361は、第1接続端子31Bと接触する状態と、第1接続端子31Bとの間で絶縁部材Mを挟持する状態と、の間で移動可能である(
図6、
図7参照)。すなわち、第1片37の上下方向での弾性変形に伴って、接触部361は上下方向で移動する。そして、接触部361は、第1片37の弾性力により、第1接続端子31Bの下面と接触する。また接触部361は、第1片37の弾性力により、第1接続端子31Bの下面との間で絶縁部材Mを挟持することができる。
【0059】
絶縁部材Mは、接触部361と第1接続端子31Bの下面との間に介在して、中間端子36と第1接続端子31Bとが電気的に接続されないようにするものである。絶縁部材Mは、電気的な絶縁性を確保できるものであれば、どのような材質で形成されていてもよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂や紙などを例示することができる。また絶縁部材Mは、中間端子36と第1接続端子31Bとの間で挟持されやすいように、厚み0.75mm程度のシートあるいはフィルムで形成することができる。また絶縁部材Mは、把持部M1と挟持部M2とで略L字状に形成することができる。把持部M1は、絶縁部材Mを第1片37と第1接続端子31Bとの間から引き出す際に、把持する部分である。挟持部M2は、第1片37と第1接続端子31Bとの間に位置して絶縁する部分である。
【0060】
絶縁部材Mは、回路遮断器A1の製造時に組み込まれる。すなわち、カバー11がボディ10から外れている状態で、挟持部M2が接触部361と第1接続端子31Bとの間に配置されて保持される。この後、カバー11がボディ10に取り付けられるが、このとき、回路遮断器A1の接続口12Aから把持部M1が器体1の外部に導出される(
図8参照)。この状態でも、挟持部M2は、接触部361と第1接続端子31Bとの間に位置している。そして、接触部361は、絶縁部材Mを接続口12Aから取外し可能な状態で、第1接続端子31Bとの間で絶縁部材Mを挟持している。
【0061】
回路遮断器A1は、出荷の前に耐電圧試験を行った後、カバー11をボディ10から外さずに、把持部M1を持って器体1から絶縁部材Mを引き出して除去し、その後、出荷される。
【0062】
(3)実施形態の利点
上述のように回路遮断器A1は、絶縁部材Mが、接触部361と第1接続端子31Bとの間に位置している状態で、第1接続端子31Bと第2接続端子32Bとの間に高電圧を印加して、耐電圧試験を行う。このため、耐電圧試験は、中間端子36と第1接続端子31Bとが絶縁部材Mで絶縁されている状態で行われる。従って、中間端子36に電気的に接続される第1回路基板71上の回路及び第2回路基板72上の回路には、高電圧が印加されにくくなる。よって、耐電圧試験の高電圧による第1回路基板71上の回路及び第2回路基板72上の回路の故障が生じにくい。
【0063】
また耐電圧試験の後では、絶縁部材Mが取外されて、接触部361と第1接続端子31Bとが接触し、中間端子36と第1接続端子31Bとが接触した状態となる。従って、第1接続端子31Bと、第1回路基板71上の回路及び第2回路基板72上の回路とが電気的に接続されることになり、実際に回路遮断器A1が使用されるときの動作が可能となる。
【0064】
(4)まとめ
本開示の第1の態様に係る回路遮断器(A1)は、回路基板(第1回路基板71、第2回路基板72)と、中間端子(36)と、複数の接続端子(第1接続端子31B)と、を備える。中間端子(36)は、回路基板(第1回路基板71、第2回路基板72)上の回路と電気的に接続される。接続端子(第1接続端子31B)は、外部電源に電気的に接続される。中間端子(36)は、接触部(361)を有する。接触部(361)は、接続端子(第1接続端子31B)と接触する状態と、接続端子(第1接続端子31B)との間で絶縁部材(M)を挟持する状態と、の間で移動可能である。
【0065】
第1の態様に係る回路遮断器(A1)は、接触部(361)と接続端子(第1接続端子31B)との間で絶縁部材(M)を挟持して中間端子(36)と接続端子(第1接続端子31B)とを電気的に絶縁した状態で耐圧試験を行うことができ、回路基板(第1回路基板71、第2回路基板72)上の回路に高電圧が印加されにくい、という効果がある。
【0066】
本開示の第2の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様に係る回路遮断器(A1)は、前記外部電源は、単相3線式である。前記複数の接続端子(第1接続端子31B、第2接続端子32B、第3接続端子33B)のうちの一つが、中性線に電気的に接続される。
【0067】
第2の態様に係る回路遮断器(A1)は、回路基板(第1回路基板71、第2回路基板72)へ供給される電圧の降圧(例えば、200Vから100Vへ)が容易に行える、という効果がある。
【0068】
本開示の第3の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1又は2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様に係る回路遮断器(A1)は、中間端子(36)と接続端子(第1接続端子31B)とを収容する器体(1)をさらに備える。接続端子(第1接続端子31B)は、プラグイン端子である。器体(1)は、接続端子(第1接続端子31B)に前記外部電源を電気的に接続するための接続口(第1接続口12A)を有する。接触部(361)は、絶縁部材(M)を接続口(第1接続口12A)から取外し可能な状態で、接続端子(第1接続端子31B)との間で絶縁部材(M)を挟持可能である。
【0069】
第3の態様に係る回路遮断器(A1)は、絶縁部材(M)を接続口(第1接続口12A)から取外して接触部(361)と接続端子(第1接続端子31B)とを接触させることができる。
【0070】
本開示の第4の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1~3のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第4の態様に係る回路遮断器(A1)において、中間端子(36)は、接触部(361)を有する板バネ状の第1片(37)と、器体(1)と接触する第2片(38)と、を備える。
【0071】
第4の態様に係る回路遮断器(A1)は、接触部(361)は、絶縁部材(M)を取外し可能な状態で、接続端子(第1接続端子31B)との間で挟持しやすい、という効果がある。
【0072】
本開示の第5の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1~4のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第5の態様に係る回路遮断器(A1)において、器体(1)は、第1片(37)と接触するリブ(111)を有する。
【0073】
第5の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1片(37)とリブ(111)で支持することができる。
【0074】
本開示の第6の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1~5のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第6の態様に係る回路遮断器(A1)において、リブ(111)は、第1片(37)と接触する当接部(112)を有する。当接部(112)は、凸曲面を有する。
【0075】
第6の態様に係る回路遮断器(A1)は、凸曲面の当接部(112)が第1片(37)に接触することにより、第1片(37)に応力集中が生じにくくなる。
【0076】
本開示の第7の態様に係る分電盤(B1)は、主開閉器(B10)と、複数の分岐開閉器(B11)と、主開閉器(B10)及び複数の分岐開閉器(B11)を収容するキャビネット(B12)と、を備える。主開閉器(B10)及び複数の分岐開閉器(B11)の少なくとも1つが、第1~6のいずれかの態様に係る回路遮断器(A1)である。
【0077】
第7の態様に係る分電盤(B1)は、組立て作業の作業性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0078】
A1 回路遮断器
B1 分電盤
M 絶縁部材
1 器体
111 リブ
112 当接部
12A 接続口(第1接続口)
31B 接続端子(第1接続端子)
32B 接続端子(第2接続端子)
33B 接続端子(第3接続端子)
36 中間端子
361 接触部
37 第1片
38 第2片
71 第1回路基板(回路基板)
72 第2回路基板(回路基板)
B10 主開閉器
B11 分岐開閉器
B12 キャビネット