(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146535
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62K 25/24 20060101AFI20241004BHJP
B62M 7/12 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B62K25/24
B62M7/12
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059504
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 悠一
【テーマコード(参考)】
3D014
【Fターム(参考)】
3D014DE06
3D014DE12
(57)【要約】
【課題】前輪の構造を簡素化できるとともに、前輪のホイールが大型化することを抑制できる鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】自動二輪車1は、前輪11及び後輪12と、上下方向に延在するフロントフォーク51と、駆動力を発生させるサブ駆動モータ40と、を備える。サブ駆動モータ40は、ステータ41と、ロータ42と、ステータ41及びロータ42を収容するモータケース430及びモータカバー431と、を備えるモータユニット400を有する。フロントフォーク51には、モータユニット400が嵌合する嵌合孔511aが形成されている。モータユニット400は、フロントフォーク51に形成された嵌合孔511aに嵌合されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪と、
上下方向に延在するフロントフォークと、
駆動力を発生させる駆動モータと、を備える鞍乗型車両であって、
前記駆動モータは、ステータと、ロータと、前記ステータ及び前記ロータを収容するモータケース及びモータカバーと、を備えるモータユニットを有し、
前記フロントフォークには、前記モータユニットが嵌合する嵌合孔が形成されており、
前記モータユニットは、前記フロントフォークに形成された前記嵌合孔に嵌合されている、
鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記モータユニットには、前記ロータの径方向外側に向かって延出する支持部が設けられており、
前記嵌合孔は、
前記支持部を収容し、前記支持部を前記ロータの周方向に係止するように形成されている、
鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両であって、
前記モータユニットには、前記前輪の車軸を軸支するベアリングが設けられている、
鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両であって、
前記フロントフォークは、前記前輪の左右両側に一対設けられており、
左右の前記フロントフォークのうちの一方側の前記フロントフォークに、前記嵌合孔が形成されており、
前記モータユニットは、前記一方側の前記フロントフォークに形成された前記嵌合孔に嵌合されており、
前記前輪の車軸の前記一方側の端部は、前記モータユニットに設けられたモータ側ベアリングに軸支されており、
前記車軸の他方側の端部は、前記他方側の前記フロントフォークに設けられたフォーク側ベアリングに軸支されている、
鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の鞍乗型車両であって、
前記他方側の前記フロントフォークには、前記前輪を制動する制動装置が設けられている、
鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、鞍乗型車両においても、CO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、駆動力を発生させる駆動モータが搭載された鞍乗型車両に関する研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、前輪のホイールハブ内に前輪を駆動させる駆動用モータが搭載された鞍乗型車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の鞍乗型車両は、ホイールハブ内に駆動用モータを配設するスペースを確保する必要があるため、前輪のホイールが大型化する、また、前輪の構造が複雑になる、という課題が生じていた。
【0006】
本発明は、前輪の構造を簡素化できるとともに、前輪のホイールが大型化することを抑制できる鞍乗型車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
前輪及び後輪と、
上下方向に延在するフロントフォークと、
駆動力を発生させる駆動モータと、を備える鞍乗型車両であって、
前記駆動モータは、ステータと、ロータと、前記ステータ及び前記ロータを収容するモータケース及びモータカバーと、を備えるモータユニットを有し、
前記フロントフォークには、前記モータユニットが嵌合する嵌合孔が形成されており、
前記モータユニットは、前記フロントフォークに形成された前記嵌合孔に嵌合されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前輪の構造を簡素化できるとともに、前輪のホイールが大型化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の自動二輪車の左側面図である。
【
図2】
図1の自動二輪車の前部をフロントカウル及びニーグリップを除いた状態で見た左側面図である。
【
図3】前照灯及び前照灯支持部材を
図2の矢印B方向から見た図である。
【
図4】
図1の自動二輪車にテレスコピック型のフロントフレームを取り付けた自動二輪車の前部を、フロントカウル及びニーグリップを除いた状態で見た左側面図である。
【
図7】
図1の自動二輪車の前輪を右側やや後方から見た斜視図である。
【
図8】
図7の制動装置近傍のC-C要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の鞍乗型車両の一実施形態としての自動二輪車を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、自動二輪車の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0011】
[自動二輪車の全体構成]
図1に示すように、本実施形態の自動二輪車1は、電動式の自動二輪車である。自動二輪車1は、前輪11及び後輪12と、自動二輪車1の骨格としての車体フレーム20と、後輪12を駆動する駆動源としてのメイン駆動モータ30と、前輪11を駆動する駆動源としてのサブ駆動モータ40と、前輪11を懸架するフロントリンクサスペンション機構50と、操舵部60と、後輪12を懸架するリヤサスペンション機構70と、シート構造体80と、を備える。
【0012】
[車体フレーム]
図1及び
図2に示すように、車体フレーム20は、フロントフレーム21と、フロントフレーム21の後端に連結するメインフレーム22と、メインフレーム22の後端に連結する左右一対のピボットフレーム23と、メインフレーム22から後方に延出するシートフレーム24と、を備える。車体フレーム20の各部材は、アルミニウム、チタン、鉄、マグネシウム等の比較的軽量であり且つ剛性の高い金属、又は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)等で形成される。
【0013】
フロントフレーム21は、ハンドル63を支持するステム支持部212から後方に向かうにしたがって下方に傾斜して延在するダウンフレーム211を備える。ダウンフレーム211の後下端部は、ボルト等の締結部材によって、メインフレーム22に固定されている。ステム支持部212には、上方に向かうにしたがって後方に傾斜する方向に貫通する挿通孔が形成されている。
【0014】
ダウンフレーム211には、後述する揺動アーム53の上アーム531が回動可能に連結する上アーム連結部211aと、後述する揺動アーム53の下アーム532が回動可能に連結する下アーム連結部211bと、が設けられている。下アーム連結部211bは、上アーム連結部211aよりも下方に設けられている。
【0015】
メインフレーム22は、フロントフレーム21のダウンフレーム211の後端部と連結する。メインフレーム22は、後方に向かうにしたがってフロントフレーム21のダウンフレーム211よりも緩やかに下方に傾斜して延在する。
【0016】
メインフレーム22は、上下方向及び前後方向に延在する左右一対の側壁部221を有する。
【0017】
ピボットフレーム23は、左右一対の側壁部221のそれぞれに設けられる。すなわち、自動二輪車1は、左右一対のピボットフレーム23を有する。左右のピボットフレーム23には、それぞれ、後述するスイングアーム71を回動可能に支持するピボット231が設けられている。
【0018】
シートフレーム24は、後方に向かうにしたがって緩やかに上方に傾斜して前後方向に延在する。シートフレーム24の前端部は、メインフレーム22に連結している。
【0019】
車体フレーム20には、フロントカウル25が取り付けられている。フロントカウル25は、車体フレーム20の前部と、車体フレーム20の前側領域の左右の一部と、を覆うカウル部材である。
【0020】
メイン駆動モータ30は、メインフレーム22の後端に固定されている。メイン駆動モータ30は、左右のピボットフレーム23の間に配置されている。そして、メイン駆動モータ30の車幅方向外側には、左右方向から見て、ピボットフレーム23がメイン駆動モータ30を上下方向に跨ぐように配置されている。これにより、メイン駆動モータ30は、左右方向からの障害物に対し、ピボットフレーム23で保護される。
【0021】
メインフレーム22には、バッテリBATが固定されている。バッテリBATは、充放電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリBATは、左右がメインフレーム22の左右の側壁部221に覆われるように配置されて、メインフレーム22に固定されている。バッテリBATは、メイン駆動モータ30、サブ駆動モータ40、及び、自動二輪車1に取り付けられた各種の補機類に供給する電力を蓄電する。
【0022】
メインフレーム22の下部には、オイルクーラOCが配置されている。オイルクーラOCには、メイン駆動モータ30を冷却する冷却オイルが流れる。この冷却オイルは、メイン駆動モータ30とオイルクーラOCとを循環し、メイン駆動モータ30の熱を吸熱してメイン駆動モータ30を冷却し、オイルクーラOCで放熱する。
【0023】
メインフレーム22の上部には、電力制御装置PCUが固定されている。電力制御装置PCUは、DC/DCコンバータ等の回路とECU等のコントローラとがユニット化された装置である。電力制御装置PCUは、メイン駆動モータ30、サブ駆動モータ40、及び、自動二輪車1に取り付けられた各種の補機類に供給する電力を制御する。
【0024】
メインフレーム22の上部には、電力制御装置PCUの後方にラジエータRADが固定されている。ラジエータRADには、電力制御装置PCUを冷却する冷却水が流れる。この冷却水は、電力制御装置PCUとラジエータRADとを循環し、電力制御装置PCUの熱を吸熱して電力制御装置PCUを冷却し、ラジエータRADで放熱する。
【0025】
[フロントリンクサスペンション機構]
フロントリンクサスペンション機構50は、上下に延びる左右一対のフロントフォーク51と、ヘッドパイプ52と、揺動アーム53と、フロントサスペンション54と、を有する。
【0026】
左右一対のフロントフォーク51は、前輪11を挟んで、前輪11の左側に配置される左フロントフォーク511と、前輪11の右側に配置される右フロントフォーク512と、を有する。左右一対のフロントフォーク51の上端部には、左フロントフォーク511の上端部と右フロントフォーク512の上端部とを連結する連結部55が設けられている。連結部55には、連結部55から上方に向かって延在するステムシャフト56が設けられている。
【0027】
ヘッドパイプ52は、筒状の部材である。ヘッドパイプ52の筒状の内部には、ステムシャフト56が下方から挿通する。ステムシャフト56は、ヘッドパイプ52の軸心を中心に回動可能にヘッドパイプ52に支持される。
【0028】
ヘッドパイプ52の上端部近傍前側には、前方向に突出する上アーム連結部52aが形成されている。ヘッドパイプ52の下端部近傍後側には、後方向に突出する下アーム連結部52bが形成されている。
【0029】
揺動アーム53は、上下方向に揺動可能にフロントフレーム21に支持されるとともに、ヘッドパイプ52を上下方向に揺動可能に支持する。揺動アーム53は、ヘッドパイプ52の上アーム連結部52aに連結する上アーム531と、ヘッドパイプ52の下アーム連結部52bに連結する下アーム532と、を有する。
【0030】
上アーム531は、前後方向に延在する。上アーム531の後端は、フロントフレーム21のダウンフレーム211に設けられた上アーム連結部211aに左右方向を軸に回動可能に支持される。したがって、上アーム531は、後端を軸に前端が上下方向に揺動可能となっている。上アーム531の前端は、ヘッドパイプ52の上アーム連結部52aを、左右方向を軸に回動可能に支持する。
【0031】
下アーム532は、上アーム531の下方に配置され、前後方向に延在する。下アーム532の後端は、フロントフレーム21のダウンフレーム211に設けられた下アーム連結部211bに左右方向を軸に回動可能に支持される。したがって、下アーム532は、後端を軸に前端が上下方向に揺動可能となっている。下アーム532の前端は、ヘッドパイプ52の下アーム連結部52bを、左右方向を軸に回動可能に支持する。下アーム532の前端と後端との間には、フロントサスペンション54の下端を支持するサスペンション下端支持部532aが形成されている。
【0032】
フロントサスペンション54は、略円柱状の部材である。フロントサスペンション54は、上方に向かうにしたがって後方に傾斜して上下方向に延在する。フロントサスペンション54の上端は、車体フレーム20に左右方向を軸に回動可能に支持される。フロントサスペンション54の下端は、下アーム532のサスペンション下端支持部532aに左右方向を軸に回動可能に支持される。フロントサスペンション54は、略円柱状の軸方向に伸縮可能となっている。
【0033】
[操舵部]
操舵部60は、回動部62と、ハンドル63と、リンク部64と、を有する。
【0034】
回動部62の下側部分は、円柱状を有しており、フロントフレーム21のステム支持部212に設けられた挿通孔に挿通する。回動部62は、フロントフレーム21のステム支持部212の挿通孔の貫通方向を軸に回動可能にフロントフレーム21に支持される。回動部62の上端部は、フロントフレーム21のステム支持部212よりも上方に位置している。回動部62の下端部は、フロントフレーム21のステム支持部212よりも下方に位置している。
【0035】
ハンドル63は、バーハンドルであり、フロントフレーム21のステム支持部212よりも上側の回動部62の所定位置に固定されている。
【0036】
リンク部64は、フロントフレーム21のステム支持部212よりも下側の回動部62の所定位置に支持されている。
【0037】
リンク部64は、上リンク641と下リンク642と連結軸643とを有する。上リンク641の下端部と下リンク642の上端部とが、連結軸643で接続されている。連結軸643は左右方向に延在し、上リンク641と下リンク642とは、互いに連結軸を中心に回動自在に連結されている。
【0038】
上リンク641の上端は、フロントフレーム21のステム支持部212よりも下側の回動部62の所定位置に、左右方向を軸に回動可能に支持されている。
【0039】
下リンク642の下端は、ステムシャフト56の上端に、左右方向を軸に回動可能に支持されている。
【0040】
上リンク641と下リンク642との接続部である連結軸643は、上リンク641の上端及び下リンク642の下端よりも前方に位置している。すなわち、リンク部64は、左右方向から見て、上リンク641と下リンク642との接続部である連結軸643が前方に位置するように、側面視で略“く”の字状に前方に突出している。リンク部64は、ステムシャフト56と回動部62とを接続することで、ハンドル63の操舵をステムシャフト56に伝達する。そして、リンク部64は、上リンク641と下リンク642とが連結軸643を中心に回動することによって、ヘッドパイプ52の上下動を許容する。
【0041】
回動部62の下端部には、前照灯65を支持する前照灯支持部材66が設けられている。前照灯支持部材66は、回動部62の下端部から前方斜め下方向に向かって延在している。
図3に示すように、前照灯支持部材66には、延在方向に対して垂直な方向に貫通する貫通孔66aが形成されている。この貫通孔66aを下リンク642が挿通する。そして、前照灯支持部材66の下部領域の前方を向く面に、前照灯65がリンク部64と一体に設けられている。
【0042】
このように、フロントリンクサスペンション機構50及び操舵部60は、フロントフレーム21に取り付けられている。したがって、例えば、左右のフロントフォークにフロントサスペンションが設けられた従来のテレスコピック型のフロントサスペンション機構と操舵部とが取り付けられたフロントフレーム等、異なるフロントサスペンション機構と操舵部とが取り付けられた別個のフロントフレームの載せ替えが可能であり、フレームを共通化して、フロント懸架構造が異なる複数の車両を提供することが可能となる。
【0043】
例えば、
図4に示すように、フロントフレーム21を取り外し、フロントフレーム21に代えてフロントフレーム21Aをメインフレーム22の前部に取り付けることで、フロントフレームの載せ替えが可能であり、フレームを共通化して、フロント懸架構造が異なる複数の車両を提供することが可能となっている。
【0044】
フロントフレーム21Aの前端には、ヘッドパイプ52Aが設けられている。ヘッドパイプ52Aは、前方下向きに延在するパイプ状の部材である。ヘッドパイプ52Aには、操舵部60Aのステムシャフトが挿通する。フロントフレーム21Aは、ヘッドパイプ52Aから後方に向かうにしたがって下方に傾斜して延在するダウンフレーム211Aを備える。ダウンフレーム211Aの後下端部は、ボルト等の締結部材によって、メインフレーム22に固定可能である。
【0045】
操舵部60Aは、左右一対のフロントフォーク51Aを支持する。左右一対のフロントフォーク51Aは、前輪11Aの左右両側に配置され、下方に向かうにしたがって前方に傾斜して上下方向に延在し、下端部で前輪11Aを軸支するとともに前輪11Aに入力された衝撃を吸収する緩衝装置としても機能する。
【0046】
操舵部60Aは、左右方向に延在し前輪11Aを転舵する回動自在なバー形状のハンドル63Aと、フロントフレーム21Aのヘッドパイプ52Aに挿通されるステムシャフトと、左右のフロントフォーク51Aの上端部同士を連結固定するトップブリッジ57Aと、トップブリッジ57Aよりも下方で左右のフロントフォーク51Aを連結固定するアンダーブラケット58Aと、を備える。したがって、左右のフロントフォーク51Aは、トップブリッジ57Aとアンダーブラケット58Aとに固定される。
【0047】
ハンドル63Aは、トップブリッジ57Aの上面に固定される。そして、自動二輪車1の運転者が左右方向に延在するハンドル63Aを回動させると、操舵部60Aは、ステムシャフト(フロントフレーム21Aのヘッドパイプ52A)を軸に一体に回動する。このとき、操舵部60Aのトップブリッジ57A及びアンダーブラケット58Aに固定された左右のフロントフォーク51Aと、左右のフロントフォーク51Aの下端部に支持された前輪11Aも、ステムシャフト(フロントフレーム21Aのヘッドパイプ52A)を軸に操舵部60Aと一体に回動する。このようにして、ハンドル63Aは、前輪11Aを転舵する。これにより、自動二輪車1の運転者は、左右の手でハンドル63Aのそれぞれ左右の端部近傍を握って走行し、走行時にハンドル63Aを回動することによって前輪11Aを転舵して自動二輪車1を左右方向に旋回させることができる。
【0048】
[リヤサスペンション機構]
図1に戻って、リヤサスペンション機構70は、スイングアーム71と、リヤサスペンション72と、を有する。
【0049】
本実施形態のスイングアーム71は、片持ち式のスイングアームである。スイングアーム71は、前後方向に延在する。スイングアーム71の前端部は、ピボットフレーム23の左右方向に延在するピボット231に軸支される。したがって、スイングアーム71は、左右方向に延在するピボット231を軸に回動可能に車体フレーム20のピボットフレーム23に支持される。よって、スイングアーム71の後端部は、ピボット231を軸に上下方向に揺動可能となっている。スイングアーム71の後端部は、後輪12の車軸を右側から支持する。
【0050】
後輪駆動用のメイン駆動モータ30と後輪12とは、ベルトやギヤ等を備える不図示の動力伝達機構で連結される。なお、スイングアーム71は、当該動力伝達機構を収容するケースとして使用されてもよい。
【0051】
リヤサスペンション72は、略円柱状の部材である。リヤサスペンション72は、下方に向かうにしたがって後方に傾斜するようにして上下方向に延在する。リヤサスペンション72の前上端部は、左右方向を軸に回動可能にメインフレーム22又はシートフレーム24に支持される。リヤサスペンション72の後下端部は、左右方向を軸に回動可能にスイングアーム71に支持される。そして、リヤサスペンション72は、略円柱状の軸方向に伸縮可能となっている。
【0052】
[シート構造体]
シート構造体80は、車体フレーム20を上方から覆うようにして配置される。シート構造体80は、車体フレーム20の上部に位置して着座面を形成する上面部81と、上面部81の左端部と右端部とからそれぞれ下方に延在する左右一対の側面部82と、を有する。
【0053】
車体フレーム20には、シート構造体80の左右それぞれの側面部82の前部にニーグリップ83が取り付けられている。ニーグリップ83は、フロントカウル25の一部であってもよいし、シート構造体80の一部であってもよいし、フロントカウル25及びシート構造体80と別部材であってもよい。
【0054】
[フロントフォーク周辺]
前輪駆動用のサブ駆動モータ40は、左フロントフォーク511に取り付けられている。
【0055】
図1、
図5及び
図6に示すように、サブ駆動モータ40は、ステータ41と、ロータ42と、ステータ41及びロータ42を収容するモータケース430及びモータカバー431と、を備えるモータユニット400を有する。
【0056】
ステータ41は、モータケース430に固定されている。
【0057】
ロータ42は、前輪11の車軸111に設けられている。
【0058】
モータケース430は、前輪11の車軸111の軸方向から見て、略円筒状の外周壁部432と、外周壁部432の一方側の端部を閉塞する底壁部433と、を有する。
【0059】
モータカバー431は、外周壁部432の他方側、すなわち外周壁部432の底壁部433と反対側を閉塞する。
【0060】
このようにして、モータケース430の外周壁部432がモータユニット400の外周部を構成し、モータケース430の底壁部433がモータユニット400の底部を構成し、モータカバー431がモータユニット400のカバー部を構成する。
【0061】
左フロントフォーク511の下端部近傍には、左右方向に貫通し、モータユニット400が嵌合する嵌合孔511aが形成されている。そして、モータユニット400は、車幅方向外側(すなわち、左側)から左フロントフォーク511の嵌合孔511aに嵌合されている。モータユニット400は、モータケース430の外周壁部432が左フロントフォーク511の嵌合孔511aと嵌合し、モータカバー431がステータ41及びロータ42の車幅方向外側(すなわち、左側)を覆い、モータケース430の底壁部433がステータ41及びロータ42の車幅方向内側(すなわち、右側)を覆う。
【0062】
これにより、前輪11の構造を簡素化できるとともに、前輪11のホイール112が大型化することを抑制できる。また、自動二輪車1の組立工程において、フロントフォーク51を組み付けた後に、前輪11とともにサブ駆動モータ40を組み付けることができるので、自動二輪車1の組立工程における組付性が向上する。
【0063】
モータユニット400には、前輪11の車軸111の径方向外側に向かって突起状に延出する支持部434が設けられている。本実施形態では、支持部434は、モータカバー431に設けられている。なお、支持部434は、モータケース430に設けられていてもよいし、モータケース430及びモータカバー431に設けられていてもよい。
【0064】
左フロントフォーク511の嵌合孔511aの車幅方向外側端部には、モータユニット400の支持部434を収容可能に径方向外側に一部が延出した窪部511bが形成されている。そして、嵌合孔511aは、窪部511bにモータユニット400の支持部434を収容し、支持部434を前輪11の車軸111の周方向に係止するように形成されている。
【0065】
支持部434には、左右方向に貫通して締結ボルト44が挿通可能な挿通孔434aが形成されている。そして、締結ボルト44を支持部434の挿通孔434aに挿通させて左フロントフォーク511に締結することによって、サブ駆動モータ40は、左フロントフォーク511に固定される。
【0066】
これにより、サブ駆動モータ40が前輪11の車軸111の周方向に位置ずれすることを防止する回り止めとして支持部434が機能するとともに、コンパクト且つ簡単な構造でサブ駆動モータ40を左フロントフォーク511に固定することができる。
【0067】
モータユニット400には、前輪11の車軸111を軸支するモータ側ベアリング45が設けられている。
【0068】
モータ側ベアリング45は、モータカバー431に設けられて前輪11の車軸111の左端部を軸支する第1モータ側ベアリング451と、モータケース430の底壁部433に設けられて前輪11の車軸111をロータ42と前輪11との間で軸支する第2モータ側ベアリング452と、を有する。
【0069】
これにより、サブ駆動モータ40で前輪11を軸支することができるので、部品点数を削減できる。
【0070】
右フロントフォーク512の下端部近傍には、前輪11の車軸111の右端部を軸支するフォーク側ベアリング512aが設けられている。したがって、前輪11の車軸111の左端部は、モータカバー431に設けられた第1モータ側ベアリング451に軸支されており、前輪11の車軸111の右端部は、右フロントフォーク512に設けられたフォーク側ベアリング512aに軸支されている。
【0071】
これにより、前輪11の車軸111を前輪の左側と右側の双方で軸支することができるので、荷重を分散して前輪11を支持できる。
【0072】
図7及び
図8に示すように、右フロントフォーク512には、前輪11を制動する制動装置90が設けられている。制動装置90は、ディスクブレーキ装置である。制動装置90は、不図示のブレーキパッドが取り付けられたブレーキキャリパ91を備える。
【0073】
前輪11の右側には、前輪と一体に回転するブレーキディスク92が取り付けられている。
【0074】
これにより、前輪11の左側にサブ駆動モータ40が配置され、前輪11の右側に制動装置90が配置されるので、自動二輪車1の左右方向の重量バランスが向上する。
【0075】
前輪11のホイール112は、径方向中央部分が車幅方向内側に湾曲した形状を有している。ブレーキディスク92は、円環状を有するディスク部921と、ディスク部921の外周側端部から径方向外側に延出する固定部92aが周方向に沿って複数形成されている。ブレーキディスク92は、ボルト等の固定部材によって複数の固定部92aでホイール112に固定されている。ブレーキディスク92は、ディスク部921が前輪11のホイール112から車幅方向に離隔し、ディスク部921と前輪11のホイール112との間に空間が形成されるように取り付けられている。
【0076】
ブレーキキャリパ91は、ブレーキディスク92の円環状のディスク部921を、車軸111の中心側から径方向外側に向かって挟み込むように設けられる。
【0077】
これにより、ブレーキキャリパ91の小型化を図りつつ、右フロントフォーク512と前輪11の車軸111との連結箇所の近傍にブレーキキャリパ91を固定することができる。これにより、制動装置90の小型化及び組付性の向上を図りつつ、ブレーキキャリパ91とブレーキディスク92との相対位置の精度が向上し、制動装置90において安定した制動性能を得ることができる。また、右フロントフォーク512にブレーキキャリパ91を固定するための構造を設ける必要がなく、製造コストを削減できる。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0079】
例えば、本実施形態では、鞍乗型車両は、自動二輪車であるものとしたが、自動二輪車以外の鞍乗型車両であってもよい。
【0080】
また、例えば、本実施形態では、フロントフォーク51は、左右一対(左フロントフォーク511及び右フロントフォーク512)備えるものとしたが、左右いずれか一方のみであってもよい。
【0081】
また、例えば、本実施形態では、ロータ42は、前輪11の車軸111に設けられているものとしたが、ロータ42は、モータユニット400内に設けられた回転シャフトに設けられており、この回転シャフトが減速ギヤ等を介して前輪11の車軸111に連結されていてもよい。
【0082】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0083】
(1) 前輪(前輪11)及び後輪(後輪12)と、
上下方向に延在するフロントフォーク(フロントフォーク51)と、
駆動力を発生させる駆動モータ(サブ駆動モータ40)と、を備える鞍乗型車両(自動二輪車1)であって、
前記駆動モータは、ステータ(ステータ41)と、ロータ(ロータ42)と、前記ステータ及び前記ロータを収容するモータケース(モータケース430)及びモータカバー(モータカバー431)と、を備えるモータユニット(モータユニット400)を有し、
前記フロントフォークには、前記モータユニットが嵌合する嵌合孔(嵌合孔511a)が形成されており、
前記モータユニットは、前記フロントフォークに形成された前記嵌合孔に嵌合されている、
鞍乗型車両。
【0084】
(1)によれば、前輪の構造を簡素化できるとともに、前輪のホイールが大型化することを抑制できる。また、鞍乗型車両の組立工程において、フロントフォークを組み付けた後に、前輪とともに駆動モータを組み付けることができるので、鞍乗型車両の組立工程における組付性が向上する。
【0085】
(2) (1)に記載の鞍乗型車両であって、
前記モータユニットには、前記ロータの径方向外側に向かって延出する支持部(支持部434)が設けられており、
前記嵌合孔は、
前記支持部を収容し、前記支持部を前記ロータの周方向に係止するように形成されている、
鞍乗型車両。
【0086】
(2)によれば、駆動モータがロータの周方向に位置ずれすることを防止する回り止めとして支持部が機能するとともに、コンパクト且つ簡単な構造で駆動モータをフロントフォークに固定することができる。
【0087】
(3) (1)又は(2)に記載の鞍乗型車両であって、
前記モータユニットには、前記前輪の車軸(車軸111)を軸支するベアリング(モータ側ベアリング45)が設けられている、
鞍乗型車両。
【0088】
(3)によれば、駆動モータで前輪を軸支することができるので、部品点数を削減できる。
【0089】
(4) (1)又は(2)に記載の鞍乗型車両であって、
前記フロントフォークは、前記前輪の左右両側に一対設けられており、
左右の前記フロントフォークのうちの一方側の前記フロントフォークに、前記嵌合孔が形成されており、
前記モータユニットは、前記一方側の前記フロントフォークに形成された前記嵌合孔に嵌合されており、
前記前輪の車軸(車軸111)の前記一方側の端部は、前記モータユニットに設けられたモータ側ベアリング(第1モータ側ベアリング451)に軸支されており、
前記車軸の他方側の端部は、前記他方側の前記フロントフォークに設けられたフォーク側ベアリング(フォーク側ベアリング512a)に軸支されている、
鞍乗型車両。
【0090】
(4)によれば、前輪の車軸を前輪の一方側と他方側の双方で軸支することができるので、荷重を分散して前輪を支持できる。
【0091】
(5) (4)に記載の鞍乗型車両であって、
前記他方側の前記フロントフォークには、前記前輪を制動する制動装置(制動装置90)が設けられている、
鞍乗型車両。
【0092】
(5)によれば、前輪の一方側に駆動モータのモータユニットが配置され、前輪の他方側に制動装置が配置されるので、鞍乗型の左右方向の重量バランスが向上する。
【符号の説明】
【0093】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
11 前輪
111 車軸
12 後輪
40 サブ駆動モータ(駆動モータ)
400 モータユニット
41 ステータ
42 ロータ
430 モータケース
431 モータカバー
434 支持部
45 モータ側ベアリング(ベアリング)
451 第1モータ側ベアリング(モータ側ベアリング)
51 フロントフォーク
511a 嵌合孔
512a フォーク側ベアリング
90 制動装置