(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146543
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241004BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20241004BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20241004BHJP
C08L 25/14 20060101ALI20241004BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEZ
C08L71/12
C08L25/04
C08L25/14
C08L51/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059515
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】今野 勝典
(72)【発明者】
【氏名】塚田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】植草 伸也
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA13D
4F074AA32D
4F074AA33
4F074AA77
4F074AA98
4F074BA01
4F074BA31
4F074BC12
4F074CA22
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA34
4F074DA45
4F074DA47
4J002BC032
4J002BC073
4J002CH071
4J002GC00
4J002GG01
4J002GG02
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】耐熱性および耐衝撃性に優れた耐熱性樹脂発泡シートを製造可能な、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル及びスチレン-メタクリル酸共重合体を含有した耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物及び上記耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物からなることを特徴とする耐熱性樹脂発泡シートを提供することを目的とする。
【解決手段】スチレン系樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル(B)及びスチレン-メタクリル酸共重合体(C)を含有した耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物であり、上記スチレン系樹脂(A)、上記ポリフェニレンエーテル(B)及び上記スチレン-メタクリル酸共重合体(C)の合計を100質量部としたとき、上記スチレン系樹脂(A)25から40質量部、(B)ポリフェニレンエーテル51から75質量部、スチレン-メタクリル酸共重合体(C)0から24質量部、を含有した耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル(B)及びスチレン-メタクリル酸共重合体(C)を含有した耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物であり、前記スチレン系樹脂(A)、前記ポリフェニレンエーテル(B)及び前記スチレン-メタクリル酸共重合体(C)の合計を100質量部としたとき、前記スチレン系樹脂(A)25から40質量部、(B)ポリフェニレンエーテル51から75質量部、スチレン-メタクリル酸共重合体(C)0から24質量部、を含有した耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂(A)がゴム変性スチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ゴム変性スチレン系樹脂がハイインパクトポリスチレンであることを特徴とする請求項2に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ハイインパクトポリスチレンのゴム状分散粒子の体積中位粒子径が1.0~4.0μmである事を特徴とする請求項3に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ハイインパクトポリスチレンに用いるポリブタジエンの1,4-シス構造割合が90モル%以上である事を特徴とする請求項3または4に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
【請求項6】
前記スチレン-メタクリル酸共重合体(C)中のメタクリル酸含有量が2~10質量%である事を特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物からなることを特徴とする耐熱性樹脂発泡シート。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物とスチレン-メタクリル酸共重合体からなることを特徴とする耐熱性樹脂発泡シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル及びスチレン-メタクリル酸共重合体を含有した耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂の発泡シートは軽量性、断熱性に優れ外観も美麗な事から、食品トレーや弁当容器、即席めんカップ容器等に加工され、食品包装用途で幅広く使用されている。近年食品包装用途においては、電子レンジの普及が進んだことにより、電子レンジでの加熱に耐えるために高い耐熱性が要求され、スチレン系樹脂組成物の発泡シートでは、高倍率の発泡が可能な、発泡特性に優れる材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-188537
【特許文献2】特開2008-094919
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2が開示するスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂を含むスチレン系樹脂組成物は、耐熱性を備えるものの、耐衝撃性が十分ではない欠点があった。
【0005】
本発明の目的は、耐熱性および耐衝撃性に優れた耐熱性樹脂発泡シートを製造可能な、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル及びスチレン-メタクリル酸共重合体を含有した耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物及び上記耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物からなることを特徴とする耐熱性樹脂発泡シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1).スチレン系樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル(B)及びスチレン-メタクリル酸共重合体(C)を含有した耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物であり、上記スチレン系樹脂(A)、上記ポリフェニレンエーテル(B)及び上記スチレン-メタクリル酸共重合体(C)の合計を100質量部としたとき、上記スチレン系樹脂(A)25から40質量部、(B)ポリフェニレンエーテル51から75質量部、スチレン-メタクリル酸共重合体(C)0から24質量部、を含有した耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
(2).上記スチレン系樹脂(A)がゴム変性スチレン系樹脂であることを特徴とする(1)に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
(3).上記ゴム変性スチレン系樹脂がハイインパクトポリスチレンであることを特徴とする(2)に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
(4).上記ハイインパクトポリスチレンのゴム状分散粒子の体積中位粒子径が1.0~4.0μmである事を特徴とする(3)に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
(5).上記ハイインパクトポリスチレンに用いるポリブタジエンの1,4-シス構造割合が90モル%以上である事を特徴とする(3)または(4)に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
(6).上記スチレン-メタクリル酸共重合体(C)中のメタクリル酸含有量が2~10質量%である事を特徴とする(1)~(5)のいずれか1項に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物。
(7).(1)~(6)のいずれか1項に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物からなることを特徴とする耐熱性樹脂発泡シート。
(8).(1)~(7)のいずれか1項に記載の耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物とスチレン-メタクリル酸共重合体からなることを特徴とする耐熱性樹脂発泡シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱性および耐衝撃性に優れた、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル及びスチレン-メタクリル酸共重合体を含有した耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物及び上記耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物からなることを特徴とする耐熱性樹脂発泡シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0009】
〔スチレン系樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係る耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル(B)及びスチレン-メタクリル酸共重合体(C)を含有する。
【0010】
スチレン系樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル(B)及びスチレン-メタクリル酸共重合体(C)の合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂(A)の含有量は、25から40質量部であり、28~35質量部であることが好ましい。具体的には、例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、スチレン系樹脂(A)は、種々のスチレン系樹脂(A)を併用してもよく、スチレン系樹脂(A)を併用する場合には、スチレン系樹脂(A)の使用量は、併用するスチレン系樹脂(A)の合計量を意味する。スチレン系樹脂(A)の含有量が40質量部を超える場合、耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物のビカット軟化温度(VST)が低下する。スチレン系樹脂(A)の含有量が25質量部未満である場合、耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物のシャルピー強度が低下する。
【0011】
スチレン系樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル(B)及びスチレン-メタクリル酸共重合体(C)の合計を100質量部としたとき、ポリフェニレンエーテル(B)の含有量は、51から75質量部であり、51~70質量部であることが好ましい。具体的には、例えば、51、52、53、54、55、60、65、70、71、72、73、74及び75質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、ポリフェニレンエーテル(B)は、種々のポリフェニレンエーテル(B)を併用してもよく、ポリフェニレンエーテル(B)を併用する場合には、ポリフェニレンエーテル(B)の使用量は、併用するポリフェニレンエーテル(B)の合計量を意味する。ポリフェニレンエーテル(B)の含有量が75質量部を超える場合、耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物の押出性が低下する。ポリフェニレンエーテル(B)の含有量が51質量部未満である場合、耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物のVSTが低下する。
【0012】
スチレン系樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル(B)及びスチレン-メタクリル酸共重合体(C)の合計を100質量部としたとき、スチレン-メタクリル酸共重合体(C)の含有量は、0から24質量部であり、0~21質量部であることが好ましい。具体的には、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23及び24質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、スチレン-メタクリル酸共重合体(C)は、種々のスチレン-メタクリル酸共重合体(C)を併用してもよく、スチレン-メタクリル酸共重合体(C)を併用する場合には、スチレン-メタクリル酸共重合体(C)の使用量は、併用するスチレン-メタクリル酸共重合体(C)の合計量を意味する。スチレン-メタクリル酸共重合体(C)の含有量が25質量部を超える場合、耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物のシャルピー強度が低下する。
【0013】
<スチレン系樹脂(A)>
スチレン系樹脂(A)は、芳香族ビニル化合物系単量体をラジカル重合して得られるものであり、必要に応じて共役ジエン系ゴム状重合体を加えてゴム変性を行ってもよい。重合方法としては公知の方法、例えば、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により製造することができる。芳香族ビニル化合物系単量体は、単環又は多環の芳香族ビニル系単量体であり、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の単独または2種以上の混合物であり、好ましくは、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレンの単独または2種以上の混合物である。芳香族ビニル系単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。スチレン系モノマーの単独重合体は、芳香族ビニル系単量体であるスチレン系モノマーを重合して得られるものである。スチレン系モノマーの単独重合体とは、スチレン系モノマーのみの重合体であることを意味し、2種類以上のスチレン系モノマーの共重合体であってもよい。
【0014】
スチレン系樹脂(A)は、ゴム変性スチレン系樹脂であってもよい。ゴム変性スチレン系樹脂は、スチレン系単量体にゴム成分を溶解し、熱重合または過酸化物等の重合開始剤を用いて攪拌下で重合させた物であり、製造プロセスとしてはバッチ重合でも連続重合でも良い。ゴム成分としては、ブタジエン、イソプレン等の単独重合体や、ブタジエンと共重合可能なスチレンやメタクリル酸メチル等との共重合体が用いられ、共重合体の分子構造はランダム構造でもブロック構造でも良く、分岐構造を有しても良い。またこうしたゴム変性スチレン系樹脂は、樹脂組成物としてのゴム成分量や衝撃強度、流動性を調節する目的で、ゴム成分を含まないポリスチレン(GPPS)と併用し用いても良い。ゴム変性スチレン系樹脂は、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体であってもよく、特にハイインパクトポリスチレンが好ましい。スチレン系樹脂(A)のゴム変性に用いるゴム状重合体は、共役ジエン系ゴム状重合体であってもよい。共役ジエン系ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダムまたはブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン-イソプレンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴムなどが挙げられるが、特にポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンは、シス-1,4構造割合が高いハイシス型であってもシス-1,4構造割合が低いローシス型であってもよいが、シス-1,4構造割合が高いハイシス型であることが好ましく、1,4-シス構造割合が90モル%以上であることがより好ましい。また、これらは一部水素添加されていてもよく、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。ある実施形態において、スチレン系樹脂(A)は、スチレン-メタクリル酸共重合体を除く。
【0015】
本実施形態にかかるゴム変性スチレン系樹脂100質量部中のゴム状重合体の含有量は、強度と剛性の観点から4.0~15.0質量部が好ましく、8.0~12.0質量部がさらに好ましい。ゴム状重合体の含有量がこの範囲にあることで、衝撃強度と剛性のバランスが良いため好ましい。なお、ゴム状重合体の含有量は4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、ゴム状重合体を併用する場合には、ゴム状重合体の使用量は、併用するゴム状重合体の合計量を意味する。
【0016】
ゴム状重合体の含有量は、例えば、次のようにして測定できる。
試料をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、15質量%のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出する。
【0017】
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状重合体は、ゴム状分散粒子として存在していてもよい。ゴム変性スチレン系樹脂のゴム状分散粒子の体積中位粒子径は、1.0~4.0μmであってもよく、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。ゴム状重合体を併用する場合には、ゴム状重合体の体積中位粒子径は、併用するゴム状重合体全体での体積中位粒子径を意味する。体積中位粒子径が1.0~4.0μmの範囲内であれば、耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物の耐熱性および耐衝撃性が良好になる。
【0018】
ゴム状分散粒子の粒子径を調整する方法としては、重合工程においてゴム粒子の相転域での攪拌速度を調整する方法や、原料液中の連鎖移動開始剤の量を調整する方法などが挙げられる。なお、ゴム状分散粒子の体積中位粒子径は、ゴム変性スチレン系樹脂をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA-920:相対屈折率120A000I)により測定して求めた体積基準の粒径分布曲線の50体積%粒子径をもって本発明の体積中位粒子径とする。
【0019】
スチレン系樹脂(A)の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0020】
連続重合の場合、まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0021】
スチレン系樹脂(A)の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
【0022】
<ポリフェニレンエーテル(B)>
ポリフェニレンエーテル(B)は、フェノール化合物の酸化カップリングにより製造することができる。ポリフェニレンエーテルの酸化カップリング反応触媒としては、特に制限はないが、銅、マンガン、コバルト等の重金属化合物の少なくとも1種を用いる(米国特許第4,042,056号、同第3,306,874号、同第3,306,875号公報等参照)。
【0023】
フェノールの具体例としては、フェノール、o-,m-,p-クレゾール、2,6-、2,5-、2,4-または3,5-ジメチルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2-メチル-6-t-ブチルフェノールなどが挙げられる。上記フェノール化合物は二種以上を共重合してもよく、さらに得られるホモポリマーもしくはコポリマーを二種以上混合使用してよい。上記フェノール化合物の中でも特に2,6-ジメチルフェノールが好適であり、従って本発明においてはこれを重合して得られるポリ(2,6-ジメチルー1,4-フェニレン)エーテルが良好な結果を与える。
本発明における上記ポリフェニレンエーテルの分子量は、特に限定はしないが好適なのは極限粘度が0.3dl/g以上(温度25℃、溶媒クロロホルム中)であり、好ましくは極限粘度0.3~0.6dl/gである。具体的には例えば、0.3、0.4、0.5及び0.6dl/gであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってよい。このような範囲とすることで、機械的強度が良好な耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物が得られる。
【0024】
<スチレン-メタクリル酸共重合体(C)>
スチレン-メタクリル酸共重合体(C)は、スチレンモノマーとメタクリル酸モノマーを熱又は過酸化物触媒によるラジカル重合により共重合させる事で得られる。また、重合方式としては塊状重合、溶液重合、懸濁重合等、公知のスチレン重合方式を用いる事が出来る。
【0025】
スチレン-メタクリル酸共重合体(C)中のメタクリル酸の含有量は、2~10質量%であることが好ましい。具体的には例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってよい。メタクリル酸の含有量は、重合工程における原料液のメタクリル酸濃度によって調整出来る。
【0026】
本発明のスチレン-メタクリル酸共重合体(C)の質量平均分子量(Mw)は16万以上であることが好ましい。Mwが16万以上の場合、強度と成形性のバランスが良好な耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物が得られる。。スチレン-メタクリル酸共重合体(C)のMwは重合工程での反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって調整する事が出来る。
【0027】
スチレン-メタクリル酸共重合体(C)の質量平均分子量(Mw)は、スチレン系樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)を算出する方法により算出することができる。
【0028】
<ガラス転移温度(Tg)>
本実施形態にかかるスチレン-メタクリル酸共重合体(C)は、耐熱性と成形加工性の観点からガラス転移温度(Tg)が50~160℃であることが好ましく、より好ましくは80~130℃である。ガラス転移温度(Tg)は、例えば、単独重合体を構成するモノマーおよび共重合体の質量平均分子量を調整することによって制御することができる。
ガラス転移温度(Tg)は、例えば、SII社製EXTER DSC6200を使用して、20℃から10℃/分の昇温速度により測定できる。
【0029】
<他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の要旨を超えない範囲で他の添加物、例えば補強材、難燃剤、染顔料、着色防止剤、滑剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、充填剤、結晶化核剤、相溶化剤等の公知の添加剤、酸化チタンやカーボンブラックなどの着色剤などの改質剤を添加することができる。これらの添加方法は、特に限定されず、公知の方法で添加すれば良い。例えば、スチレン系樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル(B)及びスチレン-メタクリル酸共重合体(C)の製造時の原料の仕込工程、重合工程、仕上工程で添加する方法や、押出機や成形機を用いて樹脂組成物を混合する工程で添加する方法を適用することができる。
【0030】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の混合方法は、特に限定されず、公知の混合技術を適用することが出来る。例えば、ミキサー型混合機、V型ブレンダー、及びタンブラー型混合機等の混合装置を用いて、各種原料を予め混合しておき、その混合物を溶融混練することによって、均一な樹脂組成物を製造することが出来る。溶融混練装置も、特に限定されないが、例えばバンバリー型ミキサー、ニーダー、ロール、単軸押出機、特殊単軸押出機、及び二軸押出機等が挙げられる。更に、押出機等の溶融混練装置の途中から難燃剤等の添加剤を別途添加する方法もある。
【0031】
本発明の樹脂組成物から成形品、フィルム、シート及び発泡体を得る成形法には特に制限は無くカレンダ成形、中空成形、押出発泡成形、異形押出成形、ラミネート成形、インフレーション成形、Tダイフィルム成形、シート成形、真空成形、圧空成形などの押出成形法や、射出成形、RIM成形、射出発泡成形などの射出成形法といった公知の成形法を好適に用いることが出来る。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、それ自体を用いて第1のシートを成形しても良いが、本発明の樹脂組成物にさらなるスチレン系樹脂(第2のスチレン系樹脂)を添加して第2のシートを成形することもでき、この場合も耐熱性および耐衝撃性に優れたシートが得られる。第2のスチレン系樹脂としては、上記した本発明の樹脂組成物を製造する際に用いられるスチレン系樹脂(以下、「第1のスチレン系樹脂」と記す)として例示したスチレン系樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
第2のシートの成形に際しては、本発明の樹脂組成物と第2のスチレン系樹脂とを溶融混練して予め第2の樹脂組成物を作製し、当該第2の樹脂組成物を用いて成形しても良いが、本発明の樹脂組成物と第2のスチレン系樹脂とを成形機に投入して直接第2のシートを成形してもよい。予め第2の樹脂組成物を作製する場合には、上記溶融混練装置が好ましく用いられる。
【0034】
<耐熱性の評価方法>
耐熱性は、ビカット軟化温度(VST)(昇温速度50℃/hr、試験荷重50N、JIS K 7206に準拠)により評価することができる。本発明の樹脂組成物(ペレット)のVSTは、140℃以上であることが好ましく、143℃以上であることが特に好ましい。
【0035】
<強度の評価方法>
本発明の樹脂組成物(ペレット)の強度は、シャルピー衝撃強さ(JIS K7111に準拠)により評価することができる。本発明の樹脂組成物(ペレット)のシャルピー衝撃強さは、8J/cm2以上であることが好ましい。
【0036】
<発泡シート>
本発明の耐熱性樹脂発泡シートは、上記耐熱性樹脂発泡シート用樹脂組成物の発泡体である。
【0037】
[発泡シートの製造方法]
本発明の発泡シートの製造方法としては、特に限定されず、例えば、上記スチレン系樹脂組成物、造核剤等を押出機に供給して加熱溶融し、発泡剤を加えて混練し、押出機の先端に取り付けられた金型から押出発泡させ、得られた発泡シートを巻き取って回収する方法が挙げられる。
【0038】
発泡剤としては、汎用されているものが用いられる。例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウム等の化学発泡剤;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチル、二酸化炭素、窒素等の物理発泡剤等が挙げられる。
【0039】
造核剤としては、例えば、タルク、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カルシウム、クレー、クエン酸等が挙げられる。なかでも、造核剤としては、タルクが好ましい。造核剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。造核剤の添加量は、スチレン系樹脂組成物100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0040】
押出機の先端に取り付ける金型としては、例えば、環状開口を有する環状金型(サーキュラーダイ)、Tダイ等が挙げられる。環状金型を用いる場合の具体的な態様としては、例えば、環状金型から押出した円筒状発泡体を冷却マンドレルに沿わせつつ、該冷却マンドレルの先端部の両側に設けたカッターにより、該円筒状発泡体に軸方向に切れ目を入れて切開し、2枚の発泡シートとする態様が挙げられる。
【0041】
発泡シートの厚み、発泡倍率、平均気泡径及び独立気泡率を制御する方法は、特に限定されない。例えば、造核剤の使用量を増やすことで、発泡倍率は大きくなる。また、発泡剤の使用量を減らすことで、発泡倍率は小さくなる。発泡剤の使用量や種類を変更することで、発泡シートの厚みを制御できる。また、造核剤の使用量を減らすことにより、平均気泡径が大きくなる。
【実施例0042】
以下に本発明を実施例及び比較例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
【0044】
〔スチレン系樹脂(A)〕
(A-1)HIPS(ポリブタジエンゴムで変性したポリスチレン樹脂、ハイシス型、樹脂100質量%中のゴム状重合体の含有量10質量%、体積中位粒子径1.8μm)
(A-2)HIPS(ポリブタジエンゴムで変性したポリスチレン樹脂、ハイシス型、樹脂100質量%中のゴム状重合体の含有量12質量%、体積中位粒子径4.7μm)
(A-3)HIPS(ポリブタジエンゴムで変性したポリスチレン樹脂、ローシス型、樹脂100質量%中のゴム状重合体の含有量9.3質量%、体積中位粒子径2.7μm)
【0045】
〔ポリフェニレンエーテル(B)〕
(B-1)商品名:「IUPIACE PX100F」 三菱エンジニアリングプラスチックス社製(極限粘度0.36dl/g)
【0046】
〔スチレン-メタクリル酸共重合体(C)〕
(C-1)スチレン-メタクリル酸共重合体(質量平均分子量(Mw)20万、ガラス転移温度(Tg)122℃、メタクリル酸モノマー8質量%)
(C-2)スチレン-メタクリル酸共重合体(質量平均分子量(Mw)27万、ガラス転移温度(Tg)113℃、メタクリル酸モノマー4質量%)
【0047】
(実施例1~8、比較例1~4)
各成分を表1及び2に示す配合量で、ヘンシェルミキサー(三井三池化工社製、FM20B)にて予備混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)に供給して、ストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。主な運転条件は下記の通り。
シリンダー設定温度:190℃(搬送部位)~280℃(混練り~計量部位)
スクリュー回転数:400rpm
押出速度:320kg/h
樹脂温度:280~290℃
【0048】
[押出性]
樹脂組成物の押出性は、樹脂組成物のペレットを製造する過程において、ベントアップやストランド切れ等の不都合が発生しないかで評価した。表1及び2における押出性の記号の意味は以下の通りである。
押出性:
○(製造可能)
×(ベントアップやストランド切れ等の不具合が発生。製造不可)
【0049】
〔シャルピー衝撃強さ〕
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7111により求めた。表2中の「-」は、測定不可を意味する。
【0050】
〔ビカット軟化温度(VST)の測定〕
ビカット軟化温度の測定は JIS K 7206に準拠し、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで求めた。表2中の「-」は、測定不可を意味する。
【0051】
【0052】
【0053】
表1の実施例より本発明の樹脂組成物は、耐熱性及び耐衝撃性に優れていることがわかった。一方、表2の比較例より本発明の規定を満足しない樹脂組成物は、耐熱性及び/又は耐衝撃性が劣り、押出性が劣る樹脂組成物は、樹脂組成物の成形が不可能であった。
本発明にかかる樹脂組成物から製造された発泡シートは、耐熱性及び耐衝撃性が高いため、食品容器・包装、OA機器、家電部品、雑貨等の用途で有利に利用でき、産業上の利用可能性を有する。