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特開2024-146546GNSS測位システムおよびGNSS測位方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146546
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】GNSS測位システムおよびGNSS測位方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/10 20100101AFI20241004BHJP
   G01S 19/41 20100101ALI20241004BHJP
   G01S 19/07 20100101ALI20241004BHJP
【FI】
G01S19/10
G01S19/41
G01S19/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059520
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高野 祐次
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA01
5J062CC07
5J062CC11
5J062EE04
5J062FF02
5J062HH00
(57)【要約】
【課題】鉛直誤差をリアルタイムのGNSS測位において、鉛直精度を向上させる新たな技術を提供する。
【解決手段】GNSS測位システム1は、GNSS受信機4aを備え、補正情報をローバーに送信する基準局4と、既知の測定基準点から所定の高さで水平にレーザ光Bを出射する回転レーザ装置10と、GNSS受信機6aと、レーザ光Bを受光するレーザ受光器200と、演算処理部40と備え、測定点に配置されるローバー6とを備える。レーザ受光器200は、高さ検出部20として、柱状の導光体と、導光体の両端部に配置された受光部と、レーザ光を前記導光体の前記両端部に向かって分割する光結合層と、H型に配置された、第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25、および水平受光管24とを備え、測定基準点に対する測定点の高低差を算出することにより、GNSS受信機6aの高さを決定する。また、ローバー6の測位による測位データと、補正情報と、演算処理部40が決定した測定点の高さに基づいて、ローバー6の補正位置を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機および通信部を備え、既知点に固定されて補正情報をローバーに送信する基準局と、
既知の測定基準点から所定の高さで水平にレーザ光を出射する、少なくとも1つの回転レーザ装置と、
ローバーGNSS受信機と、通信部と、前記レーザ光を受光するレーザ受光器と、演算処理部と備え、測定点に配置される前記ローバーと、
を備えるGNSS測位システムであって、
前記レーザ受光器は、高さ検出部として、柱状の導光体と、前記導光体の両端部に配置された受光部と、前記レーザ光を前記導光体の前記両端部に向かって分割する光結合層と、H型に配置された、第1の鉛直受光管、第2の鉛直受光管、および水平受光管と、を備え、
前記演算処理部は、前記受光部の各受光信号から前記レーザ光の衝突位置を特定し、前記衝突位置の中央位置からの差分距離と、前記差分距離が前記導光体の長さの中央位置を境にプラス側とマイナス側のどちらにあるかを検出し、
前記第1の鉛直受光管、前記第2の鉛直受光管、および前記水平受光管の前記差分距離のプラスとマイナスの組み合わせに応じて、前記測定基準点に対する高低差を算出することにより、前記ローバーGNSS受信機の高さを決定し、
前記演算処理部は、前記ローバーの測位による測位データと、前記補正情報と、前記演算処理部が決定した前記測定点の高さに基づいて、前記ローバーの補正位置を決定することを特徴とするGNSS測位システム。
【請求項2】
前記レーザ受光器は、受光面が前方に向けて配置され、正面視で画素が2次元のマトリクス上に配置された透明受光素子が前後方向に積層された傾斜検出部と、電子コンパスを備え、
前記演算処理部は、前記傾斜検出部で受光される前記前後方向でのパターンの変化に基づいて、前記ローバーの前記前後方向への傾斜を検出し、
前記演算処理部は、前記高さ検出部で受光される信号に基づいて、前記ローバーの左右方向への傾斜を検出し、
前記ローバーの前記前後方向の傾斜および前記左右方向の傾斜、ならびに前記電子コンパスにより取得される前記レーザ受光器の方向に基づいて前記測定点の補正位置を決定することを特徴とする請求項1に記載のGNSS測位システム。
【請求項3】
前記水平受光管の前記導光体の半径は、前記第1の鉛直受光管および前記第2の鉛直受光管の半径よりも大きく構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のGNSS測位システム。
【請求項4】
前記水平受光管の数が、高さ方向に増設されることを特徴とする請求項1または2に記載のGNSS測位システム。
【請求項5】
GNSS受信機および通信部を備え、既知点に固定されて補正情報をローバに送信する基準局と、既知の測定基準点から所定の高さで水平にレーザ光を出射する少なくとも1つの回転レーザ装置と、ローバーGNSS受信機、通信部、前記レーザ光を受光するレーザ受光器、および演算処理部を有し、測定点に配置されるローバーとを有するGNSS測位システムを用いる測位方法であって、
(a)前記基準局を既知点に設置するステップと、
(b)前記回転レーザ装置を前記測定基準点に設置して、前記レーザ光の発光を開始するステップと、
(c)前記基準局で測位を行うステップと、
(d)前記基準局が前記補正情報を前記ローバーに送信するステップと、
(e)前記ローバーを前記測定点に配置し、測位を行うステップと、
(f)前記レーザ受光器により、前記回転レーザ装置の前記レーザ光を受光、検出し、前記ローバーの前記ローバーGNSS受信機の高さを決定するステップと、
(g)前記ステップ(e)における測位データと、前記ステップ(d)の前記補正情報、および前記ステップ(f)における前記GNSS受信機の高さに基づいて、前記ローバーの補正位置を算出するステップとを備え、
前記レーザ受光器は、高さ検出部として、柱状の導光体と、前記導光体の両端部に配置された受光部と、前記レーザ光を前記導光体の前記両端部に向かって分割する光結合層と、H型に配置された、第1の鉛直受光管、第2の鉛直受光管、および水平受光管と、を備え、前記演算処理部は、前記受光部の各受光信号から前記レーザ光の衝突位置を特定し、前記衝突位置の中央位置からの差分距離と、前記差分距離が前記導光体の長さの中央位置を境にプラス側とマイナス側のどちらにあるかを検出し、前記第1の鉛直受光管、前記第2の鉛直受光管、および前記水平受光管の前記差分距離のプラスとマイナスの組み合わせに応じて、前記測定基準点に対する高低差を算出することにより、前記GNSS受信機の高さを決定する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いた測位システムおよび測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GNSS衛星を用いる、リアルタイムな測位方法として、RTK-GNSS(リアルタイムキネマティックGNSS)測位と、DGNSS(ディファレンシャルGNSS)測位とが知られている。RTK-GNSS測位では基地局と移動局で同時にGNSS測位を行い、基地局から搬送波位相に基づく補正データを受信して、移動局での測位データを補正する。DGNSS測位では、基地局と移動局で同時にGNSS測位を行い、基地局の測位データと既知の値との位置誤差を補正データとして移動局に送信し、移動局での測位データを補正する。このような、GNSS測位の弱点として、鉛直精度が劣るという問題があった。
【0003】
特許文献1は、リアルタイムのGNSS測位の鉛直精度を向上させる方法として以下の方法を開示している。
1 基準局を第1の地点に配置する。
2 第1の地点で一定時間測定し、その平均位置を基準局の第1の平均位置として決定する。
3 第1の地点における基準局の第1の瞬時位置を決定する。
4 移動局の第1の位置を決定する。
5 第1の平均位置および第1の瞬時位置に基づいて第1の鉛直補正を決定する。
6 移動局の第1の位置および第1の鉛直補正に基づいて移動局の第1の補正位置を決定する。
7 基準局を第1の場所とは異なる第2の場所に移動する。
8 第2の場所で一定時間測定し、その平均位置を基準局の第2の平均位置として決定する。
9 第2の場所における基準局の第2の瞬時位置を決定する。
10 移動局の第2の位置を決定する。
11 第2の平均位置および第2の瞬時位置に基づいて第2の鉛直補正を決定する。
12 移動局の第2の位置および第2の鉛直補正に基づいて移動局の第2の補正位置を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10908297号明細書
【特許文献2】特開2011-100759号公報
【特許文献3】特表平11-505948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記方法によれば、リアルタイムなGNSS測位での鉛直精度を向上させることができるものの、鉛直精度を向上させることのできるさらなる技術の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、リアルタイムのGNSS測位において、鉛直精度を向上させる新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様に係るGNSS測位システムは以下の構成を有する。
1.GNSS受信機および通信部を備え、既知点に固定されて補正情報をローバーに送信する基準局と、既知の測定基準点から所定の高さで水平にレーザ光を出射する、少なくとも1つの回転レーザ装置と、ローバーGNSS受信機と、通信部と、前記レーザ光を受光するレーザ受光器と、演算処理部と備え、測定点に配置される前記ローバーと、を備えるGNSS測位システムであって、前記レーザ受光器は、高さ検出部として、柱状の導光体と、前記導光体の両端部に配置された受光部と、前記レーザ光を前記導光体の前記両端部に向かって分割する光結合層と、H型に配置された、第1の鉛直受光管、第2の鉛直受光管、および水平受光管と、を備え、前記演算処理部は、前記受光部の各受光信号から前記レーザ光の衝突位置を特定し、前記衝突位置の中央位置からの差分距離と、前記差分距離が前記導光体の長さの中央位置を境にプラス側とマイナス側のどちらにあるかを検出し、前記第1の鉛直受光管、前記第2の鉛直受光管、および前記水平受光管の前記差分距離のプラスとマイナスの組み合わせに応じて、前記測定基準点に対する高低差を算出することにより、前記ローバーGNSS受信機の高さを決定し、前記演算処理部は、前記ローバーの測位による測位データと、前記補正情報と、前記演算処理部が決定した前記測定点の高さに基づいて、前記ローバーの補正位置を決定する。
【0008】
2.上記1の態様において、レーザ受光器は、受光面が前方に向けて配置され、正面視で画素が2次元のマトリクス上に配置された透明受光素子が前後方向に積層された傾斜検出部と、電子コンパスを備え、前記演算処理部は、前記傾斜検出部で受光される前記前後方向でのパターンの変化に基づいて、前記ローバーの前記前後方向への傾斜を検出し、前記演算処理部は、前記高さ検出部で受光される信号に基づいて、前記ローバーの左右方向への傾斜を検出し、前記ローバーの前記前後方向の傾斜および前記左右方向の傾斜、ならびに前記電子コンパスにより取得される前記レーザ受光器の方向に基づいて前記測定点の補正位置を決定することも好ましい。
【0009】
3.上記1,2の態様において、前記水平受光管の前記導光体の半径は、前記第1の鉛直受光管および前記第2の鉛直受光管の半径よりも大きく構成されることも好ましい。
【0010】
4.上記1~3の態様において、前記水平受光管の数が、高さ方向に増設されることも好ましい。
【0011】
また、本発明の別の態様に係るGNSS測位方法は、以下の構成を有する。
5.GNSS受信機および通信部を備え、既知点に固定されて補正情報をローバに送信する基準局と、既知の測定基準点から所定の高さで水平にレーザ光を出射する少なくとも1つの回転レーザ装置と、ローバーGNSS受信機、通信部、前記レーザ光を受光するレーザ受光器、および演算処理部を有し、測定点に配置されるローバーとを有するGNSS測位システムを用いる測位方法であって、(a)前記基準局を既知点に設置するステップと、(b)前記回転レーザ装置を前記測定基準点に設置して、前記レーザ光の発光を開始するステップと、(c)前記基準局で測位を行うステップと、(d)前記基準局が前記補正情報を前記ローバーに送信するステップと、(e)前記ローバーを前記測定点に配置し、測位を行うステップと、(f)前記レーザ受光器により、前記回転レーザ装置の前記レーザ光を受光、検出し、前記ローバーの前記ローバーGNSS受信機の高さを決定するステップと、(g)前記ステップ(e)における測位データと、前記ステップ(d)の前記補正情報、および前記ステップ(f)における前記GNSS受信機の高さに基づいて、前記ローバーの補正位置を算出するステップとを備え、前記レーザ受光器は、高さ検出部として、柱状の導光体と、前記導光体の両端部に配置された受光部と、前記レーザ光を前記導光体の前記両端部に向かって分割する光結合層と、H型に配置された、第1の鉛直受光管、第2の鉛直受光管、および水平受光管と、を備え、前記演算処理部は、前記受光部の各受光信号から前記レーザ光の衝突位置を特定し、前記衝突位置の中央位置からの差分距離と、前記差分距離が前記導光体の長さの中央位置を境にプラス側とマイナス側のどちらにあるかを検出し、前記第1の鉛直受光管、前記第2の鉛直受光管、および前記水平受光管の前記差分距離のプラスとマイナスの組み合わせに応じて、前記測定基準点に対する高低差を算出することにより、前記GNSS受信機の高さを決定する。
【発明の効果】
【0012】
上記態様によれば、GNSS測位において、鉛直精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係るGNSS測位システムの全体構成を示す図である。
図2】同GNSS測位システムを構成するGNSSローバーおよび回転レーザ装置のブロック図である。
図3】上記GNSSローバーを構成するレーザ受光器の正面斜視図である。
図4】同レーザ受光器における高さ検出部の受光センサの詳細を説明する図である。
図5】同レーザ受光器が傾いていない場合の、高さ検出を説明する図である。
図6】同受光器が左右に傾いている場合の高さの検出を説明する図である。
図7】同高さ検出部による左右傾斜検出テーブルの一例を示す図である。
図8】同システムにおいて、受光器に傾きが有る場合の、高さ変化の検出を説明する図である。
図9】同レーザ受光器の傾斜検出部の模式拡大図である。
図10】同傾斜検出部の詳細を説明する図である。
図11】上記回転レーザ装置のレーザ光の特性を説明する図である。
図12】上記レーザ受光器が前後に傾いている場合の上記傾斜センサの、受光光量のマトリクスパターンを説明する図である。
図13】上記測位システムを用いた測位方法のフローチャートの1つの例である。
図14】上記測位システムを用いた測位方法のフローチャートの他の例である。
図15】(A)(B)は、上記測位システムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施の形態において、同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、各図は縮尺通りに描画されているとは限らない。
【0015】
図1は、実施の形態に係るGNSS測位システム(以下、単に測位システムという。)1の概略図である。GNSS基準局(以下単に基準局という。)4、GNSSローバー(以下、単にローバーという。)6および回転レーザ装置10を含む。測位システム1は、所謂ディファレンシャルGNSS測位システムである。
【0016】
基準局4は、GNSS衛星(以下、単に衛星という。)S1,S2,S3・・・からの衛星信号を受信して測位するGNSS受信機4a、およびローバー6と有線または無線による通信を可能とする通信部4bを備える。GNSS受信機4aは、衛星信号に受信して自位置を決定する。基準局4は、既知点に固定されている。基準局4は、衛星S1,S2,S3を追跡して、リアルタイムで測位する。また、基準局4は、衛星S1,S2,S3からの信号に基づく測位データと、既知点の位置情報との誤差を求め記録する。
【0017】
また、基準局4は、求めた誤差を補正情報として、ローバー6に送信する。既知点の位置データは、測定誤差を決定するために用いられる。誤差の精度は、既知点の位置データの精度に部分的に依存する。図1中、衛星S1,S2,S3は、基準局4の視界にあるGNSS衛星である。なお、図1には衛星は3つのみ描かれている。測位の観点から、3以上の衛星があれば可能であるが、衛星の数は4以上であることが好ましく、それ以上であってもよい。
【0018】
ローバー6は、外観上、上方からGNSS受信機6a、レーザ受光器(以下、単に受光器という。)200を備え、GNSS受信機6aと、受光器200は、固定長を有するポール状の支持部材6bに支持されている。支持部材6bの軸線は、GNSS受信機6aと受光器200それぞれの中心を通るようになっている。ローバー6は、支持部材6bの先端を測定点に当接させ、鉛直に保持されるように使用される。鉛直は図示しない水準器などを用いて確認できるようになっている。また、受光器200は、ボールねじ機構その他直線移動機構等、公知の構成により、支持部材6bを上下方向に移動可能となっている。またその際、支持部材6bの下端部から、受光器200の中心Cまでの距離Hは、計測可能となっている。また、支持部材6bの下端部から、GNSS受信機6aまで距離Hも、既知となっている。受光器200の使用時には、初期設定として、回転レーザ装置10のレーザ光Bが受光器200の中心Cを通るように位置合わせして使用する。
【0019】
次に、回転レーザ装置10は、回転ヘッド11と、制御部12とを備える。回転ヘッド11は、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、またはSLED(Super Luminescent Diode)などのレーザ光源を有する。回転レーザ装置10は、地面上の測定基準点RPに、整準台を介して設置される。回転ヘッド11は、レーザ光Bとして、所定の周波数に強度変調されたパルス光を出射する。回転ヘッド11は、水平方向に旋回し、レーザ光源からの光を偏向して、測定基準点RPからレベリングに用いる高さHとなる水平基準面を形成するように、レーザ光Bを回転照射する。
【0020】
制御部12は、たとえばCPUなどのプロセッサを備える制御ユニットであり、回転ヘッドの回転および光源の発光を制御する。
【0021】
次に、受光器200は、図2に示すように、高さ検出部20と、傾斜検出部30と、演算処理部40と、記憶部51と、発光インジケータ52と、ブザー53と、表示部54と、操作部55と、通信部56、および電子コンパス57とを備える。また、レーザ受光器200は、後述する回転レーザ装置10が出射するレーザ光Bを受光する。
【0022】
高さ検出部20と、傾斜検出部30については、後述する。
演算処理部40は、少なくとも1つのプロセッサおよびメモリ(RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)等)を備える。演算処理部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を集積回路に実装した集積回路、集積回路の集合、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサを含むものである。また、プロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路により構成されていてもよい。
【0023】
演算処理部40は、機能部として、高さ変化決定部41と、前後傾斜決定部42と、位置算出部43とを備える。
【0024】
高さ変化決定部41は、第1の鉛直受光管23、水平受光管24.第2の鉛直受光管25のそれぞれの受光部232,233,242,243,252,253から受光信号を受け取り、それぞれの差分距離D23,D24,D25をプラス値か、マイナス値かも含めて検出する。この結果、測定基準点RPに対する測定点Xの高低差を決定し、測定点Xのz座標の値を求める。その詳細については、高さ検出部20の項で説明する。
【0025】
高さ変化決定部41は、後で図5(1)について詳述するように、第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25の差分距離D23,D25が同じ値で共にマイナス値の場合、測定点Xは、測定基準点RPに対して差分距離Dだけ高くなったことを検出する。図5(2)で説明するように、第1の鉛直受光管23,第2の鉛直受光管25の差分距離D23,D25が同じ値で共にプラス値の場合は。測定点Xは測定基準点RPに対して差分距離Dだけ低くなったことを検出する。
【0026】
高さ変化決定部41は、後で図8について説明するように、第1の鉛直受光管23の差分距離D23と第2の鉛直受光管25の差分距離D25都に基づいて、受光器200の傾き方向および高さ変化hを算出する。また、差分距離D23,D25から左右傾斜検出テーブルに照らして左右の傾斜角δを算出する。
【0027】
前後傾斜決定部42は、後で説明する傾斜検出部30で検出される、レーザ光の受光光量分布であるマトリクスパターンを用いて、受光器200の前後方向の傾斜を決定する。
【0028】
位置算出部43は、衛星からの信号と、基準局4からの補正情報、および高さ検出部20の検出結果から決定されたGNSS受信機6aの高さに基づいて、ローバー6の位置を算出する。このようにして、得られるローバー6の位置座標は、鉛直精度が向上している。また、位置算出部43は、GNSS受信機6aの位置座標に基づいて、高さ検出部20の検出結果から決定される受光器200の左右方向の傾斜および傾斜検出部30の検出結果から決定される受光器200の前後方向の傾斜、および電子コンパス57の検出結果に基づく受光器200の方向に基づいて、測定点Xの座標を決定する。
【0029】
記憶部51は、例えば、HDD(Hard Disc Drive),フラッシュメモリ等のコンピュータ読取可能な記憶媒体を含んで構成される。記憶部51は、演算処理部40の機能を実行するための、特に各機能部の機能を実行するためプログラムや、演算処理部40で収集、生成される各種データ、左右傾斜検出テーブル342および、傾斜検出部30の受光光量のマトリクスパターンを格納している。
【0030】
発光インジケータ52およびブザー53は、演算処理部40に制御されて、点滅発光および/または信号音を鳴らすことにより、作業者に対して、作業に関する指示等を報知する。
【0031】
表示部54は液晶または有機ELディスプレイであり、傾斜検知データ、高さ変化検知データおよび測位データの表示をする。操作部55はボタンやスイッチであり、高さ変化検知および前後傾斜検知の際の操作が行える。受光部232,233(第1の鉛直受光管23のもの)、受光部252,253(第2の鉛直受光管25のもの)および受光部242,243(水平受光管のもの)は前述の通りであり、それぞれ、受光信号を演算処理部40に送る。
【0032】
通信部56は、基準局4と有線または無線による通信を可能とする通信制御装置である。
【0033】
電子コンパス57は、所謂磁気コンパスである。地磁気を利用して方位を検出する。電子コンパスは、ケース21内に取り付けられており、ケース21正面方向の方位を検出する。これにより、高さ変化決定部41および前後傾斜決定部42で決定される傾斜の方向を検出する。
【0034】
次に、高さ検出部20および傾斜検出部30について説明する。図3に示すように、高さ検出部20および傾斜検出部30は、ケース21の前面に設けられている。また、図3には表されていないが、表示部54と、操作部55は、ケース21の後面に設けられている。発光インジケータ52とブザー53は、ケース21の上部など、作業者に認識されやすい位置に配置されている。
【0035】
高さ検出部20は、それぞれが同じ構成を有する、第1の鉛直受光管23、水平受光管24、および第2の鉛直受光管25を備える。第1のおよび第2の鉛直受光管23,25は、軸方向が鉛直方向となるように平行に配置される。水平受光管24は、第1のおよび第2の鉛直受光管23,25と直交して配置される。第1の鉛直受光管23、水平受光管24、および第2の鉛直受光管25は、第1のおよび第2の鉛直受光管23,25の夫々の長さLの中央位置M、Mに水平受光管24の中心軸が通るように配置され、受光器中心Cが水平受光管24の長さLの中央位置Mと合致するように、「H型」に配置されている。
【0036】
第1の鉛直受光管23、水平受光管24、第2の鉛直受光管25は、全て同一の構成を有するため、第1の鉛直受光管23を用いて高さ検出部20の機構を説明する。図4は、第1の鉛直受光管の側面を示す図である。図4において、左がケース21の前面であり、レーザ光Bが入射する側である。第1の鉛直受光管23および第2の鉛直受光管25の中央位置M、水平受光管24の中央位置M、および水平受光管24にある受光器中心Cの位置関係は、予め計測され、既知の数値として記憶部51に記憶されている。
【0037】
第1の鉛直受光管23は、円柱状の導光体231と、導光体231の両端部に配置された一対の受光部232,233とを備える。受光部232,233は、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード(APD)等の光電変換素子である。受光部232,233が検出した各受光信号は、演算処理部40で処理される。導光体231は、軸方向の長さLを有する、円柱、楕円柱、その他の内面を全反射することによる導光を可能な柱状体である。導光体231を構成する材料は、例えば、ガラスや石英、または、アクリルやポリカーボネート等の樹脂等の透明材料である。
【0038】
導光体231の表面には、光結合層234が形成されている。光結合層234は、例えば、蛍光粒子を液体に分散させた塗料を導光体231の表面に塗布するか、または、蛍光粒子を含有する樹脂層を導光体231の表面に設けることで、形成される。
【0039】
図4に示すように、レーザ光Bが導光体231に衝突すると、衝突位置235において、レーザ光Bは、光結合層234によって導光体231に結合され、第1の受光部232へ向かうレーザ光B1と、第2の受光部233に向かうレーザ光B2に分割される。衝突位置235が中央位置Mである場合、レーザ光B1が進行した距離L1と、レーザ光B2が進行した距離は同じであるため、受光部232,233の受光信号の波形は一致する。一方、衝突位置235が、中央位置Mからずれると、レーザ光B1、B2の進行する距離L1,L2は異なるため、受光部232,233の受光信号の波形にズレが生じる。
【0040】
例えば、図4では、衝突位置235が中央位置Mより上で、距離L1が距離L2よりも短いため、受光部232の受光信号に対して、受光部233の受光信号に遅れが生じる。演算処理部40では、これらの受光信号の時間差または位相差と、長さLと、導光体231の光伝播速度から、距離L1、L2を算出して、衝突位置を特定する。また衝突位置235は、中央位置Mを境としてどちら側にあるかと、衝突位置の中央位置からの差分距離Dを長さLと距離L1又はL2から算出する。例えば、図4であれば、L/2-L1またはL2-L/2からDを求める。
【0041】
図5は、受光器200に傾きがない場合の、高さの変化の検出を説明する図である。受光器200に傾きがない場合、(1)に示すように、受光器中心Cの高さがレーザ光Bより上になった場合、第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25は共に、衝突位置235が中央位置Mより下にずれ、それぞれの受光部232,233、受光部252、253での受光信号にずれが生じ、中央位置Mに対して下の受光部233(253)側にマイナスの差分距離D23,D25が検出される。
【0042】
一方、(2)に示すように、受光器中心Cの高さがレーザ光Bより下になった場合、第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25は共に、衝突位置235が中央位置Mより上にずれ、中央位置Mに対して下の受光部233(253)側にプラスの差分距離D23,D25が検出される。
【0043】
すなわち、第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25の差分距離D23,D25が、同じ値で、ともにマイナス値の場合は、レーザ光Bの高さHを基準として、受光器中心Cの高さが差分距離D23(D25)だけ上に移動しているので、測定点Xが、測定基準点RPに対してD23(D25)と同量の差分距離だけ高くなったことが分かる。第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25の差分距離D23が,25が共にプラス値の場合、受光器中心Cの高さが差分距離D23(D25)だけ下に移動しているので、測定点Xも、測定基準点RPに対してD23(D25)と同量のDだけ低くなったことが分かる。
【0044】
図6~8は、受光器200に傾きが有る場合の、高さの変化の検出を説明する図である。まず、図6は受光器200による左右への傾きの変化の検出を説明する図である。(1)に示すように受光器200が左へ傾いた場合、第1の鉛直受光管23では衝突位置235が中央位置Mより上にずれ、中央位置Mに対して上の受光部232側にプラスの差分距離D23が検出され、第2の鉛直受光管25では衝突位置235が中央位置Mより下にずれ、中央位置Mに対して下の受光部253側にマイナスの差分距離D25が検出される。(2)に示すように受光器200が右へ傾いた場合、第1の鉛直受光管23では衝突位置235が中央位置Mより下にずれ、中央位置Mに対して下の受光部233側にマイナスの差分距離D23が検出され、第2の鉛直受光管25では衝突位置235が中央位置Mより上にずれ、中央位置Mに対して上の受光部252側にプラスの差分距離D25が検出される。
【0045】
すなわち、第1の鉛直受光管23の差分距離D23がプラス値、第2の鉛直受光管25の差分距離D25がマイナス値の場合は、受光器200は左に傾いていると分かる。第1の鉛直受光管23の差分距離D23がマイナス値、第2の鉛直受光管25の差分距離D25がプラス値の場合は、受光器200は右に傾いていること分かる。
【0046】
このとき、差分距離D23(D25)は、左右傾斜が大きくなるほど長くなり、差分距離D23(D25)と傾斜角δの値は一対一で対応することが分かる。このため、差分距離D23(D25)と左右の傾斜角δの対応関係を記憶した左右傾斜検出テーブル342を作成しておくことで、左右の傾斜角δは、差分距離の値に応じて算出することができる。図7は分解能0.5mm単位とした場合の左右傾斜検出テーブル342を例示している。左右傾斜検出テーブル342では、鉛直受光管23(25)の中央位置Mを0[mm]とし、中央位置Mを境に上の受光部232(252)側で検出された差分距離D23(D25)をプラス、中央位置Mを境に下の受光部233(253)側で検出された差分距離D23(D25)をマイナスとし、各差分距離D23(D25)に対応する傾斜角δが記憶されている。
【0047】
以上により左右の傾斜角δが分かると、受光器200が左右方向に傾いた場合の、高さの変化の検出ができる。図8は受光器200に傾きが有る場合の、高さの変化の検出を説明する図である。受光器200が左右に傾いた状態で、受光器200高さが変わった場合は、水平受光管24のレーザ光Bの衝突位置235が中央位置Mからずれ、水平受光管24の受光部242,243での受光信号にズレが生じ、中央位置Mからの差分距離D24が検出される。受光器中心Cの高さ変化hは、三角関数を用いて下記の数式から求められる。
【0048】
【数1】
但し、 h:高さ変化、
D:水平受光管が検出した差分距離、
δ:レーザ受光器の左右方向の傾斜角、
である。
【0049】
さらに、水平受光管24の中央位置Mを境に左の受光部242側をマイナス、右の受光部243側をプラスとすると、図8の(1)に示すように、受光器200が左に傾き、衝突位置235が受光器中心Cより上にずれた場合、受光部243側に差分距離D24はプラスの値が出る。図8の(2)に示すように、受光器200が左に傾き、衝突位置235が受光器中心Cより下にずれた場合、受光部242側に差分距離D24はマイナスの値が出る。図8(3)に示すように、受光器200が、右に傾き、衝突位置235が受光器中心Cより上にずれた場合、受光部242側に差分距離D24はマイナスの値が出る。図15の(4)に示すように、受光器200が、右に傾き、衝突位置235が受光器中心Cより下にずれた場合、受光部243側に差分距離D24はプラスの値が出る。
【0050】
すなわち、左への傾きか右への傾きかは第1の鉛直受光管23および第2の鉛直受光管
25の差分距離のプラスマイナスから検出できるから、図8の(1):左へ傾き水平受光管24でプラスの差分距離D24が出た時および図8の(3):右へ傾き水平受光管24でマイナスの差分距離D24が出た時は、レーザ光Bの高さHを基準にして、受光器200(の受光器中心C)の高さが、数式1で求まる高さ変化hだけ下に移動しているので、測定点Xも測定基準点RPに対して高さ変化hだけ低くなったことが分かる。図8の(2):左へ傾き水平受光管24でマイナスの差分距離D24が出た時および図8の(4):右へ傾き水平受光管24でプラスの差分距離D24が出た時、レーザ光Bの高さHを基準にして、受光器200(の受光器中心C)の高さが、数式1で求まる高さ変化hだけ上に移動しているので、測定点Xも測定基準点RPに対して高さ変化hだけ高くなったことが分かる。このように、高さ検出部20は、回転レーザ装置10のレーザ光を受光することにより、ローバー6の高さ(すなわち、測定点Xの高さ)と、受光器200(ローバー6、すなわち、支持部材6b)の左右方向の傾斜を検出するようになっている。
【0051】
従って、高さ変化決定部41は、以下の様にして、GNSS受信機6aの高さを求めることができる。すなわち、例えば図8(1)の場合、測定基準点RPの座標をRP(x,y,z)とすると、測定点Xのz座標はz-hで求めることができる。そして、支持部材6bの先端からGNSS受信機6aまでの長さHは既知であるので、GNSS受信機6aのz座標は、ローバー6の傾斜角δから、測定点Xのz座標にH*cosδを加算した、(z-h)+H*cosδで求めることが可能である。このようにして、水平受光管の受光結果からGNSS受信機6aのz座標を求めることが可能となる。
【0052】
一方、傾斜検出部30は、高さ検出部20の左右方向に延在する細幅の柱状の形状を有し、高さ検出部20の水平受光管24の前面に、受光面が前方を向かうように取り付けられている。傾斜検出部30は、ローバー6、すなわち受光器200の前後方向の傾きを検出することができる。図9は、傾斜検出部30の模式拡大図である。図10は、受光センサ32を構成する透明受光素子33の一部の拡大図である。図9,10からわかるように、傾斜検出部30では、正面視で画素が2次元のマトリクス状に配置された透明受光素子が、前後方向に複数層積層されている。
【0053】
受光センサ32は、透明受光素子33が前後方向に複数層(図示の例では4層)積層されて構成されている。透明受光素子33としては、例えば特許文献2、特許文献3に記載されているような、既知の透明受光素子を用いることができる。本例では、図10に示すように、透明基板311上に設けられた透明電極312に、電子伝達タンパク質層313を固定化し、この電子伝達タンパク質層313と電解質層314を介して対向するように透明対極315を設けたタンパク質透明受光素子を用いている。
【0054】
透明基板311の材料としては、例えば、ガラス、雲母(マイカ)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの各種の無機または有機の透明材料を用いることができる。
透明電極412の材料としては、例えば、ITO(インジウム-スズ複合酸化物)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ネサガラス(SnOガラス)などの透明金属酸化物のほか、光の透過が可能な極薄い金属膜、例えばAu膜などを用いることができる。
【0055】
電子伝達タンパク質層313の電子伝達タンパク質としては、具体的には、例えば、シトクロム類、鉄-硫黄タンパク質類、ブルー銅タンパク質類などを用いることができる。シトクロム類としては、シトクロムc(亜鉛置換シトクロムc、金属フリーシトクロムcなど)、シトクロムb、シトクロムb5、シトクロムc1、シトクロムa、シトクロムa3、シトクロムf、シトクロムb6などが挙げられる。
【0056】
透明対極315の材料としては、例えば、ITO、FTO、ネサガラスなどの透明金属酸化物のほか、光の透過が可能な極薄い金属膜、例えばAu膜などを用いることができる。
【0057】
電解質層314の電解質としては、電子伝達タンパク質層313が透明電極312で酸化反応が起こり、透明対極315で還元反応が起こるもの、または、透明電極312で還元反応が起こり、透明対極315で酸化反応が起こるものが用いられる。具体的には、例えば、K[Fe(CN)]や[Co(NH]Clなどが用いられる。
【0058】
図10は、透明受光素子33のN(Nは自然数)番目の層とN+1番目の層の透明基板311を部分的に表している。図10に示すように、透明受光素子33のN番目の層の透明基板311と(N+1)番目の層の透明基板311との間には、透明基板と同様の素材で構成される透明なスペーサ316が設けられており、スペーサ316により画素34が区画されている。図9に示すように、透明受光素子33の各層は、画素34が2次元のマトリクス状に配列されており、各画素の位置が特定できるようになっている。
【0059】
透明受光素子33では、入射したレーザ光Bの受光光量が、受光信号として検出され、信号の取り出しや処理は、従来公知の技術を用いることができる。受光光量が電気信号として取り出される。
【0060】
次に、傾斜検出部30を用いた傾斜の検出について説明するが、それに先立って、回転レーザ装置10のレーザ光Bの特性について説明する。レーザ光Bのビームは、図11(A)に示すように、中央が強く外側に向かって弱くなる強度分布を有する。また、図11(B)に示すように、レーザ光Bのビームは、光源(回転レーザ装置10)から遠ざかるほど大きくなる。また、図11(C)に示すように、レーザ光Bのビームの照度は、光源(回転レーザ装置10)からの距離の2乗に反比例して小さくなる。
【0061】
従って、回転レーザ装置10からのレーザ光が、傾斜検出部30に入射した場合の奥行方向の受光光量のマトリクスパターンは、図12(A)の様に、入射位置でもっとも強く、奥に行くに従って弱くなり、ビームの外側に行くにつれて弱くなるパターンを示す。
【0062】
この奥行方向のマトリクスパターンは、傾斜検出部30がレーザ光の入射方向に対して傾くと変動する。即ち、図12の(B),(C)に示すように、ローバー6が前後方向に傾くと、傾斜角に応じてマトリクスパターンも変動する。そこで、予め様々な傾斜角とマトリクスパターンの対応を記憶部51に登録しておき、前後傾斜決定部42が、パターンマッチング等の手法により、マトリクスパターンに応じて傾斜角を算出するようにしてもよい。
【0063】
あるいは、様々な距離および方向で測定したマトリクスパターンの画像と、その場合の基準方向RDからの角度と距離を教師データとして、ロジスティック回帰、サポートベクタ―マシン等のアルゴリズムにより学習し、回転レーザ装置10に関する受光器200の方向角および回転レーザ装置10から受光器200の距離を推定する推定モデルを作成し、これを記憶部51に記憶しておいてもよい。この場合、受光器200が、マトリクスパターンを測定したときに、演算処理部40は、得られたマトリクスパターンを推定モデルに入力して、回転レーザ装置10に関する受光器200の方向角を演算するようにしてもよい。
【0064】
図12(A)に示すように、受光器200が鉛直に保持され、傾斜検出部30が回転レーザ装置10に正対する場合、レーザ光Bは各層の同じ位置を進行するが、光量は透明受光素子33の層を通過するにしたがって減衰される。光が通過する位置は、各層において同じであるため、全体のパターンとしては、透明受光素子33の全ての層で、最前層の透明受光素子33と同等のマトリクスパターンを示す。
【0065】
一方、図12(B)に示すように、受光器200が、回転レーザ装置10に向かって前傾する場合、レーザ光Bは、透明受光素子33の層を通過するにしたがって、下方のマスを通るようにずれる。また、光量は、透明受光素子33の層を通過するにしたがって減衰される。この結果、各層のマトリクスパターンは、前方の層から後方の層に向かうにしたがって、全体の光量が小さくなると共に、全体のパターンが下方へとずれたマトリクスパターンを示す。
【0066】
ここで、各透明受光素子33の画素の位置は把握できるようになっているため最前層の入射位置A1と最後層の入射位置A2の位置は算出することができる。また、A3A2の距離(すなわち受光センサ32の厚み)を既知としておけば、A1A3/A2A3が、鉛直方向の傾斜角βに等しい角∠A1A2A3の正接となり、傾斜角βを求めることが可能である。また、図12(C),図12(E)からも同様に、受光器200が後傾した場合の傾斜角γを求めてもよい。
【0067】
また、上記の例では、回転レーザ装置10は1つの場合について説明したが、回転レーザ装置は少なくとも1つあればよく、必要に応じて数を増やすことも好ましい。
【0068】
このように、本実施の形態に係る受光器200では、受光センサ32が、複数の層の透明受光素子33が積層されて構成されているため、受光センサ32の表面(最前面)からの奥行き方向の受光パターンを把握できる。これにより、前後傾斜決定部42では、各層における受光パターン、すなわち、各層における受光位置に基づいて傾斜検出部30(すなわち受光器200、ローバ-6)の前後方向の傾斜を算出することが可能となる。
また、上述したように、本実施の形態に係る、受光器200では、高さ検出部30および高さ変化決定部41により、受光器200の左右方向の傾斜も算出することが可能である。また、電子コンパス57により、それらの傾斜の方向も把握することが可能である。従って、支持部材6bが測定点Xを支点として傾斜して、GNSS受信機6aが測定点XからXY方向にずれた場合でも、その誤差を算出することができ、測定点の算出精度が向上する。
【0069】
なお、本実施の形態では、測位システム1は、基準局が測位データと既知点の位置情報との誤差を補正情報としてローバー6に送信するDGNSS測位システムとして説明した。しかし、これに限らず、基準局4が、搬送波位相に基づくRTK補正データを生成し、ローバー6にRTK補正を送信する、RTK-GNSS測位システムとして構成されていてもよい。なお、測位データの精度は、基準局4からの距離が増大するに従って低下する。このため、一般には、ローバー6の位置は、基準局4から約70kmの範囲に制限される。しかし要求される精度に応じて変動してもよい。
【0070】
<測位方法1>
図13は、本実施の形態に係る測位システムを用いる測位方法のフローチャートの一例を示す。
【0071】
測定を開始すると、ステップS01で、基準局4を既知点に設置する。
次に、ステップS02で、回転レーザ装置10を既知の測定基準点に設置して、レーザ光の発光を開始する。ローバー6は回転レーザ装置10のレーザ光Bの水平基準面が、受光器200の中心Cに合致するように受光器200の高さを調整する。
【0072】
次に、ステップS03で、基準局4で測位を行う。
次に、ステップS04で、基準局4は補正データをローバー6に送信する。
ステップS05では、演算処理部40により、ローバー6を測定点に配置し、測位を行う。ステップS03の基準局4の測位と、ローバー6の測位は、同時に行う。
【0073】
次に、ステップS06で、受光器200により、回転レーザ装置10のレーザ光を受光、検出し、高さ変化決定部41により、ローバー6のGNSS受信機6aの高さを決定する。
次に、ステップS07で、位置算出部43により、衛星からの信号と、基準局4からの補正情報、および高さ検出部20の検出結果から決定されたGNSS受信機6aの高さに基づいて、ローバー6の補正位置を算出する。具体的には、衛星からの信号と基準局からの補正情報に基づいて算出した位置のz座標を、高さ検出部20の検出結果から決定された高さとして、3次元座標を算出する。
【0074】
このように、本実施の形態に係る測位方法では、既知の測定基準点に設置された回転レーザ装置10のレーザ光の回転基準面に基づく正確なZ座標を用いて、GNSS測位で得られた3次元座標を補正するようにしたので、得られる座標の鉛直精度が向上する。
【0075】
<測位方法2>
図14は、測位システム1を用いる測位方法の別の例に係る測位方法のフローhチャートである。本例では、ローバーの傾きを考慮して、測定点Xの正確な位置を算出する。
【0076】
測定を開始して、ステップS11~S16はステップS01~S06と同様に実行する。次に、ステップS17で、高さ変化決定部41は、受光器200の左右方向の傾斜を決定する。次にステップS18で、前後傾斜決定部42は、受光器の前後方向の傾斜を決定する。また、次にステップS19で、電子コンパスにより、受光器200の傾斜の方向を特定する。そしてステップS20で、位置算出部43により、衛星からの信号と、基準局4からの補正情報、および高さ検出部20の検出結果から決定されたGNSS受信機6aの高さ、ならびに、受光器の左右方向および前後方向の傾斜角に基づいて、測定点Xの補正位置を算出する。
【0077】
このように、本実施の形態によれば、GNSS受信機6aの高さのみではなく、ローバー6の前後左右の傾斜も考慮して、測定点Xの座標を算出できるようにしたので、測定点Xの精度をさらに向上させることが可能となる。
【0078】
<変形例>
本実施の形態に係る測位システム1では、水平受光管24がレーザ光Bを的確に受光するために、以下の如く変更を加えることが好適である。図15(1)(2)は、変形例に係る受光器200の正面概略図である。図においては、第1のおよび第2の鉛直受光管23,25と水平受光管24の配置のみに着目し、その他の構成要素は省略している。
【0079】
図15(1)では、水平受光管24の前記導光体の半径は、第1の鉛直受光管23および第2の鉛直受光管25の半径よりも大きく構成されている。
図15(2)では、水平受光管24の数が、高さ方向に増設されている。
このようにすることで測定可能範囲MAを増大することができるからである。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、上記の実施の形態および変形例を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 :GNSS測位システム
4 :基準局
4a :GNSS受信機
4b :通信部
6 :ローバー
6a :GNSS受信機(ローバーGNSS受信機)
10 :回転レーザ装置
20 :高さ検出部
23 :第1の鉛直受光管
24 :水平受光管
25 :第2の鉛直受光管
30 :傾斜検出部
33 :透明受光素子
34 :画素
40 :演算処理部
56 :通信部
57 :電子コンパス
200 :レーザ受光器
231 :導光体
232,233,242,243,252,253 :受光部
234 :光結合層
235 :衝突位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15