(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146555
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】静電容量タッチパネル
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20241004BHJP
G06F 3/044 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
G06F3/041 420
G06F3/041 430
G06F3/044 128
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059534
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000117940
【氏名又は名称】ノリタケ伊勢電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】岡井 正典
(57)【要約】
【課題】タッチエリア内の感度の均一化が可能な静電容量タッチパネルを提供する。
【解決手段】タッチパネル1は、平面視において所定の表示エリアを有する静電容量タッチパネルであって、X軸方向に配列したX軸電極3とY軸方向に配列したY軸電極5とを有し、これらの電極3、5がそれぞれ複数列設けられたセンサー部と、該センサー部の外周を囲むように設けられるベゼル10とを備え、X軸電極3およびY軸電極5の各配列方向の端部に位置する末端電極x
8、x
9、x
10、y
1、y
2が、表示エリアの外周側に位置する非表示エリアRにおいてベゼル10の内縁10a近傍まで配設されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において所定の表示エリアを有する静電容量タッチパネルであって、
前記静電容量タッチパネルは、X軸方向に配列したX軸電極とY軸方向に配列したY軸電極とを有し、これらの電極がそれぞれ複数列設けられたセンサー部と、該センサー部の外周を囲むように設けられるベゼルとを備え、
前記X軸電極および前記Y軸電極の各配列方向の端部に位置する複数の末端電極のうち少なくとも1つの末端電極が、前記表示エリアの外周側に位置する非表示エリアにおいて前記ベゼルの内縁近傍まで配設されていることを特徴とする静電容量タッチパネル。
【請求項2】
前記静電容量タッチパネルにおいて、前記X軸電極の一方側の末端電極に引き出し配線がそれぞれ接続され、前記Y軸電極の一方側の末端電極に引き出し配線がそれぞれ接続されており、
前記X軸電極および前記Y軸電極において前記引き出し配線が接続されていない側の複数の末端電極が、前記引き出し配線が接続されている側の複数の末端電極とは異なり、前記非表示エリアにおいて前記ベゼルの内縁近傍まで配設されていることを特徴とする請求項1記載の静電容量タッチパネル。
【請求項3】
前記X軸電極において、前記ベゼルの内縁近傍まで配設された前記複数の末端電極のうち、前記Y軸電極の前記引き出し配線が接続されていない側の末端電極と対向する末端電極の電極面積が、その他の末端電極の電極面積よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の静電容量タッチパネル。
【請求項4】
前記Y軸電極において、前記ベゼルの内縁近傍まで配設された前記複数の末端電極のうち、前記X軸電極の前記引き出し配線が接続されていない側の末端電極と対向する末端電極の電極面積が、その他の末端電極の電極面積よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の静電容量タッチパネル。
【請求項5】
前記X軸電極は、ダイヤモンド形状のX軸格子をX軸方向に複数並べたパターンを有し、前記Y軸電極は、ダイヤモンド形状のY軸格子をY軸方向に複数並べたパターンを有しており、
前記ベゼルの内縁近傍まで形成された前記末端電極の電極面積は、ダイヤモンド形状の格子の電極面積の60%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の静電容量タッチパネル。
【請求項6】
前記ベゼルの内縁近傍まで配設された前記末端電極の前記タッチパネルの平面視における形状は、非ダイヤモンド形状で、かつ、N角形状(N=4以上の整数)であることを特徴とする請求項5記載の静電容量タッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ面(XY平面)の任意の位置にユーザーの指などが接近したことを静電容量の変化により検出する静電容量タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、AV機器、PC/OA機器、産業機械、その他の電子デバイスにおいて、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示デバイス用のタッチパネルとして、投影型静電容量方式のタッチパネルが使用されている。投影型静電容量方式は、X軸方向とY軸方向にそれぞれ所定パターンで配列された複数のセンサー電極を有している。このタッチパネルは、電極パターンによって、静電容量の変化を読み取り、タッチポジションを検出するものである。
【0003】
従来のタッチパネルの具体的な構造として、一方のガラス基板にX軸方向の検知用のセンサー電極が形成され、他方のガラス基板にY軸方向の検知用のセンサー電極が形成され、X軸のセンサー電極およびY軸のセンサー電極が、2つのガラス基板間において、対向して挟み込まれた構造が知られている。また、センサー電極のパターンとしては、例えば、ダイヤモンド形(菱形)の格子を縦(Y)横(X)に並べた形状のパターン(以下、ダイヤモンドパターンとも言う。)が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなタッチパネルにおいて、例えば相互容量方式の場合、一方の電極が送信電極となり、他方の電極が受信電極となる。そして、タッチパネルに指などを近付けると、電気力線が指に向くことで、電極間の静電容量が変化する。この静電容量の変化を、各電極に接続される引き出し配線を介して、外部のコントロール部で検出することで、タッチが認識される。
【0006】
ここで、従来のタッチパネルの平面視における一部拡大図を
図9に示す。
図9に示すように、タッチパネル31において、X軸電極32とY軸電極34とは、XY平面で見ると(平面視で)重ならない位置に配置され、X軸格子33およびY軸格子35がマトリックス状に配列されている。また、タッチパネル31は、X軸電極32とY軸電極34を有するセンサー部と、該センサー部の外周を囲むように設けられるベゼル36とを備える。
【0007】
図9の構成において、各電極の末端電極は、表示エリアラインLに合わせて形成されている。具体的には、X軸電極32の末端電極x
i、x
ii、x
iii、Y軸電極34の末端電極y
i、y
iiはそれぞれ、ダイヤモンド形状を二等分した三角形状で形成されており、その一辺であるエッジ部ex、ey(エッジライン)は、表示エリアラインLよりも外側でかつその近傍に形成されている。また、エッジ部ex、eyはそれぞれ、表示エリアラインLと平行に形成されている。
【0008】
図9に示すように、末端電極x
i、x
ii、x
iii、y
i、y
iiは、末端電極以外の部分(X軸格子33やY軸格子35)に比べて、電極面積が半分となる。そのため、末端電極x
i、x
ii、x
iii、y
i、y
iiの感度が、末端電極以外の部分と比較して低下する傾向がある。特に、引き出し配線が接続されるコネクタ側から最も遠い位置にある末端電極(
図9の場合、末端電極x
iii、y
i)においては、X軸電極側およびY軸電極側のいずれも電極面積が半分となることから、感度が特異的に低下するおそれがある。
【0009】
このように感度が局所的に低下すると、タッチエリア内での感度が不均一になってしまう。例えば、タッチパネルでは、タッチエリア内での感度を均一化させるべく、感度の弱い箇所に合わせて全体の感度を設定することなどが行われており、このような場合、全体の感度の低下に繋がるおそれがある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、タッチエリア内の感度の均一化が可能な静電容量タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の静電容量タッチパネルは、平面視において所定の表示エリアを有する静電容量タッチパネルであって、上記静電容量タッチパネルは、X軸方向に配列したX軸電極とY軸方向に配列したY軸電極とを有し、これらの電極がそれぞれ複数列設けられたセンサー部と、該センサー部の外周を囲むように設けられるベゼルとを備え、上記X軸電極および上記Y軸電極の各配列方向の端部に位置する複数の末端電極のうち少なくとも1つの末端電極が、上記表示エリアの外周側に位置する非表示エリアにおいて上記ベゼルの内縁近傍まで配設されていることを特徴とする。
【0012】
ここで、末端電極が、表示エリアの外周側に位置する非表示エリアにおいてベゼルの内縁近傍まで配設されているとは、表示エリアラインとベゼルの内縁との間に形成される非表示エリアにおいて、その電極の配列方向における領域の中央位置よりもベゼルの内縁側にまで末端電極が配設されることをいう。例えば、X軸電極の末端電極であれば、非表示エリアのX軸方向における領域の中央位置よりもベゼルの内縁側にまで末端電極が配設される。また、Y軸電極の末端電極であれば、非表示エリアのY軸方向における領域の中央位置よりもベゼルの内縁側にまで末端電極が配設される。
【0013】
上記静電容量タッチパネルにおいて、上記X軸電極の一方側の末端電極に引き出し配線がそれぞれ接続され、上記Y軸電極の一方側の末端電極に引き出し配線がそれぞれ接続されており、上記X軸電極および上記Y軸電極において上記引き出し配線が接続されていない側の複数の末端電極が、上記引き出し配線が接続されている側の複数の末端電極とは異なり、上記非表示エリアにおいて上記ベゼルの内縁近傍まで配設されていることを特徴とする。
【0014】
上記X軸電極において、上記ベゼルの内縁近傍まで配設された上記複数の末端電極のうち、上記Y軸電極の上記引き出し配線が接続されていない側の末端電極と対向する末端電極の電極面積が、その他の末端電極の電極面積よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
上記Y軸電極において、上記ベゼルの内縁近傍まで配設された上記複数の末端電極のうち、上記X軸電極の上記引き出し配線が接続されていない側の末端電極と対向する末端電極の電極面積が、その他の末端電極の電極面積よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
上記X軸電極は、ダイヤモンド形状のX軸格子をX軸方向に複数並べたパターンを有し、上記Y軸電極は、ダイヤモンド形状のY軸格子をY軸方向に複数並べたパターンを有しており、上記ベゼルの内縁近傍まで形成された上記末端電極の電極面積は、ダイヤモンド形状の格子の電極面積の60%以上であることを特徴とする。
【0017】
上記ベゼルの内縁近傍まで配設された上記末端電極の上記タッチパネルの平面視における形状は、非ダイヤモンド形状で、かつ、N角形状(N=4以上の整数)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の静電容量タッチパネルは、平面視において所定の表示エリアを有する静電容量タッチパネルであって、X軸方向に配列したX軸電極とY軸方向に配列したY軸電極とを有し、これらの電極がそれぞれ複数列設けられたセンサー部と、該センサー部の外周を囲むように設けられるベゼルとを備え、X軸電極およびY軸電極の各配列方向の端部に位置する複数の末端電極のうち少なくとも1つの末端電極が、表示エリアの外周側に位置する非表示エリアにおいてベゼルの内縁近傍まで配設されているので、末端電極が表示エリアラインの近傍に配設される従来構成(
図9参照)に比べて、末端電極の電極面積を大きくでき、タッチ時の容量変化を大きくすることが可能であることから、末端電極の感度を改善することができる。これにより、タッチエリア内の感度の均一化が可能となる。
【0019】
上記静電容量タッチパネルにおいて、X軸電極の一方側の末端電極に引き出し配線がそれぞれ接続され、Y軸電極の一方側の末端電極に引き出し配線がそれぞれ接続されており、X軸電極およびY軸電極において引き出し配線が接続されていない側の複数の末端電極が、引き出し配線が接続されている側の複数の末端電極とは異なり、非表示エリアにおいてベゼルの内縁近傍まで配設されているので、所定の構成において感度が低下しやすい末端電極の感度を選択的に改善でき、タッチエリア内の感度の均一化に繋がりやすい。
【0020】
X軸電極(またはY軸電極)において、ベゼルの内縁近傍まで配設された複数の末端電極のうち、Y軸電極(またはX軸電極)の引き出し配線が接続されていない側の末端電極と対向する末端電極の電極面積が、その他の末端電極の電極面積よりも大きいので、コネクタ側から最も遠い位置にあるX軸電極およびY軸電極の末端電極の特異的な感度の低下を防ぐことができ、タッチエリア内の感度の均一化に繋がりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の静電容量タッチパネルの一例を示す平面概略図である。
【
図2】
図1のタッチパネルにおけるX軸格子およびY軸格子を説明する平面図である。
【
図4】
図1のタッチパネルの拡大断面を示す模式図である。
【
図5】試験に用いた静電容量タッチパネルの各部を説明するための平面概略図である。
【
図6】実施例と比較例のタッチレベルを示すグラフである。
【
図9】従来の静電容量タッチパネルの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の静電容量タッチパネルの一例を
図1~
図4に基づいて説明する。
図1は、静電容量タッチパネルの平面概略図である。なお、
図1では簡略化のため図示は省略するが、本発明は末端電極の構成に特徴を有しており、これについては
図3で詳細を説明する。
【0023】
図1に示すように、タッチパネル1は、平面視において所定の表示エリアを有するタッチパネルである。表示エリアは、矩形状の表示エリアラインLに囲まれた内側の領域である。タッチパネル1は、センサー部2と、センサー部2の外周を囲むように設けられるベゼル10とを備える。ベゼル10は径方向に所定の厚みを有し、内周側の内縁10aと外周側の外縁10bが形成される。センサー部2は、X軸方向に配列したX軸電極3と、Y軸方向に配列したY軸電極5とを有している。タッチパネル1において、X軸電極3は複数列(
図1では10列)、平行に設けられており、Y軸電極5は複数列(
図1では6列)、平行に設けられている。
【0024】
図1において、各電極3、5は、ダイヤモンドパターンでパターニングされている。具体的には、X軸電極3は、ダイヤモンド形のX軸格子4をX軸方向に一直線上に複数並べたパターンを有しており、その配列方向の端部に末端電極(例えば、x
1およびx
1’)を有している。また、Y軸電極5は、ダイヤモンド形のY軸格子6をX軸方向と直交するY軸方向に一直線上に複数並べたパターンを有しており、その配列方向の端部に末端電極(例えばy
1およびy
1’)を有している。
【0025】
X軸電極3とY軸電極5は、XY平面で見ると(平面視で)重ならない位置に配置され、X軸格子4およびY軸格子6がマトリックス状に配列されている。
【0026】
図2には、X軸格子およびY軸格子の拡大図を示す。
図2に示すように、ダイヤモンド形のX軸格子4A、4Bは、その外郭を構成する4つの枠線を有しており、その枠線の内部は、より微細な格子状部分(微細格子)で形成されている。また、ダイヤモンド形のY軸格子6A、6Bは、その外郭を構成する4つの枠線を有しており、その枠線の内部は微細格子で形成されている。
【0027】
図2に示すように、X軸方向で隣接するX軸格子4A、4Bは、X軸方向と平行に延びた接続部4aによって接続されている。また、Y軸方向で隣接するY軸格子6A、6Bは、Y軸方向と平行に延びた接続部6aによって接続されている。接続部4aと接続部6aは、X軸格子およびY軸格子の格子辺の方向とは異なる方向で結線され、
図2に示すように、直交して交差している。なお、各格子を接続する接続部の態様は、
図2の構成に限られない。
【0028】
微細格子において、格子状部分は、後述するセンサー電極と中間層が上記順序で重なったものである。格子間が開口部であり、この部分にはセンサー電極や中間層は形成されていない。格子状部分は、非常に微細な格子状であることから、一見して目視で透明に見える透光部となる。格子状部分は、通常、線幅Wとして3μm~50μm、線ピッチPとして0.2mm~1mm程度である。
【0029】
図1に戻り、タッチパネル1において、X軸電極3の一方側の末端電極(例えばx
1’)には、引き出し配線7が接続されている。すなわち、複数のX軸電極において、同じ側(図下側の10箇所)の末端電極の各々には、引き出し配線7が接続されている。また、Y軸電極5の一方側の末端電極(例えばy
1’)には、引き出し配線8が接続されている。すなわち、複数のY軸電極において、同じ側(図左側の6箇所)の末端電極の各々には、引き出し配線8が接続されている。X軸電極3およびY軸電極5は、引き出し配線7、8を介して、外部の配線と電気的に接続するための端子9に接続されている。
【0030】
例えば、外部の配線として、フレキシブルプリント配線板(FPC)に接続され、FPCを介してタッチ検出を行なうコントロール部(図示省略)が接続される。また、耐環境特性を向上させるために、FPCに替えて金属製のリードフレームを設けてもよい。本発明の静電容量タッチパネルは、センサー電極と指との間で静電結合が起きて電極の静電容量が変化することを利用するものであり、コントロール部における具体的な検出手順などは公知の手順を採用できる。
【0031】
ここで、従来のタッチパネルでは、末端電極は表示エリアラインLよりも外側でかつその近傍に、表示エリアラインLに沿って形成されている(
図9参照)。なお、
図1の概略図では、便宜上、そのような構成を示している。
【0032】
これに対して、本発明の静電容量タッチパネルでは、複数のX軸電極および複数のY軸電極の各配列方向の端部に位置する複数の末端電極のうち少なくとも1つの末端電極が、表示エリアの外周側に位置する非表示エリアにおいてベゼルの内縁近傍まで配設されている。なお、本発明において、ベゼルの内縁近傍まで配設された末端電極の数や位置は、特に限定されず、例えば、静電容量タッチパネルにおけるすべての末端電極がベゼルの内縁近傍まで配設されていてもよい。
【0033】
例えば、引き出し配線が一方側に接続される構成では、タッチエリア内の感度の均一化の観点から、X軸電極およびY軸電極において引き出し配線が接続されていない側の末端電極のみをベゼルの内縁近傍まで配設することが好ましい。この場合、X軸電極およびY軸電極において引き出し配線が接続されている側の末端電極は、例えば、
図9に示すような従来構成、すなわち、表示エリアラインLよりも外側でかつその近傍に、表示エリアラインLに沿って配設される。
【0034】
具体的には、
図1で言うと、複数のX軸電極3および複数のY軸電極5において、引き出し配線7、8が接続された末端電極とは反対側の末端電極x
1~x
10およびy
1~y
6(点線で囲んだS部の末端電極)が、ベゼル10の内縁近傍まで配設されている。なお、これら末端電極x
1~x
10およびy
1~y
6のうち少なくとも1つの末端電極が、ベゼル10の内縁近傍まで配設するようにしてもよい。末端電極の構成について、
図3を用いて説明する。
【0035】
図3は、
図1の一部拡大図を示しており、より具体的には、引き出し配線が接続されていない側の末端電極のうち、コネクタ側から最も遠い位置にある末端電極の周辺拡大図を示している。
図1で言うと、
図3は、タッチパネル1の右上箇所の拡大図を示している。
【0036】
図3に示すように、表示エリアの外周側には非表示エリアRが形成されている。非表示エリアRは、表示エリアラインLとベゼル10の内縁10aとの間の領域である。非表示エリアRは、例えば、タッチパネル1においてセンサー部が設けられる基板が配置される部分であってタッチ面側から視認できない部分である。非表示エリアRは、タッチ面側に設けられる非透過性の枠部(図示省略)などによって覆われている。
【0037】
図3に示すように、タッチパネル1では、非表示エリアRにおいて、X軸電極3の末端電極x
8、x
9、x
10が、ベゼル10の内縁10aの近傍まで配設されている。以下には、末端電極x
8、x
10について更に詳細に説明する。なお、末端電極x
9は、末端電極x
8と構成が同じであるため、説明を省略する。
【0038】
末端電極x
8は、ベゼル10に干渉しない範囲でX軸格子4のダイヤモンド形状を維持するように形成されている。タッチパネル1の平面視における末端電極x
8の形状は、非ダイヤモンド形状で、かつ、五角形状となっている。また、末端電極x
8は、X軸方向に平行な軸を中心とした対称形状となっている。末端電極x
8において、ベゼル10に最も接近した部分であるエッジ部(
図3ではエッジライン)exは五角形の一辺を構成している。このエッジ部exは、ベゼル10の内縁10aに対して間隔をあけて、内縁10aと平行に形成されている。
【0039】
末端電極x
8をこのように配設することで、
図9において対応する末端電極x
iと比べて、電極面積が大きくなる。言い換えると、
図9における末端電極x
iの電極面積が、X軸格子の電極面積に対して50%であるのに対して、末端電極x
8の電極面積は、X軸格子4の電極面積に対して50%超えとなっている。末端電極x
8の電極面積は、X軸格子4の電極面積に対して、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上であってもよい。この割合の上限は、例えば150%である。
【0040】
なお、
図3において、末端電極x
8の電極面積は、5つの枠線で囲まれた五角形の面積をいう。また、X軸格子4の電極面積は、4つの枠線で囲まれたダイヤモンド形の面積をいう。末端電極x
8とX軸格子4はX軸方向で隣接しており、接続部によって接続されている。
【0041】
図3において、末端電極x
8は、表示エリアラインLとベゼル10の内縁10aとの間に形成される非表示エリアRにおいて、X軸電極3の配列方向(X軸方向)における領域の中央位置よりもベゼル10の内縁10a側まで配設されている。すなわち、末端電極x
8のエッジ部exは、非表示エリアRにおいて、表示エリアラインLとベゼル10の内縁10aとのX軸方向における領域の中央位置よりもベゼル10の内縁10a側に位置している。
図3で示すと、当該領域の中央線Cxよりもベゼル10の内縁10a側に位置している。ここで、非表示エリアRのX軸方向における距離をR
x(=100%)とした場合、表示エリアラインLを起点にして、例えばR
xの60%~90%の範囲内にエッジ部exが位置し、好ましくはR
xの60%~80%の範囲内にエッジ部exが位置する。
【0042】
エッジ部exとベゼル10の内縁10aとのX軸方向における間隔は特に限定されないが、具体的な数値では、例えば、2~5mmである。
【0043】
図3に示すように、末端電極x
8において、従来構成と比較して拡張した部分の電極は、例えば、X軸格子4と同じ微細格子を主体として構成される。なお、当該末端電極を構成する微細格子の一部の線幅Wや線ピッチPを、X軸格子4とは異なるようにしてもよい。
【0044】
続いて、末端電極x10について説明する。末端電極x10は、複数のX軸電極3において引き出し配線が接続されていない側の複数の末端電極x1~x10のうち、コネクタ側から最も遠い位置にある末端電極であり、Y軸電極5の引き出し配線が接続されていない側の末端電極y1と対向する末端電極である。
【0045】
末端電極x10は、ベゼル10に干渉しない範囲でX軸格子4のダイヤモンド形状を維持するように形成しつつ、更に、ダイヤモンド形のX軸格子の一辺(末端電極y1と対向する一辺)を引き延ばした形状となっている。タッチパネル1の平面視における末端電極x10の形状は、非ダイヤモンド形状で、かつ、五角形状となっている。また、末端電極x10は、X軸方向に平行な軸を中心として非対称形状となっており、その他のX軸電極3の末端電極(x1~x9)とは形状が異なっている。末端電極x10のエッジ部exは五角形の一辺を構成している。このエッジ部exは、ベゼル10の内縁10aに対して間隔をあけて、内縁10aと平行に配設されている。
【0046】
末端電極x
10をこのように配設することで、
図9において対応する末端電極x
iiiと比べて、電極面積が大きくなる。言い換えると、
図9における末端電極x
iiiの電極面積が、X軸格子の電極面積に対して50%であるのに対して、末端電極x
10の電極面積は、X軸格子4の電極面積に対して50%超えとなっている。末端電極x
10の電極面積は、X軸格子4の電極面積に対して、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。この割合の上限は、例えば150%である。なお、末端電極x
10の電極面積は、5つの枠線で囲まれた五角形の面積をいう。
【0047】
また、末端電極x10の電極面積は、その他のX軸電極3の末端電極(x1~x9)の電極面積よりも大きいことが好ましい。
【0048】
なお、非表示エリアRにおける末端電極x10のエッジ部exの位置などについては、末端電極x8で説明した範囲などを適宜採用できる。
【0049】
また、
図3に示すように、タッチパネル1では、非表示エリアRにおいて、Y軸電極5の末端電極y
1、y
2が、ベゼル10の内縁10aの近傍まで配設されている。
【0050】
末端電極y1は、複数のY軸電極5において引き出し配線が接続されていない側の複数の末端電極y1~y6のうち、コネクタ側から最も遠い位置にある末端電極であり、X軸電極3の引き出し配線が接続されていない側の末端電極x10と対向する末端電極である。なお、末端電極y1の構成は、方向の違いはあるものの、上述した末端電極x10に対応していることから、詳細な説明を省略する。
【0051】
末端電極y
1の電極面積は、その他のY軸電極5の末端電極(y
2~y
6)の電極面積よりも大きいことが好ましい。なお、
図3では、末端電極y
1の電極面積と末端電極x
10の電極面積は等しくなっている。
【0052】
また、末端電極y
2の構成は、方向の違いはあるものの、上述した末端電極x
8に対応していることから、詳細な説明を省略する。なお、
図3では、末端電極y
2の電極面積と末端電極x
8の電極面積は等しくなっている。
【0053】
なお、末端電極の構成は、
図3の構成に限定されるものではない。例えば、
図3では、末端電極の形状を五角形状としたがこれに限らず、非ダイヤモンド形状で、かつ、N角形状(N=4以上の整数)とすることができる。また、
図3では、X軸格子4およびY軸格子6がダイヤモンド形状としたが、この形状に限らない。
【0054】
次に、
図4にタッチパネルの拡大断面の模式図を示す。なお、
図4では、例示として、2つのガラス基板を重ね合わせてその間に各センサー部が挟み込まれた構造を示すが、これに限らず、一枚ガラス基板上にX軸電極およびY軸電極を形成してもよい。
【0055】
図4に示すように、X軸電極3は、第1のガラス基板11のタッチ面11aの反対面に形成された中間層3bと、その上に形成された金属薄膜からなるセンサー電極3aとを有する。また、Y軸電極5は、第2のガラス基板12の片面(第1のガラス基板側)に形成された金属薄膜からなるセンサー電極5aと、その上に形成された中間層5bとを有する。タッチ面11aから見ると、いずれの電極においても、中間層の下に金属薄膜が位置するように形成されている。これにより、可視光の反射率を低減させて視認性を確保している。
【0056】
センサー電極3a、5aを構成する金属薄膜は、アルミニウム(Al)、Al合金、ニオビウム、モリブデン、金、銀、銅などの材料を用いて、公知の薄膜成形方法により形成される。これらの中でも、耐環境特性に優れ、低コストであることから、Al薄膜を採用することが好ましい。
【0057】
中間層3b、5bは、(1)Cr、Mo、Wから選ばれる少なくとも1つの金属を含む薄膜である。また、中間層3b、5bは、可視光の干渉により入射光を吸収して黒色に見える層(黒色層)である。タッチ面11aからは、スイッチ部は黒色に見え、反射を抑制できる。中間層は、上述のAl薄膜などの形成と同様に、スパッタリングなどにより形成できる。また、中間層には、(2)Alの酸化物(Al2O3など)およびTiの酸化物(TiO2など)から選ばれる少なくとも1つの酸化物を所定量含むことが好ましい。これら酸化物を所定量含むことで、反射率の更なる低減が図れる。中間層として、より好ましくはMoとAl2O3の混合層である。また、中間層の膜厚は、5nm~500nmが適当であり、より好ましくは20nm~200nmである。
【0058】
第1のガラス基板11および第2のガラス基板12は、透光性の絶縁基板であり、ソーダライムガラス、石英ガラス、硼珪酸ガラス、アルカリ成分を含まない無アルカリガラスなどを採用できる。高い透過率を有し、かつ、一般建材の窓ガラスに使用され非常に安価であることから、ソーダライムガラスを用いることが好ましい。 また、各ガラス基板の厚みは、それぞれ0.5~5mm程度、好ましくは0.5~3.0mm程度である。
【0059】
図4において、X軸電極3とY軸電極5との間、厳密にはX側のセンサー電極3aとY側の中間層5bとの間には、各センサー電極を絶縁するために絶縁層13が形成されている。絶縁層の厚みは、50μm~500μmが適当である。絶縁層の厚みが500μmをこえると、センサー電極間のギャップが大きくなり、X軸電極とY軸電極に感度差が生じる。
【0060】
また、
図4ではタッチ面側の第1のガラス基板にX軸電極を設けているが、第1のガラス基板にY軸電極を設け、第2のガラス基板にX軸電極を設ける形態としてもよい。
【0061】
各電極のセンサー電極は、金属薄膜から構成される。例えば、金属薄膜がAl薄膜である場合、Al薄膜は、Alの固体ターゲット(蒸着材)を用いて、真空プロセスである、スパッタリングまたは真空蒸着により形成される。また、配線もセンサー電極と同時に一体に形成することができる。真空プロセスとしては、均一な膜の形成が可能であることからスパッタリングを採用することがより好ましい。スパッタリングは、固体ターゲットに加速したアルゴンイオンを衝突させて、ターゲット表面から飛び出した原子または分子をガラス基板上に付着させて形成する方法である。
【0062】
Al薄膜を格子状などの所定形状に加工する方法は特に限定されないが、センサー電極に接続される配線や、上述の微細格子部分を精度よく形成可能であることから、公知のフォト解像技術を用いることが好ましい。例えば、Al薄膜をスパッタリングまたは真空蒸着で形成した後、エッチングパタンのマスク層をレジスト材料を用いてスクリーン印刷により形成し、所定のエッチング液を用いて湿式エッチングにより湿式エッチングして微細配線を形成する。なお、Al薄膜の膜厚は、100nm~5000nmが適当である。
【実施例0063】
以下の実験により、末端電極の感度の改善効果について検討した。2種類のタッチパネルを作製した。実施例は、X軸電極およびY軸電極において引き出し配線が接続されていない側の末端電極を、非表示エリアにおいてベゼルの内縁近傍まで配設されている態様(
図3参照)とし、比較例は、X軸電極およびY軸電極において引き出し配線が接続されていない側の末端電極を、従来構成の態様(
図9参照)とした。上記末端電極以外の構成は、実施例と比較例で同じとした。
【0064】
電極交点部(22×13=286箇所)をロボットアームで1秒間タッチし、そのタッチレベルを専用ツールで算出した。タッチレベルについて、全体平均値、末端電極の最も感度の低い部位の平均値(
図5のA部)、A部以外の末端電極の平均値(
図5のB部)を算出した。結果を、下記の表1および
図6に示す。
【0065】
【0066】
表1および
図6に示すように、実施例および比較例のいずれの場合も、全体平均値に比べて、B部の末端電極のタッチレベル(感度)は低下しており、A部の末端電極のタッチレベルはそれより更に低下しているところ、実施例では、比較例よりもA部の末端電極のタッチレベルの減少率を約半分に抑えることができた。また、B部の末端電極でも感度の改善を確認することができた。
【0067】
続いて、
図7には実施例のタッチレベル分布を示し、
図8には比較例のタッチレベル分布を示す。これらの図より、実施例のタッチパネルにおいて、末端電極(特にA部)の感度が改善されており、比較例に比べて、タッチエリア内の感度の均一化を図ることができた。
本発明の投影型静電容量タッチスイッチパネルは、タッチエリア内の感度の均一化が可能であるので、家電機器、AV機器、PC/OA機器、産業機械、その他の電子デバイス等における各機器への入力手段として好適に利用できる。