(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146567
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ヒドロキメチルフルフラールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/48 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
C07D307/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059550
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】523118912
【氏名又は名称】株式会社グリーンケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩越万里
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、グルコース及び糖類を多く含むHMF等を分離精製して、より純度の高いHMFを製造する方法を提供することである。
【解決手段】
ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類を含む溶液を、活性炭と接触させてヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類を活性炭に吸着させる工程(1)、及び、ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を低級アルコールを5~50体積%含む水溶液で洗浄し、次いで低級アルコール又は酢酸エステルと接触させて、ヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工程(2)、又はヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を酢酸エステルと接触させてヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工程(3)を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類を含む溶液を、活性炭と接触させてヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類を活性炭に吸着させる工程(1)、及び、ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を低級アルコールを5~50体積%含む水溶液で洗浄し、次いで活性炭を低級アルコール又は酢酸エステルと接触させて、ヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工程(2)、又はヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を酢酸エステルと接触させて、ヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工程(3)を有するヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
【請求項2】
前記工程(2)において、ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を低級アルコールを5~50体積%含む水溶液で洗浄する工程が、低級アルコールを5~20体積%含む水溶液で洗浄する工程である請求項1に記載のヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
【請求項3】
前記低級アルコールが、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
【請求項4】
ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類を含む溶液が、溶媒中、固体ルイス酸存在下にグルコース又はフルクトースを反応させた反応溶液である請求項1に記載のヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
【請求項5】
前記固体ルイス酸が、ルイス酸として機能するアモルファス含水チタン酸化物の表面にリン酸残基が共有結合してなるリン酸化チタン酸化物である、請求項1に記載のヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
【請求項6】
前記ルイス酸として機能するアモルファス含水チタン酸化物が、水溶液中で加水分解して酸化物を形成する有機チタン化合物を、水と、酸触媒又は塩基触媒と共に反応させることにより得ることができるアモルファス含水チタン酸化物である請求項5に記載のヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
【請求項7】
前記水溶液中で加水分解して酸化物を形成する有機チタン化合物が、チタン塩化物、チタン硫酸塩、およびチタンアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともひとつである請求項6に記載のヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシメチルフルフラール(以下、本明細書中、「HMF」ということがある。)、及び糖類を含む混合物から分離精製してより純度の高いHMFを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシメチルフルフラールはグルコースを原料として合成できる重要な化学品の中間物質であるが、その合成経路は非常に複雑である。原料であるグルコースは酸触媒の存在下で骨格異性化してフルクトースへと変換される。生成したフルクトースは酸触媒との脱水反応によりヒドロキシメチルフルフラールへと変化するが、ヒドロキシメチルフルフラールは反応系内の酸触媒によって更に逐次的に加水分解されて、有機酸(ギ酸、レブリン酸)になる。そのためにヒドロキシメチルフルフラールを高選択的に製造するための新規な触媒が望まれている。
【0003】
アモルファス含水チタン酸化物を、リン酸で処理することにより、含水チタン酸化物の表面にリン酸残基が共有結合したリン酸化チタン酸化物が、高い効率でグルコースをHMFに転化でき、得られたHMFの加水分解に対しては不活性であるので、高い収率でグルコースからHMFが得られる固体ルイス酸として知られている(特許文献参照)。
【0004】
前記固体ルイス酸を用いてフローリアクターで連続反応を行うためには、前記固体ルイス酸触媒を何らかの担体に担持する必要があった。ポリテトラフルオロエチレン、酸化アルミニウム、シリコーン、シリカ、パーメチルポリシラン、およびカーボンブラックからなる群から選ばれる少なくとも一つをバインダとして前記固体ルイス酸の成形体を得、それをフローリアクターに充填して連続反応でグルコースからHMFを製造する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2012-108472号公報
【特許文献2】特開2021-041344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記固体ルイス酸を担持したことで、グルコースからのHMFへの転化率が低下し得られた反応液中には、HMF、グルコース、及び副生成物の糖類(以下、本明細書中、「HMF等」ということがある。)が含まれており、純度の高いHMFを得るためには、さらに分離精製工程が必要となった。そこで特許文献2には、活性炭カラムに反応液を通して、活性炭に、HMF等を吸着させ、次いで水を通して、グルコース及び副生成物の糖類を流出させ、最終的にメタノールを通して、HMFを流出させ、純度93%のHMFが得られることが記載されているが、より高い純度のHMFを分離精製する工程が求められている。
【0007】
本発明の課題は、グルコース及び糖類を多く含むHMF等を分離精製して、より純度の高いHMFを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、HMF及び糖類を吸着させた活性炭を、水及び低級アルコールを含む水溶液で洗浄することにより、又は酢酸エステルで抽出することで純度の高いヒドロキシメチルフルフラールがえられることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類を含む溶液を、活性炭と接触させてヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類を活性炭に吸着させる工程(1)、及び、ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を低級アルコールを5~50体積%含む水溶液で洗浄し、次いで活性炭を低級アルコール又は酢酸エステルと接触させて、ヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工程(2)、又はヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を酢酸エステルと接触させて、ヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工程(3)を有するヒドロキシメチルフルフラールの製造方法に関する。
【0010】
前記工程(2)において、ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を低級アルコールを5~50体積%含む水溶液で洗浄する工程が、低級アルコールを5~20体積%含む水溶液で洗浄する工程であるのが好ましい。
また、前記低級アルコールが、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
また、ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類を含む溶液が、溶媒中、固体ルイス酸存在下にグルコース又はフルクトースを反応させた反応溶液であるのが好ましい。
また、前記固体ルイス酸が、ルイス酸として機能するアモルファス含水チタン酸化物の表面にリン酸残基が共有結合してなるリン酸化チタン酸化物であるのが好ましい。
また、前記ルイス酸として機能するアモルファス含水チタン酸化物が、水溶液中で加水分解して酸化物を形成する有機チタン化合物を、水と、酸触媒又は塩基触媒と共に反応させることにより得ることができるアモルファス含水チタン酸化物であるのが好ましい。
さらに、前記水溶液中で加水分解して酸化物を形成する有機チタン化合物が、チタン塩化物、チタン硫酸塩、およびチタンアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともひとつであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法を用いれば、糖類等の不純物を多く含む混合物から、HMFを高純度で分離精製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のHMFの製造方法は、HMF、及び糖類を含む溶液を、活性炭と接触させてヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類を活性炭に吸着させる工程(1)、及び、ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を低級アルコールを5~50体積%含む水溶液で洗浄し、次いで低級アルコール又は酢酸エステルと接触させて、ヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工程(2)、又はヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を酢酸エステルと接触させて、ヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工程(3)を有する
【0013】
前記工程(1)におけるHMF、及び糖類を含む溶液は、溶媒中、固体ルイス酸存在下にグルコース又はキシロースを反応させた反応溶液であるのが好ましい。
前記糖類として、具体的には、原料となるグルコース及びキシロース、フルクトース、セロビオース、マルトース、スクロース等が挙げられる。
【0014】
前記反応において用いられる溶媒として水が好ましい。前記反応時の温度は、好ましくは60℃~180℃、より好ましくは100℃~150℃である。前記反応に要する時間は、反応温度に応じて適宜選択されるが、好ましくは10分間~24時間、より好ましくは2時間~6時間である。反応に供されるグルコース又はフルクトースの量は、固体ルイス酸1質量部に対して、好ましくは0.0002~200質量部、より好ましくは0.025~2質量部である。
【0015】
前記反応は、バッチ式で行ってもよいし、フロー式で行ってもよいが、フロー式で行うことが好ましい。フロー式においては、フローマイクロ反応(マイクロリアクタ)を用いることが好ましい。固体ルイス酸の充填された流路に原料を流し込むことで化学反応を行う。フローマイクロ反応においてはフロー効果やマイクロミキシング効果によって反応収率の向上、反応条件の緩和、操作の簡便化などの効果が期待できる。
【0016】
前記固体ルイス酸は、ルイス酸として機能するアモルファス含水チタン酸化物の表面にリン酸残基が共有結合してなるリン酸化チタン酸化物であることが好ましい。前記含水チタン酸化物は、水溶液中で加水分解して酸化物を形成する有機チタン化合物を、水と、酸触媒又は塩基触媒と共に反応させることにより得ることができる。
【0017】
前記有機チタン化合物としては、水酸化チタン、チタン酸、三塩化チタン、四塩化チタン、四臭化チタン、硫酸チタン、オキシ硫酸チタン等の無機チタン化合物;テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン等のチタンアルコキシド化合物;チタンアシレート化合物;ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、イソプロポキシ(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン等のチタンキレート化合物;シュウ酸チタン、四酢酸チタン等の有機酸チタン化合物;水溶性チタン錯体などが挙げられる。中でも、チタン塩化物、チタンシュウ酸塩、及びチタンアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0018】
前記チタンアルコキシド中のアルコキシ基は、それを構成する炭素原子の数が、好ましくは1~6、より好ましくは2~4である。アルコキシ基は直鎖状、分岐状、または環状のいずれでもよい。
【0019】
前記加水分解反応において用いられる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。加水分解反応において用いられる塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。前記加水分解反応時の温度は、好ましくは10~100℃、より好ましくは20~30℃である。加水分解反応に要する時間は、反応温度や反応スケールなどに応じて適宜設定できるが、好ましくは0.5時間~48時間、より好ましくは10時間~24時間である。
【0020】
前記リン酸化チタン酸化物は、前記アモルファス含水チタン酸化物をリン酸で処理することによって得ることができる。前記リン酸処理は、前記アモルファス含水チタン酸化物をリン酸水溶液に浸漬し、撹拌することにより行うことができる。この際の温度は、好ましくは10℃以上100℃未満、より好ましくは20℃以上30℃以下である。反応時間は、反応温度や反応スケール等に応じて適宜設定できるが、好ましくは1時間~96時間、より好ましくは24時間~72時間である。
【0021】
前記固体ルイス酸は、金属元素がドープされていてもよいし、金属元素を含む化合物で被覆されていてもよい。金属元素としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ケイ素、亜鉛、セリウム、鉄、タングステン、モリブデン、ヴァナジウム等が挙げられる。
【0022】
また、前記固体ルイス酸は、必要に応じてバインダと混合して成形体とすることもできる。前記バインダとして、具体的には、モルデナイト、シャバサイト、エリオナイト、フェリエライト、フォージャサイト、レビン、ZSM-5、ゼオライトA、ゼオライトβ、FU-1、Rho、ZK-5、RUB-3、RUB-13、NU-3、NU-4、NU-5、NU-10、NU-13、NU-23、MCM-22などの結晶質アルミノシリケートモレキュラーシーブ;SAPO-5、SAPO-11、SAPO-17、SAPO-18、SAPO-26、SAPO-31、SAPO-33、SAPO-34、SAPO-35、SAPO-42、SAPO-43、SAPO-44、SAPO-47、SAPO-56などの結晶質シリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブ;カオリナイト、セリサイト、タルク、雲母(白雲母、金雲母、黒雲母、紅雲母、バナジン雲母、クロム雲母、フッ素雲母等)、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト、スメクタイトなどの粘土化合物類;シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、チタニア、ジルコニア、イットリア;ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、パーメチルポリシラン、カーボンブラック等が挙げられる。中でも、ポリテトラフルオロエチレン、酸化アルミニウム、シリコーン、シリカ、パーメチルポリシラン、及びカーボンブラックからなる群から選ばれる少なくとも一つが、好ましく挙げられる。
【0023】
前記バインダの量は、成形体を製造できる限り特に限定されないが、固体ルイス酸100質量部に対して、好ましくは10~100質量部、より好ましくは10~50質量部、さらに好ましくは10~20質量部である。
【0024】
前記固体ルイス酸の成形体は、例えば、バインダと固体ルイス酸とを、必要に応じて水とともに、混練し、成形し、乾燥し、必要に応じて焼成することによって得ることができる。また、混練は、加圧下に行うことが好ましい。前記混練は作業性の点からニーダー等の混練機を用いて連続的に行うのが好ましい。前記乾燥は水分の除去ができる限り、その条件は制限されないが、例えば、80℃~150℃の温度範囲で、1~168時間で行うことができる。前記乾燥後、所望のサイズに揃えて、必要に応じて、前記焼成を行う。焼成温度、時間は固体ルイス酸成形体の種類によって異なる。焼成は、例えば、400℃~800℃で1~168時間の条件で行うことができる。
【0025】
前記固体ルイス酸の成形体は、必要に応じて、粉末、顆粒、ペレット、薄膜、ナノチューブ等の形状とすることができる。各形状の成形体は、例えば、押出成形法、圧縮成形法(例えば、打錠成形法など)、圧延成形法、噴霧乾燥法等によって得ることができる。
【0026】
前記固体ルイス酸の成形体のより具体的な例として、テトラエトキシシランなどのバインダ前駆体、前記有機チタン化合物、及びリン酸又はそれの前駆体とを混ぜ合わせて液状またはスラリー状にし、これをキャスティング、スラッシュ成形、塗布などし、次いで加水分解させる方法、テトラエトキシシランなどのバインダ前駆体と前記有機チタン化合物とを混ぜ合わせて液状またはスラリー状にし、これをキャスティング、スラッシュ成形、塗布などし、次いで加水分解させ、これにリン酸処理を施す方法等が挙げられる。
【0027】
前記工程(1)~(3)に用いられる活性炭は、その細孔構造を強化するために処理された炭素質材料であって、非常に高い表面積を有する多孔質の固体である。これらは、石炭、木材、ヤシ殻、木の実の殻、泥炭をはじめとする種々の供給源から得ることができる。前記活性炭は、制御された環境下での加熱を伴う物理的な活性化、又は強酸、塩基、若しくは酸化剤を使用する化学的活性化を使用して、前記供給源から製造することができる。前記活性炭は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
前記工程(1)~(3)において前記活性炭に接触させる方法として、活性炭が充填されたカラムに活性炭に接触させる溶液を流す連続フロー式方法、活性炭に接触させる溶液の入った槽に活性炭を入れとさせて行うバッチ式方法等が挙げられるが、連続フロー方式方法が好ましい。
【0029】
活性炭をカラムに充填する方法として、具体的には、活性炭と溶媒(特に水)を接触させ、スラリー化した後に充填する方法、固体として充填する方法、固体として充填した後に溶媒を浸漬させ活性炭中の気体を溶媒に置換する方法等が挙げられる。効率よく、HMF及び糖類を吸着させるためには、固体の活性炭を充填した後に溶媒を浸漬させて活性炭中の気体を溶媒に置換する方法が好ましい。
【0030】
前記工程(1)は、HMF及び糖類を含有する混合物を活性炭及び溶媒を充填した前記カラムに通液することにより実施することができる。前記カラムを通過した溶液中に、HMFが含まれている場合には、同じカラムに、又は異なるカラムに通液して残存するHMFを活性炭に吸着させることができる。
【0031】
前記工程(2)は、HMF、及び糖類が吸着された活性炭を低級アルコールを5~50体積%含む水溶液で洗浄し、次いで低級アルコール又は酢酸エステルと接触させて、ヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工程である。前記工程(2)は、前記工程(1)同様に、前記連続フロー式方法、前記バッチ式方法等で行うことができるが、前記工程(1)を連続フロー式で行った場合に、そのカラムをそのまま使用できることから、前記連続フロー方式で行うのが好ましい。
【0032】
前記工程(2)に用いられる低級アルコールとして、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロポノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、n-ペンタノール、s-ペンタノール、イソペンタンオール、t-ペンタノール、ネオペンタノール等が挙げられるが、中でもメタノール、エタノール、イソプロパノールが好ましい。これらは、一種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
前記工程(2)においては、前記低級アルコールが5~50体積%の水溶液で、HMF、及び糖類が吸着された活性炭を洗浄するが、前記低級アルコールが、5~20体積%の水溶液を用いるのが好ましい。5体積%未満では、糖類を十分に除去できず、50体積%を超えるとHMFが流出し、HMFの得量が少なくなる。
【0034】
前記工程(2)は、低級アルコール含有水溶液で洗浄された活性炭を低級アルコール又は酢酸エステルと接触させて、ヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工程である。
前記工程(2)のHMF抽出に用いられる低級アルコールは、前記工程(2)で例示したものと同様のものが挙げられる。
前記工程(2)に用いられる酢酸エステルとして、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n‐プロピル等が挙げられる。
前記低級アルコール又は酢酸エステルは、1種単独で、2種以上を混合して用いることができる。また、低級アルコールと酢酸エステルを混合して用いることもできる。
【0035】
前記工程(2)で用いる低級アルコール又は酢酸エステルの量は、特に限定されないが、HMFを十分に抽出できるだけの量を用いるのが好ましい。
【0036】
前記工程(3)は、HMF、及び糖類が吸着された活性炭を酢酸エステルと接触させて、ヒドロキシメチルフルフラールを抽出する工である。前記工程(3)は、前記工程(1)同様に、前記連続フロー式方法、前記バッチ式方法等で行うことができるが、前記工程(1)を連続フロー式で行った場合に、そのカラムをそのまま使用できることから、前記連続フロー方式で行うのが好ましい。
【0037】
前記工程(3)に用いられる酢酸エステルとして、具体的には、前記工程(2)で例示されたものと同様のものが挙げられる。前記酢酸エステルは、1種単独で、2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
前記工程(3)で用いられる酢酸エステルの量は、特に限定されないが、HMFを十分に抽出できるだけの量を用いるのが好ましい。
【0039】
前記工程(2)及び(3)以外に、ヒドロキシメチルフルフラール、及び糖類が吸着された活性炭を水で洗浄する工程(4)を設けることができる。前記工程(4)は、前記工程(1)同様に、前記連続フロー式方法、前記バッチ式方法等で行うことができるが、前記工程(1)及び(2)を連続フロー式で行った場合に、そのカラムをそのまま使用できることから、前記連続フロー方式で行うのが好ましい。
【0040】
前記工程(4)で用いる水の量は、特に限定されないが、不純物である糖類等を十分に抽出できるだけ量を用いるのが好ましい。
また、前記工程(4)は、前記工程(2)又は(3)の前に設けることができる。
【0041】
次に、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0042】
<製造例>
チタンテトライソプロポキシド20mlを蒸留水100mlに加え、室温下で3時間攪拌した。これから白色沈殿物をろ過によって取り出し、1.0M塩酸水溶液200mlに添加し、1時間攪拌して、酸化物骨格の縮合を促進させた。このろ過、添加および撹拌(縮合)をさらに2回(合計3回)繰り返した。得られた沈殿物を中性になるまで蒸留水で洗浄し、次いで80℃のオーブンで乾燥させて、アモルファス含水チタン酸化物を得た。
このアモルファス含水チタン酸化物をリン酸水溶液(0.1M)に添加し、室温下で48時間撹拌した。白色固形物を濾過によって取り出し、中性になるまで蒸留水で洗浄して、固体ルイス酸1を得た。
10%グルコース溶液100mlに固体ルイス酸1を加えて、100℃で17時間を反応させた。得られた反応液Aを分析したところ、HMFが74.69mM、グルコースが341.68mM、フルクトースが22.13mM、セロビオースが4.96mM、フルフラールが2.62mMの濃度で含まれていた。
【実施例0043】
活性炭(富士フイルム和光社製、嵩比重0.182)12.5gを充填した24mmφのクロマト管に前記反応液A100mlを通液し、前記反応液Aに含まれる成分を活性炭に吸着させた。前記クロマト管から排出された前記反応液Aを分析したところ、前記反応液Aに当初含まれていた成分は検出されなかった。
次いで、5体積%のメタノール水溶液を前記クロマト管に通液し、次いでメタノール100mlを前記クロマト管に通液した。得られたメタノール溶液を分析したところ、HMFが102.08mM、グルコースが0.24mM、セロビオースが0.27mM、フルフラールが2.7mMの濃度で含まれていた。結果として、純度97%のHMFが得られた。
5体積%のメタノール水溶液の代わりに20体積%のメタノール水溶液を用いる以外、実施例1と同様に行った。得られたメタノール溶液を分析したところ、HMFが115.93mM、グルコースが0.28mM、フルクトースが0.03mM、セルビオースが0.03mM、フルフラールが4.38mMの濃度で含まれていた。結果として、純度96%のHMFが得られた。