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特開2024-146569電解システム及び電解システムの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146569
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電解システム及び電解システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/023 20210101AFI20241004BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20241004BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241004BHJP
   C25B 15/021 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
C25B15/023
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B15/021
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059552
(22)【出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田村 憲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】眞竹 徳久
(72)【発明者】
【氏名】吉本 俊純
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC06
4K021CA09
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】温度調整ガスを昇圧するための動力を低減するとともに酸素極を循環するガスの酸素濃度が過度に増加することを防止する。
【解決手段】電解セル11と、電解セル11の温度を調整する空気を酸素極に供給する空気供給系統20と、電解セル11から排出される酸素および空気を含む排空気が流通する排出系統30と、排出系統30に排出された排空気の少なくとも一部を空気供給系統20へ導く循環系統40と、電解セル11から排出系統30に排出された排空気の酸素濃度を測定する酸素濃度測定部60と、酸素濃度測定部60が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、循環系統40から空気供給系統20へ導かれる排空気の酸素濃度を低下させる水蒸気供給系統70と、を備える電解システム10を提供する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給された水蒸気を電気分解することで、前記水素極で水素を生成するとともに前記酸素極で酸素を生成する電解セルと、
前記電解セルの温度を調整する温度調整ガスを前記酸素極に供給する供給系統と、
前記電解セルから排出される前記酸素および前記温度調整ガスを含む排出ガスが流通する排出系統と、
前記排出系統に排出された前記排出ガスの少なくとも一部を前記供給系統へ導く循環系統と、
前記電解セルから前記排出系統に排出された前記排出ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、
前記酸素濃度測定部が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、前記循環系統から前記供給系統へ導かれる前記排出ガスの酸素濃度を低下させる酸素濃度低下部と、を備える電解システム。
【請求項2】
前記排出系統に排出された前記排出ガスのうち系外へ排出する前記排出ガスの流量を調整する流量調整弁を備える請求項1に記載の電解システム。
【請求項3】
前記酸素濃度低下部は、酸素濃度が前記設定濃度範囲よりも低い希釈流体で前記排出ガス希釈することにより前記排出ガスの酸素濃度を低下させる請求項2に記載の電解システム。
【請求項4】
前記希釈流体は、水蒸気または水である請求項3に記載の電解システム。
【請求項5】
前記希釈流体は、水蒸気および水であり、
前記酸素濃度低下部は、前記循環系統の第1位置で前記排出ガスを水で希釈し、前記循環系統の前記第1位置よりも下流側の第2位置で前記排出ガスを水蒸気で希釈する請求項3に記載の電解システム。
【請求項6】
前記排出系統に配置されるとともに前記排出ガスに含まれる水分を除去する水分除去部を備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電解システム。
【請求項7】
前記酸素濃度低下部は、前記排出ガスから前記酸素を除去することにより前記排出ガスの酸素濃度を低下させる請求項2に記載の電解システム。
【請求項8】
前記排出系統に配置されるとともに前記排出ガスにより回転駆動されるタービンを備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電解システム。
【請求項9】
電解システムの運転方法であって、
前記電解システムは、
酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給された水蒸気を電気分解することで、前記水素極で水素を生成するとともに前記酸素極で酸素を生成する電解セルと、
前記電解セルの温度を調整する温度調整ガスを前記酸素極に供給する供給系統と、
前記電解セルから排出される前記酸素および前記温度調整ガスを含む排出ガスが流通する排出系統と、
前記排出系統に排出された前記排出ガスの少なくとも一部を前記供給系統へ導く循環系統と、を備え、
前記電解セルから前記排出系統に排出された前記排出ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定工程と、
前記酸素濃度測定工程が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、前記循環系統から前記供給系統へ導かれる前記排出ガスの酸素濃度を低下させる酸素濃度低下工程と、を備える電解システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解システム及び電解システムの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水を電気化学的に分解して水素および酸素を製造する電解セルは二酸化炭素の排出を伴わない水素製造法であり優れた環境特性を有している。このうち、固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell:SOEC)は、電解質としてイットリア安定化ジルコニアなどのセラミックスが用いられ、高温の水蒸気を原料とするため他の電解セルに比べ高い効率で水素の製造が可能である。また、脱炭素化を目的として二酸化炭素(CO2)を原料とし電解水素を還元剤として利用し、直接一酸化炭素(CO)を製造する共電解も可能である。
【0003】
水を電気化学的に分解して水素を製造するシステムとして、例えば、特許文献1のシステムが知られている。特許文献1には、酸素を含む酸素極入口供給ガスを電気化学セルの酸素極に供給する酸素極入口供給ラインと、製造された酸素を含む酸素極出口ガスを排出する酸素極側出口ラインと、を備えるシステムが記載されている。このシステムでは、酸素極入口供給ラインに、循環ガス吸引機構が設けられていて、循環ガス吸引機構が酸素極出口ガスの一部を循環ガスとして酸素極入口供給ガスに供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-115430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、酸素極で生成された酸素を含む酸素極出口ガスの一部が酸素極に再び供給されるため、電気化学セルの酸素極を循環するガスの酸素濃度が漸次増加する可能性がある。そして、酸素極を循環するガスの酸素濃度が過度に増加すると、電気化学セルの内部で発火する恐れがあり安全性が損なわれてしまう。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、温度調整ガスを昇圧するための動力を低減するとともに酸素極を循環するガスの酸素濃度が過度に増加することを防止することが可能な電解システム及び電解システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の電解システム及び電解システムの運転方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る電解システムは、酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給された水蒸気を電気分解することで、前記水素極で水素を生成するとともに前記酸素極で酸素を生成する電解セルと、前記電解セルの温度を調整する温度調整ガスを前記酸素極に供給する供給系統と、前記電解セルから排出される前記酸素および前記温度調整ガスを含む排出ガスが流通する排出系統と、前記排出系統に排出された前記排出ガスの少なくとも一部を前記供給系統へ導く循環系統と、前記電解セルから前記排出系統に排出された前記排出ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、前記酸素濃度測定部が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、前記循環系統から前記供給系統へ導かれる前記排出ガスの酸素濃度を低下させる酸素濃度低下部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る電解システムの運転方法において、前記電解システムは、酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給された水蒸気を電気分解することで、前記水素極で水素を生成するとともに前記酸素極で酸素を生成する電解セルと、前記電解セルの温度を調整する温度調整ガスを前記酸素極に供給する供給系統と、前記電解セルから排出される前記酸素および前記温度調整ガスを含む排出ガスが流通する排出系統と、前記排出系統に排出された前記排出ガスの少なくとも一部を前記供給系統へ導く循環系統と、を備え、前記電解セルから前記排出系統に排出された前記排出ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定工程と、前記酸素濃度測定工程が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、前記循環系統から前記供給系統へ導かれる前記排出ガスの酸素濃度を低下させる酸素濃度低下工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、温度調整ガスを昇圧するための動力を低減するとともに酸素極を循環するガスの酸素濃度が過度に増加することを防止することが可能な電解システム及び電解システムの運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係る電気化学セルスタックの一態様を示す断面図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る電気化学セルモジュールの一態様を示す斜視図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る電気化学セルカートリッジの一態様を示す断面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る電解システムを示す概略構成図である。
図5】本開示の第1実施形態に係る電解システムの運転方法を示すフローチャートである。
図6】本開示の第1実施形態に係る電解システムの運転方法を示すフローチャートである。
図7】本開示の第2実施形態に係る電解システムを示す概略構成図である。
図8】本開示の第3実施形態に係る電解システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下に、本開示の第1実施形態に係る電解システム及び電解システムの運転方法について、図面を参照して説明する。
まず、本開示の第1実施形態に係る電解システムに設けられる固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell:SOEC)について、図1から図3を参照して説明する。
【0012】
以下においては、説明の便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて説明した各構成要素の位置関係は、各々鉛直上方側、鉛直下方側を示すものである。また、本実施形態では、上下方向と水平方向で同様な効果を得られるものは、紙面における上下方向が必ずしも鉛直上下方向に限定することなく、例えば鉛直方向に直交する水平方向に対応してもよい。
【0013】
また、以下においては、固体酸化物形電気化学セルのセルスタックとして筒状の円筒形固体酸化物形電解セル(SOEC)を例として説明するが、必ずしもこの限りである必要はなく、例えば平板形のセルスタックであってもよい。基体上に電気化学セルを形成するが、基体ではなく電極(水素極109もしくは酸素極113)が厚く形成されて、基体を兼用したものでも良い。
【0014】
まず、図1を参照して本実施形態に係る一例として、基体管を用いる円筒形セルスタックについて説明する。基体管を用いない場合は、例えば水素極109を厚く形成して基体管を兼用してもよく、基体管の使用に限定されることはない。また、本実施形態での基体管は円筒形状を用いたもので説明するが、基体管は筒状であればよく、必ずしも断面が円形に限定されなく、例えば楕円形状でもよい。円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒(Flat tubular)等のセルスタックでもよい。
【0015】
ここで、図1は、実施形態に係るセルスタックの一態様を示すものである。セルスタック101は、一例として円筒形状の基体管103と、基体管103の外周面に複数形成された電気化学単セル105と、隣り合う電気化学単セル105の間に形成されたインターコネクタ107とを備える。電気化学単セル105は、水素極109と固体電解質膜111と酸素極113とが積層して形成されている。
【0016】
また、セルスタック101は、基体管103の外周面に形成された複数の電気化学単セル105の内、基体管103の軸方向において最も端の一端に形成された電気化学単セル105の酸素極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されたリード膜115を備え、最も端の他端に形成された電気化学単セル105の水素極109に電気的に接続されたリード膜115を備える。
【0017】
基体管103は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO(CSZ)、CSZと酸化ニッケル(NiO)との混合物(CSZ+NiO)、又はY安定化ZrO(YSZ)、又はMgAlなどを主成分とされる。この基体管103は、電気化学単セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持すると共に、基体管103の内周面に供給される水蒸気を基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される水素極109に拡散させるものである。
【0018】
水素極109は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。水素極109の厚さは50μm~250μmであり、水素極109はスラリーをスクリーン印刷して形成されてもよい。この場合、水素極109は、水素極109の成分であるNiが水蒸気に対して触媒作用を備える。この触媒作用は、基体管103を介して供給された水蒸気(HO)を反応させ、水素分子(H)と酸素イオン(O2-)とに電気分解するものである。
【0019】
固体電解質膜111は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを備えるセラミックス酸化物(例えばYSZ)が主として用いられる。この固体電解質膜111は、水素極109で生成される酸素イオン(O2-)を酸素極113に移動させるものである。水素極109の表面上に位置する固体電解質膜111の膜厚は10μm~100μmであり固体電解質膜111はスラリーをスクリーン印刷して形成されてもよい。
【0020】
酸素極113は、例えば、LaSrMnO系酸化物、又はLaCoO系酸化物で構成され、酸素極113はスラリーをスクリーン印刷またはディスペンサを用いて塗布される。この酸素極113は、固体電解質膜111との界面付近において、水素極109から固体電解質膜111を通過して移動した酸素イオンが電解反応により電子を放出し、酸素原子が結合して酸素を生成する。
【0021】
酸素極113で生成された酸素は反応室215を流通する酸化性ガス(冷却用流体)と合流し、酸素の向上した酸化性ガスを生成することができる。
酸化性ガスとは、酸素を略15%~30%含むガスであり、代表的には空気が好適であるが、空気以外にも燃焼排ガスと空気の混合ガスや、酸素と空気の混合ガスなどが使用可能である。
【0022】
インターコネクタ107は、SrTiO系などのM1-xTiO(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、スラリーをスクリーン印刷する。インターコネクタ107は、水蒸気と酸化性ガスとが混合しないように緻密な膜となっている。
【0023】
また、インターコネクタ107は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した耐久性と電気導電性を備える。このインターコネクタ107は、隣り合う電気化学単セル105において、一方の電気化学単セル105の酸素極113と他方の電気化学単セル105の水素極109とを電気的に接続し、隣り合う電気化学単セル105同士を直列に接続するものである。
【0024】
リード膜115は、電子伝導性を備えること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材やSrTiO系などのM1-xTiO(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で構成されている。このリード膜115は、インターコネクタ107により直列に接続される複数の電気化学単セル105に電解反応に必要な電力を供給するものである。
【0025】
水素極109、固体電解質膜111及びインターコネクタ107のスラリーの膜が形成された基体管103を、大気中にて共焼結する。焼結温度は、例えば1350℃~1450℃とされる。つぎに、共焼結された基体管103上に、酸素極113のスラリーの膜が形成された基体管103が、大気中にて焼結される。焼結温度は、例えば1100℃~1250℃とされる。ここでの焼結温度は、基体管103~インターコネクタ107を形成した後の共焼結温度よりも低温とされる。
【0026】
次に、図2図3とを参照して本実施形態に係る電気化学セルカートリッジ及び電気化学セルモジュールについて説明する。ここで、図2は、本実施形態に係る固体酸化物形電解セル(SOEC)モジュールの一態様を示す斜視図である。また、図3は、本実施形態に係る固体酸化物形電解セル(SOEC)カートリッジの一態様を示す断面図である。
【0027】
SOECモジュール(電気化学セルモジュール)201は、図2に示すように、例えば、複数のSOECカートリッジ(電気化学セルカートリッジ)203と、これら複数のSOECカートリッジ203を収納するモジュール容器205とを備える。なお、図2には円筒形のSOECのセルスタック101を例示しているが、必ずしもこの限りである必要はなく、例えば平板形のセルスタックであってもよい。
【0028】
また、SOECモジュール201は、水蒸気供給管207と複数の水蒸気供給枝管207a及び水蒸気排出管209と複数の水蒸気排出枝管209aとを備える。また、SOECモジュール201は、酸化性ガス供給管(不図示)と酸化性ガス供給枝管(不図示)及び酸化性ガス排出管(不図示)と複数の酸化性ガス排出枝管(不図示)とを備える。
【0029】
水蒸気供給管207は、モジュール容器205の内部に設けられ、SOECモジュール201の電解量に対応して所定流量の水蒸気を供給する水蒸気供給部に接続されると共に、複数の水蒸気供給枝管207aに接続されている。この水蒸気供給管207は、上述の水蒸気供給部から供給される所定流量の水蒸気Gを、複数の水蒸気供給枝管207aに分岐して導くものである。
【0030】
また、水蒸気供給枝管207aは、水蒸気供給管207に接続されると共に、複数のSOECカートリッジ203に接続されている。この水蒸気供給枝管207aは、水蒸気供給管207から供給される水蒸気を複数のSOECカートリッジ203に略均等の流量で導き、複数のSOECカートリッジ203の電解性能を略均一化させるものである。
【0031】
水蒸気排出枝管209aは、複数のSOECカートリッジ203に接続されると共に、水蒸気排出管209に接続されている。この水蒸気排出枝管209aは、SOECカートリッジ203から排出される水素が富化された水蒸気(以下、「排水蒸気」と称する。)を水蒸気排出管209に導くものである。
【0032】
また、水蒸気排出管209は、複数の水蒸気排出枝管209aに接続されると共に、一部がモジュール容器205の外部に配置されている。この水蒸気排出管209は、水蒸気排出枝管209aから略均等の流量で導出される排水蒸気をモジュール容器205の外部に導くものである。
【0033】
モジュール容器205は、内部の圧力が大気圧~約3MPa、内部の温度が大気温度~約550℃で運用されるので、耐圧性と酸化性ガス中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性を保有する材質が利用される。例えばSUS304などのステンレス系材が好適である。
【0034】
ここで、本実施形態においては、複数のSOECカートリッジ203が集合化されてモジュール容器205に収納される態様について説明しているが、これに限られず例えば、SOECカートリッジ203が集合化されずにモジュール容器205内に収納される態様とすることもできる。
【0035】
SOECカートリッジ203は、図3に示す通り、複数のセルスタック101と、反応室215と、水蒸気供給ヘッダ217と、水蒸気排出ヘッダ219と、酸化性ガス(空気)供給ヘッダ221と、酸化性ガス排出ヘッダ223とを備える。また、SOECカートリッジ203は、上部管板225aと、下部管板225bと、上部断熱体227aと、下部断熱体227bとを備える。
【0036】
なお、本実施形態においては、SOECカートリッジ203は、水蒸気供給ヘッダ217と水蒸気排出ヘッダ219と酸化性ガス供給ヘッダ221と酸化性ガス排出ヘッダ223とが図3のように配置されることで、水蒸気と酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる構造となっているが、必ずしもこの必要はなく、例えば、セルスタック101の内側と外側とを平行して流れる、または酸化性ガスがセルスタック101の長手方向と直交する方向へ流れるようにしても良い。
【0037】
反応室215は、上部断熱体227aと下部断熱体227bとの間に形成された領域である。この反応室215は、セルスタック101の電気化学単セル105が配置された領域であり、水蒸気を電気化学的に反応させて電解を行う領域である。また、この反応室215のセルスタック101長手方向の中央部付近での温度を、温度計測部(温度センサや熱電対など)で監視してもよく、SOECモジュール201の定常運転時に、およそ700℃~1000℃の高温雰囲気となる。
【0038】
水蒸気供給ヘッダ217は、SOECカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aとに囲まれた領域であり、上部ケーシング229aの上部に設けられた水蒸気供給孔231aによって、水蒸気供給枝管207aと連通されている。また、複数のセルスタック101は、上部管板225aとシール部材237aにより接合されており、水蒸気供給ヘッダ217は、水蒸気供給枝管207aから水蒸気供給孔231aを介して供給される水蒸気を、複数のセルスタック101の基体管103の内部に略均一流量で導き、複数のセルスタック101の電解性能を略均一化させるものである。
【0039】
水蒸気排出ヘッダ219は、SOECカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bとに囲まれた領域であり、下部ケーシング229bに備えられた水蒸気排出孔231bによって、図示しない水蒸気排出枝管209aと連通されている。また、複数のセルスタック101は、下部管板225bとシール部材237bにより接合されており、水蒸気排出ヘッダ219は、複数のセルスタック101の基体管103の内部を通過して水蒸気排出ヘッダ219に供給される排水蒸気を集合して、水蒸気排出孔231bを介して水蒸気排出枝管209aに導くものである。
【0040】
SOECモジュール201の電解量に対応して所定ガス組成と所定流量の酸化性ガスを酸化性ガス供給枝管へと分岐して、複数のSOECカートリッジ203へ供給する。酸化性ガス供給ヘッダ221は、SOECカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bと下部断熱体227bとに囲まれた領域であり、下部ケーシング229bの側面に設けられた酸化性ガス供給孔233aによって、図示しない酸化性ガス供給枝管と連通されている。この酸化性ガス供給ヘッダ221は、図示しない酸化性ガス供給枝管から酸化性ガス供給孔233aを介して供給される所定流量の酸化性ガスを、後述する酸化性ガス供給隙間235aを介して反応室215に導くものである。
【0041】
酸化性ガス排出ヘッダ223は、SOECカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aと上部断熱体227aとに囲まれた領域であり、上部ケーシング229aの側面に設けられた酸化性ガス排出孔233bによって、図示しない酸化性ガス排出枝管と連通されている。この酸化性ガス排出ヘッダ223は、反応室215から、後述する酸化性ガス排出隙間235bを介して酸化性ガス排出ヘッダ223に供給される酸素が富化された酸化性ガス(以下、「排酸化性ガス」と称する。)を、酸化性ガス排出孔233bを介して図示しない酸化性ガス排出枝管に導くものである。
【0042】
上部管板225aは、上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとの間に、上部管板225aと上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとが略平行になるように、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、上部管板225aは、SOECカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この上部管板225aは、複数のセルスタック101の一方の端部をシール部材237a及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、水蒸気供給ヘッダ217と酸化性ガス排出ヘッダ223とを隔離するものである。
【0043】
上部断熱体227aは、上部ケーシング229aの下端部に、上部断熱体227aと上部ケーシング229aの天板と上部管板225aとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、上部断熱体227aには、SOECカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。上部断熱体227aは、この孔の内面と、上部断熱体227aに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス排出隙間235bを備える。
【0044】
この上部断熱体227aは、反応室215と酸化性ガス排出ヘッダ223とを仕切るものであり、上部管板225aの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。また、上部管板225a等が反応室215内の高温に晒されて温度差による上部管板225a等の熱変形を抑制するために、Ni基合金などの高温耐久性のある金属材料を用いてもよい。また、上部断熱体227aは、反応室215を通過して高温に晒された排酸化性ガスを、酸化性ガス排出隙間235bを通過させて酸化性ガス排出ヘッダ223に導くものである。
【0045】
本実施形態によれば、上述したSOECカートリッジ203の構造により、水蒸気と排酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、排酸化性ガスは、基体管103の内部を通って反応室215に供給される水蒸気との間で熱交換がなされ、金属材料から成る上部管板225a等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出ヘッダ223に供給される。また、水蒸気は、反応室215から排出される排酸化性ガスとの熱交換により昇温され、反応室215に供給される。その結果、ヒータ等を用いることなく電解に適した温度に予熱昇温された水蒸気を反応室215に供給することができる。
【0046】
下部管板225bは、下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとの間に、下部管板225bと下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとが略平行になるように下部ケーシング229bの側板に固定されている。また下部管板225bは、SOECカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この下部管板225bは、複数のセルスタック101の他方の端部をシール部材237b及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、水蒸気排出ヘッダ219と酸化性ガス供給ヘッダ221とを隔離するものである。
【0047】
下部断熱体227bは、下部ケーシング229bの上端部に、下部断熱体227bと下部ケーシング229bの底板と下部管板225bとが略平行になるように配置され、下部ケーシング229bの側板に固定されている。また、下部断熱体227bには、SOECカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。下部断熱体227bは、この孔の内面と、下部断熱体227bに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス供給隙間235aを備える。
【0048】
この下部断熱体227bは、反応室215と酸化性ガス供給ヘッダ221とを仕切るものであり、下部管板225bの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。下部管板225b等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料から成るが、下部管板225b等が高温に晒されて下部管板225b等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、下部断熱体227bは、酸化性ガス供給ヘッダ221に供給される酸化性ガスを、酸化性ガス供給隙間235aを通過させて反応室215に導くものである。
【0049】
本実施形態によれば、上述したSOECカートリッジ203の構造により、排水蒸気と酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、基体管103の内部を通って反応室215を通過した排水蒸気は、反応室215に供給される酸化性ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る下部管板225b等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて水蒸気排出ヘッダ219に供給される。また、酸化性ガスは排水蒸気との熱交換により昇温され、反応室215に供給される。
【0050】
反応室215における電解反応に必要な直流電力は、図示しないパワーコンディショナ等の電力変換装置(インバータなど)により電力供給系統から供給される交流電力が直流電力へ変換後にSOECモジュール201へ供給される。SOECモジュール201には複数のSOECカートリッジ203が所定の直列数および並列数となるように電気的に接続されており、セルスタック101の端部に設けられたリード膜115を介して複数の電気化学単セル105へ直流電力を供給することができる。
【0051】
次に、本開示の第1実施形態に係る電解システム10について、図4を用いて説明する。図4は加圧型の電解システムの例を示しているが、これに限定されるものではなく、常圧型のシステムにも適用することができる。また、温度調整ガスとして空気を例に説明するが他の酸化性ガスであってもよい。
【0052】
図4に示すように、電解システム10は、電解セル11と、空気供給系統20と、排出系統30と、循環系統40と、制御装置50と、酸素濃度測定部60と、水蒸気供給系統(酸素濃度低下部)70と、圧力検出部80と、排空気冷却器90と、除湿器95と、を備える。電解セル11は、前述した固体酸化物形電解セルである。
【0053】
電解セル11は、図1から図3を用いて説明した固体酸化物形電解セルであり、第1水蒸気管12を介して供給された水蒸気を電気分解することで、水素と酸素とを生成する。生成された水素は、分解されなかった水蒸気とともに、第2水蒸気管13を介して排出される。すなわち、電解セル11からは、水素が富化された水蒸気(水素富化水蒸気)が排出される。第1水蒸気管12は、水蒸気供給管207(図2参照)に接続されている。また、第2水蒸気管13は、水蒸気排出管209(図2参照)に接続されている。
【0054】
図4に示すように、電解セル11には、後述する第2空気供給管24を介して冷却用の空気(温度調整流体)が供給される。電解セル11で生成された酸素は、空気とともに、後述する第1排空気管31を介して電解セル11から排出される。すなわち、電解セル11からは、酸素が富化された空気(酸素富化空気)が排出される。電解セル11から第1排空気管31に排出される排空気の温度は、供給時よりも高温(例えば、550℃~650℃程度)である。
【0055】
なお、以下では、電解セル11から排出された空気を「排空気(排出ガス)」と称する場合もある。第1空気供給管23は、酸化性ガス供給管(図示略)に接続されている。また、第1排空気管31は、酸化性ガス排出管(図示略)に接続されている。
【0056】
空気供給系統20は、電解セル11の温度を調整する空気(温度調整ガス)を電解セル11の酸素極113に供給する系統である。空気供給系統20は、空気供給部21と、空気供給部21から供給された空気を圧縮する圧縮機(昇圧部)22と、空気供給部21から圧縮機22へ空気を導く第1空気供給管23と、圧縮機22で圧縮された空気を電解セル11へ導く第2空気供給管24と、を有する。
【0057】
圧縮機22は、モータ22aと接続されており、モータ22aの駆動力によって駆動する。圧縮機22は、空気供給部21から第1空気供給管23を介して供給された空気を圧縮する。圧縮機22は、圧縮した空気を第2空気供給管24に吐出する。圧縮機22は、後述するタービン32と回転軸22bにより連結されている。圧縮機22は、空気を0.2MPa以上に昇圧する。圧縮機22は、空気を1MPa以上に昇圧してもよい。第1空気供給管23は、空気供給部21と圧縮機22とを接続している。なお、電解システム10として、電解セル11へ導かれる空気を大気圧とするシステムを採用する場合には、圧縮機22に替えてブロワを配置し、ブロワにより第1空気供給管23から第2空気供給管24へ空気を供給するものとする。
【0058】
第2空気供給管24は、圧縮機22と電解セル11とを接続している。第2空気供給管24には、上流側から順番に供給空気流量調整弁25、混合部27、供給空気温度調整用熱交換器(温度調整部)28、温度センサ29が設けられている。なお、破線で示すように、供給空気流量調整弁25と混合部27との間に、供給空気冷却器(温度調整部)26を設けてもよい。
【0059】
供給空気流量調整弁25は、流量計測部25aが計測する空気の流量が目標流量となるように開度を調整することで第2空気供給管24内を流通する空気の流量を調整する。供給空気流量調整弁25は、制御装置50によって開度を制御される。供給空気冷却器26は、冷却媒体と熱交換することで、第2空気供給管24を流通し、電解セル11へ導かれる空気を冷却する。
【0060】
混合部27は、後述する循環系統40から導かれる排空気と第2空気供給管24を流通する空気とを混合する。供給空気温度調整用熱交換器28は、冷却媒体と熱交換することで、第2空気供給管24を流通し、電解セル11へ導かれる空気の温度を所定の温度範囲(例えば、250℃~400℃程度)に調整する。電解セル11へ導かれる空気の温度は、温度センサ29により計測される。
【0061】
排出系統30は、電解セル11から排出される酸素および空気を含む排出ガスが流通する系統である。排出系統30は、電解セル11から排出された排空気が流通する第1排空気管31と、第1排空気管31の下流端が接続されるタービン32と、タービン32から排出された排空気が流通する第2排空気管33と、第2排空気管33を流通した排空気が系外に排出される排空気排出部34と、を有する。
【0062】
第1排空気管31は、電解セル11とタービン32とを接続している。第1排空気管31は、電解セル11から排出された排空気をタービン32へ導いている。第1排空気管31には、上流側から順番に分岐部36、排空気流量調整弁38が設けられている。なお、破線で示すように、分岐部36の上流側に排空気冷却器(温度調整部)35を設けてもよい。
【0063】
排空気冷却器35は、冷却媒体と熱交換することで、第1排空気管31を流通する排空気を冷却する。分岐部36は、第1排空気管31を流通する排空気の一部を循環系統40へ分岐させる。排空気流量調整弁38は、開度を調整することで第1排空気管31を流通する排空気の流量を調整する。排空気流量調整弁38は、制御装置50によって開度を制御される。
【0064】
タービン32は、供給された排空気により回転する。タービン32が回転することで、タービン32に接続されている回転軸22bも回転する。回転軸22bが回転することで、回転軸22bが接続する圧縮機22が回転する。このようにタービン32は、供給された排空気によって圧縮機22を駆動し、空気を圧縮する動力を低減することができる。第2排空気管33は、タービン32と排空気排出部34とを接続している。なお、電解システム10として、電解セル11へ導かれる空気を大気圧とするシステムを採用する場合には、タービン32を配置せず、第1排空気管31から第2排空気管33へ排空気を導くものとする。
【0065】
循環系統40は、排出系統30に排出された排空気を空気供給系統20へ導く系統である。循環系統40は、第1排空気管31と第2空気供給管24とを接続する循環空気管41を有する。
【0066】
排出系統30から空気供給系統20へ循環させる排空気の量は、電解セル11の酸素極113へ供給すべき供給量の一部であってもよいし、全部であってもよい。電解セル11の酸素極113へ供給すべき供給量の全部を排出系統30から空気供給系統20へ循環させる場合、空気供給部21および圧縮機22は停止され、供給空気流量調整弁25と排空気流量調整弁38は閉とされる。
【0067】
循環空気管41は、第1排空気管31に設けられた分岐部36と、第2空気供給管24に設けられた混合部27とを接続している。循環空気管41は、第1排空気管31を流通する排空気を第2空気供給管24へ導いている。換言すれば、循環空気管41は、電解セル11の出口側の空気(排空気)を電解セル11の入口側へ導いている。
【0068】
循環空気管41には、ブロワ44が設けられている。なお、破線で示すように、ブロワ44の上流側に循環空気冷却器(温度調整部)43を設けてもよい。また、ブロワ44の下流側に循環空気加熱器(温度調整部)45を設けてもよい。
【0069】
ブロワ44は、循環空気管41を流通する空気を昇圧して、第1排空気管31を流通する排空気を第2空気供給管24へ導く。ブロワ44は、モータ44bによって駆動する。モータ44bは、インバータ44aによって回転数を制御されている。循環空気冷却器43は、冷却媒体と熱交換することで、循環空気管41を流通する空気を冷却する。
【0070】
循環空気加熱器45は、外部から付与される熱により循環空気管41を流通する空気を加熱する。外部から熱を付与する装置として、例えば電気ヒータや燃焼器等が挙げられる。燃焼器は、例えば、電解システム10で生成した水素の一部を酸化性ガスと反応(燃焼)させる装置であってもよい。
【0071】
燃焼器として、通常のバーナで燃料を燃焼させる装置を適用した場合には、別途燃料を供給する装置を設ける必要があるとともに二酸化炭素を排出することになる。一方で、燃焼器として電解システム10で生成した水素を燃焼させる燃焼器とすることで、別途燃料を供給する装置を設ける必要がないので構成を簡素化することができる。また、二酸化炭素の排出を抑制することができる。
【0072】
制御装置50は、電解システム10の各部を制御する装置である。制御装置50(Controller)は、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)等を備えている。更に、制御装置50は、他の装置と情報の送受信を行うための通信部を備えていてもよい。
【0073】
酸素濃度測定部60は、電解セル11から第1排空気管31に排出された排空気の酸素濃度を測定する装置である。酸素濃度測定部60は、測定した排空気の酸素濃度を制御装置50に伝達する。
【0074】
水蒸気供給系統70は、混合部27に排空気を希釈するための水蒸気(希釈流体)を供給し、循環系統40から空気供給系統20に導かれる排空気の酸素濃度を低下させる装置である。水蒸気供給系統70は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度が設定濃度範囲(例えば、排空気を循環させないシステムで想定される酸素濃度50%程度)を超えないように、排空気の酸素濃度の上昇を抑制する。水蒸気で酸素濃度を低下させるシステムでは後述する排空気冷却器を設けることで水分を回収し、酸素濃度を濃縮することが可能である。
【0075】
排空気を希釈するための希釈流体としては、水蒸気とは異なる他の流体を用いてもよい。例えば、前述した所定濃度よりも酸素濃度が低い流体を希釈流体として用いることができる。窒素ガスなど、酸素を含まない不活性ガスを用いるのが特に好ましい。
【0076】
水蒸気供給系統70は、水蒸気供給部71と、水蒸気流量調整弁72と、水蒸気供給管73と、流量計測部74と、を備える。水蒸気供給部71から水蒸気供給管73を介して混合部27に供給される水蒸気の流量は、水蒸気流量調整弁72により調整される。制御装置50は、流量計測部74が計測する水蒸気供給管73の水蒸気の流量が目標流量となるように水蒸気流量調整弁72の開度を制御する。
【0077】
水蒸気の目標流量は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度に応じて設定される。制御装置50は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度が所定濃度を超えないように、水蒸気供給部71から水蒸気供給管73を介して混合部27に供給される水蒸気の流量を調整する。
【0078】
なお、以上において、制御装置50は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度に応じて水蒸気の目標流量を設定し、設定された水蒸気の目標流量に応じて水蒸気流量調整弁72の開度を調整するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、制御装置50は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度に応じて、水蒸気流量調整弁72の開度を直接的に調整してもよい。
【0079】
圧力検出部80は、第1排空気管31に配置されるとともに、第1排空気管31を流通する排空気の圧力を検出する装置である。排空気流量調整弁38は、排出系統30の圧力検出部80よりも下流側に配置されている。制御装置50は、圧力検出部80が検出する排空気の圧力が所定圧力(電解セル11の酸素極113側の領域の目標圧力)を超えないように排空気流量調整弁38の開度を調整する。
【0080】
排空気冷却器(水分除去部)90は、冷却媒体と熱交換することで、第2排空気管33を流通する排空気を冷却する装置である。排空気冷却器90は、排空気に含まれる水蒸気を凝縮させて排空気から除去する。
【0081】
除湿器(水分除去部)95は、排空気冷却器90を通過した排空気に含まれる水分を除去する装置である。除湿器95としては、例えば、吸湿材に水分を吸着させてガスから空気を除去する吸着式とすることができる。
【0082】
次に、本実施形態に係る電解システム10の運転方法について説明する。図5および図6は、本開示の第1実施形態に係る電解システム10の運転方法を示すフローチャートである。制御装置50が制御プログラムを実行することにより、図5および図6に示す各処理が実行される。
【0083】
ステップS101で、制御装置50は、電解システム10を起動させる起動動作を実行する。制御装置50は、モータ22aを起動することにより圧縮機22を動作させて空気供給部21から供給される空気を圧縮し、第2空気供給管24を介して電解セル11の酸素極113へ供給する。
【0084】
ステップS102で、制御装置50は、電解セル11の起動が完了したかどうかを判断し、YESであればステップS103に処理を進め、NOであればステップS101の起動動作を継続する。制御装置50は、圧力検出部80が検出する圧力が所定の運転圧力となり、かつ電解セル11の温度が所定の運転温度に到達した場合は、ステップS102でYESと判断する。
【0085】
制御装置50は、電解セル11の起動が完了すると、ステップS103で第1水蒸気管12から水素極109へ供給される水蒸気の電気分解を開始させるよう電解セル11を制御する。制御装置50は、電解セル11の起動が完了して電解セル11が所定の運転圧力を維持する状態では、第2空気供給管24から混合部27へ供給される空気の流量を0とするように供給空気流量調整弁25の開度を0とする。
【0086】
ステップS104で、制御装置50は、電解セル11から排出系統30に排出された排空気の酸素濃度を測定するよう酸素濃度測定部60を制御する。酸素濃度測定部60は、計測した排空気の酸素濃度を制御装置50に伝達する。
【0087】
ステップS105で、制御装置50は、酸素濃度測定部60が計測した排空気の酸素濃度が設定濃度上限値を超えるかどうかを判断し、設定濃度上限値を超えていればステップS106に処理を進め、設定濃度上限値を超えていなければステップS107に処理を進める。
【0088】
ステップS107で、制御装置50は、酸素濃度測定部60が計測した排空気の酸素濃度が設定濃度下限値を下回るかどうかを判断し、設定濃度下限値を下回っていればステップS108に処理を進め、設定濃度下限値を下回っていなければステップS109に処理を進める。制御装置50は、ステップS105およびステップS107の双方でNOと判断する場合、酸素濃度測定部60が計測した排空気の酸素濃度が設定濃度下限値以上かつ設定濃度上限値以下の設定濃度範囲であるため、ステップS109以降の運転を継続する。
【0089】
酸素濃度が設定濃度上限値を超える場合、制御装置50は、ステップS106で、第1排空気管31から排出される排空気の酸素濃度を低下させるよう水蒸気供給系統70を制御する。制御装置50は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度に応じて水蒸気の目標流量を設定し、設定された水蒸気の目標流量に応じて水蒸気流量調整弁72の開度を調整する。水蒸気供給系統70は、混合部27へ供給する水蒸気を増加させることにより排空気の酸素濃度を低下させる。
【0090】
酸素濃度が設定濃度下限値を下回る場合、制御装置50は、ステップS108で、第1排空気管31から排出される排空気の酸素濃度を上昇させるよう水蒸気供給系統70を制御する。制御装置50は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度に応じて水蒸気の目標流量を設定し、設定された水蒸気の目標流量に応じて水蒸気流量調整弁72の開度を調整する。水蒸気供給系統70は、混合部27へ供給する水蒸気を減少させることにより排空気の酸素濃度を上昇させる。
【0091】
ステップS109で、制御装置50は、電解セル11から排出系統30に排出された排空気の圧力を測定するよう圧力検出部80を制御する。圧力検出部80は、検出した排空気の圧力を制御装置50に伝達する。
【0092】
ステップS110で、制御装置50は、圧力検出部80が検出した排空気の圧力が設定圧力上限値を超えるかどうかを判断し、設定圧力上限値を越えていればステップS111に処理を進め、設定圧力上限値を超えていなければステップS112に処理を進める。
【0093】
ステップS112で、制御装置50は、圧力検出部80が検出した排空気の圧力が設定圧力下限値を下回るかどうかを判断し、設定圧力下限値を下回っていればステップS113に処理を進め、設定圧力下限値を下回っていなければステップS114に処理を進める。制御装置50は、ステップS110およびステップS112の双方でNOと判断する場合、圧力検出部80が検出した排空気の圧力が設定圧力下限値以上かつ設定圧力上限値以下の設定圧力範囲であるため、ステップS114以降の運転を継続する。
【0094】
検出圧力が設定圧力上限値を超える場合、制御装置50は、ステップS111で、第1排空気管31から排出される排空気の圧力を低下させるよう排空気流量調整弁38を開とする。検出圧力が設定圧力下限値を下回る場合、制御装置50は、ステップS113で、第1排空気管31から排出される排空気の圧力を上昇させるよう排空気流量調整弁38を閉とし電気分解を継続する。
【0095】
ステップS114で、制御装置50は、電気分解を終了させるかどうかを判断し、YESであればステップS115に処理を進め、NOであれば電解セル11による水蒸気の電気分解を継続しステップ104からステップ114の操作を繰り返す。
ステップS115で、制御装置50は、電解セル11による水蒸気の電気分解を終了させるための所定の終了動作を実行し、本フローチャートの処理を終了させる。
【0096】
以上で説明した本実施形態の電解システム10によれば、以下の作用および効果を奏する。
本実施形態の電解システム10によれば、空気供給系統20から電解セル11に空気(温度調整ガス)が供給され、電解セル11の酸素極113で生成された酸素が空気とともに排出系統30に排出される。排出系統30に排出された排空気(排出ガス)の一部は、循環系統40を介して空気供給系統20へ導かれる。この場合、電解セル11を含む循環系統40での圧力損失分のみをブロワ44で昇圧すればよいので、例えば大気圧状態から圧縮機22で昇圧した空気のみを電解セル11に供給する場合に比べ、空気を昇圧するための動力を低減することができる。
【0097】
また、本実施形態の電解システム10によれば、水蒸気供給系統(酸素濃度低下部)70は、酸素濃度測定部60が測定する酸素濃度が所定濃度を超えないように、循環系統40から空気供給系統20へ導かれる排空気の酸素濃度を低下させる。酸素濃度が所定濃度を超えないように維持されるため、酸素極113を循環するガスの酸素濃度が過度に増加して発火することを適切に防止することができる。
【0098】
また、本実施形態の電解システム10によれば、圧力検出部80が検出する排空気の圧力が所定圧力を超えないように排空気流量調整弁の開度が調整されるため、電解セル11の酸素極113側の圧力を、所定圧力を超えない適切な圧力に維持することができる。
【0099】
また、本実施形態の電解システム10によれば、酸素濃度が所定濃度よりも低い水蒸気(希釈流体)で排空気を希釈することにより、排空気の酸素濃度が所定濃度を超えないようにして安全性を高めることができる。
【0100】
また、本実施形態の電解システム10によれば、排空気に含まれる水分を排空気冷却器90および除湿器95で除去することにより、排空気の酸素濃度を増加させることができる。
【0101】
本実施形態の電解システム10によれば、排空気によりタービン32を回転駆動することにより、排空気のエネルギーを回収することができる。回収したエネルギーは、例えば、空気供給系統20が空気を電解セル11の酸素極113に供給する圧縮機22の動力として利用することができる。
【0102】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る電解システム10Aについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0103】
第1実施形態の電解システム10は、循環系統40から空気供給系統20に導かれる排空気の酸素濃度を低下させるために、水蒸気供給系統70から混合部27に水蒸気を供給するものであった。それに対して、本実施形態の電解システム10Aは、循環系統40から空気供給系統20に導かれる排空気の酸素濃度を低下させる希釈流体を供給する装置として、水蒸気供給系統70に加えて水供給系統75を備えるものである。
【0104】
図7は、本開示の第2実施形態に係る電解システム10Aを示す概略構成図である。図7に示すように、本実施形態の電解システム10Aは、水供給系統75を備える。水供給系統75は、循環空気管41に配置される混合部76と、水供給部77と、水供給部77から混合部76へ水を供給する水供給管76aと、水供給管76aに配置される水流量調整弁78と、水供給管76aに配置される流量計測部79と、を備える。
【0105】
水供給系統75は、混合部76に排空気を希釈するための水(希釈流体)を供給し、循環系統40から空気供給系統20に導かれる排空気の酸素濃度を低下させる装置である。水供給系統75は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度が設定濃度範囲(例えば、排空気を循環させないシステムで想定される酸素濃度50%程度)を超えないように、排空気の酸素濃度を低下させる。
【0106】
水供給部77から水供給管76aを介して混合部76に供給される水の流量は、水流量調整弁78により調整される。制御装置50は、流量計測部79が計測する水供給管76aの水の流量が目標流量となるように水流量調整弁78の開度を制御する。
【0107】
水の目標流量は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度に応じて設定される。制御装置50は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度が所定濃度を超えないように、水供給部77から水供給管76aを介して混合部76に供給される水の流量を調整する。
【0108】
なお、以上において、制御装置50は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度に応じて水の目標流量を設定し、設定された水の目標流量に応じて水流量調整弁78の開度を調整するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、制御装置50は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度に応じて、水流量調整弁78の開度を直接的に調整してもよい。
【0109】
また、本実施形態の電解システム10Aにおいて、水蒸気供給系統70は、水供給系統75が水により排空気の酸素濃度を低下させるだけでは、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度が所定濃度以下とならない場合に、混合部27に水蒸気を供給するように制御装置50により制御される。
【0110】
本実施形態の電解システム10Aによれば、循環系統40の第1位置(混合部76が配置される位置)で排空気を水で希釈することにより、排空気の酸素濃度を低下させるとともに排空気を十分に冷却することができる。また、循環系統40の第1位置よりも下流側の第2位置(混合部27が配置される位置)で排空気を水蒸気で希釈することにより、電解セル11の温度を調整する空気(温度調整ガス)温度の変動を抑制しつつ、排空気の酸素濃度を所定濃度に低下させることができる。
【0111】
以上で説明した本実施形態の電解システム10Aは、循環系統40から空気供給系統20に導かれる排空気を希釈する希釈流体として、水蒸気と水の双方を利用するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、電解システム10Aは、水蒸気供給系統70を備えず、水供給系統75のみを備えるものとしてもよい。すなわち、電解システム10Aは、循環系統40から空気供給系統20に導かれる排空気を希釈する希釈流体として、水のみを用いるシステムとしてもよい。
【0112】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態に係る電解システム10Bについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0113】
第1実施形態の電解システム10は、循環系統40から空気供給系統20に導かれる排空気の酸素濃度を低下させるために、水蒸気供給系統70から混合部27に水蒸気を供給するものであった。それに対して、本実施形態の電解システム10Bは、排空気から酸素を除去する酸素除去系統70Bを備えるものである。
【0114】
図8は、本開示の第3実施形態に係る電解システムを示す概略構成図である。図8に示すように、酸素除去系統70Bは、酸素除去装置71Bと、酸素供給部72Bと、酸素供給配管73Bと、第1調整弁74Bと、第2調整弁75Bと、バイパス配管76Bと、を備える。
【0115】
酸素除去装置71Bは、例えばPSA(Puressure Swing Adsorption)方式により空気中の酸素を除去する装置である。酸素除去装置71Bは、循環空気管41から流入する排空気に含まれる酸素を除去して酸素供給配管73Bへ供給する。酸素供給配管73Bへ供給された酸素は、酸素供給部72Bへ供給される。酸素供給部72Bは、所定の供給先へ酸素を供給する。酸素除去装置71Bにより酸素が除去された排空気は、循環空気管41を介してブロワ44に供給される。
【0116】
制御装置50は、酸素濃度測定部60が測定する排空気の酸素濃度が所定濃度となるように、第1調整弁74Bおよび第2調整弁75Bの開度を制御する。制御装置50は、第1調整弁74Bの開度を増加させつつ第2調整弁75Bの開度を減少させることにより、酸素除去装置71Bへ供給される排空気の割合を増加させ、排空気の酸素濃度を低下させる。同様に、制御装置50は、第1調整弁74Bの開度を減少させつつ第2調整弁75Bの開度を増加させることにより、酸素除去装置71Bへ供給される排空気の割合を減少させ、排空気の酸素濃度を増加させる。
【0117】
本実施形態の電解システム10Bによれば、酸素除去系統70Bにより循環系統40から空気供給系統20に導かれる排空気から酸素を分離することにより、排空気の酸素濃度が所定濃度を超えないようにして安全性を高めることができる。
【0118】
〔他の実施形態〕
以上の各実施形態では、第1排空気管31の上流側から下流側に向けて、排空気流量調整弁38、タービン32、排空気冷却器90、除湿器95の順に配置するものとしたが、他の態様であってもよい。
【0119】
例えば、除湿器95の下流側に減圧弁(図示略)を設置してもよい。除湿器95の下流側に設置される減圧弁の開度を適切に調整することにより、除湿器95の内圧を適切な圧力に高め、除湿器95における水分の除去性能を高めることができる。
【0120】
また、例えば、第1排空気管31の上流側から下流側に向けて、排空気冷却器90、除湿器95、排空気流量調整弁38、タービン32の順に配置してもよい。排空気流量調整弁38を下流側に配置することで、排空気冷却器90および除湿器95における排空気の水蒸気分圧が高くなり、水分の除去効率が向上する。また、排空気冷却器90で生成される凝縮水の温度を高くすることができる。この場合、タービン32を設けない構成とすることも可能である。
【0121】
以上説明した各実施形態に記載の電解システム及び電解システムの運転方法は、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る電解システムは、酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給された水蒸気を電気分解することで、前記水素極で水素を生成するとともに前記酸素極で酸素を生成する電解セル(11)と、前記電解セルの温度を調整する温度調整ガスを前記酸素極に供給する供給系統(20)と、前記電解セルから排出される前記酸素および前記温度調整ガスを含む排出ガスが流通する排出系統(30)と、前記排出系統に排出された前記排出ガスを前記供給系統へ導く循環系統(40)と、前記電解セルから前記排出系統に排出された前記排出ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定部(60)と、前記酸素濃度測定部が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、前記循環系統から前記供給系統へ導かれる前記排出ガスの酸素濃度を低下させる酸素濃度低下部(70)と、を備える。
【0122】
本開示の第1態様に係る電解システムによれば、供給系統から電解セルに温度調整ガスが供給され、電解セルの酸素極で生成された酸素が温度調整ガスとともに排出系統に排出される。排出系統に排出された排出ガスの一部は、循環系統を介して供給系統へ導かれる。ブロワ(44)で昇圧された排出ガスが再び供給系統へ導かれるため、例えば、大気圧状態から昇圧した温度調整ガスのみを電解セルに供給する場合に比べ、温度調整ガスを昇圧するための動力を低減することができる。
【0123】
また、本開示の第1態様に係る電解システムによれば、酸素濃度低下部は、酸素濃度測定部が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、循環系統から供給系統へ導かれる排出ガスの酸素濃度を低下させる。酸素濃度が所定濃度を超えないように維持されるため、酸素極を循環するガスの酸素濃度が過度に増加して発火することを適切に防止することができる。
【0124】
本開示の第2態様に係る電解システムは、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記排出系統に排出された前記排出ガスの流量を調整する流量調整弁(38)を備える。
【0125】
本開示の第2態様に係る電解システムによれば、流量調整弁の開度が調整することにより、電解セルの酸素極側の圧力を、所定圧力を超えない適切な圧力に維持することができる。
【0126】
本開示の第3態様に係る電解システムは、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記酸素濃度低下部は、酸素濃度が前記設定濃度範囲よりも低い希釈流体で前記排出ガスを希釈することにより前記排出ガスの酸素濃度を低下させる。
【0127】
本開示の第3態様に係る電解システムによれば、酸素濃度が所定濃度よりも低い希釈流体で排出ガスを希釈することにより、排出ガスの酸素濃度が所定濃度を超えないようにして安全性を高めることができる。
【0128】
本開示の第4態様に係る電解システムは、第3態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記希釈流体は、水蒸気または水である。
本開示の第4態様に係る電解システムによれば、水蒸気または水で排出ガスを希釈することにより、排出ガスの酸素濃度が所定濃度を超えないようにして安全性を高めることができる。
【0129】
本開示の第5態様に係る電解システムは、第3態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記希釈流体は、水蒸気および水であり、前記酸素濃度低下部は、前記循環系統の第1位置で前記排出ガスを水で希釈し、前記循環系統の前記第1位置よりも下流側の第2位置で前記排出ガスを水蒸気で希釈する。
【0130】
本開示の第5態様に係る電解システムによれば、循環系統の第1位置で排出ガスを水で希釈することにより、排出ガスの酸素濃度を低下させるとともに排出ガスを十分に冷却することができる。また、循環系統の第1位置よりも下流側の第2位置で排出ガスを水蒸気で希釈することにより、電解セルの温度を調整する空気(温度調整ガス)温度の変動を抑制しつつ、排出ガスの酸素濃度を所定濃度に低下させることができる。
【0131】
本開示の第6態様に係る電解システムは、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記排出系統に配置されるとともに前記排出ガスに含まれる水分を除去する水分除去部(90,95)を備える。
本開示の第6態様に係る電解システムによれば、排出ガスに含まれる水分を除去することにより、排出ガスの酸素濃度を増加させることができる。
【0132】
本開示の第7態様に係る電解システムは、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記酸素濃度低下部は、前記排出ガスから前記酸素を除去することにより前記排出ガスの酸素濃度を低下させる。
本開示の第7態様に係る電解システムによれば、排出ガスから酸素を分離することにより、排出ガスの酸素濃度が所定濃度を超えないようにして安全性を高めることができる。
【0133】
本開示の第8態様に係る電解システムは、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記排出系統に配置されるとともに前記排出ガスにより回転駆動されるタービン(32)を備える。
本開示の第8態様に係る電解システムによれば、排出ガスによりタービンを回転駆動することにより、排出ガスのエネルギーを回収することができる。回収したエネルギーは、例えば、供給系統が温度調整ガスを酸素極に供給する動力として利用することができる。
【0134】
本開示の第9態様に係る電解システムの運転方法において、前記電解システムは、酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給された水蒸気を電気分解することで、前記水素極で水素を生成するとともに前記酸素極で酸素を生成する電解セルと、前記電解セルの温度を調整する温度調整ガスを前記酸素極に供給する供給系統と、前記電解セルから排出される前記酸素および前記温度調整ガスを含む排出ガスが流通する排出系統と、前記排出系統に排出された前記排出ガスの少なくとも一部を前記供給系統へ導く循環系統と、を備え、前記電解セルから前記排出系統に排出された前記排出ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定工程と、前記酸素濃度測定工程が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、前記循環系統から前記供給系統へ導かれる前記排出ガスの酸素濃度を低下させる酸素濃度低下工程と、を備える。
【0135】
本開示の第9態様に係る電解システムの運転方法によれば、供給系統から電解セルに温度調整ガスが供給され、電解セルの酸素極で生成された酸素が温度調整ガスとともに排出系統に排出される。排出系統に排出された排出ガスの一部は、循環系統を介して供給系統へ導かれる。電解セルで昇圧された排出ガスが再び供給系統へ導かれるため、例えば、大気圧状態から昇圧した温度調整ガスのみを電解セルに供給する場合に比べ、温度調整ガスを昇圧するための動力を低減することができる。
【0136】
また、本開示の第9態様に係る電解システムの運転方法によれば、酸素濃度低下工程は、酸素濃度測定工程が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、循環系統から供給系統へ導かれる排出ガスの酸素濃度を低下させる。酸素濃度が所定濃度を超えないように維持されるため、酸素極を循環するガスの酸素濃度が過度に増加して発火することを適切に防止することができる。
【符号の説明】
【0137】
10,10A,10B 電解システム
11 電解セル
12 第1水蒸気管
13 第2水蒸気管
20 空気供給系統
21 空気供給部
22 圧縮機
22a モータ
22b 回転軸
23 第1空気供給管
24 第2空気供給管
25 供給空気流量調整弁
25a 流量計測部
26 供給空気冷却器
27 混合部
28 供給空気温度調整用熱交換器
29 温度センサ
30 排出系統
31 第1排空気管
32 タービン
33 第2排空気管
34 排空気排出部
35 排空気冷却器
36 分岐部
38 排空気流量調整弁
40 循環系統
41 循環空気管
43 循環空気冷却器
44 ブロワ
44a インバータ
44b モータ
45 循環空気加熱器
50 制御装置
60 酸素濃度測定部
70 水蒸気供給系統
71 水蒸気供給部
72 水蒸気流量調整弁
73 水蒸気供給管
74 流量計測部
75 水供給系統
76 混合部
76a 水供給管
70B 酸素除去系統
71B 酸素除去装置
72B 酸素供給部
73B 酸素供給配管
74B 第1調整弁
75B 第2調整弁
76B バイパス配管
77 水供給部
78 水流量調整弁
79 流量計測部
80 圧力検出部
90 排空気冷却器
95 除湿器
109 水素極
113 酸素極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給された水蒸気を電気分解することで、前記水素極で水素を生成するとともに前記酸素極で酸素を生成する電解セルと、
前記電解セルの温度を調整する温度調整ガスを系外から前記酸素極に供給する供給系統と、
前記電解セルから排出される前記酸素および前記温度調整ガスを含む排出ガスを系外に排出する排出系統と、
前記排出系統に排出された前記排出ガスの少なくとも一部を前記供給系統へ導く循環系統と、
前記電解セルから前記排出系統に排出された前記排出ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、
前記酸素濃度測定部が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、酸素濃度が前記設定濃度範囲よりも低い希釈流体で前記排出ガスを希釈することにより前記循環系統から前記供給系統へ導かれる前記排出ガスの酸素濃度を低下させる酸素濃度低下部と、
を備える電解システム。
【請求項2】
前記排出系統に排出された前記排出ガスのうち系外へ排出する前記排出ガスの流量を調整する流量調整弁を備える請求項1に記載の電解システム。
【請求項3】
前記希釈流体は、水蒸気または水である請求項に記載の電解システム。
【請求項4】
前記希釈流体は、水蒸気および水であり、
前記酸素濃度低下部は、前記循環系統の第1位置で前記排出ガスを水で希釈し、前記循環系統の前記第1位置よりも下流側の第2位置で前記排出ガスを水蒸気で希釈する請求項に記載の電解システム。
【請求項5】
前記排出系統に配置されるとともに前記排出ガスに含まれる水分を除去する水分除去部を備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電解システム。
【請求項6】
前記排出系統に配置されるとともに前記排出ガスにより回転駆動されるタービンを備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電解システム。
【請求項7】
電解システムの運転方法であって、
前記電解システムは、
酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給された水蒸気を電気分解することで、前記水素極で水素を生成するとともに前記酸素極で酸素を生成する電解セルと、
前記電解セルの温度を調整する温度調整ガスを系外から前記酸素極に供給する供給系統と、
前記電解セルから排出される前記酸素および前記温度調整ガスを含む排出ガスを系外に排出する排出系統と、
前記排出系統に排出された前記排出ガスの少なくとも一部を前記供給系統へ導く循環系統と、を備え、
前記電解セルから前記排出系統に排出された前記排出ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定工程と、
前記酸素濃度測定工程が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、酸素濃度が前記設定濃度範囲よりも低い希釈流体で前記排出ガスを希釈することにより前記循環系統から前記供給系統へ導かれる前記排出ガスの酸素濃度を低下させる酸素濃度低下工程と、を備える電解システムの運転方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の電解システム及び電解システムの運転方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る電解システムは、酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給された水蒸気を電気分解することで、前記水素極で水素を生成するとともに前記酸素極で酸素を生成する電解セルと、前記電解セルの温度を調整する温度調整ガスを系外から前記酸素極に供給する供給系統と、前記電解セルから排出される前記酸素および前記温度調整ガスを含む排出ガスを系外に排出する排出系統と、前記排出系統に排出された前記排出ガスの少なくとも一部を前記供給系統へ導く循環系統と、前記電解セルから前記排出系統に排出された前記排出ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、前記酸素濃度測定部が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、酸素濃度が前記設定濃度範囲よりも低い希釈流体で前記排出ガスを希釈することにより前記循環系統から前記供給系統へ導かれる前記排出ガスの酸素濃度を低下させる酸素濃度低下部と、を備える。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本開示の一態様に係る電解システムの運転方法において、前記電解システムは、酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給された水蒸気を電気分解することで、前記水素極で水素を生成するとともに前記酸素極で酸素を生成する電解セルと、前記電解セルの温度を調整する温度調整ガスを系外から前記酸素極に供給する供給系統と、前記電解セルから排出される前記酸素および前記温度調整ガスを含む排出ガスを系外に排出する排出系統と、前記排出系統に排出された前記排出ガスの少なくとも一部を前記供給系統へ導く循環系統と、を備え、前記電解セルから前記排出系統に排出された前記排出ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定工程と、前記酸素濃度測定工程が測定する酸素濃度が設定濃度範囲を超えないように、酸素濃度が前記設定濃度範囲よりも低い希釈流体で前記排出ガスを希釈することにより前記循環系統から前記供給系統へ導かれる前記排出ガスの酸素濃度を低下させる酸素濃度低下工程と、を備える。