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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146574
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20241004BHJP
   F25B 7/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F25B1/00 396D
F25B7/00 D
F25B1/00 396G
F25B1/00 361D
F25B1/00 361Q
F25B1/00 371C
F25B1/00 304Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059557
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206405
【弁理士】
【氏名又は名称】岸 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】山野井 喜記
(72)【発明者】
【氏名】堀田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】井吉 悠太
(72)【発明者】
【氏名】岡 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】上垣 久美子
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 猛
(72)【発明者】
【氏名】長野 友紘
(72)【発明者】
【氏名】吉見 敦史
(57)【要約】
【課題】冷却器に流入する冷媒の状態を安定させて冷却能力の制御を精度よく行うことのできる冷凍サイクルシステムを提案する。
【解決手段】冷凍サイクルシステムは、冷媒を循環させる冷媒回路と、冷媒回路を循環する冷媒の状態を制御する制御部とを備え、冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮要素と、圧縮要素にて圧縮された冷媒を放熱させる放熱器と、放熱器を通過した冷媒を減圧する第1減圧要素と、第1減圧要素により減圧された冷媒と対象物との熱交換により対象物を冷却する冷却器とを有し、制御部は、第1減圧要素に流入する冷媒が臨界点近傍である場合に、臨界点を外すように冷媒の温度または圧力を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させる冷媒回路と、
前記冷媒回路を循環する冷媒の状態を制御する制御部とを備え、
前記冷媒回路は、
冷媒を圧縮する圧縮要素と、
前記圧縮要素にて圧縮された冷媒を放熱させる放熱器と、
前記放熱器を通過した冷媒を減圧する第1減圧要素と、
前記第1減圧要素により減圧された冷媒と対象物との熱交換により当該対象物を冷却する冷却器とを有し、
前記制御部は、前記第1減圧要素に流入する冷媒が臨界点近傍である場合に、当該臨界点を外すように冷媒の温度または圧力を制御する
ことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記放熱器を通過して前記第1減圧要素に流入する冷媒の温度が25℃以下となるように制御することで、前記臨界点を外すように制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項3】
前記冷媒回路は、前記放熱器を通過後の冷媒を、他の冷媒回路を循環する冷媒との間で熱交換させ得るカスケード熱交換器を有し、
前記制御部は、前記カスケード熱交換器を通過して前記第1減圧要素に流入する冷媒が25℃以下となるように、前記他の冷媒回路における冷媒の循環を制御する
ことを特徴とする、請求項2に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項4】
前記冷媒回路は、前記冷却器を通過後の冷媒を、前記放熱器を通過後の冷媒との間で熱交換させ得る冷媒-冷媒熱交換器を有し、
前記制御部は、前記放熱器を通過後の冷媒の温度が25℃を超える場合に、前記冷媒-冷媒熱交換器を通過して前記第1減圧要素に流入する冷媒が25℃以下となるように、前記冷媒回路における冷媒の循環を制御する
ことを特徴とする、請求項2に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項5】
前記冷媒回路は、前記冷却器と前記冷媒-冷媒熱交換器との間に設けられ、当該冷却器を通過後の冷媒を減圧する第2減圧要素を有し、
前記制御部は、前記冷媒-冷媒熱交換器を通過して前記減圧要素に流入する冷媒が25℃以下となるように、前記第2減圧要素における流動抵抗を調節する
ことを特徴とする、請求項4に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1減圧要素に流入する冷媒の圧力が8MPa以上となるように制御することで、前記臨界点を外すように制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項7】
前記放熱器は、熱交換により冷媒を放熱させる気体の風量を調節可能なファンを有し、
前記制御部は、前記放熱器を通過後の冷媒の圧力が8MPa以上となるように、前記ファンの風量を低下させる制御を行う
ことを特徴とする、請求項6に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項8】
前記冷媒回路は、前記放熱器を通過後の冷媒の圧力を調節する調節弁を有し、
前記制御部は、前記放熱器を通過後の冷媒の圧力が8MPa以上となるように、前記調節弁の開度を制御する
ことを特徴とする、請求項6に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1減圧要素に流入する冷媒が前記臨界点近傍である場合に、当該第1減圧要素に流入する冷媒の圧力を低下させて当該臨界点を外す制御を行う
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項10】
前記放熱器は、熱交換により冷媒を放熱させる気体の流量を調節可能なファンを有し、
前記制御部は、前記放熱器を通過後の冷媒の圧力が低下するように、前記ファンの風量を上昇させる制御を行う
ことを特徴とする、請求項9に記載の冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プロパンを用いた高元側冷媒回路と、二酸化炭素を用いた低元側冷媒回路と、熱媒体回路とを備え、冷暖とも高能力化が可能、とする冷凍サイクル装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7146117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1の冷凍サイクル装置のように、冷却器における冷媒と対象物との熱交換によって対象物の冷却を行う場合、冷却器を通過する冷媒の状態や量を制御することによって、その冷却能力が制御される。ここで、制御に用いる制御値の計算方法は、冷却器を通過する冷媒が超臨界の状態か、超臨界でない状態かによって異なるため、実際の冷媒の状態に応じて適切な計算方法を選択する必要がある。しかしながら、例えば二酸化炭素を用いた冷媒では、他の一般的な冷媒に比べて臨界温度や臨界圧力が低く、設置される環境の温度などの条件によっては冷媒の状態が不安定となる。この結果、適切な計算方法を選択することが困難となり、制御の精度が低下する恐れがある。
本開示は、冷却器に流入する冷媒の状態を安定させて冷却能力の制御を精度よく行うことのできる冷凍サイクルシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点の冷凍サイクルシステムは、冷媒を循環させる冷媒回路と、前記冷媒回路を循環する冷媒の状態を制御する制御部とを備え、前記冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮要素と、前記圧縮要素にて圧縮された冷媒を放熱させる放熱器と、前記放熱器を通過した冷媒を減圧する第1減圧要素と、前記第1減圧要素により減圧された冷媒と対象物との熱交換により当該対象物を冷却する冷却器とを有し、前記制御部は、前記第1減圧要素に流入する冷媒が臨界点近傍である場合に、当該臨界点を外すように冷媒の温度または圧力を制御することを特徴とする。この場合、冷却器に流入する冷媒の状態を安定させて冷却能力の制御を精度よく行うことができる。
第2の観点の冷凍サイクルシステムは、第1の観点の冷凍サイクルシステムであって、前記制御部は、前記放熱器を通過して前記第1減圧要素に流入する冷媒の温度が25℃以下となるように制御することで、前記臨界点を外すように制御することを特徴とする。この場合、冷却器に流入する冷媒を超臨界でない状態とすることができ、冷却能力の制御を精度よく行うことができる。
第3の観点の冷凍サイクルシステムは、第2の観点の冷凍サイクルシステムであって、前記冷媒回路は、前記放熱器を通過後の冷媒を、他の冷媒回路を循環する冷媒との間で熱交換させ得るカスケード熱交換器を有し、前記制御部は、前記カスケード熱交換器を通過して前記第1減圧要素に流入する冷媒が25℃以下となるように、前記他の冷媒回路における冷媒の循環を制御することを特徴とする。この場合、1つの冷媒回路内での熱交換により第1減圧要素に流入する冷媒の温度を下げる場合と比較して、冷却器の冷却能力を大きくし易い。
第4の観点の冷凍サイクルシステムは、第2の観点の冷凍サイクルシステムであって、前記冷媒回路は、前記冷却器を通過後の冷媒を、前記放熱器を通過後の冷媒との間で熱交換させ得る冷媒-冷媒熱交換器を有し、前記制御部は、前記放熱器を通過後の冷媒の温度が25℃を超える場合に、前記冷媒-冷媒熱交換器を通過して前記第1減圧要素に流入する冷媒が25℃以下となるように、前記冷媒回路における冷媒の循環を制御することを特徴とする。この場合、1つの冷媒回路内での熱交換により第1減圧要素に流入する冷媒の温度を下げることができる。
第5の観点の冷凍サイクルシステムは、第4の観点の冷凍サイクルシステムであって、前記冷媒回路は、前記冷却器と前記冷媒-冷媒熱交換器との間に設けられ、当該冷却器を通過後の冷媒を減圧する第2減圧要素を有し、前記制御部は、前記冷媒-冷媒熱交換器を通過して前記第1減圧要素に流入する冷媒が25℃以下となるように、前記第2減圧要素における流動抵抗を調節することを特徴とする。この場合、放熱器を通過後の冷媒の温度がより高い場合であっても25℃以下とすることができる。
第6の観点の冷凍サイクルシステムは、第1の観点の冷凍サイクルシステムであって、前記制御部は、前記第1減圧要素に流入する冷媒の圧力が8MPa以上となるように制御することで、前記臨界点を外すように制御することを特徴とする。この場合、冷却器に流入する冷媒を超臨界の状態とすることができ、冷却能力の制御を精度よく行うことができる。
第7の観点の冷凍サイクルシステムは、第6の観点の冷凍サイクルシステムであって、前記放熱器は、熱交換により冷媒を放熱させる気体の風量を調節可能なファンを有し、前記制御部は、前記放熱器を通過後の冷媒の圧力が8MPa以上となるように、前記ファンの風量を低下させる制御を行うことを特徴とする。この場合、第1減圧要素に流入する冷媒の温度を下げる場合と比較して、冷却器の冷却能力を大きくし易い。
第8の観点の冷凍サイクルシステムは、第6の観点の冷凍サイクルシステムであって、前記冷媒回路は、前記放熱器を通過後の冷媒の圧力を調節する調節弁を有し、前記制御部は、前記放熱器を通過後の冷媒の圧力が8MPa以上となるように、前記調節弁の開度を制御することを特徴とする。この場合、第1減圧要素に流入する冷媒の温度を下げる場合と比較して、冷却器の冷却能力を大きくし易い。
第9の観点の冷凍サイクルシステムは、第1の観点の冷凍サイクルシステムであって、前記制御部は、前記第1減圧要素に流入する冷媒が前記臨界点近傍である場合に、当該第1減圧要素に流入する冷媒の圧力を低下させて当該臨界点を外す制御を行うことを特徴とする。この場合、冷却器に流入する冷媒を超臨界でない状態とすることができ、冷却能力の制御を精度よく行うことができる。
第10の観点の冷凍サイクルシステムは、第9の観点の冷凍サイクルシステムであって、前記放熱器は、熱交換により冷媒を放熱させる気体の流量を調節可能なファンを有し、前記制御部は、前記放熱器を通過後の冷媒の圧力が低下するように、前記ファンの風量を上昇させる制御を行うことを特徴とする。この場合、第1減圧要素に流入する冷媒の温度を下げる場合と比較して、冷却器の冷却能力を大きくし易い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施の形態が適用される空気調和システムの概略構成例を示す図である。
図2】本実施の形態に係る空気調和部の構成例を示す図である。
図3】第1冷媒回路の冷凍サイクルと、制御部による冷却能力の制御の精度とについて説明する図である。
図4】臨界点を外す第1の制御について説明する図である。
図5】臨界点を外す第2の制御について説明する図である。
図6】第1の制御の変形例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(空気調和システム1)
図1は、本実施の形態が適用される空気調和システム1の概略構成例を示す図である。
図示するように、本実施の形態が適用される空気調和システム1は、冷媒が循環する冷媒回路を含む空気調和部10と、空気調和部10に含まれる各種機器(図2を用いて後述する。)を制御する制御部90とを備える。なお、制御部90は、空気調和部10の各機器と有線又は無線にて接続されており、各機器の制御信号を送信可能である。
なお、空気調和システム1は、本実施の形態における冷凍サイクルシステムの一例である。
【0008】
空気調和システム1は、取り込んだ空気を冷却し、冷風として空間に供給することで、空間を冷房する冷房機能を提供する。より詳しくは、空気調和システム1は、空気調和部10の備える熱交換器(図2を用いて後述する。)を通過する冷媒と、対象物の一例である空気との間の熱交換により、空気から熱を取り出すことで、空気を冷却する。そして、冷却した空気を、冷風として室内機(図2を用いて後述する。)の吹出口などから空間に供給して、空間を冷房する。
また、空気調和システム1は、取り込んだ空気を加熱し、温風として空間に供給することで、空間を暖房する暖房機能を提供する。より詳しくは、空気調和システム1は、空気調和部10の備える熱交換器を通過する冷媒と、空気との間の熱交換により、空気に熱を与えることで、空気を加熱する。そして、加熱した空気を、暖房として室内機の吹出口などから空間に供給して、空間を暖房する。
【0009】
(制御部90)
制御部90は、空気調和部10の備える各機器への制御信号の送信により、空気調和部10に含まれる各種機器の制御を行う。付言すると、制御部90による各種機器の制御に応じ、空気調和部10の冷媒回路を循環する冷媒の状態が制御される。本実施の形態に係る制御部90は、空気調和部10の備える温度センサ(図2を用いて後述する。)の計測値に応じて制御を行う。
また例えば、制御部90は、ユーザからの操作を受け付ける操作パネルやコントローラなどを介して入力される、ユーザからの温度設定や風量設定、冷房/暖房の切り替えなどの操作入力に応じて、制御を行う。さらに例えば、冷房/暖房を行う空間の温度を計測する温度センサの計測値に応じて制御を行う。
その他、制御部90は、空気調和部10に含まれる各機器について、制御値に対する動作の実効値などの動作に係る情報を取得し、取得した情報に応じて制御を行ってもよい。また、空気調和システム1が空間に供給する冷風/温風の量や、風向きなどを制御してもよい。
【0010】
(空気調和部10の構成)
図2は、本実施の形態に係る空気調和部10の構成例を示す図である。
図示するように、本実施の形態に係る空気調和システム1の空気調和部10は、室内機20と室外機30とを備える。室内機20と室外機30とは、後述する第1冷媒回路31を共有する。より詳しくは、室外機30の備える第1冷媒回路31の一部が室内機20につなぎこまれた構成を有している。
なお、図2において、第1冷媒回路31上の各位置に点311~点314、点313′を付しているが、これらについては図3図5を用いて後述する。また、第2冷媒回路32上の各位置に点321~点324を付しているが、これらについては図3を用いて後述する。
【0011】
室内機20は、室内熱交換器21を備える。
室内熱交換器21は、暖房運転時には冷媒からの放熱により熱交換の相手を加熱する放熱器として機能し、熱交換の相手である空気を加熱して温風とする。また、冷房運転時には冷媒による吸熱により熱交換の相手を冷却する冷却器として機能し、熱交換の相手である空気を冷却して冷風とする。付言すると、放熱器として機能する際には冷媒は放熱するため、冷媒自身は冷却され、冷却器として機能する際には冷媒が吸熱するため、冷媒は加熱される。
その他、室内機20は、室内ファン(不図示)などを備えても良い。
【0012】
室外機30は、第1冷媒回路31と第2冷媒回路32とを備える。第1冷媒回路31は、第1閉鎖弁47、第2閉鎖弁48をそれぞれ有する配管によって室内機20に接続される。第2冷媒回路32は、第1冷媒回路31の能力を高めるアシスト回路として機能する。
本実施の形態に係る第1冷媒回路31は、冷媒の一例として、二酸化炭素を循環させる。第2冷媒回路32は、冷媒の一例として、プロパンを循環させる。
【0013】
第1冷媒回路31は、第1圧縮機41と、第1サブアキュムレータ42と、四路切換弁43と、第1室外熱交換器44と、カスケード熱交換器45と、第1電動弁46と、第1閉鎖弁47と、室内熱交換器21と、第2閉鎖弁48と、低圧レシーバ49とが順に接続されて構成される。
第2冷媒回路32は、第2圧縮機51と、第2サブアキュムレータ52と、第2室外熱交換器53と、第2電動弁54とが順に接続されて構成される。
なお、第1冷媒回路31および第2冷媒回路32は、上記した構成に限定されない。例えば、第1冷媒回路31および第2冷媒回路32は、フィルタやヒートシンク、オイルセパレータ、サイトグラス、ドライヤ等を備える構成としても良い。また、回路の各所にて冷媒の圧力/温度を検出する圧力センサ/温度センサや、保護用検出器である高圧圧力開閉器などを備える構成としても良い。
【0014】
第1圧縮機41は、その吐出側が四路切換弁43の第1ポート(P1)に接続され、その吸入側は第1サブアキュムレータ42に接続される。第1サブアキュムレータ42は、冷媒を気体と液体とに分離させ、気体の冷媒のみを第1圧縮機41に吸入させる。第1圧縮機41は、吸入した気体冷媒を圧縮し、吐出側から吐出する。なお、吐出される冷媒は、圧縮に伴う圧縮熱の獲得により温度が上昇する(「加熱圧縮」と呼ぶ場合がある。)。
また、本実施の形態に係る第1圧縮機41は、制御部90からの制御信号に応じて、例えば運動周波数や吸入/吐出する冷媒の量などが制御される。なお、「運動周波数」とは、圧縮機内にて行われる、冷媒を圧縮するための部品の運動(動作)の周波数である。具体的には、例えば揺動式圧縮機における揺動体の揺動の周波数、スクロール式圧縮機やロータリ式圧縮機における回転体の回転の周波数である。
なお、第1圧縮機41は、本実施の形態における圧縮要素の一例である。
【0015】
四路切換弁43は、第1ポート(P1)と、第2ポート(P2)と、第3ポート(P3)と、第4ポート(P4)とを備え、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し、かつ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する状態と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し、かつ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する状態とを切り替えることができる。
四路切換弁43は、冷房運転時には第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し、かつ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する状態であり、暖房運転時には第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し、かつ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する状態へと切り替わる。
【0016】
第1室外熱交換器44は、冷媒と外気との間で熱交換を行う。第1室外熱交換器44は、暖房運転時には冷却器として、冷房運転時には放熱器として機能する。また、本実施の形態の第1室外熱交換器44は、冷媒の熱交換の相手となる外気を取り込むための室外ファンを備えていてもよい。なお、外気は、熱交換により冷媒を放熱させる気体の一例であり、室外ファンは、気体の風量を調節可能なファンの一例である。付言すると、室外ファンが取り込む外気の風量は、制御部90が室外ファンの回転数を制御することによって調節される。より具体的には、制御部90が室外ファンの回転数を上げることによって風量が上昇し、回転数を下げることによって風量が低下する。
【0017】
カスケード熱交換器45は、第1冷媒回路31と第2冷媒回路32との間で熱交換を行う。カスケード熱交換器45は、例えば直径の異なる2つの配管を内側と外側の二重に組み合わせた二重管熱交換器である。
なお、カスケード熱交換器45は、プレート熱交換器等、他の形式の熱交換器であっても良い。
【0018】
第1電動弁46は、例えばボール弁などの弁と弁を駆動するモータとを含んで構成され、モータが弁の開度を調節することによって、通過する冷媒の圧力を調節する。より詳しくは、第1電動弁46は、カスケード熱交換器45側の配管と、第1閉鎖弁47側の配管との間に設けられ、一方の配管から流れ込んだ冷媒に、弁の開度に応じた絞り膨張をかけて減圧し、他方の配管へと流す。なお、他方の配管へと流れる冷媒は、絞り膨張による減圧に伴い温度が低下する(「減圧降温」と呼ぶ場合がある。)。
ここで、第1電動弁46の開度は、制御部90からの制御信号に応じて各々のモータが駆動制御されることによって調節される。また、第1電動弁46は、開度に応じた流動抵抗を有する。流動抵抗は、第1電動弁46を通過する冷媒の流れ難さの指標であり、開度が高いほど冷媒が流れ難いため流動抵抗が高く、開度が低いほど冷媒が流れ易いため流動抵抗が低い。
なお、第1電動弁46は、本実施の形態における第1減圧要素の一例である。第1減圧要素としては他に、ソレノイドにより弁を駆動する電磁弁などを用いてもよい。
【0019】
また、本実施の形態における第1冷媒回路31は、室内熱交換器21を冷却器として用いる際に、第1電動弁46に流入する冷媒の温度を測定する温度センサ461と、圧力を測定する圧力センサ462とを備える。温度センサ461および圧力センサ462は有線または無線の通信手段によって制御部90(図1参照)に接続され、測定結果は制御部90により取得される。
なお、図2における温度センサ461および圧力センサ462の設置位置は一例であって、図示した位置に限定されるものではない。また、温度センサ461および圧力センサ462の各々を設ける態様は一例であって、例えばこれらを一体的に構成してもよく、第1電動弁46に流入する冷媒の温度および圧力を測定する手段を有していればよい。
【0020】
低圧レシーバ49は、流入した冷媒を貯留可能な容器であって、流入した冷媒のうち液冷媒を貯留し、気体状態の冷媒(「ガス冷媒」と呼ぶ場合がある。)を吐出して再び循環させる。上述した第1圧縮機41において、液冷媒が吸入され圧縮されてしまうと、圧縮の効率の低下や動作不良の原因となる。このため、低圧レシーバ49は、流入した冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分け、液冷媒を貯留することで、第1圧縮機41に液冷媒が吸入されることを抑制する。
【0021】
第2冷媒回路32における第2圧縮機51、第2サブアキュムレータ52、第2室外熱交換器53、第2電動弁54は、それぞれ、第1冷媒回路31における第1圧縮機41、第1サブアキュムレータ42、第1室外熱交換器44、第1電動弁46と同様の構成を有する。
【0022】
(冷房運転時の冷媒の流れ)
第1冷媒回路31および第2冷媒回路32における冷媒の流れについて、冷房運転時における例を説明する。四路切換弁43は、冷房運転時には第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し、かつ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する状態である。
【0023】
第1冷媒回路31において、冷媒は、まず第1圧縮機41により圧縮される。圧縮された冷媒は四路切換弁43を通り、第1室外熱交換器44に入る。第1室外熱交換器44は、冷房運転時には放熱器として機能する。第1室外熱交換器44から出た冷媒はカスケード熱交換器45に入る。冷房運転時には、カスケード熱交換器45は、第1冷媒回路31における放熱器として機能する。カスケード熱交換器45から出た冷媒は、第1電動弁46を通る際に減圧され、第1閉鎖弁47を通って室内熱交換器21に入る。室内熱交換器21は、冷房運転時には冷却器として機能する。室内熱交換器21から出た冷媒は、第2閉鎖弁48、四路切換弁43、低圧レシーバ49、第1サブアキュムレータ42を通り、再び第1圧縮機41に入る。
【0024】
第2冷媒回路32における冷媒の流れについて説明する。第2冷媒回路32において、冷媒は、まず第2圧縮機51により圧縮される。圧縮された冷媒は第2室外熱交換器53に入る。第2室外熱交換器53は、冷房運転時には放熱器として機能する。第2室外熱交換器53から出た冷媒は、第2電動弁54を通る際に減圧され、カスケード熱交換器45に入る。冷房運転時には、カスケード熱交換器45は、第2冷媒回路32における冷却器として機能する。カスケード熱交換器45から出た冷媒は、第2サブアキュムレータ52を通り、再び第2圧縮機51に入る。
【0025】
本実施の形態に係る空気調和部10は、第1冷媒回路31、第2冷媒回路32およびカスケード熱交換器45による2元の冷凍サイクルを構成する。より詳しくは、冷房運転時の空気調和部10において、カスケード熱交換器45が第1冷媒回路31における放熱器としての機能と、第2冷媒回路32における冷却器としての機能とを有する。この場合、第1冷媒回路31を流れる冷媒は第1圧縮機41により加熱圧縮された後、第1室外熱交換器44により冷却され、カスケード熱交換器45によりさらに冷却され、第1電動弁46により減圧降温され、室内熱交換器21において空気を冷却する。
【0026】
なお、例えば第2冷媒回路32において、制御部90が第2圧縮機51の運動周波数および第2電動弁54の開度をゼロとし、カスケード熱交換器45における第1冷媒回路31と第2冷媒回路32との熱交換が行われないようにすることで、第1冷媒回路31が単元の冷凍サイクルを構成するように制御可能としてもよい。より詳しくは、本実施の形態における空気調和システム1において、制御部90は、カスケード熱交換器45における熱交換が行われ、2元の冷凍サイクルを構成するモード(「2元冷凍サイクルモード」と呼ぶ場合がある。)と、カスケード熱交換器45における熱交換が行われず、第1冷媒回路31が単元の冷凍サイクルを構成するモード(「単元冷凍サイクルモード」と呼ぶ場合がある。)と、を切り替え可能としてもよい。
【0027】
(暖房運転時の冷媒の流れ)
次に、暖房運転時における第1冷媒回路31および第2冷媒回路32における冷媒の流れについて説明する。四路切換弁43は、暖房運転時には第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し、かつ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する状態である。
【0028】
第1冷媒回路31において、冷媒は、まず第1圧縮機41により加熱圧縮される。圧縮された冷媒は四路切換弁43、第2閉鎖弁48を通り、室内熱交換器21に入る。室内熱交換器21は、暖房運転時には放熱器として機能する。室内熱交換器21から出た冷媒は、第1閉鎖弁47を通って室内機20に入り、第1電動弁46を通る際に減圧降温される。減圧された冷媒はカスケード熱交換器45を通り、第1室外熱交換器44に入る。第1室外熱交換器44は、暖房運転時には冷却器として機能する。第1室外熱交換器44から出た冷媒は、四路切換弁43、低圧レシーバ49、第1サブアキュムレータ42を通り、再び第1圧縮機41に入る。
なお、暖房運転時においてもカスケード熱交換器45による熱交換が行われる構成としても良い。この場合、カスケード熱交換器45は第1冷媒回路31における冷却器として機能する。
【0029】
(冷却能力の制御)
ここで、空気調和システム1の冷房能力、言い換えると、第1冷媒回路31の室内熱交換器21が対象物である空気を冷やす冷却能力は、室内熱交換器21に流れる冷媒の状態と冷媒の量とによって定まる。より具体的には、制御部90により、例えば第1圧縮機41の運動周波数や第1電動弁46の開度など、空気調和部10の各種機器の動作を調節することで冷媒の状態や量が制御され、室内熱交換器21の冷却能力が制御される。
制御部90は、制御にあたり、室内熱交換器21に要求される冷却能力に応じて、各種機器の制御に用いる制御値を計算する。ここで、制御値の計算方法は、室内熱交換器21を通過する冷媒が超臨界の状態か、超臨界でない状態かによって異なるため、制御部90は、温度センサ461および圧力センサ462から取得した測定結果に基づいて、冷媒の状態を把握し、何れかの計算方法を選択して制御値を計算する。しかしながら、第1冷媒回路31を循環する二酸化炭素冷媒は、他の一般的な冷媒に比べて臨界温度(31.1℃)や臨界圧力(7.38MPa)が低く、設置される環境の温度などの条件によっては冷媒の状態が不安定となる。このため、温度センサ461および圧力センサ462における測定誤差や、実際に測定を行ってから制御部90が測定結果を取得するまでのタイムラグなどの影響により、実際の冷媒の状態と、制御部90が把握した冷媒の状態とにずれが生じる場合がある。そして、この場合、制御部90は、適切な計算方法を選択することができず、冷却能力の制御の精度が低下する恐れがある。
【0030】
図2図3を用いて、第1冷媒回路31の冷凍サイクル310と、制御部90による冷却能力の制御の精度とについてより具体的に説明する。ここでは、説明のため、空気調和部10が第2冷媒回路32およびカスケード熱交換器45を有さず、第1冷媒回路31による単元の冷凍サイクル310として機能する場合を例にして説明する。
図3は、第1冷媒回路31の冷凍サイクル310と、制御部90による冷却能力の制御の精度とについて説明する図である。より具体的には、第1冷媒回路31を循環する冷媒の冷凍サイクル310(太い実線で示す。)が図示された圧力-比エンタルピ線図である。図3において、横軸は比エンタルピ[kJ/kg]、縦軸は絶対真空を基準とする絶対圧力[MPa.abs]である。
図3では、太線を用いて冷凍サイクル310を示す他、二酸化炭素冷媒の飽和液線301、飽和蒸気線302、臨界点303、45℃等温線304を示す。
【0031】
まず、第1冷媒回路31を循環する冷媒の冷凍サイクル310を説明する。図3に示す冷凍サイクル310上の点311~点314は、図2に示す第1冷媒回路31上の点311~点314の各々に対応する。より詳しくは、冷凍サイクル310上の点311~点314の各々は、第1冷媒回路31上の点311~点314の各々を通る冷媒の圧力および比エンタルピを示している。
図2を用いて上述したように、室内熱交換器21を通った後の冷媒(点311)は、第1圧縮機41にて加熱圧縮され、圧力および比エンタルピが上昇した状態で吐出される(点312)。また、第1圧縮機41から吐出された冷媒は、第1室外熱交換器44の通過に伴い、外気との間で熱交換して放熱し、比エンタルピが低下した状態となる(点313)。さらに、第1室外熱交換器44を通過後の冷媒は、第1電動弁46にて減圧降温され、圧力が低下した状態で吐出される(点314)。そして、室内熱交換器21を通る際に、冷房に用いられる空気との間の熱交換により吸熱して、比エンタルピが上昇した状態となる(点311)。
【0032】
ここで、第1冷媒回路31が設置される環境の温度や、各種機器の動作の状況によっては、図3に示す点313(313a,313b,313c,313d,313e,…)のように、第1室外熱交換器44を通過後の冷媒が臨界点303近傍のパラメータを有する場合があり、この場合、冷媒の状態が不安定となる。これにより、制御部90は、温度センサ461および圧力センサ462の測定によって、超臨界の状態であるか超臨界でない状態かを正しく把握することが困難になる。例えば制御部90が冷媒を超臨界の状態と把握し、超臨界の状態における計算方法を選択して第1電動弁46などの各種機器の制御値を計算し、室内熱交換器21にて目標の冷却能力が得られるように制御を行ったとしても、実際の冷媒は超臨界でない状態であり、第1電動弁46での減圧降温により点314eとは異なる点314a,314b,314c,314d等に移行したり、流入する冷媒の量が狙いとは異なる値になったりして、室内熱交換器21にて目標の冷却能力が得られない場合がある。また反対に、制御部90が冷媒を超臨界でない状態と把握して制御を行ったとしても、実際の冷媒は超臨界の状態であり、室内熱交換器21にて目標の冷却能力が得られない場合がある。
このように、第1電動弁46に流入する冷媒の状態が不安定である場合、制御の精度が低下する恐れがある。
【0033】
(臨界点を外す制御)
本実施の形態の制御部90は、第1電動弁46に流入する冷媒が、臨界点303近傍である場合に、臨界点303を外すように冷媒の温度または圧力を制御する。より詳しくは、制御部90は、臨界点303を外す第1の制御として、第1電動弁46に流入する冷媒の温度が25℃以下となるように制御する。また、制御部90は、臨界点303を外す第2の制御として、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力が8MPa以上となるように制御する。さらに、制御部90は、臨界点303を外す第3の制御として、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力が低下するように制御する。
【0034】
(第1の制御)
図2図4を用いて、臨界点303を外す第1の制御について詳しく説明する。
図4は、臨界点303を外す第1の制御について説明する図である。より具体的には、第1冷媒回路31を循環する冷媒の冷凍サイクル310(太い実線で示す。)および第2冷媒回路32を循環する冷媒の冷凍サイクル320(太い破線で示す。)が図示された圧力-比エンタルピ線図である。図4において、横軸は比エンタルピ[kJ/kg]、縦軸は絶対真空を基準とする絶対圧力[MPa.abs]である。
なお、図4において、図3と同様の部分については、同じ名称および符号を用いて説明を省略する場合がある。
【0035】
まず、第2冷媒回路32を循環する冷媒の冷凍サイクル320と、第1冷媒回路31と第2冷媒回路32との間の熱交換について説明する。図4に示す冷凍サイクル320上の点321~点324は、図2に示す第2冷媒回路32上の点321~点324の各々に対応する。より詳しくは、冷凍サイクル320上の点321~点324の各々は、第2冷媒回路32上の点321~点324の各々を通る冷媒の圧力および比エンタルピを示している。
図2を用いて上述したように、冷媒(点321)は、第2圧縮機51にて加熱圧縮され、圧力および比エンタルピが上昇した状態で吐出される(点322)。また、第2圧縮機51から吐出された冷媒は、第2室外熱交換器53の通過に伴い、外気との間で熱交換して放熱し、比エンタルピが低下した状態となる(点323)。さらに、第2室外熱交換器53を通過後の冷媒は、第2電動弁54にて減圧降温され、圧力が低下した状態で吐出される(点324)。そして、カスケード熱交換器45を通る際に、第1冷媒回路31の冷媒との間の熱交換により吸熱して、比エンタルピが上昇した状態となる(点321)。
【0036】
ここで、第1冷媒回路31において第1室外熱交換器44を通過後の冷媒(点313)は、カスケード熱交換器45の通過に伴う第2冷媒回路32との熱交換により、さらに比エンタルピが低下した状態となり(点313′)、第1電動弁46に流入する。言い換えると、第1室外熱交換器44を通過後の冷媒を、カスケード熱交換器45における熱交換によって冷却した状態で、第1電動弁46に流入させることになる。
本実施の形態の制御部90は、第1の制御として、第1室外熱交換器44を通過後の冷媒が、カスケード熱交換器45によって25℃以下まで冷却されるように、空気調和部10の各種機器を制御する。より詳しくは、制御部90は、第1冷媒回路31の冷媒がカスケード熱交換器45を通過後に25℃以下となるように、第2冷媒回路32による吸熱を制御する。
この第1の制御により、第1電動弁46に流入する冷媒の温度が25℃以下となり、臨界点303から外れた状態となる。付言すると、第1電動弁46に流入する冷媒の温度が、二酸化炭素冷媒の臨界温度31.1℃よりも有意に低くなる。この結果、第1電動弁46に流入する冷媒を超臨界でない状態で安定させることができ、制御部90における制御の精度の低下が抑制される。
【0037】
(第2の制御)
次に、図2図5を用いて、臨界点303を外す第2の制御について詳しく説明する。
図5は、臨界点303を外す第1の制御について説明する図である。より具体的には、第1冷媒回路31を循環する冷媒の冷凍サイクル310(太い実線で示す。)が図示された圧力-比エンタルピ線図である。図5において、横軸は比エンタルピ[kJ/kg]、縦軸は絶対真空を基準とする絶対圧力[MPa.abs]である。
なお、図5において、図3図4と同様の部分については、同じ名称および符号を用いて説明を省略する場合がある。
【0038】
図5に示すように、本実施の形態の制御部90は、第2の制御として、第1電動弁46に流入する冷媒(点313)の圧力が8MPa以上となるように制御する。より具体的には、制御部90は、第1圧縮機41における運動周波数を制御し、第1圧縮機41における冷媒の圧縮率を大きくすることによって、第1圧縮機41から吐出される冷媒(点312)が8MPa以上となるように制御する。
この第2の制御により、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力が8MPa以上となり、臨界点303から外れた状態となる。付言すると、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力が、二酸化炭素冷媒の臨界圧力7.38MPaよりも有意に高くなる。この結果、第1電動弁46に流入する冷媒を超臨界の状態で安定させることができ、制御部90における制御の精度の低下が抑制される。
【0039】
なお、制御部90は、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力を8MPa以上とする第2の制御として、上述した第1圧縮機41の運動周波数の制御の他に、第1室外熱交換器44の室外ファンの回転数の制御を行ってもよい。より詳しくは、制御部90は、第1室外熱交換器44の室外ファンの回転数を低下させ、風量を低下させることによって、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力が8MPa以上となるように制御してもよい。
また、制御部90は、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力を8MPa以上とする第2の制御として、第1室外熱交換器44を通過後の冷媒の圧力を調節する調節弁の開度の制御を行ってもよい。より詳しくは、第1冷媒回路31における第1室外熱交換器44と第1電動弁46との間に調節弁を設け、制御部90がこの調節弁の開度を調節することによって、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力が8MPa以上となるように制御してもよい。
付言すると、制御部90は、第2の制御として、上述した第1圧縮機41の運動周波数の制御、室外ファンの回転数の制御、調節弁の開度の制御のうち複数を組み合わせて、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力を8MPa以上としてもよい。
【0040】
(第3の制御)
次に、図2図3を用いて、臨界点303を外す第3の制御について詳しく説明する。
本実施の形態の制御部90は、第3の制御として、第1電動弁46に流入する冷媒(点313)の圧力が低下するように制御する。例えば、制御部90は、第1室外熱交換器44における室外ファンの回転数を上げて風量を上昇させる制御によって、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力が低下するように制御する。また例えば、第2の制御として上述した第1圧縮機41の運動周波数の制御や調節弁の開度の制御によって、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力が低下するように制御する。なお、制御部90は、この第3の制御として、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力を二酸化炭素冷媒の臨界圧力7.38MPaよりも低い圧力、例えば6.9MPa以下まで下げる制御を行う。
この第3の制御により、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力が低下し、臨界点303から外れた状態となる。付言すると、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力が、二酸化炭素冷媒の臨界圧力7.38MPaよりも有意に低くなる。この結果、第1電動弁46に流入する冷媒を超臨界でない状態で安定させることができ、制御部90における制御の精度の低下が抑制される。
【0041】
(制御の優先順位)
ここで、本実施の形態では、制御部90における第1~第3の制御の優先順位が予め定められている。より詳しくは、本実施の形態の制御部90は、第3の制御と、第2の制御と、第1の制御とを、この優先順位にて選択して実行する。具体的には、制御部90は、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力を低下させる第3の制御において、例えば第1室外熱交換器44における室外ファンの回転数が上限に達したり、第1圧縮機41の運動周波数が下限に達したり、調節弁の開度が上限に達したりして、それ以上の制御が困難である場合に、第2の制御への切り替えを行う。そして、第1電動弁46に流入する冷媒の圧力を8MPa以上とする第2の制御において、例えば第1圧縮機41の運動周波数が上限に達したり、第1室外熱交換器44における室外ファンの回転数が上限に達したり、調節弁の開度が下限に達したりして、それ以上の制御が困難である場合に、第1の制御への切り替えを行う。
【0042】
<その他>
(第1の制御の変形例)
上述した実施の形態では、第1の制御において第1電動弁46に流入する冷媒の温度を25℃以下とするために、カスケード熱交換器45における第2冷媒回路32との熱交換を利用する例を説明した。第1の制御において、第1電動弁46に流入する冷媒を冷却する方法はこれに限定されるものではなく、例えば、第1冷媒回路31において、第1室外熱交換器44と第1電動弁46との間に、第1室外熱交換器44を通過後の冷媒を、室内熱交換器21を通過後の冷媒との間で熱交換させる、冷媒-冷媒熱交換器を設けてもよい。この場合、制御部90は、冷媒-冷媒熱交換器を通過後の冷媒が25℃以下となるように、各種機器を制御する。なお、冷媒-冷媒熱交換器としては、例えば、二重管熱交換器やプレート熱交換器等、各種の熱交換器を用いることができる。
また、室内熱交換器21と冷媒-冷媒熱交換器との間に、室内熱交換器21を通過後の冷媒を減圧する第2減圧要素を設け、室内熱交換器21を通過後の冷媒を減圧降温してから冷媒-冷媒熱交換器に流入させてもよい。この場合、第2減圧要素を設けない場合に比べ第1室外熱交換器44を通過後の冷媒からより大きな熱を吸熱することができる。なお、第2減圧要素としては、例えば第1電動弁46と同様の構成や、電磁弁などを用いることができ、電動弁や電磁弁の開度によって流動抵抗が調節される。第2減圧要素を設ける場合、制御部90はさらに、冷媒-冷媒熱交換器を通過して第1電動弁46に流入する冷媒が25℃以下となるように、第2減圧要素の流動抵抗を調節する制御を行ってもよい。
【0043】
図6は、第1の制御の変形例について説明する図である。より具体的には、変形例の第1冷媒回路31を循環する冷媒の冷凍サイクル310(太い実線で示す。)が図示された圧力-比エンタルピ線図である。図6において、横軸は比エンタルピ[kJ/kg]、縦軸は絶対真空を基準とする絶対圧力[MPa.abs]である。
なお、図6において、図4と同様の部分については、同じ名称および符号を用いて説明を省略する場合がある。
【0044】
変形例の第1冷媒回路31を循環する冷媒の冷凍サイクル310を説明する。
変形例の第1冷媒回路31において、冷媒(点311″)は、第1圧縮機41にて加熱圧縮され、圧力および比エンタルピが上昇した状態で吐出される(点312)。また、第1圧縮機41から吐出された冷媒は、第1室外熱交換器44の通過に伴い、外気との間で熱交換して放熱し、比エンタルピが低下した状態となる(点313)。さらに、第1室外熱交換器44を通過後の冷媒は、冷媒-冷媒熱交換器の通過に伴い吸熱され、比エンタルピがさらに低下した状態となる(点313″)。さらにまた、冷媒-冷媒熱交換器を通過後の冷媒は、第1電動弁46にて減圧降温され、圧力が低下した状態で吐出される(点314)。そして、室内熱交換器21を通る際に、冷房に用いられる空気との間の熱交換により吸熱して、比エンタルピが上昇した状態となる(点311)。また、室内熱交換器21を通過後の冷媒は、第2減圧要素にて減圧降温され、圧力が低下した状態となる(点311′)。そして、冷媒-冷媒熱交換器の通過に伴い吸熱し、比エンタルピが上昇した状態となる(点311″)。
【0045】
なお、カスケード熱交換器45による冷却と冷媒-冷媒熱交換器による冷却とは、どちらか一方のみを行ってもよいし、両方を行ってもよい。
より具体的には、空気調和部10において、カスケード熱交換器45および第2冷媒回路32を設け、冷媒-冷媒熱交換器を設けない構成として、カスケード熱交換器45による冷却のみを行ってもよいし、カスケード熱交換器45および第2冷媒回路32を設けず、冷媒-冷媒熱交換器を設けた構成として、冷媒-冷媒熱交換器による冷却のみを行ってもよい。
さらに、空気調和部10において、カスケード熱交換器45および第2冷媒回路32と、冷媒-冷媒熱交換器との両方を設けた構成として、両方を組み合わせて冷却を行ってもよい。さらにまた、かかる構成において、空気調和部10を単元冷凍サイクルモードとして、冷媒-冷媒熱交換器による冷却のみを行うこととしてもよい。
【0046】
(実行可能な制御)
上述した実施の形態では、制御部90による臨界点303を外す制御として、第1~第3の制御を実行可能とした。しかしながら、制御部90は、臨界点303を外す制御を、少なくとも1つ実行可能であればよく、上述した第1~第3の制御すべてを実行可能でなくともよい。例えば、空気調和部10を第2冷媒回路32およびカスケード熱交換器45を備えない構成とした場合、制御部90は、第2の制御および第3の制御のみを実行可能であってよい。
【0047】
(冷凍サイクルシステムの適用例)
上述した実施の形態では、冷凍サイクルシステムを空気調和システム1に適用する場合を例として説明したが、適用範囲は限定されない。冷却器における吸熱を利用して、冷凍倉庫や冷蔵庫、製氷機など、対象物の冷却を行う各種の機器に適用してもよい。また、放熱器における放熱を利用して、暖房器具や湯沸かし器、給湯器など、対象物の加熱を行う各種の装置に適用してもよい。
【0048】
(冷媒の種類)
また、各冷媒回路を循環する冷媒の一例として、二酸化炭素およびプロパンを例示したが、冷媒の種類は限定されない。例えば第1冷媒回路31において、二酸化炭素と他の成分とを混合した混合冷媒を用いてもよいし、二酸化炭素を含まない単一冷媒または混合冷媒を用いてもよい。ただし、第1冷媒回路31を循環する冷媒は、少なくとも空気調和システム1の使用環境において、超臨界条件と超臨界でない状態とを取り得るものとする。
【0049】
(冷媒回路)
さらに、空気調和部10が、2元回路を構成するものとして説明したが、例えば第2冷媒回路32およびカスケード熱交換器45を設けずに、単元回路として構成してもよい。付言すると、各冷媒回路の構成は上述したものに限定されず、他の構成を採用してもよい。
【0050】
(減圧要素)
さらにまた、上述した実施の形態においては、制御部90による開度の制御を可能とするため、第1電動弁46などの電動弁や、電磁弁を用いる例を説明した。制御部90による制御を行わない場合は、電動弁に代えて、キャピラリチューブやオリフィス板などを利用してもよい。
【0051】
以上、実施の形態を説明したが、特許請求の範囲の主旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
例えば、各構成の一部を省略したり、各構成に対して他の機能を付加したりしてもよい。また例えば、一の構成例に含まれる構成と他の構成例に含まれる構成とを入れ替えたり、一の構成例に含まれる構成を他の構成例に付加したりしても構わない。
【符号の説明】
【0052】
1…空気調和システム、10…空気調和部、21…室内熱交換器、31…第1冷媒回路、32…第2冷媒回路、41…第1圧縮機、44…第1室外熱交換器、45…カスケード熱交換器、46…第1電動弁、90…制御部、303…臨界点、461…温度センサ、462…圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6