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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146588
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】医療用カート
(51)【国際特許分類】
   A61B 50/13 20160101AFI20241004BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20241004BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20241004BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B50/13
B62B3/00 D
A61G12/00 C
A61B1/00 654
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059579
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】520308411
【氏名又は名称】株式会社フジフレックスマーケティング
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】大居 義生
(72)【発明者】
【氏名】大居 広樹
(72)【発明者】
【氏名】西山 詠司
(72)【発明者】
【氏名】ゴーホアン ミン トゥアン
【テーマコード(参考)】
3D050
4C161
4C341
【Fターム(参考)】
3D050AA11
3D050BB05
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG01
4C161GG13
4C341LL07
(57)【要約】
【課題】支柱部材とモニターを取り付ける架橋部材とを一体的に構成した医療用カートにおいて、安全性が高く、溝状レールの取り付けも容易な医療用カートを提供する。
【解決手段】(a)キャスターを備えたキャスター支持部、(b)前記キャスター支持部から略垂直上方に伸びる2本の支柱、(c)前記の2本の支柱の各上面を繋ぐために略水平方向に配置された架橋部材、(d)前記支柱の上面と架橋部材の端面とを連結する連結部材を含む医療用カートに係る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用カートであって、
(a)キャスターを備えたキャスター支持部、
(b)前記キャスター支持部から略垂直上方に伸びる2本の支柱、
(c)前記の2本の支柱の各上面を繋ぐために略水平方向に配置された架橋部材、
(d)前記支柱の上面と架橋部材の端面とを連結する連結部材
を含み、
(1)前記支柱の少なくとも一方の外側の側面に溝状レールが形成されており、
(2)前記連結部材は、(2a)その基本外形が、2つの対向する略円弧状側面、2つの略矩形状平面、前記略円弧状側面の外周に対応する外周曲面、前記略円弧状側面の内周に対応する内周曲面で囲まれた立体形状を有し、(2b)前記外周曲面の一部の領域から前記内周曲面の一部の領域にわたって貫通する貫通口を有し、
(3)前記連結部材の略矩形状平面の一方が架橋部材の前記端面で連結されており、
(4)前記連結部材の外周曲面には、前記溝状レールと連通するように略同形状の溝部が形成されており、前記貫通口内において当該溝部の断面が露出している、
ことを特徴とする医療用カート。
【請求項2】
連結部材の貫通口の内面が、対向する2つの略円弧状平面及び2つの略矩形状平面で構成されている、請求項1に記載の医療用カート。
【請求項3】
前記連結部材の貫通口は、連結部材の全高に対して20~70%の高さを有し、連結部材の全幅に対して40~80%の幅を有する、請求項1に記載の医療用カート。
【請求項4】
連結部材において、支柱又は架橋部材の端面と接する略矩形状平面に嵌合用突起部が形成されている、請求項1に記載の医療用カート。
【請求項5】
連結部材と支柱及び架橋部材との各連結部分には実質的に段差がない、請求項1に記載の医療用カート。
【請求項6】
前記キャスター支持部として、2個のキャスターを支持する棒状体を2つ備える、請求項1に記載の医療用カート。
【請求項7】
支持部が、棒状体の長尺方向の端部から40~60%の距離の位置に設置されている、請求項6に記載の医療用カート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な医療用カートに関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療現場において使用されている医療用カート(以下、単に「カート」ともいう。)は、例えばモニター、コンピューター、血圧計、ガスボンベ、輸液バッグ等の医療機器を搭載するために用いられている。特に、カートは、手術室、内視鏡室等のように限られた空間で使用されることも多いので、多くの医療機器をできるだけコンパクトに収納できるとともに、施術者等の動きを妨げないような形状に設計する必要がある。
【0003】
このような医療用カートとしては、従来より様々なタイプのカートが開発ないしは提案されている。例えば、複数の医療用装置が搭載される医療用カートであって、前記医療用装置に接続されているケーブルと当該医療用カートの外部に接続されているケーブルとを接続するための接続コネクターを有する、ことを特徴とする医療用カートが知られている(特許文献1)。
【0004】
また例えば、画像診断を行うための医療用装置を載置するカート本体と、前記医療用装置で取得した画像を表示する患者用モニタを配設するモニタ配設部と、前記カート本体に沿うように設けられ、前記モニタ配設部を昇降自在に取り付けた昇降レールとを備えたことを特徴とする医療用カートが提案されている(特許文献2)。
【0005】
さらに、例えば、移動用の車輪が底部に取り付けられた底板と、最上段の天板と、前記底板と天板とを離間して連結する支柱と、前記底板と天板との間を仕切るように支柱の中間部に取り付けられ、医療用の機材を載置する棚板とからなるカート本体と、このカート本体の外側に着脱自在に被せられ、少なくとも前記底板と天板との間を棚板ごと覆うカバー部材と、このカバー部材の少なくとも一部に設けられた窓部とから構成されたことを特徴とする医療用カートが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-55295
【特許文献2】特開2009-201832
【特許文献3】特開2010-5256
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】フジフレックス株式会社 ホームページ,URL https://www.fuji-flex.co.jp/upload/pdf/818536294.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年においては、例えば内視鏡による治療のように、内視鏡の解像度の向上に対応させるべく、そのような高解像度の画像をモニター上でも容易かつ詳細に視認できるようにモニターの大型化が進んでいる。これに伴って、搭載するモニターの重量も増加する傾向にある。他方、モニターは、施術者の目線又はそれよりも高い位置に設置する必要があるので、そのような高い位置に、重量のあるモニターを安定的にカートに取り付ける必要がある。例えば、モニターの取り付け方、取り付け部位等によっては、カートが転倒してしまうおそれがある。
【0009】
このような観点から、本願出願人は、支柱部材(サイドフレーム)とモニターを取り付ける架橋部材とを一体的に構成した医療用カートを開発し、既に上市している(非特許文献1)。このような構造のカートは、架橋部材のモニター取り付け部と2つの支柱部材とが一体的になるように構成されているため、より安定した状態でモニターを設置することができる。
【0010】
ところが、このようなカートは、架橋部材と支柱部材との連結部の構造において、以下のような点においてさらなる改善の余地がある。これらのカートにおいては、各種の機材又は物品を収容するトレイ等の1又は2個以上を設置するために、カートの支柱部材の外側の側面に垂直方向に伸びる付属品取付用溝状レールが形成されている。その溝部にナット等の連結部品(以下「ナット類」ともいう。)を通し、そのナット類にトレイ等が固定される。ナット類は、支柱部材の上面から溝部に挿入した後、溝部に沿って上下方向に移動させることができるので、適当な高さに移動させたうえでボルト等により固定することができる。
【0011】
この場合、従来のカートでは、使用時においては支柱部材の上面が閉鎖された状態であるため、トレイ等を追加で取り付けようとする場合、そのためのナット類挿入口を露出させるためにカートをいったん分解しなければならなくなり、そのための作業が繁雑となるという問題がある。また、挿入口をカバーで閉じるカバータイプの場合は、作業中にカバーを紛失することもある。
【0012】
これに対し、ナット類の挿入口を常に露出させるために支柱部材の上面が露出した構造も考えられるが、そのような構造とすると支柱部材の角部等の鋭利な箇所が露出することになるため、例えば衣服が当該箇所に引っかかるほか、手指等を傷つける等の懸念があり、施術者の安全の確保、物損の防止等の観点から望ましくなく、また外観が悪くなるという問題もある。
【0013】
従って、本発明の主な目的は、支柱部材とモニターを取り付ける架橋部材とを一体的に構成した医療用カートにおいて、安全性が高く、ナット類の取付用溝状レールへの取り付けも容易な医療用カートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構造からなる医療用カートが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、下記の医療用カートに係る。
1. 医療用カートであって、
(a)キャスターを備えたキャスター支持部、
(b)前記キャスター支持部から略垂直上方に伸びる2本の支柱、
(c)前記の2本の支柱の各上面を繋ぐために略水平方向に配置された架橋部材、
(d)前記支柱の上面と架橋部材の端面とを連結する連結部材
を含み、
(1)前記支柱の少なくとも一方の外側の側面に溝状レールが形成されており、
(2)前記連結部材は、(2a)その基本外形が、略円弧状底面、略円弧状上面、2つの略矩形状側面、曲面を有する外側面及び曲面を有する内側面で囲まれた形状を有し、(2b)前記外側面の一部の領域から前記内側面の一部の領域にわたって貫通する貫通口を有し、
(3)前記連結部材の略矩形状側面の一方が架橋部材の前記端面で連結されており、
(4)前記連結部材の外側面には前記溝状レールと連通するように略同形状の溝部が形成されており、前記貫通口内において当該溝部の断面が露出している、
ことを特徴とする医療用カート。
2. 連結部材の貫通口の内面が、対向する2つの略円弧状平面及び2つの略矩形状平面で構成されている、前記項1に記載の医療用カート。
3. 前記連結部材の貫通口は、連結部材の全高に対して20~70%の高さを有し、連結部材の全幅に対して40~80%の幅を有する、前記項1に記載の医療用カート。
4. 連結部材において、支柱又は架橋部材の端面と接する略矩形状側面に嵌合用突起部が形成されている、前記項1に記載の医療用カート。
5. 連結部材と支柱及び架橋部材との各連結部分には実質的に段差がない、前記項1に記載の医療用カート。
6. 前記キャスター支持部として、2個のキャスターを支持する棒状体を2つ備える、前記項1に記載の医療用カート。
7. 支持部が、棒状体の長尺方向の端部から40~60%の距離の位置に設置されている、前記項6に記載の医療用カート。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、支柱部材とモニターを取り付ける架橋部材とを一体的に構成した医療用カートにおいて、安全性が高く、ナット類の溝状レールへの取り付けも容易な医療用カートを提供することができる。
【0017】
本発明のカートは、貫通口を有する連結部材により架橋部材と支柱とが一体的に連結されており、その貫通口内面にナット類の挿入口が露出しているので、ナット類の取り付け、取り替え等を容易に行うことができる。その一方、ナット類の挿入口が連結部材の貫通口の内面に囲まれた構成であるので、挿入口(角部)がある程度カバーされることにより安全性を確保することができる。これにより、挿入口で衣服等が引っかけるようなリスクも低減することができる。また同時に、ナット類の挿入口が外部から見えにくくなるので、それだけ外観も良好となる。
【0018】
また、連結部材の貫通口にコード類を入れることもできるので、複数のコード類をまとめることができる結果、足場の安全確保にも寄与することができる。
【0019】
さらに、連結部材の貫通口は、曲面を有するアーチ状のフレームとなっているため、手指で把持しやすく、カートの移動も円滑かつ安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の医療用カート例の斜視図を示す。図1Aは斜め前方から見た図であり、図1Bは斜め後方から見た図である。
図2】本発明の医療用カートの実施形態の一例を示す。
図3】連結部材の一例の斜視図を示す
図4】連結部材の実施形態の一例を示す。
図5】連結部材(又は支柱)のナット類挿入付部のレールの断面形状の具体例を示す。
図6】支柱の断面構造例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
10 医療用カート
11 キャスター
12 キャスター支持部
13 支柱(サイドフレーム)
14 架橋部材
15 連結部材
16 棚板
17 側板
18 背面カバー
19 変圧器
21 モニターアーム
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の医療用カート(本発明カート)は、
(a)キャスターを備えたキャスター支持部、
(b)前記キャスター支持部から略垂直上方に伸びる2本の支柱、
(c)前記の2本の支柱の各上面を繋ぐために略水平方向に配置された架橋部材、
(d)前記支柱の上面と架橋部材の端面とを連結する連結部材
を含み、
(1)前記支柱の少なくとも一方の外側の側面に溝状レールが形成されており、
(2)前記連結部材は、(2a)その基本外形が、2つの対向する略円弧状側面、2つの略矩形状平面、前記略円弧状側面の外周に対応する外周曲面、前記略円弧状側面の内周に対応する内周曲面で囲まれた立体形状を有し、(2b)前記外周曲面の一部の領域から前記内周曲面の一部の領域にわたって貫通する貫通口を有し、
(3)前記連結部材の略矩形状平面の一方が架橋部材の前記端面で連結されており、
(4)前記連結部材の外周曲面には、前記溝状レールと連通するように略同形状の溝部が形成されており、前記貫通口内において当該溝部の断面が露出している、
ことを特徴とする。
【0023】
本発明カートの実施形態の一例(斜視図)を図1に示す。図1Aは、本発明カートの前方から見た図を示す。図1Bは、本発明カートの後方から見た図を示す。なお、本明細書では、カートを水平面に置いた場合を基準として、それに平行な方向を「水平」と表記し、垂直な方向を「鉛直」と表記する。
【0024】
図1Aに示すように、本発明カート10は、その主要な構成部品として、(a)キャスター11を備えたキャスター支持部12、(b)前記キャスター支持部12から略垂直上方に伸びる2本の支柱13,13、(c)前記の2本の支柱の各上面を繋ぐために略水平方向に配置された架橋部材14、(d)前記支柱13の上面と架橋部材14の端面とを連結する連結部材15(丸印部分)を含む。連結部材は、図1のカートでは両側に2個取り付けられているが、片側のみ(一つのカートで使用される連結部材が1個)であっても良く、この場合の他方の連結部には例えば貫通口のない連結部材等を適宜用いることができる。
【0025】
図1における本発明カートでは、キャスター(車輪)11は、キャスター支持部12の下面に取り付けられている。キャスター支持部12は略柱状(棒状)であり、その両端部にそれぞれ1つずつキャスターが取り付けられている。このように、図1のカートでは、両端部に2個のキャスターが取り付けられたキャスター支持部が2本採用されており、合計4個のキャスターを有する構成となっている。2本のキャスター支持部は、本発明カートの幅方向の末端に備えられており、必要に応じて底板、柱状又はフレームの支持部材等を介して互いに連結されていていることが好ましい。別の実施形態として、四隅に4個のキャスターを備えたプレート状のキャスター支持部を採用することもできる。
【0026】
キャスターの形式、大きさ、材質等は、特に限定されず、公知又は市販のカートと同様にものを採用することができる。また、図1のカートでは、合計4個のキャスターが設けられているが、これに限定されない。さらに、キャスターは、ストッパーが備えられていることが好ましい。
【0027】
図1Aに示すように、本発明カートは、2つのキャスター支持部12にそれぞれ支柱13,13が設けられている。支柱13は、カートに取り付けられる1枚又はそれ以上のプレート棚15を支持する機能を有するとともに、上方で架橋部材14を支える機能も有する。このため、相応の強度及び長さを有する。従って、支柱13の断面の大きさは、例えば約200mm×200mmの枠内に入るサイズとすることができる。その断面形状(外形)は、限定的でなく、例えば略矩形状、略円形状等のいずれであっても良い。支柱13の長さは、例えば100~150cm程度の範囲内に設定することができるが、これに限定されない。支柱の長尺方向は、通常は直線状であれば良いが、必要に応じて部分的に湾曲、屈曲等の加工が施されていても良い。支柱の材質は、所望の強度が維持できる限りは制限されず、例えばアルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属製の支柱を好適に用いることができる。また、支柱は、中実又は中空のいずれであっても良い。カートの軽量化という点では、中空タイプ(管状)の支柱を好適に用いることができる。
【0028】
キャスター支持部12に対する支柱13の取り付け位置は、架橋部材にモニター等を取り付けた際にカートが安定するような位置とすれば良く、通常はキャスター支持部の長尺方向の中央部(例えば長尺方向の長さL×50±10%程度)とすることが好ましい。
【0029】
支柱13の外側(他方の支柱と対向する面の反対側)の側面には、溝状レール13aが形成されている。図1に示すカートでは、溝状レール13aが所定の間隔を空けて2本形成されているが、カートの用途、支柱の大きさ等によっては、1本でも良いし、あるいは3本以上であっても良い。溝状レール13aは、支柱13の上面から下面まで(すなわち、溝状レールの長尺方向の全長にわたって)直線状に形成されているが、例えば支柱13の上面から支柱13の中間地点あたりまでであっても良い。
【0030】
溝状レール13aは、溝状レールにナット類(図示せず)を挿入するために形成されており、挿入されたナット類が手指で上下方向にスライド可能な状態となっている。これにより、任意の高さでボルトをナット類に締め付けて固定することができる。すなわち、トレイ等の各種の付属品をボルトとナット類でカートに取り付けることが可能となる。
【0031】
溝状レール13aの断面形状及びサイズは、ナット類が溝状レールから脱落しないように、挿入されるナット類の形状及びサイズに合致するように設計すれば良い。例えば、図5A図5Cのように略C字状等の各種の形状を採用することができる。なお、図5A図5Cで示す着色領域は、中実又は中空のいずれであっても良い。
【0032】
2本の支柱13,13の各上面どうしを繋いで固定するために略水平方向に架橋部材14が配置されている。架橋部材14は、主として、2本の支柱の橋渡しとして両者をカート上方で繋ぐ役割を果たすとともに、モニター等を取り付けるためのステー(バー)としての役割も果たす。本発明カートでは、図1に示すように、支柱13,13と架橋部材14とが連結部分に段差がないように一体的に連結されていることが望ましい。
【0033】
図1では、架橋部材14は、直線状の形状を有しているが、例えば上方又は前後に向かって凸状に湾曲するような略アーチ状、略U字状等のいずれであっても良い。また、図1に示すように、架橋部材14には、必要に応じて、モニターを支持するためのアーム16、アーム取り付け部(図示せず)等が設けられていても良い。
【0034】
本発明カートにおける連結部材15は、前記支柱13の上面と架橋部材14の端面を連結する機能を有する。そのうえで、連結部材は、さらに前記のナット類の挿入口として機能する一方、その挿入口を連結部材の貫通口15d内に配置されることにより、安全性を確保するとともに、挿入口が外から見えにくい外観形状とすることができる。なお、本発明では、貫通口内は、特に、対向する2つの略円弧状平面15f’15f’及び2つの略矩形状平面(上方裏面15b’、下方裏面15c’)で囲まれた領域をいう。
【0035】
図1の本発明カートで採用される連結部材15の斜視図を図3に示す。図3Aは、連結部材の外周曲面(曲面の凸面)から見た図を示す。図3Bは、連結部材の内周曲面(曲面の凹面)から見た図を示す。
【0036】
連結部材15は、その基本外形が、2つの対向する略円弧状側面15f,15f、2つの略矩形状平面15b,15c、前記略円弧状側面の外周に対応する外周曲面15a、及び前記略円弧状側面の内周に対応する内周曲面15bで囲まれた立体形状を有している。図3に示すように、その外形(外枠形態)として、中空円柱体の底面を約1/4等分したような形状を有し、上記のような6つの面で囲まれた構成となっている。
【0037】
連結部材15では、前記外周曲面15aの一部の領域から前記内周曲面15a’の一部の領域にまで貫通する貫通口(貫通孔)15dが設けられている。
【0038】
貫通口15dは、例えば図3Aに示すような平面視で略矩形状とすることができるが、これに限定されない。貫通口15dの内面は、図3に示すように、4つの平面から構成されている。具体的には、連結部材の貫通口15dの内面は、対向する2つの略円弧状平面15f’15f’及び2つの略矩形状平面(上方裏面15b’、下方裏面15c’)で構成されていることが望ましい。図3Bのように、略矩形状平面15bの裏面に位置する上方裏面15b’、略矩形状平面15cの裏面に位置する下方裏面15c’がそれぞれ形成されている。略矩形状平面15bと上方裏面15b’は、通常は鉛直方向に配置されている。略矩形状平面15cと下方裏面15c’は、通常は概ね水平方向に配置されている。いずれの面もフラットな面から構成されていることが望ましい。
【0039】
貫通口15dの大きさ(平面視)に関し、貫通口幅wは、例えば連結部材の全幅w(支柱の幅)の40~80%程度(特に50~70%)とすれば良いが、これに限定されない。貫通口の高さhは、例えば連結部材の全高hの20~70%程度(特に25~50%)とすれば良いが、これに限定されない。このような貫通口のサイズを採用することによって、安全性の確保とともに、貫通口内に所定の空間を形成できるのでナット類の手指による挿入をより円滑に行うことが可能となる。なお、連結部材の全幅w及び連結部材の全高hは、例えば図4に示すように、連結部材本体のサイズを基準とし、嵌合用突起部の大きさは含まない。
【0040】
連結部材の曲面(略円弧状側面15fの内側)の曲率は、支柱又は架橋部材の太さ等に応じて適宜変更することができ、例えば曲率半径が3~15cm程度の範囲内で設定することができるが、これに限定されない。また、曲面を構成する角度(略矩形状平面15b,15cが互いに交差する角度)は、通常は90度程度とすれば良いが、架橋部材の形状等に応じて80~100度程度の範囲内で適宜変更することができる。
【0041】
図3Bに示すように、連結部材15には、前記溝状レール13aと連通するように略同形状の断面形状を有する溝部15eが2本形成されており、当該溝部の断面が前記貫通口内で露出している。この露出部がナット類の挿入口となる。前記溝部15eは、略矩形状側面15cから、貫通孔内面を構成する下方裏面15c’に通じるように形成されている。これによって、溝部15eの上面にある挿入口から挿填されたナット類は、溝部15e全長を通って、そのまま溝状レール13aに移動することができる。
【0042】
略矩形状側面15bは、架橋部材14の端面と連結される。また、他方の略矩形状側面15cは、支柱13の上面と連結される。図3の連結部材15では嵌合用突起部15g,15g’が形成されており、これを架橋部材及び支柱と嵌合するとともに、必要に応じて別の締結部材を併用することによって連結することができる。嵌合用突起部により連結することによって、より安定的に各部材を互いに連結することができる。本発明では、必要に応じて、図3Bのように、締結部材を挿入するネジ穴15hが複数形成されていても良い。
【0043】
連結部材15の材質は、支柱と同様、例えばアルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属製の連結部材を好適に用いることができる。また、必要に応じて、合成樹脂製の連結部材も使用することができる。
【0044】
本発明では、上記の連結方法は、特に限定されず、例えば嵌合による方法、ネジ、リベット等の締結部材による方法、接着剤による方法、溶接による接合方法等の少なくとも1種を採用することができる。また、連結される面(断面)どうしは、互いに略同形状であることが好ましい。これによって、連結部に凹凸等が生じにくくなって一体的に連結できるので、安全性をより高めるとともに、外部から連結部(継ぎ目)が目立ちにくくなって良好な外観を確保することができる。
【0045】
また、連結部材15の下方端面15cと支柱13の上面との連結に際し、連結部材の溝部15eと溝状レール13aとが連通するように連結されている。すなわち、1本の連続した溝状レールを構成するように繋がっている。このため、連結部材の溝部15eと溝状レール13aの断面形状は互いに実質的に同じであることが好ましい。また、連結部材の溝部15eと溝状レール13aの各位置も合致するように事前に設計することが好ましい。これにより、下方裏面15c’の上方から溝部15eにナット類を差し込み、なおかつ、連結部材と支柱との境界線をまたいでナット類を溝部15eから下方に向かって円滑にスライドさせて溝状レール13aに通すことができる。また、ナット類を取り外す場合は、ナット類を溝状レールに沿って連結部材の挿入口まで上方に移動させて、溝部15eから取り外せば良い。
【0046】
溝状レール13aに通すナット類自体は、従来から使用されているもの又は市販品を用いることができる。ナット類は、金属製又は樹脂製のいずれであっても良い。また、ナット類に取り付ける付属品としても、これまでカートに取り付けられていたトレイ、ホルダー等をボルトでナット類と連結することでカートの側面(支柱13の外側の側面)に固定することができる。また、必要に応じて、その連結を緩めることによって高さ調整も自由に行うことができる。さらに、ナット類を追加する場合は、連結部材15の下方裏面15c’の上方の挿入口から溝部15eにナット類を装填すれば良い。
【0047】
本発明カートは、必要に応じて、図1に示すように、1枚又は2枚以上の棚板16、側板17、背面カバー18、変圧器(ホルダー)19等を設けることができる。これらは、公知又は市販のカートと同様にして設置することができる。
【実施例0048】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0049】
[実施例1]
図1に示すような医療用カートを組み立てた。その構成の詳細を図2に示す。図2Aは、カートを前面から見た図である。図2Bは、カートを側面から見た図である。図2Cは、カートを鉛直方向の上方から見た図である。図2Dは、カートの斜視図である。
【0050】
キャスターとして、外径約13cmのゴム製タイヤのストッパー付きキャスター11(4個)を用意した。長さ約70cmのステンレス鋼製キャスター支持部12の両端部に前記キャスターを2個ずつ取り付けた。
【0051】
キャスター支持部の長尺方向の略中間点に長さ約110cmの支柱(サイドフレーム)13を取り付けた。2つのキャスター支持部及び支柱のセットどうしは、カート底部の連結棒(図示せず)及びカート上方の天板で連結されている。このときの2本の支柱間の距離は約720cmである。2本の支柱の内側には棚板を取り付ける部位を形成されており、図2Bのように4枚の棚板を脱着可能な状態で取り付けることができる。また、図2Bで示すように、キャスター支持部どうしの間に設けられたホルダー19に変圧器(トランス装置)が配置されている。
【0052】
支柱13の断面構成は、図5に示すように略六角形の断面形状を有する。本発明では、断面形状は、例えば略四角形、略五角形等の各種の多角形であっても良い。図5では寸法(mm)も示す。図5の断面図にも示されているように、約200mm×約50mmの枠内に入るようなサイズであり、具体的には外形が内側の側面の長さ176mm、外側の側面の長さ176mmであり、幅(厚み)が45mmである。支柱13は、ステンレス鋼板を加工することによって作製された中空タイプの支柱である。支柱13の外側の側面に2本の溝状レール13a,13aが60mmの間隔を空けて平行に支柱の全長にわたって形成されている。支柱13の内側の側面には、棚板の支持用溝13b,13cが形成されている。
【0053】
2本の支柱13の各上面には、それぞれ連結部材15が連結される。連結部材15の詳細を図4に示す。図4Aは、図3Aを真正面からみた図である。図4Bは、側面図である。図4Cは、図3Bを真正面から見た図である。図4Dは、上方から見た図である。
【0054】
図4Aのように、連結部材15の全高hは約96mmであり、貫通口15dの高さhは約31mmである。また、連結部材15の全幅wが約174mmであり、貫通口15dの幅wは約113mmである。内面の曲率半径は約50mmである。貫通口の各入口エッジ部にはテーパー加工処理が施されている。また、外周曲面15aの外縁部にもテーパー加工処理が施されている。
【0055】
連結部材15は、互いに対向するように配置されている2つの略円弧状側面15f、15fと、連結部材の幅方向に伸びる2つの略矩形状平面(上方の略矩形状平面15b,下方の略矩形状平面15c)と、前記略円弧状側面の外周どうしをつなぐ外周曲面15a、前記略円弧状側面の内周どうしをつなぐ内周曲面15a’で囲まれた立体形状を有している。上方の略矩形状平面15bと下方の略矩形状平面15cとは、互いに約90度の角度をなすように配置されている。前記外周曲面の一部の領域から前記内周曲面の一部の領域にわたって貫通する貫通口15dを有している、例えば、連結部材15を鉛直方向の上から見た図4Dにおいて、貫通口15dは略矩形状(略長方形)となっている。
【0056】
連結部材15の外周曲面15aに溝部15eが2本形成されている。溝部15eは、その外周曲面15aにおいて、略矩形状側面15cから、貫通孔内面を構成する下方裏面15c’に通じるように形成されている。すなわち、連結部材15を支柱13と連結した際に、当該支柱13の2本の溝状レール13a,13aと連通するような位置に、2本の溝部15e,15eが形成される。下方裏面15c’の面上において、2本の溝部15e,15eの出口となる部分がナット類の挿入口となる。
【0057】
連結部材15には嵌合用突起部15g’が形成されている。これが支柱13の中空部の内部に挿入されることによって嵌合される。この場合、支柱13に形成された溝状レール13aの位置と、連結部材15に形成された溝部15eの位置が一致するように嵌合されるので、溝部15eと溝状レール13aとが連通して1つの溝状レールを形成できるようになる。また、支柱と連結部材とはネジ穴15hを通してネジ止め等によっても連結することができる。各連結部材15の略矩形状平面15cと支柱13の両端面とは互いに面どうしが当接するように連結される。
【0058】
各連結部材15の他端である略矩形状平面15bは、架橋部材14の両端面で面どうしが当接するように連結される。両側にある2つの各連結部材15と架橋部材14との連結も、連結部材と支柱との連結と同様、嵌合用突起部15gによる嵌合とネジ穴15hを用いたねじ止めによって行われている。架橋部材14の中央部には、図2に示すように、モニターアーム1個が事前に取り付けられている。本発明カートの別の実施形態では、架橋部材の両端にモニターアームを設置したダブルアームタイプ等に適宜変更することもできる。
【0059】
その後、樹脂製棚板16、樹脂製天板16a、背面カバー18、変圧器19等を取り付けることによって、最終的に本実施例の医療用カート10を完成することができる。本発明の別の実施形態では、樹脂製天板に代えて、引き出し式のキーボードラック等を適宜設置することもできる。
【0060】
このようにして組み立てられたカート(総耐荷重:約150kg)は、架橋部材14の端部に貫通口15dを有する連結部材15が取り付けられているため、カートの側面から見た場合のみ連結部材15の溝部15e(及びその断面に位置するナット類の挿入口)が視認できるだけであり、前面又は背面からカートを見た場合には溝部15eは視界から隠れた状態となっている。挿入口は、溝部15eにおける下方裏面15c’の上面に鉛直方向に向かって形成されている。
【0061】
特に、連結部材15の外側の側面は外周曲面15aで形成されているので、安全性にも優れたものとなっている。さらに、貫通口15dの形成によって、溝部15eにおいてナット類の挿入口(取付口)が露出した状態となっているが、実質的に貫通口15d内に挿入口が配置されている(特に、挿入口が貫通口15d内の2つの内壁15f’,15f’に囲まれた状態になっている)ので、挿入口が不用意に人体又はその衣服等の物体に接触することを極力回避することができる。また、貫通口15d内で挿入口が露出した状態になっているので、ナット類の挿入を容易かつ迅速に行うことができるほか、貫通口15dに複数のケーブルを挿入して束ねてカート背面にまとめて、作業の足場を整理することができる。さらには、貫通口15dは、カートを移動する際に手で掴むための把持部として機能することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6