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特開2024-146593ポリオール組成物、発泡性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146593
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ポリオール組成物、発泡性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/18 20060101AFI20241004BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
C08G18/18
C08G18/00 J
C08G18/22
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059592
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】吉川 悠人翔
(72)【発明者】
【氏名】田中 康揮
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫生
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DC25
4J034DF11
4J034DF12
4J034DF20
4J034DF22
4J034DF24
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DG15
4J034DG16
4J034DQ02
4J034DQ04
4J034DQ15
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034EA12
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB07
4J034HC12
4J034HC33
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA42
4J034KB02
4J034KB03
4J034KB05
4J034KC02
4J034KC17
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD07
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA02
4J034MA03
4J034MA14
4J034MA16
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA07
4J034RA10
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】ポリウレタン発泡体の施工において、硬化後の発泡が抑制されるポリオール組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、前記ポリオール組成物が、ポリオール、触媒、発泡剤、及び難燃剤を含有し、前記触媒がカルボン酸アンモニウム塩を含み、前期カルボン酸アンモニウム塩のカチオン構造内に水酸基を含む、ポリオール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、
前記ポリオール組成物が、ポリオール、触媒、発泡剤、及び難燃剤を含有し、
前記触媒がカルボン酸アンモニウム塩を含み、
前記カルボン酸アンモニウム塩のカチオン構造内に水酸基を含む、ポリオール組成物。
【請求項2】
前期カルボン酸アンモニウム塩を構成するカルボン酸イオンの炭素数が8以下である、請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記触媒が、有機酸ビスマス塩を含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
前記触媒が、窒素原子を有する複素環式化合物を含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項5】
前記難燃剤が、リン系化合物を含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを混合して得られる、発泡性ウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
イソシアネートインデックスが250以上である、請求項6に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物を、スプレー発泡することにより形成される、ポリウレタン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物、発泡性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は、その優れた断熱性を利用して、マンション等の集合住宅、戸建住宅、商業ビル等の建築物の天井、屋根、壁面などの建築部材の断熱や結露防止に実用されている。ポリウレタン発泡体は、各構造物の表面に、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含む難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付け、発泡及び硬化させることにより形成される。
【0003】
ポリウレタン発泡体を形成するための原料には、例えば吹付施工によりポリウレタン発泡体を形成する際に躯体界面における硬化反応を促進させる観点から、イソシアヌレート結合生成の反応性を高めるための三量化触媒を含有させることがある。例えば、特許文献1には、三量化触媒として、4級アンモニウム塩及びカルボン酸アルカリ金属塩を含有する難燃性ウレタン樹脂組成物が開示される。
また、特許文献2には、バッテリーケースにより高い難燃性及び耐燃焼性を付与するための硬質ウレタン発泡体の原料として、アミン系の三量化触媒を含むポリオール組成物が開示される。
また、特許文献3、4には、三量化触媒として第四級アンモニウム塩を含む難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物、及びポリウレタンフォーム用発泡性組成物が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-94469号公報
【特許文献2】特開2021-12762号公報
【特許文献3】特許第7034020号公報
【特許文献4】特開2022-15801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、イソシアヌレート結合生成の反応性を高めた場合、原料が硬化して発泡体が形成された後においても、発泡による体積膨張が継続し、そのことにより、施工面からの剥離が発生しやすくなる問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、ポリウレタン発泡体の施工の際に、硬化後の発泡が抑制されるポリオール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、カルボン酸アンモニウム塩のカチオン構造内に水酸基を含む触媒を使用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を提供する。
【0008】
[1]ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、前記ポリオール組成物が、ポリオール、触媒、発泡剤、及び難燃剤を含有し、前記触媒がカルボン酸アンモニウム塩を含み、前記カルボン酸アンモニウム塩のカチオン構造内に水酸基を含む、ポリオール組成物。
[2]前期カルボン酸アンモニウム塩を構成するカルボン酸イオンの炭素数が8以下である、[1]に記載のポリオール組成物。
[3]前記触媒が、有機酸ビスマス塩を含む、[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
[4]前記触媒が、窒素原子を有する複素環式化合物を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[5]前記難燃剤が、リン系化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを混合して得られる、発泡性ウレタン樹脂組成物。
[7]イソシアネートインデックスが250以上である、[6]に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物。
[8][6]又は[7]に記載の発泡性ウレタン樹脂組成物を、スプレー発泡することにより形成される、ポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリウレタン発泡体の施工の際に、硬化後の発泡が抑制されるポリオール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリオール組成物]
本発明のポリオール組成物は、ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、ポリオール、触媒、発泡剤、及び難燃剤を含有するポリオール組成物である。以下、各成分について詳細に説明する。
【0011】
<触媒>
本発明のポリオール組成物は、触媒を含有する。触媒としては、カチオン構造内に水酸基を含むカルボン酸アンモニウム塩(以下、「水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩」ともいう)を含有する。本発明のポリオール組成物は、水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩を含有することにより、例えば吹付施工などによりポリウレタン発泡体を施工した場合、ポリウレタン発泡体の形成後に該発泡体がさらに発泡して、体積が膨張することを抑制できる。それにより、該発泡体の施工対象(例えば、建築物の壁など)から該発泡体が剥離することを防止することができる。
水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩を含有することにより、ポリウレタン発泡体の発泡や体積膨張が抑制される原理は定かではないが、発泡反応の進行とともに触媒が反応して、発泡体の成分に触媒が取り込まれることで、発泡反応の後半において触媒活性が相対的に落ち、硬化後の体積膨張を抑えられると推定される。
なお、水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩は、イソシアヌレート結合生成の反応を促進させる三量化触媒として機能する。
【0012】
水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩を構成するカチオン(以下、単に「カチオン」ともいう)は、下記一般式(1)で表されるとよい。
【0013】
【化1】
(上記式(1)において、Rは、炭素数1~20の有機基を表し、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~20の有機基又は水素原子を表し、R~Rで表される有機基のうちの少なくとも1つが水酸基を有する。)
【0014】
上記式(1)において、R~Rは、少なくとも2つが炭素数1~20の有機基であることが好ましく、すべてが炭素数1~20の有機基であることがより好ましい。炭素数1~20の有機基の構造は、特に限定されず、脂肪族基を有していてもよいし、芳香族基を有していてもよいが、R~Rのうち、少なくともいずれか1つが脂肪族基を有することが好ましく、R~Rのすべてが脂肪族基を有することがより好ましく、R~Rのすべてが脂肪族基であることがさらに好ましい。脂肪族基としては、直鎖状構造であってもよいし、環状構造を有してもよいし、分枝状構造を有してもよい。また、R~Rは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよく、この場合には、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、チオール結合、ウレタン結合、ウレア結合などを有していてもよく、これらの中ではエーテル結合が好ましい。
【0015】
カチオンは、水酸基を1つのみ有していてもよいし、複数の水酸基を有していてもよい。水酸基は、R~Rで表される有機基のうちのいずれか1つの有機基が、水酸基を有していてもよいし、2つ以上の有機基が水酸基を有してもよい。また、水酸基を有する有機基は、水酸基を1つのみ有してもよいし、2つ以上有してもよいが、1つの水酸基を有することが好ましい。
【0016】
~Rで表される有機基のうち水酸基を有する有機基は、1又は2以上の水素原子が水酸基で置換されたアルキル基である、ヒドロキシアルキル基であることが好ましい。ヒドロキシアルキル基の炭化水素部分は、直鎖状構造であってもよいし、環状構造を有してもよいし、分枝状構造を有していてもよい。ヒドロキシアルキル基としては、炭素数1~15のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基であることがより好ましく、炭素数2~5のヒドロキシアルキル基であることがさらに好ましい。ヒドロキシアルキル基としては、2-ヒドロキシエチル基などのヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基などのヒドロキシプロピル基が挙げられる。
また、R~Rのうち水酸基を有しない基は、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~2のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0017】
なお、水酸基は、特に限定されないが、1級でもよいし、2級でもよいし、3級でもよいが、1級又は2級が好ましく、これらを併用することも好ましい。
なお、1級、2級、3級とはそれぞれ、水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が1個、2個又は3個のものをいうが、水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が0のものも、便宜上1級とする。
なお、1級及び2級の水酸基を併用する場合、1級の水酸基と、2級の水酸基は、同じ有機基に設けられてもよいし、異なる有機基に設けられてもよいが、異なる有機基に設けられることが好ましい。
【0018】
本発明において、カチオンが有する水酸基の数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましく、2であることが特に好ましい。水酸基の数が上記範囲内であると、ポリウレタン発泡体の形成後における発泡が抑制され、発泡体の体積膨張に伴う施工面からの剥離が抑制されやすくなる。
【0019】
以上のようなカチオンとしては、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウム等が挙げられる。これらの中では、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムが好ましい。
【0020】
水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩を構成するアニオン(カルボン酸イオン)としては、ギ酸基、酢酸基、カプロン酸基(ヘキサン酸基)、ヘプタン酸基、オクタン酸基、オクチル酸基(2-エチルヘキサン酸基)、オレイン酸基、アクリル酸基、メタクリル酸基、シュウ酸基、マロン酸基、コハク酸基、グルタル酸基、アジピン酸基、安息香酸基、トルイル酸基、エチル安息香酸基、フェノキシ基、メチル炭酸基、スルホン酸基(アルキルベンゼンスルホン酸基、トルエンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基等)、リン酸エステル基等が挙げられる。これらの中では、炭素数1以上12以下のカルボン酸イオンが好ましく、中でも、炭素数が2以上8以下のカルボン酸イオンがより好ましく、酢酸基、オクチル酸基がさらに好ましく、中でも、ポリウレタン発泡体の臭いを抑制し、ポリウレタン発泡体に良好な取り扱い性を付与しやすくする観点から、オクチル酸基がよりさらに好ましい。
【0021】
水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩の含有量は、ポリオール100質量部に対し、2~30質量部であることが好ましく、3~25質量部であることがより好ましく、5~20質量部であることがさらに好ましい。水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩の含有量が上記下限値以上であると、ポリウレタン発泡体が形成された後において、該発泡体の膨張を抑制しやすくなる。また、水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩の含有量が上記上限値以下であると、ポリウレタン発泡体の膨張が適度に促進されることで、該発泡体に一定の柔軟性が付与され、ポリウレタン発泡体の施工の際に、施工面への追従性が向上しやすくなる。
なお、水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0022】
三量化触媒としては、上記した水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩以外の三量化触媒(以下、「その他の三量化触媒」ともいう)を含有してもよい。その他の三量化触媒としては、金属触媒、水酸基を有しないアンモニウム塩等が挙げられる。
その他の三量化触媒として使用される金属触媒(三量化金属触媒)としては、有機酸カリウムが挙げられ、好ましくは2-エチルヘキサン酸カリウム等のオクチル酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ブタン酸カリウム、安息香酸カリウム等の炭素数2~8のカルボン酸カリウムである。
水酸基を有しないアンモニウム塩としては、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができるが、これらのなかでは、4級アンモニウム塩が好ましい。アンモニウム塩は、例えばカルボン酸のアンモニウム塩である。アンモニウム塩におけるカルボン酸としては、例えば炭素数1~10、好ましくは炭素数2~8の飽和脂肪酸が挙げられる。飽和脂肪酸は、炭化水素基が直鎖であってもよいし、分岐を有してもよいが、分岐を有することが好ましい。カルボン酸の具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸などが挙げられるが、これらの中では2,2-ジメチルプロパン酸が好ましい。三量化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
その他の三量化触媒としては、金属触媒を含有することが好ましく、炭素数2~8のカルボン酸カリウムを含有することがより好ましく、2-エチルヘキサン酸カリウム等のオクチル酸カリウムを含有することがさらに好ましい。
その他の三量化触媒の含有量は、特に限定されないが、三量化触媒全量に対して、例えば50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。その他の三量化触媒の含有量が上記上限値以下であることで、三量化触媒全体に占める水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩の割合を一定以上とし、硬化後の発泡を抑制しやすくなる。その他の三量化触媒の含有量の下限は、0質量%であり、その他の三量化触媒は、含有されなくてもよい。
【0023】
(樹脂化触媒)
触媒としては、樹脂化触媒を含有してもよい。樹脂化触媒としては、窒素原子を有する複素環式化合物(以下、「窒素含有複素環化合物」ともいう)を含有することが好ましい。樹脂化触媒として、窒素含有複素環化合物を含有することで、樹脂化反応が促進されることで、硬化後の発泡が抑制されやすくなる。窒素含有複素環化合物の中でも、イミダゾール誘導体を含有することがより好ましい。
イミダゾール誘導体は、後述するハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくく、ポリオール組成物の安定性を高めつつポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくする。したがって、ポリオール組成物は、イミダゾール誘導体を含有することで、ポリオールとポリイソシアネートの反応性が高められ、発泡性がさらに良好となる。
イミダゾール誘導体は、好ましくは1位および2位がそれぞれ独立に炭素数8以下のアルキル基で置換されたイミダゾールであり、アルキル基は好ましくは炭素数6以下、より好ましくは炭素数4以下である。イミダゾール誘導体の好適な具体例は、下記一般式(2)で表される。
【0024】
【化2】
(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。)
【0025】
一般式(2)におけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基はそれぞれ直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
及びRのアルキル基又はアルケニル基の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなりハイドロフルオロオレフィン等の発泡剤の影響を受けにくくなるため好ましい。一方、R及びRのアルキル基の炭素数が前記上限値以下であると、極端に立体障害が大きくならないためポリオールとポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させることが可能になり、発泡性も良好となる。
これらの観点から、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0026】
一般式(1)で表されるイミダゾール誘導体としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられ、中でも、ハイドロフルオロオレフィン存在下での触媒の活性を向上させる観点と反応を速やかに進行させる観点から、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが好ましい。また、安定性をより高める観点からは1,2-ジメチルイミダゾールがさらに好ましい。
【0027】
ポリオール組成物中の窒素含有複素環化合物の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部が更に好ましい。窒素含有複素環化合物の含有量が前記下限値以上であるとウレタン結合の形成が生じやすくなり、反応が速やかに進行し、かつ発泡性が良好となる。一方、窒素含有複素環化合物の含有量が前記上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなるため好ましい。
【0028】
樹脂化触媒としては、金属触媒を含有してもよい。この金属触媒は、一般的に樹脂化金属触媒と呼ばれるものである。本発明では、上記樹脂化金属触媒を含有することで、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が促進され、特に初期反応速度を高めることができる。また、樹脂化金属触媒を含有させることで、ポリオールとポリイソシアネートとの反応速度を適切に制御しやすくなる。上記樹脂化金属触媒は、発泡性などに加え、硬化後の発泡が抑制されるポリウレタン発泡体を形成しやすくする観点から、ビスマスを含むビスマス化合物、又は、錫を含むスズ化合物であることが好ましく、ビスマス化合物がより好ましい。ビスマス化合物は、HFOに対する反応性が低く、保存安定性が高くなる。また、ポリウレタン発泡体の難燃性を低下させることなく、初期活性を良好にさせやすい。
【0029】
上記の樹脂化金属触媒は、ビスマス及び錫から選択される金属塩が好ましく、ビスマス塩であることがより好ましい。金属塩は、有機酸金属塩であることが好ましく、より好ましくは炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である。カルボン酸は、炭素数5以上であることで、発泡剤、特にハイドロフルオロオレフィンに対する安定性が良好となる。また、カルボン酸の炭素数は、触媒活性などの観点から、18以下が好ましく、12以下がより好ましい。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。カルボン酸は、直鎖であってもよいし、分岐構造を有してもよいが、分岐構造を有することが好ましい。
カルボン酸の具体例としては、オクチル酸、ラウリル酸、バーサチック酸、ペンタン酸及び酢酸等が挙げられ、これらのなかではオクチル酸が好ましい。すなわち、遷移金属塩は、オクチル酸の金属塩が好ましい。これらカルボン酸は、上記の通り直鎖状であってもよいが、分岐構造を有してもよい。なお、分岐構造を有するオクチル酸としては、2-エチルヘキサン酸が挙げられる。
また、カルボン酸の金属塩は、アルキル金属のカルボン酸塩であってもよい。例えばカルボン酸錫塩はジアルキル錫カルボン酸塩等であってもよく、好ましくはジオクチル錫カルボン酸塩等である。
カルボン酸の金属塩の具体例としては、ビスマストリオクテート、ジオクチル錫バーサテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル酸錫等が挙げられ、好ましくはビスマストリオクテート、ジオクチル錫バーサテート、より好ましくはビスマストリオクテートである。
以上のような有機酸金属塩としては、水酸基含有カルボン酸アンモニウム塩と組み合わせて、硬化後の発泡を抑制しやすくする観点から、有機酸ビスマス塩が好ましく、カルボン酸のビスマス塩がより好ましく、オクチル酸のビスマス塩がさらに好ましい。
【0030】
ポリオール組成物中の上記樹脂化金属触媒の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、0.2~12質量部が好ましく、0.5~9質量部がより好ましく、1~7質量部が更に好ましく、2~5質量部がより更に好ましい。
【0031】
<ポリオール>
本発明に用いるポリオールとしては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0032】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0033】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、o-フタル酸(フタル酸)、ナフタレンジカルボン酸及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0034】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0035】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールなどの活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、炭素数2~6のアルキレンオキサイド、具体的にはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも一種が挙げられる。
活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、フロログルシノール、クレゾール、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、及び1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン等のポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0036】
本発明に使用するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが好ましい。また、水酸基を2個有するポリオールが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、芳香族環を有するポリエステルポリオールである芳香族ポリエステルポリオールが好ましい。その場合、ポリオールの加重平均芳香族濃度が3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。ポリオールの加重平均芳香族濃度の上限は、特に限定されないが、例えば30質量%、好ましくは25質量%である。
ここで、芳香族濃度とは、ポリオール中の芳香環を構成する炭素原子及び水素原子の合計の質量%により得られたものであり、加重平均芳香族濃度は、前記芳香環の炭素原子及び水素原子の各含有量から加重平均により求めた芳香族濃度である。
芳香族ポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性、特に燃え拡がらない性能を高める観点から、芳香族ポリエステルポリオールは、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことがより好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオール、及び、о-フタル酸とグリコールの縮合物である、о-フタル酸系ポリエステルポリオールから選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
【0037】
ポリオールが芳香族ポリエステルポリオールを含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、100質量部であることがさらに好ましい。
【0038】
ポリオールの加重平均水酸基価は、20~370mgKOH/gが好ましく、50~320mgKOH/gがより好ましく、100~260mgKOH/gがさらに好ましい。ポリオールの水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性等の観点で好ましい。一方、ポリオールの水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタン発泡体の架橋密度が上がることにより強度が高くなり、かつ吹き付けの際の施工性が良好になる。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0039】
ここで、ポリオールの加重平均水酸基価は、ポリオールを構成する個々のポリオールの水酸基価と、該個々のポリオールのポリオール中の重量分率との積の総和により求められる。例えば、ポリオールとして、2種類のポリオール(d1)、ポリオール(d2)を用いる場合、ポリオール(d1)の水酸基価をX、配合量をm、ポリオール(d2)の水酸基価をX、配合量をmとすると、加重平均水酸基価は、以下の式で表される。なお、配合量m及びmは、ポリオール100質量部中の質量部数である。
加重平均水酸基価(mgKOH/g)=X×(m/(m+m))+X×(m/(m+m))
【0040】
<発泡剤>
発泡剤の具体例としては、例えば、水、低沸点の炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素化合物、フッ素化合物、ハイドロクロロフルオロカーボン化合物、ハイドロフルオロカーボン、エーテル化合物、ハイドロフルオロオレフィンなどが挙げられる。さらに、発泡剤としては、これらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
上記低沸点の炭化水素としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。
上記塩素化脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等が挙げられる。
上記フッ素化合物としては、例えば、CHF3、CH22、CH3F等が挙げられる。
上記ハイドロクロロフルオロカーボン化合物としては、例えば、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン、ジクロロモノフルオロエタン(例えば、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン)等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロカーボンとしては、HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等が挙げられる。
上記エーテル化合物としては、例えば、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、HFO-1233zd(E)(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)、HFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン)、HFO-1336mzz(Z)(シス―1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン)、HFO-1224yd(Z)等が挙げられる。
【0041】
上記した中でも、発泡剤としては、ハイドロフルオロオレフィン、水などが好ましく、ハイドロフルオロオレフィン及び水を併用することがより好ましい。
発泡剤の含有量は、発泡体の密度を所望の範囲に調整する観点から、ポリオール100質量部に対して、好ましくは20~85質量部であり、より好ましくは30~70質量部であり、さらに好ましくは35~55質量部である。
【0042】
発泡剤として使用するハイドロフルオロオレフィンの量は、ポリウレタン発泡体の密度を所望の範囲とする観点から、ポリオール100質量部に対して、好ましくは20~70質量部であり、より好ましくは30~60質量部であり、さらに好ましくは33~50質量部である。
【0043】
発泡剤として使用する水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水などを適宜用いることができる。ポリオール100質量部に対する水の量は、好ましくは0.1~15質量部であり、より好ましくは0.2~10質量部であり、さらに好ましくは0.3~5質量部である。水の含有量を上記範囲内とすることで、難燃性及び発泡性がバランス良く良好となる。
【0044】
<難燃剤>
本発明のポリオール組成物は、難燃剤を含有する。難燃剤としては、ポリウレタン発泡体に優れた難燃性を付与しやすくする観点から、リン系化合物を含有することが好ましい。リン系化合物としては、赤燐系難燃剤、リン酸エステル、リン酸塩、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸金属塩などのリン原子を有するものが挙げられる。
【0045】
(赤燐系難燃剤)
本発明のポリオール組成物は、赤燐系難燃剤を含有する。赤燐系難燃剤は、赤燐単体のものを使用してもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物等を被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物等を混合したものなどを使用してもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0046】
(リン酸エステル)
リン酸エステルとしては、例えば、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。リン酸エステルとしては、室温(25℃)、常圧(1気圧)で液体となるものが好ましく使用される。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェート等のトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート等の酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0047】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0048】
リン酸エステル系難燃剤は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタン発泡体の難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
【0049】
(リン酸塩)
リン酸塩の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ポリリン酸塩、イントメッセント系化合物等が挙げられる。なお、ここでいうリン酸塩は、正リン酸塩のみならず、亜リン酸塩、次亜リン酸塩なども含む概念である。ポリリン酸塩も同様である。
モノリン酸塩としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ニアンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩、第一リン酸アルミニウム、第二リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸アルミニウム等のアルミニウム塩等が挙げられる。
ポリリン酸塩としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0050】
イントメッセント系化合物としては、例えば、炭化を促進するリン系成分と、消火及び発泡を促進する窒素系成分を含有するリン酸塩が挙げられる。イントメッセント系化合物は、燃焼が始まり加熱されると材料表面に泡が吹き出し、泡状の断熱膨張層ができることによって材料表面の熱が内部に伝わらないようにすると共に、酸素の供給を遮断することによって熱分解と酸化反応を抑止することで、難燃剤としての役割を果たすことができる。
【0051】
イントメッセント系化合物を構成するリン系成分としては、例えばピロリン酸、三リン酸などのポリリン酸や、オルトリン酸(正リン酸)などのモノリン酸が挙げられる。
【0052】
イントメッセント系化合物を構成する窒素系成分としては、例えば、N,N,N',N'-テトラメチルジアミノメタン、エチレンジアミン、N,N'-ジメチルエチレンジアミン、N,N'-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン及び1,10-ジアミノデカンなどの脂肪族ジアミン、ピペラジン、trans-2,5-ジメチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノエチル)ピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジンなどのピペラジン環を含むアミン化合物、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4-ジアミノ-6-ノニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジヒドロキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-エトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-プロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-イソプロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メルカプト-1,3,5-トリアジン及び2-アミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジンなどのトリアジン環を含むアミン化合物などが挙げられる。
【0053】
(ホスファゼン化合物)
ホスファゼン化合物は、リン原子と窒素原子が交互に結合した有機化合物である。ホスファゼン化合物は、例えば、環状ホスファゼン化合物、鎖状ホスファゼン化合物、架橋基で架橋した架橋ホスファゼン化合物等が挙げられる。ホスファゼン化合物としては、具体的には、下記一般式(3)で示す構成単位を含有するものが挙げられる。
【0054】
【化3】
上記一般式(3)中、Xは、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12の置換又は無置換のアリール基、炭素数6~12の置換又は無置換のアリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。
一般式(3)において、アリール基における置換基としては、アルキル基、アミノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
Xはそれぞれ独立にフェニル基、置換フェニル基、フェニルオキシ基、又は置換フェニル貴のいずれかであることが好ましく、より好ましくはフェニル基又はフェニルオキシ基のいずれかである。
【0055】
(ホスフィン酸金属塩)
ホスフィン酸金属塩は、有機ホスフィン酸の金属塩である。ホスフィン酸金属塩の具体例としては、例えば、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどが挙げられる。
【0056】
本発明のポリオール組成物におけるリン系化合物の含有量は、ポリオール100質量部に対して、30~200質量部が好ましく、45~150質量部がより好ましく、60~120質量部がさらに好ましい。リン系化合物の含有量が上記下限値以上であると、ポリウレタン発泡体に良好な難燃性を付与することができる。また、リン系化合物の含有量が上記上限値以下であると、リン系化合物の含有量に見合った難燃性を付与することができる。
リン系化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明のポリオール組成物に難燃剤として含有するリン系化合物としては、上記したものの中では、赤燐系難燃剤及びリン酸エステルから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0058】
本発明のポリオール組成物における赤燐系難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、10~70質量部が好ましく、15~50質量部がより好ましく、20~45質量部がさらに好ましい。赤燐系難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、ポリウレタン発泡体に良好な難燃性を付与することができる。また、赤燐系難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、赤燐系難燃剤の含有量に見合った難燃性を付与することができる。
【0059】
ポリオール組成物中のリン酸エステル系難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは20~150質量部であり、より好ましくは30~120質量部であり、さらに好ましくは40~100質量部である。リン酸エステル系難燃剤の含有量がこれら下限値以上であると、ポリオール組成物の粘度を高くしすぎることなくポリウレタン発泡体に難燃性を付与しやすくなる。また、リン酸エステル系難燃剤の含有量がこれら上限値以下であると、発泡が阻害されないなどにより、ポリウレタン発泡体を容易に製造しやすくなる。
【0060】
難燃剤としては、上記したリン系化合物以外の難燃剤を含有してもよい。リン系化合物以外の難燃剤としては、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。
これらの難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
<整泡剤>
本発明のポリオール組成物は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤としては、分子内に極性部分と非極性部分を有し界面活性効果を備える化合物を好適に使用することができる。
整泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。また、シリコーン整泡剤としては、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの重合体であるポリオキシアルキレングリコールとポリジメチルシロキサンとのグラフト共重合体でもよい。また、市販品も使用でき、具体的にはSH-193(東レダウコーニング社製)、S-824-02(日本ユニカー社)、SZ-1704(日本ユニカー社)、F501(信越化学工業社)、SF-2937F(ダウ東レ社製)等の整泡剤を使用することができる。
整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して0.1~15質量部であることが好ましく、0.5~12質量部であることがより好ましく、1~8質量部であることがさらに好ましい。
【0062】
<その他成分>
発泡性ウレタン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、染料、充填剤等から選択される1種以上を含むことができる。
【0063】
<製造方法>
本発明のポリオール組成物の製造方法に特に制限はなく、例えば、各成分を室温程度でホモディスパー等の混合機を用いて30秒~20分程度撹拌することにより製造することができる。
【0064】
[ポリウレタン樹脂組成物、ポリウレタン発泡体]
本発明の発泡性ウレタン樹脂組成物は、上記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを含む。より具体的には、発泡性ウレタン樹脂組成物は、少なくとも、上記ポリオール組成物とポリイソシアネートを混合することにより得られる。
【0065】
<ポリイソシアネート>
本発明の発泡性ウレタン樹脂組成物に含まれるポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系などの各種ポリイソシアネート化合物を用いることができる。好ましくは、取扱の容易さ、反応の速さ、得られるポリウレタン発泡体の物理特性が優れていること、および低コストであることなどから、液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。液状MDIとしては、ポリメリックMDIが挙げられる。液状MDIの具体的な市販品としては、「44V-10」,「44V-20」(住化コベストロウレタン株式会社製)、「ミリオネートMR-200」(日本ポリウレタン工業株式会社製)、「PM200」(万華化学ジャパン株式会社製)などが挙げられる。また、ウレトンイミン含有MDI(例えば、市販品として「ミリオネートMTL」:日本ポリウレタン工業製)などでもよい。また、ポリイソシアネート化合物内のイソシアネート活性基の一部を水酸基含有化合物と反応させ、予めポリオールとの親和性を高めた処置を施したものを使用してもよい。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネートを併用してもよく、併用するポリイソシアネートとしては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネートは限定なく使用可能である。
【0066】
本発明の発泡性ウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、ポリウレタン発泡体を適切に形成させたり、良好な難燃性を付与したりする観点から、200以上であることが好ましく、230以上であることがより好ましく、250以上がさらに好ましく、260以上がよりさら好ましい。
また、発泡性ウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、好ましくは650以下、より好ましくは550以下であり、さらに好ましくは520以下であり、よりさらに好ましくは500以下である。イソシアネートインデックスがこれら上限値以下であると、製造コストに十分見合った難燃性が得られる。
イソシアネートインデックス(INDEX)は、以下の方法にて算出される。
【0067】
INDEX=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、
ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用部数×NCO含有率(%)×100/NCO分子量
ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用部数÷KOHの分子量、OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)、
水の当量数=水の使用部数×水のOH基の数/水の分子量
である。なお上記式において、使用部数の単位は重量(g)であり、NCO基の分子量は42、NCO含有率はポリイソシアネート化合物中のNCO基の割合を質量%で表したものであり、上記式の単位換算の都合上KOHの分子量は56100とし、水の分子量は18、水のOH基の数は2とする。
【0068】
[ポリウレタン発泡体の製造方法]
ポリウレタン発泡体の製造方法に特に制限はないが、ポリオール組成物を、発泡機などにおいて、ポリイソシアネートと混合させ、得られた混合液(発泡性ウレタン樹脂組成物)を反応かつ発泡させることで、ポリウレタン発泡体を製造するとよい。ポリウレタン発泡体は、スプレー発泡することにより形成されることが好ましく、具体的には、スプレーガンを有するスプレー装置等を用いるとよい。
ポリオール組成物は、発泡機に送液され、別の容器などから送液されたポリイソシアネートと発泡機内部にて衝突混合させるとよい。そして、その混合液(発泡性ウレタン樹脂組成物)は、スプレーガンなどの吐出口から吐出させ、吐出された発泡性ウレタン樹脂組成物によりポリウレタン発泡体を成形するとよい。
【0069】
[用途]
本発明の発泡性ウレタン樹脂組成物、及び該組成物から形成されるポリウレタン発泡体の用途は、特に限定されないが、建築物、家具、自動車、電車、船等の構造物の空洞に充填する用途に用いたり、該構造物に対して吹き付ける用途に用いたりすることができる。中でも、構造物に対して吹き付ける用途、即ち、吹き付け用途に用いられることが好ましく、建築物の施工現場における吹き付け用途に用いられることがより好ましい。
吹き付けは、吹き付け装置(例えばGRACO社製:A-25)及びスプレーガン(例えばガスマー社製:Dガン)を利用して実施することができる。吹き付けは、別容器に入ったポリオール組成物とポリイソシアネートを吹き付け装置内で温度調整し、スプレーガンの先端で両者を衝突混合させ、混合液をエア圧によりミスト化することで実施できる。吹き付け装置及びスプレーガンは公知であり、市販品を使用することができる。また原液温度設定・圧力等は一般的なポリウレタン発泡体の吹き付け条件が適応できる。
【実施例0070】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0071】
[使用成分]
各実施例及び比較例で使用した成分は、以下の通りである。
【0072】
<ポリイソシアネート>
・4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)(万華化学ジャパン社製、製品名:PM200)
【0073】
<ポリオール>
・芳香族ポリエステルポリオール:p-フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、芳香族濃度8%、水酸基価=200mgKOH/g)
【0074】
<難燃剤>
・リン酸エステル系難燃剤:トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
・赤燐系難燃剤(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140)
【0075】
<発泡剤>
・水
・HFO-1233zd<ハイドロフルオロオレフィン>(ハネウェル社製、製品名:ソルスティスLBA)
【0076】
<触媒>
・三量化触媒:水酸基を有しない第四級アンモニウム塩(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)TRX)
・三量化触媒:オクチル酸カリウム(エボニック社製、製品名:DABCO(登録商標)K-15)
・三量化触媒:水酸基を有する第四級アンモニウム塩(花王社製、製品名:カオーライザーNo.410)
・三量化触媒:水酸基を有する第四級アンモニウム塩(花王社製、製品名:カオーライザーNo.420)
・三量化触媒:水酸基を有する第四級アンモニウム塩(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)TR20)
・樹脂化金属触媒:ビスマストリオクテート(日東化成社製、製品名:ネオスタン U-600)
・樹脂化アミン触媒:1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-DM70)
【0077】
[実施例1~12、比較例1~3]
表1~3に記載の配合にしたがって各成分を混合して、ポリオール組成物を作製した。作製したポリオール組成物について、以下の通り評価を行った。なお、特に記載のない限り、ポリウレタン発泡体の作製は環境温度20℃で実施した。
【0078】
[界面硬化]
ポリオール組成物及びポリイソシアネートの液温を38℃に調整した後、気温20℃の条件下で、300×300mm×9mmの石膏ボードに対して吹き付けてポリウレタン発泡体を得た。製造条件の詳細は、以下の通りであった。吹き付け完了から3分経過後、ポリウレタン発泡体を石膏ボードから剥がし、ポリウレタン発泡体の石膏ボードとの界面部分を観察し、ポリウレタン発泡体の界面が硬化しているか否かを評価した。評価基準は以下の通りである。
<製造条件>
・吹付機:グラコ社製吹付装置H-25
・設定(ヒーター及び圧力設定)
イソシアネートヒーター:38℃
プレミクスヒーター(ポリオール組成物加温用):38℃
ホースヒーター(ポリイソシアネート及びポリオール組成物の混合前加温用):38℃
圧力:ミストが円形になるよう適宜調整
・基材温度(吹付対象面の温度):20℃±1℃
(評価基準)
〇・・施工面との界面において、ポリウレタン発泡体が完全に硬化している。
×・・施工面との界面において、ポリウレタン発泡体の少なくとも一部が、完全には硬化していない。
【0079】
[フォーム硬化時間、硬化後のフォーム膨張時間、フォーム膨張完了時間]
以下に示す手順により、フォーム硬化時間、硬化後のフォーム膨張時間、及びフォーム膨張完了時間を測定した。
(手順)
所定のカップ(テラオカ社製デスカップ500ml)に、液温15℃に調整したポリオール組成物と、ポリオール組成物と同重量のTMCPPを投入して均一になるまで撹拌した後、そこにポリオール組成物に対して同体積のイソシアネートを投入して撹拌混合し、フォームを形成した。発泡形成したフォームを触った際に未硬化のフォームが手に付着しなくなったとき、フォームが硬化したとし、フォームが硬化するまでの時間(フォーム硬化時間)を測定した。
フォームが硬化した後、フォーム膨張速度が1mm/5秒(高さ)を下回ったときフォーム膨張が終了したとし、フォームが硬化してから膨張が終了するまでの時間(硬化後のフォーム膨張時間)を測定した。
【0080】
以上の測定方法により得られたフォーム硬化時間、及び硬化後のフォーム膨張時間は、表1~3に示す通りである。また、これらの時間の合計であるフォーム膨張完了時間も、表1~3に示す通りである。
【0081】
なお、上記測定に際し、カップへのポリオール組成物の投入量は、表1~3に記載の質量部の1/4の量をグラムで投入した。例えば、実施例1における、ポリオール組成物の投入量は235.8/4gであり、追加のTMCPPの投入量も235.8/4gであった。また、イソシアネートの投入量は225/4gであった。
また、硬化後のフォーム膨張時間の測定値に基づき、硬化後の膨張性に関する判定をした。判定基準は以下の通りである。
(判定基準)
〇・・~20秒
×・・21秒~
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
以上の実施例から明らかな通り、本発明の要件を満たすポリオール組成物から形成したポリウレタン発泡体は、該発泡体の形成後において、膨張時間が短時間にとどまった。また、該発泡体と石膏ボードとの界面における硬化が十分であり、該発泡体の形成後には、石膏ボードからの発泡体の剥離が抑制されていた。
これに対し、比較例で作製したポリオール組成物から形成したポリウレタン発泡体は、該発泡体の形成後においても、一定時間の間膨張が継続した。また、比較例1で作製した発泡性ウレタン樹脂組成物は、十分硬化できず、ポリウレタン発泡体を形成することができなかった。