(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146594
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電圧推定型充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20241004BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059595
(22)【出願日】2023-03-31
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】間形 哲也
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 弘
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503EA09
5G503FA06
5G503GB08
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】対象とする充電式電池の充電電圧が変動する場合であっても、充電電圧を一次側回路2a側の計測により精密に推定し、推定した充電電圧を用いて充電式電池をワイヤレス充電できる電圧推定型充電システムを提供する。
【解決手段】受電側コイルL
2及びこの受電側コイルL
2に流れる電磁エネルギで充電される充電式電池6を含む二次側回路3aと、受電側コイルL
2に対向した送電側コイルL
1及びこの送電側コイルL
1の端子間電圧を検出する検出器28を有し非正弦波の過渡応答振動を直流電圧をパルス入力して生成しこの過渡応答振動による二次側回路3aとの二重共振で受電側コイルL
2に無接触で磁気エネルギを伝送する一次側回路2aと、検出器28の出力により充電電圧を推定して直流電圧の値を帰還制御で変更する電圧推定調整手段9aを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電側コイル、及び該受電側コイルに流れる電磁エネルギで充電される充電式電池を含む二次側回路と、
直流電圧をパルス入力して非正弦波の過渡応答振動を生成し、該過渡応答振動による前記二次側回路との二重共振で、前記受電側コイルに対向した送電側コイルから前記受電側コイルに無接触で磁気エネルギを伝送する一次側回路と、
前記二次側回路から前記一次側回路への還流成分による振動の包絡線極大値を、前記一次側回路側で獲得し、前記包絡線極大値から前記充電式電池の充電電圧を推定し、前記充電電圧に適合した電圧に前記直流電圧を調整する電圧推定調整手段
を備え、前記充電式電池を無接触で充電することを特徴とする電圧推定型充電システム。
【請求項2】
前記電圧推定調整手段は、事前に取得された前記包絡線極大値と前記充電電圧の関係を用いて前記充電電圧を推定することを特徴とする請求項1に記載の電圧推定型充電システム。
【請求項3】
前記一次側回路は、前記直流電圧を多段の階段状に増大して出力する可変直流電源を備えることを特徴とする請求項1に記載の電圧推定型充電システム。
【請求項4】
前記電圧推定調整手段は、前記多段の階段状に増大する前記直流電圧が前記一次側回路にパルス入力されたことに起因する前記包絡線極大値の変化が呈する変曲点により、前記充電電圧を推定することを特徴とする請求項3に記載の電圧推定型充電システム。
【請求項5】
前記一次側回路は、
前記送電側コイルの端子間電圧を検出する検出器と、
前記可変直流電源の高電位側端子に一方の端子を接続し、前記一次側回路の外部回路からの制御信号で動作する励起素子と、
前記励起素子の他方の端子に一方の端子が接続され、前記可変直流電源の低電位側端子の他方の端子を接続した送電側コンデンサと、
を更に有し、前記検出器は、前記高電位端子側接続ノードと前記低電位端子側接続ノードの間に接続され、前記包絡線極大値を前記検出器の出力より獲得することを特徴とする請求項4に記載の電圧推定型充電システム。
【請求項6】
前記二次側回路は、
前記受電側コイルに並列接続され、前記受電側コイルに蓄積された磁気エネルギを静電エネルギとして蓄積する受電側コンデンサを更に有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電圧推定型充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電式電池を無接触充電する電圧推定型充電システムに係り、特に一次側回路における他励式過渡応答振動と二次側回路における過渡応答振動の二重共振により充電式電池の充電電圧を推定して、一次側回路から二次側回路へ電磁エネルギを伝送して、二次側回路の充電式電池を充電する電圧推定型充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、一次側回路における過渡応答振動と二次側回路における過渡応答振動の間の共鳴(二重共振)により効率の良いウェイブレット状の電磁波の伝送が可能であることを見いだし、非交流理論による無接触伝送装置を提案した(特許文献1参照。)。「非交流理論」とは、通常の交流理論が対象とする振幅一定の正弦波交流信号を取り扱わず、非正弦波の過渡応答によるウェイブレット状の振動を対象とする理論である。特許文献1に記載の一次側回路では、外部の制御回路によって一次側駆動スイッチとなる励起素子のオン/オフが他励制御されて、RCL並列回路の回路トポロジとRCL直列回路の回路トポロジが交互に切り替えられる動作をしている。更に、本発明者らは、オフ期間を長くし、オフ時間中の自由減衰振動を許容するモードにより、二重共振の伝送効率を高める技術も提案した(特許文献2参照。)。しかしながら、特許文献1及び2に記載された発明では、二次側回路側において、充電式電池の充電電圧を別途計測して、満充電や電圧不足などを監視する必要があった。更に、その結果を用いて電源電圧(直流電圧)を制御すると同時に、伝送を制御し、最も効率よく充電しつつ、充電式電池の充電電圧が適切な電圧になるように充電する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7116288号明細書
【特許文献2】特開2021-182787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題点を鑑み、本発明では、二次側回路に新たな計測器や制御回路やシステムを追加することなく、精度よく充電式電池の充電電圧を推定が可能であり、かつその推定値を用いて電源電圧(直流電圧)を制御すると同時に伝送を制御し、最も効率良く充電すると同時に、充電式電池の充電電圧が適切な電圧になるように充電可能な電圧推定型充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、(a)受電側コイル及びこの受電側コイルに流れる電磁エネルギで充電される充電式電池を含む二次側回路と、(b)直流電圧をパルス入力して非正弦波の過渡応答振動を生成し、この過渡応答振動による二次側回路との二重共振で、受電側コイルに対向した送電側コイルから受電側コイルに無接触で磁気エネルギを伝送する一次側回路と、(c)二次側回路から一次側回路へ還流した成分による振動の包絡線の極大値を一次側回路で獲得し、包絡線の極大値から充電式電池の充電電圧を推定が可能であり、推定した充電電圧に適合した電圧に直流電圧を調整する電圧推定調整手段を備えると同時に、その推定値を用いて伝送を制御し、最も効率よく充電を行うと同時に、充電式電池の充電電圧が適切な電圧になるように充電する手段を備える電圧推定型充電システムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、二次側回路に新たな計測器や制御回路やシステムを追加することなく、精度よく充電式電池の充電電圧を推定可能で、かつその推定値を用いて伝送を制御し、最も効率よく充電を行うと同時に、充電式電池の充電電圧が適切な電圧になるように充電できる電圧推定型充電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電圧推定型充電システムの一例の概略構造を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る電圧推定型充電システムの負荷として用いられる充電式電池を説明する等価回路である。
【
図3】第1実施形態に係る電圧推定型充電システムの一例を構成する一次側回路と二次側回路の概略を示す回路図である。
【
図4】
図3に示した一次側充放電電圧をモニタして可変直流電源に帰還制御するための電圧推定調整手段をコンピュータ・ソフトウェア処理で実現する場合の算術論理回路の内部の論理的な構造を示すブロック図である。
【
図5A】
図4に示した算術論理回路を用いて、一次側充放電電圧をモニタして可変直流電源に帰還制御する場合の、コンピュータ・ソフトウェア処理のアルゴリズムを説明するフローチャートの一例である。
【
図5B】
図5AのステップS33の内容を具体的に説明するフローチャートの一例である。
【
図6】一次側充放電電圧の振動の時系列データと、時系列データの包絡線の振幅の変化を説明する模式図である。
【
図7A】可変直流電源が出力する多段の階段状の直流電圧の変化を説明する模式図である。
【
図7B】増大する3つのレベルの多段の階段状直流電圧を可変直流電源が出力したことに起因する、二次側回路からの還流成分による一次側充放電電圧の包絡線の極大値の変化を説明する模式図である。
【
図8】二次側回路からの還流成分による一次側充放電電圧の振動の包絡線の極大値(還流最大値)の直流電圧依存性を示す曲線が変曲点を有することを説明する模式図である。
【
図9】二次側回路との結合がない場合において、他励動作する一次側回路の励起素子が直流電圧をパルス入力した場合の過渡応答を説明する回路図である。
【
図10】
図9に示した励起素子が遮断状態になり、一次側回路のRCL並列回路がRCL直列回路に強制的に切り替えられる過渡応答を説明する回路図である。
【
図11】
図9及び
図10に示した回路の切り替えにより、非正弦波の振動が生成されることを示す波形図である。
【
図12】一次側回路と二次側回路の間での二重共振によりウェイブレット状の電磁エネルギが互いに送受されることにより、一次側充放電電圧の包絡線と二次側充放電電圧の包絡線が異なる位相で脈動する関係になることを示す波形図である。
【
図13】電気自動車(EV)の電池の充電において、コイル間の面間隔(伝送間隔)を調整する間隔制御機構の他の例を模式的に説明する鳥瞰図である。
【
図14】第1実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムの一例を構成する一次側回路と二次側回路の概略を示す回路図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る電圧推定型充電システムの一例の概略構造を示す模式図である。
【
図16】第2実施形態に係る電圧推定型充電システムの一例を構成する一次側回路と二次側回路の概略を示す回路図である。
【
図17】第2実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムの一例を構成する一次側回路と二次側回路の概略を示す回路図である。
【
図18】本発明の第3実施形態に係る電圧推定型充電システムの一例の概略構造を示す模式図である。
【
図19】一次側回路と二次側回路に着目した、第3実施形態に係る電圧推定型充電システムの概略の一例を示す回路図である。
【
図20】
図19に示した一次側充放電電圧をモニタして充電式電池の充電電圧を推定し、可変直流電源を調整する電圧推定調整手段をコンピュータ・ソフトウェア処理で実現する場合の算術論理回路の内部の論理的な構造を示すブロック図である。
【
図21A】二重共振により一次側回路と二次側回路の間で電磁エネルギが互いに送受されることにより、一次側充放電電圧の包絡線と二次側充放電電圧の包絡線が異なる位相で脈動する関係になることを示す波形図である。
【
図21B】
図21Aにおいて破線で囲んだ領域における二次側充放電電圧と一次側充放電電圧の振動波形の一部を拡大して示す図である。
【
図22】充電式電池の端子間電圧と一次側充放電電圧の還流最大値と関係を、送電側コイルと受電側コイルの間の等価結合係数をパラメータとして示す図である。
【
図23】
図20に示した算術論理回路を用いて、一次側充放電電圧をモニタして充電式電池の充電電圧を推定し、可変直流電源を制御する場合のアルゴリズムを説明するフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の第1~第3実施形態並びにそれらの変形例を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
以下に示す第1~第3実施形態並びにそれらの変形例は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。更に、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
図13に示したような、渦巻きの螺旋の向きも同様に説明の便宜上における単なる選択に過ぎず、実際の設計事情に応じて右巻きを左巻きに、左巻きを右巻きに選択することも可能である。
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る電圧推定型充電システムは、
図1に示すように、受電回路27aを有する車輌31aに無接触でウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを給電装置29aから二重共振で給電し、受電回路27aの充電式電池6の充電電圧を一次側回路2a側の計測のみにより精密に推定し、推定結果を用いて無接触充電する電圧推定型充電システムである。「二重共振」は、背景技術の説明で述べたとおり、一次側回路における過渡応答振動と二次側回路における過渡応答振動の間の共鳴による電磁エネルギの送受を意味するので、二重共振により、給電とその逆方向の還流の双方向を伴う。「ウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギ」とは、定常的な正弦波の振動ではなく、時間的に局在した振動特性を示す電磁エネルギのパケットを意味する。
【0011】
充電式電池6は、例えば
図2に示すような浮遊抵抗r
s0,r
s1,r
s2及び内部容量C
s1,C
s2の直並列回路に、開回路電圧(OCV)の起電力を発生する電源が直列接続された等価回路でモデル的に表現される。種々の等価回路が提案されているが、
図2に示す浮遊抵抗r
s0,r
s1,r
s2及び内部容量C
s1,C
s2の直並列回路の表示は、充放電による充電式電池6の金属と溶液界面で起こる電荷の移動に起因した応答特性と、溶液内での物質の拡散によって生じる応答特性に寄与する等価回路成分を表現している。例えば、充電式電池6がリチウム(Li)イオン電池であれば、リチウムイオン電池の内部には集電体や電界液の抵抗、電池内の界面にできる電気的2重層の内部容量や内部抵抗が含まれる。充電式電池6は、給電装置29aから受電盤12を介して二重共振によって供給されるウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを蓄える。充電率(SOC)の変化に依存して充電式電池6の端子間電圧V
CS(t)は変動する。OCVとSOCの関係は非線形であり、端子間電圧V
CS(t)は、時間tに対して非線形の変化をする。
【0012】
第1実施形態に係る電圧推定型充電システムは、受電回路27aにウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを無接触で給電して受電回路27aの充電式電池6を充電する給電装置29aと、給電装置29aに接続され、給電装置29aに命令を送る1次側操作部33を有している。1次側操作部33には種々の構造や機構が採用可能で、例えば1次側操作部33が撮像装置を備えるようにしてもよい。撮像装置を備える態様においては、撮像装置が撮像した車輌31aの画像から、AI機能により車輌31aの車高(最低地上高)が自動的に紐付けられるような機構を設けることができる。
図1では、給電装置29a側の送電側コイルL
1と車輌31a側の受電側コイルL
2とが対向し、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2へ無接触でウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギが受電側コイルL
2に無接触で伝送されることを示す模式図を例示している。
【0013】
給電装置29aは、
図1に示すように送電側コイルL
1を円盤状の誘電体に収納した給電盤11と、給電盤11を搭載し、給電盤11と受電盤12の間隔を制御する間隔制御機構32と、パルス入力される直流電圧E
v(t
PS
j)並びに送電側コイルL
1に流れる給電電流及び間隔制御機構32を制御する駆動制御回路34a等を含んでいる。なお周知のように「単位パルス入力」は過渡現象理論で用いられる用語であり、波高値1の矩形波パルスがパルス幅1の期間入力されることを意味する。そして、本明細書では「パルス入力」の語を、直流電圧E
v(t
PS
j)が、波高値E
v(t
PS
j)等の矩形波のパルスとして他励制御により成形され、所定のパルス幅で入力されるという意味で用いている。よって、「パルス入力」の語は、本発明の「過渡応答振動」が過渡現象理論における概念であることを表現している。給電盤11は、駆動制御回路34aによって伝送電流が制御される。駆動制御回路34aと受電回路27aとは、送電側コイルL
1を流れる電流の過渡応答振動と受電側コイルL
2を流れる電流の過渡応答振動の時定数とタイミングを調整して、ウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギの振動が共鳴する条件で、互いに電磁エネルギ送受し、二重共振による電力伝送を行う。
【0014】
図1に示す態様では、間隔制御機構32は上下移動機構であり、例えば油圧の上下機構、電磁石による上下機構、ボール螺旋をステップモータで回転させるような移動機構等、周知の種々の機構を採用することが可能である。一方、
図13に示す態様では、間隔制御機構32は水平移動機構になるが、同様に油圧の水平移動機構、電磁石による水平移動機構、ボール螺旋水平移動機構等種々の機構を採用することが可能である。
【0015】
図1は例示であり、送電側コイルL
1を収納する給電盤11を省略して、送電側コイルL
1を裸の状態で使用することも可能である。
図1では受電側コイルL
2も、円盤状の誘電体からなる受電盤12に収納された態様として例示されているが、受電側コイルL
2を収納する受電盤12を省略して、受電側コイルL
2を裸の状態で使用してもよい。
図3に第1実施形態に係る電圧推定型充電システムの一次側回路2a及び二次側回路3aの一例を示す。
図3に例示した回路構成においては、一次側回路2aを構成する励起素子Q
1の動作が、一次側回路2aの外部回路である一次側励起回路340aから出力される制御信号によって他励制御される。
図3から分かるように、一次側回路2aは、駆動制御回路34aの一部の電子回路に送電側コイルL
1を加えた構成である。
図3では、送電側コイルL
1と、送電側コイルL
1の寄生抵抗R
L1とが直列接続された等価回路が便宜上表示されているが、物理的な構造として、送電側コイルL
1に寄生抵抗R
L1が外部接続された構造を示すものではない。
【0016】
他励制御により励起素子Q
1が所定のタイミングで一定時間オン状態となり、その後ターンオフすることにより、可変直流電源5から出力された直流電圧E
v(t
PS
j)が矩形波でパルス入力されることになる。直流電圧E
v(t
PS
j)のパルス入力は、励起素子Q
1のターンオフ直後の過渡応答特性として減衰振動を発生させる。即ち、励起素子Q
1が所定のタイミングでオン/オフ動作することに伴い、RCL並列回路の回路トポロジとRCL直列回路の回路トポロジが交互に切り替えられて周期的な振動波形が生じる。一次側回路2aと二次側回路3aの間で二重共振によるウェイブレット状の電磁エネルギの送受が生じると、一次側回路2aにおいて、
図6に例示したような包絡線V
EC1(t
PS
j)が脈動する一次側充放電電圧V
C1の振動波形が生成される。なお、特許文献1に記載された発明のように、すべての振動ピークに合わせて励起素子Q
1を毎回オン/オフ状態にすると、
図11に示すような一定振幅の非正弦波の振動になる。しかし、
図6では、特許文献2に記載された発明のように、励起素子Q
1を毎回オン状態にせず、励起素子Q
1のオフ期間を長くしている。励起素子Q
1のオフ期間を長くしてオフ期間の自由振動を許容すると、後述する式(13b)で表現される非正弦波の減衰振動が可能になり
図6の左側のような減衰振動になる。自由振動であっても式(13b)が示すように単一正弦波で表記される振動ではない。
図6の右側は二次側回路3aからの還流成分が寄与している波形である。
図6では本来式(13b)で表現されるべき非正弦波の振動波形を便宜上正弦波で表現している。
【0017】
ここで、「一次側充放電電圧V
C1」は、送電側コンデンサC1の端子間電圧である。
図6では時刻t
1から時刻t
7にかけて包絡線V
EC1(t
PS
j)が減少し、時刻t
8で包絡線V
EC1(t
PS
j)が極小値となり、その後、二次側回路3aからの還流成分による振動が加わり時刻t
9から増大を開始し、還流成分による振動の包絡線V
EC1(t
PS
j)が時刻t
14で極大値(以下において「包絡線の極大値」という。)V
EC1maxjになる変化を示している。
図12には破線で二次側充放電電圧V
C2の振動波形を示している。
図6の場合と同様、
図12も、特許文献2に記載された発明が提供する励起素子Q
1のオフ期間を長くし、オフ期間の自由振動を許容したモードの波形である。特許文献1に記載された発明のように、励起素子Q
1を毎回オン状態にすれば、
図11に示すような非正弦波の一定振幅の波形となる。「二次側充放電電圧V
C2」は、二次側回路3aの受電側コンデンサC2の端子間電圧である。
図12の二次側充放電電圧V
C2の振動波形の変化から分かるように、時刻t
1から時刻t
8にかけて一次側回路2aの電磁エネルギが二次側回路3aに伝送されて、包絡線V
EC1(t
PS
j)が減少している。そして、時刻t
8から時刻t
14にかけて二次側回路3aの電磁エネルギが一次側回路2aに還流されるので、包絡線V
EC1(t
PS
j)が増大して包絡線極大値になる。
【0018】
二次側回路3aは、
図3に示すように、送電側コイルL
1に離間して対向し送電側コイルL
1から無接触で磁気エネルギを受け取る受電側コイルL
2、受電側コイルL
2に並列接続され受電側コイルL
2に蓄積された磁気エネルギを静電エネルギとして蓄積する受電側コンデンサC
2を有する。二次側回路3aは、受電回路27aに受電側コイルL
2を加えた構成である。
図3では、送電側コイルL
2と、送電側コイルL
2の寄生抵抗R
L2とが直列接続された等価回路表示になっているが、物理的な構造として、送電側コイルL
2に寄生抵抗R
L2が外部接続された構造を示すものではない。二次側回路3aは、
図3に示すように、負荷側ダイオードD2と充電式電池6との直列接続回路が、受電側コンデンサC
2及び受電側コイルL
2に対し、それぞれ並列接続された構成になっている。充電式電池6のインピーダンスが∞と仮定できる場合には、二次側回路3aはRCL直列回路として近似出来るが、実際には複雑な回路である。
【0019】
負荷側ダイオードD2は、アノードが二次側回路3a側、カソードが充電式電池6側を向くように接続され、充電電流I
Cの流れる方向を一方向に限定している。
図3では、負荷側ダイオードD2のオン抵抗を含む回路配線の浮遊抵抗がr
2であるとして示されているが、受電側コンデンサC
2の寄生抵抗の表示は無視している。したがって、二次側回路3aは、受電側コイルL
2、受電側コンデンサC
2、浮遊抵抗r
2及び寄生抵抗R
L2を備えたRCL共振回路である。そして、それぞれが共振回路である一次側回路2aと二次側回路3aの過渡応答振動が共振(共鳴)する二重共振によって、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2にウェイブレット状の電磁エネルギがワイヤレス給電される。
【0020】
充電式電池6は、充電式電池6の端子間電圧(以下において「充電電圧」という。)V
CS(t)よりも大きな電圧が充電式電池6の端子間に印加されなくては充電できない。したがって、受電側コンデンサC2の端子間電圧として定義される二次側充放電電圧V
C2は、充電式電池6の充電電圧V
CS(t)より少し大きい必要がある。浮遊抵抗r
2の電圧降下を無視すれば、定常状態においてはV
C2=V
CS(t)になる。充電式電池6の充電時には、
図2に示したような充電式電池6の浮遊抵抗r
s0,r
s1,r
s2及び内部容量C
s1,C
s2によって、端子間電圧V
CS(t)が微小な電圧でリンギングしながら充電式電池6が充電される。しかし、充電電圧V
CS(t)よりも二次側充放電電圧V
C2が十分に大きな場合は、受電側コンデンサC2から過剰な電磁エネルギが受電側コイルL
2に還流され、更に受電側コイルL
2から送電側コイルL
1に還流されることになり、充電式電池6の充電効率が低下する。
【0021】
図1に示す給電盤11の上面は受電盤12の下面に平行に配置されるように、給電盤11は地面上に設置もしくは埋設される。給電作業前の状態においては、給電盤11の上面が地上の平坦面30に平行に配置されているので、車輌31aが一様な平坦面30上を走行して侵入可能である。給電装置29aは、例えば駐車スペースに設けられ、車輌31aの駐車中に、受電盤12に対向することにより車輌31aに搭載された受電盤12に対してウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを二重共振によって給電する。
【0022】
図1に示す車輌31aは、例えば、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグイン電気自動車(PEV)または電気自動車(EV)等であり、充電式電池6に蓄えられた電磁エネルギで走行する。1次側操作部33は、車輌31aの外部からの操作により、給電の開始を示す給電開始信号または給電の停止を示す給電停止信号を給電装置29aに出力する。1次側操作部33がAI機能により車輌31aの車高(最低地上高)を決定した場合は、車輌31aの車高のデータも給電装置29aの駆動制御回路34aに送信する。
【0023】
図1に示す駆動制御回路34aは、給電盤11を制御して、一次側回路2aと二次側回路3aのそれぞれの非正弦波の過渡応答振動が共振(共鳴)する二重共振に依拠したウェイブレット状の電磁エネルギの移動に関する様々な駆動制御を行う。このため、駆動制御回路34aは、
図3に示すような電圧推定調整手段9aを備える。電圧推定調整手段9aは、可変直流電源5の出力、即ちパルス入力される直流電圧E
v(t
PS
j)の波高値E
v(t
PS
j)を、振動特性から推定される充電式電池6のSOCに対応するように帰還制御する。電圧推定調整手段9aは
図3に示すようにハードウェア資源(実体電子回路)である最大電圧検出回路341a、変曲点検出回路342a及び電圧設定制御回路343aで構成してもよい。或いは、
図4に示すように、算術論理回路(ALU)339によるコンピュータ・ソフトウェア処理で可変直流電源5を帰還制御して、最適な直流電圧E
v(t
PS
j)を出力させるようにしてもよい。
【0024】
電圧推定調整手段9aの機能を、コンピュータ・ソフトウェア処理で実施する場合は、駆動制御回路34aは、
図4に示すように、伝送データ記憶装置348aと、プログラム記憶装置348bと、出力装置348cのそれぞれにALU339が接続された構成が可能である。
図4に論理的な内部構造をモデル化して示すように、ALU339は、演算シークエンス制御回路344と、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345bと、一次側電圧検出制御回路346と、最大電圧検出回路341aと、変曲点検出回路342aと、電圧設定制御回路343aと、可変直流電源制御回路347と、Aバス349aと、Bバス349bとから主に構成された構成が例示可能である。
図4の例示構造においては、演算シークエンス制御回路344は、ALU339の内部における演算処理のシークエンスを制御する。Aバス349a及びBバス349bは、演算シークエンス制御回路344、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、最大電圧検出回路341a、変曲点検出回路342a、電圧設定制御回路343a、及び可変直流電源制御回路347のそれぞれに情報及び命令を伝達するためのものである。
【0025】
演算シークエンス制御回路344は、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、最大電圧検出回路341a、変曲点検出回路342a、電圧設定制御回路343a及び可変直流電源制御回路347のそれぞれの処理手順をコンピュータ・ソフトウェア・プログラム(電圧推定型充電制御プログラム)に従って、制御する。
図4では、Aバス349aに、一次側励起回路340a及び伝送間隔制御回路340cが接続されている構成が例示されている。一方、Bバス349bには、伝送データ記憶装置348a、プログラム記憶装置348b及び出力装置348cが接続されている構成が例示されているが、
図4に示す構成に限定されるものではない。プログラム記憶装置348bには、
図5Aに例示した一連の電圧推定型充電方法の処理の流れに等価なアルゴリズムを実行する電圧推定型充電制御プログラムが格納される。
【0026】
図5Aに示すようなアルゴリズムによれば、ALU339は、
図1に示した給電盤11を制御して、一次側回路2aと二次側回路3aのそれぞれの過渡現象によるウェイブレット状非正弦波の振動の位相を同期共振(二重共振)させる駆動制御と、可変直流電源5の出力を帰還制御できる。即ち、
図5Aに例示したフローチャートのステップS29において、ALU339の励起条件設定回路345aは、一次側励起回路340aが励起素子Q
1を他励制御するタイミング(励起条件)を設定し、一次側励起回路340aに命令を出力する。このステップS29においては同時に、ALU339の伝送条件設定回路345bが、間隔制御機構32に給電盤11と受電盤12の間隔を最適値となるように命令を出力して制御する。
【0027】
更に、
図5AのフローチャートのステップS30において、ALU339の励起条件設定回路345aは、可変直流電源5から
図7Aに示すような多段の階段状の電圧の内から、特定の踏面電位、例えば(j-1)番目の直流電圧E
v(t
PS
(j-1))を出力させて、パルス入力させる(jは2以上の正の整数。)。「踏面電位」とは、
図7Aに示す階段の形状のそれぞれの平坦部(水平部)である「踏面」の電位を意味する。(j-1)番目の直流電圧E
v(t
PS
(j-1)) が供給されると、一次側励起回路340aは励起素子Q
1を他励制御によるオン/オフ動作にさせ、直流電圧E
v(t
PS
(j-1))のパルス入力によって、一次側回路2aに過渡現象振動を生成させる。一次側回路2aの過渡現象振動の位相と二次側回路3aの過渡現象振動の位相が同期することにより一次側回路2aと二次側回路3aの間の電磁エネルギの送受の振動が発生する。即ち、二次側回路3aから、(j-1)番目にパルス入力される直流電圧E
v(t
PS
(j-1))に対応した二次側回路3aの情報を有した還流電流が一次側回路2aに還流する。二次側回路3aの情報を有した還流電流は、一次側回路2aの送電側コンデンサC1の端子間に一次側充放電電圧V
C1として現れる。
【0028】
図5AのステップS31において、ALU339の一次側電圧検出制御回路346は、検出器28に(j-1)番目にパルス入力された直流電圧E
v(t
PS
(j-1))に依拠した一次側充放電電圧V
C1を、
図7Aの踏面長時間Δτ=t
PS
j―t
PS
(j-1)の間、逐次測定させる。パルス入力の動作においては、踏面長時間Δτの初期の極短い時間のみが励起素子Q
1がオン状態であり、踏面長時間Δτの殆どの領域で励起素子Q
1がオフ状態であるので、
図7Aに示した踏面電位の一部しか使われていない。よって、実際には
図7Aに示した踏面電位が一次側回路2aに印加されていない状態で一次側充放電電圧V
C1の測定が実施される。検出器28が検出した(j-1)番目の直流電圧E
v(t
PS
(j-1))に依拠した一次側充放電電圧V
C1の時系列データは、伝送データ記憶装置348aに格納される。(j-1)番目の直流電圧E
v(t
PS
(j-1))に依拠した一次側充放電電圧V
C1の時系列データが伝送データ記憶装置348aに格納されると、ステップS30に戻る。
【0029】
ステップS30において、励起条件設定回路345aは、可変直流電源5からj番目の直流電圧Ev(tPS
j))を出力させる。j番目の直流電圧Ev(tPS
j)のパルス入力によって、一次側回路2aに過渡現象振動を生成させる。一次側回路2aと二次側回路3aの間の電磁エネルギの送受の振動が発生し、二次側回路3aから、j番目の直流電圧Ev(tPS
j)に対応した二次側回路3aの情報を有した還流電流が一次側回路2aに還流し、一次側充放電電圧VC1として現れる。ステップS31において、一次側電圧検出制御回路346は、検出器28にj番目の直流電圧Ev(tPS
j)に依拠した一次側充放電電圧VC1を、踏面長時間Δτ=tPS
(j+1)―tPS
jの間、逐次測定させる。j番目の直流電圧Ev(tPS
j)に依拠した一次側充放電電圧VC1の時系列データは、伝送データ記憶装置348aに格納される。j番目の直流電圧Ev(tPS
j)に対応した時系列データが伝送データ記憶装置348aに格納されると、ステップS30に戻る。
【0030】
ステップS30において、励起条件設定回路345aは、可変直流電源5から(j+1)番目の直流電圧Ev(tPS
(j+1))を出力させる。(j+1)番目の直流電圧Ev(tPS
(j+1))のパルス入力によって、一次側回路2aと二次側回路3aの間の電磁エネルギの送受の振動が発生する。二次側回路3aから、(j+1)番目の直流電圧Ev(tPS
(j+1))に対応した二次側回路3aの情報を有した還流電流が一次側回路2aに還流し、一次側充放電電圧VC1として現れる。そこで、ステップS31において、一次側電圧検出制御回路346は、検出器28に(j+1)番目の直流電圧Ev(tPS
(j+1))に依拠した一次側充放電電圧VC1を、踏面長時間Δτ=tPS S
(j+2)―tPS
(j+1)の間、逐次測定させ、伝送データ記憶装置348aに格納する。(j+1)番目の直流電圧Ev(tPS
(j+1))に対応した時系列データが伝送データ記憶装置348aに格納されると、ステップS30に戻る。……(以後、同様な繰り返し処理がなされる。)……。
【0031】
一方、
図5AのステップS32において、ALU339の最大電圧検出回路341aは、伝送データ記憶装置348aから、直流電圧E
v(t
PS
(j-1))に依拠した一次側充放電電圧V
C1の時系列データ、直流電圧E
v(t
PS
j)に依拠した一次側充放電電圧V
C1の時系列データ、直流電圧E
v(t
PS
(j+1))に依拠した一次側充放電電圧V
C1の時系列データ、……を順に読み出し、二次側回路3aからの還流成分による振動のそれぞれの時系列データが構成する包絡線極大値(
図6及び
図7B参照。)を「最大電圧」として決定する。
図7Bの左端(時刻0ms)には、増大する3つのレベルの直流電圧E
v(t
PS
(j-1)),E
v(t
PS
j),E
v(t
PS
(j+1))を可変直流電源5が多段の階段状に出力したことを示している。
図7Bの時刻4.2ms付近には、直流電圧E
v(t
PS
(j-1)),E
v(t
PS
j),E
v(t
PS
(j+1))がパルス入力されたことに起因する、一次側充放電電圧V
C1の包絡線極大値が細い破線、実線、太い破線として3つのレベルに現れ、この二次側回路3aからの還流成分による振動の包絡線極大値がV
EC1max(j-1),V
EC1maxj,V
EC1max(j+1)として示されている。
図7Bの例では、破線の四角で囲んだ時刻4.2ms付近の包絡線極大値が、それぞれ還流最大値V
EC1max(j-1),V
EC1maxj,V
EC1max(j+1)として定義される。直流電圧E
v(t
PS
(j-1)),E
v(t
PS
j),E
v(t
PS
(j+1)),……を、多段の階段状に増大するように出力させて、それぞれパルス入力させたことに起因した一次側充放電電圧V
C1の包絡線から導かれるそれぞれの還流最大値V
EC1max(j-1),V
EC1maxj,V
EC1max(j+1),……は、伝送データ記憶装置348aに格納する。
【0032】
その後、
図5AのステップS33において、ALU339の変曲点検出回路342aは、伝送データ記憶装置348aから、直流電圧E
v(t
PS
(j-1)),E
v(t
PS
j),E
v(t
PS
(j+1)),……から導かれる一次側充放電電圧V
C1の時系列データのそれぞれの還流最大値を読み出し、直流電圧E
v(t
PS
(j-1)),E
v(t
PS
j),E
v(t
PS
(j+1)),……の時系列データのそれぞれの還流最大値V
EC1max(j-1),V
EC1maxj,V
EC1max(j+1),……の直流電圧E
v(t
PS
(j-1)),E
v(t
PS
j),E
v(t
PS
(j+1)),……依存性から、還流最大値曲線の変曲点を決定する(
図8参照。)。
図5AのステップS33において変曲点を決定するアルゴリズムは種々のものがある。
図5Aの破線で囲んだステップS33の種々のアルゴリズムの一例は、
図5Bを用いて後述する。
図5AのステップS33において、ALU339の変曲点検出回路342aは、変曲点検出回路342aが決定した還流最大値曲線の変曲点の電圧を、充電電圧V
CS(t)と推定する。
【0033】
そして、ステップS34において、ALU339の電圧設定制御回路343aは、推定された充電電圧VCS(t)に対して最適な充電効率の得られる電圧を、充電式電池6の特性に合わせて決定する。その後、ステップS35において、ALU339の可変直流電源制御回路347は、電圧設定制御回路343aが決定した最適な充電効率の得られる電圧を出力するように、可変直流電源5の動作を制御する。充電が進み、充電電圧VCS(t)が増大する場合は、ステップS30に戻り、同様な処理を繰り返せばよい。以上のとおり、第1実施形態に係る電圧推定型充電システムによれば、帰還制御により、充電電圧VCS(t)を一次側回路2a側の計測のみにより精密に推定し、推定した電圧に適合した特定の直流電圧Ev(tPS
x)を選択できる。そして、選択された直流電圧Ev(tPS
x)が一次側回路2aに、推定した電圧に適合した波高値でパルス入力されることにより、ウェイブレット状の減衰振動が励起される。この結果、一次側回路2aから二次側回路3aに二重共振でウェイブレット状の電磁エネルギが伝送されることにより、効率のよい充電式電池6の充電ができる。
【0034】
図4に示すALU339を構成するハードウェア資源としての励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、最大電圧検出回路341a、変曲点検出回路342a、電圧設定制御回路343a及び可変直流電源制御回路347は、論理的な機能に着目したハードウェア資源を形式的に表現しているのであって、必ずしも、半導体チップ上に物理的な領域としてそれぞれ独立して存在する機能ブロックを意味するものではないが、PLDの「論理ブロック」のような半導体チップ上に実装されたプログラム可能な論理コンポーネント等の現実に存在する構成を否定するものでもない。ALU339の一部の構成又はすべての構成をFPGAのようなPLDで構成した場合は、
図4に示した演算シークエンス制御回路344のプログラムカウンタやAバス349a及びBバス349b等のデータバスは省略可能である。
【0035】
更に、駆動制御回路34aは、
図3に示す励起素子Q
1をスイッチングさせる駆動タイミングを選択し、選択した駆動タイミングで、
図3に示した一次側励起回路340aを動作させる命令を出力する。一次側回路2aの外部回路となる一次側励起回路340aは、
図3に示した励起素子Q
1の制御端子に制御信号を送り、励起素子Q
1をオン・オフ駆動する。励起素子Q
1がオン・オフ駆動されることにより、一次側回路2aが構成する並列回路と直列回路を交互に切り替える。励起素子Q
1には、バイポーラトランジスタ(BJT)、電界効果トランジスタ(FET)、静電誘導トランジスタ(SIT)或いはゲートターンオフサイリスタ(GTO)、静電誘導(SI)サイリスタ等のサイリスタが採用可能である。励起素子Q
1が、FET、SIT、GTO、SIサイリスタ等であれば、これらの電力用半導体素子のゲート電極が、励起素子Q
1の「制御端子」に対応する。励起素子Q
1がBJTであれば、BJTのベース電極が励起素子Q
1の制御端子になる。一次側回路2aの外部回路である一次側励起回路340aから、励起素子Q
1の制御端子に制御信号を送ることにより、一次側回路2aが他励式の動作をする。
【0036】
ALU339には、マイクロチップとして実装されたマイクロプロセッサ(MPU)等を使用してコンピュータシステムを構成することが可能である。又、コンピュータシステムを構成するALU339として、算術演算機能を強化し信号処理に特化したデジタルシグナルプロセッサ(DSP)や、メモリや周辺回路を搭載し組込み機器制御を目的としたマイクロコントローラ(マイコン)等を用いてもよい。或いは、現在の汎用コンピュータのメインCPUをALU339に用いてもよい。更に、ALU339の一部の構成又はすべての構成をフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のようなプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)で構成してもよい。
【0037】
図3に示す駆動制御回路34aに含まれるALU339を含んでコンピュータシステムが構成される。駆動制御回路34a等を含むコンピュータシステムにおいて、伝送データ記憶装置348aは、複数のレジスタ、複数のキャッシュメモリ、主記憶装置、補助記憶装置を含む一群の内から適宜選択された任意の組み合わせとすることも可能である。又、キャッシュメモリは1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの組み合わせとしてもよく、更に3次キャッシュメモリを備えるヒエラルキーを有しても構わない。PLDによって、ALU339の一部又はすべてを構成した場合は、伝送データ記憶装置348aは、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。更に、ALU339は、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造でもよい。このCPUコア風のアレイは、あらかじめPLD内部に搭載されたハードマクロCPUと、PLDの論理ブロックを用いて構成したソフトマクロCPUを含む。つまりPLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させた構成でもよい。
【0038】
図3に示す一次側回路2aは、
図1に示した給電装置29aの一部をなす回路トポロジであり、駆動制御回路34aと一部の電子回路を共通にしている。
図3に示す二次側回路3aは、
図1においては受電回路27aと受電盤12を含む構造に対応する。後述するが、
図3に示す一次側回路2aにおいては、「RCL並列回路」の過渡応答と「RCL直列回路」の過渡応答が交互に時分割で形成される。一次側回路2aは、充電電圧V
CS(t)に合わせて、直流電圧E
v(t
PS
k)を変化させて供給する可変直流電源5と、可変直流電源5の高電位側端子(プラス端子)に一方の端子を接続した励起素子Q
1と、励起素子Q
1の他方の端子に一方の端子を接続された送電側コンデンサC
1と、励起素子Q
1の他方の端子に一方の端子を接続した送電側コイルL
1を含む。送電側コイルL
1の一方の端子は、送電側コンデンサC
1の一方の端子にも接続されているので、励起素子Q
1の他方の端子と送電側コンデンサC
1の一方の端子との高電位端子側接続ノードN
1に、送電側コイルL
1の一方の端子から接続ノードP
1を経由して延長される配線が接続されている。送電側コイルL
1の他方の端子は、送電側コンデンサC
1の他方の端子と可変直流電源5の低電位側端子(マイナス端子)の低電位端子側接続ノードに接続されている。
【0039】
送電側コンデンサC1の端子間電圧である一次側充放電電圧V
C1を検知する電圧計としての検出器28が、高電位端子側接続ノードN
1(接続ノードP
1)と低電位端子側接続ノードの間に接続されている。検出器28は、送電側コイルL
1の一方の端子と送電側コイルL
1の他方の端子の間に接続された構成でもあるため、検出器28は、送電側コイルL
1の端子間電圧V
L1を測定することも可能である。一次側充放電電圧V
C1は、二次側回路3aにおける振動特性が受電側コイルL
2から送電側コイルL
1へ還流した成分を示すことができるので、充電式電池6のSOCに依拠した振動特性を反映している。したがって、検出器28の出力を
図3に示すように電圧推定調整手段9aに入力することにより、充電電圧V
CS(t)の推定情報を、可変直流電源5の出力、即ちパルス入力される直流電圧E
v(t
PS
k)を帰還制御する情報として用いることができる(k=1~m:mは4以上の正の整数)。
【0040】
このため、電圧推定調整手段9aは、
図3に示すように検出器28に接続された最大電圧検出回路341aと、最大電圧検出回路341aの出力を入力する変曲点検出回路342aと、変曲点検出回路342aの出力を入力し、可変直流電源5に出力する電圧設定制御回路343aを有する。可変直流電源5は、ポテンショメータと同様に、多段の階段状に順次増大する直流電圧E
v(t
PS
k)を、
図7Aに示すように時刻t
PS
(j-1),t
PS
j,t
PS
(j+1),t
PS
(j+2),……の経過と共に逐次、微小電圧ΔE
vだけステップ増大して出力する。階段の「踏面」に相当する平坦部(水平部)の踏面長時間Δτ=t
PS
(j+2)―t
PS
(j+1)=t
PS
(j+1)―t
PS
j=t
PS
j―t
PS
(j-1)を等しくして、踏面長時間Δτの経過後、可変直流電源5は踏面電位の電圧レベルを、階段の「蹴上げ」に相当する等間隔ΔE
vだけ逐次増大させる。それぞれの踏面電位が離散的に一定電圧で順次増大する直流電圧E
v(t
PS
k)を規定する。
【0041】
階段の踏面の奥行き長を規定する踏面長時間Δτは、
図6に示すような二次側回路3aからの還流成分による一次側充放電電圧V
C1の振動波形の包絡線V
EC1(t
PS
j)の包絡線極大値V
EC1maxjが認め得る時間が担保されるように設定する。例えば、踏面長時間Δτを一次側充放電電圧V
C1の振動波形の周期(繰り返し波形の時間間隔)の10~20倍程度の値に設定する。
図6に示す例では、踏面長時間Δτは、時刻t
1,t
2,t
3,……,t
13,t
14が含まれるように、一次側充放電電圧V
C1の振動波形の周期の15倍程度が必要であることが分かる。踏面長時間Δτに含まれる一次側充放電電圧V
C1の振動による波の個数は、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2の間の等価結合係数k
eqに依存する。よって、等価結合係数k
eqが大きい場合は、踏面長時間Δτが含む波の個数は10以下でも構わない。
【0042】
なお、「等価結合係数k
eq」は、交流理論で周知の結合係数K
ACと等価な物理的意味を有する擬結合係数である。即ち、等価結合係数k
eqは、過渡応答をしている2つのコイル間に定義される時間に依存する非定常状態におけるパラメータであるが、近似的にはk
eq=K
ACとすることができる。一次側回路2aは、可変直流電源5が階段状に微小電圧ΔE
vだけステップ増大する直流電圧E
v(t
PS
k)のそれぞれの電圧値に対し、
図6に示すような複数の波の振幅値が包絡線V
EC1(t
PS
k)を規定する振動波形を逐次生成する。そして、検出器28は、受電側コイルL
2から送電側コイルL
1へ還流した成分を、一次側充放電電圧V
C1の振動波形として、それぞれの直流電圧E
v(t
PS
k)において逐次検出する。
【0043】
最大電圧検出回路341aは、二次側回路3aからの還流成分による振動の包絡線極大値V
EC1max(k)を、時刻t
PS
kと共に階段状に増大する直流電圧E
v(t
PS
k)のそれぞれに対応する「最大電圧」として逐次検出する(
図7B参照。)。変曲点検出回路342aは、
図8に示すような直流電圧E
v(t
PS
k)の階段状の増大に伴う包絡線極大値V
EC1max(k)の変化(傾き)の変曲点を検出する。変曲点をの検出は、例えば、直流電圧E
v(t
PS
k)の階段状の増大に伴う包絡線極大値V
EC1max(k)の2次微分から求めてもよい。或いは、最小自乗法で包絡線極大値V
EC1max(k)の変化曲線を求め、この変化曲線を微小電圧ΔE
vずつ逐次増大する直流電圧E
v(t
PS
k)で微分して求めてもよい。電圧設定制御回路343aは、変曲点検出回路342aが検出した変曲点から、充電電圧V
CS(t)を精密に推定し、可変直流電源5が直流電圧E
v(t
PS
k)≒V
CS(t)を出力するように、可変直流電源5に駆動制御信号を出力して可変直流電源5を駆動制御する。
【0044】
図3に示す実装回路においては、送電側コイルL
1からの環流電流を考慮し第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q
1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に保護素子として並列接続されている。同様に、送電側コイルL
1からの環流電流が可変直流電源5に環流するのを防ぐため、電源側ダイオードD1が可変直流電源5と励起素子Q
1の間に直列接続されている。
【0045】
図3に示すように、第1実施形態に係る電圧推定型充電システムの一次側回路2aは、可変直流電源5、送電側コンデンサC
1及び送電側コイルL
1が、梯子のように3段の踏桟が縦に並列配置された梯子型回路である。横に倒された梯子の両側枠の一方(
図3の配置において上側枠)を構成するように励起素子Q
1と送電側コイルL
1の直列回路が構成されている。励起素子Q
1と送電側コイルL
1の高電位端子側接続ノードN
1に、梯子の3本の踏桟のうちの中央の踏桟に相当する位置する送電側コンデンサC
1の一方の端子が接続され、励起素子Q
1、送電側コイルL
1及び送電側コンデンサC
1でT型回路を構成している。
【0046】
送電側コイルL1は可変直流電源5から供給された静電エネルギ及び受電側コイルL2から環流電流として供給された磁気エネルギを蓄積して、送電側コイルL1の両端の電圧VL1を昇圧する。送電側コイルL1は、送電側コンデンサC1から送られた静電エネルギを磁気エネルギとして蓄積し、この磁気エネルギを送電側コンデンサC1に環流すると同時に、二次側回路3aの受電側コイルL2 に磁気的に結合し、二次側回路3aに対し、磁気エネルギを送受する。
【0047】
第1実施形態に係る電力伝送装置は、振幅一定の正弦波振動を生成させる交流電源回路、いわゆるスイッチング電源を用いない。即ち第1実施形態に係る電力伝送装置の一次側回路2a及び二次側回路3aは、振幅値が一定の定常状態の正弦波を対象とする交流理論ではなく、振幅値が時間共に変動する非定常状態を対象とする過渡現象に依拠した回路であることを特徴としている。そして、送電側コンデンサC1の一方の端子と可変直流電源5との間に接続された励起素子Q1の制御電極の電圧が、外部回路である一次側励起回路340aからのクロック信号で他励制御されて、RCL並列回路とRCL直列回路を切り替える他励式の回路の動作をする。即ち、励起素子Q1の導通状態において、可変直流電源5の高電圧側端子+と低電圧側端子-の間に、送電側コイルL1と送電側コンデンサC1を含むRCL並列回路を並列接続される。又、励起素子Q1の遮断状態において、高電位端子側接続ノードN1が可変直流電源5の高電圧側端子+から分離され、送電側コイルL1と送電側コンデンサC1を含むRCL直列回路が構成されるという、他励式の回路の動作を実現している。
【0048】
先ず、二次側回路3aとの結合がない場合に単純化して、一次側回路2aの他励式の回路動作に着目する(
図9及び
図10においては、二次側回路3aを破線で示している。)。この単純化したモデルにおいて、可変直流電源5が直流電圧E
v(t
PS
j)=E
0(=一定)を供給しているとき、励起素子Q
1の制御電極の電圧が、一次側励起回路340aからのクロック信号で他励制御されて導通状態になったと仮定する。励起素子Q
1が導通状態(オン状態)の場合、
図9に示したRCL並列回路の送電側コンデンサC
1に過渡的に流れるコンデンサ電流をi
C1、送電側コイルL
1に過渡的に流れるコイル電流をi
L1、可変直流電源5から供給される電流をi
1とすると、励起素子Q
1がオン状態のときのRCL並列回路の過渡現象は、寄生的に内在する抵抗R
01ON及び抵抗R
L1を考慮して、
【数1】
で表現できる。
【0049】
式(1b)の左辺第1項のR
01ONは、励起素子Q
1に用いている電力用半導体スイッチング素子のオン抵抗r
on1及び可変直流電源5の等価浮遊抵抗r
1を含む。式(1b)及び(1c)の左辺第2項のR
L1は、
図9に示すように送電側コイルL
1の寄生抵抗である。可変直流電源5は、励起素子Q
1がオン状態において式(1b)を満足するように、送電側コンデンサC
1と送電側コイルL
1がなすRCL並列回路に固定の直流電圧E
v(t
PS
j)=E
0を供給するものとする。式(1b)に式(1a)を代入し、式(1c)の両辺を時間tで微分すると、
【数2】
となる。
【0050】
式(2)から、式(1b)に式(1a)を代入した式を用いて、コンデンサ電流i
C1を消去して整理すると、
【数3】
となる。i
L1=Ae
Btとおくと、指数部の係数Bは、
【数4】
となる。ここで、
【数5】
と定義する。
【0051】
RCL並列回路の送電側コイルL
1に過渡的に流れるコイル電流i
L1は、非定常状態に対する式(3)の一般解として求められる。即ち、A
1,A
2を定数として、RCL並列回路の送電側コイルL
1に過渡的に流れるコイル電流i
L1は、
【数6】
となる。α
2
ON2<ω
2
ONであれば、式(5d)の平方根の中が負となり、式(5d)はjβ
ONの形式で虚数で表現されるので、RCL並列回路の送電側コイルL
1に過渡的に流れるコイル電流i
L1は、
【数7】
と表現できる。RCL並列回路の送電側コンデンサC
1に過渡的に流れる電流i
C1は、式(2)から同様にして、
【数8】
となる。
【0052】
送電側コイルL1に流れるコイル電流iL1は式(7)に示すように、周波数βONの正弦波と余弦波が合成された瘤型の振動をしながら、振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―αON1t)で指数関数的に減衰する不足制動(減衰振動)の波形を示す。コイル電流iL1は式(7)に示すように、通常のスイッチング電源に用いられている振幅一定の正弦波振動(正弦波交流信号)のような振幅が一定の正弦波ではない。同様に、送電側コンデンサC1に流れるコンデンサ電流iC1は式(8)に示すように、周波数βONの正弦波と余弦波が合成された瘤型の振動をしながら、振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―αON1t)で指数関数的に減衰する減衰振動の波形を示す。コンデンサ電流iC1は式(8)に示すように、振幅一定の正弦波振動(正弦波交流信号)のような振幅が一定の正弦波ではない。
【0053】
式(1c)に示したように式(7)を微分し、式(8)を積分すれば、二次側回路3aとの結合がない場合のRCL並列回路の一次側充放電電圧V
C1及び送電側コイルL
1の端子間電圧V
L1は、それぞれ、
【数9】
で与えられる。送電側コイルL
1の端子間電圧V
L1の時間tに対する変化は式(9a)に示すように、周波数β
ONの正弦波の振動の振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―α
ON1t)で指数関数的に減衰する減衰振動の波形を示し、振幅が一定の正弦波ではなく、振幅一定の正弦波振動とは異なる。同様に、一次側充放電電圧V
C1の変化は式(9b)に示すように、周波数β
ONの正弦波の振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―α
ON1t)で指数関数的に減衰する減衰振動の波形を示し、振幅一定の正弦波振動とは異なる。式(7)~(9b)は、第1実施形態に係る電力伝送装置の一次側回路2aは、振幅値が一定の定常状態の正弦波を対象とする交流理論ではなく、振幅値が変動する非定常状態を対象とする過渡現象に依拠した回路である特徴を示している。
【0054】
次に、二次側回路3aとの結合がない場合において、励起素子Q
1の制御電極の電圧が、一次側回路2aの外部回路である一次側励起回路340aからのクロック信号で他励制御されて、強制的に遮断状態(オフ状態)になった場合を説明する。励起素子Q
1が強制的にオフ状態になると、式(7)~(9b)に示すステップ入力による過渡応答振動が強制的に終了させられたパルス入力になる。
図11には、式(9b)に示すステップ入力による一次側充放電電圧V
C1の過渡応答振動が、時刻t
p,t
p+2で強制的に終了させられるパルス入力による過渡応答振動を示している。励起素子Q
1がオフ状態のときは、
図10に示した送電側コンデンサC
1及び送電側コイルL
1がなす閉ループが、RCL直列回路を構成する。即ち第1実施形態に係る電力伝送装置では、一次側励起回路340aからのクロック信号で他励制御されて、RCL並列回路の回路トポロジと、閉ループをなすRCL直列回路の回路トポロジに、切り替えられることが特徴である。
【0055】
閉ループをなすRCL直列回路を過渡的に流れる電流をi
1とすると、励起素子Q
1がオフ状態のときのRCL直列回路の過渡現象は、
【数10】
で表現できる。式(10)の左辺第1項は送電側コイルL
1の両端の電圧V
Lij、左辺第2項は等価浮遊抵抗による電圧損失、左辺第3項は送電側コイルL
1の両端の電圧V
C1である。RCL直列回路の等価浮遊抵抗R
L1が十分小さいとき、即ち、減衰定数α
OFF=R
L1/(2L
1)、固有角周波数ω
OFF=(L
1C
1)
-1/2としたとき、
α
OFF
2<ω
OFF
2 ……(11)
が成立するとき、式(10)の解は、過渡現象理論でよく知られているように、
【数11】
となる。
【0056】
式(11)及び(12b)の固有角周波数ωOFFは、一定振幅の交流理論におけるRCL並列共振回路の共振周波数に対応するが、非定常状態を取り扱う過渡現象では「共振周波数」の用語はふさわしくない。RCL直列回路を過渡的に流れる電流i1は、式(12a)に示すように、周波数βOFFの正弦波で振動しながら、振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―αOFFt)で指数関数的に減衰する減衰振動の波形を示し、定常状態の振幅一定の正弦波振動とは異なる。
【0057】
式(12a)を微分すれば、式(13a)のように送電側コイルL
1の端子間電圧V
L1が求まり、式(12a)を積分すれば、式(13b)のようにRCL並列回路の一次側充放電電圧V
C1が求められる:
【数12】
二次側回路3aとの結合がない場合において、送電側コイルL
1の端子間電圧V
L1は式(13a)に示すようになる。同様に、二次側回路3aとの結合がない場合における一次側充放電電圧V
C1は式(13b)に示すように、周波数β
OFFの正弦波と余弦波が合成された瘤(こぶ)型の振動をしながら、振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―α
OFFt)で指数関数的に減衰する不足制動(減衰振動)の波形を示す。式(13b)のβ
OFFの値と式(9b)のβ
ONの値を比較すると、式(5d)及び式(12b)からβ
OFF≪β
ONであり、式(9b)の立ち上がり時間は、式(13b)の立ち下がり時間及び立ち上がり時間に比して極めて短いことが分かる。
【0058】
よって、端子間電圧V
L1及び一次側充放電電圧V
C1の変化は、定常状態の振幅一定の正弦波振動とは異なる。式(12a)~(13b)に示す減衰振動の波形は、第1実施形態に係る電力伝送装置の一次側回路2aは、振幅値が一定の定常状態の正弦波を対象とする交流理論ではなく、振幅値が変動する非定常状態を対象とする過渡現象に依拠した回路である特徴を示している。そして、一次側励起回路340aによって、励起素子Q
1が再びオン状態となると、式(12a)~(13b)に示した過渡応答振動は強制的に終了させられ、励起素子Q
1がオン状態の式(7)~(9b)に示す過渡応答振動波形に切り替えられる。
図11には、式(13b)に示す一次側充放電電圧V
C1の過渡応答振動波形が、時刻t
p-1,t
p+1で強制的に終了させられ、式(9b)に示す振動波形に接続されることが示されている。一方、励起素子Q
1をオン状態にするタイミングを遅くして、式(13b)に示す自由振動を一定期間許容すると、
図6の左側のような減衰振動になる。
【0059】
このように、一次側回路2aにおいては、励起素子Q
1の動作が一次側励起回路340aから出力される制御信号によって他励制御されて、RCL並列回路の回路トポロジとRCL直列回路の回路トポロジを切り替えられ、
図11に示すような非正弦波の過渡現象振動が生成される。そして、一次側回路2aにおける過渡現象振動と二次側回路3aにおける過渡現象によるウェイブレット状非正弦波の振動が共鳴する二重共振により、第1実施形態に係る電力伝送装置が動作する。一次側回路2aと二次側回路3aの間で時定数が同期して共鳴する二重共振が生じると、一次側回路2aと二次側回路3aの間で電磁エネルギが互いに送受されるエネルギ振動が発生する。このため、
図12に示すような一次側充放電電圧V
C1の包絡線と二次側充放電電圧V
C2の包絡線が異なる位相で脈動する関係になる。
図12に示された位相が逆になる破線と実線の脈動は、一次側回路2aと二次側回路3aの間で二重共振によりウェイブレット状の電磁エネルギが互いに送受される振動を示している。
【0060】
即ち、一次側充放電電圧V
C1の包絡線の振幅が極大値のときは二次側充放電電圧V
C2の包絡線の振幅が極小値であり、一次側充放電電圧V
C1の包絡線の振幅が極小値のときは二次側充放電電圧V
C2の包絡線の振幅が極大値である。二次側充放電電圧V
C2の包絡線の振幅が極大値及びこの近傍のタイミングで、二次側回路3aに負荷として接続されている充電式電池6への充電がなされる。しかし、一次側回路2aと二次側回路3aの間のエネルギ振動は、二次側回路3aに接続されている充電式電池6のSOCの変化に依存する。即ち、充電電圧V
CS(t)の変動により、
図8に示すように、一次側回路2aと二次側回路3aの間でのエネルギ振動の態様が変化し、一次側回路2aと二次側回路3aの間での伝送効率が影響を受ける。
図8の変曲点は、直流電圧E
v(t
PS
k)の値が端子間電圧V
CS(t)の値を超えると、二次側回路3aから一次側回路2aへ還流される電磁エネルギが増大して、一次側回路2aから二次側回路3aへの伝送効率が低下していることを示す。
図8の変曲点を見いだして、
図5Aに示すアルゴリズムに従い、可変直流電源5の出力を調整すれば、対象とする充電式電池の充電電圧が変動する場合であっても、充電電圧を一次側回路2a側の計測のみにより精密に推定し、推定した電圧を用いて効率良く充電式電池をワイヤレスで充電できる電圧推定型充電システムを提供できる。
【0061】
既に述べたように、
図5AのステップS33において変曲点を決定するアルゴリズムは種々のものがある。
図5Bは、
図5Aの破線で囲んだステップS33の内容の一例を示す。先ず、
図5AのステップS32において、一次側充放電電圧V
C1の時系列データのそれぞれの還流最大値V
EC1max(j-1),V
EC1maxj,V
EC1max(j+1),……を検出格納する。次に、
図5BのステップS331で式(14)に示す変曲点判断係数γを計算する。
【数13】
【0062】
次に、
図5BのステップS332で、ステップS331で計算した変曲点判断係数γが予め定めた変曲点閾値γ
thより小さいか否かを判定する。ステップS332で変曲点判断係数γが変曲点閾値γ
thより小さい(γ<γ
th)と判定された場合は、ステップS334に進み、ステップS332で判定されたV
ECImax(n-1)の値を変曲点電圧V
pであると決定する。ステップS332で、変曲点判断係数γが変曲点閾値γ
thより小さくないと判定された場合は、ステップS333でnの値を更新(n=n+1)して、ステップS331に戻る。ステップS332で変曲点判断係数γが変曲点閾値γ
thより小さいと判定されるまで、ステップS332からステップS333とステップS331を経由してステップS332に戻るループを繰り返す。ステップS334でV
ECImax(n-1)の値を変曲点電圧V
pであると決定した場合は、変曲点電圧V
pが充電電圧V
CS(t)と推定される。その後、
図5AのステップS34において、ALU339の電圧設定制御回路343aが、端子間電圧V
CS(t)に対して最適な充電効率の得られる階段の踏面電位の電圧を決定する(
図7A参照。)。
【0063】
(第1実施形態の変形例)
本発明の第1実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムは
図14に示すように、二次側回路3aと、二次側回路3aとの二重共振で、二次側回路3aに無接触でウェイブレット状の磁気エネルギを伝送する一次側回路2bと、充電電圧を推定して、一次側回路2bに入力される直流電圧の値を推定した充電電圧に適合するように帰還制御で変更する電圧推定調整手段9aを備える。二次側回路3aは、受電側コイルL
2、及びこの受電側コイルL
2に流れる電磁エネルギで充電される充電式電池6を含む。一次側回路2bは、受電側コイルL
2に離間して対向した送電側コイルL
1、及びこの送電側コイルL
1の端子間電圧を検出する検出器28を有し、非正弦波の過渡応答振動を、直流電圧をパルス入力する他励制御で生成する。一次側回路2bの過渡応答振動による二次側回路3aとの二重共振で、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2に無接触でウェイブレット状の磁気エネルギを伝送する。電圧推定調整手段9aは、一次側回路2bに設けられた検出器28の出力により充電電圧を推定して、一次側回路2bに入力される直流電圧の値を推定した充電電圧に適合するように帰還制御で変更する。
【0064】
図14に示すように、第1実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムの一次側回路2bは、
図3に示した第1実施形態に係る電圧推定型充電システムの一次側回路2aに、補助励起素子Q
2を追加した構成となっている。「補助励起素子Q
2」は、励起素子Q
1と相補的な動作をすることにより、励起素子Q
1のオフ期間中の一次側回路2bの自由減衰振動を実現させることができる。
図14に示した励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2として、第1実施形態に係る電圧推定型充電システムと同様なFET、SIT、BJTの他、GTOサイリスタ、SIサイリスタ等のサイリスタを含む電力用半導体スイッチング素子が用いられる。特に、MISFET等の電圧駆動型のスイッチング素子を用いれば消費電力が小さくなるので、励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2に好適である。市場での入手可能性と電力用半導体スイッチング素子の内部抵抗の評価からは、現状においては、MOSFETを
図14に示す回路の励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2として採用することが可能である。
【0065】
EV用の充電式電池6とするような大電力用電力伝送システムにおいてはジュール熱の発生が大きい。第1実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムでは励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2として用いる電力用半導体スイッチング素子は2個のみで良いので、発熱による素子の破壊を防ぐ冷却構造が簡単に設計でき、しかも浮遊抵抗、浮遊容量、浮遊インダクタンスの発生も最小化できる。
図14に示す実装回路においては、送電側コイルL
1からの還流電流を考慮し第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q
1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第2の還流ダイオードFWD
2が補助励起素子Q
2としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、それぞれ保護素子として並列接続されている。
図4(a)に示した回路と同様に、送電側コイルL
1からの還流電流が可変直流電源5に更に還流するのを防ぐため、電源側ダイオードD1が可変直流電源5と励起素子Q
1の間に直列接続されている。
【0066】
特許文献2で紹介した励起素子Q
1のオフ期間を長くし励起素子Q
1のオフ時間中の自由減衰振動を許容するモードの場合、励起素子Q
1と補助励起素子Q
2とのオン/オフ動作を相補的に行えば、
図14に示す補助励起素子Q
2を備える場合の動作は、ほぼ
図3に示した回路構成と同様になる。即ち、一次側回路2bの外部回路となる一次側励起回路340aからの制御信号によって、補助励起素子Q
2をオフ状態、励起素子Q
1をオン状態にして、送電側コンデンサC
1に初期電圧を印加して電荷を蓄える。補助励起素子Q
2をオフ状態では一次側回路2bは未だ形成されず、励起素子Q
1のオン状態によって、可変直流電源5、等価浮遊抵抗r
1、励起素子Q
1と第1の還流ダイオードFWD
1の並列回路及び送電側コンデンサC
1からなるRC直列回路が構成されている。
【0067】
RC直列回路の過渡現象では、定常状態になるまで十分長い時間を経過すれば、送電側コンデンサC1の端子間電圧である一次側充放電電圧V
C1を、可変直流電源5が出力する直流電圧E
v(t
PS
j)の値まで高くすることが可能である。一方、
図3に示した回路では、式(9b)が示すように、直流電圧E
v(t
PS
j)まで高くすることはできない。補助励起素子Q
2をオフ状態、励起素子Q
1のオン状態の場合のRC直列回路は、一次側回路2bの電圧を高めることができるので、ジュール熱の発生を抑制する設計が簡単にできる。
【0068】
次に、一次側励起回路340aからの制御信号によって、励起素子Q
1をオフ状態にして、一定時間をおいて補助励起素子Q
2をオン状態にする擬相補的なオン/オフ動作をすると、送電側コンデンサC
1に蓄えられた電磁エネルギは送電側コイル電流を介して、送電側コイルL
1に蓄積される。送電側コイルL
1に電磁エネルギが蓄積されると、一次側回路2bと二次側回路3aの間の過渡現象振動の共鳴が生じる。補助励起素子Q
2をオン状態にすることにより
図3に示した回路と等価なRCL直列回路が形成され、可変直流電源5、等価浮遊抵抗r
1、励起素子Q
1と第1の還流ダイオードFWD
1の並列回路及び送電側コンデンサC
1からなるRC直列回路が消滅する。
【0069】
送電側コンデンサC1に蓄えられた電磁エネルギが送電側コイルL1に移動すると、一次側充放電電圧VC1は、負の極大値をとった後、0Vになる。一次側回路2bから二次側回路3aへの過渡現象振動の共鳴によって、受電側コイルL2に伝送された電磁エネルギは、受電側コイル電流によって受電側コンデンサC2を充電する。受電側コンデンサC2の充電が開始されると、受電側コンデンサC2の二次側充放電電圧VC2は負の極大値をとった後、正の値になる。一次側充放電電圧VC1が0Vになった時点で最大値をとる。二次側充放電電圧VC2は、負の極大値をとった後、正の値になり、一次側充放電電圧VC1が0Vになった時点で最大値をとる。
【0070】
二次側充放電電圧VC2の増加に伴って、受電側コンデンサC2に蓄積された電磁エネルギの一部によって、充電電流ICが発生し、充電式電池6に電荷が蓄えられる。受電側コンデンサC2に蓄積された電磁エネルギの他の一部は、受電側コイルL2に受電側コイル電流として還流する。充電電流ICが0になった時点で、二次側充放電電圧VC2は充電電圧Vcs(t)と同じ値となる。
【0071】
受電側コンデンサC
2に蓄積された電磁エネルギが受電側コイルL
2に還流すると、一次側回路2bと二次側回路3aの間の過渡現象振動の共鳴が生じ、一次側回路2bに電磁エネルギの一部が戻る。受電側コンデンサC
2に蓄積された電磁エネルギが充電式電池6及び受電側コイルL
2に移動すると、受電側コンデンサC
2は放電される。受電側コンデンサC
2が放電すると、二次側充放電電圧V
C2は、負の極大値をとった後、0Vになる。このとき、補助励起素子Q
2が導通状態を維持していれば、一次側充放電電圧V
C1は、負の極大値をとった後、正の値へ増大する振動となる。一次側充放電電圧V
C1を測定することにより、
図3に示した回路と同様に、一次側回路2bと二次側回路3aの間の過渡現象振動の共鳴の伝送効率や充電式電池6の充電の状況を検出器28でモニタすることができる。
【0072】
したがって、
図14に示すように、充電式電池6のSOCに依拠した振動特性を検出器28でモニタして、電圧推定調整手段9aを介して、可変直流電源5に帰還制御すれば、充電電圧V
cs(t)に適合した最適値に直流電圧E
v(t
PS
j)を精密に設定して、可変直流電源5から出力させることができる。電圧推定調整手段9aは
図14に示すようにハードウェア資源である最大電圧検出回路341a、変曲点検出回路342a及び電圧設定制御回路343aで構成してもよい。或いは、既に
図4を参照して説明したのと同様に、ALU339によるコンピュータ・ソフトウェア処理でハードウェア資源と等価な論理機能を実現してもよい。
【0073】
「共振」とは、自由振動している系に適用される概念である。これに対し、第1実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムにおいては、一次側回路2bの自由振動を制限し、一次側回路2bにおける過渡的な電流-電圧の変化を実現させる補助励起素子Q
2及び励起素子Q
1を備えている。このため、第1実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムにおいては、非正弦波の過渡応答振動を、新たな概念である「過渡現象振動の共鳴」によって、二次側回路3aに伝達することが可能である。制御回路の構成が単純で安価な可変直流電源5に依拠した非正弦波の過渡応答振動を用いることができるので、従来のように一次側回路2bに対し商用周波数よりも高い正弦波振動を生成させる高価な交流電源回路が不要となり、壊れにくく回路設計が容易になる。以上のとおり、第1実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムは電圧推定調整手段9aを備えているので、
図5Aに示したアルゴリズムと同様な手順に従い、充電式電池6のV
CS(t)がSOCに依存して変動する場合であっても、一次側回路2bの計測によりV
CS(t)を推定して、可変直流電源5の出力を調整することにより、効率良く充電式電池6を充電できるワイヤレス電力伝送が可能になる。
【0074】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る電圧推定型充電システムは、
図15に示すように、受電回路27bを有する車輌31cに無接触でウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを、二重共振(同期共振)を利用して給電回路29bから効率良く給電する伝送システムである。「ウェイブレット状」とは、時間的に局在した減衰振動を意味する。受電回路27bは、充電式電池6を負荷として含む。第2実施形態に係る電圧推定型充電システムは、受電回路27bにウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを無接触で給電する給電回路29bと、給電回路29bに接続され、給電回路29bに命令を送る1次側操作部33と、給電回路29bに対向し、車輌31c内に搭載される受電盤12、受電回路27b、2次側通信部22、及び二次側操作部23とから主に構成されている。
図15では、給電回路29b側の送電側コイルL
1と車輌31c側の受電側コイルL
2が鉛直方向に対向し、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2へ無接触でウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギが受電側コイルL
2に無接触で伝送されることを示す模式図を示しているが、単なる例示に過ぎず、既に説明した
図13のような水平方向の対向等種々の方式を含みうる。
【0075】
給電回路29bは、
図15に示すように送電側コイルL
1を円盤状の誘電体に収納した給電盤11と、送電側コイルL
1に流れる給電電流を制御する駆動制御回路34bと、2次側通信部22から受電側コンデンサC
2の端子間電圧等の受電回路27b側の情報を受信し、駆動制御回路34bに伝達する1次側通信部21を備えている。1次側通信部21は、2次側通信部22との間で無接触給電に必要な様々な情報を無線通信でやりとりすることができる。給電回路29bと受電回路27bとは、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2を介して、ウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを、互いに送受するエネルギ振動を繰り返す二重共振をする。「二重共振」とは、
図16に例示したような第2実施形態に係る電圧推定型充電システムにおける一次側回路2bの非正弦波の過渡応答振動と二次側回路3bの非正弦波の過渡応答振動のタイミングを同期させた共鳴現象である。
【0076】
第2実施形態に係る電圧推定型充電システムは、
図16に示すように、二次側回路3bと、二次側回路3bとの二重共振で、二次側回路3bに無接触でウェイブレット状の磁気エネルギを伝送する一次側回路2bと、充電電圧を推定して、一次側回路2bに入力される直流電圧の値を推定した充電電圧に適合するように帰還制御で変更する電圧推定調整手段9aを備える。二次側回路3bは、受電側コイルL
2、及びこの受電側コイルL
2に流れる電磁エネルギで充電される充電式電池6を含む。一次側回路2bは、二次側回路3bの受電側コイルL
2に離間して対向した送電側コイルL
1、及びこの送電側コイルL
1の端子間電圧を検出する検出器28を有する。一次側回路2bは、非正弦波の過渡応答振動を、他励制御で直流電圧をパルス入力して生成し、この過渡応答振動による二次側回路3bとの二重共振で、受電側コイルL
2に無接触で磁気エネルギを伝送する。電圧推定調整手段9aは、検出器28の出力により充電電圧を推定して、一次側回路2bに入力される直流電圧の値を推定した充電電圧に適合するように帰還制御で変更する。
【0077】
図16に示すように、第2実施形態に係る電圧推定型充電システムの二次側回路3bは、
図14に示した第1実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムの二次側回路3aに受電側制御素子Q
3を追加した構成となっている。「補助励起素子Q
2」は、励起素子Q
1と相補的な動作をすることにより、励起素子Q
1のオフ期間中の一次側回路2bの自由減衰振動を実現させることができる。
図16に示した励起素子Q
1、補助励起素子Q
2及び受電側制御素子Q
3として、第1実施形態及びその変形例に係る電圧推定型充電システムと同様なFET等の電力用半導体スイッチング素子が用いられる。低い内部抵抗の要求と市場での入手可能性から、MOSFETを、
図16に示す実装回路の励起素子Q
1、補助励起素子Q
2及び受電側制御素子Q
3としてそれぞれ採用することが、工業的には優位と考えられる。
【0078】
大電力用電力伝送システムにおいてはジュール熱の発生が大きい。第2実施形態に係る電圧推定型充電システムでは励起素子Q1、補助励起素子Q2及び受電側制御素子Q3として用いる電力用半導体スイッチング素子は3個のみで良いので、発熱による素子の破壊を防ぐ冷却構造が簡単に設計でき、しかも浮遊抵抗、浮遊容量、浮遊インダクタンスの発生も最小化できる。又、励起素子Q1、補助励起素子Q2及び受電側制御素子Q3をオン/オフ制御する単純な制御だけでよいので、RC直列回路によって一次側回路2bの電圧を高めて、ジュール熱の発生を抑制する設計も簡単にできる。
【0079】
図16に示す実装回路においては、第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q
1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第2の還流ダイオードFWD
2が補助励起素子Q
2としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第3の還流ダイオードFWD
3が受電側制御素子Q
3としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、それぞれ保護素子として並列接続されている。
図16に示すように、第3の還流ダイオードFWD
3は、受電側コイルL
2からの伝送電流を流す方向に設けられるので、第2の還流ダイオードFWD
2とは反対向きに設けられている。
図3及び
図14に示した回路と同様に、送電側コイルL
1からの還流電流が可変直流電源5に更に還流するのを防ぐため、電源側ダイオードD1が可変直流電源5と励起素子Q
1の間に直列接続されている。
【0080】
先ず、一次側回路2bの外部回路となる一次側励起回路340aからの制御信号によって、補助励起素子Q2をオフ状態、励起素子Q1をオン状態にし、且つ二次側回路3bの外部回路となる二次側制御回路340bからの制御信号によって、受電側制御素子Q3をオフ状態にする。一次側充放電電圧VC1は、リンギングをしながら一定電圧に充電される。このタイミングでは受電側コンデンサC2の二次側充放電電圧VC2は負の値である。送電側コンデンサC1に初期電圧を印加して電荷を蓄えた後、励起素子Q1をオフ状態にする。この時点での充電電圧Vcs(t)は高いものと仮定している。
【0081】
先ず、一次側励起回路340aからの制御信号によって、励起素子Q1をオフ状態にした後、一定時間をおいて、補助励起素子Q2をオン状態にする。補助励起素子Q2をオン状態にすると同時に、二次側制御回路340bからの制御信号によって、受電側制御素子Q3をオン状態にする。補助励起素子Q2がオン状態になると、送電側コンデンサC1に蓄えられた電磁エネルギは送電側コイル電流を介して、送電側コイルL1に蓄積され、更に、一次側回路2bと二次側回路3bの間の過渡現象振動の共鳴が生じる。送電側コンデンサC1に蓄えられた電磁エネルギが送電側コイルL1に移動すると、一次側充放電電圧VC1は、負の極大値をとった後、0Vになる。一次側回路2bから二次側回路3bへの過渡現象振動の共鳴によって、受電側コイルL2に伝送された電磁エネルギは、受電側制御素子Q3がオン状態なので、受電側コイル電流によって受電側コンデンサC2を充電する。受電側コンデンサC2の充電が開始されると、受電側コンデンサC2の二次側充放電電圧VC2は、負の極大値から増大し始め、正の値になる。二次側充放電電圧VC2が負の値をとっている間は充電電流ICが流れないが、二次側充放電電圧VC2が正の値になると、充電電流ICが立ち上がり始める。
【0082】
充電電流ICが立ち上がり始めたタイミングで、補助励起素子Q2及び受電側制御素子Q3をオフ状態にする。補助励起素子Q2及び受電側制御素子Q3のオフ状態は、一次側回路2bと二次側回路3bの間の過渡現象振動の共鳴によって、二次側充放電電圧VC2が最大になり、一次側充放電電圧VC1が0Vになる時点である。充電電流ICは、補助励起素子Q2及び受電側制御素子Q3がオフ状態になった後も増大しピーク値に到達した後、減少しゼロになる。
【0083】
二次側充放電電圧VC2の最大値は、充電電流ICが減少を開始すると、若干低い値の一定値になり段差(肩)状の波形になる。充電電流ICがゼロになった後も、二次側充放電電圧VC2の値は、補助励起素子Q2のオフ時の最大値よりも低い値を維持している。補助励起素子Q2のオフ後、一定時間を経過すると、二次側充放電電圧VC2の最大値は減少するが、充電電圧Vcs(t)が高い場合、充電電流ICによる二次側充放電電圧VC2の最大値の減少量は小さく、一次側回路2bと二次側回路3bの間の過渡現象振動の共鳴に与える影響は少ない。
【0084】
充電電流ICが0Aとなった後に、補助励起素子Q2及び受電側制御素子Q3を同時に、再度オン状態にすると、再度一次側回路2bと二次側回路3bの間の過渡現象振動の共鳴が生じる。補助励起素子Q2及び受電側制御素子Q3のオン状態により、二次側充放電電圧VC2は減少を開始し、負の極大値をとった後、0Vになる。このとき、一次側充放電電圧VC1も減少を開始し、負の極大値をとった後、正の値となり増大する。
【0085】
次に、一次側充放電電圧VC1が最大になり、二次側充放電電圧VC2が0Vになる時点で補助励起素子Q2及び受電側制御素子Q3をオフ状態にする。一次側充放電電圧VC1は二次側充放電電圧VC2と同じ値であり、補助励起素子Q2及び受電側制御素子Q3がオフ状態になった時点以降一定値に維持される。一次側充放電電圧VC1を測定することにより、一次側回路2bと二次側回路3bの間の過渡現象振動の共鳴の伝送効率や充電式電池6の充電の状況をモニタすることができることが分かる。
【0086】
図16に示すように、充電式電池6のSOCに依拠した振動特性を検出器28でモニタすれば、電圧推定調整手段9aを介して、可変直流電源5に帰還制御できる。よって、充電電圧V
cs(t)に適合した最適値に直流電圧E
v(t
PS
j)を設定し、可変直流電源5から出力させることができる。電圧推定調整手段9aは、
図16に示すようにハードウェア資源である最大電圧検出回路341a、変曲点検出回路342a及び電圧設定制御回路343aで構成してもよい。或いは、既に
図4を参照して説明したのと同様に、ALU339によるコンピュータ・ソフトウェア処理でハードウェア資源と等価な論理機能を実現してもよい。
【0087】
第2実施形態に係る電圧推定型充電システムにおいては、一次側回路2bと二次側回路3bの自由振動を制限し、一次側回路2bと二次側回路3bにおける過渡的な電流-電圧の変化を実現させる励起素子Q1、補助励起素子Q2、受電側制御素子Q3を備えている。このため、第2実施形態に係る電圧推定型充電システムにおいては、一次側回路2bの過渡応答特性を、新たな概念である「過渡現象振動の共鳴」によって、二次側回路3bに伝達することが可能である。制御回路の構成が単純で安価な可変直流電源5に依拠した非正弦波の過渡応答振動を用いて電磁エネルギの伝達をすることができるので、一次側回路2bに対し、商用周波数よりも高い正弦波振動を生成させる高価な交流電源回路が不要となる。
【0088】
以上のとおり、第2実施形態に係る電圧推定型充電システムによれば、電圧推定調整手段9aを備えているので、
図5Aに示したアルゴリズムと同様な手順に従い、充電式電池6のV
CS(t)がSOCに依存して変動する場合であっても、可変直流電源5の出力を調整することにより、効率良く充電式電池6を充電できるワイヤレス電力伝送が可能になる。更に、第1実施形態及びその変形例に係る電圧推定型充電システムと同様に、制御回路や周辺回路が単純で安価な可変直流電源5を使用することができるので高価なスイッチング電源が不要であり、回路構成が単純化され、制御回路側における電力損失も最小化される。
【0089】
この結果、第2実施形態に係る電圧推定型充電システムによれば、電力伝送システムの全体の構成が簡略化され軽量・小型化及び高効率化が可能になり、可変直流電源5の損失を含めた総合的な電力伝送効率を高めたワイヤレス電圧推定型充電システムを安価に製造することができる。第1実施形態及びその変形例に係る電圧推定型充電システムで述べたのと同様に第2実施形態に係る電圧推定型充電システムによれば、回路構成が単純化されるので壊れにくく回路設計が容易になる。又、充電式電池6の充電効率を高め、電力伝送の限界距離を原理的には無限大に伸ばし、電力伝送効率を原理的には100%に近い値まで高めることが可能である。
【0090】
(第2実施形態の変形例)
本発明の第2実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムは、
図17に示すように、二次側回路3cと、二次側回路3cとの二重共振で、二次側回路3cに無接触でウェイブレット状の磁気エネルギを伝送する一次側回路2bと、充電電圧を推定して、一次側回路2bに入力される直流電圧の値を推定した充電電圧に適合するように帰還制御で変更する電圧推定調整手段9aを備える。二次側回路3cは、受電側コイルL
2、及びこの受電側コイルL
2に流れる電磁エネルギで充電される充電式電池6を含む。一次側回路2bは、二次側回路3cの受電側コイルL
2に離間して対向した送電側コイルL
1、及びこの送電側コイルL
1の端子間電圧を検出する検出器28を有する。一次側回路2bは、非正弦波の過渡応答振動を、他励制御で直流電圧をパルス入力して生成し、この過渡応答振動による二次側回路3cとの二重共振で、受電側コイルL
2に無接触でウェイブレット状の磁気エネルギを伝送する。電圧推定調整手段9aは、検出器28の出力により充電電圧を推定して、一次側回路2bに入力される直流電圧の値を推定した充電電圧に適合するように帰還制御で変更する。
【0091】
図17に示すように、第2実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムの二次側回路3cは、
図16に示した第2実施形態に係る電圧推定型充電システムの二次側回路3bに、負荷制御素子Q
4を追加した構成となっている。「負荷制御素子Q
4」は、受電側制御素子Q
3と同様に、二次側回路3cの自由振動を制限し、二次側回路3cにおける過渡的な電流-電圧の変化を実現させる回路素子である。
図17に示した励起素子Q
1、補助励起素子Q
2、受電側制御素子Q
3及び負荷制御素子Q
4として、第1及び第2実施形態並びにこれらの変形例に係る電圧推定型充電システムと同様に、FET等の電力用半導体スイッチング素子を用いることが可能である。
【0092】
図17に示す実装回路においては、第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q
1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第2の還流ダイオードFWD
2が補助励起素子Q
2としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第3の還流ダイオードFWD
3が受電側制御素子Q
3としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第4の還流ダイオードFWD
4が負荷制御素子Q
4としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、それぞれ保護素子として並列接続されている。
図17に示すように、第3の還流ダイオードFWD
3は、受電側コイルL
2からの伝送電流を流す方向に設けられるので、第2の還流ダイオードFWD
2がとは反対向きに設けられているのは
図16と同様である。
図3、
図14及び
図16に示した回路と同様に、送電側コイルL
1からの還流電流が可変直流電源5に更に還流するのを防ぐため、電源側ダイオードD1が可変直流電源5と励起素子Q
1の間に直列接続されている。
【0093】
図3、
図14及び
図16に示した回路と同様に、第2実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムによれば、
図17に示すように、充電式電池6のSOCに依拠した振動特性を検出器28でモニタできる。このため、検出器28の出力を、
図17に示す電圧推定調整手段9aを介して、可変直流電源5に帰還制御することにより、充電電圧V
cs(t)に適合した最適値に直流電圧E
v(t
PS
j)を精密に設定して、可変直流電源5から出力させることができる。電圧推定調整手段9aは
図17に示すようにハードウェア資源である最大電圧検出回路341a、変曲点検出回路342a及び電圧設定制御回路343aで構成してもよい。或いは、既に
図4を参照して説明したのと同様に、ALU339によるコンピュータ・ソフトウェア処理でハードウェア資源と等価な論理機能を実現してもよい。
【0094】
第2実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムによれば、第1及び第2実施形態に係る電圧推定型充電システムと同様に、充電式電池6のV
CS(t)がSOCに依存して変動する場合であっても、電圧推定調整手段9aを備えているので、
図5Aに示したアルゴリズムと同様な手順に従い可変直流電源5の出力を調整することにより、効率良く充電式電池6を充電できるワイヤレス電力伝送が可能になる。更に、制御回路や周辺回路が単純で安価な可変直流電源5を使用することができるので高価なスイッチング電源が不要であり、回路構成は単純化され、制御回路側における電力損失も最小化される上に壊れにくくなり、回路設計も容易になる。この結果第2実施形態の変形例に係る電圧推定型充電システムによれば、電力伝送システムの全体の構成が簡略化され軽量・小型化及び高効率化が可能になり、可変直流電源5の損失を含めた総合的な電力伝送効率を原理的には100%に近い値まで高め、充電式電池6の充電効率を高め、電力伝送の限界距離を原理的には無限大に伸ばしたワイヤレス電圧推定型充電システムを安価に製造することができる。
【0095】
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態に係る電圧推定型充電システムでは、二次側回路3aからの還流成分による振動の包絡線極大値の変化が呈する変曲点から、充電電圧を推定する方法を説明した。本発明の第3実施形態に係る電圧推定型充電システムでは、第1及び第2実施形態に係る電圧推定型充電システムよりも簡単な構造により、一次側充放電電圧V
C1の特徴から充電電圧を精密に推定する方法を説明する。即ち、第3実施形態に係る電圧推定型充電システムは、
図18に示すように、受電回路27aに電磁エネルギを給電装置29cから二重共振で給電する際に、受電回路27aの充電式電池6の充電電圧を給電装置29c側で推定し、電圧推定結果を用いて車輌31aの充電式電池6を無接触充電する電圧推定型充電システムである。そして、第3実施形態に係る電圧推定型充電システムは、充電式電池6を無接触充電する給電装置29cと、給電装置29cに接続され給電装置29cに命令を送る1次側操作部33を有している。
図18では、給電装置29c側の送電側コイルL
1と車輌31a側の受電側コイルL
2とが平行に対向し、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2へ無接触で電磁エネルギが伝送されることを示す模式図を例示している。
【0096】
給電装置29cは、
図18に示すように送電側コイルL
1を円盤状の誘電体に収納した給電盤11と、給電盤11を搭載し、給電盤11と受電盤12の間隔を制御する間隔制御機構32と、間隔制御機構32に接続されたk値決定回路36と、間隔制御機構32及びk値決定回路36の両方に接続された駆動制御回路34c等を含んでいる。k値決定回路36は、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2の間の等価結合係数k
eqを決定する電子回路若しくは論理回路である。既に説明したとおり、「等価結合係数k
eq」は、交流理論で周知の結合係数K
ACと等価な物理的意味を有する擬結合係数である。即ち、等価結合係数k
eqは、過渡応答をしている2つのコイル間に定義される時間に依存する非定常状態におけるパラメータであるが、近似的にはk
eq=K
ACとすることができる。駆動制御回路34cは、送電側コイルL
1に流れる給電電流、可変直流電源5が出力する直流電圧E
v及び間隔制御機構32等を制御する。
図18は例示であるので、給電盤11を省略して送電側コイルL
1を裸の状態で使用することも、受電盤12も省略して受電側コイルL
2を裸の状態で使用することも可能である。
【0097】
図19に第3実施形態に係る電圧推定型充電システムの一次側回路2b及び二次側回路3aの一例を示す。
図14に示した回路と同様に、励起素子Q
1と補助励起素子Q
2を備える構成となっている。補助励起素子Q
2は、励起素子Q
1と擬相補的な動作をすることにより、励起素子Q
1のオフ期間中の一次側回路2bの自由減衰振動を実現させることができる。
図19に示す励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2としては、FET、SIT、BJTの他、GTOサイリスタ、SIサイリスタ等のサイリスタを含む電力用半導体スイッチング素子を用いることができる。以下においては、励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2がMOSFETであるとして説明する。
【0098】
送電側コイルL
1からの還流電流を考慮し、第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q
1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第2の還流ダイオードFWD
2が補助励起素子Q
2としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、それぞれ保護素子として並列接続されている。
図14等に示した回路と同様に、送電側コイルL
1からの還流電流が可変直流電源5に更に還流するのを防ぐため、電源側ダイオードD1が可変直流電源5と励起素子Q
1の間に直列接続されている。一次側励起回路340aからの制御信号によって、補助励起素子Q
2をオフ状態、励起素子Q
1をオン状態にして、送電側コンデンサC
1に初期電圧を印加して電荷を蓄える。補助励起素子Q
2をオフ状態では一次側回路2bは未だ形成されず、励起素子Q
1のオン状態によって、可変直流電源5、等価浮遊抵抗r
1、励起素子Q
1と第1の還流ダイオードFWD
1の並列回路及び送電側コンデンサC
1からなるRC直列回路が構成されている。
【0099】
一次側励起回路340aからの制御信号によって、励起素子Q
12をオフ状態にして、一定時間をおいて補助励起素子Q
2をオン状態にする擬相補的なオン/オフ動作をすると、送電側コンデンサC
1に蓄えられた電磁エネルギは送電側コイル電流を介して、送電側コイルL
1に蓄積される。送電側コイルL
1に電磁エネルギが蓄積されると、一次側回路2bと二次側回路3aの間の過渡現象振動の共鳴が生じる。補助励起素子Q
2をオン状態にすることにより
図3に示した回路と等価なRCL直列回路が形成され、可変直流電源5、等価浮遊抵抗r
1、励起素子Q
1と第1の還流ダイオードFWD
1の並列回路及び送電側コンデンサC
1からなるRC直列回路が消滅する。
【0100】
送電側コンデンサC1に蓄えられた電磁エネルギが送電側コイルL1に移動すると、一次側充放電電圧VC1は、負の極大値をとった後、0Vになる。一次側回路2bから二次側回路3aへの過渡現象振動の共鳴によって、受電側コイルL2に伝送された電磁エネルギは、受電側コイル電流によって受電側コンデンサC2を充電する。受電側コンデンサC2の充電が開始されると、受電側コンデンサC2の二次側充放電電圧VC2は負の極大値をとった後、正の値になる。一次側充放電電圧VC1が0Vになった時点で最大値をとる。二次側充放電電圧VC2は、負の極大値をとった後、正の値になり、一次側充放電電圧VC1が0Vになった時点で最大値をとる。
【0101】
二次側充放電電圧VC2の増加に伴って、受電側コンデンサC2に蓄積された電磁エネルギの一部によって、充電電流ICが発生し、充電式電池6に電荷が蓄えられる。受電側コンデンサC2に蓄積された電磁エネルギの他の一部は、受電側コイルL2に受電側コイル電流として還流する。充電電流ICが0になった時点で、二次側充放電電圧VC2は、充電電圧Vcsと同じ値となる。
【0102】
受電側コンデンサC
2に蓄積された電磁エネルギが受電側コイルL
2に還流すると、一次側回路2bと二次側回路3aの間の過渡現象振動の共鳴が生じ、一次側回路2bに電磁エネルギの一部が戻る。受電側コンデンサC
2に蓄積された電磁エネルギが充電式電池6及び受電側コイルL
2に移動すると、受電側コンデンサC
2は放電される。受電側コンデンサC
2が放電すると、二次側充放電電圧V
C2は、負の極大値をとった後、0Vになる。このとき、補助励起素子Q
2が導通状態を維持していれば、一次側充放電電圧V
C1は、負の極大値をとった後、正の値へ増大する振動となる。一次側充放電電圧V
C1を測定することにより、
図14に示した回路と同様に、一次側回路2bと二次側回路3aの間の過渡現象振動の共鳴の伝送効率や充電式電池6の充電の状況を検出器28でモニタすることができる。
【0103】
励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2が所定のタイミングで他励制御されることにより、可変直流電源5から出力された直流電圧Evが、単位パルス関数として入力され、過渡応答特性として減衰振動を発生させる。即ち、励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2が所定のタイミングでオン/オフ動作することに伴い、RCL並列回路の回路トポロジとRCL直列回路の回路トポロジが交互に切り替えられて周期的な振動波形が生じる。一次側回路2bと二次側回路3aの間で二重共振によるウェイブレット状電磁エネルギの送受が生じると、一次側回路2bにおいて、
図21Aに実線で例示したような包絡線が脈動する一次側充放電電圧V
C1の振動波形が生成される。即ち、一次側充放電電圧V
C1の包絡線が脈動波形は、時刻2msから時刻3msにかけて減少し、二次側回路3aからの還流成分により時刻3msから時刻5msにかけて増大し、時刻t
pで包絡線極大値V
EC1maxになる脈動波形を構成している。
【0104】
即ち、一次側回路2bの電磁エネルギが二次側回路3aに伝送されるため、一次側充放電電圧V
C1の振動振幅は時刻2msから時刻3msにかけて減少し、時刻t
resで極小値となっている。そして、時刻3msから時刻5msにかけて二次側回路3aの電磁エネルギが一次側回路2bに還流され、還流成分により一次側充放電電圧V
C1の振動振幅は増大して包絡線極大値になる。一方、
図21Aに破線で示した二次側充放電電圧V
C2の振動の包絡線の脈動波形は、一次側充放電電圧V
C1の包絡線の脈動波形とは異なる位相である。二次側充放電電圧V
C2の振動波形は、一次側回路2bの検出器28で直接モニタすることができない。理想的な一次側回路2bと二次側回路3aの間での二重共振においては、二次側充放電電圧V
C2の包絡線の脈動波形と一次側充放電電圧V
C1の包絡線の脈動波形は逆位相となって、ウェイブレット状電磁エネルギが交互に送受されるはずである。しかし、
図21Aに示すように、一次側充放電電圧V
C1の電磁エネルギが極小となる時刻t
resと二次側充放電電圧V
C2の電磁エネルギが極大になる時刻t
xが一致していない。即ち、二次側充放電電圧V
C2の包絡線の脈動波形と一次側充放電電圧V
C1の包絡線の脈動波形は、
Δt=t
res―t
x ……(15)
だけ、互いに逆位相の関係からずれている。
【0105】
一次側回路2bと二次側回路3aとの結合がない場合(k
eq=0)については、一次側充放電電圧V
C1の減衰振動の波形は式(13b)で表現できることを既に示した。一次側回路2bと二次側回路3aとの結合が有る場合については、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2の間の等価結合係数k
eqを用いることにより、一次側充放電電圧V
C1の振動波形を、式(16)の減衰振動で近似的に示すことができる:
【数14】
式(16)において、τ=(2L
1)/R
L1、固有角周波数ω
O=(L
1C
1)
-1/2である。なお、
図19では、送電側コイルL
1と、送電側コイルL
1の寄生抵抗R
L1とが直列接続された等価回路が便宜上表示されているが、寄生成分の表示であって、物理的な構造として、送電側コイルL
1に寄生抵抗R
L1が意図的に外部接続された構造を示すものではない。式(16)においてk
eq=0とすれば、式(13b)のα
OFF≪β
OFFの場合と同様な近似表現になる。
【0106】
既に述べたとおり、一次側回路2bと二次側回路3aの間での理想的な二重共振においては、二次側充放電電圧V
C2の包絡線の脈動波形と一次側充放電電圧V
C1の包絡線の脈動波形は逆位相であるので、二次側充放電電圧V
C2の振動波形も式(16)を逆位相にした式で近似表現できる。二次側回路3aは、
図19に示すように、送電側コイルL
1に離間して対向し送電側コイルL
1から無接触で磁気エネルギを受け取る受電側コイルL
2、受電側コイルL
2に並列接続され受電側コイルL
2に蓄積された磁気エネルギを静電エネルギとして蓄積する受電側コンデンサC
2を有する。二次側回路3aは、受電回路27aに受電側コイルL
2を加えた構成である。
図19では、送電側コイルL
2と、送電側コイルL
2の寄生抵抗R
L2が直列接続された等価回路表示になっているが、物理的な構造として、送電側コイルL
2に寄生抵抗R
L2を意図的に外部接続された構造を示すものではない。
【0107】
充電式電池6は、充電電圧VCSよりも大きな電圧が充電式電池6の端子間に印加されなくては充電できない。したがって、受電側コンデンサC2の端子間電圧として定義される二次側充放電電圧VC2は、充電電圧VCSより少し大きい必要がある。浮遊抵抗r2の電圧降下を無視すれば、定常状態においてはVC2=VCSになる。このため、二次側充放電電圧VC2の振動の最大振幅は、式(16)に示すようにVC2=Vcsのときである。
【0108】
図21Aにおいて破線で囲んだ時刻t
xから時刻t
res付近における、二次側充放電電圧V
C2の振動波形の一部と一次側充放電電圧V
C1の振動波形の一部を、
図21Bに拡大して示している。理想的な二重共振が実現でき、二次側充放電電圧V
C2の振動波形が式(16)と同様な式で近似表現できるとすれば、
図21Bにおいて、一次側充放電電圧V
C1の電磁エネルギが極小となる時刻t
resとにおける二次側充放電電圧V
C2の電圧値V
estは、
【数15】
と表現できる。
図21Bから分かるように、式(17)の右辺のV
xは電磁エネルギが極大になる時刻t
xにおける二次側充放電電圧V
C2の振幅値である。
【0109】
図21Bに示すように、二次側充放電電圧V
C2の包絡線の脈動波形と一次側充放電電圧V
C1の包絡線の脈動波形がΔtだけ理想的な二重共振の場合よりずれる。このため、二次側回路3aからの還流成分による一次側充放電電圧V
C1の極大値として測定できる二次側充放電電圧V
C2の極大値(=充電電圧V
CS)は、
ΔV=V―V
res ……(18)
だけ、誤差ΔVを含む。しかし、二重共振の動作においては、電圧値算出回路342bが誤差ΔV分の補正をすれば、充電電圧V
CSは、
図19に示した二次側回路3aからの還流成分による一次側充放電電圧V
C1の包絡線極大値から推定できる。したがって、二重共振の特徴を利用して、充電電圧V
CSの推定に際し、二次側回路3a側の計測を不要とすることができる。
【0110】
二次側回路3aは、
図19に示すように、負荷側ダイオードD2と充電式電池6との直列接続回路が、受電側コンデンサC
2及び受電側コイルL
2に対し、それぞれ並列接続された構成になっている。充電式電池6のインピーダンスが∞と仮定できる場合には、二次側回路3aはRCL直列回路として近似出来るが、実際には複雑な回路である。負荷側ダイオードD2は、アノードが二次側回路3a側、カソードが充電式電池6側を向くように接続され、充電電流I
Cの流れる方向を一方向に限定している。
図19では、負荷側ダイオードD2のオン抵抗を含む回路配線の浮遊抵抗がr
2であるとして示されているが、受電側コンデンサC
2の寄生抵抗の表示は無視している。したがって、二次側回路3aは、受電側コイルL
2、受電側コンデンサC
2、浮遊抵抗r
2及び寄生抵抗R
L2を備えたRCL共振回路である。そして、それぞれが共振回路である一次側回路2bと二次側回路3aの過渡応答振動が共振(共鳴)する二重共振によって、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2に電磁エネルギがワイヤレス給電される。
【0111】
図18に示す駆動制御回路34cは、給電盤11を制御して、一次側回路2bと二次側回路3a二重共振に依拠した電磁エネルギの移動に関する様々な駆動制御を行う。このため、駆動制御回路34cは、
図19に示すように、電圧値算出回路342bの算出した電圧値から、可変直流電源5の出力である直流電圧Evを調整する電圧推定調整手段9bを備える。電圧推定調整手段9bは
図19に示すようにハードウェア資源(実体電子回路)である最大電圧検出回路341a、電圧値算出回路342b及び電圧設定制御回路343aで構成してもよい。或いは、
図20に示すように、ALU339によるコンピュータ・ソフトウェア処理で可変直流電源5を調整して、最適な直流電圧Evを出力させるようにしてもよい。
【0112】
電圧推定調整手段9bの機能を、コンピュータ・ソフトウェア処理で実施する場合は、駆動制御回路34cは、
図20に示すように、データ記憶装置348dと、プログラム記憶装置348bと、出力装置348cのそれぞれにALU339が接続された構成が可能である。データ記憶装置348dには、
図22に示したような充電電圧V
CSと還流最大値V
EC1maxとの相関データが、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2の間の等価結合係数k
eqをパラメータとして整理されて格納されている。
図22は、等価結合係数k
eqを特定した場合、特定の等価結合係数k
eqに関して、端子間電圧V
CSと還流最大値V
EC1maxとが比例関係になることを、実測値の丸印及理論値の実線で示している。
図20に論理的な内部構造をモデル化して示すように、ALU339は、演算シークエンス制御回路344と、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345bと、一次側電圧検出制御回路346と、最大電圧検出回路341aと、電圧値算出回路342bと、電圧設定制御回路343aと、可変直流電源制御回路347と、Aバス349aと、Bバス349bとから主に構成された構成が例示可能である。
図20の例示構造においては、演算シークエンス制御回路344は、ALU339の内部における演算処理のシークエンスを制御する。
【0113】
演算シークエンス制御回路344は、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、最大電圧検出回路341a、電圧値算出回路342b、電圧設定制御回路343a及び可変直流電源制御回路347のそれぞれの処理手順をコンピュータ・ソフトウェア・プログラム(電圧推定型充電制御プログラム)に従って制御する。
図20では、Aバス349aに、一次側励起回路340a、伝送間隔制御回路340c及びk値決定回路36が接続されている構成が例示されている。一方、Bバス349bには、プログラム記憶装置348b、出力装置348c及びデータ記憶装置348dが接続されている構成が例示されているが、
図20に示す構成に限定されるものではない。プログラム記憶装置348bには、
図20に例示した一連の電圧推定型充電方法の処理の流れに等価なアルゴリズムを実行する電圧推定型充電制御プログラムを格納しておくことができる。
【0114】
図20に示すようなアルゴリズムによれば、ALU339は、
図18に示した給電盤11を制御して、一次側回路2bと二次側回路3aを二重共振させる駆動制御と、可変直流電源5の出力を調整できる。なお、
図20に示すアルゴリズムの実施に際し、事前に
図22に示したような充電電圧V
CSと還流最大値V
EC1maxとの相関データを、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2の間の等価結合係数k
eqをパラメータとし、それぞれのパラメータに対して取得して整理し、データ記憶装置348dに格納しておくことが前提である。そして、
図20に例示したフローチャートのステップS41において、ALU339の励起条件設定回路345aは、一次側励起回路340aが励起素子Q
1と補助励起素子Q
2を他励制御するタイミングを設定し、一次側励起回路340aに命令を出力する。このステップS41においては同時に、ALU339の伝送条件設定回路345bが、間隔制御機構32に給電盤11と受電盤12の間隔を最適値となるように命令を出力して制御する。
【0115】
次に、
図20のステップS42において、k値決定回路36は、間隔制御機構32から送電側コイルL
1から受電側コイルL
2の間の距離の情報、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2の間の角度の情報を入力し、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2へとの間の等価結合係数k
eqの値を決定する。等価結合係数k
eqの値を決定に際し、k値決定回路36は事前に入力された送電側コイルL
1と受電側コイルL
2の相対的サイズの情報、並びに送電側コイルL
1と受電側コイルL
2のそれぞれの形状の情報等も用いるものとする。k値決定回路36が決定した対象とする車輌31aに関する等価結合係数k
eqの値は、データ記憶装置348dに格納される。
【0116】
更に、
図20のステップS43において、ALU339の励起条件設定回路345aは、初期値として、可変直流電源5からデフォルトの直流電圧E
vを初期値として出力させる。デフォルトの直流電圧E
vが初期値として供給されると、一次側励起回路340aは励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2を他励でオン/オフ動作にさせ、直流電圧E
vをパルス入力することによって、一次側回路2bに過渡現象振動を生成させる。一次側回路2bの過渡現象振動の位相と二次側回路3aの過渡現象振動の位相が同期することにより一次側回路2bと二次側回路3aの間の電磁エネルギの送受の振動が発生する。即ち、二次側回路3aから、初期直流電圧E
vに対応した二次側回路3aの情報を有した還流電流が一次側回路2bに還流する。二次側回路3aの情報を有した還流電流は、一次側回路2bの送電側コンデンサC1の端子間に一次側充放電電圧V
C1として現れる。
【0117】
図20のステップS44において、ALU339の一次側電圧検出制御回路346は、検出器28に初期直流電圧E
vに依拠した一次側充放電電圧V
C1を逐次測定させる。検出器28が検出した初期直流電圧E
vに依拠した一次側充放電電圧V
C1の時系列データは、データ記憶装置348dに格納される。その後、ステップS45において、ALU339の最大電圧検出回路341aは、データ記憶装置348dから、直流電圧E
vに依拠した一次側充放電電圧V
C1の時系列データを読み出し、二次側回路3aからの還流成分による振動の時系列データの包絡線極大値(
図21A参照。)を「還流最大値V
EC1max」として決定する。決定した直流電圧E
vの場合の一次側充放電電圧V
C1の時系列データの還流最大値V
EC1maxは、データ記憶装置348dに格納する。
【0118】
その後、
図20のステップS46において、ALU339の電圧値算出回路342bは、データ記憶装置348dから、直流電圧E
vの場合の還流最大値V
EC1max、端子間電圧V
CSと還流最大値V
EC1maxとの相関データ(ルックアップ・テーブル)及び等価結合係数k
eqの値を読み出す。そして、電圧値算出回路342bは、端子間電圧V
CSと還流最大値V
EC1maxとの相関データを参照して、読み出された等価結合係数k
eqの場合の還流最大値V
EC1maxに対応する充電電圧V
CSを推定する。そして、ステップS46において、ALU339の電圧設定制御回路343aは、推定された端子間電圧V
CSに対して最適な直流電圧E
vの値を決定する。
【0119】
その後、ステップS47において、ALU339の可変直流電源制御回路347は、電圧設定制御回路343aが決定した最適な充電効率の得られる電圧を出力するように、可変直流電源5の動作を制御する。充電が進み、充電電圧VCSがVCS(t)の形で時間tに依存して増大する場合は、ステップS44に戻り、同様な処理を繰り返せばよい。二次側充放電電圧VC2の振動波形は一次側回路2bの検出器28で直接モニタすることができないが、以上の説明のとおり第3実施形態に係る電圧推定型充電システムによれば、充電電圧VCSを一次側回路2bの計測のみによって推定できる。したがって、第3実施形態に係る電圧推定型充電システムによれば、充電電圧VCSに適合した特定の直流電圧Evを、一次側回路2bの計測のみによって算出できる。そして、算出された直流電圧Evが一次側回路2bに単位パルス関数として入力されることにより、ウェイブレット状の減衰振動が励起される。この結果、一次側回路2bから二次側回路3aに二重共振で電磁エネルギが伝送されることにより、効率のよい充電式電池6の充電ができる。
【0120】
図20に示すALU339を構成するハードウェア資源としての励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、最大電圧検出回路341a、電圧値算出回路342b、電圧設定制御回路343a及び可変直流電源制御回路347は、論理的な機能に着目したハードウェア資源を形式的に表現しているのであって、必ずしも、半導体チップ上に物理的な領域としてそれぞれ独立して存在する機能ブロックを意味するものではないが、PLDの「論理ブロック」のような半導体チップ上に実装されたプログラム可能な論理コンポーネント等の現実に存在する構成を否定するものでもない。ALU339の一部の構成又はすべての構成をFPGAのようなPLDで構成した場合は、
図20に示した演算シークエンス制御回路344のプログラムカウンタやAバス349a及びBバス349b等のデータバスは省略可能である。
【0121】
更に、駆動制御回路34cは、
図19に示す励起素子Q
1と補助励起素子Q
2をスイッチングさせる駆動タイミングを選択し、選択した駆動タイミングで、
図19に示した一次側励起回路340aを動作させる命令を出力する。一次側回路2bの外部回路となる一次側励起回路340aは、
図19に示した励起素子Q
1と補助励起素子Q
2の制御端子に制御信号を送り、励起素子Q
1と補助励起素子Q
2をオン・オフ駆動する。励起素子Q
1と補助励起素子Q
2がオン・オフ駆動されることにより、一次側回路2bが構成する並列回路と直列回路を交互に切り替える。
【0122】
図19に示す駆動制御回路34cに含まれるALU339を含んでコンピュータシステムが構成される。駆動制御回路34c等を含むコンピュータシステムにおいて、データ記憶装置348dは、複数のレジスタ、複数のキャッシュメモリ、主記憶装置、補助記憶装置を含む一群の内から適宜選択された任意の組み合わせとすることも可能である。又、キャッシュメモリは1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの組み合わせとしてもよく、更に3次キャッシュメモリを備えるヒエラルキーを有しても構わない。PLDによって、ALU339の一部又はすべてを構成した場合は、データ記憶装置348dは、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。更に、ALU339は、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造で、PLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させてもよい。
【0123】
以上のとおり、第3実施形態に係る電圧推定型充電システムによれば、第1及び第2実施形態に係る電圧推定型充電システムに比して、より簡単な構造と手法により一次側充放電電圧VC1の振動の測定のみで、充電式電池6の充電電圧を精密に測定でき、この推定結果を可変直流電源5の出力する電源電圧の制御に用いることができる。したがって、第3実施形態に係る電圧推定型充電システムによれば、充電式電池6の種類や特性が異なる場合であっても、二次側回路3aに新たな計測器や制御回路やシステムを追加することなく、効率の高い充電式電池6のワイヤレス充電ができる。
【0124】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第3実施形態及びその変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、第1~第3実施形態の説明においては、EV等の車載の充電式電池6を無接触電力伝送(ワイヤレス電力伝送)で充電する場合を例示的に説明したが、第1~第3実施形態に係る振動増幅回路は、車載の充電式電池6の充電電圧を一次側回路2a,2bのみの計測によって推定し、推定結果を用いて無接触充電する電圧推定型充電システムのみに限定されるものではない。
【0125】
第1~第3実施形態で説明したような、充電式電池6のSOCに依拠した振動特性をモニタして、可変直流電源5の動作を帰還制御する顕著な効果と、そのための技術的思想は、多様な充電式電池を充電する種々の技術分野に適用し応用することが可能である。以上のとおり、本発明は本明細書及び図面に記載していない様々な実施形態、変形例、運用技術等を含むと共に、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0126】
2a,2b…一次側回路、3a,3b,3c…二次側回路、5…可変直流電源、6…充電式電池、9a,9b…電圧推定調整手段、11…給電盤、12…受電盤、21…1次側通信部、22…2次側通信部、33…1次側操作部、27a,27b…受電回路、28…検出器、29a,29b,29c…給電回路、30…平坦面、31a,31c…車輌、32…間隔制御機構、33…1次側操作部、34a,34b,34c…駆動制御回路、36…k値決定回路、339…算術論理回路(ALU)、340a…一次側励起回路、340c…伝送間隔制御回路、341a…最大電圧検出回路、342a…変曲点検出回路、342b…電圧値算出回路、343a…電圧設定制御回路、344…演算シークエンス制御回路、345a…励起条件設定回路、345b…伝送条件設定回路、346…一次側電圧検出制御回路、347…可変直流電源制御回路、348a…伝送データ記憶装置、348b…プログラム記憶装置、348c…出力装置、348d…データ記憶装置、349a…Aバス、349b…Bバス