(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146596
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】充電制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241004BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J50/12
H02J7/00 S
H02J7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059597
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】間形 哲也
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 弘
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BB02
5G503FA06
5G503FA16
5G503GB08
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】充電式電池をワイヤレス充電する場合に、充電式電池や充電式電池に接続された負荷回路が損傷することのない充電制御システムを提供する。
【解決手段】送電側コイルL
1に非正弦波の過渡応答振動を供給する一次側回路2aと、受電側コイルL
2、受電側コイルL
2に並列接続された受電側コンデンサC
2、受電側コイルL
2と受電側コンデンサC
2の一方の接続ノード側に一方の主電極端子を接続した遮断素子Q
85、遮断素子Q
85の他方の主電極端子に正極端子を接続し、負極端子を受電側コイルL
2と受電側コンデンサC
2の他方の接続ノードに接続した充電式電池6を有する二次側回路3aと、正極端子と負極端子の間に接続された電圧測定回路26aと、電圧測定回路36aの出力により遮断素子Q
85を遮断状態にする制御手段(過剰給電遮断手段)を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電側コイルを有し、該送電側コイルにステップ入力電圧で生成した非正弦波の過渡応答振動を供給する一次側回路と、
前記送電側コイルに離間して対向した受電側コイル、該受電側コイルに並列接続された受電側コンデンサ、前記受電側コイルと前記受電側コンデンサの一方の接続ノードにアノードを接続した負荷側ダイオード、該負荷側ダイオードのカソードに一方の主電極端子を接続した遮断素子、該遮断素子の他方の主電極端子に正極端子を接続し負極端子を前記受電側コイルと前記受電側コンデンサの他方の接続ノードに接続した充電式電池を有する二次側回路と、
前記正極端子と前記負極端子の間に接続された電圧測定回路と、
該電圧測定回路の出力を入力し、あらかじめ設定した電圧を検出した場合、前記遮断素子を遮断状態にする制御手段と、
を備えることを特徴とする充電制御システム。
【請求項2】
前記一次側回路は、
階段状に前記ステップ入力電圧を出力する直流電源と、
前記直流電源の高電位側端子に一方の端子を接続し、前記一次側回路の外部回路からの制御信号で動作する励起素子と、
前記励起素子の他方の端子に一方の端子が接続され、前記直流電源の低電位側端子の他方の端子を接続した送電側コンデンサと、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の充電制御システム。
【請求項3】
前記正極端子と前記負極端子の間に負荷回路が接続されていることを特徴とする請求項2に記載の充電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無接触電力伝送システムに関し、特に一次側回路の過渡応答振動と二次側回路の過渡応答振動の二重共振により、一次側回路から二次側回路へ電磁エネルギを伝送して、二次側回路に接続された充電式電池を充電する際に、過放電、過充電、誤給電が防止できる充電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム(Li)イオン電池等の充電式電池は、満充電電圧を超えて過充電されると、特性が劣化したり安全性が低下したりするおそれがある。そのため、このような充電式電池を充電する充電回路は、充電式電池が満充電になったことを検出して充電を停止することで、充電式電池が過充電にならないように充電を制御する必要がある。更に、充電式電池の使用下限領域を下回ったときには速やかに充電する必要がある。
【0003】
本発明者らは、一次側回路における過渡応答振動(過渡現象による振動)と二次側回路における過渡応答振動の間の共鳴(二重共振)により効率の良いウェイブレット状の電磁波の伝送が可能であることを見いだし、非交流理論による無接触伝送装置を提案した(特許文献1参照。)。「非交流理論」とは、通常の交流理論が対象とする振幅一定の正弦波交流信号を取り扱わず、非正弦波の過渡応答振動を対象とする理論である。特許文献1に記載の一次側回路では、外部の制御回路によって一次側駆動スイッチとなる励起素子のオン/オフが他励制御されて、RCL並列回路の回路トポロジとRCL直列回路の回路トポロジが交互に切り替えられ、これに伴い2種類の過渡現象が交互に切り替えられる動作をする。
【0004】
更に、本発明者らは、オフ期間を長くし、オフ時間中の自由減衰振動を許容するモードにより、二重共振の伝送効率を高める技術も提案した(特許文献2参照。)。しかしながしかしながら、特許文献1及び2に記載された発明では、二次側回路に充電式電池を接続して充電式電池を充電する場合に、充電式電池の電圧を別な何らかの手段で計測し、その結果で充電するかしないかの判断をする必要があった。又、充電式電池や充電式電池に接続された負荷回路が過電圧で損傷する問題があった。更に、充電式電池を接続していない状態にも関わらず、二次側回路に誤給電してしまうと、負荷回路が損傷する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7116288号明細書
【特許文献2】特開2021-182787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点を鑑み、本発明は、充電式電池をワイヤレス充電する場合に、充電電圧を適切に制御し、かつ充電式電池に接続された負荷回路が損傷することのない過充電防止機能を備えた充電制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、(a)送電側コイルを有し、この送電コイルにステップ入力電圧で生成した非正弦波の過渡応答振動を供給する一次側回路と、(b)送電側コイルに離間して対向した受電側コイル、この受電側コイルに並列接続された受電側コンデンサ、受電側コイルと受電側コンデンサの一方の接続ノードにアノードを接続した負荷側ダイオード、この負荷側ダイオードのカソードに一方の主電極端子を接続した遮断素子、この遮断素子の他方の主電極端子に正極端子を接続し負極端子を受電側コイルと受電側コンデンサの他方の接続ノードに接続した充電式電池を有する二次側回路と、(c)正極端子と負極端子の間に接続された電圧測定回路と、(d)この電圧測定回路の出力を入力し、あらかじめ設定した電圧を検出した場合、遮断素子を遮断状態にする制御手段を備える充電制御システムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充電式電池をワイヤレス充電する場合に、充電電圧を適切に調整し充電式電池に接続された負荷回路が損傷することのない過充電防止機能を備えた充電制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る充電制御システムの一例の概略構造を示す模式図である。
【
図2A】第1実施形態に係る充電制御システムの充電対象として用いられる充電式電池の電池内部保護回路の一例を説明する模式的な等価回路である。
【
図2B】
図2Aに示した充電式電池を構成している電池モジュールの要素となる各電池セルを等価回路で説明する模式図である。
【
図2C】24Vクラスの充電式電池の使用領域等を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る充電制御システムの一例を構成する一次側回路と二次側回路の概略を示す回路図である。
【
図4】第1実施形態に係る充電制御システムの一例を構成する二次側回路に接続される負荷回路の構成の概略を示す回路図の一例である。
【
図5】オフ期間を長くしてオフ期間の自由減衰振動を許容するモードにおける、一次側充放電電圧及び一次側充放電電圧の時間軸に沿った変化を説明する模式図である。
【
図6】1周期毎、励起素子を毎回オン状態にするモードの場合における、一次側充放電電圧の時間軸に沿った変化を説明する模式図である。
【
図7A】充電式電池の端子間電圧をモニタリングして充電式電池と負荷回路を二次側回路から切り離す制御手段(過剰給電遮断手段)をコンピュータ・ソフトウェア処理で実現する場合の算術論理回路の内部の論理的な構造を示すブロック図である。
【
図7B】
図7Aに示した算術論理回路を用いて、充電式電池の端子間電圧をモニタリングして充電式電池と負荷回路を二次側回路から切り離す処理を実行する場合の、コンピュータ・ソフトウェア処理のアルゴリズムを説明するフローチャートの一例である。
【
図8】充電式電池と負荷回路を二次側回路から切り離した場合の、一次側回路の振動波形の変化を説明する図である。
【
図9A】二次側回路からの還流による一次側充放電電圧の変化をモニタリングして一次側回路を停止させる一次側停止命令手段をコンピュータ・ソフトウェア処理で実現する場合の算術論理回路の内部の論理的な構造を示すブロック図である。
【
図9B】
図9Aに示した算術論理回路を用いて、二次側回路からの還流による一次側充放電電圧の変化をモニタリングして一次側回路を停止させる処理を実行する場合の、コンピュータ・ソフトウェア処理のアルゴリズムを説明するフローチャートの一例である。
【
図10】二次側回路との結合がない場合において、他励動作する一次側回路の励起素子による一次側回路の過渡応答を説明する回路図である。
【
図11】
図10に示した励起素子が遮断状態になり、一次側回路のRCL並列回路がRCL直列回路に強制的に切り替えられた場合の一次側回路の過渡応答を説明する回路図である。
【
図12】第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムの一例を構成する一次側回路と二次側回路の概略を示す回路図である。
【
図13】第1実施形態の第3変形例に係る充電制御システムの一例を構成する一次側回路と二次側回路の概略を示す回路図である。
【
図14】本発明の第2実施形態の第1変形例に係る充電制御システムの一例を、二次側回路に接続される負荷回路に着目して示す回路図である。
【
図15】第2実施形態の第1変形例に係る充電制御システムの一例を、二次側回路に接続される負荷回路に着目して示す回路図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係る充電制御システムの一例の概略構造を示す模式図である。
【
図17】第3実施形態に係る充電制御システムの一例を構成する一次側回路と二次側回路の概略を示す回路図である。
【
図18A】二次側回路からの還流による一次側充放電電圧の変化をモニタリングして、充電式電池と負荷回路を二次側回路から切り離す過剰電圧への到達を判定する過剰電圧判定手段をコンピュータ・ソフトウェア処理で実現する場合の算術論理回路の内部の論理的な構造を示すブロック図である。
【
図18B】
図18Aに示した算術論理回路を用いて、二次側回路からの還流による一次側充放電電圧の変化をモニタリングして、充電式電池と負荷回路を二次側回路から切り離す過剰電圧への到達を判定する処理を実行する場合の、コンピュータ・ソフトウェア処理のアルゴリズムを説明するフローチャートの一例である。
【
図19】本発明の第1実施形態に係る充電制御システムの一例の概略構造を示す模式図である。
【
図20】充電式電池の端子間電圧をモニタリングして充電式電池と負荷回路を二次側回路から切り離す命令を通信部に伝達する制御手段(過剰給電遮断手段)をクラウド・コンピューティングのソフトウェア処理で実現する場合の算術論理回路の内部の論理的な構造を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の第1~第4実施形態並びにそれらの変形例を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
以下に示す第1~第4実施形態並びにそれらの変形例は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。更に、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る充電制御システムは、
図1に示すように、動力駆動部27aを有する車輌31aにウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを給電回路29aから無接触給電する際に、過充電や誤給電を防止できる電力伝送システムである。「ウェイブレット状」とは、ステップ入力で過渡応答振動を励起した場合に固有な波形であり、時間的に局在した電磁波の減衰振動を意味する。動力駆動部27aは、充電対象としての充電式電池6と、充電式電池6の電力を用いて車輌31aを走行させる動力駆動部としての負荷回路8aを備える。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態に係る充電制御システムは、動力駆動部27aにウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを無接触で給電する給電回路29aと、給電回路29aに接続され、給電回路29aに命令を送る1次側操作部33を有している。第1実施形態に係る充電制御システムは更に、給電回路29aに対向し、車輌31a内に搭載される受電盤12、2次側通信部22、及び2次側操作部23等も備えている。
図1では、給電回路29a側の送電側コイルL
1と車輌31a側の受電側コイルL
2が鉛直方向に対向し、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2へ無接触でウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギが受電側コイルL
2に無接触で伝送されることを示す模式図を示しているが、単なる例示に過ぎない。水平方向の対向等種々の方式を含みうる。
【0014】
給電回路29aは、
図1に示すように送電側コイルL
1を円盤状の誘電体に収納した給電盤11と、送電側コイルL
1に流れる給電電流を制御する車輌側制御回路34bと、2次側通信部22から受電側コンデンサC
2の端子間電圧等の動力駆動部27a側の情報を受信し、車輌側制御回路34bに伝達する1次側通信部21を有している。1次側通信部21は、2次側通信部22との間で無接触給電に必要な様々な情報を、無線通信や光通信でやりとりすることができる。1次側通信部21と2次側通信部22の間での無線通信には微弱電波による通信が可能である。給電回路29aと動力駆動部27aとは、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2を介して、ウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを、互いに送受する振動を繰り返す二重共振をする。「二重共振」とは、
図3に例示したような一次側回路2aの非正弦波の過渡応答振動と二次側回路3aの非正弦波の過渡応答振動のタイミングを同期させた、過渡応答振動と過渡応答振動の間の共鳴現象である。
【0015】
動力駆動部27aの充電対象である充電式電池6は、
図2Aに示すように、電池モジュール61と電池内部保護回路6
prtを有する。
図2Aの右側には、充電式電池6が有する正極端子N
11と負極端子N
12を模式的に示している。正極端子N
11及び負極端子N
12は、非充電時には負荷回路8aに接続され、充電時には二次側回路3aに接続される。電池モジュール61は、複数の電池セル61
1,61
2,……,61
(j-1),61
j,61
(j+1),……(以下において「電池セル61
j」と包括的に表記する。)を有する。電池セル61
jの個数は特に限定されない。複数の電池セル61
jは、直列、並列、又は直列及び並列の組合せで互いに接続される。電池セル61
jは、例えばラミネート型等が採用可能である。
【0016】
電池セル61
jのそれぞれは、例えば
図2Bに示すような浮遊抵抗r
s0,r
s1,r
s2及び内部容量C
s1,C
s2の直並列回路に、開回路電圧(OCV)の起電力を発生する電源が直列接続された等価回路でモデル的に表現される。種々の等価回路が提案されているが、
図2Bに示す浮遊抵抗r
s0,r
s1,r
s2及び内部容量C
s1,C
s2の直並列回路の表示は、充放電による電池セル61
jの金属と溶液界面で起こる電荷の移動に起因した応答特性と、溶液内での物質の拡散によって生じる応答特性に寄与する等価回路成分を表現している。例えば、電池セル61
jがリチウム(Li)イオン電池であれば、リチウムイオン電池の内部には集電体や電界液の抵抗、電池内の界面にできる電気的2重層の内部容量や内部抵抗が含まれる。電池セル61
jは、給電回路29aから受電盤12を介して二重共振によって供給されるウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを蓄える。充電率(SOC)の変化に依存して個々の電池セル61
jの端子間電圧V
CSjは、それぞれ変動する。
【0017】
図2Aに示すように、電池内部保護回路6
prtは、保護制御回路62、遮断素子Q
6a,Q
6b及びヒューズ63を有する。保護制御回路62は、バッテリラインBLに接続される電源入力端子Vccと、グランドラインGLに接続されるグランド端子GNDとを備えるモノリシックな半導体集積回路である。保護制御回路62は、電池モジュール61の電力によって駆動される。電池モジュール61の電力は、電池モジュール61の正極側(+)から電源入力端子Vccに供給される。保護制御回路62は、電圧検出回路67により出力される電圧検出信号を受信する。第1実施形態に係る充電制御システムの電圧検出回路67は、バッテリラインBLの電圧を保護制御回路62に供給するラインである。電圧検出信号は、保護制御回路62の電圧検出端子Vに入力される。
【0018】
保護制御回路62は、電圧検出信号により、電池モジュール61の電圧を計測する。保護制御回路62は、電流検出回路64により出力される電流検出信号を受信する。電流検出信号は、保護制御回路62の電流検出端子Iに入力される。保護制御回路62は、電流検出信号により、電池モジュール61の電流を計測する。保護制御回路62は、温度検出回路68により出力される温度検出信号を受信する。温度検出信号は、保護制御回路62の温度検出端子Tに入力される。保護制御回路62は、温度検出信号により、電池モジュール61の温度を計測する。
【0019】
保護制御回路62は、出力遮断素子Q6aを駆動させるための駆動信号を出力遮断素子Q6aに出力する。出力遮断素子Q6aは、電池モジュール61の正極側(+)と正極端子N11との間のバッテリラインBLに設けられている。駆動信号は、保護制御回路62の充電/放電制御端子CHG/DCGから出力される。出力遮断素子Q6aは、ノーマリオフの素子であり、駆動信号が入力されていない時に遮断状態になる素子である。出力遮断素子Q6aは、電池モジュール61と外部とを電気的に導通/遮断することが可能である。出力遮断素子Q6aは、電池モジュール61の充電時又は放電時の電流の最大値よりも充分に大きい電流容量を有する素子である。
【0020】
保護制御回路62は、検出された電圧、電流及び温度に基づいて、電池モジュール61の異常を検出するように構成されている。保護制御回路62により異常が検出されると、保護制御回路62から出力されるフェール信号により、内部遮断素子Q6bが駆動される。フェール信号は、保護制御回路62のパワーフェール端子PFから出力される。保護制御回路62は、電池モジュール61の異常として、少なくとも、過放電状態を検出する。保護制御回路62は、他にも、例えば、過充電状態を検出してもよい。
【0021】
図2Aに示すように、ヒューズ63は、バッテリラインBLと保護制御回路62との間に設けられている。ヒューズ63は、非復帰型素子である。ヒューズ63が切断されていない時、電池モジュール61の電力がヒューズ63を通って保護制御回路62に供給される。ヒューズ63が切断されると、電池モジュール61から保護制御回路62への電力供給が遮断される。
【0022】
内部遮断素子Q6bは、ヒューズ63と保護制御回路62との間のノードと、グランドラインGLとを電気的に接続する。内部遮断素子Q6bは、電池モジュール61の異常が検出されていない時(即ち正常時)に遮断状態である。内部遮断素子Q6bが遮断状態である時、電池モジュール61からヒューズ63を通って保護制御回路62に電流が流れる。この時にヒューズ63に流れる電流は小さく、ヒューズ63を切断できない。一方、内部遮断素子Q6bは、電池モジュール61の異常が検出された時に保護制御回路62から出力されるフェール信号に基づいてターン・オンされる。内部遮断素子Q6bが導通状態である時、電流が電池モジュール61からヒューズ63及び内部遮断素子Q6bを通ってグランドラインGLに流れ、短絡が生じる。そのため、ヒューズ63に流れる電流は大きく、ヒューズ63を切断できる。内部遮断素子Q6bがターン・オンされた時に、ヒューズ63を切断可能な電流が電池モジュール61からヒューズ63に流れる。
【0023】
電池内部保護回路6prtでは、保護制御回路62が異常を検出した場合に、保護制御回路62はフェール信号を内部遮断素子Q6bに出力する。これにより、内部遮断素子Q6bはターン・オンされ、ヒューズ63が遮断される。電池モジュール61から保護制御回路62への電力供給が遮断される。保護制御回路62の暗電流による過放電の進行が抑制され得る。保護制御回路62の停止により、保護制御回路62から出力遮断素子Q6aへの駆動信号の出力が停止する。その結果、出力遮断素子Q6aは遮断状態されるので、電池モジュール61と外部とが電気的に遮断され、電池モジュール61は利用不可となる。
【0024】
図1に示すように、第1実施形態に係る充電制御システムは、動力駆動部27aにウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを無接触で給電して動力駆動部27aの充電式電池6を充電する給電回路29aと、給電回路29aに接続され、給電回路29aに命令を送る1次側操作部33を有している。1次側操作部33には種々の構造や機構が採用可能で、例えば1次側操作部33が撮像装置を備えるようにしてもよい。撮像装置を備える態様においては、撮像装置が撮像した車輌31aの画像から、AI機能により車輌31aの車高(最低地上高)が自動的に紐付けられるような機構を設けることができる。
図1では、給電回路29a側の送電側コイルL
1と車輌31a側の受電側コイルL
2とが対向し、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2へ無接触でウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギが受電側コイルL
2に無接触で伝送されることを示す模式図を例示している。
【0025】
給電回路29aは、
図1に示すように送電側コイルL
1を円盤状の誘電体に収納した給電盤11と、給電盤11を搭載し、給電盤11と受電盤12の間隔を制御する間隔制御機構32と、ステップ入力電圧E
0並びに送電側コイルL
1に流れる給電電流及び間隔制御機構32を制御する一次側制御回路34a等を含んでいる。給電盤11は、一次側制御回路34aによって伝送電流が制御される。一次側制御回路34aと動力駆動部27aとは、送電側コイルL
1を流れる電流の過渡応答振動と受電側コイルL
2を流れる電流の過渡応答振動の時定数とタイミングを調整して、ウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギの振動が共鳴する条件で、互いにウェイブレット状の電磁エネルギ送受し、二重共振による電力伝送を行う。
【0026】
図1に示す態様では、間隔制御機構32は上下移動機構であり、例えば油圧の上下機構、電磁石による上下機構、ボール螺旋をステップモータで回転させるような移動機構等、周知の種々の機構を採用することが可能である。
図1は例示であり、送電側コイルL
1を収納する給電盤11を省略して、送電側コイルL
1を裸の状態で使用することも可能である。
図1では受電側コイルL
2も、円盤状の誘電体からなる受電盤12に収納された態様として例示されているが、受電側コイルL
2を収納する受電盤12を省略して、受電側コイルL
2を裸の状態で使用してもよい。
【0027】
図3及び
図4に第1実施形態に係る充電制御システムの一次側回路2a及び二次側回路3aの一例を示す。一次側回路2aは、直流電圧E
0を出力する直流電源5と、直流電源5の高電位側端子に一方の端子を接続し、一次側回路2aの外部回路からの制御信号で動作する励起素子Q
1と、励起素子Q
1の他方の端子に一方の端子が接続され、直流電源5の低電位側端子の他方の端子を接続した送電側コンデンサC
1を有する。
図3に例示した回路構成においては、一次側回路2aを構成する励起素子Q
1の動作が、一次側回路2aの外部回路である一次側励起回路340aから出力される制御信号によって他励制御される。
図3では、送電側コイルL
1と、送電側コイルL
1の寄生抵抗R
L1とが直列接続された等価回路が便宜上表示されているが、物理的な構造として、送電側コイルL
1に回路部品として抵抗R
L1が意図的に外部接続された構造を示すものではない。
【0028】
励起素子Q1が所定のタイミングで他励制御されることにより、直流電源5からステップ入力電圧E0が過渡応答特性として減衰振動を発生させる。即ち、励起素子Q1が所定のタイミングでオン/オフ動作することに伴い、RCL並列回路の回路トポロジとRCL直列回路の回路トポロジが交互に切り替えられて周期的な振動波形が生じる。一次側回路2aと二次側回路3aの間で二重共振が発生すると、一次側回路2aの過渡現象振動と二次側回路3aの過渡現象振動が共鳴しているので、一次側回路2aと二次側回路3aの間でウェイブレット状の電磁エネルギの双方向の送受が生じる。
【0029】
二次側回路3aは、
図3に示すように、送電側コイルL
1に離間して対向し送電側コイルL
1から無接触で磁気エネルギを受け取る受電側コイルL
2、受電側コイルL
2に並列接続され受電側コイルL
2に蓄積された磁気エネルギを静電エネルギとして蓄積する受電側コンデンサC
2を有する。
図3から二次側回路3aは、動力駆動部27aに受電側コイルL
2を加えた構成にほぼ対応するが、動力駆動部27aの負荷回路8aは含まれていない。
図3では、送電側コイルL
2と送電側コイルL
2の寄生抵抗R
L2が直列接続された等価回路表示になっているが、物理的な構造として、送電側コイルL
2に回路部品としての抵抗R
L2が外部接続された構造を示すものではない。同様に、負荷側ダイオードD
2のオン抵抗を含む回路配線の浮遊抵抗r
2を示しているが、物理的な構造として、回路部品としての抵抗r
2を意図的に挿入した回路トポロジを示すものではない。二次側回路3aは、
図3に示すように、充電式電池6と遮断素子Q
85と負荷側ダイオードD
2を直列接続した回路が、受電側コンデンサC
2及び受電側コイルL
2に対し、それぞれ並列接続された梯子型回路の構成が基本になっている。二次側回路3aは、送電側コイルL
1に対向した受電側コイルL
2、受電側コイルL
2に並列接続された受電側コンデンサC
2、受電側コイルL
2と受電側コンデンサC
2の一方の接続ノードにアノードを接続した負荷側ダイオードD
2を有する。二次側回路3aは更に、負荷側ダイオードD
2のカソードに一方の主電極端子を接続した遮断素子Q
85、遮断素子Q
85の他方の主電極端子に正極端子を接続し、負極端子を受電側コイルL
2と受電側コンデンサC
2の他方の接続ノードに接続した充電式電池6を有する。
図3に示すように、充電式電池6と負荷回路8aは、互いに並列回路を構成しているので、負荷回路8aは充電式電池6を介して、二次側回路3aに並列接続された構成になっている。
図2Aに例示した充電式電池6の正極端子N
11と負極端子N
12の間には、
図3に模式的に示すように、電圧測定回路26aが接続されている。充電式電池6に並列接続された電圧測定回路26aは、充電式電池6の端子間電圧ΣV
CSjの変化(時系列データ)を逐次測定する。
【0030】
負荷回路8aの構成は、
図4に例示するように、インバータ81と、インバータ81から出力される交流信号で駆動されるモータ82を有しているが、
図4に例示した回路に限定されるものではない。
図3及び
図4は、二次側回路3aに含まれた充電式電池6を見込むように、負荷回路8aが二次側回路3aに充電式電池6を介して並列接続された構成になっている。インバータ81からの交流信号がモータ82を駆動することにより、車輌31aが走行する。充電式電池6と負荷回路8aが構成する並列回路のインピーダンスが無限大(∞)と見なせる場合には、二次側回路3aはRCL直列回路として近似出来るが、負荷回路8aのインピーダンスは有限であり、実際には複雑な回路である。
【0031】
負荷側ダイオードD
2は、アノードが受電側コイルL
2側を向き、カソードが遮断素子Q
85を介して充電式電池6側を向くように接続され、充電電流I
Cの流れる方向を一方向に限定している。負荷側ダイオードD
2のカソードが遮断素子Q
85の一方の主電極端子に接続され、遮断素子Q
85の他方の主電極端子が、充電式電池6の正極端子N
11に接続されているので、遮断素子Q
85を遮断状態にすると、充電式電池6が二次側回路3aから遮断され、負荷回路8aも二次側回路3aから分離する。このため、車輌側制御回路340bは、
図7Aに示すように、充電式電池6及び負荷回路8aへの過剰電圧の印加を阻止する過剰給電遮断手段(制御手段)7aを有する。そして、遮断素子Q
85の導通及び遮断状態を制御するために、遮断素子Q
85の制御電極に、車輌側制御回路340bから制御信号が出力される。
図3及び
図4では、負荷側ダイオードD
2のオン抵抗を含む回路配線の浮遊抵抗がr
2であるとして示されているが、受電側コンデンサC
2の寄生抵抗の表示は無視している。したがって、二次側回路3aは、受電側コイルL
2、受電側コンデンサC
2、浮遊抵抗r
2及び寄生抵抗R
L2を備えたRCL共振回路である。そして、一次側回路2aと二次側回路3aの過渡応答振動が共振(共鳴)することによって、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2へ電磁エネルギが給電され、受電側コイルL
2から送電側コイルL
1に電磁エネルギが還流するエネルギ振動が二重共振として発生する。
【0032】
充電式電池6は、充電式電池6の端子間電圧ΣV
CSjよりも大きな電圧が充電式電池6の端子間に印加されなくては充電できない。ここでV
CSjは、個々の電池セル61
jの端子間電圧を意味する。以後、
図2Aに示した電池モジュール61の端子間電圧V
CSt=ΣV
CSjで、充電式電池6の端子間電圧を表すものとする。したがって、受電側コンデンサC2の端子間電圧として定義される二次側充放電電圧V
C2は、充電式電池6の端子間電圧V
CStより少し大きい必要がある。浮遊抵抗r
2の電圧降下を無視すれば、定常状態においてはV
C2=V
CStになる。充電式電池6の充電時には、
図2Bに示したような充電式電池6の浮遊抵抗r
s0,r
s1,r
s2及び内部容量C
s1,C
s2によって、端子間電圧V
CStが微小な電圧でリンギングしながら充電式電池6が充電される。車輌側制御回路340bは、
図4に示すように、モータ82を駆動して車輌31aが走行するようにインバータ81に制御信号を出力する。その他、車輌側制御回路340bは、車輌31aが走行中において、例えば車輌31aのドライバから2次側操作部23を経由して、走行要求の有無、アクセル情報等を取得する。
【0033】
図5は、特許文献2に記載された発明が提供するオフ期間の自由減衰振動を許容するモードの振動を示している。即ち、励起素子Q
1のオフ期間を長くしたモードにおける一次側充放電電圧V
C1の振動を実線で、二次側充放電電圧V
C2の波形を破線で示している。特許文献1に記載された発明のように、1周期毎、励起素子Q
1を毎回オン状態にすれば、
図6に示すような非正弦波の一定振幅の波形である。
図5では最初のピークから時間軸に沿って右側に進み、左から7番目の振動ピークまで、励起素子Q
1のオフ期間中の自由減衰振動の振動ピークの包絡線が次第に減少し、左から8番目のピークで包絡線が極小値となっている。一次側充放電電圧V
C1の自由減衰振動の振動ピークの包絡線の減少は、二重共振により一次側回路2aから二次側回路3aの方向へのウェイブレット状の電磁エネルギが送られたことを示している。その後左から9番目のピークから振動が増大を開始し、左から14番目のピークで極大値になる包絡線の変化を示している。一次側充放電電圧V
C1の振動の時間軸の左から9番目のピークから増大を示す物理現象は、二重共振により、二次側回路3aから一次側回路2aの方向にウェイブレット状の電磁エネルギが還流されたことを示している。
【0034】
図5には破線で二次側充放電電圧V
C2の振動波形も示している。
図5の破線も、本来は
図6に示すような非正弦波の波形である。「二次側充放電電圧V
C2」は、二次側回路3aの受電側コンデンサC2の端子間電圧である。
図5の破線で示した二次側充放電電圧V
C2の振動波形は、最初のピークから左から4番目のピークにかけて、二次側回路3aから一次側回路2aに電磁エネルギが還流することに起因して、破線の振動ピークの包絡線が増大している。破線の振動は、左から4番目のピークから9番目のピークにかけてほぼ同じ振幅を保った後、10番目のピークから13番目のピークにかけて、振動ピークの包絡線が減少していることが分かる。
【0035】
図1に示す給電盤11の上面は受電盤12の下面に平行に配置されるように、給電盤11は地面上に設置もしくは埋設される。給電作業前の状態においては、給電盤11の上面が地上の平坦面30に平行に配置されているので、車輌31aが一様な平坦面30上を走行して侵入可能である。給電回路29aは、例えば駐車スペースに設けられ、車輌31aの駐車中に、受電盤12に対向することにより車輌31aに搭載された受電盤12に対してウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを二重共振によって給電する。
【0036】
図1に示す車輌31aは、例えば、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグイン電気自動車(PEV)または電気自動車(EV)等である。充電式電池6に蓄えられた直流の電磁エネルギが、
図4に例示したインバータ81によって交流の電磁エネルギに変換される。インバータ81からの交流の電磁エネルギによってモータ82が駆動され、車輌31aが走行する。1次側操作部33は、車輌31aの外部からの操作により、給電の開始を示す給電開始信号または給電の停止を示す給電停止信号を給電回路29aに出力する。1次側操作部33がAI機能により車輌31aの車高(最低地上高)を決定した場合は、車輌31aの車高のデータも給電回路29aの車輌側制御回路340bに送信する。
【0037】
図1に示す動力駆動部27aは、受電盤12を制御し、二次側回路3aによって、過剰電圧が充電式電池6及び負荷回路8aに印加されないようにして、一次側回路2aとの電磁エネルギの二重共振によるウェイブレット状の電磁エネルギの効率の良い移動の制御を行う。このため、
図7Aに示すように、動力駆動部27aに内蔵された車輌側制御回路340bは、過剰電圧が充電式電池6及び負荷回路8aに印加される不都合を、回路遮断により回避する過剰給電遮断手段(制御手段)7aを有する。制御手段7aは、
図7Aに示すように、コンピュータシステムを用いて、コンピュータシステムの車輌側算術論理演算回路(ALU)269によるコンピュータ・ソフトウェア処理で過剰電圧を検出し、充電式電池6及び負荷回路8aを遮断させるようにしてもよい。車輌側ALU269の論理構造と等価な機能をハードウェア資源である実体電子回路構成し、充電電圧測定制御回路272、過剰電圧判定回路273及び遮断素子駆動制御回路274等を、半導体チップ上等に集積化してもよい。
【0038】
過剰給電遮断手段(制御手段)7aの機能を、コンピュータ・ソフトウェア処理で実施する場合は、車輌側制御回路340bは、
図7Aに示すように、伝送データ記憶装置276aと、プログラム記憶装置276bと、出力装置276cのそれぞれに車輌側ALU269が接続された構成が可能である。
図7Aに論理的な内部構造をモデル化して示すように、車輌側ALU269は、演算シークエンス制御回路271と、充電電圧測定制御回路272と、過剰電圧判定回路273と、遮断素子駆動制御回路274と、Aバス275aと、Bバス275b等を主なる構成要素とする構成例が可能である。
図7Aの例示構造においては、演算シークエンス制御回路271は、車輌側ALU269の内部における演算処理のシークエンスを制御する。Aバス275a及びBバス275bは、演算シークエンス制御回路271、充電電圧測定制御回路272、過剰電圧判定回路273及び遮断素子駆動制御回路274のそれぞれに情報及び命令を伝達するためのものである。
【0039】
演算シークエンス制御回路271は、充電電圧測定制御回路272、過剰電圧判定回路273及び遮断素子駆動制御回路274のそれぞれの処理手順をコンピュータ・ソフトウェア・プログラム(電池遮断プログラム)に従って、制御する。
図7Aでは、Bバス275bには、伝送データ記憶装置276a、プログラム記憶装置276b及び出力装置276cが接続された構成例が示されているが、
図7Aに示す構成に限定されるものではない。プログラム記憶装置276bには、
図7Bに例示した一連の回路遮断制御処理フローに等価なアルゴリズムを実行する電池遮断プログラムが格納される。
【0040】
図7Bに示すようなアルゴリズムのコンピュータ処理によれば、車輌側ALU269は、
図1に示した受電盤12を制御して、二次側回路3aから充電式電池6及び負荷回路8aに過剰電圧が印加されないように制御できる。即ち、更に、
図7BのフローチャートのステップS23において、先ず、
図1に示した1次側操作部33は、一次側制御回路34aに対し、1次側通信部21から2次側通信部22への通信を介して車輌側制御回路340bに、遮断素子Q
85をターン・オンする制御信号を出力するように指示する。一次側制御回路34aは更に、間隔制御機構32を用いて給電盤11と受電盤12の間隔を最適値に制御させると共に、一次側励起回路340aに対し直流電源5の起動と、励起素子Q
1の最適なタイミングでの動作させることを命令する。
【0041】
そして、ステップS23において、車輌側ALU269の充電電圧測定制御回路272は、電圧測定回路26aを用いて充電式電池6の端子間電圧V
CStの時系列データを逐次測定し、測定した端子間電圧V
CStを、伝送データ記憶装置276aに格納する。その後、
図7BのステップS24において、車輌側ALU269の過剰電圧判定回路273は、伝送データ記憶装置276aから、V
CStの時系列データを読み出し、遮断素子閾値V
Cthと比較する。
図2Cには24V系のリチウムイオン電池の遮断素子閾値V
Cthの一例を示した。遮断素子閾値V
Cthは、通常の使用領域V
normalの上限値よりも使用上限範囲ΔV
overだけ大きな値に設定される。リチウムイオン電池の製造メーカ等によって異なるが、
図2Cに示した例では、21.4~26.9Vが通常の使用領域V
normalであり、27.2V程度が使用上限領域の電圧とされている。更に電圧が上昇し、27.6Vでは
図2Bに示した電池の内部保護回路が作動するように設計されている場合が通常である。更に電圧が上昇し32.4V程度までに至ると、電解液の分解→ガス化→内圧の上昇→膨張・温度上昇となり、最悪の場合は発火・破裂する等の危険性があるので、電池の安全弁が開放される。
【0042】
図7BのフローチャートのステップS24において、V
CStの時系列データのいずれもが、遮断素子閾値V
Cthより大きくないと判定された場合は、ステップS25に進む。ステップS25において、遮断素子駆動制御回路274は遮断素子Q
85の導通状態を維持する制御信号を遮断素子Q
85のゲート電極に出力し、ステップS23に戻る。ステップS24において、V
CStの時系列データのいずれかが、遮断素子閾値V
Cthより大きいと判定された場合は、ステップS26に進む。ステップS26では、遮断素子駆動制御回路274がターン・オフ信号を遮断素子Q
85のゲート電極に出力し、充電式電池6及び負荷回路8aを二次側回路3aから遮断する。この際に、遮断素子Q
85に電流が流れていないタイミングを選ぶようにすることも車両側制御回路において可能である。
【0043】
遮断素子駆動制御回路274が遮断素子Q
85に、ターン・オフ制御信号を送信したという情報は、2次側通信部22から1次側通信部21に伝達できる。よって、1次側通信部21から情報を得て、一次側制御回路34aが一次側回路2aの動作を停止させることができる。しかし、2次側通信部22から1次側通信部21への情報伝達がなくても、一次側回路2aには、充電式電池6と負荷回路8aが二次側回路3aから切り離されたことによる電磁エネルギの反射による一次側充放電電圧V
C1の振動の変化が
図8に示すように発生する。
図8において、充電式電池6と負荷回路8aが二次側回路3aから切り離された場合の一次側充放電電圧V
C1の振動を実線で、充電式電池6と負荷回路8aが二次側回路3a接続されている場合の一次側充放電電圧V
C1の波形を破線で示している。充電式電池6と負荷回路8aが二次側回路3aから切り離された場合は、Aを付した○で示したように、一次側充放電電圧V
C1の振動のピーク値が、Bを付した○で示した一充電式電池6と負荷回路8aが二次側回路3a接続されている場合の一次側充放電電圧V
C1の振動ピーク値よりも高くなる。Bの○が示す一次側充放電電圧V
C1の振動ピーク値は、充電式電池6の電圧に対応している。したがって、2次側通信部22から1次側通信部21への情報伝達を使わなくても、遮断素子Q
85のターン・オフは、一次側制御回路34aが検知可能である。
【0044】
即ち、充電式電池6と負荷回路8aが二次側回路3aから切り離されると、二次側回路3aはRCL直列回路になる。二次側回路3aにおいて、充電式電池6を遮断した場合は、二次側回路3aはRCL直列回路になるので、寄生抵抗R
L2等でジュール熱として消耗したエネルギを除いた電磁エネルギは、すべて一次側回路2bに還流してくる。したがって、二次側回路3aから一次側回路2aに還流される電磁エネルギが、充電式電池6と負荷回路8aの切り離し前と、切り離し後では大きく変化する。このため、充電式電池6が二次側回路3aから切り離された事情は、
図8に示すように、一次側回路2aの一次側充放電電圧V
C1の波形に変化を与える。2次側通信部22から1次側通信部21への情報伝達を使わないモードを採用する場合は、
図3及び
図4に例示したように、送電側コンデンサC1と並列に一次側充放電電圧V
C1を検知する電圧計としての検出器28を設けておく。更に、一次側制御回路34aが内蔵する算術論理回路(ALU)339aに、
図9Aに例示したように、極大電圧算出回路347a、負荷遮断判定回路347b及び直流電源制御回路347cを有する一次側停止命令手段9aを備えておけばよい。
図9Aに示す一次側停止命令手段9aは、充電式電池6等が二次側回路3aから遮断されたことに伴う一次側回路2aの振動特性の変化を検出し、一次側回路2aの動作を停止させることができる。
【0045】
図9Aに論理構造を模式的に示した極大電圧算出回路347a、負荷遮断判定回路347b及び直流電源制御回路347cを含む構成は、ALU339aを用いたコンピュータ・ソフトウェア処理で実行する場合の例示であるが、
図9Aの例示に限定されるものではない。
図9Aに示した極大電圧算出回路347a、負荷遮断判定回路347b及び直流電源制御回路347cはそれぞれ、これらと等価な機能を備えるハードウェア資源としての実体電子回路で構成可能である。
【0046】
一次側停止命令手段9aの機能を、コンピュータ・ソフトウェア処理で実施する場合は、一次側励起回路340aは、
図9Aに示すように、伝送データ記憶装置348aと、プログラム記憶装置348bと、出力装置348cのそれぞれにALU339aが接続された通常のコンピュータシステムと同様な構成が可能である。
図9Aにモデル化して示した論理的な内部構造から分かるように、ALU339aは、演算シークエンス制御回路344と、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345bと、一次側電圧検出制御回路346と、極大電圧算出回路347aと、負荷遮断判定回路347bと、直流電源制御回路347cと、Aバス349aと、Bバス349b等を主なる構成要素とする構成例が可能である。
図9Aの例示構造においては、演算シークエンス制御回路344は、ALU339aの内部における演算処理のシークエンスを制御する。Aバス349a及びBバス349bは、演算シークエンス制御回路344、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、極大電圧算出回路347a、負荷遮断判定回路347b及び直流電源制御回路347cのそれぞれに情報及び命令を伝達するためのものである。
【0047】
演算シークエンス制御回路344は、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、極大電圧算出回路347a、負荷遮断判定回路347b及び直流電源制御回路347cのそれぞれの処理手順をコンピュータ・ソフトウェア・プログラムに従って、制御する。
図9Aでは、Aバス349aに一次側励起回路340a及び伝送間隔制御回路340pが接続された構成例が示されている。伝送間隔制御回路340pは、
図1に示した間隔制御機構32を駆動して、給電盤11と受電盤12の間隔を最適値となるように制御することができる。一方、Bバス349bには、伝送データ記憶装置348a、プログラム記憶装置348b及び出力装置348cが接続された構成例が示されているが、
図9Aに示す構成に限定されるものではない。プログラム記憶装置348bには、
図9Bに例示した一連の回路停止制御方法の処理フローに等価なアルゴリズムを実行するプログラムが格納される。
【0048】
図9Bに示すようなアルゴリズムによれば、2次側通信部22から1次側通信部21への遮断素子Q
85のターン・オフ情報の伝達がなくても、ALU339aは、
図1に示した給電盤11を制御して、一次側回路2aの独自の情報処理として、一次側回路2aの動作を停止できる。即ち、
図9Bに例示したフローチャートのステップS32において、一次側電圧検出制御回路346は、検出器28に一次側充放電電圧V
C1を、逐次測定させ、伝送データ記憶装置348aに格納する。ステップS33において、ALU339aの極大電圧算出回路347aは、伝送データ記憶装置348aから、一次側充放電電圧V
C1の時系列データを順に読み出し、それぞれの時系列データの極大値を「帰還極大電圧」として決定する。一次側充放電電圧V
C1の時系列データの帰還極大電圧V
C1maxは、伝送データ記憶装置348aに格納する。
【0049】
充電式電池6が二次回路3aに接続されている場合は、ステップS33で決定される帰還極大電圧VC1maxは、推定された充電式電池6の端子間電圧VCStに近い値である。充電式電池6が二次回路3aから遮断された場合は、ステップS33で決定される帰還極大電圧VC1maxは、満充電時の充電式電池6の端子間電圧VCStより大きな値になる。遮断判定電圧VstopをΔVだけ大きな値に設定しておき、ステップS34で、帰還極大電圧VC1maxが、遮断判定電圧Vstopを超えているか否かを判定する。ステップS34で、帰還極大電圧VC1maxが、遮断判定電圧Vstopを超えていると判定された場合は、ステップS37に進み、直流電源5の動作を停止すると同時に、励起素子Q1の動作も停止する。ステップS34で、帰還極大電圧VC1maxが、遮断判定電圧Vstopを超えていないと判定された場合は、ステップS35に進み、直流電源5の出力と励起素子Q1の動作を継続して、ステップS32に戻る。
【0050】
図7Aに示す車輌側ALU269、或いは
図9Aに示すALU339aを構成するハードウェア資源としての充電電圧測定制御回路272、過剰電圧判定回路273及び遮断素子駆動制御回路274、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、極大電圧算出回路347a、負荷遮断判定回路347b及び直流電源制御回路347cは、論理的な機能に着目したハードウェア資源を形式的に表現しているのであって、常に、半導体チップ上に物理的な領域としてそれぞれ独立して存在する機能ブロックを意味するものではない。又、PLDの「論理ブロック」のような半導体チップ上に実装されたプログラム可能な論理コンポーネント等の現実に存在する構成を否定するものでもない。車輌側ALU269及びALU339aの一部の構成又はすべての構成をFPGAのようなPLDで構成した場合は、
図7Aに示した演算シークエンス制御回路271のプログラムカウンタやAバス275a及びBバス275b等のデータバスは省略可能である。同様に、
図9Aに示した演算シークエンス制御回路344のプログラムカウンタやAバス349a及びBバス349b等のデータバスは省略可能である。
【0051】
更に、一次側励起回路340aは、
図3及び
図4に示す励起素子Q
1をスイッチングさせる駆動タイミングを選択し、選択した駆動タイミングで、
図3及び
図4に示した一次側励起回路340aを動作させる命令を出力する。一次側回路2aの外部回路となる一次側励起回路340aは、
図3及び
図4に示した励起素子Q
1の制御端子に制御信号を送り、励起素子Q
1をオン・オフ駆動する。励起素子Q
1がオン・オフ駆動されることにより、一次側回路2aが構成する並列回路と直列回路を交互に切り替える。遮断素子Q
85及び励起素子Q
1には、バイポーラトランジスタ(BJT)、電界効果トランジスタ(FET)、静電誘導トランジスタ(SIT)或いはゲートターン・オフサイリスタ(GTO)、静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等のサイリスタが採用可能である。遮断素子Q
85及び励起素子Q
1のそれぞれが、FET、SIT、GTO、SIサイリスタ等であれば、これらの電力用半導体素子のゲート電極が、遮断素子Q
85又は励起素子Q
1の「制御端子」に対応する。遮断素子Q
85及び励起素子Q
1がBJTであれば、BJTのベース電極が遮断素子Q
85又は励起素子Q
1の制御端子になる。一次側回路2aの外部回路である一次側励起回路340aから、励起素子Q
1の制御端子に制御信号を送ることにより、一次側回路2aが他励式の動作をする。
【0052】
車輌側ALU269及びALU339aには、マイクロチップとして実装されたマイクロプロセッサ(MPU)等を使用してコンピュータシステムを構成することが可能である。又、コンピュータシステムを構成する車輌側ALU269及びALU339aとして、算術演算機能を強化し信号処理に特化したデジタルシグナルプロセッサ(DSP)や、メモリや周辺回路を搭載し組込み機器制御を目的としたマイクロコントローラ(マイコン)等を用いてもよい。或いは、現在の汎用コンピュータのメインCPUを車輌側ALU269及びALU339aに用いてもよい。更に、車輌側ALU269及びALU339aの一部の構成又はすべての構成をフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のようなプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)で構成してもよい。
【0053】
一次側励起回路340a等を含むコンピュータシステムにおいて、伝送データ記憶装置348aは、複数のレジスタ、複数のキャッシュメモリ、主記憶装置、補助記憶装置等を含む一群の内から適宜選択された任意の組み合わせとすることも可能である。又、キャッシュメモリは1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの組み合わせとしてもよく、更に3次キャッシュメモリを備えるヒエラルキーを有しても構わない。PLDによって、車輌側ALU269及びALU339aの一部又はすべてを構成した場合は、伝送データ記憶装置348aは、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。更に、車輌側ALU269及びALU339aは、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造でもよい。このCPUコア風のアレイは、あらかじめPLD内部に搭載されたハードマクロCPUと、PLDの論理ブロックを用いて構成したソフトマクロCPUを含むようにできる。つまりPLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させた構成でもよい。
【0054】
後述するが、
図3及び
図4に示す一次側回路2aにおいては、「RCL並列回路」と「RCL直列回路」が交互に時分割で過渡的に形成される。一次側回路2aは、直流電源5と、直流電源5の高電位側端子(プラス端子)に一方の端子を接続した励起素子Q
1と、励起素子Q
1の他方の端子に一方の端子を接続された送電側コンデンサC
1と、励起素子Q
1の他方の端子に一方の端子を接続した送電側コイルL
1を含む。送電側コイルL
1の一方の端子は、送電側コンデンサC
1の一方の端子にも接続されているので、励起素子Q
1の他方の端子と送電側コンデンサC
1の一方の端子との高電位端子側接続ノードN
1に、送電側コイルL
1の一方の端子から接続ノードP
1を経由して延長される配線が接続されている。送電側コイルL
1の他方の端子は、送電側コンデンサC
1の他方の端子と直流電源5の低電位側端子(マイナス端子)の低電位端子側接続ノードN
2に接続されている。
【0055】
図3及び
図4に示す実装回路においては、送電側コイルL
1からの環流電流を考慮し第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q
1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に保護素子として並列接続されている。同様に、
図3及び
図4に示すように、遮断用還流ダイオードFWD
85を、遮断素子Q
85としてのMOSFETのソース・ドレイン間に保護素子として並列接続してもよい。更に、送電側コイルL
1からの環流電流が直流電源5に環流するのを防ぐため、電源側ダイオードD
1が直流電源5と励起素子Q
1の間に直列接続されている。
【0056】
送電側コイルL1は直流電源5から供給された静電エネルギ及び受電側コイルL2から環流電流として供給された磁気エネルギを蓄積して、送電側コイルL1の両端の電圧VL1を昇圧する。送電側コイルL1は、送電側コンデンサC1から送られた静電エネルギを磁気エネルギとして蓄積し、この磁気エネルギを送電側コンデンサC1に環流すると同時に、二次側回路3aの受電側コイルL2 に磁気的に結合し、二次側回路3aに対し、磁気エネルギを送受する。
【0057】
第1実施形態に係る電力伝送装置は、振幅一定の正弦波振動を生成させる交流電源回路、いわゆるスイッチング電源を用いない。即ち第1実施形態に係る電力伝送装置の一次側回路2a及び二次側回路3aは、振幅値が一定の定常状態の正弦波を対象とする交流理論ではなく、振幅値が時間共に変動する非定常状態を対象とする過渡現象に依拠した回路であることを特徴としている。そして、送電側コンデンサC1の一方の端子と直流電源5との間に接続された励起素子Q1の制御電極の電圧が、外部回路である一次側励起回路340aからのクロック信号で他励制御されて、RCL並列回路とRCL直列回路を切り替える他励式の回路の動作をする。即ち、励起素子Q1の導通状態において、直流電源5の高電圧側端子+と低電圧側端子-の間に、送電側コイルL1と送電側コンデンサC1を含むRCL並列回路を並列接続される。又、励起素子Q1の遮断状態において、高電位端子側接続ノードN1が直流電源5の高電圧側端子+から分離され、送電側コイルL1と送電側コンデンサC1を含むRCL直列回路が構成されるという、他励式の回路の動作を実現している。
【0058】
先ず、二次側回路3aとの結合がない場合に単純化して、一次側回路2aの他励式の回路動作に着目する(
図10及び
図11においては、二次側回路3aを破線で示している。)。この単純化したモデルにおいて、直流電源5がステップ入力電圧E
0(=一定)を供給しているとき、励起素子Q
1の制御電極の電圧が、一次側励起回路340aからのクロック信号で他励制御されて導通状態になったと仮定する。励起素子Q
1が導通状態(オン状態)の場合、
図10に示したRCL並列回路の送電側コンデンサC
1に過渡的に流れるコンデンサ電流をi
C1、送電側コイルL
1に過渡的に流れるコイル電流をi
L1、直流電源5から供給される電流をi
1とすると、励起素子Q
1がオン状態のときのRCL並列回路の過渡現象は、寄生的に内在する抵抗R
01ON及び抵抗R
L1を考慮して、
【数1】
で表現できる。
【0059】
式(1b)の左辺第1項のR
01ONは、励起素子Q
1に用いている電力用半導体スイッチング素子のオン抵抗r
on1及び直流電源5と等価浮遊抵抗r
1を含む。式(1b)及び(1c)の左辺第2項のR
L1は、
図10に示すように送電側コイルL
1の寄生抵抗である。直流電源5は、励起素子Q
1がオン状態において式(1b)を満足するように、送電側コンデンサC
1と送電側コイルL
1がなすRCL並列回路に固定のステップ入力電圧E
0=E
0を供給するものとする。式(1b)に式(1a)を代入し、式(1c)の両辺を時間tで微分すると、
【数2】
となる。
【0060】
式(2)から、式(1b)に式(1a)を代入した式を用いて、コンデンサ電流i
C1を消去して整理すると、
【数3】
となる。i
L1=Ae
Btとおくと、指数部の係数Bは、
【数4】
となる。ここで、
【数5】
と定義する。
【0061】
RCL並列回路の送電側コイルL
1に過渡的に流れるコイル電流i
L1は、非定常状態に対する式(3)の一般解として求められる。即ち、A
1,A
2を定数として、RCL並列回路の送電側コイルL
1に過渡的に流れるコイル電流i
L1は、
【数6】
となる。α
2
ON2≪ω
2
ONであれば、式(5d)を鑑みて、RCL並列回路の送電側コイルL
1に過渡的に流れるコイル電流i
L1は、
【数7】
と表現できる。RCL並列回路の送電側コンデンサC
1に過渡的に流れる電流i
C1は、式(2)から同様にして、
【数8】
となる。
【0062】
送電側コイルL1に流れるコイル電流iL1は式(7)に示すように、周波数βONの正弦波と余弦波が合成された瘤型の振動をしながら、振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―αON1t)で指数関数的に減衰する不足制動(減衰振動)の波形を示す。コイル電流iL1は式(7)に示すように、通常のスイッチング電源に用いられている振幅一定の正弦波振動(正弦波交流信号)のような振幅が一定の正弦波ではない。同様に、送電側コンデンサC1に流れるコンデンサ電流iC1は式(8)に示すように、周波数βONの正弦波と余弦波が合成された瘤型の振動をしながら、振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―αON1t)で指数関数的に減衰する減衰振動の波形を示す。コンデンサ電流iC1は式(8)に示すように、振幅一定の正弦波振動(正弦波交流信号)のような振幅が一定の正弦波ではない。
【0063】
式(1c)に示したように式(7)を微分し、式(8)を積分すれば、二次側回路3aとの結合がない場合のRCL並列回路の一次側充放電電圧V
C1及び送電側コイルL
1の端子間電圧V
L1は、それぞれ、
【数9】
で与えられる。送電側コイルL
1の端子間電圧V
L1の時間tに対する変化は式(9a)に示すように、周波数β
ONの正弦波の振動の振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―α
ON1t)で指数関数的に減衰する減衰振動の波形を示し、振幅が一定の正弦波ではなく、振幅一定の正弦波振動とは異なる。同様に、一次側充放電電圧V
C1の変化は式(9b)に示すように、周波数β
ONの正弦波の振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―α
ON1t)で指数関数的に減衰する減衰振動の波形を示し、振幅一定の正弦波振動とは異なる。式(7)~(9b)は、第1実施形態に係る電力伝送装置の一次側回路2aは、振幅値が一定の定常状態の正弦波を対象とする交流理論ではなく、振幅値が変動する非定常状態を対象とする過渡現象に依拠した回路である特徴を示している。
【0064】
次に、二次側回路3aとの結合がない場合において、励起素子Q
1の制御電極の電圧が、一次側回路2aの外部回路である一次側励起回路340aからのクロック信号で他励制御されて、強制的に遮断状態(オフ状態)になった場合を説明する。励起素子Q
1が強制的にオフ状態になると、式(7)~(9b)に示す過渡応答振動は強制的に終了させられる。
図6には、式(9b)に示す一次側充放電電圧V
C1の過渡応答振動が時刻t
p,t
p+2で強制的に終了させられることを示している。励起素子Q
1がオフ状態のときは、
図11に示した送電側コンデンサC
1及び送電側コイルL
1がなす閉ループが、RCL直列回路を構成する。即ち第1実施形態に係る電力伝送装置では、一次側励起回路340aからのクロック信号で他励制御されて、RCL並列回路の回路トポロジと、閉ループをなすRCL直列回路の回路トポロジに、切り替えられることが特徴である。
【0065】
閉ループをなすRCL直列回路を過渡的に流れる電流をi
1とすると、励起素子Q
1がオフ状態のときのRCL直列回路の過渡現象は、
【数10】
で表現できる。式(10)の左辺第1項は送電側コイルL
1の両端の電圧V
Lij、左辺第2項は等価浮遊抵抗による電圧損失、左辺第3項は送電側コイルL
1の両端の電圧V
C1である。RCL直列回路の等価浮遊抵抗R
L1が十分小さいとき、即ち、減衰定数α
OFF=R
L1/(2L
1)、固有角周波数ω
OFF=(L
1C
1)
-1/2としたとき、
α
OFF
2<ω
OFF
2 ……(11)
が成立するとき、式(10)の解は、過渡現象理論でよく知られているように、
【数11】
となる。
【0066】
式(11)及び(12b)の固有角周波数ωOFFは、一定振幅の交流理論におけるRCL並列共振回路の共振周波数に対応するが、非定常状態を取り扱う過渡現象では「共振周波数」の用語はふさわしくない。RCL直列回路を過渡的に流れる電流i1は、式(12a)に示すように、周波数βOFFの正弦波で振動しながら、振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―αOFFt)で指数関数的に減衰する減衰振動の波形を示し、定常状態の振幅一定の正弦波振動とは異なる。
【0067】
式(12a)を微分すれば、式(13a)のように送電側コイルL
1の端子間電圧V
L1が求まり、式(12a)を積分すれば、式(13b)のようにRCL並列回路の一次側充放電電圧V
C1が求められる:
【数12】
二次側回路3aとの結合がない場合において、送電側コイルL
1の端子間電圧V
L1は式(13a)に示すようになる。同様に、二次側回路3aとの結合がない場合における一次側充放電電圧V
C1は式(13b)に示すように、周波数β
OFFの正弦波と余弦波が合成された瘤(こぶ)型の振動をしながら、振動ピーク(振幅)の包絡線がexp(―α
OFFt)で指数関数的に減衰する不足制動(減衰振動)の波形を示す。
【0068】
よって、端子間電圧V
L1及び一次側充放電電圧V
C1の変化は、定常状態の振幅一定の正弦波振動とは異なる。式(12a)~(13b)に示す減衰振動の波形は、第1実施形態に係る電力伝送装置の一次側回路2aは、振幅値が一定の定常状態の正弦波を対象とする交流理論ではなく、振幅値が変動する非定常状態を対象とする過渡現象に依拠した回路である特徴を示している。そして、一次側励起回路340aによって、励起素子Q
1が再びオン状態となると、式(12a)~(13b)に示した過渡応答振動は強制的に終了させられ、励起素子Q
1がオン状態の式(7)~(9b)に示す過渡応答振動波形に切り替えられる。
図6には、式(13b)に示す一次側充放電電圧V
C1の過渡応答振動波形が、時刻t
p-1,t
p+1で強制的に終了させられ、式(9b)に示す振動波形に接続されることが示されている。
【0069】
このように、一次側回路2aにおいては、励起素子Q
1の動作が一次側励起回路340aから出力される制御信号によって他励制御されて、RCL並列回路の回路トポロジとRCL直列回路の回路トポロジを切り替えられ、
図6に示すような非正弦波の過渡現象振動が生成される。そして、一次側回路2aにおける過渡現象振動と二次側回路3aにおける過渡現象振動が共鳴する二重共振により、第1実施形態に係る電力伝送装置が動作する。一次側回路2aと二次側回路3aの間で時定数が同期して共鳴する二重共振が生じると、一次側回路2aと二次側回路3aの間で電磁エネルギが互いに送受されるウェイブレット状のエネルギ振動が発生する。このため、
図5に示すような一次側充放電電圧V
C1の包絡線と二次側充放電電圧V
C2の包絡線が異なる位相で脈動する関係になる。
図5に示された位相が逆になる破線と実線の脈動は、一次側回路2aと二次側回路3aの間で二重共振によりウェイブレット状の電磁エネルギが互いに送受される振動を示している。
【0070】
図5は、一次側充放電電圧V
C1の包絡線の振幅が極大値のときは、二次側充放電電圧V
C2の包絡線の振幅が極小値であり、一次側充放電電圧V
C1の包絡線の振幅が極小値のときは、二次側充放電電圧V
C2の包絡線の振幅が極大値となる関係を示している。そして二次側回路3aに伝達されたウェイブレット状のエネルギ振動により、二次側回路3aが含む充電式電池6が充電される。この際、充電式電池6及び充電式電池6に接続された負荷回路8aに過剰電圧が印加される場合は、充電式電池6の電圧を測定する電圧測定回路26aと、電圧測定回路26aからの信号を処理する過剰給電遮断手段(制御手段)7aによって、充電式電池6を二次側回路3aから遮断し、負荷回路8aも二次側回路3aから分離できる。
【0071】
以上のとおり、第1実施形態に係る充電制御システムによれば、充電式電池6の電圧を測定する電圧測定回路26aと、電圧測定回路26aからの信号を処理する過剰給電遮断手段(制御手段)7aを備えているので、充電式電池6をワイヤレス充電する場合に、充電式電池6を過充電したり、充電式電池に接続された負荷回路8aに誤給電したりすることがない。したがって、第1実施形態に係る充電制御システムによれば、充電式電池6をワイヤレス充電する場合に、充電式電池6や充電式電池に接続された負荷回路8aが損傷することのない充電制御システムが提供できる。
【0072】
(第1実施形態の第1変形例)
本発明の第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムは
図12に示すように、二次側回路3aと、二次側回路3aとの二重共振で、二次側回路3aに無接触でウェイブレット状の磁気エネルギを伝送する一次側回路2bを備え、二次側回路3aに含まれる充電式電池6を充電する。二次側回路3aの概略は、
図3に示した回路構成と同様に、送電側コイルL
1に対向した受電側コイルL
2、受電側コイルL
2に並列接続された受電側コンデンサC
2、受電側コイルL
2と受電側コンデンサC
2の一方の接続ノードにアノードを接続した負荷側ダイオードD
2を有する。二次側回路3aは更に、負荷側ダイオードD
2のカソードに一方の主電極端子を接続した遮断素子Q
85、遮断素子Q
85の他方の主電極端子に正極端子を接続し、負極端子を受電側コイルL
2と受電側コンデンサC
2の他方の接続ノードに接続した充電式電池6を有する。即ち、充電式電池6と遮断素子Q
85と負荷側ダイオードD
2を直列接続した回路が、受電側コンデンサC
2及び受電側コイルL
2に対し、それぞれ並列接続された梯子型回路の構成になっている。充電式電池6と負荷回路8aは、並列回路を構成しているので、二次側回路3aと負荷回路8aは、充電式電池6を介して並列接続されている。更に、充電式電池6の正極端子N
11と負極端子N
12の間には、電圧測定回路26aが接続され、充電式電池6の端子間電圧V
CStの変化(時系列データ)を逐次測定できるようになっている構成も、
図3に示した回路構成と同様である。
【0073】
負荷側ダイオードD
2は、アノードが受電側コイルL
2側、カソードが遮断素子Q
85を介して充電式電池6側を向くように接続され、充電電流I
Cの流れる方向を一方向に限定している。負荷側ダイオードD
2のカソードが遮断素子Q
85の一方の主電極端子に接続され、遮断素子Q
85の他方の主電極端子が、充電式電池6の正極端子N
11に接続されているので、遮断素子Q
85を遮断状態にすると、充電式電池6が二次側回路3aから遮断され、負荷回路8aも二次側回路3aから分離する。遮断素子Q
85の導通及び遮断状態を制御するために、遮断素子Q
85の制御電極には車輌側制御回路340bから制御信号が出力される。内部構造の詳細の図示を省略しているが、
図7Aに示した論理的な内部構造の構成と同様に、
図12に示す動力駆動部27aの車輌側制御回路340bは制御手段(過剰給電遮断手段)を有する。制御手段は、過剰電圧が充電式電池6及び負荷回路8aに印加される不都合を、電圧測定回路26aからの過剰電圧の情報を得て、遮断素子Q
85に回路遮断させることにより回避することができる。制御手段は、
図7Bに示したアルゴリズムと同様なコンピュータ処理を実行する。
【0074】
システム構成の全体の図示を省略しているが、
図1に示した構成と同様に、第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムは、1次側通信部21及び2次側通信部22を備えている。したがって、車輌側制御回路340bが遮断素子Q
85に、ターン・オフ制御信号を送信したという情報は、2次側通信部22から1次側通信部21に伝達できる。よって、1次側通信部21から情報を得て、一次側制御回路34gが一次側回路2aの動作を停止させることもできる。しかしながら、
図9Bに示したアルゴリズムと同様な処理により、2次側通信部22から1次側通信部21への遮断素子Q
85のターン・オフ情報の伝達がなくても、一次側励起回路340gは、検出器28からの情報による一次側回路2bの独自の情報処理として、一次側回路2bの動作を停止できる。いずれの方法を採用しても、一次側励起回路340gは、制御手段による二次側回路3aからの充電式電池6等の遮断を検知して一次側回路2bを停止することができる。
【0075】
図12に示すように、第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムの一次側回路2bは、
図3及び
図4に示した第1実施形態に係る充電制御システムの1スイッチ構成の一次側回路2aに補助子Q
2を追加した2スイッチ構成となっている。「補助励起素子Q
2」は、励起素子Q
1と相補的な動作のモードを採用するときには、励起素子Q
1のオフ期間において、一次側回路2bの自由減衰振動を補助する。励起素子Q
1と補助励起素子Q
2を相補的にオン/オフ制御する場合は、励起素子Q
1のターン・オンにより、RC直列回路が実現される。式(9b)に示した過渡応答特性に比し、RC直列回路の場合は、直流電源5の電源電圧E
0まで送電側コンデンサC
1の充電電圧を高めることができる。即ち、一次側回路2bの減衰振動の初期電圧を高めることができる。このように、第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムによれば、励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2をオン/オフ制御する単純な制御だけで、一次側回路2bにおいて初期電圧の高い減衰振動を実現でき、ジュール熱の発生を抑制する設計も容易になる。励起素子Q
1と補助励起素子Q
2の動作は、一次側回路2bの外部回路である一次側励起回路340gによって他励制御される。励起素子Q
1と補助励起素子Q
2の動作を相補的に他励制御することにより、ステップ入力電圧E
0によって、非正弦波の減衰振動が過渡応答特性として生成される。
【0076】
一次側回路2bは、
図3と同様に、受電側コイルL
2に離間して対向した送電側コイルL
1、及びこの送電側コイルL
1の端子間電圧を検出する検出器28を有する。一次側回路2bの過渡応答振動と二次側回路3aの過渡応答振動の二重共振で、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2に無接触で磁気エネルギが伝送され、受電側コイルL
2から送電側コイルL
1に磁気エネルギが還流される。
図12に示した励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2として、第1実施形態に係る充電制御システムと同様なFET、SIT、BJTの他、GTOサイリスタ、SIサイリスタ等のサイリスタを含む電力用半導体スイッチング素子が用いられる。特に、MISFET等の電圧駆動型のスイッチング素子を用いれば消費電力が小さくなるので、励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2に好適である。市場での入手可能性と電力用半導体スイッチング素子の内部抵抗の評価からは、現状においては、MOSFETを
図12に示す回路の励起素子Q
1及び補助励起素子Q
2として採用することが可能である。
【0077】
第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムは、励起素子Q1及び補助励起素子Q2として一次側回路2bに用いる電力用半導体スイッチング素子は2個のみで良い。このため、第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムによれば、発熱による素子の破壊を防ぐ冷却構造が簡単に設計でき、しかも浮遊抵抗、浮遊容量、浮遊インダクタンスの発生も最小化できる。又、励起素子Q1及び補助励起素子Q2をオン/オフ制御する単純な制御だけでよいので、補助励起素子Q2を採用して一次側回路2bにおける減衰振動の初期電圧を高める過渡応答特性を実現して、ジュール熱の発生を抑制する設計も簡単にできる。
【0078】
図12に示す実装回路においては、送電側コイルL
1からの還流電流を考慮し第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q
1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第2の還流ダイオードFWD
2が補助励起素子Q
2としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、それぞれ保護素子として並列接続されている。更に遮断用還流ダイオードFWD
85が遮断素子Q
85としてのMOSFETのソース・ドレイン間に保護素子として並列接続されている。
図3及び
図4に示した回路と同様に、送電側コイルL
1からの還流電流が直流電源5に更に還流するのを防ぐため、電源側ダイオードD
1が直流電源5と励起素子Q
1の間に直列接続されている。
【0079】
遮断素子Q85が導通状態であるとし、特許文献2に記載された発明のように、励起素子Q1のオフ期間を長くして減衰振動を利用するモードにおいては、先ず、一次側励起回路340gは補助励起素子Q2をオフ状態、励起素子Q1をオン状態にする。励起素子Q1がターン・オンすると、送電側コンデンサC1が初期電圧E0まで昇圧され送電側コンデンサC1に電荷が蓄えられる。補助励起素子Q2のオフ状態では、励起素子Q1のオン状態によって、直流電源5、等価浮遊抵抗r1、励起素子Q1と第1の還流ダイオードFWD1の並列回路及び送電側コンデンサC1からなるRC直列回路が構成されている。
【0080】
次に、一次側励起回路340gからの制御信号によって、励起素子Q1をオフ状態にして、一定時間をおいて補助励起素子Q2をオン状態にすると、送電側コンデンサC1に蓄えられた電磁エネルギは送電側コイル電流を介して、送電側コイルL1に蓄積される。更に、一次側回路2bと二次側回路3aの間の過渡現象振動の共鳴が生じる。補助励起素子Q2をオン状態にすることによりRCL直列回路が形成され、直流電源5、等価浮遊抵抗r1、励起素子Q1と第1の還流ダイオードFWD1の並列回路及び送電側コンデンサC1からなるRC直列回路が消滅する。
【0081】
送電側コンデンサC1に蓄えられた電磁エネルギが送電側コイルL1に移動すると、一次側充放電電圧VC1は、負の極大値をとった後、0Vになる。一次側回路2bから二次側回路3aへの過渡現象振動の共鳴によって、受電側コイルL2に伝送された電磁エネルギは、受電側コイル電流によって受電側コンデンサC2を充電する。受電側コンデンサC2の充電が開始されると、受電側コンデンサC2の二次側充放電電圧VC2は負の極大値をとった後、正の値になる。一次側充放電電圧VC1が0Vになった時点で最大値をとる。二次側充放電電圧VC2は、負の極大値をとった後、正の値になり、一次側充放電電圧VC1が0Vになった時点で最大値をとる。
【0082】
二次側充放電電圧VC2の増加に伴って、受電側コンデンサC2に蓄積された電磁エネルギの一部によって、充電電流ICが発生し、充電式電池6に電荷が蓄えられる。受電側コンデンサC2に蓄積された電磁エネルギの他の一部は、受電側コイルL2に受電側コイル電流として還流する。充電電流ICが0になった時点で、二次側充放電電圧VC2は、充電式電池6の端子間電圧Vcs(t)と同じ値となる。
【0083】
受電側コンデンサC2に蓄積された電磁エネルギが受電側コイルL2に還流すると、一次側回路2bと二次側回路3aの間の二重共振により、一次側回路2bに電磁エネルギの一部が戻る。受電側コンデンサC2に蓄積された電磁エネルギが充電式電池6及び受電側コイルL2に移動すると、受電側コンデンサC2は放電される。受電側コンデンサC2が放電すると、二次側充放電電圧VC2は、負の極大値をとった後、0Vになる。このとき、一次側充放電電圧VC1は、負の極大値をとった後、その後正の値に増大する振動となる。一次側充放電電圧VC1を測定することにより、二次側回路3aにおける振動状態が、一次側回路2bの検出器28でモニタリングすることができる。
【0084】
二次側回路3aにおいて、充電式電池6を遮断した場合は、二次側回路3aはRCL直列回路になり、寄生抵抗RL2等でジュール熱として消耗したエネルギを除いた電磁エネルギは、すべて一次側回路2bに還流してくる。したがって、二次側回路3aから一次側回路2bに還流される電磁エネルギの量が、充電式電池6等の切り離し前と、切り離し後では突然大きく変化する。このため、二次側回路3aの充電式電池6等の遮断は、検出器28で確認できる。
【0085】
したがって、
図9Bに示したアルゴリズムと同様な処理により、一次側励起回路340gは、検出器28からの情報による一次側回路2bの独自の情報処理として、一次側回路2bの動作を停止できる。但し、2次側通信部22から1次側通信部21への遮断素子Q
85のターン・オフ情報の伝達を用いて、一次側回路2bの動作を停止できることは既に述べたとおりである。
【0086】
以上のとおり、第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムによれば、充電式電池6の電圧を測定する電圧測定回路26aと、
図7Aに示したような制御手段(過剰給電遮断手段)を備えているので、充電式電池6をワイヤレス充電する場合に、充電式電池6を過充電することや、充電式電池6に接続された負荷回路8aに誤給電したり、過大な電圧が印加されたりすることが防げる。したがって、第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムによれば、充電式電池6や充電式電池6に接続された負荷回路8aが損傷することのない充電制御システムが提供できる。
【0087】
(第1実施形態の第2変形例)
本発明の第1実施形態の第2変形例に係る充電制御システムは
図13に示すように、二次側回路3bと、二次側回路3bとの二重共振で、二次側回路3bに電磁エネルギをワイヤレス伝送する一次側回路2bを備え、二次側回路3aに含まれる充電式電池6を充電する。第1実施形態の第2変形例に係る充電制御システムの一次側回路2bは、第1実施形態に係る充電制御システムの1スイッチ構成の一次側回路2aに補助子Q
2を追加した2スイッチ構成となっている特徴は、
図12に示した第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムの一次側回路2bと同様である。
【0088】
そして、
図13に示すように、第1実施形態の第2変形例に係る充電制御システムの二次側回路3bは、
図12に示した第1実施形態の第1変形例に係る充電制御システムの二次側回路3aに受電側制御素子Q
86を追加した構成となっている。
図13に示した励起素子Q
1、補助励起素子Q
2及び受電側制御素子Q
86として、第1実施形態及びその変形例に係る充電制御システムと同様なFET等の電力用半導体スイッチング素子が用いられる。低い内部抵抗の要求と市場での入手可能性から、
図13に示す実装回路の励起素子Q
1、補助励起素子Q
2及び受電側制御素子Q
86として、MOSFETが工業的には優位と考えられる。
【0089】
二次側回路3bの概略は、
図3及び
図12に示した回路構成とほぼ同様であるが、受電側コイルL
2の上側の端子と受電側コンデンサC
2の上側の端子の間に受電側制御素子Q
86とが挿入されて、π型の回路になっている。そして、受電側制御素子Q
86と受電側コンデンサC
2の接続ノードにアノードを接続した負荷側ダイオードD
2、負荷側ダイオードD
2のカソードに一方の主電極端子を接続した遮断素子Q
85、遮断素子Q
85の他方の主電極端子に正極端子を接続し、負極端子を受電側コイルL
2と受電側コンデンサC
2の下側の接続ノードに接続した充電式電池6を有する。即ち、充電式電池6と遮断素子Q
85と負荷側ダイオードD
2を直列接続した回路が、受電側コンデンサC
2及び受電側コイルL
2に対し、それぞれ並列接続された梯子型回路が基本的な構成になっている。充電式電池6と負荷回路8aは互いに並列回路を構成しているので、二次側回路3bと負荷回路8aは、充電式電池6を介して互いに並列接続された構成になっている。更に、充電式電池6の正極端子N
11と負極端子N
12の間には、電圧測定回路26aが接続され、充電式電池6の端子間電圧V
CStの変化(時系列データ)を逐次測定できるようになっている構成も、
図3及び
図12に示した回路構成と同様である。
【0090】
負荷側ダイオードD
2は、アノードが受電側コイルL
2側、カソードが遮断素子Q
85を介して充電式電池6側を向くように接続され、充電電流I
Cの流れる方向を一方向に限定している。負荷側ダイオードD
2のカソードが遮断素子Q
85の一方の主電極端子に接続され、遮断素子Q
85の他方の主電極端子が、充電式電池6の正極端子N
11に接続されているので、遮断素子Q
85を遮断状態にすると、充電式電池6が二次側回路3aから遮断され、負荷回路8aも二次側回路3aから切り離される。遮断素子Q
85の導通及び遮断状態を制御するために、遮断素子Q
85の制御電極には、動力駆動部27bの車輌側制御回路340cから制御信号が出力される。
図13では内部構造の詳細の図示を省略しているが、
図7Aに示した論理的な内部構造の構成と同様に、車輌側制御回路340cは制御手段(過剰給電遮断手段)を有する。制御手段は、電圧測定回路26aからの過剰電圧の情報を得て、過剰電圧が充電式電池6及び負荷回路8aに印加される不都合を、遮断素子Q
85に回路遮断させることにより回避する。制御手段は、
図7Bに示したアルゴリズムと同様なコンピュータ処理を実行する。
【0091】
第1実施形態の第2変形例に係る充電制御システムでは励起素子Q1、補助励起素子Q2、受電側制御素子Q86及び遮断素子Q85として用いる電力用半導体スイッチング素子は4個のみで良いので、発熱による素子の破壊を防ぐ冷却構造が簡単に設計でき、しかも浮遊抵抗、浮遊容量、浮遊インダクタンスの発生も最小化できる。又、励起素子Q1、補助励起素子Q2、受電側制御素子Q86及び遮断素子Q85をオン/オフ制御する単純な制御だけでよい。そして、補助励起素子Q2の採用により、一次側回路2bにおける減衰振動の初期電圧を高める過渡応答特性を実現して、ジュール熱の発生を抑制する設計も簡単にできる。
【0092】
図13に示す実装回路においては、第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q
1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第2の還流ダイオードFWD
2が補助励起素子Q
2としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第3の還流ダイオードFWD
86が受電側制御素子Q
86としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、それぞれ保護素子として並列接続されている。更に遮断用還流ダイオードFWD
85が遮断素子Q
85としてのMOSFETのソース・ドレイン間に保護素子として並列接続されている。
図13に示すように、第3の還流ダイオードFWD
86は、受電側コイルL
2からの伝送電流を流す方向に設けられるので、第2の還流ダイオードFWD
2とは反対向きに設けられている。
図12に示した回路と同様に、送電側コイルL
1からの還流電流が直流電源5に更に還流するのを防ぐため、電源側ダイオードD
1が直流電源5と励起素子Q
1の間に直列接続されている。
【0093】
遮断素子Q85が導通状態であるとする。励起素子Q1と補助励起素子Q2を相補的に動作させる場合は、先ず、一次側励起回路340gからの制御信号によって、励起素子Q1をオフ状態にした後、一定時間をおいて、補助励起素子Q2をオン状態にする。補助励起素子Q2をオン状態にすると同時に、車輌側制御回路340bからの制御信号によって、受電側制御素子Q86をオン状態にする。補助励起素子Q2がオン状態になると、送電側コンデンサC1に蓄えられた電磁エネルギは送電側コイル電流を介して、送電側コイルL1に蓄積され、更に、一次側回路2bと二次側回路3bの間の二重共振が生じる。送電側コンデンサC1に蓄えられたウェイブレット状の電磁エネルギが送電側コイルL1に移動すると、一次側充放電電圧VC1は、負の極大値をとった後、0Vになる。一次側回路2bから二次側回路3bへの二重共振によって、受電側コイルL2に伝送されたウェイブレット状の電磁エネルギは、受電側制御素子Q86がオン状態なので、受電側コイル電流によって受電側コンデンサC2を充電する。受電側コンデンサC2の充電が開始されると、受電側コンデンサC2の二次側充放電電圧VC2は、負の極大値から増大し始め、正の値になる。二次側充放電電圧VC2が負の値をとっている間は充電電流ICが流れないが、二次側充放電電圧VC2が正の値になると、充電電流ICが立ち上がり始める。
【0094】
充電電流ICが立ち上がり始めたタイミングで、受電側制御素子Q86をオフ状態にする。受電側制御素子Q86のオフ状態は、一次側回路2bと二次側回路3bの間の二重共振によって、二次側充放電電圧VC2が最大になり、一次側充放電電圧VC1が0Vになる時点である。充電電流ICは、受電側制御素子Q86がオフ状態になった後も増大しピーク値な到達した後、減少しゼロになる。
【0095】
充電電流ICが0Aとなった後に、受電側制御素子Q86を、再度オン状態にすると、再度一次側回路2bと二次側回路3bの間の二重共振が生じる。受電側制御素子Q86のオン状態により、二次側充放電電圧VC2は減少を開始し、負の極大値をとった後、0Vになる。このとき、一次側充放電電圧VC1も減少を開始し、負の極大値をとった後、正の値となり増大する。
【0096】
次に、一次側充放電電圧VC1が最大になり、二次側充放電電圧VC2が0Vになる時点で受電側制御素子Q86をオフ状態にする。一次側充放電電圧VC1は二次側充放電電圧VC2と同じ値であり、受電側制御素子Q86がオフ状態になった時点以降一定値に維持される。一次側充放電電圧VC1を測定することにより、一次側回路2bと二次側回路3bの間の二重共振の伝送効率や充電式電池6の充電の状況をモニタリングすることができることが分かる。
【0097】
システム構成の全体の図示を省略しているが、
図1に示した構成と同様に、第1実施形態の第2変形例に係る充電制御システムは、1次側通信部及び2次側通信部を備えている。したがって、車輌側制御回路340cが遮断素子Q
85に、ターン・オフ制御信号を送信したという情報は、2次側通信部から1次側通信部に伝達できる。よって、1次側通信部から情報を得て、一次側制御回路34gが一次側回路2aの動作を停止させることもできる。しかしながら、
図9Bに示したアルゴリズムと同様な処理により、2次側通信部から1次側通信部への遮断素子Q
85のターン・オフ情報の伝達がなくても、一次側励起回路340gは、検出器28からの情報による一次側回路2bの独自の情報処理として、一次側回路2bの動作を停止できる。いずれの方法を採用しても、一次側励起回路340gは、制御手段による二次側回路3bからの充電式電池6等の遮断を検知して一次側回路2bを停止することができる。
【0098】
二次側回路3bにおいて、充電式電池6を遮断した場合は、二次側回路3bはRCL直列回路になり、寄生抵抗R
L2等でジュール熱として消耗したエネルギを除いた電磁エネルギは、すべて一次側回路2bに還流してくる。したがって、二次側回路3bから一次側回路2bに還流される電磁エネルギの量が、充電式電池6等の切り離し前と、切り離し後では突然大きく変化する。このため、二次側回路3bの充電式電池6等の遮断は、検出器28で確認できる。したがって、
図9Bに示したアルゴリズムと同様な処理により、一次側励起回路340gは、検出器28からの情報による一次側回路2bの独自の情報処理として、一次側回路2bの動作を停止できる。但し、2次側通信部から1次側通信部への遮断素子Q
85のターン・オフ情報の伝達を用いて、一次側回路2bの動作を停止できることは既に述べたとおりである。
【0099】
以上のとおり、第1実施形態の第2変形例に係る充電制御システムは、充電式電池6の電圧を測定する電圧測定回路26aと、
図7Aに示した構成と同様な制御手段を備えている。このため、第1実施形態の第2変形例に係る充電制御システムによれば、充電式電池6を過充電することや、充電式電池6に接続された負荷回路8aに誤給電したり、過大な電圧を印加したりすることが防げる。したがって、第1実施形態の第2変形例に係る充電制御システムによれば、充電式電池6や充電式電池6に接続された負荷回路8aを損傷することのなく、ワイヤレスで充電式電池6を充電できる充電制御システムが提供できる。
【0100】
更に、第1実施形態の第2変形例に係る充電制御システムによれば、充電制御システムの全体の構成が簡略化され軽量・小型化及び高効率化が可能になり、直流電源5の損失を含めた総合的な電力伝送効率を高めたワイヤレス充電制御システムを安価に製造することができる。第1実施形態及びその第1変形例に係る充電制御システムで述べたのと同様に第1実施形態の第2変形例に係る充電制御システムによれば、回路構成が単純化されるので壊れにくく回路設計が容易になる。又、二重共振により、充電式電池6の充電効率を高め、電力伝送の限界距離を原理的には無限大に伸ばし、電力伝送効率を原理的には100%に近い値まで高めることが可能である。
【0101】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る充電制御システムは
図14に示すように、二次側回路3aと、二次側回路3aとの二重共振で、二次側回路3aに電磁エネルギをワイヤレス伝送する一次側回路2aを備え、充電式電池6を充電する。一次側回路2aの構成は既に説明した
図3及び
図12に示した回路構成と同様であるので、重複した説明を省略する。二次側回路3aの概略の構成は、
図3及び
図12に示した回路構成と同様に、充電式電池6と遮断素子Q
85と負荷側ダイオードD
2を直列接続した回路が、受電側コンデンサC
2及び受電側コイルL
2に対し、それぞれ並列接続された構成を基本にしている。
【0102】
図14に例示するように、第2実施形態に係る充電制御システムの負荷回路8bは、インバータ81と、インバータ81からの交流信号で駆動されるモータ82と、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84を含む。第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84は、インバータ81の入力ポート側に設けられている。即ち、第1負荷遮断素子Q
83の一方の主電極端子(第1主電極端子)にインバータ81の正極入力端子が接続され、インバータ81の負極入力端子に第2負荷遮断素子Q
84の一方の主電極端子(第3主電極端子)が接続されている。互いに対向したペアをなす正極入力端子と負極入力端子とで、インバータ81の入力端子対を構成している。第1負荷遮断素子Q
83の他方の主電極端子(第2主電極端子)には、充電式電池6の正極端子N
11が接続され、インバータ81の負極入力端子に第2負荷遮断素子Q
83の他方の主電極端子(第4主電極端子)には充電式電池6の負極端子N
12が接続されている。第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84の制御電極は、動力駆動部27cの車輌側制御回路340dに接続され、車輌側制御回路340dから制御信号によって、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84の導通及び遮断が制御される。
【0103】
二次側回路3aの概略は、充電式電池6と遮断素子Q
85と負荷側ダイオードD
2の直列接続回路が、受電側コンデンサC
2及び受電側コイルL
2に対し、それぞれ並列接続された構成が基本になっている。遮断素子Q
85の制御電極は、車輌側制御回路340dに接続されている。遮断素子Q
85の導通状態及び遮断状態を制御するために、遮断素子Q
85の制御電極には車輌側制御回路340dから制御信号が出力される。負荷側ダイオードD
2は、アノードが受電側コイルL
2側、カソードが遮断素子Q
85を介して充電式電池6側を向くように接続され、充電電流I
Cの流れる方向を一方向に限定している。更に、充電式電池6の正極端子N
11と負極端子N
12の間には、電圧測定回路26aが接続され、充電式電池6の端子間電圧V
CStの変化(時系列データ)を逐次測定できるようになっている構成も、
図3及び
図12に示した二次側回路3aの回路構成と同様である。
【0104】
負荷側ダイオードD
2のカソードが遮断素子Q
85の一方の主電極端子(第5主電極端子)に接続され、遮断素子Q
85の他方の主電極端子(第6主電極端子)が、充電式電池6の正極端子N
11に接続されている。遮断素子Q
85の制御電極は、車輌側制御回路340dに接続されている。
図14では内部構造の詳細の図示を省略しているが、車輌側制御回路340dは制御手段(過剰給電遮断手段)を有する。
図7Aに示した構成とほぼ同様に、制御手段は、過剰電圧が充電式電池6及び負荷回路8bに印加される不都合を、電圧測定回路26aからの過剰電圧の情報を得て、遮断素子(電池遮断素子)Q
85、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84による回路遮断により回避する。
【0105】
先ず、遮断素子(電池遮断素子)Q
85、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84のすべてを導通状態として、第2実施形態に係る充電制御システムは、一次側回路2aから二次側回路3aに電磁エネルギをワイヤレス伝送して、充電式電池6を充電する。車輌側制御回路340dの制御手段(過剰給電遮断手段)は、
図7Bに示したアルゴリズムと類似なコンピュータ処理を実行する。制御手段が、ターン・オフ信号を遮断素子Q
85の制御電極に送信して、充電式電池6を二次側回路3aから切り離す。同時に、制御手段は、ターン・オフ信号を、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84のそれぞれの制御電極に同時送信して負荷回路8bを充電式電池6から切り離す。
【0106】
充電式電池6の充電は、充電式電池6の端子間電圧V
CStよりも大きな電圧を、充電式電池6にリンギングさせながら印加して実施する。この場合、
図7Bに示したアルゴリズムのステップS24において、V
CStの時系列データと比較する遮断素子閾値を2種類にしてもよい。例えば、遮断素子Q
85の遮断に用いる遮断素子閾値V
Cth1を、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84の遮断に用いる負荷遮断素子閾値V
Cth2より大きくして、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84の遮断が、遮断素子Q
85の遮断により先に、遮断素子閾値V
Cth1よりも低い電圧で生じるようにしてもよい。
【0107】
図示を省略しているが、
図1に示した構成と同様に、第2実施形態に係る充電制御システムは、1次側通信部21及び2次側通信部22を備えている。したがって、車輌側制御回路340dが遮断素子(電池遮断素子)Q
85、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84に、ターン・オフ制御信号を送信したという情報は、2次側通信部22から1次側通信部21に伝達できる。よって、1次側通信部21から情報を得て、一次側制御回路34aが一次側回路2aの動作を停止させることもできる。しかしながら、
図9Bに示したアルゴリズムと同様な処理により、2次側通信部22から1次側通信部21への遮断素子(電池遮断素子)Q
85、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84のターン・オフ情報の伝達がなくても、一次側励起回路340gは、検出器28からの情報による一次側回路2aの独自の情報処理として、一次側回路2aの動作を停止できる。
【0108】
いずれの方法を採用しても、一次側励起回路340gは、制御手段による二次側回路3aからの充電式電池6の遮断、及び負荷回路8bの充電式電池6からの遮断を検知して一次側回路2aを停止することができる。一次側回路2aの停止の情報は、1次側通信部21から2次側通信部22に伝達される。一次側回路2aの停止の情報を2次側通信部22から車輌側制御回路340dが入手すると、車輌側制御回路340dは、遮断素子(電池遮断素子)Q85、第1負荷遮断素子Q83及び第2負荷遮断素子Q84のすべてを導通状態に復帰させる。
【0109】
以上のとおり、第2実施形態に係る充電制御システムによれば、遮断素子Q
85と、第1負荷遮断素子Q
83と、第2負荷遮断素子Q
84と、充電式電池6の電圧を測定する電圧測定回路26aと、
図7Aと類似な構成の制御手段を備えているので、充電式電池6をワイヤレス充電する場合に、充電式電池6や充電式電池6に接続された負荷回路8bが損傷することのない充電制御システムが提供できる。
【0110】
(第2実施形態の第1変形例)
本発明の第2実施形態の第1変形例に係る充電制御システムは、見かけ上、
図14に示した第2実施形態に係る充電制御システムと同一であるので、重複した説明を省略する。但し、
図14で図示を省略した車輌側制御回路340dが有する制御手段の機能及び動作が異なる。即ち、車輌側制御回路340dの制御手段は、
図7Bに示したアルゴリズムとは異なる手順でコンピュータ処理を実行する。第2実施形態に係る充電制御システムにおいて、
図7Bに示したアルゴリズムのステップS24において、V
CStの時系列データと比較する遮断素子閾値を2種類にしてもよいことを述べたが、第2実施形態の第1変形例に係る充電制御システムにおいても、2種類の遮断素子閾値を用意する。
【0111】
即ち、第2実施形態の第1変形例に係る充電制御システムでは、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84の遮断に用いる負荷遮断素子閾値V
CthBを、
図2Cに示した通常の使用領域V
normalの下限値に設定する。或いは、負荷遮断素子閾値V
CthBを、通常の使用領域V
normalの下限値と、この使用領域V
normalの下限値を基準として、
図2Cに示すように使用領域V
normalの下限値よりも更に低い使用下限範囲ΔV
under以内の電圧に属するいずれかの値に設定してもよい。2種類の遮断素子閾値のもう一方は、遮断素子Q
85の遮断に用いる遮断素子閾値V
CthAである。2種類の遮断素子閾値を用意した上で、第2実施形態の第1変形例に係る充電制御システムでは、
図7Bに示したアルゴリズムのステップS24の前に、充電式電池6の端子間電圧V
CStの時系列データが、負荷遮断素子閾値V
CthBより低いか否かを判定する手順が存在する。
【0112】
充電式電池6の端子間電圧V
CStの時系列データのいずれかが、負荷遮断素子閾値V
CthBより低い場合は、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84の両方が遮断状態に設定され、負荷回路8bは充電式電池6から遮断されて、充電式電池6の過剰放電が防止される。充電式電池6の端子間電圧V
CStの時系列データのいずれもが、負荷遮断素子閾値V
CthBより高い場合は、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84の両方は導通状態を維持し、負荷回路8bは充電式電池6に接続された状態に維持される。したがって、
図7Bに示したアルゴリズムのステップS24の前の段階において、負荷回路8bが充電式電池6から遮断された状態が実現され、負荷回路8bが充電式電池6から遮断された状態で充電式電池6の充電プロセスが開始されるので、負荷回路8bの過剰電圧による破壊や損傷が確実に防止される。
【0113】
ステップS24の前に負荷回路8bが充電式電池6から遮断された後、
図7Bに示したアルゴリズムの手順が実行され、ステップS24では、充電式電池6の端子間電圧V
CStの時系列データが、遮断素子閾値V
CthAより低いか否かが判定される。
図7Bのフローチャートの流れと同様に、ステップS24において、V
CStの時系列データのいずれもが、遮断素子閾値V
Cthより大きくないと判定された場合は、
図7BのステップS25に進む。ステップS25において、遮断素子駆動制御回路は遮断素子Q
85の導通状態を維持する制御信号を遮断素子Q
85のゲート電極に出力し、
図7BのステップS23に戻る。ステップS24において、V
CStの時系列データのいずれかが、遮断素子閾値V
Cthより大きいと判定された場合は、
図7BのステップS26に進む。ステップS26では、遮断素子駆動制御回路がターン・オフ信号を遮断素子Q
85のゲート電極に出力し、遮断素子Q
85を遮断状態にすることにより、充電式電池6を二次側回路3aから分離する。充電式電池6が二次側回路3aから遮断されるタイミングにおいて、既に負荷回路8bは充電式電池6から遮断された状態が確保されており、負荷回路8bは過剰電圧の影響を受けなくなっている特徴が、第1実施形態に係る充電制御システムのアルゴリズムとは異なる。
【0114】
図示を省略しているが、
図1に示した構成と同様に、第2実施形態の第1変形例に係る充電制御システムも、1次側通信部21及び2次側通信部22を備えている。したがって、車輌側制御回路340dが遮断素子Q
85に、ターン・オフ制御信号を送信したという情報は、2次側通信部22から1次側通信部21に伝達できる。よって、1次側通信部21から情報を得て、一次側制御回路34aが一次側回路2aの動作を停止させることもできる。しかしながら、
図9Bに示したアルゴリズムと同様な処理により、2次側通信部22から1次側通信部21への遮断素子Q
85のターン・オフ情報の伝達がなくても、一次側励起回路340gは、検出器28からの情報による一次側回路2aの独自の情報処理として、一次側回路2aの動作を停止できる。
【0115】
いずれの方法を採用しても、一次側励起回路340gは、制御手段による二次側回路3aからの充電式電池6の遮断を検知して一次側回路2aを停止することができる。一次側回路2aの停止の情報は、1次側通信部21から2次側通信部22に伝達される。一次側回路2aの停止の情報を2次側通信部22から車輌側制御回路340dが入手すると、車輌側制御回路340dは、遮断素子(電池遮断素子)Q85、第1負荷遮断素子Q83及び第2負荷遮断素子Q84のすべてを導通状態に復帰させる。
【0116】
以上のとおり、第2実施形態の第1変形例に係る充電制御システムによれば、遮断素子Q
85、充電式電池6の電圧を測定する電圧測定回路26a、
図7Aと類似な構成の制御手段を備えているので、充電式電池6をワイヤレス充電する場合に、充電式電池6や充電式電池6に接続された負荷回路8bが損傷することのない充電制御システムが提供できる。特に、第2実施形態の第1変形例に係る充電制御システムによれば、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84を負荷回路8b側に備えているので、充電式電池6の充電プロセスの前の段階において、負荷回路8bが充電式電池6から遮断された状態の実現が可能であるので、誤給電や過剰電圧による負荷回路8bの破壊や損傷が確実に防止できる。
【0117】
(第2実施形態の第2変形例)
本発明の第2実施形態の第2変形例に係る充電制御システムは
図15に示すように、二次側回路3cと、二次側回路3cとの二重共振で、二次側回路3cに電磁エネルギをワイヤレス伝送する一次側回路2aを備え、過充電防止するように充電式電池6を充電する。一次側回路2aの構成は既に説明した
図3及び
図12に示した回路構成と同様であるので、重複した説明を省略する。一方、二次側回路3cの概略の構成は、充電式電池6と遮断素子Q
85と負荷側ダイオードD
2を直列接続した回路が、受電側コンデンサC
2及び受電側コイルL
2に対し、それぞれ並列接続された構成を基本にしている特徴は、
図3及び
図12に示した回路構成にほぼ類似である。しかし、二次側回路3cには、
図3及び
図12に示した回路構成の電圧測定回路26aが存在しない。
【0118】
図15に例示するように、第2実施形態の第2変形例に係る充電制御システムの負荷回路8bは、電圧測定回路26bと、インバータ81と、インバータ81からの交流信号で駆動されるモータ82と、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84を含む。インバータ81の入力ポートをなす正極入力端子と負極入力端子の間には、電圧測定回路26bが接続され、インバータ81の入力ポート電圧V
invの変化(時系列データ)を逐次測定できるようになっている。互いに対向したペアをなす正極入力端子と負極入力端子とで、インバータ81の入力端子対を構成している。第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84も、インバータ81の入力ポート側に設けられている。第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84が導通状態において、電圧測定回路26bは充電式電池6の端子間電圧V
CStを測定できる。
【0119】
即ち、第1負荷遮断素子Q83の一方の主電極端子(第1主電極端子)にインバータ81の正極入力端子が接続され、インバータ81の負極入力端子に第2負荷遮断素子Q84の一方の主電極端子(第3主電極端子)が接続されている。第1負荷遮断素子Q83の他方の主電極端子(第2主電極端子)には、充電式電池6の正極端子N11が接続され、インバータ81の負極入力端子に第2負荷遮断素子Q83の他方の主電極端子(第4主電極端子)には充電式電池6の負極端子N12が接続されている。第1負荷遮断素子Q83及び第2負荷遮断素子Q84の制御電極は、動力駆動部27dの車輌側制御回路340eに接続され、車輌側制御回路340eから制御信号によって、第1負荷遮断素子Q83及び第2負荷遮断素子Q84の導通及び遮断が制御される。
【0120】
二次側回路3cの概略は、充電式電池6と遮断素子Q85と負荷側ダイオードD2の直列接続回路が、受電側コンデンサC2及び受電側コイルL2に対し、それぞれ並列接続された構成が基本になっている。遮断素子Q85の制御電極は、車輌側制御回路340eに接続されている。遮断素子Q85の導通状態及び遮断状態を制御するために、遮断素子Q85の制御電極には車輌側制御回路340eから制御信号が出力される。負荷側ダイオードD2は、アノードが受電側コイルL2側、カソードが遮断素子Q85を介して充電式電池6側を向くように接続され、充電電流ICの流れる方向を一方向に限定している。
【0121】
負荷側ダイオードD
2のカソードが遮断素子Q
85の一方の主電極端子(第5主電極端子)に接続され、遮断素子Q
85の他方の主電極端子(第6主電極端子)が、充電式電池6の正極端子N
11に接続されている。遮断素子Q
85の制御電極は、車輌側制御回路340eに接続されている。
図15では内部構造の詳細の図示を省略しているが、車輌側制御回路340eは、
図7Aに示した構成とほぼ同様な論理的構造を有する制御手段を備えている。第2実施形態の第2変形例に係る充電制御システムの制御手段は、充電式電池6の充電プロセスの前に、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84を用いて、充電式電池6と負荷回路8b間の電気的接続を遮断する。充電式電池6の充電プロセスの前に、充電式電池6と負荷回路8b間の電気的接続は遮断されているので、過剰電圧が負荷回路8bに印加される不都合は確実に回避できる。一方、過剰電圧が充電式電池6に印加される問題は、電圧測定回路26bからの過剰電圧の情報を得て、遮断素子Q
85を遮断状態にし、二次側回路3cから充電式電池6を電気的に分離することにより回避する。
【0122】
第2実施形態の第2変形例に係る充電制御システムは、遮断素子(電池遮断素子)Q
85、第1負荷遮断素子Q
83及び第2負荷遮断素子Q
84のすべてを導通状態として、一次側回路2aから二次側回路3cに電磁エネルギをワイヤレス伝送して、充電式電池6を充電する。車輌側制御回路340eの制御手段は、
図7Bに示したアルゴリズムと類似なコンピュータ処理を実行する。しかし、第2実施形態の第2変形例に係る充電制御システムにおいては、制御手段は、電圧測定回路26bを用いて充電式電池6の端子間電圧V
CStが、負荷遮断素子閾値V
CthBを下回らないかを、常時監視(モニタ)する。負荷遮断素子閾値V
CthBは、
図2Cに示した通常の使用領域V
normalの下限値に設定してもよい。或いは、負荷遮断素子閾値V
CthBを、通常の使用領域V
normalの下限値と、この使用領域V
normalの下限値を基準として、
図2Cに示すように使用領域V
normalの下限値よりも更に低い使用下限範囲ΔV
under以内の電圧に属するいずれかの値に設定することもできる。
【0123】
制御手段が、充電式電池6の端子間電圧VCStが、負荷遮断素子閾値VCthBより低いと判定した場合は、ターン・オフ信号を第1負荷遮断素子Q83及び第2負荷遮断素子Q84のそれぞれの制御電極に同時送信して負荷回路8bを充電式電池6から切り離す。負荷回路8bが充電式電池6から切り離された後、一次側回路2aから二次側回路3cへ二重共振により、ウェイブレット状の電磁エネルギを伝送して、二次側回路3cに含まれる充電式電池6を充電する。充電式電池6の充電プロセス中に、制御手段が、電圧測定回路26bからの過剰電圧の情報を得た場合は、制御手段はターン・オフ信号を遮断素子Q85の制御電極に送信して、充電式電池6を二次側回路3cから切り離す。
【0124】
図示を省略しているが、
図1に示した構成と同様に、第2実施形態の第2変形例に係る充電制御システムは、1次側通信部21及び2次側通信部22を備えている。したがって、車輌側制御回路340eが遮断素子Q
85に、ターン・オフ制御信号を送信したという情報は、2次側通信部22から1次側通信部21に伝達できる。よって、1次側通信部21から情報を得て、一次側制御回路34aが一次側回路2aの動作を停止させることもできる。一方、
図9Bに示したアルゴリズムと同様な処理により、2次側通信部22から1次側通信部21への遮断素子Q
85のターン・オフ情報の伝達がなくても、一次側励起回路340gは、検出器28からの情報による一次側回路2aの独自の情報処理として、一次側回路2aの動作を停止できる。
【0125】
いずれの方法を採用しても、一次側励起回路340gは、制御手段による二次側回路3cからの充電式電池6の遮断を認識して一次側回路2aを停止することができる。一次側回路2aの停止の情報は、1次側通信部21から2次側通信部22に伝達される。一次側回路2aの停止の情報を2次側通信部22から車輌側制御回路340eが入手したとき、車輌側制御回路340eは、遮断素子(電池遮断素子)Q85、第1負荷遮断素子Q83及び第2負荷遮断素子Q84のすべてを導通状態に復帰させることができる。なお、一次側回路2aの停止の情報を2次側通信部22から車輌側制御回路340eが入手したとき、車輌側制御回路340eが第1負荷遮断素子Q83及び第2負荷遮断素子Q84の2つのスイッチング素子のみを導通状態にするモードでもよい。2つのスイッチング素子のみを導通状態にするモードにおいては、充電式電池6から負荷回路8bに給電され、車輌が走行できる。車輌を走行により、充電式電池6の端子間電圧VCStが負荷遮断素子閾値VCthBより低下した場合、第1負荷遮断素子Q83及び第2負荷遮断素子Q84を遮断状態にする。第1負荷遮断素子Q83及び第2負荷遮断素子Q84が遮断状態になった後、遮断素子Q85を導通状態に復帰させて、充電式電池6からの充電プロセスを開始するようにしてもよい。
【0126】
以上のとおり、第2実施形態の第2変形例に係る充電制御システムによれば、遮断素子Q
85と、
図7Aと類似な構成の制御手段を備えているので、充電式電池6をワイヤレス充電する場合に、充電式電池6や充電式電池6に接続された負荷回路8bが損傷することのない充電制御システムが提供できる。特に、第2実施形態の第2変形例に係る充電制御システムによれば、負荷回路8bを分離する第1負荷遮断素子Q
83と第2負荷遮断素子Q
84を備えているので、充電式電池6の充電プロセスの前の段階において、負荷回路8bが充電式電池6から分離された状態が実現されているので、負荷回路8bに対する誤給電や、過剰電圧による破壊や損傷が確実に防止できる。更に、第2実施形態の第2変形例に係る充電制御システムによれば、電圧測定回路26bを、負荷回路8b側に備えているので、充電式電池6の過剰放電も防止できる。
【0127】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る充電制御システムは、
図16に示すように、駆動制御部27eを有する車輌31bに無接触で電磁エネルギを、二重共振を利用して給電回路29cから給電して、充電式電池6の過充電を防止する電力伝送システムである。車輌31bがEV等であれば、駆動制御部27eの負荷回路8aは
図4等に示した構成と同様に、インバータと、インバータからの交流信号で駆動されるモータ等を有する場合が例示できる。モータを駆動することにより、車輌31bが走行する。車輌31bが走行中において、
図17に示した車輌側制御回路340fは、例えば車輌31bのドライバから2次側操作部23を経由して、走行要求の有無、アクセル情報等を取得する。
【0128】
図16に示すように、第3実施形態に係る充電制御システムは、駆動制御部27eにウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを無接触で給電する給電回路29cと、給電回路29cに接続され、給電回路29cに命令を送る1次側操作部33を有している。第3実施形態に係る充電制御システムは更に、給電回路29cに対向し、車輌31b内に搭載される受電盤12、2次側通信部22、及び2次側操作部23等も備えている。
【0129】
給電回路29cは、
図16に示すように送電側コイルL
1を円盤状の誘電体に収納した給電盤11と、送電側コイルL
1に流れる給電電流を制御する一次側制御回路34hと、2次側通信部22から受電側コンデンサC
2の端子間電圧等の駆動制御部27e側の情報を受信し、一次側制御回路34hに伝達する1次側通信部21を有している。1次側通信部21は、2次側通信部22との間で無接触給電に必要な様々な情報を無線通信等でやりとりすることができる。給電回路29cと駆動制御部27eとは、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2を介して、ウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを互いに送受する二重共振のエネルギ振動を繰り返す。
【0130】
図16に示すように、第3実施形態に係る充電制御システムは、駆動制御部27eにウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを無接触で給電して駆動制御部27eの充電式電池6を充電する給電回路29cと、給電回路29cに接続され、給電回路29cに命令を送る1次側操作部33を有している。1次側操作部33には種々の構造や機構が採用可能で、例えば1次側操作部33が撮像装置を備えるようにしてもよい。
【0131】
給電回路29cは、
図16に示すように、ステップ入力電圧E
0並びに送電側コイルL
1に流れる給電電流を制御する一次側制御回路34hと、一次側制御回路34hによって伝送電流が制御される給電盤11等を含んでいる。なお、
図16では図示を省略しているが、
図1と同様に、給電盤11を搭載し、給電盤11と受電盤12の間隔を制御する間隔制御機構を備えていてもよい。間隔制御機構を備えている場合は、一次側制御回路34hは、間隔制御機構も制御する。一次側制御回路34hと駆動制御部27eとは、送電側コイルL
1を流れる電流の過渡応答振動と受電側コイルL
2を流れる電流の過渡応答振動の時定数とタイミングを調整する。過渡応答振動の時定数及びタイミングが調整されることにより、ウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギの振動が共鳴して、二重共振による電磁エネルギの双方向送受が発生する。
【0132】
図17に第3実施形態に係る充電制御システムの一次側回路2a及び二次側回路3aの一例を示す。一次側回路2aは、直流電圧E
0を出力する直流電源5と、直流電源5の高電位側端子に一方の端子を接続し、一次側回路2aの外部回路からの制御信号で動作する励起素子Q
1と、励起素子Q
1の他方の端子に一方の端子が接続され、直流電源5の低電位側端子の他方の端子を接続した送電側コンデンサC
1を有する。
図17に例示した回路構成においては、一次側回路2aを構成する励起素子Q
1の動作が、一次側回路2aの外部回路である一次側励起回路340cから出力される制御信号によって他励制御される。
【0133】
励起素子Q1が所定のタイミングで他励制御されることにより、直流電源5が供給するステップ入力電圧E0が、過渡応答特性として減衰振動を発生させる。即ち、励起素子Q1が所定のタイミングでオン/オフ動作することに伴い、RCL並列回路の回路トポロジとRCL直列回路の回路トポロジが交互に切り替えられて周期的な振動波形が生じる。一次側回路2aと二次側回路3aの間で二重共振が発生すると、一次側回路2aの過渡現象振動と二次側回路3aの過渡現象振動が共鳴しているので、一次側回路2aと二次側回路3aの間で電磁エネルギの双方向の送受が生じる。
【0134】
送電側コンデンサC1の端子間電圧である一次側充放電電圧V
C1を検知する電圧計としての検出器28が、高電位端子側接続ノードN
1と低電位端子側接続ノードN
2の間に接続されている。検出器28は、送電側コイルL
1の一方の端子と送電側コイルL
1の他方の端子の間に接続された構成でもあるため、検出器28は、送電側コイルL
1の端子間電圧V
L1を測定することも可能である。一次側充放電電圧V
C1は、二次側回路3aにおける振動特性が受電側コイルL
2から送電側コイルL
1へ還流した成分を示すことができるので、一次側回路2aの振動特性を反映している。したがって、検出器28の出力を
図17に示すように一次側励起回路340cに入力することにより、一次側励起回路340cは充電式電池6の端子間電圧V
CStの情報を、獲得することができる。
【0135】
二次側回路3aは、
図17に示すように、送電側コイルL
1に離間して対向し送電側コイルL
1から無接触で磁気エネルギを受け取る受電側コイルL
2、受電側コイルL
2に並列接続され受電側コイルL
2に蓄積された磁気エネルギを静電エネルギとして蓄積する受電側コンデンサC
2を有する。二次側回路3aは、駆動制御部27eに受電側コイルL
2を加えた構成にほぼ対応するが、二次側回路3aには負荷回路8aが含まれていない。二次側回路3aは、
図17に示すように、負荷側ダイオードD
2と遮断素子Q
85と充電式電池6の直列接続回路が、受電側コンデンサC
2及び受電側コイルL
2に対し、それぞれ並列接続された梯子型回路の構成になっている。
【0136】
負荷側ダイオードD
2は、アノードが受電側コイルL
2側、カソードが遮断素子Q
85を介して充電式電池6側を向くように接続され、充電電流I
Cの流れる方向を一方向に限定している。
図17では、負荷側ダイオードD
2のオン抵抗を含む回路配線の浮遊抵抗がr
2であるとして示されているが、受電側コンデンサC
2の寄生抵抗の表示は無視している。したがって、二次側回路3aは、受電側コイルL
2、受電側コンデンサC
2、浮遊抵抗r
2及び寄生抵抗R
L2を備えたRCL共振回路である。そして、それぞれが共振回路である一次側回路2aと二次側回路3aの過渡応答振動が共振(共鳴)する二重共振によって、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2に電磁エネルギがワイヤレス給電される。
【0137】
図17に示す一次側励起回路340cは、励起素子Q
1を制御して、一次側回路2aと二次側回路3aのそれぞれの非正弦波の過渡応答振動が共振(共鳴)する二重共振に依拠した電磁エネルギの移動に関する様々な駆動制御や振動状態の判定を行う。例えば振動状態の判定のために、一次側励起回路340cは、
図18Aに示すように、一次側回路2aの振動特性から、充電式電池6に印加される過剰電圧を判定する過剰電圧判定手段9cを有する。過剰電圧判定手段9cは、
図18Aに示すように、算術論理回路(ALU)339cによるコンピュータ・ソフトウェア処理で実施できる。
【0138】
一次側励起回路340cは、
図18Aに示すように、伝送データ記憶装置348aと、プログラム記憶装置348bと、出力装置348cのそれぞれにALU339cが接続された構成が可能である。
図18Aに論理的な内部構造をモデル化して示すように、ALU339cは、演算シークエンス制御回路344と、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345bと、一次側電圧検出制御回路346と、極大電圧算出回路347aと、負荷遮断判定回路347bと、直流電源制御回路347cと、遮断素子通信回路347dと、Aバス349aと、Bバス349b等を主なる構成要素とする構成例が可能である。
図18Aの例示構造においては、演算シークエンス制御回路344は、ALU339cの内部における演算処理のシークエンスを制御する。Aバス349a及びBバス349bは、演算シークエンス制御回路344、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、極大電圧算出回路347a、負荷遮断判定回路347b、直流電源制御回路347c及び遮断素子通信回路347dのそれぞれに情報及び命令を伝達するためのものである。
【0139】
演算シークエンス制御回路344は、励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、極大電圧算出回路347a、負荷遮断判定回路347b、直流電源制御回路347c及び遮断素子通信回路347dのそれぞれの処理手順をコンピュータ・ソフトウェア・プログラム(過剰電圧判定プログラム)に従って、制御する。
図18Aでは、Aバス349aに、一次側励起回路340c及び伝送間隔制御回路340pが接続された構成例が示されている。伝送間隔制御回路340pは、
図16で図示を省略した間隔制御機構を駆動して、給電盤11と受電盤12の間隔を最適値となるように制御することができる。一方、Bバス349bには、伝送データ記憶装置348a、プログラム記憶装置348b及び出力装置348cが接続された構成例が示されているが、
図18Aに示す構成に限定されるものではない。プログラム記憶装置348bには、
図18Bに例示した一連の回路遮断制御処理フローに等価なアルゴリズムを実行する過剰電圧判定プログラムが格納される。
【0140】
図18Bに示すようなアルゴリズムによれば、ALU339cは、
図17に示した励起素子Q
1を制御して、一次側回路2aと二次側回路3aのそれぞれの過渡現象振動の位相を同期共振(二重共振)させる駆動制御と、二次側回路3aから帰還したエネルギによる振動特性の解析ができる。即ち、
図18Bに例示したフローチャートのステップS32において、ALU339cの励起条件設定回路345aは、一次側励起回路340cが励起素子Q
1を他励制御するタイミング(励起条件)を設定し、一次側励起回路340cに命令を出力する。
【0141】
ステップS32において、直流電源5から出力されたステップ入力電圧E0よって、一次側回路2aに過渡現象振動が生成される。一次側回路2aの過渡現象振動の位相と二次側回路3aの過渡現象振動の位相が同期する二重共振により一次側回路2aと二次側回路3aの間の電磁エネルギの双方向送受の振動が発生する。二重共振においては、二次側回路3aから、二次側回路3aの情報を有した還流電流が一次側回路2aに還流する。二次側回路3aの情報を有した還流電流は、一次側回路2aの送電側コンデンサC1の端子間に一次側充放電電圧VC1として現れる。したがって、ステップS32では、ALU339cの一次側電圧検出制御回路346が、検出器28に一次側充放電電圧VC1を逐次測定させる。検出器28が検出した一次側充放電電圧VC1の時系列データは、伝送データ記憶装置348aに格納される。
【0142】
次にステップS33において、ALU339cの極大電圧算出回路347aは、伝送データ記憶装置348aから、一次側充放電電圧VC1の時系列データを順に読み出し、それぞれの時系列データの極大値を「還流極大電圧VC1max」として決定する。還流極大電圧VC1maxは、充電式電池6の端子間電圧VCStに近い値である。決定した還流極大電圧VC1maxは、伝送データ記憶装置348aに格納する。
【0143】
図18BのステップS34において、ALU339cの負荷遮断判定回路347bは、伝送データ記憶装置348aから帰還極大電圧V
C1maxを読み出し、帰還極大電圧V
C1maxが、遮断判定電圧Vstopを超えているか否かを判定する。遮断判定電圧Vstopは、充電式電池6を破損又は破壊の恐れのある電圧としてあらかじめ決定しておく。ステップS34で、帰還極大電圧V
C1maxが、遮断判定電圧Vstopを超えていると判定された場合は、ステップS36に進む。ステップS36では、1次側通信部21と2次側通信部22との間の通信により、遮断素子通信回路347dが車輌側制御回路340fに遮断素子Q
85をターン・オフさせる信号を出力せる。車輌側制御回路340fに遮断素子Q
85をターン・オフさせたら、ステップS37に進み、直流電源5の動作を停止すると同時に、励起素子Q1の動作も停止する。ステップS34で、帰還極大電圧V
C1maxが、遮断判定電圧Vstopを超えていないと判定された場合は、ステップS35に進み、直流電源5の出力と励起素子Q1の動作を継続して、ステップS32に戻る。
【0144】
図18Aに示すALU339cを構成するハードウェア資源としての励起条件設定回路345a、伝送条件設定回路345b、一次側電圧検出制御回路346、極大電圧算出回路347a、負荷遮断判定回路347b、負荷遮断判定回路347b及び遮断素子通信回路347dは、論理的な機能に着目したハードウェア資源を形式的に表現しているのであって、必ずしも、半導体チップ上に物理的な領域としてそれぞれ独立して存在する機能ブロックを意味するものではないが、PLDの「論理ブロック」のような半導体チップ上に実装されたプログラム可能な論理コンポーネント等の現実に存在する構成を否定するものでもない。ALU339cの一部の構成又はすべての構成をFPGAのようなPLDで構成した場合は、
図18Aに示した演算シークエンス制御回路344のプログラムカウンタやAバス349a及びBバス349b等のデータバスは省略可能である。
【0145】
以上のとおり、第3実施形態に係る過充電防止は、充電式電池6の端子間電圧VCStの情報を一次側回路2aの一次側充放電電圧VC1として測定する検出器28と、検出器28からの信号を処理して、充電式電池6に印加される過剰電圧への到達を判定する過剰電圧判定手段9cを備えている。したがって、第3実施形態に係る充電制御システムによれば、充電式電池6をワイヤレスで充電する場合に、充電式電池6や充電式電池に接続された負荷回路8aが損傷することのない充電制御システムが提供できる。
【0146】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る充電制御システムは、
図19に示すように、動力駆動部27gを有する車輌31cにウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを給電回路29cから無接触給電する際に、過充電や誤給電を防止できる電力伝送システムである。動力駆動部27gは、充電対象としての充電式電池6と、充電式電池6の電力を用いて車輌31cを走行させる動力駆動部としての負荷回路8aを備える。
図19に示すように、第4実施形態に係る充電制御システムは、動力駆動部27gにウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを無接触で給電する給電回路29cと、給電回路29cに接続され、給電回路29cに命令を送る1次側操作部33を有している。第4実施形態に係る充電制御システムは更に、給電回路29cに対向し、車輌31c内に搭載される受電盤12、2次側通信部22、及び2次側操作部23等も備えている。2次側通信部22には、国際電気通信連合(ITU)が定める第5世代移動通信システム(以下において「5G通信」という。)用のアンテナ42が接続されている。
【0147】
給電回路29cは、
図19に示すように送電側コイルL
1を円盤状の誘電体に収納した給電盤11と、送電側コイルL
1に流れる給電電流を制御する車輌側制御回路34bと、2次側通信部22から受電側コンデンサC
2の端子間電圧等の動力駆動部27g側の情報を受信し、車輌側制御回路34bに伝達する1次側通信部21を有している。1次側通信部21には、5G通信用のアンテナ41が接続されている。1次側通信部21は、2次側通信部22との間で、第4実施形態に係る充電制御システムの無接触給電に必要な様々な情報をやりとりすることができる。給電回路29cと動力駆動部27gとは、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2を介して、電磁エネルギを互いに送受する二重共振を用いて充電式電池6を充電し、且つ充電式電池6の過充電を防止する。
【0148】
図19に示すように、第4実施形態に係る充電制御システムは、動力駆動部27gにウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギを無接触で給電して動力駆動部27gの充電式電池6を充電する給電回路29cと、給電回路29cに接続され、給電回路29cに命令を送る1次側操作部33を有している。1次側操作部33には種々の構造や機構が採用可能で、例えば1次側操作部33が撮像装置を備えるようにしてもよい。
図19では、給電回路29c側の送電側コイルL
1と車輌31c側の受電側コイルL
2とが対向し、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2へ無接触でウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギが受電側コイルL
2に無接触で伝送されることを示す模式図を例示している。
【0149】
給電回路29cは、
図19に示すように送電側コイルL
1を円盤状の誘電体に収納した給電盤11と、給電盤11を搭載し、給電盤11と受電盤12の間隔を制御する間隔制御機構32と、ステップ入力電圧E
0並びに送電側コイルL
1に流れる給電電流及び間隔制御機構32を制御する一次側制御回路34c等を含んでいる。給電盤11は、一次側制御回路34cによって伝送電流が制御される。一次側制御回路34cと動力駆動部27gとは、送電側コイルL
1を流れる電流の過渡応答振動と受電側コイルL
2を流れる電流の過渡応答振動の時定数とタイミングを調整して、ウェイブレット状非正弦波の電磁エネルギの振動が共鳴する条件で、互いにウェイブレット状の電磁エネルギ送受し、二重共振による電力伝送を行い、充電式電池6を充電する。
【0150】
第4実施形態に係る充電制御システムの一次側回路2aの回路構成は、
図3を例示して説明した第1実施形態に係る充電制御システムの一次側回路2aの回路構成と基本的に同様であり、重複した説明を省略する。又、第4実施形態に係る充電制御システムの二次側回路3aの回路構成についても、
図3に示した第1実施形態に係る充電制御システムの二次側回路3aの回路構成と基本的に同様である。しかしながら、遮断素子の動作を制御する車輌側制御回路の構成や機能が、
図3に例示した車輌側制御回路340bとは異なる。第4実施形態に係る充電制御システムの車輌側制御回路は、
図19に示した動力駆動部27gに含まれているが、車輌側制御回路は
図7Aに示したような論理構成の過剰給電遮断手段(制御手段)7aを有しない。
【0151】
図7Aに示した第1実施形態に係る充電制御システムの過剰給電遮断手段(制御手段)7aに等価な第4実施形態に係る充電制御システムの過剰給電遮断手段(制御手段)7gは、
図19の左上に示したクラウドALU4に備えられている。クラウドALU4は、例示であり、必ずしもクラウド・コンピューティング・サービス等のコンピュータを意味するものではなく、電池充電管理棟等の自社のコンピュータでも構わない。過剰給電遮断手段(制御手段)7gを、クラウド・コンピューティング・サービス等のクラウドALU4に備えることにより、クラウド方式のコンピューティング処理による充電式電池6の過剰充電防止が可能になる。クラウドALU4は、電池充電管理棟やクラウド・サービス・プロバイダ等の車輌31cの外部に配置することが可能である。このため、クラウドALU4に設けられた5G通信用のアンテナ43と、車輌31cに設けられた5G通信用のアンテナ42との間でマッシブ多入力多出力(MIMO)技術を許容する5G通信が行うことができる。マッシブMIMO技術を採用することにより、ミリ波伝送での信号強度を高め、更に無線基地局の影響範囲の端の部分のカバレッジが向上し、通信性能が向上する。更に、クラウドALU4に設けられた5G通信用のアンテナ43と、給電回路29cに設けられた5G通信用のアンテナ41との間でもマッシブMIMO技術を許容する5G通信が可能である。
【0152】
二次側回路の図示を省略しているが、
図3に示した二次側回路3aと同様に、送電側コイルL
1に離間して対向し送電側コイルL
1から無接触で磁気エネルギを受け取る受電側コイルL
2、受電側コイルL
2に並列接続され受電側コイルL
2に蓄積された磁気エネルギを静電エネルギとして蓄積する受電側コンデンサC
2を有する。更に
図3に示した二次側回路3aと同様に、充電式電池6の正極端子N
11と負極端子N
12の間には、電圧測定回路が接続されている。遮断素子の動作を制御する車輌側制御回路を有する動力駆動部27gは、電圧測定回路から充電式電池6の端子間電圧V
CStの情報を、アンテナ42とアンテナ43との間の5G通信により、クラウドALU4に送る。
【0153】
図20に示すように、伝送データ記憶装置476aと、プログラム記憶装置476bと、出力装置476cのそれぞれにクラウドALU4が接続された構成が可能である。
図20に論理的な内部構造をモデル化して示すように、クラウドALU4は、演算シークエンス制御回路471と、充電電圧測定制御回路472と、過剰電圧判定回路473と、遮断素子駆動制御回路474と、Aバス475aと、Bバス475b等を主なる構成要素とする構成例が可能である。充電電圧測定制御回路472、過剰電圧判定回路473及び遮断素子駆動制御回路474によって、第4実施形態に係る充電制御システムの制御手段7gが構成されている。
図20の例示構造においては、演算シークエンス制御回路471は、クラウドALU4の内部における演算処理のシークエンスを制御する。Aバス475a及びBバス475bは、演算シークエンス制御回路471、充電電圧測定制御回路472、過剰電圧判定回路473及び遮断素子駆動制御回路474のそれぞれに情報及び命令を伝達するためのものである。
【0154】
演算シークエンス制御回路471は、充電電圧測定制御回路472、過剰電圧判定回路473及び遮断素子駆動制御回路474のそれぞれの処理手順をコンピュータ・ソフトウェア・プログラム(電池遮断プログラム)に従って、制御する。
図20では、Bバス475bには、伝送データ記憶装置476a、プログラム記憶装置476b及び出力装置476cが接続された構成例が示されているが、
図20に示す構成に限定されるものではない。プログラム記憶装置476bには、
図7Bに例示した一連の処理に等価なアルゴリズムを実行する電池遮断プログラムが格納される。
【0155】
図7Bに示した流れと等価なアルゴリズムのコンピュータ処理によれば、クラウドALU4は、
図19に示した受電盤12を制御して、充電式電池6及び負荷回路8aに過剰な電圧が印加されないように、二次側回路に設けた遮断素子の動作を制御できる。即ち、先ず、
図19に示した1次側操作部33は、一次側制御回路34cに対し、1次側通信部21から2次側通信部22への通信を介して動力駆動部27gに、遮断素子をターン・オンする制御信号を出力するように指示する。一次側制御回路34cは更に、直流電源の起動と、励起素子の最適なタイミングでの動作させることを命令する。
【0156】
そして、クラウドALU4の充電電圧測定制御回路472は、アンテナ43とアンテナ42の間の5G通信により、動力駆動部27gの二次側回路に設けた電圧測定回路を用いて充電式電池6の端子間電圧VCStの時系列データを逐次測定させる。クラウドALU4の充電電圧測定制御回路472は、アンテナ43とアンテナ42の間の5G通信により、動力駆動部27gから充電式電池6の端子間電圧VCStの時系列データを獲得し、獲得した端子間電圧VCStの時系列データを伝送データ記憶装置476aに格納する。その後、クラウドALU4の過剰電圧判定回路473は、伝送データ記憶装置476aから、VCStの時系列データを読み出し、遮断素子閾値VCthと比較する。
【0157】
VCStの時系列データのいずれもが、遮断素子閾値VCthより大きくないと判定された場合は、遮断素子駆動制御回路474は遮断素子の導通状態を維持する制御信号を遮断素子のゲート電極に出力る。VCStの時系列データのいずれかが、遮断素子閾値VCthより大きいと判定された場合は、遮断素子駆動制御回路474は、アンテナ43とアンテナ42の間のG通信により、動力駆動部27gに遮断素子を遮断状態になる処理をさせる。遮断素子を遮断状態になることにより、充電式電池6及び負荷回路8aが二次側回路から切り離される。
【0158】
遮断素子駆動制御回路474が遮断素子に、ターン・オフ制御信号を送信したという情報は、アンテナ43とアンテナ41の間の5G通信により、1次側通信部21に伝達できる。よって、1次側通信部21から情報を得て、一次側制御回路34cが一次側回路の動作を停止させることができる。なお、プログラム記憶装置348bには、
図9Bに例示した処理フローに等価なアルゴリズムを実行するプログラムが格納される。
【0159】
第4実施形態に係る電力伝送装置は、第1~第3実施形態に係る電力伝送装置と同様に、一次側回路及び二次側回路は、振幅値が一定の定常状態の正弦波を対象とする交流理論ではなく、振幅値が時間共に変動する非定常状態を対象とする過渡現象に依拠した回路である。そして、送電側コンデンサの一方の端子と直流電源との間に接続された励起素子の制御電極の電圧が、外部回路である一次側制御回路34cからのクロック信号で他励制御されて、RCL並列回路とRCL直列回路を切り替える他励式の回路の動作をする。即ち、励起素子の導通状態において、直流電源の高電圧側端子+と低電圧側端子-の間に、送電側コイルL1と送電側コンデンサを含むRCL並列回路を並列接続される。又、励起素子の遮断状態において、高電位端子側接続ノードN1が直流電源の高電圧側端子+から分離され、送電側コイルL1と送電側コンデンサを含むRCL直列回路が構成されるという、他励式の回路の動作を実現している。
【0160】
以上のとおり、第4実施形態に係る充電制御システムは、アンテナ42とアンテナ43の5G通信を用い、充電式電池6の電圧の情報を取得し、更に充電式電池6を切り離す制御が可能な過剰給電遮断手段(制御手段)7gをクラウドALUに備えている。したがって、第4実施形態に係る充電制御システムによれば、充電式電池6をワイヤレス充電する場合に、充電式電池6や充電式電池6に接続された負荷回路8aが損傷することのない充電制御システムが提供できる。クラウド方式のコンピューティング処理を採用し、制御手段7gをクラウドALUに備えることにより、車輌31cが備える動力駆動部27g側のコンピュータ処理は、シンクライアントとしての処理であり、処理の負担が軽くなる。なお、5G通信は例示であり、6G通信や7G通信であっても構わないことは勿論である。
【0161】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第4実施形態及びその変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、第1~第4実施形態の説明においては、EV等の車載の充電式電池6を充電する無接触電力伝送(ワイヤレス電力伝送)を行う場合を例示的に説明したが、第1~第4実施形態に係る振動増幅回路は、車載の充電式電池6を充電する無接触充電制御システムのみに限定されるものではない。
【0162】
第1~第4実施形態で説明したような、充電式電池6の端子間電圧VCStをモニタリングして、充電式電池6等を切り離す処理と、そのための技術的思想は、充電式電池6を充電したい種々の技術分野に適用し応用することが可能である。以上のとおり、本発明は本明細書及び図面に記載していない様々な実施形態、変形例、運用技術等を含むと共に、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0163】
2a,2b…一次側回路、3a,3a,3b,3c…二次側回路、4…クラウドALU、5…直流電源、6prt…電池内部保護回路、6…充電式電池、7a,7g…制御手段(過剰給電遮断手段)、8a…動力駆動部、8a,8b…負荷回路。9a…一次側停止命令手段、9c…過剰電圧判定手段、11…給電盤、12…受電盤、21…1次側通信部、22…2次側通信部、23…2次側操作部、26a,26b…電圧測定回路、27a,27b,27c,27d,27e,27g…動力駆動部、28…検出器、29a,29a,29c…給電回路、30…平坦面、31a,31b,31c…車輌、32…間隔制御機構、33…1次側操作部、34b…車輌側制御回路、34a,34c,34g,34h…一次側制御回路、41,42,43…アンテナ、61j…電池セル、61…電池モジュール、62…保護制御回路、63…ヒューズ、64…電流検出回路、67…電圧検出回路、68…温度検出回路、81…インバータ、82…モータ、269…車輌側算術論理演算回路(車輌側ALU)、271,471,344…演算シークエンス制御回路、272,472…充電電圧測定制御回路、273,473…過剰電圧判定回路、274,474…遮断素子駆動制御回路、275a,349a,475a…Aバス、275b,349b,475b…Bバス、276a,348a,476a…伝送データ記憶装置、276b,348b,476b…プログラム記憶装置、276c,348c,476c…出力装置、339a,339c…算術論理演算回路(ALU)、340a,340c…一次側励起回路、340b,340c,340d,340e,340f…車輌側制御回路、340p…伝送間隔制御回路、345a…励起条件設定回路、345b…伝送条件設定回路、346…一次側電圧検出制御回路、347a…極大電圧算出回路、347b…負荷遮断判定回路、347c…直流電源制御回路、347d…遮断素子通信回路