IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 神鋼鋼線工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図1
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図2
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図3
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図4
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図5
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図6
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図7
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図8
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図9
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図10
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図11
  • 特開-PC鋼より線の接続具および接続方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001466
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】PC鋼より線の接続具および接続方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20231227BHJP
   E04C 5/10 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
E04C5/18 102
E04C5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100141
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】細居 清剛
(72)【発明者】
【氏名】荒木 茂
(72)【発明者】
【氏名】野田 一成
(72)【発明者】
【氏名】松平 拓人
(72)【発明者】
【氏名】平尾 みなみ
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164BA06
2E164BA23
2E164DA03
2E164DA13
2E164DA23
(57)【要約】
【課題】接続具一次側のウェッジのセット量に起因する空隙が発生しても腐食因子の侵入を防止するPC鋼より線の接続具を提供する。
【解決手段】PC鋼より線の接続具100は、一次側PC鋼より線10の定着部材を緊張可能に保持する接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)と、二次側PC鋼より線20を緊張可能に保持する接続具二次側保持部(接続具二次側ウェッジ124および接続具二次側スリーブ126)と、接続具一次側保持部よりも一次側PC鋼より線10の側に設けられた、二次側PC鋼より線20の緊張時に発生する接続具一次側ウェッジ114のセット量を超過して圧縮させた弾性緩衝材110とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とを接続する接続具であって、
前記一次側PC鋼より線の定着部材を緊張可能に保持する、接続具一次側ウェッジおよび接続具一次側スリーブを含む接続具一次側保持部と、
前記二次側PC鋼より線を緊張可能に保持する、接続具二次側保持部と、
前記接続具一次側保持部よりも前記一次側PC鋼より線の側に設けられた、前記二次側PC鋼より線の緊張時に発生する前記接続具一次側ウェッジのセット量を超過して圧縮させた弾性緩衝材と、を含むことを特徴とする、接続具。
【請求項2】
前記弾性緩衝材は、前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線の側の端面に当接するように設けられることを特徴とする、請求項1に記載の接続具。
【請求項3】
前記弾性緩衝材には、防錆材またはエポキシ樹脂が含浸または塗布されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の接続具。
【請求項4】
前記接続具は直接埋設型の接続具であって、前記接続具の外周に外皮層が被着されるとともに、前記接続具の二次側端末に支圧緩衝材が設けられ、
圧縮されていた弾性緩衝材が伸長することにより、前記二次側PC鋼より線の緊張時に発生する前記接続具一次側ウェッジに起因するセット量に対応する空隙を発生させないことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の接続具。
【請求項5】
前記接続具はカップラーシース型の接続具であって、前記接続具の外周にカップラーシースが接続底板を用いて接続され、
圧縮されていた弾性緩衝材が伸長することにより、前記接続具一次側ウェッジに起因する空隙を発生させないで前記接続底板のPC鋼より線の長手方向の移動を規制することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の接続具。
【請求項6】
一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とを接続具を用いて接続する接続方法であって、
前記接続具は、前記一次側PC鋼より線の定着部材を緊張可能に保持する、接続具一次側ウェッジおよび接続具一次側スリーブを含む接続具一次側保持部と、前記二次側PC鋼より線を緊張可能に保持する、接続具二次側保持部と、弾性緩衝材と、を含み、
前記接続方法は、前記接続具一次側スリーブを取り付ける前に、または、前記接続具一次側スリーブを取り付けた後に、前記接続具一次側保持部よりも前記一次側PC鋼より線の側に、前記二次側PC鋼より線の緊張時に発生する前記接続具一次側ウェッジのセット量を超過して圧縮させた弾性緩衝材を取り付けることを特徴とする、接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼材の接続具に関し、特に、直接埋設接続型の接続具において定着前の接続具一次側のウェッジのセット量に起因する空隙が発生しても接続具の腐食等を引き起こす腐食因子の侵入を防止する、または、カップラーシース型の接続具において接続具一次側でカップラーシースをボルトで(支圧板とは別部材の)接続底板に固定する場合において接続具一次側のウェッジが固定されていないための遊びに起因する接続底板と接続具一次側との空隙が発生することを防止する(終局的には接続底板を適切に固定できてカップラーシースを容易に取り付けることができるとともにカップラーシースへの樹脂充填時の樹脂漏れを防止することができる)PC鋼材(本発明においてはこのPC鋼材とはPC鋼より線を指す)の接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポストテンション方式プレストレストコンクリート(PC)構造において、コンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼材を接続するコンクリート打継部では、先行工区Aと後行工区Bの各PC鋼材を接続具を用いて接続した後、後行工区BのPC鋼材を緊張する際に接続具がコンクリートによって移動を拘束されないようにするために、直接埋設型の接続具、または、カップラーシース型の接続具が用いられていた。
【0003】
本願出願人により出願された特開2007-046313号公報(特許文献1)は、直接埋設型の接続具を用いた接続方法を開示する。この特許文献1に開示されたPC鋼材の直接埋設接続方法は、先行工区と後行工区とのコンクリート打継部にて、一次側接続部と二次側接続部とを備える接続装置を用いて直接埋設方式によりPC鋼材を接続するPC鋼材の緊張接続方法において、後行工区のPC鋼材を緊張する際に前記接続装置をコンクリートの支圧による拘束力に抗し移動可能にするために、二次側接続部の端末部に関連させて支圧緩和手段を設ける一方、前記接続装置とコンクリートとの直接の固着を回避させるために、接続装置の外周部に外被層を被着させることを特徴とする。
【0004】
このPC鋼材の直接埋設接続方法によると、先行工区Aと後行工区Bとのコンクリート打継部にて、直接埋設方式によりPC鋼材を緊張下において(一次側のPC鋼材が緊張定着済みであることを意味する)接続するに際して、接続装置の二次側接続部の端末部に関連させて簡単な構造になる支圧緩和手段を取着させ、かつ、外皮層としての防食テープを螺旋状に巻着するなどの簡易な手法によって接続装置の外周部に外被層を被着させるだけの簡単な作業を行えば良くて、接続装置全体を覆わせる空間形成用殻管(カップラーシース)が省略でき、また、接続装置周囲の空間に現場で樹脂を充填する作業が不要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-046313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたPC鋼材の直接埋設接続方法は、カップラーシースを省略でき、また、接続装置周囲の空間(カップラーシース)に現場で樹脂を充填する作業が不要であるという作業性の格段の向上が高く評価され好評を得ている。
しかしながら、接続具300の一次側にウェッジ14とスリーブ16とからなる部材(定着部材)を用い、かつ、一次側PC鋼材が緊張定着される前の状態で二次側PC鋼材を緊張定着するという場合(このような場合に限定される)には図10に示す問題点を発生し得る。なお、以下において、このような定着部材を用いてPC鋼材を緊張定着した後は、ウェッジがスリーブにより固定されている、または、保持されていると記載する。逆に、PC鋼材を緊張定着する前は、ウェッジがスリーブにより固定されておらず、または、保持されておらず、ウェッジがスリーブに対して遊びがあったり、PC鋼材を緊張するとセット量が発生したりする。
【0007】
図10に示すように、特許文献1に開示されたPC鋼材の直接埋設接続方法においては、コンクリート構造物の先行工区Aの一次側PC鋼より線10と後行工区Bの二次側PC鋼より線20とを接続するための接続具300が用いられる。特許文献1においては、一般的である、二次側鋼材である二次側PC鋼より線20と接続具300により接続される前に、一次側鋼材である一次側PC鋼より線10は緊張され接続具300の一次側(ここではウェッジ14およびスリーブ16)により一次側PC鋼より線10の張力を保持するために定着されており、その後に二次側鋼材である二次側PC鋼より線20と接続して二次側PC鋼より線20を緊張する。このような一般的な場合ではなく、一次側PC鋼材である一次側PC鋼より線10が緊張定着される前の状態で二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20を緊張すると、定着前の接続具一次側である一次側PC鋼より線10のウェッジ14のセット量に起因する空隙Gが発生して(コンクリートに埋設されているとはいえ)接続具300の腐食等を引き起こす腐食因子が侵入する可能性がある。
【0008】
また、図11に示すように、(一次側鋼材である一次側PC鋼より線10を定着させているウェッジ14およびスリーブ16とは別に)新たな接続具400であってその一次側に接続具一次側ウェッジ114と接続具一次側スリーブ116とを備える部材(定着部材)を用いる場合には、一次側PC鋼材である一次側PC鋼より線10がウェッジ14とスリーブ16とで緊張定着された後の状態で二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20を緊張定着するという一般的な場合であっても、以下に示す問題点を発生し得る。
【0009】
図11に示すように、二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20を緊張する前の状態において、一次側PC鋼材である一次側PC鋼より線10はウェッジ14とスリーブ16とで緊張定着されているものの、接続具400の一次側の定着部材である接続具一次側ウェッジ114は接続具一次側スリーブ116により固定されていないために、二次側PC鋼より線20を緊張すると、接続具一次側ウェッジ114の(いわゆる)セット量に起因する空隙Gが発生して(コンクリートに埋設されているとはいえ)接続具400の腐食等を引き起こす腐食因子が侵入する可能性がある。
【0010】
また、図12に示すように、新たな接続具500であってその接続具500の一次側に接続具一次側ウェッジ114と接続具一次側スリーブ116とからなる部材(定着部材)を用いて、直接埋設型ではなくカップラーシース型であって、かつ、接続具500において接続具一次側でカップラーシース220をボルト214で(支圧板とは別部材の)接続底板210に接続する場合には、接続具一次側ウェッジ114が固定されていないための遊びに起因して、接続具500を用いて一次側PC鋼材である一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20とを接続する際において(より限定的にはカップラーシース220をボルト214で接続底板210に固定するまでにおいて)、接続底板210と接続具一次側との間に空隙Gが発生する可能性がある。すなわち、接続具500を用いて一次側PC鋼材である一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20とを接続する作業において、接続底板210を適切に固定できない場合である。
【0011】
このような空隙Gが発生すると、図12(A)および図12(B)に示すように(二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20の緊張前において)接続底板210を適切に固定することができなくなる場合がある。このため、カップラーシース220を容易に取り付けることができなくなったり、カップラーシース220への樹脂充填時に樹脂漏れを発生させたりする可能性がある。ここで、この樹脂漏れとは、接続底板210にカップラーシース220を接続することができたとしても、接続具一次側ウェッジ114が固定されていないための遊びに起因して発生した図12(A)~図12(B)に示す空隙Gの存在を理由として、図12(C)に黒塗り矢示で示すように接続底板210とともにカップラーシース220がPC鋼材の長手方向に移動可能であるために支圧板18と接続底板210との間に空隙Gが発生する可能性があり、図12(D)に示す空隙Gから樹脂が漏れる可能性があることを意味する。
【0012】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるため
に用いるPC鋼より線の接続具であって、直接埋設接続型の接続具において定着前の接続具一次側のウェッジのセット量に起因する空隙が発生しても接続具の腐食等を引き起こす腐食因子の侵入を防止する、または、カップラーシース型の接続具において接続具一次側でカップラーシースをボルトで(支圧板とは別部材の)接続底板に固定する場合において接続具一次側のウェッジが固定されていないための遊びに起因する接続底板と接続具一次側との空隙が発生することを防止する(終局的には接続底板を適切に固定できてカップラーシースを容易に取り付けることができるとともにカップラーシースへの樹脂充填時の樹脂漏れを防止することができる)PC鋼より線の接続具および接続方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るPC鋼より線の接続具、および、本発明の別の局面に係るPC鋼より線の接続方法は、以下の技術的手段を備える。
すなわち、本発明のある局面に係るPC鋼より線の接続具は、一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とを接続する接続具であって、前記一次側PC鋼より線の定着部材を緊張可能に保持する、接続具一次側ウェッジおよび接続具一次側スリーブを含む接続具一次側保持部と、前記二次側PC鋼より線を緊張可能に保持する、接続具二次側保持部と、前記接続具一次側保持部よりも前記一次側PC鋼より線の側に設けられた、前記二次側PC鋼より線の緊張時に発生する前記接続具一次側ウェッジのセット量を超過して圧縮させた弾性緩衝材と、を含むことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記弾性緩衝材は、前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線の側の端面に当接するように構成することができる。
さらに好ましくは、前記弾性緩衝材には、防錆材またはエポキシ樹脂が含浸または塗布されているように構成することができる。
さらに好ましくは、前記接続具は直接埋設型の接続具であって、前記接続具の外周に外皮層が被着されるとともに、前記接続具の二次側端末に支圧緩衝材が設けられ、圧縮されていた弾性緩衝材が伸長することにより、前記二次側PC鋼より線の緊張時に発生する前記接続具一次側ウェッジに起因するセット量に対応する空隙を発生させないように構成することができる。
【0015】
さらに好ましくは、前記接続具はカップラーシース型の接続具であって、前記接続具の外周にカップラーシースが接続底板を用いて接続され、圧縮されていた弾性緩衝材が伸長することにより、前記接続具一次側ウェッジに起因する空隙を発生させないで前記接続底板のPC鋼より線の長手方向の移動を規制するように構成することができる。
また、本発明の別の局面に係るPC鋼より線の接続方法は、一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とを接続具を用いて接続する接続方法であって、前記接続具は、前記一次側PC鋼より線の定着部材を緊張可能に保持する、接続具一次側ウェッジおよび接続具一次側スリーブを含む接続具一次側保持部と、前記二次側PC鋼より線を緊張可能に保持する、接続具二次側保持部と、弾性緩衝材と、を含み、前記接続方法は、前記接続具一次側スリーブを取り付ける前に、または、前記接続具一次側スリーブを取り付けた後に、前記接続具一次側保持部よりも前記一次側PC鋼より線の側に、前記二次側PC鋼より線の緊張時に発生する前記接続具一次側ウェッジのセット量を超過して圧縮させた弾性緩衝材を取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る接続具および接続方法によると、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼より線の接続する場合において、直接埋設接続型の接続具において定着前の接続具一次側のウェッジのセット量に起因する空隙が発生しても接続具の腐食等を引き起こす腐食因子の侵入を防止する、または、カップラーシース型の接続具において接続具一次側でカップラーシースをボルトで(支圧板とは別部材の)底板に固定する場合において接続具一次側のウェッジが固定されていないための遊びに起因する底板と接続具一次側との空隙が発生することを防止することができる(終局的には底板を適切に固定できてカップラーシースを容易に取り付けることができる
とともにカップラーシースへの樹脂充填時の樹脂漏れを防止することができる)。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る接続具100についての(A)二次側PC鋼より線を緊張する前の状態を示す側面における一部分(接続具一次側保持部)の断面図、(B)二次側PC鋼より線を緊張した後の状態を示す側面断面図である。
図2】(A)図1における弾性緩衝材110の二面図、(B)半割タイプの半割弾性緩衝材111の二面図である。
図3】接続具100を用いた一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する手順を説明するための図(その1)である。
図4】接続具100を用いた一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する手順を説明するための図(その2)である。
図5】接続具100を用いた一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する手順を説明するための図(その3)である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る接続具200についての(A)二次側PC鋼より線を緊張する前の状態を示す側面における一部分(接続具一次側保持部)の断面図、(B)二次側PC鋼より線を緊張した後の状態を示す側面断面図である。
図7】(A)図6における弾性緩衝材110の二面図、(B)図6における接続底板210の二面図である。
図8】接続具200を用いた一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する手順を説明するための図(その1)である。
図9】接続具200を用いた一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する手順を説明するための図(その2)である。
図10】従来の接続具300を用いた一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とを接続する場合の問題点を説明するための図である。
図11】従来の接続具400を用いた一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とを接続する場合の問題点を説明するための図である。
図12】従来の接続具500を用いた一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とを接続する場合の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、本発明の実施の形態に係るPC鋼より線の接続具およびPC鋼より線の接続方法について、直接埋設型の第1の実施の形態とカップラーシース型の第2の実施の形態とに分けて、図面を参照して詳しく説明する。なお、一次側鋼材である一次側PC鋼より線10は、二次側鋼材である二次側PC鋼より線20と接続具100(または接続具200)により接続される前に、緊張され定着部材(ウェッジ14およびスリーブ16)により定着されて一次側PC鋼より線10の張力が保持されている。ここで、以下の説明において参照する図については、本発明の容易な理解のために、基本的には詳細な構造を省略した模式図であって、内部ではなく外形で表現すべき部分であっても内部を透視するように表現している場合があったり、外形ではなく断面で表現すべき部分を外形で表現している場合があったり、断面ではなく外形で表現すべき部分を断面で表現している場合があったり、隠れ線を点線ではなく実線で表現している場合があったりする。
【0019】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係る直接埋設型のPC鋼より線の接続具100およびその接続具100を用いたPC鋼より線の接続方法について、図1図5を参照して詳しく説明する。なお、図5(B)が、一次側PC鋼材である一次側PC鋼より線10(以下において単に一次側PC鋼より線10と記載する場合がある)と二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20(以下において単に二次側PC鋼より線20と記載する場合がある)とを接続した状態の接続具100を、図5(C)が、図5(B)の状態で二次側PC鋼より線20を緊張した状態の接続具100を、それぞれ示している。
【0020】
これらの図1図5に示すように、この接続具100は、一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する。一次側PC鋼より線10の定着部材(ウェッジ14
およびスリーブ16)を緊張可能に保持する、接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116を含む接続具一次側保持部と、二次側PC鋼より線20を緊張可能に保持する、接続具二次側保持部(接続具二次側ウェッジ124および接続具二次側スリーブ126)と、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)よりも一次側PC鋼より線10の側に設けられた、二次側PC鋼より線20の緊張時に発生する接続具一次側ウェッジ114のセット量を超過して圧縮させた弾性緩衝材110(または半割タイプの半割弾性緩衝材111)と、を含む。
【0021】
ここで、この弾性緩衝材110(および半割弾性緩衝材111)の厚みは、厚み方向に何ら拘束がない場合の自由厚みをt(3)として、二次側PC鋼より線20の緊張前の圧縮された厚みをt(1)として、二次側PC鋼より線20の緊張後の厚みをt(2)として、t(3)>t(2)およびt(2)-t(1)>接続具一次側ウェッジ114のセット量を満足するものである。なお、これらの2条件から、t(3)-t(1)>t(2)-t(1)>接続具一次側ウェッジ114のセット量が成立して、自由厚みt(3)からの圧縮量(t(3)-t(1))がセット量を上回ることになり、セット量を超過して圧縮させた弾性緩衝材110(または半割弾性緩衝材111)を接続具100が備えることになる。
この弾性緩衝材110(および半割弾性緩衝材111)は、接続具一次側スリーブ116における一次側PC鋼より線10の側の端面に当接するように設けられる。より具体的には、定着部材(ここではスリーブ16)に当接する支圧板18と、接続具一次側スリーブ116との間に設けられる。
【0022】
この接続具100は直接埋設型の接続具であって、図5(B)に示すように、接続具100の外周に外皮層130が被着されるとともに、接続具100の二次側端末に支圧緩衝材132が設けられている。ここで、この外皮層130は、特許文献1の外皮層6に対応するものであって、たとえば防錆テープが接続具100の外周に巻着されている。また、この支圧緩衝材132は、特許文献1の支圧緩和手段5に対応するものであって、たとえば圧縮可能なウレタン、シリコン、軟質ゴム、スチロール樹脂またはこれに類するコンクリートと比較して十分に柔らかい材料で二次側PC鋼より線20が挿通される円形の穴部を備えた厚さが5mm~40mm程度のドーナツ板状物であって接続具100の二次側端末に貼り付けられている。
【0023】
このような構成を備え、厚みt(1)まで圧縮されていた弾性緩衝材110(または半割弾性緩衝材111)が、二次側PC鋼より線20が緊張されると厚みt(2)まで伸長することにより、二次側PC鋼より線20の緊張時に発生する接続具一次側ウェッジ114に起因するセット量に対応する空隙Gを発生させない。これにより、(コンクリートに埋設されているとはいえ)接続具100の腐食等を引き起こす腐食因子が侵入する可能性を低減させることができる。
【0024】
接続具100を説明する図1図5においては、一次側PC鋼より線10は樹脂が塗布されてシース12で覆われて、二次側PC鋼より線20も樹脂が塗布されてシース22で覆われている。また、接続具一次側スリーブ116と二次側定着部材(ここでは接続具二次側ウェッジ124および接続具二次側スリーブ126)とは、二次側ジョイント120および接続プラグ118を介して接続されている。また、二次側定着部材において、接続具二次側ウェッジ124はウェッジ押さえ122により二次側PC鋼より線20の長手方向の移動が規制されている。
【0025】
図2(A)に示すように、弾性緩衝材110は、支圧緩衝材132と同様に、たとえば圧縮可能なウレタン、シリコン、軟質ゴム、スチロール樹脂またはこれに類するコンクリートと比較して十分に柔らかい材料で一次側PC鋼より線10の定着部材のスリーブ16が挿通される円形の穴部112を備えたドーナツ板状物(たとえば内径=スリーブ16外径、外径=接続具一次側スリーブ116外径)である。また、図2(B)に示すように、穴部112を備えず半割りタイプの半割弾性緩衝材111であっても構わない。この場合、半割弾性緩衝材111は穴部112の代わりに半円穴部113を備えた略C字状であって、2個1組で使用される。
このような接続具100を用いて一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する接続方法について図3図5を参照して詳しく説明する。
【0026】
この接続方法は、図3に示すように、接続具一次側スリーブ116を取り付ける前に、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)よりも一次側PC鋼より線10の側に(より限定的には接続具一次側スリーブ116における一次側PC鋼より線10の側の端面に当接するように、さらに具体的にはスリーブ16に当接する支圧板18と接続具一次側スリーブ116との間に)、二次側PC鋼より線20の緊張時に発生する接続具一次側ウェッジ114のセット量を超過して圧縮させた(図2(A)に示す)弾性緩衝材110を取り付ける。
【0027】
また、この接続方法は、図4に示すように、接続具一次側スリーブ116(および接続具一次側ウェッジ114を取り付けた後に、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)よりも一次側PC鋼より線10の側に(より限定的には接続具一次側スリーブ116における一次側PC鋼より線10の側の端面に当接するように、さらに具体的にはスリーブ16に当接する支圧板18と接続具一次側スリーブ116との間に)、二次側PC鋼より線20の緊張時に発生する接続具一次側ウェッジ114のセット量を超過して圧縮させた(図2(B)に示す)半割弾性緩衝材111を取り付けても構わない。
【0028】
接続具100を用いた直接埋設型の接続方法であって、半割タイプでない弾性緩衝材110を用いる場合を図3を参照して、半割タイプである半割弾性緩衝材111を用いる場合を図4を参照して、それぞれ説明するとともに、弾性緩衝材110および半割弾性緩衝材111に共通する接続方法を図5を参照して説明する。
図3(A)および図4(A)が、接続具100で一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とが接続される前の状態であって、一次側PC鋼より線10は既に緊張され定着部材(ウェッジ14およびスリーブ16)により定着されて一次側PC鋼より線10の張力が保持されている状態である。
図3(B)に示すように、一次側PC鋼より線10の定着部材であるスリーブ16を穴部112に挿通させて自由厚みt(3)の弾性緩衝材110を支圧板18に当接させる。
【0029】
次に、図3(C)に示すように、接続具一次側スリーブ116を取り付ける。このとき、弾性緩衝材110を接続具一次側ウェッジ114のセット量を超過して圧縮させて、圧縮量(t(3)-t(1))がセット量を上回るようにする。
次に、図3(D)に示すように、接続具一次側ウェッジ114を接続具一次側スリーブ116に取り付ける。この状態になると、弾性緩衝材110の厚みt(1)が保持される。
これらの図3(B)~図3(D)に示す弾性緩衝材110に代えて半割弾性緩衝材111を用いる場合について図4(B)~図4(D)を参照して説明する。
図4(B)に示すように、接続具一次側スリーブ116を取り付ける。
【0030】
次に、図4(C)に示すように、接続具一次側ウェッジ114を接続具一次側スリーブ116に取り付ける。このとき、弾性緩衝材110が接続具一次側ウェッジ114のセット量を超過して圧縮させた状態であって、圧縮量(t(3)-t(1))がセット量を上回るようにするために、支圧板18と接続具一次側スリーブ116とをt(1)の分だけ間隔を空ける。この状態で、支圧板18と接続具一次側スリーブ116との間隔がt(1)に保持される。
【0031】
次に、図4(D)に示すように、支圧板18と接続具一次側スリーブ116との間隔(t(1))に、左右から半円穴部113を備えた半割弾性緩衝材111を圧縮して嵌め込む。このとき、2つの半円穴部113により形成された穴部が一次側PC鋼より線10の定着部材であるスリーブ16に挿通されることになる。また、厚みt(1)の半割弾性緩衝材111が支圧板18と接続具一次側スリーブ116とに当接された状態になる。このとき、半割弾性緩衝材111は接続具一次側ウェッジ114のセット量を超過して圧縮されており、圧縮量(t(3)-t(1))がセット量を上回っている。
【0032】
図3(D)および図4(D)に示す弾性緩衝材110または半割弾性緩衝材111が接
続具一次側ウェッジ114のセット量を超過して圧縮されて取り付けられた状態で、図5(A)に示すように、接続具一次側スリーブ116と二次側定着部材(ここでは接続具二次側ウェッジ124および接続具二次側スリーブ126)とを、二次側ジョイント120および接続プラグ118を介して接続する。このとき、二次側定着部材において、接続具二次側ウェッジ124をウェッジ押さえ122で押えて、二次側PC鋼より線20の長手方向に接続具二次側ウェッジ124が移動することを規制する。
次に、図5(B)に示すように、接続具100の外周に外皮層130が被着するとともに、接続具100の二次側端末に支圧緩衝材132を設ける。
【0033】
次に、二次側にコンクリートを打設して、そのコンクリートが固まった後に、図5(C)の白抜き矢示で示すように、二次側PC鋼より線20を緊張して定着する。この二次側PC鋼より線20の緊張時には、接続具一次側ウェッジ114に起因するセット量に対応する空隙Gが発生するが、厚みt(1)まで圧縮されていた弾性緩衝材110(および半割弾性緩衝材111)が、二次側PC鋼より線20が緊張されると厚みt(2)まで伸長する(最大で自由厚みt(3)まで伸長する)。これにより、二次側PC鋼より線20の緊張時に発生する接続具一次側ウェッジ114に起因するセット量に対応する空隙Gを発生させない。これにより、(コンクリートに埋設されているとはいえ)接続具100の腐食等を引き起こす腐食因子が侵入する可能性を低減させることができる。
【0034】
以上のようにして、本実施の形態に係る接続具およびその接続方法によると、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼より線を接続する場合において、二次側定着前の接続具一次側のウェッジのセット量に起因する空隙Gが発生しなくなり、接続具の腐食等を引き起こす腐食因子の侵入を防止することができる。
【0035】
<第1の実施の形態における変形例>
この第1の実施の形態において、弾性緩衝材110または半割弾性緩衝材11には、防錆材またはエポキシ樹脂が含浸または塗布されていることが好ましい。このように弾性緩衝材110または半割弾性緩衝材11に、防錆材またはエポキシ樹脂を含浸または塗布しておくことにより、接続具100の一次側端末部における防錆効果をより確実なものとすることができる。すなわち、直接埋設型の接続具100において、二次側定着前の接続具一次側ウェッジ114のセット量に起因する空隙Gが発生しないようにした上で、さらに弾性緩衝材110または半割弾性緩衝材111には予め防錆材またはエポキシ樹脂を含浸または塗布されているために、腐食等の弱点がより生じ難くなる。
【0036】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係るカップラーシース型のPC鋼より線の接続具200およびその接続具200を用いたPC鋼より線の接続方法について、図6図9を参照して詳しく説明する。なお、以下において、上述した第1の実施の形態と同じ構造および方法については繰り返して説明しない。特に、同じ構造については、第2の実施の形態における図において第1の実施の形態の図と同じ符号を付しており、上述した説明と重複するために基本的に繰り返して説明しない。
【0037】
図6(A)が、接続具200の一次側定着部材(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)を弾性緩衝材110および接続底板210とともに取り付けた状態を、図6(B)が、接続具200の二次側定着部材(接続具二次側ウェッジ124、接続具二次側スリーブ126、ウェッジ押さえ122)を二次側ジョイント120および接続プラグ118を介して接続させて、さらに接続底板210にカップラーシース220を接続(固定)した状態を、それぞれ示している。図6(A)の状態から図6(B)の状態へ移行する(接続作業を進める)場合において、圧縮された弾性緩衝材110が伸長することにより、接続具一次側ウェッジ114が(二次側PC鋼より線20が緊張されておらず)固定されておらずその遊びに起因する空隙Gを発生させないで、接続底板210が一次側PC鋼より線10の長手方向で移動することを規制している。
【0038】
ここで、上述した自由厚みt(3)が本実施の形態における自由厚みt(6)に、厚みt(2)が本実施の形態における自由厚みt(5)に、厚みt(1)が本実施の形態にお
ける自由厚みt(4)に、それぞれ対応している。このため、t(6)>t(5)およびt(5)-t(4)>接続具一次側ウェッジ114のセット量を満足するとともに、t(6)-t(4)>t(5)-t(4)>接続具一次側ウェッジ114のセット量が成立して、自由厚みt(6)からの圧縮量(t(6)-t(4))がセット量を上回ることになり、セット量を超過して圧縮させた弾性緩衝材110を接続具200が備えることになる。なお、自由厚みt(6)からの圧縮量(t(6)-t(4))を接続具一次側ウェッジ114のセット量を上回らせておけば、接続具一次側ウェッジ114の遊びに起因する空隙Gに十分に対応できる。
【0039】
図6および図7(B)に示すように、この接続具200は、上述した接続具100に対して、外皮層130および支圧緩衝材132を備えず、カップラーシース220、カップラーシース220がボルト214で接続される接続底板210およびエポキシパテ230を備える。カップラーシース220およびエポキシパテ230は公知のものである。この接続具200は、接続具一次側でカップラーシース220をボルト214で(支圧板18とは別部材の)接続底板210に接続する場合に好適に用いられる。
この接続底板210は、図7(B)に示すように、略矩形状の金属製薄板であって、一次側PC鋼より線10の定着部材のスリーブ16が挿通される円形の穴部212を中央部に備えるとともに、四隅にボルト214と螺合する雌ねじ穴216を備える。
【0040】
この接続具200はカップラーシース型の接続具であって、図6(B)に示すように、接続具200の外周にカップラーシース220が接続底板210を用いて接続される。上述した接続具100の構成に加えて(外皮層130および支圧緩衝材132を備えず)カップラーシース220およびカップラーシース220を接続する接続底板210を備え、接続具一次側ウェッジ114が固定されていないための遊びに起因して、接続具200を用いて一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する際において(より限定的にはカップラーシース220をボルト214で接続底板210に固定するまでにおいて)、接続底板210と接続具一次側との間に空隙Gが発生しようとしても厚みt(4)まで圧縮されていた弾性緩衝材110が伸長するために空隙Gが発生しないようにできる。このため、接続底板210を固定することができないことを回避することができる。その結果、(二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20の緊張前において)接続底板210を適切に固定することができて、カップラーシース220を容易に取り付けることができたり、カップラーシース220への樹脂充填時に樹脂漏れを回避することができたりする。
【0041】
また、この接続具200を用いた接続方法は、図8に示すように、接続具一次側スリーブ116を取り付ける前に、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)よりも一次側PC鋼より線10の側に(より限定的には接続具一次側スリーブ116における一次側PC鋼より線10の側の端面に当接するように、さらに具体的には接続底板210と接続具一次側スリーブ116との間に)、二次側PC鋼より線20の緊張時に発生する接続具一次側ウェッジ114のセット量を超過して圧縮させた(図7(A)に示す)弾性緩衝材110を取り付ける。
接続具200を用いたカップラーシース型の接続方法を図8および図9を参照して説明する。なお、図8(A)が、図3(A)および図4(A)に対応する。
【0042】
図8(B)に示すように、一次側PC鋼より線10の定着部材であるスリーブ16を穴部212に挿通させて接続底板210を支圧板18に当接させる。
次に、図8(C)に示すように、一次側PC鋼より線10の定着部材であるスリーブ16を穴部112に挿通させて自由厚みt(6)の弾性緩衝材110を接続底板210に当接させる。
次に、図8(D)に示すように、接続具一次側スリーブ116を取り付けてから、接続具一次側ウェッジ114を接続具一次側スリーブ116に取り付ける。このとき、弾性緩衝材110を接続具一次側ウェッジ114のセット量を超過して圧縮させて、圧縮量(t(6)-t(4))がセット量を上回るようにする。この状態で、弾性緩衝材110の厚みt(4)が保持される。
【0043】
次に、図9(A)に示す状態になるように、接続具200を用いて一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する。具体的には、接続具一次側スリーブ116と二次側定着部材(ここでは接続具二次側ウェッジ124および接続具二次側スリーブ126)とを、二次側ジョイント120および接続プラグ118を介して接続する。この図8(D)の状態から図9(A)の状態へ移行する(接続作業を進める)場合において、圧縮された弾性緩衝材110が伸長することにより、接続具一次側ウェッジ114が(二次側PC鋼より線20が緊張されておらず)固定されておらずその遊びに起因する空隙Gを発生させないで、接続底板210が一次側PC鋼より線10の長手方向で移動することを規制している。
【0044】
次に、図6(B)に示す状態になるように、一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続している接続具200を内包するようにカップラーシース220を取り付ける。具体的には、接続底板210の雌ねじ穴216にボルト214を螺合させて、カップラーシース220を接続底板210に接続(固定)する。なお、図6(B)に白抜き矢示を加えると図9(B)になるが、ここでは二次側PC鋼より線20を緊張させる前であるために図6(B)がより正確である。この図9(A)の状態から図6(B)の状態へ移行する(接続作業を進める)場合において、圧縮された弾性緩衝材110が伸長することにより、接続具一次側ウェッジ114が(二次側PC鋼より線20が緊張されておらず)固定されておらずその遊びに起因する空隙Gを発生させないで、接続底板210が一次側PC鋼より線10の長手方向で移動することを規制している。
【0045】
このように、図8(D)に示す状態から図9(A)に示す状態への移行する場合、および図9(A)に示す状態から図6(B)に示す状態への移行する場合において、圧縮された弾性緩衝材110が伸長することにより、接続具一次側ウェッジ114が(二次側PC鋼より線20が緊張されておらず)固定されておらずその遊びに起因する空隙Gを発生させないで、接続底板210が一次側PC鋼より線10の長手方向で移動することを規制している。
次に、カップラーシース220の内部に樹脂を充填して、二次側にコンクリートを打設して、そのコンクリートが固まった後に、図9(B)の白抜き矢示で示すように、二次側PC鋼より線20を緊張して定着する。
【0046】
以上のようにして、本実施の形態に係る接続具およびその接続方法によると、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼より線を接続する場合において、二次側定着前の接続具一次側のウェッジの遊びに起因する空隙Gが発生しないようにできる。このため、接続底板210を固定することができないことを回避することができる。その結果、(二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20の緊張前において)接続底板210を適切に固定することができて、カップラーシース220を容易に取り付けることができたり、カップラーシース220への樹脂充填時に樹脂漏れを回避することができたりする。
【0047】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼材の接続具および接続方法に好ましく、直接埋設接続型の接続具において定着前の接続具一次側のウェッジのセット量に起因する空隙が発生しても接続具の腐食等を引き起こす腐食因子の侵入を防止する、または、カップラーシース型の接続具において接続具一次側でカップラーシースをボルトで(支圧板とは別部材の)底板に固定する場合において接続具一次側のウェッジが固定されていないための遊びに起因する底板と接続具一次側との空隙が発生することを防止する(終局的には底板を適切に固定できてカップラーシースを容易に取り付けることができるとともにカップラーシースへの樹脂充填時の樹脂漏れを防止することができる)点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0049】
10 一次側PC鋼より線
20 二次側PC鋼より線
100、200 接続具
110 弾性緩衝材
111 半割弾性緩衝材
112 穴部
113 半円穴部
114 接続具一次側ウェッジ
116 接続具一次側スリーブ
118 接続プラグ
120 二次側ジョイント
124 接続具二次側ウェッジ
126 接続具二次側スリーブ
130 外皮層
132 支圧緩衝材
210 接続底板
212 穴部
214 ボルト
216 穴
220 カップラーシース
230 エポキシパテ
300、400、500 (従来の)接続具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12