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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146607
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】酸化チタン含有膜形成用の塗布液
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241004BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20241004BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20241004BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20241004BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20241004BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241004BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09D201/00
C01G23/04 B
C09C1/36
C09D17/00
C09D7/62
C09D7/63
C09C3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059611
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名本 隼人
(72)【発明者】
【氏名】堀 夕子
(72)【発明者】
【氏名】荒金 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【テーマコード(参考)】
4G047
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CB05
4G047CB09
4G047CC02
4G047CD03
4G047CD07
4J037AA22
4J037CB23
4J037EE08
4J037FF22
4J038FA071
4J038HA216
4J038JC32
4J038NA03
4J038PB08
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】 酸化チタンを含んでいても耐光性が高く、且つ高い透明性と膜厚が均一な塗膜を形成できる塗料を提供する。
【解決手段】
本発明の塗布液は、酸化チタンを含む粒子の表面に第一有機珪素化合物が結合した第一表面処理粒子と、第二有機珪素化合物と、バインダ成分と、有機溶媒とを含んでいる。酸化チタンはルチル型結晶構造を有し、酸化チタンを含む粒子表面に第一珪素化合物「SiX4」がSiO換算で3~10質量%結合しており、前記第二珪素化合物「R-(CHSiX」またはその加水分解物が、前記第一珪素化合物に対して、モル比(第二有機珪素化合物/第一有機珪素化合物)で0.3~2.0含まれ、固形分中に前記第一有機珪素化合物及び前記第二有機珪素化合物由来の珪素がSiO換算で2~20質量%含まれている(Xはアルコキシ基、水酸基、ハロゲンから選ばれる少なくとも1つ。Rはアクリル基およびメタクリル基。nは1~8の整数)。また、有機溶媒が沸点95℃未満の低沸点有機溶媒(S1)と、95℃以上の高沸点有機溶媒(S2)を含む混合溶媒であり、その質量比(MS1/MS2)は85/15~50/50である。さらに、第一表面処理粒子および前記第二有機珪素化合物中に含まれる無機酸化物成分(F)とバインダ成分(B)の質量比(M/M)が45/55~95/5である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンを含む粒子の表面に式(1)で示される第一有機珪素化合物が結合した第一表面処理粒子と、
式(2)で示される第二有機珪素化合物と、
バインダ成分と、
沸点が95℃未満の低沸点有機溶媒(S1)と、95℃以上の高沸点有機溶媒(S2)を含む混合溶媒と、を含む塗布液であって、
前記酸化チタンの結晶構造がルチル型であり、
前記酸化チタンを含む粒子100質量部に対し、前記第一有機珪素化合物がSiO2換算で3~10質量%結合しており、
前記第一有機珪素化合物と、前記第二有機珪素化合物またはその加水分解化合物とのモル比(第二有機珪素化合物/第一有機珪素化合物)が0.3~2.0であり、
固形分中に前記第一有機珪素化合物及び前記第二有機珪素化合物由来の珪素がSiO2換算で5~20質量%含まれ、
前記混合溶媒の質量比(MS1/MS2)が、85/15~50/50であり、
前記第一表面処理粒子および前記第二有機珪素化合物中に含まれる無機酸化物成分(F)と前記バインダ成分(B)の質量比(M/M)が45/55~95/5である塗布液。
SiX (1)
R-(CHSiX (2)
(Xはアルコキシ基、水酸基、ハロゲンから選ばれる少なくとも1つ。Rはアクリル基またはメタクリル基。nは1~8の整数。)
【請求項2】
固形分濃度が1~10%である請求項1に記載の塗布液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン含有膜形成用の塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屈折率の高い膜(高屈折率膜)はスマートフォンやテレビなどのディスプレイや、メガネのレンズなど、様々な用途に使用されている。このような、高屈折率膜に求められる特性としては、屈折率が高いことは当然ながら、高い透明性、膜厚が均一である(膜ムラがない)こと、光に長時間晒されても、その性能が劣化しないこと(高耐光性)などが挙げられる。
【0003】
一般的に高屈折率膜を得る方法は、酸化チタンなどの屈折率の高い金属酸化物を真空蒸着法やスパッタリング法などの乾式法で製膜する方法と、屈折率の高い無機酸化物粒子(フィラー)、バインダ成分、及び有機溶剤を含む塗布液を基材に塗布し、乾燥後、硬化させることで製膜する湿式法と、に大別される。
【0004】
乾式法は、緻密で硬い膜が得られるが、真空下で処理を行うため、一度に製膜できる膜の面積が限られ、コスト面や生産性に懸念がある。
【0005】
一方、湿式法は大気圧下で製膜でき、連続生産性に優れているため、近年では湿式法が広く用いられている。
【0006】
ここで、屈折率が1.5~2.8であるルチル型酸化チタン粒子の表面を、耐光性に優れた金属酸化物原料(珪酸ナトリウムや珪酸カリウム)を用いて被覆した複合酸化物微粒子と、硬化性バインダ、並び有機溶剤を含有してなるコーティング組成物が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
このような、コーティング組成物から形成される膜は、酸化チタン由来の高い屈折率を有しながら、酸化チタン粒子が耐光性の高い無機酸化物によって被覆されているため、光触媒活性が軽減され、耐光性に優れた塗膜を得ることができる。
【0008】
また、無機酸化物粒子を四官能性有機珪素化合物(テトラエトキシシラン)の加水分解物を、紫外線吸収能力に優れたルチル型酸化チタン粒子表面に被膜したコアシェル粒子と、シリコンレジンとを含むコーティング剤が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。このコーティング剤を塗布して得られる膜は、耐光性に優れた珪素化合物が多く含まれているため、酸化チタン由来の光触媒作用が生じても、膜の劣化が少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-342311号公報
【特許文献2】国際公開第2018/096914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のコーティング組成物からなる塗膜は、ケイ酸ナトリウム由来のナトリウムが含まれている。このような不純分は塗料中に含まれる無機酸化物粒子やバインダ成分の凝集を引き起こし、製膜した際に膜の透明性や膜厚の均一性を低下させる。さらに、有機溶剤や硬化性バインダへの分散性向上のためにケイ酸ナトリウムで表面を被覆した酸化チタン粒子の表面を、メチルトリメトキシシランなどの有機珪素化合物を用いて処理することが例示されているが、有機珪素化合物の側鎖がメチル基のような炭素数の少ない処理剤であるため、有機溶媒やバインダとの相溶性が悪く、製膜の際に粒子の凝集を引き起こす。その結果、透明性が低下することに加え、均一な膜厚の膜が得られない。
【0011】
特許文献2に記載のコーティング剤は、膜中に含まれる珪素酸化物の割合が多く、耐光性には優れているが、酸化チタン自身の光触媒作用を抑えているわけではないため、長期使用ではバインダ成分の劣化が生じる懸念がある。
【0012】
そこで本発明の目的は、酸化チタンを含んでいても耐光性が高く、且つ高い透明性と膜厚が均一な塗膜を形成できる塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の塗布液は、酸化チタンを含む粒子の表面に第一有機珪素化合物が結合した第一表面処理粒子と、第二有機珪素化合物と、バインダ成分と、有機溶媒とを含んでいる。前記酸化チタンはルチル型結晶構造を有し、酸化チタンを含む粒子表面に第一珪素化合物「SiX」がSiO換算で3~10質量%結合しており、前記第二珪素化合物「R-(CHSiX」またはその加水分解物が、前記第一珪素化合物に対して、モル比(第二有機珪素化合物/第一有機珪素化合物)で0.3~2.0含まれ、固形分中に前記第一有機珪素化合物及び前記第二有機珪素化合物由来の珪素がSiO換算で2~20質量%含まれている(Xはアルコキシ基、水酸基、ハロゲンから選ばれる少なくとも1つ。Rはアクリル基およびメタクリル基。nは1~8の整数)。また、有機溶媒が沸点95℃未満の低沸点有機溶媒(S1)と、95℃以上の高沸点有機溶媒(S2)を含む混合溶媒であり、その質量比(MS1/MS2)は85/15~50/50である。さらに、第一表面処理粒子および前記第二有機珪素化合物中に含まれる無機酸化物成分(F)とバインダ成分(B)の質量比(M/M)が45/55~95/5である。
【0014】
このような塗布液から形成される膜は、酸化チタンを含む粒子表面に結合した第一有機珪素化合物によって酸化チタンの光触媒活性が低減され、耐光性が高い。加えて、第二有機珪素化合物の側鎖「R-(CH-」の存在により、塗布液中、膜中での粒子の分散性が向上し、凝集することなく系内に分散できる。また、混合溶媒を含むことで、膜の乾燥速度が調節され、均一な状態で製膜される。さらに、膜を形成する成分(第一表面処理粒子、第二有機珪素化合物、バインダ成分)の混合比が適切であるため、透明性が高く、膜厚にムラのない均一な膜が得られる。つまり、高屈折率、高耐光性、高透明性、および膜厚均一性の全てを実現できる酸化チタン含有塗布液が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による酸化チタン含有塗布液は、二種の有機珪素化合物で表面を修飾されたチタン含有粒子、バインダ、および異なる沸点を持つ二種の有機溶剤を含んでいる。このような塗布液を用いると、酸化チタンを含有していても高耐光性、高い透明性と均一性(膜厚ムラが少ない)を備えた膜を形成できる。
【0016】
[酸化チタン含有粒子]
酸化チタンの結晶構造は、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型に分類される。本発明に用いる酸化チタンを含む粒子中の酸化チタンは、高屈折率、高耐光性の観点からルチル型の結晶構造である。
【0017】
ルチル型の結晶構造を持つ酸化チタンを含む粒子は、Ti元素を含有していれば、他元素を含有していてもよく、例えば特開2009-155496号公報に記載の酸化チタンを含む粒子分散液などを用いることができる。
【0018】
[第一有機珪素化合物]
酸化チタン含有粒子の表面には、第一有機珪素化合物が結合している。第一有機珪素化合物は、一般式「SiX」で示される。Xは、アルコキシ基、水酸基、ハロゲンから選ばれる少なくとも一種である。このような第一有機珪素化合物が、酸化チタン含有粒子の表面に結合すると、酸化チタンの光触媒活性によるバインダ成分の劣化が抑えられると共に、後述の第二有機珪素化合物が粒子表面に結合しやすくなる。第一有機珪素化合物は、Xの一部または全てが加水分解し、粒子表面の水酸基と結合することで、粒子を被覆する。本発明における被覆とは有機珪素化合物が完全に粒子表面全体を覆っていなくてもよい。Xはエトキシ基が好ましい。
【0019】
酸化チタン含有粒子表面に結合している第一有機珪素化合物は、酸化チタン含有粒子100質量部に対して、SiOとして3~10質量%である。上記範囲で粒子が被覆されていると、酸化チタン由来の高屈折率を維持したまま、第一有機珪素化合物が粒子表面を十分に被覆でき、第二有機珪素化合物が結合しやすくなる。また、酸化チタン由来の光触媒活性を抑えることができる。
【0020】
[第二有機珪素化合物]
第二有機珪素化合物は、一般式「R-(CHSiX」で示される(Xはアルコキシ基、水酸基、ハロゲンから選ばれる少なくとも1つ。Rはアクリル基またはメタクリル基。nは1~8の整数)。このような第二有機珪素化合物は、加水分解重縮合反応により粒子表面に結合し、粒子の分散性を向上させる(第二有機珪素化合物が結合した第一表面処理粒子を第二表面処理粒子と称す)。また、側鎖「R-(CH-」の存在により、バインダ成分との相溶性(濡れ性)が向上し、製膜時に塗布液が乾燥していく過程で、酸化チタンを含む粒子とバインダ成分の濃度が高くなっても、層分離することなく均一な状態で乾燥する。結果として粒子が凝集することなく、透明で、均一な膜が得られる。また、酸化チタン由来の光触媒活性を抑えることができる。好ましいn数は3である。
【0021】
上記、第二有機珪素化合物は、粒子に被覆された第一有機珪素化合物に対して、モル比(第一/第二)で0.3~2.0含まれる。塗布液中に上記範囲で含まれていると、第二有機珪素化合物が、粒子表面に被覆された第一有機珪素化合物のシラノール基と結合し、粒子が分散液中、塗布液中、膜中で、均一に分散する。また、塗布後の乾燥時に固形分濃度が増加しても、粒子が凝集せず、膜の表面が均一になる。加えて、第二有機珪素化合物に含まれる「アクリル基またはメタクリル基」は、硬化の際にバインダ成分の反応基と反応し、結合を形成することで、粒子のパッキングを良化させ、膜の表面の均一化に寄与する。塗布液中には、粒子表面に結合していない、フリーな第二有機珪素化合物が存在していてもよい。好ましくは0.4~1.9、より好ましくは0.4~1.5である。
【0022】
[バインダ成分]
バインダ成分は、紫外線照射によって硬化する光硬化性モノマーや熱によって硬化する熱硬化性モノマーがあるが、本発明においては、耐熱性の低い有機フィルムへの塗布も考慮すると、光硬化性モノマーが好ましい。光硬化性モノマーは、紫外線照射によって、硬化が可能であれば特に制限されないが、第二表面処理粒子の表面との反応性、相溶性の観点からアクリル基またはメタクリル基を有するモノマーが好適に用いられる。
【0023】
上記モノマーは単独でも、二種以上混合して用いてもよい。単独で用いる際は、モノマー中に含まれる重合性基が三つ以上のものが好ましい。二種以上混合する際は、少なくとも重合性基を三つ有するモノマーを一種類以上用いることが好ましい。
【0024】
[固形分濃度]
塗布液中の固形分濃度は1~10質量%が好ましい。ここで、塗布液中の固形分とは、塗布液を200℃で3時間加熱しても、蒸発しない成分である。固形分濃度が上記範囲にあると、塗布液の安定性が向上し、ポットライフが長くなる。より好ましくは1~5質量%である。
【0025】
[膜形成成分]
第一表面処理粒子および第二有機珪素化合物中に含まれる無機酸化物成分(フィラー「F」と称す)とバインダ成分(バインダ「B」と称す)の質量比(M/M)は45/55~95/5である。この範囲の質量比であると酸化チタン由来の高い屈折率を損なうことなく、透明で膜厚が均一な膜が得られる。より好ましくは50/50~80/20である。第一表面処理粒子および第二有機珪素化合物中に含まれる無機酸化物成分とは、これらを1000℃で1時間加熱しても揮発しない成分を指す。
【0026】
塗布液中の固形分中に占める第一および第二有機珪素化合物に由来する珪素はSiO換算で5~20質量%である。5質量%未満であると、酸化チタンを含む粒子を被膜するSiO量が十分でないため、酸化チタンの光触媒活性を抑えることができず、結果として膜の耐光性が低下する。一方、20質量%を超えると膜中の酸化チタンの含有率が相対的に低下し、膜屈折率が低下する。好ましくは5.7~14.5質量%、より好ましくは5.7~10.0%である。
【0027】
[有機溶媒]
有機溶媒は、沸点が95℃未満の低沸点有機溶媒(S1)と、95℃以上の高沸点有機溶媒(S2)を含む混合溶媒であり、その混合比(S1/S2)は、85/15~50/50である。有機溶媒を含む塗布液を塗布した後、硬化条件に関わらず、塗布液中の溶媒を蒸発させる工程がある。その際に、低沸点有機溶媒の量が多いと塗布液が一気に蒸発し、膜中で生じる対流や溶媒の蒸発潜熱による結露水の影響により膜の均一性が低下する。一方で高沸点有機溶媒が多いと膜中に溶媒が残存しやすくなり膜の均一性が低下する。上記混合溶媒であると、まず低沸点有機溶媒が蒸発して、ある程度の濃度まで塗布液が濃縮され、その後、高沸点有機溶媒がゆっくりと蒸発することで、均一で透明な膜が得られる。好ましい高沸点溶媒の沸点は95~150℃、より好ましくは110~150℃である。
【0028】
本発明の塗料の表面張力は20~25mN/mが好ましい。表面張力がこの範囲であると、基材に塗布した際に、均一に延び広がり、膜が平滑になる。
【0029】
[その他成分]
塗布液には、必要に応じて他の成分(光重合開始剤、レべリング剤等)が添加される。光重合開始剤は、公知のものを使用することができる。このとき光重合開始剤は、バインダ成分に対して1~10質量%含まれることが好ましい。1質量%より少ないと、硬化反応が進みにくくなるため、硬度が下がりやすくなる。10質量%より多いと、膜中の粒子やバインダ成分の割合が少なくなるため、膜の硬度や耐摩耗性が低下しやすくなる。光重合開始剤含有量は4~8質量%がより好ましい。
【0030】
基材との濡れ性や膜の表面のレベリング性等を調整するために、塗布液にレベリング剤を添加しても良い。レベリング剤は、塗布液の固形分中に5質量%以下が好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。レベリング剤を実質的に含まないことにより、本発明の塗布液からなる酸化チタン含有膜の上にも、膜を形成しやすくなる。レベリング剤としては、アクリル系、アクリルシリコーン系、シリコーン系、およびフッ素系のレベリング剤が例示できる。
【0031】
[塗布方法]
上述の塗布液を用いて基材上に膜を形成することにより、膜付基材を製造できる。具体的には、塗布液を基材に塗布した後、塗布液を乾燥・硬化させることにより、膜付基材が得られる。塗布方法は、スピンコート、バーコート、グラビアコート、スリットコート等が挙げられる。
【0032】
[基材]
本発明の塗布液を塗布する基材として、ガラス、プラスチックフィルム、ハードコート膜付きフィルム、等が挙げられる。用いる基材は、用途によって選択できる。プラスチックフィルムとしてポリエチレンテレフタラート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリル、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。これらの基材にはハードコート(HC)膜が形成されていてもよい。HC膜上に酸化チタン含有膜を形成することにより、膜付基材の硬度や耐擦傷性が高くなる。
【0033】
[酸化チタン含有膜]
上述の塗布液を用いて、酸化チタン含有膜を基材に直接的または間接的に形成する。酸化チタン含有膜は、主に表面処理粒子とバインダ成分で形成される。本発明の酸化チタン含有塗布液は、レベリング剤を添加しなくても、透明性が高く、膜ムラの少ない均一膜が形成でき、水に対する接触角が低い。そのため、本発明の被膜上にさらに低屈折率層を設けるような反射防止膜に有用である。
【0034】
すなわち、本発明の酸化チタン含有膜の水に対する接触角は90°以下が好ましい。水に対する接触角が90°以下であると、酸化チタン含有膜の上層に膜を形成する際に、上層に塗布された塗料との濡れ性が良好になり、均一な膜が得られる。より好ましくは70°以下である。
【0035】
酸化チタン含有膜の平均表面粗さ(Ra)は1nm未満が好ましい。Raは膜表面の凹凸を示しており、この値が大きくなるほど、膜表面に大きな凹凸を有している。すなわち、Raの値が大きくなると膜厚が均一ではなく、凹凸部分で光が散乱し、結果として透明性が低下する。
【0036】
酸化チタン含有膜の膜厚は用途によって適宜選択されるが、上層に低屈折率膜を製膜して、得られる反射防止膜に用いられる際は、50~150nmであることが好ましい。この範囲の膜厚であると、透明性が高く、反射防止性に優れた膜が得られる。
【実施例0037】
[実施例1]
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0038】
<第一表面処理粒子の調製>
まず、酸化チタン含有粒子水分散液を用意する。酸化チタン含有粒子水分散液は公知の方法で調製することができる。本実施例では、特開2009-155496号公報の実施例6を参考にルチル型酸化チタンを含む粒子を核とし、SiとZrの複合酸化物の被覆層を設けたコアシェル粒子の水分散液(無機酸化物濃度10質量%)を調製した。この水分散液117.0gに陽イオン交換樹脂を添加し、脱アルカリを行った。イオン交換樹脂を分離し、テトラエトキシシラン(多摩化学社製)8.96gとメタノール126.0gの混合溶液に添加した。5時間加熱撹拌(50℃)した後、室温まで冷却し、限外濾過膜を用いて水からメタノールに溶媒置換した。その後、濃縮することにより、酸化チタンを含む粒子の表面に第一有機珪素化合物が結合した、第一表面処理粒子分散液(無機酸化物成分濃度20質量%)71.3gを得た。
【0039】
(第一有機珪素化合物の結合量)
第一表面処理粒子分散液を100℃で10分間乾燥することにより第一表面処理粒子粉末を得た。この粉末をバーナーにかけて、有機成分を炭化した後、過酸化ナトリウムと水酸化ナトリウムを添加し、溶解したものに、更に硫酸と塩酸を加えて試料とした。この試料をICP発光分光分析装置ICP-OES(島津製作所社製ICPS-8100)を用いて、試料中のSi濃度を測定し、Si含有量を算出してから、SiO2含有量に換算した。
【0040】
酸化チタン含有粒子分散液についても同様にSiO含有量を測定し、酸化チタン含有粒子と第一表面処理粒子中のSiO含有量の差を第一有機珪素化合物の結合量とした。
【0041】
<第二表面処理粒子の調製>
第一表面処理粒子分散液80.0gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-503)4.9gを添加した後、50℃で18時間、加熱、撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールからプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶媒置換し、無機酸化物成分濃度20質量%の第二表面処理粒子分散液71.9gを得た。
【0042】
(第一有機珪素化合物および第二有機珪素化合物のモル比)
上述の第一有機珪素化合物の結合量より算出したモル数と、第二表面処理粒子の調製時に添加した第二有機珪素化合物の添加量より算出したモル数から、第二有機珪素化合物と第一有機珪素化合物のモル比(第二/第一)を算出した。
【0043】
<酸化チタン含有塗布液の調製>
第二表面処理粒子分散液10.24gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.09gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)0.81g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.05g、有機溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)79.67g、PGME9.12gを混合して、固形分濃度3質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。なお、塗料の表面張力は、酸化チタン含有塗布液を、温度25℃で、自動表面張力計(協和界面科学社製:DY-300)を用いたプレート法(Wilhelmy法)により測定した。
【0044】
<酸化チタン含有膜付基材の作製>
酸化チタン含有塗布液を、ハードコート層(日揮触媒化成(株)製、ELCOM HC-A)付きTACフィルム(富士フィルム(株)製:FT-80UL、厚さ:80μm、屈折率:1.49)にバーコーター法(#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で400mJ/cmの紫外線を照射して硬化させて酸化チタン含有膜付基材を得た。酸化チタン含有膜付基材の膜厚は約70~130nmであった。他の実施例と比較例においても、同様に酸化チタン含有膜付基材を作製した。
【0045】
《評価》
酸化チタン含有膜付基材を以下の方法で評価した。他の実施例と比較例の結果も併せて表2に示す。
【0046】
(外観)
酸化チタン含有膜付基材の表面を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0047】
〈評価基準〉
表面に白化、スジ、ムラ、ブリードアウトの外観不良が確認できない :◎
表面に白化、スジ、ムラ、ブリードアウトの外観不良がほぼ確認できない :○
表面に白化、スジ、ムラ、ブリードアウトの外観不良が僅かに観察された :△
表面に白化、スジ、ムラ、ブリードアウトの外観不良が明らかに観察された :×
【0048】
(平均粗さR
酸化チタン含有膜付基材および反射防止膜付基材の表面を、原子間力顕微鏡(AFM)(Bruker株式会社製:Dimension 3100)を用いて、膜表面の10μm角における平均粗さ(Ra)を測定した。
【0049】
(屈折率)
ダミーシリコンウエハ(松崎製作所社製:6インチダミーウエハ(P型)、厚さ:625μm)に酸化チタン含有塗布液をスピンコートし、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で400mJ/cmの紫外線を照射して硬化させて酸化チタン含有膜を形成し、膜屈折率測定用試料とした。得られた試料を分光エリプソメーター(日本セミラボ社製:SE-2000)で測定し、波長550nmにおける屈折率を本発明の酸化チタン含有膜の屈折率とした。なお、酸化チタン含有膜の膜厚は約100nmであった。
【0050】
(耐光性)
上記の屈折率測定と同様の方法で作成した試料に、メタルハライドランプ方式耐光試験機(岩崎電気社製:アイスーパーUVテスター、SUV―F11)を用いて、100mW、6時間、紫外線を照射した。その後、分光エリプソメーターにて膜厚を測定し、試験後の膜厚減少率から耐光性を評価した。なお、膜厚減少率は式(1―UV照射後の膜厚/照射前の膜厚)×100(%)により求めた。
耐光試験後の膜厚減少率が5%未満 :◎
耐光試験後の膜厚減少率が5%以上10%未満:〇
耐光試験後の膜厚減少率が10%以上 :×
【0051】
(接触角)
酸化チタン含有塗布液を、TACフィルム(富士フィルム(株)製:FT-80UL、厚さ:80μm、屈折率:1.49)にバーコーター法(#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で400mJ/cmの紫外線を照射して硬化させて膜を形成し、接触角測定用試料とした。酸化チタン含有膜の膜厚は約70~130nmであった。得られた試料を全自動接触角計(協和界面科学(株)製:DM-701)を用いて水5μLの液滴に対する接触角を測定した。
【0052】
[実施例2]
第一表面処理粒子分散液80.0gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-503)1.6gを添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を得た。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0053】
[実施例3]
第一表面処理粒子分散液80.0gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-503)6.5gを添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を得た。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0054】
[実施例4]
第一表面処理粒子分散液80.0gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-503)8.2gを添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を得た。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0055】
[実施例5]
第一表面処理粒子分散液80.0gに3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-5103)4.9gを添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を得た。この塗布液の表面張力は15mN/mであった。
【0056】
[実施例6]
第一表面処理粒子分散液80.0gに8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-5803)4.9gを添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を得た。この塗布液の表面張力は20mN/mであった。
【0057】
[実施例7]
第二表面処理粒子の調製時に、置換する溶媒をIPAにしたこと以外は実施例1と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液(無機酸化物成分濃度20質量%)7.32gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.15gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)1.35g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.09g、有機溶媒としてIPA73.82g、PGME17.26gを混合して、固形分濃度3質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0058】
[実施例8]
実施例7と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液11.71gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.06gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)0.54g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.04g、有機溶媒としてIPA70.38g、PGME17.27gを混合して、固形分濃度3質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0059】
[実施例9]
実施例7と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液13.17gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.03gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)0.27g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.02g、有機溶媒としてIPA69.23g、PGME17.27gを混合して、固形分濃度3質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0060】
[実施例10]
実施例4と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液13.17gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.03gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)0.27g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.02g、有機溶媒としてIPA79.70g、PGME6.80gを混合して、固形分濃度3質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0061】
[実施例11]
実施例7と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液3.41gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.03gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)0.27g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.02g、有機溶媒としてIPA78.63g、PGME17.63gを混合して、固形分濃度1質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0062】
[実施例12]
実施例7と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液17.07gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.15gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)1.35g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.09g、有機溶媒としてIPA64.42g、PGME16.90gを混合して、固形分濃度5質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は21mN/mであった。
【0063】
[実施例13]
実施例7と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液34.15gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.30gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)2.70g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.18g、有機溶媒としてIPA46.67g、PGME16.00gを混合して、固形分濃度10質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は16mN/mであった。
【0064】
[実施例14]
酸化チタン含有塗布液の調製時に添加する有機溶媒の添加量をIPA48.30g、PGME40.50gとした以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は24mN/mであった。
【0065】
[実施例15]
酸化チタン含有塗布液の調製時に添加する有機溶媒をメタノール79.67g、PGME9.12gとした以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は23mN/mであった。
【0066】
[実施例16]
酸化チタン含有塗布液の調製時に添加する有機溶媒をメチルエチルケトン(MEK)79.67g、PGME9.12gとした以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は24mN/mであった。
【0067】
[実施例17]
実施例7と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液10.24gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.09gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)0.81g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.05g、有機溶媒としてIPA71.35g、ノルマルヘプタン17.45gを混合して、固形分濃度3質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は19mN/mであった。
【0068】
[実施例18]
酸化チタン含有塗布液の調製時に添加する有機溶媒をIPA71.35g、トルエン17.45gとした以外は実施例17と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0069】
[実施例19]
酸化チタン含有塗布液の調製時に添加する有機溶媒をIPA71.35g、イソプロピルグリコール(I-PG)17.45gとした以外は実施例17と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は24mN/mであった。
【0070】
[実施例20]
酸化チタン含有塗布液の調製時に添加する有機溶媒をIPA71.35g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)17.45gとした以外は実施例17と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は23mN/mであった。
【0071】
[実施例21]
第一表面処理粒子の調製時に、テトラエトキシシランの代わりにテトラメトキシシラン(多摩化学社製)6.54gを添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0072】
[実施例22]
第一表面処理粒子の調製時に、テトラエトキシシランの代わりにテトラブトキシシラン(東京化成工業社製)を添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0073】
[実施例23]
実施例1と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液10.24gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.08gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)0.68g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.05g、レベリング剤としてアクリルシリコーン系共重合物(楠本化成(株)製:ディスパロン NSH-8430HF、有効成分濃度10質量%)1.50g、有機溶媒としてIPA79.80g、PGME9.15gを混合して、固形分濃度3質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0074】
[比較例1]
第二表面処理粒子の調製時の、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-503)量を0.2gとしたこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を得た。この塗布液の表面張力は16mN/mであった。
【0075】
[比較例2]
第二表面処理粒子の調製時の、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-503)量を9.8gとしたこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を得た。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0076】
[比較例3]
第一表面処理粒子の調製時の、テトラエトキシシシラン(多摩化学社製)量を1.49gとしたこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は21mN/mであった。
【0077】
[比較例4]
第一表面処理粒子の調製時の、テトラエトキシシシラン(多摩化学社製)量を22.40gとしたこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は21mN/mであった。
【0078】
[比較例5]
第一表面処理粒子の調製時に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-503)の代わりにメチルトリメトキシシラン(多摩化学社製)8.96gを添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は21mN/mであった。
【0079】
[比較例6]
第一表面処理粒子の調製時に用いる酸化チタン含有水分散液を特開2009-155496号公報の実施例1を参考に調製したアナターゼ型酸化チタン含有粒子型水分散液としたこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は21mN/mであった。
【0080】
[比較例7]
酸化チタン含有塗布液の調製時に添加する有機溶媒をIPA88.80gのみとしたこと以外は実施例7と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0081】
[比較例8]
酸化チタン含有塗布液の調製時に添加する有機溶媒をPGME88.80gのみとしたこと以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は27mN/mであった。
【0082】
[比較例9]
酸化チタン含有塗布液の調製時に添加する有機溶媒の添加量をIPA17.30g、PGME71.50gとした以外は実施例1と同様にして酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は25mN/mであった。
【0083】
[比較例10]
酸化チタン含有塗布液の調製時に、実施例7と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液4.39gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.21gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)1.89g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.13g、有機溶媒としてIPA76.12g、PGME17.25gを混合して、固形分濃度3質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0084】
[比較例11]
実施例7と同様にして得られた第二表面処理粒子分散液114.88gに、バインダ成分として1,6-ヘキサジオールジアクリレート(巴工業(株)製:SR-238F)0.03gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)0.27g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.02g、有機溶媒としてIPA681.95g、PGME172.75gを混合して、固形分濃度3質量%の酸化チタン含有塗布液を調製した。この塗布液の表面張力は22mN/mであった。
【0085】
[参考例1]
<反射防止膜付基材の形成>
実施例1で得られた酸化チタン含有膜付基材に、低屈折率膜形成用塗布液(日揮触媒化成(株)製、ELCOM P-5062)をバーコーター法(#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で400mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて低屈折率膜を形成し、反射防止膜付基材を得た。低屈折率膜の膜厚は約100nmであった。
【0086】
《評価》
得られた反射防止膜の特性を以下のように評価した。その結果を表3に示す。
【0087】
(外観)
酸化チタン含有膜付基材と同様に反射防止膜付基材の表面を目視で観察し、評価した。
【0088】
(反射率)
反射率は顕微分光膜厚計(大塚電子社製、OPTM―A1)により測定した。なお、未塗布のTAC基材の波長550nmの光線の反射率が5.0%であった。
【0089】
[参考例2]
実施例2で得られた酸化チタン含有塗布液を用いたこと以外は参考例1と同様にして、反射防止膜付基材を得た。
【0090】
[参考例3]
実施例3で得られた酸化チタン含有塗布液を用いたこと以外は参考例1と同様にして、反射防止膜付基材を得た。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】