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特開2024-146614体調変異予測モデルの作成方法、体調変異予測システム、体調変異予測方法、体調変異予測モデル、及び規則性特定モデルの作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146614
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】体調変異予測モデルの作成方法、体調変異予測システム、体調変異予測方法、体調変異予測モデル、及び規則性特定モデルの作成方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20241004BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
G16H20/00
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】42
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059622
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(72)【発明者】
【氏名】布施 透
(72)【発明者】
【氏名】財津 裕介
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L099AA13
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】予測精度が向上された体調変異予測モデルを作成することのできる体調変異予測モデルの作成方法を提供する。
【解決手段】ベッド上の被験者の体調の変異を予測する体調変異予測モデルの作成方法は、センサにより教師データ用の被験者の生体情報を取得することと、
前記教師データ用の被験者の生体情報に基づいて前記教師データ用の被験者の臥床状態を判定することと、前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得することと、前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定することと、前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調の変異を示す体調変異情報とを対応付けた教師データを用いた教師あり機械学習により、前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調変異情報との相関関係を学習させた体調変異予測モデルを作成することと、を含む。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド上の被験者の体調の変異を予測する体調変異予測モデルの作成方法であって、
センサにより教師データ用の被験者の生体情報を取得することと、
前記教師データ用の被験者の生体情報に基づいて前記教師データ用の被験者の臥床状態を判定することと、
前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得することと、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定することと、
前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調の変異を示す体調変異情報とを対応付けた教師データを用いた教師あり機械学習により、前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調変異情報との相関関係を学習させた体調変異予測モデルを作成することと、を含む方法。
【請求項2】
前記被験者と前記教師データ用の被験者とが同一である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験者と前記教師データ用の被験者とが異なる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記体調変異情報は、前記教師データ用の被験者の体調の変異の有無、及び/又は前記教師データ用の被験者の体調の変異の内容を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記臥床状態が、咳状態、体動状態、正常状態、及び呼吸異常状態を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記臥床状態が離床状態を含み、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性の特定において、前記離床状態の割合が所定値以上である状態傾向を除いた前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定する請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記教師データは、前記規則性と、前記教師データ用の被験者の行動を示す行動情報及び/又は前記教師データ用の被験者の周囲の環境を示す環境情報とを更に対応づけたデータである請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性の特定を、前記状態傾向を入力すると前記規則性を出力するよう学習された学習済の規則性特定モデルにより行う請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記センサは前記ベッドに配置された荷重センサであり、
前記生体情報は前記教師データ用の被験者の荷重である請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記荷重センサは、前記ベッドの四隅にそれぞれ配置された4つのセンサであり、
前記4つのセンサの各々は、前記教師データ用の被験者の荷重に応じたひずみを生じる起歪体と、該起歪体に取り付けられたひずみセンサとを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ベッド上の被験者の体調の変異を予測する体調変異予測システムであって、
センサにより取得された前記被験者の生体情報に基づいて前記被験者の臥床状態を判定する臥床状態判定部と、
前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得する状態傾向取得部と、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定する規則性特定部と、
前記規則性を体調変異予測モデルに入力して前記被験者の体調の変異を予測する体調変異予測部とを備え、
前記体調変異予測モデルは、教師データ用の被験者について特定された前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調の変異を示す体調変異情報とを対応付けた教師データを用いた教師あり機械学習により、前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調変異情報との相関関係を学習させた学習済モデルである体調変異予測システム。
【請求項12】
前記被験者と前記教師データ用の被験者とが同一である請求項11に記載の体調変異予測システム。
【請求項13】
前記被験者と前記教師データ用の被験者とが異なる請求項11に記載の体調変異予測システム。
【請求項14】
前記体調変異情報は、前記教師データ用の被験者の体調の変異の有無、及び/又は前記教師データ用の被験者の体調の変異の内容を含む請求項11~13のいずれか一項に記載の体調変異予測システム。
【請求項15】
前記臥床状態が、咳状態、体動状態、正常状態、及び呼吸異常状態を含む請求項11~14のいずれか一項に記載の体調変異予測システム。
【請求項16】
前記臥床状態が離床状態を含み、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性の特定において、前記離床状態の割合が所定値以上である状態傾向を除いた前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定する請求項11~15のいずれか一項に記載の体調変異予測システム。
【請求項17】
前記教師データは、前記規則性と、前記教師データ用の被験者の行動を示す行動情報及び/又は前記教師データ用の被験者の周囲の環境を示す環境情報とを更に対応づけたデータである請求項11~16のいずれか一項に記載の体調変異予測システム。
【請求項18】
前記規則性特定部は、前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性の特定を、前記状態傾向を入力すると前記規則性を出力するよう学習された学習済の規則性特定モデルにより行う請求項11~17のいずれか一項に記載の体調変異予測システム。
【請求項19】
前記センサは前記ベッドに配置された荷重センサであり、
前記生体情報は前記被験者の荷重である請求項11~18のいずれか一項に記載の体調変異予測システム。
【請求項20】
前記荷重センサは、前記ベッドの四隅にそれぞれ配置された4つのセンサであり、
前記4つのセンサの各々は、前記被験者の荷重に応じたひずみを生じる起歪体と、該起歪体に取り付けられたひずみセンサとを含む請求項19に記載の体調変異予測システム。
【請求項21】
ベッド上の被験者の体調の変異を予測する体調変異予測方法であって、
センサにより取得された前記被験者の生体情報に基づいて前記被験者の臥床状態を判定する臥床状態判定工程と、
前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得する状態傾向取得工程と、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定する規則性特定工程と、
前記規則性を体調変異予測モデルに入力して前記被験者の体調の変異を予測する体調変異予測工程とを含み、
前記体調変異予測モデルは、教師データ用の被験者について特定された前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調の変異を示す体調変異情報とを対応付けた教師データを用いた教師あり機械学習により、前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調変異情報との相関関係を学習させた学習済モデルである体調変異予測方法。
【請求項22】
前記被験者と前記教師データ用の被験者とが同一である請求項21に記載の体調変異予測方法。
【請求項23】
前記被験者と前記教師データ用の被験者とが異なる請求項21に記載の体調変異予測方法。
【請求項24】
前記体調変異情報は、前記教師データ用の被験者の体調の変異の有無、及び/又は前記教師データ用の被験者の体調の変異の内容を含む請求項21~23のいずれか一項に記載の体調変異予測方法。
【請求項25】
前記臥床状態が、咳状態、体動状態、正常状態、及び呼吸異常状態を含む請求項21~24のいずれか一項に記載の体調変異予測方法。
【請求項26】
前記臥床状態が離床状態を含み、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性の特定において、前記離床状態の割合が所定値以上である状態傾向を除いた前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定する請求項21~25のいずれか一項に記載の体調変異予測方法。
【請求項27】
前記教師データは、前記規則性と、前記教師データ用の被験者の行動を示す行動情報及び/又は前記教師データ用の被験者の周囲の環境を示す環境情報とを更に対応づけたデータである請求項21~26のいずれか一項に記載の体調変異予測方法。
【請求項28】
前記規則性特定工程において、前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性の特定を、前記状態傾向を入力すると前記規則性を出力するよう学習された学習済の規則性特定モデルにより行う請求項21~27のいずれか一項に記載の体調変異予測方法。
【請求項29】
前記センサは前記ベッドに配置された荷重センサであり、
前記生体情報は前記被験者の荷重である請求項21~28のいずれか一項に記載の体調変異予測方法。
【請求項30】
前記荷重センサは、前記ベッドの四隅にそれぞれ配置された4つのセンサであり、
前記4つのセンサの各々は、前記被験者の荷重に応じたひずみを生じる起歪体と、該起歪体に取り付けられたひずみセンサとを含む請求項29に記載の体調変異予測方法。
【請求項31】
ベッド上の被験者の体調の変異を予測する体調変異予測モデルであって、
センサにより教師データ用の被験者の生体情報を取得することと、
前記教師データ用の被験者の生体情報に基づいて前記教師データ用の被験者の臥床状態を判定することと、
前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得することと、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定することと、
前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調の変異を示す体調変異情報とを対応付けることと、
により作成された教師データを用いた教師あり機械学習により、前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調変異情報との相関関係を学習済みであり、
前記規則性に基づいて前記被験者の体調の変異を予測する体調変異予測モデル。
【請求項32】
前記被験者と前記教師データ用の被験者とが同一である請求項31に記載の体調変異予測モデル。
【請求項33】
前記被験者と前記教師データ用の被験者とが異なる請求項31に記載の体調変異予測モデル。
【請求項34】
前記体調変異情報は、前記教師データ用の被験者の体調の変異の有無、及び/又は前記教師データ用の被験者の体調の変異の内容を含む請求項31~33のいずれか一項に記載の体調変異予測モデル。
【請求項35】
前記臥床状態が、咳状態、体動状態、正常状態、及び呼吸異常状態を含む請求項31~34のいずれか一項に記載の体調変異予測モデル。
【請求項36】
前記臥床状態が離床状態を含み、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性の特定において、前記離床状態の割合が所定値以上である状態傾向を除いた前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定する請求項31~35のいずれか一項に記載の体調変異予測モデル。
【請求項37】
前記教師データは、前記規則性と、前記教師データ用の被験者の行動を示す行動情報及び/又は前記教師データ用の被験者の周囲の環境を示す環境情報とを更に対応づけたデータである請求項31~36のいずれか一項に記載の体調変異予測モデル。
【請求項38】
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性の特定を、前記状態傾向を入力すると前記規則性を出力するよう学習された学習済の規則性特定モデルにより行う請求項31~37のいずれか一項に記載の体調変異予測モデル。
【請求項39】
前記センサは前記ベッドに配置された荷重センサであり、
前記生体情報は前記教師データ用の被験者の荷重である請求項31~38のいずれか一項に記載の体調変異予測モデル。
【請求項40】
前記荷重センサは、前記ベッドの四隅にそれぞれ配置された4つのセンサであり、
前記4つのセンサの各々は、前記教師データ用の被験者の荷重に応じたひずみを生じる起歪体と、該起歪体に取り付けられたひずみセンサとを含む請求項39に記載の体調変異予測モデル。
【請求項41】
請求項31~40のいずれか一項に記載の体調変異予測モデルを記録した非一時的且つコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項42】
センサによりベッド上の被験者の生体情報を取得することと、
前記被験者の生体情報に基づいて前記被験者の臥床状態を判定することと、
前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得することと、
前記状態傾向をトレーニングデータとする機械学習により、前記状態傾向の時間的変動に含まれる所定の規則性を特定する規則性特定モデルを作成すること、とを含む規則性特定モデルの作成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体調変異予測モデルの作成方法、体調変異予測システム、体調変異予測方法、体調変異予測モデル、及び規則性特定モデルの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療や介護の現場において、ベッド上の被験者のデータをセンサにより取得し、取得したデータに基づいて被験者の体調の変化を予測することが提案されている。
【0003】
特許文献1は、対象人物の体動データを取得し、取得した体動データに基づいて対象人物の睡眠状態を常時判定し、判定した睡眠状態に基づいて対象人物の体調の変化を予測する体調予測方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-76689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被験者の体調変化を予測する技術については、特許文献1に開示される体調予測方法を含め、更なる予測精度の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、予測精度が向上された体調変異予測モデルを作成することのできる体調変異予測モデルの作成方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、予測精度が向上された体調変異予測システム、体調変異予測方法、及び体調変異予測モデルを提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、予測精度が向上された体調変異予測システム及び体調変異予測方法で用いる規則性特定モデルを作成するための、規則性特定モデルの作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、
ベッド上の被験者の体調の変異を予測する体調変異予測モデルの作成方法であって、
センサにより教師データ用の被験者の生体情報を取得することと、
前記教師データ用の被験者の生体情報に基づいて前記教師データ用の被験者の臥床状態を判定することと、
前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得することと、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定することと、
前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調の変異を示す体調変異情報とを対応付けた教師データを用いた教師あり機械学習により、前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調変異情報との相関関係を学習させた体調変異予測モデルを作成することと、を含む方法が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様に従えば、
ベッド上の被験者の体調の変異を予測する体調変異予測システムであって、
センサにより取得された前記被験者の生体情報に基づいて前記被験者の臥床状態を判定する臥床状態判定部と、
前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得する状態傾向取得部と、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定する規則性特定部と、
前記規則性を体調変異予測モデルに入力して前記被験者の体調の変異を予測する体調変異予測部とを備え、
前記体調変異予測モデルは、教師データ用の被験者について特定された前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調の変異を示す体調変異情報とを対応付けた教師データを用いた教師あり機械学習により、前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調変異情報との相関関係を学習させた学習済モデルである体調変異予測システムが提供される。
【0011】
本発明の第3の態様に従えば、
ベッド上の被験者の体調の変異を予測する体調変異予測方法であって、
センサにより取得された前記被験者の生体情報に基づいて前記被験者の臥床状態を判定する臥床状態判定工程と、
前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得する状態傾向取得工程と、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定する規則性特定工程と、
前記規則性を体調変異予測モデルに入力して前記被験者の体調の変異を予測する体調変異予測工程とを含み、
前記体調変異予測モデルは、教師データ用の被験者について特定された前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調の変異を示す体調変異情報とを対応付けた教師データを用いた教師あり機械学習により、前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調変異情報との相関関係を学習させた学習済モデルである体調変異予測方法が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様に従えば、
ベッド上の被験者の体調の変異を予測する体調変異予測モデルであって、
センサにより教師データ用の被験者の生体情報を取得することと、
前記教師データ用の被験者の生体情報に基づいて前記教師データ用の被験者の臥床状態を判定することと、
前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得することと、
前記状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を特定することと、
前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調の変異を示す体調変異情報とを対応付けることと、
により作成された教師データを用いた教師あり機械学習により、前記規則性と前記教師データ用の被験者の体調変異情報との相関関係を学習済みであり、
前記規則性に基づいて前記被験者の体調の変異を予測する体調変異予測モデルが提供される。
【0013】
本発明の第5の態様に従えば、
センサによりベッド上の被験者の生体情報を取得することと、
前記被験者の生体情報に基づいて前記被験者の臥床状態を判定することと、
前記臥床状態の単位時間あたりの傾向である状態傾向を取得することと、
前記状態傾向をトレーニングデータとする機械学習により、前記状態傾向の時間的変動に含まれる所定の規則性を特定する規則性特定モデルを作成すること、とを含む規則性特定モデルの作成方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の体調変異予測モデルの作成方法によれば、予測精度が向上された体調変異予測モデルを作成することができる。
【0015】
本発明の体調変異予測システム、体調変異予測方法、及び体調変異予測モデルによれば、向上された予測精度で被験者の体調の変異を予測することができる。
【0016】
本発明の規則性特定モデルの作成方法によれば、予測精度が向上された体調変異予測システム及び体調変異予測方法で用いる規則性特定モデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、体調変異予測システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、ベッドに対する荷重センサの配置を示す説明図である。
図3図3は、体調変異予測システムが実行する体調変異予測方法の工程を示すフローチャートである。
図4図4は、体調変異予測システムが実行する体調変異予測方法における処理の流れを概念的に示した図である。
図5図5は、荷重信号に基づいて得られる周波数スペクトルの一例を示すグラフである。
図6図6は、被験者の臥床状態を時系列で表示するグラフである。
図7図7は、被験者の状態傾向を時系列で表示するグラフである。
図8図8は、臥床状態判定モデルの作成方法の工程を示すフローチャートである。
図9図9は、4つの荷重センサが検知した4つの荷重信号の時間的変動の一例を示すグラフである。
図10図10は、規則性特定モデルの作成方法の工程を示すフローチャートである。
図11図11は、体調変異予測モデルの作成方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本発明の実施形態に係る体調変異予測システム100、及び体調変異予測方法について、図1図7を参照して説明する。
【0019】
[体調変異予測システム]
図1に示す通り、体調変異予測システム100は、荷重計測部10と、情報処理装置20と、端末装置30とを主に備える。荷重計測部10、情報処理装置20、及び端末装置30は、インターネット等のネットワークNWを介して互いに接続されている。なお、荷重計測部10、情報処理装置20、及び端末装置30の少なくとも2つを配線により接続してもよい。
【0020】
荷重計測部10は、4つの荷重センサLS1、LS2、LS3、LS4を主に備える。4つの荷重センサLS1~LS4の各々は、例えばビーム形のロードセルを用いて荷重を計測する。このような荷重センサは例えば、特許第4829020号や特許第4002905号に記載されている。
【0021】
図2に示す通り、4つの荷重センサLS1~LS4は、被験者Sが使用するベッドBDの四隅の脚BL、BL、BL、BLの下端部に取り付けられたキャスターC、C、C、Cの下にそれぞれ配置される。
【0022】
情報処理装置20は、制御部21と記憶部22とを主に備える。制御部21には、前処理部211、臥床状態判定部212、傾向取得部213、規則性特定部214、体調変異予測部215、教師データ作成部216、及びモデル作成部217が構築されている(詳細後述)。記憶部22には、臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、体調変異予測モデルMPREが保存されている(詳細後述)。
【0023】
情報処理装置20、及びその内部の制御部21及び記憶部22は、単一の物理サーバ内に構成されていてもよく、分散して配置され且つクラウドで繋がった複数の物理サーバ(即ち、クラウドサーバ)内に構成されていてもよい。
【0024】
端末装置30は、表示部31と入力部32とを主に備える。
【0025】
表示部31は、体調変異予測部215が出力する被験者Sの体調の変異の予測を受け取り、当該予測を体調変異予測システム100の使用者(医師、看護師、介護士、家庭における介護者等)に対して表示する。表示部31は例えば、液晶ディスプレイ等の画像表示部及び/又はスピーカ等の音声表示部を有する。
【0026】
入力部32は、体調変異予測システム100に対する各種入力を行うためのインターフェイスである。入力部32は例えば、キーボード及び/又はマウスであってもよく、表示部31の液晶ディスプレイと一体に構成されたタッチパネルであってもよい。
【0027】
[体調変異予測方法]
体調変異予測システム100が実行する体調変異予測方法の各工程を、図3のフローチャート、及び図4の概念図を参照して説明する。
【0028】
体調変異予測システム100が実行する体調変異予測方法は、図3のフローチャートに示す通り、荷重計測工程S11、前処理工程S12、臥床状態判定工程S13、傾向取得工程S14、規則性特定工程S15、体調変異予測工程S16、及び表示工程S17を含む。
【0029】
[荷重計測工程S11]
荷重計測工程S11では、荷重計測部10の荷重センサLS1~LS4を用いて、ベッドBD上の被験者Sの荷重(即ち、被験者SがベッドBDに加える荷重)を計測する。被験者Sの荷重は、ベッドBDの四隅の脚BL~BLの下に配置された荷重センサLS1~LS4に分散して付与され、これらによって分散して計測される。
【0030】
荷重センサLS1~LS4の各々は、被験者Sの荷重をアナログ信号として検出する。以下では、荷重センサLS1、LS2、LS3、LS4の各々が検出したアナログ信号(即ち、生データ信号)をアナログ信号s、s、s、sと記載する。
【0031】
アナログ信号s~sは、荷重計測部10の通信インターフェイス(不図示)、及びネットワークNWを介して情報処理装置20に送られる。
【0032】
[前処理工程S12]
前処理工程S12では、情報処理装置20の前処理部211が、荷重計測部10からネットワークNWを介して受け取った被験者Sの荷重値(アナログ信号s、s、s、s)に基づいて各種パラメータを算出する。
【0033】
前処理部211はまず、荷重計測部10から送られたアナログ信号s~sを、ネットワークNW及び情報処理装置20の通信インターフェイス(不図示)を介して受け取る。そして、サンプリング周期を例えば5ミリ秒としてアナログ信号s~sをデジタル変換し、デジタル信号を取得する。以下では、アナログ信号s、s、s、sをそれぞれデジタル変換して得られるデジタル信号を荷重信号ss、ss、ss、ssと記載する。
【0034】
本実施形態では、前処理部211は、パラメータとして、下記の少なくとも一つを算出する。前処理部211は、算出したパラメータを記憶部22に保存する。
【0035】
(1)荷重信号ss~ss
荷重信号ss~ssをそのままパラメータとして使用する。
【0036】
(2)各周波数帯のスペクトル振幅SAnX-Y
荷重信号ss~ssに対して短時間フーリエ変換を逐次行い、周波数スペクトル(一例を図5に示す)を逐次生成する。短時間フーリエ変換の窓関数の長さは一例として10[s]程度とし得る。短時間フーリエ変換は一例として、5[s]~15[s]ごとに実行され得る。時間的に連続する2回の短時間フーリエ変換の窓関数は互いに部分的に重複してもよい。
【0037】
短時間フーリエ変換の窓関数の長さは、時間分解能および周波数分解能との相関が知られている。すなわち、窓関数の時間長を長くすれば時間分解能は低く周波数分解能は高くなり、短くすれば時間分解能は高く周波数分解能は低くなる。こうした特性を改善するための手法として、窓関数を導入することによるサイドローブの抑制が知られている。また、一般調和解析法(Generalized Harmonic Analysis: GHA)や複数窓長を使った短時間フーリエ変換(Multi-Windows STFT)が知られている。これらの手法を使い、周波数スペクトルを分析して説明変数を決定してもよい。
【0038】
生成された周波数スペクトルの各々について、周波数を10個の帯域に分割し、各帯域におけるスペクトル振幅の平均値を算出する。本実施形態では、一例として、0.2~0.5[Hz]、0.6~1.0[Hz]、1.1~1.5[Hz]、1.6~2.0[Hz]、2.1~2.5[Hz]、2.6~3.0[Hz]、3.1~3.5[Hz]、3.6~4.0[Hz]、4.1~4.5[Hz]、及び4.6~5.0[Hz]の各帯域におけるスペクトル振幅の平均値を算出する。
【0039】
以下では、荷重信号ss(n=1、2、3、4)に基づいて生成された周波数スペクトルの、X~Y[Hz]の周波数帯域のスペクトル振幅の平均値をスペクトル振幅SAnX―Y(n=1、2、3、4)と記載する。
【0040】
(3)重心位置
荷重信号ss~ssに基づいて算出される、ベッドBD上での被験者Sの重心位置。重心位置の算出には任意の公知の方法を用い得る。重心位置の算出方法の一例は、特許第6321719号明細書に記載されている。
【0041】
(4)呼吸波形
被験者Sの重心Gは被験者Sの呼吸に応じて被験者Sの体軸(背骨)に沿った方向に振動する(以下、当該振動を「呼吸振動」と呼ぶ)。呼吸波形は呼吸振動の様子を示すものであり、横軸を時間、縦軸を呼吸振動の振幅として表される。呼吸波形の描画方法の一例は、特許第6661173号明細書に記載されている。
【0042】
(5)呼吸数
被験者Sの呼吸数は、例えば呼吸波形に基づいて算出される。呼吸波形の一周期が一回の呼吸(呼気及び吸気)に相当するため、呼吸波形のピーク間距離をTとすると、1分間の呼吸数BはB=60/Tと推定される。
【0043】
(6)呼吸振幅値
被験者Sの呼吸数は、例えば呼吸波形に基づいて算出される。呼吸波形の振幅を呼吸振幅値と推定することができる。
【0044】
(7)心拍波形
一例として、荷重信号ss~ ssの各々から心拍の周波数帯域(約0.5Hz~約3.3Hz)に含まれる成分を分離して得られる波形を心拍波形とすることができる。
【0045】
(8)ACI(アクティビティインデックス、 Activity Index)
ACIは被験者の活動度を示す指数である。ACIは例えば、荷重信号ss、ss、ss、ssの時間的変動の標準偏差をそれぞれ、σ、σ、σ、σとして、標準偏差σ~σの単純平均値の所定期間(例えば20秒間)の時間積分値として算出される。標準偏差σ~σに変えて、標準偏差σ~σを呼吸波形の振幅で除した値を用いてもよい。ACIの更なる詳細は、特許第6661173号明細書に記載されている。
【0046】
(9)総荷重
荷重信号ss~ssにより示される荷重値の合計として算出し得る。
【0047】
(10)その他
その他、分類しようとする状態に応じて、当該状態に関連があると推定される所定のパラメータを作成し、用いることができる。
【0048】
[臥床状態判定工程S13]
臥床状態判定工程S13では、臥床状態判定部212が、前処理工程S12で算出した各種パラメータの少なくとも1つを臥床状態判定モデルMSTAに入力して、被験者Sの臥床状態を判定する。
【0049】
臥床状態判定モデルMSTAは、所定の説明変数に基づいてベッドBD上の被験者Sの臥床状態を判定するように作成された学習済モデルである(作成方法は後述)。臥床状態判定モデルMSTAは、例えば、0.2~0.5[Hz]の周波数帯域のスペクトル振幅SAn0.2-0.5(n=1、2、3、4)と、4.6~5.0[Hz]の周波数帯域のスペクトル振幅SAn4.6-5.0(n=1、2、3、4)とを特徴量(説明変数)として入力すると、被験者Sの臥床状態を咳、体動、呼吸異常、正常の何れかに分類するように構成されていてもよい。ここで、呼吸異常とは、低呼吸、過呼吸、およびその他の呼吸に関する異常な状態のうち、1つ以上の状態を含む。以下の説明では、呼吸異常の一例として「低呼吸」を臥床状態の1つとして判定する場合について説明する。
【0050】
被験者Sの臥床状態が「咳」であるとは、被験者SがベッドBD上で咳をしていることを意味する。被験者Sの臥床状態が「体動」であるとは、被験者SがベッドBD上で体動を呈していることを意味する。体動は、胴部の移動を伴う大きな体動、胴部の移動を伴わず且つ頭部及び/又は四肢の移動を伴う小さな体動等を含み得る。被験者Sの臥床状態が「低呼吸」であるとは、ベッドBD上の被験者Sの呼吸数が所定値以下であることを意味する。被験者Sは、例えば、呼吸障害等により一時的に無呼吸状態または呼吸停止状態に至った場合、体力低下等により呼吸の頻度が低下した場合等に「低呼吸」状態となる。被験者Sの臥床状態が「正常」であるとは、ベッドBD上の被験者Sが、咳状態、体動状態、低呼吸状態のいずれにも至っていないことを意味する。
【0051】
なお、臥床状態判定モデルMSTAは、被験者Sの臥床状態として、前述した咳、体動、低呼吸、正常以外にも、例えば過呼吸を特定および分類可能であってもよい。被験者Sの臥床状態が「過呼吸」であるとは、ベッドBD上の被験者Sの呼吸数が所定値(ただし、上記「低呼吸」か否かを判断するときの所定値とは異なる値)以上であることを意味する。また、臥床状態判定モデルMSTAは、被験者Sの臥床状態として、前述した低呼吸および過呼吸、ならびにその他の呼吸異常状態をまとめて1カテゴリ(例えば、「呼吸注意」)として特定および分類してもよい。
【0052】
臥床状態判定部212は、前処理工程S12において算出されたパラメータを、所定の周期(一例として5[s]~15[s])で、逐次臥床状態判定モデルMSTAに入力する。臥床状態判定モデルMSTAは、当該入力を受けて、判定結果を出力する。臥床状態判定部212は、臥床状態判定モデルMSTAの出力(即ち、判定結果)を記憶部22に逐次保存する。
【0053】
なお、被験者SがベッドBDから離床している期間は荷重信号ss~ssが得られず、前処理工程S12での各種パラメータの算出が行われないため、臥床状態判定部212はパラメータの値を取得することができない。臥床状態判定部212は、ある期間においてパラメータの値を取得できない場合は、当該期間における被験者Sの臥床状態は「離床」であると判定する。
【0054】
図6は、臥床状態判定部212が判定した被験者Sの臥床状態を時系列で表示するグラフの一例である。図6のグラフからは、被験者Sは概ね「正常」状態にありながらも、時折「咳」状態、「体動」状態、「低呼吸」状態、「離床」状態に至っていることが読み取れる。
【0055】
[傾向取得工程S14]
傾向取得工程S14では、傾向取得部213が、臥床状態判定工程S13で判定した被験者Sの臥床状態の、単位時間当たりの傾向を算出(取得)する。
【0056】
本実施形態では、単位時間当たりの臥床状態の傾向とは、単位時間内における臥床状態の割合を意味する。単位時間は任意に設定し得るが、一例として1時間、1日等である。以下、被験者Sの単位時間当たりの臥床状態の傾向を「状態傾向」と呼ぶ。ここで言う単位時間は、臥床状態の傾向の算出スパンと同義であると言える。
【0057】
傾向取得部213は、単位時間が経過するごとに、経過した期間中の臥床状態の時系列データから、当該期間中の臥床状態の傾向の割合を示す状態傾向を算出する。このような傾向取得部213の一回の算出で生成される状態傾向のデータを、説明の便宜上、「1レコード(の状態傾向)」とカウントすることとする。ただし、実際の状態傾向のデータはレコード形式でなくともよい。傾向取得部213は、算出した1レコードの状態傾向を記憶部22に保存する。これにより、単位時間区切りで状態傾向のレコードが随時生成されてゆき、記憶部22に時系列で保存されていくこととなる。
【0058】
図7は、被験者Sの状態傾向をレコード毎に棒グラフにして並べたグラフである。図7の例では単位時間は1日であり、状態傾向のレコード30個分(すなわり、30日分)が並べられている。なお、図7に示すグラフは、あくまで説明のための模式的なものである。すなわち、本開示に係る情報処理装置20又は端末装置30は、図7に示すようなグラフを作成してもよいし、作成しなくてもよい。図7において1つの棒グラフが1レコードの状態傾向(単位時間=1日)を示す。例えば、最も左の棒グラフは、11月1日の24時間における状態傾向を示しており、当該状態傾向は、離床が約25%、正常が約60%、体動が約2%、低呼吸が約13%である。同様に左から2つ目のグラフは、11月2日の24時間における状態傾向を示しており、当該状態傾向は、離床が約20%、正常が約59%、体動が約1%、低呼吸が約20%である。
【0059】
[規則性特定工程S15]
規則性特定工程S15では、規則性特定部214が、傾向取得工程S14で算出した状態傾向が備える規則性を、規則性特定モデルMREGを用いて特定する。
【0060】
状態傾向の規則性とは、状態傾向を時系列で捉えた場合に導き出される、状態傾向の任意のパターン、周期性等を意味する。状態傾向の規則性は、限定的ではない一例として、いずれか1つの状態の増加(急増、逓増等)又は減少(急減、逓減等)、いずれか2つ以上の状態の増加(急増、逓増等)又は減少(急減、逓減等)、いずれか1つの状態の増加(急増、逓増等)且つ他のいずれか1つ以上の状態の減少(急減、逓減等)、いずれか2つ以上の状態の増加(急増、逓増等)且つ他のいずれか2つ以上の状態の減少(急減、逓減等)を含む。
【0061】
規則性特定モデルMREGは、状態傾向の2つ以上のレコードを入力すると、入力したレコード群から導き出される、状態傾向の規則性を示す情報を含んだ規則性情報を出力する学習済モデルである。規則性特定モデルMREGの一例として、状態傾向が備える規則性をパターンマイニングにより特定するように生成された学習済モデルが挙げられる。規則性特定モデルMREGの作成方法は後述する。
【0062】
規則性特定部214は、定期的(一例として、2つ以上の状態傾向のレコードにおける最小公倍数)に所定期間分の状態傾向を規則性特定モデルMREGに入力し、被験者Sの状態傾向の時間的変動から導き出される規則性を特定する。なお、規則性の特定周期と、当該規則性の特定に用いるレコードの収集範囲とは異なっていてよい。例えば、1日ごとに規則性を特定する場合、規則性特定のために収集されるレコードは、規則性の特定を行う時点から7日前までのレコードを使用することとしてもよい。規則性特定部214は、規則性が特定された場合は、特定された規則性の内容と当該規則性が示された日時を関連付けた規則性情報を生成し、記憶部22に保存する。
【0063】
ここで「規則性が示された日時」とは、例えば、(i)規則性情報の生成日時、(ii)規則性特定モデルMREGに入力された状態傾向のレコードのうち、最も新しいレコードの日時、または、(iii)規則性特定モデルMREGに入力された状態傾向のレコードのうち、最も古いレコードの日時であってよい。また、ここで言う「日時」とは時間以外に、日付、月、年等、時期を示すものであってもよい。
【0064】
なお、本実施形態では、被験者Sが介護を受けている状態において、規則性特定部214は、「離床」の割合が所定値(一例として50~70%程度)以上である状態傾向のレコードについては、規則性特定モデルMREGへの入力は行わないこととしてもよい。「離床」の有無と被験者Sの生体状態との関連性は比較的小さいため、「離床」の割合が高い状態傾向を除外して規則性の特定を行うことで、特定される規則性と被験者Sの生体状態の変動との相関性をより高めることができる。このように、規則性と被験者Sの生体状態の変動との相関性を高めることは、ひいては体調変異予測モデルMPREの予測の精度向上につながる。
【0065】
[体調変異予測工程S16]
体調変異予測工程S16では、体調変異予測部215が、規則性特定工程S15で生成した規則性情報を体調変異予測モデルMSTAに入力することで、体調変異予測モデルMSTAからの出力として、被験者Sの体調変異の予測結果を示す情報(以降、予測情報と称する)を取得する。
【0066】
体調変異予測モデルMPREは、規則性情報を説明変数として、ベッドBD上の被験者Sの体調の変異を予測するように作成された学習済モデルである(作成方法は後述)。換言すると、体調変異予測モデルMPREは、規則性情報を入力すると予測情報を出力する学習済モデルである。
【0067】
体調変異予測モデルMPREが予測する被験者Sの体調の変異は、様々な態様であり得る。例えば、体調変異予測モデルMPREは、(i)被験者Sに体調の変異が生じるか否かを予測してもよいし、(ii)被験者Sに体調の変異が生じる確率を予測してもよいし、(iii)被験者Sに起こり得る体調の変異の内容を予測してもよい。また、体調変異予測モデルMPREは(i)~(iii)の少なくとも1つに加えて、体調の変異が生じる時期を予測してもよい。
【0068】
本実施形態の体調変異予測モデルMPREにより予測される体調変異は、具体的には例えば発熱、喘息、てんかん、心臓病等の各種疾病の発作の発生、特定の病気(肺炎等)の発生、高血圧、嚥下障害、誤嚥した状態など被験者が特定の状態になること、及び体調の改善等である。
【0069】
体調変異予測部215は、体調変異予測モデルMPREの出力(即ち、予測情報)を記憶部22に逐次保存する。
【0070】
なお、前述のように、体調変異予測モデルMPREは、被験者Sの体調変異を「予測」する。すなわち、体調変異予測モデルMPREは、未来の、特定の時点または特定期間についての被験者Sの体調変異を推定するモデルであるといえる。ここで、「特定の時点」または「特定期間」は、例えば、規則性情報に含まれる日時に基づいて自動的に定められてもよい。つまり、入力された規則性情報に含まれる日時に基づいて、いつの体調変異を予測するかが決定されてもよい。
【0071】
もしくは、体調変異予測モデルMPREは、(i)規則性情報と、年月日及び/又は時間を指定する情報(以降、便宜上「日時情報」と称する)とを説明変数として、日時情報が指定するタイミングにおけるピンポイントの体調変異を予測するモデルであってもよい。また、体調変異予測モデルMPREは、(ii)規則性情報と、日時情報と、期間を指定する情報(以降、期間情報と称する)とを説明変数として、日時情報が指定するタイミングから、期間情報が示す期間分の体調変異を予測するモデルであってもよい。(i)の具体例としては、「予測時から3日後の体調変異を予測する」、「2023年4月1日における体調変異を予測する」等が挙げられる。(ii)の具体例としては、「予測時から1カ月以内に起こり得る体調変異を予測する」等が挙げられる。
【0072】
上記日時情報が示すタイミングは、情報処理装置20で指定または特定されてもよいし、体調変異予測システム100の使用者が、端末装置30の入力部32等を介して指定してもよい。後者の場合、端末装置30は情報処理装置20に対し、使用者が指定したタイミング(例えば、年月日)を示す情報を送信し、情報処理装置20は当該情報を受信して使用する。
【0073】
また、期間情報が示す期間についても、情報処理装置20で指定または特定されてもよいし、体調変異予測システム100の使用者が、端末装置30の入力部32等を介して指定してもよい。この場合も日時情報の場合と同様に、所定期間を示す情報が端末装置30から情報処理装置20へと送信される。
【0074】
体調変異予測部215は、体調変異予測工程S16において、体調変異予測モデルMPREの要求する入力データを入力することで、体調変異予測モデルMPREからの出力として、予測情報を取得する。
【0075】
[表示工程S17]
表示工程S17では、情報処理装置20の制御部21は、予測情報を逐次端末装置30に送信することで、端末装置30に体調変異の予測に係る所定の表示を実行させる。端末装置30は、体調変異予測部215から受け取った予測結果に基づいて表示部31に所定の表示を行う。
【0076】
表示部31は、具体的には例えば、予測結果が示す被験者Sの体調変異の有無、体調変異の内容、及び体調変異の発生が予測される時期等を、画像及び/又は音声により表示する。また、端末装置30は、表示部31に図5図7で示したようなグラフのうち少なくとも1つを表示してもよい。
【0077】
なお、規則性特定工程S15において、規則性特定モデルMREGに入力された状態傾向のレコード群から導き出される規則性が特に存在しない場合、規則性特定モデルMREGは「規則性なし」を示す規則性情報を出力することとしてもよい。またこの場合、情報処理装置20は体調変異予測工程S16を実行せずに、予測情報として端末装置30に「体調変異の予測不能」の旨を通知してもよい。そして、端末装置30は表示工程S17において、体調変異の予測ができなかった旨を示す情報を表示部31に表示してもよい。
【0078】
体調変異予測システム100が実行する体調変異予測方法を図4の概念図を参照して整理すると、次の通りである。なお、図4の各段に記載されている絵図およびデータはあくまで理解のためにデータを模式的に示したものであり、実際のデータはこのような形式でなくてもよい。
【0079】
まず図4の1、2段目に示す通り、荷重計測部10が、荷重センサLS1~LS4によりアナログ荷重s~sを計測し、情報処理装置20に送る(荷重計測工程S11)。次に、図4の2、3段目に示す通り、前処理部211が、アナログ荷重s~sをデジタル荷重ss~ssに変換し、各種パラメータを算出する(前処理工程S12)。
【0080】
次に、図4の3、4段目に示す通り、臥床状態判定部212が、所定期間のデジタル荷重ss~ssに基づく各種パラメータを状態判定モデルMSTAに入力し、被験者Sの臥床状態を所定の周期で逐次的に判定する(臥床状態判定工程S13)。その後、図4の4、5段目に示す通り、傾向取得部213が、単位時間の臥床状態の状態傾向を取得する(傾向取得工程S14)。
【0081】
次に、図4の5、6段目に示す通り、規則性特定部214が、所定期間の状態傾向(少なくとも2つ以上の状態傾向のレコード、図4の例では4レコード)を規則性特定モデルに入力して、規則性を特定する(規則性特定工程S15)。そして、図4の6、7段目に示す通り、体調変異特定部215が、特定された規則性(さらに、必要であれば、日時情報及び/又は期間情報)を体調変異予測モデルMPREに入力することで、被験者Sの体調変異の有無、体調変異が生じ得る確率、体調変異の内容、及び/又は体調変異の起こり得る時期を予測する。
【0082】
[臥床状態判定モデル作成方法]
次に、上記実施形態の体調変異予測システム100で用いる臥床状態判定モデルMSTAの作成方法を説明する。
【0083】
体調変異予測システム100で用いる臥床状態判定モデルMSTAは、判定する臥床状態の内容に応じたものが作成される。
【0084】
臥床状態判定モデルの作成方法は、図8のフローチャートに示す通り、教師データ作成工程S21と、説明変数決定工程S22と、モデル作成工程S23とを含む。
【0085】
教師データ作成工程S21では、モデル作成工程S22で使用する教師データを、一例として次の手順により作成する。
【0086】
まず、ベッドBD上に被験者Sが存在する状態で、荷重センサLS1~LS4による被験者Sの荷重の計測、及びベッドBD上の被験者Sの撮影を所定期間に渡り並行して行い、荷重信号ss~ss及び被験者Sの画像(動画)を記憶する。記憶された荷重信号ss~ssの一例は図9に示す通りである。この時、被験者Sの音声を録音してもよい。
【0087】
次に、記憶された被験者Sの画像に基づいて、記憶された荷重信号ss~ssにラベル付け(タグ付け)を行う。ラベル付けは、荷重信号ss~ssに対して、被験者Sの状態(動作)の種類、及び当該状態の開始時刻及び終了時刻を紐づけることによりなされる。
【0088】
ラベル付けされる状態の種類は、一例として、「低呼吸」、「咳」、「正常」、「体動」である。図9に示す例では、時刻t~時刻tの期間について「低呼吸」、時刻t~時刻tの期間及び時刻t~時刻tの期間について「体動」、時刻t~時刻tの期間及び時刻t~時刻t10の期間について「咳」、その他の期間について「正常」とラベル付けされた。
【0089】
また、ラベル付けされる状態の種類は「低呼吸」、「咳」、「正常」、「体動」に代えて又はこれらに加えて、「入床」(被験者のベッド下からベッド上への移動)、「離床」(被験者のベッド上からベッド下への移動)、「端座位」(ベッド端に被験者が座っている状態)、「座位」(ベッド上に被験者が座っている状態)、「リクライニングベッドの角度変化」(上昇又は下降)、ベッド上での危険動作(ベッド柵からの飛び出し等)、「食事」、「仰臥」、「右横臥」、「左横臥」、「伏臥」等の少なくとも1つを含んでもよい。
【0090】
次に、記憶された荷重信号ss~ssに基づいて複数の特徴量を作成する。本実施形態で用いる特徴量は、上述の(1)荷重信号ss~ss、(2)各周波数帯のスペクトル振幅SAnX-Y、(3)重心位置、(4)呼吸波形、(5)呼吸数、(6)呼吸振幅値、(7)心拍波形、(8)ACI(アクティビティインデックス、 Activity Index)、(9)総荷重の少なくとも一つを含み得る。
【0091】
以上により、荷重信号ss~ssに基づいて得られた複数の特徴量の組合せ(以下、「特徴量セットFS」と呼ぶ)を入力とし、当該荷重信号ss~ssにラベル付けされた被験者Sの状態を出力とするデータセットが教師データとして作成される。各特徴量は荷重信号ss~ssに基づいて作成されているため、各特徴量は荷重信号ss~ssにラベル付けされた被験者Sの状態に対応付けられている。
【0092】
説明変数決定工程S22では、教師データ作成工程S21で作成した教師データに含まれる特徴量セットFSの中から少なくとも1つの特徴量を選択し、これを後述するモデル作成工程S23で使用する説明変数と決定する。
【0093】
特徴量の選択(説明変数の決定)は、一例として、決定木アルゴリズムに基づく勾配ブースティング手法(具体的には例えば、XGBoost、LightGBM、CatBoost等)を用いて行うことができる。なお、勾配ブースティング手法に代えてロジスティック回帰を用いてもよい。
【0094】
具体的には、教師データ作成工程S21で作成した教師データを用いて、特徴量セットFSを入力とし被験者Sの所定状態(一例として「咳」、「体動」、「低呼吸」、「正常」)を出力とするトレーニングデータを作成する。所定状態は、作成するモデルにより分類させようとする状態を含み、ラベル付けされた複数の状態の中から少なくとも1つを選択する。そして、当該トレーニングデータを用いて、特徴量セットFSを入力として被験者Sの状態を当該所定状態に分類する学習済モデルを勾配ブースティング手法により作成する。その後、作成された学習済みモデルにおける各特徴量の寄与度を決定木アルゴリズムの重要度に基づいて計算し、寄与度の高い1つ又は複数の特徴量をモデル作成工程S23で使用する説明変数と決定する。
【0095】
モデル作成工程S23では、説明変数決定工程S22で選択した特徴量を説明変数として、被験者Sの状態を所定の状態(一例として「咳」、「体動」、「低呼吸」、「正常」)に分類する臥床状態判定モデルMSTAを教師あり機械学習により生成する。教師あり機械学習は、具体的には例えば、ナイーブベイズクラス分類器、決定木、サポートベクタマシン(SVM)、ニューラルネットワーク、K近傍、勾配ブースティング、ロジスティクス回帰等を用いることができる。教師データは、例えば、特徴量セットFSから説明変数決定工程S22で選択した特徴量に関するデータを取り出すことにより作成し得る。
【0096】
[規則性特定モデルの作成方法]
次に、上記実施形態の体調変異予測システム100で用いる規則性特定モデルMREGの作成方法を説明する。ここでは、体調変異予測システム100を用いて規則性特定モデルMREGを作成する場合を例として説明する。
【0097】
規則性特定モデルMREGの作成方法は、図10のフローチャートに示す通り、荷重計測工程S31、臥床状態判定工程S32、傾向取得工程S33、モデル作成工程S34を含む。
【0098】
荷重計測工程S31は、体調変異予測方法における荷重計測工程S11と同様である。即ち、荷重計測工程S31では、荷重計測部10が荷重センサLS1~LS4によりベッドBD上の被験者Sの荷重を検出し、検出した荷重をアナログ信号s~sとして情報処理装置20に送る。
【0099】
臥床状態判定工程S32は、体調変異予測方法における前処理工程S12及び臥床状態判定工程S13と同様である。即ち、臥床状態判定工程S32では、前処理部211がアナログ信号s~sをデジタル信号ss~ssに変換し、これに基づいて各種パラメータを算出する。そして、臥床状態判定部212が、算出された各種パラメータを臥床状態判定モデルMSTAに入力して被験者Sの臥床状態を判定する。
【0100】
傾向取得工程S33は、体調変異予測方法における傾向取得工程S14と同様である。即ち、傾向取得工程S33では、傾向取得部213が、臥床状態判定部212が判定した被験者Sの臥床状態の、単位時間当たりの傾向を算出する。
【0101】
なお、傾向取得工程S33では、単位時間の異なるレコードを生成するようにしてもよい。例えば、傾向取得工程S33では、1時間ごとに(すなわち、単位時間を1時間として)状態傾向のレコードを生成するとともに、1日ごとにも、単位時間を1日とした状態傾向のレコードを生成することとしてもよい。その他、単位時間を1時間、1日とは異なる任意の期間とした状態傾向の算出も行ってもよい。
【0102】
モデル作成工程S34では、モデル作成部217が、傾向取得工程S33で取得した臥床状態の傾向をトレーニングデータとする教師無し機械学習により、1つ以上の臥床状態に基づいて所定の規則性を特定する規則性特定モデルMREGを生成する。教師無し機械学習は具体的には例えば、ランダムフォレスト、クラスタリング、主成分分析、アソシエーション分析、敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Network)、混合正規分布モデル(GMM)、局所外れ値因子法(LOF)、アイソレーションフォレスト、カーネル密度推定等を用いることができる。
【0103】
なお、モデル作成工程S34では、傾向取得工程S33で取得した状態傾向のレコードを複数個、トレーニングデータとして用いることがより望ましい。これにより、より高精度に規則性を特定可能な規則性特定モデルMREGを作成することができる。モデル作成工程S34において使用するトレーニングデータの量および内容は、規則性特定モデルMREGの汎化性能が損なわれない範囲で適宜定められてよい。
【0104】
なお、トレーニングデータとして複数の状態傾向のレコードを用いる場合、各レコードは状態傾向の特定の単位時間(すなわち、状態傾向の特定スパン)が同一なレコード群であってもよいし、一部または全部のレコードの単位時間が異なっていてもよい。単位時間が同一のレコード群を用いる場合、当該単位時間のレコードがモデルに入力されたときの規則性の特定精度を向上させ得る。一方、単位時間が異なるレコード群を用いる場合、汎化性能の高いモデルを作成し得る。
【0105】
また、本実施形態では、傾向取得工程S33において取得した状態傾向の内、「離床」の割合が所定値(一例として50~70%程度)以上である状態傾向については、トレーニングデータとしては採用しないこととしてもよい。「離床」の有無と被験者Sの生体状態との関連性は比較的小さいため、「離床」の割合が高い状態傾向を除外したトレーニングデータを用いることで、特定される規則性と被験者Sの生体状態の変動との相関性をより高めることができる。このように、特定される規則性と被験者Sの生体状態の変動との相関性を高めることは、ひいては体調変異予測モデルMPREの予測の精度向上につながり得る。
【0106】
ここで規則性特定モデルMREGにより特定しようとする状態傾向の規則性とは、具体的には例えば次のような規則性である。
(1)「咳」の割合が2日以上、日ごとに増加している。
(2)所定のタイミング(例えば毎日、夕方17時以降)になると「咳」の割合が増加することが3日以上続く。
(3)3日以上続けて「低呼吸」の割合が減少し、3日以上続けて「正常」の割合が増加する。
(4)「低呼吸」の割合が25日以上、日ごとに増加している。
(5)「低呼吸」の割合が日ごとに減少し、かつ、「体動」の割合が日ごとに増加することが1週間以上続く。
【0107】
これらの規則性は、被験者の体調変異と相関関係を有する規則性の一例であり、これらの規則性を示す規則性情報は、後述する体調変異予測モデルの作成方法において説明変数として教師データに含めるものである。
【0108】
[体調変異予測モデルの作成方法]
次に、上記実施形態の体調変異予測システム100で用いる体調変異予測モデルMPREの作成方法を説明する。ここでは、前述した、体調変異を予測するためのシステム(すなわち、体調変異予測システム100)に含まれる情報処理装置20が体調変異予測モデルMPREを作成する場合を例にとり説明する。
【0109】
体調変異予測モデルMPREの作成方法は、図11のフローチャートに示す通り、体調情報作成工程S41、データ入力工程42、荷重計測工程S43、臥床状態判定工程S44、傾向取得工程S45、規則性特定工程S46、教師データ作成工程S47、モデル作成工程S48を含む。
【0110】
体調情報作成工程S41では、情報処理装置20は、被験者Sの体調を時系列で示す体調情報を作成または取得する。体調情報は、具体的には例えば、医師、看護師、介護士等のデータ作成者が目視で被験者Sの体調を観察し、観察結果を電子データとして情報処理装置20、端末装置30、または他の装置等に記録することにより作成される。病院等で看護師が作成する看護記録、介護施設で介護士が作成する介護記録等は体調情報の一例である。情報処理装置20は、自装置に入力された観察結果に基づき体調情報を作成する。または、情報処理装置20は、端末装置30または他の装置から、これらの体調情報を定期的に、または所定のタイミングで取得することにより、体調情報を得る。
【0111】
データ作成者による目視でのデータ作成に代えて、或いはこれに加えて、各種センサを用いて被験者Sの生体情報を測定し、測定した生体情報を測定日時とともに情報処理装置20、端末装置30、または他の装置等に記録しておき、当該記録したデータを体調情報として用いてもよい。各種センサの一例は、脈拍、血圧、呼吸、体温等のバイタルデータを測定する体温計、脈拍計等である。
【0112】
作成される体調情報は、被験者Sの体調と時間とが紐づけられたデータである。したがって、体調情報に基づいて、被験者Sの体調が、いつ、どのような状態であったかを把握することが出来る。なお、ここで言う「時間」とは1日の時間だけでなく、日付、月、年等、時期を示すものであればその区切りは特に限定されない。
【0113】
体調情報に含まれ得る被験者Sの体調は、具体的には例えば、心拍数、呼吸数、血圧、体温、血中酸素濃度等を含む。
【0114】
また、本実施形態では、被験者Sの食事、清拭等の被験者Sの行動情報も、体調情報に含める。これらの行動情報は、前述した看護記録及び/又は介護記録に含まれる場合もある。後述するモデル作成工程S48において、このような被験者Sの行動に応じた荷重の変動の影響も考慮に入れた学習を行わせることで、作成される体調変異予測モデルMPREの予測精度を高めることが出来る。
【0115】
データ入力工程S42では、体調情報作成工程S41で作成した体調情報を、情報処理装置20に入力する。体調情報の情報処理装置20への入力は例えば、端末装置30の入力部32を介して行うことができる。その他、PC等の外部装置に保存された体調情報を情報処理装置20に送信することにより入力を行ってもよい。情報処理装置20は、受け取った体調情報を記憶部22に保存する。
【0116】
荷重計測工程S43は、体調変異予測方法における荷重計測工程S11と同様である。即ち、荷重計測工程S43では、荷重計測部10が「荷重センサLS1~LS4によりベッドBD上の被験者Sの荷重を検出し、検出した荷重をアナログ信号s~sとして情報処理装置20に送る。
【0117】
臥床状態判定工程S44は、体調変異予測方法における前処理工程S12及び臥床状態判定工程S13と同様である。即ち、臥床状態判定工程S44では、前処理部211がアナログ信号s~sを荷重信号ss~ssに変換し、これに基づいて各種パラメータを算出する。そして、臥床状態判定部212が、算出された各種パラメータを臥床状態判定モデルMSTAに入力して被験者Sの臥床状態を判定する。
【0118】
傾向取得工程S45は、体調変異予測方法における傾向取得工程S14と同様である。即ち、傾向取得工程S45では、傾向取得部213が、臥床状態判定部212が判定した被験者Sの臥床状態の、単位時間当たりの傾向を取得する。
【0119】
規則性特定工程S46は、体調変異予測方法における規則性特定工程S15と同様である。即ち、規則性特定工程S46では、規則性特定部214が、状態傾向の時間的変動に含まれる規則性を、規則性特定モデルMREGを用いて特定する。規則性特定部214は、規則性が特定された場合は、規則性情報を生成し、記憶部22に保存する。また、規則性特定工程S46において、規則性特定モデルMREGは、当該モデルにより特定された規則性の内容と、当該規則性が示された日時を関連付けた情報を「規則性情報」とする。「規則性が示された日時」とは、例えば、(i)規則性情報の生成日時、 (ii)規則性特定モデルMREGに入力された状態傾向のレコードのうち、最も新しいレコードの日時、または、(iii)規則性特定モデルMREGに入力された状態傾向のレコードのうち、最も古いレコードの日時であってよい。また、ここで言う「日時」とは時間以外に、日付、月、年等、時期を示すものであってもよい。
【0120】
教師データ作成工程S47では、教師データ作成部217が、データ入力工程S42で記憶部22に保存した体調情報と、規則性特定工程S46で記憶部22に保存した規則性情報とを用いて教師データを作成する。
【0121】
作成される教師データは、被験者Sの状態傾向の規則性を入力とし、被験者Sの体調情報を出力とするデータセットである。規則性情報及び体調情報はいずれも日時と紐づけられているため、例えば、ある規則性情報と、当該ある規則性情報が示す日時から所定期間内の日時を示す体調情報とを組み合わせることで、「特定日時までの状態傾向がとある規則性を有していた場合に、実際の体調がどう推移したか」を示す、1組の教師データを作成することができる。なお、ある規則性情報が示す日時から所定期間内の日時を示す体調情報が複数存在する場合、当該ある規則性情報から複数の教師データが作成されてもよい。つまり、ある規則性情報と第1の体調情報を組み合わせた教師データと、同規則性情報と第2の体調情報を組み合わせた教師データとが作成されてもよい。作成される教師データでは、状態傾向の規則性と被験者Sの体調とが日時を介して対応付けられている。
【0122】
モデル作成工程S48では、モデル作成部218が、教師データ作成工程S47で作成した教師データを用いた教師あり機械学習により、被験者Sの状態傾向の規則性と被験者Sの体調情報との相関関係を、予測モデルに学習させる。これにより、状態傾向の規則性に基づいてベッドBD上の被験者Sの体調変異を予測する体調変異予測モデルMPREが生成される。教師あり機械学習は、具体的には例えば、ナイーブベイズクラス分類器、決定木、サポートベクタマシン(SVM)、ニューラルネットワーク、K近傍、勾配ブースティング、ロジスティクス回帰等を用いることができる。
【0123】
被験者Sの状態傾向の規則性と被験者Sの体調情報との相関関係を予測モデルに学習させることにより体調変異予測モデルMPREを作成することができる理由は次の通りである。
【0124】
本発明の発明者の知見によれば、被験者Sの体調に何らかの変異が生じる前には、被験者Sの臥床状態になんらかの規則的な変動が生じていることが多い。具体的な一例として、次の関係が観察されている。なお、以下の例における日数は、規則性の特定の起点となる状態傾向のレコードの取得日を起点として説明している。
【0125】
(1)「咳」の割合が日ごとに増加することが2日以上続くと、4日後に発熱する。
(2)所定のタイミング(例えば夕方17時)になると「咳」の割合が増加することが3日以上続くと、3日と12時間後に発熱する。
(3)「低呼吸」の割合が高い被験者において、「低呼吸」の割合が減少し、「正常」の割合が増加すると、その後、発熱に至る。
(4)「低呼吸」の割合が高くない被験者において、「低呼吸」の割合が日ごとに増加することが25日以上続くと、1カ月後に逝去する。
(5)「正常」の割合が高い被験者において、「低呼吸」の割合が日ごとに減少し、かつ、「体動」の割合が日ごとに増加することが1週間以上続くと、8日目から体調が改善する。
【0126】
このように、被験者Sの臥床状態の変動と、被験者の体調の変異との間には相関関係が存在する。したがって、被験者Sの臥床状態の変動と、被験者の体調の変異との間の相関関係を予測モデルに学習させることにより、被験者の臥床状態の変動に基づいて被験者の体調の変異を予測する予測モデルを作成することができる。また、予測モデルへの入力として、被験者Sの臥床状態の時間的な変動それ自体ではなく、被験者Sの臥床状態の状態傾向の時間的変動の規則性を用いることで、被験者Sの臥床状態のイレギュラーな変動の影響が抑制されたより精度の高い予測を行うことができる。
【0127】
以上の通り、上記実施形態の体調変異予測システム100、体調変異予測方法は、被験者Sの臥床状態の状態傾向の時間的変動を入力とする体調変異予測モデルMPREを用いて、被験者Sの体調変異を予測する。したがって、被験者Sの臥床状態のイレギュラーな変動の影響を抑制して高い精度で被験者Sの体調の変異を予測することができる。また、上記実施形態の体調変異予測モデルの作成方法は、被験者Sの状態傾向の規則性と被験者Sの体調情報との相関関係を予測モデルに学習させることで、被験者Sの臥床状態のイレギュラーな変動の影響が抑制された精度の高い体調変異予測モデルを作成することができる。
【0128】
上記実施形態において、次の変形態様を用いることも出来る。
【0129】
上記実施形態では、ある被験者(被験者S)についての各種データを用いて、臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、および体調変異予測モデルMPREを作成することとした。すなわち、上記実施形態では、体調変異の予測の対象となる被験者(被験者S)と、臥床状態判定モデルMSTAおよび体調変異予測モデルMPREの教師データ用の被験者とが同一である場合について説明した。また、規則性特定モデルMREGの作成時に入力する状態傾向のレコードも、被験者Sのものであった。換言すると、上記実施形態では、臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、および体調変異予測モデルMPREはそれぞれ、被験者Sに関する複数のパラメータの自己相関関係を学習した学習済モデルであった。
【0130】
しかしながら、本開示に係る臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、および体調変異予測モデルMPREの作成方法はこれに限られない。例えば、これら3種類のモデルのうち1つ以上のモデルが、体調変異の予測の対象となる被験者(被験者S)ではない、他の被験者(または被験者群)についてのデータから作成されてもよい。
【0131】
すなわち、臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、および体調変異予測モデルMPREはそれぞれ、上記他の被験者(または被験者群)から得られた複数のパラメータについての相関関係を学習した学習済モデルであってもよい。換言すると、各種学習済モデルを作成する際に必要なデータ(例えば、荷重データおよび体調情報等)の収集対象となる被験者と、実際に体調変異の予測対象となる被験者とは、異なっていてもよい。
【0132】
また、臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、および体調変異予測モデルMPREを、体調変異の予測の対象となる被験者(被験者S)に関するデータと、他の被験者(または被験者群)から得られたデータの両方を用いて作成してもよい。すなわち、臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、および体調変異予測モデルMPREはそれぞれ、被験者Sを含む複数の人間に関するパラメータの相関関係を学習した学習済モデルであってもよい。
【0133】
上記実施形態では、臥床状態判定モデルMSTAの作成、規則性特定モデルMREGの作成、体調変異予測モデルMPREの作成、および、体調変異の予測全てを図1に示した体調変異予測システム100で行うこととした。しかしながら、体調変異予測システム100は、予め作成済みの臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、および体調変異予測モデルMPREを用いて体調変異の予測を行うシステムであってもよい。この場合、体調変異予測システム100の情報処理装置20は、教師データ作成部216およびモデル作成部217を含んでいなくてもよい。
【0134】
また、体調変異予測システム100以外のシステムおよび装置で各種学習済モデル(臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、および体調変異予測モデルMPRE)を作成する場合、必ずしも体調変異予測システム100と同様の構成が必須とは限らない。
【0135】
例えば、臥床状態判定モデルMSTAを作成する場合、荷重計測部10と、荷重計測部10と通信可能なコンピュータ等のモデル作成装置とを用いれば、臥床状態判定モデルMSTAを作成することができる。この場合、モデル作成装置の制御部が制御部21に相当し、モデル作成装置の制御部は少なくとも前処理部211および臥床状態判定部212を備える。また、当該コンピュータの記憶部、または当該コンピュータと通信可能な外部の記憶装置に、臥床状態判定モデルMSTAのひな形となる未学習のモデルが記憶されていてもよい。
【0136】
また例えば、規則性特定モデルMREGを作成する場合、荷重計測部10と、荷重計測部10と通信可能なコンピュータ等のモデル作成装置と、作成済の臥床状態判定モデルMSTAを用いれば、規則性特定モデルMREGを作成することができる。この場合、モデル作成装置の制御部が制御部21に相当し、モデル作成装置の制御部は少なくとも前処理部211、臥床状態判定部212、傾向取得部213、および規則性特定部214を備える。また、当該コンピュータの記憶部、または当該コンピュータと通信可能な外部の記憶装置に、作成済の臥床状態判定モデルMSTAが記憶されており、モデル作成装置の制御部はこれを使用して臥床状態の判定を行う。なお、同記憶部または記憶装置には、規則性特定モデルMREGのひな形となる未学習のモデルを記憶していてもよい。
【0137】
また例えば、体調変異予測モデルMPREを作成する場合、荷重計測部10と、端末装置30等の体調情報の取得先となる装置と、これら2つの装置と通信可能なコンピュータ等のモデル作成装置と、作成済の臥床状態判定モデルMSTAと、作成済の規則性特定モデルMREGとを用いれば、体調変異予測モデルMPREを作成することができる。この場合、モデル作成装置の制御部が制御部21に相当し、モデル作成装置の制御部は少なくとも前処理部211、臥床状態判定部212、傾向取得部213、規則性特定部214、および体調変異予測部215を備える。また、当該コンピュータの記憶部、または当該コンピュータと通信可能な外部の記憶装置に、作成済の臥床状態判定モデルMSTAと作成済の規則性特定モデルMREGが記憶されており、モデル作成装置の制御部はこれを使用して臥床状態の判定および規則性の特定を行う。なお、同記憶部または記憶装置には、体調変異予測モデルMPREのひな形となる未学習のモデルを記憶していてもよい。
【0138】
以上説明した3つの学習済モデルの作成と、体調変異の予測のうち2つ以上がまとめて同じシステムで実施されてもよい。例えば、臥床状態判定モデルMSTAと規則性特定モデルMREGを同じモデル作成装置で予め作成しておき、作成済のモデルを体調変異予測システム100の情報処理装置20の記憶部22に格納しておいてもよい。そして、体調変異予測システム100において、体調変異予測モデルMPREの作成と、体調変異の予測と、を実行することとしてもよい。
【0139】
上記実施形態の体調変異予測方法において、表示工程S17を省略してもよい。この場合、体調変異予測システム100の使用者は、情報処理装置20の記憶部22に体調変異の予測結果を示す情報(予測情報)が保存されているか否かを定期的に確認してもよい。使用者は、体調変異の予測結果を示す情報(予測情報)が保存されている場合はその内容に応じた予防処置を被験者Sに施し得る。
【0140】
上記実施形態の体調変異モデル作成方法の教師データ作成工程S47において、被験者Sの状態傾向の規則性と、ベッドBDが設置された病室等の温度、湿度等の環境情報とを時間を介して対応づけたデータを、教師データとして含めてもよい。そして、モデル作成工程S48において当該教師データを用いてもよい。被験者Sの周囲環境は、被験者Sの体調(体温、呼吸数等)に直接的に、又は間接的に影響を及ぼす。したがって、被験者Sの臥床状態と被験者Sの周囲環境との相関関係も予測モデルに学習させることで、作成される体調変異予測モデルの予測精度をより向上させることができる。
【0141】
上記実施形態の体調変異モデル作成方法では、体調変異の予測対象となる被験者S自身の体調情報及び状態傾向の規則性を用いて教師データを作成し、使用する場合を説明した。しかしながら、教師データとして用いられる規則性情報及び/又は体調情報は、被験者S自身の情報に限られない。例えば、体調変異の予測を行おうとする被験者S自身に基づく教師データに加えて、或いはこれに代えて、体調変異の予測を行おうとする被験者Sとは異なる単数又は複数の被験者に基づく、単数又は複数の教師データを作成し、使用してもよい。
【0142】
上記実施形態の体調変異予測モデルの作成方法においては、被験者Sの食事、清拭等の被験者Sの行動情報を被験者Sの体調情報に含めているが、これには限られない。体調情報は行動情報を含まなくてもよい。
【0143】
また、体調情報に含まれる体調は、作成する体調変異予測モデルMPREにより予測しようとする体調変異のみでもよい。そのような教師データでも、被験者Sの状態傾向の規則性と予測しようとする被験者Sの状態変異との相関関係を予測モデルに学習させることができる。本発明において、体調情報に含まれる、予測しようとする体調変異と時刻との対応を示すデータを「体調変異情報」と呼ぶ。
【0144】
上記実施形態の体調変異予測システム100、体調変異予測方法、体調変異予測モデルの作成方法では、被験者Sの状態傾向の時間的変動の規則性の特定を、学習済の規則性特定モデルMREGを用いて行っている。しかしながら、被験者Sの状態傾向の規則性の特定方法はこれには限られない。例えば、前記規則性の特定は、パターンマッチングなどの、データ中のパターンを特定する任意の手法により行うことが出来る。
【0145】
上記実施形態の体調変異予測システム100において、荷重計測部10は荷重センサLS1~LS4に代えて、シーツの下にマトリックス状に配置された複数の感圧センサ(圧力センサ)により被験者Sの荷重を計測してもよい。
【0146】
上記実施形態の体調変異予測システム100は、必ずしも荷重センサLS1~LS4の全てを備える必要はなく、このいずれか一つを備えるのみでもよい。また、荷重検出器は、必ずしもベッドの四隅に配置される必要はなく、ベッド上の被験者の荷重及びその変動を検出しうるように、任意の位置に配置し得る。また、荷重センサLS1~LS4は、ビーム形ロードセルを用いた荷重センサに限られず、例えばフォースセンサを使用することもできる。
【0147】
上記実施形態の体調変異予測システム100において、荷重計測部10に代えて、またはこれに加えて、ベッドBD上の被験者の生体情報を取得するカメラ、加速度センサ等を用いてもよい。カメラを用いて被験者Sの画像情報を生体情報として取得する場合や、被験者Sに取り付けた加速度センサにより被験者Sの体動を生体情報として取得する場合も、被験者Sの荷重を生体情報として取得する場合と実質的に同様の方法により、被験者Sの体調変異を予測することができる。
【0148】
例えば、カメラで撮影した画像を解析することで、その画像に写っている人物が何の動作をしているか特定することができる技術は、従来種々存在する。このような公知技術を流用することで、例えば、カメラでベッドBD(および被験者S)を撮影して、その画像を解析することにより、被験者SのベッドBD上での動作(すなわち、本開示で説明した臥床状態)を特定することができるといえる。なお、カメラでベッドBDを撮影して被験者Sが写っていない場合は、被験者Sは「離床」状態であると判定すればよい。臥床状態を特定してからの処理は、上記実施形態で説明したものと同様である。
【0149】
また例えば、加速度センサを搭載したウェアラブルデバイスを被験者Sに身に着けさせておくことで、ベッドBDに臥床した被験者Sの臥床状態を特定することができる。臥床状態を特定してからの処理は、上記実施形態で説明したものと同様である。
【0150】
上記実施形態の体調変異予測システム100は、端末装置30を備えなくてもよい。また、情報処理装置20はネットワークを介して荷重計測部10に接続される態様に限られず、荷重計測部10及びベッドBDの近傍(例えば同一室内)に配置されて荷重計測部10に配線により接続されていてもよい。
【0151】
上記実施形態の臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、体調変異予測モデルMPREは、非一時的且つコンピュータ読取可能な記録媒体に記録されたものであってもよい。当該記録媒体を情報処理装置20等のコンピュータで読み取ることにより、当該コンピュータに臥床状態判定工程S13、規則性特定工程S15、体調変異予測工程S16を実行させることができる。即ち、臥床状態判定モデルMSTA、規則性特定モデルMREG、体調変異予測モデルMPRE等の学習済みモデルはプログラムとして記録媒体に記録され得る。また、これらの学習済モデルのひな形となる未学習のモデルが存在する場合、当該未学習のモデルについても同様に、非一時的且つコンピュータ読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。
【0152】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0153】
10 荷重計測部; 20 情報処理装置; 211 前処理部; 212 臥床状態判定部; 213 傾向取得部; 214 規則性特定部; 215 体調変異予測部; 22 記憶部; 30 端末装置; BD ベッド; LS1~LS4 荷重センサ;MPRE 体調変異予測モデル; MREG 規則性特定モデル; MSTA 臥床状態判定モデル; S 被験者
図1
図2
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図10
図11