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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146616
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/817 20230101AFI20241004BHJP
   H10N 10/851 20230101ALI20241004BHJP
   H10N 10/852 20230101ALI20241004BHJP
   H10N 10/853 20230101ALI20241004BHJP
   H10N 10/854 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
H10N10/817
H10N10/851
H10N10/852
H10N10/853
H10N10/854
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059636
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 邦久
(57)【要約】
【課題】部材間界面の伝熱性が向上された高い熱電性能を有する熱電変換モジュールを提供する。
【解決手段】インプレーン型熱電変換モジュールの一方の面に熱伝導性インターフェイス部材Aと、放熱部材と、を含み、さらに前記インプレーン型熱電変換モジュールの他方の面に熱伝導性インターフェイス部材Bを含む、熱電変換モジュールであって、
前記熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値をR(mK/W)、前記熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値をR(mK/W)、それらの和である全熱抵抗値をRAB(mK/W)とし、さらに前記インプレーン型熱電変換モジュールの全熱抵抗値をR(mK/W)とした時に、前記Rに対する前記RABの比(RAB/R)が、1.40以下である、熱電変換モジュール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプレーン型熱電変換モジュールの一方の面に熱伝導性インターフェイス部材Aと、放熱部材と、を含み、さらに前記インプレーン型熱電変換モジュールの他方の面に熱伝導性インターフェイス部材Bを含む、熱電変換モジュールであって、
前記熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値をR(mK/W)、前記熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値をR(mK/W)、それらの和である全熱抵抗値をRAB(mK/W)とし、さらに前記インプレーン型熱電変換モジュールの全熱抵抗値をR(mK/W)とした時に、前記Rに対する前記RABの比(RAB/R)が、1.40以下である、熱電変換モジュール。
【請求項2】
前記インプレーン型熱電変換モジュールはさらに高熱伝導層A及び高熱伝導層Bを含んでおり、
該高熱伝導層Aは、前記インプレーン型熱電変換モジュールのうち前記熱伝導性インターフェイス部材A側の最外層を構成しており、
該高熱伝導層Bは、前記インプレーン型熱電変換モジュールのうち前記熱伝導性インターフェイス部材B側の最外層を構成している、請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記高熱伝導層Aは、間隔をおいて配置された複数の高熱伝導層aからなり、隣り合う高熱伝導層a同士の間の間隙内に前記熱伝導性インターフェイス部材Aの一部が埋め込まれており、且つ、
前記高熱伝導層Bは、間隔をおいて配置された複数の高熱伝導層bからなり、隣り合う高熱伝導層b同士の間の間隙内に前記熱伝導性インターフェイス部材Bの一部が埋め込まれている、請求項2に記載の熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記高熱伝導層Aの厚みに対する前記熱伝導性インターフェイス部材Aの一部の埋め込み深さの比Mが、0.01~1.00であり、且つ前記高熱伝導層Bの厚みに対する前記熱伝導性インターフェイス部材Bの一部の埋め込み深さの比Nが、0.01~1.00である、請求項3に記載の熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記熱伝導性インターフェイス部材A及び前記熱伝導性インターフェイス部材Bが、それぞれ独立に、樹脂層又は有機層である、請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エネルギーの有効利用手段の一つとして、ゼーベック効果やペルチェ効果などの熱電効果を有する熱電変換モジュールにより、熱エネルギーと電気エネルギーとを直接相互変換するようにした装置がある。
熱電変換モジュールとして、いわゆるインプレーン型熱電変換素子の構成が知られている。インプレーン型熱電変換素子は、熱電性能の観点から、通常、P型熱電素子とN型熱電素子とが基板の面内方向に交互に設けられ、例えば、隣接又は当接するP型熱電素子とN型熱電素子との上部又は下部等を、電極を介し直列に接続することで構成されている。
このような中、インプレーン型熱電変換モジュールについて、さらなる熱電性能の向上、薄型化、信頼性の向上、量産性の向上等の様々な要求が依然としてある。
特許文献1では、例えば、インプレーン型熱電変換モジュールの構成において、熱電素子層と放熱層との間に絶縁層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/179544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、前記絶縁層は、インプレーン型熱電変換モジュールの信頼性向上の観点から、熱源と熱電素子層との間、又は、放熱層と熱電素子層との間等の短絡等を防止する目的で使用されているものであり、熱電性能の向上の観点から、他の特定の絶縁層をインプレーン型熱電変換モジュール上に配置すること、及び、該他の特定の絶縁層が有する熱抵抗値とインプレーン型熱電変換モジュールを構成する部材の熱抵抗値との関係性については検討されていない。
【0005】
本発明は、上記を鑑み、部材間界面の伝熱性が向上された高い熱電性能を有する熱電変換モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、インプレーン型熱電変換モジュールの上下面に、該インプレーン型熱電変換モジュールを構成する各部材が有する熱抵抗値の総和となる全熱抵抗値に対し、特定の比率の熱抵抗値を有する熱伝導性インターフェイス部材(以下、単に「TIM」ということがある。)を備えることにより、前記インプレーン型熱電変換モジュールを構成する各部材間界面の伝熱性をより向上させ得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものである。
[1]インプレーン型熱電変換モジュールの一方の面に熱伝導性インターフェイス部材Aと、放熱部材と、を含み、さらに前記インプレーン型熱電変換モジュールの他方の面に熱伝導性インターフェイス部材Bを含む、熱電変換モジュールであって、前記熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値をR(mK/W)、前記熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値をR(mK/W)、それらの和である全熱抵抗値をRAB(mK/W)とし、さらに前記インプレーン型熱電変換モジュールの全熱抵抗値をR(mK/W)とした時に、前記Rに対する前記RABの比(RAB/R)が、1.40以下である、熱電変換モジュール。
[2]前記インプレーン型熱電変換モジュールはさらに高熱伝導層A及び高熱伝導層Bを含んでおり、該高熱伝導層Aは、前記インプレーン型熱電変換モジュールのうち前記熱伝導性インターフェイス部材A側の最外層を構成しており、該高熱伝導層Bは、前記インプレーン型熱電変換モジュールのうち前記熱伝導性インターフェイス部材B側の最外層を構成している、上記[1]に記載の熱電変換モジュール。
[3]前記高熱伝導層Aは、間隔をおいて配置された複数の高熱伝導層aからなり、隣り合う高熱伝導層a同士の間の間隙内に前記熱伝導性インターフェイス部材Aの一部が埋め込まれており、且つ、前記高熱伝導層Bは、間隔をおいて配置された複数の高熱伝導層bからなり、隣り合う高熱伝導層b同士の間の間隙内に前記熱伝導性インターフェイス部材Bの一部が埋め込まれている、上記[2]に記載の熱電変換モジュール。
[4]前記高熱伝導層Aの厚みに対する前記熱伝導性インターフェイス部材Aの一部の埋め込み深さの比Mが、0.01~1.00であり、且つ前記高熱伝導層Bの厚みに対する前記熱伝導性インターフェイス部材Bの一部の埋め込み深さの比Nが、0.01~1.00である、上記[2]又は[3]に記載の熱電変換モジュール。
[5]前記熱伝導性インターフェイス部材A及び前記熱伝導性インターフェイス部材Bが、それぞれ独立に、樹脂層又は有機層である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部材間界面の伝熱性が向上された高い熱電性能を有する熱電変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の熱電変換モジュールの実施態様を示す断面構成図である。
図2】本発明の実施例に用いた熱電変換モジュールの一部を構成する基板上の電極及び熱電素子層の配置の一例を示す平面図である。
図3】本発明の実施例に用いた熱電変換モジュールの評価構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔熱電変換モジュール〕
本発明の熱電変換モジュールは、インプレーン型熱電変換モジュールの一方の面に熱伝導性インターフェイス部材Aと、放熱部材と、を含み、さらに前記インプレーン型熱電変換モジュールの他方の面に熱伝導性インターフェイス部材Bを含む、熱電変換モジュールであって、前記熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値をR(mK/W)、前記熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値をR(mK/W)、それらの和である全熱抵抗値をRAB(mK/W)とし、さらに前記インプレーン型熱電変換モジュールの全熱抵抗値をR(mK/W)とした時に、前記Rに対する前記RABの比(RAB/R)が、1.40以下である、ことを特徴としている。
本発明の熱電変換モジュールは、インプレーン型熱電変換モジュールの一方の面に熱伝導性インターフェイス部材A(以降、単に「TIMA」ということがある。)と、放熱部材と、を含み、さらに前記インプレーン型熱電変換モジュールの他方の面に熱伝導性インターフェイス部材B(以降、単に「TIMB」ということがある。)を含む構成を有しており、インプレーン型熱電変換モジュールを構成する各部材が有する熱抵抗値の総和となる全熱抵抗値Rに対する、TIMAの熱抵抗値RとTIMBの熱抵抗値Rとの和である全熱抵抗値RABの比(RAB/R)を1.40以下にすることにより、インプレーン型熱電変換モジュールを構成する各部材間界面の伝熱性をより向上させることができ、結果としてより高い熱電性能が得られる。
【0010】
本明細書において、「熱電変換モジュール」は、「インプレーン型熱電変換モジュール」と、「熱伝導性インターフェイス部材A及び熱伝導性インターフェイス部材B」と、「放熱部材」とから構成される。
【0011】
本明細書において、好ましいとする規定は任意に選択でき、好ましいとする規定同士の組み合わせはより好ましいといえる。
本明細書において、「XX~YY」との記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0012】
以下、本発明の熱電変換モジュールについて、図を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の熱電変換モジュールの実施態様を示す断面構成図である。熱電変換モジュール1は、インプレーン型熱電変換モジュール9の一方の面に熱伝導性インターフェイス部材A10aと、放熱部材11と、を含み、さらにインプレーン型熱電変換モジュール9の他方の面に熱伝導性インターフェイス部材B10bを含む。インプレーン型熱電変換モジュール9は、P型熱電素子層4とN型熱電素子層5とが基板2の面内方向に交互に隣接(当接)して共通の電極3を介して直列に配置されてなる熱電素子層6の一方の面に、被覆層7を介し間隔をおいて配置された複数の高熱伝導層a8aからなる高熱伝導層A8Aを備え、さらに、熱電素子層6の他方の面に、電極3、及び基板2を介し間隔をおいて配置された複数の高熱伝導層b8bからなる高熱伝導層B8Bを備える。
インプレーン型熱電変換モジュール9の上面の高熱伝導層a8aと放熱部材11との間に、熱伝導性インターフェイス部材A10aを備えることにより、その間に発生する接触熱抵抗を低減できる。同様に、インプレーン型熱電変換モジュール9の下面の高熱伝導層b8bと、例えば、熱源(図示せず)との間に、熱伝導性インターフェイス部材B10bを備えることにより、その間に発生する接触熱抵抗を低減できる。
このような効果を有する熱伝導性インターフェイス部材A及び前記熱伝導性インターフェイス部材Bを用い、且つインプレーン型熱電変換モジュールを構成する各部材が有する熱抵抗値の総和となる全熱抵抗値Rに対する、熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値Rと熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値Rとの和である全熱抵抗値RABの比(RAB/R)を1.40以下にすることにより、インプレーン型熱電変換モジュールを構成する各部材間界面の伝熱性をより向上させることができ、結果としてより高い熱電性能が得られる。
【0014】
インプレーン型熱電変換モジュールを構成する各部材が有する熱抵抗値の総和となる全熱抵抗値Rに対する、TIMAの熱抵抗値RとTIMBの熱抵抗値Rとの和である全熱抵抗値RABの比(RAB/R)は1.40以下である。
比(RAB/R)は、好ましくは0.01~1.00、より好ましくは0.03~0.50、さらに好ましくは0.05~0.10である。
比(RAB/R)がこの範囲にあると、各部材間界面の伝熱性がより向上し易くなり、熱電性能が向上する。
【0015】
<熱伝導性インターフェイス部材A及び前記熱伝導性インターフェイス部材B>
本発明の熱電変換モジュールでは、インプレーン型熱電変換モジュールの上面と放熱部材との間に熱伝導性インターフェイス部材Aを備え、且つインプレーン型熱電変換モジュールの下面に、熱伝導性インターフェイス部材Bを備える。
インプレーン型熱電変換モジュールの上面と放熱部材との間に、熱伝導性インターフェイス部材Aを備えることにより、その間に発生する接触熱抵抗を低減できる。同様に、インプレーン型熱電変換モジュールの下面と、例えば、熱源との間に、熱伝導性インターフェイス部材Bを備えることにより、その間に発生する接触熱抵抗を低減できる。このように、熱伝導性インターフェイス部材A及び前記熱伝導性インターフェイス部材Bを用いることによりインプレーン型熱電変換モジュール内の熱伝導が向上し易くなり、熱電変換モジュールの熱電性能の向上につなげることができる。
【0016】
熱伝導性インターフェイス部材A及び前記熱伝導性インターフェイス部材Bは、それぞれ独立に、樹脂層又は有機層であることが好ましい。
以下、「熱伝導性インターフェイス部材A及び前記熱伝導性インターフェイス部材B」を、単に「熱伝導性インターフェイス部材」ということがある。
【0017】
樹脂層に用いる樹脂材料は、特に限定されないが、電子部品分野等で使用されているものの中から任意の樹脂を適宜選択することができる。
樹脂材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリm-フェニレンイソフタルアミド、ポリp-フェニレンテレフタルアミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂;ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物等のシクロオレフィン系ポリマー;塩化ビニル;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリフェニレンエーテル;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリカーボネート;ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等のポリサルフォン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド;シリコーン樹脂;及びこれらの高分子の二種以上の組合せ;等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れ、放熱性が低下しにくいという観点からポリアミド系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びシリコーン樹脂が好ましい。
【0018】
有機層としては、接着剤層、粘着剤層、ゲル層、グリース層、粘土層等が挙げられる。
この中で、施工性、凹凸追従性の観点から、好ましくは接着剤層、粘着剤層である。
【0019】
接着剤層に用いる接着剤は、特に制限されず、二液硬化性接着剤であってもよく、熱硬化性接着剤であってもよく、湿気硬化性接着剤であってもよく、ホットメルト型接着剤であってもよい。
接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、オレフィン系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0020】
粘着剤層に用いる粘着剤は、特に制限されず、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプ又は非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤が好ましい。
【0021】
熱伝導率を向上させる観点から、樹脂層には、熱伝導性フィラーを充填させてもよい。熱伝導性フィラーは、特に制限はないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化マグネシウム、窒化ホウ素、銅、及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1種類である。これらの熱伝導性フィラーは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱伝導性フィラーは平均粒子径が0.1~200μmが好ましく、1~100μmがより好ましく、5~50μmがさらに好ましく、10~30μmが特に好ましい。なお、平均粒子径は、例えば、コールターカウンター法により測定することができる。
熱伝導性フィラーの含有量は、所望の熱伝導率に応じて適宜調整され、樹脂組成物中、40~99質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましく、50~80質量%が特に好ましい。熱伝導性フィラーの含有量がこの範囲にあれば、放熱特性、耐折性、耐屈曲性が優れ、熱伝導性インターフェイス部材の強度が維持される。
【0022】
熱伝導性インターフェイス部材の厚さは、0.05~1.50mmが好ましく、0.08~1.20mmがより好ましく、0.10~1.00mmがさらに好ましい。熱伝導性インターフェイス部材の厚さがこの範囲であれば、熱伝導性インターフェイス部材の熱抵抗を低く維持でき、発熱源と放熱部材との間に発生する接触熱抵抗を効率的に低減できる。
【0023】
熱伝導性インターフェイス部材の市販品として、例えば、以下が挙げられる。
高熱伝導放熱シート(積水ポリマテック社製、品番:Manion50α、厚み:0.50mm、熱伝導率:17W/(m・K))、放熱シートTIMLIGHT(積水ポリマテック社製、品番:PT-V、厚み:0.50mm、熱伝導率:12W/(m・K))、熱伝導性両面テープ(3M社製、品番:8926、厚み:0.20mm、熱伝導率:1.5W/(m・K))、熱伝導性両面テープ(3M社製、品番:VHR0601、厚み:0.30mm、熱伝導率:0.6W/(m・K))。
【0024】
<放熱部材>
放熱部材としては、発生する熱を伝導して外部に放散させるものであれよく、特に限定されないが、例えば、ヒートシンク、ヒートスプレッダ等が挙げられる。ヒートシンク、ヒートスプレッダの材料としては、例えば、銅、アルミニウム等が挙げられる。また、ヒートスプレッダやヒートシンク以外にも、例えば、放熱器、冷却器、冷却ファン、ヒートパイプ、ベーパーチャンバー、金属カバー、筐体等が挙げられる。ヒートパイプは、例えば、円筒状、略円筒状又は扁平筒状の中空構造体である。
【0025】
(高熱伝導層A及び高熱伝導層B)
熱電素子層に効率的に温度差を付与する観点から、インプレーン型熱電変換モジュールはさらに高熱伝導層A及び高熱伝導層Bを含んでおり、高熱伝導層Aは、インプレーン型熱電変換モジュールのうち熱伝導性インターフェイス部材A側の最外層を構成しており、高熱伝導層Bは、インプレーン型熱電変換モジュールのうち熱伝導性インターフェイス部材B側の最外層を構成していることが好ましい。
【0026】
インプレーン型熱電変換モジュールの各部材間界面の接触熱抵抗を抑制し、伝熱性をより向上する観点から、高熱伝導層Aは、間隔をおいて配置された複数の高熱伝導層aからなり、隣り合う高熱伝導層a同士の間の間隙内に熱伝導性インターフェイス部材Aの一部が埋め込まれることが好ましい。
同様に、高熱伝導層Bは、間隔をおいて配置された複数の高熱伝導層bからなり、隣り合う高熱伝導層b同士の間の間隙内に熱伝導性インターフェイス部材Bの一部が埋め込まれることが好ましい。
【0027】
前記高熱伝導層Aの厚みに対する前記熱伝導性インターフェイス部材Aの一部の埋め込み深さの比Mは、好ましくは0.01~1.00であり、より好ましくは0.10~0.95であり、さらに好ましくは0.60~0.90である。
また、前記高熱伝導層Bの厚みに対する前記熱伝導性インターフェイス部材Bの一部の埋め込み深さの比Nは、好ましくは0.01~1.00であり、より好ましくは0.10~0.95であり、さらに好ましくは0.60~0.90である。
比M及び比Nがこの範囲にあると、各部材間界面の伝熱性がさらに向上し易くなり、熱電性能がさらに向上する。
ここで、「熱伝導性インターフェイス部材Aの一部の埋め込み深さ」とは、例えば、図1において、高熱伝導層a8aの上面と接する熱伝導性インターフェイス部材A10aの一部が、高熱伝導層a8a間に備わる間隙内に一部入り込んだ時の、高熱伝導層a8aの上面を起点とした厚み方向の最大距離を意味する。
同様に、「熱伝導性インターフェイス部材Bの一部の埋め込み深さ」とは、例えば、図1において、高熱伝導層b8bの下面と接する熱伝導性インターフェイス部材B10bの一部が、高熱伝導層b8b間に備わる間隙内に一部入り込んだ時の、高熱伝導層b8bの下面を起点とした厚み方向の最大距離を意味する。
【0028】
本発明に用いる高熱伝導層A及び高熱伝導層Bは、面内方向に配置された熱電素子層間に効率良く温度差を付与することができる。
以下、高熱伝導層A、高熱伝導層a、高熱伝導層B、及び高熱伝導層bを、単に「高熱伝導層」ということがある。
【0029】
本発明に用いる高熱伝導層の配置は、特に限定されないが、用いる熱電変換モジュールの熱電素子層、すなわち、P型熱電素子層とN型熱電素子層の配置及びそれらの形状により、適宜調整する必要がある。
本発明では、P型熱電素子層4及びN型熱電素子層5間を接合する境界面の延長線上を跨ぐように、基板2あるいは被覆層7における熱電素子層6側とは反対側の面に、それぞれ高熱伝導層b8bあるいは高熱伝導層a8aが所定の間隔を空けて繰り返し配置されることが好ましい。また、高熱伝導層a8a及び高熱伝導層b8bは、前記境界面の延長線上を1つのみ跨ぐと共に、図1に示すように厚さ方向の断面で見た場合に高熱伝導層aと高熱伝導層bとの配置が互い違いとなることが好ましい。高熱伝導層a及び高熱伝導層bをこのように配置することにより、熱電素子層6の内部において、基板2の平面及び被覆層7の平面と平行な方向に高温領域と低温領域が連続的に順に形成され、発電効率が向上するものと推定される。
例えば、図1に示したように、基板2の面内方向に交互に隣接(当接)するP型熱電素子層4及びN型熱電素子層5間を接合する電極3を跨ぎ高熱伝導層a8aと高熱伝導層a8bとが、被覆層7及び基板2の面内方向に交互に配置される。
この場合、熱電素子層6の面内方向に、温度差を付与することができる。1対のP型熱電素子層4とN型熱電素子層5とからなる直列方向の全幅に対し、高熱伝導層が位置する割合は、0.30~0.70であることが好ましく、0.40~0.60がより好ましく、0.48~0.52がさらに好ましく、特に好ましくは、0.50である。高熱伝導層が位置する割合が、この範囲にあると、熱を特定の方向に選択的に放熱することができ、熱電素子層6の面内方向に効率よく温度差を付与できる。さらに、上記を満たし、かつ直列方向の1対のP型熱電素子層4とN型熱電素子層5とからなる当接部に対称に配置することが好ましい。
【0030】
本発明に用いる高熱伝導層は、熱電性能の観点から高熱伝導性材料を用い形成される。高熱伝導層を形成する方法としては、特に制限されないが、シート状の高熱伝導性材料を、事前にフォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法が挙げられる。
【0031】
高熱伝導層の材料としては、金属材料、セラミック材料、炭素繊維等の炭素系材料、又は、これらの材料と樹脂との混合物が挙げられる。この中で、高熱伝導層は、金属材料、セラミック材料、金属材料と樹脂との混合物、及びセラミック材料と樹脂との混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、金属材料及びセラミック材料からなる群から選ばれる少なくとも一種であることがさらに好ましい。
金属材料としては、金、銀、銅、ニッケル、スズ、鉄、クロム、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、インジウム、亜鉛、モリブデン、マンガン、チタン、アルミニウム等の単金属、ステンレス、真鍮(黄銅)等のような2種以上の金属を含む合金等が挙げられる。
セラミック材料としては、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
この中で、高熱伝導率、加工性、屈曲性の観点から、金属材料が好ましい。金属材料の中で、好ましくは銅(無酸素銅含む)、ステンレスであり、熱伝導率が高く、加工性がさらに容易であることから、銅がより好ましい。
樹脂としては、前述の樹脂を用いることができる。
ここで、本発明に用いられる高熱伝導率を有する金属材料の代表的なものを以下に示す。
・無酸素銅
無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)とは、一般的に酸化物を含まない99.95%(3N)以上の高純度銅のことを指す。日本工業規格では、無酸素銅(JIS H 3100, C1020)および電子管用無酸素銅(JIS H 3510, C1011)が規定されている。
・ステンレス(JIS)
SUS304:18Cr-8Ni(18%のCrと8%のNiを含む)
SUS316:18Cr-12Ni(18%のCrと12%のNi、モリブデン(Mo)を含む)ステンレス鋼)
【0032】
高熱伝導層の熱伝導率は好ましくは、5~500W/(m・K)であり、より好ましくは、12~450W/(m・K)であり、さらに好ましくは15~420W/(m・K)である。高熱伝導層の熱伝導率が上記の範囲にあると、効率よく温度差を付与することができる。
【0033】
高熱伝導層の厚さは、40~550μmが好ましく、60~530μmがより好ましく、80~510μmがさらに好ましい。高熱伝導層の厚さがこの範囲であれば、熱を特定の方向に選択的に放熱することができ、P型熱電素子層とN型熱電素子層とが、電極を介し面内方向に交互に隣接し直列に配置された熱電素子層の面内方向に、効率よく温度差を付与することができる。
【0034】
〈基板〉
本発明に用いる熱電変換モジュールの基板としては、特に制限されないが、熱電素子層の電気伝導率の低下、熱伝導率の増加に影響を及ぼさないフィルム基板を用いることが好ましい。なかでも、屈曲性に優れ、後述する熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、基板が熱変形することなく、熱電素子層の性能を維持することができ、耐熱性及び寸法安定性が高いという点から、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムが好ましく、さらに、汎用性が高いという点から、ポリイミドフィルムが特に好ましい。
【0035】
前記基板の厚さは、屈曲性、耐熱性及び寸法安定性の観点から、1μm~1000μmが好ましく、10μm~500μmがより好ましく、20μm~100μmがさらに好ましい。
また、上記フィルムは、分解温度が300℃以上であることが好ましい。
【0036】
〈電極層〉
本発明に用いる電極層は、後述する熱電素子層を構成するP型熱電素子層とN型熱電素子層との電気的な接続を行うために設けられる。電極材料としては、金、銀、ニッケル、銅又はこれらの合金等が挙げられる。
前記電極層の厚さは、好ましくは10nm~200μm、より好ましくは30nm~150μm、さらに好ましくは50nm~120μmである。電極層の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり熱電素子層のトータルの電気抵抗値を低く抑えられる。また、電極として十分な強度が得られる。
フィルム基板上に電極を形成する方法としては、フィルム基板上にパターンが形成されていない電極層を設けた後、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法、または、スクリーン印刷法、インクジェット法等により直接電極層のパターンを形成する方法等が挙げられる。
パターンが形成されていない電極層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)等のドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティングや電着法等のウェットプロセス、銀塩法、電解めっき法、無電解めっき法、金属箔の積層等が挙げられ、電極層の材料に応じて適宜選択される。
【0037】
〈熱電素子層〉
本発明に用いる熱電変換モジュールの熱電素子層は、前述したように、該熱電素子層が、P型熱電素子層とN型熱電素子層とを含み、前記P型熱電素子層と前記N型熱電素子層とが面内方向に交互に隣接し直列に配置され、電気的にも直列接続となるように構成される。さらに、P型熱電素子層とN型熱電素子層との接続は、接続の安定性、熱電性能の観点から導電性の高い金属材料等から形成される前述した電極層を介してもよい。
【0038】
本発明に用いる熱電素子層は、基板上に、熱電半導体粒子、耐熱性樹脂、並びに、イオン液体及び無機イオン性化合物の一方又は双方を含む熱電半導体組成物からなる層であることが好ましい。
【0039】
(熱電半導体粒子)
熱電素子層に用いる熱電半導体粒子は、熱電半導体材料を、微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕することが好ましい。
【0040】
本発明に用いるP型熱電素子層及びN型熱電素子層を構成する材料としては、温度差を付与することにより、熱起電力を発生させることができる材料であれば特に制限されず、例えば、P型ビスマステルライド、N型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料;GeTe、PbTe等のテルライド系熱電半導体材料;アンチモン-テルル系熱電半導体材料;ZnSb、ZnSb2、ZnSb等の亜鉛-アンチモン系熱電半導体材料;SiGe等のシリコン-ゲルマニウム系熱電半導体材料;BiSe等のビスマスセレナイド系熱電半導体材料;β―FeSi、CrSi、MnSi1.73、MgSi等のシリサイド系熱電半導体材料;酸化物系熱電半導体材料;FeVAl、FeVAlSi、FeVTiAl等のホイスラー材料、TiS等の硫化物系熱電半導体材料等が用いられる。
【0041】
これらの中でも、本発明に用いる前記熱電半導体材料は、P型ビスマステルライド又はN型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料であることが好ましい。
前記P型ビスマステルライドは、キャリアが正孔で、ゼーベック係数が正値であり、例えば、BiTeSb2-Xで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Xは、好ましくは0<X≦0.8であり、より好ましくは0.4≦X≦0.6である。Xが0より大きく0.8以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、P型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
また、前記N型ビスマステルライドは、キャリアが電子で、ゼーベック係数が負値であり、例えば、BiTe3-YSeで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Yは、好ましくは0≦Y≦3(Y=0の時:BiTe)であり、より好ましくは0<Y≦2.7である。Yが0~3であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、N型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
【0042】
熱電半導体粒子の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは、30~99質量%であり、さらに好ましくは、70~95質量%である。熱電半導体粒子の配合量が、上記範囲内であれば、ゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が大きく、また電気伝導率の低下が抑制され、熱伝導率のみが低下するため高い熱電性能を示すとともに、十分な皮膜強度、屈曲性を有する膜が得られ好ましい。
【0043】
熱電半導体粒子の平均粒径は、好ましくは、10nm~200μm、さらに好ましくは、50nm~10μmである。上記範囲内であれば、均一分散が容易になり、電気伝導率を高くすることができる。
前記熱電半導体材料を粉砕して熱電半導体粒子を得る方法は特に限定されず、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、製粉ミル、ハンマーミル、ペレットミル、ウィリーミル、ローラーミル等の公知の微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕すればよい。
なお、熱電半導体粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析装置(CILAS社製、1064型)にて測定することにより得られ、粒径分布の中央値とした。
【0044】
また、熱電半導体粒子は、アニール処理(以下、「アニール処理A」ということがある。)されたものであることが好ましい。アニール処理Aを行うことにより、熱電半導体粒子は、結晶性が向上し、さらに、熱電半導体粒子の表面酸化膜が除去されるため、熱電変換材料のゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が増大し、熱電性能指数をさらに向上させることができる。アニール処理Aは、特に限定されないが、熱電半導体組成物を調製する前に、熱電半導体粒子に悪影響を及ぼすことがないように、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、同じく水素等の還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行うことが好ましく、不活性ガス及び還元ガスの混合ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。具体的な温度条件は、用いる熱電半導体粒子に依存するが、通常、粒子の融点以下の温度で、かつ100~1500℃で、数分~数十時間行うことが好ましい。
【0045】
(耐熱性樹脂)
本発明に用いる耐熱性樹脂は、熱電半導体粒子間のバインダーとして働き、熱電変換材料の屈曲性を高めるためのものである。該耐熱性樹脂は、特に制限されるものではないが、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理等により熱電半導体粒子を結晶成長させる際に、樹脂としての機械的強度及び熱伝導率等の諸物性が損なわれず維持される耐熱性樹脂を用いる。
前記耐熱性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、エポキシ樹脂、及びこれらの樹脂の化学構造を有する共重合体等が挙げられる。前記耐熱性樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐熱性がより高く、且つ薄膜中の熱電半導体粒子の結晶成長に悪影響を及ぼさないという点から、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、屈曲性に優れるという点からポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましい。前述の基板として、ポリイミドフィルムを用いた場合、該ポリイミドフィルムとの密着性などの点から、耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂がより好ましい。なお、本発明においてポリイミド樹脂とは、ポリイミド及びその前駆体を総称する。
【0046】
前記耐熱性樹脂は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電素子層の屈曲性を維持することができる。
【0047】
また、前記耐熱性樹脂は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電素子層の屈曲性を維持することができる。
【0048】
前記耐熱性樹脂の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.1~40質量%、さらに好ましくは1~20質量%である。前記耐熱性樹脂の配合量が、上記範囲内であれば、高い熱電性能と皮膜強度が両立した膜が得られる。
【0049】
(イオン液体)
本発明に用いるイオン液体は、カチオンとアニオンとを組み合わせてなる溶融塩であり、-50℃以上400℃未満のいずれかの温度領域において液体で存在し得る塩をいう。換言すれば、イオン液体は、融点が-50℃以上400℃未満の範囲にあるイオン性化合物である。イオン液体の融点は、より好ましくは0℃~150℃である。イオン液体は、蒸気圧が極めて低く不揮発性であること、優れた熱安定性及び電気化学安定性を有していること、粘度が低いこと、かつイオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。また、イオン液体は、非プロトン性のイオン構造に基づく高い極性を示し、耐熱性樹脂との相溶性に優れるため、熱電素子層の電気伝導率を均一にすることができる。
【0050】
イオン液体は、公知または市販のものが使用できる。例えば、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、イミダゾリウム等の窒素含有環状カチオン化合物及びそれらの誘導体;テトラアルキルアンモニウム系のアミン系カチオン及びそれらの誘導体;ホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、テトラアルキルホスホニウム等のホスフィン系カチオン及びそれらの誘導体;リチウムカチオン及びその誘導体等のカチオン成分と、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、F(HF)n、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
【0051】
上記のイオン液体の電気伝導率は、好ましくは10-7S/cm以上、より好ましくは10-6S/cm以上である。電気伝導率が上記の範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
【0052】
また、上記のイオン液体は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
【0053】
また、上記のイオン液体は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
【0054】
前記イオン液体の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01~50質量%、さらに好ましくは1.0~20質量%である。前記イオン液体の配合量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下が効果的に抑制され、高い熱電性能を有する膜が得られる。
【0055】
(無機イオン性化合物)
本発明で用いる無機イオン性化合物は、少なくともカチオンとアニオンから構成される化合物である。無機イオン性化合物は室温において固体であり、400~900℃の温度領域のいずれかの温度に融点を有し、イオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体粒子間の電気伝導率の低減を抑制することができる。
【0056】
カチオンとしては、金属カチオンを用いる。
金属カチオンとしては、例えば、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、典型金属カチオン及び遷移金属カチオンが挙げられ、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンがより好ましい。
アルカリ金属カチオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs及びFr等が挙げられる。
アルカリ土類金属カチオンとしては、例えば、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+等が挙げられる。
【0057】
アニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO3-、NO2-、ClO、ClO2-、ClO3-、ClO4-、CrO 2-、HSO 、SCN、BF 、PF 等が挙げられる。
【0058】
無機イオン性化合物は、公知または市販のものが使用できる。例えば、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、又はリチウムカチオン等のカチオン成分と、Cl、AlCl 、AlCl 、ClO 等の塩化物イオン、Br等の臭化物イオン、I等のヨウ化物イオン、BF 、PF 等のフッ化物イオン、F(HF) 等のハロゲン化物アニオン、NO 、OH、CN等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
【0059】
上記の無機イオン性化合物の中で、高温安定性、熱電半導体粒子及び樹脂との相溶性、熱電半導体粒子間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、無機イオン性化合物のカチオン成分が、カリウム、ナトリウム、及びリチウムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、無機イオン性化合物のアニオン成分が、ハロゲン化物アニオンを含むことが好ましく、Cl、Br、及びIから選ばれる少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
【0060】
上記の無機イオン性化合物は、電気伝導率が10-7S/cm以上であることが好ましく、10-6S/cm以上であることがより好ましい。電気伝導率が上記範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
【0061】
また、上記の無機イオン性化合物は、分解温度が400℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
【0062】
また、上記の無機イオン性化合物は、熱重量測定(TG)による400℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
【0063】
前記無機イオン性化合物の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01~50質量%、さらに好ましくは1.0~10質量%である。前記無機イオン性化合物の配合量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下を効果的に抑制でき、結果として熱電性能が向上した膜が得られる。
なお、無機イオン性化合物とイオン液体とを併用する場合においては、前記熱電半導体組成物中における、無機イオン性化合物及びイオン液体の含有量の総量は、好ましくは0.01~50質量%、さらに好ましくは1.0~10質量%である。
【0064】
P型熱電素子層及びN型熱電素子層からなる熱電素子層の厚さは、特に限定されるものではなく、同じ厚さでも、異なる厚さ(接続部に段差が生じる)でもよい。屈曲性、材料コストの観点から、P型熱電素子及びN型熱電素子の厚さは、0.1μm~300μmが好ましく、1μm~140μmがさらに好ましく、30μm~100μmが特に好ましい。
【0065】
本発明に用いる熱電素子層は、前記基板の一方の面上に前記熱電半導体組成物から形成されることが好ましい。前記熱電半導体組成物を、前記基板上に塗布する方法としては、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコート、バーコート、ドクターブレード等の公知の方法が挙げられ、特に制限されない。塗膜をパターン状に形成する場合は、所望のパターンを有するスクリーン版を用いて簡便にパターン形成が可能なスクリーン印刷、スロットダイコート等が好ましく用いられる。
次いで、得られた塗膜を乾燥することにより、薄膜が形成されるが、乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80~150℃であり、加熱時間は、加熱方法により異なるが、通常、数秒~数十分である。
また、熱電半導体組成物の調製において溶媒を使用した場合、加熱温度は、使用した溶媒を乾燥できる温度範囲であれば、特に制限はない。
薄膜形成後、さらにアニール処理(以下、アニール処理Bということがある。)を行うことが好ましい。該アニール処理Bを行うことで、熱電性能を安定化させるとともに、薄膜中の熱電半導体粒子を結晶成長させることができ、熱電性能をさらに向上させることができる。アニール処理Bは、特に限定されないが、通常、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行われ、用いる樹脂及びイオン液体等の耐熱温度等に依存するが、100~500℃で、数分~数十時間行われる。
【0066】
〈絶縁層〉
本発明の熱電変換モジュールには、絶縁層を含んでいてもよい。
絶縁層としては、特に限定されないが、好ましくは、樹脂、又は無機材料であり、屈曲性の観点からは、樹脂がより好ましい。
【0067】
樹脂としては、特に制限されないが、樹脂フィルム等が挙げられる。
無機材料としては、特に限定されず、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化珪素等が挙げられる。この中で、コスト、安定性、入手の容易さの観点から、酸化珪素、酸化アルミニウムが好ましい。
前記絶縁層の厚さは、好ましくは1~150μm、特に好ましくは5~100μmである。
絶縁層の形成は、公知の方法で行うことができ、例えば、前記熱電素子層の面に直接形成してもよいし、接着剤層等を介し貼り合せてもよい。また、予め剥離シート上に形成した絶縁層を、前記熱電素子層に貼り合わせて、絶縁層を熱電素子層に転写させて形成してもよい。また、絶縁層は、2種以上積層してよいし、被覆層を介在させてもよい。
【0068】
〈被覆層〉
本発明の熱電変換モジュールには、被覆層を含んでいてもよい。
被覆層として、特に制限されないが、封止層、ガスバリア層等が挙げられる。
【0069】
封止層は、熱電素子層上に直接、または基板を介して積層されていてもよいし、後述するガスバリア層、絶縁層を介し積層されていてもよい。
本発明に用いる封止層を構成する主成分は、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はアクリル系樹脂であることが好ましい。
また、封止層が粘接着性を有する封止剤(以下、「封止剤組成物」ということがある。)からなることが好ましい。本明細書において、粘接着性を有するとは、封止剤が、粘着性、接着性、貼り付ける常態において粘着性を有し、その後エネルギーの付加により接着し硬化することを意味する。封止層を用いることで容易に熱電素子層に積層することができる。また、前記絶縁層、前記高熱伝導層、後述するガスバリア層、等への貼付も容易となる。
封止層は、1層であっても2層以上積層されていてもよい。また、2層以上積層される場合は、それらが同じであっても異なっていてもよい。
封止層の厚さは、好ましくは0.5~300μm、より好ましくは10~100μm、さらに好ましくは30~80μmである。この範囲であれば、前記熱電変換モジュールの熱電素子層の面上に積層した場合、水蒸気透過率を抑制することができ、熱電変換モジュールの耐久性が向上する。
さらに、前述したように、熱電素子層と、封止層とが直接接することが好ましい。熱電素子層と、封止層とが直接接することにより、熱電素子層と封止層との間に大気中の水蒸気が直接存在することがないため、熱電素子層の水蒸気への侵入が抑制され、封止層の封止性が向上する。
封止層の形成は、公知の方法で行うことができ、例えば、前記熱電素子層の面に直接及び/又は基板に形成してもよいし、予め剥離シート上に形成した封止層を、前記熱電素子層に貼り合わせて、封止層を熱電素子層に転写させて形成してもよい。また、封止層は、2種以上積層してよいし、絶縁層、他の被覆層を介してもよい。
【0070】
ガスバリア層は、熱電素子層上に直接積層されていてもよいし、基材上に後述する主成分を含む層から構成され、そのいずれかの面が熱電素子層上に直接積層されてもよいし、封止層、絶縁層を介し積層されていてもよい。
本発明に用いるガスバリア層は、金属、無機化合物、及び高分子化合物からなる群から選ばれる一種以上を主成分とする。ガスバリア層によって、熱電変換モジュールの耐久性を向上させることができる。
金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、金、銀、銅及び錫等が挙げられ、これらを蒸着膜として用いることが好ましい。
無機化合物としては、無機酸化物(MO)、無機窒化物(MN)、無機炭化物(MC)、無機酸化炭化物(MO)、無機窒化炭化物(MN)、無機酸化窒化物(MO)、及び無機酸化窒化炭化物(MO)等が挙げられる。ここで、x、y、zは、各化合物の組成比を表す。前記Mとしては、珪素、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、カルシウム、ジルコニウム、チタン、ホウ素、ハフニウム、又はバリウム等の金属元素が挙げられる。
高分子化合物としては、ポリオルガノシロキサン、ポリシラザン系化合物等の珪素含有高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。これらの高分子化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
金属、無機化合物及び高分子化合物を含む層の厚さは、用いる化合物等で異なるが、通常、0.01~50μm、好ましくは0.03~10μmである。金属、無機化合物及び樹脂を含む厚さが、この範囲であれば、水蒸気透過率を効果的に抑制できる。
【0071】
前記金属、無機化合物及び高分子化合物の、基材を有するガスバリア層の厚さは、10~80μmであることが好ましく、より好ましくは、15~50μmである。ガスバリア層の厚さがこの範囲にあると、優れたガスバリア性が得られるとともに、屈曲性と、被膜強度とを両立させることができる。
ガスバリア層は、1層であっても2層以上積層されていてもよい。また、2層以上積層される場合は、それらが同じであっても異なっていてもよい。
ガスバリア層の形成は、公知の方法で行うことができ、前記熱電素子層の面に直接及び/又は基板に形成してもよいし、予め剥離シート上に形成したガスバリア層を、前記熱電素子層に貼り合わせて、ガスバリア層を熱電素子層に転写させて形成してもよいし、ガスバリア層を有する基材を、熱電素子層に対向させ積層してもよい。また、ガスバリア層は、2種以上積層してもよく、絶縁層、他の被覆層を介してもよい。
【実施例0072】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0073】
実施例、比較例で作製した熱電変換モジュールの起電力、TIMの埋め込み量の評価は以下の方法で行った。
【0074】
(a)起電力評価(出力評価)
図3は、本発明の熱電変換モジュールの起電力評価構成の一例を示す断面図である。
熱電変換モジュール起電力評価構成31において、実施例及び比較例で得られたインプレーン型熱電変換モジュール32上の一方の熱伝導性インターフェイス部材A33aの面上に放熱部材35[最上インクス社製、フォールディングフィンOPFF]を設置し、また、他方の熱伝導性インターフェイス部材B33bの面に温度コントローラー(熱源)34(VICS社製、品名:ペルチェ温度コントローラーセットVTH1.8-70S)を設置し、温度コントローラー(熱源)34を60℃に設定し、外部から温度差を付与した。なお、各部材の密着性を確保するため、放熱部材35上に断熱材36[光社製、ポリカ中空ボード 品番:KTP4534W]を介し、荷重部材37[村上衡器社製、精密分銅 ステンレス鋼製、27gf/cm]を用い荷重を加えた。
温度差を付与した状態で、ディジタルハイテスタ(日置電機社製、型名:3801-50)を用いて取り出し電極間の起電力を測定した。
(b)熱抵抗値評価
実施例及び比較例で用いたTIMの熱抵抗値(K/W)は、各TIMの熱伝導率[W/(m・K)]、厚み(m)、有効面積[0.07(m)×0.065(m)=4.5×10-3(m2)]を用い下記式(1)から算出した。
TIMの熱抵抗値=TIMの厚み/(TIMの熱伝導率×有効面積) (1)
同様に、インプレーン型熱電変換モジュールを構成する下記層は、各層の熱伝導率、厚み、有効面積を用い算出した。
・ポリイミドフィルム基板:熱伝導率 0.29[W/(m・K)];厚み 5.0×10-5(m);有効面積 4.5×10-3(m2
・電極層:熱伝導率 398[W/(m・K)];厚み 1.2×10-5(m);有効面積 2.48×10-3(m2
・熱電素子層:熱伝導率 0.5[W/(m・K)];厚み 8.0×10-5(m);有効面積 1.86×10-3(m2
・粘着層:熱伝導率 0.17[W/(m・K)];厚み 5.0×10-6(m);有効面積 4.5×10-3(m2
・被覆層(Al/PET封止層):熱伝導率 0.3[W/(m・K)];厚み 1.2×10-5(m);有効面積 4.5×10-3(m2
・高熱伝導層:熱伝導率 398[W/(m・K)];厚み 2.0×10-4(m);有効面積 2.28×10-3(m2
上記より、熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値R(mK/W)、熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値R(mK/W)の和である全熱抵抗値RAB(mK/W)を、また、インプレーン型熱電変換モジュールの全熱抵抗値R(mK/W)を算出し、さらに、Rに対するRABの比(RAB/R)を算出した。
(c)埋め込み性評価
高熱伝導層間に埋め込まれた熱伝導性インターフェイス部材TIMの埋め込み深さは、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、型名:VHX―5000)を用いて、断面観察にて測定し、高熱伝導層の厚みに対する、高熱伝導層間に埋め込まれた熱伝導性インターフェイス部材TIMの埋め込み深さの比(埋め込み性)を算出した。
【0075】
(実施例1)
(熱電半導体粒子の作製方法)
ビスマス-テルル系熱電半導体材料であるp型ビスマステルライドBi0.4TeSb1.6(高純度化学研究所製、最大粒径:90μm以下)を、遊星型ボールミル(フリッチュジャパン社製、Premium line P-7)を使用し、粉砕することで、平均粒径2.0μmの熱電半導体粒子T1を作製した。
また、ビスマス-テルル系熱電半導体材料であるn型ビスマステルライドBiTe(高純度化学研究所製、最大粒径:90μm以下)を上記と同様に粉砕し、平均粒径4.0μmの熱電半導体粒子T2を作製した。
熱電半導体粒子T1及び熱電半導体粒子T2のそれぞれの平均粒径は、レーザー回折式粒度分析装置(Malvern社製、マスターサイザー3000)により粒度分布測定を行うことにより得た。
【0076】
(熱電半導体組成物の作製)
塗工液(P)
前記P型ビスマステルライドBi0.4TeSb1.6粒子75.7質量部、バインダー樹脂として、ポリアミドイミド2.41質量部、イオン液体として、N-オクチルピリジニウムブロミド8.8質量部、及び溶媒として、N-メチルピロリドン13.09質量部を混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液(P)を調製した。
塗工液(N)
得られたN型ビスマステルライドBiTe粒子82.3質量部、バインダー樹脂として、ポリアミドイミド2.51質量部、イオン液体として、N-オクチルピリジニウムブロミド4.5質量部、及び溶媒として、N-メチルピロリドン10.69質量部を混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液(N)を調製した。
【0077】
(電極の形成及び配置)
図2は実施例に用いた熱電素子層の構成を示す平面図であり、(a)はフィルム基板上に形成した電極の配置の概念図を示し、(b)は電極上に形成したP型及びN型熱電素子層の配置の概念図を示す。
銅箔を添付したポリイミドフィルム基板(宇部エクシモ株式会社製、製品名:ユピセルN、ポリイミド基板厚み:50μm、銅箔:9μm)を準備し、ポリイミドフィルム基板22上の銅箔を、塩化第二鉄溶液を用いウェットエッチングし、後述するP型熱電素子層24、及びN型熱電素子層25の配列に対応した配置の銅箔でなる電極パターン(単層)23Pを形成した。主電極23aは、後述する熱電素子層26の配置において、隣接するP型熱電素子層24、及びN型熱電素子層25の各境界を跨ぐように、550μm×800μmのサイズで形成した。ここで、23bは起電力取り出し用電極部(サイズ:3mm×5mm)、23cは各列の熱電素子層26を連結する連結用電極部(サイズ:550μm×2.4mm)を示す。
パターニングされた銅箔上に、無電解めっきによりニッケル層(厚さ:3μm)を積層し、次いでニッケル層上に無電解めっきにより金層(厚さ:40nm)を積層することで、電極パターン(積層)23Qを形成した。
【0078】
(熱電素子層の製造)
上記で調製した塗工液(N)を、板厚が80μm、開口が1mm×0.8mmの印刷版を用いて、スクリーン印刷法により前記ポリイミドフィルム基板22上の電極パターン(積層)23Q上に塗布し、温度125℃で、10分間大気下で乾燥した。次いで、同様に、上記で調製した塗工液(P)を、板厚が30μm、開口が1mm×0.8mmの印刷版を用いて、前記ポリイミドフィルム基板22上の電極パターン(積層)23Q上に塗布し、温度125℃で、10分間大気下で乾燥した。
さらに、得られたそれぞれの薄膜に対し、水素とアルゴンの混合ガス(水素:アルゴン=3体積%:97体積%)雰囲気下で、加温速度5K/minで昇温し、310℃で30分間保持し、薄膜形成後のアニール処理を行うことにより、熱電半導体材料の粒子を結晶成長させ、P型熱電素子層24及びN型熱電素子層25を作製した。得られたN型熱電素子層の厚さは80μmであり、P型熱電素子層の厚さは90μmであった。
【0079】
(熱電素子層の配置)
得られた1mm×0.8mm×80μm厚のP型熱電素子層24と1mm×0.8mm×90μm厚のN型熱電素子層25とは交互に配置され、長さ0.8mmの辺で互いに交互に接するように隣接して1つの対となっている。熱電素子層26において、P型熱電素子層24及びN型熱電素子層25は、408対、形成され、ポリイミドフィルム基板22の面内に、電気的に直列になるように設けられ、熱電素子層26を構成しており、P型熱電素子層24及びN型熱電素子層25とは主電極23aにより、電気的に接続されている。熱電素子層26は折り返し構造を有している。具体的には、P型熱電素子層24とN型熱電素子層25とを17対、連結したものを一列として、列同士を連結する連結用電極部23cを介して24列設けた。
なお、図3は、電極と熱電素子層の配置を概念的に示したものであり、実際に作製した電極及び熱電素子層とは寸法、個数等が異なる。
【0080】
(被覆層及び高熱伝導層の配置)
絶縁層としてアルミ蒸着PETフィルム(BAX社製、厚さ:12μm)を利用し、その両面に粘着層(ソマール社製、商品名:EP-0002EF-01MB、厚さ:25μm)をラミネートした構成の被覆層を作製した。ラミネートは、80℃の温度で行った。
作製した熱電素子層付き基板の上面(熱電素子層の表面)には上記の被覆層を介して、下面(基板における熱電素子層が設けられているのとは逆側の面)には粘着層(ソマール社製、商品名:EP-0002EF-01MB、厚さ:25μm)の単層からなる被覆層を介して、断続的に高熱伝導性材料(銅箔)からなる高熱伝導層[C1020、厚さ:200μm、幅:1mm、長さ:100mm、間隔:1mm、熱伝導率:398(W/(m・K))を、P型熱電素子層とN型熱電素子層とが隣接する部位の上部及び下部に互い違いになるように配置した。この際、熱電素子層付き基板の上面に設けた被覆層は、アルミ蒸着PETフィルムのアルミ蒸着形成面が、熱電素子層から遠位になるように配置した。熱電素子層への被覆層のラミネート及び基板への粘着層のラミネートは真空条件下、80℃の温度、0.2MPaの圧力で10秒間加圧して行った。被覆層及び粘着層への高熱伝導層のラミネートは真空条件下、80℃の温度で行った。
その後、150℃の環境下に30分間、熱電変換モジュールを静置し、粘着層を硬化させ、インプレーン型熱電変換モジュールを得た。
【0081】
(TIMの配置)
作製したインプレーン型熱電変換モジュールの上下面にRAB/Rが0.08を満たすTIM[積水ポリマテック社製、品番:Manion50α、厚み:0.50mm、熱伝導率:17W/(m・K)]を設置し、上述した(a)起電力評価(出力評価)に基づき、得られた熱電変換モジュールの取り出し電極間の起電力を測定した。
【0082】
(実施例2)
実施例1において、RAB/Rが0.12を満たすTIM[積水ポリマテック社製、品番:PT-V、厚み:0.50mm、熱伝導率:12W/(m・K)]を設置した以外は、実施例1と同様に取り出し電極間の起電力を測定した。
【0083】
(実施例3)
実施例1において、RAB/Rが0.38を満たすTIM[3M社製、品番:8926、厚み:0.20mm、熱伝導率:1.5W/(m・K)]を設置した以外は、実施例1と同様に取り出し電極間の起電力を測定した。
【0084】
(比較例1)
実施例1において、インプレーン型熱電変換モジュールの上下面にTIMを設置しない以外は、実施例1と同様に取り出し電極間の起電力を測定した。
【0085】
(比較例2)
実施例1において、RAB/Rが1.44を満たすTIM[3M社製、品番:VHR0601、厚み:0.30mm、熱伝導率:0.6W/(m・K)]を設置した以外は、実施例1と同様に取り出し電極間の起電力を測定した。
【0086】
実施例1~3及び比較例1~2で得られた熱電変換モジュールにおけるTIMの埋め込み性、及び起電力の評価結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
埋め込み性が高く、Rに対するRABの比(RAB/R)が本発明の規定を満たす実施例1~3の熱電変換モジュールから得られる起電力は、埋め込み性が低く、Rに対するRABの比(RAB/R)が本発明の規定を満たさない比較例1~2の熱電変換モジュールから得られる起電力と比べ、高くなり、熱電性能が向上していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の熱電変換モジュールによれば、起電力が向上された熱電変換モジュールが得られることから、例えば、工場や廃棄物燃焼炉、セメント燃焼炉等の各種燃焼炉からの排熱、自動車の燃焼ガス排熱及び電子機器の排熱を電気に変換する発電用途に適用することが考えられる。冷却用途としては、エレクトロニクス機器の分野において、例えば、スマートフォン、各種コンピューター等に用いられるCPU(Central Processing Unit)、また、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサー、さらに、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、受光素子等の各種センサーの温度制御等に適用することが考えられる。
【符号の説明】
【0090】
1:熱電変換モジュール
2:基板
3:電極
4:P型熱電素子層
5:N型熱電素子層
6:熱電素子層
7:被覆層
8A:高熱伝導層A
8B:高熱伝導層B
8a:高熱伝導層a
8b:高熱伝導層b
9:インプレーン型熱電変換モジュール
10a:熱伝導性インターフェイス部材A
10b:熱伝導性インターフェイス部材B
11:放熱部材
22:ポリイミドフィルム基板
23P:電極パターン(単層)
23Q:電極パターン(積層)
23a:主電極
23b:起電力取り出し用電極部
23c:連結用電極部
24:P型熱電素子層
25:N型熱電素子層
26:熱電素子層
31:熱電変換モジュール起電力評価構成
32:インプレーン型熱電変換モジュール
33a:熱伝導性インターフェイス部材A
33b:熱伝導性インターフェイス部材B
34:温度コントローラー(熱源)
35:放熱部材
36:断熱部材
37:荷重部材
図1
図2
図3