(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146618
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ヘッドクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B41J2/165 201
B41J2/165 207
B41J2/165 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059638
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000161057
【氏名又は名称】株式会社ミヤコシ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健夫
(72)【発明者】
【氏名】松崎 祐也
(72)【発明者】
【氏名】内山 諒
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EC23
2C056EC53
2C056EC54
2C056FA13
2C056JB04
2C056JB09
2C056JB15
2C056JC23
2C056JC25
2C056KB03
2C056KB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インクジェット印字装置におけるパージ動作及びワイピング動作において、インクの一部が固形化することを防止することができるヘッドクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】インクジェット印字装置100が、複数のヘッド1を有するヘッド部10と、ヘッド1のノズル面に対するワイピング動作に用いられるワイピング手段30と、パージ動作及びワイピング動作を制御する制御部7とを備え、パージ動作が、該パージ動作を実行する予定のヘッド1のノズルからインクを強制的に排出させる動作であり、ワイピング動作が、パージ動作を完了したヘッド1のノズル面に付着したインクをワイピング手段で拭き取る動作であり、制御部7が、パージ動作及びワイピング動作からなるクリーニング動作を、ヘッド1毎に順次実行するヘッドクリーニング方法である。
【選択図】
図1(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される印字媒体に印字を施すためのインクジェット印字装置のヘッドクリーニング方法であって、
前記インクジェット印字装置が、複数のヘッドを有するヘッド部と、前記ヘッドのノズル面に対するワイピング動作に用いられるワイピング手段と、パージ動作及びワイピング動作を制御する制御部とを備え、
前記パージ動作が、該パージ動作を実行する予定の前記ヘッドのノズルからインクを強制的に排出させる動作であり、
前記ワイピング動作が、前記パージ動作を完了した前記ヘッドのノズル面に付着したインクを前記ワイピング手段で拭き取る動作であり、
前記制御部が、前記パージ動作及び前記ワイピング動作からなるクリーニング動作を、前記ヘッド毎に順次実行するヘッドクリーニング方法。
【請求項2】
前記インクジェット印字装置が、複数のワイピング手段を有し、
前記ヘッド部が、前記印字媒体の幅方向に前記ヘッドが直列に複数並んだヘッド列を、前記印字媒体の搬送方向に複数有し、
前記ワイピング手段が、それぞれ、前記印字媒体の幅方向において同一ライン上にある前記ヘッド列を担当するものである請求項1記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項3】
前記ヘッド列のうち、隣合う上流側ヘッド列及び下流側ヘッド列において、互いの前記ヘッドの配置位置が前記印字媒体の幅方向において一致する場合、
前記上流側ヘッド列を担当するワイピング手段と、前記下流側ヘッド列を担当するワイピング手段とが一体となっており、
前記制御部が、前記印字媒体の幅方向において配置位置が一致するヘッド毎に同時に前記パージ動作を実行し、同時に前記ワイピング動作を実行する請求項2記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項4】
前記制御部が、前記クリーニング動作を、前記ワイピング手段に近い側の前記ヘッドから順次実行する請求項2又は3に記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項5】
前記ワイピング手段が、前記インクジェット印字装置に取り付けられたブレードであり、
前記ワイピング動作が、前記ブレードの先端を前記ノズル面に当接させ、前記ヘッド部を移動させることにより、前記ノズル面に付着したインクを前記ブレードで拭き取る動作である請求項1記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項6】
前記ヘッド部が、前記ヘッド毎に設けられた電磁弁を介して、全ての前記ヘッドにインクを分配して供給するための分配タンクと、該分配タンク内の圧力を制御するための圧力制御部と、を更に有し、
前記パージ動作が、全ての前記電磁弁を閉鎖した状態で、前記圧力制御部により前記分配タンク内を正圧とし、前記パージ動作を実行する予定の前記ヘッドに設けられた前記電磁弁のみを開放することにより、該ヘッドのノズルからインクを強制的に排出させる動作である請求項1記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項7】
前記パージ動作が、全ての前記電磁弁を開放した状態で、前記圧力制御部により前記分配タンク内を負圧とした後、全ての前記電磁弁を閉鎖し、前記圧力制御部により前記分配タンク内を加圧して正圧とし、前記パージ動作を実行する予定の前記ヘッドに設けられた前記電磁弁のみを開放することにより、該ヘッドのノズルからインクを強制的に排出させる動作である請求項6記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項8】
前記ヘッド部が、前記ヘッド毎に設けられた回収用電磁弁を介して、全ての前記ヘッドからインクを回収するための回収用分配タンクと、前記分配タンクとの間でインクを循環させ、前記回収用分配タンクからインクを回収するためのインクタンクとを更に有し、
前記圧力制御部が、前記分配タンク及び前記回収用分配タンク内の圧力を制御するものであり、
前記パージ動作が、全ての前記回収用電磁弁を閉鎖した状態で実行される請求項6記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項9】
前記分配タンク及び該分配タンクに接続された前記ヘッドが、色毎に設けられており、
前記インクジェット印字装置が複数の色のインクで印字可能となっている請求項6~8のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項10】
前記インクジェット印字装置が、前記ワイピング手段を洗浄するための洗浄装置を更に備え、
前記制御部が、洗浄動作を更に制御するものであり、
前記洗浄動作が、前記ワイピング動作の後、且つ、前記パージ動作の前に、前記ワイピング手段に付着したインクを前記洗浄装置で洗浄する動作である請求項1記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項11】
前記洗浄装置が、洗浄液を吹き付け可能な洗浄液付与部と、空気を吹き付け可能な空気付与部とを有し、
前記洗浄動作が、前記ワイピング手段に付着したインクを前記洗浄液付与部からの前記洗浄液の吹き付けにより洗浄した後、前記空気付与部からの前記空気の吹き付けにより前記洗浄液を除去する動作である請求項10記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項12】
前記インクジェット印字装置が、前記印字媒体の搬送方向とは直交する方向に印字位置及びパージ位置を有し、前記ヘッド部を、前記印字位置及び前記パージ位置の間で往復移動させるための直動機構を更に備え、
前記印字位置が、印字が実行される前記印字媒体の上方の位置であり、
前記パージ位置が、前記パージ動作が実行される前記印字媒体の上方から一方側に外れた位置であり、
前記ワイピング手段が、前記印字位置と前記パージ位置との間に配置されている請求項1記載のヘッドクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印字装置のヘッドをクリーニングするためのヘッドクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印字装置は、搬送される印字媒体に、ヘッドに設けられた複数のノズルからインクを吹き付けて印字を施す装置である。
ところで、インクジェット印字装置においては、ノズルにおけるインクの乾燥やノズルの口部への浮遊塵の付着等に起因して、吐出不良が生じるという問題がある。
なお、仮に、ノズルの吐出不良が発生した状態で印字を継続すると、印字されたデザインに深刻な欠陥をもたらすことになる。
【0003】
これに対し、インクジェット印字装置においては、ノズルの吐出不良が発生した場合だけでなく、印字時に吐出不良が発生することを未然に防ぐため、適時に、いわゆるパージが行われている。
また、パージにより、ノズル面に付着したインクを除去するために、いわゆるワイピングが行われている。
【0004】
具体例としては、例えば、メンテナンス領域に、ラインヘッドをパージするパージ装置が設けられ、印字領域とメンテナンス領域の間に、ブレードとブレード支持筒と昇降装置とからなるワイピング装置が設けられたインクジェット記録装置(インクジェット印字装置)が知られている。かかるインクジェット記録装置においては、ラインヘッドの各ノズルヘッドのヘッド底面の印字幅方向に沿って相対移動するブレードにてワイピングするようにしたワイピング方法が行われる(例えば、特許文献1参照)。
また、インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドのノズルからインクを強制的に排出させるパージ手段と、インクジェットヘッドのノズルが開口するノズル面をワイプするワイパと、パージ手段によりノズルからインクを排出させてノズル面にインクを付着させ、ワイパでノズル面をワイプするクリーニング動作を実行する制御手段とを備え、制御手段は、クリーニング動作間に行われた印刷動作で使用された印刷媒体の種類に基づき、パージ手段によりノズルから排出させるインク量を調整するインクジェット印刷装置(インクジェット印字装置)が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-35563号公報
【特許文献2】特開2017-65088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び2に記載のインクジェット印字装置を含む従来のインクジェット印字装置においては、クリーニングを、極力、短時間で完了させるため、通常、ヘッドのノズル全体に対してパージを行った後、ワイピングを行っている。
ところが、インクジェット印字装置がヘッドを複数有する場合、ヘッド毎にワイピングが行われるため、パージを行った時点からワイピングされるまでの時間がヘッド毎に異なることになる。
すなわち、パージにより溢れ出たインクがノズル面に付着し、インクが暴露した状態となっている暴露時間がヘッド毎に異なるということになる。
そうすると、暴露時間が長いヘッドでは、インクの乾燥がより進み、インクの一部が固形化するという問題が生じる。特に、この問題は、インクが、白インク、黒インク、磁気インク等の乾燥により固形化し易いものである場合、より発生し易い。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、インクジェット印字装置におけるパージ動作及びワイピング動作において、インクの一部が固形化することを防止することができるヘッドクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、インクの固形化が生じ易いヘッドの位置から推測するに、パージ動作及びワイピング動作において、インクが暴露した状態となっている暴露時間の長期化がインクの固形化に影響するのではないかと考えた。そして、各ヘッドにおけるインクの暴露時間を極力短くするため、制御部が、パージ動作及びワイピング動作からなるクリーニング動作を、ヘッド毎に順次実行するように制御することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、搬送される印字媒体に印字を施すためのインクジェット印字装置のヘッドクリーニング方法であって、インクジェット印字装置が、複数のヘッドを有するヘッド部と、ヘッドのノズル面に対するワイピング動作に用いられるワイピング手段と、パージ動作及びワイピング動作を制御する制御部とを備え、パージ動作が、該パージ動作を実行する予定のヘッドのノズルからインクを強制的に排出させる動作であり、ワイピング動作が、パージ動作を完了したヘッドのノズル面に付着したインクをワイピング手段で拭き取る動作であり、制御部が、パージ動作及びワイピング動作からなるクリーニング動作を、ヘッド毎に順次実行するヘッドクリーニング方法である。
【0010】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、インクジェット印字装置が、複数のワイピング手段を有し、ヘッド部が、印字媒体の幅方向にヘッドが直列に複数並んだヘッド列を、印字媒体の搬送方向に複数有し、ワイピング手段が、それぞれ、印字媒体の幅方向において同一ライン上にあるヘッド列を担当するものであることが好ましい。
【0011】
また、ヘッド列のうち、隣合う上流側ヘッド列及び下流側ヘッド列において、互いのヘッドの配置位置が印字媒体の幅方向において一致する場合、上流側ヘッド列を担当するワイピング手段と、下流側ヘッド列を担当するワイピング手段とが一体となっており、制御部が、印字媒体の幅方向において配置位置が一致するヘッド毎に同時にパージ動作を実行し、同時にワイピング動作を実行することが好ましい。
【0012】
本発明のヘッドクリーニング方法は、制御部が、クリーニング動作を、ワイピング手段に近い側のヘッドから順次実行することが好ましい。
【0013】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、ワイピング手段が、インクジェット印字装置に取り付けられたブレードであり、ワイピング動作が、ブレードの先端をノズル面に当接させ、ヘッド部を移動させることにより、ノズル面に付着したインクをブレードで拭き取る動作であることが好ましい。
【0014】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、ヘッド部が、ヘッド毎に設けられた電磁弁を介して、全てのヘッドにインクを分配して供給するための分配タンクと、該分配タンク内の圧力を制御するための圧力制御部と、を更に有し、パージ動作が、全ての電磁弁を閉鎖した状態で、圧力制御部により分配タンク内を正圧とし、パージ動作を実行する予定のヘッドに設けられた電磁弁のみを開放することにより、該ヘッドのノズルからインクを強制的に排出させる動作であることが好ましい。
【0015】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、パージ動作が、全ての電磁弁を開放した状態で、圧力制御部により分配タンク内を負圧とした後、全ての電磁弁を閉鎖し、圧力制御部により分配タンク内を加圧して正圧とし、パージ動作を実行する予定のヘッドに設けられた電磁弁のみを開放することにより、該ヘッドのノズルからインクを強制的に排出させる動作であることが好ましい。
【0016】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、ヘッド部が、ヘッド毎に設けられた回収用電磁弁を介して、全てのヘッドからインクを回収するための回収用分配タンクと、分配タンクとの間でインクを循環させ、回収用分配タンクからインクを回収するためのインクタンクとを更に有し、圧力制御部が、分配タンク及び回収用分配タンク内の圧力を制御するものであり、パージ動作が、全ての回収用電磁弁を閉鎖した状態で実行されることが好ましい。
【0017】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、分配タンク及び該分配タンクに接続されたヘッドが、色毎に設けられており、インクジェット印字装置が複数の色のインクで印字可能となっていることが好ましい。
【0018】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、インクジェット印字装置が、ワイピング手段を洗浄するための洗浄装置を更に備え、制御部が、洗浄動作を更に制御するものであり、洗浄動作が、ワイピング動作の後、且つ、パージ動作の前に、ワイピング手段に付着したインクを洗浄装置で洗浄する動作であることが好ましい。
【0019】
また、この場合、洗浄装置が、洗浄液を吹き付け可能な洗浄液付与部と、空気を吹き付け可能な空気付与部とを有し、洗浄動作が、ワイピング手段に付着したインクを洗浄液付与部からの洗浄液の吹き付けにより洗浄した後、空気付与部からの空気の吹き付けにより洗浄液を除去する動作であることが好ましい。
【0020】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、インクジェット印字装置が、印字媒体の搬送方向とは直交する方向に印字位置及びパージ位置を有し、ヘッド部を、印字位置及びパージ位置の間で往復移動させるための直動機構を更に備え、印字位置が、印字動作が実行される印字媒体の上方の位置であり、パージ位置が、パージ動作が実行される印字媒体の上方から一方側に外れた位置であり、ワイピング手段が、印字位置とパージ位置との間に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、制御部により、パージ動作及びワイピング動作からなるクリーニング動作が実行されるので、ノズルのクリーニングを行うことができる。
これにより、ノズルの吐出不良が発生した場合には、これを解消することができる。
また、印字時に吐出不良が発生することを未然に防ぐことができる。
【0022】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、制御部が、クリーニング動作を、ヘッド毎に順次実行するように制御するので、各ヘッドに対してパージ動作を実行した後、速やかにワイピング動作を実行することになる。
これにより、各ヘッドにおけるインクの暴露時間を極力短くすることができる。その結果、インクの一部が固形化することを十分に防止することができる(以下「固形化防止効果」ともいう。)。
【0023】
なお、かかる固形化防止効果は、ヘッド部が、複数のヘッドが配されたラインヘッドである場合、より効果的である。
すなわち、ラインヘッドにおいては、印刷媒体の幅方向における一端側のヘッドと、他端側のヘッドとの間の距離が大きいため、全体のヘッドに対してパージ動作を実行した後に、一端側のヘッドからワイピング動作を実行すると、他端側のヘッドの暴露時間が長くなるため、他端側のヘッドのインクに固形化が生じ易い。
また、ワイピング動作を、ラインヘッドを移動させることでノズル面に付着したインクをブレードで拭き取る動作とした場合、ラインヘッドの移動時の速度に応じた風速により、上記暴露の助長が生じることになる。
【0024】
したがって、本発明のヘッドクリーニング方法によれば、インクの固形化により、ノズルの目詰まりやインク飛翔の直進性阻害等の吐出不良が生じることを防止することができる。
また、ワイピング手段が、ワイピング動作時に、インクが固形化した固形物をノズル面に押し付けることにより、ノズル面を凹ませてしまうことを防止することができる。
また、ノズル面に撥水膜が設けられている場合、ワイピング手段が、ワイピング動作時に、インクが固形化した固形物をノズル面に押し付けることにより、当該撥水膜が破壊されることを防止することができる。
【0025】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、各ワイピング手段が、印字媒体の幅方向において同一ライン上にあるヘッド列を担当するものとすることにより、ワイピング動作におけるヘッド部及びワイピング手段の動きを極力シンプルなものとすることができる。その結果、シンプルな制御でワイピング動作を実行することが可能となり、また、ヘッド部及びワイピング手段の動きに起因するエラーを軽減化することができる。
また、隣合う上流側ヘッド列及び下流側ヘッド列において、互いのヘッドの配置位置が印字媒体の幅方向において一致する場合、これらのヘッド毎に同時にパージ動作を実行し、同時にワイピング動作を実行することができる。その結果、インクの固形化を防止すると共に、クリーニング動作に要する時間を短縮することができる。
【0026】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、制御部が、クリーニング動作を、ワイピング手段に近い側のヘッドから順次実行することにより、ワイピング手段の近傍を、クリーニング動作を実行していないヘッドが通過することを回避できる。その結果、例えば、クリーニング動作が実行されていないヘッドのノズル面に、隣のヘッドのパージの際に飛散したインクが付着した場合、これがワイピング手段を汚してしまうことを防止できる。
【0027】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、ワイピング動作を、ヘッド部を移動させることでノズル面に付着したインクをブレードで拭き取る動作とすることにより、少なくとも、ヘッド部の位置が、印字動作が実行される印字位置から外れた位置でワイピング動作が実行されることになる。
これにより、印字媒体や印字位置が汚れることを防止することができる。
【0028】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、パージ動作を、圧力制御部により分配タンク内を正圧とし、パージ動作を実行する予定のヘッド(以下「実行予定ヘッド」ともいう。)に設けられた電磁弁のみを開放することで当該ヘッドのノズルからインクを強制的に排出させる動作とすることにより、実行予定ヘッド内のインクのみに正圧が付与されることになる。
これにより、実行予定ヘッドのみに対し、確実にパージ動作を実行することができる。
【0029】
このとき、事前(例えば印字時)に、全ての電磁弁を開放した状態で、圧力制御部により分配タンク内を負圧とすることで、全てのヘッド内のインクに負圧が付与される。
そして、負圧を維持した状態で、上述したように、実行予定ヘッドに対しパージ動作を実行することにより、パージ動作を行わないヘッド(実行予定ヘッド以外)内は、負圧が維持されるので、インクが垂れる等することを抑制することができる。
【0030】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、ヘッド部が、圧力制御部により制御される回収用分配タンクと、分配タンクとの間でインクを循環させるインクタンクとを更に有する場合、長期間滞留するインクが軽減され、常時新鮮なインクとすることができるので、インクの固形化が生じ難くなるという利点がある。
なお、パージ動作は、全ての回収用電磁弁を閉鎖した状態で実行される。
【0031】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、分配タンク及び該分配タンクに接続されたヘッドを色毎に設け、インクジェット印字装置を複数の色のインクで印字するものとすることにより、印字画像から吐出不良が生じたヘッドを認識し易くなる。
すなわち、パージ動作を要するヘッドを認識し易くなる。
【0032】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、インクジェット印字装置が洗浄装置を更に備えることにより、ワイピング手段を適時に洗浄することができる。
これにより、ワイピング手段に付着したインクが固形化することや、ワイピング手段に付着したインクがノズル面等に付着することを防止できる。
また、洗浄動作を、ワイピング動作の後、且つ、パージ動作の前に実行することで、洗浄動作をパージ動作の後に実行する場合に比べて、パージ動作によってノズル面にインクが付着している暴露時間をより短くすることができる。
【0033】
このとき、洗浄動作が、ワイピング手段に付着したインクを洗浄液付与部からの洗浄液の吹き付けにより洗浄した後、空気付与部からの空気の吹き付けにより洗浄液を除去する動作であることにより、ワイピング手段にインク及び洗浄液が残存し、これがノズル面に付着してしまうことを防止できる。
【0034】
本発明のヘッドクリーニング方法においては、印字位置の他に、パージ位置を設けることにより、パージ動作により、印字位置が汚染されることを防止することができる。
また、ワイピング手段を、印字位置とパージ位置との間に配置することにより、直動機構によるヘッド部の往復移動機能を利用してワイピング動作を実行することが可能となる。
また、新たにワイピング位置を設ける必要もないので、装置自体をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1(a)】
図1(a)は、本実施形態に係るヘッドクリーニング方法が用いられるインクジェット印字装置の一部を示す正面図である。
【
図1(b)】
図1(b)は、
図1(a)に示すインクジェット印字装置の一部を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1(a)に示すインクジェット印字装置の吐出ユニットにおけるインクの流れを説明するための概略図である。
【
図3】
図3は、
図1(a)に示すインクジェット印字装置におけるヘッド部のY軸方向への移動を説明するための正面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るヘッドクリーニング方法におけるクリーニング動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1に示すインクジェット印字装置のラインヘッドにおいて、ヘッドに対してクリーニング動作が実行される順序を説明するための平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すラインヘッドの変形例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示す吐出ユニットの変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0037】
本発明のヘッドクリーニング方法は、いわゆるインクジェット印字装置に用いられるヘッドをクリーニングするための方法である。
なお、かかるインクジェット印字装置は、オンデマンド型であり、吐出の方式としては、ピエゾ方式、サーマル方式等を採用できる。
また、印字の方式は、シリアル方式又はワンパス方式等を採用できる。ちなみに、以下に述べる実施形態においては、ラインヘッドを用いたワンパス方式を採用している。
【0038】
まず、ヘッドクリーニング方法が行われるインクジェット印字装置の一例について説明する。
図1(a)は、本実施形態に係るヘッドクリーニング方法が用いられるインクジェット印字装置の一部を示す正面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すインクジェット印字装置の一部を示す平面図である。なお、
図1(a)及び
図1(b)に示すインクジェット印字装置は、部分的に透過させた図となっている。
また、
図1(a)において、受け皿35の記載は省略している。
ここで、本明細書においては、便宜的に、印字媒体の搬送方向をX軸方向、印字媒体の幅方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する上下方向をZ軸方向とする。
また、「上流側」とは、印字媒体の搬送における上流側を意味し、「下流側」とは、印字媒体の搬送における下流側を意味する。
【0039】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、インクジェット印字装置100は、少なくとも、複数のヘッド1、ヘッド1にインクを分配して供給するための分配タンク3、及び、当該分配タンク3内の圧力を制御するための圧力制御部(図示しない)を有するヘッド部10と、ヘッド部10をY軸方向に往復移動させるための直動機構20と、ヘッド1のノズル面に対するワイピング動作に用いられるワイピング手段30と、ワイピング手段30を洗浄するための洗浄装置40と、パージ動作及びワイピング動作を制御する制御部7と、を備える。
【0040】
インクジェット印字装置100は、複数の色(例えば、CMYK)のインクで印字可能となっている。
また、インクジェット印字装置100においては、ヘッド1からインクが下方に吐出され、ヘッド1の下方にてX軸方向に搬送される印字媒体Mに印字が施されるようになっている。
そして、印字が施された印字媒体Mは、例えば、ヘッド部1の更に下方に配置される乾燥部(図示しない)により乾燥され、その後、排出される。
【0041】
インクジェット印字装置100において、印字媒体としては、フィルム、紙、布帛、不織布、金属箔等を採用することができる。
また、印字に用いられるインクとしては、例えば、顔料、染料等の着色材料又は磁性材料と、水系溶媒と、必要に応じて添加される公知の添加剤とを含むものを採用することができる。
ここで、ヘッドクリーニング方法は、固形化防止効果を十分に発揮することができるという観点から、固形化し易いインクを用いたヘッドに対して行うことが効果的である。
すなわち、かかるインクは、水系溶媒中に、粉末状の着色材料又は磁性材料が分散された形態のものであることが好ましい。
具体的には、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等を着色材料として用いたホワイトインク、カーボンブラック等を着色材料として用いたブラックインク、酸化鉄、フェライト等を磁性材料として用いた磁性インク等が挙げられる。
【0042】
ヘッド部10において、ヘッド1は、何れも直方体状であり、下面が、ノズルが形成されたノズル面となっている。すなわち、ヘッド1は、下方にインクを吐出するようになっている。
また、ヘッド部10において、ヘッド1にはヘッドヒーター(図示しない)が取り付けられている。
これにより、ヘッド1内部のインクを最適な温度に保つことが可能となる。
【0043】
ヘッド1は、上面視矩形状のラインブロックフレーム2に対して、複数取り付けられる。
このとき、ヘッド1は、ラインブロックフレーム2に設けられたヘッド穴部を封止するように取り付けられる。
これにより、ノズル面がヘッド穴部から露出することになる。
なお、後述するワイピング動作は、露出したノズル面に対して実行される。
【0044】
ヘッド1は、上面視で長手方向がY軸方向となるように取り付けられる。
また、複数のヘッド1が取り付けられたラインブロックフレーム2(以下この組み合わせを単に「ラインヘッドL」ともいう。)は、Y軸方向にヘッド1が直列に4個並んだ第1ヘッド列と、Y軸方向にヘッド1が直列に3個並んだ第2ヘッド列と、Y軸方向にヘッド1が直列に4個並んだ第3ヘッド列と、Y軸方向にヘッド1が直列に3個並んだ第4ヘッド列とを有し、第1ヘッド列、第2ヘッド列、第3ヘッド列及び第4ヘッド列がX軸方向に等間隔で配列されている。すなわち、1つのラインヘッドLにおいて、14個のヘッドが、上面視千鳥状に配設されている。
【0045】
ラインヘッドLは、支持基体5の底板に対して、2個取り付けられる。
このとき、ラインヘッドLは、支持基体5に設けられたライン穴部を封止するように取り付けられる。
これにより、ラインヘッドLの下面がライン穴部から露出することになる。
また、2個のラインヘッドLは、ラインブロックフレーム2の長手方向をY軸方向とし、X軸方向に並べて配置される。すなわち、2個のラインヘッドLは、支持基体5に、並列に取り付けられている。
これにより、インクジェット印字装置100においては、搬送される印字媒体Mに対して、上流側のラインヘッドLで印字媒体Mの幅全体に印字を施した後、下流側のラインヘッドLで印字媒体Mの幅全体に印字を施すことが可能となっている。
【0046】
ヘッド部10においては、分配タンク3を4個有しており、これらが支持基体5の側板の内側に取り付け支持されている。
1個の分配タンク3は、1個のラインヘッドLの14個のヘッド1のうち、7個のヘッド1に対してインクを分配して供給することが可能となっている。
すなわち、1個のラインヘッドLの14個のヘッド1に対して、2個の分配タンク3によりインクが分配して供給される。
このことから、インクジェット印字装置100において、ヘッド部10は、少なくとも、7個のヘッド1、これにインクを供給する1個の分配タンク3、及び、これの圧力を制御する1個の圧力制御部、を有する吐出ユニットTを、4個有していることになる。
なお、4個の吐出ユニットTは、ヘッド1、分配タンク3等の配置位置が互いに異なるものの、互いに同じ構成となっている。
【0047】
支持基体5は、箱状であり、ラインヘッドL(ヘッド1及びラインブロックフレーム2)、分配タンク3、これらを連結するチューブ等が収納される。このため、後述するヘッド部10の往復移動は、これらが一体となって往復移動することを意味する。ちなみに、圧力制御部は、支持基体5の外に配置される。
【0048】
図2は、
図1(a)に示すインクジェット印字装置の吐出ユニットにおけるインクの流れを説明するための概略図である。
なお、
図2においては、1個の吐出ユニットTについて説明している。
図2に示すように、ヘッド部10において、吐出ユニットTは、ヘッド1と、ヘッド1毎に設けられた電磁弁2aを介して、全てのヘッド1にインクを分配して供給するための分配タンク3と、分配タンク3内の圧力を制御するための圧力制御部4と、分配タンク3にインクを供給するためのインクタンク6とを有する。
【0049】
電磁弁2aは、ヘッド1毎に、当該ヘッド1と分配タンク3との間の供給路に設けられる。このため、インクジェット印字装置100においては、電磁弁2aの開閉をコントロールすることにより、ヘッド1毎に、「インクを供給する」又は「インクを供給しない」の選択をすることが可能となっている。
また、ヘッド1には電磁弁2aに繋がる供給路の他、ヘッド1からインクを回収する流路がある。なお、この流路は常時閉塞されている。
【0050】
分配タンク3は、ヘッド1に分配するためのインクを貯留するタンクである。なお、分配タンク3及び該分配タンク3に接続されたヘッド1は、色毎に設けられる。
分配タンク3の内部には、フロートスイッチFが設けられている。かかるフロートスイッチFは、インクの液面の位置を検知するセンサーである。
インクジェット印字装置100においては、フロートスイッチFにより、インクの液面が下限に到達したことを検出すると、ポンプPが、インクタンク6からインクを、熱交換器51、フィルター52、脱気装置53を順次介して、分配タンク3に供給するようになっている。
【0051】
圧力制御部4は、分配タンク3内の圧力を調整するための装置である。具体的には、圧力制御部4は、マニホールド4eと、マニホールド4eに電磁弁4dを介して連結され、分配タンク3内に貯留されるインクの上方の内部空間の圧力を加圧若しくは減圧するための加減圧部4aと、マニホールド4eに連結され、内部空間の圧力を大気圧にするための開放弁4cと、マニホールド4eに連結され、内部空間の圧力を計測するための圧力計4bとを有する。
インクジェット印字装置100においては、圧力計4bにより、分配タンク3の内部空間の圧力が監視され、加減圧部4aにより、分配タンク3の内部空間の圧力が調整される。
【0052】
インクタンク6は、ヘッド1及び分配タンク3にインクを供給するための供給源である。
インクタンク6においては、必要に応じて、インクパック6aから適宜インクが補充される。なお、インクタンク6には、エアフィルター6bが設けられている。
【0053】
図1(a)及び
図1(b)に戻り、直動機構20は、ヘッド部10(支持基体5)の上流側に設けられており、Y軸方向に延びるネジ軸20aと、当該ネジ軸20aに取り付けられたナット基部20bと、ネジ軸20aを回動させるモーター20cとを有するボールねじとなっている。
また、ナット基部20bには、支持基体5が、後述するブラケット22b、第1移動体22a、第2移動体24及びZ軸レール部23を介して取り付けられている。
より詳細には、ナット基部20bはブラケット22bを介して2個の第1移動体22a及び2個の第2移動体24と連結されている。そして、2個の第2移動体24は、それぞれ対応するZ軸レール部23を介して支持基体5に取り付けられている。
したがって、インクジェット印字装置100においては、モーター20cによるネジ軸20aの回動に基づいて、支持基体5がY軸方向に移動するようになっている。
【0054】
インクジェット印字装置100は、ヘッド部10(支持基体5)の上流側及び下流側に、Y軸方向に延びるY軸レール部21と、Y軸レール部21に沿って移動可能となるように直列に取り付けられた2個の第1移動体22aと、2個の第1移動体22aを連結するようにこれらに取り付けられたY軸方向に延びるブラケット22bとをそれぞれ有する。
また、ブラケット22bには、支持基体5が、後述する第2移動体24及びZ軸レール部23を介して取り付けられている。
したがって、インクジェット印字装置100においては、支持基体5がY軸方向に移動する際には、第1移動体22aによりY軸レール部21に沿うように案内されることになる。
【0055】
インクジェット印字装置100は、ヘッド部10(支持基体5)の上流側のブラケット22bの3か所及び下流側のブラケット22bの3か所に、エアシリンダーCが取り付けられている。なお、これらのエアシリンダーCのロッドは、支持基体5に取り付け固定されたリブ(図示しない)に連結され、当該リブを介して、支持基体5をブラケット22bに対して昇降移動させることが可能となっている。
また、支持基体5の側板の外面の上流側2か所及び下流側2か所に、Z軸方向に延びるZ軸レール部23と、Z軸レール部23に対して上下に移動可能に取り付けられた第2移動体24とをそれぞれ有する。そして、支持基体5には、ブラケット22bが、Z軸レール部23及び第2移動体24を介して取り付けられている。
したがって、インクジェット印字装置100においては、例えば、エアシリンダーCにより、支持基体5がZ軸方向に移動する際には、各第2移動体24により対応するZ軸レール部23に沿うように案内されることになる。
【0056】
そして、インクジェット印字装置100においては、ヘッド部10(支持基体5)の上流側では、ナット基部20b、ブラケット22b、第1移動体22a及び第2移動体24が一体となっており、ヘッド部10(支持基体5)の下流側では、ブラケット22b、第1移動体22a及び第2移動体24が一体となっている。
これらのことから、インクジェット印字装置100においては、ヘッド部10がY軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。このため、例えば、印字媒体Mに印字を施す場合にはヘッド部10をZ軸方向の下死点に位置させ、ヘッド部10をY軸方向に移動させる際には、ヘッド部10をZ軸方向の上死点に位置させることで、移動の際に、ヘッド部10が印字媒体Mに接触することを防止することができる。
【0057】
図3は、
図1(a)に示すインクジェット印字装置におけるヘッド部のY軸方向への移動を説明するための正面図である。
図3に示すように、インクジェット印字装置100は、印字位置P1を有し、更に、当該印字位置P1のY軸方向の両側に、それぞれ、パージ位置P2と、メンテナンス位置P3とを有している。
そして、上述したように、直動機構20は、ヘッド部10を印字位置P1、パージ位置P2、メンテナンス位置P3に適宜移動させることが可能となっている。
【0058】
インクジェット印字装置100において、ヘッド部10が印字媒体Mの上方の印字位置P1にある場合(
図3の中程)、印字動作が実行される。
また、ヘッド部10が印字媒体Mの上方からY軸方向の一方側に外れたパージ位置P2にある場合(
図3の上側)、パージ動作が実行される。なお、パージ位置P2においては、パージされたインクを回収するための受け皿35が設置されている(
図1(b)参照)。
なお、
図1a及び
図3においては受け皿35の記載を省略している。
また、ヘッド部10が印字媒体Mの上方からY軸方向の他方側に外れたメンテナンス位置P3にある場合(
図3の下側)、メンテナンスが行われる。
【0059】
ワイピング手段30は、印字位置P1とパージ位置P2との間に配置される。
また、インクジェット印字装置100は、印字位置P1とパージ位置P2との間に、ワイピング手段30をZ軸方向に昇降移動させるための昇降装置(図示しない)を備えている。
なお、後述するワイピング動作は、印字位置P1とパージ位置P2との間で実行される。
そして、ワイピング手段30は、支持体(図示しない)を介して、昇降装置と連結されている。
【0060】
インクジェット印字装置100においては、昇降装置がワイピング手段30を所定の位置まで上昇させることにより、ヘッド1のノズル面に当接させることが可能となっており、昇降装置がワイピング手段30を下降させることにより、当接された状態から退避させることが可能となっている。
なお、昇降装置としては、エアシリンダー、油圧シリンダー、ボールねじ、ラックピニオン等を採用できる。
【0061】
図1(b)に戻り、ワイピング手段30は、上述したラインヘッドLにおけるヘッド1の列(第1ヘッド列~第4ヘッド列)毎に設けられている。すなわち、インクジェット印字装置100は、複数のワイピング手段30を有し、各ワイピング手段30が、ヘッド1の第1ヘッド列から第4ヘッド列に対して、各列と上面視で同一ライン上となるように、ワイピング手段30がX軸方向に4個並設されている。
後述するワイピング動作においては、各ワイピング手段30が、対応するヘッド列にある全てのヘッド1のワイピングを担当する。これにより、ワイピング動作におけるヘッド部及びワイピング手段の動きを極力シンプルなものとすることができる。
【0062】
また、インクジェット印字装置100は、ラインヘッドLを2個有しているので、4個並設されたワイピング手段30の群を、X軸方向に2セット有している。このとき、ワイピング手段30の一方側の群と、他方側の群とは、X軸方向において、同一ライン上に位置している。
なお、複数のワイピング手段30は、それぞれに、上述した昇降装置が設けられている。このため、複数のワイピング手段30は、それぞれ独立して、昇降移動可能となっている。
【0063】
ここで、ワイピング手段としては、ブレード、布、スポンジ等を採用できる。
これらの中でも、ワイピング手段は、洗浄がし易いという観点から、板状のブレードが好適に採用される。
なお、ワイピング手段としてブレードを採用する場合、当該ブレードの材質としては、水系、溶剤系、UV系等のインクに耐え得るインク耐性、ノズル面に付着したインクを十分に拭き取れる剛性、及び、ノズル面を傷つけない柔軟性をバランス良く備えた、弾性変形可能なゴム材料又は樹脂材料を採用することが好ましく、具体的には、シリコン系のゴム材料を採用することがより好ましい。
【0064】
図1(a)に戻り、洗浄装置40は、Y軸方向に往復移動可能な移動機構41に取り付けられている。移動機構としては、エアシリンダー、油圧シリンダー、ボールねじ、ラックピニオン、サーボモータ等を採用できる。
また、洗浄装置40は、洗浄液を吹き付け可能な洗浄液付与部42aと、空気を吹き付け可能な空気付与部42bとを有する。
なお、洗浄液としては、純水や専用の洗浄液を採用することができる。
【0065】
制御部7は入力部、出力部、記憶部、演算部、表示部等を有し、いわゆるコンピューターとしての構成を備えている。
制御部7は、インクジェット印字装置100の各部と接続されており、パージ動作及びワイピング動作からなるクリーニング動作を制御する。
また、これに加え、制御部7は、印字動作、洗浄動作等も制御する。
【0066】
次に、本実施形態に係るヘッドクリーニング方法について説明する。
本実施形態に係るヘッドクリーニング方法は、上述したインクジェット印字装置100に用いられる。
ヘッドクリーニング方法においては、制御部7により、パージ動作を実行する予定のヘッド1のノズルからインクを強制的に排出させるパージ動作と、パージ動作を完了したヘッド1のノズル面に付着したインクをワイピング手段30で拭き取るワイピング動作からなるクリーニング動作が実行される。
これにより、ヘッド1のノズルのクリーニングを行うことができる。
【0067】
また、パージ動作及びワイピング動作の組み合わせからなるクリーニング動作は、ヘッド毎に順次実行される。すなわち、実行予定ヘッド1に対してクリーニング動作が実行された後、次の実行予定ヘッド1に対してクリーニング動作が実行され、これが繰り返される。
なお、ワイピング手段が複数のヘッド1に対し、同時にワイピング可能であれば、複数のヘッド毎にクリーニング動作が実行される。
これにより、各ヘッド1に対してパージ動作を実行した後、速やかにワイピング動作を実行することになるので、各ヘッド1におけるインクの暴露時間を極力短くすることができる。その結果、インクの一部が固形化することを十分に防止することができる。
【0068】
図4は、本実施形態に係るヘッドクリーニング方法におけるクリーニング動作を示すフローチャートである。
図4に示すように、ヘッドクリーニング方法においては、パージ動作は、全ての電磁弁2aを開放した状態で、圧力制御部4により分配タンク3内を負圧とする第1パージステップS1と、直動機構20がヘッド部10をパージ位置P2に移動させる第1移動ステップS2と、全ての電磁弁2aを閉鎖した状態で、圧力制御部4により分配タンク3内を正圧とする第2パージステップS3と、実行予定ヘッド1に設けられた電磁弁2aのみを開放した状態で、当該実行予定ヘッド1のノズルからインクを強制的に排出させる第3パージステップS4とからなる。
【0069】
このように、ヘッドクリーニング方法においては、パージ動作として、第1パージステップS1、第2パージステップS3、第3パージステップS4が実行されるので、実行予定ヘッド1内のインクのみに正圧が付与され、確実にパージ動作を実行することができる。
なお、第2パージステップS3で全ての電磁弁2aを閉鎖しているので、第3パージステップS4における実行予定ヘッド以外は、インクが垂れる等することを抑制することができる。
また、第1移動ステップS2により、パージ位置P2でパージ動作が実行されることになるので、印字媒体M及び印字位置P1が汚染されることを防止することができる。
【0070】
続いて、ヘッドクリーニング方法においては、ワイピング手段がブレードである場合、ワイピング動作は、直動機構20がヘッド部10を、パージ動作が完了したヘッド1(以下「実行完了ヘッド」ともいう。)に対してワイピングが開始される予定の位置に移動させるプレワイピングステップS5と、昇降装置が対応するブレードを上昇させる第1ワイピングステップS6と、直動機構20が、ヘッド部10を移動させることにより、実行完了ヘッド1のノズル面に付着したインクをブレードで拭き取らせる第2ワイピングステップS7と、昇降装置が対応するブレードを下降させ、当該ブレードを退避させる第3ワイピングステップS8と、直動機構20がヘッド部10をパージ位置P2に戻す第2移動ステップS9とからなる。
【0071】
このように、ヘッドクリーニング方法においては、ワイピング動作として、第1ワイピングステップ、第2ワイピングステップ、第3ワイピングステップが実行されるので、ヘッド部の往復移動機能を利用すると共に、実行完了ヘッド1のみに対して、速やかにワイピング動作を実行することができる。
また、プレワイピングステップにより、印字位置P1とパージ位置P2との間でワイピング動作が実行されることになるので、印字位置P1が汚染されることを防止すると共に、新たにワイピング位置を設ける必要がないので、装置自体をコンパクトにすることができる。
【0072】
そして、実行予定ヘッド1に対してクリーニング動作が実行されると、次のターゲットとなるヘッド1に対して、同様にこれらのステップが実行される。
このとき、クリーニング動作を、ワイピング手段30に近い側のヘッド1から順次実行することが好ましい。
これにより、ワイピング手段30の近傍を、クリーニング動作を実行していないヘッド1が通過することを回避できる。
【0073】
図5は、
図1に示すインクジェット印字装置のラインヘッドLにおいて、ヘッドに対してクリーニング動作が実行される順序を説明するための平面図である。なお、
図5においては、1個のラインヘッドLを用いて説明する。
図5に示すように、ヘッドクリーニング方法においては、ラインヘッドL上の4行14個のヘッド1に対して、4個のワイピング手段30を有している。
具体的には、第1ヘッド列として、第1ワイピング手段30a側から、第1ヘッド1a、第2ヘッド1b、第3ヘッド1c、第4ヘッド1dが配設され、第2ヘッド列として、第2ワイピング手段30b側から、第5ヘッド1e、第6ヘッド1f、第7ヘッド1gが配設され、第3ヘッド列として、第3ワイピング手段30c側から、第8ヘッド1h、第9ヘッド1i、第10ヘッド1j、第11ヘッド1kが配設され、第4ヘッド列として、第4ワイピング手段30d側から、第12ヘッド1l、第13ヘッド1m、第14ヘッド1nが配設されている。
【0074】
各ヘッド列においては、クリーニング動作が、ワイピング手段30に近い側のヘッド1から順次実行される。
具体的には、第1ヘッド列においては、第1ヘッド1a、第2ヘッド1b、第3ヘッド1c、第4ヘッド1dの順でクリーニング動作が実行される。このとき、第1ワイピングステップS6~第3ワイピングステップS8には、第1ワイピング手段30aが用いられる。
第2ヘッド列においては、第5ヘッド1e、第6ヘッド1f、第7ヘッド1gの順でクリーニング動作が実行される。このとき、第1ワイピングステップS6~第3ワイピングステップS8には、第2ワイピング手段30bが用いられる。
第3ヘッド列においては、第8ヘッド1h、第9ヘッド1i、第10ヘッド1j、第11ヘッド1kの順でクリーニング動作が実行される。このとき、第1ワイピングステップS6~第3ワイピングステップS8には、第3ワイピング手段30cが用いられる。
第4ヘッド列においては、第12ヘッド1l、第13ヘッド1m、第14ヘッド1nの順でクリーニング動作が実行される。このとき、第1ワイピングステップS6~第3ワイピングステップS8には、第4ワイピング手段30dが用いられる。
これらの各ヘッド列におけるクリーニング動作は、互いに干渉しないので、同時に行ってもよく、順次行ってもよい。
【0075】
ヘッドクリーニング方法においては、上述した、クリーニング動作が、ワイピング手段30に近い側のヘッド1から順次実行されるという前提の下、クリーニング動作時間短縮の観点から、複数のヘッド毎にクリーニング動作を行うことが好ましい。
例えば、第1ヘッド1a及び第8ヘッド1hに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第5ヘッド1e及び第12ヘッド1lに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第2ヘッド1b及び第9ヘッド1iに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第6ヘッド1f及び第13ヘッド1mに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第3ヘッド1c及び第10ヘッド1jに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第7ヘッド1g及び第14ヘッド1nに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第4ヘッド1d及び第11ヘッド1kに対して同時にクリーニング動作を実行してもよい。
【0076】
また、第1ヘッド1a、第5ヘッド1e、第8ヘッド1h及び第12ヘッド1lに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第2ヘッド1b、第6ヘッド1f、第9ヘッド1i及び第13ヘッド1mに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第3ヘッド1c、第7ヘッド1g、第10ヘッド1j及び第14ヘッド1nに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第4ヘッド1d及び第11ヘッド1kに対して同時にクリーニング動作を実行してもよい。
【0077】
また、第1ヘッド1a及び第8ヘッド1hに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第2ヘッド1b、第5ヘッド1e、第9ヘッド1i及び第12ヘッド1lに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第3ヘッド1c、第6ヘッド1f、第10ヘッド1j及び第13ヘッド1mに対して同時にクリーニング動作を実行し、次いで、第4ヘッド1d、第7ヘッド1g、第11ヘッド1k及び第14ヘッド1nに対して同時にクリーニング動作を実行してもよい。
【0078】
ヘッドクリーニング方法において、パージが終了してから、ワイピングが開始されるまでの時間、具体的には、第3パージステップS4が終了してから、第2ワイピングステップS7が開始されるまでの時間は、60秒以内であることが好ましく、40秒以内であることがより好ましい。
これにより、固形化し易いインクであっても、当該インクの一部が固形化することをより抑制することができる。
なお、ヘッドクリーニング方法において、第3パージステップS4が終了してから、第2ワイピングステップS7が開始されるまでの時間が上記範囲を超えた場合、制御部7に、再度、第3パージステップS4から実行させることが好ましい。
【0079】
また、ヘッドクリーニング方法においては、ヘッド1に取り付けられたヘッドヒーターをオフにした後、クリーニング動作を実行することが好ましい。
すなわち、ヘッド1内のインクを空冷しながらクリーニング動作を実行することが好ましい。これにより、ヘッド1内のインク温度と、それ以外のインク温度との差が小さくなるので、温度差に基づいてインクの体積変化が生じ、パージ動作以外でもインクが溢れ出てしまうことを抑制することができる。
このとき、ヘッドヒーターをオフした後、クリーニング動作を開始するまでの待機時間は、1秒~10秒とすることが好ましく、4秒~6秒とすることがより好ましい。
【0080】
ヘッドクリーニング方法において、印字動作は、搬送される印字媒体Mに印字を施す動作である。
また、印字動作は、パージ動作、ワイピング動作及び洗浄動作が実行されていない状態で実行される。
すなわち、パージ動作、ワイピング動作及び洗浄動作の何れかが実行されている状態においては、印字動作は実行されない。
【0081】
ヘッドクリーニング方法において、洗浄動作は、ワイピング手段に付着したインクを洗浄装置で洗浄する動作である。
具体的には、洗浄動作においては、まず、制御部7が、ワイピング手段30を下死点まで下降させた後、移動機構41が洗浄装置40を、ワイピング手段30の上方にまで移動させる。
そして、ワイピング手段30に付着したインクを洗浄液付与部42aからの洗浄液の吹き付けにより洗浄した後、空気付与部42bからの空気の吹き付けにより洗浄液を除去する。
洗浄動作を実行することにより、ワイピング手段を適時に洗浄することができる。
また、ワイピング手段30にインク及び洗浄液が残存し、これがノズル面に付着してしまうことを防止できる。
【0082】
洗浄動作は、ワイピング動作の後、且つ、次のワイピング動作の前に実行される。
なお、最後のワイピング動作が実行された後においては、パージ動作が実行されないので、洗浄動作は、最後のワイピング動作の後に実行される。
具体的には、洗浄動作は、第3ワイピングステップS8の後、第3パージステップS4の前に実行される。なお、第2移動ステップS9に対する前後は問わないが、洗浄動作は、第2移動ステップS9の後に実行されることが好ましい。この場合、パージ位置での洗浄となるので、洗浄の際に洗浄液がヘッド底面に付着するのを防止することができる。
若しくは、第3パージステップS4の後、プレワイピングステップS5の前に実行される。
これにより、洗浄動作をパージ動作の後に実行する場合に比べて、パージ動作によってノズル面にインクが付着している暴露時間をより短くすることができる。
【0083】
メンテナンスは、制御部7が、ヘッド部10をメンテナンス位置P3に移動させることにより行われる。
また、メンテナンスは、印字動作、パージ動作、ワイピング動作及び洗浄動作が実行されていない状態で実行される。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0085】
本実施形態に係るヘッドクリーニング方法において、インクジェット印字装置100の支持基体5には、2個のラインヘッドLが取り付けられているが、個数はこれに限定されない。同様に、ヘッドクリーニング方法において、インクジェット印字装置100は、4個の吐出ユニットTを有しているが、3個以下でもよく、5個以上であってもよい。
但し、ラインヘッドを複数有する場合は、搬送される印字媒体Mへの印字を踏まえ、並列に取り付けることが好ましい。
【0086】
本実施形態に係るヘッドクリーニング方法において、ラインヘッドLは、Y軸方向にヘッド1が直列に4個並んだ第1ヘッド列と、Y軸方向にヘッド1が直列に3個並んだ第2ヘッド列と、Y軸方向にヘッド1が直列に4個並んだ第3ヘッド列と、Y軸方向にヘッド1が直列に3個並んだ第4ヘッド列とを有し、第1ヘッド列、第2ヘッド列、第3ヘッド列及び第4ヘッド列がX軸方向に等間隔で配列されているが(
図5参照)、ヘッド1の個数及び配置は、これに限定されない。
【0087】
図6は、
図5に示すラインヘッドの変形例を示す平面図である。
図6に示すように、ラインヘッドL1は、Y軸方向にヘッド1が直列に4個並んだ第1ヘッド列と、Y軸方向にヘッド1が直列に4個並んだ第2ヘッド列と、Y軸方向にヘッド1が直列に3個並んだ第3ヘッド列と、Y軸方向にヘッド1が直列に3個並んだ第4ヘッド列とを有していてもよい。
また、ラインヘッドL1においては、第1~第4ヘッド列のうち、隣合う第1ヘッド列(下流側ヘッド列)及び第2ヘッド列(上流側ヘッド列)において、互いのヘッド1の配置位置がY軸方向において一致するので、第1ヘッド列(下流側ヘッド列)を担当するワイピング手段30と、第2ヘッド列(上流側ヘッド列)を担当するワイピング手段30とが一体となっている。同様に、隣合う第3ヘッド列(下流側ヘッド列)及び第4ヘッド列(上流側ヘッド列)において、互いのヘッド1の配置位置がY軸方向において一致するので、第3ヘッド列(下流側ヘッド列)を担当するワイピング手段30と、第4ヘッド列(上流側ヘッド列)を担当するワイピング手段30とが一体となっている。
すなわち、ラインヘッドL1においては、ラインヘッドL1上の4行14個のヘッド1に対して、2個のワイピング手段30を有している。
【0088】
ヘッドクリーニング方法においては、ラインヘッドL1に対しても、クリーニング動作を、ワイピング手段30に近い側のヘッド1から順次実行することが好ましい。
また、この場合、パージ動作及びワイピング動作からなるクリーニング動作を、X軸方向に並列の2個のヘッド毎に順次実行することができる。
すなわち、制御部が、Y軸方向において配置位置が一致するヘッド1毎に同時にパージ動作を実行し、同時にワイピング動作を実行することができる。
【0089】
本実施形態に係るヘッドクリーニング方法において、インクジェット印字装置100の吐出ユニットTは、ヘッド1と、ヘッド1毎に設けられた電磁弁2aを介して、全てのヘッド1にインクを分配して供給するための分配タンク3と、分配タンク3内の圧力を制御するための圧力制御部4と、分配タンクにインクを供給するためのインクタンク6とを有しているが、回収用の分配タンクを更に有していてもよい。
【0090】
図7は、
図2に示す吐出ユニットの変形例を示す概略図である。
図7に示すように、吐出ユニットT1は、ヘッド1と、ヘッド1毎に設けられた電磁弁2aを介して、全てのヘッド1にインクを分配して供給するための分配タンク3と、ヘッド1毎に設けられた回収用電磁弁12aを介して、各ヘッド1からインクを回収するための回収用分配タンク13と、分配タンク3内及び回収用分配タンク13内の圧力を制御するための圧力制御部14と、分配タンク3にインクを供給し、分配タンク3からインクを回収し、且つ回収用分配タンク13からインクを回収するためのインクタンク6とを有する。
すなわち、吐出ユニットT1を備えるインクジェット印字装置は、少なくとも、圧力制御部14により制御可能な回収用分配タンク13を更に有し、回収用分配タンク13からインクを回収し、更に、分配タンク3とインクタンク6との間でインクを循環(供給及び回収)させる点で、上述した吐出ユニットTを備えるインクジェット印字装置100と相違する。
【0091】
吐出ユニットT1において、回収用電磁弁12aは、ヘッド1毎に、当該ヘッド1と回収用分配タンク13との間の回収路に設けられる。
なお、第1パージステップS1、第2パージステップS3及び第3パージステップS4においては、回収用電磁弁12aが閉じた状態で実行される。
【0092】
回収用分配タンク13は、ヘッド1から回収したインクを貯留するタンクである。
回収用分配タンク13の内部には、フロートスイッチFが設けられている。かかるフロートスイッチFは、インクの液面の位置を検知するセンサーである。
インクジェット印字装置においては、フロートスイッチFにより、インクの液面が上限に到達したことを検出すると、ポンプPが、インクを、インクタンク6に送流するようになっている。
【0093】
圧力制御部14は、分配タンク3に対する構成として、マニホールド4eと、マニホールド4eに電磁弁4dを介して連結され、分配タンク3内に貯留されるインクの上方の内部空間の圧力を加圧若しくは減圧するための加減圧部4aと、マニホールド4eに連結され、内部空間の圧力を大気圧にするための開放弁4cと、マニホールド4eに連結され、内部空間の圧力を計測するための圧力計4bとを有する。
これに加え、回収用分配タンク13に対する構成として、回収側マニホールド14eと、回収側マニホールド14eに回収側電磁弁14dを介して連結され、回収用分配タンク13内に貯留されるインクの上方の内部空間の圧力を加圧若しくは減圧するための回収側加減圧部14aと、回収側マニホールド14eに連結され、内部空間の圧力を大気圧にするための回収側開放弁14cと、回収側マニホールド4eに連結され、内部空間の圧力を計測するための回収側圧力計14bとを有する。
吐出ユニットT1を備えるインクジェット印字装置においては、圧力計4bにより、分配タンク3の内部空間の圧力が監視され、加減圧部4aにより、分配タンク3の内部空間の圧力が調整される。
また、回収側圧力計14bにより、回収用分配タンク13の内部空間の圧力が監視され、回収側加減圧部14aにより、回収用分配タンク13の内部空間の圧力が調整される。
【0094】
インクタンク6は、ヘッド1及び分配タンク3にインクを供給するための供給源である。
インクタンク6においては、必要に応じて、インクパック6aから適宜インクが補充される。
なお、インクタンク6には、エアフィルター6bが設けられている。
【0095】
吐出ユニットT1を備えるインクジェット印字装置においては、分配タンク3によりヘッド1に供給されたインクを、圧力制御部14による制御により、回収用分配タンク13に回収することができる。
また、インクタンク6内に貯留されたインクを、熱交換器51、マニホールド54、フィルター52、脱気装置53を介して、圧力制御部14による制御により、分配タンク3に供給することが可能となる。
また、分配タンク3内に貯留されたインクを、圧力制御部14及びポンプPによる制御により、インクタンク6に循環させることが可能となる。
また、回収用分配タンク13内に貯留されたインクを、圧力制御部14及びポンプPによる制御により、インクタンク6に回収することが可能となる。
【0096】
本実施形態に係るヘッドクリーニング方法においては、直動機構20としてボールねじを採用しているが、これに限定されない。例えば、エアシリンダー、油圧シリンダー、ラックピニオン、リニアモータ等を採用することができる。
【0097】
本実施形態に係るヘッドクリーニング方法においては、インクジェット印字装置100が、ヘッド部10を案内するためのY軸レール部21及び第1移動体22aと、Z軸レール部23及び第2移動体24とを有しているが、これらの構成は必須ではなく、公知の代替品を採用することが可能である。
【0098】
本実施形態に係るヘッドクリーニング方法においては、洗浄装置40が洗浄液付与部42aと、空気付与部42bとを有しているが、この構成に限定されない。
また、移動機構41は必須ではない。
【0099】
本実施形態に係るヘッドクリーニング方法において、制御部7は、ワイピング動作中に、分配タンク3の圧力制御部4に対して、次の動作に必要な分配タンク3の圧力、例えば大気圧にする等の動作を行わせてもよい。これにより、クリーニング動作の終了までに要する時間を短縮することができる。
【0100】
本実施形態に係るヘッドクリーニング方法において、クリーニング動作終了後に印字を行う場合、制御部7は、ヘッド部10をパージ位置P2に移動させ、全でのヘッド1の電磁弁2aを開き、全てのヘッド1のヘッドヒーターをオンにすることが好ましい。
このとき、ヘッドヒーターをオンにした後、印字を開始するまでの待機時間は、30秒~120秒であることが好ましく、50秒~70秒であることがより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、インクジェット印字装置のヘッドをクリーニングするための方法として利用できる。
本発明のヘッドクリーニング方法によれば、インクジェット印字装置におけるパージ動作及びワイピング動作において、インクの一部が固形化することを防止することができる。
【符号の説明】
【0102】
1・・・ヘッド
10・・・ヘッド部
12a・・・回収用電磁弁
13・・・回収用分配タンク
14・・・回収用圧力制御部
14a・・・回収側加減圧部
14b・・・回収側圧力計
14c・・・回収側開放弁
14d・・・回収側電磁弁
14e・・・回収側マニホールド
100・・・インクジェット印字装置
2・・・ラインブロックフレーム
20・・・直動機構
20a・・・ネジ軸
20b・・・ナット基部
20c・・・モーター
21・・・Y軸レール部
22a・・・第1移動体
22b・・・ブラケット
23・・・Z軸レール部
24・・・第2移動体
2a・・・電磁弁
3・・・分配タンク
30・・・ワイピング手段
4,14・・・圧力制御部
40・・・洗浄装置
41・・・移動機構
42a・・・洗浄液付与部
42b・・・空気付与部
4a・・・加減圧部
4b・・・圧力計
4c・・・開放弁
4d・・・電磁弁
4e・・・マニホールド
5・・・支持基体
51・・・熱交換器
52・・・フィルター
53・・・脱気装置
54・・・マニホールド
6・・・インクタンク
6a・・・インクパック
6b・・・エアフィルター
7・・・制御部
F・・・フロートスイッチ
L,L1・・・ラインヘッド
M・・・印字媒体
P・・・ポンプ
P1・・・印字位置
P2・・・パージ位置
P3・・・メンテナンス位置
S1・・・第1パージステップ
S2・・・第1移動ステップ
S3・・・第2パージステップ
S4・・・第3パージステップ
S5・・・プレワイピングステップ
S6・・・第1ワイピングステップ
S7・・・第2ワイピングステップ
S8・・・第3ワイピングステップ
S9・・・第2移動ステップ
T,T1・・・吐出ユニット