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  • 特開-熱電変換モジュール 図1
  • 特開-熱電変換モジュール 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146619
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/817 20230101AFI20241004BHJP
   H10N 10/852 20230101ALI20241004BHJP
   H10N 10/853 20230101ALI20241004BHJP
   H10N 10/854 20230101ALI20241004BHJP
   H10N 10/851 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
H10N10/817
H10N10/852
H10N10/853
H10N10/854
H10N10/851
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059639
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 邦久
(57)【要約】
【課題】部材間界面の伝熱効果が向上された高い熱電性能を有する熱電変換モジュールを提供する。
【解決手段】熱電変換素子の一方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Aと、放熱部材とをこの順に含み、且つ他方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Bを含む熱電変換モジュールであって、熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値と熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値との和である全熱抵抗値をRAB、熱電変換モジュールの全熱抵抗値をRとした時に、RAB/Rが1.40以下、且つ熱電変換素子の一方の面に熱伝導性インターフェイス部材Aを接着させた場合の、熱伝導性インターフェイス部材Aにかかるせん断応力τと、他方の面に熱伝導性インターフェイス部材Bを接着させた場合の、熱伝導性インターフェイス部材Bにかかるせん断応力τとが、0.001(N/mm)以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換素子の一方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Aと、放熱部材とをこの順に含み、且つ前記熱電変換素子の他方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Bを含む熱電変換モジュールであって、
前記熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値をR(mK/W)、前記熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値をR(mK/W)、それらの和である全熱抵抗値をRAB(mK/W)とし、さらに前記熱電変換モジュールの全熱抵抗値をR(mK/W)とした時に、前記Rに対する前記RABの比(RAB/R)が、1.40以下であり、且つ
前記熱電変換素子の一方の面に前記熱伝導性インターフェイス部材Aを接着させた場合の、前記熱伝導性インターフェイス部材Aにかかるせん断応力τ(N/mm)と、前記熱電変換素子の他方の面に前記熱伝導性インターフェイス部材Bを接着させた場合の、前記熱伝導性インターフェイス部材Bにかかるせん断応力τ(N/mm)とが、それぞれ独立に、0.001(N/mm)以上である、熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エネルギーの有効利用手段の一つとして、ゼーベック効果やペルチェ効果などの熱電効果を有する熱電変換モジュールにより、熱エネルギーと電気エネルギーとを直接相互変換するようにした装置がある。
熱電変換モジュールとして、いわゆるπ型の熱電変換素子の構成が知られている。π型の熱電変換素子は、互いに離間する一対の電極を基板上に設け、例えば、―方の電極の上にP型熱電素子を、他方の電極の上にN型熱電素子を、同じく互いに離間して設け、両方の熱電素子の上面を対向する基板の共通電極に接続することで構成されている。また、いわゆるインプレーン型熱電変換素子の構成が知られている。インプレーン型熱電変換素子は、熱電性能の観点から、通常、P型熱電素子とN型熱電素子とが基板の面内方向に交互に設けられ、例えば、隣接又は当接するP型熱電素子とN型熱電素子との上部又は下部等を、電極を介し直列に接続することで構成されている。
このような中、熱電変換モジュールについて、さらなる熱電性能の向上、薄型化、信頼性の向上、量産性の向上等の様々な要求が依然としてある。
特許文献1では、例えば、インプレーン型熱電変換モジュールの構成において、熱電素子層と放熱層との間に絶縁層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/179544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、前記絶縁層は、インプレーン型熱電変換モジュールの信頼性向上の観点から、熱源と熱電素子層との間、又は、放熱層と熱電素子層との間等の短絡等を防止する目的で使用されているものである。このため、熱電性能の向上の観点から、他の特定の絶縁層をさらにインプレーン型熱電変換モジュール又はπ型熱電変換モジュール上に配置することについて、また、該他の特定の絶縁層が有する熱抵抗値とインプレーン型熱電変換モジュール又はπ型熱電変換モジュールを構成する部材の熱抵抗値との関係性について検討されていない。加えて、該他の特定の絶縁層が有するせん断応力及び接着力に由来する作用効果等についても検討されていない。
【0005】
本発明は、上記を鑑み、部材間界面の伝熱性が向上された高い熱電性能を有する熱電変換モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、熱電変換素子の上下面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材(以下、単に「TIM」ということがある。)を備え、熱電変換モジュールの全熱抵抗値に対する接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材の全熱抵抗値の比を特定の値の範囲にし、且つ接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材にかかるせん断応力を特定の値の範囲にすることにより、熱電変換モジュールを構成する各部材間界面の伝熱性をより向上させ得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]を提供するものである。
[1]熱電変換素子の一方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Aと、放熱部材とをこの順に含み、且つ前記熱電変換素子の他方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Bを含む熱電変換モジュールであって、
前記熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値をR(mK/W)、前記熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値をR(mK/W)、それらの和である全熱抵抗値をRAB(mK/W)とし、さらに前記熱電変換モジュールの全熱抵抗値をR(mK/W)とした時に、前記Rに対する前記RABの比(RAB/R)が、1.40以下であり、且つ
前記熱電変換素子の一方の面に前記熱伝導性インターフェイス部材Aを接着させた場合の、前記熱伝導性インターフェイス部材Aにかかるせん断応力τ(N/mm)と、前記熱電変換素子の他方の面に前記熱伝導性インターフェイス部材Bを接着させた場合の、前記熱伝導性インターフェイス部材Bにかかるせん断応力τ(N/mm)とが、それぞれ独立に、0.001(N/mm)以上である、熱電変換モジュール。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部材間界面の伝熱性が向上された高い熱電性能を有する熱電変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の熱電変換モジュールの実施態様を示す断面構成図である。
図2】本発明の実施例に用いた熱電変換モジュールの評価構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔熱電変換モジュール〕
本発明の熱電変換モジュールは、熱電変換素子の一方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Aと、放熱部材とをこの順に含み、且つ前記熱電変換素子の他方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Bを含む熱電変換モジュールであって、
前記熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値をR(mK/W)、前記熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値をR(mK/W)、それらの和である全熱抵抗値をRAB(mK/W)とし、さらに前記熱電変換モジュールの全熱抵抗値をR(mK/W)とした時に、前記Rに対する前記RABの比(RAB/R)が、1.40以下であり、且つ
前記熱電変換素子の一方の面に前記熱伝導性インターフェイス部材Aを接着させた場合の、前記熱伝導性インターフェイス部材Aにかかるせん断応力τ(N/mm)と、前記熱電変換素子の他方の面に前記熱伝導性インターフェイス部材Bを接着させた場合の、前記熱伝導性インターフェイス部材Bにかかるせん断応力τ(N/mm)とが、それぞれ独立に、0.001(N/mm)以上であることを特徴としている。
本発明の熱電変換モジュールでは、熱電変換素子の一方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A(以降、単に「TIMA」ということがある。)と、放熱部材と、を含み、さらに前記熱電変換モジュールの他方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材B(以降、単に「TIMB」ということがある。)を含む構成とする。その構成において、TIMAのせん断応力τ及びTIMBのせん断応力τを、それぞれ独立に、0.001(N/mm)以上とし、また、熱電変換モジュールの全熱抵抗値Rに対する熱伝導性インターフェイス部材の全熱抵抗値RABの比を1.40以下にすることにより、熱電変換モジュールを構成する各部材間界面の伝熱性をより向上させることができる。結果としてより高い熱電性能が得られる。
【0010】
本明細書において、「熱電変換モジュール」の構成として、「熱電変換素子」と、「接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A及び接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材B」と、「放熱部材」とを含む。
【0011】
本明細書において、好ましいとする規定は任意に選択でき、好ましいとする規定同士の組み合わせはより好ましいといえる。
本明細書において、「XX~YY」との記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0012】
以下、本発明の熱電変換モジュールについて、図を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の熱電変換モジュールの実施態様を示す断面構成図である。熱電変換モジュール1は、熱電変換素子9の一方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A10aと、放熱部材11と、を含み、さらに熱電変換素子9の他方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材B10bを含む。熱電変換素子9は、P型熱電変換材料のチップ4とN型熱電変換材料のチップ5とが第1基板2a、第2基板2bの面内方向に交互に共通の第1電極3a、第2電極3bを介して直列に配置されている。また、P型熱電変換材料のチップ4及びN型熱電変換材料のチップ5は、ハンダ受理層7及びハンダ材料層6を介し共通の第1電極3a、第2電極3bと接合され、さらに、第1基板2a及び第2基板2b上には、この順に放熱層A8a、放熱層B8bをそれぞれ備える。
熱電変換素子9の一方の面側の最外層の放熱層A8aと放熱部材11との間に、接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A10aを備えることにより、その間に発生する接触熱抵抗を低減できる。同様に、熱電変換素子9の他方の面側の最外層の放熱層B8bと、例えば、熱源(図示せず)との間に、接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材B10bを備えることにより、その間に発生する接触熱抵抗を低減できる。
このような効果を有する接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A及び接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Bを用い、接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Aにかかるせん断応力τ及び接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Bにかかるせん断応力τを、それぞれ独立に、0.001(N/mm)以上とし、さらに、熱電変換モジュールの全熱抵抗値Rに対する接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材の全熱抵抗値RABの比を1.40以下にすることにより、熱電変換モジュールを構成する各部材間界面の伝熱性をより向上させることができる。結果としてより高い熱電性能が得られる。
【0014】
熱電変換素子の一方の面に熱伝導性インターフェイス部材Aを接着させた場合の、熱伝導性インターフェイス部材Aにかかるせん断応力τ及び熱電変換素子の他方の面に熱伝導性インターフェイス部材Bを接着させた場合の、熱伝導性インターフェイス部材Bにかかるせん断応力τは、それぞれ独立に、0.001(N/mm)以上である。
熱伝導性インターフェイス部材Aにかかるせん断応力τ及び熱伝導性インターフェイス部材Bにかかるせん断応力τは、それぞれ、好ましくは0.001(N/mm)~5.00(N/mm)であり、より好ましくは0.01(N/mm)~3.00(N/mm)であり、さらに好ましくは0.02(N/mm)~1.00(N/mm)である。せん断応力τ及びせん断応力τがこの範囲にあると、熱電変換モジュールを構成する各部材間の密着性が向上し、P型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップに物理的なダメージを与えることもなく、熱電性能を向上させ易くなる。
【0015】
熱電変換モジュールを構成する各部材が有する熱抵抗値の総和となる全熱抵抗値Rに対する、TIMAの熱抵抗値RとTIMBの熱抵抗値Rとの和である全熱抵抗値RABの比(RAB/R)は1.40以下である。
比(RAB/R)は、好ましくは0.01~1.00、より好ましくは0.05~0.80、さらに好ましくは0.10~0.40である。
比(RAB/R)がこの範囲にあると、各部材間界面の伝熱性がより向上し易くなり、熱電性能が向上する。
【0016】
<熱伝導性インターフェイス部材A及び熱伝導性インターフェイス部材B>
本発明の熱電変換モジュールでは、熱電変換素子の一方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Aと、放熱部材とを含み、さらに前記熱電変換素子の他方の面に接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Bを含む。
熱電変換素子の一方の面と放熱部材との間に、接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Aを備えることにより、その間に発生する接触熱抵抗を低減できる。同様に、熱電変換素子の他方の面と、例えば、熱源との間に、接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Bを備えることにより、その間に発生する接触熱抵抗を低減できる。このように、接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A及び接着性を有する前記熱伝導性インターフェイス部材Bを用いることにより熱電変換素子内の熱伝導が向上し易くなり、熱電変換モジュールの熱電性能の向上につなげることができる。
【0017】
接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A及び接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材Bは、粘着剤層であることが好ましい。
以下、「接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A及び接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材B」を、まとめて、単に「熱伝導性インターフェイス部材」ということがある。
【0018】
粘着剤層に用いる粘着剤は、特に制限されず、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプ又は非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤が好ましい。
【0019】
熱伝導率を向上させる観点から、粘着剤層には、熱伝導性フィラーを充填させてもよい。熱伝導性フィラーは、特に制限はないが、例えば、カーボンファイバー、グラファイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化マグネシウム、窒化ホウ素、銅、及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1種類である。これらの熱伝導性フィラーは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱伝導性フィラーは平均粒子径が0.01~200μmが好ましい。なお、平均粒子径は、例えば、コールターカウンター法により測定することができる。
熱伝導性フィラーの含有量は、所望の熱伝導率に応じて適宜調整され、組成物中、40~99質量%が好ましい。熱伝導性フィラーの含有量がこの範囲にあれば、放熱特性、耐折性、耐屈曲性が優れ、熱伝導性インターフェイス部材の強度が維持される。
【0020】
熱伝導性インターフェイス部材の厚さは、0.05~1.50mmが好ましく、0.08~1.20mmがより好ましく、0.10~1.00mmがさらに好ましい。熱伝導性インターフェイス部材の厚さがこの範囲であれば、熱伝導性インターフェイス部材の熱抵抗を低く維持でき、発熱源と放熱部材との間に発生する接触熱抵抗を効率的に低減できる。
【0021】
熱伝導性インターフェイス部材の市販品として、例えば、以下が挙げられる。
高熱伝導放熱シート(積水ポリマテック社製、品番:Manion50α、厚み:0.50mm、熱伝導率:17W/(m・K))、放熱シートTIMLIGHT(積水ポリマテック社製、品番:PT-V、厚み:0.50mm、熱伝導率:12W/(m・K))、放熱シートTIMLIGHT(積水ポリマテック社製、品番:PT-UT、厚み:0.50mm、熱伝導率:6.0W/(m・K))、熱伝導性両面テープ(3M社製、品番:8926、厚み:0.20mm、熱伝導率:1.5W/(m・K))、熱伝導性両面テープ(3M社製、品番:VHR0601、厚み:0.30mm、熱伝導率:0.6W/(m・K))。
【0022】
<放熱部材>
放熱部材としては、発生する熱を伝導して外部に放散させるものであれよく、特に限定されないが、例えば、ヒートシンク、ヒートスプレッダ等が挙げられる。ヒートシンク、ヒートスプレッダの材料としては、例えば、銅、アルミニウム等が挙げられる。また、ヒートスプレッダやヒートシンク以外にも、例えば、放熱器、冷却器、冷却ファン、ヒートパイプ、ベーパーチャンバー、金属カバー、筐体等が挙げられる。ヒートパイプは、例えば、円筒状、略円筒状又は扁平筒状の中空構造体である。
【0023】
<放熱層>
熱電変換素子において、熱電変換材料のチップに効率的に温度差を付与する観点から、、前述した基板の少なくとも一方の面上に、さらに放熱層を設けることが好ましい。
放熱層に用いる材料は、特に制限されず、公知のものが使用できる。好ましくは、金、銀、銅、ニッケル、スズ、鉄、クロム、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、インジウム、亜鉛、モリブデン、マンガン、チタン、アルミニウム、ステンレス、及び真鍮から選ばれる。
【0024】
放熱層を積層する方法としては、特に制限されないが、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)等のドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティング法や電着法等のウェットプロセス、銀塩法、電解めっき法、無電解めっき法等が挙げられる。
また、放熱層のパターニングは、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により行うことができる。
放熱層の熱伝導率は、それぞれ独立に、好ましくは5~500W/(m・K)、より好ましくは8~500W/(m・K)、さらに好ましくは10~450W/(m・K)、特に好ましくは12~420W/(m・K)、最も好ましくは15~400W/(m・K)である。
【0025】
放熱層の厚さは、熱電性能の観点から、適宜決定されるが、好ましくは1~550μm、より好ましくは10~400μm、さらに好ましくは30~200μmである。
【0026】
熱伝導性インターフェイス部材Aの放熱層に対する接着力及び熱伝導性インターフェイス部材Bの放熱層に対する接着力は、それぞれ独立に、好ましくは0.01(N/cm)~50.0(N/cm)であり、より好ましくは0.05(N/cm)~25.0(N/cm)であり、さらに好ましくは0.10(N/cm)~10.0(N/cm)である。熱伝導性インターフェイス部材Aの放熱層に対する接着力及び熱伝導性インターフェイス部材Bの放熱層に対する接着力が、この範囲にあると、所望の熱伝導率を維持しつつ、熱電変換モジュールを構成する各部材間の密着性が向上し、P型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップに物理的なダメージを与えることもなく、熱電性能を向上させ易くなる。
【0027】
(熱電変換材料のチップ)
本発明に用いる熱電変換材料のチップは、熱電半導体材料(以下、「熱電半導体粒子」ということがある。)、バインダー樹脂、及びイオン性化合物(イオン液体、無機イオン性化合物)を含む熱電半導体組成物からなる熱電変換材料層を個片化したものからなることが好ましい。
【0028】
(熱電半導体材料)
熱電半導体材料は、例えば、微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕し、熱電半導体粒子として使用することが好ましい。
熱電半導体粒子の粒径は、好ましくは10nm~100μm、より好ましくは50nm~50μm、さらに好ましくは1μm~30μmである。
前記熱電半導体粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析装置(Malvern社製、マスターサイザー3000)にて測定することにより得られ、粒径分布の中央値とした。
【0029】
本発明に用いる熱電半導体材料としては、特に制限されず、例えば、P型ビスマステルライド、N型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料;GeTe、PbTe等のテルライド系熱電半導体材料;アンチモン-テルル系熱電半導体材料;ZnSb、ZnSb2、ZnSb等の亜鉛-アンチモン系熱電半導体材料;SiGe等のシリコン-ゲルマニウム系熱電半導体材料;BiSe等のビスマスセレナイド系熱電半導体材料;β―FeSi、CrSi、MnSi1.73、MgSi等のシリサイド系熱電半導体材料;酸化物系熱電半導体材料;FeVAl、FeVAlSi、FeVTiAl等のホイスラー材料、TiS等の硫化物系熱電半導体材料等が用いられる。
【0030】
これらの中でも、本発明に用いる前記熱電半導体材料は、P型ビスマステルライド又はN型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料であることが好ましい。
前記P型ビスマステルライドは、キャリアが正孔で、ゼーベック係数が正値であり、例えば、BiTeSb2-Xで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Xは、好ましくは0<X≦0.8であり、より好ましくは0.4≦X≦0.6である。Xが0より大きく0.8以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、P型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
また、前記N型ビスマステルライドは、キャリアが電子で、ゼーベック係数が負値であり、例えば、BiTe3-YSeで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Yは、好ましくは0≦Y≦3(Y=0の時:BiTe)であり、より好ましくは0.1<Y≦2.7である。Yが0~3であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、N型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
【0031】
熱電半導体粒子の前記熱電半導体組成物中の含有量は、好ましくは、30~99質量%である。より好ましくは、50~96質量%であり、さらに好ましくは、70~95質量%である。熱電半導体粒子の含有量が、上記範囲内であれば、ゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が大きく、また電気伝導率の低下が抑制され、熱伝導率のみが低下するため高い熱電性能を示すとともに、十分な皮膜強度、屈曲性を有する膜が得られ好ましい。なお、熱電半導体組成物中の含有量の算出にあたり、溶剤は含まれないものとして値の算出を行う(以下、同様とする)。
【0032】
また、熱電半導体粒子は、アニール処理されたものであることが好ましい。アニール処理を行うことにより、熱電半導体粒子は、結晶性が向上し、さらに、熱電半導体粒子の表面酸化膜が除去されるため、熱電変換材料のゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が増大し、熱電性能指数をさらに向上させることができる。
【0033】
(バインダー樹脂)
本発明に用いるバインダー樹脂は、熱電半導体材料(熱電半導体粒子)間を物理的に結合する作用を有し、熱電変換モジュールの屈曲性を高めることができるとともに、塗布等による薄膜の形成を容易にする。
【0034】
バインダー樹脂は、熱電半導体材料に対する加熱処理の温度、及び焼成(アニール)温度に応じて適宜選択される。また、バインダー樹脂が有する分解温度超で加熱処理することが好ましい。さらに、熱電半導体組成物からなる塗布膜を熱処理等により熱電半導体粒子を結晶成長させる際に、機械的強度及び熱伝導率等の諸物性が損なわれず維持される樹脂がより好ましい。
本明細書において、「分解温度」とは、熱重量測定(TG)による質量減少率が100%(分解後の質量が分解前の質量の1%未満)となる温度をいう。
バインダー樹脂の分解温度は、好ましくは150~400℃であり、90質量%以上が分解、気化することが好ましい。
【0035】
このようなバインダー樹脂として、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のポリビニル重合体;ポリウレタン;エチルセルロース等のセルロース誘導体;などが挙げられる。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性アクリル樹脂、光硬化性ウレタン樹脂、光硬化性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリカーボネート、エチルセルロース等のセルロース誘導体がより好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
【0036】
バインダー樹脂の熱電半導体組成物中の含有量は、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~15質量%、さらに好ましくは1.0~10質量%である。
【0037】
<イオン性化合物>
(イオン液体)
熱電半導体組成物に含まれ得るイオン液体は、カチオンとアニオンとを組み合わせてなる溶融塩であり、-50℃以上400℃未満のいずれかの温度領域において液体で存在し得る塩をいう。換言すれば、イオン液体は、融点が-50℃以上400℃未満の範囲にあるイオン性化合物である。イオン液体の融点は、好ましくは-25℃以上200℃以下、より好ましくは0℃以上150℃以下である。イオン液体は、蒸気圧が極めて低く不揮発性であること、優れた熱安定性及び電気化学安定性を有していること、粘度が低いこと、かつイオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体材料間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。また、イオン液体は、非プロトン性のイオン構造に基づく高い極性を示し、バインダー樹脂との相溶性に優れるため、熱電素子層の電気伝導率を均一にすることができる。
【0038】
イオン液体は、公知または市販のものが使用できる。例えば、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、イミダゾリウム等の窒素含有環状カチオン化合物及びそれらの誘導体;テトラアルキルアンモニウム系のアミン系カチオン及びそれらの誘導体;ホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、テトラアルキルホスホニウム等のホスフィン系カチオン及びそれらの誘導体;リチウムカチオン及びその誘導体等のカチオン成分と、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、F(HF) 、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
【0039】
上記のイオン液体の中で、高温安定性、熱電半導体材料及び樹脂との相溶性、熱電半導体材料間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、イオン液体のカチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0040】
カチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体として、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチルピリジニウムブロミド、N-オクチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファートが好ましい。
【0041】
また、カチオン成分が、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体として、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]が好ましい。
【0042】
イオン液体の熱電半導体組成物中の含有量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~20質量%である。イオン液体の含有量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下が効果的に抑制され、高い熱電性能を有する膜が得られる。
【0043】
(無機イオン性化合物)
熱電半導体組成物に含まれ得る無機イオン性化合物は、少なくともカチオンとアニオンから構成される化合物である。無機イオン性化合物は400~900℃の幅広い温度領域において固体で存在し、イオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体材料間の電気伝導率の低減を抑制することができる。
【0044】
無機イオン性化合物の熱電半導体組成物中の含有量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~10質量%である。無機イオン性化合物の含有量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下を効果的に抑制でき、結果として熱電性能が向上した膜が得られる。
なお、イオン性化合物として、無機イオン性化合物とイオン液体とを併用する場合においては、熱電半導体組成物中における、無機イオン性化合物及びイオン液体の含有量の総量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.4~20質量%、さらに好ましくは0.8~10質量%である。
【0045】
(その他の添加剤)
本発明で用いる熱電半導体組成物には、上記以外の成分として、必要に応じて、さらに分散剤、造膜助剤、光安定剤、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤、樹脂安定剤、充てん剤、顔料、導電性フィラー、導電性高分子、硬化剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
(熱電半導体組成物の調製方法)
熱電半導体組成物の調製方法は、特に制限はなく、超音波ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリッドミキサー等の公知の方法により、例えば、前記熱電半導体粒子、前記バインダー樹脂、及び前記イオン性化合物、必要に応じて前記その他の添加剤、さらに溶媒を加えて、混合分散させ、当該熱電半導体組成物を調製すればよい。
前記溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アルコール、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン、エチルセロソルブ等の溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。熱電半導体組成物の固形分濃度としては、該組成物が塗工に適した粘度であればよく、特に制限はない。
【0047】
前記熱電半導体組成物からなる塗布膜は、特に制限はないが、例えば、少なくともガラス、アルミナ、シリコン及び樹脂等の基材上に、前記熱電半導体組成物を塗布し塗膜を得、乾燥することで形成することができる。
熱電半導体組成物を塗布し、塗膜を得る方法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、バーコート法、ドクターブレード法等の公知の方法が挙げられ、特に制限されない。塗膜をパターン状に形成する場合は、所望のパターンを有するスクリーン版を用いて簡便にパターン形成が可能なスクリーン印刷法、スロットダイコート法等が好ましく用いられる。
次いで、得られた塗膜を乾燥することにより、塗布膜が形成されるが、乾燥方法としては、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80~150℃であり、加熱時間は、加熱方法により異なるが、通常、数秒~数十分である。
また、熱電半導体組成物の調製において溶媒を使用した場合、加熱温度は、使用した溶媒を乾燥できる温度範囲であれば、特に制限はない。
さらに、乾燥後の塗布膜は、熱電変換材料のチップ中の空隙部を抑制し、電気伝導率を向上する等の目的で、加熱プレス(加熱加圧)処理を行い熱電変換材料層前駆体を形成してもよい。加熱プレス(加熱加圧)処理は、例えば、油圧式プレス機等の装置を用いて、所定温度、大気雰囲気下において、塗布膜の上面全体に対して所定圧力で所定時間、加圧することで行うことができる。
加熱プレス(加熱加圧)処理の温度としては、特に制限はないが、通常100~300℃、好ましくは200~300℃である。
加熱プレス(加熱加圧)処理の圧力としては、特に制限はないが、通常、20~200MPa、好ましくは50~150MPaである。
加熱プレス(加熱加圧)処理の時間としては、特に制限はないが、通常、数秒間~数十分間、好ましくは数十秒間~十数分間である。
【0048】
得られた熱電変換材料層前駆体については、熱電性能を安定化させるとともに、熱電半導体組成物中の熱電半導体粒子を結晶成長させる目的で、焼成(アニール)処理を行い、熱電変換材料層とすることが好ましい。
焼成(アニール)処理は、特に制限はないが、通常、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行われる。
焼成(アニール)処理の温度は、熱電半導体組成物に用いる熱電半導体粒子、バインダー樹脂、イオン液体、無機イオン性化合物等に依存し、適宜調整するが、通常260~600℃、好ましくは280~550℃で行う。
焼成(アニール)処理の時間は、特に制限はないが、通常、数分間~数十時間、好ましくは数分間~数時間である。
【0049】
本発明に用いる熱電変換材料のチップは、前記熱電変換材料層を個片化することにより得られる。個片化は、特に制限はないが、加工精度及び工程安定性の観点から、ダイシング用テープに貼付しダイシングブレードを用い行うことが好ましい。
【0050】
<基板>
本発明の熱電変換モジュールの基板としては、例えば、第1基板2a及び第2基板2bとしては、熱電変換材料のチップの電気伝導率の低下、熱伝導率の増加に影響を及ぼさないプラスチックフィルムを用いることが好ましい。熱電変換材料層をアニール処理した場合でも、基板が熱変形することなく、熱電変換モジュールの性能を維持することができ、耐熱性及び寸法安定性が高いという点から、プラスチックフィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ガラス・エポキシシートが好ましい。
【0051】
前記基板に使用されるプラスチックフィルムの厚さは、屈曲性、耐熱性及び寸法安定性の観点から、1~1000μmが好ましく、10~500μmがより好ましく、20~100μmがさらに好ましい。
【0052】
<電極>
本発明の熱電変換モジュールの電極として用いる金属材料は、特に制限はないが、例えば、第1電極3a及び第2電極3bの金属材料としては、金、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、白金、クロム、パラジウム、ステンレス鋼、モリブデン又はこれらのいずれかの金属を含む合金等が挙げられる。
また、金属材料に加えて、溶媒や樹脂成分を含むペースト材を用いて形成してもよい。ペースト材を用いる場合は、焼成等により溶媒や樹脂成分を除去することが好ましい。ペースト材としては、銀ペースト、アルミペーストが好ましい。
前記電極の層の厚さは、好ましくは10nm~200μm、より好ましくは30nm~150μm、さらに好ましくは50nm~120μmである。電極の層の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり、電極として十分な強度が得られる。
【0053】
電極を形成する方法としては、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法、または、スクリーン印刷法、ステンシル印刷法、インクジェット法等により電極のパターンを形成する方法等が挙げられる。
パターンが形成されていない電極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)等の真空成膜法、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティングや電着法等のウェットプロセス、銀塩法、電解めっき法、無電解めっき法、金属箔の積層等が挙げられ、金属材料に応じて適宜選択される。
本発明に用いる電極には、高い導電性が求められ、めっき法や真空成膜法で成膜した電極は、高い導電性を容易に実現できることから、真空蒸着法、スパッタリング法等の真空成膜法、および電解めっき法、無電解めっき法が好ましい。形成パターンの寸法、寸法精度の要求にもよるが、メタルマスク等のハードマスクを介し、容易にパターンを形成することもできる。また、真空成膜法で成膜を行う場合は、用いる基板との密着性の向上、水分除去等の目的で、用いる基板を、基板の特性が損なわれない範囲で、加熱しながら行ってもよい。めっき法で成膜する場合は、無電解めっき法で成膜した膜上に電解めっき法で成膜してもよい。
【0054】
<ハンダ材料層>
ハンダ材料層は、熱電変換材料のチップと電極とを接合するために用いられる。
ハンダ材料層を構成するハンダ材料としては、基板、熱電変換材料のチップに含まれるバインダー樹脂の耐熱温度等、また、導電性、熱伝導性とを考慮し、適宜選択すればよく、Sn、Sn/Pb合金、Sn/Ag合金、Sn/Cu合金、Sn/Sb合金、Sn/In合金、Sn/Zn合金、Sn/In/Bi合金、Sn/In/Bi/Zn合金、Sn/Bi/Pb/Cd合金、Sn/Bi/Pb合金、Sn/Bi/Cd合金、Bi/Pb合金、Sn/Bi/Zn合金、Sn/Bi合金、Sn/Bi/Pb合金、Sn/Pb/Cd合金、Sn/Cd合金等の既知の材料が挙げられる。鉛フリー及び/またはカドミウムフリー、融点、導電性、熱伝導性の観点から、43Sn/57Bi合金、42Sn/58Bi合金、40Sn/56Bi/4Zn合金、48Sn/52In合金、39.8Sn/52In/7Bi/1.2Zn合金のような合金が好ましい。
ハンダ材料の市販品としては、以下のものが挙げられる。例えば、42Sn/58Bi合金(タムラ製作所社製、製品名:SAM10-401-27)、41Sn/58Bi/Ag合金(ニホンハンダ社製、製品名:PF141-LT7HO)、96.5Sn3Ag0.5Cu合金(ニホンハンダ社製、製品名:PF305-207BTO)等が使用できる。
【0055】
ハンダ材料層の厚さ(加熱冷却後)は、好ましくは10~200μmであり、より好ましくは20~150μm、さらに好ましくは30~130μm、特に好ましくは40~120μmである。ハンダ材料層の厚さがこの範囲にあると、熱電変換材料のチップ及び電極との密着性が得やすくなる。
【0056】
ハンダ材料を基板上に塗布する方法としては、ステンシル印刷、スクリーン印刷、ディ
スペンシング法等の公知の方法が挙げられる。加熱温度は用いるハンダ材料、樹脂フィルム等により異なるが、通常、150~280℃で3~20分間行う。
【0057】
<ハンダ受理層>
ハンダ受理層は、樹脂を含む熱電変換材料のチップと熱電変換モジュールを構成する対向する電極側のハンダ材料層との接合性を向上させる機能を有し、熱電変換材料のチップとは直接接合される。
【0058】
ハンダ受理層は、金属材料を含むことが好ましい。金属材料は、金、銀、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、白金、クロム、パラジウム、錫、及びこれらのいずれかの金属材料を含む合金から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、金、銀、ニッケル、アルミニウム、又は、錫及び金の2層構成が好ましく、材料コスト、高熱伝導性、接合安定性の観点から、銀、ニッケル、アルミニウムがより好ましい。
【0059】
ハンダ受理層の厚さは、好ましくは10nm~50μm、さらに好ましくは200nm~10μm、特に好ましくは500nm~5μmである。ハンダ受理層の厚さがこの範囲にあると、熱電変換材料のチップの面との密着性、及び熱電変換モジュールを構成する電極側のハンダ材料層の面との密着性が優れ、信頼性の高い接合が得られる。また、導電性はもとより、熱伝導性が高く維持できるため、結果的に熱電変換モジュールとしての熱電性能が低下することはなく、維持される。
ハンダ受理層は、金属材料をそのまま成膜し単層で用いてもよいし、2以上の金属材料を積層し多層で用いてもよい。
【0060】
ハンダ受理層の形成は、前述した金属材料を用いて行うことが好ましい。
ハンダ受理層には、熱電性能を維持する観点から、高い導電性、高い熱伝導性が求められるため、電解メッキ法、無電解メッキ法、又は真空成膜法で成膜したハンダ受理層を用いることが好ましい。
【0061】
本発明の熱電変換モジュールは、部材間界面の伝熱効果が向上された高い熱電性能を有する。
【実施例0062】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0063】
実施例、比較例で作製した熱電変換モジュールのTIMの接着力、せん断応力、各部材の熱抵抗値評価、及び起電力の評価は以下の方法で行った。
【0064】
(a)せん断応力評価
実施例、比較例で用いたTIM(10mm×10mm)を銅板(45mm×45mm×3mm厚)に貼付し、TIMの、銅板とは反対側の面に金メッキを施した銅チップ(5mm×5mm×200μm厚)を貼り合わせ、ボンドテスター Dage Series 4000(ノードソン・デイジ社製)を用いて、テストスピード200μm/秒、テスト高さ1μmにてダイシェアテストによりせん断応力(N/mm)を測定した。
【0065】
(b)接着力評価
実施例、比較例で用いたTIM(25mm×40mm)を銅板(100mm×100mm×3.0mm厚)に貼り合わせ、次いで、2kgロール(φ95mm、材質:ゴム)を用い1往復することにより銅板に接着した。24時間後に23℃、50%RHの雰囲気下で万能引張強度試験機(島津製作所社製、型名:オートグラフ AG-X Plus)を用いて剥離速度300mm/分にて90度剥離強度を測定し、接着力(N/cm)とした。
【0066】
(c)起電力評価(出力評価)
図2は、本発明の熱電変換モジュールの起電力評価構成の一例を示す断面図である。
熱電変換モジュール起電力評価構成21において、実施例及び比較例で得られた熱電変換モジュール22上の一方の接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A23aの面上に放熱部材24[アルファ社製、ヒートシンク UB2040―25B]を設置し、また、他方の接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材B23bの面上に温度コントローラー(熱源)25(VICS社製、品名:ペルチェ温度コントローラーセットVTH1.8-70S)を設置し、温度コントローラー(熱源)25を60℃に設定し、外部から温度差を付与した。
温度差を付与した状態で、ディジタルハイテスタ(日置電機社製、型名:3801-50)を用いて取り出し電極間の起電力を測定した。
【0067】
(d)熱抵抗値評価
実施例及び比較例で用いたTIMの熱抵抗値(K/W)は、各TIMの熱伝導率[W/(m・K)]、厚み(m)、有効面積[0.006(m)×0.021(m)=1.26×10-4(m2)]を用い下記式(1)から算出した。
TIMの熱抵抗値=TIMの厚み/(TIMの熱伝導率×有効面積) (1)
同様に、熱電変換モジュールを構成する下記層は、各層の熱伝導率、厚み、有効面積を用い算出した。
・ガラス・エポキシ基板:熱伝導率 3.0[W/(m・K)];厚み 6.0×10-5(m);有効面積 1.26×10-4(m2
・放熱層:Cu 熱伝導率 398[W/(m・K)]厚み 3.5×10-5(m) Ni 90.9[W/(m・K)]厚み 3.0×10-6(m);有効面積 1.26×10-4(m2
・電極層:Cu 熱伝導率 398[W/(m・K)]厚み 3.5×10-5(m) Ni 90.9[W/(m・K)]厚み 3.0×10-6(m);有効面積 1.02×10-4(m2
・ハンダ材料層:熱伝導率 20[W/(m・K)]厚み 5.0×10-5(m);有効面積 1.02×10-4(m2
・チップ:熱伝導率 0.5[W/(m・K)]厚み 2.85×10-4(m);有効面積 1.02×10-4(m2
上記より、熱伝導性インターフェイス部材Aの熱抵抗値R(mK/W)、熱伝導性インターフェイス部材Bの熱抵抗値R(mK/W)の和である全熱抵抗値RAB(mK/W)を、また、熱電変換モジュールの全熱抵抗値R(mK/W)を算出し、さらに、Rに対するRABの比(RAB/R)を算出した。
【0068】
(実施例1)
<熱電変換モジュールの作製>
(1)熱電半導体粒子の調製
P型の熱電半導体粒子として、ビスマス-テルル系熱電半導体材料であるP型ビスマステルライドBi0.4TeSb1.6(高純度化学研究所製、平均粒径:16μm)を使用した。
N型の熱電半導体粒子として、ビスマス-テルル系熱電半導体材料であるN型ビスマステルライドBiTe(高純度化学研究所製、粒径:90μm)を使用し、遊星型ボールミル(フリッチュジャパン社製、Premium line P-7)により、窒素ガス雰囲気下で粉砕することで、平均粒径2.8μmの熱電半導体粒子を調製した。
なお、各熱電半導体粒子に関して、レーザー回折式粒度分析装置(Malvern社製、マスターサイザー3000)により粒度分布測定を行った。
【0069】
(2)熱電半導体組成物の塗工液の調製
塗工液(P)
前記P型ビスマステルライドBi0.4TeSb1.6粒子78.5質量部、バインダー樹脂として、ポリエチレンカーボネート5.2質量部、イオン液体として、N-オクチルピリジニウムブロミド0.8質量部、及び溶媒として、N-メチルピロリドン15.5質量部を混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液(P)を調製した。
塗工液(N)
得られたN型ビスマステルライドBiTe粒子78.8質量部、バインダー樹脂として、ポリエチレンカーボネート4.25質量部、イオン液体として、N-オクチルピリジニウムブロミド4.2質量部、及び溶媒として、N-メチルピロリドン12.75質量部を混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液(N)を調製した。
【0070】
(3)熱電変換材料のチップの作製
ポリイミドフィルム(宇部興産社製、商品名「カプトン 500H」、100mm×160mm×厚さ125μm)上にスクリーン印刷機(ニューロング社製、型名:LS-34TVA)を用いて、(2)で調製した塗工液(P)を塗布し、110℃で20分間、加熱乾燥し、膜厚が600μmの塗布膜を形成した。次いで、塗布膜に対し、250℃、50MPaで10分間、加熱プレスを行い、膜厚が285μmのP型熱電変換材料層前駆体を得た。
得られたP型熱電変換材料層前駆体を、アルゴン-水素混合ガス雰囲気下、430℃で30分間、焼成(アニール)処理することにより、P型熱電変換材料層を得た。
次いで、無電解メッキ法によって、P型熱電変換材料層の全面にハンダ受理層[Ni(厚さ:4μm)にAu(厚さ:30nm)を積層]を設け、次いで、ダイシング装置(ディスコ社製、型名:DFD6362)を用いてP型熱電変換材料層をチップに個片化することで、0.9mm×0.9mmのP型熱電変換材料のチップを作製した。
同様に、ポリイミドフィルム(宇部興産社製、商品名「カプトン 500H」、100mm×160mm×厚さ125μm)上にスクリーン印刷機(ニューロング社製、品名:LS-34TVA)を用いて、(2)で調製した塗工液(N)を塗布し、110℃で20分間、加熱乾燥し、膜厚が540μmの塗布膜を形成した。次いで、塗布膜に対し、250℃、30MPaで20分間、加熱プレスを行い、膜厚が285μmのN型熱電変換材料層前駆体を得た。
得られたN型熱電変換材料層前駆体を、アルゴン-水素混合ガス雰囲気下、370℃で30分間、焼成(アニール)処理することにより、N型熱電変換材料層を得た。
次いで、無電解メッキ法によって、N型熱電変換材料層の全面にハンダ受理層[Ni(厚さ:4μm)にAu(厚さ:30nm)を積層]を設け、次いで、ダイシング用テープに貼付しダイシング装置(ディスコ社製、型名:DFD6362)を用いてN型熱電変換材料層をチップに個片化することで、0.9mm×0.9mmのN型熱電変換材料のチップを作製した。
【0071】
(4)電極基板の作製
まず、厚さ60μmのガラス・エポキシシートの両面にそれぞれ厚さ35μmの銅箔を貼付した基板を用意した。当該基板の銅箔上に、無電解めっきにより、ニッケル層(厚さ:3μm)及び金層(厚さ:40nm)をこの順に積層し、次いで片面にのみ電極パターン(0.9×0.9mm、126個、隣接する各電極間の距離:0.1mm、6列21行)を形成し、片面に電極を有し、他方の面に放熱部を有する基板を作製した(第1電極を有する第1基板、以下、「第1電極基板」ということがある。)。
同様に、第1電極基板と貼り合わせた時にπ型の熱電変換モジュールが得られるよう、電極をパターン配置した基板を作製した(第2電極を有する第2基板、以下、「第2電極基板」ということがある。)。なお、基板、電極の材料、厚さを含む寸法等は第1電極基板と同一とした。
【0072】
(熱電変換モジュールの作製)
(3)で作製した、上下面のみにハンダ受理層を有するP型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップを用い、P型及びN型熱電変換材料のチップそれぞれ63対からなるπ型のペルチェ冷却熱電変換モジュールを以下のように作製した。
【0073】
(4)で作製した第1電極基板上に、ハンダ材料としてソルダペースト(弘輝社製、品名:T4AB58-M742)を用い、ハンダ材料層をスクリーン印刷により、膜厚50μmのハンダ材料層を形成した。次いで、ハンダ材料層上に、(3)で作製したP型及びN型熱電変換材料のチップのそれぞれのハンダ受理層の一方の面を載置し、190℃で1分間、加熱した後、冷却することで、P型及びN型熱電変換材料のチップをそれぞれ第1電極基板上に配置した。
さらに、P型及びN型熱電変換材料のチップのそれぞれのハンダ受理層の他方の面上に、上記と同様に、前記ソルダペーストを用い、膜厚50μmのハンダ材料層を形成し、(4)で作製した第2電極基板とを貼り合わせ、190℃で2分間加熱することで、P型及びN型熱電変換材料のチップ、それぞれ63対からなる熱電変換モジュールを作製した。
【0074】
(TIMの配置)
作製した熱電変換モジュールの上下面にRAB/Rが0.12を満たし、せん断応力が0.039であるTIM[積水ポリマテック社製、品番:PT-V、厚み:0.50mm、熱伝導率:12W/(m・K)]を設置し、上述した(c)起電力評価(出力評価)に基づき、得られた熱電変換モジュールの取り出し電極間の起電力を測定した。
【0075】
(実施例2)
実施例1において、RAB/Rが0.23を満たし、せん断応力が0.042であるTIM[積水ポリマテック社製、品番:PT-UT、厚み:0.50mm、熱伝導率:6W/(m・K)]を設置した以外は、実施例1と同様に熱電変換モジュールを作製し、取り出し電極間の起電力を測定した。
【0076】
(実施例3)
実施例1において、RAB/Rが0.38を満たし、せん断応力が0.780であるTIM[3M社製、品番:8926、厚み:0.20mm、熱伝導率:1.5W/(m・K)]を設置した以外は、実施例1と同様に熱電変換モジュールを作製し、取り出し電極間の起電力を測定した。
【0077】
(比較例1)
実施例1において、RAB/Rが1.41を満たし、せん断応力が1.210であるTIM[3M社製、品番:VHR0601、厚み:0.30mm、熱伝導率:0.6W/(m・K)]を設置した以外は、実施例1と同様に熱電変換モジュールを作製し、取り出し電極間の起電力を測定した。
【0078】
(比較例2)
実施例1において、RAB/Rが0.083を満たし、せん断応力が0であるTIM[積水ポリマテック社製、品番:Manion50α、厚み:0.50mm、熱伝導率:17W/(m・K)]を設置した以外は、実施例1と同様に熱電変換モジュールを作製し、取り出し電極間の起電力を測定した。
【0079】
(比較例3)
実施例1において、熱電変換モジュールの上下面にTIMを設置しない以外は、実施例1と同様に熱電変換モジュールを作製し、取り出し電極間の起電力を測定した。
【0080】
実施例1~4及び比較例1~3で得られた熱電変換モジュールにおけるTIMの接着力、せん断応力、全熱抵抗値RAB、熱電変換モジュールの各部材の全熱抵抗値R、全熱抵抗値RAB/全熱抵抗値R、及び熱電変換モジュールの起電力の評価結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
に対するRABの比(RAB/R)、並びに、熱伝導性インターフェイス部材A及び熱伝導性インターフェイス部材Bにかかる特定のせん断応力が本発明の規定を満たす実施例1~3の熱電変換モジュールから得られる起電力は、本発明の規定を満たさない比較例1~3の熱電変換モジュールから得られる起電力と比べ、高く、熱電性能が向上していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の熱電変換モジュールによれば、起電力が向上された熱電変換モジュールが得られることから、例えば、工場や廃棄物燃焼炉、セメント燃焼炉等の各種燃焼炉からの排熱、自動車の燃焼ガス排熱及び電子機器の排熱を電気に変換する発電用途に適用することが考えられる。冷却用途としては、エレクトロニクス機器の分野において、例えば、スマートフォン、各種コンピューター等に用いられるCPU(Central Processing Unit)、また、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサー、さらに、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、受光素子等の各種センサーの温度制御等に適用することが考えられる。
【符号の説明】
【0084】
1:熱電変換モジュール
2a:第1基板
2b:第2基板
3a:第1電極
3b:第2電極
4:P型熱電変換材料のチップ
5:N型熱電変換材料のチップ
6:ハンダ材料層
7:ハンダ受理層
8a:放熱層A
8b:放熱層B
9:熱電変換素子
10a:接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A
10b:接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材B
11:放熱部材
21:熱電変換モジュール起電力評価構成
22:熱電変換素子
23a:接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材A
23b:接着性を有する熱伝導性インターフェイス部材B
24:放熱部材
25:温度コントローラー(熱源)
図1
図2