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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146623
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】臍帯クランプデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20241004BHJP
   A61B 17/42 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B17/12 100
A61B17/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059644
(22)【出願日】2023-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度及び令和4年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療研究開発推進事業費補助金の橋渡し研究プログラム(委託事業)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑名 健太
(72)【発明者】
【氏名】石橋 匠
(72)【発明者】
【氏名】原 航介
(72)【発明者】
【氏名】金澤 悠喜
(72)【発明者】
【氏名】大鐘 潤
(72)【発明者】
【氏名】原田 隆佑
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160HH06
(57)【要約】
【課題】臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる臍帯クランプデバイスを提供する。
【解決手段】臍帯クランプデバイス10は、第1筐体17および第2筐体18を閉状態として、第1クランプ12および第2クランプ13により臍帯を挟む際に、しごき部14により臍帯を押圧してゆき、臍帯をしごいてゆくこともできる。よって、臍帯クランプデバイス10は、第1筐体17および第2筐体18を閉状態にするだけで、第1クランプ12および第2クランプ13により臍帯を挟む作業と、臍帯を切断する前に臍帯内に残った体液をしごき部14により臍帯に沿って押してゆく作業とを同時に行えるので、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母体と新生児を繋ぐ臍帯を挟むクランプが着脱自在に設けられる臍帯クランプデバイスであって、
前記クランプの開閉動作に連動して第1押圧部と第2押圧部とが開閉自在に設けられ、前記クランプで挟む前記臍帯が前記第1押圧部と前記第2押圧部との間に配置される構成を有するしごき部を備え、
前記クランプで前記臍帯を挟む際に前記臍帯を前記第1押圧部および前記第2押圧部によって前記臍帯内の体液を前記臍帯に沿ってしごくように押してゆく臍帯クランプデバイス。
【請求項2】
前記第1押圧部と前記第2押圧部は、前記クランプに対して着脱自在に取り付けられている請求項1に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項3】
第1筐体と第2筐体とが開閉自在に設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記臍帯が配置される本体を備え、
前記クランプは、
前記本体に着脱自在に設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態になることで前記臍帯を挟む第1クランプと第2クランプであり、
前記第1クランプと前記第2クランプとの間には、前記しごき部で挟まれてしごかれた前記臍帯を切断する切断刃が設けられている
請求項1に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項4】
前記第1押圧部は、前記第1筐体に設けられており、
前記第2押圧部は、前記第2筐体に設けられており、
前記第1筐体と前記第2筐体とが開状態から閉状態になる際に前記臍帯を前記第1押圧部および前記第2押圧部によって前記臍帯内の体液を前記臍帯に沿ってしごくように押してゆく請求項3に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項5】
前記第1押圧部および前記第2押圧部は、開状態にある前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記臍帯が配置されたときに、前記臍帯の一方向に向かうほど、端部が互いに近づくように傾いている請求項4に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項6】
前記第1押圧部および前記第2押圧部は、非対称な形状を有し、捻転した前記臍帯をほぐしながらしごくように押圧する請求項5に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項7】
前記切断刃は、前記第1クランプと前記第2クランプとの間にある中心位置よりも前記母体側に設けられている請求項3に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項8】
前記第1筐体に前記切断刃を保持する切断スイッチを備え、
前記切断スイッチは、前記第1筐体および前記第2筐体が閉状態となり、前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記臍帯が挟まれた状態になった後に、使用者に押下されることにより、前記第1筐体の内部に収容されていた前記切断刃を露出させ、前記切断刃により前記臍帯を切断する請求項3に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項9】
前記切断スイッチに設けられ、前記第1筐体から前記第2筐体に向かって突出するガイドピンと、
前記第2筐体に設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態となった際に、突出した前記ガイドピンが挿入可能なガイド穴とを有し、
前記臍帯を挟んだ前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態にいたっていないときに、前記ガイドピンの前記ガイド穴への挿入を阻止することで、前記第1筐体および前記第2筐体が閉状態にいたっていない状態での前記切断スイッチの移動を規制する請求項8に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項10】
前記使用者により押下される前記切断スイッチの押下部は、外力が与えられていないとき、前記切断スイッチが設けられた前記第1筐体の表面から非突出状態となり、前記使用者により押下されることにより前記第1筐体の内部に向けて移動する請求項8に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項11】
第1筐体と第2筐体とが開閉自在に設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記臍帯が配置される本体と、
前記第1筐体に切断刃を保持する切断スイッチと、を備え、
前記第1筐体または前記第2筐体のいずれか一方には、前記第1筐体または前記第2筐体の他方に向かって突出した嵌合凸部を有し、
前記第1筐体または前記第2筐体の他方には、前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態になった際に前記嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部を有し、
前記切断スイッチは、押下されることにより前記嵌合凸部と前記嵌合凹部との嵌合を解除する嵌合解除部を有する請求項1に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項12】
前記第1クランプおよび前記第2クランプの各々は、
係合爪と、
前記第1筐体および前記第2筐体が半開きの状態のときに前記係合爪と係合する第1係合部と、
前記第1筐体および前記第2筐体が閉状態のときに前記係合爪と係合する第2係合部と
を有する請求項3に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項13】
母体と新生児を繋ぐ臍帯を挟む臍帯クランプデバイスであって、
第1筐体と第2筐体とが開閉自在に設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記臍帯が配置される本体と、
前記本体に着脱自在に設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態になることで前記臍帯を挟む第1クランプ及び第2クランプと、
前記第1クランプと前記第2クランプとの間に設けられ、前記第1クランプと前記第2クランプとにより挟まれた前記臍帯を切断する切断刃と、
前記第1筐体に前記切断刃を保持する切断スイッチと、
を備え、
前記切断スイッチは、前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態となり、前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記臍帯が挟まれた状態となった後に、使用者に押下されることにより、前記第1筐体の内部に収容されていた前記切断刃を露出させ、前記切断刃により前記臍帯を切断する臍帯クランプデバイス。
【請求項14】
前記切断刃は、前記第1クランプと前記第2クランプとの間にある中心位置よりも前記母体側に設けられている請求項13に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項15】
前記切断スイッチは、前記第1筐体および前記第2筐体が閉状態となり、前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記臍帯が挟まれた状態になった後に、使用者に押下されることにより、前記第1筐体の内部に収容されていた前記切断刃を露出させ、前記切断刃により前記臍帯を切断する請求項13に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項16】
前記切断スイッチに設けられ、前記第1筐体から前記第2筐体に向かって突出するガイドピンと、
前記第2筐体に設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態となった際に、突出した前記ガイドピンが挿入可能なガイド穴とを有し、
前記臍帯を挟んだ前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態にいたっていないときに、前記ガイドピンの前記ガイド穴への挿入を阻止することで、前記第1筐体および前記第2筐体が閉状態にいたっていない状態での前記切断スイッチの移動を規制する請求項15に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項17】
前記使用者により押下される前記切断スイッチの押下部は、外力が与えられていないとき、前記切断スイッチが設けられた前記第1筐体の表面から非突出状態となり、前記使用者により押下されることにより前記第1筐体の内部に向けて移動する請求項15に記載の臍帯クランプデバイス。
【請求項18】
前記第1筐体または前記第2筐体のいずれか一方には、前記第1筐体または前記第2筐体の他方に向かって突出した嵌合凸部を有し、
前記第1筐体または前記第2筐体の他方には、前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態になった際に前記嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部を有し、
前記切断スイッチは、押下されることにより前記嵌合凸部と前記嵌合凹部との嵌合を解除する嵌合解除部を有する請求項13に記載の臍帯クランプデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出産時に臍帯を挟むための臍帯クランプデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
帝王切開による出産では、新生児を抱えながら、母体と新生児を繋ぐ臍帯(へその緒)を迅速かつ安全に切断することが求められる。臍帯を切断する際は、一人の医師が児を抱え、別の医師が臍帯を2つのクランプで止血し、これらクランプ間に位置決めした臍帯の一部を臍帯剪刃などで切断するという処置が行われる。また、通常の出産では、黄疸予防や切断後の臍帯の清潔性向上のため、切断前に臍帯をしごいて臍帯内の血液を児側から母体側へ排除する作業を行うこととなっている。ただし、この作業は手間であり、施設によっては実施されないこともある。
【0003】
臍帯を切断する作業を簡素化するために、例えば特許文献1に記載されるような臍帯切断デバイスが知られている。特許文献1に記載の臍帯切断デバイスは、一対のアームがヒンジで連結された構成を有する第1クランプおよび第2クランプを用いて臍帯を挟み、第1クランプと第2クランプとの間の臍帯を切断刃で切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002-502661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の臍帯切断デバイスを用いても、母体と新生児を繋ぐ臍帯を切断する際の手順の多さ等から、臍帯を切断する際の作業負担が未だ大きいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる臍帯クランプデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る臍帯クランプデバイスは、母体と新生児を繋ぐ臍帯を挟むクランプが着脱自在に設けられる臍帯クランプデバイスであって、前記クランプの開閉動作に連動して第1押圧部と第2押圧部とが開閉自在に設けられ、前記クランプで挟む前記臍帯が前記第1押圧部と前記第2押圧部との間に配置される構成を有するしごき部を備え、前記クランプで前記臍帯を挟む際に前記臍帯を前記第1押圧部および前記第2押圧部によって前記臍帯内の体液を前記臍帯に沿ってしごくように押してゆく。
【0008】
上述した臍帯クランプデバイスは、クランプにより臍帯を挟む際に、臍帯を押圧してゆき、臍帯をしごいてゆくことができる。よって、臍帯クランプデバイスは、クランプを閉状態にするだけで、クランプにより臍帯を挟む作業と、臍帯を切断する前に臍帯内に残った体液を臍帯に沿って押してゆく作業とを行えるので、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。
【0009】
本発明に係る臍帯クランプデバイスは、母体と新生児を繋ぐ臍帯を挟む臍帯クランプデバイスであって、第1筐体と第2筐体とが開閉自在に設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記臍帯が配置される本体と、前記本体に着脱自在に設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態になることで前記臍帯を挟む第1クランプ及び第2クランプと、前記第1クランプと前記第2クランプとの間に設けられ、前記第1クランプと前記第2クランプとにより挟まれた前記臍帯を切断する切断刃と、前記第1筐体に前記切断刃を保持する切断スイッチと、を備え、前記切断スイッチは、前記第1筐体と前記第2筐体とが閉状態となり、前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記臍帯が挟まれた状態となった後に、使用者に押下されることにより、前記第1筐体の内部に収容されていた前記切断刃を露出させ、前記切断刃により前記臍帯を切断する。
【0010】
上述した臍帯クランプデバイスは、第1筐体および第2筐体が閉状態となった後に切断スイッチが使用者に押下されることにより、第1筐体から切断刃が露出するため、第1筐体および第2筐体が開状態のときに、切断刃によって臍帯を損傷させることなく、第1クランプおよび第2クランプの間に臍帯を容易に位置決めすることができ、その分、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の臍帯クランプデバイスの構成を示す斜視図である。
図2】臍帯クランプデバイスの本体から第1クランプおよび第2クランプを取り外した状態を示す斜視図である。
図3】本体の分解斜視図である。
図4】切断スイッチを下側から視た斜視図である。
図5】第1筐体を上側から視た斜視図である。
図6】第1筐体を下側から視た斜視図である。
図7】ストッパの構成を説明する説明図である。
図8】第2筐体を上側から視た斜視図である。
図9】第1クランプの斜視図である。
図10】第1クランプの断面図である。
図11】第1押圧部の平面図である。
図12】第2クランプの斜視図である。
図13】第2クランプの断面図である。
図14】臍帯クランプデバイスの機能を説明する説明図である。
図15A】臍帯クランプデバイスの機能を説明する説明図である。
図15B】臍帯クランプデバイスの機能を説明する説明図である。
図16】臍帯クランプデバイスの機能を説明する説明図である。
図17】第2実施形態の第1押圧部の平面図である。
図18】第1押圧部と第2押圧部との間に配置された臍帯を押圧している状態を説明する説明図である。
図19】第3実施形態の第1クランプの斜視図である。
図20】第4実施形態の臍帯クランプデバイスの構成を示す斜視図である。
図21】切断スイッチを下側から視た斜視図である。
図22】第1筐体を下側から視た斜視図である。
図23】第2筐体を上側から視た斜視図である。
図24】第1筐体に設けられた切断スイッチが押下された状態を示す概略図である。
図25】嵌合解除部が嵌合凸部の爪部の傾斜面を押圧した状態を示す概略図である。
図26】第5実施形態の臍帯クランプデバイスの構成を示す斜視図である。
図27】第6実施形態の臍帯クランプデバイスの構成を示す斜視図である。
図28】臍帯をしごき部に位置決めしたときの様子を示す概略図である。
図29A】第2押圧部の構成を示す平面図である。
図29B】第2押圧部の構成を示す側面図である。
図29C】第2押圧部を児側から視たときの構成を示す側面図である。
図30】しごき部の機能を説明する説明図である。
図31】臍帯クランプデバイスを用いて臍帯をクランプする際の作業手順を説明する説明図である。
図32】第7実施形態の臍帯クランプデバイスの構成を示す斜視図である。
図33】臍帯クランプデバイスの本体からクランプを取り外した状態を示す斜視図である。
図34】臍帯クランプデバイスの正面図である。
図35】臍帯クランプデバイスの右側面図である。
図36A】第1押圧部の正面図である。
図36B】第1押圧部の背面図である。
図36C】第1押圧部の平面図である。
図36D】第1押圧部の底面図である。
図36E】第1押圧部の左側面図である。
図36F】第1押圧部の右側面図である。
図37A】第2押圧部の正面図である。
図37B】第2押圧部の背面図である。
図37C】第2押圧部の平面図である。
図37D】第2押圧部の底面図である。
図37E】第2押圧部の左側面図である。
図37F】第2押圧部の右側面図である。
図38】しごき部の機能を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.第1実施形態
図1図3を用いて臍帯クランプデバイス10の全体構成について説明する。図1は、臍帯クランプデバイス10の構成を示す斜視図である。図2は、本体11から第1クランプ12および第2クランプ13を取り外した状態を示す斜視図である。図3は、臍帯クランプデバイス10の本体11の分解斜視図である。
【0014】
図1に示す臍帯クランプデバイス10は、出産時に、母体(図示なし)と新生児(以下、「児」とも称する)を繋ぐ胎盤から延びた、管状の組織体である臍帯を挟むためのものである。本実施形態の臍帯クランプデバイス10は、臍帯を挟む機能と臍帯を切断する機能とを有するものであり、臍帯切断デバイスとも称する。胎盤から延びた臍帯は児(図示なし)と繋がっている。図1では、X1方向を母体側、X2方向を児側としている。X1方向とX2方向とを区別しない場合は、X方向と記載する。Y1、Y2方向は、臍帯クランプデバイス10の奥行方向である。Y1方向を奥行方向の一方側(奥側)とし、Y2方向を奥行方向の他方側(手前側)としている。Y1方向とY2方向とを区別しない場合は、Y方向と記載する。Z1、Z2方向は、臍帯クランプデバイス10の上下方向である。Z1方向を上側とし、Z2方向を下側としている。Z1方向とZ2方向とを区別しない場合は、Z方向と記載する。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する。図1には開状態の臍帯クランプデバイス10が示されている。臍帯クランプデバイス10は、第1筐体17と第2筐体18とが離れた開状態から、第1筐体17と第2筐体18とが密着した閉状態になることで、X方向に延びる臍帯を第1筐体17と第2筐体18とで挟んで切断することができる。これにより、児から胎盤と臍帯の一部を切り離すことができる。
【0015】
臍帯クランプデバイス10は、母体と新生児を繋ぐ臍帯を挟むクランプに着脱自在に設けられる。クランプは、本実施形態では、第1クランプ12および第2クランプ13である。臍帯クランプデバイス10は、本体11と、しごき部14と、切断刃15と、切断スイッチ16とを備える。本実施形態では、本体11、第1クランプ12、第2クランプ13、しごき部14および切断スイッチ16は、例えば、プラスチックなどの樹脂材料で形成されている。切断刃15は、例えば金属で形成される。
【0016】
本体11は、第1筐体17と、第1筐体17と対向して配置された第2筐体18と、第1筐体17と第2筐体18とを回動自在に連結するヒンジ部19とを有する。本体11は、ヒンジ部19を介して第1筐体17と第2筐体18とが開閉自在に設けられ、第1筐体17と第2筐体18との間に、X方向に沿って臍帯が配置される。図1および図2では、第1筐体17が上側に配置され、第2筐体18が下側に配置されている。第1筐体17と第2筐体18とは、第1筐体17と第2筐体18とに着脱自在に設けられた第1クランプ12および第2クランプ13の開閉動作に応じて、開状態または閉状態になる。第1筐体17の内部には後述する切断刃15が設けられている。図1および図2では、第1筐体17の内部に設けられた切断刃15を点線で示している。第2筐体18には切断刃15が挿入される凹部47が設けられている。第1筐体17および第2筐体18は、本実施形態では直方体状に形成されているが、特に限定されない。ヒンジ部19は、第1筐体17および第2筐体18のY1方向側(奥行方向の一方側)の端部に設けられている。図2では、2つのヒンジ部19がX方向に間隔をあけて配置されている。ヒンジ部19は、本実施形態では板状に形成されているが、特に限定されない。本体11の詳細な構成については別の図面を用いて後述する。
【0017】
第1クランプ12は、本体11に着脱自在に設けられ、第1筐体17と第2筐体18とが閉状態になることで、X方向に延びる臍帯を挟むように構成されている。第2クランプ13は、本体11に着脱自在に設けられ、第1筐体17と第2筐体18とが閉状態になることで、X方向に延びる臍帯を挟むように構成されている。本実施形態では、第1クランプ12が児側に配置され、第2クランプ13が母体側に配置されている。第2クランプ13は、第1クランプ12よりも母体に近い位置に配置されている。なお、第1クランプ12および第2クランプ13の詳細な構成については別の図面を用いて後述する。
【0018】
しごき部14は、第1クランプ12に設けられ、第1筐体17と第2筐体18とが開状態から閉状態になる際に、X方向に延びる臍帯を挟んで、児側から母体側(より具体的には胎盤側)に向けて次第に押圧してゆき、臍帯内に残った血液などの体液を母体側へ押し出すようにしごいてゆく。図1および図2では、しごき部14は、第1クランプ12の児側(X2方向側)の端部から児側に向けて突出するように配置されている。
【0019】
しごき部14は、後述する第1クランプ12の第1アーム51に設けられた第1押圧部21と、後述する第1クランプ12の第2アーム52に設けられた第2押圧部22とを有し、第1押圧部21と第2押圧部22とが開閉方向において対向するように配置されている。しごき部14には、第1押圧部21と第2押圧部22との間に、X方向に延びる臍帯が配置される。しごき部14は、第1押圧部21と第2押圧部22とで臍帯を挟むことで、児側から母体側に向けて臍帯を押圧してゆき、臍帯内に残った体液を母体側へ向け押し出してゆく構成を有する。第1押圧部21と第2押圧部22とは、開状態にある第1筐体17と第2筐体18との間に臍帯が配置されたときに臍帯の一方向に向かうほど、端部が互いに近づくように傾いている。本実施形態では、第1押圧部21と第2押圧部22とは、母体側から遠ざかるほど、児側の端部が互いに近づくように傾いている。第1押圧部21および第2押圧部22はヘラ状に形成されている。しごき部14の詳細な構成については別の図面を用いて後述する。
【0020】
切断刃15は、第1クランプ12と第2クランプ13との間に設けられ、しごき部14で挟まれてしごかれた、X方向に延びる臍帯を、Y方向とZ方向とに平行なYZ平面に沿って切断する。図1および図2では、切断刃15は、本体11の第1筐体17の内部に収容されている。切断刃15は、平板状に形成されている。
【0021】
切断刃15は、第1クランプ12と第2クランプ13との間にある中心位置よりも母体側に設けられている。ここで、第1クランプ12と第2クランプ13との間にある中心位置は、X方向における第1クランプ12のX1方向側(母体側)の端部と第2クランプ13のX2方向側(児側)の端部との間の中心の位置を指す。臍帯クランプデバイス10では、第2クランプ13のX2方向側(児側)の端部と中心位置との間の長さよりも、第1クランプ12のX1方向側(母体側)の端部と中心位置との間の長さの方が長くなるように構成されている。これにより、臍帯クランプデバイス10は、切断刃15により臍帯を切断した際に、第1クランプ12の母体側の端部と臍帯の切断位置との間に一定の長さの臍帯のマージンを残すことができる。このため、臍帯を切断した後に、児から延びる臍帯が仮に乾燥により縮んだ場合でも、第1クランプ12の母体側の端部と臍帯の切断位置との間に一定の長さの臍帯のマージンがある分、臍帯に取り付けられた第1クランプ12が、縮んだ臍帯から外れることを防止することができる。
【0022】
図3に示すように、切断スイッチ16は、切断刃15を保持している。切断スイッチ16は、コイルバネなどの付勢部材20を介在させて、本体11の第1筐体17の内部に押し込み可能に設けられている。切断スイッチ16は、本体11の第1筐体17と第2筐体18とが閉状態の場合に、使用者によりZ2方向に押下されることで、第1筐体17内に押し込まれる。これにより、第1筐体17の内部に収容されていた切断刃15は、第2筐体18に形成された凹部47内に挿入される。
【0023】
図4は、切断スイッチ16を下側から視た斜視図である。図4に示すように、切断スイッチ16は、切断刃15を保持する保持部25と、臍帯を切断する際に使用者によって押下される押下部26とを有する。押下部26は、保持部25の表面25aに設けられている。保持部25の裏面25bには、切断刃15が設けられている。
【0024】
保持部25には、第1筐体17と第2筐体18とが閉状態にあるときに第2筐体18に向かって突出するガイドピン27が設けられている。図4では、一対のガイドピン27がY方向に間隔をあけて保持部25の裏面25bに設けられており、一対のガイドピン27の間に切断刃15が配置されている。ガイドピン27は、本実施形態では円柱状に形成されているが、これに限定されず、楕円柱状、多角柱状などに形成されても良い。各々のガイドピン27には付勢部材20が設けられている(図3参照)。
【0025】
切断スイッチ16は、付勢部材20を介在させて第1筐体17に装着され、当該付勢部材20による付勢力が与えられた状態で、切断開始位置と切断完了位置との間で移動自在に第1筐体17に保持されている。切断開始位置は、使用者によって押下部26が押下されていないときの切断スイッチ16の位置である。本実施形態では、切断スイッチ16の押下部26の表面26aと後述する第1筐体17の蓋部33の表面33aとが平面状に配置されているときの切断スイッチ16の位置を、切断開始位置としている。なお、本実施形態では、切断スイッチ16が切断開始位置にあるときには、押下部26の表面26aと第1筐体17の表面33aとが平面状に配置されて、押下部26の表面26aが第1筐体17の表面33aに対しZ1方向に突出しない非突出状態となることとしたが、これに限らず、切断スイッチ16の押下部26の表面26aが第1筐体17の表面33aよりも凹むことで、押下部26の表面26aが非突出状態となっていてもよい。切断完了位置は、使用者によって押下部26が押下され、第1筐体17の内部に収容されていた切断刃15が第1筐体17から飛び出して、当該切断刃15によって臍帯を切断するときの切断スイッチ16の位置である。本実施形態では、切断スイッチ16の底部が、後述する第1筐体17の収容部32の底部に当接したときの切断スイッチ16の位置を、切断完了位置としている。
【0026】
次に、図5図8を用いて本体11の構成について説明する。図5は、切断刃15を保持した切断スイッチ16が設けられる第1筐体17を上側から視た斜視図である。図6は、第1筐体17を下側から視た斜視図である。図7は、第1筐体17に設けられたストッパ36の構成を説明するための説明図である。図8は、第2筐体18を上側から視た斜視図である。
【0027】
図5に示すように、第1筐体17は、外郭が直方体状でなり、切断刃15を保持した切断スイッチ16が収容可能な開口部31を有する収容部32を備え、当該開口部31が形成された収容部32の表面32aに蓋部33が着脱自在に装着される。蓋部33は、開口部31を塞ぐようにして、開口部31が形成された表面32aに設けられる。蓋部33は、開口部31に挿入された切断スイッチ16の押下部26を露出させる貫通穴34を有する。本実施形態では、第1筐体17は、後述するストッパ36の軸部37が設置される凹部35をさらに有する。図5では、一対の凹部35がY方向に間隔をあけて設けられている。
【0028】
図6に示すように、第1筐体17は、収容部32の開口部31と連通し、切断刃15を通過させる貫通穴41を有するとともに、収容部32の開口部31と連通し、ガイドピン27を通過させる貫通穴42を有する。貫通穴41および貫通穴42は、開口部31の底部を貫通している。貫通穴41は、Y方向に延びるスリット状に形成されている。貫通穴42は、切断スイッチ16のガイドピン27の外郭形状に合わせて中空の円柱状に形成されている。図6では、一対の貫通穴42が奥行方向に間隔をあけて設けられており、一対の貫通穴42の間に貫通穴41が設けられている。第1筐体17のY1方向側の端部には、ヒンジ部19が固定されるヒンジ固定部23が設けられている。
【0029】
収容部32の裏面32bには、後述する第1クランプ12の第1アーム51が配置される溝部44と、後述する第2クランプ13の第1アーム51が配置される溝部45とが設けられている。溝部44および溝部45は、Y方向に沿って延びている。
【0030】
第1筐体17には、切断スイッチ16により保持された切断刃15が貫通穴41に位置決めされ、切断スイッチ16のガイドピン27が貫通穴42に位置決めされ、付勢部材20を介在させて当該切断スイッチ16が収容部32内に収容される。第1筐体17の収容部32内に収容された切断スイッチ16は、使用者によって押下部26が押下されると、収容部32内に収容されて非露出状態にある切断刃15が貫通穴41を通過して収容部32の裏面32bから外部に突出し、ガイドピン27が貫通穴42を通過して収容部32の裏面32bから突出する。
【0031】
溝部44のY2方向側の端部には、上下方向(Z方向)に延びる柱状の凸部39が設けられている。溝部44に設けられた凸部39は、後述する第1クランプ12の凹部63に嵌合する。溝部45のY2方向側の端部にも、上下方向(Z方向)に延びる柱状の凸部39が設けられている。溝部45に設けられた凸部39は、後述する第2クランプ13の凹部63に嵌合する。図5および図6では、溝部44および溝部45のX1方向側の側面に設けられた凸部39が示されているが、溝部44および溝部45のX2方向側の側面にも凸部39が設けられている。
【0032】
溝部44のY2方向側の端部には、溝部44内に向けて突出し、かつ、奥行方向(Y方向)に沿って延びた突起部40が設けられている。溝部44に設けられた突起部40は、後述する第1クランプ12の段部64に嵌合する。溝部45のY2方向側の端部にも、溝部44内に向けて突出し、かつ、奥行方向(Y方向)に沿って延びた突起部40が設けられている。溝部45に設けられた突起部40は、後述する第2クランプ13の段部64に嵌合する。
【0033】
図7に示すように、第1筐体17は、切断スイッチ16が切断開始位置から切断完了位置へ向けて移動し始めてから切断完了位置に達するまでの間に、切断開始位置に戻らないように切断スイッチ16の移動を阻止するストッパ36を有する。図7では、一対のストッパ36がY方向に間隔をあけて設けられており、一対のストッパ36の間に切断スイッチ16が配置されている。各々のストッパ36は互いに同じ構成を有している。
【0034】
ストッパ36は、軸部37と、軸部37に設けられた係合部38とを有する。軸部37は、収容部32の凹部35に回動自在に設けられている。係合部38は、切断スイッチ16が押下された際に当該切断スイッチ16の奥行方向(Y方向)の端部と係合する係合爪38a、38bと、係合爪38a、38bとは反対側に設けられた凸状の湾曲面38cとを有する。係合爪38a、38bは、切断スイッチ16と対向するように設けられている。図7では、係合爪38aが上側に設けられ、係合爪38bが下側に設けられている。係合爪の数は、本実施形態では2であるが、これに限られず、1つまたは3つ以上でも良い。
【0035】
ストッパ36の機能を説明する。図7の上段の図に示すような状態、すなわち切断スイッチ16が切断開始位置にある状態を初期状態とする。初期状態では、ストッパ36と切断スイッチ16とは非接触である。次に、切断スイッチ16が押し込まれ、切断開始位置から切断完了位置へ向けて移動し始めると、切断スイッチ16により係合部38が下方へ押され、ストッパ36が軸部37を中心に回転する。具体的には、図7に示される左側のストッパ36は軸部37を中心に時計回りに回転し、右側のストッパ36は軸部37を中心に反時計回りに回転する。これにより、係合爪38aと切断スイッチ16とが係合する。次に、切断スイッチ16がさらに押し込まれると、切断スイッチ16により係合部38が下方へ押され、ストッパ36が軸部37を中心にさらに回転する。これにより、係合爪38bと切断スイッチ16とが係合する。このように、臍帯クランプデバイス10は、ストッパ36を有することにより、切断スイッチ16を押し込む際に、係合部38と切断スイッチ16との係合により生じる振動が手に伝わるので、臍帯を切断する感覚が再現されている。切断スイッチ16がさらに押し込まれ、切断スイッチ16が係合部38の下方に移動すると、図7に示される左側のストッパ36は軸部37を中心に反時計回りに回転し、右側のストッパ36は軸部37を中心に時計回りに回転し、切断スイッチ16の保持部25の表面25aにストッパ36が乗った状態になる。これにより、切断スイッチ16は、付勢部材20(図示省略)の付勢力により上方へ移動する。ストッパ36が蓋部33の裏面(図示省略)と接触すると、切断スイッチ16の上方への移動が停止される。保持部25の表面25aと蓋部33の裏面(図示省略)との間にストッパ36が配置され、切断スイッチ16が初期状態に戻らない。
【0036】
図8に示すように、第2筐体18は、外郭が直方体状でなり、切断刃15が挿入される凹部47と、ガイドピン27が挿入されるガイド穴48とを有する。凹部47は、奥行方向に延びるスリット状に形成されている。ガイド穴48は、ガイドピン27の外郭形状に合わせて中空の円柱状に形成されている。図8では、一対のガイド穴48が奥行方向に間隔をあけて設けられており、一対のガイド穴48の間に凹部47が設けられている。第2筐体18のY1方向側の端部には、ヒンジ部19が固定されるヒンジ固定部24が設けられている。
【0037】
第2筐体18の表面18aには、後述する第1クランプ12の第2アーム52が配置される溝部49と、後述する第2クランプ13の第2アーム52が配置される溝部50とが設けられている。溝部49および溝部50は、奥行方向に沿って延びている。
【0038】
次に、図9および図10を用いて第1クランプ12の構成について説明する。図9は、第1クランプ12の斜視図である。図10は、第1クランプ12の断面図である。
【0039】
図9に示すように、第1クランプ12は、第1アーム51と、第1アーム51と対向して配置された第2アーム52と、第1アーム51と第2アーム52とを回動自在に連結するヒンジ部53とを有する。第1クランプ12は、第1アーム51と第2アーム52とが開閉自在に設けられ、第1アーム51と第2アーム52との間に、X方向に沿って臍帯が配置される。図9では、第1アーム51が上側に配置され、第2アーム52が下側に配置されている。ヒンジ部53を介して、第1アーム51の奥行方向の一方側(図9における右側)の一端部51aと第2アーム52の奥行方向の一方側の一端部52aとが連結されている。
【0040】
第1クランプ12の第1アーム51は、第1筐体17の溝部44に着脱自在に取り付けられる。第1アーム51の奥行方向の一方側と反対の他方側(図9における左側)の他端部51bには、上下方向に沿って延びる凹部63と、奥行方向に沿って延びる段部64とが設けられている。第1クランプ12の第1アーム51は、凹部63に第1筐体17の溝部44の凸部39が嵌合し、かつ、段部64に第1筐体17の溝部44の突起部40が係合することで、第1筐体17に対して着脱自在に取り付けられる。なお、第1アーム51は、例えば、溝部44のX方向の長さよりも、当該第1アーム51のX方向の長さを若干大きくなるように構成し、溝部44内に押し込まれることで溝部44に嵌合し、第1筐体17に対して着脱自在に取り付けられるようにしてもよい。第1クランプ12の第2アーム52は、第2筐体18の溝部49に着脱自在に取り付けられる。第2アーム52は、例えば、溝部49のX方向の長さよりも、当該第2アーム52のX方向の長さの方が若干大きくなっており、溝部49内に押し込まれることで、第2筐体18に対して着脱自在に取り付けられる。ヒンジ部53は、X方向に沿って延びており、第1アーム51および第2アーム52の回動軸となる。
【0041】
第1クランプ12は、第1アーム51の奥行方向の一方側と反対の他方側(図9における左側)の他端部51bに設けられた係合凸部58と、第2アーム52の奥行方向の他方側の他端部52bに設けられ、係合凸部58と係合する係合凹部59とを有する。係合凸部58と係合凹部59とが係合していない状態が、開状態である。
【0042】
図10に示すように、係合凸部58は、第1アーム51の他端部51bから第2アーム52に向かって突出した基部58aと、基部58aに設けられ、Y1方向へ突出した爪部58bとを有する。係合凸部58は、少なくとも基部58aが例えばプラスチックなどの弾性を有する樹脂材料で形成されている。基部58aは、他端部51bとの接続部分を中心に、Y方向に撓むように弾性変形する。係合凹部59は、爪部58bと係合する第1係合部61と、第1係合部61よりも下側に設けられ、爪部58bと係合する第2係合部62とを有する。
【0043】
爪部58bと第1係合部61とが係合した状態は、爪部58bと第2係合部62とが係合した状態よりも、第1アーム51と第2アーム52との間の隙間が大きい。このため、第1アーム51と第2アーム52との間に配置された臍帯と第1クランプ12との間で容易に相対移動する。爪部58bと第1係合部61とが係合した状態を「半開き状態」と称する。半開き状態では、しごき部14を構成する第1押圧部21と第2押圧部22とにより臍帯を押圧した状態のまま、臍帯クランプデバイス10を臍帯に沿って滑らすように移動させることもできる。
【0044】
爪部58bと第2係合部62とが係合した状態は、半開き状態よりも第1アーム51と第2アーム52との間の隙間が小さい。このため、第1アーム51と第2アーム52との間に配置された臍帯は、第1アーム51と第2アーム52とにより押圧される。この結果、第1アーム51と第2アーム52との間に配置された臍帯と第1クランプ12との間で相対移動し難くなる。爪部58bと第2係合部62とが係合した状態が、閉状態である。
【0045】
次に、図11を用いてしごき部14の構成について説明する。図11は、第1押圧部21の平面図である。図11に示すように、第1押圧部21は、平面視でY方向の中心を通る中心線Cに対し非対称な形状に形成されている。より具体的には、第1押圧部21は、平面視で短辺部21aと長辺部21bとを有する四辺形状に形成されている。短辺部21aと長辺部21bとは、互いに平行に延びて並走している。第1押圧部21の基端部21cは、短辺部21aの一端および長辺部21bの一端と接続している。第1押圧部21の先端部21dは、短辺部21aの他端および長辺部21bの他端と接続している。先端部21dが延びる方向は、基端部21cが延びる方向に対し傾いている。第2押圧部22は、本実施形態では第1押圧部21と同じ構成を有するため、説明を省略する。なお、第1押圧部21と第2押圧部22とが互いに異なる形状を有しても良い。
【0046】
第1押圧部21は、第1クランプ12の第1アーム51に設けられる。具体的には、第1押圧部21は、短辺部21aを第1アーム51の一端部51a側(Y1方向側)に配置し、長辺部21bを第1アーム51の他端部51b側(Y2方向側)に配置した状態で、基端部21cが第1アーム51に固定される(図9参照)。第1押圧部21の先端部21dは、第1アーム51のX2方向側の端部から突出するように配置されている。
【0047】
第2押圧部22は、第1クランプ12の第2アーム52に設けられる。具体的には、第2押圧部22は、短辺部21aを第2アーム52の他端部52b側(Y2方向側)に配置し、長辺部21bを第2アーム52の一端部52a側(Y1方向側)に配置した状態で、基端部21cが第2アーム52に固定される(図9参照)。第2押圧部22の先端部21dは、第2アーム52のX2方向側の端部から突出するように配置されている。
【0048】
次に、図12及び図13を用いて第2クランプ13の構成について説明する。図12は、第2クランプ13の斜視図である。図13は、第2クランプ13の断面図である。
【0049】
図12に示すように、第2クランプ13は、第1クランプ12と同様に、第1アーム51と、第2アーム52と、ヒンジ部53とを有する。第2クランプ13の第1アーム51の他端部51bには、凹部63と、段部64とが設けられている。第2クランプ13の第1アーム51は、凹部63に第1筐体17の溝部45の凸部39が嵌合し、かつ、段部64に第1筐体17の溝部45の突起部40が係合されることで、第1筐体17の溝部45に着脱自在に取り付けられる。なお、第1アーム51は、例えば、溝部45のX方向の長さよりも、当該第1アーム51のX方向の長さを若干大きくなるように構成し、溝部45内に押し込まれることで溝部45に嵌合し、第1筐体17に対して着脱自在に取り付けられるようにしてもよい。第2クランプ13の第2アーム52は、第2筐体18の溝部50に着脱自在に取り付けられる。第2アーム52は、例えば、溝部50のX方向の長さよりも、当該第2アーム52のX方向の長さの方が若干大きくなっており、溝部50内に押し込まれることで、第2筐体18に対して着脱自在に取り付けられる。第2クランプ13のヒンジ部53は、X方向に沿って延びており、第1アーム51および第2アーム52の回動軸となる。また、第2クランプ13は、第1クランプ12と同様に、係合凸部58と、係合凹部59とを有し、開状態、半開き状態、閉状態となることができる。
【0050】
第2クランプ13の第1アーム51は、複数の凹凸が形成された押圧面54を有する。第2クランプ13の第2アーム52は、複数の凹凸が形成された押圧面55を有する。押圧面54と押圧面55とは、互いに対面している。第1アーム51と第2アーム52との間に配置された臍帯は、第1アーム51と第2アーム52とが密着して閉状態となることで押圧面54と押圧面55とにより押圧される。押圧面54の凹凸は、第1アーム51の中央に一列で配置されている。押圧面55の凹凸は、互いに平行な二列となるように配置されている。押圧面54のY2方向側の端部には、押圧面55に向かって突出した突出部56が設けられている。突出部56は、第1アーム51と第2アーム52との間に配置された臍帯が、押圧面54と押圧面55とにより押圧されY2方向側へ横滑りして押し出されることを抑制する。図13は、X1方向側の押圧面55に沿って切断した断面図である。
【0051】
次に、図14図16を用いて、臍帯クランプデバイス10の機能について説明する。出産時において、例えば医師・助産師などの使用者が右手に開状態の臍帯クランプデバイス10を持ち、図14に示すように、母体と新生児を繋ぐ胎盤から延びた臍帯Aを、第1筐体17と第2筐体18との間に配置する。図14において、紙面奥側が母体側(X1方向側)であり、紙面手前側が新生児側(X2方向側)である。臍帯クランプデバイス10の本体11を使用者の手で握る動作が行われると、本体11の第1筐体17と第2筐体18とが開状態から半開き状態になる。しごき部14を構成する第1押圧部21と第2押圧部22とは、母体側から遠ざかり児側に近づくほど、児側の端部が互いに近づくように傾いている。このため、しごき部14は、第1押圧部21と第2押圧部22とが児側の端部側から母体側の端部側に向けて順に閉じてゆき、臍帯Aを児側から母体側に向けて次第に挟んでゆくことができる。
【0052】
図15Aに示すように、しごき部14は、本体11の第1筐体17と第2筐体18とが開状態から半開き状態になる際に、開閉方向(図1のZ方向)において第1押圧部21と第2押圧部22とが児側(図1のX2方向)の端部側から互いに近づいてゆき、第1クランプ12と第2クランプ13とにより臍帯Aが挟まれる前に、第1押圧部21と第2押圧部22との児側の端部側から臍帯Aを母体側に向けてしごくように押圧し始めてゆく。これにより、しごき部14は、臍帯A内に残った体液を児側から母体側へ向けて一方向に次第に移動させてゆくことができる。図15Bに示すように、しごき部14は、臍帯Aを押圧する際に、臍帯Aに対しねじりモーメントを付与する。捻転している臍帯Aに対して、第1押圧部21と第2押圧部22とによりねじりモーメントが付与されることで、捻転した臍帯Aをほぐしながらしごくことができる。この結果、臍帯A内に残った体液を児側から母体側へと押し出しながら移動させる量が増大し得る。
【0053】
第1筐体17と第2筐体18とが半開き状態のときに、使用者は、臍帯Aをしごき部14で挟んだまま、臍帯クランプデバイス10を臍帯Aに沿って児側から母体側へと滑らすように移動する。これにより、臍帯クランプデバイス10は、しごき部14によって臍帯Aが一段としごかれ、臍帯A内に残った体液を児側から母側へ向けて一段と排除することができる。
【0054】
図16に示すように、第1クランプ12および第2クランプ13は、しごき部14により臍帯A内に残った体液を児側から母体側へ移動させた後に、本体11の第1筐体17と第2筐体18とが半開き状態から閉状態になることで臍帯を挟む。その後に切断スイッチ16の押下部26が使用者によって押下され、切断刃15により臍帯を切断する。臍帯を切断した後に、第1筐体17と第2筐体18とが閉状態から開状態となることで、第1クランプ12および第2クランプ13が本体11から取り外される。本体11から取り外された第1クランプ12は、児側に残った臍帯を挟んだ状態を維持する。本体11から取り外された第2クランプ13は、母体側に残った臍帯を挟んだ状態を維持する。
【0055】
臍帯クランプデバイス10は、切断スイッチ16の表面26aと第1筐体17の蓋部33の表面33aとが平面状に配置されているので、本体11を使用者の手で握る動作が行われた際に、誤って切断スイッチ16が押下されるリスクや、使用者の指が切断スイッチ16に当接して作業の妨げとなることを抑えることができる。切断スイッチ16は、本体11を使用者の手で握る動作とは別に、例えば使用者の親指で押し込むような動作により押下される。
【0056】
第1筐体17に設けられた切断スイッチ16はガイドピン27を有し、第2筐体18はガイド穴48を有している。第1筐体17と第2筐体18が半開き状態である場合には、ガイドピン27の位置がガイド穴48からずれているため、使用者によって切断スイッチ16が押下されても、ガイドピン27が第2筐体18と接触することでガイドピン27のガイド穴48への挿入が阻止され、切断スイッチ16の押下が規制される(ロック状態)。一方、第1筐体17と第2筐体18とが閉状態である場合には、ガイドピン27がガイド穴48へ挿入可能な位置に位置決めされていることから、使用者によって切断スイッチ16が押下されると、ガイドピン27がガイド穴48へ挿入し、切断スイッチ16の押下が許容される(非ロック状態)。臍帯クランプデバイス10は、切断スイッチ16の押下を規制するロック状態と、切断スイッチ16の押下を許容する非ロック状態とを切り替える安全機構として、ガイドピン27およびガイド穴48を備えているので、本体11に対して臍帯を確実に固定した状態で、切断刃15による臍帯の切断を行うことができる。
【0057】
以上の構成において、臍帯クランプデバイス10は、第1筐体17および第2筐体18を閉状態として、第1クランプ12および第2クランプ13により臍帯を挟む際に、しごき部14により臍帯を母体側に向けて押圧してゆき、臍帯をしごいてゆくこともできる。よって、臍帯クランプデバイス10は、第1筐体17および第2筐体18を閉状態にするだけで、第1クランプ12および第2クランプ13により臍帯を挟む作業と、臍帯を切断する前にしごき部14により臍帯内に残った体液を母体側に押し出す作業とを同時に行えるので、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。
【0058】
また、臍帯クランプデバイス10は、臍帯を切断する前に当該臍帯をしごいて、臍帯切断後に臍帯の児側に残る体液を臍帯切断前に排除することができるので、黄疸予防や、切断後の臍帯の清潔性向上を図ることができる。
【0059】
また、臍帯クランプデバイス10は、第1筐体17および第2筐体18が閉状態となった後に切断スイッチ16が使用者に押下されることにより、第1筐体17から切断刃15が露出するため、第1筐体17および第2筐体18が開状態のときに、切断刃15によって臍帯を損傷させることなく、第1クランプ12および第2クランプ13の間に臍帯を容易に位置決めすることができる。よって、切断刃15による臍帯の損傷を気にすることなく、第1クランプ12および第2クランプ13の間に臍帯を位置決めする作業を容易に行えるので、その分、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。
【0060】
また、臍帯クランプデバイス10は、第1筐体17および第2筐体18を閉状態として、第1クランプ12および第2クランプ13により臍帯を挟んだ後に、改めて切断スイッチ16を押下しない限り臍帯を切断することがなく、使用者の任意のタイミングで臍帯を切断させることができる。このため、臍帯クランプデバイス10は、第1筐体17および第2筐体18間に臍帯を挟んだ瞬間に切断刃15で臍帯を切断してしまうことがないので、仮に臍帯の挟む場所を間違えてしまったときでも、誤った箇所を切断してしまうことを確実に防止できる。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る臍帯クランプデバイス10は、ステープラのように使用者が片手で握持および操作可能な全体構成を有しており、第1クランプ12および第2クランプ13により臍帯を挟む作業と、臍帯を切断する前にしごき部14により臍帯内に残った体液を母体側に押し出す作業と、臍帯の適切な場所を切断する作業との一連の作業を、片手の単純な操作で実現可能であり、さらに、これら一連の作業の短縮化を図ることもできる。
【0062】
第1実施形態の臍帯クランプデバイス10は、クランプとしての第1クランプ12および第2クランプ13で臍帯を挟む際に臍帯を第1押圧部21および第2押圧部22によって母体側に向けて押圧してゆき、臍帯内の体液を母体側に向けてしごくように押し出す構成を有しているが、これに限定されない。臍帯クランプデバイスとしては、クランプで臍帯を挟む際に臍帯を第1押圧部および第2押圧部によって児側に向けて押圧してゆき、臍帯内の体液を児側に向けてしごくように押し出す構成を有するものでも良い。すなわち、臍帯クランプデバイスは、クランプで臍帯を挟む際に臍帯を第1押圧部および第2押圧部によって臍帯内の体液を臍帯に沿ってしごくように押してゆく構成を有する。
【0063】
2.第2実施形態
上述した第1実施形態では、しごき部14を構成する第1押圧部21および第2押圧部22が平面視でY方向の中心を通る中心線Cに対し非対称な形状に形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。第2実施形態では、第1押圧部および第2押圧部の形状が上記第1実施形態と異なり奥行方向の中心を通る中心線Cに対し対称な形状に形成されている場合について説明する。なお、上記第1実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略する。
【0064】
図17は、第2実施形態の第1押圧部71の平面図である。図17に示すように、第1押圧部71は、平面視で長方形に形成されている。第1押圧部71は、奥行方向の中心を通る中心線Cに対し対称な形状に形成されている。第2押圧部については、第1押圧部71と同じ構成を有するため、説明を省略する。
【0065】
図18は、第1押圧部71と第2押圧部72との間に配置された、X方向に延びる臍帯Aを第1押圧部71と第2押圧部72とによって押圧している状態を説明する説明図である。第2実施形態では、第1押圧部71と第2押圧部72とにより、しごき部74が構成されている。
【0066】
第2実施形態に係る臍帯クランプデバイスは、第1実施形態の臍帯クランプデバイス10のしごき部14の代わりに、第1押圧部71と第2押圧部72とを有するしごき部74を備えるものである。第2実施形態に係る臍帯クランプデバイスは、しごき部74以外は、臍帯クランプデバイス10と同じ構成を有する。しごき部74は、本体11の第1筐体17と第2筐体18とが開状態から閉状態になる際に、開閉方向において第1押圧部71と第2押圧部72とが児側の端部側から互いに近づいてゆき、第1クランプ12と第2クランプ13とにより臍帯が挟まれる前に、第1押圧部71と第2押圧部72との児側の端部側から臍帯を母体側に向けて押圧し始めてゆき、臍帯内に残った体液を児側から母体側へと押し出すように次第に移動させてゆく。このように、第2実施形態に係る臍帯クランプデバイスでも、上述した第1実施形態と同様に、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。
【0067】
なお、上述した第2実施形態では、第1押圧部71の形状と第2押圧部72の形状とを同じ形状としたが、本発明はこれに限らず、第1押圧部71の形状と第2押圧部72の形状とを異なる形状にしてもよい。
【0068】
3.第3実施形態
上述した第1実施形態では、本体に設けられるしごき部として、第1クランプ12と別体でしごき部14を構成し、当該しごき部14を本体に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。第3実施形態では、本体に設けられるしごき部として、第1クランプと一体にしごき部を構成し、第1クランプを介在させて、しごき部を本体に設ける場合について説明する。なお、上記第1実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略する。
【0069】
図19は、第3実施形態のしごき部84が設けられた第1クランプ82の斜視図である。図19に示すように、第1クランプ82は、第1アーム51と、第2アーム52と、ヒンジ部53とを有し、ヒンジ部53を介して第1アーム51と第2アーム52とが開閉自在に設けられている。第1クランプ82は、例えば図1に示された臍帯クランプデバイス10の第1クランプ12の代わりに用いられ、第1アーム51と第2アーム52との間に、X方向に延びる臍帯が配置される。
【0070】
しごき部84は、第1クランプ82と一体に構成されている。しごき部84は、第1アーム51に設けられた第1押圧部91と、第2アーム52に設けられた第2押圧部92とで構成されている。第1押圧部91と第2押圧部92とは、互いに平行に設けられ対向配置されている。
【0071】
第1押圧部91は、第1クランプ82が閉状態のときに第2アーム52と当接する第1アーム51の面部に形成されている。第1押圧部91は、母体側に設けられた第1傾斜部93aと、児側に設けられた第1平面部93bとを有する。
【0072】
第2押圧部92は、第1クランプ82が閉状態のときに第1アーム51と当接する第2アーム52の面部に形成されている。第2押圧部92は、母体側に設けられた第2傾斜部94aと、児側に設けられた第2平面部94bとを有する。
【0073】
第1押圧部91の第1平面部93bと第2押圧部92の第2平面部94bとは、第1クランプ82が閉状態のときに互いに密着するように形成されている。第1押圧部91の第1傾斜部93aと第2押圧部92の第2傾斜部94aとは、母体側に向かうほど端部が互いに離れるように傾いている。
【0074】
第3実施形態にかかる臍帯クランプデバイスは、母体と新生児を繋ぐ臍帯を挟むクランプとしての第1クランプ82および第2クランプ13に着脱自在に設けられる。第1クランプ82は、本体11の第1筐体17と第2筐体18とに着脱自在に設けられる。第1クランプ82と一体に構成されたしごき部84は、第1クランプ82を介在して、本体11に設けられる。しごき部84は、本体11の第1筐体17と第2筐体18とが開状態から閉状態になる際に、開閉方向において第1押圧部91と第2押圧部92とが児側の端部側から互いに近づいてゆき、第1クランプ82と第2クランプ13とにより臍帯が挟まれる前に、第1押圧部91と第2押圧部92との児側の端部側から臍帯を母体側に向けて押圧し始めてゆき、臍帯内に残った体液を児側から母体側へと次第に移動させてゆく。このように、第3実施形態に係る臍帯クランプデバイスでも、上述した第1実施形態と同様に、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。なお、臍帯クランプデバイスとしては、クランプで臍帯を挟む際に臍帯を第1押圧部および第2押圧部によって児側に向けて押圧してゆき、臍帯内の体液を児側に向けてしごくように押し出す構成を有するものでも良い。
【0075】
4.第4実施形態
上述した第1実施形態に係る臍帯クランプデバイス10は、しごき部14を設けて、第1筐体17および第2筐体18を閉状態としたときに、第1クランプ12および第2クランプ13により臍帯を挟む作業と、臍帯を切断する前に臍帯内に残った体液をしごき部14により母体側に押し出す作業とを同時に行えるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らない。第4実施形態の臍帯クランプデバイスは、しごき部を有しない構成とされている。また、第4実施形態では、スナップフィット構造により第1筐体と第2筐体とを嵌合させて、第1筐体と第2筐体との閉状態を維持する。スナップフィット構造とは、一方の部品に嵌合凸部を設け、他方の部品に嵌合凹部を設け、嵌合凸部の弾性を利用して嵌合凸部を嵌合凹部に嵌合させることによって、一方の部品と他方の部品とを固定させる構造をいう。
【0076】
図20は、第4実施形態の臍帯クランプデバイス100の構成を示す斜視図である。図20に示すように、臍帯クランプデバイス100は、母体と新生児を繋ぐ臍帯を挟むクランプとしての第1クランプ112および第2クランプ113に着脱自在に設けられる。臍帯クランプデバイス100は、本体111と、切断刃15と、切断スイッチ116とを備える。臍帯クランプデバイス100は、臍帯を挟む機能と臍帯を切断する機能とを有する臍帯切断デバイスである。本体111、第1クランプ112、第2クランプ113、切断スイッチ116は、例えば、プラスチックなどの樹脂材料で形成されている。第1クランプ112は、第1アーム51と第2アーム52とがヒンジ部53で連結された構成を有する。第1クランプ112は、しごき部を有しない。第1クランプ112の第1アーム51および第2アーム52のY2方向側の端部は、Y2方向に向かうほど、X方向に広がった形状を有している。第1クランプ112のヒンジ部53は、断面C状に形成されている。第2クランプ113は、第1クランプ112と同じ構成を有することから詳細な構成については説明を省略する。第1クランプ112と第2クランプ113とは、本実施形態では互いに同じ構成を有しているが、これに限定されず、互いに異なる構成を有しても良い。
【0077】
本体111は、第1筐体117と、第1筐体117と対向して配置された第2筐体118と、第1筐体117と第2筐体118とを回動自在に連結するヒンジ部(図示なし)とを有する。本体111は、ヒンジ部を介して第1筐体117と第2筐体118とが開閉自在に設けられ、第1筐体117と第2筐体118との間に、X方向に沿って臍帯が配置される。第1筐体117と第2筐体118とは、第1筐体117と第2筐体118とに着脱自在に設けられた第1クランプ112および第2クランプ113の開閉動作に応じて、開状態または閉状態になる。第1筐体117の内部には切断刃15が設けられている。図20では、第1筐体117の内部に設けられた切断刃15を点線で示している。第2筐体118には切断刃15が挿入される凹部47が設けられている。第1筐体117および第2筐体118は、本実施形態では直方体状に形成されているが、特に限定されない。ヒンジ部は、第1筐体117および第2筐体118のY1方向側の端部に設けられている。本実施形態では2つのヒンジ部がX方向に間隔をあけて配置されているが、図20では第1筐体117および第2筐体118の奥に隠れている。ヒンジ部は、本実施形態では板状に形成されているが、特に限定されない。
【0078】
図21は、切断スイッチ116を下側から視た斜視図である。図21に示すように、切断スイッチ116は、後述する嵌合凸部143と嵌合凹部134との嵌合を解除する嵌合解除部126を有する。切断スイッチ116は、嵌合解除部126を有すること以外は、上記第1実施形態の切断スイッチ16と同じ構成を有する。嵌合解除部126は、切断スイッチ116のY2方向側の端部に設けられている。嵌合解除部126は、四角柱状に形成され、保持部25の裏面25bから突出している。
【0079】
図22は、第1筐体117を下側から視た斜視図である。図22に示すように、第1筐体117は、上記第1実施形態の第1筐体17と同様に、切断スイッチ116が収容可能な開口部31を有する収容部32と、切断刃15を通過させる貫通穴41と、ガイドピン27を通過させる貫通穴42とを有する。第1筐体117の収容部32の裏面32bには、第1クランプ112の第1アーム51が配置される溝部44と、第2クランプ133の第1アーム51が配置される溝部45とが設けられている。第1筐体117の溝部44および溝部45のY2方向側の端部は、Y2方向に向かうほど、X方向に広がった形状を有している。
【0080】
第1筐体117は、第1筐体117と第2筐体118とが閉状態になった際に、後述する嵌合凸部143と嵌合する嵌合凹部134を有する。嵌合凹部134は、第1筐体117のY2方向の端部に設けられている。嵌合凹部134は、X方向に沿って互いに間隔をあけて設けられた一対の固定部134aで構成されている。固定部134aは断面L字状に形成されている。第1筐体117の内部には、切断刃15を保持した切断スイッチ116が収容される。第1筐体117は、切断刃15を通過させる貫通穴41と、切断スイッチ116の嵌合解除部126を通過させる貫通孔137とを有する。
【0081】
第1筐体117は、溝部44のY1方向側の上面に設けられた凹部138と、溝部44のY2方向側の上面に設けられた凸部139とを有する。凹部138は、第1クランプ112のヒンジ部53が嵌合される。図22では、凹部138は湾曲形状を有している。凸部139は、第1クランプ112の第1アーム51の他端部51bと当接する。第1クランプ112の第1アーム51は、ヒンジ部53が凹部138に嵌合し、かつ、他端部51bが凸部139に当接することで、第1筐体117に対して着脱自在に取り付けられる。第1筐体117の溝部45にも凹部138と凸部139とが設けられており、第2クランプ113の第1アーム51は、ヒンジ部53が凹部138に嵌合し、かつ、他端部51bが凸部139に当接することで、第1筐体117に対して着脱自在に取り付けられる。
【0082】
図23は、第2筐体118を上側から視た斜視図である。図23に示すように、第2筐体118は、上記第1実施形態の第2筐体18と同様に、切断刃15が挿入される凹部47と、ガイドピン27が挿入されるガイド穴48とを有する。第2筐体118の表面118aには、第1クランプ112の第2アーム52が配置される溝部49と、第2クランプ113の第2アーム52が配置される溝部50とが設けられている。第2筐体118の溝部49および溝部50のY2方向側の端部は、Y2方向に向かうほど、X方向に広がった形状を有している。
【0083】
第2筐体118は、第1筐体117に向かって突出した嵌合凸部143を有する。嵌合凸部143は、第2筐体118のY2方向側の端部に設けられている。嵌合凸部143は、第2筐体118の表面118aからZ1方向に向かって突出している。嵌合凸部143の先端には、Y1方向に突出した爪部144が設けられている。嵌合凸部143は、プラスチックなどの弾性を有する樹脂材料で形成されている。嵌合凸部143の爪部144と嵌合凹部134の一対の固定部134aとが嵌合することにより、第1筐体117と第2筐体118との閉状態が維持される。
【0084】
第2筐体118は、溝部49のY1方向側の底面に設けられた凹部148と、溝部49のY2方向側の底面に設けられた凸部149とを有する。凹部148は、第1クランプ112のヒンジ部53が嵌合される。図23では、凹部148は湾曲形状を有している。凸部149は、第1クランプ112の第2アーム52の他端部52bと当接する。第1クランプ112の第2アーム52は、ヒンジ部53が凹部148に嵌合し、かつ、他端部52bが凸部149に当接することで、第2筐体118に対して着脱自在に取り付けられる。第2筐体118の溝部50にも凹部148と凸部149とが設けられており、第2クランプ113の第2アーム52は、ヒンジ部53が凹部148に嵌合し、かつ、他端部52bが凸部149に当接することで、第2筐体118に対して着脱自在に取り付けられる。
【0085】
図24は、第4実施形態の臍帯クランプデバイス100の一部拡大図であり、第1筐体117に設けられた切断スイッチ116が押下された状態を示す概略図である。また、図24では、第1筐体117に嵌合する第2筐体118を仮想的に図示している。切断スイッチ116の押下部26が使用者によって押下されると、嵌合解除部126は、第1筐体117の貫通孔137に挿入され、第2筐体118に向かって突出する。
【0086】
図25に示すように、貫通孔137から突出した嵌合解除部126は、嵌合凸部143の爪部144の傾斜面144aを押圧する。嵌合解除部126は、爪部144の傾斜面144aに沿って移動することで、嵌合凸部143に対し爪部144をY2方向側へと移動させる力を与え、嵌合凸部143をY2方向側へ撓むように弾性変形させる。このように、嵌合解除部126は、弾性により嵌合凸部143をY2方向側に撓ませることで、嵌合凹部134と嵌合凸部143との嵌合を解除する。嵌合凹部134と嵌合凸部143との嵌合が解除されることにより、第1筐体117と第2筐体118とを閉状態から開状態にすることができるようになる。
【0087】
第4実施形態の臍帯クランプデバイス100は、第1筐体117に嵌合凹部134が設けられ、第2筐体118に嵌合凸部143が設けられ、嵌合凸部143と嵌合凹部134との嵌合により第1筐体117と第2筐体118との閉状態が維持されるので、臍帯を切断する際に第1筐体117と第2筐体118とが開状態になることが防止される。
【0088】
臍帯クランプデバイス100では、第1筐体117と第2筐体118とが閉状態となり、第1筐体117と第2筐体118との間に臍帯が挟まれた状態となった後に、使用者によって切断スイッチ116が押下されることにより、第1筐体117の内部に収容されていた切断刃15を露出させ、当該切断刃15により臍帯を切断することができる。このように、臍帯クランプデバイス100は、第1筐体117および第2筐体118が閉状態となった後に切断スイッチ116が使用者に押下されることにより、第1筐体117から切断刃15が露出するため、第1筐体117および第2筐体118が開状態のときに、切断刃15によって臍帯を損傷させることなく、第1クランプ112および第2クランプ113の間に臍帯を容易に位置決めすることができる。よって、切断刃15による臍帯の損傷を気にすることなく、第1クランプ112および第2クランプ113の間に臍帯を位置決めする作業を行えるので、その分、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。
【0089】
なお、上述した第4実施形態においては、第1筐体117に向かって突出した嵌合凸部143を第2筐体118に設け、第1筐体117と第2筐体118とが閉状態になった際に、嵌合凸部143と嵌合する嵌合凹部134を第1筐体117に設けた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、第2筐体118に向かって突出した嵌合凸部を第1筐体117に設け、第1筐体117と第2筐体118とが閉状態になった際に、当該嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部を第2筐体118に設けてもよい。この場合、第2筐体118に設けられた嵌合凹部の先端部に傾斜面を設ける。そして、貫通孔137から突出した嵌合解除部126は、嵌合凹部の傾斜面を押圧する。嵌合解除部126は、当該傾斜面に沿って移動することで、嵌合凹部に対してY2方向側面側へと移動させる力を与え、嵌合凹部をY2方向側へ撓むように弾性変形させる。このように、嵌合解除部126は、弾性により嵌合凹部をY2方向側に撓ませることで、嵌合凹部と嵌合凸部との嵌合を解除することができる。
【0090】
5.第5実施形態
上述した第1実施形態においては、第1筐体17の溝部44に凸部39と突起部40とを設け、第1クランプ12の第1アーム51に凹部63と段部64とを設け、凹部63に凸部39が嵌合し、かつ、段部64に突起部40が係合することで、第1クランプ12の第1アーム51を第1筐体17に対して着脱自在に取り付けられるように構成した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。第5実施形態では、第1筐体の溝部に凸部と突起部とを設けず、第1クランプの第1アームに凹部と段部とを設けずに、第1クランプ12の第1アーム51を第1筐体17に対して着脱自在に取り付けられるように構成した場合について説明する。
【0091】
図26は、第5実施形態の臍帯クランプデバイス150の構成を示す斜視図である。図26に示すように、臍帯クランプデバイス150は、母体と新生児を繋ぐ臍帯を挟むクランプとしての第1クランプ152および第2クランプ153に着脱自在に設けられる。臍帯クランプデバイス150は、本体151と、しごき部14と、切断刃15と、切断スイッチ16とを備える。臍帯クランプデバイス150は、臍帯を挟む機能と臍帯を切断する機能とを有する臍帯切断デバイスである。本体151、第1クランプ152および第2クランプ153は、例えば、プラスチックなどの樹脂材料で形成されている。
【0092】
本体151は、第1筐体157と、第1筐体157と対向して配置された第2筐体158と、第1筐体157と第2筐体158とを回動自在に連結するヒンジ部(図示なし)とを有する。本体151は、ヒンジ部を介して第1筐体157と第2筐体158とが開閉自在に設けられ、第1筐体157と第2筐体158との間に、X方向に沿って臍帯が配置される。第1筐体157と第2筐体158とは、第1筐体157と第2筐体158とに着脱自在に設けられた第1クランプ152および第2クランプ153の開閉動作に応じて、開状態または閉状態になる。第1筐体157の内部には切断刃15が設けられている。図26では、第1筐体157の内部に設けられた切断刃15を点線で示している。第2筐体158には切断刃15が挿入される凹部47が設けられている。第1筐体157および第2筐体158は、本実施形態では直方体状に形成されているが、特に限定されない。
【0093】
第1筐体157のY2方向側の端部には、第1クランプ152および第2クランプ153を第1筐体157に対し着脱自在に取り付けるためのクランプ取付部材159が設けられている。クランプ取付部材159は、溝部44と溝部45との間に配置されている。クランプ取付部材159は、第1筐体157に設けられた軸部と、第1筐体157の溝部44および溝部45のY2方向側の開口を少なくとも覆うように構成された押え部とを有する。本実施形態では、軸部が第1筐体157に回転自在に取り付けられ、押え部が軸部に一体に設けられているが、これに限られず、軸部を第1筐体157に固定し、押え部を軸部に回転自在に取り付けても良い。
【0094】
第1筐体157に対し第1クランプ152および第2クランプ153を取り付ける際は、溝部44および溝部45のY2方向側の開口が、クランプ取付部材159の押え部で覆われないように、軸部を中心に押え部を回転させる。これにより、第1クランプ152の第1アーム51を第1筐体157の溝部44に配置することができ、また、第2クランプ153の第1アーム51を第1筐体157の溝部45に配置することができる。第1クランプ152の第1アーム51が溝部44に配置され、第2クランプ153の第1アーム51が溝部45に配置された状態で、溝部44および溝部45のY2方向側の開口が、クランプ取付部材159の押え部で覆われるように、軸部を中心に押え部を回転させる。これにより、第1筐体157に対し第1クランプ152および第2クランプ153が取り付けられる。第1筐体157から第1クランプ152および第2クランプ153を取り外す際は、溝部44および溝部45のY2方向側の開口が、クランプ取付部材159の押え部で覆われないように、軸部を中心に押え部を回転させる。なお、臍帯クランプデバイス150でも、上述した第4実施形態の臍帯クランプデバイス100と同様に、しごき部を有しない構成としてもよい。臍帯クランプデバイスとしては、クランプで臍帯を挟む際に臍帯を第1押圧部および第2押圧部によって児側に向けて押圧してゆき、臍帯内の体液を児側に向けてしごくように押し出す構成を有するものでも良い。
【0095】
6.第6実施形態
上述した第1実施形態においては、切断刃15を備えた臍帯クランプデバイス10(臍帯切断デバイス)について説明したが、本発明はこれに限らない。第6実施形態では、切断刃を備えていない場合について説明する。
【0096】
図27は、母体と新生児を繋ぐ胎盤から延びる臍帯を挟むクランプ201にしごき部204を設けた、臍帯クランプデバイス200の斜視図である。図27に示すように、臍帯クランプデバイス200は、母体と新生児を繋ぐ臍帯を挟むクランプとしてのクランプ201に着脱自在に設けられる。クランプ201は、本実施形態では上述した第1クランプ82と同じ構成を有する。クランプ201は、第1アーム51、第2アーム52、およびヒンジ部53(図示なし)を有し、第1アーム51と第2アーム52との間に、X方向に沿って臍帯が配置される。なお、クランプ201は、例えば、上述した第1実施形態の第2クランプ13と同じ構成を有するものでも良い。
【0097】
臍帯クランプデバイス200は、クランプ201に着脱自在に設けられたしごき部204を備える。しごき部204は、クランプ201の開閉動作に連動して第1押圧部211と第2押圧部212とが開閉自在に設けられ、クランプ201で挟む臍帯が第1押圧部211と第2押圧部212との間に配置される構成を有する。具体的には、しごき部204は、第1押圧部211が第1支持体213に支持され、第2押圧部212が第2支持体214に支持された構成を有する。第1支持体213と第2支持体214とは、プラスチックなどの樹脂部材により平板状に形成されている。第1支持体213のX1方向側の端部は、第1アーム51のX2方向側の端部に着脱自在に取り付けられている。第2支持体214のX1方向側の端部は、第2アーム52のX2方向側の端部に着脱自在に取り付けられている。このように、クランプ201には、当該クランプ201の開閉動作に連動して第1支持体213および第2支持体214が開閉自在に設けられる。
【0098】
第1押圧部211および第2押圧部212は、例えば、シリコーンゴムなどのように軟質な弾性部材により形成されており、クランプ201が閉状態のときに互いに当接することで変形可能な構成を有する。第1押圧部211は、第1押圧面211aと第2押圧面211bとにより形成された頂部216を有する。第1押圧面211aはY2方向側に配置され、第2押圧面211bはY1方向側に配置されている。第2押圧部212は、第1押圧面212aと第2押圧面212bとにより形成された頂部217を有する。第1押圧面212aはY2方向側に配置され、第2押圧面212bはY1方向側に配置されている。
【0099】
図28は、しごき部204の構成を説明するための説明図であり、しごき部204を児側(X2方向側)から視たときの側面図である。図28では、クランプ201(図示なし)で挟まれたX方向に延びる臍帯Aが、第1押圧部211の頂部216と第2押圧部212の頂部217とにより挟まれている。
【0100】
次に、図29A図29Cを用いて第2押圧部212について説明する。図29Aは、第2押圧部212の平面図である。図29Bは、第2押圧部212の正面図である。図29Cは、第2押圧部212の右側面図である。なお、第1押圧部211は、第2押圧部212をXY平面に対して反転させたときの形状と同じ形状を有する。このため、ここでは臍帯クランプデバイス200の下側に配置された第2押圧部212を例示して説明し、上側に配置された第1押圧部211の説明は省略する。なお、第1押圧部211および第2押圧部212の各種寸法については適宜調整が可能である。
【0101】
図29Aに示すように、第1押圧面212aは、平面視で長方形状に形成されている。第2押圧面212bは、平面視で台形状に形成されている。第2押圧面212bは、X1方向側(母体側)の端部の長さL1よりも、X2方向側(児側)の端部の長さL2の方が大きくなるように形成されている。頂部217はX方向に平行に延びている。第2押圧部212は、第1押圧面212aおよび第2押圧面212bに加え、正面212c、左側面212dおよび右側面212eを有する。
【0102】
図29Bに示すように、第2押圧部212は、X1方向側(母体側)の端部の厚みT1よりも、X2方向側(児側)の端部の厚みT2の方が大きくなるように形成されている。このため、第1押圧面212aは、児側から母体側に向けて、第2支持体214の表面に近づくように傾斜している。図示していないが、第2押圧面212bも、第1押圧面212aと同様に、児側から母体側に向けて、第2支持体214の表面に近づくように傾斜している。
【0103】
図29Cに示すように、第1押圧面212aは、Y2方向側からY1方向側に向けて、第2支持体214の表面に近づくように傾斜している。第2押圧面212bは、第1押圧面212aよりも第2支持体214の表面に対する傾斜角度が大きくなるように、Y2方向側からY1方向側に向けて、第2支持体214の表面に近づくように傾斜している。
【0104】
次に、図30を用いて、しごき部204の機能を説明する。
【0105】
図30に示すように、まず、しごき部204の第1押圧部211と第2押圧部212との間に母体と新生児を繋ぐ胎盤からX方向に延びる臍帯Aを配置し、当該臍帯Aを頂部216と頂部217とに接触させる。次に、クランプ201が開状態から閉状態になる際に、しごき部204は、開閉方向において第1押圧部211と第2押圧部212とが互いに近づいてゆき、臍帯Aを押圧し始める。このとき、臍帯Aには、しごき部204により、ねじりモーメントが付与される。次に、クランプ201が開状態から閉状態になると、しごき部204は、第1押圧部211の第1押圧面211aと第2押圧部212の第2押圧面212bとが平面状に位置するようになる。しごき部204は、第1押圧面211aと第2押圧面212bとの隙間に配置された臍帯Aをほぐしながらしごき、臍帯A内に残った体液を母体側へと押し出しながら移動させる。次に、図31を用いて、臍帯クランプデバイス200の使用方法を説明する。まず、母体と新生児を繋ぐ臍帯Aを、クランプ201の第1アーム51と第2アーム52との間にX方向に沿って配置するとともに、第1押圧部211と第2押圧部212との間にX方向に沿って配置する。次に、クランプ201が開状態から閉状態になる際に、第1押圧部211と第2押圧部212とが児側の端部側から母体側の端部側に向けて順に閉じてゆき、臍帯Aを児側から母体側に向けて次第に挟んでゆくことで、児側から母体側に向けて臍帯Aをしごくように次第に押圧してゆき、臍帯A内に残った体液を児側から母体側へと次第に移動させてゆく。クランプ201が閉状態になると、臍帯Aのうち、臍帯クランプデバイス200により挟まれている部分の体液が排除される。その後、クランプ201が臍帯Aを挟んだ状態で、当該クランプ201からしごき部204を取り外すことで、臍帯Aにクランプ201を残すことができる。
【0106】
以上の構成において、しごき部204は、クランプ201により臍帯を挟む際に、臍帯を母体側に向けて押圧してゆき、臍帯をしごいてゆくことができる。よって、しごき部204は、クランプ201を閉状態とするだけで、クランプ201により臍帯を挟む作業と、臍帯を切断する前に臍帯内に残った体液を当該臍帯から母体側に押し出す作業とを同時に行えるので、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。なお、臍帯クランプデバイスとしては、クランプで臍帯を挟む際に臍帯を第1押圧部および第2押圧部によって児側に向けて押圧してゆき、臍帯内の体液を児側に向けてしごくように押し出す構成を有するものでも良い。
【0107】
7.第7実施形態
上述した第6実施形態に係る臍帯クランプデバイス200は、第1支持体213のX1方向側の端部がクランプ201の第1アーム51のX2方向側の端部に着脱自在に取り付けられ、第2支持体214のX1方向側の端部がクランプ201の第2アーム52のX2方向側の端部に着脱自在に取り付けられている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。
【0108】
図32に示すように、第7実施形態に係る臍帯クランプデバイス300は、母体と新生児を繋ぐ臍帯を挟むクランプとしてのクランプ301に着脱自在に設けられる。クランプ301は、本実施形態では上述した第4実施形態の第1クランプ112または第2クランプ113と同じ構成を有する。クランプ301は、第1アーム51、第2アーム52、およびヒンジ部53(図示なし)を有し、第1アーム51と第2アーム52との間に、X方向に沿って臍帯が配置される。なお、クランプ301は、例えば、上述した第1実施形態の第2クランプ13または第3実施形態の第1クランプ82と同じ構成を有するものでも良い。
【0109】
臍帯クランプデバイス300は、クランプ301に着脱自在に設けられたしごき部304を備える。しごき部304は、クランプ301の開閉動作に連動して第1押圧部311と第2押圧部312とが開閉自在に設けられ、クランプ301で挟む臍帯が第1押圧部311と第2押圧部312との間に配置される構成を有する。具体的には、しごき部304は、第1押圧部311が第1支持体313に支持され、第2押圧部312が第2支持体314に支持された構成を有する。第1押圧部311および第2押圧部312は、例えば、シリコーンゴムなどのように軟質な弾性部材により形成されており、クランプ301が閉状態のときに互いに当接することで変形可能な構成を有する。第1支持体313と第2支持体314とは、プラスチックなどの樹脂部材により形成されている。
【0110】
第1支持体313は、第1板状部313aと、第1板状部313aに設けられた第1連結部313bとを有する。第1支持体313は、第1押圧部311を支持する。第1連結部313bは、断面C状に形成された凸部材を有する。
【0111】
第2支持体314は、第2板状部314aと、第2板状部314aに設けられ、第1連結部313bと連結する第2連結部314bとを有する。第2支持体314は、第2押圧部312を支持する。第2連結部314bは、断面C状に形成された凹部材を有する。第1支持体313と第2支持体314とは、第1連結部313bの凸部材が第2連結部314bの凹部材に挿入されることで、開閉自在に連結される。
【0112】
図33に示すように、第1支持体313は、クランプ301の第1アーム51が配置される溝部316を有する。溝部316は、例えば、第1アーム51のX方向の長さよりも、当該溝部316のX方向の長さを若干小さくなっている。クランプ301の第1アーム51が溝部316内に押し込まれることで、第1支持体313に対し第1アーム51が着脱自在に取り付けられる。溝部316のY2方向側の端部は、Z2方向(下方)に向かって突出しており、クランプ301の第1アーム51の他端部51bと当接する。第2支持体314は、クランプ301の第2アーム52が配置される溝部317を有する。溝部317は、例えば、第2アーム52のX方向の長さよりも、当該溝部317のX方向の長さを若干小さくなっている。クランプ301の第2アーム52が溝部317内に押し込まれることで、第2支持体314に対し第2アーム52が着脱自在に取り付けられる。溝部317のY2方向側の端部は、Z1方向(上方)に向かって突出しており、クランプ301の第2アーム52の他端部52bと当接する。
【0113】
図34は、しごき部304の正面図である。図34に示すように、第1押圧部311のX2方向側(児側)の端部は、第1支持体313の第1板状部313aのX2方向側の端部から突出するように配置されている。第2押圧部312のX2方向側(児側)の端部は、第2支持体314の第2板状部314aのX2方向側の端部から突出するように配置されている。これにより、臍帯クランプデバイス300が児と接触したとしても、軟質な弾性部材により形成されている第1押圧部311および第2押圧部312がクッションとなり、児の怪我を防止できる。
【0114】
図35は、しごき部304の右側面図である。図35に示すように、第1支持体313と第2支持体314との間には付勢部材318が設けられている。付勢部材318は、図35では第1支持体313の第1板状部313aに設けられ、第2支持体314の第2板状部314aに向かって突出するように構成されているが、これに限られず、第2支持体314の第2板状部314aに設けられ、第1支持体313の第1板状部313aに向かって突出するように構成されても良い。付勢部材318は、クランプ301が開状態から閉状態となることで、第1支持体313と第2支持体314とに付勢力を与える。付勢部材318の付勢力により、第1支持体313と第2支持体314とが開いて、閉状態のクランプ301からしごき部304を取り外すことができる。
【0115】
図36A図36Fを用いて第1押圧部311の構成について説明する。図36Aは、第1押圧部311の正面図である。図36Bは、第1押圧部311の背面図である。図36Cは、第1押圧部311の平面図である。図36Dは、第1押圧部311の底面図である。図36Eは、第1押圧部311の左側面図である。図36Fは、第1押圧部311の右側面図である。
【0116】
第1押圧部311は、正面311a、背面311b、平面311c、底面311d、左側面311eおよび右側面311fを有する。平面311cが第1支持体313の第1板状部313aに取り付けられる。底面311dは第1押圧面であり、背面311bは第2押圧面である。第1押圧部311は、第1押圧面としての底面311dと第2押圧面としての背面311bとにより形成された頂部326を有する。頂部326はX方向(図35参照)に平行に延びている。
【0117】
図37A図37Fを用いて第2押圧部312の構成について説明する。図37Aは、第2押圧部312の正面図である。図37Bは、第2押圧部312の背面図である。図37Cは、第2押圧部312の平面図である。図37Dは、第2押圧部312の底面図である。図37Eは、第2押圧部312の左側面図である。図37Fは、第2押圧部312の右側面図である。
【0118】
第2押圧部312は、正面312a、背面312b、第1平面312c1、第2平面312c2、底面312d、左側面312eおよび右側面312fを有する。底面312dが第2支持体314の第2板状部314aに取り付けられる。正面312aは第1押圧面であり、第1平面312c1は第2押圧面である。第2押圧部312は、第1押圧面としての正面312aと第2押圧面としての第1平面312c1とにより形成された頂部327を有する。頂部327はX方向(図35参照)に平行に延びている。第1平面312c1と第2平面312c2との間には谷部328が形成されている。図37Cに示すように、谷部328は、右側面312fから左側面312eに向かうほど(すなわち、児側から母体側に向かうほど)、頂部327に近づくように延びている。谷部328は、臍帯を第1押圧部311の頂部326と第2押圧部312の頂部327とに接触させる際に、臍帯の位置決めを支援する機能を有する。
【0119】
次に、図38を用いて、しごき部304の機能を説明する。
【0120】
図38に示すように、まず、しごき部304の第1押圧部311と第2押圧部312との間に母体と新生児を繋ぐ胎盤からX方向に延びる臍帯Aを配置し、当該臍帯Aを第1押圧部311の頂部326と第2押圧部312の頂部327とに接触させる。次に、クランプ301が開状態から閉状態になる際に、しごき部304は、開閉方向において第1押圧部311と第2押圧部312とが互いに近づいてゆき、臍帯Aを押圧し始める。このとき、臍帯Aには、しごき部304により、ねじりモーメントが付与される。次に、クランプ301が開状態から閉状態になると、しごき部304は、第1押圧部311の第1押圧面としての底面311dと、第2押圧部312の第2押圧面としての第1平面312c1とが平面状に位置するようになる。しごき部304は、第1押圧面と第2押圧面との隙間に配置された臍帯Aをほぐしながらしごき、臍帯A内に残った体液を母体側へと押し出しながら移動させる。
【0121】
以上の構成において、臍帯クランプデバイス300は、クランプ301により臍帯を挟む際に、しごき部304により臍帯を母体側に向けて押圧してゆき、臍帯をしごいてゆくことができる。よって、臍帯クランプデバイス300は、クランプ301を閉状態とするだけで、クランプ301により臍帯を挟む作業と、臍帯を切断する前に臍帯内に残った体液を当該臍帯から母体側に押し出す作業とを同時に行えるので、臍帯を切断する際の作業負担を軽減することができる。なお、臍帯クランプデバイスとしては、クランプで臍帯を挟む際に臍帯を第1押圧部および第2押圧部によって児側に向けて押圧してゆき、臍帯内の体液を児側に向けてしごくように押し出す構成を有するものでも良い。
【0122】
以上、各実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。各実施形態の構成は組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0123】
10、100、150、200、300 臍帯クランプデバイス
11、111、151 本体
12、82、112、152 第1クランプ
13、113、153 第2クランプ
14、74、84、204、304 しごき部
17、117、157 第1筐体
18、118、158 第2筐体
15 切断刃
201、301 クランプ
A 臍帯

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図29C
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36A
図36B
図36C
図36D
図36E
図36F
図37A
図37B
図37C
図37D
図37E
図37F
図38