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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146624
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電解液およびリチウム金属二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20241004BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20241004BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241004BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059645
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】藤野 健
(72)【発明者】
【氏名】銭 朴
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ10
(57)【要約】
【課題】充放電を繰り返しても、リチウム金属二次電池の量維持率を高くすることが可能な電解液を提供すること。
【解決手段】電解液は、有機溶媒と、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドと、アルカリ土類金属塩と、を含み、前記アルカリ土類金属塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ土類金属塩及びビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドのアルカリ土類金属塩の一方又は両方であって、前記アルカリ土類金属塩の含有率が0.1質量%以上1.0質量%以下の範囲内にある。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒と、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドと、アルカリ土類金属塩と、を含み、
前記アルカリ土類金属塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ土類金属塩及びビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドのアルカリ土類金属塩の一方又は両方であって、
前記アルカリ土類金属塩の含有率が0.1質量%以上1.0質量%以下の範囲内にある、電解液。
【請求項2】
前記有機溶媒がエーテル系溶媒である、請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記エーテル系溶媒が、溶媒1分子に対して酸素原子を2個含んでいる鎖状エーテルとハイドロフルオロエーテルとを含む、請求項2に記載の電解液。
【請求項4】
前記鎖状エーテルと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量がモル比で1:2.0~2.7の範囲にある、請求項3に記載の電解液。
【請求項5】
前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が、2.0mol/L以上3.0mol/Lの範囲内にある、請求項1に記載の電解液。
【請求項6】
さらに、オキサラト錯体化合物、カーボネート化合物、スルホン化合物及びスルホキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含み、
前記化合物の含有率が0.1質量%以上1.0質量%以下の範囲内にある、請求項1に記載の電解液。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電解液を有する、リチウム金属二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液およびリチウム金属二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの人々が手頃で信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が実施されている。二次電池としては、例えば、正極集電体と、リチウム複合酸化物を含む正極合材層と、を有する正極と、負極集電体と、リチウム金属層と、を有する負極と、電解液が含浸しているセパレータと、を備えるリチウム金属二次電池が知られている。
【0003】
電解液としては、例えば、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液が知られている。ここで、電解質塩は、LiPF、LiBF、LiN(SOF)、LiN(SOCFおよびLiN(SOから選ばれる少なくとも一種の第1のリチウム塩と、シュウ酸骨格を有するリチウム塩、リン酸骨格を有するリチウム塩およびS=O基を有するリチウム塩から選ばれる少なくとも一種の第2のリチウム塩とを含む。また、第1のリチウム塩および第2のリチウム塩は、合計で四種以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/009994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二次電池に関する技術では、容量の向上とサイクル寿命の向上が課題である。リチウム金属二次電池は、負極活物質がリチウム金属であるため容量が向上する。しかしながら、リチウム金属二次電池においては、充放電を繰り返すとクーロン効率が低下して、容量維持率が低くなるという問題がある。
【0006】
本願は上記課題解決のため、充放電を繰り返しても、リチウム金属二次電池の容量維持率を高くすることが可能な電解液を提供することを目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、有機溶媒とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド[LiFSI:(LiN(SOF))]とを含む電解液に、所定のアルカリ土類金属塩を所定の量で加えることによって、上記の課題を解決することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、次のものを提供する。
【0008】
(1)有機溶媒と、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドと、アルカリ土類金属塩と、を含み、前記アルカリ土類金属塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ土類金属塩及びビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドのアルカリ土類金属塩の一方又は両方であって、前記アルカリ土類金属塩の含有率が0.1質量%以上1.0質量%以下の範囲内にある、電解液。
【0009】
(1)の電解液は、上記のアルカリ土類金属塩を上記の範囲内で含むので、充放電を繰り返しても、リチウム金属二次電池の容量維持率を高くすることが可能となる。
【0010】
(2)前記有機溶媒がエーテル系溶媒である、(1)に記載の電解液。
(3)前記エーテル系溶媒が、溶媒1分子に対して酸素原子を2個含んでいる鎖状エーテルとハイドロフルオロエーテルとを含む、(2)に記載の電解液。
【0011】
(3)の電解液は、溶媒1分子に対して酸素原子を2個含んでいる鎖状エーテルは配位構造が安定なため、耐久性が向上する。
【0012】
(4)前記鎖状エーテルと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量がモル比で1:2.0~2.7の範囲にある、(3)に記載の電解液。
【0013】
(4)の電解液は、前記鎖状エーテルと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量が上記の範囲内にあるので、充放電を繰り返しても、リチウム金属二次電池の容量維持率をより高くすることが可能となる。
【0014】
(5)前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が、2.0mol/L以上3.0mol/Lの範囲内にある、(1)~(4)のいずれか1つに記載の電解液。
【0015】
(5)の電解液は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が高く、クーロン効率が向上するので、リチウム金属二次電池の容量維持率をさらに高くすることが可能となる。
【0016】
(6)さらに、オキサラト錯体化合物、カーボネート化合物、スルホン化合物及びスルホキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含み、前記化合物の含有率が0.1質量%以上1.0質量%以下の範囲内にある、(1)~(5)のいずれか1つに記載の電解液。
【0017】
(6)の電解液は、さらに上記の化合物を上記の範囲内で含むので、リチウム金属二次電池の容量維持率をより高くすることが可能となる。
【0018】
(7)(1)~(6)のいずれか1つに記載の電解液を有する、リチウム金属二次電池。
【0019】
(7)のリチウム金属二次電池は、上述の電解液を有するので、充放電を繰り返しても、容量維持率を高くなる。よって、(7)のリチウム金属二次電池は、容量とサイクル寿命とが向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、充放電を繰り返しても、リチウム金属二次電池の容量維持率を高くすることが可能な電解液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
[電解液]
本実施形態の電解液は、有機溶媒と、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド[LiFSI:(LiN(SOF))]と、アルカリ土類金属塩と、を含む。アルカリ土類金属塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ土類金属塩及びビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドのアルカリ土類金属塩の一方又は両方とされている。
【0023】
電解液のLiFSIの濃度は、例えば2.0mol/L以上3.0mol/Lの範囲内にあってもよく、2.2mol/L以上2.8mol/L以下の範囲内にあってもよい。
【0024】
アルカリ土類金属塩は、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩及びバリウム塩であってもよく、マグネシウム塩及びカルシウム塩であってもよい。アルカリ土類金属塩は、例えばマグネシウムビス(フルオロスルホニル)イミド{Mg(FSI):Mg[N(SOF)}、マグネシウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド{Mg(TFSI):Mg[N(SOCF}カルシウムビス(フルオロスルホニル)イミド{Ca(FSI):Ca[N(SOF)}、カルシウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド{Ca(TFSI):Ca[N(SOCF}であってもよい。アルカリ土類金属塩は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。電解液のアルカリ土類金属塩の含有率は、0.1質量%以上1.0質量%以下の範囲内とされている。アルカリ土類金属塩の含有率は、電解液の全体量に対するアルカリ土類金属塩の含有量(アルカリ土類金属塩の含有量/電解液の全体量×100)である。アルカリ土類金属塩の含有率は、0.3質量%以上0.7質量%以下の範囲内にあってもよい。
【0025】
有機溶媒としては、リチウム塩を溶解させることが可能であれば、特に限定されない。有機溶媒としては、例えばエーテル系溶媒、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、スルホン、ニトリルを用いることができる。有機溶媒は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
エーテル系溶媒は、鎖状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、環状エーテル、芳香族エーテル及びこれらの混合物であってもよい。
鎖状エーテルは、1分子に対して酸素原子を1つまたは2つ含んでいてもよい。酸素原子を1つ含む鎖状エーテルは、ジアルキルエーテルであってもよい。酸素原子を2つ含む鎖状エーテルは、下記の一般式(1)で表されるジアルコキシアルカンであってもよい。
O-L-OR (1)
式(1)において、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~2のアルキル基を表し、Lは、炭素原子数1~3のアルキレン基を表す。アルキル基の水素の一部もしくは全部はフッ素で置換されていてもよい。
【0027】
ジアルキルエーテルの例として、ジエチルエーテル等が挙げられる。ジアルコキシアルカンの例としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられる。ハイドロフルオロエーテルの例としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、1,2-ビス(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン等が挙げられる。環状エーテルの例としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル1,3-ジオキソラン等が挙げられる。芳香族エーテルの例としては、アニソールが挙げられる。
【0028】
エーテル系溶媒は、例えば沸点が80℃以上のエーテルと、沸点が80℃未満のエーテルの混合物であってもよい。沸点が80℃未満のエーテルは沸点が50~75℃の範囲内にあってもよい。エーテル系溶媒は鎖状エーテルとハイドロフルオロエーテルとの混合物であってもよく、1分子に対して酸素原子を2個含む鎖状エーテルとハイドロフルオロエーテルとの混合物であってもよく、1,2-ジメトキシエタンとハイドロフルオロエーテルとの混合物であってもよい。ジアルコキシアルカンとハイドロフルオロエーテルとの混合比は、モル比で50:50~80:20の範囲内にあってもよい。また、1分子に対して酸素原子を2個含む鎖状エーテルとLiFSIの含有量がモル比で1:2.0~2.7の範囲にあってもよい。
【0029】
カーボネート系溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート及びこれらの混合物であってもよい。環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネート等が挙げられる。エステル系溶媒は、環状エステル、鎖状カルボン酸エステル及びこれらの混合物であってもよい。環状エステルの例としては、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。鎖状カルボン酸エステルの例としては、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。スルホンの例としては、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。ニトリルの例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。
【0030】
本実施形態の電解液は、上述の有機溶媒、LiFSI及びアルカリ土類金属塩のみを含んでいてもよい。本実施形態の電解液は、さらに、添加物を含んでいてもよい。また上記の有機溶媒は、水素が一部フッ素、塩素、臭素などに置換された化合物でもよい。
【0031】
添加物としては、オキサラト錯体化合物、カーボネート化合物、スルホン化合物及びスルホキシド化合物を用いることができる。オキサラト錯体化合物及びカーボネート化合物は、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成されやすくする作用がある。スルホン化合物及びスルホキシド化合物は、アルカリ土類金属の硫酸塩を形成させやすくする作用がある。アルカリ土類金属の炭酸塩や硫酸塩が形成されることによって、電池の充電時にアルカリ土類金属イオンが負極に析出することが抑制され、電池の充電時に負極のリチウム上での析出反応が均一となりやすくなる。これらの添加物の含有率は、例えば0.1質量%以上1.0質量%以下の範囲内である。添加物の含有率は、電解液の全体量に対する添加物の含有量(炭化物の含有量/電解液の全体量×100)である。また、添加物の含有量は、アルカリ土類金属塩に対する含有率(電解液中の添加物の含有量/アルカリ土類金属塩の含有量×100)として、50質量%以上200質量%以下の範囲内にあってもよい。
【0032】
オキサラト錯体化合物の例としては、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸が挙げられる。カーボネート化合物としては、環状カーボネート、鎖状カーボネートを用いることができる。環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネート等が挙げられる。スルホン化合物の例としては、エチルメチルスルホンを挙げることができる。スルホキシド化合物の例としては、ジメチルスルホキシドを挙げることができる。
【0033】
以上のような構成とされた本実施形態の電解液によれば、上述のアルカリ金属土類を上述の範囲で含むので、充放電を繰り返しても、リチウム金属二次電池の容量維持率を高くすることが可能となる。
【0034】
本実施形態の電解液において、有機溶媒がエーテル系溶媒である場合は、耐還元性が向上するため、充放電を繰り返しても、リチウム金属二次電池の容量維持率をより高くすることが可能となる。エーテル系溶媒が、1,2-ジメトキシエタンとハイドロフルオロエーテルとを含む場合は、充放電を繰り返しても、リチウム金属二次電池の容量維持率をより確実に高くすることが可能となる。
【0035】
本実施形態の電解液において、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が上記の範囲内にある場合は、クーロン効率が向上するので、リチウム金属二次電池の容量維持率をさらに高くすることが可能となる。さらに、オキサラト錯体化合物、カーボネート化合物、スルホン化合物及びスルホキシド化合物などの化合物を上述の範囲で含む場合は、リチウム金属二次電池の容量維持率をより高くすることが可能となる。
【0036】
[リチウム金属二次電池]
本実施形態のリチウム金属二次電池は、正極と負極との間に、電解液が含浸しているセパレータが配置されている。ここで、正極は、正極集電体と、リチウム複合酸化物を含む正極合材層と、を有する。また、負極は、負極集電体と、リチウム金属層と、を有する。
【0037】
すなわち、本実施形態のリチウム金属二次電池は、充電する際に、負極にリチウム金属が析出し、放電する際に、負極からリチウムイオンが溶出する。このため、本実施形態のリチウム金属二次電池は、初期状態において、負極がリチウム金属層を有していなくてもよい。この場合は、リチウム金属二次電池を使用する前に、リチウム金属二次電池を充電することにより、負極集電体にリチウム金属が析出し、リチウム金属層が形成される。
【0038】
正極集電体としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0039】
正極合材層は、リチウム複合酸化物を含むが、その他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0040】
リチウム複合酸化物としては、特に限定されないが、例えば、LiCoO、Li(Ni5/10Co2/10Mn3/10)O2、Li(Ni6/10Co2/10Mn2/10)O2、Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li(Ni1/6Co4/6Mn1/6)O2、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0041】
その他の成分としては、例えば、リチウム複合酸化物以外の正極活物質、導電助剤、結着材等が挙げられる。
【0042】
負極集電体としては、特に限定されないが、例えば、銅箔等が挙げられる。
【0043】
セパレータを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アラミド、ポリイミド、フッ素樹脂、グラスファイバー、セルロースファイバー等が挙げられる。
【0044】
なお、本実施形態のリチウム金属二次電池は、公知の方法を用いて、製造することができる。
【0045】
以上のような構成とされた本実施形態のリチウム金属二次電池によれば、上述の電解液を有するので、充放電を繰り返しても、容量維持率を高くなる。よって、本実施形態のリチウム金属二次電池は、容量とサイクル寿命とが向上する。
【実施例0046】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
有機溶媒として、DME(1,2-ジメトキシエタン)とHFE(1,1,2,2- テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル)とをモル比で65:35の割合で混合したエーテル系溶媒を用意した。このエーテル系溶媒に、LiFSI[リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド]と、Ca(FSI)[カルシウムビス(フルオロスルホニル)イミド]とを加えて撹拌して、LiFSIとCa(FSI)を溶解させて電解液を得た。得られた電解液のLiFSIの濃度は2.35mol/Lであり、LiFSIに対するCa(FSI)の含有率は0.5質量%であった。下記の表1に、得られた電解液の組成を示す。
【0048】
[実施例2~3、比較例2~4]
LiFSIに対するCa(FSI)の含有率が下記の表1に記載の含有率となるように、エーテル系溶媒に加えるCa(FSI)の量を変えたこと以外は、実施例1と同様にして電解液を得た。
【0049】
[比較例5]
Ca(FSI)をLi(FSI)としたこと以外は、実施例3と同様にして電解液を得た。
【0050】
[実施例4~6]
Ca(FSI)の代わりに、Ca(TFSI)[カルシウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド](実施例4)、Mg(FSI)[マグネシウムビス(フルオロスルホニル)イミド](実施例5)、Mg(TFSI)[マグネシウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド](実施例6)、を、Ca(FSI)と同量使用したこと以外は、実施例1と同様にして電解液を得た。
【0051】
[実施例7~10]
エーテル系溶媒に、LiFSIとCa(FSI)とともに、FOB[ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸](実施例7)、FEC(フルオロエチレンカーボネート)(実施例8)、VC(ビニレンカーボネート)(実施例9)、DMC(ジメチルカーボネート)(実施例10)を、それぞれLiFSIに対する含有率が0.5質量%となる量で加えたこと以外は、実施例1と同様にして電解液を得た。
【0052】
[比較例1]
Ca(FSI)を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして電解液を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
[リチウム金属二次電池の作製]
リチウム複合酸化物としての、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン複合酸化物(Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O)と、導電助剤としての、アセチレンブラックと、結着材としての、ポリフッ化ビニリデンを混合し、正極合材層用塗布液を得た。
【0055】
正極集電体としての、面積12cm、厚さ15μmのAl箔に、正極合材層用塗布液を塗布し、乾燥させ、20mg/cmの正極合材層を形成した後、圧延し、正極を得た。
【0056】
負極集電体およびセパレータとして、それぞれ面積12cm、厚さ8μmのCu箔および厚さ20μmの多孔性ポリオレフィンフィルムを使用した。
【0057】
正極(正極合材層、正極集電体)、セパレータおよび負極集電体を、この順で積層し、セパレータに電解液を含浸させた後、ラミネートフィルムで封止し、リチウム金属二次電池を得た。
【0058】
[リチウム金属二次電池の充放電試験]
リチウム金属の単位面積当たりの放電容量を3mAh/cmと規定し、以下の条件で充放電試験を実施した。リチウム金属二次電池を治具に組み付け、拘束圧0.05MPaで拘束した後、測定温度(25℃)で1時間放置した。次に、0.2Cで定電流充電を実施した。ここで、定電流充電の終了条件は、規定容量(3mAh/cm)に到達すること、定電流充電を開始してから5時間が経過すること、または、または、電圧が3.3Vに到達することとした。このとき、負極は8μmCu箔に厚さ20μmのリチウム箔を片面に張り付けたものを用いた。次に、0.1Cで充電し、4.3VにてCCCV充電を0.05Cに達するまで行った後、0.33Cで定電流放電2.65Vに達するまで実施した。その後、0.33C充電し、4.3Vにて10分CCCV充電を開始してこの後、5分間休止した。定電流放電を2.65Vまで行い、この後、5分間休止した。この後、約SOC50%に調整するため3.86Vまで0.33でCCCV充電を行った。3.86Vから4.5Cの定電流放電を10秒間実施し、10秒後の電圧値を測定し、電流値と10秒後の電圧値の傾きより、直流抵抗値(DCR)を算出した。その後、0.33Cの定電流充電と4.3VでのCV充電を行いこの後、5分間休止した。その後0.33Cの定電流放電を2.65Vまで行う。この後、5分間休止した。これを100回繰り返した。
【0059】
なお、リチウム金属電池の放電容量に対し、1時間で放電が完了できる電流値を1Cとした。
【0060】

容量維持率(%)=(50サイクル目の容量)/(1サイクル目の容量)×100
により、容量維持率を算出した。
次に、式
比抵抗(Ω・cm)=セルの抵抗÷正極の電極面積
により、比抵抗を算出した。
【0061】
表2に、比抵抗及び容量維持率の評価結果を示す。容量維持率は、初期(1サイクル目)、10サイクル目、50サイクル目、100サイクル目の値を示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表2から、本発明に従って所定のアルカリ土類金属塩を所定の範囲で含む実施例1~10の電解液を使用すると、リチウム金属二次電池の初期の比抵抗が20~25Ω・cmであって、容量維持率が高く、サイクル寿命が長くなることがわかる。特に、所定のアルカリ土類金属塩とともに所定の添加化合物を含む実施例7~10の電解液を使用すると、リチウム金属二次電池の容量維持率がより高くなることがわかる。これに対して、比較例1の電解液はアルカリ土類金属塩を含まず、比較例2~4の電解液はアルカリ土類金属塩の含有率が本発明の範囲外であるため、これを使用したリチウム金属二次電池は、容量維持率が低い。