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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146626
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241004BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241004BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241004BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059647
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】白井 敦史
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029DJ09
5H029EJ05
5H029EJ07
(57)【要約】
【課題】充放電による電極積層体の厚みの増減の幅が大きくても、外装部材が破損しにくい全固体電池を提供すること。
【解決手段】電極積層体と、前記電極積層体を収容する外装部材と、を備え、前記電極積層体は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を有する全固体電池であって、前記電極積層体は充放電に伴って厚みが増減し、前記外装部材は、前記電極積層体を収容する収容部と、封止部と、を有し、前記電極積層体の積層方向に沿う側面に対向する前記収容部の側面部は、前記電極積層体の厚みの増減を吸収する厚み変動吸収部であり、前記電極積層体の前記側面と、前記収容部の前記側面部との間の少なくとも一部に、前記電極積層体の積層方向に沿う方向と直交する方向に延びた棒状部材が配置されている、全固体電池。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極積層体と、前記電極積層体を収容する外装部材と、を備え、
前記電極積層体は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を有する全固体電池であって、
前記電極積層体は充放電に伴って厚みが増減し、
前記外装部材は、前記電極積層体を収容する収容部と、封止部と、を有し、
前記電極積層体の積層方向に沿う側面に対向する前記収容部の側面部は、前記電極積層体の厚みの増減を吸収する厚み変動吸収部であり、
前記電極積層体の前記側面と、前記収容部の前記側面部との間の少なくとも一部に、前記電極積層体の積層方向に沿う方向と直交する方向に延びた棒状部材が配置されている、全固体電池。
【請求項2】
前記収容部の前記側面部に対向する前記棒状部材の表面は、前記収容部の前記側面部側に突出した曲面とされている、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記棒状部材は、前記棒状部材は、前記電極積層体の積層方向の端部もしくはその近傍に配置されている、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記電極積層体は、前記正極層の少なくとも一部に正極リード線が接続された側面と、前記負極層の少なくとも一部に負極リード線が接続された側面と、正極リード線及び負極リード線が配置されていない側面を有し、
前記棒状部材は、前記電極積層体の正極リード線及び負極リード線が配置されていない前記側面の少なくとも一部と、前記収容部の前記側面部との間に配置されている、請求項1に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。二次電池の中でも固体電解質を用いた全固体電池は、固体電解質が不燃性であるために安全性が高い点や、より高いエネルギー密度を有する点において優れており、特に注目を集めている。固体二次電池のエネルギー密度を向上させるために、複数の正極層と負極層とを、固体電解質層を介して交互に積層した積層構造の電極積層体を外装部材に収容した構造の全固体電池が検討されている。
【0003】
電極積層体を外装部材に収容した構造の二次電池では、外装部材の封止部の近傍に余剰を設定することが検討されている(特許文献1)。また、外装部材の内部に電極積層体を電池内部方向に押圧する押圧部材を配置することも検討されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-288883号公報
【特許文献2】特開2009-181897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、全固体電池では、高容量化とサイクル特性の向上が課題である。全固体電池の高容量化のために、負極活物質として金属リチウムを用いることが検討されている。負極活物質として金属リチウムを用いた全固体電池は、充電時にリチウム析出層が生成し、放電時にリチウム析出層が消失する。このため、電極積層体は厚みの増減が大きい。電極積層体の厚みの増減が大きい場合、外装部材の形状を、充電によって厚みが増加したときの電極積層体に合わせて設定する必要がある。しかしながら、外装部材の形状を厚みが増加したときの電極積層体に合わせると、放電によって電極積層体の厚みが減少したときに、外装部材に部分的な弛み(皺)が発生する。この外装部材の弛み部分は、充放電による電極積層体の厚みの増減の幅が大きくなるに伴って大きくなる。このため、全固体電池の高容量化のために正極層と負極層の積層数を多くすると、放電時に発生する外装部材の弛み部分が大きくなりすぎて、外装部材が破損することにより、サイクル特性が低下するおそれがある。
【0006】
本願は上記の課題を解決するために、充放電による電極積層体の厚みの増減の幅が大きくても、外装部材が破損しにくい全固体電池を提供することを目的としている。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題解決のため、電極積層体を収容する外装部材の収容部の側面部と、電極積層体との間の少なくとも一部に、電極積層体の積層方向に沿う方向と直交する方向に延びた棒状部材を配置することが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は下記のものを提供する。
【0008】
(1)電極積層体と、前記電極積層体を収容する外装部材と、を備え、前記電極積層体は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を有する全固体電池であって、前記電極積層体は充放電に伴って厚みが増減し、前記外装部材は、前記電極積層体を収容する収容部と、封止部と、を有し、前記電極積層体の積層方向に沿う側面に対向する前記収容部の側面部は、前記電極積層体の厚みの増減を吸収する厚み変動吸収部であり、前記電極積層体の前記側面と、前記収容部の前記側面部との間の少なくとも一部に、前記電極積層体の積層方向に沿う方向と直交する方向に延びた棒状部材が配置されている、全固体電池。
【0009】
(1)の全固体電池によれば、電極積層体の厚みが減少したとき(放電状態)は、収容部の側面部を棒状部材に沿って湾曲した形状とし、電極積層体の厚みが増加したとき(充電状態)は、収容部の側面部を、棒状部材を支点として張った形状とすることにより、電極積層体の厚みの増減を吸収することができる。このため、放電状態においても、外装部材の収容部の側面部に部分的な弛み(皺)が発生しにくい。よって、充放電による電極積層体の厚みの増減の幅が大きくても、外装部材が破損しにくい。
【0010】
(2)前記収容部の前記側面部に対向する前記棒状部材の表面は、前記収容部の前記側面部側に突出した曲面とされている、(1)に記載の全固体電池。
【0011】
(2)の全固体電池によれば、棒状部材の収容部の側面部に対向する面が曲面とされているので、棒状部材と収容部の側面部との接触による外装部材の破損が生じにくい。
【0012】
(3)前記棒状部材は、前記電極積層体の積層方向の端部もしくはその近傍に配置されている、(1)又は(2)に記載の全固体電池。
【0013】
(3)の全固体電池によれば、棒状部材が電極積層体の積層方向における端部もしくはその端部の近傍に配置されているので、電極積層体の厚みが増加したときの収容部の側面部はより張った形状となりやすい。
【0014】
(4)前記電極積層体は、前記正極層の少なくとも一部に正極リード線が接続された側面と、前記負極層の少なくとも一部に負極リード線が接続された側面と、正極リード線及び負極リード線が配置されていない側面を有し、前記棒状部材は、前記電極積層体の正極リード線及び負極リード線が配置されていない前記側面の少なくとも一部と、前記収容部の前記側面部との間に配置されている、(1)~(3)のいずれか1つに記載の全固体電池。
【0015】
(4)の全固体電池によれば、正極リード線及び負極リード線が接続されていない電極積層体の側面に棒状部材を配置するので、棒状部材の長さを長くすることができる。このため、広い範囲において、外装部材の収容部が破損しにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、充放電による電極積層体の厚みの増減の幅が大きくても、外装部材が破損しにくい全固体電池を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る全固体電池の放電状態を示す平面図である。
図2図1のII-II線断面図であり、全固体電池の放電状態を示す断面図である。
図3図1のIII-III線断面図であり、全固体電池の放電状態を示す断面図である。
図4図1に示す全固体電池の棒状部材の配置を示す電極積層体の側面図である。
図5図1のII-II線断面図であり、全固体電池の充電状態を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る全固体電池の棒状部材の配置の第1変形例を示す電極積層体の側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る全固体電池の棒状部材の配置の第2変形例を示す電極積層体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明を例示するものであって、本発明は以下に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る全固体電池の放電状態を示す平面図である。図2は、図1のII-II線断面図であり、図3は、図1のIII-III線断面図である。図及び図3は、全固体電池の放電状態を示す断面図である。図4は、図1に示す全固体電池の棒状部材の配置を示す電極積層体の側面図である。図5は、図1のII-II線断面図であり、全固体電池の充電状態を示す断面図である。図中、矢印Xが示すX方向は、全固体電池100の長手方向である。矢印Yが示すY方向は、全固体電池100の短手方向である。矢印Zが示すZ方向は、X方向とY方向とに直交する電極積層体10の積層方向である。
【0020】
本実施形態の全固体電池100は、電極積層体10と、電極積層体10を収容する外装部材50と、を備える。全固体電池100は、電極積層体10と外装部材50との間に配置された棒状部材60を備える。全固体電池100は、平面視で長方形とされている(図1参照)。
【0021】
電極積層体10は、正極層20と、負極層30と、正極層20と負極層30との間に配置された固体電解質層40とを有する。正極層20は、正極集電体21と、正極集電体21の両面に配置された正極活物質層22とを含む。負極層30は、負極集電体31と、負極集電体31の両面に配置されたリチウム層32とを含む。全固体電池100は、充電時に正極活物質層22から放出されたリチウムイオンが、負極層30のリチウム層32の表面で析出して、リチウム析出層36が生成する(図5参照)。よって、充電により負極層30の厚みは厚くなる。一方、放電時には、リチウム析出層36からリチウムイオンが放出されて、正極活物質層22で吸蔵される。よって、放電により負極層30の厚みは薄くなる。こうして、電極積層体10は充放電に伴って厚みが増減する。
【0022】
正極層20の正極集電体21の短手方向(Y方向)に沿う一方の側面(図2において左側側面)は、正極リード線24の一方の端部に接続し、正極リード線24の他方の端部は正極端子25に接続している。正極端子25の一部は、外装部材50から露出している。負極層30の負極集電体31の短手方向(Y方向)に沿う他方の側面(図2において右側側面)は、負極リード線34の一方の端部に接続し、負極リード線34の他方の端部は負極端子35に接続している。負極端子35の一部は、外装部材50から露出している。図2において、複数の正極リード線24は、それぞれ独立して正極端子25と接続しているが、複数の正極リード線24を1つにまとめて正極端子25の一方の表面に接続してもよい。同様に、複数の負極リード線34を1つにまとめて負極端子35の一方の表面に接続してもよい。
【0023】
外装部材50は、電極積層体10を収容する収容部51と、収容部51を封止する封止部52とを有する。収容部51は、電極積層体10の積層方向の上側表面に対向する上面部51aと、電極積層体10の積層方向に沿う側面に対向する側面部51bと、電極積層体10の積層方向の下側表面に対向する下面部51cとを有する。上面部51a及び下面部51cは、電極積層体10に密着して、平面とされている。側面部51bは、電極積層体10の厚みの増減を吸収する厚み変動吸収部として作用する。
【0024】
棒状部材60は、電極積層体10の積層方向(Z方向)に沿う方向と直交する長手方向(X方向)に延びる。棒状部材60が電極積層体10の積層方向の端部もしくは近傍に配置されていてもよい。端部の近傍は、例えば棒状部材60が電極積層体10の積層方向の端部から電極積層体10の積層方向の長さ(電極積層体10の厚み)の1/4までの間の領域であってもよい。また、棒状部材60の配置数は、電極積層体10の一つの側面に対して、2つ以上であってもよい。本実施形態では、棒状部材60は、図3に示すように、長手方向(X方向)に沿って延びた直線状であって、電極積層体10の積層方向(Z方向)の上端と下端の2箇所に配置されている。棒状部材60は、電極積層体10の長手方向(X方向)に沿う側面(正極リード線24及び負極リード線34が接続されていない側面)と、収容部51の側面部51bとの間に配置されている。棒状部材60は、図2及び図4に示すように、断面が円形状とされている。棒状部材60は、例えば接着剤(不図示)によって、電極積層体10及び外装部材50の収容部51の少なくても一方に接着されて、固定されていてもよい。
【0025】
電極積層体10の厚みが減少したとき(放電状態)は、収容部51の側面部51bは棒状部材60に沿って湾曲した形状となる(図3参照)。一方、電極積層体10の厚みが増加したとき(充電状態)は、収容部51の側面部51bは棒状部材60を支点として張った形状となる(図5参照)。収容部51の側面部51bは、棒状部材60に沿って湾曲した形状と棒状部材60を支点として張った形状とに変形することによって、電極積層体10の厚みの増減を吸収する厚み変動吸収部として作用する。
【0026】
棒状部材60のサイズは、特に制限されるものではないが、棒状部材60の電極積層体10の積層方向に沿う方向の長さをA(図3、5参照)とし、電極積層体10の厚みが最も増加したときの電極積層体10の厚さの1/2の長さをB(図5参照)、電極積層体10の厚みが最も減少したときの電極積層体10の厚さの1/2の長さをC(図3参照)として、下記の式(1)を満足することが好ましい。
3Aπ/4-3C/4+A/2≧B-C・・・(1)
【0027】
長さCは、全固体電池100の製造時の電極積層体10の厚さの1/2の長さと同じである。また、充放電による電極積層体10の厚さの増減量[(B-C)/C×100]は、20%程度である。よって、式(1)より、棒状部材60の最適なサイズを求めることができる。
【0028】
電極積層体10の厚みの減少に伴って、収容部51の側面部51bを棒状部材60に沿って湾曲しやすくするために、収容部51の内部は減圧されていてもよい。例えば、収容部51の内圧は大気圧に対して-100kPaから-50kPaの範囲内にあってもよい。また、収容部51の内部を減圧する代わりに、収容部51を外部から加圧することによって、収容部51の側面部51bを湾曲しやすくしてもよい。
【0029】
本実施形態の全固体電池100において、正極集電体21は、正極層20の集電を行う機能を有するものであれば、材料や形状に特に制限はない。正極集電体21の材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ニッケル、鉄及びチタン等を挙げることができ、中でもアルミニウム、アルミニウム合金及びステンレスが好ましい。また、正極集電体21の形状の例としては、箔状、板状等が挙げられる。
【0030】
正極活物質層22は、少なくとも一種の正極活物質を含有する。正極活物質は特に制限はなく、一般的な固体二次電池の正極層で使用されているものを用いることができる。正極活物質としては、例えばリチウムを含有する層状活物質、スピネル型活物質、オリビン型活物質等を用いることができる。正極活物質の具体例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNiMnCo(p+q+r=1)、LiNiAlCo(p+q+r=1)、マンガン酸リチウム(LiMn)、Li1+xMn2-x-yMO(x+y=2、M=Al、Mg、Co、Fe、Ni、及びZnから選ばれる少なくとも1種)で表される異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム(Li及びTiを含む酸化物)、リン酸金属リチウム(LiMPO、M=Fe、Mn、Co、及びNiから選ばれる少なくとも1種)等が挙げられる。
【0031】
正極活物質層22は、電荷移動媒体伝導性を向上させる観点から、任意に固体電解質を含んでいてもよい。また、導電性を向上させるために任意に導電助剤を含んでいてもよい。さらに、可撓性を発現させる等の観点から、任意にバインダーを含んでいてもよい。固体電解質、導電助剤及びバインダーは特に制限はなく、一般的な固体二次電池の正極層で使用されているものを用いることができる。
【0032】
正極リード線24の材料は、正極集電体21の材料と同じであってもよいし、正極集電体21の材料と異なっていてもよい。正極リード線24は、正極集電体21と一体的に接続されていてもよい。本実施形態では、正極リード線24は、正極集電体21を延出させて形成されていて、正極集電体21と一体的に接続されている。正極端子25の材料は、正極リード線24の材料と同じであってもよいし、正極リード線24の材料と異なっていてもよい。正極端子25は、正極リード線24と一体的に接続されていてもよい。本実施形態では、正極端子25と正極リード線24とは別の部材であって、電気的に接続されている。
【0033】
負極集電体31は、負極層30の集電を行う機能を有するものであれば、材料や形状に特に制限はない。負極集電体31の材料の例としては、ニッケル、銅、及びステンレス等が挙げられる。また、負極集電体31の形状の例としては、箔状、板状等が挙げられる。
【0034】
負極リード線34の材料は、負極集電体31の材料と同じであってもよいし、負極集電体31の材料と異なっていてもよい。負極リード線34は、負極集電体31と一体的に接続されていてもよい。本実施形態では、負極リード線34は、負極集電体31を延出させて形成されていて、負極集電体31と一体的に接続されている。負極端子35の材料は、負極リード線34の材料と同じであってもよいし、負極リード線34の材料と異なっていてもよい。負極端子35は、負極リード線34と一体的に接続されていてもよい。本実施形態では、負極端子35と負極リード線34とは別の部材であって、電気的に接続されている。
【0035】
固体電解質層40は、少なくとも一種の固体電解質材料を含有する。固体電解質材料としては、リチウム伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、窒化物固体電解質材料、ハロゲン化物固体電解質材料等を用いることができる。
【0036】
硫化物固体電解質材料の例としては、LiS-P、LiS-P-LiI等が挙げられる。なお、上記「LiS-P」の記載は、LiS及びPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質材料を意味し、他の同様の記載についても同様である。硫化物固体電解質材料は、アルジロダイト型結晶構造を有していてもよい。
【0037】
酸化物固体電解質材料の例としては、NASICON型酸化物、ガーネット型酸化物、ペロブスカイト型酸化物等が挙げられる。NASICON型酸化物の例としては、Li、Al、Ti、P及びOを含有する酸化物(例えばLi1.5Al0.5Ti1.5(PO)が挙げられる。ガーネット型酸化物の例としては、Li、La、Zr及びOを含有する酸化物(例えばLiLaZr12)が挙げられる。ペロブスカイト型酸化物の例としては、Li、La、Ti及びOを含有する酸化物(例えばLiLaTiO)が挙げられる。
【0038】
固体電解質層40は、バインダーを含んでいてもよい。バインダーは特に制限はなく、一般的な全固体電池の固体電解質層で使用されているものを用いることができる。
【0039】
外装部材50の材料としては、例えばラミネートフィルムを用いることができる。ラミネートフィルムとしては、内側から内側樹脂層、金属層、外側樹脂層がこの順で積層された3層構造の積層フィルムを用いることができる。外側樹脂層は例えばポリアミド(ナイロン)層、ポリエチレンテレフタレート(PET)層であり、金属層は例えばアルミニウム層であり、内側樹脂層は例えばポリエチレン層、ポリプロピレン層であってもよい。
【0040】
棒状部材60の材料としては、固体電解質層40、負極層30(リチウム)などの電池の構成材料や電池内部で発生するガスに対して安定なものであれば特に制限はなく、例えば樹脂、ゴム、絶縁性セラミックスを用いることができる。棒状部材60は弾性体であってもよい。弾性体である場合、電極積層体10の厚みの増加によって発生する外装部材50の収容部51の側面部51の余長を短くすることが可能となる。なお、棒状部材60は、収容部51の内部を減圧しても大気圧との差圧で完全に潰れない弾性体であることが好ましい。
【0041】
本実施形態の全固体電池100は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、正極層20、固体電解質層40、負極層30をこの順で積層し、得られた積層体をプレス接合して、電極積層体10を得る。次に、電極積層体10の正極集電体21に正極リード線24を介して正極端子25を接続し、負極集電体31に負極リード線34を介して負極端子35を接続する。また、電極積層体10の正極リード線24及び負極リード線34が接続されていない側面に棒状部材60を配置する。次に、棒状部材60を配置した電極積層体10を外装部材50に収容し、収容部51を減圧しながら、封止部52を封止する。
【0042】
以上のような構成とされた本実施形態の全固体電池100によれば、電極積層体10の厚みが減少したとき(放電状態)は、収容部51の側面部51bを棒状部材60に沿って湾曲した形状とし、電極積層体10の厚みが増加したとき(充電状態)は、収容部51の側面部51bを、棒状部材60を支点として張った形状とすることにより、電極積層体10の厚みの増減を吸収することができる。このため、放電状態においても、外装部材50の収容部51の側面部51bに部分的な弛み(皺)が発生しにくい。よって、充放電による電極積層体10の厚みの増減の幅が大きくても、外装部材50が破損しにくい。
【0043】
本実施形態の全固体電池100において、棒状部材60の断面は円形状とされていて、収容部51の側面部51bに対向する棒状部材60の表面は、収容部51の側面部51b側に突出した曲面とされている。これにより、棒状部材60と収容部51の側面部51bとの接触による外装部材50の破損が生じにくくなる。ただし、棒状部材60の断面は、円形状に限定されるものではない。棒状部材60の断面は、楕円形状、長円形状、多角形であってもよい。
【0044】
本実施形態の全固体電池100において、棒状部材60が電極積層体10の積層方向の端部から電極積層体10の積層方向の長さ(電極積層体10の厚み)の1/4までの間の領域に配置されている場合は、電極積層体10の厚みが増加したときの収容部51の側面部51bはより張った形状となりやすくなる。また、電極積層体10の一つの側面に対して、2つ以上の棒状部材60が配置されている場合は、電極積層体10の厚みが増加したときは、棒状部材60の間で張った形状となりやすい。なお、本実施形態では、棒状部材60は、長手方向(X方向)に沿って延びた直線状であって、電極積層体10の積層方向(Z方向)の両端(上端と下端)の2箇所に配置されているが、電極積層体10の配置は、これに限定されるものではない。棒状部材60は、電極積層体10の積層方向の上端、下端及び中央のいずれかに配置されていてもよい。また、棒状部材60は電極積層体10の積層方向に延びた部分を有していてもよい。
【0045】
図6は、本発明の一実施形態に係る全固体電池の棒状部材の配置の第1変形例を示す電極積層体10の側面図であり、図4と同じ位置の側面図である。図6において、棒状部材60は矩形環状とされていて、電極積層体10の長手方向(X方向)に沿って延びた部分と、積層方向(Z方向)に沿って延びた部分とを有する。棒状部材60は弾性体であり、電極積層体10の厚みの増減に合わせて電極積層体10の積層方向(Z方向)に伸縮可能とされている。図6に示す変形例1によれば、棒状部材60は電極積層体10の長手方向に沿って延びた部分を2つ有するので、外装部材50が破損しにくい。さらに、棒状部材60が矩形環状であり、電極積層体10の長手方向に沿って延びた部分と、積層方向に沿って延びた部分とが一体であるので、電極積層体10の側面と、収容部51の側面部51bとの間に配置しやすい。
【0046】
本実施形態の全固体電池100において、棒状部材60は、正極リード線24及び負極リード線34が接続されていない電極積層体10の側面に配置されている。これにより、棒状部材60の長さを長くすることができるので、広い範囲において、外装部材50の収容部が破損しにくくなる。ただし、棒状部材60を配置する側面は、これに限定されるものではない。例えば、正極リード線24及び負極リード線34に接しないようにされていれば、正極リード線24あるいは負極リード線34が配置されている電極積層体10の側面に配置されていてもよい。
【0047】
図7は、本発明の一実施形態に係る全固体電池の棒状部材の配置の第2変形例を示す電極積層体の平面図である。図7において、棒状部材60は、正極リード線24及び負極リード線34が接続されていない電極積層体10の側面と、正極リード線24が接続されている側面と、負極リード線34が接続されている側面とに配置されている。正極リード線24が接続されている側面では、正極リード線24を挟んで2つの棒状部材60が配置されている。負極リード線34が接続されている側面では、負極リード線34を挟んで2つの棒状部材60が配置されている。図7に示す変形例2によれば、棒状部材60が、正極リード線24が接続されている側面と、負極リード線34が接続されている側面とに配置されているので、外装部材50がより破損しにくくなる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態の全固体電池100においては、負極層30はリチウム層32の表面にリチウム析出層36が生成する構成とされているが、負極層30の構成はこれに限定されるものではない。例えば、リチウム層32を省略して、負極集電体31の表面にリチウム析出層36が直接析出する構成としてもよい。また、リチウム層32の代わりに、リチウムと合金を形成する金属の層を用いてもよい。リチウムと合金を形成する金属の例としては、Mg、Si、Au、Ag、In、Ge、Sn、Pb、Al及びZn等が挙げられる。
【符号の説明】
【0049】
10 電極積層体
20 正極層
21 正極集電体
22 正極活物質層
24 正極リード線
25 正極端子
30 負極層
31 負極集電体
32 リチウム層
34 負極リード線
35 負極端子
36 リチウム析出層
40 固体電解質層
50 外装部材
51 収容部
51a 上面部
51b 側面部
51c 下面部
52 封止部
60 棒状部材
100 全固体電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7