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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146635
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】固体二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241004BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241004BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241004BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059659
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】中川 嵩
(72)【発明者】
【氏名】野地 洋平
(72)【発明者】
【氏名】和泉 享兵
(72)【発明者】
【氏名】市原 大輝
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029HJ04
5H029HJ09
5H029HJ12
5H029HJ20
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA03
5H050FA02
5H050HA04
5H050HA09
5H050HA12
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】充放電による負極層の厚みの変化が大きく、また充放電を繰り返しても固体電解質層や中間層の端部に金属イオンが析出しにくく、サイクル特性に優れた固体二次電池を提供すること。
【解決手段】電極積層体と、前記電極積層体を収容する外装体と、を備え、前記電極積層体は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を有し、前記正極層は、正極集電体と、正極活物質層とを有し、前記正極活物質層及び前記固体電解質層の外周が、20℃における体積抵抗率が1×1012Ω・cm以上であって、空隙率が40%以下である絶縁枠で囲まれている、固体二次電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極積層体と、前記電極積層体を収容する外装体と、を備え、
前記電極積層体は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を有し、
前記正極層は、正極集電体と、正極活物質層とを有し、
前記正極活物質層及び前記固体電解質層の外周が、20℃における体積抵抗率が1×1012Ω・cm以上であって、空隙率が40%以下である絶縁枠で囲まれている、固体二次電池。
【請求項2】
前記絶縁枠の空隙率が20%以下である、請求項1に記載の固体二次電池。
【請求項3】
前記負極層と前記固体電解質層との間に配置される中間層を有し、
前記中間層の空隙率は、前記固体電解質層の空隙率よりも大きい、請求項1に記載の固体二次電池。
【請求項4】
絶縁枠が前記中間層の外周まで延長されている、請求項3に記載の固体二次電池。
【請求項5】
前記電極積層体の積層方向における前記中間層の厚さが5μm以下である、請求項3に記載の固体二次電池。
【請求項6】
前記中間層は、金属ナノ粒子と無定形炭素とを含む、請求項3に記載の固体二次電池。
【請求項7】
負極活物質が金属リチウムである、請求項1に記載の固体二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。二次電池の中でも固体電解質を用いた固体二次電池は、固体電解質が不燃性であるために安全性が向上する点や、より高いエネルギー密度を有する点において優れており、特に注目を集めている。
【0003】
固体二次電池においては、充放電を繰り返すことで固体電解質層と負極層との間に電荷移動媒体として用いられるリチウムイオン等の金属イオンが析出する場合がある。上記金属の析出によって界面の接合性が低下すること等により固体二次電池の性能が低下するおそれがある。この課題に対して、負極集電体を被覆するリチウム金属が析出可能な層を設けて、リチウム金属を被覆層の表面に略均一に析出させることにより、デッドリチウムを発生し難くする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-129159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、固体二次電池では、高容量化とサイクル特性の向上が課題である。固体二次電池の高容量化のために、負極活物質として金属リチウムを用いることが検討されている。しかしながら、負極活物質として金属リチウムを用いた固体二次電池は充放電による負極層の厚みの変化が大きい。また、固体二次電池では、寸法や構造設計、プロセス条件が不適切な場合には、固体電解質層の端部に電荷移動媒体である金属イオンが析出しやすくなる場合がある。特に、固体電解質層と負極集電体との間に中間層を設けたときには、中間層の端部にも金属イオンが析出しやすくなる場合がある。固体電解質層や中間層の端部に金属イオンが析出すると、析出した金属が蓄積することによって、正極層と負極層とが短絡する場合や、局所的に副反応が生じ抵抗上昇する場合があり、サイクル特性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、充放電による負極層の厚みの変化が大きく、また充放電を繰り返しても固体電解質層や中間層の端部に金属イオンが析出しにくく、サイクル特性に優れた固体二次電池を提供することを目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、正極層の正極活物質層及び固体電解質層の外周を、所定の体積抵抗率と空隙率とを有する絶縁枠で囲むことによって、上記の課題を解決することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、次のものを提供する。
【0008】
(1)電極積層体と、前記電極積層体を収容する外装体と、を備え、前記電極積層体は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を有し、前記正極層は、正極集電体と、正極活物質層とを有し、前記正極活物質層及び前記固体電解質層の外周が、20℃における体積抵抗率が1×1012Ω・cm以上であって、空隙率が40%以下である絶縁枠で囲まれている、固体二次電池。
【0009】
(1)の固体二次電池によれば、正極活物質層及び固体電解質層の外周が、上記の体積抵抗率と空隙率を有する絶縁枠で囲まれているので、充放電時において、正極層や負極層から放出された金属イオンが固体電解質層の端部に析出しにくい。このため、正極層と負極層とが短絡しにくい。よって、(1)の固体二次電池は、サイクル特性に優れたものとなる。
【0010】
(2)前記絶縁枠の空隙率が20%以下である、(1)に記載の固体二次電池。
【0011】
(2)の固体二次電池によれば、絶縁枠の空隙率が20%以下と低いので、絶縁枠内の空隙径が小さくかつ絶縁枠の構造保持がしやすいため、充放電時において、正極層や負極層から放出された金属イオンが、固体電解質層の端部にさらに析出しにくくなる。このため、さらに正極層と負極層とを短絡しにくい状態にすることができる。
【0012】
(3)前記負極層と前記固体電解質層との間に配置される中間層を有し、前記中間層の空隙率は、前記固体電解質層の空隙率よりも大きい、(1)又は(2)に記載の固体二次電池。
【0013】
(3)の固体二次電池によれば、中間層を有していても、正極活物質層及び固体電解質層の外周が上記の絶縁枠で囲まれているので、正極層と負極層とが短絡しにくい。また、中間層の空隙率が固体電解質層の空隙率よりも大きいので、負極層界面への不均一な金属の析出を抑制でき、サイクル特性をより向上できる。
【0014】
(4)絶縁枠が前記中間層の外周まで延長されている、(3)に記載の固体二次電池。
【0015】
(4)の固体二次電池によれば、絶縁枠が前記中間層の外周まで延長されているので、金属イオンが中間層の端部に析出しにくくなる。このため、正極層と負極層とがより短絡しにくい。
【0016】
(5)前記電極積層体の積層方向における前記中間層の厚さが5μm以下である、(3)又は(4)に記載の固体二次電池。
【0017】
(5)の固体二次電池によれば、中間層の厚さが5μm以下であるので、充電時の電荷移動媒体である金属の析出位置を、中間層と負極層の間にすることができる。それによって電解質層と析出金属が直接接触する頻度を大きく低減でき、電解質層の局所劣化や電流集中を抑制し、サイクル特性や保存特性が向上する。また硬い電解質層と析出金属の間に、比較的弾性がある中間層を配置することができ、金属の析出溶解による膨張収縮に追随しやしくなり、面内及び厚み方向での均一な反応を行うことができ、抵抗低減やサイクル特性向上の効果が得られる。
【0018】
(6)前記中間層は、金属ナノ粒子と無定形炭素とを含む、(3)~(5)のいずれか1つに記載の固体二次電池。
【0019】
(6)の固体二次電池によれば、中間層の電子伝導性を確保できると共に、中間層を構成する粒子と電荷移動媒体とが反応して合金化することを防止できる。
【0020】
(7)負極活物質が金属リチウムである、(1)~(6)のいずれか1つに記載の固体二次電池。
【0021】
(7)の固体二次電池によれば、負極活物質が金属リチウムであるので、高容量化が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、充放電による負極層の厚みの変化が大きく、また充放電を繰り返しても固体電解質層や中間層の端部に金属イオンが析出しにくく、サイクル特性に優れた固体二次電池を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る固体二次電池の電極積層体の上面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図2に示す電極積層体の充電状態を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る固体二次電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明を例示するものであって、本発明は以下に限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る固体二次電池の電極積層体の上面図である。図2は、図1のII-II線断面図であり、図3は、図2に示す電極積層体の充電状態を示す断面図である。図4は、図1~3に示す電極積層体を有する固体二次電池の断面図である。図1~4において、矢印Xが示すX方向は、電極積層体を上面視したときの上面に平行な1つの方向である。矢印Yが示すY方向は、電極積層体を上面視したときの上面に平行でかつX方向と直交する方向である。矢印Zが示すZ方向は、電極積層体の積層方向である。
【0026】
本実施形態の固体二次電池100は、図4に示すように、電極積層体1を備える。
電極積層体1は、図1~3に示すように、正極層10と、固体電解質層20と、中間層30と、負極層40とがこの順に積層された積層体である。正極層10は、正極集電体11と正極活物質層12とを含む。正極活物質層12、固体電解質層20及び中間層30の外周は絶縁枠35で囲まれている。負極層40は、負極集電体41を含む。なお、図1及び図2に示す電極積層体1は放電状態であり、図3に示す電極積層体1は充電状態である。充電状態の負極層40は、負極集電体41の中間層30側の表面に、電荷負極活物質である金属イオンが析出して生成した金属析出層42を有する。金属析出層42は負極活物質層として作用し、放電時は金属イオンを放出する。電極積層体1の負極層40は、充放電によって厚みが変化する。
【0027】
電極積層体1は、図1に示すように、上面視でX方向がY方向よりも長い長方形とされている。電極積層体1は、上面視で正方形であってもよいし、円形であってもよい。
【0028】
正極層10、固体電解質層20、中間層30及び負極層40はそれぞれ、中心Cが重なるように積層されている。正極活物質層12の上面視の面積をSp、固体電解質層20の上面視の面積をSs、中間層30の上面視の面積をSm、負極層40の上面視の面積をSnとしたときに、Sp=Sm=Ss<Snとされている。電極積層体1は、上面視で、正極活物質層12、固体電解質層20及び中間層30の形状は同じで、絶縁枠35の負極層40の端部は正極活物質層12の端部よりも外側にある。正極活物質層12の面積Spに対する負極層40の面積Snの比Sn/Spは、例えば1.05から1.45の範囲内にあってもよい。
【0029】
正極集電体11は、正極層10の集電を行う機能を有するものであれば、材料や形状に特に制限はない。正極集電体11の上面視の面積は、正極活物質層12と同じであるかそれよりも大きいことが好ましい。正極集電体11の材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ニッケル、鉄及びチタン等を挙げることができ、中でもアルミニウム、アルミニウム合金及びステンレスが好ましい。また、正極集電体11の形状の例としては、箔状、板状等が挙げられる。
【0030】
正極活物質層12は、少なくとも一種の正極活物質を含有する。正極活物質は特に制限はなく、一般的な固体二次電池の正極層で使用されているものを用いることができる。正極活物質としては、例えばリチウムを含有する層状活物質、スピネル型活物質、オリビン型活物質等を用いることができる。正極活物質の具体例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNiMnCo(p+q+r=1)、LiNiAlCo(p+q+r=1)、マンガン酸リチウム(LiMn)、Li1+xMn2-x-yMO(x+y=2、M=Al、Mg、Co、Fe、Ni、及びZnから選ばれる少なくとも1種)で表される異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム(Li及びTiを含む酸化物)、リン酸金属リチウム(LiMPO、M=Fe、Mn、Co、及びNiから選ばれる少なくとも1種)等が挙げられる。
【0031】
正極活物質層12は、電荷移動媒体伝導性を向上させる観点から、任意に固体電解質を含んでいてもよい。また、導電性を向上させるために任意に導電助剤を含んでいてもよい。さらに、可撓性を発現させる等の観点から、任意にバインダーを含んでいてもよい。固体電解質、導電助剤及びバインダーは特に制限はなく、一般的な固体二次電池の正極層で使用されているものを用いることができる。
【0032】
固体電解質層20は、正極層10と負極層40との間に積層される層である。固体電解質層20は、少なくとも一種の固体電解質材料を含有する。固体電解質層20は、固体電解質層20に含まれる固体電解質材料を介して、正極層10と負極層40との間の電荷移動媒体の伝導を行うことができる。
【0033】
固体電解質材料としては、電荷移動媒体伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、窒化物固体電解質材料、ハロゲン化物固体電解質材料等を用いることができる。
【0034】
硫化物固体電解質材料の例としては、LiS-P、LiS-P-LiI等が挙げられる。なお、上記「LiS-P」の記載は、LiS及びPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質材料を意味し、他の同様の記載についても同様である。硫化物固体電解質材料は、アルジロダイト型結晶構造を有していてもよい。
【0035】
酸化物固体電解質材料の例としては、NASICON型酸化物、ガーネット型酸化物、ペロブスカイト型酸化物等が挙げられる。NASICON型酸化物の例としては、Li、Al、Ti、P及びOを含有する酸化物(例えばLi1.5Al0.5Ti1.5(PO)が挙げられる。ガーネット型酸化物の例としては、Li、La、Zr及びOを含有する酸化物(例えばLiLaZr12)が挙げられる。ペロブスカイト型酸化物の例としては、Li、La、Ti及びOを含有する酸化物(例えばLiLaTiO)が挙げられる。
【0036】
固体電解質層20は、バインダーを含んでいてもよい。バインダーは特に制限はなく、一般的な固体二次電池の固体電解質層で使用されているものを用いることができる。
【0037】
固体電解質層20の空隙率は、後述する中間層30の空隙率よりも低く、例えば10%未満である。また、固体電解質層20を構成する固体電解質材料の粒子径は、例えばメジアン径(D50)で0.5~10μmであり、後述する中間層30を構成する粒子よりも大きいことが好ましい。
【0038】
固体電解質層20の空隙率は、例えば、以下の式(1)により求めることができる。なお、式(1)中、「充填率」とは、真密度に対する成型後の固体電解質層密度の百分率を意味する。
空隙率(%)=(100-充填率(%)) …(1)
【0039】
固体電解質層20は、110℃で1時間、100Pa未満の真空状態で乾燥した後の、水分量が700質量ppm以下であってもよく、500質量ppm以下であってもよい。水分量が少ない固体電解質層20を用いることによって、固体電解質層のイオン電導度の低下を抑制し、また正極層10、中間層30、負極層40の水分による変質を抑制することができ、固体二次電池100のサイクル特性がさらに向上する。なお、乾燥後の水分量の測定は、カールフィッシャー法を用いた。
【0040】
中間層30は、固体電解質層20と負極層40との間に積層される層である。中間層30は、負極層40の界面への金属イオンの不均一な析出を抑制し、かつ界面密着性を向上させる機能を有する。
【0041】
中間層30は、電子伝導性を有し、かつ電荷移動媒体である金属イオン(例えば、リチウムイオン)が通過可能な空隙を有することが好ましい。中間層30が空隙を有することによって、固体二次電池100を充電すると、固体電解質層20から負極層40に向けて移動する金属イオンは、中間層30を通過して、負極層40の負極集電体41の中間層30側の表面で析出し、金属析出層42(金属リチウムの層)を生成する。中間層30を通過させることによって、負極集電体41の表面に金属析出層42を均一に生成させることができる。また、空隙を有することにより、中間層30は充放電に伴う負極層40の厚みの変化に追従できる柔軟性を有する。このため、固体二次電池100の充放電を繰り返した場合であっても、界面密着性を維持でき、固体二次電池100の耐久性を向上できる。
【0042】
中間層30の空隙率は、固体電解質層20の空隙率よりも高いことが好ましい。これにより、中間層30の内部に金属イオンの通過可能な空隙が多く形成されるので、負極集電体41の表面に金属析出層42をより均一に生成させることができる。また、中間層30がより柔軟となるので、負極層40の厚みの変化への追従性がより向上する。中間層30の空隙率は、例えば、40~70%とすることができる。中間層30の空隙率の算出方法としては、固体電解質層20の空隙率の算出方法と同様の方法を適用できる。
【0043】
中間層30の厚さは、5μm以下であってもよい。中間層30の厚さを5μm以下にすることで、充電時の電荷移動媒体である金属の析出位置を、中間層30と負極層40の間にすることができる。それによって固体電解質層20と析出金属が直接接触する頻度を大きく低減でき、固体電解質層20の局所劣化や電流集中を抑制し、サイクル特性や保存特性が向上する。また硬い固体電解質層20と析出金属の間に、比較的弾性がある中間層30を配置することができ、金属の析出溶解による膨張収縮に追随しやしくなり、面内及び厚み方向での均一な反応を行うことができ、抵抗低減やサイクル特性向上の効果が得られる。さらに抵抗低減やサイクル特性向上の効果を得るためには、中間層の厚さは、3μm以下であってもよく、1~3μmの範囲内にあってもよい。
【0044】
中間層30は、無定形炭素と金属ナノ粒子とを含むことが好ましい。中間層30はさらに、構造を保持するため、結着材としてのバインダーを含んでいてもよい。
【0045】
無定形炭素は、例えばグラファイト等と異なりリチウム等の金属と反応して合金化しにくいため、デンドライトの形成を抑制でき、固体二次電池のサイクル特性を向上できる。無定形炭素は、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)であってもよいし、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)であってもよい。また、無定形炭素は、炭素の同素体のうち、はっきりした結晶状態を示さないものであればよく、黒鉛の微細結晶の集合体であってもよい。無定形炭素の具体例としては、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック類、コークス、活性炭、CNT(カーボンナノチューブ)、フラーレン、グラフェンが挙げられる。
【0046】
金属ナノ粒子としては、例えばスズ(Sn)、シリコン(Si)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)等の金属ナノ粒子が挙げられる。金属ナノ粒子の含有量は、中間層30において、0質量%超、30質量%以下であることが好ましい。中間層30が、金属ナノ粒子を含むことで、中間層30の電子伝導性を高めることができ、より均一に金属析出層42を生成させることができる。また、金属ナノ粒子は無定形炭素と比較して高いヤング率を有するため、固体二次電池100を製造する際に高圧プレスした場合においても、中間層30の構造を保持できる。
【0047】
無定形炭素及び金属ナノ粒子等の粒子の粒径は、固体電解質材料の粒子径よりも小さいことが好ましい。これにより、固体電解質層20の界面を構成する固体電解質材料同士の間隙に中間層30が入り込むことができるため、固体電解質層20と中間層30との接触面積を増大することができ、かつ密着性を向上できる。無定形炭素の粒子径は、例えばメジアン径(D50)で0.02~0.10μmの範囲内にあってもよい。金属ナノ粒子の粒子径は、例えばメジアン径(D50)で00.2~0.20μmの範囲内にあってもよい。
【0048】
バインダーは、中間層30を構成する粒子同士、及び中間層30と固体電解質層20との密着性を向上できるものであることが好ましい。バインダーは、特に制限はなく、一般に固体二次電池に使用されるものを用いることができる。バインダーの例としては、アクリル酸系重合体、セルロース系重合体、スチレン系重合体、酢酸ビニル系重合体、ウレタン系重合体、フルオロエチレン系重合体等、PVDF系重合体が挙げられる。
【0049】
絶縁枠35は、20℃における体積抵抗率が1×1012Ω・cm以上とされている。体積抵抗率は、1×1012~1×1017Ω・cmの範囲内にあってもよく、1×1014~1×1017Ω・cmの範囲内にあってもよい。絶縁枠35は、空隙率が40%以下とされている。空隙率は、20%以下であってもよく、1~20%の範囲内にあってもよい。空隙率が高くなりすぎる場合は、電池製造プロセスにおける高加圧時に絶縁枠35の構造保持が困難となるおそれがあり、また充放電時に物理的に析出金属が絶縁枠35の内部に侵入して短絡するリスクが高くなるおそれがある。
【0050】
絶縁枠35は、有機物であってもよいし、無機物であってもよい。絶縁枠35に含まれる絶縁材料の例としては、ゴム、ガラス、樹脂(ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、4フッ化エチレン、6ポリアミド(6ナイロン)、超高分子量ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂など)、セラミックス(アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、窒化アルミニウム、ムライト、ステアタイト、マグネシア、サイアロン、マセライトなど)が挙げられる。絶縁材料は、一種単独であってもよいし、二種以上の材料を組み合わせた複合材料でもあってもよい。また、絶縁枠35は、少量の結着材や添加剤を含んでいてもよい。絶縁枠35の単位厚さ当りの絶縁破壊電圧は、10kV/mm以上が好ましく、100kV/mm以上がさらに好ましい。
【0051】
負極集電体41は、集電基材41aと、集電基材41aの表面に積層された金属層41bとを有する積層体とされている。
集電基材41aは、負極層40の集電を行う機能を有するものであれば、材料や形状に特に制限はない。集電基材41aの材料の例としては、ニッケル、銅、及びステンレス等が挙げられる。また、集電基材41aの形状の例としては、箔状、板状等が挙げられる。
【0052】
金属層41bは、リチウムイオン等の電荷移動媒体を緻密に析出させる機能を有するものであれば、材料や形状に特に制限はない。電荷移動媒体がリチウムイオンである場合は、金属層41bの材料としては、金属リチウムあるいはリチウムと合金を生成する金属を用いることができる。リチウムと合金を形成する金属の例としては、Mg、Si、Au、Ag、In、Ge、Sn、Pb、Al及びZn等が挙げられる。金属層41bを形成する金属は、粉末状であってもよいし、薄膜状であってもよい。この金属層41bを有する負極集電体41を用いることによって、負極集電体41の表面に均一な金属析出層42を生成させることができる。なお、金属層41bを省略して、集電基材41aに直接リチウムイオンを析出させてもよい。
【0053】
図4に示すように、電極積層体1は、外装体50に収容されている。外装体50の外側表面には、電極積層体1に拘束力を付与するための一対の拘束部材60が配置されている。固体二次電池100は、一方の端部が正極集電体11に接続し、他方の端部が外に突出した正極タブ(不図示)と、一方の端部が負極集電体41に接続し、他方の端部が外に突出した負極タブ(不図示)とを有する。
【0054】
外装体50は、充放電よる負極の厚みの変化に伴って伸縮可能とされている。外装体50の材料としては、ラミネートフィルムを用いることができる。ラミネートフィルムとしては、内側から内側樹脂層、金属層、外側樹脂層がこの順で積層された3層構造の積層フィルムを用いることができる。外側樹脂層は例えばポリアミド(ナイロン)層、ポリエチレンテレフタレート(PET)層であり、金属層は例えばアルミニウム層であり、内側樹脂層は例えばポリエチレン層、ポリプロピレン層であってもよい。また各層間に接着剤層を含んでいてもよく、熱や圧力などで一体化されていてもよい。
【0055】
外装体50の内部のクリアランスを確保するために、放電状態における負極層40の厚さ(負極集電体41の厚さ)に対する正極層10の厚さの比(正極層10の厚さ/負極層40の厚さ)は1.9以上であってもよい。
【0056】
拘束部材60は、電極積層体1の積層方向に対して拘束力を付与するものとされている。拘束部材60は、上面視の面積をSrとし、負極層40の上この面視の面積Snとしたときに、Sn≦Srの関係を満足することが好ましい。拘束部材60の面積Srがこの関係を満足することによって、負極層40の表面に均一に拘束力が作用する。このため、充電時において、負極層40の表面に均一に金属イオンを析出させることができるので、固体電解質層20及び中間層30の端部に金属が蓄積しにくくなる。拘束部材60の材料としては、特に制限はなく、一般に固体電池に使用されるものを用いることができる。拘束部材60による電極積層体1への拘束力は、例えば0.1~10MPaの範囲内であってもよい。
次に、本実施形態の固体二次電池100の製造方法について説明する。
電極積層体1は、例えば正極活物質層形成工程と、絶縁枠配置工程と、固体電解質層形成工程と、中間層形成工程と、負極層形成工程と、を含む方法によって作製することができる。
【0057】
正極活物質層形成工程は、正極集電体11の表面に正極活物質層12を形成する工程である。正極活物質層12を形成する方法としては、正極活物質層スラリーを塗布し、乾燥する方法を用いることができる。正極活物質層スラリーとしては、溶媒、正極活物質、そして任意に含まれる導電助剤やバインダーを含有する正極活物質の分散液を用いることができる。
【0058】
絶縁枠配置工程は、正極活物質層12の外周に絶縁枠35を配置する工程である。絶縁枠35を配置する方法としては、例えば絶縁枠スラリーを、正極活物質層12の外周に塗布し、乾燥して、絶縁枠を形成させる方法を用いることができる。絶縁枠スラリーとしては、例えば溶媒、絶縁材料、そして任意に含まれるバインダーを含有する絶縁材料の分散液を用いることができる。
【0059】
固体電解質層形成工程は、正極層10の正極活物質層12の表面に、固体電解質層20を形成する工程である。固体電解質層20を形成する方法としては、固体電解質層スラリーを正極活物質層12の表面に直接塗布し乾燥する方法、あるいは固体電解質層スラリーを別に用意した支持シートの表面に塗布し乾燥して形成した固体電解質層20を、正極活物質層12の表面に所定圧力で転写する方法を用いることができる。固体電解質層スラリーとしては、例えば溶媒、固体電解質、そして任意に含まれるバインダーを含有する固体電解質の分散液を用いることができる。また、固体電解質層20を形成する方法として固体電解質層を基材と一体化、自立化させた後に正極層上に配置する方法を用いることができる。基材としては、例えば不織布や織布を用いることができる。基材の材料としては、PETなどのポリエステル樹脂を用いることができる。
【0060】
中間層形成工程は、固体電解質層20の正極活物質層12側とは反対側の表面に、中間層30を形成する工程である。中間層30を形成する方法としては、中間層スラリーを固体電解質層20の表面に直接塗布し、乾燥する方法、あるいは中間層スラリーを別に用意した支持シートの表面に塗布し乾燥して形成した中間層30を、固体電解質層20の表面に所定圧力で転写する方法を用いることができる。中間層スラリーとしては、例えば溶媒、金属ナノ粒子、無定形炭素、そして任意含まれるバインダーを含有する中間層形成材料の分散液を用いることができる。
【0061】
負極層形成工程は、中間層30の固体電解質層20側とは反対側の表面に、負極層40を形成する工程である。負極層40を形成する方法としては、予め用意した負極集電体41を中間層30の表面に配置する方法を用いることができる。
【0062】
中間層形成工程と負極層形成工程とは、同時に行ってもよい。例えば、中間層30と負極層40を予め一体化、自立化させた中間層-負極層積層体の中間層30を、固体電解質層20に表面に配置してもよい。中間層-負極層積層体は、例えば中間層スラリーを負極集電体41の表面に塗布し乾燥して、中間層30を形成ことによって得ることができる。
【0063】
以上のようにして、正極層10と、固体電解質層20と、中間層30と負極層40とが、この順で積層された電極積層体1が得られる。得られた電極積層体1は、任意にプレスして一体化してもよい。
【0064】
固体二次電池100は、次のようにして作製することができる。得られた電極積層体1の正極集電体11に正極タブの一方の端部を接続し、負極集電体41に負極タブの一方の端部を接続する。次いで、正極タブ及び負極タブの他方の端部が突出するように、電極積層体1を外装体50に収容し、外装体50を封止する。そして、外装体50の外側表面に拘束部材60を配置して、電極積層体1を所定の拘束力で拘束する。
【0065】
以上のような構成とされた本実施形態の固体二次電池100によれば、正極活物質層12、固体電解質層20及び中間層30の外周が、上述の体積抵抗率と空隙率を有する絶縁枠35で囲まれているので、充放電時において、正極層10や負極層40から放出された金属イオンが固体電解質層20及び中間層30の端部に析出しにくい。このため、正極層10と負極層40とが短絡しにくい。よって、本実施形態の固体二次電池100は、サイクル特性に優れたものとなる。
【0066】
また、本実施形態の固体二次電池100によれば、絶縁枠の空隙率が20%以下と低い場合には、絶縁枠35内の空隙径が小さくかつ絶縁枠35の構造保持がしやすいため、充放電時において、正極層10や負極層40から放出された金属イオンが固体電解質層20及び中間層30の端部にさらに析出しにくくなる。このため、さらに正極層10と負極層40とが短絡しにくくなる。また、本実施形態の固体二次電池100において、中間層30の空隙率が固体電解質層20の空隙率よりも大きい場合は、負極層40界面への不均一な金属の析出を抑制でき、サイクル特性をより向上できる。また、本実施形態の固体二次電池100において、中間層30が金属ナノ粒子と無定形炭素とを含む場合は、中間層30の電子伝導性を確保できると共に、中間層30を構成する粒子と電荷移動媒体とが反応して合金化することを防止できる。さらに、本実施形態の固体二次電池100において、負極活物質が金属リチウムである場合は、高容量化が可能となる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態の固体二次電池100では、負極活物質層として金属析出層42を用いているが、負極活物質層はこれに限定されるものではない。負極活物質層として、リチウムイオン等の電荷移動媒体を吸蔵及び放出することができる負極活物質を含む層としてもよい。この場合は、集電基材41aの表面に負極活物質層を配置してもよい。負極活物質としては、一般的な固体二次電池の負極で使用されているものを用いることができる。電荷移動媒体がリチウムイオンである場合、負極活物質の例としては、チタン酸リチウム等のリチウム遷移金属酸化物、TiO、Nb及びWO等の遷移金属酸化物、Si、SiO、金属硫化物、金属窒化物、並びに人工黒鉛、天然黒鉛、グラファイト、ソフトカーボン及びハードカーボン等の炭素材料が挙げられる。負極活物質層は、電荷移動媒体伝導性を向上させる観点から、任意に固体電解質を含んでいてもよい。また、導電性を向上させるために任意に導電助剤を含んでいてもよい。さらに、可撓性を発現させる等の観点から、任意にバインダーを含んでいてもよい。固体電解質、導電助剤及びバインダーについては、一般に固体電池に使用されるものを用いることができる。
【0068】
また、本実施形態の固体二次電池100は、中間層30を有し、絶縁枠35が中間層30の外周まで延長されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態の固体二次電池100では、金属イオンが固体電解質層20の端部に析出しにくいので、絶縁枠35が中間層30の外周まで延長されていなくても正極層10と負極層40とが短絡しにくい。
【0069】
以下、実施例を用いて本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0070】
<実施例1>
[正極活物質層の作製]
正極集電体として、X方向の長さ30.0mm×Y方向の長さ30.0mm×厚さ15.0μmの矩形状のアルミニウム箔を用意した。
正極活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM622)を80質量部、固体電解質としてアルジロダイト型硫化物固体電解質を17質量部、導電助剤としてカーボンブラックを2質量部、結着材としてSBR(スチレンブタジエンゴム)系バインダーを1質量部の割合で混合した。得られた混合物を、酪酸ブチル43質量部に分散させて正極活物質層スラリーを調製した。得られた正極活物質層スラリーを、正極集電体の中央にX方向の長さ20.0mm×Y方向の長さ20.0mm×乾燥後の目付27mg/cmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、乾燥して、厚さ80.0μmの正極活物質層を作製した。
【0071】
[絶縁枠の作製]
絶縁材料としてアルミナ(Al)粒子(メジアン径:0.4μm)を90質量部、結着材としてSBR系バインダーを10質量部の割合で混合した。得られた混合物を、酪酸ブチル120質量部に分散させて絶縁枠スラリーを調製した。得られた絶縁枠スラリーを、正極集電体の正極活物質層の未形成部に、乾燥後の目付20mg/cmとなるようにスプレーコーターを用いて塗布し、乾燥して絶縁枠を作製した。
【0072】
[固体電解質層の作製]
アルジロダイト型硫化物固体電解質(メジアン径:3.0μm)の分散液を、支持シートに塗布し、乾燥して、X方向の長さ27.0mm×Y方向の長さ27.0mmのアルジロダイト型硫化物固体電解質層を形成した。正極活物質層の中央に、支持シートに形成したアルジロダイト型硫化物層で転写して、固体電解質層を作製した。
【0073】
[中間層の作製]
金属ナノ粒子としてSn粒子(メジアン径:0.07μm)と、無定形炭素としてアセチレンブラック(メジアン径:0.05μm)とを合計で95質量部、結着材としてPVDF系バインダーを5質量部の割合で混合した。得られた混合物を、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)1000質量部に分散させて中間層スラリーを調製した。得られた中間層スラリーを、基材箔に目付0.4mg/cmとなるようにグラビアコーターを用いて塗工、乾燥した。固体電解質層の中央に配置し所定圧力で転写して、X方向の長さ22.0mm×Y方向の長さ22.0mm×プレス後厚さ3.0μmの中間層を作製した。こうして、正極層と、固体電解質層と、中間層とがこの順で積層され、その外周が絶縁枠で囲われた絶縁枠付き正極層-固体電解質層-中間層積層体を得た。
【0074】
[負極集電体の作製]
厚さ10μmの銅箔と厚さ40μmのリチウム箔とを積層した積層金属箔(合計厚さ:50μm)を用意した。この積層金属箔を、Y方向の長さ21.0mm×Y方向の長さ21.0mmのサイズで切断して、負極集電体を作製した。
【0075】
[電極積層体の作製]
上記で得られた絶縁枠付き正極層-固体電解質層-中間層積層体を、等方圧プレス成形により加熱温度120℃、加圧圧力980Mpaの条件で5分間保持して、各層を高密度化処理した。次に、上記で得られた負極集電体を、リチウム箔が絶縁枠付き正極層-固体電解質層-中間層積層体の中間層の表面に接するように配置した後、プレスして、正極層と、固体電解質層と、中間層と、負極集電体とがこの順で積層された電極積層体を作製した。
【0076】
[固体二次電池の作製]
上記により得られた電極積層体の正極集電体と負極集電体のそれぞれにタブを取り付けた後、電極積層体を袋状のラミネートパックに収納した。その後、アルゴン雰囲気下でラミネートパックを封止した。
【0077】
X方向の長さ21.0mm×Y方向の長さ21.0mmの拘束部材を用意した。この拘束部材を、ラミネートパックの表面から電極積層体の負極集電体に対向するように配置し、電極積層体に3MPaの拘束力を付与して、固体二次電池を作製した。
【0078】
<実施例2~4、比較例1~2>
電極積層体の高密度化処理時の加熱温度と加圧圧力を下記の表1の温度と圧力としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体二次電池を作製した。
【0079】
<絶縁枠の物性>
実施例1~3及び比較例1~2で作製した電極積層体から絶縁枠を取り出した。得られた絶縁枠の体積抵抗率(20℃)と真密度を測定した。また、絶縁枠の見掛け密度と真密度を測定し、得られた真密度と見掛け密度から、空隙率(=見掛け密度/真密度×100)を算出した。見掛け密度は、絶縁枠の重量とサイズから算出した。
【0080】
<電池特性>
実施例1~3及び比較例1~3で作製した固体二次電池について、充電上限電圧4.3V、放電下限電圧2.65V、Cレート1/3Cで充放電を繰り返すサイクル試験を行った。1回目の充電容量に対する1回目の放電容量の比率(1回目放電容量/1回目充電容量×100)を初回充放電効率とした。また、2回目の充電容量に対する1回目の放電容量の比率(2回目充電容量/1回目放電容量×100)が105%を超えた場合、2回目充電時の短絡挙動を「有」とし、2回目の充電容量に対する1回目の放電容量の比率が105%以下の場合、2回目充電時の短絡挙動を「無」とした。その結果を、表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1に示す結果から、本発明に従う絶縁枠を有する実施例1~3で得られた固体二次電池は、初回充放電効率が高く、短絡が起こりにくいことが確認された。これに対して、絶縁枠の空隙率が本発明の範囲よりも大きい比較例1で得られた固体二次電池、及び絶縁枠の空隙率が本発明の範囲よりも大きく、体積抵抗率が本発明の範囲よりも小さい比較例1~2の固体二次電池では、初回充放電効率が低く、短絡が起こりやすいことが確認された。これは、充電時に絶縁枠内の空隙にリチウムが析出したためである。
【符号の説明】
【0083】
1 電極積層体
10 正極層
11 正極集電体
12 正極活物質層
20 固体電解質層
30 中間層
35 絶縁枠
40 負極層
41 負極集電体
41a 集電基材
41b 金属層
42 金属析出層
50 外装体
60 拘束部材
100 固体二次電池
図1
図2
図3
図4