(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146692
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】料金計算システム、料金計算方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241004BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023132908
(22)【出願日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000167794
【氏名又は名称】広島ガス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】中川 智彦
(72)【発明者】
【氏名】藤河 俊介
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】電気の利用者にとって電気料金の変動リスクを低減する技術を提供する。
【解決手段】料金計算システム16は、顧客の電気の使用量に関する情報を取得する。料金計算システム16は、電気が使用された時点に応じた電気の市場価格と使用量とに基づいて、単位期間における顧客の電気の使用料金を算出する。料金計算システム16は、或る単位期間における顧客への請求金額として、当該単位期間より前の所定個数の単位期間のそれぞれにおける電気の使用料金を分割して合計した金額を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の電気の使用量に関する情報を取得する取得部と、
電気が使用された時点に応じた電気の市場価格と前記使用量とに基づいて、単位期間における前記顧客の電気の使用料金を算出する使用料金算出部と、
或る単位期間における前記顧客への請求金額として、当該単位期間より前の所定個数の単位期間のそれぞれにおける電気の使用料金を分割して合計した金額を算出する請求金額算出部と、
を備える料金計算システム。
【請求項2】
前記請求金額算出部は、電気の使用を将来解約する際に残存する未払いの電気の使用料金と相殺するための解約調整金を前記顧客への請求金額に含める、
請求項1に記載の料金計算システム。
【請求項3】
前記請求金額算出部は、電気の使用を開始してから所定期間、前記解約調整金を前記顧客への請求金額に含める、
請求項2に記載の料金計算システム。
【請求項4】
前記或る単位期間における前記顧客への請求金額の明細情報であって、かつ、前記所定個数の単位期間のそれぞれにおける電気の使用料金を分割した金額を含む明細情報を生成する明細生成部をさらに備える、
請求項1から3のいずれかに記載の料金計算システム。
【請求項5】
顧客の電気の使用量に関する情報を取得し、
電気が使用された時点に応じた電気の市場価格と前記使用量とに基づいて、単位期間における前記顧客の電気の使用料金を算出し、
或る単位期間における前記顧客への請求金額として、当該単位期間より前の所定個数の単位期間のそれぞれにおける電気の使用料金を分割した金額の合計を算出する、
ことをコンピュータが実行する料金計算方法。
【請求項6】
顧客の電気の使用量に関する情報を取得し、
電気が使用された時点に応じた電気の市場価格と前記使用量とに基づいて、単位期間における前記顧客の電気の使用料金を算出し、
或る単位期間における前記顧客への請求金額として、当該単位期間より前の所定個数の単位期間のそれぞれにおける電気の使用料金を分割した金額の合計を算出する、
ことをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ処理技術に関し、特に料金計算システム、料金計算方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力小売の全面自由化を受けて、電気の小売業に参入する事業者(いわゆる小売電気事業者)が数多く現れている。小売電気事業者が需要家に提供する電気料金プランには、卸電力取引市場に連動した料金プランがある。このような市場連動型料金プランの中には、例えば、卸電力取引市場の市場価格に連動して30分ごとの従量単価(言い換えれば電気料金単価)が変動して、電気使用量に応じた料金を算出する料金プランがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
市場連動型の従量料金である場合、利用者にとって、季節による使用量の変動や、市場価格の変動によって、電気料金が大きく変動する(典型的には夏冬の電気料金が高騰する)リスクがある。本開示の1つの目的は、電気の利用者にとって電気料金の変動リスクを低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の料金計算システムは、顧客の電気の使用量に関する情報を取得する取得部と、電気が使用された時点に応じた電気の市場価格と使用量とに基づいて、単位期間における顧客の電気の使用料金を算出する使用料金算出部と、或る単位期間における顧客への請求金額として、当該単位期間より前の所定個数の単位期間のそれぞれにおける電気の使用料金を分割して合計した金額を算出する請求金額算出部とを備える。
【0006】
本発明の別の態様は、料金計算方法である。この方法は、顧客の電気の使用量に関する情報を取得し、電気が使用された時点に応じた電気の市場価格と使用量とに基づいて、単位期間における顧客の電気の使用料金を算出し、或る単位期間における顧客への請求金額として、当該単位期間より前の所定個数の単位期間のそれぞれにおける電気の使用料金を分割した金額の合計を算出することをコンピュータが実行する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を、装置、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によると、電気の利用者にとって電気料金の変動リスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態の電気事業者システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1の料金計算システムの機能ブロックを示すブロック図である。
【
図3】実施形態での解約調整金の設定例を示す図である。
【
図4】料金計算システムの動作を示すフローチャートである。
【
図5】或る顧客の電気使用料金、請求金額、精算金額の推移を示す図である。
【
図6】
図5に対応する、顧客への請求金額の例を示す図である。
【
図7】
図5に対応する、顧客への請求金額の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の技術を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0011】
実施形態の概要を説明する。実施形態では、小売電気事業者の料金計算システムを提案する。実施形態の料金計算システムは、完全市場連動型かつ季節変動平準化の料金体系を実現する。
【0012】
完全市場連動型料金は、基本料金のない従量型の料金体系である。各月の電気使用料金は、以下の式1で求められる。
N月の電気使用料金 = Σ{N-1月の30分ごとの(市場価格×使用量+各地区ネットワーク使用料+利益} ・・・(式1)
【0013】
式1の市場価格は、卸電力市場(日本卸電力取引所:JEPX)での電力の取引価格であり、具体的には、30分ごとの前日スポット価格である。また、式1の市場価格は、電気が使用された際の市場価格である。ネットワーク使用料は、託送料金とも言え、小売電気事業者が利用する送配電網の利用料金として一般送配電事業者が設定した金額である。利益は、小売電気事業者が設定した金額である。利益は、電気が使用された場合にのみ発生するものであってもよい。
【0014】
完全市場連動型料金による利用者にとっての利点は、電気を使用した分だけの支払いであり透明性があること、また、これまで電気を使用しない場合でも支払う必要があった基本料金がないことである。一方、完全市場連動型料金による利用者にとっての欠点は、季節による使用量の変動や、市場価格の変動によって、電気料金が大きく変動する(典型的には夏冬の電気料金が高騰する)リスクの存在である。
【0015】
季節変動平準化料金は、各月の電気料金を複数回(例えば3回から6回)に分割して請求する料金体系である。各月の電気料金を6回に分割して請求する場合、或る月(N月)の電気料金の請求金額は、以下の式2で求められる。
N月の請求金額 = N-6月の電気使用料金の6分の1
+ N-5月の電気使用料金の6分の1
+ N-4月の電気使用料金の6分の1
+ N-3月の電気使用料金の6分の1
+ N-2月の電気使用料金の6分の1
+ N-1月の電気使用料金の6分の1 ・・・(式2)
【0016】
各月の電気料金を3回に分割して請求する場合、或る月(N月)の電気料金の請求金額は、以下の式3で求められる。
N月の請求金額 = N-3月の電気使用料金の3分の1
+ N-2月の電気使用料金の3分の1
+ N-1月の電気使用料金の3分の1 ・・・(式3)
【0017】
季節変動平準化料金を導入することにより、利用者にとっての利点として、夏冬の電気使用量の増加や、電気の市場価格高騰により、電気料金負担が一時的に増えるリスクを低減できる。
【0018】
ただし、季節変動平準化料金には、利用者にとっての欠点として、解約時の精算額が大きくなることがある。また、季節変動平準化料金には、小売電気事業者にとっての欠点として、未収金が積み上がり、回収リスクが高くなることがある。
【0019】
そこで実施形態の料金計算システムでは「解約調整金」を導入する。解約調整金は、電気の使用を将来解約(または分割回数を変更)する際に残存する未払いの電気使用料金と相殺するための金銭である。具体的には、利用開始時の電気料金負担が少ない月に利用者に解約調整金を負担してもらい、将来の解約時または分割回数変更時に、支払い済の解約調整金と未収金とを相殺する。
【0020】
解約調整金を導入することにより、利用者にとっての利点として、解約時に電気料金負担が増加するリスクを低減できる。また、小売電気事業者にとっての利点として、未収金を回収できないリスクを低減できる。
【0021】
実施形態において電気の使用料金を算出する単位期間と、請求金額を算出する単位期間はいずれも1か月とする。変形例として、単位期間は、予め定められた期間であればよい。例えば、単位期間は、1か月より短い期間(例えば20日)であってもよく、1か月より長い期間(例えば2か月)であってもよい。
【0022】
実施の形態のシステムを詳細に説明する。
図1は、実施の形態の電気事業者システム10の構成を示す。電気事業者システム10は、小売電気事業者の企業情報システムである。電気事業者システム10は、顧客管理システム12、電力広域機関システム14、料金計算システム16、EDI(Electronic Data Interchange)サーバ18、ウェブシステム20を備える。
【0023】
顧客管理システム12は、小売電気事業者の複数の顧客(言い換えれば小売電気事業者が販売する電気の複数の利用者)に関する情報を管理する情報処理システムである。電力広域機関システム14は、電気のスイッチングを円滑に実施するためのシステムや、配送電事業者から提供される検針情報を提供するシステム、電気の市場価格を提供するシステムを含む。
【0024】
料金計算システム16は、小売電気事業者の複数の顧客のそれぞれに関する電気の使用料金と請求金額を計算する情報処理システムである。料金計算システム16の詳細は後述する。
【0025】
EDIサーバ18は、電気料金の請求処理を実行する情報処理システムである。ウェブシステム20は、顧客ポータルサイトを提供し、顧客端末とデータを送受信する情報処理システムである。実施形態では、ウェブシステム20は、電気料金に関する明細情報を示すウェブページを顧客端末に提供する。
【0026】
図2は、
図1の料金計算システム16の機能ブロックを示すブロック図である。本明細書のブロック図で示す複数の機能ブロックは、ハードウェア的には、回路ブロック、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムをコンピュータのプロセッサ(CPU等)が実行すること等により実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0027】
処理部30は、料金計算に関する各種データ処理を実行する。処理部30は、料金計算システム16を構成するコンピュータのプロセッサにより実現されてもよい。記憶部32は、処理部30により参照または更新されるデータを記憶する。通信部34は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。処理部30は、通信部34を介して、顧客管理システム12およびウェブシステム20とデータを送受信する。
【0028】
記憶部32は、顧客属性記憶部36、電気使用量記憶部38、使用料金記憶部40、請求金額記憶部42、精算金額記憶部44、明細記憶部46を含む。これらの各記憶部に記憶されるデータはいずれも顧客IDを含み、顧客IDにより互いに関連付けられる。
【0029】
顧客属性記憶部36は、複数の顧客のそれぞれに関する属性情報を記憶する。この属性情報は、少なくとも、顧客ID、料金請求の分割回数、利用開始年月(または分割回数変更年月)を含む。実施形態では、料金請求の分割回数は、予め定められた複数のパターンの中から何れかのパターンを顧客が選択可能である。例えば、分割回数0回(分割せずに一括請求)、分割回数3回、分割回数6回の中からいずれかを顧客が選択可能に構成されてもよい。料金計算システム16は、顧客端末から送信された、顧客が選択した分割回数を、ウェブシステム20、顧客管理システム12を介して受け付け、顧客属性記憶部36に格納してもよい。
【0030】
電気使用量記憶部38は、各月の各顧客の電気の使用量(実施形態では30分ごと)を示すデータを記憶する。電気の使用量の単位は、例えばキロワット時(kWh)である。使用料金記憶部40は、各月の各顧客の電気の使用料金を示すデータを記憶する。請求金額記憶部42は、各月の各顧客に対する電気料金の請求金額を示すデータを記憶する。
【0031】
精算金額記憶部44は、顧客ごとの、解約に伴う精算金額を示すデータを記憶する。精算金額は、電気料金の未収額から、支払い済の解約調整金を差し引いた額である。明細記憶部46は、顧客ごとの電気料金の明細情報を記憶する。明細情報は、或る月の請求金額と、その請求金額に含まれる複数の月の電気使用料金および電気使用量とを含む。
【0032】
処理部30は、電気使用量取得部50、使用料金算出部52、請求金額算出部54、精算金額算出部56、明細生成部58、料金情報出力部60を含む。これら複数の機能ブロックの機能は、コンピュータプログラム(ここでは「料金計算プログラム」とも呼ぶ。)に実装されてもよい。料金計算プログラムは、記録媒体またはネットワークを介して料金計算システム16を構成するコンピュータのストレージにインストールされてもよい。当該コンピュータのプロセッサ(CPU等)は、料金計算プログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0033】
電気使用量取得部50は、小売電気事業者の複数の顧客それぞれの電気使用量に関する情報を取得する。使用料金算出部52は、電気が使用された時点に応じた電気の市場価格と電気使用量とに基づいて、単位期間(実施形態での単位期間は1か月)における顧客の電気使用料金を算出する。実施形態では、使用料金算出部52は、上記の式1にしたがって各顧客の電気使用料金を算出する。
【0034】
請求金額算出部54は、或る単位期間(実施形態では或る月)における顧客への請求金額として、当該単位期間より前の所定個数の単位期間のそれぞれにおける電気の使用料金を分割して合計した金額を算出する。例えば、請求金額算出部54は、分割回数6回を選択した顧客への請求金額を上記の式2にしたがって算出し、分割回数3回を選択した顧客への請求金額を上記の式3にしたがって算出する。
【0035】
請求金額算出部54は、各顧客への請求金額に解約調整金を含める。具体的には、請求金額算出部54は、顧客ごとに、電気の使用を開始してから(例えば電気の利用契約が定める利用開始日から)所定期間、または、分割回数を変更してから所定期間、解約調整金を請求金額に含める。
【0036】
図3は、実施形態での解約調整金の設定例を示す。N月が電気の利用開始月または分割回数の変更月である。Xは、電気料金の請求における分割回数である。解約調整金は、N+1月からN+X-1月まで設定される。例えば、4月が利用開始月で分割回数が6回の場合、解約調整金は5月から9月までの請求金額に設定される。また、4月が利用開始月で分割回数が3回の場合、解約調整金は5月と6月の請求金額に設定される。
【0037】
図3に示すように、請求金額算出部54は、利用開始月の翌月(請求開始月)が最も大きく、徐々に小さくなるよう解約調整金を設定する。言い換えれば、請求金額算出部54は、顧客が電気の利用を開始してからの経過時間が長くなるほど、請求金額に含める解約調整金を小さくする。利用開始から数か月間は電気使用料金の分割請求金額は小さくなるため、このような解約調整金の設定により、各月の請求金額を平準化しやすくなる。
【0038】
なお、
図3の2000円は、予め定められた解約調整金単価である。解約調整金単価は、顧客の属性に基づいて定められてもよい。また、想定される月々の電気使用料金が高いほど、解約調整金の単価も高く設定されてもよい。例えば、一般家庭(二人以上世帯の家庭等)の解約調整金単価は、分割回数6回の場合に2000円、分割回数3回の場合に6600円に設定されてもよい。一方、単身世帯の解約調整金単価は、分割回数6回の場合に800円、分割回数3回の場合に2640円に設定されてもよい。
【0039】
変形例として、料金計算システム16は、顧客端末から入力された顧客の属性情報に応じて、解約調整金単価を自動で決定する単価決定部をさらに備えてもよい。顧客の属性情報は、顧客が使用する電力量を推定するための情報(例えば、保有する家電の種類や空調機器の台数等)を含んでもよい。解約調整金単価は、顧客が使用する電力量の推定値が大きいほど、例えば空調機器の台数が多いほど、解約調整金単価を大きくしてもよい。単価決定部は、決定した各顧客の解約調整金単価を顧客属性記憶部36に格納してもよい。請求金額算出部54は、顧客属性記憶部36に記憶された或る顧客の解約調整金単価を用いて、当該顧客への請求金額に含める解約調整金を算出してもよい。
【0040】
図2に戻り、精算金額算出部56は、顧客ごとの解約時の精算金額を算出する。具体的には、精算金額算出部56は、電気使用料金の未回収分の金額と支払い済の解約調整金との差を精算金額として算出する。
【0041】
明細生成部58は、或る単位期間における顧客への請求金額の明細情報を生成する。明細情報は、その単位期間より前の所定個数の単位期間(すなわち分割請求の対象となる複数の単位期間)のそれぞれにおける電気の使用料金を分割した金額を含む。例えば、分割回数が6回の場合、10月の明細情報は、10月の請求金額に加えて、4月から9月の各月の電気使用料金の6分の1の金額を含む。
【0042】
料金情報出力部60は、請求金額算出部54により算出された各顧客への請求金額と、その請求金額に関する明細情報を顧客管理システム12へ送信する。
【0043】
なお、料金計算システム16は、1台の情報処理装置で実現されてもよく、複数台の情報処理装置が通信し、連携することにより実現されてもよい。後者の場合、上記の料金計算システム16の機能は、複数台の情報装置に分散して実装されてもよい。
【0044】
図4は、料金計算システム16の動作を示すフローチャートである。以下、
図4を参照しつつ、実施形態の電気事業者システム10の動作を説明する。
【0045】
顧客管理システム12は、電力広域機関システム14から、前日の30分ごとの卸電力取引市場の市場価格(言い換えれば電力の取引価格)のデータを定期的に取得し、取得した市場価格のデータを料金計算システム16に送信する。料金計算システム16は、卸電力取引市場の各日30分ごとの市場価格のデータを記憶する。
【0046】
また、顧客管理システム12は、電力広域機関システム14から、小売電気事業者の複数の顧客それぞれの電気使用量を示す各顧客の検針情報を定期的に取得する。顧客管理システム12は、取得した各顧客の検針情報を料金計算システム16に送信する。料金計算システム16の電気使用量取得部50は、各顧客の検針情報を取得し、それらの検針情報が示す各顧客の30分ごとの電気使用量を示すデータを電気使用量記憶部38に格納する(S10)。
【0047】
S12以降の処理は、料金計算のタイミングに至った場合に実行される。料金計算の対象となる月を以下「対象月」とも呼ぶ。料金計算システム16の使用料金算出部52は、式1に示したように、卸電力取引市場の30分ごとの市場価格と、各顧客の30分ごとの電気使用量とに基づいて、対象月に関する各顧客の電気使用料金を算出する(S12)。使用料金算出部52は、各顧客の電気使用料金のデータを使用料金記憶部40に格納する。
【0048】
料金計算システム16の請求金額算出部54は、顧客属性記憶部36に記憶された、顧客ごとに設定された分割回数にしたがって、各顧客への請求金額を算出する(S14)。請求金額算出部54は、各顧客への請求金額のデータを請求金額記憶部42に格納する。
【0049】
例えば、分割回数が6回の場合、請求金額算出部54は、式2に示したように、(対象月-6月)から(対象月-1月)までの各月の電気使用料金の6分の1を合計した額を対象月の請求金額として算出する。対象月が利用開始月(または分割回数変更月)から5月以内である場合、請求金額算出部54は、
図3に示したように、利用開始月からの経過時間に応じた解約調整金を請求額に加算する。
【0050】
一方、分割回数が3回の場合、請求金額算出部54は、(対象月-3月)から(対象月-1月)までの各月の電気使用料金の3分の1を合計した額を対象月の請求金額として算出する。対象月が利用開始月(または分割回数変更月)から2月以内である場合、請求金額算出部54は、利用開始月からの経過時間に応じた解約調整金を請求額に加算する。請求金額算出部54は、解約調整金の額も請求金額記憶部42に格納する。
【0051】
料金計算システム16の精算金額算出部56は、顧客ごとに未回収金額を算出する。例えば、分割回数が6回の場合、未回収金額は、対象月-5月の電気使用料金の6分の1、対象月-4月の電気使用料金の6分の2、対象月-3月の電気使用料金の6分の3、対象月-2月の電気使用料金の6分の4、対象月-1月の電気使用料金の6分の5の合計である。また、分割回数が3回の場合、未回収金額は、対象月-2月の電気使用料金の3分の1、対象月-1月の電気使用料金の3分の2の合計である。
【0052】
精算金額算出部56は、顧客ごとに、未回収金額と、請求金額記憶部42に記憶された支払い済(請求済)の解約調整金の累積額との差を解約時精算金額として算出する(S16)。精算金額算出部56は、各顧客の解約時精算金額のデータを精算金額記憶部44に格納する。
【0053】
図5は、或る顧客の電気使用料金、請求金額、精算金額の推移を示す。
図5の電気使用料金のレコードは、料金計算システム16の使用料金記憶部40に格納される。
図5の分割請求分、解約調整金、未収金回収、請求金額のレコードは、料金計算システム16の請求金額記憶部42に格納される。
図5の未収-調整金(精算金額)のレコードは、料金計算システム16の精算金額記憶部44に格納される。各月の未収-調整金(精算金額)の値は、前月解約した場合に当月請求される精算金額と言える。
【0054】
図5の顧客は、2022年の4月に分割回数6回で契約(電気利用を開始)した。料金計算システム16の請求金額算出部54は、2022年の5月から9月までの5か月間、分割回数6回に対応する解約調整金(単価2000円)を請求金額に含める。
【0055】
顧客は、2023年の4月に分割回数を3回に変更した。料金計算システム16の精算金額算出部56は、未回収の電気料金と支払い済の解約調整金(分割回数6回に対応する解約調整金)との差額を精算金額として5167円を算出する。また、料金計算システム16の請求金額算出部54は、2023年の5月から6月までの2か月間、分割回数3回に対応する解約調整金(単価6600円)を請求金額に含める。
【0056】
顧客は、2023年の9月に解約した。料金計算システム16の精算金額算出部56は、未回収の電気料金と支払い済の解約調整金(分割回数3回に対応する解約調整金)との差額を精算金額として-3133円(3133円の返金)を算出する。
【0057】
図6は、
図5に対応する、顧客への請求金額の例を示す。破線のグラフは、分割請求無し(平準化無し)の場合の請求金額の推移を示している。実線のグラフは、分割回数6回かつ解約調整金無しの場合の請求金額の推移を示している。分割請求無しの場合、夏と冬の請求金額が高くなるが、分割回数6回を設定することにより、そのような季節変動を抑制でき、各月の請求金額を平準化できる。ただし、解約時および分割回数変更時には、電気料金の未払い分がまとめて請求されるため請求金額が高騰する。
【0058】
図7も、
図5に対応する、顧客への請求金額の例を示す。破線のグラフは、
図6と同様に、分割請求無し(平準化無し)の場合の請求金額の推移を示している。実線のグラフは、分割回数6回かつ解約調整金有りの場合の請求金額の推移を示している。解約調整金を事前に徴収し、解約時および分割回数変更時に電気料金の未払い分と相殺するため、解約時および分割回数変更時の請求金額の高騰を抑制できる。
【0059】
図4に戻り、料金計算システム16の明細生成部58は、電気使用量記憶部38、使用料金記憶部40、請求金額記憶部42、精算金額記憶部44を参照して、顧客ごとの明細情報を生成して明細記憶部46に格納する(S18)。実施形態では、明細生成部58は、明細情報に、請求金額とその内訳(電気使用量および電気使用料金を含む)、および、解約した場合の精算金額を設定する。料金計算システム16の料金情報出力部60は、各顧客への請求金額と明細情報とを含む各顧客の料金情報を顧客管理システム12へ送信する(S20)。
【0060】
顧客管理システム12は、各顧客への請求金額のデータをEDIサーバ18へ送信する。EDIサーバ18は、各顧客に対して請求金額を請求する処理を実行する。この処理は、例えば、金融機関のシステムと連携して、或る顧客の口座から小売電気事業者の口座へ、当該顧客への請求金額分の金銭を移動させる処理を含んでもよい。
【0061】
また、顧客管理システム12は、料金計算システム16から送信された各顧客の明細情報を記憶する。ウェブシステム20は、或る顧客の顧客端末から明細情報の閲覧要求を受け付けた場合、顧客管理システム12または料金計算システム16から当該顧客の明細情報を取得し、その明細情報を要求元の顧客端末へ送信する。
【0062】
図8は、明細情報の例を示す。
図8の明細情報70は、
図5(A)に示す2022年6月分のデータに基づく、2022年6月分の明細情報である。明細情報70は、請求金額とその内訳、解約調整金の金額を含む。内訳は、請求対象月から6か月前までの各月の電気使用料金の6分の1の金額を含む。内訳はさらに、電気使用料金の根拠となった、請求対象月から6か月前までの各月の電気使用量の6分の1の値を含む。
【0063】
料金計算システム16の明細生成部58は、前月解約した場合の今月の精算額を精算金額記憶部44から取得して明細情報70にさらに設定する。例えば、
図8に示す2022年6月分の明細情報は、仮に5月に解約した場合に6月に請求される精算金額(
図8では8500円の返金)を示している。
【0064】
図9から
図11も、明細情報の例を示す。
図9の明細情報70は、
図5(B)に示す2022年10月分のデータに基づく、2022年10月分の明細情報である。
図10の明細情報70は、
図5(C)に示す、分割回数を3回に変更後の2023年6月分のデータに基づく、2023年6月分の明細情報である。
【0065】
図11の明細情報70は、
図5(C)に示す、解約後の2023年10月分のデータに基づく、2023年10月分の明細情報である。2023年10月分の明細情報70では、分割請求分の17667円と、未回収の電気料金から解約調整金を差し引いた精算金額3133円とを相殺した14533円が請求されている。
【0066】
実施形態の料金計算システム16によると、基本料金が無い完全市場連動型の電気使用料金とすることで、透明性が高い電気利用料金を実現できる。また、電気使用料金を3回または6回の分割請求とすることで、電気使用料金が一時的に高騰するリスクを低減できる。例えば、電気使用料金を6回の分割請求とすることで、夏冬の支払金額の高騰を効果的に抑制できる。さらにまた、未回収金と相殺するための解約調整金を設けることにより、解約時または分割回数変更時に請求金額が高騰するリスクを低減できる。解約調整金を設けることにより、顧客にとっての契約解除の自由度と、小売電気事業者にとっての未収金低減とを擁立できる。
【0067】
また、実施形態の料金計算システム16によると、請求金額を構成する各月の電気使用料金と電気使用量とを含む明細情報を顧客に提供することにより、請求金額の内訳を顧客にわかりやすく提示できる。さらにまた、解約した場合の精算金額を明細情報に含めることにより、電気利用の解約や分割回数の変更に関する顧客の意思決定を支援できる。
【0068】
以上、本開示の実施形態を説明した。実施形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0069】
変形例を説明する。ここでは、実施形態の完全市場連動型の電気料金との親和性が高いスマートリモコンを提案する。このスマートリモコンは、空調機器、照明機器、冷蔵庫等、複数の家電機器の動作(オン・オフや運転態様等)を制御可能なリモコンである。また、このスマートリモコンは、ユーザのスマートフォンと通信可能であり、ユーザのスマートフォンからの指示(遠隔操作)に応じて、複数の家電機器の動作を制御する。
【0070】
このスマートリモコンは、最新の卸電力市場の市場価格を定期的に繰り返し取得する。スマートリモコンは、空調機器が設置された室内に設置され、かつ、その室内の温度を検知する温度センサを内蔵してもよい。スマートリモコンは、電力の市場価格が所定値以下で、かつ、室温が設定温度を超えた場合に、空調機器の冷房運転を開始させてもよい。また、スマートリモコンは、電力の市場価格が所定値を超過した場合に、冷蔵庫の設定温度を高め、電力の市場価格が上記所定値以下になった場合に、冷蔵庫の設定温度を低下させてもよい。
【0071】
上述した実施形態および変形例の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0072】
10 電気事業者システム、 16 料金計算システム、 50 電気使用量取得部、 52 使用料金算出部、 54 請求金額算出部、 56 精算金額算出部、 58 明細生成部、 60 料金情報出力部。