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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146693
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】車両用浸水防止具
(51)【国際特許分類】
   B60J 11/06 20060101AFI20241004BHJP
   B60J 11/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60J11/06
B60J11/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135258
(22)【出願日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2023058385
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596141402
【氏名又は名称】有限会社ちふりや工業
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(71)【出願人】
【識別番号】514215457
【氏名又は名称】株式会社イノベックス
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】岩下 芳人
(72)【発明者】
【氏名】梅津(二川) 美果
(72)【発明者】
【氏名】古川 貴久
(72)【発明者】
【氏名】谷吹 智博
(72)【発明者】
【氏名】中川 雄三
(72)【発明者】
【氏名】内田 剛人
(57)【要約】
【課題】津波又は洪水等の発生時に、車両への装着を短時間で簡単に行うことができ、車両を浸水から確実に保護することができる耐久性に優れた車両用浸水防止具を提供する。
【解決手段】車両11が載置される底面保護部12と底面保護部12に連設されて車両11の全高の少なくとも下側1/3の高さまで車両11の外周面を覆う外周保護部13とを有する防水シート材14と、外周保護部13の上端側の周縁部に取付けられた複数の固定手段32とを備え、底面保護部12のシート厚は、外周保護部13のシート厚よりも肉厚に形成され、使用時に、複数の固定手段32同士が、車両11の上面側を跨いで配置される連結部材33で連結されることにより、外周保護部13の上端側が吊り上げられて固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を浸水から保護する車両用浸水防止具であって、
前記車両が載置される底面保護部と該底面保護部に連設されて前記車両の全高の少なくとも下側1/3の高さまで前記車両の外周面を覆う外周保護部とを有する防水シート材と、前記外周保護部の上端側の周縁部に取付けられた複数の固定手段とを備え、前記底面保護部のシート厚は、前記外周保護部のシート厚よりも肉厚に形成され、使用時に、複数の前記固定手段同士が、前記車両の上面側を跨いで配置される連結部材で連結されることにより、前記外周保護部の上端側が吊り上げられて固定されることを特徴とする車両用浸水防止具。
【請求項2】
請求項1記載の車両用浸水防止具において、前記外周保護部の上端側を前記車両の外周面に仮止めする仮止め手段を有することを特徴とする車両用浸水防止具。
【請求項3】
請求項2記載の車両用浸水防止具において、前記仮止め手段は、前記外周保護部の上端側の前記周縁部の内面に沿って設けられ、予め前記車両の外周面に取付けられた係止手段に係止され、前記外周保護部の上縁部は、接合材により前記車両の外周面に密着されることを特徴とする車両用浸水防止具。
【請求項4】
請求項1記載の車両用浸水防止具において、前記固定手段は、前記外周保護部の上端側の外周面に沿って設けられる帯状シートに形成されたハトメであることを特徴とする車両用浸水防止具。
【請求項5】
請求項1記載の車両用浸水防止具において、前記防水シート材の前記底面保護部のシート厚は0.4~1.2mmであり、前記外周保護部のシート厚は0.2~1mmであることを特徴とする車両用浸水防止具。
【請求項6】
請求項1記載の車両用浸水防止具において、前記底面保護部の少なくとも前記車両の各タイヤと接する範囲は、補強シートで補強されていることを特徴とする車両用浸水防止具。
【請求項7】
請求項1記載の車両用浸水防止具において、前記底面保護部の表面に、前記車両を該車両の載置位置に案内するためのマーカーが表示されていることを特徴とする車両用浸水防止具。
【請求項8】
請求項1記載の車両用浸水防止具において、前記車両と前記外周保護部との間に緩衝材が配置されることを特徴とする車両用浸水防止具。
【請求項9】
請求項1記載の車両用浸水防止具において、前記防水シート材は、前記固定手段及び/又は前記防水シート材に取付けられる連結手段を介して周囲の固定構造物に繋ぎ止められることを特徴とする車両用浸水防止具。
【請求項10】
請求項9記載の車両用浸水防止具において、前記連結手段は、前記車両の外周を囲むように前記外周保護部の外周面に沿って取付けられる索条であることを特徴とする車両用浸水防止具。
【請求項11】
請求項1記載の車両用浸水防止具において、前記連結部材の長手方向の一端側に重量物が取付けられていることを特徴とする車両用浸水防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波又は洪水等の発生時に、バス、トラック、タクシー、パトカー、消防車、タンクローリー、バキュームカー等の各種車両を浸水から保護する車両用浸水防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台風、集中豪雨、地震等に伴って発生する津波又は洪水等により、屋内(床上)が浸水したり、家屋が倒壊したりした際に、家財道具だけでなく、各種車両が水没又は流出等によって、汚損若しくは損傷して使用不能になることがある。そこで、例えば特許文献1には、自動車の全体を防水性の材質で出来た袋に収納することで、車内への浸水を防ぎ、自動車の機器機能の確保とその損害発生の予防を目的とした自動車収納防水袋が提案されている。特許文献2には、防水布を、自動車が入る程度の大きさに箱形にし、中間部と、端部をロープで締め付けられるようにした自動車防水カバーが提案されている。特許文献3には、防水及び耐久性に富んだシート地で形成され、車両全体をすっぽりと覆う大きさの袋体と、その袋体の口を閉塞する結び具とのセットで構成された車両用水害対策グッズが提案されている。特許文献4には、車両の底面形状より大きい気密性のシート上に車両を載置し、当該シートの両側部及び前後を上方に折り曲げて車両の両側面及び前後面に沿わせ、シートの周縁を適宜の手段により車両周面に支持する車両の水没防止方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3031607号公報
【特許文献2】特開2002-144885号公報
【特許文献3】特開2002-248946号公報
【特許文献4】特開2007-314098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~4のように、対象となる車両の底部及び外周の全部又は一部を防水性のシート等で覆う構造では、車両の底部を覆う部分(底面保護部)に車両の重量が加わるので、その部分には、車両の外周を覆う部分(外周保護部)よりも高い耐久性(強度)が要求されるものと考えられる。しかし、特許文献1~4のいずれにおいても、この点については考慮されていない。このように、底面保護部及び外周保護部のそれぞれに要求される耐久性の違いを考慮することなく、底面保護部に要求される耐久性を基準にしてシート材を選定し、底面保護部及び外周保護部を同一のシート材で形成すると、外周保護部の耐久性が過剰になる。その結果、シート材(防水袋)全体の重量が不必要に増加し、搬送時及び車両への取付作業時の作業者の負担も増大する。特に、特許文献1~3のように車両全体を覆う袋体では、袋体の周壁部(外周保護部)を車両の上端側まで持ち上げた状態で、上端の開口部を紐等で縛るために、多くの作業者を必要とし、作業者の負担も増大して、作業性に欠けるという問題がある。また、大型の車両は全長が長く、全高も高くなるため、作業者の数が増えるだけでなく、脚立等も必要となり、作業に手間がかかるという問題がある。なお、特許文献4には、車両の底面に当たる位置に耐熱部が形成されることは記載されているが、シートの各部の耐久性(厚さ等)の違いについては考慮されていない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、津波又は洪水等の発生時に、車両への装着を短時間で簡単に行うことができ、車両を浸水から確実に保護することができる耐久性に優れた車両用浸水防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る車両用浸水防止具は、車両を浸水から保護する車両用浸水防止具であって、
前記車両が載置される底面保護部と該底面保護部に連設されて前記車両の全高の少なくとも下側1/3の高さまで前記車両の外周面を覆う外周保護部とを有する防水シート材と、前記外周保護部の上端側の周縁部に取付けられた複数の固定手段とを備え、前記底面保護部のシート厚は、前記外周保護部のシート厚よりも肉厚に形成され、使用時に、複数の前記固定手段同士が、前記車両の上面側を跨いで配置される連結部材で連結されることにより、前記外周保護部の上端側が吊り上げられて固定される。
ここで、防水シート材は、非透水性の防水性素材で形成される。この防水シート材は、四角形の平面状(シート状)に形成され、使用時に、車両が載置される底面保護部の外周部が車両の外周面に沿って上方に折り返されて、外周保護部が形成されてもよいし、対象となる車両の全長、全幅及び全高に対応して、予め上面が開口し、底面保護部と外周保護部を有する中空の箱型に形成されてもよい。連結部材としては、索条が好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、固定手段同士を連結できるものであればよい。なお、索条とは、一般的に、麻又は鋼製の線を撚り合わせたものを芯とし、これに鋼製の針金を撚り合わせたもの数本を巻きつけた縄をいうが、ここでいう索条とは、広く、物を縛ったり、繋ぎ止めたりするための細長いものを意味し、鎖(チェーン)、帯(ベルト、ゴムバンド、ゴム製ロープ)、綱(ロープ)、線、紐等が含まれる。
【0006】
本発明に係る車両用浸水防止具において、前記外周保護部の上端側を前記車両の外周面に仮止めする仮止め手段を有することが好ましい。
ここで、仮止め手段は、外周保護部の上端側を車両の外周面に仮止めできるものであればよく、例えば、テープ、吸盤、磁石、面ファスナー等が用いられるが、これらに限定されるものではなく、適宜、選択される。
【0007】
本発明に係る車両用浸水防止具において、前記仮止め手段は、前記外周保護部の上端側の前記周縁部の内面に沿って設けられ、予め前記車両の外周面に取付けられた係止手段に係止され、前記外周保護部の上縁部は、接合材により前記車両の外周面に密着されることが好ましい。
【0008】
本発明に係る車両用浸水防止具において、前記固定手段は、前記外周保護部の上端側の外周面に沿って設けられる帯状シートに形成されたハトメであることが好ましい。
ここで、帯状シートは、外周保護部と別部材で形成され、溶着等により外周保護部に取付けられ(固定され)てもよいし、外周保護部の一部が折り返されて外周保護部と一体に形成されてもよい。
【0009】
本発明に係る車両用浸水防止具において、前記防水シート材の前記底面保護部のシート厚は0.4~1.2mmであり、前記外周保護部のシート厚は0.2~1mmであることが好ましい。
【0010】
本発明に係る車両用浸水防止具において、前記底面保護部の少なくとも前記車両の各タイヤと接する範囲は、補強シートで補強されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る車両用浸水防止具において、前記底面保護部の表面に、前記車両を該車両の載置位置に案内するためのマーカーが表示されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る車両用浸水防止具において、前記車両と前記外周保護部との間に緩衝材が配置されることが好ましい。
【0013】
ここで、緩衝材は、少なくとも突起部の位置に対応して配置されることが好ましい。また、緩衝材は、突起部が直接、防水シート材(外周保護部)に接触することを防ぎ、防水シート材(外周保護部)が破損することを防止できるものであればよく、緩衝材の材質、形状及び大きさ等は、適宜、選択される。なお、緩衝材は、車両又は外周保護部に取付けられ(固定され)てもよいし、車両と外周保護部の間に挟まれるだけで車両又は外周保護部に固定されなくてもよい。例えば、緩衝材として、車両の外周の突起部の表面に、養生テープ又はガムテープ等が直接、貼付け(巻付け)られてもよいし、車両の外周の突起部の表面が、布、ゴム製若しくは合成樹脂製のシート又は気泡緩衝材等で覆われて養生テープ又はガムテープ等で固定されてもよい。また、緩衝材は、全体として、突起部によって突き破られないだけの硬さ又は厚さを有していればよく、複数枚又は複数種類の緩衝材が積層されて使用されてもよい。従って、単独(1枚)では破れてしまうような薄手のシート又は気泡緩衝材等が、複数枚積層されたり、他の緩衝材と組合されたりして、使用されてもよい。なお、複数の突起部に対応して緩衝材が配置される場合、緩衝材は、それぞれの突起部の位置に独立して(断続的に)配置されてもよいし、複数の突起部に跨るように車両の外周に沿って帯状(連続的)に配置されてもよい。
【0014】
また、吸水性を有する緩衝材が用いられてもよい。その場合、透水性シート材で形成された袋体の内部に吸水性樹脂が収容されたものが好適に用いられる。吸水性樹脂の形態として、粒状、顆粒状、繊維状、ペレット状若しくはフレーク状のいずれか一種又は複数種が組合されて使用される。これらの吸水性樹脂は、自重の数倍から千倍近くまで水分を急速に吸収してゲル化し、膨潤する。吸水性樹脂には、淡水を吸収するものと海水等の電解質水を吸収するものがあるので、車両用浸水防止具の使用場所に応じて、吸水性樹脂の種類が選択されることが好ましいが、淡水及び海水のどちらにも対応できるように、複数種類の吸水性樹脂が混合されて使用されてもよい。
河川や湖沼等の淡水を吸収する吸水性樹脂としては、澱粉にアクリル酸塩をグラフト重合させた澱粉系、カルボキシセルロースにアクリル酸塩をグラフト重合させたセルロース系、アクリル酸・ビニルアルコール共重合体、アクリル酸重合体、アクリル酸・アクリルアミド重合体、ポリエチレンオキシド変性物等の合成系のカルボキシル基、水酸基、エーテル基、アミド基等の親水性の官能基を有する高分子が用いられる。
また、海水等の電解質を含む水を吸収する吸水性樹脂としては、イオン解離するノニオン型高分子、高分子アニオンに解離するアニオン型高分子、高分子カチオンに解離するカチオン型高分子、カチオンとアニオンに解離する基をもつ両性高分子等が用いられる。
具体例としては、合成ポリマー系ではポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニールアルコール系、ポリエチレンオキシド系等が挙げられる。また、天然物由来系では、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、澱粉系、セルロース系、スルホン酸基含有架橋ポリアクリル酸の部分金属塩等のポリアクリル酸塩をベースとしたもの等が挙げられる。
【0015】
本発明に係る車両用浸水防止具において、前記防水シート材は、前記固定手段及び/又は前記防水シート材に取付けられる連結手段を介して周囲の固定構造物に繋ぎ止められてもよい。
【0016】
本発明に係る車両用浸水防止具において、前記連結手段は、前記車両の外周を囲むように前記外周保護部の外周面に沿って取付けられる索条であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る車両用浸水防止具において、前記連結部材の長手方向の一端側に重量物が取付けられてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両用浸水防止具によれば、車両が載置される底面保護部のシート厚が、外周保護部のシート厚よりも肉厚に形成されることにより、防水シート材の耐久性を向上させ、車両を長時間にわたって確実に浸水から保護することができる。また、外周保護部の上端側の周縁部に複数の固定手段が取付けられていることにより、作業者は、車両の上面側を跨いで配置される連結部材で固定手段同士を連結するだけで簡単に外周保護部を固定して車両の外周面を覆うことができる。
【0019】
本発明に係る車両用浸水防止具において、外周保護部の上端側を車両の外周面に仮止めする仮止め手段を有する場合、作業者は、仮止め手段により外周保護部の上端側を車両の外周面に仮止めした状態で、外周保護部に取付けられた固定手段同士を連結部材で連結することができるので、作業者自身が外周保護部を手で持ち上げて連結部材による連結作業を行う必要がなく、作業者の人数及び作業負担を削減することができる。
【0020】
本発明に係る車両用浸水防止具において、仮止め手段が、外周保護部の上端側の周縁部の内面に沿って設けられ、予め車両の外周面に取付けられた係止手段に係止され、外周保護部の上縁部が、接合材により車両の外周面に密着される場合、作業者は、予め車両側に取付けられた係止手段に対し、外周保護部に設けられた仮止め手段を順次、係止するだけで、外周保護部を車両の外周に沿うように仮止めすることができるので、その後は、外周保護部の上縁部を接合材により簡単かつ確実に車両の外周面に密着させて固定することができ、外周保護部の固定作業の省力化が図られると共に、外周保護部と車両の外周面との隙間を塞いで水の浸入を防止することができる。
【0021】
本発明に係る車両用浸水防止具において、固定手段が、外周保護部の上端側の外周面に沿って設けられる帯状シートに形成されたハトメである場合、1つの帯状シートに固定手段となる複数のハトメがまとめて形成されるので、外周保護部への取付けも容易で量産性に優れると共に、固定手段(ハトメ)の耐久性が向上し、固定手段同士が、ロープ又はベルト等の連結部材で簡単に連結可能となり、外周保護部の固定作業が簡素化される。
【0022】
本発明に係る車両用浸水防止具において、防水シート材の底面保護部のシート厚が0.4~1.2mmであり、外周保護部のシート厚が0.2~1mmである場合、防水シート材のうちで破損が発生し易い底面保護部では十分なシート厚により耐久性が確保され、その他の部分(外周保護部)では軽量化が図られ、防水シート材の取扱い性及び機能性が向上する。
【0023】
本発明に係る車両用浸水防止具において、底面保護部の少なくとも車両の各タイヤと接する範囲が、補強シートで補強されている場合、底面保護部の最も破損し易い場所の強度アップが図られ、防水シート材の耐久性が向上する。
【0024】
本発明に係る車両用浸水防止具において、底面保護部の表面に、車両を該車両の載置位置に案内するためのマーカーが表示されている場合、車両の運転者は、マーカーを目安にして短時間で車両を底面保護部の所定の位置に移動させることができ、車両と底面保護部及び外周保護部との位置合わせに要する時間が短縮されると共に、底面保護部の最も破損し易い場所の強度アップが図られ、防水シート材の耐久性が向上する。
【0025】
本発明に係る車両用浸水防止具において、車両と外周保護部との間に緩衝材が配置される場合、外周保護部に外力が加わったり、異物が衝突したりしても、車両が緩衝材で保護されて車両の破損が防止され、車両保護の確実性が向上すると共に、車両によって外周保護部が傷付けられたり、破られたりすることがなく、外周保護部の耐久性が向上する。
【0026】
本発明に係る車両用浸水防止具において、防水シート材が、固定手段及び/又は防水シート材に取付けられる連結手段を介して周囲の固定構造物に繋ぎ止められる場合、固定構造物への防水シート材の繋ぎ止め作業が簡素化され、車両が防水シート材を介して固定構造物に確実に繋ぎ止められて、流出から守られる。
【0027】
本発明に係る車両用浸水防止具において、連結手段が、車両の外周を囲むように外周保護部の外周面に沿って取付けられる索条である場合、水流等により車両を固定構造物から引き離す力が加わった際に、その力が、防水シート材の一部に集中することなく分散され、防水シート材の破損が予防されて、車両が安定的に繋ぎ止められる。
【0028】
本発明に係る車両用浸水防止具において、連結部材の長手方向の一端側に重量物が取付けられている場合、作業者は、連結部材の長手方向の他端側が固定手段に連結された状態で一端側に取付けられた重量物を車両の反対側に投げることにより、簡単に連結部材を車両の上面側を跨ぐように配置することができ、その後は、重量物を取り外して一端側を固定手段に連結することができるので、少人数で(一人でも)短時間のうちに外周保護部の固定作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用浸水防止具の使用状態を示す側面図である。
図2】同車両用浸水防止具の保護対象となる車両の側面図である。
図3】同車両用浸水防止具における防水シート材の内面側平面図である。
図4】同車両用浸水防止具における防水シート材の外面側平面図である
図5図1のA-A線矢視断面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る車両用浸水防止具の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
以下、図1図5を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る車両用浸水防止具10について説明する。
図1に示すように、車両用浸水防止具10は、津波又は洪水等の発生時に、車両(ここではトラック)11を浸水から保護するものである。この車両用浸水防止具10の保護対象となる車両としては、図2に示す車両(トラック)11以外に、バス、タクシー、パトカー、消防車、タンクローリー、バキュームカー等の各種車両が挙げられるが、これらに限定されるものではない。以下、車両の種類に関わらず、対象となる車両の高さ方向の最大寸法(タイヤと地面との接地面(タイヤの最下位位置)から車両の最上位位置までの距離)を車両の全高といい、車両の前後方向(長手方向)の最大寸法を車両の全長といい、車両の左右方向(幅方向)の最大寸法を車両の全幅という。
【0031】
車両用浸水防止具10は、車両11が載置される底面保護部12と底面保護部12に連設されて車両11の全高の少なくとも下側1/3の高さまで車両11の外周面を覆う外周保護部13とを有する防水シート材14を備えている。
ここで、外周保護部13の高さをhとし、車両11の全高をHとすると、1/3H≦h≦Hとなっていることが好ましいが、これに限定されるものではなく、車両11の形状及び大きさ等に応じて、適宜、選択される。
【0032】
本実施の形態では、使用前の防水シート材14は、図3及び図4に示すように、平面視して四角形(長方形)の平面状に形成されている。底面保護部12は、平面視して、縦の長さaが車両11の全幅Wと同程度で、横の長さbが車両11の全長Lと同程度の長方形状となっている。防水シート材14は、使用時に、外周保護部13が車両11の外周面に沿って上方に折り返され、折り返された外周保護部13のうち、車両11の四隅からはみ出す部分が三角形状に折り畳まれることにより、図1のような箱型に成形される。なお、車両11の四隅での外周保護部13の折り畳み方は、特に限定されるものではなく、適宜、選択される。
【0033】
底面保護部12のシート厚は、外周保護部13のシート厚よりも肉厚に形成される。また、本実施の形態では、底面保護部12の少なくとも各タイヤ17と接する範囲(図3のハッチング部)は、補強シート22でさらに肉厚に補強されている。例えば、底面保護部12のシート厚は0.4~1.2mm程度、外周保護部13のシート厚は0.2~1mm程度、補強シート22のシート厚は0.3~0.5mm程度であることが好ましいが、各シート厚は、これらに限定されず、適宜、選択される。
【0034】
防水シート材14の各部は、同一の材質のみで形成されている必要はなく、各部が異なる材質で形成されてもよいし、単層で形成されても複数層で形成されてもよい。例えば、基材となるシートの底面保護部12に対応する範囲に補強用のシートが積層されることにより、底面保護部12のシート厚が外周保護部13のシート厚よりも肉厚に形成されてもよい。このとき、基材となるシートと補強用のシートの材質は同一でも異なっていてもよい。また、底面保護部12と外周保護部13で厚さの異なるシートが継ぎ合わされて形成されてもよい。なお、シート同士の継ぎ目は、溶着又は接着により気密性及び水密性が確保される。
【0035】
防水シート材14の各部の具体的な材質としては、ポリオレフィン、ポリアミド又はポリエステル等の合成繊維の基布に、塩化ビニル樹脂が貼り合わされた(コーティングされた)ものが好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、適宜、選択される。例えば、塩化ビニル樹脂の代わりに、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロプレンゴム若しくは天然ゴム等のゴム又はポリオレフィン等が基布に貼り合わされてもよい。また、これらは単独で使用されてもよいし、さらにその他の材質で形成されたシートが積層されて使用されてもよく、外周保護部13としては、使用時に内側となる面に、ポリウレタンシート又は塩化ビニル樹脂シート等の伸縮性を有するシートが積層されたものが好適に用いられる。なお、防水シート材は、予め箱型に成形された状態で使用されてもよい。
【0036】
本実施の形態では、図3にハッチングで示したように、底面保護部12の表面の左右両側に、車両11の各タイヤ17と接する範囲に合わせて、底面保護部12の長手方向に沿う2本のマーカー23が示されている。これにより、車両11の運転者は、マーカー23を目安にして短時間で車両11を底面保護部12の所定の位置に移動させることができる。各タイヤ17と接する範囲を示すマーカー23は、単なる枠線でもよいし、全体が着色されていてもよい。なお、マーカー23は、車両11を該車両11の載置位置に案内することができればよく、その形態(形状、数及び配置等)は、適宜、選択することができる。例えば、マーカーとして、底面保護部12の幅方向中央部に、底面保護部12の長手方向に沿うセンターラインが表示されてもよい。マーカーとなるセンターラインは、予め印刷されてもよいし、マジック等で描かれてもよい。
また、本実施の形態のように、補強シート22で補強される範囲とマーカー23が表示される範囲が一致している場合には、補強シート22が底面保護部12と異なる色に着色されることにより、マーカー23として機能する。なお、底面保護部12全体が補強シートで補強されることもあり、その場合は、底面保護部12全体を覆う1枚(単色)の補強シートの表面にマジック等でマーカーが表示されてもよいし、左右のマーカー23に該当する領域と、その他の領域(左右のマーカー23に挟まれた中央領域)が異なる色で着色される(色分けされる)ことにより、マーカー23が表示されてもよい。
【0037】
図3及び図5に示すように、車両用浸水防止具10は、外周保護部13の上端側の周縁部の内面に沿って設けられ、予め車両11の外周面に取付けられた係止手段24に係止される仮止め手段25を有している。係止手段24は、車両11の外周面に吸着される吸盤部26と吸盤部26に保持されたフック部27を有しており、仮止め手段25の配置間隔に合わせて、予め、車両11に吸着固定される。また、仮止め手段25は、図3に示すように、平面状に拡げられた防水シート材14の内表面の周縁(各辺)に沿って所定間隔(例えば50~100mm間隔)で溶着又は接着されたバンド部28とバンド部28に保持されたリング部29を有する吊り輪状に形成されている。
【0038】
従って、図3において、車両11が底面保護部12に載置された後、作業者は、順次、リング部29を手で握って外周保護部13を上方に引き上げ、そのリング部29を図5に示すように、フック部27に係止して、外周保護部13を車両11の外周面に沿って折返し、仮止めする。その後、作業者は、外周保護部13の上縁部を、粘着テープ(接合材の一例)30により車両11に密着させる。これにより、車両11の外周面と外周保護部13との隙間が塞がれ、雨水等の浸入が防止される。
【0039】
係止手段と仮止め手段が対となって外周保護部13の上端側が車両11の外周面に仮止めされる場合、それぞれの形態(構造)は、本実施の形態に限定されるものではなく、適宜、選択される。例えば、係止手段がリング部を有し、仮止め手段がフック部を有する形態でもよいし、係止手段として車両11の外周面に沿うように張られたロープ等に、仮止め手段として外周保護部に取付けられたフック等が係止されてもよい。また、一対の面ファスナーが係止手段と仮止め手段として用いられてもよい。その場合、一対の面ファスナーの一方(オス又はメス)が係止手段として車両11の外周面に両面テープ等で貼着され、他方(メス又はオス)が仮止め手段として外周保護部13の上端側に貼着、溶着又は縫着されることが好ましい。なお、仮止め手段は、単独で外周保護部13の上端側を車両11の外周面に仮止めするものでもよく、例えば、仮止め手段として、外周保護部13を車両11の外周面に直接貼り付けるテープ、又は、予め外周保護部13に取付けられて車両11の外周面に吸着される吸盤が好適に用いられる。また、車両11の本体(車体)が着磁性を有する金属で形成されている場合は、仮止め手段として、予め外周保護部13に取付けられて車両11の外周面に着磁される磁石が用いられてもよい。
【0040】
粘着テープ30としては、防水テープ(防水気密テープ若しくは気密防水テープとも呼ばれる)又は止水テープが好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、ガムテープ又は養生テープ等が用いられてもよい。なお、粘着テープ30は片面テープでも両面テープでもよい。また、本実施の形態では、外周保護部13の上縁部を、接合材の一例である粘着テープ30により車両11に貼り付けて密着させたが、例えば、外周保護部13の上縁部の内面側に、予め接合材として粘着層又は接着層等が形成されてもよい。作業者は、別途、上述の粘着テープ30等を用意する必要がなく、粘着層又は接着層等を覆っている剥離シートを剥がすだけで簡単に外周保護部13を車両11の外周面に密着させることができる。
【0041】
図1及び図5に示すように、車両用浸水防止具10は、外周保護部13の上端側の周縁部に取付けられた複数の固定手段32を備えている。従って、外周保護部13の仮止めが完了した後に、複数の固定手段32同士が、車両11の上面側を跨いで配置される連結部材33で連結されることにより、外周保護部13の上端側が確実に吊り上げられた状態で固定される。
本実施の形態では、外周保護部13の上端側の外周面に沿って帯状シート34が設けられており、その帯状シート34に所定の間隔で形成されたハトメが固定手段32として用いられている。この帯状シート34は、図4に示すように、平面状に拡げられた防水シート材14の外表面の周縁(各辺)に沿って取付けられる。図1及び図5に示した使用状態で帯状シート34の下辺側となる部分が防水シート材14(外周保護部13)に溶着又は接着によって固定されていることにより、各固定手段32に連結部材33が連結(挿通)可能となっており、連結部材33で外周保護部13が吊り上げられる。また、1つの帯状シート34に固定手段32となる複数のハトメがまとめて形成されるので、固定手段32を1つずつ外周保護部13に取付ける必要がなく、固定手段32の取付け作業が簡素化され、量産性が向上する。
【0042】
固定手段32は、例えば50~100mm間隔で配置されるが、その数及び配置間隔は、車両11の大きさ及び形状等に応じて、適宜、選択される。連結部材33としては、ベルト、ゴムバンド又はロープ等が好適に用いられるが、その他の索条が用いられてもよい。連結部材33の両端部は、図5に示すように、それぞれ固定手段32に挿通された後、折り返されて面ファスナー又はスナップボタン等の固定具(図示せず)で固定されてもよいし、固定手段32に結束されて固定されてもよい。
このとき、車両11を挟んで対向する(向かい合わせの位置にある)固定手段32同士が連結部材33で連結されることが好ましいが、連結部材33は、車両11の外周面を覆う外周保護部13が、ずり落ちないように固定できればよく、その数、配置及び連結位置は、適宜、選択される。なお、本実施の形態のように、外周保護部13の上端側が、予め、車両11に仮止めされている場合、作業者は少人数(例えば1人)でも簡単に連結部材33による固定作業を行うことができる。仮止め手段は、外周保護部13の上端側を車両11の外周面に仮止めすることにより、連結部材33による固定作業の作業性を向上させることを主な目的としているが、前述のように、外周保護部13の上端側を車両11の外周面に密着させることができるテープ等の仮止め手段の場合は、防水シート材14の内側への雨水及び風の浸入を防ぐことができる。従って、仮止め手段は、車両11を浸水から守り、防水シート材14(外周保護部13)が風に煽られることを防止するという役目も果たすことができ、接合材(粘着テープ30)と併用されることにより車両11を二重に保護することができる。
【0043】
ここで、連結部材33の長手方向の一端側に例えば球状の重量物(図示せず)が取付けられている場合、作業者は、連結部材33の長手方向の他端側が固定手段32に連結された状態で一端側に取付けられた重量物を車両11の反対側に投げることにより、簡単に連結部材33を車両11の上面側を跨ぐように配置することができる。その後、作業者は、重量物を取り外して連結部材33の長手方向の一端側を固定手段32に連結することができるので、少人数で(1人でも)短時間のうちに外周保護部13の固定作業を行うことができる。なお、重量物が車両11に当たって車両11が破損したり、傷付いたりすることがないように、軟質性及び/又は弾力性を有する合成樹脂、合成ゴム又は天然ゴム等で形成された重量物が好適に用いられるが、石、木、金属等の芯材の外表面が、軟質性及び/又は弾力性を有する合成樹脂、合成ゴム又は天然ゴム等で覆われた重量物が用いられてもよい。
また、上述のように作業者が重量物を投げて連結部材33の長手方向の一端側を車両11の反対側に移動させる代わりに、例えば、さすまた状の棒材の先端側に連結部材33の長手方向の一端側が保持(固定)された状態で、作業者が、棒材の末端側を手で握り、棒材と共に連結部材33の長手方向の一端側を車両11の反対側に移動させることもできる。
【0044】
以上のようにして車両11への防水シート材14の取付けが完了したら、作業者は、図1に示したように、要所の固定手段32に結束部材35の一端側を結束し、他端側を周囲の固定構造物(図示せず)に結束する。これにより、車両11は、防水シート材14を介して周囲の固定構造物に繋ぎ止められる。結束部材35としては紐又はロープ等が好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、ワイヤー又は鎖等のその他の索条が用いられてもよい。また、結束部材35の結束位置、数及び結束方法等も、適宜、選択される。固定構造物としては、建物の柱が好適に用いられるが、各種構造物の支柱又は電柱等が用いられてもよい。本実施の形態では、防水シート材14は、固定手段32を介して固定構造物に繋ぎ止められているが、別途、防水シート材14(底面保護部12及び/又は外周保護部13)の要所に設けられたハトメ又はフック等の連結手段(図示せず)を介して固定構造物に繋ぎ止められてもよく、固定手段32及び/又は連結手段が適宜、選択されて利用される。なお、連結手段は、特に限定されるものではなく、結束部材35と連結可能なものが、適宜、選択される。例えば、吊り輪状に取付けられたリングでもよいし、ロープ等で形成された輪でもよい。また、本実施の形態では、防水シート材14と周囲の固定構造物が結束部材35で連結され、車両11が固定構造物に繋ぎ止められることにより、車両11の流出が防止されているが、結束部材35は必須の構成ではなく、結束部材35に加えて又は結束部材35に代えてその他の流出防止手段が用いられてもよい。例えば、車両11の周囲が、柵又はロープ等の流出防止手段で囲まれている場合、結束部材35は省略されてもよい。
【0045】
車両用浸水防止具10では、底面保護部12のシート厚が、外周保護部13のシート厚よりも肉厚に形成され、底面保護部12の少なくとも各タイヤ17と接する範囲が、補強シート22で補強されていることにより、外力(異物の衝突)又は車両11の重量等による防水シート材14の破損が防止されているが、車両11と外周保護部13との間には、要所に緩衝材36が配置されることが好ましい。特に、少なくとも車両11の外周の突起部の位置に対応して緩衝材36が配置されることにより、防水シート材14の破損が効果的に防止される。例えば、図1に示したように、各タイヤ17(特にホイール18とボルト19)及びサイドガード20の側面を覆うように緩衝材36が配置されることにより、防水シート材14が緩衝材36で保護され耐久性が向上する。
【0046】
複数箇所に緩衝材36が取付けられる場合、全ての緩衝材36が同一のものである必要はなく、取付け場所等に応じて、材質又は構造等が異なる緩衝材が、適宜、選択されてもよいし、一箇所に複数種類の緩衝材が組合されて(重ねられて)使用されてもよい。具体的な緩衝材としては、例えば、スポンジ若しくはウレタンフォーム等のクッション材、ゴム製若しくは合成樹脂製のシート又は発泡スチロール等が用いられてもよいし、毛布又は布団等が用いられてもよい。或いは、緩衝材として、養生テープ等が車両11の外周の突起部に直接、貼付け(巻付け)られてもよい。
また、緩衝材の一部又は全部に、気泡緩衝材が用いられてもよいし、使用時に空気が充填されて膨張する袋体が用いられてもよい。さらに、吸水性を有する緩衝材が用いられてもよい。緩衝材が吸水性を有することにより、車両と防水シート材との隙間から水が浸入したり、防水シート材が破れて水が浸入したりしても、浸入した水が緩衝材で吸収され、車両が浸水から保護される。吸水性を有する緩衝材としては、具体的には、透水性シート材で形成された袋体の内部に吸水性樹脂が収容されたものが好適に用いられる。吸水性樹脂の材質としては、従来公知のものが、適宜、選択されて使用される。
これらの緩衝材は、予め車両11の外側又は外周保護部13の内側に取付けられて(固定されて)いてもよいし、外周保護部13を車両11の外周面に沿って折り返す際に、車両11と外周保護部13との間に挟み込まれてもよい。
【0047】
以上のように構成された車両用浸水防止具10によれば、津波又は洪水等の発生時に、各種の車両11を浸水から保護することができるので、被災者は、それらの車両11を避難前に高所等の安全な場所に移動させる必要がなく、迅速に避難することができ、身体の安全を確保しつつ、車両11を守ることができる。そして、津波又は洪水等が収まった後、車両11を直ちに使用することができるので、修理や新規購入にかかる被災者の費用負担を軽減することができる。
【0048】
次に、図6を参照して本発明の第2の実施の形態に係る車両用浸水防止具10Aについて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図6に示す第2の実施の形態に係る車両用浸水防止具10Aが第1の実施の形態に係る車両用浸水防止具10と異なる点は、防水シート材14Aが、予め上面が開口した中空の箱型に形成されている点と、車両11の長手方向(前後方向)に沿って配置される(幅方向と交差する)連結部材33が省略されている点と、防水シート材14Aに取付けられる連結手段として、車両11の外周を囲むように外周保護部13の外周面に沿って索条38が取付けられている点である。
【0049】
本実施の形態では、帯状シート34の下方に、帯状シート34と同様に、複数のハトメ状の索条挿通孔39が形成された帯状の連結手段取付部40が、外周保護部13Aの外周面に沿って取付けられている。索条38は、連結手段取付部40の複数の索条挿通孔39に順次、挿通されることにより、車両11の外周を囲むように外周保護部13の外周面に沿って取付けられる。そして、結束部材35の一端側が索条38の要所に結束され、他端側が周囲の固定構造物に結束されることにより、防水シート材14Aが、索条(連結手段)38を介して周囲の固定構造物(図示せず)に繋ぎ止められる。水流等により、車両11を固定構造物から引き離す力が加わった際(結束部材35に張力が加わった際)に、その力が索条38で分散され、索条挿通孔39に集中することがなく、索条挿通孔39、連結手段取付部40及び防水シート材14Aの破損が予防されて、車両11が安定的に繋ぎ止められる。なお、索条挿通孔39の数と配置及び連結手段取付部40の高さ方向の取付け位置は、適宜、選択される。また、索条38は、車両11の外周を囲むように外周保護部13の外周面に沿って取付けられればよく、その取付け方法(連結手段取付部の形態)は、適宜、選択される。例えば、車両11の外周を囲むように外周保護部13の外周面に沿って取付けられる筒状の連結手段取付部に、索条38が挿通され保持されてもよい。索条38としては、ロープ又はワイヤー等が好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、適宜、選択される。
以上のように構成された車両用浸水防止具10Aによれば、車両用浸水防止具10と同様の作用、効果が得られる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、防水シート材の外周保護部の一部に、外周保護部の上端部から延設される上面保護部が設けられ車両の上面が覆われてもよいし、防水シート材から独立した上面カバーで車両の上面が覆われてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10、10A:車両用浸水防止具、11:車両、12:底面保護部、13:外周保護部、14、14A:防水シート材、17:タイヤ、18:ホイール、19:ボルト、20:サイドガード、22:補強シート、23:マーカー、24:係止手段、25:仮止め手段、26:吸盤部、27:フック部、28:バンド部、29:リング部、30:粘着テープ(接合材の一例)、32:固定手段、33:連結部材、34:帯状シート、35:結束部材、36:緩衝材、38:索条、39:索条挿通孔、40:連結手段取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6