(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146719
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ドハティ増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20241004BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20241004BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H03F3/24
H03F3/68 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186707
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2023058638
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】芦田 哲郎
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC36
5J500AC92
5J500AF10
5J500AF15
5J500AK12
5J500AK68
5J500RG09
(57)【要約】
【課題】ドハティ増幅回路の回路規模の増大を抑えつつ、高周波出力信号の品質の低下を抑制する。
【解決手段】ドハティ増幅回路は、第1集積回路と、第1集積回路と接続された第2集積回路とを含み、前記第1集積回路および前記第2集積回路のいずれかは、高周波信号を増幅するキャリアアンプと、高周波信号を増幅するピークアンプと、前記キャリアアンプのドライブレベルを示すドライブレベル信号に基づいて前記高周波信号の利得を制御する可変利得制御回路と、前記可変利得制御回路の出力に基づくバイアスを前記ピークアンプに入力するバイアス回路と、を含み、シリコンダイ上の第1集積回路は、少なくとも前記可変利得制御回路を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1集積回路と、第1集積回路と接続された第2集積回路とを含み、
前記第1集積回路および前記第2集積回路のいずれかは、
高周波信号を増幅するキャリアアンプと、
高周波信号を増幅するピークアンプと、
前記キャリアアンプのドライブレベルを示すドライブレベル信号に基づいて前記高周波信号の利得を制御する可変利得制御回路と、
を含み、
前記ピークアンプは、前記可変利得制御回路の出力に基づいて動作状態が制御され、
シリコンダイ上の第1集積回路は、少なくとも前記可変利得制御回路を含む
ドハティ増幅回路。
【請求項2】
前記可変利得制御回路の出力に基づくバイアスを前記ピークアンプに入力するバイアス回路をさらに含む、
請求項1に記載のドハティ増幅回路。
【請求項3】
前記シリコンダイ上の前記第1集積回路は、
前記可変利得制御回路の出力を入力とするアクティブバランと、
前記アクティブバランを通過した信号を入力とし、前記バイアス回路を制御する信号を出力する検波回路と、
をさらに含む
請求項2に記載のドハティ増幅回路。
【請求項4】
前記キャリアアンプは、ドライバ段キャリアアンプと、前記ドライバ段キャリアアンプの出力を入力とするパワー段キャリアアンプとを含み、
前記ピークアンプは、ドライバ段ピークアンプと、前記ドライバ段ピークアンプの出力を入力とするパワー段ピークアンプとを含み、
前記シリコンダイ上の前記第1集積回路は、
前記高周波信号を、互いに位相が異なる信号として前記キャリアアンプと前記ピークアンプとに入力する分配回路と、
前記ドライバ段キャリアアンプと、
前記ドライバ段ピークアンプと、をさらに含む、
請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅回路。
【請求項5】
前記高周波信号を逓倍して出力する逓倍器と、前記逓倍器の出力信号の位相を制御する可変移相器と、前記可変移相器の出力を分周する分周器と、
を含み、前記高周波信号と前記分周器の出力信号とを、互いに位相が異なる信号として前記キャリアアンプと前記ピークアンプとに入力する
請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅回路。
【請求項6】
前記キャリアアンプの出力信号および前記ピークアンプの出力信号に基づいて制御信号を出力する制御回路をさらに含み、
前記制御回路の出力信号によって前記可変移相器の移相量を制御する
請求項5に記載のドハティ増幅回路。
【請求項7】
前記検波回路の出力に基づいて制御される可変電流源をさらに含み、
前記可変電流源の出力を、前記バイアス回路を制御する信号とする、
請求項3に記載のドハティ増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティ増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率な電力増幅回路として、ドハティ(Doherty)増幅回路が知られている。ドハティ増幅回路は、一般的に、入力信号の電力レベルにかかわらず動作するキャリアアンプと、入力信号の電力レベルが小さい場合はオフとなり、大きい場合にオンとなるピークアンプとが並列に接続された構成である。当該構成では、高周波入力信号の電力レベルが大きい場合、キャリアアンプが飽和出力電力レベルで飽和を維持しながら動作する。これにより、ドハティ増幅回路は、通常の電力増幅回路に比べて効率を向上させることができる。
【0003】
下記の特許文献1から特許文献3までには、ピークアンプのバイアスを制御する技術が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、キャリアアンプの飽和をキャリアアンプのバイアス回路を介して検出し、検出信号に応じてピークアンプのバイアス回路を制御するものである。
【0005】
特許文献2に記載の技術は、キャリアアンプの飽和をキャリアアンプの出力信号によって検出し、検出信号に応じてピークアンプのバイアス回路を制御するものである。
【0006】
特許文献3に記載の技術は、ドハティ増幅回路に入力される高周波入力信号レベル又はキャリアアンプに入力される高周波入力信号レベルに応じて、ピークアンプのバイアス回路を制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0241209号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0028472号明細書
【特許文献3】特開2019-41277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および特許文献2に記載の技術では、キャリアアンプの飽和を検出するための回路が応答するまでの時間として、数十ns程度を要する。従って、次のような不都合が生じ得る。例えば、瞬間的(数十nsよりもかなり短い時間)な電力の増加がある高周波入力信号がドハティ増幅回路に入力された場合、キャリアアンプが飽和を開始してからピークアンプのバイアス点が変動するまでの数十nsの間に、キャリアアンプが飽和している時間が発生し得る。これにより、ドハティ増幅回路の高周波出力信号の品質を高く保てないことがあり得る。また、当該ドハティ増幅回路が通信装置に適用されている場合、通信品質を高く保てないことがあり得る。
【0009】
特許文献3に記載の技術は、高周波入力信号レベルに応じて動作するものの、高周波入力信号レベルをバイアス回路で検出しており、基本的に応答速度は低速であると考えられ、ドハティ増幅回路の高周波出力信号の品質を高く保てないことがあり得ると考えられる。
【0010】
また、ドハティ増幅回路の回路規模の増大を抑えることも重要である。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、ドハティ増幅回路の回路規模の増大を抑えつつ、高周波出力信号の品質の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面のドハティ増幅回路は、第1集積回路と、第1集積回路と接続された第2集積回路とを含み、前記第1集積回路および前記第2集積回路のいずれかは、高周波信号を増幅するキャリアアンプと、高周波信号を増幅するピークアンプと、前記キャリアアンプのドライブレベルを示すドライブレベル信号に基づいて前記高周波信号の利得を制御する可変利得制御回路と、を含み、前記ピークアンプは、前記可変利得制御回路の出力に基づいて動作状態が制御され、シリコンダイ上の第1集積回路は、少なくとも前記可変利得制御回路を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ドハティ増幅回路の回路規模の増大を抑えつつ、高周波出力信号の品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第4実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、第5実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
【
図11】
図11は、第6実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
【
図12】
図12は、第7実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
【
図13】
図13は、第8実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
【
図14】
図14は、第8実施形態のドハティ増幅回路のピークアンプの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一または同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換または変更を行うことができる。なお、第2実施形態以降では第1実施形態と共通の事柄についての記述を適宜省略し、異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0016】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、第1実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
図1において、第1実施形態のドハティ増幅回路1は、入力端子10aに入力される高周波信号RFinを増幅し、高周波信号RFoutを出力端子10bから出力する。
【0017】
ドハティ増幅回路1は、90°ハイブリッド回路11と、初段(ドライバ段)のキャリアアンプ12と、中間段のキャリアアンプ13と、バラン18Aと、最終段(パワー段)のキャリアアンプ14と、ディレイライン20と、初段のピークアンプ15と、中間段のピークアンプ16と、バラン18Bと、最終段のピークアンプ17と、結合器19と、バイアス回路22からバイアス回路27までと、を含む。
【0018】
キャリアアンプ14は、第1相のキャリアアンプ14Aと、第2相のキャリアアンプ14Bと、を含む差動増幅器である。ピークアンプ17は、第1相のピークアンプ17Aと、第2相のピークアンプ17Bと、を含む差動増幅器である。本開示において、差動増幅器内の一方の増幅器の出力信号と他方の増幅器の出力信号とは、電圧振幅の差が3dB以内であり、位相差が90°から270°までの範囲内であることが好ましい。
【0019】
本実施形態では、ドハティ増幅回路1の段数は3段としたが、本開示はこれに限定されない。ドハティ増幅回路1の段数は、1段または2段であっても良いし、4段以上であっても良い。
【0020】
本実施形態では、キャリアアンプ12およびキャリアアンプ13の各々は、シングルエンドの増幅器としたが、本開示はこれに限定されない。キャリアアンプ12およびキャリアアンプ13の各々は、差動増幅器であっても良い。
【0021】
本実施形態では、キャリアアンプ14は、差動増幅器としたが、本開示はこれに限定されない。キャリアアンプ14は、シングルエンドの増幅器であっても良い。
【0022】
本実施形態では、ピークアンプ15およびピークアンプ16の各々は、シングルエンドの増幅器としたが、本開示はこれに限定されない。ピークアンプ15およびピークアンプ16の各々は、差動増幅器であっても良い。
【0023】
本実施形態では、ピークアンプ17は、差動増幅器としたが、本開示はこれに限定されない。ピークアンプ17は、シングルエンドの増幅器であっても良い。
【0024】
90°ハイブリッド回路11は、入力端子10aに入力される高周波信号RFinを、互いに位相が略90°異なる高周波信号RF11およびRF20に分ける。高周波信号RF11は、キャリアアンプ12に入力される。高周波信号RF20は、ディレイライン20に入力される。ディレイライン20は、高周波信号RF20を所定時間遅延させ、高周波信号RF21として出力する。高周波信号RF21は、ピークアンプ15に入力される。なお、「略90°」とは、90°の位相のみではなく、90°±45°の位相をも含むものとする。90°ハイブリッド回路11は、本開示の「分配回路」に相当する。
【0025】
高周波信号RF21の位相は、高周波信号RF11より90°遅れていることが例示される。高周波信号RF11の電力と、高周波信号RF21の電力とは、同じであることが例示される。
【0026】
バイアス回路22は、キャリアアンプ12にバイアスを与える。キャリアアンプ12は、高周波信号RF11を増幅した高周波信号RF12をキャリアアンプ13に出力する。バイアス回路23は、キャリアアンプ13にバイアスを与える。キャリアアンプ13は、高周波信号RF12を増幅した高周波信号RF13をバラン18Aの第1巻線L1の一端に出力する。
【0027】
バラン18Aの第1巻線L1の他端は、電源Vccに電気的に接続されている。バラン18Aは、高周波信号RF13を、差動信号を構成する高周波信号RF14および高周波信号RF15に変換し、第2巻線L2の両端からそれぞれ出力する。
【0028】
バイアス回路24は、キャリアアンプ14A、14Bにバイアスを与える。キャリアアンプ14Aは、高周波信号RF14を増幅した高周波信号RF16を結合器19に出力する。キャリアアンプ14Bは、高周波信号RF15を増幅した高周波信号RF17を結合器19に出力する。
【0029】
バイアス回路25は、ピークアンプ15にバイアスを与える。ピークアンプ15は、高周波信号RF21を増幅した高周波信号RF22をピークアンプ16に出力する。
【0030】
バイアス回路26は、ピークアンプ16にバイアスを与える。ピークアンプ16は、高周波信号RF22を増幅した高周波信号RF23をバラン18Bの第1巻線L3の一端に出力する。
【0031】
バラン18Bの第1巻線L3の他端は、電源Vccに電気的に接続されている。バラン18Bは、高周波信号RF23を、差動信号を構成する高周波信号RF24および高周波信号RF25に変換し、第2巻線L4の両端からそれぞれ出力する。
【0032】
バイアス回路27は、ピークアンプ17A、17Bにバイアスを与える。ピークアンプ17Aは、高周波信号RF24を増幅した高周波信号RF26を結合器19に出力する。ピークアンプ17Bは、高周波信号RF25を増幅した高周波信号RF27を結合器19に出力する。
【0033】
また、ドハティ増幅回路1は、アッテネータ31と、可変利得制御回路32と、アクティブバラン33と、検波回路34と、を含む。アッテネータ31は、高周波信号RFinを減衰させて高周波信号RF31として出力する。可変利得制御回路32は、検出信号S11に基づいて、高周波信号RF31を減衰させて高周波信号RF32として出力する。アクティブバラン33は、差動信号である高周波信号RF33を検波回路34に出力する。
【0034】
実施形態では、アクティブバラン33が差動の高周波信号RF33を出力することとしたが、本開示はこれに限定されない。アクティブバラン33は、シングルエンドの高周波信号を出力することとしても良い。また、可変利得制御回路32による減衰で十分である場合には、アッテネータ31を削除しても良い。
【0035】
結合器19は、第1巻線L5およびL7と、第2巻線L6およびL8と、第1巻線L5に並列に接続されるキャパシタC1と、第2巻線L6に直列に接続されるキャパシタC2と、第1巻線L7に並列に接続されるキャパシタC3と、第2巻線L8に並列に接続されるキャパシタC4と、を含む。第1巻線L5の一端はキャリアアンプ14Aの出力端に接続される。第1巻線L5の他端はキャリアアンプ14Bの出力端に接続される。第1巻線L7の一端はピークアンプ17Aの出力端に接続される。第1巻線L7の他端はピークアンプ17Bの出力端に接続される。第2巻線L6の一端はキャパシタC2の一端に接続される。第2巻線L6の他端は第2巻線L8の一端およびキャパシタC4の一端に接続される。第2巻線L8の他端およびキャパシタC4の他端は、基準電位に接続される。基準電位は、接地電位が例示されるが、本開示はこれに限定されない。結合器19は、高周波信号RF16、RF17、RF26およびRF27を結合し、出力端子10bから高周波信号RFoutを出力する。
【0036】
ドライブレベル検出回路35は、高周波信号RF16およびRF17に基づいて、キャリアアンプ14のドライブレベル(動作レベル)を検出し、キャリアアンプ14のドライブレベルを表す検出信号S11を可変利得制御回路32に出力する。検出信号S11は、キャリアアンプ14のドライブレベルに相補的に変化する信号(反転信号)であっても良い。
【0037】
可変利得制御回路32には、高周波信号RF31と、検出信号S11と、が入力される。可変利得制御回路32には、高周波信号RF31に代えて、高周波信号RF11、或いは、高周波信号RF20が入力されても良い。
【0038】
可変利得制御回路32は、検出信号S11に基づいて、高周波信号RF31を減衰させ、高周波信号RF32をアクティブバラン33に出力する。例えば、可変利得制御回路32は、キャリアアンプ14が飽和レベルに近いことを検出信号S11が表している場合、高周波信号RF31をあまり減衰させずに、高周波信号RF32を出力することが例示される。また、例えば、可変利得制御回路32は、キャリアアンプ14が飽和レベルに近くないことを検出信号S11が表している場合、高周波信号RF31を大きく減衰させて、高周波信号RF32を出力することが例示される。
【0039】
検波回路34は、高周波信号RF33に基づいて、制御信号S1、S2およびS3を出力する。制御信号S1、S2、S3は、それぞれ、バイアス回路25、26、27に入力される。バイアス回路25、26、27は、上述したように、ピークアンプ15、16、17A、17Bにバイアスを与える。つまり、ピークアンプ15、16、17A、17Bは、制御信号S1、S2およびS3により、その動作状態が制御される。具体的に、ピークアンプ15、16、17A、17Bは、可変利得制御回路32から出力される高周波信号RF32に基づく制御信号S1、S2、および、S3により、動作状態(高周波信号増幅状態)となるか、非動作状態(高周波信号非増幅状態)となるかが制御される。なお、ドハティ増幅回路1においては、制御信号S1、S2、S3がピークアンプ15、16、17A、17Bのバイアス回路25、26、27に入力される構成を開示している。しかしながら、制御信号S1、S2、S3は、ピークアンプ15、16、17A、17Bに、バイアス回路25、26、27を介さず直接入力されてもよい。
【0040】
(効果)
以上のように構成されたドハティ増幅回路1は、可変利得制御回路32を含む第1集積回路CM1と、第1集積回路CM1以外の部分とを含む。第1集積回路CM1はシリコンダイ上に形成される。第1集積回路CM1以外の部分すなわち図中の破線の枠の外側の部分を、「第2集積回路」と定義する。可変利得制御回路32以外の部分は、第2集積回路CM1aに形成される。第2集積回路CM1aは、シリコンダイ以外のダイ上に形成される。第2集積回路CM1aは、例えば、GaAs(ガリウムヒ素)ダイ上に形成される。第2集積回路CM1aは、第1集積回路CM1に接続されている。ここで、検波回路34は、高周波信号RFinに応じてフィードフォワード的に動作すると考えることができる。このフィードフォワードに関する部分をシリコンダイ上に形成することにより、バイアス回路25、26による制御の応答性を高めることができる。
【0041】
可変利得制御回路32については、チップ上に形成する際に面積が大きくなることがある。シリコンダイ上の第1集積回路CM1に可変利得制御回路32を形成すれば、可変利得制御回路32について微細な加工が可能になり、チップ上の占有面積を抑えることができる。その結果、チップ上に形成するドハティ増幅回路1全体を小型にすることができる。
【0042】
<第2実施形態>
(構成)
図2は、第2実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
図2に示す第2実施形態のドハティ増幅回路1aにおいては、シリコンダイ上に形成される範囲が第1実施形態のドハティ増幅回路1とは異なる。
【0043】
図1を参照して説明した第1実施形態のドハティ増幅回路1においては、可変利得制御回路32がシリコンダイ上の第1集積回路CM1に形成される。これに対し、
図2に示す第2実施形態のドハティ増幅回路1aは、可変利得制御回路32とともに、90°ハイブリッド回路11、アッテネータ31、アクティブバラン33、検波回路34、および、ディレイライン20が、シリコンダイ上の第1集積回路CM2に形成される。ドハティ増幅回路1aのシリコンダイ上の第1集積回路CM2以外の部分すなわち
図2中の符号「CM2」で示す破線の枠の外側の部分は、第2集積回路CM2aに形成される。第2集積回路CM2aは、例えば、GaAsダイ上に形成される。第2集積回路CM2aは、第1集積回路CM2に接続されている。
【0044】
(効果)
可変利得制御回路32の他に、90°ハイブリッド回路11、アッテネータ31、アクティブバラン33、検波回路34、および、ディレイライン20をシリコンダイ上の第1集積回路CM2に形成すれば、これらについて微細な加工が可能になり、チップ上の占有面積を抑えることができる。その結果、チップ上に形成するドハティ増幅回路1a全体を小型にすることができる。
【0045】
また、可変利得制御回路32、アクティブバラン33および検波回路34において、電流源が必要になる場合がある。この電流源をシリコンダイ上の第1集積回路CM2において形成し、可変利得制御回路32、アクティブバラン33および検波回路34をシリコンダイ上の第1集積回路CM2以外の第2集積回路CM2aに形成すると、信号をやり取りするためのバンプを用意する必要があり、回路を小型にすることの妨げになる。そこで、本実施形態のように、関連ある部分をまとめてシリコンダイ上の第1集積回路CM2に形成することにより、信号をやり取りするためのバンプが不要になり、ドハティ増幅回路1aを小型にすることができる。
【0046】
<第3実施形態>
(構成)
図3は、第3実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
図3に示す第3実施形態のドハティ増幅回路1bにおいては、シリコンダイに形成される範囲が第1実施形態のドハティ増幅回路1、第2実施形態のドハティ増幅回路1aとは異なる。
【0047】
図1を参照して説明した第1実施形態のドハティ増幅回路1においては、可変利得制御回路32がシリコンダイ上の第1集積回路CM1に形成される。また、
図2に示す第2実施形態のドハティ増幅回路1aは、90°ハイブリッド回路11、アッテネータ31、可変利得制御回路32、アクティブバラン33、検波回路34、および、ディレイライン20が、シリコンダイ上の第1集積回路CM2に形成される。これらに対し、
図3に示す第3実施形態のドハティ増幅回路1bは、第2実施形態のドハティ増幅回路1aにおいて、さらに、1段目のキャリアアンプ12、1段目のピークアンプ15、バイアス回路22および25が、シリコンダイ上の第1集積回路CM3に形成される。ドハティ増幅回路1bのシリコンダイ上の第1集積回路CM3以外の部分すなわち
図3中の符号「CM3」で示す破線の枠の外側の部分は、第2集積回路CM3aに形成される。第2集積回路CM3aは、例えば、GaAsダイ上に形成される。第2集積回路CM3aは、第1集積回路CM3に接続されている。
【0048】
(効果)
上記の各部をシリコンダイ上の第1集積回路CM3に形成すれば、これらについて微細な加工が可能になり、チップ上の占有面積を抑えることができる。その結果、チップ上に形成するドハティ増幅回路1b全体を小型にすることができる。ここで、
図1を参照すると、ドハティ増幅回路1は、第1集積回路CM1と、第1集積回路CM1と接続された第2集積回路CM1aとを含む。
図2を参照すると、ドハティ増幅回路1aは、第1集積回路CM2と、第1集積回路CM2と接続された第2集積回路CM2aとを含む。
図3を参照すると、ドハティ増幅回路1bは、第1集積回路CM3と、第1集積回路CM3と接続された第2集積回路CM3aとを含む。そして、第1集積回路CM1(CM2またはCM3)および第2集積回路(CM2aまたはCM3a)のいずれかは、高周波信号を増幅するキャリアアンプ12、13、14と、高周波信号を増幅するピークアンプ15、16、17と、キャリアアンプ14のドライブレベルを示すドライブレベル信号に基づいて高周波信号の利得を制御する可変利得制御回路32と、可変利得制御回路32の出力に基づくバイアスをピークアンプに入力するバイアス回路25、26、27と、を含む。このため、
図1に示す第1集積回路CM1、
図2に示す第1集積回路CM2、
図3に示す第1集積回路CM3は、いずれも、少なくとも、可変利得制御回路32を含む。チップ上に形成する際に面積が大きくなることがある可変利得制御回路32をシリコンダイ上の第1集積回路CM1、CM2、CM3に形成することにより、ドハティ増幅回路1、ドハティ増幅回路1a、ドハティ増幅回路1bを小型にすることができる。以後の各実施形態においても上記と同様である。
【0049】
また、ドハティ増幅回路1bにおいては、1段目のキャリアアンプ12、1段目のピークアンプ15、バイアス回路22および25も、シリコンダイ上の第1集積回路CM3にともに形成されている。これにより、1段目のキャリアアンプ12、1段目のピークアンプ15、バイアス回路22および25に接続されるチップ上の配線やバンプの数を低減できる。一般的に、チップ上の配線やバンプには寄生成分が生じやすい。そのため、1段目のキャリアアンプ12や1段目のピークアンプ15をシリコンダイの外部、すなわち、チップ上に設けた場合、これらの寄生成分の影響を受けて1段目のキャリアアンプ12、および、1段目のピークアンプ15の動作が低速になることがあった。これに対して、ドハティ増幅回路1bでは、1段目のキャリアアンプ12、1段目のピークアンプ15、バイアス回路22および25を、可変利得制御回路32等と同一のシリコンダイ上の第1集積回路CM3に形成する。そのため、チップ上の配線やバンプに起因する寄生成分を最小にして、1段目のキャリアアンプ12、および、1段目のピークアンプ15の動作を高速にすることができる。
【0050】
<第4実施形態>
(構成)
図4は、第4実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。第4実施形態のドハティ増幅回路1cは、第1実施形態のドハティ増幅回路1において、90°ハイブリッド回路の代わりに、逓倍器41、可変移相器42、分周器43を含む。また、第1実施形態のドハティ増幅回路1は、キャリアアンプ、ピークアンプともに3段の構成であるのに対し、第4実施形態のドハティ増幅回路1cの段数は、2段である。すなわち、ドハティ増幅回路1cは、ドライバ段のキャリアアンプ12と、パワー段のキャリアアンプ13と、ドライバ段のピークアンプ15と、パワー段のピークアンプ16と、を含む。なお、第4実施形態のドハティ増幅回路1cは、直流電流をカットするためのキャパシタC12、C13、C15、および、C16を含む。
【0051】
さらに、第1実施形態のドハティ増幅回路1の最終段のキャリアアンプ14、および、最終段のピークアンプ17は、差動増幅器である。これに対し、第4実施形態のドハティ増幅回路1cのパワー段のキャリアアンプ13、および、パワー段のピークアンプ16は、シングルエンドの増幅器である。
【0052】
第1実施形態のドハティ増幅回路1のドライブレベル検出回路35は、差動信号の高周波信号に基づいてドライブレベル(動作レベル)を検出する。これに対し、第4実施形態のドハティ増幅回路1cのドライブレベル検出回路35aは、例えば、高周波信号と所定の基準電位とを比較してドライブレベル(動作レベル)を検出する。
【0053】
バイアス回路25、26によって、ピークアンプ15、16を適切に制御できていれば、逓倍器41、可変移相器42および分周器43によって90度の位相差を実現できるので、回路規模が大きくなる90°ハイブリッド分配回路を設ける必要がなくなり、ドハティ増幅回路1c全体を小型にすることができる。
【0054】
(逓倍器)
図5は、
図4中の逓倍器41の構成例を示す図である。
図5において、逓倍器41は、入力端子41aと、前段の逓倍器410Aと、後段の逓倍器410Bと、ハイパスフィルタ410Cと、出力端子41bと、を含む。
【0055】
前段の逓倍器410Aは、インダクタ411Aおよび412Aと、キャパシタ413Aおよび414Aと、電流源415Aと、ダイオード416Aおよび417Aと、を含む。
【0056】
インダクタ411Aの一端は入力端子41aに接続され、インダクタ411Aの他端は、基準電位に接続される。インダクタ411Aとインダクタ412Aとは互いに電磁気的に結合している。キャパシタ413Aは、インダクタ411Aに並列に接続される。キャパシタ414Aは、インダクタ412Aに並列に接続される。
【0057】
インダクタ412Aの中点Naには電流源415Aが接続される。電流源415Aは、電源Vccに接続される。
【0058】
インダクタ412Aの一端はダイオード416Aのアノードに接続され、インダクタ412Aの他端はダイオード417Aのアノードに接続される。ダイオード416Aのカソードとダイオード417Aのカソードとが接続され、さらに、後段の逓倍器410Bに接続される。
【0059】
後段の逓倍器410Bは、前段の逓倍器410Aと同様の構成である。すなわち、後段の逓倍器410Bは、インダクタ411Bおよび412Bと、キャパシタ413Bおよび414Bと、電流源415Bと、ダイオード416Bおよび417Bと、を含む。ダイオード416Bのカソードとダイオード417Bのカソードとが接続され、さらに、ハイパスフィルタ410Cに接続される。
【0060】
ハイパスフィルタ410Cは、キャパシタ418と、インダクタ419と、を含む。キャパシタ418の一端はインダクタ419の一端に接続され、キャパシタ418の他端は出力端子41bに接続される。インダクタ419の他端は基準電位に接続される。
【0061】
前段の逓倍器410Aにおいて、入力端子41aに交流信号が入力されると、一次側のインダクタ411Aに電流が流れる。二次側のインダクタ412Aの中点Naには電流源415Aが接続されており、互いに反転した2つの電流が得られる。この2つの電流をダイオード416A、417Aに半周期ずつ通過させることによって2倍の周波数の交流信号が得られる。この2倍の周波数の交流信号が後段の逓倍器410Bに入力されると、さらに2倍の周波数の交流信号が得られる。つまり、前段の逓倍器410Aおよび後段の逓倍器410Bによって、4倍の周波数の交流信号が得られる。ハイパスフィルタ410Cを通過させ、入力端子41aに入力される信号の4倍の周波数を有する交流信号が出力端子41bから出力される。
【0062】
(移相器)
図6は、
図4中の可変移相器42の構成例を示す図である。可変移相器42は、入力端子42aと、可変容量ダイオード421および422と、インダクタ423および424と、抵抗425と、可変電圧源426と、出力端子42bと、を含む。
【0063】
可変容量ダイオード421および422と、インダクタ423および424とによって、π型フィルタ回路が形成される。可変電圧源426を適切に調整することにより、所望の移相量を実現できる。
【0064】
(分周器)
図7は、
図4中の分周器43の構成例を示す図である。
図7において、分周器43は、D型フリップフロップ431Aおよび431Bと、入力端子43aと、出力端子43bとを含む。
【0065】
入力端子43aは、D型フリップフロップ431Aのクロック端子CLKに接続される。D型フリップフロップ431Aの出力端子Qは、D型フリップフロップ431Bのクロック端子CLKに接続される。D型フリップフロップ431Bの出力端子Qは、出力端子43bに接続される。D型フリップフロップ431Aの反転出力端子Q(-)は、D型フリップフロップ431AのD入力端子に接続される。D型フリップフロップ431Bの反転出力端子Q(-)は、D型フリップフロップ431Bの入力端子Dに接続される。
【0066】
このように接続されたD型フリップフロップ431Aは、クロック端子CLKに入力される信号の遷移タイミングで入力端子Dのレベルを取り込み、出力端子Qから出力する。入力端子Dは反転出力端子Q(-)に接続されているので、クロック端子CLKに入力される信号の遷移タイミングで反転する信号が出力端子Qから出力される。このため、D型フリップフロップ431Aは、入力端子43aに入力される信号の周期の1/2の周期を有する信号を出力する。
【0067】
D型フリップフロップ431Bは、D型フリップフロップ431Aの出力を入力とする。D型フリップフロップ431Bは、D型フリップフロップ431Aと同様の構成になっている。このため、D型フリップフロップ431Aおよび431Bにより、入力端子43aに入力される信号の周期の1/4の周期を有する信号が出力端子43bから出力される。つまり、分周器43は4分周器として動作する。
【0068】
図4に戻り、ドハティ増幅回路1cにおいては、可変利得制御回路32がシリコンダイ上の第1集積回路CM1に形成される。ドハティ増幅回路1cのシリコンダイ上の第1集積回路CM1以外の部分すなわち
図4中の符号「CM1」で示す破線の枠の外側の部分は、第2集積回路CM1aに形成される。第2集積回路CM1aは、例えば、GaAsダイ上に形成される。第2集積回路CM1aは、第1集積回路CM1に接続されている。
【0069】
(効果)
以上説明したように、ドハティ増幅回路1cは、逓倍器41によって周波数を4倍にした後、可変移相器42を通過させ、その後に分周器43で元の周波数に戻している。可変移相器42を通過する時点で周波数が高いため、波長を短くすることができる。このため、可変移相器42に含まれるインダクタを実現するための面積を抑えることができる。仮に、逓倍器41、可変移相器42および分周器43を設けない場合は、波長が長くなる。その場合、インダクタを形成するための面積が大きくなり、可変移相器42の回路規模が大きくなる。上述したドハティ増幅回路1cによれば、波長を短くすることができるので、回路規模が大きくなることを抑えることができる。
【0070】
可変利得制御回路32については、チップ上に形成する際に面積が大きくなることがある。シリコンダイ上の第1集積回路CM1に可変利得制御回路32を形成すれば、可変利得制御回路32について微細な加工が可能になり、チップ上の占有面積を抑えることができる。その結果、チップ上に形成するドハティ増幅回路1c全体を小型にすることができる。
【0071】
また、
図2を参照して説明したドハティ増幅回路1aや
図3を参照して説明したドハティ増幅回路1bと同様に、可変利得制御回路32以外の各部をシリコンダイ上の第1集積回路CM2、CM3に形成してもよい。各部をシリコンダイ上の第1集積回路に形成すれば、これらについて微細な加工が可能になり、チップ上の占有面積を抑えることができる。その結果、チップ上に形成するドハティ増幅回路1c全体を小型にすることができる。
【0072】
<第5実施形態>
(構成)
図8は、第5実施形態のドハティ増幅回路1dの構成を示す図である。
図8に示す第5実施形態のドハティ増幅回路1dは、第4実施形態のドハティ増幅回路1cに、乗算回路50を追加した構成である。乗算回路50は、キャリアアンプ13の出力である高周波信号RF13と、ピークアンプ16の出力である高周波信号RF23と、を入力する。乗算回路50は、高周波信号RF13と高周波信号RF23とを乗算した信号S4を出力する。乗算回路50から出力される信号S4は、可変移相器42に入力される。信号S4によって可変移相器42の移相量が制御される。つまり、乗算回路50は、キャリアアンプ13の出力信号(高周波信号RF13)およびピークアンプ16の出力信号(高周波信号RF23)に基づいて制御信号を出力する。なお、乗算回路は、本開示の「制御回路」に相当する。
【0073】
(乗算回路)
図9は、
図8中の乗算回路50の構成例を示す図である。
図9に示す乗算回路50は、トランジスタQ1からQ6までと、抵抗R51、R52およびR53と、入力端子51a、51b、51cおよび51dと、出力端子52aおよび52bと、を含む。
【0074】
トランジスタQ1およびQ2に着目すると、トランジスタQ1のドレインが抵抗R51を介して電源Vccに接続され、トランジスタQ2のドレインが抵抗R52を介して電源Vccに接続される。そして、トランジスタQ1のソースとトランジスタQ2のソースとが接続される。このため、トランジスタQ1とトランジスタQ2とは、差動増幅回路を構成する。
【0075】
トランジスタQ3およびQ4に着目すると、トランジスタQ3のドレインが抵抗R52を介して電源Vccに接続され、トランジスタQ4のドレインが抵抗R51を介して電源Vccに接続される。そして、トランジスタQ3のソースとトランジスタQ4のソースとが接続される。このため、トランジスタQ3とトランジスタQ4とは、差動増幅回路を構成する。
【0076】
トランジスタQ1およびQ2による差動増幅回路の出力はトランジスタQ5のドレインに入力される。また、トランジスタQ3およびQ4による差動増幅回路の出力はトランジスタQ6のドレインに入力される。トランジスタQ5のソースとトランジスタQ6のソースとが接続され、抵抗R53を介して基準電位に接続される。なお、抵抗R53の代わりに、電流源が接続されていてもよい。
【0077】
入力端子51bには、
図8中のキャリアアンプ13から出力される高周波信号RF13が入力される。入力端子51dには、
図8中のピークアンプ16から出力される高周波信号RF23が入力される。トランジスタQ4とトランジスタQ6とに着目すると、トランジスタQ4のゲートに高周波信号RF13が印加され、トランジスタQ6のゲートに高周波信号RF23が印加されており、両信号が乗算された信号S4が出力端子52bから出力される。
【0078】
ここで、
図8中のキャリアアンプ13が差動増幅器である場合(不図示)は、Positive側の高周波信号RF13が入力端子51aに入力され、Negative側の高周波信号RF13が入力端子51bに入力される。また、
図8中のピークアンプ16が差動増幅器である場合(不図示)は、Positive側の高周波信号RF23が入力端子51cに入力され、Negative側の高周波信号RF23が入力端子51dに入力される。Positive側の高周波信号RF13および高周波信号RF23が乗算された、Positive側の信号S4が出力端子52aから出力される。Negative側の高周波信号RF13および高周波信号RF23が乗算された、Negative側の信号S4が出力端子52bから出力される。なお、
図8に示すように、キャリアアンプ13およびピークアンプ16が差動増幅器でない場合は、上述したように入力端子51bおよび51dを用い、入力端子51aおよび51cは用いない。
【0079】
図10は、
図9の乗算回路50から出力される信号S4の例を示す図である。
図10において、横軸は位相差(度)、縦軸は出力電圧(V)を示す。
図10において、実線はPositive側の高周波信号を示し、破線はNegative側の高周波信号を示す。
【0080】
図10において、実線で示すPositive側の高周波信号に着目すると、位相差が0度に近い(位相差が小さい)場合に対して、位相差が大きい場合に信号S4の電圧が高くなる。これにより、位相差を少なくする方向に可変移相器42が制御される。また、破線で示すNegative側の高周波信号に着目すると、位相差が大きい場合に対して、位相差が小さい場合に信号S4の電圧が高くなる。これらにより、位相差を少なくする方向に可変移相器42が制御される。
【0081】
ところで、
図10において、Positive側およびNegative側の両方の信号を用いる並列合成においては、位相差が-90度になるのが理想的な関係である。
図10を参照すると、位相差が-90度のときには、Positive側およびNegative側の両出力が4.4V程度である。そこで、逓倍器41、可変移相器42および分周器43(
図8参照)によって生じる位相差が、4.4Vにおいて90度になるように設計しておく。可変移相器42は、印加電圧が大きくなると、可変容量として用いるバラクタダイオードの逆バイアスが増加することになるから、空乏層が広がり、その容量は低下する。すなわち、印加電圧が増加することで、通過位相が減少することになる。この作用を利用して、乗算回路50の出力のPositive側を接続すると、以下のような効果が得られる。例えば、何かしらの要因の影響(増幅器の個体差や負荷の変動等)によって、2つの増幅器の出力位相差が設計理想値の-90度から例えば-80度に変化した場合には、可変移相器42への印加電圧が4.4Vから4.2Vに印加電圧が変化する。このため、逓倍器41、可変移相器42および分周器43における位相差が90度より増えて、例えば100度になる。
【0082】
これによって外的要因によって減少していた各増幅器間の位相差が、移相器によって強制的に設計理想値へ補正することができる。その結果、環境変動耐性が向上するという効果が得られる。なお、Positive側およびNegative側のいずれか一方を用いる直列型の場合は、設計理想の位相差が+90度であり、Negative側を接続することによって、上述した並列型と同様の効果が得られる。
【0083】
図8に戻り、ドハティ増幅回路1dの一部分である可変利得制御回路32はシリコンダイ上の第1集積回路CM1に形成される。ドハティ増幅回路1dのシリコンダイ上の第1集積回路CM1以外の部分すなわち
図8中の符号「CM1」で示す破線の枠の外側の部分は、第2集積回路CM1aに形成される。第2集積回路CM1aは、例えば、GaAsダイ上に形成される。第2集積回路CM1aは、第1集積回路CM1に接続されている。
【0084】
(効果)
上述したように、乗算回路50から出力される信号S4に基づいて可変移相器42が制御されることにより、位相差を適切な状態に維持することができる。したがって、ドハティ増幅回路1dの一部分がシリコンダイ上の第1集積回路CM1に形成された場合であっても、位相差を適切な状態に維持することができ、高周波信号の品質を維持できる。
【0085】
<第6実施形態>
(構成)
図11は、第6実施形態のドハティ増幅回路1eの構成を示す図である。
図11に示す第6実施形態のドハティ増幅回路1eは、
図2に示す第2実施形態のドハティ増幅回路1aにおいて、アッテネータ31と、可変利得制御回路32と、アクティブバラン33と、検波回路34と、をシリコンダイ上の第1集積回路CM4に形成した構成になっている。また、第1集積回路CM4には、電源回路36が形成される。ドハティ増幅回路1eの第1集積回路CM4以外の部分は、第2集積回路CM4aに形成される。90°ハイブリッド回路11およびディレイライン20は、第2集積回路CM4aに形成される。第2集積回路CM4aは、例えば、GaAs(ガリウムヒ素)ダイ上に形成される。
【0086】
電源回路36は、直流電流を出力する。電源回路36から出力される直流電流は、バイアス回路25、26、27に入力される。バイアス回路25、26および27は、電源回路36から入力される電流によって動作する。バイアス回路25、26、27は、上述したように、ピークアンプ15、16、17A、17Bにバイアスを与える。
【0087】
(効果)
第6実施形態のドハティ増幅回路1eによれば、各部をシリコンダイ上の第1集積回路CM4に形成することにより、消費電力を低減できる。
【0088】
<第7実施形態>
(構成)
図12は、第7実施形態のドハティ増幅回路1fの構成を示す図である。
図12に示す第7実施形態のドハティ増幅回路1fは、
図11に示す第6実施形態のドハティ増幅回路1eの電源回路36とバイアス回路25、26、27との間に、可変電流源141a、141b、141cを設けた構成である。
図12に示すように、アッテネータ31と、可変利得制御回路32と、アクティブバラン33と、検波回路34と、電源回路36と、可変電流源141a、141b、141cとは、シリコンダイ上の第1集積回路CM5に形成される。ドハティ増幅回路1fの第1集積回路CM5以外の部分は、第2集積回路CM5aに形成される。
【0089】
可変電流源141a、141b、141cは、検波回路34の出力によって制御される。電源回路36から出力される直流電流は、可変電流源141a、141b、141cにおいて、検波回路34の出力に基づいて制御された後、バイアス回路25、26、27に入力される。このため、1つの信号線によって、バイアス回路25の動作および制御のための信号S1aを、電源回路36からバイアス回路25に送ることができる。1つの信号線によって、バイアス回路26の動作および制御のための信号S2aを、電源回路36からバイアス回路26に送ることができる。1つの信号線によって、バイアス回路27の動作および制御のための信号S3aを、電源回路36からバイアス回路27に送ることができる。
【0090】
ここで、
図11を参照して説明した第6実施形態のドハティ増幅回路1eの場合は、第1集積回路CM4から第2集積回路CM4aに送る6つの信号線が必要である。すなわち、バイアス回路25、26、27に入力する3つの信号S1、S2およびS3と、電源回路36から出力される3つの直流電流とを送るための6つの信号線が必要である。このため、これら6つの信号線に対応する6つの電極を、第1集積回路CM4、第2集積回路CM4aにそれぞれ設ける必要がある。
【0091】
これに対し、
図12に示す第7実施形態のドハティ増幅回路1fの場合は、各バイアス回路25、26、27に信号S1a、S2a、S3aを送るための3つの信号線で済む。このため、これら3つの信号線に対応する3つの電極を、第1集積回路CM4、第2集積回路CM4aにそれぞれ設ければよい。第1集積回路CM4、第2集積回路CM4aにそれぞれ設ける電極の数が少なくなるため、電極に必要な面積を少なくすることができる。
【0092】
(効果)
第7実施形態のドハティ増幅回路1fによれば、
図11に示す第6実施形態のドハティ増幅回路1eよりも電極に必要な面積を少なくすることができ、ドハティ増幅回路1f全体の面積を小さくすることができる。
【0093】
<第8実施形態>
第8実施形態では、イネーブル端子を有するピークアンプについて説明する。
【0094】
(構成)
図13は、第8実施形態のドハティ増幅回路1gの構成を示す図である。
図14は、第8実施形態のドハティ増幅回路1gのピークアンプの構成を示す図である。
図14では、ドハティ増幅回路1gに含まれるピークアンプの一例として、最終段の第1相のピークアンプ17Aを示しているが、他のピークアンプも同様に構成できる。
【0095】
ドハティ増幅回路1gは、制御回路21を有する。制御回路21は、アッテネータ31と、可変利得制御回路32と、検波回路34と、を含む。制御回路21は、シリコンダイ上の第1集積回路CM6に形成される。ドハティ増幅回路1gの第1集積回路CM6以外の部分は、第2集積回路CM6aに形成される。また、ドハティ増幅回路1gは、ドライブレベル検出回路35bを含む。ドライブレベル検出回路35bは、キャリアアンプ14Aから出力される高周波信号RF16と、キャリアアンプ14Bから出力される高周波信号RF17とに基づいてドライブレベル(動作レベル)を検出する。
【0096】
検波回路34は、高周波信号RF32に基づいて、制御信号S1、S2、S3およびS4を、ピークアンプ15、16、17Aおよび17Bにそれぞれ出力する。例えば、検波回路34は、高周波信号RF32の振幅が大きい場合には、ピークアンプ15、16、17Aおよび17Bを動作状態にさせる制御信号S1、S2、S3およびS4を出力することが例示される。また例えば、検波回路34は、高周波信号RF32の振幅が小さい場合には、ピークアンプ15、16、17Aおよび17Bを非動作状態にさせる制御信号S1、S2、S3およびS4を出力することが例示される。
【0097】
バイアス回路27の端子27aには、定電流源141から定電流が入力される。バイアス回路27の端子27bは、電源電圧Vccに電気的に接続されている。
【0098】
バイアス回路27は、トランジスタQB1、QB2、QB3、QB4およびQB5と、抵抗RB1と、を含む。
【0099】
本開示では、各トランジスタは、バイポーラトランジスタとするが、本開示はこれに限定されない。バイポーラトランジスタは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Heterojunction Bipolar Transistor:HBT)が例示されるが、本開示はこれに限定されない。トランジスタは、例えば、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)であっても良い。トランジスタは、複数の単位トランジスタを電気的に並列接続した、マルチフィンガートランジスタであっても良い。単位トランジスタとは、トランジスタが構成される最小限の構成を言う。
【0100】
各トランジスタがFETである場合、ソースがバイポーラトランジスタのエミッタに対応し、ゲートがバイポーラトランジスタのベースに対応し、ドレインがバイポーラトランジスタのコレクタに対応する。
【0101】
トランジスタQB4のコレクタおよびベースは、端子27aに電気的に接続されている。つまり、トランジスタQB4は、ダイオード接続されている。
【0102】
トランジスタQB5のコレクタは、トランジスタQB4のエミッタに電気的に接続されている。トランジスタQB5のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。基準電位は、接地電位が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0103】
トランジスタQB1のコレクタは、端子27bに電気的に接続されている。トランジスタQB1のベースは、端子27a、並びに、トランジスタQB4のコレクタおよびベースに、電気的に接続されている。トランジスタQB1のエミッタは、バイアス回路27の端子27cに電気的に接続されている。トランジスタQB1が、バイアス電圧またはバイアス電流を出力するトランジスタである。
【0104】
トランジスタQB2のコレクタは、トランジスタQB1のエミッタおよび端子27cに電気的に接続されている。トランジスタQB2のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。
【0105】
抵抗RB1の一端は、トランジスタQB1のエミッタ、端子27cおよびトランジスタQB2のコレクタに電気的に接続されている。抵抗RB1の他端は、トランジスタQB2のベースに電気的に接続されている。
【0106】
トランジスタQB3のベースおよびコレクタは、トランジスタQB2のベース、抵抗RB1の他端およびトランジスタQB5のベースに電気的に接続されている。
【0107】
ピークアンプ17Aのイネーブル端子17-1aには、制御信号S3が検波回路34から入力される。ピークアンプ17Aの端子17-1bには、バイアス電流またはバイアス電圧がバイアス回路27から入力される。ピークアンプ17Aの端子17-1cには、高周波信号RF24がバラン18Bから入力される。ピークアンプ17Aの端子17-1dからは、高周波信号RF26が結合器19へ出力される。
【0108】
ピークアンプ17Aは、セルCL1、CL2、・・・、CLNと、を含む。つまり、ピークアンプ17Aは、複数のセルを含むマルチフィンガー(マルチセル)トランジスタで構成されている。ただし、本開示はこれに限定されない。ピークアンプ17Aは、1個のセルを含むシングルフィンガー(シングルセル)トランジスタで構成されることとしても良い。
【0109】
ピークアンプ17Aは、セルCL1、CL2、・・・、CLNを動作状態(高周波信号増幅状態)または非動作状態(高周波信号非増幅状態)に制御する状態制御回路CCを更に含む。状態制御回路CCは、トランジスタQCを含む。
【0110】
セルCL1は、トランジスタQRF1と、コンデンサCBB1と、抵抗RBB1およびRBS1と、を含む。トランジスタQRF1は、単位トランジスタが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0111】
抵抗RBB1の一端は、端子17-1bに電気的に接続されている。つまり、抵抗RBB1は、バイアス回路27の中のトランジスタQB1とエミッタフォロワ接続されている。抵抗RBB1の他端は、ノードN1に電気的に接続されている。コンデンサCBB1の一端は、端子17-1cに電気的に接続されている。コンデンサCBB1の他端は、ノードN1に電気的に接続されている。トランジスタQRF1のベースは、ノードN1に電気的に接続されている。トランジスタQRF1のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。トランジスタQRF1のコレクタは、端子17-1dに電気的に接続されている。
【0112】
トランジスタQRF1のベースには、抵抗RBB1を介してバイアス電流またはバイアス電圧が入力される。また、トランジスタQRF1のベースには、コンデンサCBB1を介して高周波信号RF24が入力される。トランジスタQRF1は、高周波信号RF24を増幅して、高周波信号RF26をコレクタから端子17-1dに出力する。
【0113】
抵抗RBS1の一端は、ノードN1に電気的に接続されている。抵抗RBS1の他端は、トランジスタQCのコレクタに電気的に接続されている。
【0114】
セルCL2は、トランジスタQRF2と、コンデンサCBB2と、抵抗RBB2およびRBS2と、を含む。トランジスタQRF2は、単位トランジスタが例示されるが、本開示はこれに限定されない。トランジスタQRF2、コンデンサCBB2、ノードN2、並びに、抵抗RBB2およびRBS2の接続関係は、トランジスタQRF1、コンデンサCBB1、ノードN1、並びに、抵抗RBB1およびRBS1の接続関係と同様であるので、説明を省略する。
【0115】
セルCLNは、トランジスタQRFNと、コンデンサCBBNと、抵抗RBBNおよびRBSNと、を含む。トランジスタQRFNは、単位トランジスタが例示されるが、本開示はこれに限定されない。トランジスタQRFN、コンデンサCBBN、ノードNN、並びに、抵抗RBBNおよびRBSNの接続関係は、トランジスタQRF1、コンデンサCBB1、ノードN1、並びに、抵抗RBB1およびRBS1の接続関係と同様であるので、説明を省略する。
【0116】
トランジスタQCのコレクタは、抵抗RBS1の他端、抵抗RBS2の他端、・・・、抵抗RBSNの他端に電気的に接続されている。トランジスタQCのベースは、イネーブル端子17-1aに電気的に接続されている。トランジスタQCのベースには、制御信号S3が入力される。トランジスタQCのエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。
【0117】
状態制御回路CCの動作について説明する。
【0118】
制御信号S3がハイレベルの場合、トランジスタQCはオン状態となり、ノードN1、ノードN2、・・・、ノードNNから抵抗RBS1、抵抗RBS2、・・・、抵抗RBSNをそれぞれ介して、トランジスタQCのコレクタへ電流Iが流れる。つまり、トランジスタQCは、ノードN1、ノードN2、・・・、ノードNNから電流Iを引き抜く。
【0119】
ノードN1から電流が引き抜かれることにより、引き抜き電流が流れる抵抗RBB1で電圧降下が発生し、ノードN1の電圧が低下する。従って、トランジスタQRF1は、ベース電圧が低下するので、高周波信号RF24の増幅を行えなくなる。
【0120】
同様に、ノードN2から電流が引き抜かれることにより、引き抜き電流が流れる抵抗RBB2で電圧降下が発生し、ノードN2の電圧が低下する。従って、トランジスタQRF2は、ベース電圧が低下するので、高周波信号RF24の増幅を行えなくなる。
【0121】
同様に、ノードNNから電流が引き抜かれることにより、引き抜き電流が流れる抵抗RBBNで電圧降下が発生し、ノードNNの電圧が低下する。従って、トランジスタQRFNは、ベース電圧が低下するので、高周波信号RF24の増幅を行えなくなる。
【0122】
つまり、制御信号S3がハイレベルとなると、ピークアンプ17Aは、非動作状態(高周波信号非増幅状態)となる。
【0123】
制御信号S3がローレベルの場合、トランジスタQCはオフ状態となり、ノードN1、ノードN2、・・・、ノードNNからトランジスタQCのコレクタへ電流Iが流れない。つまり、トランジスタQCは、ノードN1、ノードN2、・・・、ノードNNから電流Iを引き抜かない。
【0124】
従って、トランジスタQRF1は、ベース電圧が低下しないので、高周波信号RF24の増幅を行える。同様に、トランジスタQRF2は、ベース電圧が低下しないので、高周波信号RF24の増幅を行える。同様に、トランジスタQRFNは、ベース電圧が低下しないので、高周波信号RF24の増幅を行える。
【0125】
つまり、制御信号S3がローレベルとなると、ピークアンプ17Aは、動作状態(高周波信号増幅状態)となる。
【0126】
なお、状態制御回路CCの配置場所は、セルCL1、CL2、・・・、CLNの配置場所から離れていても良い。電流Iは、温度差の影響を受けにくいためである。通常、制御信号S3の生成部である検波回路34は、最終段増幅器であるピークアンプ17A、17Bから距離を取って配置される。従って、高い出力電力が要求されるために高温になりがちであるピークアンプ17A、17Bと、検波回路34とは、温度差が発生することが多い。その結果、ピークアンプ17A、17B付近に配置されるトランジスタの閾値電圧は、検波回路34付近に配置されるトランジスタの閾値電圧と比較して低くなりやすい。ここで、状態制御回路CCを、ピークアンプ17A、17B付近に配置した場合、ピークアンプ17A、17B付近の温度上昇により、状態制御回路CCに含まれるトランジスタQCの閾値電圧が低下してしまう。つまり、状態制御回路CCを、セルCL1、CL2、・・・、CLNの配置場所の近くに配置した場合、検波回路34により生成された制御信号S3がローレベルであった場合でも、状態制御回路CCが「制御信号S3はハイレベルである」と誤認識してしまう可能性がある。これに対して、状態制御回路CCをセルCL1、CL2、・・・、CLNの配置場所から離した配置にすると、状態制御回路CCに含まれるトランジスタQCの閾値電圧の低下を抑制できる。このため、状態制御回路CCの制御信号S3に関する誤認識を防止しやすくなる。例えば、状態制御回路CCは、制御回路21の中に配置されていても良い。その場合、電流Iが制御信号S3に相当すると考えることができる。
【0127】
一方、抵抗RBB1の配置場所とトランジスタQRF1の配置場所とは、近いことが好ましい。電圧は、寄生容量の影響を受けやすいからである。もし、抵抗RBB1の配置場所とトランジスタQRF1の配置場所とが離れていると、寄生容量の影響により、抵抗RBB1で発生する電圧降下がトランジスタQRF1のベースに伝わるのが遅くなってしまう。つまり、トランジスタQRF1の動作状態と非動作状態との切り替えが遅くなってしまう。従って、トランジスタQRF1の状態の切り替えを速くするために、抵抗RBB1の配置場所とトランジスタQRF1の配置場所とは、近いことが好ましい。他のセルも同様である。
【0128】
(効果)
例えば特許文献1記載の技術のように、バイアス回路27が、バイアス電流またはバイアス電圧を変化させることにより、ピークアンプ17Aの動作状態(高周波信号増幅状態)と非動作状態(高周波信号非増幅状態)とを制御することとすると、切り替えが遅くなる。なぜならば、直流電流(バイアス電流)または直流電圧(バイアス電圧)を変化させることは、時間がかかるからである。
【0129】
一方、ピークアンプ17Aは、イネーブル端子17-1aにハイレベルまたはローレベルの制御信号S3を入力することにより、動作状態と非動作状態とを制御することができる。従って、バイアス回路27は、バイアス電流またはバイアス電圧を変化させる必要がない。
【0130】
これにより、ピークアンプ17Aは、動作状態と非動作状態との切り替えを速くすることができる。
【0131】
また、ピークアンプ17Aは、状態制御回路CCがノードN1、N2、・・・、NNから電流Iを引き抜くことにより、ピークアンプ17Aの動作状態と非動作状態とを制御することができる。
【0132】
このように、ピークアンプ17Aは、電流Iの引き抜きにより動作状態と非動作状態とを制御することができるので、電圧によって動作状態と非動作状態とを制御することに比べて、切り替えを速くすることができる。
【0133】
請求項の記載に関して、本開示は以下の態様をとりうる。
(1)
第1集積回路と、第1集積回路と接続された第2集積回路とを含み、
前記第1集積回路および前記第2集積回路のいずれかは、
高周波信号を増幅するキャリアアンプと、
高周波信号を増幅するピークアンプと、
前記キャリアアンプのドライブレベルを示すドライブレベル信号に基づいて前記高周波信号の利得を制御する可変利得制御回路と、
を含み、
前記ピークアンプは、前記可変利得制御回路の出力に基づいて動作状態が制御され、
シリコンダイ上の第1集積回路は、少なくとも前記可変利得制御回路を含む
ドハティ増幅回路。
(2)
前記可変利得制御回路の出力に基づくバイアスを前記ピークアンプに入力するバイアス回路をさらに含む、
(1)に記載のドハティ増幅回路。
(3)
前記シリコンダイ上の前記第1集積回路は、
前記可変利得制御回路の出力を入力とするアクティブバランと、
前記アクティブバランを通過した信号を入力とし、前記バイアス回路を制御する信号を出力する検波回路と、
をさらに含む
(2)に記載のドハティ増幅回路。
(4)
前記キャリアアンプは、ドライバ段キャリアアンプと、前記ドライバ段キャリアアンプの出力を入力とするパワー段キャリアアンプとを含み、
前記ピークアンプは、ドライバ段ピークアンプと、前記ドライバ段ピークアンプの出力を入力とするパワー段ピークアンプとを含み、
前記シリコンダイ上の前記第1集積回路は、
前記高周波信号を、互いに位相が異なる信号として前記キャリアアンプと前記ピークアンプとに入力する分配回路と、
前記ドライバ段キャリアアンプと、
前記ドライバ段ピークアンプと、をさらに含む、
(1)から(3)のいずれか1つに記載のドハティ増幅回路。
(5)
前記高周波信号を逓倍して出力する逓倍器と、前記逓倍器の出力信号の位相を制御する可変移相器と、前記可変移相器の出力を分周する分周器と、
を含み、前記高周波信号と前記分周器の出力信号とを、互いに位相が異なる信号として前記キャリアアンプと前記ピークアンプとに入力する
(1)から(4)のいずれか1つに記載のドハティ増幅回路。
(6)
前記キャリアアンプの出力信号および前記ピークアンプの出力信号に基づいて制御信号を出力する制御回路をさらに含み、
前記制御回路の出力信号によって前記可変移相器の移相量を制御する
(5)に記載のドハティ増幅回路。
(7)
前記検波回路の出力を入力とする可変電流源をさらに含み、
前記可変電流源の出力を、前記バイアス回路を制御する信号とする、
(3)に記載のドハティ増幅回路。
【符号の説明】
【0134】
1、1a~1g ドハティ増幅回路
11 90°ハイブリッド回路
12、13、14、14A、14B キャリアアンプ
15、16、17、17A、17B ピークアンプ
18A、18B バラン
19 結合器
20 ディレイライン
22~27 バイアス回路
31 アッテネータ
32 可変利得制御回路
33 アクティブバラン
34 検波回路
35、35a、35b ドライブレベル検出回路
36 電源回路
41 逓倍器
42 可変移相器
43 分周器
50 乗算回路
141a、141b、141c 可変電流源
CM1、CM2、CM3、CM4、CM5 第1集積回路
CM1a、CM2a、CM3a、CM4a、CM5a 第2集積回路