(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146721
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】機能性粒子分散体
(51)【国際特許分類】
A01N 47/12 20060101AFI20241004BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20241004BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20241004BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20241004BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20241004BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20241004BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20241004BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241004BHJP
C09D 11/16 20140101ALI20241004BHJP
【FI】
A01N47/12 Z
A61K8/11
A61K8/81
A61Q1/02
A61Q5/06
C08F20/10
A01N25/02
A01P1/00
A01P3/00
C09D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187917
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2023057637
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 久人
【テーマコード(参考)】
4C083
4H011
4J039
4J100
【Fターム(参考)】
4C083AB102
4C083AB132
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC122
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4J100FA39
4J100JA07
4J100JA57
4J100JA61
(57)【要約】
【課題】 抗菌効果と、還元性能と、芳香性能を高度に両立し、その持続性(徐放性)をもちながら、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、しかも、イオンの影響を受けやすい配合系等においても、分散安定性に優れると共に、機能性粒子の設計の自由度が大きく、様々な用途に利用することができる機能性粒子分散体及びこれを含有した筆記具用水性インク組成物を提供する。
【解決手段】本発明の機能性粒子分散体は、少なくとも、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、少なくとも1種の特定の抗菌性成分と、還元性成分と、香料を少なくとも1種の芳香成分で構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子表面のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲であることを特徴とする。
【化1】
〔上記式(I)中、Aは、H等、Rは、H、炭素数1~22のアルキル基等である。〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、下記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲であることを特徴とする機能性粒子分散体。
【化1】
〔上記式(I)中、Aは、水素原子(H)又はメチル基(CH
3)であり、Rは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表し、該アルキル基又はポリアルキレングリコール鎖を有する置換基は、置換基としてフェニル基、ベンジル基、エポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基、又はトリアルコキシシリル基を有していてもよい。〕
X群:ヨードプロパギル化合物、チアベンダゾール、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、モルホリン、クレゾール、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、ピリチオンナトリウム、2-(4-チオゾリル)ベンズイミダゾール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、チモール、ジイソチオシアネート、ユーカリオイル、ロンギフォーレン、イソプロピルメチルフェノール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、シトラール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート、d-リモネン、タンニン酸、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、カプリル酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ビサボロール、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルパラベン
【請求項2】
少なくとも、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、下記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分と、少なくとも1種の香料成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲であることを特徴とする機能性粒子分散体。
【化2】
〔上記式(I)中、Aは、水素原子(H)又はメチル基(CH
3)であり、Rは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表し、該アルキル基又はポリアルキレングリコール鎖を有する置換基は、置換基としてフェニル基、ベンジル基、エポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基、又はトリアルコキシシリル基を有していてもよい。〕
X群:ヨードプロパギル化合物、チアベンダゾール、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、モルホリン、クレゾール、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、ピリチオンナトリウム、2-(4-チオゾリル)ベンズイミダゾール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、チモール、ジイソチオシアネート、ユーカリオイル、ロンギフォーレン、イソプロピルメチルフェノール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、シトラール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート、d-リモネン、タンニン酸、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、カプリル酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ビサボロール、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルパラベン
【請求項3】
少なくとも、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、下記Z群から選ばれる少なくとも1種の還元性成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲であることを特徴とする機能性粒子分散体。
【化3】
〔上記式(I)中、Aは、水素原子(H)又はメチル基(CH
3)であり、Rは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表し、該アルキル基又はポリアルキレングリコール鎖を有する置換基は、置換基としてフェニル基、ベンジル基、エポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基、又はトリアルコキシシリル基を有していてもよい。〕
Z群:ポリフェノール類、銅クロロフィル、フラボノイド類、アントシアニジン類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール
【請求項4】
請求項1~3の何れか一つに記載の機能性粒子分散体を含むことを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
【請求項5】
請求項1~3の何れか一つに記載の機能性粒子分散体を含むことを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散安定性に優れると共に、抗菌効果や、芳香性能、または、酸素に対する還元性能(酸素吸収能)などに優れる機能性粒子分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、抗菌効果を有する抗菌性粒子や、酸素に対する還元性能(酸素吸収能)の強さと持続性(徐放性)を両立することができる還元性粒子などとして、数多くの種類や特性の機能性粒子が知られている。
【0003】
本出願人は、少なくとも、特定式で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、特定の還元性成分とで構成される還元性粒子が水に分散されている還元性粒子分散体(例えば、特許文献1参照)や、少なくとも、特定式で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、特定の抗菌性成分とで構成される抗菌性粒子が水に分散されている抗菌性粒子分散体(例えば、特許文献2参照)を提案している。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1~2に記載の還元性粒子分散体、抗菌性粒子分散体は、従来にない優れた各効果を備える機能性粒子分散体であるが、これらの分散体を繊細な分散液の配合系や、水性インクの配合系に加えた際などに、一部で安定性が若干不十分となる事象が生じることがあった。
【0005】
この原因などについて更に検討等してみると、上記還元性粒子分散体や抗菌性粒子分散体において、高い分散力を得るために、重合性界面活性剤としてアニオン系界面活性剤を用いて電荷反発で抗菌性粒子などを構成する上記特許文献1及び2に記載の各分散体では、インク中等に含まれる種々の粒子の電荷により、上記配合系の分散が安定な初期状態を維持できない、あるいは、初期状態と比較して安定的なインクの表面張力を保てない等の 課題が生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-138102号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2023-1833号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、抗菌効果、または芳香性能、または、酸素に対する還元性能(酸素吸収能)の強さと持続性(徐放性)を両立することができ、しかも、イオンの影響を受けやすい配合系等においても、分散安定性や表面張力の安定性に優れると共に、低刺激性であり、機能性粒子を含む場合であっても、イオンの影響を受けやすい配合系等の設計の自由度が高く、様々な用途に利用することができる機能性粒子分散体などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、特定式で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、特定の機能性成分とで構成される特定物性の機能性粒子が水に分散されていることにより、上記目的の機能性粒子分散体などが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本第1態様の機能性粒子分散体は、少なくとも、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、下記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲であることを特徴とする。
【化1】
〔上記式(I)中、Aは、水素原子(H)又はメチル基(CH
3)であり、Rは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表し、該アルキル基又はポリアルキレングリコール鎖を有する置換基は、置換基としてフェニル基、ベンジル基、エポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基、又はトリアルコキシシリル基を有していてもよい。〕
X群:ヨードプロパギル化合物、チアベンダゾール、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、モルホリン、クレゾール、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、ピリチオンナトリウム、2-(4-チオゾリル)ベンズイミダゾール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、チモール、ジイソチオシアネート、ユーカリオイル、ロンギフォーレン、イソプロピルメチルフェノール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、シトラール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート、d-リモネン、タンニン酸、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、カプリル酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ビサボロール、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルパラベン
【0010】
また、本第2態様の機能性粒子分散体は、少なくとも、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、上記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分と、少なくとも1種の香料成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲であることを特徴とする。
【0011】
更に、本第3態様の機能性粒子分散体は、少なくとも、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、下記Z群から選ばれる少なくとも1種の還元性成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲であることを特徴とする。
Z群:ポリフェノール類、銅クロロフィル、フラボノイド類、アントシアニジン類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール
本発明の筆記具用水性インク組成物は、上記第1態様~第3態様の何れか一つの機能性粒子分散体を含むことを特徴とする。
本発明の化粧料は、上記第1態様~第3態様の何れか一つの機能性粒子分散体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抗菌効果や、芳香性能、または、酸素に対する還元性能(酸素吸収能)の強さと持続性(徐放性)を両立することができ、しかも、イオンの影響を受けやすい配合系等においても、分散安定性や表面張力の安定性に優れると共に、低刺激性であり、機能性粒子を含む場合であっても、イオンの影響を受けやすい配合系等の設計の自由度が高く、様々な用途に利用することができる機能性粒子分散体、これを含有する筆記具用水性インク組成物、化粧料が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の化粧料を収容する化粧料塗布具の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述するそれぞれの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。以下において、「本発明」というときは、下記第1実施形態~第3実施形態の各機能性粒子分散体をいう。また、「抗菌効果」というときは、防かび効果・防腐効果を含むものであり、更に、「抗菌性(能)」というときは、防かび性(能)・防腐性(能)を含むものである。
(第1実施形態の機能性粒子分散体)
本第1実施形態の機能性粒子分散体は、少なくとも、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、下記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲であることを特徴とするものである。
【化2】
〔上記式(I)中、Aは、水素原子(H)又はメチル基(CH
3)であり、Rは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表し、該アルキル基又はポリアルキレングリコール鎖を有する置換基は、置換基としてフェニル基、ベンジル基、エポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基、又はトリアルコキシシリル基を有していてもよい。〕
【0015】
X群:ヨードプロパギル化合物、チアベンダゾール、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、パラオキシ安息香酸エステル、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、モルホリン、クレゾール、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、ピリチオンナトリウム、2-(4-チオゾリル)ベンズイミダゾール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、チモール、ジイソチオシアネート、ユーカリオイル、ロンギフォーレン、イソプロピルメチルフェノール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、シトラール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート、d-リモネン、タンニン酸、安息香酸ナトリウム、エチルパラベン、塩化ベン ザルコニウム、カプリル酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ビサボロール、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルパラベン
【0016】
本発明に用いる上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、内包可能な機能性成分の強さと安定な粒子を作製できる点、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがない、効果の持続性が高いなどの点等から用いるものである。
上記一般式(I)中のRは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表し、該アルキル基又はポリアルキレングリコール鎖を有する置換基は、置換基としてフェニル基、ベンジル基、エポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基、又はトリアルコキシシリル基を有していてもよいものであり、例えば、炭素数1~20の直鎖又は分岐を有するアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~18の、置換基としてエポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~4のアルコキシ基を有していてもよいアルキル基が挙げられ、とりわけ炭素数1~6の、置換基としてエポキシ基、水酸基、炭素数1~2のアルコキシ基を有していてもよいアルキル基、炭素数1~6の、置換基としてエポキシ基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。
好ましくは、上記一般式(I)中のRは、炭素数1~20の直鎖又は分岐を有するアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ヒドロキシル基、トリフルオロエチル基、ジメチルアミノエチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アリル基、テトラヒドロフルフリル基、フェニル基、ベンジル基、ブトキシジエチレングリコール基、メトキシポリエチレングリコール基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、グリシジル基、リン酸エチル、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオールなどが望ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」の表記は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を表す。
【0017】
用いる上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,6-ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、フタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシテトラエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、2-(ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)ブチル、(メタ)アクリル酸2-イソシアノエチル、(メタ)アクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチル、炭素数1~18のパーフルオロアルキルを有するパーフルオロエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸2-(リン酸)エチル〔2-(Methacryloyloxy)ethyl phosphate〕、(メタ)アクリル酸トリアルコキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジアルコキシメチルシリルプロピル等の少なくとも1種(各単独又は2種以上、以下同様)が挙げられる。
これらのうち、工業的に入手が容易であり、製造時に取り扱いが容易で安全である点、本発明の効果を更に向上させる点などから、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが望ましい。
【0018】
本第1実施形態においては、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの他に、更に、持続的な機能効果を得る点等から、好ましくは、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の疎水性ビニルモノマー、水性モノマーを用いることができる。
疎水性ビニルモノマーとしては、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の、スチレン、メチルスチレンなどのスチレン類などの少なくとも1種のモノマーを用いることができる。
用いることができる疎水性ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、炭素数1~12までのアルキル基を有するアルキルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、フェニルスチレン、ビニルナフタレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の少なくとも1種が挙げられる。
用いることができる水性モノマーとしては、例えば、グリセリンモノメタクリレート、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノメタクリレート、プロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノメタクリレート、ビニルピロリドン等の少なくとも1種が挙げられる。
【0019】
本第1実施形態に用いる抗菌性成分は、上記X群のヨードプロパギル化合物、チアベンダゾール、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、パラオキシ安息香酸エステル(エチル、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル等)、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、モルホリン、クレゾール、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、ピリチオンナトリウム、2-(4-チオゾリル)ベンズイミダゾール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、チモール、ジイソチオシアネート、ユーカリオイル、ロンギフォーレン、イソプロピルメチルフェノール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、シトラール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート、d-リモネン、タンニン酸、安息香酸ナトリウム、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、カプリル酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ビサボロール、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルパラベンから選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下、同様)である。
【0020】
用いることができるヨードプロパルギル化合物としては、例えば、3-ヨード-2-プロピニルプロピルカルバメート、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、3-ヨード-2-プロピニルm-クロロフェニルカルバメート、3-ヨード-2-プロピニルフェニルカルバメート、3-ヨード-2-プロピニル2,4,5-トリクロロフェニルエーテル、3-ヨード-2-プロピニル4-クロロフェニルホルマール(IPCF)、ジ-(3-ヨード-2-プロピニル)ヘキシルジカルバメート、3-ヨード-2-プロピニルオキシエタノールエチルカルバメート、3-ヨード-2-プロピニルオキシエタノールフェニルカルバメート、3-ヨード-2-プロピニルチオキソチオエチルカルバメート、3-ヨード-2-プロピニルカルバミン酸エステル(IPC)、N-ヨードプロパルギルオキシカルボニルアラニン、N-ヨードプロパルギルオキシカルボニルアラニンエチルエステル、3-(3-ヨードプロパルギル)ベンズオキサゾール-2-オン、3-(3-ヨードプロパルギル)-6-クロロベンズオキサゾール-2-オン、3-ヨード-2-プロピニルアルコール、4-クロロフェニル3-ヨードプロパルギルホルマール、3-ブロモ-2,3-ジヨード-2-プロペニルエチルカルバメート、3-ヨード-2-プロピニル-n-ヘキシルカルバメート、3-ヨード-2-プロピニルシクロヘキシルカルバメートなどから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0021】
これらのヨードプロパルギル化合物を含む上記X群の抗菌性成分は、従来より公知であり、安全性が高く、抗菌性を有する化合物であり、各化合物の製造方法も知られており、種々の製造方法で調製することができ、また、上記X群に含まれる各化合物の市販品があればそれらを使用することができる。
本発明では、更なる安全性の点、安定性の点などから、好ましくは、上記ヨードプロパルギル化合物の中では、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(以下、単に「IPBC」という場合がある)を少なくとも含むもの(IPBC単独又はIPBCを含む混合物)が好ましく、また、ヨードプロパルギル化合物以外では、チアベンダゾール、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、フェノキシエタノール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、タンニン酸、塩化ベンザルコニウム、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビン酸カリウム、パラベン類(ブチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン)、クロロメチルイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリン、ベンズイソチアゾリノンの少なくとも1種の使用が望ましい。
【0022】
本第1実施形態の機能性粒子分散体は、少なくとも、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、上記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分とで構成されると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲、好ましくは、-10~+10mVの範囲とするものである。
本発明(後述する実施例等を含む)において、「機能性粒子のゼータ電位の測定」は、下記測定方法により得られる値をいう。ゼータ電位Vは、測定温度25℃にて、ゼータ電位測定機DT-300(Disoersion Technology, Inc.製)より測定し、3回の算術平均した値をいう。
【0023】
上記機能性粒子のゼータ電位測定値を-15~+15mVの範囲とすることにより、イオンの影響を受けやすい配合系等においても、機能性粒子の分散が安定な初期状態を維持でき、分散安定性や表面張力の安定性に優れると共に、低刺激性であり、配合設計の自由度が大きく、様々な用途に利用することができる機能性粒子分散体が得られることとなる。
上記機能性粒子のゼータ電位測定値を-15~+15mVの範囲とすることにより、イオンの影響を受けやすい配合系、例えば、増粘剤としてセルロースナノファイバー(CNFの水素結合ネットワークによるゲルなど)などの電荷に繊細な多糖類繊維や、一般的なアルカリ膨潤型エマルションにおいても、機能性粒子の分散が安定な初期状態を維持でき、分散安定性や表面張力の安定性に優れると共に、低刺激性で、配合設計の自由度が大きく、様々な用途に利用することができる機能性粒子分散体が得られることとなる。
上記ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲外であると、本発明の効果を発揮することができず、ゼータ電位測定値が-15mV未満であると、配合系の経時的な増減が大きくなり、分散不良となりやすく、一方、ゼータ電位測定値が+15mV超過であると、同じく、配合系の経時的な増減が大きくなり、分散不良となりやすく、好ましくない。
【0024】
上記ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲とするためには、例えば、上記機能性粒子分散体は、乳化重合等により得られるものであるが、乳化重合の際に用いる重合性界面活性剤として、ノニオン系の重合性界面活性剤(種類・量等)を用いることにより、所定のゼータ電位を有する機能性粒子分散体が得られることとなる。
本第1実施形態の機能性粒子分散体の製造は、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(各単独又は2種以上、以下同様)に、または、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとこれ以外の疎水性ビニルモノマーなどを含む混合モノマーに、上記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分を溶解し、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などを重合開始剤として、また還元剤を更に併用した重合開始剤とし、重合性界面活性剤としては、ノニオン系の重合性界面活性剤(種類・好適な量)を用いることにより、目的の上記ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲内となる機能性粒子の分散体が得られることとなる。
【0025】
用いることができるノニオン系の重合性界面活性剤としては、例えば、第一工業製薬社製のアクアロンAN-10、AN-20、AN-30、AN-5065(以上、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル:EO付加モル数10、20、30、40、50)、アクアロンRN-10、RN-20、RN-30、RN-50(以上、ポリオキシエチレンプロペニルフェニルエーテル(ノニルフェニル系):EO付加モル数10、20、30、50)、花王社製のラテムルPD-420、PD-430、PD-450(以上、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル)、日油社製のブレンマーPE-90、PE-200、PE-350(以上、PEGモノメタクリレート:EO付加モル数2,4.5、8)、ブレンマーAE-200、AE-400(以上、PEGモノアクリレート:EO付加モル数4.5、10)、ブレンマーPP-1000、PP-500、PP-800(以上、PPGモノメタクリレート:PO付加モル数4~6、9、13)、ブレンマーAP-200、AP-400、AP-550、AP-800(以上、PPGモノアクリレート:PO付加モル数:3.5、6、9、13)、日油社製のユニオックスPKA-5001、PKA-5002、PKA-5003、PKA-5004(以上、ポリエチレングリコール-アリルエーテル)、ユニセーフPKA-5014F(以上、ポリオキシプロピレンアリルエーテル)、アデカ社製アデカリアソープER-10、ER―20、ER-30、ER―40(以上、アルキル型:EO付加モル数:10、20、30、40)、アデカリアソープNE-10、NE―20、NE-30(以上、アルキルフェノール型:(ノニルフェニル系)EO付加モル数:10、20、30)などが挙げられる。
これらのノニオン系の重合性界面活性剤の使用量は、上記ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲内となる量であればよく、用いる上記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分などにより変動するものであるが、上記モノマー全量に対して、0.1~50質量%の範囲で調整される。
本発明(第1実施形態~第3実施形態)では、乳化重合の際に用いる重合性界面活性剤として、ノニオン系の重合性界面活性剤(種類・量等)を用いることにより、粒子のゼータ電位測定値を上記所定の範囲とする機能性粒子分散体とするものであり、上述の特許文献1,2の各製造例に記載のアニオン系の重合性界面活性剤により得られる還元性粒子分散体、抗菌性粒子分散体では、上記所定のゼータ電位が得られず、安定な初期状態を維持できない、あるいは、初期状態と比較して安定的な表面張力を保てない等の課題が生じることがあり、本発明の効果を発揮できないものとなる。
【0026】
更に、本第1実施形態を含む本発明では、本発明の効果を損なわない範囲で、トリアリルイソシアヌレート、イソシアヌル酸トリアリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ジトリメチロールプロパンアクリレート、ジペンタエリスリトールアクリレート、トリペンタエリスリトールアクリレート、メトキシ化ビスフェノールAメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ペンタエリスリトールメタクリレート、ジトリメチロールプロパンメタクリレート、ジペンタエリスリトールメタクリレート、トリペンタエリスリトールメタクリレート、エトキシ化ポリグリセリンメタクリレート、アリルメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレートなどの架橋剤や、必要に応じて、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)-アルキルエーテル硫酸アンモニウム、エーテルサルフェート、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリアクリル酸アンモニウム、スチレン-マレイン酸コポリマーアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート20)、パルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)などの重合性界面活性剤(乳化剤)を用いて乳化重合することなどにより製造することができ、機能性粒子分散体の分散液として製造された後、乾燥などにより、機能性粒子分散体とすることができる。
上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤の含有量は、上記モノマー全量に対して、0~50質量%、好ましくは、0.1~25質量%が望ましい。
上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤を用いると、機能性粒子分散体の耐熱性、機械的特性、耐加水分解性、耐候性が向上できるので好ましい。
【0027】
本第1実施形態を含む本発明において、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーなどに、更に、ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーなどを適宜量混合して乳化重合を行ってもよい。このジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーを更に、混合して乳化重合したものでは、分散液中の水分が揮発したとしても安定性が損なわれにくく、更に安定性に優れた機能性粒子分散体が得られるものとなる。
用いることができるジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーには、ジシクロペンタニルアクリレートモノマー、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートモノマー、ジシクロペンテニルメタクリレートを含むものである。
また、本第1実施形態を含む本発明において、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー、これ以外の上記疎水性ビニルモノマーなど、上記ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーの他に、エポキシ基、ヒドロキシメチルアミド基、イソシアネート基などの反応性架橋基を有するモノマーや2つ以上のビニル基を有する多官能性モノマーを適宜量配合して架橋してもよい。
【0028】
本第1実施形態を含む本発明において、前記機能性粒子分散体を構成するポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸エステルルモノマーの含有量は、機能性粒子分散体を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であることが必要であり、好ましくは、30~95質量%、更に好ましくは、30~70質量%であることが望ましい。
なお、本第1実施形態を含む本発明において、「全ポリマー成分」とは、機能性粒子分散体を構成する重合性成分をいい、具体的には、用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、用いる他のモノマー成分と、後述する架橋剤の合計量をいう。
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量を全ポリマー成分に対して、30質量%以上とすることにより、本発明の効果を発揮せしめることができ、一方、この含有量が30質量%未満であると、経時安定性が劣ること、所望の徐放性が得られないこととなり、好ましくない。
【0029】
前記機能性粒子分散体を構成するポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の他のモノマー成分の含有量は、用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーと後述する架橋剤との合計量の残部となるものである。
好ましくは、他のモノマー成分の含有量は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、分散
性の点、反応性の点から、全ポリマー成分に対して、0.5~70質量%とすることが望
ましい。
【0030】
本第1実施形態において、上記X群から選ばれる抗菌性成分の(固形分)含有量は、十分な抗菌性性能を得る点、持続的な抗菌効果等が得られる点、安定性などの点から、全ポリマー成分に対して、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、10~50質量%、特に好ましくは、15~40質量%とすることが望ましい。
この抗菌性成分の含有量を1質量%以上とすることにより、十分な抗菌性能、持続的な抗菌効果を発揮せしめることができ、一方、抗菌性成分の含有量が1質量%未満であると、抗菌性能が十分でなく、本発明の効果を発揮できないものとなる。
【0031】
本第1実施形態において、上記好ましい態様、具体的には、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーに、上述のX群から選ばれる抗菌性成分を溶解し、ノニオン系の重合性界面活性剤(種類・量等)を用いて乳化重合することにより、または、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと他のモノマー成分を含む混合モノマーの重合後に上記抗菌性成分を溶解してノニオン系の重合性界面活性剤(種類・量等)を用いて乳化重合することにより、上述の所定のゼータ電位を有する(ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲である)抗菌性を有する機能性粒子が水に分散されている機能性粒子分散体(分散液)が得られる。これらの製造条件で得られる機能性粒子分散体中の機能性粒子は、用いる上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー、抗菌性成分、ノニオン系の重合性界面活性剤などの配合量、重合条件などにより、その製造量は変動するものであり、製造性、作業性、効率性など点から、固形分量で1~50質量%となるように製造することが好ましい。更に好ましくは、固形分量で10~40質量%となるように製造することが好ましい。
【0032】
この抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)は、単独で上記抗菌性成分を用いるものよりも、本発明の機能性粒子分散体とすることにより、抗菌性能の強さと持続性をもちながら、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、安定性に優れる機能性粒子分散体となるものである。特に、長期経時後においても抗菌性成分の抗菌効果を維持乃至良好にすることができる機能性粒子分散体が得られるものとなる。
この機能性粒子分散体(分散液)は、イオンの影響を受けやすい配合系や、水性インクなどの配合系等においても、分散が安定な初期状態を維持できると共に、低刺激性であり、機能性粒子を含む場合であっても、イオンの影響を受けやすい配合系等の設計の自由度が大きく、様々な用途に好適に利用することができるものとなる。
また、本第1実施形態では、抗菌性成分として、油溶性(親油性)の防腐剤成分などを好ましく使用しているため、特にプラスチック容器に防腐剤成分などが付着しやすく、経時的に防腐力を含む抗菌効果が損なわれるという課題に対して、本第1実施形態の(メタ)アクリル酸成分などからなる粒子で抗菌性成分を内包することで、容器壁面への付着を抑制し、長期経時後であっても抗菌効果を維持できるという特有の作用効果を有するものである。
【0033】
また、本第1実施形態を含む本発明において、得られる機能性粒子分散体における機能性粒子の平均粒子径は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、用いる他のモノマー種、含有量、重合の際の重合条件等により変動するものであるが、好ましくは、10~800nm、更に好ましくは、20~300nm、更に好ましくは、30~200nmであることが望ましい。
上記好ましい平均粒子径の範囲とすることにより、更に、保存安定性などに優れたものとなり、後述の各用途に好適な平均粒子の範囲となる機能性粒子を利用することができ、筆記具用水性インクに用いる場合には、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具のペン芯において目詰まりすることなく、更に、保存安定性などに優れたものとなる。
なお、本第1実施形態を含む本発明で規定する「平均粒子径」は、散乱光強度分布によるヒストグラム平均粒子径であり、本発明(後述する実施例を含む)では、粒度分布測定装置〔FPAR1000(大塚電子社製)〕にて、測定した値D50の値である。
本第1実施形態を含む本発明の機能性粒子分散体において、分散体中に含まれる機能性粒子の含有量は、後述する各用途等に応じて、固形分量で0.1~50質量%であることが好ましく、更に好ましくは、1~30質量%であることが望ましい。
この機能性粒子の含有量が固形分量で0.1質量%未満であると、本発明の効果を発揮することができず、一方、50質量%超過では、長期の保存安定性が低下しやすくなるとなるものである。
【0034】
このように構成される本第1実施形態の抗菌性を有する機能性粒子分散体は、安定性と安全性が高く、分散が安定な初期状態を維持できると共に、低刺激性であり、機能性粒子を含む場合であっても、イオンの影響を受けやすい配合系等の設計の自由度が大きく、様々な用途、例えば、医療用具、ベビー用品、介護用品、浴場用品、台所用品、食器、飲料水配管部品、生活衛生用品、家電製品、衣料品、建築資材、農業用資材、自動車用内装部品、文房具、筆記具やインクジェットプリンターなどのインク組成物など、様々な製品に抗菌性を付与するために利用することができる。
具体的なこのように構成される本第1実施形態の抗菌性を有する機能性粒子分散体は、例えば、医療用具、ベビー用品、介護用品、浴場用品、台所用品、食器、飲料水配管部品、生活衛生用品、家電製品、衣料品、建築資材、農業用資材、自動車用内装部品、文房具、筆記具やインクジェットプリンターなどのインク組成物など、様々な製品に抗菌性を付与するために利用することができる。
具体的な用途としては、上記などの他に、例えば、洗濯洗浄剤、柔軟剤、住居用洗剤、食器洗浄剤、硬質表面用洗浄剤等の洗浄剤用途;シャンプー、リンス、化粧水、乳液、クリーム、日焼け止め、ファンデーション、アイメイク製品、ヘアカラー製品、ネイル製品、制汗剤、歯磨き粉等のパーソナルケア用途、塗料、接着剤、建材、樹脂エマルジョン、木材防腐剤、セメント混和剤、ボイラ、冷却設備、排水処理設備、工業用水(製紙工程における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水)等の工業用水処理用途;医療器具、食品添加物、太陽電池モジュールや有機素子デバイス、熱線遮蔽フィルムなどの電子機器用途等に加えて、水生生物(魚類等)への水カビ抑制として水槽及び薬浴用途にも好適に用いることができる。
本発明の機能性粒子分散体は、安定性と安全性が高く、長期経時後において抗菌性成分の抗菌効果に優れると共に、他の配合成分に対して影響を与えることがなく、更に、電荷に繊細な分散液の配合系や、水性インクの配合系等においても、分散が安定な初期状態を維持できる機能性粒子分散体となるため、上述の如く、様々な製品に抗菌性を付与するために利用することができ、特に、洗浄剤用途、パーソナルケア用途、工業用水処理用途、食品添加物、電子機器用途、水生生物(魚類等)への水カビ抑制として水槽及び薬浴用途にも好適に用いることができ、例えば、以下に、筆記具用水性インク組成物に用いた場合を説明する。
【0035】
本第1実施形態の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、上記構成の抗菌性を有する機能性粒子分散体を含有することを特徴とするものであり、この機能性粒子分散体の他、着色剤、水溶性有機溶剤を含有することができる。
インク組成物中の機能性粒子の含有量は、筆記性能を損なうことなく、本発明の効果を発揮せしめる点、保存安定性点から、インク組成物全量に対して、固形分量で0.1~30.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは、1.0~15.0質量%であることが望ましい。
【0036】
用いることができる着色剤としては、水溶性染料、顔料、例えば、無機顔料、有機顔料、プラスチックピグメント、粒子内部に空隙のある中空樹脂粒子は白色顔料として、または、発色性、分散性に優れる染料で染色した樹脂粒子(擬似顔料)、熱変色性顔料、光変色性顔料等も使用できる。
水溶性染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料のいずれも本発明の効果を損なわない範囲で適宜量用いることができる。
これらの着色剤の含有量は、筆記具種などにより変動するものであるが、インク組成物全量に対して、1~30質量%である。
【0037】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジ オール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル1,3-ブタンジオール、2メチルペンタン -2,4-ジオール、3-メチルペンタン-1,3,5トリオール、1,2,3-ヘキサントリオールなどのアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどのグリセロール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルなどのグリコールの低級アルキルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダリジノンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0038】
その他にも、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドなどのアミド類、アセトンなどのケトン類などの水溶性溶剤を混合することもできる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具種により変動するものであり、インク組成物全量に対して、1~40質量%、描線乾燥性を更に向上させる点から、10質量%以下としたインク組成に対して特に有効であり、より好ましくは、3~8質量%とすることが望ましい。
【0039】
本第1実施形態の筆記具用水性インク組成物には、上記機能性粒子分散体、着色剤、水溶性溶剤の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、本発明の効果を損なわない範囲で、分散剤、潤滑剤、pH調整剤、防錆剤、増粘剤、蒸発抑制剤、界面活性剤などを適宜含有することができる。
【0040】
用いることができる分散剤としては、ノニオン、アニオン界面活性剤や水溶性樹脂が用いられる。好ましくは水溶性高分子が用いられる。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
pH調整剤としては、アンモニア、尿素、モノエタノーアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンや、トリポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなとの炭酸やリン酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水和物などが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類などが挙げられる。
【0041】
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、発酵セルロース、結晶セルロース、セルロースナノファイバー(CNF)、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバーなどの多糖類繊維や、アルカリ膨潤型エマルションなどのアルカリ増粘型の増粘剤が挙げられる。
セルロースナノファイバー(CNF)は、速書きや左利きの筆記などの状況においても、かすれやインク溜まりが生じにくく、安定した筆記描線を実現することができる成分となるものである。このCNFを含有した配合系においても、機能性粒子の分散が安定な初期状態を維持でき、また、筆記具用水性インクが不安定な系(イオン系)でも刺激性が少ないため、十分な描線濃度を損なうことなく、インク性能と共に、機能性粒子の分散安定性などの優れた機能を発揮するものとなる。
セルロースナノファイバー(CNF)は、セルロース原料であるパルプ等がナノメートルレベルまで微細化されたものであり、繊維径が2~500nm程度の微細繊維をいう。セルロースナノファイバーは、パルプに機械的な力を加えて微細化することで得られ、あるいは、カルボキシ化セルロース繊維(酸化セルロース繊維ともいう)、カルボキシメチル化セルロース繊維、リン酸エステル化セルロース繊維、亜リン酸エステル化セルロース繊維などの変性セルロース繊維を解繊することによって得ることができる。
用いることができる増粘剤としてのセルロースナノファイバー(CNF)は、上記の製造により得られた酸化セルロース繊維や上記変性セルロース繊維などを用いることができ、また、市販品があれば、それらを用いることができる。例えば、第一工業製薬社製のレオクリスタシリーズ(たとえばレオクリスタI-2SX、C-2SP、I-2AX、I―2SXS等)、スギノマシン社製のBiNFi-sシリーズ(たとえばFMa-10002等)、大王製紙社製のELLEX-S等、中越パルプ工業社製の na noforest-Sなどの少なくとも1種が挙げられる。
これらの増粘剤の量は、筆記具種(ボールペン、マーキングペン、サインペンなど)より、変動するものであるが、インク組成物全量に対して、好ましくは、固形分量で0.1~5.0質量%、更に好ましくは、0.1~3.0質量%とすることが望ましい。
【0042】
用いることができる多糖類繊維としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、HMペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、タラガムなどが挙げられる。
さらに用いることができるアルカリ増粘型の増粘剤として、アルカリ膨潤型エマルションが挙げられ、例えばポリアクリル酸系の増粘剤が挙げられ、市販品を用いることができ、例えば、ローム&ハース社製の「プライマルASE60」、「プライマルTT615」、「プライマルRM5」(以上、商品名)、アルケマ社製の「RHEOTECH 3800」、「RHEOTECH 4800」等が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの市販品があればそれを使用することができる。
蒸発抑制剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、p-キシレングリコール、トリメチロールプロパン、トリエチロールプロパン、デキストリンなどが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、フッ素系、シリコーン系、アセチレングリコール系などが挙げられる。
固着剤としては、ポリアクリル酸、水溶性スチレン-アクリル樹脂、水溶性スチレン・マレイン酸樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性マレイン酸樹脂、水溶性スチレン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、水溶性エステル-アクリル樹脂、エチレン-マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキサイド、水溶性ウレタン樹脂等の分子内に疎水部を持つ水溶性樹脂、また、ポリオレフィン系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、スチレン-ブタジエンエマルジョン、スチレンアクリロニトリルエマルジョンなどの樹脂エマルジョンなどから選ばれる少なくとも1種が挙げられ、これらはそれぞれ1種類以上、計2種類以上の使用が望ましい。
【0043】
本第1実施形態の筆記具用水性インク組成物は、上記機能性粒子分散体、水溶性溶剤、その他の各成分を筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)インクの用途に応じて適宜組み合わせて、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって筆記具用水性インク組成物を調製することができる。
【0044】
また、本第1実施形態の筆記具用水性インク組成物のpH(25℃)は、使用性、安全性、インク自身の安定性、インク収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、更に好ましくは、6~9.5とすることが望ましい。
【0045】
本第1実施形態を含む本発明の筆記具用水性インク組成物は、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン先部を備えたボールペン、マーキングペン等に搭載される。
ボールペンとしては、上記組成の筆記具用水性インク組成物を直径が0.18~2.0
mmのボールを備えたボールペン用インク収容体(リフィール)に収容すると共に、該インク収容体内に収容された水性インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インク組成物に対して比重が小さい物質、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等がインク追従体として収容されるものが挙げられる。
なお、ボールペン、マーキングペンの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に上記構成の筆記具用水性インク組成物を充填したコレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式のボールペン、マーキングペンであってもよいものである。
【0046】
このように構成される本第1実施形態の筆記具用水性インク組成物にあっては、用いる上記特性の抗菌性を有する機能性粒子分散体が筆記具用水性インク組成物中に配合されているため、インク組成物中で抗菌性能の強さと持続性をもちながら、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがないので、その持続効果を長期間に亘り、しかも、これらの粒子は保存安定性、筆記性能を損なわないため、インク設計の自由度を更に高めることができ、ボールペン、マーキングペンなどの筆記具に好適な筆記具用水性インク組成物が得られることとなる。
また、本第1実施形態の筆記具用水性インク組成物に用いる分散体中の上記特性の抗菌性を有する機能性粒子のゼータ電位測定値を所定の範囲としているので、筆記具用インクの増粘剤としてセルロースナノファイバー(CNFの水素結合ネットワークによるゲルなど)などの多糖類繊維を用いた電荷に繊細な水性インクの配合系であっても、機能性粒子の分散が安定な初期状態を維持でき、また、イオン系などの不安定な水性インクの配合系でも刺激性が少ないため、十分な描線濃度を損なうことなく、分散安定性に優れる筆記具用水性インク組成物が得られることとなる。
上記では、本第1実施形態の機能性粒子分散体を筆記具用水性インク組成物に用いた場合について、説明したが、本第1実施形態の機能性粒子分散体は、長期経時後においても抗菌性成分の抗菌効果に優れると共に、安全性が高く、用いる抗菌性成分を選択することにより広い抗菌スペクトル(Antibacterial spectrum)を有するものを使用することができ、他の配合成分、配合物性等に悪影響を及ぼすことがなく、安定性に優れたものとなり、しかも、上記洗浄剤用途、パーソナルケア用途、工業用水処理用途、食品添加物、電子機器用途、水生生物(魚類等)への水カビ抑制として水槽及び薬浴用途に好適な配合割合で実施できるものとなる。
【0047】
(第2実施形態の機能性粒子分散体)
本第2実施形態の機能性粒子分散体は、少なくとも、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、上記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分と、少なくとも1種の香料成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲であることを特徴とするものである。
第2実施形態の機能性粒子分散体は、上記第1実施形態の機能性粒子分散体において、上述の一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、上述のX群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分とを用いると共に、更に、少なくとも1種の香料成分を用いて構成される機能性粒子である点で異なるものであり、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマー種等及びその含有量等、並びに、上記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分種及びその含有量等は、上記第1実施形態の機能性粒子分散体で詳述したものと同様であるので、その説明等を省略する。
【0048】
本第2実施形態に用いる香料成分としては、例えば、テルペン系香料化合物、アルコール類系香料化合物、炭化水素系香料化合物、フェノール類系香料化合物、エステル系香料化合物、カーボネート系香料化合物、アルデヒド系香料化合物、ケトン系香料化合物、アセタール系香料化合物、エーテル系香料化合物、カルボン酸系香料化合物、ラクトン系香料化合物、ニトリル系香料化合物、シッフ塩基系香料化合物、天然精油や天然抽出物等の香料成分の少なくとも1種が挙げられる。
本明細書中において、各香料の「香料化合物」には単一の化合物、あるいは2つ以上の化合物の混合物を意味する。
【0049】
用いることができるテルペン系香料化合物としては、炭素数10のモノテルペンおよびその誘導体(炭素数10以上の化合物を含む。)などが挙げられ、さらには、テルペン系炭化水素、テルペン系アルコール、テルペン系エステルのいずれか1種以上であることが好ましい。ここでモノテルペンとは、2つのイソプレン単位からなる炭素数10からなる香料化合物であり、鎖状(非環式)のものと環を含む環状のものがある。さらに、本発明におけるテルペン系香料は、テルペン系炭化水素、テルペン系アルコール、テルペン系エステル、テルペン系アルデヒドも含むものである。
用いるテルペン系香料は、イソプレンを構成単位とする香料化合物やその誘導体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オシメン、ミルセン、コスメン、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール等の鎖状モノテルペン、リモネン、メンタン、テルピネン、フェランドレン、テルピノレン、シメン等の単環式モノテルペン、α-ピネン、β-ピネン、カンフェン、カレン、サビネン、ツジェン等の二環式モノテルペンが挙げられる。
これらのテルペン系香料の中で、リモネン、ピネン、ミルセン、カレン、テルピネン、カンフェン等のテルペン系炭化水素、ゲラニオール、シトロネロール、リナロール、ネロール、ターピネオール等のテルペン系アルコール、酢酸リナリル、酢酸テルピニル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸シトロネリル、酢酸イソボロニル等のテルペン系エステル、シトロネラール、シトラール、ネラール、ペリラアルデヒド等のテルペン系アルデヒドが好ましい。
【0050】
アルコール系香料化合物としては、脂肪族アルコール、テルペン系アルコール、芳香族アルコール、その他のアルコール等が挙げられる。これらの中でも脂肪族アルコールが好ましい。
芳香族アルコール系香料化合物としては、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルエチルジメチルカルビノール、フェニルヘキサノール等が挙げられる。
脂肪族アルコール系香料化合物としては、シス-3-ヘキセノール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)-3-ヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、エチルノルボニルシクロヘキサノール、4-メチル-3-デセン-5-オール、イソボルニルシクロヘキサノールが挙げられる。
その他のアルコール系香料化合物としては、ジプロピレングリコール等のグリコール類、4-メチル-2-(2-メチルプロピル)テトラヒドロ-2H-4-ピラノール等が挙げられる。
フェノール系香料化合物としては、グアヤコール、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、イソオイゲノール、チモール、パラクレゾール、バニリン、エチルバニリン等が挙げられる。
【0051】
エステル系香料化合物としては、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、その他のカルボン酸エステルが挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステルを形成する脂肪族カルボン酸としては、炭素数1~18の直鎖及び分岐鎖カルボン酸が挙げられるが、中でもギ酸、酢酸、プロピオン酸等の炭素数1~6のカルボン酸、特に酢酸が好ましい。芳香族カルボン酸エステルを形成する芳香族カルボン酸としては、安息香酸、アニス酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸、アントラニル酸等が挙げられる。脂肪族及び芳香族エステルを形成するアルコールとしては、炭素数1~5の直鎖及び分岐鎖脂肪族アルコール及び上記の香料成分アルコール類が挙げられる。
ギ酸エステルとしては、リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート等が挙げられる。
酢酸エステルとしては、エチルアセテート、イソアミルアセテート(酢酸イソペンチル)、ベンジルアセテート、ヘキシルアセテート、シス-3-ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、アセチルオイゲノール、アセチルイソオイゲノール、o-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェニルエチルフェニルアセテート、3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、パラクレジルフェニルアセテート等が挙げられる。
プロピオン酸エステルとしては、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2-シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、スチラリルプロピオネート等が挙げられる。
酪酸エステルとしては、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn-ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート等が挙げられる。吉草酸エステルとしては、メチルバレレート、エチルバレレート、ブチルバレレート、アミルバレレート、ベンジルバレレート、フェニルエチルバレレート等;ヘキサン酸エステルとしては、メチルヘキサノエート、エチルヘキサノエート、アリルヘキサノエート、リナリルヘキサノエート、シトロネリルヘキサノエート等が挙げられる。ヘプタン酸エステルとしては、メチルヘプタノエート、アリルヘプタノエート等が挙げられる。ノネン酸エステルとしては、メチル2-ノネノエート、エチル2-ノネノエート、エチル3-ノネノエート等が挙げられる。
【0052】
安息香酸エステルとしては、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、3,6-ジメチルベンゾエート等が挙げられる。桂皮酸エステルとしては、メチルシンナメート、ベンジルシンナメート等が挙げられる。サリチル酸エステルとしては、メチルサリシレート、n-ヘキシルサリシレート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、シクロヘキシルサリシレート、ベンジルサリシレート等が挙げられる。さらに、ブラシル酸エステルとしては、エチレンブラシレート等が挙げられる。チグリン酸エステルとしては、ゲラニルチグレート、1-ヘキシルチグレート、シス-3-ヘキセニルチグレート等が挙げられる。ジャスモン酸エステルとしては、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート等が挙げられる。グリシド酸エステルとしては、メチル2,4-ジヒドロキシ-エチルメチルフェニルグリシデート、4-メチルフェニルエチルグリシデート等が挙げられる。アンスラニル酸エステルとしては、メチルアンスラニレート、エチルアンスラニレート、ジメチルアンスラニレート等が挙げられる。グリコール酸エステルとしては、アリルシクロヘキシルグリコレート等が挙げられる。さらにその他のエステルとしては、ジヒドロシクロゲラン酸エチル、エチル-2-シクロヘキシルプロピオネート、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン-2-カルボキシレート、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート等が挙げられる。
【0053】
カーボネート系香料化合物としては、シスー3-ヘキセニルメチルカーボネート、メチル-シクロオクチルカーボネート、エチル-2-t-ブチルシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。
アルデヒド系香料化合物としては、n-オクタナール、n-ノナナール、n-デカナ-ル、n-ドデカナ-ル、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、ジメチル-3-シクロヘキセニル-1-カルボキシアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、ヒドロキシマイラックアルデヒド、2-シクロヘキシルプロパナール、p-tert-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、3-(o-(およびp-)エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロピオンアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、アルファ-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-5-プロパナール、2-メチル-3-(パラメトキシフェニル)プロパナール等が挙げられる。
【0054】
ケトン系香料化合物としては、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、3-オクタノン、ヘキシルシクロペンタノン、ジヒドロジャスモン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2-(2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピル)シクロペンタノン、イオノン、β-イオノン、メチルイオノン、メチルイオノン-G、γ-メチルイオノン、ダマスコン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキシル)-trans-2-ブタノン、ダマセノン、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、イロン、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4H-インデン-4-オン、1-(1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-エタン-1-オン、7-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピン-3-オン、カルボン、メントン、アセチルセドレン、イソロンギフォラノン、ヌートカトン、ベンジルアセトン、ラズベリーケトン、ベンゾフェノン、6-アセチル-1,1,2,4,4,7-ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン、β-メチルナフチルケトン、エチルマルトール、カンファー、ムスコン、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、シベトン、8-シクロヘキサデセノン、メチルノニルケトン、cis-ジャスモン、パラアミルシクロヘキサノン(4-ペンチルシクロヘキサノン)等が挙げられる。
【0055】
アセタール類としては、アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールアセタール等が挙げられる。
エーテル類としては、エチルリナロール、セドリルメチルエーテル、エストラゴール、アネトール、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、リモネンオキサイド、ローズオキサイド、ネロールオキサイド、1,8-シネオール、ローズフラン、[3aR-(3aα,5aβ,9aα,9bβ)]ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエチルエーテル、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール等が挙げられる。
【0056】
カルボン酸系香料化合物としては、安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、ヒドロ桂皮酸、酪酸、2-ヘキセン酸等が挙げられる。
ラクトン系香料化合物としては、アンブレットリド、γ-デカラクトン、δ-デカラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-ヘキサラクトン、γ-ジャスモラクトン、ウイスキーラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、11-オキサヘキサデカノリド、ブチリデンフタリド等が挙げられる。
ニトリル系香料化合物としては、トリデセン-2-ニトリル、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、ドデカンニトリル等が挙げられる。
シッフ塩基系香料化合物としては、オーランチオール、リガントラール等が挙げられる。
天然精油や天然抽出物としては、オレンジ、レモン、ライム、ベルガモット、バニラ、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ロックローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、ベチバー、パチュリ、レモングラス、ラブダナム、グレープフルーツ、エレミオイル等が挙げられる。
【0057】
これらの香料成分の中で、更に好ましくは、残香強度が強く、内包する抗菌性成分に悪影響を及ぼすことがないもの、また、製造のしやすさなどから、下記Y群から選ばれる少なくとも1種が望ましい。
Y群:ボルネオール、オイゲノール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、d-リモネン、シトラールR、ゲラニオール、バニリン、2-フェニルエタノール、γ-デカラクトン、リナロール、L-ペリラアルデヒド、ラズベリーケトン、DL-カンフル、L-カルビルアセテート、アリオフィレン、L-シトロネロール、D-ジヒドロカルベオール、L-ジヒドロカルベオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、リナロールオキサイド、ミルテニルアセテート、アリルイソチオシアネート、L-カルベオール、カリオフィレンオキサイド、1,4-シネオール、p-サイメン、D-ジヒドロカルボン、L-ジヒドロカルボン、D-ジヒドロカルビルアセテート、L-ジヒドロカルビルアセテート、エレメン、イソボルニルアセテート、L-リモネン、D-リモネンオキサイド、L-リモネンオキサイド、リナロールオキサイド、p―メンタン、L-メントール、メントン-90、ミルテナール、ミルテノール、3-オクチルアセテート、L-ペリリルアルコール、L-ペリリルアセテート、α-ピネン、β-ピネン、D-プレゴン、α-テルピネン、ターピネオールC、α-ターピネオール、L-α―ターピネオール、ターピネオール-4、ターピノーレン、α-ターピニルアセテート、ベルベノール、ベルベノン、3-カレン、カレンオキサイド、ヘキシルアセテート、ネロール、サフラン酸エチル、酢酸オイゲニル、チャビコール、エストラゴール、アネトール、マンザネート、γ-テルピネン、シメン、ミルセン、フェランドレン、ファルネセン、ツジェン
上記Y群の香料成分には、香料的に許容される溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、フレグランス産業において、嗅覚的に強力な成分を希釈し、固体成分を溶解し、液体として取り扱うことによって固体成分の取り扱いを容易にするために、または単に単位質量あたりの全体のフレグランスの費用を低減するために希釈剤として慣習的に使用される。典型的には、適切な溶媒はプロピレングリコールジプロピレングリコール、及びブチレングリコールを始めとするグリコール類などの水溶性溶媒や、水と混和しない溶媒、例えば水溶性が10g/L未満の溶媒である。香料的に許容される溶媒の例は、水不溶性炭水化物溶媒(例えば、ExxonMobilから得られるIsopar(登録商標)ファミリー)、安息香酸ベンジル、ミリスチン酸イソプロピル、サリチル酸ベンジル、アジピン酸ジアルキル、クエン酸エステル(例えば、クエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチル)及びフタル酸ジエチル、水添ロジンメチルエステルである。存在する場合、水混和性溶媒(例えば、10g/100mLより大きい水溶性の溶媒)、例えば、プロピレングリコールジプロピレングリコール、及びブチレングリコールは、可能な限り低い濃度で添加すべきである。
【0058】
上記Y群の中で、特に好ましい香料成分としては、経時安定性の点、製造上の操作性の点、安全性の点から、ボルネオール、オイゲノール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、D-リモネン、シトラール、ゲラニオール、バニリン、2-フェニルエタノール、γ-デカラクトン、リナロール、L-ペリラアルデヒド、DL-カンフル、L-カルビルアセテート、アリオフィレン、L-シトロネロール、リナロールオキサイド、ミルテニルアセテート、アリルイソチオシアネート、1,4-シネオール、イソボルニルアセテート、D-リモネン、リナロールオキサイド、L-メントール、3-オクチルアセテート、L-ペリリルアルコール、L-ペリリルアセテート、α-ピネン、β-ピネン、α-テルピネン、ターピネオール-4、ネロール、サフラン酸エチル、酢酸オイゲニル、チャビコール、エストラゴール、アネトール、マンザネート、γ-テルピネン、シメン、ミルセン、フェランドレン、ファルネセン、ツジェンが望ましく、芳香性粒子への内包のしやすさから、水への溶解度が10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下であることが望ましい。
【0059】
上記Y群の香料成分は、天然香料又は合成香料のいずれであってもよく、これらが混合されたものでもよい。さらに上記Y群のほか、例えば「合成香料 化学と商品知識」(印藤元一著 化学工業日報社)に記載の香料成分を、本発明の効果を妨げない範囲で含むこともできる。
【0060】
第2実施形態の機能性粒子分散体は、少なくとも、第1実施形態で上述した一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、第1実施形態で上述したX群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分と、上記少なくとも1種の香料成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が第1実施形態の機能性粒子と同様に、-15~+15mVの範囲、好ましくは、-10~+10mVの範囲とするものである。
【0061】
上記機能性粒子のゼータ電位測定値を-15~+15mVの範囲とすることにより、イオンの影響を受けやすい配合系や、増粘剤としてセルロースナノファイバー(CNFの水素結合ネットワークによるゲルなど)などの多糖類繊維を用いた電荷に繊細な水性インクの配合系や、アルカリ膨潤型エマルション等のアルカリ増粘型の増粘剤を使用しても、機能性粒子の分散が安定な初期状態を維持でき、分散安定性や表面張力の安定性に優れると共に、低刺激性であり、配合設計の自由度が大きいため、様々な用途に利用することができる機能性粒子分散体が得られることとなる。
上記ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲外であると、本第2実施形態の効果を発揮することができず、ゼータ電位測定値が-15mV未満であると、配合系の経時的な増減が大きくなり、分散不良となり、一方、ゼータ電位測定値が+15mV超過であると、同じく配合系の経時的な増減が大きくなり、分散不良となるため、好ましくない。
【0062】
上記ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲とするためには、例えば、上記機能性粒子は、上述の第1実施形態と同様に、乳化重合等により得られるものであるが、乳化重合の際に用いる重合性界面活性剤として、ノニオン系の重合性界面活性剤(種類・量等)を用いることにより、所定のゼータ電位を有する機能性粒子分散体が得られることとなる。
第2実施形態の機能性粒子分散体の製造は、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(各単独又は2種以上、以下同様)に、または、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとこれ以外の疎水性ビニルモノマーなどを含む混合モノマーに、上記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分と、上記少なくとも1種の香料成分とを溶解し、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などを重合開始剤として、また還元剤を更に併用した重合開始剤とし、重合性界面活性剤としては、ノニオン系の重合性界面活性剤(種類・好適な量)を用いることにより、目的の上記ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲内となる機能性粒子の分散体が得られることとなる。
【0063】
用いることができるノニオン系の重合性界面活性剤やその使用量は、上記第1実施形態と同様に、ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲内となる量であればよく、用いる上記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分などにより変動するものであるが、上記モノマー全量に対して、0.1~50質量%、好ましくは、5~50質量%が望ましい。
更に、本第2実施形態においても、本第2実施形態の効果を損なわない範囲で、上記第1実施形態と同様に、
トリアリルイソシアヌレート、イソシアヌル酸トリアリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ジトリメチロールプロパンアクリレート、ジペンタエリスリトールアクリレート、トリペンタエリスリトールアクリレート、メトキシ化ビスフェノールAメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ペンタエリスリトールメタクリレート、ジトリメチロールプロパンメタクリレート、ジペンタエリスリトールメタクリレート、トリペンタエリスリトールメタクリレート、エトキシ化ポリグリセリンメタクリレート、アリルメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレートなどの架橋剤や、必要に応じて、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)-アルキルエーテル硫酸アンモニウム、エーテルサルフェート、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリアクリル酸アンモニウム、スチレン-マレイン酸コポリマーアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート20)、パルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)などの重合性界面活性剤(乳化剤)を用いて乳化重合することなどにより製造することができ、機能性粒子分散体の分散液として製造された後、乾燥などにより、機能性粒子分散体とすることができる。
上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤の含有量は、上記モノマー全量に対して、0~50質量%、好ましくは、0.1~25質量%が望ましい。
上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤を用いると、機能性粒子分散体の耐熱性、機械的特性、耐加水分解性、耐候性が向上できるので好ましい。
【0064】
本第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーなどに、更に、ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーなどを適宜量混合して乳化重合を行ってもよい。このジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーを更に、混合して乳化重合したものでは、分散液中の水分が揮発したとしても安定性が損なわれにくく、更に安定性に優れた機能性粒子分散体が得られるものとなる。
用いることができるジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーには、ジシクロペンタニルアクリレートモノマー、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートモノマー、ジシクロペンテニルメタクリレートを含むものである。
また、本第2実施形態において、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー、これ以外の上記疎水性ビニルモノマーなど、上記ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーの他に、エポキシ基、ヒドロキシメチルアミド基、イソシアネート基などの反応性架橋基を有するモノマーや2つ以上のビニル基を有する多官能性モノマーを適宜量配合して架橋してもよい。
【0065】
本第2実施形態において、前記機能性粒子分散体を構成するポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸エステルルモノマーの含有量は、機能性粒子分散体を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であることが必要であり、好ましくは、30~95質量%、更に好ましくは、30~70質量%であることが望ましい。
なお、本第2実施形態において、「全ポリマー成分」とは、機能性粒子分散体を構成する重合性成分をいい、具体的には、用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、用いる他のモノマー成分と、後述する架橋剤の合計量をいう。
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量を全ポリマー成分に対して、30質量%以上とすることにより、本発明の効果を発揮せしめることができ、一方、この含有量が30質量%未満であると、経時安定性が劣ることとなり、好ましくない。
【0066】
前記機能性粒子分散体を構成するポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の他のモノマー成分の含有量は、用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーと後述する架橋剤との合計量の残部となるものである。
好ましくは、他のモノマー成分の含有量は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、分散
性の点、反応性の点から、全ポリマー成分に対して、0.5~70質量%とすることが望
ましい。
【0067】
本第2実施形態において、上記抗菌性成分の(固形分)含有量は、十分な抗菌性性能を得る点、持続的な抗菌効果等が得られる点、安定性などの点から、全ポリマー成分に対して、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、10~50質量%、特に好ましくは、15~40質量%とすることが望ましい。
この抗菌性成分の含有量を1質量%以上とすることにより、十分な抗菌性能、持続的な抗菌効果を発揮せしめることができ、一方、抗菌性成分の含有量が1質量%未満であると、抗菌性能が十分でなく、本発明の効果を発揮できないものとなる。
また、本第2実施形態おいて、上記香料成分の(固形分)含有量は、十分な芳香性能を得る点、持続的な残香効果が得られる点、安定性などの点から、全ポリマー成分に対して、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、10~50質量%、特に好ましくは、15~40質量%とすることが望ましい。
この香料成分の含有量を1質量%以上とすることにより、十分な芳香性能、持続的な残香効果を発揮せしめることができ、一方、芳香成分の含有量が1質量%未満であると、芳香性能が十分でなく、本第2実施形態発明の効果を発揮できないものとなる。
【0068】
本第2実施形態において、上記好ましい態様、具体的には、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーに、上述のX群から選ばれる抗菌性成分と、少なくとも1種の香料成分とを溶解し、ノニオン系の重合性界面活性剤(種類・量等)を用いて乳化重合することにより、または、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと他のモノマー成分を含む混合モノマーの重合後に上記抗菌性成分と香料成分とを溶解してノニオン系の重合性界面活性剤(種類・量等)を用いて乳化重合することにより、所定のゼータ電位を有する(ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲である)抗菌性と芳香性能とを有する機能性粒子が水に分散されている機能性粒子分散体(分散液)が得られる。これらの製造条件で得られる機能性粒子分散体中の抗菌性と芳香性能を有する機能性粒子は、用いる上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー、抗菌性成分、香料成分、ノニオン系の重合性界面活性剤などの配合量、重合条件などにより、その製造量は変動するものであり、製造性、作業性、効率性など点から、固形分量で1~50質量%となるように製造することが好ましい。更に好ましくは、固形分量で10~40質量%となるように製造することが好ましい。
【0069】
この抗菌性と芳香性能を有する機能性粒子分散体(分散液)は、単独で上記抗菌性成分や香料成分を用いるものよりも、本第2実施形態の機能性粒子分散体とすることにより、抗菌性能の強さと芳香性能とを持続性をもちながら、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、安定性に優れる機能性粒子分散体となるものである。特に、長期経時後においても抗菌性成分の抗菌効果と芳香性能を維持乃至良好にすることができる機能性粒子分散体が得られるものとなる。
この機能性粒子分散体(分散液)は、イオンの影響を受けやすい配合系や、水性インクなどの配合系等においても、分散が安定な初期状態を維持できると共に、分散安定性や表面張力の安定性に優れると共に、低刺激性であり、配合設計の自由度が大きくなるため、様々な用途に利用することができる機能性粒子分散体が得られることとなる。
また、本第2実施形態では、抗菌性成分として、油溶性(親油性)の防腐剤成分などを好ましく使用しているため、特にプラスチック容器に防腐剤成分などが付着しやすく、経時的に防腐力を含む抗菌効果が損なわれるという課題に対して、本第2実施形態の(メタ)アクリル酸成分などからなる粒子で抗菌性成分と香料成分とを内包することで、容器壁面への付着を抑制し、長期経時後であっても抗菌効果と芳香性能を維持できるという特有の作用効果を有するものである。
【0070】
また、本第2実施形態において、得られる機能性粒子分散体における機能性粒子の平均粒子径は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、用いる他のモノマー種、含有量、重合の際の重合条件等により変動するものであるが、上記第1実施形態と同様に、好ましくは、10~800nm、更に好ましくは、20~300nm、更に好ましくは、30~200nmであることが望ましい。
上記好ましい平均粒子径の範囲とすることにより、更に、保存安定性などに優れたものとなり、後述の各用途に好適な平均粒子の範囲となる機能性粒子を利用することができ、筆記具用水性インクに用いる場合には、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具のペン芯において目詰まりすることなく、更に、保存安定性などに優れたものとなる。
【0071】
本第2実施形態の機能性粒子分散体において、分散体中に含まれる機能性粒子の含有量は、後述する各用途等に応じて、固形分量で0.1~50質量%であることが好ましく、更に好ましくは、1~30質量%であることが望ましい。
この機能性粒子の含有量が固形分量で0.1質量%未満であると、本発明の効果を発揮することができず、一方、50質量%超過では、長期の保存安定性が低下しやすくなるとなるものである。
【0072】
このように構成される本第2実施形態の抗菌性と芳香性能を有する機能性粒子分散体は、安定性と安全性が高く、分散が安定な初期状態を維持できると共に、分散安定性や表面張力の安定性に優れると共に、低刺激性であり、配合設計の自由度が大きく、様々な用途、例えば、医療用具、ベビー用品、介護用品、浴場用品、台所用品、食器、飲料水配管部品、生活衛生用品、家電製品、衣料品、建築資材、農業用資材、自動車用内装部品、文房具、筆記具やインクジェットプリンターなどのインク組成物など、様々な製品に抗菌性を付与するために利用することができる。
具体的なこのように構成される本第2実施形態の抗菌性と芳香性能を有する機能性粒子分散体は、例えば、医療用具、ベビー用品、介護用品、浴場用品、台所用品、食器、飲料水配管部品、生活衛生用品、家電製品、衣料品、建築資材、農業用資材、自動車用内装部品、文房具、筆記具やインクジェットプリンターなどのインク組成物など、様々な製品に抗菌性と芳香性能とを付与するために利用することができる。
具体的な用途としては、上記などの他に、例えば、洗濯洗浄剤、柔軟剤、住居用洗剤、食器洗浄剤、硬質表面用洗浄剤等の洗浄剤用途;シャンプー、リンス、化粧水、乳液、クリーム、日焼け止め、ファンデーション、アイメイク製品、ヘアカラー製品、ネイル製品、制汗剤、歯磨き粉等のパーソナルケア用途、塗料、接着剤、建材、樹脂エマルジョン、木材防腐剤、セメント混和剤、ボイラ、冷却設備、排水処理設備、工業用水(製紙工程における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水)等の工業用水処理用途;医療器具、食品添加物、太陽電池モジュールや有機素子デバイス、熱線遮蔽フィルムなどの電子機器用途等に加えて、水生生物(魚類等)への水カビ抑制として水槽及び薬浴用途にも好適に用いることができる。
本第2実施形態の機能性粒子分散体は、安定性と安全性が高く、長期経時後において抗菌性成分の抗菌効果と芳香性能に優れると共に、他の配合成分に対して影響を与えることがなく、更に、電荷に繊細な分散液の配合系や、水性インクの配合系等においても、分散が安定な初期状態を維持でき、分散安定性や表面張力の安定性に優れる機能性粒子分散体となるため、上述の如く、様々な製品に抗菌性を付与するために利用することができ、特に、洗浄剤用途、パーソナルケア用途、工業用水処理用途、食品添加物、電子機器用途、水生生物(魚類等)への水カビ抑制として水槽及び薬浴用途にも好適に用いることができ、例えば、以下に、筆記具用水性インク組成物に用いた場合を説明する。
【0073】
本第2実施形態の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、上記構成の抗菌性と芳香性能とを有する機能性粒子分散体を含有することを特徴とするものであり、この機能性粒子分散体の他、着色剤、水溶性有機溶剤を含有することができる。
インク組成物中の機能性粒子の含有量は、筆記性能を損なうことなく、本第2実施形態の効果を発揮せしめる点、保存安定性点から、インク組成物全量に対して、固形分量で0.1~30.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは、1.0~15.0質量%であることが望ましい。
【0074】
用いることができる着色剤としては、上述の第1実施形態と同様に、水溶性染料、顔料、例えば、無機顔料、有機顔料、プラスチックピグメント、粒子内部に空隙のある中空樹脂粒子は白色顔料として、または、発色性、分散性に優れる染料で染色した樹脂粒子(擬似顔料)、熱変色性顔料、光変色性顔料等も使用でき、その含有量も、筆記具種などにより変動するものであるが、インク組成物全量に対して、1~30質量%である。
用いることができる水溶性有機溶剤、その含有量も、上述の第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0075】
本第2実施形態の筆記具用水性インク組成物には、上記機能性粒子分散体、着色剤、水溶性溶剤の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、本第2実施形態の効果を損なわない範囲で、上述の第1実施形態と同様に、分散剤、潤滑剤、pH調整剤、防錆剤、増粘剤、蒸発抑制剤、界面活性剤などを適宜含有することができる。これらの各成分の説明も上述の第1実施形態と同様であるので、各成分の説明を省略する。
【0076】
本第2実施形態の筆記具用水性インク組成物は、上記機能性粒子分散体、水溶性溶剤、その他の各成分を筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)インクの用途に応じて適宜組み合わせて、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって筆記具用水性インク組成物を調製することができる。
また、本第2実施形態の筆記具用水性インク組成物のpH(25℃)は、上述の第1実施形態と同様に、使用性、安全性、インク自身の安定性、インク収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、更に好ましくは、6~9.5とすることが望ましい。
【0077】
本第2実施形態の筆記具用水性インク組成物は、上述の第1実施形態と同様に、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン先部を備えたボールペン、マーキングペン等に搭載される。ボールペン、マーキングペンの構造は、上述の第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
このように構成される本第2実施形態の筆記具用水性インク組成物にあっては、用いる上記特性の抗菌性と芳香性能を有する機能性粒子分散体が筆記具用水性インク組成物中に配合されているため、インク組成物中で抗菌性能の強さと芳香性能と、これらの持続性をもちながら、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、その各持続効果を長期間に亘り、しかも、これらの粒子は保存安定性、筆記性能を損なわないため、インク設計の自由度を更に高めることができ、ボールペン、マーキングペンなどの筆記具に好適な筆記具用水性インク組成物が得られることとなる。
また、本第2実施形態の筆記具用水性インク組成物に用いる分散体中の上記特性の抗菌性と芳香性能を有する機能性粒子のゼータ電位測定値を所定の範囲としているので、筆記具用インクの増粘剤としてセルロースナノファイバー(CNFの水素結合ネットワークによるゲルなど)などの多糖類繊維を用いた電荷に繊細な水性インクの配合系であっても、機能性粒子の分散が安定な初期状態を維持でき、また、イオン系などの不安定な水性インクの配合系でも刺激性が少ないため、十分な描線濃度を損なうことなく、分散安定性に優れる筆記具用水性インク組成物が得られることとなる。
上記では、本第2実施形態の機能性粒子分散体を筆記具用水性インク組成物に用いた場合について、説明したが、本第2実施形態の機能性粒子分散体は、長期経時後においても抗菌性成分の抗菌効果と芳香性能に優れると共に、安全性が高く、用いる抗菌性成分を選択することにより広い抗菌スペクトル(Antibacterial spectrum)を有するものを使用することができ、他の配合成分、配合物性等に悪影響を及ぼすことがなく、安定性に優れたものとなり、しかも、上記洗浄剤用途、パーソナルケア用途、工業用水処理用途、食品添加物、電子機器用途、水生生物(魚類等)への水カビ抑制として水槽及び薬浴用途に好適な配合割合で実施できるものとなる。
【0079】
(第3実施形態の機能性粒子分散体)
本第3実施形態の機能性粒子分散体は、少なくとも、上述の一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、下記Z群から選ばれる少なくとも1種の還元性成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲であることを特徴とするものである。
Z群:ポリフェノール類、銅クロロフィル、フラボノイド類、アントシアニジン類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール
本第3実施形態の機能性粒子分散体は、上記第1実施形態の機能性粒子分散体において、上述の一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーに、抗菌性成分に代えて、上記Z群から選ばれる少なくとも1種の還元性成分とで構成される機能性粒子である点で異なるものであり、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマー種等及びその含有量等は、上記第1実形態の機能性粒子分散体で詳述したものと同様であるので、その説明等を省略する。
【0080】
本第3実施形態に用いる還元性成分は、酸素に対する還元性能(酸素吸収能)を有するものであり、Z群:ポリフェノール類、銅クロロフィル、フラボノイド類、アントシアニジン類、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
用いることができるポリフェノール類は、複数のヒドロキシ基を有するフェノール性分子を有するものである。用いることができるポリフェノール類、フラボノイド類、アントシアニジン類としては、例えば、カテキン(エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなど)、タンニン酸、タンニン、クロロゲン酸、カフェイン酸、ネオクロロゲン酸、シアニジン、プロアントシアニジン、テアルビジン、ルチン、フラボノイド(ケルシトリン、アントシアニン、フラバノン、フラバノール、フラボノール、イソフラボンなど)、フェルラ酸、ショウガオール、アントシアニジン類(ペラルゴジニン、シアニジン、デルフィニジン、ペオニジン、マルビジン、ペチュニジン)、フラボン、カルコン類(ナリンゲニンカルコンなど)、キサントフィル、カルノシン酸、エリオシトリン、ノビレチン、タンジェレチン、マグノロール、ホノキオール、エラグ酸、リグナン、クルクミン、クマリン、カテコール、プロシアニジン、テアフラビン、ロズマリン酸、キサントン、ケルセチン、レスベラトロール、没食子酸、没食子酸プロピル、フロロタンニン、ピセアタンノール〔5-(ジヒドロキシフェニルエテニル)レゾルシン〕(製品名「パセノールPA」)、レスベラトロール(3,5,4'-トリヒドロキシ-trans-スチルベン)、などが挙げられる。
【0081】
好ましい還元性成分としては、還元性の強さの点、安全性の点から、カテキン、タンニン、クロロゲン酸、ピセアタンノール、銅クロロフィル、フェルラ酸、クルクミン、ショウガオール、ルチン、アントシアニン、イソフラボン、アントシアニジン類(ペラルゴジニン、シアニジン、デルフィニジン、ペオニジン、マルビジン、ペチュニジン)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)であり、更に好ましくは、クロロゲン酸、タンニン、カテキン、フェルラ酸、ピセアタンノール、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)である。
【0082】
本第3実施形態の機能性粒子分散体は、少なくとも、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、上記Z群から選ばれる少なくとも1種の還元性成分とで構成される機能性粒子が水に分散されていると共に、該機能性粒子のゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲、好ましくは、-10~+10mVの範囲とするものである。
上記機能性粒子のゼータ電位測定値を-15~+15mVの範囲とすることにより、イオンの影響を受けやすい配合系や、増粘剤として電荷に繊細なセルロースナノファイバー(CNFの水素結合ネットワークによるゲルなど)などの多糖類繊維や、アルカリ膨潤型エマルション等のアルカリ増粘型の増粘剤を使用しても、還元性を有する機能性粒子の分散が安定な初期状態を維持でき、低刺激性であり、配合設計の自由度が大きいため、様々な用途に利用することができる機能性粒子分散体が得られることとなる。
上記ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲外であると、本発明の効果を発揮することができず、ゼータ電位測定値が-15mV未満であると、配合系の経時的な増減が大きくなり、分散不良となり、一方、ゼータ電位測定値が+15mV超過であると、同じく配合系の経時的な増減が大きくなり、分散不良となるため、好ましくない。
【0083】
上記ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲とするためには、例えば、上記還元性を有する機能性粒子は、乳化重合等により得られるものであるが、乳化重合の際に用いる重合性界面活性剤として、ノニオン系の重合性界面活性剤(種類・量等)を用いることにより、所定のゼータ電位を有する還元性を有する機能性粒子分散体が得られることとなる。
本第3実施形態の機能性粒子分散体の製造は、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(各単独又は2種以上、以下同様)に、または、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとこれ以外の疎水性ビニルモノマーなどを含む混合モノマーに、上記Z群から選ばれる少なくとも1種の還元性成分を溶解し、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などを重合開始剤として、また還元剤を更に併用した重合開始剤とし、重合性界面活性剤としては、ノニオン系の重合性界面活性剤(種類・好適な量)を用いることにより、目的の上記ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲内となる還元性を有する機能性粒子の分散体が得られることとなる。
【0084】
用いることができるノニオン系の重合性界面活性剤やその使用量は、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様に、ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲内となる量であればよく、用いる上記X群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分などにより変動するものであるが、上記モノマー全量に対して、0.1~50質量%、好ましくは、5~50質量%が望ましい。
更に、本第3実施形態においても、本第3実施形態の効果を損なわない範囲で、上記第1実施形態等と同様に、トリアリルイソシアヌレート、イソシアヌル酸トリアリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ジトリメチロールプロパンアクリレート、ジペンタエリスリトールアクリレート、トリペンタエリスリトールアクリレート、メトキシ化ビスフェノールAメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ペンタエリスリトールメタクリレート、ジトリメチロールプロパンメタクリレート、ジペンタエリスリトールメタクリレート、トリペンタエリスリトールメタクリレート、エトキシ化ポリグリセリンメタクリレート、アリルメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレートなどの架橋剤や、必要に応じて、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)-アルキルエーテル硫酸アンモニウム、エーテルサルフェート、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリアクリル酸アンモニウム、スチレン-マレイン酸コポリマーアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート20)、パルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)などの重合性界面活性剤(乳化剤)を用いて乳化重合することなどにより製造することができ、機能性粒子分散体の分散液として製造された後、乾燥などにより、機能性粒子分散体とすることができる。
上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤の含有量は、上記モノマー全量に対して、0~50質量%、好ましくは、0.1~25質量%が望ましい。
上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤を用いると、機能性粒子分散体の耐熱性、機械的特性、耐加水分解性、耐候性が向上できるので好ましい。
【0085】
本第3実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーなどに、更に、ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーなどを適宜量混合して乳化重合を行ってもよい。このジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーを更に、混合して乳化重合したものでは、分散液中の水分が揮発したとしても安定性が損なわれにくく、更に安定性に優れた機能性粒子分散体が得られるものとなる。
用いることができるジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーには、ジシクロペンタニルアクリレートモノマー、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートモノマー、ジシクロペンテニルメタクリレートを含むものである。
また、本第3実施形態において、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー、これ以外の上記疎水性ビニルモノマーなど、上記ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーの他に、エポキシ基、ヒドロキシメチルアミド基、イソシアネート基などの反応性架橋基を有するモノマーや2つ以上のビニル基を有する多官能性モノマーを適宜量配合して架橋してもよい。
【0086】
本第3実施形態において、前記機能性粒子分散体を構成するポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸エステルルモノマーの含有量は、機能性粒子分散体を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であることが必要であり、好ましくは、30~95質量%、更に好ましくは、30~70質量%であることが望ましい。
なお、本第3実施形態において、「全ポリマー成分」とは、機能性粒子分散体を構成する重合性成分をいい、具体的には、用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、用いる他のモノマー成分と、後述する架橋剤の合計量をいう。
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量を全ポリマー成分に対して、30質量%以上とすることにより、本発明の効果を発揮せしめることができ、一方、この含有量が30質量%未満であると、経時安定性が劣ることとなり、好ましくない。
【0087】
前記機能性粒子分散体を構成するポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の他のモノマー成分の含有量は、用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーと後述する架橋剤との合計量の残部となるものである。
好ましくは、他のモノマー成分の含有量は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、分散
性の点、反応性の点から、全ポリマー成分に対して、0.5~70質量%とすることが望
ましい。
【0088】
本第3実施形態において、上記還元性成分の(固形分)含有量は、十分な還元性能を得る点、持続的な還元効果等が得られる点、安定性などの点から、全ポリマー成分に対して、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、10~50質量%、特に好ましくは、15~40質量%とすることが望ましい。
この還元性成分の含有量を1質量%以上とすることにより、十分な還元性能、持続的な還元効果を発揮せしめることができ、一方、還元性成分の含有量が1質量%未満であると、還元性能が十分でなく、本第3実施形態の効果を発揮できないものとなる。
【0089】
本第3実施形態では、広い抗菌スペクトル、抗菌効果を更に発揮せしめる点から、上記還元性成分と共に、抗菌成分を含む機能性粒子としてもよいものである。
用いることができる抗菌性成分は、従来より公知のものを用いることができ、好ましくは、安全性が高く、内包する還元性成分に悪影響を及ぼすことがないもの、また、長期にわたり抗菌性を有する化合物であればよく、例えば、第1実施形態で上述したX群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0090】
上第1実施形態で上述したX群の中で、更に好ましい抗菌性成分としては、経時安定性の点、比較的入手しやすくコストも安価に抑えられる点、安全性の点から、ヨードプロパギル化合物、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、クレゾール、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、ピリチオンナトリウム、2-(4-チオゾリル)ベンズイミダゾール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、ジイソチオシアネート、イソプロピルメチルフェノール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、シトラール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート、D-リモネン、タンニン酸、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、グリセリン脂肪酸エステル、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルパラベン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾールが望ましい。
【0091】
本第3実施形態において、抗菌性成分の(固形分)含有量は、更なる持続的な抗菌効果が得られる点、安定性などの点から、全ポリマー成分に対して、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、10~50質量%、特に好ましくは、15~40質量%とすることが望ましい。
この抗菌性成分の含有量を1質量%以上とすることにより、更なる十分な抗菌効果(酸素吸収能)、持続的な還元効果を発揮せしめることができ、一方、防腐剤成分の含有量が1質量%未満であると、抗菌性成分を含有せしめる本第3実施形態の更なる効果を発揮できないものとなる。
【0092】
本第3実施形態において、上記好ましい態様、具体的には、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーに、上述のZ群から選ばれる還元性成分を溶解し、また、更に、抗菌性成分を溶解し、ノニオン系の重合性界面活性剤(種類・量等)を用いて乳化重合することにより、または、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと他のモノマー成分を含む混合モノマーの重合後に上記還元性成分(更に抗菌性成分)を溶解してノニオン系の重合性界面活性剤(種類・量等)を用いて乳化重合することにより、所定のゼータ電位を有する(ゼータ電位測定値が-15~+15mVの範囲である)還元性、並びに、還元性と抗菌効果を有する機能性粒子が水に分散されている機能性粒子分散体(分散液)が得られる。これらの製造条件で得られる機能性粒子分散体中の還元性能などを有する機能性粒子は、用いる上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー、還元性成分、または、抗菌性成分、ノニオン系の重合性界面活性剤などの配合量、重合条件などにより、その製造量は変動するものであり、製造性、作業性、効率性など点から、固形分量で1~50質量%となるように製造することが好ましい。更に好ましくは、固形分量で10~40質量%となるように製造することが好ましい。
【0093】
この還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)は、単独で上記機能性粒子を用いるものよりも、本第3実施形態の機能性粒子分散体とすることにより、還元性能の強さとその持続性をもちながら、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、安定性に優れる機能性粒子分散体となるものである。特に、長期経時後においても還元性成分の還元効果を維持乃至良好にすることができる機能性粒子分散体が得られるものとなる。
この機能性粒子分散体(分散液)は、イオンの影響を受けやすい配合系や、水性インクなどの配合系等においても、分散が安定な初期状態を維持できると共に、低刺激性であり、これまでにない設計の自由度が大きく、様々な用途に好適に利用することができるものとなる。
また、本第3実施形態では、還元性成分として、油溶性(親油性)の還元性成分などを好ましく使用しているため、特にプラスチック容器に還元性成分などが付着しやすく、経時的に還元性能が損なわれるという課題に対して、本第3実施形態の(メタ)アクリル酸成分などからなる粒子で抗菌性成分と香料成分とを内包することで、容器壁面への付着を抑制し、長期経時後であっても還元効果を維持できるという特有の作用効果を有するものである。
【0094】
また、本第3実施形態において、得られる機能性粒子分散体における機能性粒子の平均粒子径は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、用いる他のモノマー種、含有量、重合の際の重合条件等により変動するものであるが、上述の第1実施形態と同様に、好ましくは、10~800nm、更に好ましくは、20~300nm、更に好ましくは、30~200nmであることが望ましい。
上記好ましい平均粒子径の範囲とすることにより、更に、保存安定性などに優れたものとなり、後述の各用途に好適な平均粒子の範囲となる機能性粒子を利用することができ、筆記具用水性インクに用いる場合には、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具のペン芯において目詰まりすることなく、更に、保存安定性などに優れたものとなる。
【0095】
本第3実施形態の機能性粒子分散体において、分散体中に含まれる機能性粒子の含有量は、後述する各用途等に応じて、固形分量で0.1~50質量%であることが好ましく、更に好ましくは、1~30質量%であることが望ましい。
この機能性粒子の含有量が固形分量で0.1質量%未満であると、本発明の効果を発揮することができず、一方、50質量%超過では、長期の保存安定性が低下しやすくなるとなるものである。
【0096】
このように構成される本第3実施形態の機能性粒子分散体は、還元性能、又は、還元性能と抗菌効果を有し、安定性と安全性が高く、分散が安定な初期状態を維持できると共に、低刺激性であり、これまでにない設計の自由度が大きく、様々な用途、例えば、医療用具、ベビー用品、介護用品、浴場用品、台所用品、食器、飲料水配管部品、生活衛生用品、家電製品、衣料品、建築資材、農業用資材、自動車用内装部品、文房具、筆記具やインクジェットプリンターなどのインク組成物など、様々な製品に還元性、又は還元性と抗菌性能を付与するために利用することができる。
具体的な用途としては、上記などの他に、例えば、洗濯洗浄剤、柔軟剤、住居用洗剤、食器洗浄剤、硬質表面用洗浄剤等の洗浄剤用途;シャンプー、リンス、化粧水、乳液、クリーム、日焼け止め、ファンデーション、アイメイク製品、ヘアカラー製品、ネイル製品、制汗剤、歯磨き粉等のパーソナルケア用途、塗料、接着剤、建材、樹脂エマルジョン、木材防腐剤、セメント混和剤、ボイラ、冷却設備、排水処理設備、工業用水(製紙工程における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水)等の工業用水処理用途;医療器具、食品添加物、太陽電池モジュールや有機素子デバイス、熱線遮蔽フィルムなどの電子機器用途等に加えて、水生生物(魚類等)への水カビ抑制として水槽及び薬浴用途にも好適に用いることができる。
本第3実施形態の機能性粒子分散体は、安定性と安全性が高く、還元性能、又は、還元性能と抗菌効果を有し、分散が安定な初期状態を維持できると共に、低刺激性であり、これまでにない設計の自由度が大きく、他の配合成分に対して影響を与えることがなく、更に、電荷に繊細な分散液の配合系や、水性インクの配合系等においても、経時的な分散安定性の変化が少なく、初期状態を維持できる機能性粒子分散体となるため、上述の如く、様々な製品に還元性能、又は、還元性能と抗菌効果を付与することができ、特に、洗浄剤用途、パーソナルケア用途、工業用水処理用途、食品添加物、電子機器用途、水生生物(魚類等)への水カビ抑制として水槽及び薬浴用途にも好適に用いることができ、例えば、以下に、筆記具用水性インク組成物に用いた場合を説明する。
【0097】
本第3実施形態の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、上記構成の還元性を有する機能性粒子分散体を含有することを特徴とするものであり、この機能性粒子分散体の他、着色剤、水溶性有機溶剤を含有することができる。
インク組成物中の機能性粒子の含有量は、筆記性能を損なうことなく、本第3実施形態の効果を発揮せしめる点、保存安定性点から、インク組成物全量に対して、固形分量で0.1~30.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは、1.0~15.0質量%であることが望ましい。
【0098】
用いることができる着色剤としては、上述の第1実施形態と同様に、水溶性染料、顔料、例えば、無機顔料、有機顔料、プラスチックピグメント、粒子内部に空隙のある中空樹脂粒子は白色顔料として、または、発色性、分散性に優れる染料で染色した樹脂粒子(擬似顔料)、熱変色性顔料、光変色性顔料等も使用でき、その含有量も、筆記具種などにより変動するものであるが、インク組成物全量に対して、1~30質量%である。
用いることができる水溶性有機溶剤、その含有量も、上述の第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0099】
本第3実施形態の筆記具用水性インク組成物には、上記特性の粒子、着色剤、水溶性溶剤の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、本第2実施形態の効果を損なわない範囲で、上述の第1実施形態と同様に、分散剤、潤滑剤、pH調整剤、防錆剤、増粘剤、蒸発抑制剤、界面活性剤などを適宜含有することができる。これらの各成分の説明も上述の第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0100】
本第3実施形態の筆記具用水性インク組成物は、上記機能性粒子分散体、水溶性溶剤、その他の各成分を筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)インクの用途に応じて適宜組み合わせて、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって筆記具用水性インク組成物を調製することができる。
また、本第3実施形態の筆記具用水性インク組成物のpH(25℃)は、上述の第1実施形態と同様に、使用性、安全性、インク自身の安定性、インク収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、更に好ましくは、6~9.5とすることが望ましい。
【0101】
本第3実施形態の筆記具用水性インク組成物は、上述の第1実施形態と同様に、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン先部を備えたボールペン、マーキングペン等に搭載される。ボールペン、マーキングペンの構造は、上述の第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0102】
このように構成される本第3実施形態の筆記具用水性インク組成物にあっては、用いる上記特性の還元性を有する機能性粒子分散体が筆記具用水性インク組成物中に配合されているため、インク組成物中で還元性能の強さと、持続性をもちながら、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがないので、その各持続効果を長期間に亘り、しかも、これらの粒子は保存安定性、筆記性能を損なわないため、インク設計の自由度を更に高めることができ、ボールペン、マーキングペンなどの筆記具に好適な筆記具用水性インク組成物が得られることとなる。
また、本第3実施形態の筆記具用水性インク組成物に用いる分散体中の上記特性の還元性を有する機能性粒子のゼータ電位測定値を所定の範囲としているので、筆記具用インクの増粘剤としてセルロースナノファイバー(CNFの水素結合ネットワークによるゲルなど)などの多糖類繊維を用いた電荷に繊細な水性インクの配合系であっても、機能性粒子の分散が安定な初期状態を維持でき、また、イオン系などの不安定な水性インクの配合系でも刺激性が少ないため、十分な描線濃度を損なうことなく、分散安定性に優れる筆記具用水性インク組成物が得られることとなる。
上記では、本第3実施形態の機能性粒子分散体を筆記具用水性インク組成物に用いた場合について、説明したが、本第3実施形態の機能性粒子分散体は、長期経時後においても還元性又は還元性と抗菌効果に優れると共に、安全性が高く、用いる抗菌性成分を選択することにより広い抗菌スペクトル(Antibacterial spectrum)を有するものを使用することができ、他の配合成分、配合物性等に悪影響を及ぼすことがなく、安定性に優れたものとなり、しかも、上記洗浄剤用途、パーソナルケア用途、工業用水処理用途、食品添加物、電子機器用途、水生生物(魚類等)への水カビ抑制として水槽及び薬浴用途に好適な配合割合で実施できるものとなる。
【0103】
(化粧料:機能性粒子分散体含有化粧料)
本発明の化粧料は、上述の第1実施形態~第3実施形態の各々の機能性粒子分散体を含有することを特徴とするものであり、具体的には、1)少なくとも、上記構成の抗菌性を有する機能性粒子分散体を含有することを特徴とするもの、2)少なくとも、上記構成の抗菌性と芳香機能を有する機能性粒子分散体を含有することを特徴とするもの、3)上記構成の還元性又は還元性と抗菌効果に優れる機能性粒子分散体を含有することを特徴とするものである。
化粧料としては、例えば、化粧水、乳液、美容液、クリーム、ボディローション、ボディパウダー、ボディジェル等のスキンケア化粧料、ファンデーション、日焼け止め、化粧下地、アイシャドウ、アイライン、頬紅、口紅、マスカラ、おしろい等のメーキャップ化粧料、ヘアミスト、ヘアオイル、ヘアジェル、ネイル、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、スプレー、ムース等の毛髪化粧料、デオドラント化粧料等が挙げられる。これらの各化粧料の用途(スキンケア化粧料、メーキャップ化粧料、毛髪化粧料、デオドラント化粧料など)毎に、基材成分、着色剤(色材)、水溶性樹脂、低級アルコール、保湿剤(柔軟剤、エモリエント剤)、収瞼剤(制汗剤)、清涼剤、美白剤、紫外線吸収剤などを用いることができ、更に、化粧料の成分はこれらの例に限定されず、当業者に自明のものであれば全て使用することができる。
これらの化粧料中の機能性粒子の含有量は、各実施形態の効果を発揮せしめる点、保存安定性の点、化粧料の各用途などの点から、化粧料全量に対して、固形分量で0.1~30.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは、1.0~20.0質量%であることが望ましい。
【0104】
本発明の化粧料は、上述のスキンケア化粧料、メーキャップ化粧料、毛髪化粧料、デオドラント化粧料などの用途に常用されている各構造、形状の化粧料塗布具に搭載等して使用に供され、使用される化粧料の形態は、液体、固体、半固体、ゲル状のいかなる形態であってもよい。
例えば、塗布手段として筆穂(筆ペン)や、ペン芯や、並びに、ゴム、エラストマー、または復元性を有する独立気泡体から構成される塗布手段となる塗布体を具備し、液体化粧料などを充填する容器を有する塗布具、具体的には、機構がそれぞれ、回転式繰出タイプ、化粧料内蔵型塗布具タイプ及びコレクター式塗布具タイプとなる使用性、簡便性、塗布性に優れる化粧料塗布具の使用が望ましい。
回転式繰出タイプの化粧料塗布具としては、
図1に示すように、液押圧機構10により、液押圧機構10の前方に内蔵された化粧料(液体タイプ)を吐出させる貯留部となる化粧料内蔵容器11の前方に具備された、筆穂(筆ペン)で形成した塗布部30を有するものである。
液押圧機構10は、軸本体12後端部に配設された繰り出し部材13を軸本体12に対して周方向に相対回転させることにより容器(貯留部)11内の液体化粧料を繰り出すことにより塗布部30に供給される構成となっている。
この塗布具の液押圧機構10は、軸本体12の後端に回転可能に嵌合された繰り出し部材13と、使用者による繰り出し部材13の回転の力をネジ棒14に伝える駆動筒15と、軸本体12に固定してネジ棒14が螺合するネジ体16と、先端にピストン体17が回転可能に係合したネジ棒14と、軸本体12の貯留部11内を摺動するピストン体17とを有する。前記駆動筒15を介して繰り出し部材13の回転をネジ棒14に伝え、該ネジ棒14の回転によってナット状のネジ体16の雌ネジを介して該ネジ棒14及びピストン体17が前進して貯留部11内から前記液体化粧料を塗布部30へ繰出す構造になっている。
繰り出し部材13は、
図1に示すように、後端に天冠13aが嵌入することによって閉じられた筒状を呈する操作部が軸本体12後端部に回動可能に嵌め込まれかつ露出しているものである。駆動筒15が繰り出し部材13内に嵌入して回転方向に固定されており、この駆動筒15内に回転方向固定かつ軸方向への相対移動可能にネジ体16が装着されている。13bは、スプリング部材であり、回転体となる繰り出し部材13を後方側に付勢するものである。
【0105】
この塗布具において、軸本体12の前端部12aには、シール部18、継手部材19、先軸20、塗布部30が嵌入により取り付けられる。軸本体12の貯留部11には、液体化粧料が収容され、その貯留部11から繰出された液体化粧料は継手部材19内の流路を通り塗布部30に吐出されて塗布可能になる。また、使用後にキャップ40を塗布部30及び先軸20を覆うように先軸20に装着できるよう形成されている。
また、
図1において、図示符号21は、貯留部11内の液体化粧料を往復動によって攪拌する攪拌ボール、22はシールボールである。また、41はキャップ40内のインナーキャップ、42はインナーキャップ後方付勢用のスプリングである。なお、攪拌ボール21省略してもよい。
更に、図示符号23は、未使用時における塗布部30に向かう液体化粧料の流通路を閉鎖する位置にシール部18、継手部材19、先軸20、塗布部30を位置させるため、前記先軸20後端と軸本体12前端部12aの段状箇所前面との間にリング状部が装着されたストッパーである。このストッパー23は、リング状部の一部が切り離され、その切り
離された箇所の反対側に摘み片が一体形成され、摘み片を引くことによって、リング状部が切り離し箇所から拡径して前記先軸20後端と軸本体12の前端部12aとの間から取り外せるものになっている。
【0106】
図1に示すように、未使用時ではシールボール22がシールボール受け部となるシール部18の内径部に嵌入して密封しており塗布部30側に液体化粧料が流れ込まないようになっている。一方、使用時は、ユーザーがストッパー23を軸本体12から引き抜き、先軸20を後端側に押し込むことにより、継手部材19の後端細径部がシールボール22に突き当たってシールボール22がシール部18の内径部から外されて前記貯留部11内に入り込み、当該貯留部11内の液体化粧料が継手部材19の内径部から塗布部30の液流路内に流入して、塗布部30にその内部から供給されて、対象部に塗布可能になる。
図1の回転式繰出タイプの化粧料塗布具は、一例であり、これに限定されず、これ以外の各種構造、形状の化粧料塗布具を用いることができる。
【0107】
本発明の化粧料において、上述の各実施形態の機能性粒子分散体を用いる場合、例えば、少なくとも、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、上述のX群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分とで構成される第1実施形態の特定物性の機能性粒子を化粧料に用いると、分散安定性・固着性・耐水性・耐皮脂性を損なうことなく、抗菌効果の持続性が得られることができ、また、化粧料に付加する抗菌性成分の種類を変えることで、皮膚への適用、髪への適用など用途ごとに最適の成分を調整でき、商品価値を向上させることができる。
更に、少なくとも、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、上述のX群から選ばれる少なくとも1種の抗菌性成分、香料成分とで構成される第2実施形態の特定物性の機能性粒子の場合には、抗菌成分による抗菌効果と共に、化粧料自身へ賦香する香料の種類と、化粧料へ配合する香料の種類を変えることで、商品価値を向上させることができ、また、分散安定性・固着性・耐水性・耐皮脂性を損なうことなく、抗菌及び香りの持続性が得られることができる。化粧料自身への賦香と機能性粒子内包香料を同様の香調にすれば、化粧料塗布後に、塗布部に触れることで、香りがよみがえり、強くなったように感じられる。化粧料自身への賦香と機能性粒子に内包される香料を異なる香調にすれば、化粧料塗布後に、塗布部に触れることで、異なる香りが感じられるようになる。また、化粧料自身へは賦香せずに、機能性粒子をその化粧料へ配合すれば、化粧料塗布後に香りが感じられないが、塗布部に触れることで、香りが感じられるようになる。
更にまた、少なくとも、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、上述のZ群から選ばれる少なくとも1種の還元性成分とで構成される第3実施形態の特定物性の機能性粒子を化粧料に用いると、分散安定性・固着性・耐水性・耐皮脂性を損なうことなく、インク成分の酸化劣化抑制、気泡抑制の持続性が得られることができる。
【実施例0108】
次に、製造例、実施例及び比較例により本発明(第1実施形態~第3実施形態)を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0109】
〔本実施形態1:製造例1~9:抗菌性を有する機能性粒子分散体(粒子1~9)〕
下記製造例1~9により、各抗菌性を有する機能性粒子分散体を製造した。なお、以下の「部」は質量部を表す。抗菌性成分は固形分量である。
(製造例1)
2リットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、モノマー投入用1000ml分液漏斗を取り付け、温水槽にセットし、蒸留水344.5部、グリセリンモノメタクリレート〔ブレンマーGLM、日油社製〕5部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム〔アクリルエステルSEM-Na、三菱ケミカル社製〕5部、ノニオン性重合性界面活性剤〔花王株式会社製、ラテムルPD-430〕40部及び過硫酸アンモニウム0.5部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら、内温を50℃まで昇温した。
一方、メタクリル酸シクロヘキシルモノマー55部と、メタクリル酸n-ブチル20部とからなる混合モノマーに、抗菌性成分〔ヨードプロパルギル化合物:3-ヨード-2-プロピニルカルバメート、ロンザ社製(omacide IPBC 100)〕20部および、タンニン、〔富士化学工業社製(タンニン酸S)〕14部、架橋剤〔トリアリルイソシアヌレート、日本化成社製、タイク(TAIC)〕10部を混合した液を調製した。
この調製液を上記分液漏斗から温度50℃付近に保った上記フラスコ内に撹拌下で3時間にわたって添加し、乳化重合を行った。さらに5時間熟成して重合を終了し、抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子1)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、54.8質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、12.9質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、70nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-5.8mVであった。
【0110】
(製造例2)
上記製造例1において、蒸溜水を334.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、抗菌性成分として、抗菌性成分〔ヨードプロパルギル化合物:3-ヨード-2-プロピニルカルバメート、ロンザ社製(omacide IPBC 100)〕30部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子2)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、51.5質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、18.2質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、72nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-8.8mVであった。
【0111】
(製造例3)
上記製造例1において、蒸溜水を314.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を60部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を35部とし、また、抗菌性成分として、抗菌性成分〔フェノキシエタノール、四日市合成社製〕30部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子3)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、56.8質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、16.2質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、108nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、+10.1mVであった。
【0112】
(製造例4)
上記製造例1において、蒸溜水を324.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、抗菌性成分として、抗菌性成分〔パラベン、上野製薬社製〕40部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子4)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、48.6質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、22.9質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、124nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、+3.8mVであった。
【0113】
(製造例5)
上記製造例1において、蒸溜水を349.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、抗菌性成分として、抗菌性成分〔クロロメチルイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリン(CMIT/MIT)大和化学工業社製〕15部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子5)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、56.7質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、10.0質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、95nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-7.6mVであった。
【0114】
(製造例6)
上記製造例1において、蒸溜水を334.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、抗菌性成分として、抗菌性成分〔ベンズイソチアゾリノン(BIT)、大和化学工業社製〕30部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子6)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、51.5質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、18.2質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、60nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-2.1mVであった。
【0115】
(製造例7)
上記製造例1において、蒸溜水を339.0部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、抗菌性成分として、抗菌性成分〔メチルイソチアゾリン(MIT)、大和化学工業社製〕25部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子7)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、53.3質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、15.6質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、49nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-9.9mVであった。
【0116】
(製造例8)
上記製造例1において、蒸溜水を339.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、抗菌性成分として、抗菌性成分〔チアベンダゾール、MOLDBAN-TZ、三井物産ケミカル社製〕25部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子8)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、53.1質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、15.6質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、65nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-3.8mVであった。
【0117】
(製造例9)
上記製造例1において、蒸溜水を334.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を45部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を30部とし、また、抗菌性成分として、抗菌性成分〔2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、MOLDBAN-BNP、三井物産ケミカル社製〕30部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子9)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、51.5質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、18.2質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、62nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、+5.1mVであった。
【0118】
(比較製造例1)
特開2023-1833号公報に記載の実施例1の粒子Aを用いた。このメタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、50質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、36.2質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、56nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-30.3mVであった。
【0119】
得られた上記製造例1~9の各機能性粒子分散体、比較製造例1について、下記評価方法により、抗菌効果(細菌群、酵母、糸状菌)について評価した。
上記製造例1~9で得た各機能性粒子分散体(分散液)を用いた。この製造例1~9、比較製造例1で得た各抗菌性を有する機能性粒子分散体中の機能性粒子の固形分量は、35~40質量%であった。
得られた製造例1~9、比較製造例1の各抗菌性を有する機能性粒子分散体について、下記評価方法により、分散安定性、初期、及び、40℃期間3か月後の抗菌効果(細菌群、酵母、糸状菌)について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0120】
(分散安定性の評価方法)
上記で得られた製造例1~9の抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)、比較製造例1の各分散体を用いて、得られた各機能性粒子分散体10mlを、15mlのガラス製蓋付き瓶に、攪拌ボール(φ6.4mm、ステンレス鋼製)とともに充填し、密封した後に、キャップを上向きにして40℃の条件下1ヶ月保存した後、夫々の分散体を振った。撹拌ボールがガラス製蓋付き瓶中で移動し始めるまでに振った回数により分散安定性を下記の評価基準で評価した。
評価基準:
A:0~3回。
B:4~10回。
C:11回以上。
※0回:ガラス製蓋付き瓶を傾けたときに攪拌ボールの動きが確認できる
【0121】
〔抗菌効果の試験方法〕
上記で得られた製造例1~9の抗菌性を有する機能性粒子分散体(分散液)、比較製造例1の各分散体を用いて、ISO 11930:2012(保存効力試験または微生物学的リスク評価、またはその両方によって生成されたデータの解釈のための手順)に準拠した下記の微生物試験方法で行った。
下記細菌群、酵母、糸状菌の三群で初期、及び、40℃期間3か月後の各分散体についてチャレンジテストを実施した。
細菌群: Stapylococcus aureus NBRC13276、Escherichia coli NBRC3972
酵母: Candida albicans NBRC1594
糸状菌: Aspergillus brasiliensis
【0122】
〈接種菌液の調製〉
接種菌液の調製:ISO 11930:2012に従って菌液を調製した。
細菌群:各菌種毎にISO 11930:2012に従って菌液を調製した。菌種毎に1×107~1×108cfu/mlに調整した菌液を三種等量混合し接種菌液とした。
酵母:ISO 11930:2012に従い、1×106~1×107cfu/mlになるように菌液を調製した。
糸状菌:ISO 11930:2012に従い、1×106~ 1×107cfu/mlになるように菌液を調製した。
【0123】
〈接種〉
抗菌性を有する機能性粒子分散体に対し、1質量%の量の菌液を接種した。
〈保管〉
接種した抗菌粒子分散体は、温度22.5±2.5℃に保管し指定された期間ごとに検出培養を行った。
〈検出培養〉
細菌群はSCD寒天培地で、酵母はSD寒天培地で、糸状菌はPD寒天培地でそれぞれ10枚に合計1g塗抹し、細菌群と酵母は32.5℃、2日間、糸状菌は22.5℃、5日間培養した。
【0124】
〈初期の抗菌効果〉
得られた製造例1~9、比較製造例1の各抗菌性を有する機能性粒子分散体について、上述の抗菌効果試験を行い、下記評価基準で評価した。
〈評価基準〉
A+:3日目の時点でコロニーが出現しない。
A :7日目の時点でコロニーが出現しない。
B:21日目の時点でコロニーが出現しない。
C:28日目の時点で数個から数十個のコロニーが出現している。
D:28日の時点で明らかに増えている。
【0125】
〈温度40℃、期間3か月後の抗菌効果〉
得られた製造例1~9、比較製造例1の各抗菌性を有する機能性粒子分散体について、各分散体60mlをポリエチレン製蓋付瓶に充填し、密封した後に、温度40℃の条件下で期間3か月保存した後、それぞれの分散体について、上述の抗菌効果試験を行い、下記評価基準で評価した。
〈評価基準〉
A+:3日目の時点でコロニーが出現しない。
A :7日目の時点でコロニーが出現しない。
B :21日目の時点でコロニーが出現しない。
C :28日目の時点で数個から数十個のコロニーが出現している。
D :28日の時点で明らかに増えている。
【0126】
【0127】
上記表1を考察すると、本発明範囲となる製造例1~9は、長期経時後(40℃、3か月後)においても、各汚染源等となる細菌群、酵母、糸状菌、細菌類(大腸菌、黄色ブドウ球菌)に対して優れた抗菌効果を有すると共に、安全性が高く、分散安定性に優れていることが判った。
これに対して、比較製造例1では、分散安定性と抗菌効果とを高度に両立することができず、本発明の効果を奏することができなかった。
【0128】
〔実施例1~9及び比較例1~4:筆記具用水性インク組成物の調製〕
実施例1~9用として、上記製造例1~9で得た各抗菌性を有する機能性粒子分散体、比較例1用として比較製造例1、並びに、比較例2~4として、粒子とする前の抗菌性成分の含有量が15質量%となる各抗菌性成分含有分散体(比較例2~4として抗菌成分をIPBC、フェノキシエタノール、パラベンと順番に)を用いて、下記に示す配合組成(全量100質量%)により常法により各筆記具用水性インク組成物を調製した。
インク組成:(全量100質量%)
着色剤:着色樹脂微粒子(※1) 50質量%
増粘剤:多糖類繊維(※2) 0.3質量%
潤滑剤:リン酸エステル(※3) 0.5質量%
各機能性粒子分散体等(製造例1~9、比較製造例1、比較例2~4) 20質量%
pH調整剤(トリエタノールアミン) 1質量%
水溶性有機溶剤(エチレングリコール) 5質量%
水(蒸留水) 残 部
※1:ルミコールNKW-2100E、デー・シー社製
※2:レオクリスタI-2SX、第一工業製薬社製
※3:フォスファノールRS―610、東邦化学工業社製
【0129】
得られた各筆記具用水性インク組成物(全量100質量%)について、下記構成の筆記具、下記評価方法により、筆記性(上下描線濃度差)、安定性、初期および40℃期間3か月の抗菌効果について評価した。
下記表2に実施例1~9及び比較例1~4の各評価結果を示す。
【0130】
(筆記具:ボールペンの作製)
ボールペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:シグノUM-100〕の軸を使用し、内径4.0mm、長さ113mmポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.5mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに上記各水性インク組成物を充填し、インク後端に鉱油を主成分とするインク追従体を装填し、水性ボールペンを作製した。
【0131】
〔筆記性(上下描線濃度差)の評価方法〕
上記構成の各水性ボールペンを、室温(25℃、以下同様)下で、ペン先を下向きの状態で1か月放置後、終筆まで筆記をし、書き始めと描き終わりの描線の濃度差を比較し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
A:濃度差がない。
B:やや濃度差が認められる。
C:濃度差がはっきりと認められる。
D:濃度差が顕著であり、描線の視認が困難な箇所が認められる。
【0132】
<安定性の評価方法>
上記構成の各ボールペンにおいて、ペン先を下向きの状態で50℃の条件下で3か月保存した後、夫々のリフィール内のインキの状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。
評価基準:
A:分離、凝集は発生していない。
B:僅かな分離または凝集。
C:分離または凝集がある。
D:著しい分離または凝集がある。
【0133】
〔抗菌効果の試験方法〕
本発明範囲となる実施例1~9と、比較例1~4の筆記具用水性インク組成物についても、上述の抗菌粒子分散体で行った抗菌効果の試験方法に準拠して(筆記具用水性インク組成物に対し、1質量%の量の菌液を接種して)、初期、及び、40℃期間3か月後の抗菌効果について試験を行った。40℃期間3か月後の抗菌効果については、抗菌の効果をさらに厳しく確認するため、各筆記具用水性インク組成物を、ポスカPC-5M(三菱鉛筆社製、軸材質PP樹脂、撹拌ボール:ステンレス製(φ:6.4mm))にインクを入れ、温度40℃、期間3か月保存した後、ペン体から抜き取ったインクについて、上述の評価方法(細菌群、酵母、糸状菌の三群でチャレンジテスト、評価基準)を実施した。
【0134】
【0135】
上記表2を考察すると、本発明範囲となる実施例1~9は、本発明の範囲外となる比較例1~4に較べ、筆記性(上下描線濃度差)、安定性に優れ、また、抗菌性能の強さと持続性をもちながら、他のインクの配合成分に悪影響を及ぼすことがないことが確認できた。
また、上記で作製したボールペンは、カスレもなく、滲まず、十分な描線濃度を有し、鮮明な描線となることを確認した。
【0136】
〔本実施形態2:製造例10~22:機能性粒子分散体(粒子10~22)の製造〕
下記製造例10~22により、各抗菌性と芳香性能を有する機能性芳香性粒子分散体を製造した。なお、以下の「部」は質量部を表す。抗菌成分及び芳香成分は固形分量である。
【0137】
(製造例10)
2リットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、モノマー投入用1000ml分液漏斗を取り付け、温水槽にセットし、蒸留水349.5部、グリセリンモノメタクリレート〔ブレンマーGLM、日油社製〕5部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム〔アクリルエステルSEM-Na、三菱ケミカル社製〕5部、ノニオン性重合性界面活性剤〔花王株式会社製、ラテムルPD-430〕40部及び過硫酸アンモニウム0.5部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら、内温を50℃まで昇温した。
【0138】
一方、メタクリル酸シクロヘキシルモノマー50部と、メタクリル酸n-ブチル20部とからなる混合モノマーに、芳香成分〔d-リモネン、日本テルペン化学社製〕17部、抗菌性成分〔フェノキシエタノール、四日市合成社製〕3部、架橋剤〔トリアリルイソシアヌレート、日本化成社製、タイク(TAIC)〕10部を混合した液を調製した。
この調製液を上記分液漏斗から温度50℃付近に保った上記フラスコ内に撹拌下で3時間にわたって添加し、乳化重合を行った。さらに5時間熟成して重合を終了し、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子10)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、54.4質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、2.0質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、11.3質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、99nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-1.0mVであった。
【0139】
(製造例11)
上記製造例10において、蒸溜水を347.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を53部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を17部とし、また、芳香成分として、2―フェニルエタノール(2-フェニルエチルアルコール)〔井上香料製造所社製〕20部、抗菌性成分としてベンズイソチアゾリノン(BIT)〔大和化学工業社製〕2部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子11)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、52.6質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、1.3質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、13.2質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、88nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-0.8mVであった。
【0140】
(製造例12)
上記製造例10において、蒸溜水を347.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を55部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を15部とし、また、芳香成分として、CITRAL〔クラレ社製〕20部、抗菌性成分としてメチルイソチアゾリン(MIT)〔大和化学工業社製〕2部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子12)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、52.6質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、1.3質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、13.2質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、105nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-2.7mVであった。
【0141】
(製造例13)
上記製造例10において、蒸溜水を327.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を50部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を20部とし、また、芳香成分として、リナロール(リナロール オキシド)〔井上香料製造所社製〕30部、抗菌性成分としてクロロメチルイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリン(CMIT/MIT)〔大和化学工業社製〕12部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子13)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、46.5質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、7.0質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、17.4質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、118nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-5.8mVであった。
【0142】
(製造例14)
上記製造例10において、蒸溜水を329.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を45部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を25部とし、また、芳香成分として、オイゲノール〔日本テルペン化学社製〕26部、抗菌性成分としてパラベン〔上野製薬社製〕14部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子14)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、47.1質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、8.2質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、15.3質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、127nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、+3.8mVであった。
【0143】
(製造例15)
上記製造例10において、蒸溜水を314.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を50部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を30部とし、また、芳香成分として、γ-デカラクトン〔井上香料製造所社製〕35部、抗菌性成分としてヨードプロパルギル化合物3-ヨード-2-プロピニルカルバメート〔ロンザ社製(omacide IPBC 100)〕10部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子15)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、48.6質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、5.4質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、18.9質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、109nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-8.5mVであった。
【0144】
(製造例16)
上記製造例10において、蒸溜水を324.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、芳香成分として、1,8-シネオール〔日本テルペン化学社製〕25部、防腐剤成分としてベンズイソチアゾリノン(BIT)〔大和化学工業社製〕15部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子16)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、48.6質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、8.6質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、14.3質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、80nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、―10.5mVであった。
【0145】
(製造例17)
上記製造例10において、蒸溜水を334.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、芳香成分として、γ-テルピネンを25部、抗菌性成分としてメチルイソチアゾリン(MIT)〔大和化学工業社製〕5部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性分散体(分散液)(粒子17)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、51.5質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、3.0質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、15.2質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、67nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、+9.0mVであった。
【0146】
(製造例18)
上記製造例10において、蒸溜水を334.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、芳香成分として、シメンを25部、抗菌性成分としてメチルイソチアゾリン(MIT)〔大和化学工業社製〕5部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子18)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、51.5質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、3.0質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、15.2質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、102nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-2.9mVであった。
【0147】
(製造例19)
上記製造例10において、蒸溜水を329.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を35部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を40部とし、また、芳香成分として、ミルセンを25部、抗菌性成分としてヨードプロパルギル化合物3-ヨード-2-プロピニルカルバメート、〔ロンザ社製(omacide IPBC 100)〕10部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子19)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、50.0質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、5.9質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、14.7質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、91nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-0.2mVであった。
【0148】
(製造例20)
上記製造例10において、蒸溜水を329.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を35部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を40部とし、また、芳香成分として、フェランドレンを25部、抗菌性成分としてヨードプロパルギル化合物3-ヨード-2-プロピニルカルバメート〔ロンザ社製(omacide IPBC 100)〕10部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子20)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、50.0質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、5.9質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、14.7質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、111nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-3.5mVであった。
【0149】
(製造例21)
上記製造例10において、蒸溜水を329.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を45部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を30部とし、また、芳香成分として、ファルネセンを25部、抗菌性成分としてパラベン〔上野製薬社製〕10部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子21)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、50.0質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、5.9質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、14.7質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、84nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、+0.8mVであった。
【0150】
(製造例22)
上記製造例10において、蒸溜水を329.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を45部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を30部とし、また、芳香成分として、ツジェンを25部、抗菌性成分としてパラベン〔上野製薬社製〕10部を用いた以外は、上記製造例10と同様にして、抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子22)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、50.0質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、5.9質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、14.7質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、97nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-6.3mVであった。
【0151】
上記製造例10~22で得た各抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)を得た。この製造例10~22で得た各抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体中の抗菌性と芳香性を有する機能性粒子の固形分量は、30~40質量%であった。
上記で得られた製造例10~22の抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)を用いて、下記評価方法により、残香強度、分散安定性、抗菌効果について評価した。
比較製造例2として、上記製造例10において、重合性界面活性剤として、アニオン系界面活性剤〔(株)ADEKA社製、アデカリアソープSE-10N〕40部を用いた以外は、製造例10と同様にして抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子)を得た。この粒子におけるメタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、53.3質量%、前記抗菌性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、2.0質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、11.3質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、61nmであった。この機能性粒子のゼータ電位は、-31.5mVであった。
これらの結果を下記表3に示す。
【0152】
(残香強度の評価方法)
上記で得られた製造例10~22、比較製造例2の抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)を、固形分40質量%となるようビーカー内で希釈し、そこに綿布(綿100%、大きさ50×100mm)を浸漬させ、30回手で撹拌したのち、15分間放置した。
次いで、綿布の水気を手で搾り、25℃、35%RHの恒温恒湿条件下で3週間乾燥させ、評価用処理布とした。
このようにして得られた各綿布から感じられる香気について下記評価基準で残香強度の官能評価を行った。
<残香強度>
上記の方法により処理した評価用処理布について、残香強度を5名の評価者で以下の基準で評価した。5人の評価結果を下記表1に示す。
(残香強度の評価基準)
A:残香性が強く感じられる
B:残香性が弱く感じられる
C:残香性が感じられない
【0153】
(分散安定性の評価方法)
上記で得られた製造例10~22と比較製造例2の抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)を用いて、得られた各機能性粒子分散体50mlを、100mlの透明度の高いPP製の蓋付きプラスチック瓶に充填し、密封した後に、キャップを上向きにして40℃の条件下1か月保存した後、分散安定性を下記の評価基準で評価した。
評価基準:
A:分散液の分離が見られず、下部に沈降物もなく良好である。
B:分散液に若干の分離が見られ、下部にわずかな沈降物が確認できる。
C:分散液に顕著な分離が見られ、下部に多くの沈降物が確認できる。
【0154】
(抗菌効果の試験方法)
上記で得られた製造例10~22と比較製造例2の抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)を用いて、ISO 11930:2012(保存効力試験または微生物学的リスク評価、またはその両方によって生成されたデータの解釈のための手順)に準拠した上述の実施形態1で詳述した微生物試験方法(細菌群、酵母、糸状菌の三群でチャレンジテスト、評価基準含む)を、初期、及び、40℃期間3か月後に対し実施した。
【0155】
【0156】
上記表3の結果から明らかなように、上記で得られた製造例10~22の抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)は、比較製造例2に較べ、残香強度、分散安定性、抗菌効果に優れていることが判明した。
【0157】
〔本実施形態2:実施例10~22及び比較例5:筆記具用水性インク組成物の調製〕
実施例10~22用として、上記製造例10~22、比較製造例2で得た各抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)を得た。この製造例10~22で得た各芳香性粒子分散体中の芳香性粒子の固形分量は、35~40質量%であった。
一方、比較例5用として、比較製造例2で得た各抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(分散液)を用いた。また、比較例6~8用として、下記3種の既知の香料および防腐剤を用いた。
比較例6は芳香成分(d-リモネン、日本テルペン化学株式会社社製)および抗菌性成分(フェノキシエタノール、四日市合成社製)、比較例7は芳香成分2―フェニルエタノール(2-フェニルエチル アルコール)〔井上香料製造所社製〕および抗菌性成分ベンズイソチアゾリノン(BIT)〔大和化学工業社製〕、比較例8は芳香成分CITRAL〔クラレ社製〕および抗菌性成分メチルイソチアゾリン(MIT)〔大和化学工業社製〕を用いた。芳香成分および抗菌性成分が実施例10~22と同等の固形分になるよう筆記具用インク組成物の調整を行った。
【0158】
上記製造例10~22、比較製造例2により製造した各抗菌性と芳香性を有する機能性粒子分散体(粒子10~22、比較製造例2の粒子)、上記比較例6~8を用いて、下記に示す配合組成(全量100質量%)により常法により各筆記具用水性インク組成物を調製した。
インク組成:(全量100質量%)
着色剤:着色樹脂微粒子(※4) 15質量%
増粘剤:多糖類繊維 (※5) 0.3質量%
潤滑剤:リン酸エステル(※6) 0.5質量%
各機能性粒子分散体(製造例10~22、比較製造例2,比較例6~8) 20質量%
pH調整剤(トリエタノールアミン) 1質量%
水溶性有機溶剤(エチレングリコール) 5質量%
水(蒸留水) 残 部
※4:熱変色性マイクロカプセル顔料 黒色:平均粒子径0.6μm
※5:キサンタンガム KELSAN S(三晶社製)
※6:フォスファノールRS―610(東邦化学工業社製)
【0159】
得られた各筆記具用水性インク組成物(全量100質量%)について、下記評価方法により、残香強度、分散安定性、抗菌性能について評価した。これらの評価結果を下記表4に示す。
【0160】
(筆記具インクでの残香強度の評価方法)
上記で得られた筆記具用水性インク組成物を、水性サインペン〔PM-120T:三菱鉛筆社製、インク吸蔵体内蔵、ペン芯:(細)PET繊維、(極細)POM樹脂、以下同様の構成〕に収容してペン体を作製した。さらにそのペン体軸を横向きで温度40℃、期間1か月保存した後、紙面(上質紙)にペン芯(細)で筆記して、24時間後の残香強度を5名の評価者で以下の基準で評価した。
評価基準:
A:筆記時に香りがあり、24時間後も筆跡の残香性が強く感じられる。
B:筆記時に香りがあり、24時間後の筆跡の残香性がわずかに感じられる。
C:筆記時にわずかに香りがあるが、24時間後の筆跡は残香性が感じられない。
【0161】
(分散安定性の評価方法)
上記で得られた筆記具水性インク組成物を、PM-120T(三菱鉛筆社製)を使用し、40℃で、期間1か月、細字側を下向きに保存した後、筆記用紙に細字側で丸書きし、下記基準で評価した。
評価基準:
A:初期筆記と同レベル
B:速書きでカスレ
C:ややカスレあり
D:筆記不良(書けない)
【0162】
得られた各筆記具用水性インク組成物(全量100質量%)について、ISO 11930:2012(保存効力試験または微生物学的リスク評価、またはその両方によって生成されたデータの解釈のための手順)に準拠した下記の微生物試験方法で行った。
微生物試験方法は、抗菌の効果をさらに厳しく確認するため、初期、及び、各筆記具用水性インク組成物を、ポスカPC-5M(三菱鉛筆社製、軸材質PP樹脂、撹拌ボール:ステンレス製(φ:6.4mm))にインクを入れ、温度40℃、期間3か月保存した後、ペン体から抜き取ったインクについて、上述の実施形態1の評価方法(細菌群、酵母、糸状菌の三群でチャレンジテスト、評価基準)を実施した。
【0163】
【0164】
上記表4を考察すると、本発明範囲となる実施例10~22は、本発明の範囲外となる比較例5、6~8に較べ、他のインク配合成分に影響を与えることなく、増粘剤として多糖類繊維を含有した配合系においても、分散安定性、残香強度、抗菌効果に優れていることが確認できた。また、実施例10~22の筆記性についても紙面に筆記して評価したところ、掠れることなく、良好な筆記描線であることが確認できた。
【0165】
〔本実施形態3:製造例23~33:機能性粒子分散体(粒子23~33)の製造〕
下記製造例23~33により、各還元性を有する機能性粒子分散体を製造した。なお、以下の「部」は質量部を表す。還元性成分は固形分量である。
【0166】
(製造例23)
2リットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、モノマー投入用1000ml分液漏斗を取り付け、温水槽にセットし、蒸留水324.5部、グリセリンモノメタクリレート〔ブレンマーGLM、日油社製〕5部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム〔アクリルエステルSEM-Na、三菱ケミカル社製〕5部、ノニオン性重合性界面活性剤〔花王株式会社製、ラテムルPD-430〕40部及び過硫酸アンモニウム0.5部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら、内温を50℃まで昇温した。
【0167】
一方、メタクリル酸シクロヘキシルモノマー40部と、メタクリル酸n-ブチル35部とからなる混合モノマーに、還元性成分〔タンニン、富士化学工業社製(タンニン酸S)〕40部、架橋剤〔トリアリルイソシアヌレート、日本化成社製、タイク(TAIC)〕10部を混合した液を調製した。
この調製液を上記分液漏斗から温度50℃付近に保った上記フラスコ内に撹拌下で3時間にわたって添加し、乳化重合を行った。さらに5時間熟成して重合を終了し、還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子23)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、48.6質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、22.9質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、61nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、-7.5mVであった
【0168】
(製造例24)
上記製造例23において、蒸溜水を320.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、還元性成分として、還元性成分〔クロロゲン酸、富士化学工業社製(カフェノールP100)〕44部を用いた以外は、上記製造例23と同様にして、還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子24)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、47.5質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、24.6質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、82nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、-9.8mVであった
【0169】
(製造例25)
上記製造例23において、蒸溜水を313.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を60部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を30部とし、また、還元性成分として、還元性成分〔カテキン、富士フィルム和光純薬社製((-)-カテキン, 緑茶由来)〕36部を用いた以外は、上記製造例23と同様にして、還元性を有する機能性粒子分散体の分散液(粒子25)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、53.8質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、19.4質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、107nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、-2.8mVであった
【0170】
(製造例26)
上記製造例23において、蒸溜水を299.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を60部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を35部とし、また、還元性成分として、還元性成分〔銅クロロフィル、富士フィルム和光純薬社製(銅クロロフィリン三ナトリウム塩)〕45部を用いた以外は、上記製造例23と同様にして、還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子26)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、52.5質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、22.5質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、119nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、+5.8mVであった
【0171】
(製造例27)
上記製造例23において、蒸溜水を320.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、還元性成分として、還元性成分〔ピセアタンノール、森永製菓株式会社社製(パセノールLA)〕44部を用いた以外は、上記製造例23と同様にして、還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子27)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、47.5質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、24.6質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、128nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、+9.1mVであった。
【0172】
(製造例28)
上記製造例23において、蒸溜水を320.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、還元性成分として、還元性成分〔没食子酸プロピル、富士フィルム和光純薬社製〕44部を用いた以外は、上記製造例23と同様にして、還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子28)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、47.5質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、24.6質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、78nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、-8.8mVであった。
【0173】
(製造例29)
上記製造例23において、蒸溜水を320.0部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30.5部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、還元性成分として、還元性成分〔ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、日揮ユニバーサル社製「BHT」〕44部を用いた以外は、上記製造例23と同様にして、還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子29)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、47.6質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、24.5質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、54nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、-11.7mVであった。
【0174】
(製造例30)
上記製造例23において、蒸溜水を319.5部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を25部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を50部とし、また、還元性成分として、還元性成分〔ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、日揮ユニバーサル社製「サステン1―F(BHA)」〕45部を用いた以外は、上記製造例23と同様にして、還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子30)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、47.2質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、25.0質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、79nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、-6.4mVであった。
【0175】
(製造例31)
2リットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、モノマー投入用1000ml分液漏斗を取り付け、温水槽にセットし、蒸留水296.2部、グリセリンモノメタクリレート〔ブレンマーGLM、日油社製〕5部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム〔アクリルエステルSEM-Na、三菱ケミカル社製〕5部、ノニオン性重合性界面活性剤〔(株)ADEKA社製、アデカリアソープER-20〕53.3部及び過硫酸アンモニウム0.5部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら、内温を50℃まで昇温した。
【0176】
一方、メタクリル酸シクロヘキシルモノマー50部と、メタクリル酸n-ブチル40部とからなる混合モノマーに、還元性成分〔タンニン、富士化学工業社製(タンニン酸S)〕30部、防腐剤成分〔フェノキシエタノール、四日市合成社製〕10部、架橋剤〔トリアリルイソシアヌレート、日本化成社製、タイク(TAIC)〕10部を混合した液を調製した。
この調製液を上記分液漏斗から温度50℃付近に保った上記フラスコ内に撹拌下で3時間にわたって添加し、乳化重合を行った。さらに5時間熟成して重合を終了し、還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子31)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、54.2質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、16.7質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、59nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、-8.5mVであった。
【0177】
(製造例32)
上記製造例31において、蒸溜水を296.2部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を45部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、還元性成分として、還元性成分〔タンニン、富士化学工業社製(タンニン酸S)〕28部、防腐剤成分としてベンズイソチアゾリノン((BIT)、大和化学工業社製)を12部を用いた以外は、上記製造例31と同様にして、還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子32)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、54.2質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、15.2質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、85nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、-6.8mVであった。
【0178】
(製造例33)
上記製造例31において、蒸溜水を306.2部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、還元性成分として、クロロゲン酸、富士化学工業社製(カフェノールP100)30.5部、防腐剤成分としてメチルイソチアゾリン(MIT)を大和化学工業社製、14.5部を用いた以外は、上記製造例31と同様にして、還元性を有する機能性粒子分散体の分散液(粒子33)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、48.7質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、17.5質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、106nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、2.8mVであった。
【0179】
上記製造例23~33で得た各還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)を得た。この製造例22~33で得た各還元性を有する機能性粒子分散体中の機能性粒子の固形分量は、35~40質量%であった。
上記で得られた製造例23~33の還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)を用いて、下記評価方法により、還元性能(溶存酸素の除去能)の持続性、分散安定性、抗菌効果について評価した。
【0180】
また、比較製造例3として、上記製造例23において、重合性界面活性剤として、アニオン系界面活性剤〔(株)ADEKA社製、 アデカリアソープSE-10N〕40部を用いた以外は、製造例23と同様にして還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)(粒子)を得た。この粒子におけるメタクリル酸エステルモノマーの含有量は、機能性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、48.6質量%、前記還元性成分の含有量は全ポリマー成分に対して、22.9質量%であった。また、機能性粒子の平均粒子径は、58nmであった。この還元性を有する機能性粒子のゼータ電位は、-51.4mVであった。
これらの結果を下記表5に示す。
【0181】
(還元性能の評価方法)
上記で得られた製造例23~33の還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)を用いて、還元性を溶存酸素量で測定することで評価した。評価は、溶存酸素メータ:WQ-320(堀場製作所社製)の溶存酸素計を用い、機能性粒子分散体作成後に温度25℃、保管期間48時間および3か月で放置し、測定温度25℃で測定したときの、還元性能の持続性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
A:溶存酸素量が0.1~10mg/L未満。
B:溶存酸素量が10~20mg/L未満。
C:溶存酸素量が20mg/L以上。
【0182】
(分散安定性の評価方法)
上記で得られた製造例23~33の機能性粒子分散体(分散液)を用いて、得られた各機能性粒子分散体10mlを、15mlのガラス製蓋付き瓶に、撹拌ボール(φ6.4mm、ステンレス鋼製)とともに充填し、密封した後に、キャップを上向きにして40℃の条件下1か月保存した後、夫々の分散体を振った。撹拌ボールがガラス製蓋付き瓶中で移動し始めるまでに振った回数により分散安定性を下記の評価基準で評価した。
評価基準:
A:0~3回。
B:4~10回。
C:11回以上。
※0回:ガラス製蓋付き瓶を傾けたときに撹拌ボールの動きが確認できる
【0183】
(抗菌効果の試験方法)
上記で得られた製造例23~33の機能性粒子分散体(分散液)を用いて、ISO 11930:2012(保存効力試験または微生物学的リスク評価、またはその両方によって生成されたデータの解釈のための手順)に準拠した下記の微生物試験方法で行った。
下記細菌群、酵母、糸状菌の三群で初期、及び、40℃期間3か月後に対し、チャレンジテストを実施した。
細菌群: Stapylococcus aureus NBRC13276、 Escherichia coli NBRC3972
酵母: Candida albicans NBRC1594
糸状菌: Aspergillus brasiliensis
〈接種菌液の調製〉
接種菌液の調製:ISO 11930:2012に従って菌液を調製した。
細菌群:各菌種毎にISO 11930:2012に従って菌液を調製した。菌種毎に1×107~1×108cfu/mlに調整した菌液を三種等量混合し接種菌液とした。
酵母:ISO 11930:2012に従い、1×106~1×107cfu/mlになるように菌液を調製した。
糸状菌:ISO 11930:2012に従い、1×106~ 1×107cfu/mlになるように菌液を調製した。
〈接種〉
筆記具用インク組成物に対し、1質量%の量の菌液を接種した。〈保管〉接種した筆記具用インク組成物は、温度22.5±2.5℃に保管し指定された期間ごとに検出培養を行った。
〈検出培養〉
細菌群はSCD寒天培地で、酵母はSD寒天培地で、糸状菌はPD寒天培地でそれぞれ10枚に合計1g塗抹し、細菌群と酵母は32.5℃、2日間、糸状菌は22.5℃、5日間培養した。
〈評価基準〉
A+:3日目の時点でコロニーが出現しない。
A:7日目の時点でコロニーが出現しない。
B:21日目の時点でコロニーが出現しない。
C:28日目の時点で数個から数十個のコロニーが出現している。
D:28日の時点で明らかに増えている。
【0184】
【0185】
上記表5の結果から明らかなように、上記で得られた製造例23~33の還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)は、比較製造例3に較べ、還元性能(溶存酸素の除去能)の持続性、分散安定性、抗菌効果の全てに優れていることが判明した。
更に、製造例31~33の機能性粒子分散体(分散液)は、更に、抗菌効果を高めるために、還元性成分と共に、防腐剤成分を含有したものであり、製造例23~30の還元性成分を含む還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)よりも、抗菌性能を更に高めながら、その持続効果、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、しかも、分散安定性に優れていることを確認した。
【0186】
〔本実施形態3:実施例23~33及び比較例9~12:筆記具用水性インク組成物の調製〕
実施例23~33用として、上記製造例23~33で得た各還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)を得た。この製造例23~33で得た各還元性を有する機能性粒子分散体中の機能性粒子の固形分量は、35~40質量%であった。
一方、比較例9として比較製造例3の分散体を用いた。比較例10~12用として、下記3種の既知の酸素吸収剤を用いた。
比較例10はL-アスコルビン酸ナトリウム、比較例11はN-アセチル-システイン、比較例12はN-ビニル-2-ピロリドンのオリゴマー(重合度:2~6)を用いた。
【0187】
上記製造例23~33により製造した各還元性を有する機能性粒子分散体(粒子23~33)、上記比較例9~12を用いて、下記に示す配合組成(全量100質量%)により常法により各筆記具用水性インク組成物を調製した。
インク組成:(全量100質量%)
着色樹脂微粒子(※7) 50質量%
増粘剤:アルカリ膨潤型エマルション(※8) 0.3質量%
潤滑剤:リン酸エステル(※9) 0.5質量%
各機能性粒子分散体(製造例23~33、比較製造例3、比較例10~12)20質量%
pH調整剤(トリエタノールアミン) 1質量%
水溶性有機溶剤(エチレングリコール) 5質量%
水(蒸留水) 残 部
※7:ラブコロール224(SMD)ブラック、大日精化社製
※8:RHEOTECH3800、アルケマ社製
※9:フォスファノールRS―610、東邦化学工業社製
【0188】
得られた各筆記具用水性インク組成物(全量100質量%)について、下記構成の筆記具A、B、下記評価方法により、筆記性(上下描線濃度差)、経時後の気泡発生状況の評価、衝撃を与えた後の気泡発生状況の評価について評価した。
下記表6に実施例23~33及び比較例9~12の各評価結果を示す。
【0189】
(筆記具:ボールペンの作製)
ボールペンA〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:シグノUM-100〕の軸を使用し、軸径6.2mm、全長129mmポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.5mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに上記各水性インク組成物を充填し、インク後端に鉱油を主成分とするインク追従体を装填し、水性ボールペンを作製した。
ボールペンB〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:シグノUMN-155〕の軸を使用し、軸径6.2mm、全長112mmポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.5mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに上記各水性インク組成物を充填し、インク後端に鉱油を主成分とするインク追従体を装填し、ノック式水性ボールペンを作製した。
【0190】
〔筆記性(上下描線濃度差)の評価方法〕
上記構成の各水性ボールペンAを、室温(25℃、以下同様)下で、1ヶ月放置後、終筆まで筆記をし、書き始めと描き終わりの描線の濃度差を比較し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
A:濃度差がない。
B:やや濃度差が認められる。
C:濃度差がはっきりと認められる。
D:濃度差が顕著であり、描線の視認が困難な箇所が認められる。
【0191】
<経時後の気泡発生状況の評価方法>
上記構成の各ボールペンAにおいて、ペン先を下向きにして、50℃、30%RHの雰囲気下で1か月保管し、左記の期間が経過した後に、ペン先を下向きのまま室温で6時間放置し、インクとインク追従体界面に出現する気泡を目視にて確認し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
A:インクとインク追従体界面に気泡が全く存在しない。
B:インクとインク追従体界面に直径1mm未満の気泡が1個存在する。
C:インクとインク追従体界面に直径1mm以上の気泡が1個以上、若しくは直径1mm未満の気泡が2個以上存在する。
D:インク追従体が気泡で押し上げられ、インク界面との間に空隙が存在する。
【0192】
<衝撃を与えた後の気泡発生状況の評価方法>
上記構成のノック式ボールペンBを、ペン先を下向きにして、ノックを5回行った後、ペン先を下向きにして、上記50℃、30%RHの雰囲気下で1週間保管し、左記の期間が経過した後に、ペン先を下向きのまま室温で6時間放置し、インクとインク追従体界面に出現する気泡を目視にて確認し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
A:インクとインク追従体界面に気泡が全く存在しない。
B:インクとインク追従体界面に直径1mm未満の気泡が1個存在する。
C:インクとインク追従体界面に直径1mm以上の気泡が1個以上、若しくは直径1mm未満の気泡が2個以上存在する。
D:インク追従体が気泡で押し上げられ、インク界面との間に空隙が存在する。
【0193】
得られた各筆記具用水性インク組成物(全量100質量%)について、ISO 11930:2012(保存効力試験または微生物学的リスク評価、またはその両方によって生成されたデータの解釈のための手順)に準拠した下記の微生物試験方法で行った。
下記細菌群、酵母、糸状菌の三群で初期、及び、40℃期間3か月後のチャレンジテストを実施した。抗菌効果をさらに厳しく確認するため、各筆記具用水性インク組成物を、ポスカPC-5M(三菱鉛筆社製、軸材質PP樹脂、撹拌ボール:ステンレス製(φ:6.4mm))にインクを入れ、温度40℃、期間3か月保存した後、ペン体から抜き取ったインクについて、上述の評価方法(細菌群、酵母、糸状菌の三群でチャレンジテスト、評価基準)を実施した。
細菌群: Stapylococcus aureus NBRC13276、 Escherichia coli NBRC3972
酵母: Candida albicans NBRC1594
糸状菌: Aspergillus brasiliensis
〈接種菌液の調製〉
接種菌液の調製:ISO 11930:2012に従って菌液を調製した。
細菌群:各菌種毎にISO 11930:2012に従って菌液を調製した。菌種毎に1×107~1×108cfu/mlに調整した菌液を三種等量混合し接種菌液とした。
酵母:ISO 11930:2012に従い、1×106~1×107cfu/mlになるように菌液を調製した。
糸状菌:ISO 11930:2012に従い、1×106~1×107cfu/mlになるように菌液を調製した。
〈接種〉
筆記具用インク組成物に対し、1質量%の量の菌液を接種した。
〈保管〉
接種した筆記具用インク組成物は、温度22.5±2.5℃に保管し指定された期間ごとに検出培養を行った。〈検出培養〉細菌群はSCD寒天培地で、酵母はSD寒天培地で、糸状菌はPD寒天培地でそれぞれ10枚に合計1g塗抹し、細菌群と酵母は32.5℃、2日間、糸状菌は22.5℃、5日間培養した。
〈評価基準〉
A+:3日目の時点でコロニーが出現しない。
A:7日目の時点でコロニーが出現しない。
B:21日目の時点でコロニーが出現しない。
C:28日目の時点で数個から数十個のコロニーが出現している。
D:28日の時点で明らかに増えている。
【0194】
【0195】
上記表6を考察すると、本発明範囲となる実施例23~33は、本発明の範囲外となる比較例9~12に較べ、筆記性(上下描線濃度差)、経時後でも気泡発生はなく、また、衝撃を与えた後においても気泡の発生はなく、酸素に対する還元性能(酸素吸収能)の強さと持続性をもちながら、他のインクの配合成分に悪影響を及ぼすことがないことが確認できた。
更に、実施例31~33の還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)を用いた筆記具用水性インク組成物は、更に、抗菌効果を高めるために、還元性成分と共に、防腐剤成分を含むものとしたものであり、実施例23~30の還元性を有する機能性粒子分散体(分散液)よりも、抗菌性能を更に高めながら、その持続効果、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、しかも、分散安定性に優れていることを確認した。
また、上記で作製した各ボールペンA、Bは、共に、カスレもなく、滲まず、十分な描線濃度を有し、鮮明な描線となることを確認した。
【0196】
〔実施例34~36:各化粧料の調製〕
実施例34~36として、上記製造例1、10、23で得た各機能性粒子分散体(分散液)を用いて、下記に示す配合組成(全量100質量%)により常法により各化粧料を調製した。
(実施例34)
アイライナー用化粧料の組成:(全量100質量%)
機能性粒子分散体(製造例1) 20質量%
色材(顔料):酸化鉄 *1 14質量%
被膜剤:エマルション樹脂粒子 *2 14質量%
ノニオン系界面活性剤: POE(20)セチルエーテル 0.05質量%
添加成分: EDTA―Na 0.07質量%
分散剤 ポリアスパラギン酸ナトリウム *3 1質量%
水系溶剤 1,3―ブチレングリコール 10質量%
水系溶剤 水(精製水) 残 部
*1 TALOX ABL-412HP/R-516Pチタン工業社製
*2 YODOSOL GH800F、ヌーリオン・ジャパン株式会社製
*3 アクアデュウSPA-30B、味の素社製
【0197】
(実施例35)
アイブロウ用化粧料の組成:(全量100質量%)
機能性粒子分散体(製造例10) 10質量%
色材(顔料): 酸化鉄 *1 10質量%
色材(顔料): マイカ *2 5質量%
色材(顔料):カーボンブラック *3 5質量%
色材(顔料): 酸化チタン *4 5質量%
被膜形成剤:トリメチルシロキシケイ酸 *5 10質量%
界面活性剤:ステアリン酸ナトリウム 2質量%
油分 スクワラン 10質量%
水系溶剤 グリセリン 20質量%
水系溶剤 水(精製水) 残 部
*1 TALOX ABL-412HP/R-516P(チタン工業社製)
*2 MICA POWDER Y―2300 (ヤマグチマイカ社製)
*3 DK BLACK No.2 (DAITO KASEI社製)
*4 TIPAQUE CR-50 (石原産業社製)
*5 KF-7312K(信越シリコーン社製)
【0198】
(実施例36)
ボディアート用化粧料の組成:(全量100質量%)
機能性粒子分散体(製造例11) 10質量%
被膜形成剤 *1 15質量%
色材(染料)青1号(C.I.42090) 5質量%
pH調整剤 5mol/L HCl 1質量%
水系溶剤 n-プロピルアルコール 30質量%
水系溶剤 水(精製水) 残 部
*1 エマポリーCE119N(岐阜セラック製造所社製)
【0199】
(実施例37)
毛染め用の化粧料の組成:(全量100質量%)
機能性粒子分散体(製造例23) 10質量%
色材(染料)黒401 1質量%
pH調整剤 乳酸 2質量%
水系溶剤 ベンジルアルコール 10質量%
水系溶剤 エタノール 40質量%
水系溶剤 水(精製水) 残 部
【0200】
上記実施例34~37で得た各化粧料について、その使用性、効果等について評価した。
上記実施例34で得たアイライナー用の化粧料について、塗布部に穂筆を有するペンタイプの塗布具(
図1)に搭載し、皮膚への筆記性、安定性、抗菌効果(チャレンジテスト、40℃期間3か月後の抗菌効果については、
図1の塗布具に化粧料を充填した化粧料を抜き取ったもの)の評価を行ったところ、比較製造例1と比較して、優れていることが確認された。
上記実施例35で得たアイブロウ用の化粧料については、固形化粧料(縦3cm×横3cm、厚さ0.5cmの正方形状)として成形し、残香強度、保存安定性(分離等がない)、抗菌性能の評価を行ったところ、製造比較例2と比較して、実施例35のアイブロウ用の化粧料が優れていることを確認した。尚、上記実施例35の抗菌性能については、アイブロウ用化粧料の表面に、試験菌液を直接噴霧し、固形化粧表面における抗菌性能の評価を行っている。
上記実施例36で得たボディアート用の化粧料について、塗布部に穂筆を有するペンタイプの塗布具(
図1)に搭載し、残香強度、分散安定性、抗菌効果の評価を行ったところ、比較製造例2と比較して、優れていることを確認した。
上記実施例37で得た毛染め用の化粧料について、塗布部に穂筆を有するペンタイプの塗布具(
図1)に搭載し凝集の発生、抗菌性能について評価を行ったところ、比較製造例3と比べて、優れていることを確認した。尚、還元性の評価においては、溶存酸素量の測定(溶存酸素メータ:WQ-320(堀場製作所社製)の溶存酸素計を用い、温度25℃、保管期間48時間および3か月で放置し、測定温度25℃で測定した値)を使用し評価を行った。溶存酸素量を比較製造例3と比較したが、本発明の還元性粒子を使用した毛染め用化粧料については、いずれも溶存酸素量の測定値が低く、優れていることを確認した。
本発明の機能性粒子分散体は、分散安定性に優れると共に、抗菌効果と芳香性能、または、酸素に対する還元性能(酸素吸収能)などに優れ、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、しかも、イオンの影響を受けやすい配合系等においても、低刺激性であり、機能性粒子の設計の自由度が大きく、様々な用途、例えば、医療用具、ベビー用品、介護用品、浴場用品、台所用品、食器、飲料水配管部品、生活衛生用品、家電製品、衣料品、建築資材、農業用資材、自動車用内装部品、文房具、筆記具やインクジェットプリンターなどのインク組成物、化粧水、乳液等のスキンケア化粧料、ファンデーション、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料(液体状または固形状)、ヘアミスト、ヘアオイル等の毛髪化粧料、デオドラント化粧料等に利用することができる。