(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146734
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】導体成形装置及び導体成形方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H02K15/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213884
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】202310335928.4
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 幹人
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP12
5H615SS04
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】直線部の配列ピッチの乱れが生じることなく導体線群を折り返し成形できる導体成形装置を提供する。
【解決手段】複数の導体線からなる導体線群を厚み方向に折り返すことによって、間隔をあけて配列される複数の直線部と、直線部の両端に配置される複数の斜行部と、を有するとともに、直線部が二重に積層されている導体を成形する導体成形装置であって、折り返された導体線群における直線部の配列方向の前記間隔を維持する間隔維持治具を備え、間隔維持治具は、直線部の配列方向に沿って延びる基台と、基台に複数突設され、配列方向に隣り合う直線部の間にそれぞれ挿入されて間隔を維持するピン部材と、を有する。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体線からなる導体線群を厚み方向に折り返すことによって、間隔をあけて配列される複数の直線部と、前記直線部の両端に配置される複数の斜行部と、を有するとともに、前記直線部が二重に積層されている導体を成形する導体成形装置であって、
折り返された前記導体線群における前記直線部の配列方向の前記間隔を維持する間隔維持治具を備え、
前記間隔維持治具は、前記直線部の配列方向に沿って延びる基台と、前記基台に複数突設され、配列方向に隣り合う前記直線部の間にそれぞれ挿入されて前記間隔を維持するピン部材と、を有する、導体成形装置。
【請求項2】
前記ピン部材は、積層された前記直線部を前記基台との間に挟むことによって、前記直線部の浮き上がりを防止する止め部を有する、請求項1に記載の導体成形装置。
【請求項3】
前記ピン部材は、前記基台上において、積層された前記直線部を前記基台と前記止め部との間で挟む止め位置と、前記止め部と前記直線部とが干渉することなく、配列方向に隣り合う前記直線部の間に挿入可能な挿入位置と、の間を位置変更可能に設けられる、請求項2に記載の導体成形装置。
【請求項4】
前記ピン部材は、前記直線部の積層方向に沿う軸部を有し、
前記止め部は、前記軸部から径方向に突出して設けられ、
前記ピン部材は、前記軸部を中心に回転することによって、前記止め位置と前記挿入可能位置との間を位置変更可能に設けられる、請求項3に記載の導体成形装置。
【請求項5】
複数の導体線からなる導体線群を厚み方向に折り返すことによって、間隔をあけて配列される複数の直線部と、前記直線部の両端に配置される複数の斜行部と、を有するとともに、前記直線部が二重に積層されている導体を成形する導体成形方法であって、
前記導体線群の折り返し後に、前記直線部の配列方向に沿って延びる基台に複数突設されるピン部材を、配列方向に隣り合う前記直線部の間にそれぞれすることによって前記間隔を維持する、導体成形方法。
【請求項6】
前記ピン部材は、積層された前記直線部を前記基台との間に挟む止め部を有し、
配列方向に隣り合う前記直線部の間にそれぞれ前記ピン部材を挿入した後に、前記止め部によって、積層された前記直線部の浮き上がりを防止する、請求項5に記載の導体成形方法。
【請求項7】
前記ピン部材は、前記基台上において、積層された前記直線部を前記基台と前記止め部との間で挟む止め位置と、前記止め部と前記直線部とが干渉することなく、配列方向に隣り合う前記直線部の間に挿入可能な挿入位置と、の間を位置変更可能に設けられ、
前記ピン部材を配列方向に隣り合う前記直線部の間にそれぞれ挿入する際に、前記ピン部材を前記挿入位置に設定し、挿入後に、前記ピン部材を前記止め位置に設定して、前記止め部によって、積層された前記直線部の浮き上がりを防止する、請求項6に記載の導体成形方法。
【請求項8】
前記ピン部材は、前記直線部の積層方向に沿う軸部を有し、
前記止め部は、前記軸部から径方向に突出して設けられ、
前記ピン部材を、前記軸部を中心に回転させることによって、前記ピン部材の位置を、前記止め位置と前記挿入可能位置との間で変更する、請求項7に記載の導体成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体成形装置及び導体成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の導体線からなる導体線群を厚み方向に折り返すことによって、間隔あけて配列される複数の直線部と、直線部の両端に配置される複数の斜行部と、を有するとともに、直線部が二重に積層されている導体を成形することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導体線群は厚み方向に折り返されて成形されるため、折り返し後の導体線群に発生するスプリングバックによって、直線部の配列ピッチが乱れる場合がある。直線部の配列ピッチが乱れると、成形時に使用される治具に直線部が干渉したり、直線部がステータコアのスロットに挿入される際に、直線部がスロットの壁面等に干渉したりするおそれがある。これらの干渉が発生すると、導体線に必要以上の接触圧力が掛かり、導体線の変形や、導体線の表面を覆う絶縁被膜の損傷が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、直線部の配列ピッチの乱れが生じることなく導体線群を折り返し成形できる導体成形装置及び導体成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る導体成形装置は、複数の導体線(例えば、後述の導体線1)からなる導体線群(例えば、後述の導体線群10)を厚み方向に折り返すことによって、間隔をあけて配列される複数の直線部(例えば、後述の直線部101)と、前記直線部の両端に配置される複数の斜行部(例えば、後述のコイルエンド部102)と、を有するとともに、前記直線部が二重に積層されている導体(例えば、後述の導体100)を成形する導体成形装置(例えば、後述の導体成形装置200)であって、折り返された前記導体線群における前記直線部の配列方向の前記間隔を維持する間隔維持治具(例えば、後述の間隔維持治具220,220A,220B)を備え、前記間隔維持治具は、前記直線部の配列方向に沿って延びる基台(例えば、後述の基台221)と、前記基台に複数突設され、配列方向に隣り合う前記直線部の間にそれぞれ挿入されて前記間隔を維持するピン部材(例えば、後述のピン部材222)と、を有する。
【0007】
(2) 上記(1)に記載の導体成形装置において、前記ピン部材は、積層された前記直線部を前記基台との間に挟むことによって、前記直線部の浮き上がりを防止する止め部(例えば、後述の止め部2222)を有する。
【0008】
(3) 上記(2)に記載の導体成形装置において、前記ピン部材は、前記基台上において、積層された前記直線部を前記基台と前記止め部との間で挟む止め位置と、前記止め部と前記直線部とが干渉することなく、配列方向に隣り合う前記直線部の間に挿入可能な挿入位置と、の間を位置変更可能に設けられる。
【0009】
(4) 上記(3)に記載の導体成形装置において、前記ピン部材は、前記直線部の積層方向に沿う軸部(例えば、後述の軸部2221)を有し、前記止め部は、前記軸部から径方向に突出して設けられ、前記ピン部材は、前記軸部を中心に回転することによって、前記止め位置と前記挿入可能位置との間を位置変更可能に設けられる。
【0010】
(5) 本発明に係る導体成形方法は、複数の導体線(例えば、後述の導体線1)からなる導体線群(例えば、後述の導体線群10)を厚み方向に折り返すことによって、間隔をあけて配列される複数の直線部(例えば、後述の直線部101)と、前記直線部の両端に配置される複数の斜行部(例えば、後述のコイルエンド部102)と、を有するとともに、前記直線部が二重に積層されている導体(例えば、後述の導体100)を成形する導体成形方法であって、前記導体線群の折り返し後に、前記直線部の配列方向に沿って延びる基台(例えば、後述の基台221)に複数突設されるピン部材(例えば、後述のピン部材222)を、配列方向に隣り合う前記直線部の間にそれぞれすることによって前記間隔を維持する。
【0011】
(6) 上記(5)に記載の導体成形方法において、前記ピン部材は、積層された前記直線部を前記基台との間に挟む止め部(例えば、後述の止め部2222)を有し、配列方向に隣り合う前記直線部の間にそれぞれ前記ピン部材を挿入した後に、前記止め部によって、積層された前記直線部の浮き上がりを防止する。
【0012】
(7) 上記(6)に記載の導体成形方法において、前記ピン部材は、前記基台上において、積層された前記直線部を前記基台と前記止め部との間で挟む止め位置と、前記止め部と前記直線部とが干渉することなく、配列方向に隣り合う前記直線部の間に挿入可能な挿入位置と、の間を位置変更可能に設けられ、前記ピン部材を配列方向に隣り合う前記直線部の間にそれぞれ挿入する際に、前記ピン部材を前記挿入位置に設定し、挿入後に、前記ピン部材を前記止め位置に設定して、前記止め部によって、積層された前記直線部の浮き上がりを防止する。
【0013】
(8) 上記(7)に記載の導体成形方法において、前記ピン部材は、前記直線部の積層方向に沿う軸部(例えば、後述の軸部2221)を有し、前記止め部は、前記軸部から径方向に突出して設けられ、前記ピン部材を、前記軸部を中心に回転させることによって、前記ピン部材の位置を、前記止め位置と前記挿入可能位置との間で変更する。
【発明の効果】
【0014】
上記(1)及び上記(5)によれば、折り返し成形される導体群線に対して、配列方向に隣り合う直線部の間にピン部材を挿入することによって、成形時の直線部の配列ピッチの乱れを防止することができる。そのため、成形時に使用される治具に直線部が干渉したり、成形後の導体の直線部がステータコアのスロットに挿入される際に、直線部がスロットの壁面等に干渉したりすることがなくなり、導体線の変形や、導体線の表面を覆う絶縁被膜の損傷が生じるおそれがない。
【0015】
上記(2)及び上記(6)によれば、ピン部材の止め部によって、積層された直線部の浮き上がりを防止することができるため、積層状態が崩れることなく直線部が整列した導体を成形することができる。
【0016】
上記(3)及び上記(7)によれば、ピン部材の挿入時に、ピン部材と直線部とが干渉して直線部が損傷するおそれがなく、ピン部材の挿入後には、止め部によって直線部の浮き上がりを防止することができる。
【0017】
上記(4)及び上記(8)によれば、ピン部材を回転させるだけで、挿入時の直線部との干渉と、挿入後の止め部による直線部の浮き上がりと、を容易に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の導体成形方法によって成形される導体の一例を示す正面図である。
【
図2】導体が装着されたステータを示す平面図である。
【
図3】U字状の導体線の成形方法を説明する図である。
【
図6】本実施形態の導体成形方法を実施する導体成形装置の一例を示す斜視図である。
【
図9】導体線を把持する前の把持装置の一部を示す斜視図である。
【
図10】導体線を把持した後の把持装置の一部を示す斜視図である。
【
図11】間隔維持治具の下板部を示す平面図である。
【
図12】間隔維持治具のピン部材及びカム部材を示す側面図である。
【
図14】間隔維持治具の一部の内部を破線で示す斜視図である。
【
図15】間隔維持部材のカム部材の動作を説明する図である。
【
図16】間隔維持治具のピン部材の挿入位置と止め位置とを説明する平面図である。
【
図17】導体成形装置による導体成形方法を説明する図である。
【
図18】導体成形装置による導体成形方法を説明する図である。
【
図19】導体成形装置による導体成形方法を説明する図である。
【
図20】導体成形装置による導体成形方法を説明する図である。
【
図21】導体成形装置による導体成形方法を説明する図である。
【
図22】導体成形装置による導体成形方法を説明する図である。
【
図23】間隔維持治具のピン部材の止め部と脚部との関係を説明する図である。
【
図24】導体成形装置による導体成形方法を説明する図である。
【
図25】導体成形装置による導体成形方法を説明する図である。
【
図26】導体成形装置による導体成形方法を説明する図である。
【
図27】2つの間隔維持治具のピン部材の配置を模式的に説明する平面図である。
【
図28】導体成形装置による導体成形方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の導体成形装置及び導体成形方法によって成形される導体100の一例を示す。導体100は、複数本の導体線1を使用して折り曲げ成形される。本実施形態の導体100は、6本の導体線1によって構成され、一方向(
図1におけるX方向)に長尺な帯状に成形される帯状コイルである。
【0020】
ここで、図中に示す方向について次のように定義する。X方向は、導体100の長さ方向である。このX方向は、導体100を構成する導体線1の幅方向に対応する。Y方向は、導体100の幅方向である。このY方向は、導体100の直線部101の延び方向に対応するとともに、導体線1の長さ方向に対応する。Z方向は、導体100の厚み方向である。このZ方向は、導体線1の厚み方向に対応する。各図中のX,Y,Z方向は、導体100におけるX,Y,Z方向にそれぞれ対応している。
【0021】
導体100は、長さ方向に一定の間隔で並列する複数の直線部101と、各直線部101の延び方向の両端に配置される複数のコイルエンド部102と、を有する。直線部101は、導体100の幅方向に沿って延びている。コイルエンド部102は、5本おきに配置される2本の直線部101,101の一方端部同士と他方端部同士とを、導体100の長さ方向に沿って交互に山型状に接続している。コイルエンド部102は、直線部101の両端に配置される斜行部である。
【0022】
コイルエンド部102は、直線部101との境界部103から斜めに延びる傾斜部102aと、2本の直線部101,101にそれぞれ接続される傾斜部102a,102aの先端同士が接続された頂点102bと、を有する山型状に形成される。導体100において、それぞれ二重構造の導体線1,1の外側の導体線1の2本の脚部12,12によって形成される直線部101,101は、導体100の長さ方向に6本おきに配置され、内側の導体線1の2本の脚部12,12によって形成される直線部101,101は、導体100の長さ方向に5本おきに配置されている。
【0023】
導体100は、
図2に示すように、ステータコア31に装着されて、回転電機のステータ3を構成する。ステータコア31は、軸方向(
図2の紙面に対する垂直方向)に貫通する軸孔32に向けて放射状に突出する複数のティース33を有する。周方向に隣り合うティース33,33の間には、それぞれ軸孔32に向けて開口する複数のスロット34が形成される。導体100は、直線部101をスロット34内に順次挿入することによって、ステータコア31を複数周に亘って周回するように装着される。導体100のコイルエンド部102は、ステータコア31の軸方向の両外側に突出する。
【0024】
導体100を構成する導体線1は、導体100の長さ方向に亘って途切れることなく連続する連続線である。直線状の導体線1は、
図3に示すように、略中央部において引き出しツール300によって折り曲げ成形される。これによって、導体線1は、1つのU字部11と、一対の直線状の脚部12,12と、を有するU字状に成形される。
【0025】
導体線1は、
図4に示すように、複数本の平角線1aによってそれぞれ構成される。平角線1aは、略矩形の断面を有する銅線等の金属線である。平角線1aの表面は、図示しない樹脂製の絶縁被膜で覆われている。本実施形態の導体線1は、2本の平角線1a,1aが密接するように導体線1の幅方向に並列した分割線である。導体線1は、引き出しツール300によって、平角線1a,1aの並列方向である導体線1の幅方向に折り曲げられる。
【0026】
それぞれU字状に成形された導体線1は、
図5に示すように、U字部11を同一側に揃えた状態で、2本ずつ内側と外側とに二重に配置される。同様にして二重に配置された2本ずつの導体線1,1からなる3つの組は、12本の脚部12が一定の間隔で並列するように、幅方向にずらせて重ねられる。これによって、6本のU字状の導体線1からなる導体線群10が形成される。導体線群10は、
図6及び
図7に示す導体成形装置200を用いて導体100に成形される。
【0027】
図6及び
図7は、一実施形態に係る導体成形装置200の主要部の構成の概要を示している。導体成形装置200は、
図6に示すように、少なくとも4つの把持装置210A,210B,210C,210Dと、
図7に示す間隔維持治具220と、を備える。
図6において、間隔維持治具220は示されていない。
図7は1つの間隔維持治具220のみを示している。しかし、間隔維持治具220は、導体成形装置200に少なくとも2つ設けられることが望ましい。本実施形態では、2つの間隔維持治具220A,220Bを用いて導体線群10の成形を行う場合について説明する。
【0028】
把持装置210A,210B,210C,210Dは、導体線群10の12本の脚部12を一度に把持及び把持解除可能に構成される。4つの把持装置210A,210B,210C,210Dの把持及び把持解除のための構成は同一であるため、
図8~
図10を参照して、1つの把持装置210の構成について説明する。
【0029】
図8に示すように、把持装置210は、導体線群10に配列される12本の脚部12に亘って長尺に形成される直方体状である。把持装置210は、把持装置210の長さ方向沿って延びる固定ブロック211と、12個の可動ブロック212と、を有する。
【0030】
図9及び
図10に示すように、固定ブロック211には、導体線群10の12本の脚部12を収容する12か所の溝211aが設けられている。12個の可動ブロック212は、固定ブロック211の溝211a内に、それぞれ脚部12を嵌合可能な隙間Gを残して、図中のX方向に沿って移動可能に収容されている。把持装置210は、図示しない駆動機構の駆動によって、溝211a内の全ての可動ブロック212を、
図9中の白抜き矢印の方向にそれぞれ同時に移動させる。これによって、把持装置210は、各隙間Gに嵌合する導体線群10の脚部12を、固定ブロック211と可動ブロック212との間でそれぞれ挟み付けて把持する。なお、把持装置210による脚部12の把持方向は、導体線1を構成する2本の平角線1a,1aの並列方向である。したがって、把持装置210は、導体線1の脚部12を、導体線1の幅方向に挟み付けて把持する。
【0031】
4つの把持装置210A,210B,210C,210Dは、導体線群10の厚み方向(Z方向)の同一面側に、導体線群10の長さ方向(Y方向)に間隔をおいて、互いに平行に配置される。
図6に示す導体成形装置200は、成形工程の初期位置を示している。このとき、把持装置210Aは、導体線群10の各U字部11の近傍に配置される。把持装置210Bは、把持装置210Aよりも導体線群10の各U字部11から遠い側に、把持装置210Aから所定の間隔をあけて配置される。把持装置210Cは、把持装置210Bよりも導体線群10の各U字部11から遠い側に、把持装置210Bから所定の間隔をあけて配置される。把持装置210Dは、把持装置210Cよりも導体線群10の各U字部11から遠い側に、把持装置210Cから所定の間隔をあけて配置される。
【0032】
図6に示すように、把持装置210Aの側縁E1と把持装置210Bの側縁E2との間、及び把持装置210Cの側縁E1と把持装置210Dの側縁E2との間は、いずれも等しい距離Lを有する。側縁E1,E2は、把持装置210A,210B,210C,210Dにおいて、脚部12を把持する面に平行に配置される2つ側縁である。把持装置210A,210B,210C,210Dにおいて、側縁E1は、導体線群10のU字部11に近い側の側縁であり、側縁E2は、導体線群10のU字部11に遠い側の側縁である。距離Lは、
図1に示す導体100の直線部101の延び方向の長さLと実質的に同一である。
【0033】
導体線群10における把持装置210Aの側縁E2と把持装置210Bの側縁E1との間の領域、及び把持装置210Cの側縁E1と把持装置210Dの側縁E2との間の領域は、それぞれ導体100の直線部101を形成するための直線部形成領域10Aを構成する。したがって、把持装置210A,210B及び把持装置210C,210Dは、それぞれ導体線群10における直線部形成領域10A内において、12本の脚部12を把持している。
図6に示す導体線群10の脚部12において、直線部形成領域10Aは白抜きで示されている。
【0034】
導体線群10における把持装置210Bの側縁E2と把持装置210Cの側縁E1との間の領域は、導体100のコイルエンド部102を形成するためのコイルエンド部形成領域10Bを構成する。
図6に示す導体線群10の脚部12において、コイルエンド部形成領域10Bはハッチングによって示されている。
【0035】
直線部形成領域10A及びコイルエンド部形成領域10Bは、導体線群10のU字部11側から、脚部12の長さ方向(Y方向)に沿って、交互に配置される。
【0036】
4つの把持装置210A,210B,210C,210Dのうち、導体線群10のU字部11に近い2つの把持装置210A,210Bは、図示しない回転機構部の駆動によって、距離Lを維持した状態で、
図6に示す仮想的な折り返し線Jを軸として正逆方向に回転可能に設けられている。折り返し線Jは、把持装置210Bと把持装置210Cとの間の中間位置に、
図6中のX方向に沿って設定される。この中間位置は、導体線群10の折り返し成形後にコイルエンド部102の頂点102bの位置に対応する位置である。折り返し線Jは、脚部12の長さ方向に直交する方向であり、4つの把持装置210A,210B,210C,210Dの長さ方向に平行に配置される。導体線群10の脚部12を把持した把持装置210A,210Bが折り返し線Jを軸として回転することによって、導体線群10は、把持装置210Bと把持装置210Cとの間のコイルエンド部形成領域10Bの中央で折り返される。これによって、折り返し工程が実行される。
【0037】
把持装置210A,210Bは、図示しない斜行機構部の駆動によって、把持装置210C,210Dに対して、距離Lを維持した状態で、
図6中のX方向に沿って相対的に平行移動可能に設けられている。本実施形態の導体成形装置200において、把持装置210C,210DはX方向に移動不能に設けられ、把持装置210A,210BがX方向に平行移動可能に設けられている。しかし、把持装置210A,210BはX方向に移動不能に設けられ、把持装置210C,210DがX方向に平行移動可能に設けられてもよい。また、把持装置210A,210Bと把持装置210C,210Dとが、それぞれ互いに反対方向に平行移動可能に設けられてもよい。導体線群10の脚部12を把持した把持装置210A,210Bが、把持装置210C,210Dに対して、X方向に平行移動することによって、把持装置210Bと把持装置210Cとの間の導体線群10のコイルエンド部形成領域10Bは、脚部12の長さ方向に対して斜めに傾斜するように折り曲げられる。これによって、斜行工程が実行される。
【0038】
間隔維持治具220A,220Bは、折り返された後に重なり合う把持装置210A,210Dと把持装置210B,210Cとの間の直線部形成領域10A,10Aに配置される。具体的には、間隔維持治具220A,220Bは、コイルエンド部形成領域10Bが折り返された後の直線部形成領域10Aにおいて、導体線群10の厚み方向に2本ずつの直線部101,101が積層されている領域に配置される。
【0039】
2つの間隔維持治具220A,220Bは同一構成であるため、1つの間隔維持治具220の構成について、
図7、
図11~
図16を参照して説明する。間隔維持治具220は、基台221と、複数のピン部材222と、複数のカム部材223と、駆動部224と、を有する。
【0040】
基台221は、導体線群10における複数の脚部12の配列方向(X方向)に長尺な板状に形成される。導体線群10の脚部12の延び方向に沿う基台221の幅は、把持装置210Aと把持装置210Bとの間、もしくは把持装置210Cと把持装置210Dとの間に収容可能な幅を有する(
図22参照)。
図7に示すように、基台221は、下板部2211と、上板部2212と、によって構成される。
【0041】
下板部2211には、
図11に示すように、1本のガイド溝2211aと、複数のカム部材収容溝2211bと、が設けられる。ガイド溝2211aは、下板部2211の上面に凹設されている。ガイド溝2211aは、下板部2211の幅方向(Y方向)の中央に配置され、下板部2211の長さ方向(X方向)に沿って直線状に延びている。
【0042】
カム部材収容溝2211bは、下板部2211の上面に円形に凹設され、下板部2211の長さ方向に沿って千鳥状に配列されている。カム部材収容溝2211bの内径及び深さは、ガイド溝2211aの幅及び深さよりも大きい。ガイド溝2211aは、全てのカム部材収容溝2211bを縦断している。カム部材収容溝2211bの底部には、後述のカム部材223の回転軸2231aが挿入される孔2211cが、それぞれ偏心した位置に設けられている。
【0043】
上板部2212は、下板部2211のガイド溝2211a及び複数のカム部材収容溝2211bを覆っている。上板部2212は、下板部2211に対して、図示しないねじ等の固定部材によって固定されている。
【0044】
ピン部材222は、
図7に示すように、上板部2212に複数突設される。ピン部材222は、基台221の下板部2211に設けられるカム部材収容溝2211bと同数設けられる。ピン部材222は、折り返し後の導体線群10におけるコイルエンド部形成領域10Bに配列される脚部12,12(直線部101,101)間にそれぞれ挿入可能なピッチで、上板部2212上に配列されている。本実施形態の間隔維持治具220において、複数のピン部材222は、基台221の長さ方向(X方向)に沿って、2列に配列されている。2列のピン部材222は、カム部材収容溝2211bと同様に、千鳥状に配列されている。2列のピン部材222の配列方向のピッチは、導体線群10のコイルエンド部形成領域10Bにおける脚部12,12(直線部101,101)の配列ピッチに対応している。
【0045】
ピン部材222は、
図7及び
図12に示すように、基台221の上板部2212に対して垂直に突出する軸部2221と、軸部2221の先端に設けられる止め部2222と、をそれぞれ有している。
【0046】
軸部2221は、ピン部材222の回転軸を構成する。軸部2221は、上板部2212を貫通し、基台221の内部に収容される後述のカム部材223に取り付けられる。軸部2221は、直線部形成領域10Aにおいて折り返された2本の脚部12,12(直線部101,101)の積層方向に沿って延びている。上板部2212の上面に対する軸部2221の突出高さは、2本の脚部12,12(直線部101,101)の積層方向の厚みに略等しい。軸部2221の直径は、
図16に示す導体線群10の幅方向に配列される脚部12,12(直線部101,101)間の寸法S1に略等しい。
【0047】
止め部2222は、横長の平板状に形成される。止め部2222の中央部が軸部2221の先端に取り付けられることによって、止め部2222は、軸部2221から径方向の相反する方向にそれぞれ突出している。これによって、ピン部材222は、
図12に示すように、側面から見てT字状に形成される。
【0048】
図16に示すように、止め部2222の幅方向の寸法S2は、脚部12,12(直線部101,101)間の寸法S1よりも僅かに小さく、軸部2221の直径に略等しい。止め部2222の長さ方向の寸法S3は、1本の脚部12(直線部101)の幅方向の寸法S0の2倍の寸法と、隣り合う脚部12,12(直線部101,101)間の寸法S1と、を足した寸法(S0×2+S1)に略等しい。
【0049】
カム部材223は、ピン部材222に対して、後述の駆動部224による駆動力を伝達することによって、ピン部材222を、軸部2221を中心にして回転させる部材である。カム部材223は、
図12~
図14に示すように、カム軸部2231と、回転軸2232と、カム腕部2233と、カムピン2234と、を有する。
【0050】
カム軸部2231は、ピン部材222の軸部2221よりも大きい外径を有する円柱体からなる。ピン部材222の軸部2221は、カム軸部2231の上面に同軸状に取り付けられている。回転軸2232は、カム軸部2231の下面の中心から下方に突出している。回転軸2232は、ピン部材222の軸部2221と同軸状に配置される。カム腕部2233は、カム軸部2231の上端部から径方向に突出する板部材からなる。
図13に示すように、カム腕部2233の幅は、カム軸部2231との接続側で最も大きく、カム軸部2231から遠ざかるに従って徐々に小さくなるように形成されている。カムピン2234は、カム腕部2233の先端の下面から下方に向けて突出している。
【0051】
カム部材223は、基台221の下板部2211に設けられるカム部材収容溝2211b内にそれぞれ収容される。詳しくは、カム部材223の回転軸2232は、カム部材収容溝2211b内に偏心して設けられる孔2211cに嵌合する。これによって、
図12に示すように、カム部材223の全体が、カム部材収容溝2211b内に回転可能に収容される。なお、
図11には、2つのカム部材収容溝2211bに収容される2つのカム部材223のみが仮想線によって示されている。
【0052】
駆動部224は、基台221の長さ方向に沿って長尺な棒板状体からなる。駆動部224は、基台221の下板部2211のガイド溝2211a内に、基台221の長さ方向に沿ってスライド可能に収容される。駆動部224には、
図14及び
図15に示すように、複数のカムピン係合孔2241が貫通して設けられている。カムピン係合孔2241は、駆動部224の幅方向(Y方向)に長い長孔からなり、カム部材収容溝2211bの数及び配列ピッチに等しい数及びピッチで、駆動部224の長さ方向(X方向)に配列されている。駆動部224の一端224aは、
図7及び
図14に示すように、基台221の外部に突出し、間隔維持治具220を駆動するための図示しない駆動機構部に接続される。
【0053】
図14及び
図15に示すように、カム部材収容溝2211b内のカム部材223において、カム軸部2231は、駆動部224の幅方向の両側に千鳥状に配置され、カム腕部2233は、カム軸部2231から駆動部224の上面を覆うように配置されている。カム腕部2233に設けられるカムピン2234は、駆動部224の上面側から、それぞれ対応するカムピン係合孔2241に嵌合している。
【0054】
駆動部224が、
図15に示すように、図示しない駆動機構部によって長さ方向に所定距離だけ移動するように操作されると、カムピン2234によって駆動部224と係合するカム腕部2233の先端が、駆動部224の移動方向に沿う同一方向に所定距離だけそれぞれ移動する。これによって、各カム部材223は、回転軸2232を中心に90°回転する。各カム部材223が90°回転することによって、カム部材223に固定されるピン部材222も90°回転し、
図16に示すように、止め部2222の長さ方向の向きが90°変化する。
【0055】
図7、
図14及び
図16に示す間隔維持治具220の各ピン部材222は、初期状態に配置されている。初期状態において、各ピン部材222の止め部2222は、
図16に実線で示されるように、脚部12(直線部101)の延び方向に沿って平行に配置される。これによって、全てのピン部材222は、隣り合う脚部12,12(直線部101,101)の間に挿入可能な挿入位置に配置される。挿入位置において、止め部2222と脚部12(直線部101)とが干渉し合うことはない。
【0056】
一方、初期状態の間隔維持治具220において、駆動部224の操作によって各ピン部材222が90°回転すると、各ピン部材222の止め部2222は、
図16に仮想線で示されるように、脚部12(直線部101)の延び方向と直交する方向に配置される。これによって、全てのピン部材222は、軸部2221の両隣りの積層された脚部12,12(直線部101,101)を、基台221と止め部2222との間で挟む止め位置に配置される。したがって、各ピン部材222は、軸部2221を中心に回転することによって、止め位置と挿入位置との間を位置変更可能に設けられる。
【0057】
次に、導体成形装置200を用いて、導体線群10から導体100を成形する方法について、
図6、
図17~
図28を参照して説明する。
【0058】
まず、導体成形装置200は、
図6に示すように、導体線群10の12本の脚部12を、4つの把持装置210A,210B,210C,210Dによって把持する(把持工程)。その後、把持装置210A,210Bは、図示しない回転機構部の駆動によって、
図17に示すように、折り返し線Jを中心に回転する。これによって、導体線群10においてU字部11に最も近いコイルエンド部形成領域10Bに対して、折り返し工程が開始される。
【0059】
折り返し工程の開始初期において、導体線群10は、折り返し線Jに沿って折り返される。そのため、折り返される一方側の導体線群10の直線部形成領域10Aと他方側の導体線群10の直線部形成領域10Aとが、それぞれの同一の導体線1の脚部12同士が重なり合う方向に折り曲げられる(一次折り返し工程)。
【0060】
一次折り返し工程は、
図18に示すように、折り返される導体線群10を構成する導体線1の脚部12が完全に折り返される前に終了する。具体的には、把持装置210A,210Bは、
図6に示す状態から、折り返し線Jを軸として150°回転して、導体線群10を折り返す。
図18以降の各図において、間隔維持治具220を説明する場合を除いて、4つの把持装置210A,210B,210C,210Dは、図示を省略する。
【0061】
一次折り返し工程の終了後、把持装置210A,210Bは、一次折り返し工程終了時の回転角度を維持した状態で、
図19に示すように、X1方向に平行移動する。X1方向は、導体線群10を構成する導体1の幅方向に沿う方向である。X1方向は、折り返し線Jに平行である。
【0062】
把持装置210A,210Bの平行移動によって、コイルエンド部形成領域10Bの導体線群10を構成する導体線1の脚部12は、折り返しの支点を境にして傾斜方向が山型状に交差するように斜行する。これによって斜行工程が開始される。
【0063】
斜行工程が開始されることによって、各導体線1の脚部12によって、折り返しの支点を頂点102bとし、この頂点102bに対して斜めに交差する2本の傾斜部102a,102aを有するコイルエンド部102が成形される。
【0064】
斜行工程において、脚部12は、コイルエンド部形成領域10Bを挟んで配置される把持装置210Bの側縁E2と把持装置210Cの側縁E1を支点にして斜行する。これらの支点は、コイルエンド部102と直線部101との境界部103に対応する部位である。
【0065】
斜行工程の終了後、
図20に示すように、把持装置210A,210Bは、把持装置210C,210Dに重なるように、折り返し線Jを軸としてさらに回転する。把持装置210A,210Bは、
図6に示す状態から、折り返し線Jを中心に180°回転して、導体線群10を折り返す。これによって、導体線群10は完全に折り返され、一方側の導体線群10の直線部形成領域10Aと他方側の導体線群10の直線部形成領域10Aとが重なり合う(二次折り返し工程)。
【0066】
二次折り返し工程が完了すると、導体線群10の最初のコイルエンド部形成領域10Bに対する折り返し工程が終了する。これによって、重なり合った直線部形成領域10A,10Aは、導体線群10の厚み方向に積層された2本ずつの脚部12,12(直線部101,101)が配列される領域を含む。
【0067】
折り返し工程の終了後、
図21に示すように、1つの間隔維持治具220Aが、固定側の把持装置210C,210Dの間の重なり合った直線部形成領域10A,10Aに向けて挿入される。このときの間隔維持治具220Aは初期状態であり、各ピン部材222は挿入位置に配置されている。そのため、各ピン部材222は、止め部2222と脚部12(直線部101)とが干渉することなく、隣り合う脚部12,12(直線部101,101)の間に挿入される。各ピン部材222の軸部2221は、2本の脚部12,12(直線部101,101)の積層方向に沿って配置され、止め部2222は、2本の脚部12,12(直線部101,101)よりも上方に突出して配置される。なお、
図21に示す間隔維持治具220Aにおいて、駆動部240は図示を省略している。
【0068】
各ピン部材222が隣り合う脚部12,12(直線部101,101)の間に挿入された後、駆動部224が操作されることによって、各ピン部材222は、
図22に示すように、90°回転する。これによって、各ピン部材222は止め位置に配置され、
図23に示すように、両隣りに配置される2本ずつの脚部12,12(直線部101,101)を、止め部2222と基台221との間で挟む。ピン部材222は、基台221に千鳥状に配置されるため、基台221の長さ方向に隣り合うピン部材222,222の止め部2222,2222同士が干渉することはない。
【0069】
間隔維持治具220Aの装着が完了すると、最初のコイルエンド部形成領域10Bに対する成形工程が終了する。その後、把持装置210A,210B,210C,210Dは、それぞれ導体線1の脚部12の把持を解除する。さらに、把持装置210A,210Bは、
図6に示す初期位置に復帰する。把持装置210A,210B,210C,210Dの把持が解除されても、重なり合った直線部形成領域10A,10Aの各脚部12,12(直線部101,101)の間には、間隔維持治具220Aの各ピン部材222が挿入されている。そのため、脚部12,12(直線部101,101)の配列ピッチは、各ピン部材222の軸部2221によって乱れることなく維持される。
【0070】
その後、導体線群10は、導体成形装置200の図示しない搬送機構部の駆動によって、
図24に示すように、Y1方向に所定距離だけ搬送される。Y1方向は、導体線群10を構成する導体1の長さ方向に沿う方向である。Y1方向は、折り返し線Jに直交している。これによって、導体線群10は、前工程において把持装置210C,210Dに把持されていた直線部形成領域10A内の12本の脚部12が、初期位置に復帰した把持装置210A,210Bによって把持可能となる位置まで搬送される(搬送工程)。
【0071】
搬送工程の後、
図25に示すように、把持装置210A,210B,210C,210Dによって把持された導体線群10の2番目のコイルエンド部形成領域10Bに対して、上記同様の折り返し工程及び斜行工程が実行される。このとき、前回の折り返し工程によって重なり合う直線部形成領域10A,10Aには間隔維持治具220Aが装着されているため、脚部12,12(直線部101,101)の配列ピッチは、各ピン部材222の軸部2221に支持されることによって乱れることはない。しかも、各ピン部材222が止め位置に配置され、積層された2本の脚部12,12(直線部101,101)は、止め部2222と基台221との間で挟まれている。そのため、脚部12(直線部101)が浮き上がることはなく、積層状態が崩れるおそれはない。
【0072】
2番目のコイルエンド部形成領域10Bの折り返し工程が終了すると、最初に装着された間隔維持治具220Aは、
図26に示すように、折り返された導体線群10の上面側に配置される。その後、間隔維持治具220Aは、各ピン部材222を挿入位置に配置させた初期状態に戻される。
【0073】
間隔維持治具220Aが初期位置に戻された後、
図26に示すように、導体線群10に対して、もう1つの間隔維持治具220Bが、固定側の把持装置210C,210Dの間の重なり合った直線部形成領域10A,10Aに向けて挿入される。このときの間隔維持治具220Bは初期状態であり、各ピン部材222は挿入位置に配置されている。そのため、各ピン部材222は、止め部2222と脚部12(直線部101)とが干渉することなく、隣り合う脚部12,12(直線部101,101)の間に挿入される。各ピン部材222の軸部2221は、2本の脚部12,12(直線部101,101)の積層方向に沿って配置され、止め部2222は、2本の脚部12,12(直線部101,101)よりも上方に突出して配置される。
【0074】
これによって、2つの間隔維持治具220A,220Bは、折り返された導体線群10の直線部形成領域10A,10Aを挟んで重なり合うように装着される。このとき、各間隔維持治具220A,220Bのピン部材222は、いずれも千鳥状に配置されているため、
図27に示すように、先に装着された間隔維持治具220Aの各ピン部材222(
図27において白抜きで模式的に示す。)と、後に装着される間隔維持治具220Bの各ピン部材(
図27において黒塗りで模式的に示す。)とは、相互に補完するように配置される。そのため、間隔維持治具220A,220Bの間でピン部材222,222同士が干渉し合うことはない。
【0075】
間隔維持治具220Bが装着された後は、
図28に示すように、先に装着された間隔維持治具220Aは、取り外される。その後、間隔維持治具220Bは、各ピン部材222を止め位置に配置させ、隣り合う脚部12,12(直線部101,101)の配列ピッチを維持するとともに、積層された脚部12,12(直線部101,101)の浮き上がりを防止する。
【0076】
その後、上記同様にして、導体線群10の各コイルエンド部形成領域10Bに対する折り返し工程及び斜行工程と、2つの間隔維持治具220A,220Bを交互に装着する工程と、を複数回繰り返す。これによって、
図1に示す導体100が成形される。成形された導体100は、間隔維持治具220A,220Bによって、直線部101の配列ピッチの乱れが防止される。そのため、成形時に使用される治具に直線部101が干渉したり、成形後の導体100の直線部101がステータコア31のスロット34に挿入される際に、直線部101がスロット34の壁面等に干渉したりすることがなくなり、導体線1の変形や、導体線1の表面を覆う絶縁被膜の損傷が生じるおそれがない。
【0077】
また、折り返されることによって積層された脚部12(直線部101)の浮き上がりが、各ピン部材222の止め部2222によって防止されるため、成形された導体100における各直線部101は、それぞれの積層状態が崩れることなく、所定の配列ピッチを維持して整列する。そのため、本実施形態の導体成形装置200及び導体成形方法によれば、高品質の導体100を成形することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 導体線
10 導体線群
100 導体
101 直線部
102 コイルエンド部(斜行部)
200 導体成形装置
220,220A,220B 間隔維持治具
221 基台
222 ピン部材
2221 軸部
2222 止め部