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特開2024-146742バーストモード光受信器の等化器をプリセットすること
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146742
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】バーストモード光受信器の等化器をプリセットすること
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/07 20130101AFI20241004BHJP
   H04L 12/44 20060101ALI20241004BHJP
   H04B 10/2507 20130101ALI20241004BHJP
   H04B 10/272 20130101ALI20241004BHJP
【FI】
H04B10/07
H04L12/44 200
H04B10/2507
H04B10/272
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024003762
(22)【出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】18/129,201
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513311642
【氏名又は名称】ノキア ソリューションズ アンド ネットワークス オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン・フェーン,ダウチェ
(72)【発明者】
【氏名】ハウツマ,フィンセント
【テーマコード(参考)】
5K033
5K102
【Fターム(参考)】
5K033AA02
5K033DA01
5K033DB02
5K033DB20
5K033DB22
5K102AA01
5K102AA41
5K102AA65
5K102AL08
5K102AM02
5K102AM06
5K102KA01
5K102KA39
5K102LA02
5K102LA54
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】バーストモード光受信器の等化器をプリセットすることを提供すること。
【解決手段】OLTバーストモード受信器の等化器構成要素のタップ値をプリセットするための技法が、ONUからOLTに有益なデータを伝送する能力を遅延させることが知られている、従来の等化器トレーニング期間を取り除く(または少なくとも短くする)ために使用される。開示の技法は、送信器と受信器とを接続するスパンに対して計算された3つの知られている周波数応答:(1)ONU送信器応答F(f);(2)OLT受信器応答F(f);および(3)特定のファイバ周波数応答F(f)のコレクションに基づいている。F(f)およびF(f)は、設置前の構成要素テスティング中に測定された、知られている量である。ファイバスパンの周波数応答は、以前のアクティベーション(測距)プロセス中に作り出された、ONUとOLTとの間の隔たり(「届く距離」)の測定値と、知られているONU送信器測定値との組合せによって決定されてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光受信器の等化器要素構成要素のための、複数のN個のプリセットタップ値を生成する方法であって、等化器要素が、新しい光送信器によって伝送されたバーストモードデータの正確なリカバリを提供するように構成され、方法が、
新しい光送信器と、知られている受信器との間の直接伝送に対して以前に取得された性能データ(TDEC(0))、および新しい光送信器と、知られている受信器との間の最大ファイバ長の最悪ケース伝送に対して以前に取得された性能データ(TDEC(max))を含む、新しい光送信器に関連付けられる時間ベースの性能データを取り出すことと、
TDEC(0)の逆数を生成して、送信器周波数応答F(f)を作り出すことと、
送信器周波数応答F(f)を等化するための第1の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと、
TDEC(max)の逆数からTDEC(0)の逆数を減算することによってファイバネットワーク周波数応答を決定し、そこからファイバネットワーク周波数応答から中間タップ値のセットを作り出すことと、
新しい光送信器と、光ネットワーク内に設置された光受信器との間の、測定されたファイバスパンについての記憶されたチャネル長情報を取り出すことと、
決定されたファイバネットワーク周波数応答を、チャネル長情報を含む因子によって修正して、ファイバチャネル周波数応答F(f)を作り出すことと、
ファイバチャネル周波数応答F(f)を等化するための第2の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと、
光ネットワーク内に設置された光受信器の周波数応答測定値F(f)を取得することと、
光受信器周波数応答F(f)を等化するための第3の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと、
第1、第2、および第3の複数のN個の等化器タップ値を組み合わせて、光受信器内の等化器要素による使用のための複数のN個のプリセットタップ値を作り出すこと
を含む、方法。
【請求項2】
アップストリームバーストモード伝送を新しい光受信器から受信する前に、複数のN個のプリセットタップ設定を光受信器の等化器要素に適用すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法が、パッシブ光ネットワーク(PON)内の新しい光ネットワークユニット(ONU)の設置時に行われ、第1の複数のN個のタップ値が、ONU内の光送信器の周波数応答に関連付けられ、第2の複数のN個のタップ値が、ONUと光回線終端装置(OLT)との間の光配信ネットワーク(ODN)の周波数応答に関連付けられ、第3の複数のN個のタップ値が、OLT内のバーストモード受信器の周波数応答に関連付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数のN個のプリセットタップ値が、少なくとも50GのPON対応の高ライン速度でのアップストリームバースト伝送の等化を提供するために生成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
光ネットワークに設置された光受信器に新しい光送信器から伝送されたデータに基づいて、後続の等化器トレーニングステップ中に複数のN個のプリセットタップ値をアップデートすること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
光受信器内に含まれる等化器のプリセットタップ値を作り出し、新しい光送信器からの入来するバーストモード伝送に応答する装置であって、
プロセッサと、
プロセッサに結合され、その中に記憶した命令を命令を有するメモリと
を備え、命令は、プロセッサによって実行されたとき、装置に、
新しい光送信器と、知られている受信器との間の直接伝送に対して以前に取得された性能データ(TDEC(0))、および新しい光送信器と、知られている受信器との間の最大ファイバ長の最悪ケース伝送に対して以前に取得された性能データ(TDEC(max))を含む、新しい光送信器に関連付けられる時間ベースの性能データを取り出すことと、
TDEC(0)の逆数を生成して、送信器周波数応答F(f)を作り出すことと、
送信器周波数応答F(f)を等化するための第1の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと、
TDEC(max)の逆数からTDEC(0)の逆数を減算することによってファイバネットワーク周波数応答を決定し、そこからファイバネットワーク周波数応答から中間タップ値のセットを作り出すことと、
新しい光送信器と、光ネットワーク内に設置された光受信器との間の、測定されたファイバスパンについての記憶されたチャネル長情報を取り出すことと、
決定されたファイバネットワーク周波数応答を、チャネル長情報を含む因子によって修正して、ファイバチャネル周波数応答F(f)を作り出すことと、
ファイバチャネル周波数応答F(f)を等化するための第2の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと、
光ネットワーク内に設置された光受信器の周波数応答測定値F(f)を取得することと、
光受信器周波数応答F(f)を等化するための第3の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと、
第1、第2、および第3の複数のN個の等化器タップ値を組み合わせて、光受信器内の等化器要素による使用のための複数のN個のプリセットタップ値を作り出すことと
という行為を行わせる装置。
【請求項7】
装置が、
アップストリームバーストモード伝送を新しい光受信器から受信する前に、複数のN個のプリセットタップ設定を光受信器の等化器要素に適用すること
をさらに行わされる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
装置が、PON内に含まれ、新しいONUの設置中に利用され、第1の複数のN個のタップ値が、ONU内の光送信器の周波数応答に関連付けられ、第2の複数のN個のタップ値が、ONUとOLTとの間のODNの周波数応答に関連付けられ、第3の複数のN個のタップ値が、OLT内のバーストモード受信器の周波数応答に関連付けられる、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
PONが、少なくとも50Gのアップストリームライン速度をサポートするように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
装置が、
光ネットワークに設置された光受信器に新しい光送信器から伝送されたデータに基づいて、後続の等化器トレーニングステップ中に複数のN個のプリセットタップ値をアップデートすること
をさらに行わされる、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、パッシブ光ネットワーク(PON)の分野に関し、より詳細には、高ライン速度バーストモード伝送を正確にリカバリするためのアクティブなトレーニングの必要性を最小化する、光受信器用の等化器設定を作り出すための技法の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
パッシブ光ネットワークのより新しい世代は、50Gb/s(「50G」)の伝送速度に基づくことになる。50G PONの規格の開発は、いくつかのタイプの電子的等化(例えばデジタルシグナルプロセッサ(DSP)ベースのもの)を含む受信器構成の使用を前提としており、その電子的等化は、チャネル非線形性、色分散、およびノイズ、ならびに、受信した50G光信号から電気的同等物への初期コンバージョンをもたらす標準的なフォトダイオードの応答限界を補償することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
提案されたアップストリームライン速度50Gで(また、ゆくゆくは、さらに高いライン速度で)、光回線終端装置(optical line terminal)(OLT)におけるバーストモード受信器は、データが正確にリカバリ可能になる前に、光ネットワークユニット(optical network unit)(ONU)から受信したアップストリームバーストを素早く等化する必要がある。ネットワーク対応の50G伝送の受信に関連付けられる非理想的応答を補償するようにOLTバーストモード受信器の等化器構成要素をトレーニングするための技法が存在するが、これらは、要求されるフィルタ特性を開発するために比較的長い時間間隔を要求する。等化器構成は、常にアップデートされ、このトレーニング期間中、まだ最適ではないので、ONUからOLTへの正確なデータ伝送は、等化器トレーニングプロセスが完了するまで可能ではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
OLTバーストモード受信器内の等化器要素用のタップ設定の初期グループをアプリオリに決定するための技法が開示される。設定は、以前のONUアクティベーションプロセス中に行われた測距測定値と組み合わせた、構成要素テスティング中に収集された既存のデータに基づいている。
【0005】
本開示の原理によれば、ファイバネットワークが送信器および受信器を接続しているとき、ONU送信器およびOLT受信器のための知られている周波数応答のカスケード型コレクションを利用することが提案される。ONU送信器周波数応答は、設置前の構成要素テスティング中に見つかった、知られている量である。同様に、OLT受信器周波数応答は、このために一般に使用される事前定義された「知られている/ゴールデン(golden)」送信器を使用して以前に決定されたものである。ファイバネットワークの周波数応答は、知られているONU送信器測定値を、以前のアクティベーション(測距)プロセス中に作り出されたONUとOLTとの間の隔たり(「届く距離(reach)」)の測定値と組み合わせることによって決定されてもよい。
【0006】
本開示の例示の実施形態は、光受信器の等化器要素構成要素のための、複数のN個のプリセットタップ値を生成する方法として構成されてもよく、等化器要素は、新しい光送信器によって伝送されたバーストモードデータの正確なリカバリを提供するように構成される。この例示の実施形態では、方法は:(新しい光送信器と、知られている受信器との間の直接伝送に対して以前に取得された性能データ(TDEC(0))、および新しい光送信器と、知られている受信器との間の最大ファイバ長の最悪ケース伝送に対して以前に取得された性能データ(TDEC(max))を含む)新しい光送信器に関連付けられる時間ベースの性能データを取り出すことと;TDEC(0)の逆数を生成して、送信器周波数応答F(f)を作り出すことと;送信器周波数応答F(f)を等化するための第1の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと;TDEC(max)の逆数からTDEC(0)の逆数を減算することによってファイバネットワーク周波数応答を決定し、そこからファイバネットワーク周波数応答から中間タップ値のセットを作り出すことと;新しい光送信器と、光ネットワーク内に設置された光受信器との間の、測定されたファイバスパンについての記憶されたチャネル長情報を取り出すことと;決定されたファイバネットワーク周波数応答を、チャネル長情報を含む因子によって修正して、ファイバチャネル周波数応答F(f)を作り出すことと;ファイバチャネル周波数応答F(f)を等化するための第2の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと;光ネットワーク内に設置された光受信器の周波数応答測定値F(f)を取得することと;光受信器周波数応答F(f)を等化するための第3の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと;第1、第2、および第3の複数のN個の等化器タップ値を組み合わせて、光受信器内の等化器要素による使用のための複数のN個のプリセットタップ値を作り出すこととを含む。
【0007】
本開示の別の例は、光受信器内に含まれる等化器のプリセットタップ値を作り出すように特に構成された装置として具現化されてもよい(光受信器は、新たに設置された光送信器からの入来するバーストモード伝送に応答する)。ここで、装置は、プロセッサと、プロセッサに結合されたメモリとを備える。プロセスはその中に記憶された命令を有し、命令は、プロセッサによって実行されたとき、装置に:(新しい光送信器と、知られている受信器との間の直接伝送に対して以前に取得された性能データ(TDEC(0))、および新しい光送信器と、知られている受信器との間の最大ファイバ長の最悪ケース伝送に対して以前に取得された性能データ(TDEC(max))を含む)新しい光送信器に関連付けられる時間ベースの性能データを取り出すことと;TDEC(0)の逆数を生成して、送信器周波数応答F(f)を作り出すことと;送信器周波数応答F(f)を等化するための第1の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと;TDEC(max)の逆数からTDEC(0)の逆数を減算することによってファイバネットワーク周波数応答を決定し、そこから中間タップ値のセットを作り出すことと;新しい光送信器と、光ネットワーク内に設置された光受信器との間の、測定されたファイバスパンについての記憶されたチャネル長情報を取り出すことと;決定されたファイバネットワーク周波数応答を、チャネル長情報を含む因子によって修正して、ファイバチャネル周波数応答F(f)を作り出すことと;ファイバチャネル周波数応答F(f)を等化するための第2の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと;光ネットワーク内に設置された光受信器の周波数応答測定値F(f)を取得することと;光受信器周波数応答F(f)を等化するための第3の複数のN個の等化器タップ値を作り出すことと;第1、第2、および第3の複数のN個の等化器タップ値を組み合わせて、光受信器内の等化器要素による使用のための複数のN個のプリセットタップ値を作り出すことという行為を行わせる。
【0008】
以下の議論の過程の中で、また、添付の図面を参照することによって、他のおよびさらなる態様が明らかになるであろう。
【0009】
ここから図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】PONの異なるセグメントに関連付けられ、プリセットされる等化器タップ値の作成時に使用される、異なる関連した周波数応答を例示した、パッシブ光ネットワークの簡易ブロック図である。
図2】新しいONUの事前設置テスティングに関連付けられる図を含み、図2(a)は、新しいONUに関連付けられるTDEC(0)グラフを示し、図2(b)は、図2(a)のグラフの相対周波数応答(逆数)を示し、図2(c)は、図2(b)の周波数応答に関連付けられるタップ値F(f)のセットを例示する図である。
図3】新しいONUの事前設置テスティングに関連付けられる追加の図を含み、図3(a)は、新しいONUに関連付けられるTDEC(max)グラフを示し、図3(b)は、関係のある周波数応答をプロットし、図3(c)は、この周波数応答のタップ値を示す図である。
図4】より悪いケース(ファイバネットワーク)のタップ設定値のセットを決定するための、図2(c)および図3(c)のタップ設定値の使用を例示した図である。
図5】ONUに対するファイバスパン周波数応答F(f)を決定するための、図4に示されたデータを使用するプロセスを例示した図である。
図6】OLT受信器の事前設置テスティングに関連付けられる図を含み、図6(a)は、知られているテストパターンの受信に関連付けられるデータを例示し、図6(b)は、図6(a)のデータの周波数応答(逆数)を含み、図6(c)は、図6(b)の周波数応答に関連付けられるタップ設定F(f)を示す図である。
図7】プリセットタップ値FΣ(f)を作り出すための、3つの周波数応答F(f)、F(f)、およびF(f)からタップ設定のカスケード型コレクションを使用する開示の技法を例示した図である。
図8】PON対応の(高)ライン速度で入来する光バーストに対する図7のプリセットタップ値を使用した受信器動作の改善を例示した図である。
図9】プリセットされる等化器タップ設定を作り出す際に有益な例示の装置の図である。
図10】プリセットタップ値を作り出す例示のプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
提案されている最新のパッシブ光ネットワーク(PON)規格は、アップストリームバーストモード伝送のためのネットワーク対応のライン速度として、50Gb/s(「50G」)ライン速度を特徴としている。色分散(および、おそらく、他のチャネルベースの歪み)の効果、ならびに、受信器構成要素の、帯域幅が制限された応答性を補償するために、このスピードにおける等化の形のデジタル信号処理が、受信器側で要求される。光ネットワークユニット(ONU)から光回線終端装置(OLT)へのアップストリームバーストモード伝送にとって、これは、データが正確にリカバリ可能になる前に、OLTバーストモード受信器がアップストリームバーストを等化する必要があることを意味する。バーストモード等化器のための従来のトレーニングプロセス中、ONUとOLTとの間のデータの正確な伝送を保証することはできず;したがって、比較的長いトレーニングウィンドウが必要であることは、信頼できるデータ伝送が可能でない延長期間があることを意味する。さらに、従来のトレーニングプロセスに必要な長い期間は、アップストリームバースト毎に等化器をトレーニングするために大きいオーバヘッドの使用を要求する。OLTバーストモード受信器の等化器タップ値をプリセットするための開示のアプローチは、新たに設置されたONUからOLTにおけるバーストモード受信器にライブデータが伝送され始めるとすぐに、等化器のさらなるトレーニングを行う必要性を、取り除かないにしても、著しく低減させると考えられる。
【0012】
図1は、等化器タップ値をプリセットするために開示のプロセスにおいて使用される周波数応答因子と組み合わせた、パッシブ光ネットワーク(PON)10の例示のアーキテクチャを示している。図示のように、PON10は、ツリーアンドブランチタイプの光配信ネットワーク(optical distributed network)(ODN)16を介して複数のONU14と通信するOLT12を含む。アップストリーム方向に、当技術でよく知られている時間制御方法でONU14からOLT12にバーストモード伝送を向けるために、ODN16内のパッシブコンバイナーデバイスが使用される。
【0013】
本開示に含まれる技術的詳細を理解するために、新しいONU14aがPON10に最近追加されたこと、および、含まれる送信器18が、いくつかのタイプの等化をOLT12内の受信器20が行って伝送データを適切にリカバリすることを要求するバーストモードのアップストリーム伝送を、ネットワーク対応の高ライン速度(例えば50G)で送っていることが前提とされる。等化器要素22は、OLT12の受信器20内に含まれるものとして示されている。
【0014】
受信器等化器22をプリセットする開示の技法に従って使用される3つの別個の周波数応答構成要素を例示した図が、図1にさらに示されている。図1に文字「A」で表された第1の構成要素は、ONU14aの送信器18の周波数応答F(f)に関連付けられている。周波数応答F(f)は、PON10にONU14aが設置される前の、ONU14aの初期テスティング中に見つけられてもよい。図1に文字「B」で表された第2の構成要素は、ONU14aとOLT12との間のODN16を通過する光信号パスの周波数応答に関連付けられている。「ファイバ周波数応答F(f)」と呼ばれる、送信器18に関係のある測定値と、ONU14aのアクティベーション中に取得された特定のデータ(つまり測距測定値)との組合せが、この周波数応答を開発するために使用される。最後に、図1に文字「C」で表された第3の構成要素は、OLT12内のバーストモード受信器20の周波数応答F(f)に関連付けられている。
【0015】
下記で詳細に記載されるように、周波数応答A、B、およびC(つまり、F(f)、F(f)、およびF(f))の組合せは、ONU14aとOLT12との間の完全なチャネルを完全に特徴付けるように本開示の教示に従って使用される。これらの周波数応答のカスケード型グループは、チャネルの逆数を推定し、新しいONU14とのデータ通信を開始する前に、等化器要素22に適用される初期等化器設定のセットを提供するために使用される。等化器22をプリセットすることによって、ONU14aは、その第1のアップストリームバーストを伴うネットワーク対応の高ライン速度(例えば50G)を使用してデータを伝送し得る。
【0016】
図2は、F(f)を取得するための例示のプロセスを例示した図のセットを含み、周波数応答ONU送信器18は、図1で周波数応答構成要素Aとして識別されている。図2(a)は、全帯域幅の「平坦な応答の」(知られている)光受信器にONU送信器18によって送られたテスト信号のアイダイアグラム測定値である。知られている光受信器は、設置前にONU構成要素に資格を与えるために使用されるテストデバイスであり、したがって、図2(a)に示されたような測定値は、本開示のプリセットされる等化器構成を作り出す際の使用のために利用可能である。この特定の測定値は、一般に、「トランスミッションアンドディスパーションアイクロージャ(transmission and dispersion eye closure)」(TDEC)と呼ばれる。図2に示されているようなアイダイアグラムは、「バックツーバック」(b2b)の配置で:つまり、デバイスを一緒に結合する光ファイバがない(およびしたがって、送信器と受信器との間にチャネルノイズや分散がない)状態で、ONU送信器18および知られている受信器が配設されるケースに対して取得される。したがって、このb2b TDEC測定値は、「TDEC(0)」測定値と呼ばれることもある。図2(b)は、この知られている受信器の応答を示しており、図2(c)は、関連付けられる等化器タップ設定を描写している。本開示のために、図2(c)に示された等化器タップ設定は、図1に構成要素Aとして定義されたONU送信器周波数応答F(f)を定義する。
【0017】
等化器22のプリセットタップ値の開発についての議論を続けると、図3および図4は、ファイバ周波数応答F(f)(つまり図1の要素B)を作り出すために必要な情報を取得することに関するステップを例示している。特に、ファイバ周波数応答は、既存のTDEC測定値にさらに基づいている(このケースでは、送信器18と知られている受信器との間のファイバがある状態とない状態の両方)。ONU14aとOLT12との間の以前に決定された距離(届く距離)は、ファイバ周波数リクエストF(f)を生成するためにTDEC測定値と組み合わせて使用される。
【0018】
特に、F(f)の開発において使用されるTDEC測定値は、TDEC(0)値(ONU送信器18の周波数応答の決定において上記で使用されたもの)、および「最悪ケース」測定値と呼ばれる第2の測定値を含む。新しいONUの設置前に、ONU送信器18と、知られている受信器との間の事前定義された長さの光ファイバを挿入することによって、最悪ケース測定が行われる。事前定義された長さは、OLTとONUとの間のPONにおいて使用される最長の可能なスパンであると考えられ、この測定のために業界で使用される標準的な長さは、典型的には、20kmである(当然、これは1つの例にすぎない)。図3の図は、この20km「最悪ケース」チャネル条件に関連付けられており、「知られている」受信器においてリカバリされる信号品質に対する20kmのファイバのインパクトを明確に示している(図2(a)を図3(a)と比較せよ)。TDEC(max)と呼ばれることもあるこのデータは、さらに、ネットワークへの設置前に送信器の性能を評価するために初期テスティングフェーズ中に収集される。したがって、本開示の原理によれば、このTDECデータを取得するために追加の測定や計算は要求されず、このTDECデータは、本開示の原理による使用のために既に利用可能である。図2の議論のように、図3(c)は、等化器がこの最悪ケース条件を補償するために要求されるであろうタップ設定を描写している。
【0019】
ここから図4を参照すると、ファイバ自体だけに適切に関連付けられるべき等化器タップ値は、図3(c)の最悪ケースのタップ設定から、図2のb2b構成(つまり、図2(c)に示されたノーファイバタップ設定)に関連付けられる寄与を減算することによって見つかる。減算の結果は、図4に示されているように、定義された最大(例えば20km)スパンのための等化器タップ設定の名目のグループ(nominal group)を識別する。
【0020】
図4のタップ値は、PON10内で可能な最大ファイバスパンのためのファイバ周波数応答を正確に表しているが、ONU14aなどの所与のONUは、OLT12のいくぶん近くに位置付けられることがあり、したがって、このより短いパス長に基づく異なるファイバ周波数応答を有する可能性が高い。したがって、本開示の原理によれば、ONU14aとOLT12との間の実際の隔たりに基づいて、図4に示されたタップ設定の調節が行われる。やはり、これらの2つの要素間の実際の測定された距離は、以前の設置プロセス(ONU14aのアクティベーション)から既に知られており、したがって、OLT20の等化器22のプリセットタップ値を決定する開示の技法で利用可能である。特に、ONU14aの初期アクティベーションプロセス中、ONU14aとOLT12との間のファイバスパンの長さを計算するために測距ステップが使用され、この計算値は、ここで、このスパンの周波数応答の決定を支援するために開示の技法で使用される。
【0021】
つまり、アクティベーションのために(例えば、ONU14aのアップストリームバーストモード伝送のスケジューリングにおけるONU14aによる使用のためのシグナリング遅延を決定するために)この届く距離の測定値が重要なので、この測定値は、まさに、OLTバーストモード受信器等化器のプリセットタップ値を決定する開示の技法のためのファイバ周波数応答を調節するために要求される値である。ここから図5を参照すると、本議論のために、ONU14aは、OLT12から15kmの距離にあることがわかった(つまり、アクティベーションプロセスの測距ステップの中で15kmスパンが測定された)ことが前提とされる。本目的のために、15/20の因子が図4の等化器タップに適用され、図5にタップ設定として示された、ONU14aに対する実際のファイバ周波数応答F(f)を見つけるようにこれらの値を調節してもよい。
【0022】
ONU14aとOLT12との間の通信リンクを完全に特徴付けるために要求される最後の周波数応答構成要素は、(図1に構成要素「C」として示された)F(f)を表すOLT受信器20の周波数応答である。やはり、受信器20の周波数応答のこの測定は、PONをアクティブにする前の構成要素の初期テスティング中に続く手順であり、OLT受信器の帯域幅上での定義された性能を有する「知られている」送信器構成要素が使用される。図6(a)は、受信器におけるテスト信号の受信のアイダイアグラムであり、FFE応答が図6(b)に示され、関連付けられる等化器タップ設定が図6(c)に示されている。したがって、図6(c)の設定は、受信器周波数応答F(f)として定義される。
【0023】
図7に移ると、次いで、プリセットされる等化器タップの完全なセットが、全周波数応答FΣ(f)を形成するためにこれらの3つの周波数応答を一緒にカスケード化することによって作り出されてもよい。つまり、
Σ(f)=F(f)+F(f)+F(f)
であり、図7に示されているような例示のプロフィールを有する。この開示のプロセス中に見つかったFΣ(f)の値は、ONU14aとのデータ通信を開始する前に、OLTバーストモード受信器20の等化器22にプリロードされてもよい。図8(a)は、ONU送信器18からOLT受信器20に送られた初期の(プリロードされた)アップストリーム高ライン速度(ここでは50G)信号を描写している。比較的小さい目の開口部Oは、この図では明らかであり、伝送データに対する帯域幅が制限されたチャネルの影響を示している。開示の技法によって開発された(および図8(b)として示された)タップ設定を有する等化器22を通過した後の訂正/補償された受信信号が、図8(c)のアイダイアグラムに示されている。目のオープニングの増加は明らかであり、伝送された実際のデータのリカバリングの確実性をより高くすることができる。
【0024】
図9は、図9にさらに例示されたOLT受信器20の等化器22用など、OLT受信器等化器をプリセットするためにタップ設定を作り出す開示の技法を実施するのに適切な装置90の簡易ブロック図である。図示のように、装置90は、プロセッサ92、1つ以上のメモリ94(おそらくランダムアクセスメモリ(RAM)とリードオンリメモリ(ROM)両方を含む)、およびデータベース98を含む。
【0025】
プロセッサ92は、ローカル技術環境に適切な任意のタイプでよく、非限定的例として、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、および、マルチコアプロセッサアーキテクチャに基づくプロセッサのうちの1つ以上を含んでもよい。メモリ94は、少なくとも、コンピュータプログラム96の一部を記憶し、コンピュータプログラム96は、関連付けられるプロセッサ92によって実行されたとき、プリセットされる等化器タップ設定を開発するプロセスを装置90に実施させる命令を含む。一部の例では、装置90への外部入力93は、実装される等化器のタイプ(例えば、FFE)、および、等化器用に構成される遅延タップの数を含んでもよい。ONU送信器、OLT受信器、およびODNに関するTDEC測定値および他の事前設置データは、データベース98に記憶されてもよく、データベース98は、装置90の一部(または、必要なデータを取り出すために装置90によって容易にアクセス可能)でもよい。この情報を用いて、本開示の実施形態は、装置90のプロセッサ92によって実行可能なコンピュータソフトウェアによって、または、ソフトウェアとハードウェアとの組合せによって、実施されてもよい。
【0026】
装置90を動作させるための例示の方法が、図10のフローチャートに示されている。例示の方法は、ステップ100において始まり、送信器18に関連付けられる記憶されたTDEC(0)およびTDEC(max)データ、ならびに、光受信器20の周波数応答F(f)をデータベース98(例えば)から取り出す。これに続いて、TDEC(0)の逆数が作り出され(ステップ110)、送信器周波数応答F(f)として定義された周波数応答を形成する。使用されている等化器のタイプに関する情報(つまり、フィルタにおけるタップの総数(N))が取り出され、次のステップ(120)が、F(f)の等化を提供するN個のタップ設定のグループを計算する。N個のタップ設定のこのセットは、「セットA」として定義されている。
【0027】
次に、ファイバチャネル周波数応答を作り出すプロセスステップが実施されてもよく、ファイバネットワーク「最大」周波数応答を作り出すためにTDEC(max)の逆数からTDEC(0)の逆数を減算することから始まる(ステップ130)。ONU14aに対する特定のチャネル長データ(データベース98の中にある場合もある)を取り出すために、次のステップ(140)が使用される。チャネル長データは、ファイバチャネル周波数応答F(f)を決定するために、ファイバネットワーク周波数応答への因子として適用される(ステップ150)。ステップ160において、ファイバチャネル周波数応答F(f)を等化するために使用され「セットB」として定義され得る、N個の等化器タップのセットが計算される。
【0028】
ステップ100において取り出されたOLT受信器(F(f))の周波数応答に基づいて、ステップ160においてN個の等化器タップの追加のセットが計算され、ステップ170において「セットC」として定義される。次に、ステップ180に示されているように、N個のタップ設定のセットA、B、およびCが組み合わされ、等化器22のN個のタップのプリセット値を作り出す。図10に示されているような例示のプロセスフローは1つの例にすぎず;送信器、ファイバチャネル、および受信器に適切なタップ設定は、本開示のプリセットタップ値を作り出すために、3つ全てが作り出され、一緒に追加される限り、任意の順序で開発可能である。
【0029】
要約すると、OLT12と特定のONU14aとの間の完全なチャネルの逆数を推定するために要求される情報の既存の可用性は、等化のためにいかなるトレーニング期間も使用しなくても、等化器に要求されるタップ設定(少なくとも設定の初期の決定)が導出され得るという実現につながることがわかった。等化器タップのさらなる最適化/適合は、トレーニングシーケンスを含む1つ以上の初期バースト中に行われてもよいことを理解されたい。追加のトレーニング手順を含むとしても、開示の技法を使用して開発された等化器タップの初期セットの使用は、最終的な必要な値に比較的近いであろう。したがって、追加のトレーニングプロセスは、余計な多くのオーバヘッドを何も要求しないはずであり、完全な等化器の特徴付けが非常に素早く取得可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 パッシブ光ネットワーク(PON)
12 OLT
14、14a ONU
16 ODN
18 送信器、TX
20 受信器、バーストモード受信器、OLT受信器、RX
22 等化器要素、受信器等化器、等化器、EQ
90 装置
92 プロセッサ
94 メモリ
96 コンピュータプログラム
98 データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】